光源が発生する光の波長に変化をもたらす、光源における又は光源に与える物理的影響又は撹乱を補償するための技術が開示される。
光源は、光を発生しない期間で分離されたバーストを含むパルス光ビームを発生し、各光のバーストは複数の光パルスを含む。以下で考察される技術は、パルス光ビームの少なくともいくつかのバースト間で反復的又は不変である可能性がある撹乱の影響を補償する。例えば光源がパルスのバーストを発生する結果として光源の動作中に生じ得る音響過渡は、反復的な撹乱の一例である。斯かる音響過渡は、光源の利得媒体の密度撹乱及び/又は変化として現れ得るため、光源が発生する光の波長に影響を与える。波長変動の特性は、光源によって異なる可能性があり、また、特定の光源の動作中に変化し得る。
以下で考察される技術は、光源が発生する光の波長を測定し、測定した波長に基づいて補正(例えば補正信号)を決定し、光源が発生した光パルスの後続のバースト(時間的に後で発生するパルスのバースト)にこの補正を適用することにより、反復的撹乱の影響を補償することができる。このように本技術は、フィードフォワードで、特定の光源に存在する撹乱の特性を反復的かつ漸進的に学習し、光源の幾何形状や動作状態の事前の知識を必要とせずに波長の変動を補償することを可能にする。更に、実際にフィードフォワードであることにより、斯かる反復的撹乱によって引き起こされる波長変動を補償することは、波長を測定する装置で生じ得る遅延と無関係である。また、補償は光源のソフトウェアベースの電子制御を介して、かつ光源の放電チャンバへの物理的変化を必要とすることなく達成することができる。
いくつかの実装形態において、フィードフォワード技術は、光源が発生する光の波長をフィードバック的に制御する他の技術と共に使用することができる。
図1を参照すると、フォトリソグラフィシステム100は、光ビーム160をウェーハ120に提供する光源105を含む。フォトリソグラフィシステム100は、ウェーハ120を収容するリソグラフィ露光装置115も含む。リソグラフィ露光装置115は、投影光学系125を含む。ウェーハ120上には、例えばウェーハ120上に放射線感応性フォトレジスト材料の層を堆積し、マスクされたフォトレジスト層を光ビーム160にさらすことによってマイクロ電子フィーチャが形成される。リソグラフィ露光装置115は、液浸系又は乾燥系であってもよい。システム100は、光源105からの光の放射を制御する制御系150も含む。
光ビーム160は、中心波長の回りに分布する複数の波長又は波長帯域を含むことができる。中心波長の所望の値は、目標波長と呼ばれる。システム100によりウェーハ120上にプリント可能な最小のフィーチャサイズである臨界寸法(CD)は、光ビーム160の波長に依存する。以下で考察されるように、ウェーハ120上、及びシステム100により露光された他のウェーハ上にプリントされたマイクロ電子フィーチャのために均一なCDを維持するために、光ビーム160の中心波長を目標波長又は目標波長を中心とする波長範囲内に保つべきである。光ビーム160の目標波長と、実際の、すなわち測定した波長の差は波長誤差である。波長誤差を最小にして(又は低減して)ある値の範囲、又は誤差限界に保つことによって、例えば光ビーム160のより均一な波長を維持することにより、システム100の性能を向上させることができる。光ビーム160の波長誤差がある値の範囲内にある場合、光ビーム160の波長は安定化していると考えられる。
以下でより詳細に考察されるように、制御系150は、フィードフォワード技術を用いて光ビーム160の波長の変動を低減することにより、光ビーム160の波長安定性を向上させる。制御系150は、光ビーム160の波長変動を引き起こす反復的撹乱を生じさせる光源105における物理的影響の電子的な又はソフトウェアベースの補償を行う。光源105の放電チャンバに生じ得る音波は、光ビーム160の波長に影響を及ぼし、これを変化させ得る斯かる物理的影響の一例である。また、制御系150は、物理的影響、又は物理的影響が光ビーム160の波長に及ぼす衝撃の詳細についての事前の知識を持たずに光源105に固有の物理的影響を補償することができる。いくつかの実装形態において、制御系150は相補的なフィードバック技術も含む。
図2も参照すると、例示的なフォトリソグラフィシステム200のブロック図が示されている。システム200において、例示的な光源205が光源105(図1)として用いられる。光源205は、リソグラフィ装置115に提供されるパルス光ビーム260を発生する。光源205は、例えば、(レーザ光であってもよい)パルス光ビーム260を出力するエキシマ光源であってもよい。パルス光ビーム260は、リソグラフィ装置115に入射すると、投影光学系125を通って誘導され、ウェーハ120上に投影される。このようにして、1つ以上のマイクロ電子フィーチャがウェーハ120上のフォトレジスト上にパターニングされ、その後エッチング及び洗浄され、このプロセスは繰り返される。
システム200は、図2の例において、光源205の構成要素及びリソグラフィ露光装置115に接続され、システム200の種々の動作を制御する制御系150も含む。制御系150は、ビーム260の波長誤差が誤差限界内に保たれるように光源205と相互作用する。
図2に示される例において、光源205は、シード光ビーム224を電力増幅器(PA)230に提供する主発振器(MO)212を含む2ステージレーザシステムである。主発振器212は、例えば電力増幅器230により約10〜15mJに増幅される1〜1.5ミリジュール(mJ)のパルスエネルギなど、比較的低い出力パルスエネルギでの中心波長及び帯域幅などのパラメータの精密な調整を可能にする。電力増幅器230は、主発振器212からのシード光ビーム224を受け、シード光ビーム224を増幅して、リソグラフィ装置115において用いられる光ビーム260を発生する。
主発振器212は、2つの細長の電極217と、混合ガスである利得媒体219と、電極217間でガスを循環させるためのファンとを有する放電チャンバ214を含む。共振器が放電チャンバ214の一方の側のライン狭隘化モジュール216と放電チャンバ214の第2の側の出力結合器218との間に形成される。ライン狭隘化モジュール216は、放電チャンバ214のスペクトル出力を精密に調整するグレーティングなどの回折光学素子を含むことができる。主発振器212はまた、出力結合器218からの出力光ビームを受ける線中心分析モジュール220と、必要に応じて出力光ビームの大きさ又は形を変更してシード光ビーム224を形成するビーム変更光学系222とを含む。線中心分析モジュール220は、シード光ビーム224の波長を測定又は監視するのに用いることができる測定系である。線中心分析モジュール220は、光源205内の他の位置に配置されてもよい、又は光源205の出力に配置されてもよい。
放電チャンバ214内で用いられる混合ガスは、この適用例に必要な波長及び帯域幅で光ビームを発生するのに適した任意のガスであってもよい。例えば、エキシマ源の場合、混合ガスは、緩衝ガスであるヘリウム及び/又はネオン以外の、例えばアルゴン、クリプトン、又はキセノンなどの貴ガス(希ガス)、及び、例えばフッ素又は塩素などのハロゲンを含むことができる。混合ガスの具体的な例は、約193nmの波長で光を放射するフッ化アルゴン(ArF)、約248nmの波長で光を放射するフッ化クリプトン(KrF)、又は約351nmの波長で光を放射する塩化キセノン(XeCl)を含む。エキシマ利得媒体(混合ガス)は、細長の電極217に電圧を印加することにより高圧放電時の短い(例えばナノ秒の)電流パルスで励起される。
