以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図30は本開示による一実施の形態およびその具体例を説明するための図である。図1は、凹凸構造を含む情報記録媒体を示す平面図である。図2は、情報記録媒体の積層構造を示す積層体である。図3は、凹凸構造を含む位置における図1の情報記録媒体の表面層の断面図である。図4〜図7は、第1凹凸構造31を説明するための図であり、図8〜図11は、第2凹凸構造32を説明するための図である。図12及び図13は、情報記録媒体の製造方法を説明するための図であって、図14〜図25は、情報記録媒体の製造に用いられる原版およびその製造方法を説明するための図である。
情報記録媒体10は、情報を記録した媒体である。情報記録媒体10の使用形態や用途は特に限定されず、例えばエンターテイメントやセキュリティの目的で用いられる。情報記録媒体10の具体例として、紙幣、ID証、パスポート、金券、チケット、公的文書などの情報や機密情報などの各種の情報を記録した媒体や金銭的価値のある媒体を例示することができる。
情報記録媒体10に記録される情報の典型例として、情報記録媒体10の所有者に関する個人情報を例示することができる。個人情報を記録した情報記録媒体10の具体的な用途として、パスポート、運転免許証、健康保険証、キャッシュカード、クレジットカード、社員証、会員証等の個人情報表示体を例示することができる。ここで情報記録媒体10に記録される個人情報とは、個人に関する情報のことであり、典型的には当該情報記録媒体10を付与された特定人に関連した情報のことである。この個人情報には、氏名、生年月日、性別等の広く社会一般で用いられる情報に限られることなく、社員番号や会員番号(クレジットカードの会員番号を含む)等のような特定の組織との関連において用いられる個人に関連した情報、一定の期間の間だけ個人に割り当てられた情報等も含まれる。したがって、情報記録媒体10の発行者からすれば、情報記録媒体10に記録される個人情報とは、各個人に付与される情報記録媒体10毎に個別に対応しなければならない情報となる。
このような情報記録媒体10は、一例として、特定人の身元や資格等を証明するために、当該特定人に対して付与される。情報記録媒体10の発行者は、情報記録媒体10に表示される情報に基づいて、情報記録媒体10の所有者を管理することができる。具体例として、ある組織、例えば会社が、当該組織の構成員、例えば当該会社の社員に対して、当該組織に属することを証明するための媒体として情報記録媒体10、例えば社員証を付与する。当該組織は、情報記録媒体10によって表示される所有者の個人情報に基づき、敷地内や室内等への入退場の管理、具体的には入退場の制限や入退場の記録や勤怠の管理等を行うことができる。したがって、情報記録媒体10に対しては、所有者の認証が容易であること、言い換えると情報記録媒体10の真贋の判定が容易であること、並びに、情報記録媒体10の偽造が困難であることが要望される。
本実施の形態による情報記録媒体10は、表面層30に形成され位相変調素子を構成する第1凹凸構造31と、表面層30に形成され屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32及び表面層30に形成され絵柄Pを表示する第3凹凸構造33の少なくともいずれかと、を含んでいる。すなわち、本実施の形態による情報記録媒体10では、共通する表面層30に機能の異なる二以上の凹凸構造が形成されている。これらの第1〜第3凹凸構造31,32,33は、情報の表示を行う手段として役立つことができる。このような本実施の形態では、情報記録媒体10の表面層30に貼合された光学素子等とは異なり、第1〜第3凹凸構造31,32,33を情報記録媒体10から取り外すことが困難である。例えば第1〜第3凹凸構造31,32,33を損傷することなく、第1〜第3凹凸構造31,32,33を情報記録媒体10から切り出すことは、非常に困難である。したがって、取り外した第1〜第3凹凸構造31,32,33を再利用して情報記録媒体10を偽造することが困難となる。また、共通する表面層30に二以上の凹凸構造31,32,33が形成されていることから、この表面層30の複数の凹凸構造31,32,33を一括して模造して情報記録媒体10を偽造することも困難となっている。
以下、図示された具体例を参照しながら、本実施の形態における情報記録媒体10について説明する。
添付図面は、情報記録媒体10の一具体例として、カード状のID証を示している。カード状のID証として、国民ID証、免許証、会員証、社員証、学生証等が例示される。図1に示すように、情報記録媒体10は、互いに直交する第1方向d1及び第2方向d2に広がっている。そして、第1方向d1及び第2方向d2に直交する第3方向d3が、情報記録媒体10の厚み方向となっている。なお、図面間での方向関係を明確化するため、いくつかの図面には、第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3を図面間で共通する方向として示している。
図1及び図2に示すように、情報記録媒体10は、表面層30に形成された第1〜第3凹凸構造31,32,33を有している。また、図1に示すように、表面層30上に、いくつかの情報I及び個人情報PIを観察することができる。図1に示された例において、個人情報PIは、第3凹凸構造33と重なる位置に観察される。
図2には、ID証をなす情報記録媒体10の積層構造の一例が示されている。図2に示すように、情報記録媒体10は、一対の主面10a,10bを含む積層基材20を有している。積層基材20の一方の表面10aをなす表面層30に、凹凸構造31,32,33が形成されている。したがって、情報記録媒体10の表面10aには、凹凸構造31,32,33に起因した凹凸面が少なくとも部分的に含まれている。
図2に示されて例において、情報記録媒体10の積層基材20は、順に積層された第1コート層25A、第1レーザー発色層24A、第1印刷層23A、第1コア層22A、中心層21、第2コア層22B、第2印刷層23B、第2レーザー発色層24B、及び、第2コート層25Bを有している。第1コート層25Aは、情報記録媒体10の厚さ方向d3における一方側の最外層として、情報記録媒体10の一方の表面10aを形成している。第2コート層25Bは、情報記録媒体10の厚さ方向d3における他方側の最外層として、情報記録媒体10の他方の表面10bを形成している。なお、図示された具体例において、第1コート層25Aが、第1〜第3凹凸構造31,32,33を形成された表面層30となっている。
この例において、情報記録媒体10は、第3方向d3と直交する面を中心として対称な構成を有している。情報記録媒体10が厚さ方向d3において対称な構成を有することで、情報記録媒体10の反りや曲がり等の変形を効果的に防止することができる。この点から、第1コート層25A及び第2コート層25Bは、同様に構成され得る。第1レーザー発色層24A及び第2レーザー発色層24Bは、同様に構成され得る。第1印刷層23A及び第2印刷層23Bは、同様に構成され得る。第1コア層22A及び第2コア層22Bは、同様に構成され得る。後述するように、第1凹凸構造31は位相変調素子として機能する。位相変調素子の再生像のひずみは、凹凸構造31が形成された情報記録媒体10の反りや曲がりの影響を非常に強く受ける。したがって、情報記録媒体10の反りや曲がりを低減することで、位相変調素子の再生像を高品質とすることができる。
中心層21は、例えば、アンテナ及びチップを有する層とすることができる。情報記録媒体10は、このような中心層21を含むことで、ICカードとして外部との無線通信を行うことが可能となる。
第1コア層22A及び第2コア層22Bは、それぞれ、第1印刷層23A及び第2印刷層23Bを作製するための基材となる層である。第1印刷層23A及び第2印刷層23Bは、対応する第1コア層22Aまたは第2コア層22B上に形成される。第1印刷層23Aは、背景及び情報Iを表示する層となる。図1に示された例において、情報Iは、特定人、例えば情報記録媒体10の所持者の顔を含む上半身の像、氏名、住所、所属等を含むことができる。また、第2印刷層23Bは、背景やその他の情報を表示する層となる。例えば、情報記録媒体10の所持者に関する情報を表示する印刷層23A,23Bは熱転写印刷により形成することができ、背景を表示する印刷層23A,23Bはオフセット印刷により形成することができる。第1コア層22A及び第2コア層22Bは、アンテナやICチップ等を含む中心層21を隠蔽するため、着色されていることが好ましい。とりわけ、第1印刷層23A及び第2印刷層23Bの意匠性や色再現性を向上させる観点から、第1コア層22A及び第2コア層22Bは、白色顔料を含んだ樹脂層とすることができる。
