(第1実施形態)
以下、車両制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
本実施形態の車両制御装置は車両に搭載されるものであり、ACC(Adaptive Cruise Control)機能を有し、自車の前方において自車の進路上を走行する先行車に追従して走行する追従制御を実施する。まずは、本システムの概略構成について図1を用いて説明する。
図1において車両制御装置10は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えたコンピュータであり、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実行することで各機能を実現する。車両(自車)には、車両周囲に存在する物体を検知する物体検知装置として、撮像装置21及びレーダ装置22が搭載されている。車両制御装置10は、物体検知装置から物体の検知情報を入力し、その入力した検知情報に基づいて、先行車に対する追従制御を実行する。
撮像装置21は車載カメラであり、CCDカメラやCMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等で構成されている。撮像装置21は、自車の走行道路を含む周辺環境を撮影し、その撮影された画像を表す画像データを生成して車両制御装置10に逐次出力する。撮像装置21は、車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられており、車両前方へ向けて所定の撮影角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮影する。
レーダ装置22は、送信波として電磁波を送信し、その反射波を受信することで物体を検出する探知装置であり、本実施形態ではミリ波レーダが搭載されている。レーダ装置22は、自車の前部に取り付けられており、光軸を中心に車両前方に向けて所定の角度範囲に亘って広がる領域をレーダ信号により走査する。レーダ装置22は、車両前方に向けて電磁波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づき測距データを作成し、その作成した測距データを車両制御装置10に逐次出力する。測距データには、物体が存在する方位、物体までの距離及び相対速度に関する情報が含まれている。
車両制御装置10は、撮像装置21からの画像データ及びレーダ装置22からの測距データを入力するとともに、車両に設けられた各種センサやスイッチからの検出信号をそれぞれ入力する。各種センサ及びスイッチとしては、車速を検出する車速センサ23、自車の方向指示器(ウインカ)の操作位置が「右指示位置」、「左指示位置」及び「非作動位置」のいずれであるかを検知してその検知信号を出力するウインカセンサ24、追従制御モードの実行/非実行をドライバが選択するための入力スイッチであるACCスイッチ25等が設けられている。
ACCスイッチ25がオンされている場合、車両制御装置10は、先行車がいるときには自車を先行車に追従させるべく、ドライバによって設定される設定車速を上限車速として、自車と先行車との距離が一定になるように加減速制御を行う。具体的には、自車と先行車との車間距離が、ドライバによって設定された目標車間距離に近付くように目標加速度を設定し、その設定した目標加速度に基づき自車の加速度制御を行う。一方、先行車がいないときには、ドライバによる設定車速や道路の制限速度等となるように、自車の速度を一定に保つ制御を行う。なお、目標車間距離に替えて、目標車間距離を自車速で除算した値である目標車間時間を用いてもよい。
本システムにおける車両制御装置10は、先行車への追従走行中に自車のウインカが「非作動位置」から「右指示位置」又は「左指示位置」に操作された場合には、そのウインカ操作に連動させて、自車の車線変更が完了する前の段階から(例えば、自車の車線変更の開始前から)自車を所定時間(例えば、車線変更に要する時間に基づき定めた時間)加速させる。これにより、ドライバがウインカを操作して車線変更する場合に、早めに加速を開始して車線変更から先行車の追い越しまでの動作をスムーズに行うようにしている。なお、このときの加速は、ドライバによって設定された設定車速以下で行う。
ここで、自車が走行している車線に隣接する隣接車線内であって、自車の前方に車両が存在している状況では、自車のウインカの作動に連動させて自車を加速させても直ぐに減速させなければならないことがある。かかる場合、車両走行の快適性が損なわれることが懸念される。