電力増幅器230は、主発振器212からシード光ビーム224を受け、光ビームを放電チャンバ240を通してビームターニング光学素子252に誘導するビーム変更光学系232を含み、ビームターニング光学素子252は、シード光ビーム224が放電チャンバ240内に送り返されるようにその方向を変更する又は変化させる。放電チャンバ240は、一対の細長の電極241、混合ガスである利得媒体219、及び電極241間で混合ガスを循環させるためのファンを含む。
出力光ビーム260は、ビーム260の種々のパラメータ(帯域幅や波長など)を測定可能な帯域幅分析モジュール262を通って誘導される。出力光ビーム260はまた、出力光ビーム260の各パルスが、例えば光学遅延ユニットにおいて時間的に引き伸ばされ、リソグラフィ装置115に衝突する光ビームの性能特性を調整するパルスストレッチャを通って誘導されてもよい。
制御系150は、光源205の種々の構成要素に接続される。例えば、制御系150は、主発振器212及び電力増幅器230の各パルスエネルギを制御し、また500〜12,000Hz以上で変動し得るパルス繰り返し率を制御するために、それぞれ主発振器212及び電力増幅器230内の電極217、241に結合される。従って制御系150は、パルス及び線量エネルギのフィードバック及び/又はフィードフォワード制御によって、主発振器212のチャンバ内の放電及び電力増幅器230のチャンバ内の放電を互いに関連させて繰り返しトリガする。繰り返しパルス光ビーム260は、数ワット〜数百ワット、例えば約40W〜約200Wの平均出力電力を有していてもよい。出力における光ビーム260の照度(すなわち、単位面積当たりの平均電力)は、少なくとも約60W/cm2、又は少なくとも約80W/cm2であってもよい。
光源205の出力電力は、公称パルス繰り返し率及び公称パルスエネルギにおいて、100%のデューティサイクル(すなわち、光源205の主発振器212及び電力増幅器230内の電極を連続して作動させる)で計算することができる。従って、例えば、公称パルス繰り返し率を6000Hzとし、公称パルスエネルギを15mJとすると、光源205の出力電力(光ビーム260の電力)は90Wである。別の例として、公称パルス繰り返し率を6000Hzとし、公称パルスエネルギを20mJとすると、光源205の出力電力(光ビーム260の電力)は120Wである。
また、制御系150は、1つ以上の信号を光源205に送信することにより、光源205がいつ光パルス又は1つ以上の光パルスを含むバーストを放射するかを制御する。光ビーム260は、互いに時間的に分離された1つ以上のバーストを含むことができる。各バーストは1つ以上の光パルスを含むことができる。いくつかの実装形態において、1つのバーストは数百個のパルス、例えば100〜400個のパルスを含む。
図3も参照すると、制御系150は、ウェーハ露光信号300を光源205に送信し、光源205を制御してウェーハ120を光ビーム260に露光するように構成することができる。ウェーハ露光信号300は、ウェーハ120が露光されている間は高い値305(例えば1)を、ウェーハ120が露光されていないときは低い値310(例えば0)を有することができる。また、制御系150は、ゲート信号315を光源205に送信する。ゲート信号315は、1つのパルスのバーストの間は高い値320(例えば1)を有し、連続するバーストとバーストの間の時間は低い値325(例えば0)を有する。制御系150は、光源205にトリガ信号330も送信する。トリガ信号330は、光源205の各パルスの間は高い値335(例えば1)を有し、連続する各パルス間の時間については低い値340(例えば0)を有する。
以上で考察したように、電圧を電極217に印加することにより利得媒体219が励起されるとき、利得媒体219は光を放射する。電圧が電極217にパルスで印加されるとき、媒体219から放射された光もパルス化される。従って、パルス光ビーム260の繰り返し率は、光パルスを発生する電圧が電極217にそれぞれ印加される速度により決定される。トリガ信号330は、例えば電極217への電圧の印加及びパルスレートを制御するのに使用することができる。光パルスは利得媒体219中を伝搬し、出力結合器218から放電チャンバ214を出る。従って、電圧を電極217に周期的に繰り返し印加することによりパルス列が作成される。
電極217に電圧を印加することにより生じる放電は、チャンバ214に音波を生成することもできる。これらの音波はチャンバ214内を伝搬することができ、チャンバ214の壁から反射することができる。音波及び/又は音波の反射は、利得媒体に衝撃波面を形成することができる。電極217の初期放電により生成される音波の反射は、電極217が後続の光パルスを発生するために放電しているときに、電極217の間にある放電領域213に存在していてもよい。このように、反射した音波は後続の光パルスを偏向させることができる。
光パルスの波長は、光が回折光学素子(ライン狭隘化モジュール216など)と相互作用する角度に依存するため、光がチャンバ214内を伝搬する角度が変更されるように後続の光パルスを偏向させることは光パルスの波長を変化させる。従って、音波、及びチャンバ壁からの音波の反射は、パルス光ビーム260の波長誤差の増加を引き起こし得る。チャンバ214内の音波により引き起こされる偏向は、チャンバ214の幾何形状、チャンバ214の製造公差、チャンバ214の温度、及び異なる光源間で異なり得る、及び/又は光源の動作状態と共に変わり得る他の要因に依存する。バーストの最初の数個のパルスについて、衝撃波面はかなり顕著であり、結果として、波長誤差を増加させるバースト音響過渡が開始する。このバースト音響過渡の開始とこれがパルス光ビーム260の波長に及ぼす影響とは、同じ動作状態に対する1つのバーストから次のバーストに及ぶ最初の数個のパルスについての反復可能なプロファイルを有する。数個のパルスの後、これらの衝撃波面はスクランブルされ、波長誤差に及ぼす影響に対する反復可能な明確なプロファイルを有する代わりに、波長誤差のノイズに寄与する。この音響過渡がパルス光ビーム260の波長に及ぼす正確な影響は、典型的には実験的に正確に測定され得るのみで、事前に知らない場合が多く、また、光源205の動作中に変化し得る。
制御系150は、波長誤差がバースト不変である(換言すれば、波長誤差がパルス光ビーム260の少なくとも2つのバースト内のパルスについて同じか又は類似する)限り、現在のバーストの波長誤差に関する情報又はその原因が事前に知られていることを必要とせず、光源205の動作中に生じる斯かる反復的波長誤差を補償する。また、制御系150は、前に発生したパルスのバースト内のパルスの波長データから決定された情報を用いてパルス毎にバースト内のパルスの波長誤差を補償する。
図4Aを参照すると、例示的な光学系400のブロック図が示されている。光学系400は、光ビーム424を放射する光源405と、制御系450とを含む。制御系450は、システム100(図1)及び200(図2)の制御系150として使用することができる。光源405は、光源105(図1)又は205(図2)に類似していてもよい。
光ビーム424は、バースト及び各バースト内の光パルスを含む。光パルスは光源405の繰り返し率で発生され、バーストは光源から光パルスが放射されない一時的期間により分離される。