第1レーザー発色層24A及び第2レーザー発色層24Bは、レーザー発色剤を含むことで、レーザー光の照射により発色する層である。レーザー発色層24A,24Bが感度を示す波長域のレーザー光がレーザー発色層24A,24Bに照射されると、照射領域において、レーザー発色剤の分解、気化、炭化等が誘因される。この結果、レーザー光の照射領域に黒色又はその他の色の発色部が形成される。第1レーザー発色層24A及び第2レーザー発色層24Bには、所定のパターン又は所定の走査経路でレーザー光を照射されることによって発色部が形成されており、この発色部によって所定の表示を行うことが可能となっている。
図示された情報記録媒体10において、第1レーザー発色層24Aは、第2凹凸構造32での屈折作用によって特定の方向から第1〜第3表示物D1〜D3として観察されるようになる第1〜第3発色部27a〜27cと、上述した個人情報PIを表す第4発色部27dと、を有している。第4発色部27dによって表される個人情報PIとして、情報記録媒体10の所持者に氏名、性別、生年月日、当該所持者に割り振られた社員番号、会員番号、カード番号等を例示することができる。
なお、上述したように、発色部の形成にともないレーザー発色剤の分解、気化、炭化等に起因した膨張が生じる。このため、情報記録媒体10の表面10aのうちの、発色部と第3方向d3に対面する位置に、凸部を形成することも可能となる。凸部の有無や凸部の高さは、レーザー光の照射回数または走査回数、レーザー光のレーザーパワー〔%〕、Qスイッチ周波数〔Hz〕、および/または、走査速度〔mm/秒〕等を調節することで、制御することができる。図1に示された例では、第4発色部27dによって表示される個人情報PIが、第3方向d3に第3凹凸構造33によって表示される絵柄Pと重なっている。すなわち、第3凹凸構造33が形成されている表面層30の領域内に、個人情報PIに対応した凸部を形成することができる。これにより、再利用や模造による情報記録媒体10の偽造を困難化することができる。なお、第1レーザー発色層24Aの発色部によって表示される個人情報PIは、図1に示された例に限られず、第1凹凸構造31や第2凹凸構造32と重なって観察されるようにしてもよい。
レーザー発色層24A,24Bに含まれるレーザー発色剤としては、例えば、フルオラン系、フェノチアジン系、スピロピラン系、トリフェニルメタフタリド系、ローダミンラクタム系等のロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−アミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ニトロフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(3−ジメチルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を挙げることができる。
また、レーザー発色層24A,24Bは、レーザー発色剤に加えて、酸化チタンと、ウレタン樹脂と、シリカと、を少なくとも含有している。これらの含有物は、レーザー発色剤の発色を促進すること、レーザー発色層24A,24Bの成膜性や密着性を改善すること等を目的として含有されている。さらに、レーザー発色層24A,24Bには、必要に応じて、顔料分散剤、レベリング剤、ワックス、シランカップリング剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、難燃剤、顕色剤などの添加剤を含有させてもよい。
なお、図2に示す例では、第1レーザー発色層24Aは第1印刷層23Aよりも表面側に配置され、第2レーザー発色層24Bは第2印刷層23Bよりも表面側に配置されている。したがって、レーザー発色層24A,24Bは、印刷層23A,23Bを視認可能とするため、無色でも有色でもよいが、透明または半透明となっていることが好ましい。なお、本明細書における「透明または半透明」とは、可視光域の光の透過率が0%でないことを意味し、可視光域の光の透過率が30%以上であることが好ましく、可視光域の光の透過率が50%以上であることがさらに好ましい。
次に、第1コート層25A及び第2コート層25Bについて説明する。第1コート層25A及び第2コート層25Bは、上述したように、情報記録媒体10の表面10a,10bを形成する層である。コート層25A,25Bは、レーザー発色層24A,24Bの発色部および印刷層23A,23Bを視認可能とするため、無色でも有色でもよいが、透明または半透明となっていることが好ましい。コート層25A,25Bは、典型的には樹脂層である。上述したように、第1コート層25Aは、凹凸構造31,32,33が形成された表面層30をなす層である。樹脂層からなる第1コート層25Aには、後述するように、凹凸構造31,32,33を賦型することができる。
次に、第1凹凸構造31、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33について、説明する。上述したように、また図2及び図3に示すように、共通する一つの表面層30に、第1凹凸構造31、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33が形成されている。凹凸構造31,32,33は、基準面SSから突出した凸部及び凹部の少なくともいずれかを含んでいる。表面層30の表面は各凹凸構造31,32,33によって形成された凹凸面を含んでいる。ここで、基準面SSとは、表面10aのうちの凹凸構造による凹凸面が形成されていない領域のことである。
各凹凸構造31,32,33は所定の機能や作用を期待されており、当該機能や作用に応じて異なる大きさとなっている。この点において、表面層30は、複雑な構成を有しており、模造による情報記録媒体10の偽造が困難となっている。加えて、図示された例においては、異なる凹凸構造31,32,33が形成されている領域が隣接しており、この点においても、凹凸構造の再利用による情報記録媒体10の偽造および表面層30の模造による情報記録媒体10の偽造を更に困難にしている。
以下、表面層30に形成された第1凹凸構造31、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33について、順に詳述していく。
まず、第1凹凸構造31について説明する。第1凹凸構造31は、入射光に位相変調を生じさせる位相変調素子として機能する。このような第1凹凸構造31によって構成される位相変調素子として、入射光の位相を当該入射光の第1凹凸構造31への入射位置に応じて変調させる回折光学素子を(Diffractive Optical Element)を例示することができる。第1凹凸構造31は、例えば特開平6−337622に開示された画素配列を有する回折格子とすることもできる。
図示された例において、第1凹凸構造31は、ホログラムとして機能し、入射光を回折して回折光によって光像LIを再生することができる。本実施の形態において、第1凹凸構造31をなすホログラムは、特に限定されない。したがって、第1凹凸構造31は、反射型のホログラムであってもよいし、透過型のホログラムであってもよい。また、第1凹凸構造31は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)であってもよい。具体例として、特開2000−214750や特開2008−191540に開示された計算機合成ホログラムを第1凹凸構造31として用いることで、三次元立体空間に光像LIを再生することができる。