具体的には、図2(a)に示すように、自車線51の1本隣の車線である隣接車線52を走行する隣接車が自車40の前方にいない状況では、自車の進路上には自車の加速の妨げとなる障害物が存在しないため、自車40のウインカオンに連動させて加速させることで、先行車41の追い越しがスムーズに行われる。これに対し、図2(b)に示すように、隣接車42が走行している状況では、ウインカオンに連動させて自車40を加速させると、車線変更によって、車線変更前の隣接車42に接近してしまうことがある。かかる場合、加速を行った直後に減速を行う必要が生じる。また、図2(c)に示すように、先行車への追従走行を行っていない状況でドライバがウインカをオンして車線変更をする場合にも同様のことが考えられる。
そこで、本実施形態では、自車40の前方で隣接車線52を走行する隣接車42に関する情報(以下「隣接車情報」という。)を取得し、車両走行中に自車40のウインカがオフからオンに切り替わった場合には、隣接車情報に基づいて、自車40のウインカ操作に連動した自車40の加速制御を行うこととしている。
具体的には、車両制御装置10は、図1に示すように、物標認識部11と、区画線認識部12と、先行車選択部13と、隣接車選択部14と、走行制御部15とを備えている。物標認識部11は、撮像装置21から取得した画像データと、レーダ装置22から取得した測距データとに基づいて、自車40の周囲に存在する物体を認識する。具体的には、測距データに基づいて物標の位置を検知し、画像データに基づいて物標の種類及びその物標の画像中の位置を認識する。また、測距データに基づく位置と画像データに基づく位置とが近接している場合に、それらは同一物体に属するものとして対応付け、データの結合(fusion)を行うことで物体の位置情報を取得する。また、画像物標に対して、予め定められたパターンを用いてパターンマッチングを行うことにより、撮像装置21が撮影した物体の種別、例えば車両、歩行者及び自転車のいずれかであるかを識別する。
区画線認識部12は、白線等の道路の区画線を認識する。具体的には、区画線認識部12は、撮像装置21から画像データを入力し、画像の水平方向における輝度変化率等に基づいて、画像データから区画線の候補とするエッジ点を抽出する。また、その抽出したエッジ点に対してハフ変換を行い、特徴点を繋げることにより区画線の形状を認識し、これを区画線情報として記憶する。
先行車選択部13は、物標認識部11からの物標情報及び区画線認識部12からの区画線情報を入力し、その入力した情報を用いて、自車40の進路上を走行する車両である先行車41を選択する。先行車41の選択は、例えば、区画線を認識できている場合には、自車40が走行する車線(自車線51)内を走行する前方車両を先行車とし、区画線を認識できていない場合には、前方車両の移動軌跡から先行車を特定する。また、先行車選択部13は、先行車に関する情報である先行車情報を演算する。先行車情報には、先行車の有無、先行車の物標番号、先行車の自車との相対距離、及び先行車の自車との相対速度等が含まれている。
隣接車選択部14は、自車40の前方に存在する他車の中から隣接車42を選択する。本実施形態では、自車40の進行方向に直交する方向における自車40との相対位置である横位置と、自車40の進行方向における自車40との相対距離とに基づいて、自車40の前方に存在する他車の中から隣接車42を選択する。
具体的には、隣接車選択部14は、物標認識部11から物標情報を入力し、自車40の前方に存在する車両の中から、相対距離が所定距離Lth以下であって、且つ、隣接車42と判定するための横位置範囲である隣接車選択範囲内にいる車両を隣接車候補として抽出する。また、抽出した隣接車候補の中から、レーダ装置22によって検出された自車40に対する相対距離が最小であって、且つ先行車でない車両を隣接車として選択する。なお、隣接車としては、自車の右側の車線を走行する右隣接車と、自車の左側の車線を走行する左隣接車とをそれぞれ選択する。
また、隣接車選択部14は隣接車情報を演算する。隣接車情報には、隣接車の有無、隣接車の物標番号、自車に対する隣接車の相対距離D、及び自車に対する隣接車の相対速度W等が含まれる。隣接車選択部14が「隣接車情報取得部」として機能する。
走行制御部15は、運転支援のための各種制御を実現するための制御指令値を演算し、その演算結果を車両駆動部30に出力する。車両駆動部30は、車両の走行駆動及び制動を行うための手段であり、例えばエンジンの燃料噴射弁や点火装置、スロットルバルブ、ブレーキ装置等で構成されている。運転支援のための各種制御としては、例えばACC機能による先行車への追従制御や、自車の車線変更時にドライバに警告を発したり車線変更を制限したりするLCS(Lane Change Support)機能による走行制御、先行車との車間距離が縮まった場合にブレーキ等を作動させて衝突を回避したり衝突被害を軽減したりする衝突回避制御等を実行する。