制御系450は、パルスのバースト内のパルスの波長に関する情報を、信号458を介して線中心分析モジュール420から受け、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457を光源405に供給することにより、光ビーム424の波長誤差を許容範囲内にまで低減する。制御系450は、補正信号457を決定するフィードフォワード安定化モジュール460を含む。
フィードフォワード補正信号457は、前のバースト内のパルスの波長データから決定され、その結果、フィードフォワード補正信号457の決定は、光源405内を現在伝搬しているバーストのパルスに関する波長情報を受け取ることに依存せず、線中心分析モジュール420からのデータ受け取りの遅延の影響を受けない。従って、フィードフォワード補正信号457は、高い繰り返し率、例えば6,000ヘルツ(Hz)以上の繰り返し率でパルスを発生する光源に印加することができる。光源405の構成要素は、フィードフォワード安定化モジュール460をより詳細に考察する前に考察される。
光源405は、2つの細長の電極417と、混合ガスである利得媒体419と、電極417間でガスを循環させるためのファン421とを有する放電チャンバ414を含む。共振器が放電チャンバ414の一方の側のライン狭隘化モジュール416と放電チャンバ414の第2の側の出力結合器418との間に形成される。電極417に電圧が印加されると、利得媒体419は、共振器内を伝搬する光を放射し、パルス光ビーム424を形成する。ライン狭隘化モジュール416は、例えば光を反射する及び/又は屈折させることにより、共振器内を伝搬する光と相互作用する光学素子442を含む。光学素子442は、光ビーム424のスペクトル出力を精密に調整するグレーティングなどの回折光学素子であってもよい。いくつかの実装形態において、光学素子442は、プリズムなど光の波長に基づいて光を分散させる屈折素子である。いくつかの実装形態において、光学素子442は、2つ以上の光学素子を含む光学装置であってもよく、例えば屈折要素及び反射要素の両方を有していてもよい。
光学素子442は、光学素子442を移動させる又は光学素子442の形状を変更するように制御可能なアクチュエータ444に結合されている。アクチュエータ444は、光学素子442を移動させる又は形状を変化させることができる任意のタイプのアクチュエータであってもよい。例えば、アクチュエータ444は、電圧の印加に応答して形状及び/又は大きさを変化させる圧電材料であってもよい。この例では、電圧を印加してアクチュエータ444の形状を変化させることによって光学素子442を移動させる。光学素子442は、直接的又は間接的な物理的接触によってアクチュエータ444に結合することができる。例えば、アクチュエータ444は、光学素子442、又は光学素子442に接触する要素(例えばマウント)に接触することができる。いくつかの実装形態において、アクチュエータ444は、物理的に接触することなく光学素子442を移動させる。
光源405は、出力結合器418からの出力光ビームを受けてパルス光ビーム424を形成する線中心分析モジュール420も含む。線中心分析モジュール420は、パルス光ビーム424のパルスの波長を監視及び/又は測定する測定系である。いくつかの実装形態において、線中心分析モジュール420は、パルス光ビーム424の各パルスの波長を測定する。
線中心分析モジュール420が測定した波長情報は、信号458を介して制御系450に提供される。波長情報は、例えば、ビーム424の光パルスの波長、測定された中心波長、波長帯域、及び/又は波長誤差を示すデータを含むことができる。制御系450は、1つのバースト(上付きでiが添え字される)の各パルス(下付きでkが添え字される)について線中心分析モジュール420から波長情報を受け取ることができる。制御系450は、光ビーム424の一時的繰り返し率における線中心分析モジュール420からのバーストi内のパルスkの波長情報を表す信号458
のインスタンスを受信する。従って、制御系450は、1つのバースト内の各パルスについての信号458
のインスタンスを受信することができる。これらの受信した信号458のインスタンスは、電子記憶装置461に記憶され、後続の(後で発生する)バーストのパルスに印加されるフィードフォワード補正信号を決定するのに使用される。
図4Bも参照すると、フィードフォワード安定化モジュール460は、前のバーストのパルスからの波長情報を用いてフィードフォワード補正信号457を決定する。以上で考察したように、受信した信号
458のインスタンスは、電子記憶装置461(図4A)に記憶される。フィードフォワード補正信号457を決定し、バーストiのパルスに印加するために、波長情報の以前のインスタンス459が電子記憶装置461からアクセス又は検索される。以前のインスタンス459は、バーストi−1のパルスk−m〜k+nのサブセット中の各パルスについての波長情報を含み、
と表される(ここでn、m、k、及びiは、整数値である)。この例では、以前のインスタンス459は、時間的に連続する一連のパルス(パルスk及びk+1など)についての波長データを含む。しかし他の例では、以前のインスタンス459は、サブセット中のいかなる他のパルスとも連続しないパルスのサブセットについての波長データ、又は、サブセット中のいかなる他のパルスとも連続しないパルス及びサブセット中の少なくとも1つの他のパルスに連続するパルスを含むパルスのサブセットについての波長データを含む。換言すれば、フィードフォワード信号457を決定するのに用いられるバーストi−1内のパルスのサブセットは、バーストi−1内のパルスの一部又は全部を含むことができる。
また、この例では、バーストiのパルスに印加されるフィードフォワード補正信号457を決定するのに用いられる以前のインスタンス459は、直前のバースト(バーストi−1)からの波長情報である。しかし他の例では、以前のインスタンス459は、任意の以前のバーストからの波長データを含むことができ、及び/又は複数の以前のバーストからの波長データを含むことができる。
フィードフォワード安定化モジュール460は、以前のインスタンス459
を用いて、バーストiのパルスk−m〜k+nのサブセット中の各パルスについての信号、情報、又は/又は値を含むフィードフォワード補正信号457
を決定する。フィードフォワード補正信号457
のインスタンスは、バーストiのパルスkが光学素子422と相互作用している間にライン狭隘化モジュール416に印加されるとき、反復的撹乱から生じるパルスkの波長誤差を低減する又は取り除く値、波形、又は量である。
フィードフォワード安定化モジュール460は、学習制御モジュール462を含み、いくつかの実装形態において、ローパスフィルタモジュール464を含むことができる。学習制御モジュール462は、例えば、PD型(比例微分型)繰り返し学習制御、二次繰り返し学習制御(Q−ILC)、プラントインバージョン、及び/又はHインフィニティなどの繰り返し学習制御(ILC)技術を含むことができる。学習制御モジュール462は、波長データを分析し、パルスのサブセット中の各パルスの波長誤差の特性(波長誤差の大きさなど)を決定する(すなわち学習する)。このように、学習制御モジュール462及びフィードフォワード安定化モジュール460は、光源405の幾何形状についての事前の知識を必要とせずに波長誤差を補正し、また、時間と共にゆっくりと生じる可能性がある撹乱の影響の変化に適応することができる。