第1凹凸構造31は、第1凸部31P及び第1凹部31Cの少なくともいずれかを含んでなる凹凸形状を有したホログラムとなっている。ホログラムとしての第1凹凸構造31は、一般に、nmオーダーの構造物となっている。凹凸形状により光像LIを再生する第1凹凸構造31は、とりわけ図4〜図7に示された例において、入射光の位相を変調して光像LIを再生する位相変調型のホログラムによって構成されており、特にフーリエ変換ホログラムによって構成されている。フーリエ変換ホログラムは、再生すべき原画像のフーリエ変換像の波面情報を記録することで作製されるホログラムであり、いわゆるフーリエ変換レンズとして機能する。特に位相変調型のフーリエ変換ホログラムは、フーリエ変換像の位相情報を多値化した深さとして媒体、すなわち表面層30に記録することで作製される凹凸面を有するホログラムであり、媒体の光路長差に基づく回折現象を利用して再生光から原画像の光像を再生する。このフーリエ変換ホログラムは、例えば、所望の像、すなわち原画像を精度良く再生できる一方で、比較的簡単に作製することができる点で有利である。
第1凹凸構造31は、その凹凸形状をなす第1凸部31Pや第1凹部31Cによって形成された凹凸面を有している。図2、図3及び図6に示された例によって、第1凹凸構造31は、基準面SSから突出した第1凸部31Pを含んでおり、この第1凸部31Pによって形成された凹凸面を表面10aの一部分として形成している。とりわけ図示された例において、第1凸部31Pは、平坦な頂面31aを有している。
第1凹凸構造31に点光源や平行光源から光が入射すると、第1凹凸構造31の凹凸パターンに応じた光像LIが再生される。この種の像再生凹凸構造は、光像を投影するためのスクリーン等が不要であり、また点光源や平行光源等の特定の光源からの光が入射する場合にとりわけ良好に光像を再生するため、意匠用途、セキュリティ用途、或いはその他の用途に対して利便性良く広範に利用可能である。第1凹凸構造31によって再生可能な像は特に限定されず、例えば文字、記号、線画、模様(パターン)およびこれらの組み合わせ等の絵柄を、原画像および再生可能な像とし得る。なお、点光源や平行光源は、第1凹凸構造31による光像LIの再生に用いられる波長域の光を含んでいれば十分であり、必ずしも白色光を射出する必要はない。
図4に示された情報記録媒体10において、第1凹凸構造31は、反射型のホログラムによって構成されている。図4に示された例において、光源LSは、情報記録媒体10に対して、観察者100と同一の側に位置する。一方、図5に示された情報記録媒体10において、第1凹凸構造31は、透過型のホログラムによって構成されている。図5に示された例において、光源LSは、情報記録媒体10に対して、観察者100と逆側に位置する。反射型のホログラム及び透過型のホログラムは、第1凹凸構造31によって生じる面内での光路長差に起因した回折現象によって、所望の像を再生する点において共通する。
なお、第1凹凸構造31が透過型ホログラムを形成する場合には、光が、第1凹凸構造31を通過回折して、情報記録媒体10を第3方向d3に透過する。したがって、情報記録媒体10のうちの第1凹凸構造31と第3方向d3に対面する部分PXを、透明または半透明としておく。例えば、情報記録媒体10に含まれる各層のうちの第3方向d3に第1凹凸構造31と対面する部分PXを(図2参照)くりぬいて孔を形成し、この孔内に透明な部材を配置するようにしてもよい。
ここで、図6は、第1凹凸構造31が形成された領域を示す平面図である。第1凹凸構造31が形成された領域は、情報記録媒体10の平面方向に配列された複数の要素領域EAを含んでいる。すなわち、複数の要素領域EAは、二次元配列されている。図示された例において、複数の要素領域EAは、第1方向d1及び第2方向d2のそれぞれに配列されている。とりわけ図示された例において、第1凹凸構造31が形成された領域は、複数の要素領域EAに平面分割されている。すなわち、図示された第1凹凸構造31内の各位置は、複数の要素領域EAのうちのいずれかに属する。
一方、第1凹凸構造31は、原画像のフーリエ変換画像に対応した凹凸パターンとなっている。第1凹凸構造31は、フーリエ変換画像の各画素に対応した微小領域を有し、各微小領域における第1凸部31Pの高さは、フーリエ変換画像の対応する画素の位相情報に対応している。
そして、一つの要素領域EA内に形成された第1凹凸構造31が、フーリエ変換画像の全ての画素に対応した領域を含んでいる。すなわち、一つの要素領域EAは、フーリエ変換画像の画素数と同じ数に平面分割されており、一つの要素領域EA内の各平面分割された領域がフーリエ変換画像のいずれか一つの画素に対応している。したがって、一つの要素領域EAからの回折光で、光像LIの全体を再生することができる。そして、複数の要素領域EAからの回折光を利用することで、光像LIを明るく明瞭に再生することができる。この要素領域EAは、ホログラムにおけるホログラムセルと呼ばれる領域である。各要素領域EAの平面サイズは、数μm〜数mm四方(例えば2mm四方)とすることができる。
第1凹凸構造31は、多段形状、すなわち2段以上の段形状を有し、段数は特に限定されない。複数色によって光像LIを再生する場合、第1凹凸構造31は3段以上の段数を有することが好ましく、特に4段以上の段数を有する第1凹凸構造31によれば複雑な構図を持つ光像LIを高精細に再生することが可能である。図7は、第1凹凸構造31の段構造の概略を示す断面図である。図7に示された第1凹凸構造31は、4段タイプとなっている。なお第1凹凸構造31の凹凸パターンの画素サイズW1、すなわちフーリエ変換画像の各画素に対応する各面の寸法W1は、光像LIを精度良く再生する観点から10nm以上10μm以下の範囲にあることが好ましく、50nm以上5μm以下の範囲にあることがより好ましく、100nm以上2μm以下の範囲にあることが更に好ましい。また、第1凹凸構造31の凹凸深さ、すなわち第3方向d3における最大高低差H1は、50nm以上20μm以下の範囲にあることが好ましく、80nm以上15μm以下の範囲にあることがより好ましく、100nm以上10μm以下の範囲にあることが更に好ましい。
次に、第2凹凸構造32について説明する。第2凹凸構造32は、上述したように、屈折光学素子を構成する。屈折光学素子は、屈折により光路を変更することを期待された素子である。屈折光学素子として、レンズ機能を有したレンズ素子やプリズム機能を有したプリズム素子を例示することができる。図示された例においては、第2凹凸構造32の観察方向に依存して観察対象物D1,D2,D3を切り替える機能が、第2凹凸構造32に付与されている。以下、図1及び図8〜図11を主として参照しながら、第2凹凸構造32について詳述する。
まず、図1に示すように、第2凹凸構造32は、複数の単位レンズ37を含んでいる。図示された例において、単位レンズ37は、シリンドリカルレンズとなっている。すなわち、第2凹凸構造32は、曲面上の頂面32aを有する第2凸部32Pを含んでいる。また、複数の単位レンズ37は、リニアアレイで配列されている。より具体的には、複数の単位レンズ37は第2方向d2に配列され、各単位レンズ37は第1方向d1に沿って直線状に延びている。
一方、図8に示すように、第2凹凸構造32の各単位レンズ37の焦点FPは、第1レーザー発色層24A内に位置している。このため、第2凹凸構造32の各単位レンズ37を介して、第1レーザー発色層24Aのうちの当該単位レンズ37および観察方向に対応した一部の領域が観察されるようになる。そして、単位レンズ37の配列方向である第2方向d2と厚さ方向である第3方向d3との両方向に平行な図8の面内で、第3方向d3に対して第2凹凸構造32の観察方向を変化させていくと、第1レーザー発色層24Aのうちの各単位レンズ37を介して観察される領域は移動する。
図示された例において、図8においてAで示された第1観察方向、すなわち第3方向から第2凹凸構造32を観察した場合、第2凹凸構造32での屈折による光路調整によって、第1レーザー発色層24A内の第1発色部27aが観察される。例えば、第1観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合に、図9に示された「AA」の文字を第1表示物D1として観察することができる。すなわち、第1表示物D1を表示する第1発色部27aは、第1観察方向から第2凹凸構造32を介して観察される第1レーザー発色層24A上の領域のうちの第1表示物D1と重なる位置、すなわち「AA」の文字と重なる位置に配置されている。このような第1発色部27aは、第2凹凸構造32に対して第1観察方向と同一の方向から「AA」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。
一方、図8においてBで示された第2観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合、第2凹凸構造32での屈折による光路調整によって、第1レーザー発色層24A内の第2発色部27bが観察される。例えば、第2観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合に、図10に示された「B」の文字を第2表示物D2として観察することができる。したがって、第2表示物D2を表示する第2発色部27bは、第2観察方向から第2凹凸構造32を介して観察される第1レーザー発色層24A上の領域のうちの第2表示物D2と重なる位置、すなわち「B」の文字と重なる位置に配置されている。このような第2発色部27bは、第2凹凸構造32に対して第2観察方向と同一の方向から「B」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。
同様に、図8においてCで示された第3観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合、第2凹凸構造32での屈折による光路調整によって、第1レーザー発色層24A内の第3発色部27cが観察される。例えば、第3観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合に、図11に示された「CCC」の文字を第3表示物D3として観察することができる。したがって、第3表示物D3を表示する第3発色部27cは、第3観察方向から第2凹凸構造32を介して観察される第1レーザー発色層24A上の領域のうちの第3表示物D3と重なる位置、すなわち「CCC」の文字と重なる位置に配置されている。このような第3発色部27cは、第2凹凸構造32に対して第3観察方向と同一の方向から「CCC」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。
ここで、図8におけるBで示された第2観察方向および図8におけるCで示された第3観察方向は、第2方向d2及び第3方向d3の両方に平行な図8に示された面に対して平行となっている。そして、第2観察方向および第3観察方向は、例えば第1観察方向を中心として対称となっている。
以上のように、第2凹凸構造32の屈折光学機能を利用して、情報記録媒体10は、観察方向により表示物D1,D2,D3を切り替える機能を発揮することができる。このような、観察方向に応じた表示物D1,D2,D3の切り替え機能によれば、情報記録媒体10の真贋判定を容易に行うことができる。
なお、図示された例において、第2凹凸構造32の第2凸部32Pは、レンズとして機能するようにしたが、この例に限られず、プリズムとして機能するようにしてもよい。プリズムとして機能する第2凸部32Pによって、観察方向に依存して表示物D1,D2,D3を切り替える機能を発揮することができる。
第2凹凸構造32の第2凸部32Pの幅W2、図示された例ではピッチにも相当する幅W2は、10μm以上800μm以下の範囲にあることが好ましく、20μm以上400μm以下の範囲にあることがより好ましく、40μm以上200μm以下の範囲にあることが更に好ましい。また、第2凹凸構造32の凹凸高さ、すなわち最大高低差H2は、10μm以上200μm以下の範囲にあることが好ましく、10μm以上150μm以下の範囲にあることがより好ましく、15μm以上80μm以下の範囲にあることが更に好ましい。
このような第2凹凸構造32の第3方向d3における高低差は、第1凹凸構造31の第3方向d3における高低差よりも大きくなる。また、第2凹凸構造32の第2凸部32Pは、上述した第1凹凸構造31の第1凸部31Pと比較して、大きくなる。そして、図3によく示されているように、第2凹凸構造32の基準面SSからの第3方向d3への突出高さは、第1凹凸構造31の基準面SSからの第3方向d3への突出高さよりも高くなっている。すなわち、第2凹凸構造32は、第1凹凸構造31よりも第3方向d3における外方に突出している。このような例によれば、第2凹凸構造32よりも精細な構成を持ち損傷しやすい第1凹凸構造31が、情報記録媒体10の外部と接触することを、第2凹凸構造32によって効果的に防止することができる。また、共通する表面層30に、寸法が大きく異なる凹凸構造31,32が形成されていることにより、情報記録媒体10の真贋判定を容易且つ明瞭に行うことができる。
また、図1に示された例において、第2凹凸構造32が設けられている領域は、第1凹凸構造31が設けられている領域と隣接している。このように第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32が隣接して共通する表面層30に形成されていることで、凹凸構造31,32を情報記録媒体10から取り出すことが困難となり、凹凸構造31,32の再利用による偽造を防止することができる。また、異なる機能を有した凹凸構造31,32が隣接していることから、情報記録媒体10の真贋判定を容易且つ明瞭に行うことができるとともに、この情報記録媒体10の模造自体が困難となる。
次に、第3凹凸構造33について説明する。第3凹凸構造33は、凹凸により絵柄Pを表示する。ここで、絵柄とは、図形、パターン、デザイン、絵、柄等のイメージや、文字、マーク、数字などの情報を例示することができる。第3凹凸構造33を設けて絵柄Pを表示することにより、情報記録媒体10の意匠性を向上させることができる。
第3凹凸構造33は、曲面状の頂面33aを有する第3凸部33P及び曲面状の底面33bを有する第3凹部33Cの少なくともいずれか一方を有している。第3凸部33P及び第3凹部33Cが視認されることで、絵柄Pが観察されるようになっている。すなわち、第3凸部33P及び第3凹部33Cは、絵柄Pの輪郭等に沿って延びている。
図1に示された例において、絵柄Pは、富士山と太陽と雲とを含んでいる。また、図3に示すように、図示された第3凹凸構造33は、曲面状の頂面33aを有する第3凸部33P及び曲面状の底面33bを有する第3凹部33Cの両方を含んでいる。そして、絵柄Pに含まれる富士山を第3凸部33Pによって表示し、絵柄Pに含まれる太陽及び雲を第3凹部33Cによって表示している。第3凸部33P及び第3凹部33Cを使い分けて絵柄Pを表示することで、絵柄Pの意匠性を向上させることができる。また、情報記録媒体10の真贋判定をより容易化し且つ模造による情報記録媒体10の偽造をより困難とすることができる。
第3凹凸構造33の第3凸部33P及び第3凹部33Cの幅W2は、絵柄Pの視認性や意匠性を考慮して、1μm以上400μm以下の範囲にあることが好ましく、5μm以上200μm以下の範囲にあることがより好ましく、10μm以上150μm以下の範囲にあることが更に好ましい。第3凹凸構造33の第3凸部33Pの基準面SSからの第3方向d3への突出高さP3は、絵柄Pの視認性や意匠性を考慮して、5μm以上100μm以下の範囲にあることが好ましく、5μm以上50μm以下の範囲にあることがより好ましく、10μm以上40μm以下の範囲にあることが更に好ましい。第3凹凸構造33の第3凹部33Cの基準面SSからの第3方向d3への深さD3は、絵柄Pの視認性や意匠性を考慮して、5μm以上100μm以下の範囲にあることが好ましく、5μm以上50μm以下の範囲にあることがより好ましく、10μm以上40μm以下の範囲にあることが更に好ましい。第3凹凸構造33の第3方向d3における高低差H3は、絵柄Pの視認性や意匠性を考慮して、10μm以上200μm以下の範囲にあることが好ましく、10μm以上100μm以下の範囲にあることがより好ましく、20μm以上80μm以下の範囲にあることが更に好ましい。
このような第3凹凸構造33の第3方向d3における高低差は、第1凹凸構造31の第3方向d3における高低差よりも大きくなる。また、第3凹凸構造33の第3凸部33Pは、通常、上述した第1凹凸構造31の第1凸部31Pと比較して、大きくなる。そして、図3によく示されているように、第3凹凸構造33の基準面SSからの第3方向d3への突出高さは、第1凹凸構造31の基準面SSからの第3方向d3への突出高さよりも高くなっている。すなわち、第3凹凸構造33は、第1凹凸構造31よりも第3方向d3における外方に突出している。このような例によれば、第3凹凸構造33よりも精細な構成を持ち損傷しやすい第1凹凸構造31が、情報記録媒体10の外部と接触することを、第3凹凸構造33によって効果的に防止することができる。また、共通する表面層30に、寸法が大きく異なる凹凸構造31,33が形成されていることにより、情報記録媒体10の真贋判定を容易且つ明瞭に行うことができる。