ローパスフィルタモジュール464は、学習制御モジュール462の出力及び/又は波長データをフィルタリングし、波長又は波長誤差の急激な変化を拒否する。ローパスフィルタモジュール464は、反復的でない、又はバーストによって急変する撹乱が引き起こし得る波長誤差の高周波成分(例えば1,000Hz以上の周波数すなわち成分)を遮断する役割を果たす。例えば、ローパスフィルタモジュール464は、たった1つのバーストの波長データに影響を及ぼす1回限りの撹乱がフィードフォワード補正信号457を大幅に変更するのを防ぐ。フィードフォワード補正信号457に1回限りの撹乱を含むことによって、ライン狭隘化モジュール416の光学素子が、バーストi及び/又は後続のバースト内の他のパルスの波長誤差を増加させるほど比較的大きく移動することになりかねない。
また、ローパスフィルタモジュール464を用いることで、フィードフォワード補正信号457が数個(例えば10個以下)のバースト内に収束可能になる。フィードフォワード補正信号457は、例えば、フィードフォワード補正信号457が印加されたバースト内のパルスの波長誤差が完全に許容可能な値の範囲内にあるときに収束したと考えられる。図7A〜7D及び図8A〜8Dは、革新的な波長誤差の補償、及び光源が発生したパルスのバーストに印加されるフィードフォワード補正信号の収束の一例を示している。
電子記憶装置461と共に、制御系450は、電子プロセッサ452及び入出力(I/O)インタフェース456も含む。電子記憶装置461は、RAMなどの揮発性メモリ、又は不揮発性メモリであってもよい。いくつかの実装形態において、電子記憶装置461は、不揮発性部分又は要素と揮発性部分又は要素の両方を含んでいてもよい。電子記憶装置461は、実行時に、プロセッサ452に制御系450及び/又は光源405の他の構成要素との通信を行わせる、恐らくはコンピュータプログラムなどの命令を記憶する。命令は、例えば電子記憶装置454にパルス光ビーム424のパルスの波長に関連するデータを記憶させる命令であってもよい。命令は、電子プロセッサ452に、例えば毎パルス補正信号457の検索を行わせる、及び/又は記憶された波長情報を分析させて毎パルス補正信号457の決定を行わせる、及び毎パルス補正信号457に基づいて電圧信号を発生させる命令であってもよい。
電子プロセッサ452は、汎用又は専用マイクロプロセッサなどのコンピュータプログラムの実行に適した1つ以上のプロセッサや、任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサである。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信する。電子プロセッサ452は、いずれのタイプの電子プロセッサであってもよい。
I/Oインタフェース456は、制御系450がデータ及び信号を受信する、及び/又は、オペレータ、光源405、及び/又は別の電子デバイスで動作する自動プロセスにデータ及び信号を提供できるようにする任意の種類の電子インタフェースである。例えば、I/Oインタフェース456は、視覚表示装置、キーボード、又は通信インタフェースのうちの1つ以上を含むことができる。
図5Aを参照すると、別の例示的な光学系500のブロック図が示されている。光学系500は、光源405と、光源405から信号458を介して波長データを受け取る制御系550とを含む。制御系550は、互いを補完するフィードバック経路502及びフィードフォワード経路503を含み、波長誤差のさらなる低減を達成することができる。フィードフォワード経路503は、フィードフォワード補正信号457
を発生し、図4A及び4Bに関して以上で考察したように、バーストiのパルスk〜k+nの波長誤差を補正、すなわち低減するフィードフォワード安定化モジュール460を含む。以上で考察したように、フィードフォワード補正信号457
は、バーストiのパルスk−m〜k+nからの波長データに基づいて決定される。
フィードバック経路502は、バーストiの以前のパルス(パルスk)についての波長情報
に基づいて、バーストiのパルスk+1の波長誤差を補正するフィードバック補正信号557
を発生する。フィードバック補正信号557(U)は、フィードフォワード補正信号457に付加され、ライン狭隘化モジュール416に印加される補正信号559(W)を発生する。フィードバック経路502は、電子記憶装置561も含む。電子記憶装置561は、電子記憶装置461と同じタイプの構成要素であってもよい。また、電子記憶装置561及び電子記憶装置461は、単一の電子記憶装置として実装することができる。
フィードバック経路502はフィードフォワード経路503と相補的である。以上で考察したように、フィードフォワード補正信号457(V)は、バースト間でゆっくりと変化している、又は不変である撹乱を補正する。バースト間でゆっくりと変化している撹乱に加えて、他の様々な撹乱及び物理的影響が波長誤差に寄与し得る。例えば、波長誤差は、光源405内の光と相互作用する光学素子442の位置、ドリフト、及び/又は機械的振動により引き起こされ得る。フィードバック経路502は、フィードフォワード経路503が対処した撹乱に加えて、斯かる撹乱を解消するのに使用することができる。
フィードバック経路502は、任意のフィードバックコントローラ又はモジュールを含むことができる。フィードバックコントローラは、システムの特性を変更するのに使用される。フィードバックコントローラは、特性の測定値であり、システムから受信される入力と、システムに提供され、システムの特性を変更するための信号又はデータである出力とを有する。入力が受信されると、システムに提供される次の出力は、受信された入力に基づいて変更又は駆動される。フィードバック経路502において、信号458が提供する線中心分析モジュール420からの波長データは入力であり、出力はフィードバック補正信号557である。例えば、バーストiのパルスkについての波長情報を含む信号458
のインスタンスは、フィードバック経路502への入力であり、フィードバック経路502は、この入力に基づいてバーストi内の次のパルス(パルスk+1)の波長を補正するための信号であるフィードバック補正信号557
のインスタンスを発生する。フィードバック補正信号557は、バーストi内の各パルスに対する値を含むフィードフォワード補正信号457に付加され、補正信号559を発生する。ライン狭隘化モジュール416に提供され、バーストi内のパルスk+1を補正する補正信号559のインスタンスは、式1に示すように表される。
ここで
は、バーストiのパルスk+1についてフィードバック経路502により決定されるフィードバック補正信号557であり、
は、バーストiのパルスk+1についてフィードフォワード経路503により決定されるフィードフォワード補正信号457である。
フィードバック式に動作するいずれのコントローラも、フィードバック経路502として使用することができる。図5Aの例において、フィードバック経路502は、例えばモデルを通じて撹乱を解消する推定モジュール551及び作動制御装置555を含む。推定モジュール551は、波長だけでなく光源405内の構成要素(光学素子442など)の状態に影響を及ぼす、時変配列Xとして表される撹乱状態を推定し、推定値を作動制御装置555に提供する。推定された状態に基づいて、作動制御装置555は、光源405に印加されたとき、アクチュエータ444に、推定モジュール551が光源405に存在すると予測する種々の撹乱を補償する動作を行わせるフィードバック補正信号U(557)を決定する。信号557は、以前に決定された信号に関連した変化量を表すことができる、又は信号557は、別の決定値に関連しない絶対値であってもよい。