また、図1に示された例において、第3凹凸構造33が設けられている領域は、第1凹凸構造31が設けられている領域と隣接している。このように第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33が隣接して共通する表面層30に形成されていることで、凹凸構造31,33を情報記録媒体10から取り出すことが困難となり、凹凸構造31,33の再利用による偽造を防止することができる。また、異なる機能を有した凹凸構造31,33が隣接していることから、情報記録媒体10の真贋判定を容易且つ明瞭に行うことができるとともに、この情報記録媒体10の模造自体が困難となる。
さらに、図1に示された例において、第3凹凸構造33が設けられている領域は、第2凹凸構造32が設けられている領域とも隣接している。このように第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33が隣接して共通する表面層30に形成されていることで、凹凸構造32,33を情報記録媒体10から取り出すことが困難となり、凹凸構造32,33の再利用による偽造を効果的に防止することができる。また、異なる機能を有した凹凸構造32,33が隣接していることから、情報記録媒体10の真贋判定を容易且つ明瞭に行うことができるとともに、この情報記録媒体10の模造自体が困難となる。
次に以上のような構成からなる情報記録媒体10の製造方法について説明する。
上述した情報記録媒体10は、図12に示すように、原版50を用いて凹凸構造31,32,33を賦型することにより、製造され得る。図12に示すように、情報記録媒体10の製造に用いられる原版50は、その版面50aに、第1凹凸部51、第2凹凸部52及び第3凹凸部53を有している。第1凹凸部51は、製造されるべき情報記録媒体10の第1凹凸構造31と相補的な形状を有している。原版50の第1凹凸部51を用いることで、第1凹凸構造31を賦型することができる。同様に、第2凹凸部52は、製造されるべき情報記録媒体10の3第2表示物D2と相補的な形状を有している。原版50の第2凹凸部52を用いることで、第2凹凸構造32を賦型することができる。また、第3凹凸部53は、製造されるべき情報記録媒体10の第3凹凸構造33と相補的な形状を有している。原版50の第3凹凸部53を用いることで、第3凹凸構造33を賦型することができる。
図12に示された製造方法では、第1〜第3凹凸構造31,32,33を樹脂賦型によって一括して形成することができる。より具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の支持材上に塗布された電離放射線硬化型樹脂を成型および硬化させることによって、支持材と基材上に支持された電離放射線硬化型樹脂の硬化物からなる凹凸層とを有する表面層30を作製することができる。作製された表面層30を、表面層30以外の層と積層することで積層基材20が得られる。また、アクリル等の熱可塑性樹脂からなる表面層30を熱圧プレスおよび冷却することによっても、表面層30を作製することができる。表面層30の材料としては、ポリカーボネート、高強度ポリエチレンテレフタレートPET−G、塩化ビニルを用いることもできる。この例においては、賦型を行う熱プレスと並行して、積層基材20の各層を積層固定するようにしてもよい。複数の凹凸構造31,32,33を樹脂賦型によって一括して形成することで、情報記録媒体10の量産における手間やコストの観点においても、非常に有利となる。
また、図12に示された賦型工程の後に、積層基材20の第1レーザー発色層24Aにレーザー光を照射して、第1〜第4発色部27a〜27dを第1レーザー発色層24Aに形成する。上述したように、第4発色部27dは、個人情報PIを表示物として表示する。第4発色部27dは、個人情報PIのパターンに応じて、第1レーザー発色層24Aにレーザー光を照射することで作製され得る。
また、第1〜第3発色部27a〜27cは、第1〜第3表示物D1〜D3を表示する。第1〜第3発色部27a〜27cは、レンズ機能を有した第2凹凸構造32を介して、特定の方向から視認される。第1〜第3発色部27a〜27cが所定の方向から視認されることで、第1〜第3表示物D1〜D3が観察されることになる。
ここで、図13は、第3発色部27cの作製方法を示している。上述したように、図8においてCで示された第3観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合、第2凹凸構造32での屈折による光路調整によって、第1レーザー発色層24A内の第3発色部27cが観察される。例えば、第3観察方向から第2凹凸構造32を観察した場合に、図11に示された「CCC」の文字を第3表示物D3として観察することができる。そして、図13に示すように、第3表示物D3を表示する第3発色部27cは、第2凹凸構造32に対して第3観察方向と同一の方向から「CCC」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。
同様に、上述した第1発色部27aは、第2凹凸構造32に対して第1観察方向と同一の方向から「AA」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。また、上述した第2発色部27bは、第2凹凸構造32に対して第2観察方向と同一の方向から「B」のパターンでレーザー光を照射し、このパターンレーザー光が第2凹凸構造32で屈折して第1レーザー発色層24Aに入射することで、形成される。
なお、図13に示された例においては、発色部27a〜27dの形成前に、上述した図2の積層構造を有する情報記録媒体10の各層の積層が完了しているものとする。例えば、発色部27a〜27dの形成以外の作製工程が完了しているものとし、図13に示された工程を経ることで、上述した情報記録媒体10が得られる。
次に、原版50の製造方法について説明する。
上述したように、原版50は、その版面50aに、第1凹凸構造31を賦型するための第1凹凸部51と、第2凹凸構造32を賦型するための第2凹凸部52と、第3凹凸構造33を賦型するための第3凹凸部53と、を有している。第1凹凸構造31は、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33よりも高精細な構成を有している。また、断面形状における頂面や底面の形状も異なっている。具体的には、第1凹凸構造31は、平坦な頂面31aの第1凸部31Pや平坦な底面31bの第1凹部31Cを有する一方で、第2凹凸構造32や第3凹凸構造33の凸部32P,33Pは曲面状の頂面32a,33aを有し、第2凹凸構造32や第3凹凸構造33の凹部32C,33Cは曲面状の底面32b,33bを有している。このような寸法や形状を含む構成上の相違から、これまで、第1〜第3凹凸部51〜53は一括して版面50aに形成することは困難とされていた。
以下に説明する原版50の製造方法では、第1凹凸部51の形成工程、第2凹凸部52の形成工程、及び、第3凹凸部53の形成工程が、順に行われている。なお、以下の説明では、第1凹凸部51、第2凹凸部52及び第3凹凸部53の形成がこの順番で実施されるが、以下の説明に限定されることなく、形成順を変更することができる。
また、以下に説明する原版50の製造方法は、第1版50A〜第4版50Dの各々を作製する工程を含んでいる。第1版50A〜第4版50Dは、原版50を作製する経過で得られる中間版である。ただし、本実施の形態において、中間版の作製回数は4回である必要はなく、各凹凸構造31,32,33の作製方法を変更したり、凹凸構造31,32,33の作製順を変更したり、凹凸構造31,32,33の凸部と凹部とを逆にしたりすることにともなって、適宜変更可能である。
まず、図14及び図15を参照して、第1版50Aを作製する工程から説明を開始する。図示された例において、第1版50Aは、高精細な第1凹凸部51に対応する第1凹凸部51Aを含んでいる。第1凹凸部51Aを作製するための第1基材54Aとして、クオーツ製の基材を用意する。図1に示すように、この第1基材54A上に、レジスト膜55Aを形成する。次に、電子線EBを用いたEB描画を行ってレジスト膜55Aをパターニングし、パターンレジスト56Aを作製する。その後、図15に示すように、パターンレジスト56Aをマスクとして、ドライエッチングを行う。これにより、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Aが、クオーツ製の第1基材54Aに形成される。最後に、パターンレジスト56Aを除去することで、第1版50Aが得られる。