図5Bも参照すると、いくつかの実装形態において、推定モジュール551は、撹乱及びシステム変動をモデル化する波長推定モジュール582も含む。波長推定モジュール582は、アクチュエータダイナミクスモジュール484、二次撹乱モジュール586、及び狭帯域撹乱モジュール588を含む。アクチュエータダイナミクスモジュール584は、光学素子442及び/又はアクチュエータ444の挙動のモデルを提供する。このモデルは、光学素子442及び/又はアクチュエータ444の状態を周期的に予測するのに使用することができる。光学素子442の状態は、例えば光学素子442の位置及び/又は速度を表す1つ以上の値を含むことができる。
アクチュエータダイナミクスモジュール584は、アクチュエータ444への入力の印加に応答したアクチュエータ444の物理的移動又は動作のモデルを提供する。例えば、アクチュエータ444が圧電変換器(PZT)である例では、アクチュエータダイナミクスモジュール584は、アクチュエータ444を二次システムとしてモデル化する。アクチュエータ444の状態は、時間と共に変化し得るアクチュエータ444に関連付けられたいずれの量又は質であってもよい。例えば、状態はアクチュエータ444に印加される電圧であってもよい。アクチュエータ444の状態は、2つ以上の量又は質を含むことができる。例えば、アクチュエータの状態は、1つ以上の次元におけるアクチュエータの現在位置及び現在速度、並びにアクチュエータ444に直近に印加された電圧であってもよい。二次撹乱モジュール586は、光源405におけるよく理解された撹乱をモデル化する。例えば、二次撹乱モジュール586は、経時的な波長ドリフトをモデル化することができる。狭帯域撹乱モジュール588は、小さい周波数帯域に存在する撹乱(例えば10ヘルツ(Hz)以下の帯域内に存在する撹乱)をモデル化する。
推定モジュール551において、波長推定モジュール582の出力は、行列A及びBを含む状態空間ダイナミックモデル480を形成する。行列A及びBは、次のパルス(k+1)についての状態配列Xである
を、現在のパルスkについての
の値及びフィードバック信号
に基づいて予測又は推定する更新モジュール585に提供される。式(2)を用いて、状態
の推定値を次式から求めることができる。
ここでkはバーストi内のパルスを示し(kは現在の、すなわち直近のパルスに関連付けられたデータであり、k+1は次の、すなわち直後のパルスである)、Uは、作動制御装置555により決定されるフィードバック補正信号557を表し、行列A及びBの係数は、波長推定モジュール582により提供される。従って、
は、光源405内の1つ以上の構成要素の現在の状態又は状況であり、
は、作動制御装置555の直近に生成された出力(フィードバック補正信号557)である。Xの以前の値(例えば
)は、電子記憶装置561に記憶され、電子記憶装置561から取得することができ、
の値は作動制御装置555から取得することができる。従って、
は、式(2)から決定することができる。
以上で考察した方法は、光源405について知られ、波長推定モジュール582及び状態空間ダイナミックモデル580に含まれる情報などの先験的情報に基づいている。しかし、光源405についての正確な情報と仮定されるこの先験的情報は、システム間の変動や他の未取得の情報があるために完全に正確ではない可能性がある。従って、更新モジュール585の第2の機能は、信号458を介して線中心分析モジュール420から受信した以前の波長測定値を用いて状態推定値
を現実に近くなるように更新し、測定データに基づいた更新測定値
を生成することである。この測定値の更新は、例えばカルマンフィルタを用いて行うことができる。そして、状態
の推定値は、次の式(3)から取得することができる。
が決定された後、推定モジュール551は、
を作動制御装置555に提供する。作動制御装置555は、パルス(k+1)において光源405に提供された場合に光源405及び/又は光源405の構成要素に作用し、一定の制約条件を満たしながら光ビーム424の所望の波長に近い波長を達成するフィードバック補正信号557、Uを決定する。この所望の波長は、例えば目標波長であってもよい。信号557の決定は、例えばU(光源405に供給される信号)の値を最適化し、制約条件を満たしながらXに含まれる値を考慮して波長誤差を最小化することを含むことができる。最適化に用いられる制約条件の一例は、Uの絶対値が閾値未満であることであってもよい。例えば、Uは、アクチュエータ444に印加され、光学素子442を移動させる電圧又は電流を表すことができる。大きな値のUを禁じる制約条件によって、大きい電流又は電圧のアクチュエータへの印加を防止することができる。最適化は、例えば線形二次レギュレータ(LQR)として実装することができる。作動制御装置455の出力は、次に現在値
に線形的に追加されるUの漸進的変化であってもよい。
従って、作動制御装置555は、フィードバック補正信号557の次の値、又はフィードバック補正信号557の現在の値と比較した漸進的変化(この例ではいずれも
で表される)を決定し、このフィードバック補正信号557をフィードフォワード補正信号457
と(例えばスカラー加算により)結合されるように供給し、光源405に供給される補正信号559
を形成する。
は、(波長誤差の原因である構成要素の状態及び/又は状況である)
及び
(以前に適用されたフィードバック信号557の値)から決定されるため、
(バーストiのパルスk+1に対するフィードフォワード補正信号)を含む信号559
を光源405に印加することによって、目標波長により近い波長を有し、従って波長誤差が低減されたビームがもたらされる。このように、フィードフォワード安定化モジュール460を備えたフィードバック経路502を含むことによって、波長誤差を更に低減することができる。
図6も参照すると、例示的なプロセス600のフローチャートが示される。プロセス600は、光源が発生する光ビームの波長変動を補償するのに使用することができる。プロセス600は、光源が発生した光のバーストに生じる反復的撹乱により引き起こされる波長変動を補償するのに使用することができる。反復的撹乱の一例は、例えばバースト自体の発生から生じる撹乱など、各バーストの発生と共に生じる物理事象である。このような撹乱は、同じ動作状態に対して各バーストに同様に現れ、従って、バースト間でゆっくりと変化している、又は不変であり、フィードフォワード式に補償することができる。
プロセス600は、制御系450、フィードフォワード安定化モジュール460、及び光源405に関連して考察される。しかし、他の実装形態も考えられる。例えばプロセス600は、制御系150又は制御系250の1つ以上の電子プロセッサにより実行することができる。また、プロセス600がフィードバック態様も含む実装形態において、プロセス600は、図5A及び5Bの制御系550のような、フィードバック経路とフィードフォワード経路の両方を含む制御系により実行することができる。