なお、レジスト膜55Aとして、例えばFEP−171を用いることができる。また、EB描画されたレジスト膜55Aの現像に用いられる現像液として、例えばNMD−3を用いることができる。また、クオーツ製の第1基材54Aのドライエッチングは、例えばフッ素や塩素の雰囲気下で実施される。そして、ドライエッチングを用いることによって、第1凹凸部51A、並びに、転写により以降で作製されていく第1凹凸部51,51B〜51Eおよび情報記録媒体10の第1凹凸構造31は、平坦な頂面を含む凸部や平坦な底面を含む凹部を有するようになる。
なお、型の製造方法に関連して用いる、第1凹凸部51、第2凹凸部52又は第3凹凸部53のいずれかに対応する凹凸部との表現は、凹凸部が対応する凹凸部51,52,53と同一または相補的な形状を有していることを意味する。ただし、ここでの「同一」や「相補的」とは、厳密な「同一」や「相補的」のみだけでなく、最終的に凹凸部51,52,53を得るまでに実施される転写等の加工での変化を考慮した寸法や形状等の構成上の相違が生じていることも含む意味とする。
次に、図16に示すように、第1版50Aを用いて樹脂賦型を行うことで、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Bを有する樹脂製の第2版50Bが得られる。樹脂賦型は、アクリル等の熱可塑性樹脂を熱圧プレスおよび冷却することによって、行うことができる。また、別の樹脂賦型法として、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂基材上に塗布された電離放射線硬化型樹脂を、第1版50Aを用いて成型し、さらに硬化させることによって、基材と基材上に支持された樹脂硬化物としての凹凸層とを含む第2版50Bを作製することもできる。なお、樹脂賦型は、後述のように、原版50の製造方法の以降の工程でも実施されるが、以降の工程で実施される樹脂賦型は、ここで説明した樹脂賦型と同様に実施され得る。
その後、図17に示すように、第2版50Bを用いて電鋳を行うことで、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Cを有する金属製の第3版50Cが得られる。
次に、図18に示すように、切削工具57を用いて、第3版50Cの第2凹凸部52Cが形成されている版面50Caに切削加工を行う。この切削加工によって、第3版50Cに、第2凹凸部52に対応した第2凹凸部52Cが形成される。以上のようにして、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Cと第2凹凸部52に対応した第2凹凸部52Cとを有した第3版50Cが得られる。
次に、図19及び図20に示すようにして、情報記録媒体10の第3凹凸構造33に含まれる第3凸部33P及び第3凹部33Cのいずれか一方に対応した凹凸部を、第3凹凸部53Cとして、第3版50Cの版面50Caに形成する。まず、第3版50Cの第1凹凸部51C及び第2凹凸部52Cが形成されている版面50Ca上に、レジスト膜を形成する。次に、図19に示すように、レジスト膜をパターニングし、パターンレジスト56Cを作製する。なお、第3凹凸部53の寸法は、第1凹凸部51の寸法よりも大きい。また、第1凹凸構造31と第3凹凸構造33との機能の相違から、第3凹凸部53の寸法精度は、第1凹凸部51の寸法精度ほど高水準を要求されない。したがって、パターンレジスト56Cの作製において、EB描画以外の方法、例えばレーザー描画や面状光をマスク越しに照射するパターン露光等を採用することができる。
その後、図20に示すように、パターンレジスト56Cをマスクとして、エッチングを行う。これにより、第3凸部33P及び第3凹部33Cのいずれか一方に対応した第3凹凸部53Cが更に版面50Caに形成される。最後に、パターンレジスト56Cを除去する。これにより、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Cと、第2凹凸部52に対応した第2凹凸部52Cと、第3凹凸部53に対応した第3凹凸部53Cと、をその版面50Caに有した第4版50Cが得られる。
なお、図20に示されたエッチングは、ウェットエッチングを採用することができる。ウェットエッチングによる浸食は、縦方向だけでなく横方向にも進む。したがって、ウェットエッチングを採用することで、第3凹凸部53C、並びに、転写によって以降に作製される第3凹凸部53,53D及び情報記録媒体10の第3凹凸構造33は、曲面状の頂面を有する凸部や曲面状の底面を有する凹部を有するようになる。
その後、図21に示すように、第3版50Cを用いて電鋳を行うことで、第3版50Cと凹部及び凸部が逆になった第4版50Dを作製する。第4版50Dは、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Dと、第2凹凸部52に対応した第2凹凸部52Dと、第3凹凸部53に対応した第3凹凸部53Dと、をその版面50Daに有している。
次に、図22及び図23に示すようにして、情報記録媒体10の第3凹凸構造33に含まれる第3凸部33P及び第3凹部33Cのいずれか他方に対応した凹凸部を、第3凹凸部53Dとして、第4版50Dの版面50Daに形成する。まず、第4版50Dの第1凹凸部51D、第2凹凸部5D及び第3凹凸部53Dが形成されている版面50Da上に、レジスト膜を形成する。次に、図22に示すように、レジスト膜をパターニングし、パターンレジスト56Dを作製する。なお、第3凹凸部53の寸法は、第1凹凸部51の寸法よりも大きい。また、第3凹凸部53の寸法精度は、第1凹凸部51の寸法精度ほど高水準を要求されない。したがって、パターンレジスト56Dの作製において、EB描画以外の方法、例えばレーザー描画や面状光をマスク越しに照射するパターン露光等を採用することができる。
その後、図23に示すように、パターンレジスト56Dをマスクとして、エッチングを行う。これにより、第3凸部33P及び第3凹部33Cのいずれか他方に対応した第3凹凸部53Dが更に版面50Daに形成される。次に、パターンレジスト56Dを除去する。これにより、第1凹凸部51に対応した第1凹凸部51Cと、第2凹凸部52に対応した第2凹凸部52Cと、第3凹凸部53に対応した第3凹凸部53Cと、をその版面50Daに有した第4版50Dが得られる。このようにして得られた第4版50Dの第3凹凸部53Dは、凹部及び凸部の一方だけでなく、凹部及び凸部の両方を含むようになる。以上のようにして作製された第4版50Dを、情報記録媒体10を作製するための原版50として使用することができる。
なお、図23に示されたエッチングは、ウェットエッチングを採用することができる。ウェットエッチングを採用することで、第3凹凸部53,53D及び情報記録媒体10の第3凹凸構造33は、曲面状の頂面を有する凸部や曲面状の底面を有する凹部を有するようになる。
その後、図24に示すように、第4版50Dを用いて電鋳を行うことで、第4版50Dと凹部及び凸部が逆になった原版50を作製する。原版50は、第1凹凸部51と、第2凹凸部52と、第3凹凸部53と、をその版面50aに有している。
ところで、図14及び図15を参照しながら説明した例において、第1凹凸部51,51A〜51Dが、二段の第1凹凸構造31を作製するための版面50aとなっている例を示した。これは、原版50の製造方法を全般的に理解することを容易にするための説明であって、当然に、三段以上の第1凹凸構造31を作製するための第1凹凸部51,51A〜51Dを作製することができる。
一例として、図26〜図28は、図29に示された四段の高さを有した第1凹凸部51を作製する方法の一例を示している。図26〜図29に示された方法では、図14及び図15を参照しながら説明した方法、すなわちEB描画およびドライエッチングを用いたパターニングを二回行っている。図26に示された最初のパターニングでは、第1パターンレジスト56Aaを用いて、二段分の深さを削りとるパターニングが実施される。第1パターンレジスト56Aaは、図29に示された第1凹凸部51のうちの最も低い第1段S1と二番目に低い第2段S2とが形成されるようになる第1基材54Aの領域を露出させ、最も突出した第4段S4と二番目に突出した第3段S3とが形成されるようになる第1基材54Aの領域を覆っている。