いくつかの実装形態において、プロセス600は、制御系150、250、450、及び550のいずれかのような制御系の一部である1つ以上の電子プロセッサにより実行することができる。いくつかの実装形態において、プロセス600は、光源102又は205の2つ以上のサブシステムの一部であるプロセッサなどの分散電子プロセッサにより実行される。例えばプロセス600の一部は、光源105又は光源205のみと通信するために接続された別個の制御系の1つ以上の電子プロセッサにより実行することができる一方、他の一部は、制御系150又は250の1つ以上の電子プロセッサによりそれぞれ実行される。更に、プロセス600は、機械可読かつ実行可能な命令として実装され、コンピュータ可読媒体に記憶することができるため、プロセス600は、光源の既存のコントローラ又は制御系にアップグレード又は改造としてインストールすることができる。
光ビームが受光される(605)。光ビームは、反復的な、又はバースト間で不変の撹乱により引き起こされる非ゼロ波長誤差を有する。光ビームは、線中心分析モジュール420、又はパルス光ビームのパルスの波長の値を測定、監視、決定する、及び/又はこれにアクセスする別のモジュールで受光することができる。光ビームは、光源405が発生するパルス光ビーム424であってもよい(図4A)。光ビームは、エキシマレーザが発生することができる、又はレーザでない光源からのパルス光ビームであってもよい。
光ビームは、少なくとも光パルスの第1のバースト及び光パルスの第2のバーストを含む。パルスの第1及び第2のバーストの各々は、数百個のパルス、例えば100〜400個のパルスを含むことができる。パルスの第1のバーストはパルスの第1のサブセットを含み、パルスの第2のバーストはパルスの第2のサブセットを含む。パルスの第1及び第2のサブセットは、それぞれ第1及び第2のバースト内のパルスの全て又は一部を含むことができる。パルスのサブセット中のパルスは、バースト内の連続パルス若しくは不連続パルスであるパルス、又は連続パルス若しくは不連続パルスの組み合わせであってもよい。換言すれば、いずれの所与のパルスのサブセット中のパルスも、バースト内にある光パルスのいずれかを含むことができる。パルスの第1のサブセット中のパルス及びパルスの第2のサブセット中のパルスは、これらの各バースト内の同じバーストに対応することができる。例えば、これらの実装形態において、パルスの第1のサブセットが第1のバーストのパルス1〜10(最初の10個の光パルス)を含む場合、パルスの第2のサブセットは第2のバーストのパルス1〜10(最初の10個の光パルス)を含む。
図7A〜7D及び図8A〜8Dに関連して以下で考察されるように、撹乱は、反復可能なプロファイルを有する過渡的波長誤差を引き起こす可能性があり、誤差の大きさは、バーストの初めに生じるパルスで最大であり、バーストに後で生じるパルスがより小さい波長誤差を有するように経時的に小さくなる。従って、いくつかの実装形態において、パルスの第1及び第2のサブセットは、それぞれ第1及び第2のバーストの最初の(冒頭の)N個のパルスを含むことができる。これらの実装形態において、Nは任意の整数値であってもよい。例えばNは60であってもよく、この例では、パルスの第1のサブセット及びパルスの第2のサブセットはそれぞれ、それらの各バースト内の最初の60個の連続的な光パルスを含む。いくつかの例において、Nは20〜60の間の値である。
パルスの第1及び第2のバーストは時間的に分離され、パルスの第1のバーストは、時間的にパルスの第2のバーストよりも前に受け取られる。第1のバーストが終了し、第2のバーストが開始する時間の間に、パルス光ビームは、ビームが光を含まない一時的期間を有する。光パルスの第1のバースト及び光パルスの第2のバーストは、連続バーストであってもよく、第1及び第2のバーストは、光パルスの第1のバーストの後で光パルスの第2のバーストの前に生じるようなパルスの1つ以上の介在バーストにより時間的に分離することができる。
波長誤差は、パルスの第1のサブセット中の各パルスについて決定される(610)。特定の光パルスの波長誤差は、そのパルスの目標波長と決定された波長の差である。決定された波長は、線中心分析モジュール420により測定され、制御系450に提供されてもよく、制御系450は、線中心分析モジュール420が求めた波長測定値から波長誤差を決定することができる。決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定し、パルスの後続のバースト内のパルスの波長誤差を補正するのに使用するために電子記憶装置461に記憶される。
毎パルス補正信号は、パルスの第1のサブセットについて決定された波長誤差に基づいて決定される(615)。毎パルス補正信号は、後で発生するバーストのパルス(この例では第2のバーストのパルス)に印加されるため、フィードフォワード補正信号とも呼ばれる。毎パルス補正信号は、前のバーストのパルスから決定された波長誤差をフィードフォワード安定化モジュール460に提供することにより決定することができる。毎パルス補正信号は、パルスの第2のサブセット中の各パルスに対する値を含む。バーストiについて、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号は、
と表される。補正信号
の各値は、バーストiの光パルスkに印加されるとき、光パルスkの波長が目標波長に等しい、又は補正が適用されなかった場合よりも目標波長に近くなるように、光パルスkの波長を変更する信号の予測である質又は量を表す。換言すれば、フィードフォワード補正信号
は、バーストiのパルスkの波長誤差を低減する。
決定された毎パルス補正信号に基づく補正は、第2のバースト内に含まれるパルスの第2のサブセット中の各パルスに適用される(620)。パルスの第2のサブセット中のいずれか1つのパルスに補正を適用することによって、パルスの第2のサブセット中のパルスの波長誤差が低減する。補正は、パルス(この例ではパルスの第1のサブセット)のあるバーストの一部であるパルスの波長誤差から決定され、また補正は、パルス(この例ではパルスの第2のサブセット)の別のバーストの一部であるパルスに適用される。このように、補正は、光源の機能の詳細な知識を持たずに合成することができる。また、補正は、後で発生するバースト内のパルスのサブセットに適用されることにより、本質的にフィードフォワードである。このように、補正の決定は、線中心分析モジュール420に発生し得る波長の決定の遅延と無関係である。これによって、プロセス600を、例えば6000Hz以上で動作する光源などの高繰り返し光源と共に用いることができる。
毎パルス補正信号は、例えば制御系450の電子プロセッサ452により用いられ、補正信号の値を表す電圧信号が発生する。この例において、補正はアクチュエータ444への電圧信号の印加である。電圧信号をアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する。以上で考察したように、波長誤差は、利得媒体419に衝撃波面をもたらす物理的撹乱から生じ得る。光学素子442を移動させることによって、チャンバ内を伝搬する光を衝撃波面による光の偏向に対抗する量だけ偏向させることができる。いくつかの実装形態において、毎パルス補正信号は、アクチュエータ444に作用するフィードバック又は制御信号に付加され、又はさもなければ結合され、光学素子442を移動させ、すなわち調整し、波長誤差の低減以外の補償又は変更のためにチャンバ214内のビームを変更することができる。これらの実装形態において、波長誤差の低減は、既存の補償又は変更技術に追加され、これらの他の技術を高めて助長する。