次に、図27及び図28に示された二回目のパターニングでは、第2パターンレジスト56Abを用いて、一段分の深さを削りとるパターニングが実施される。図27に示すように、第2パターンレジスト56Abは、第1段S1と第3段S3とが形成されるようになる第1基材54Aの領域を露出させ、第2段S2と第4段S4とが形成されるようになる第1基材54Aの領域を覆っている。図28に示すように、第2段S2の高さから一段分削り取れられて第1段S1が形成され、第4段S4の高さから一段分削り取られて第3段S3が形成される。このようにして、二回のパターンニングによって、図29に示された四段の第1凹凸構造31を賦型するための第1凹凸部51,51A〜51Dが作製され得る。
上述した一実施の形態によれば、情報記録媒体10は、表面層30に形成され位相変調素子を構成する第1凹凸構造31と、表面層30に形成され屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32と、を有している。すなわち、この情報記録媒体10において、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32は、共通する表面層30に形成されている。したがって、まず第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32を情報記録媒体10から取り外し、次に取り外した第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32を再利用して情報記録媒体10を偽造することを効果的に防止することができる。また、一般的に、位相変調素子をなす第1凹凸構造31の凹凸の高低差は、屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32の凹凸の高低差と比較して、著しく小さくなる。異なる大きさの複数の凹凸構造31,32が含まれていることで、情報記録媒体10の模造による偽造も困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸構造31は、平坦な頂面31aを有する第1凸部31P及び平坦な底面31bを有する第1凹部31Cの少なくともいずれか一方を有し、第2凹凸構造32は、曲面状の頂面32aを有する第2凸部32Pを有している。すなわち、この情報記録媒体10において、第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32は、大きさだけでなく、断面形状においても大きく異なるようになる。したがって、情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難とすることができ、情報記録媒体10の真贋判定を容易化することもできる。また、屈折変調素子をなす第2凹凸構造32をレンズとして機能させ、情報記録媒体10の積層基材20中に設けられた一以上の表示部(発色部27a〜27c)を当該レンズを介して観察する際、第2凹凸構造32が曲面状の頂面32aを有する第2凸部32Pを有することで、観察方向の切り替えに応じた第1〜第3表示物D1〜D3の切り替えを円滑化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第2凹凸構造32は、第1凹凸構造31よりも突出している。このような情報記録媒体10によれば、大きく突出した第2凹凸構造32の第2凸部32Pによって、より繊細で損傷しやすい第1凹凸構造31が外部と接触することを効果的に防止することができる。とりわけ、第2凹凸構造32が曲面状の頂面32aを有する第2凸部32Pを有する場合には、第2凹凸構造32が外部と接触した際における当該第2凹凸構造32の損傷も効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸構造31が設けられている領域は、第2凹凸構造32が設けられている領域と隣接している。第1凹凸構造31および第2凹凸構造32が隣接して表面層30に形成された情報記録媒体10は、模造による偽造をさらに困難化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、情報記録媒体10は、表面層30に形成され絵柄Pを表示する第3凹凸構造33を、更に有している。すなわち、絵柄Pを表示する第3凹凸構造33は、表面層30に形成されている。したがって、まず第3凹凸構造33を情報記録媒体10から取り外し、次に取り外した第3凹凸構造33を再利用して情報記録媒体10を偽造することを効果的に防止することができる。また、一般的に、絵柄Pを表示する第3凹凸構造33の凹凸の高低差は、位相変調素子をなす第1凹凸構造31の凹凸の高低差と比較して、著しく大きくなる。さらに、絵柄Pを表示する第3凹凸構造33の凹凸のピッチは、屈折変調素子をなす第2凹凸構造32の凹凸のピッチと異なり、さらに、表示絵柄によっては一定ではないようになる。したがって、第1凹凸構造31、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33を有した情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第3凹凸構造33は、曲面状の頂面33aを有する第3凸部33P及び曲面状の底面33bを有する第3凹部33Cの少なくともいずれか一方を有している。この情報記録媒体10において、第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33は、大きさだけでなく、断面形状においても大きく異なるようになる。したがって、情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難とすることができ、情報記録媒体10の真贋判定を容易化することもできる。
上述した一実施の形態によれば、情報記録媒体10は、表面層30に設けられ位相変調素子を構成する第1凹凸構造31と、表面層30に設けられ絵柄Pを表示する第3凹凸構造33と、を有している。すなわち、この情報記録媒体10において、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び絵柄Pを表示する第3凹凸構造33は、表面層30に形成されている。したがって、まず第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33を情報記録媒体10から取り外し、次に取り外した第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33を再利用して情報記録媒体10を偽造することを効果的に防止することができる。また、一般的に、位相変調素子をなす第1凹凸構造31の凹凸の高低差は、絵柄Pを表示する第3凹凸構造33の凹凸の高低差と比較して、著しく小さくなる。異なる大きさの複数の凹凸構造31,33が含まれていることで、情報記録媒体10の模造による偽造も困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸構造31は、平坦な頂面31aを有する第1凸部31P及び平坦な底面31bを有する第1凹部31Cの少なくともいずれか一方を有し、第3凹凸構造33は、曲面状の頂面33aを有する第3凸部33P及び曲面状の底面33bを有する第3凹部33Cの少なくともいずれか一方を有している。すなわち、この情報記録媒体10において、第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33は、大きさだけでなく、断面形状においても大きく異なるようになる。したがって、情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難とすることができ、情報記録媒体10の真贋判定を容易化することもできる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第3凹凸構造33は、第1凹凸構造31よりも突出している。このような情報記録媒体10によれば、大きく突出した第3凹凸構造33の第3凸部33Pによって、より繊細で損傷しやすい第1凹凸構造31が外部と接触することを効果的に防止することができる。とりわけ、第3凹凸構造33が曲面状の頂面33aを有する場合には、第3凹凸構造33が外部と接触した際における当該第3凹凸構造33の損傷も効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸構造31が設けられている領域は、第3凹凸構造33が設けられている領域と隣接している。このように第1凹凸構造31および第3凹凸構造33が隣接して表面層30に形成された情報記録媒体10は、模造による偽造をさらに困難化することができる。