いくつかの実装形態において、ローパスフィルタ(ローパスフィルタモジュール464など)が、補正をパルスの第2のセット中のパルスに適用する前に毎パルス補正信号に適用される。以上で考察したように、補正がなければ、波長誤差はパルスのバースト間で不変である、又はゆっくりと変化している。ローパスフィルタは、例えば光源405のノイズ、振動又は予期せぬ動きにより引き起こされ、不正確な毎パルス補正信号及び不正確な補正を生じさせるおそれがある高頻度の波長誤差を受け入れない。
ローパスフィルタは、毎パルス補正信号のデジタル版をフィルタリングし、制御系450の電子プロセッサ452により実行されるソフトウェアとして実装することができる。他の実装形態において、ローパスフィルタは、補正信号のアナログ版に作用する電子構成要素(抵抗やコンデンサなど)の集合体であってもよい。いくつかの実装形態において、ローパスフィルタは、光パルスの2つのバースト間の時間の間に補正信号に適用される。
また、いくつかの実装形態において、補正がパルスの第2のバーストの第2サブセット中の各パルスに適用された後、第2サブセット中のパルスの波長誤差は上限及び下限と比較される。閾値数のパルスの波長誤差が上限よりも大きい又は下限よりも小さい場合は、波長誤差から毎パルス補正信号が決定される。上限よりも大きい波長誤差及び下限よりも小さい波長誤差を有するパルスが閾値数に満たない場合、いくつかの実装形態では、波長誤差から毎パルス補正信号が決定されない、又は毎パルス補正信号は所定の値(例えばゼロ)に設定される。
以上で考察した例は、補正を単一の後続バーストに適用することに関係している。しかし、毎パルス補正信号は、複数の後続バーストに適用することができる。また、プロセス600は、繰り返し実行され、光源405の動作中に漸進的かつ反復的に波長誤差を低減することができる。
図7A〜7D及び図8A〜8Dも参照すると、光源からバースト801A〜801Dに放射されたパルスの波長誤差を漸進的かつ反復的に低減するプロセス600の一例が示されている。図8A〜8Dは、それぞれバースト801A〜801D内のパルスのサブセットのパルス数(k)の関数として波長誤差を示している。図7A〜7Dは、それぞれパルス数(k)の関数として、例示的な毎パルス補正信号700A〜700Dを示している。毎パルス補正信号700A〜700Dは、プロセス600から生成された補正信号の例である。バースト801Aは、時間的に最初に発生し、バースト801B及び801Cが続き、時間的に最後にバースト801Dが発生する。光源は、以上で考察した光源105、205、及び405など、光パルスのバーストを含むパルスビームを放射するいずれの光源であってもよい。
示されている例では、光学チャンバ内に発生する過渡的な物理的影響が、バーストの初めに発生するパルスに最も顕著な波長誤差を引き起こす。この例における波長誤差は、二次又は三次インパルス応答の形を取り得る。
毎パルス補正信号700A〜700Dは、パルスのサブセット中の各パルスに対する値を含む。以下で考察されるように、バースト801A内のパルスの波長誤差は、毎パルス補正信号700Bを決定するためにプロセス600により用いられ、次に毎パルス補正信号700Bは、バースト801Bのパルスに印加される。従って、図7A〜7D及び図8A〜8Dの例は、プロセス600を用いた波長誤差のフィードフォワード補正を示している。
各波長誤差800A〜800Dは、それぞれバースト801A〜801D内のパルスのサブセット中の各パルスの波長誤差を含む。バースト801A〜801Dのパルスのサブセット中にはN個のパルスがある(Nは任意の整数値である)。パルスのサブセットは、各バースト801A〜801D内の全て又は全て未満のパルスを含むことができ、各サブセットは同数のパルスを含んでいる。バースト801A〜801Dは、光源405などの光源が発生する光ビーム内に順次発生するバーストである。バースト801Aは最初に発生し、バースト801Dは最後に発生する。
サブセット中の各パルスの波長誤差は、図8A〜8D中の黒丸として示されている。補正信号700A〜700Dは、それぞれバースト801A〜801Dのパルスのサブセット中の各パルスに対する値を含む。補正信号700B〜700Dに基づく補正をバースト801B〜801D内のパルスのサブセット中のパルスにそれぞれ適用することによって、サブセット中の全てのパルスの波長誤差を下限802と上限803の間に収まる値の範囲内にまで低減することを目的に、バースト801B〜801D内のパルスの波長誤差を低減する。図8Dに示されるように、バースト801Dのパルスのサブセット中の全てのパルスの波長誤差は、下限802と上限803の間にある。上限及び下限802、803は、波長誤差の値である。上限及び下限は、光源に作用する特定可能な撹乱がないときでも生じると予想される波長誤差(それ以上低減できないほど十分小さい波長誤差)であってもよい、又は光源のユーザに影響を及ぼしていない波長誤差であってもよい。上限及び下限は、典型的には波長として表される。上限及び下限は、例えば+/−040フェムトメートル(fm)以下であってもよい。いくつかの実装形態において、上限及び下限は、+/−20fm〜+/−100fmであってもよい。
補正信号700Aは、初期値補正信号である。補正信号の初期値は任意の値を有することができる。示されている例において、補正信号700Aは、バースト801Aのパルスのサブセット中の全てのパルスについてゼロの値を有する。従って、補正信号700Aをアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は移動せず、バースト801Aのパルスのサブセット中のパルスの偏向(すなわち波長)に影響を与えない。図8Aは、補正信号700Aがアクチュエータ444に印加された後のバースト801A内のパルスのサブセットの波長誤差800Aを示している。
波長誤差800Aは、補正信号700Bを決定するのに用いられる(図7B)。補正信号700Bは、バースト801B内のパルスのサブセット中の各パルスの値を含む。この値は、補正信号700Bから決定された補正がアクチュエータ444に適用されるとき、アクチュエータ444が、バースト801Bのサブセット中の各パルスに波長誤差をもたらす物理的影響を打ち消す又は補償する量だけ光学素子442を移動させるものである。図7Bに示されているように、補正信号700Bの値は、サブセット中のパルスによって変化し得る。従って、サブセット中の各パルスに異なる補正を適用することができる。例えば、光学素子442は、サブセット中の各パルスが異なる量だけ偏向できるように、バースト801Bのパルスのサブセット中の様々なパルスと相互作用する前に異なる量だけ移動することができる。
更に、図7Bは、波長誤差をもたらした過渡状態が終了したことを決定するプロセス600の一例を示している。過渡状態の終了は、例えばパルスのサブセットの終わりにまで及び、下限802と上限803の間の波長誤差を有する一連のM(任意の正の整数値)個のパルスの第1のパルスを検出することにより決定することができる。図7Aを再度参照すると、パルス804は、限界802及び803間の波長誤差を有する一連のパルスの第1のパルスである。この一連のパルスは、パルス804からパルスのサブセットの終わりにまで及ぶ。従って、過渡状態の終了はパルス804において検出され、補正信号800Bのパルス804及び後続のパルスに対応する補正はゼロに設定される。いくつかの実装形態において、1つのバースト内のパルス数はカウントすることができ、過渡状態の終了は、光源の物理的理解に基づいてバースト内の第1のパルス後の一定のパルス数にあらかじめ設定することができる。