上述した一実施の形態によれば、表面層30に凹凸構造31,32を有した情報記録媒体10の製造に用いられる原版50は、位相変調素子を賦型するための第1凹凸部51と屈折光学素子を賦型するための第2凹凸部52とが設けられた版面50aを、有している。すなわち、原版50を用いて賦型することで、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32が表面層30に形成された情報記録媒体10を製造することができる。製造された情報記録媒体10は、凹凸構造31,32の再利用による偽造および複数の凹凸構造を模造することによる偽造を困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸部51が設けられている領域は、第2凹凸部52が設けられている領域と隣接している。原版50を用いた賦型により製造される情報記録媒体10において、第1凹凸構造31および第2凹凸構造32が隣接して表面層30に形成されるので、この情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、絵柄Pを賦型するための第3凹凸部53が、版面50aに更に設けられている。原版50を用いた賦型により製造される情報記録媒体10では、第3凹凸構造33が第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32とともに表面層30に形成される。したがって、凹凸構造31,32,33の再利用によるこの情報記録媒体10の偽造および複数の凹凸構造31,32,33を模造することによるこの情報記録媒体10の偽造をさらに困難とすることができる。
上述した一実施の形態によれば、表面層30に凹凸構造31,33を有した情報記録媒体10の製造に用いられる原版50は、位相変調素子を賦型するための第1凹凸部51と絵柄Pを賦型するための第3凹凸部53とが設けられた版面50aを、有している。すなわち、原版50を用いて賦型することで、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び絵柄Pを表示する第3凹凸構造33が表面層30に形成された情報記録媒体10を製造することができる。製造された情報記録媒体10は、凹凸構造31,33の再利用による偽造および複数の凹凸構造31,33を模造することによる偽造を困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1凹凸部51が設けられている領域は、第3凹凸部53が設けられている領域と隣接している。原版50を用いた賦型により製造される情報記録媒体10において、第1凹凸構造31および第3凹凸構造33が隣接して表面層に形成されるので、この情報記録媒体10の模造による偽造をさらに困難化することができる。
上述した一実施の形態によれば、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31と屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32とを表面層30に有する情報記録媒体10を製造する方法は、原版50の版面50aに設けられた第1凹凸部51及び第2凹凸部52によって、それぞれ、第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32を表面層30に賦型する工程を含んでいる。この製造方法によれば、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び屈折光学素子を構成する第2凹凸構造32が表面層30に形成された情報記録媒体10を製造することができる。製造された情報記録媒体10は、凹凸構造31,32の再利用による偽造および複数の凹凸構造31,32を模造することによる偽造を困難とすることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、原版50は、絵柄Pを表示する第3凹凸構造33を賦型するための第3凹凸部53を、版面50aに更に設けられ、賦型する工程において、第3凹凸部53によって第3凹凸構造33を表面層30に賦型する。製造された情報記録媒体10では、第3凹凸構造33が第1凹凸構造31及び第2凹凸構造32とともに表面層30に形成される。したがって、凹凸構造31,32,33の再利用によるこの情報記録媒体10の偽造および複数の凹凸構造31,32,33を模造することによるこの情報記録媒体10の偽造をさらに困難とすることができる。
上述した一実施の形態によれば、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31と絵柄Pを表示する第3凹凸構造33とを表面層30に有する10を製造する方法は、原版50の版面50aに設けられた第1凹凸部51及び第3凹凸部53によって、それぞれ、第1凹凸構造31及び第3凹凸構造33を表面層30に賦型する工程を含んでいる。この製造方法によれば、位相変調素子を構成する第1凹凸構造31及び絵柄Pを表示する第3凹凸構造33が表面層30に形成された情報記録媒体10を製造することができる。製造された情報記録媒体10は、凹凸構造31,33の再利用による偽造および複数の凹凸構造31,33を模造することによる偽造を困難とすることができる。
一実施の形態を具体例を参照しながら説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
例えば、情報記録媒体10の第1凹凸構造31が基準面SSから突出した第1凸部31Pとして形成されている例を示したが、この例に限られず、図30に示すように、基準面SSから凹んだ第1凹部31Cとして形成されていてもよい。また、情報記録媒体10の第2凹凸構造32が基準面SSから突出する例を示したが、この例に限られず、図30に示すように、第2凹凸構造32が、基準面SSから第3方向d3にいくらか凹んだ位置に設けられ、当該凹んだ位置から突出するようにしてもよい。例えば、図30に示された例のように、第2凹凸構造32の最頂部は、第3方向d3において基準面SSと同一位置に位置していてもよいし、第3方向d3において基準面SSよりも内側に位置していてもよい。さらに、上述した例において、第3凹凸構造33が、基準面SSから突出した第3凸部33Pと、基準面SSから凹んだ第3凹部33Cと、を有する例を示したが、これに限られず、第3凹凸構造33は、第3凸部33P及び第3凹部33Cのいずれか一方のみを有するようにしてもよい。
また、上述した例において、情報記録媒体10が、第1凹凸構造31に加えて、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33の両方を有する例を示したが、これに限られない。情報記録媒体10が、第1凹凸構造31と、第2凹凸構造32及び第3凹凸構造33のいずれか一方のみと、を有するようにしてもよい。
さらに、上述した原版50の製造方法の一例において、図18に示すように、金属製の第3版50Cを切削することで第2凹凸部52Cを作製する例を示したが、この例に限られず、第3凹凸部53と同様にエッチングによるパターニングを用いて第2凹凸部52を形成してもよい。同様に、エッチングによるパターニングを用いて第3凹凸部53を形成する例を示したが、これに限られず、第2凹凸部52と同様に切削により第3凹凸部53を形成してもよい。なお、第2凹凸部52や第3凹凸部53の作製に切削を用いる場合、電鋳により得られた金属製の版ではなく、樹脂製の版を切削して第2凹凸部52や第3凹凸部53を作製するようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。