撹乱の波長誤差への影響がバースト間でゆっくりと変化しているため、バースト801Aの波長誤差に基づいて決定された補正信号700Bをバースト801Bのパルスに印加することによって、バースト801A内のパルスと比較してバースト801Bのパルスの波長誤差の大きさを低減する。また、バースト801B内のより多くのパルスが、最小限度802及び最大限度803により規定された範囲内の波長誤差を有する。
波長誤差800Bは、光学素子442が後続のバースト801Cのパルスと相互作用するときにアクチュエータ444に印加する電圧を決定するのに用いられる別の補正信号700Cを決定するためにプロセス600で用いられる。図8Cは、補正信号700Cに基づいて調整された光学素子442と相互作用したパルスのバースト801Cのパルスの波長誤差800Cを示している。波長誤差800Cは、プロセス600が撹乱によりもたれされた波長誤差の特性を反復的に学習し、後続の各バーストによる毎パルス補正の性能を漸進的に向上させているため、波長誤差800A及び800Bよりも小さい。
同様に、波長誤差800Cは、補正信号700Dを決定するのに用いられる。補正信号700Dは、後続バースト801Dのパルスが光学素子442と相互作用するときにアクチュエータ444に印加される電圧を発生するのに用いられる。パルスのバースト801D内のパルスの波長誤差800Dは、波長誤差800A〜800Cと比較して低減される。また、バースト801D内のパルスのサブセット中の全てのパルスが、上限803及び下限802の間にある。
従ってこの例では、プロセス600は、波長誤差をパルスの4つのバーストの後の許容範囲内にまで低減する。サブセット中の全てのパルスが許容範囲内の波長誤差を有すると、プロセス600は終了することができる。いくつかの実装形態において、プロセス600は、許容範囲内の波長誤差を有するパルスを含むバーストが発生しても継続する。プロセス600は、光源405が発生する全て又は全て未満のパルスのバーストに適用することができる。以上の例は、波長誤差をパルスの4つのバーストの後の許容範囲内にまで低減するプロセス600を示しているが、他の例では、波長誤差は、それよりも多い又は少ない数のバーストの後の許容範囲まで低減することができる。例えば、波長誤差は、2〜100個のバーストの後の許容範囲まで低減することができる。波長誤差が許容範囲まで低減される前に発生するバーストの数は、バースト間の波長誤差にどれくらいの変動があるかと、波長誤差の許容範囲とに依存する。バースト間の波長誤差の変動がより高い、すなわちより大きい、及び/又は波長誤差の変動の許容範囲がより小さい光ビームの場合、波長誤差が許容範囲内にまで低減される前に発生するバーストの数は結果的に多くなる。
波長誤差がパルスのバーストの閾値数内の許容範囲まで低減されない場合、波長誤差がバースト間で不変である又はゆっくりと変動しているという仮定が不正確である可能性がある。波長誤差が閾値数のバーストによる許容範囲内にない場合、プロセス600は収束していないと決定され得る。この例では、毎パルス補正信号は不正確である可能性があり、毎パルス補正信号に基づく補正は、ゼロ、又は毎パルス補正信号に基づく補正を用いることができないことを制御系450に示す何らかの他の値に設定することができる。従って、毎パルス補正信号に基づく補正は、プロセス600を適用できない状況において光源405のベースライン性能を低下させない。
このように、反復的な物理的撹乱から生じる過渡的波長誤差の特性(形状、大きさ、及び/又は持続時間)は、光源405の動作中に、光源405又は動作状態の事前の知識がない状態で学習される。過渡的波長誤差の特性を学習することにより、プロセス600は、フィードフォワード的に波長誤差を補正及び/又は補償する。また、補正信号700B〜700Dは、光源405の動作中に複数回決定されるため、例えば電極417の作動パターン、利得媒体419の温度の変化によって動作中に生じる過渡的波長誤差の形状及び持続時間の変化が補償され得る。
また、図7A〜7D及び図8A〜8Dの例では、パルスの複数のバーストの波長誤差は、補正信号700Dを決定する際に解消される。しかし、他の例では、補正信号700B〜700Dはいずれも単一の波長誤差から決定することができる。更に、補正信号700B〜700Dは、一組の波長誤差から決定することができる。また、補正信号700B〜700Dは、直前のバースト以外のバーストからの波長誤差に基づくことができる。例えば、いくつかの実装形態において、補正信号700Dは波長誤差800Bから決定することができる。
更に、光学素子442の動きを引き起こす電圧をアクチュエータ444に印加する例が提供されているが、決定された毎パルス補正信号に基づく補正は、他の形態を取ることができる。例えば、補正は、電子記憶装置454に記憶され、光学素子442に結合されたコントローラに供給される電子信号であってもよい。補正は、光源405が発生する光ビームの波長の補正又は変化をもたらす、任意の物理的あるいは電子的な量又は質であってもよい。
図9は、例えば図5A、5B及び6に関連して以上で考察したフィードフォワード補償技術の有効性を示す模擬データを示している。図9は、6000Hzのパルス繰り返し率を有するレーザの移動ウィンドウの関数である150個のバーストにわたって平均化されたフェムトメートル(fm)単位の移動ウィンドウ波長誤差の曲線905及び910を示している。この例では、各バーストは、波長誤差が平均化されたパルスの150個のウィンドウを含み、数値が低い方のウィンドウはバースト内の初期パルスを含み、数値が高い方のウィンドウはバースト内の末期パルスを含む。従って、図9の横軸はパルス数(k)と相関し、縦軸は波長誤差と相関がある。
曲線905は、フィードバック補償を用いるがフィードフォワード波長誤差補償を用いない場合の実績を示している。曲線910は、フィードフォワード補償を用いた補償後のシミュレートされた波長誤差を示している。
フィードバック補償のみを用いると、移動ウィンドウ波長誤差は、初期バースト過渡906に支配される。この初期バースト過渡906は、音響過渡に類似していてもよい。多くのフィードバックコントローラが、高いパルス繰り返し率(6,000Hz以上)、及び線中心分析モジュールにおける約160マイクロ秒(μs)の処理遅延による過渡906を補償することを要求されていると考えられる。しかし、フィードフォワード波長誤差技術(フィードフォワード安定化モジュール460など)は、フィードバック波長コントローラと共に用いられるとき、過渡906を約4倍低減する。
他の実装形態は、以下の請求項の範囲内である。例えば、いくつかの実装形態において、主発振器212(図2)は、再生リング共振器として構成される。これらの実装形態において、シード光ビーム224は、電力増幅器230を通って誘導され、循環経路又はループが形成される。電力増幅器230が再生リング共振器である実装形態では、シード光ビーム224は、放電チャンバ240を繰り返し通過することにより増幅される。光学系232は、シード光ビーム224をインカップルし、リング共振器からの増幅された放射線の一部をアウトカップルして出力光ビーム260を形成する機構を提供する。例えば、光学系232は、当該機構として、シード光ビーム224及びリング共振器からの増幅された放射線を受ける部分反射鏡などの光結合器を含むことができる。