以下、走行制御部15で実行されるウインカ連動制御について更に詳しく説明する。ウインカ連動制御では、自車40のウインカがオフからオンに切り替わったことに伴い、ウインカ操作時の先行車の有無、隣接車の有無及び自車に対する隣接車の相対速度に応じて、ウインカ作動後の自車40の加速状態を制御する。なお、走行制御部15が「加速制御部」として機能する。
図3は、先行車の有無、隣接車の有無及び自車に対する隣接車の相対速度と、自車ウインカオン時の自車挙動との対応関係を表すテーブルである。「先行車あり」かつ「隣接車なし」の場合(シーン1)、及び「先行車あり」かつ「隣接車あり」でも隣接車の速度が自車より速い場合(シーン2)には、ウインカ操作後速やかに自車40を加速させる。なお、自車が加速中である場合にはその加速を維持する。車線変更後、自車40よりも速度が速い隣接車に追従するようなシーンでは、ウインカ操作に連動させて自車40を加速させても、その後直ちに減速を行うことにはならないからである。また、自車40を加速させることで、車線変更前の隣接車が次の先行車に切り替わった場合に、その先行車に対する追従走行をスムーズに行うことが可能となる。
これに対し、「先行車あり」かつ「隣接車あり」であって、隣接車42の速度が自車40より遅い状況(シーン3)では、自車40のウインカ操作に連動させて自車40を加速させると、車線変更後に直ぐに自車40を減速させることが生じ得る。したがって、こうしたシーンでは、自車40のウインカがオフからオンに切り替わった場合でも、ウインカ操作に連動した自車40の加速を行わないようにする。また併せて、自車40が加速中の場合には、自車40の加速を抑制する。具体的には、ウインカ操作前に自車40が加速中の場合には、加速度を正の値からゼロにする。ウインカ操作前に自車40が定速走行中の場合には、その定速走行中の車速を維持し、自車40が減速中の場合には、その減速の状態を維持する。
なお、本明細書では、自車40が前方に向けて加速する場合の加速度を「正」とし、減速する場合の加速度を「負」として表す。また、自車40に対する他車の相対速度は、他車の速度が自車40よりも速い場合を「正」とし、他車の速度が自車40よりも遅い場合を「負」として表す。
「先行車なし」の場合には、自車40のウインカ操作に連動した自車40の加速は行わない。ただし、自車40が車線変更する方向の自車前方に隣接車42が存在している場合には、その隣接車42の自車40との相対速度Wに応じて自車40の加速状態を制御する。具体的には、隣接車42が自車40よりも速い場合(シーン4)には、自車40がウインカオンする前の走行状態を維持する。したがって、ウインカ操作前に自車40が定速走行中の場合にはその定速走行中の車速を維持し、自車40が加速中の場合には、そのときの加速度を維持する。また、自車40が減速中の場合には、そのときの減速度を維持する。
これに対し、自車40のウインカ作動時に隣接車42が自車40よりも遅い場合(シーン5)には、自車40のウインカ操作に連動した自車40の加速を行わないとともに、自車40が加速中の場合には自車40の加速を抑制する。したがって、ウインカ操作前に自車40が定速走行中の場合にはその定速走行中の車速を維持し、自車40が減速中の場合にはそのときの減速度を維持する。また、ウインカ操作前に自車40が加速中の場合には、加速度を正の値からゼロに変更する。これにより、自車40の加速を抑制する。
ただし、図3のシーン3やシーン5の場合でも、自車40に対する隣接車42の相対距離Dによっては、自車40のウインカ操作に連動した加速抑制を行う必要がない場合や、あるいは行わない方が好ましい場合がある。具体的には、図4において、隣接車42が遠方に存在している場合には、ウインカ操作前の自車40の加速を維持したままにしても、車線変更後の隣接車42との車間距離を十分に保つことが可能である。また、隣接車42が自車40から近い距離にいる場合には、自車40の加速を抑制しても、隣接車42の後方の至近距離に割り込むことになる場合がある。
こうした点に鑑み、本実施形態では、自車40の加速中に自車40のウインカが作動された場合、該作動時において自車40の前方に隣接車42が存在しており、かつ隣接車42が自車40より遅い場合には、自車40に対する隣接車42の相対距離Dに応じて、自車40の加速を抑制することとしている。具体的には、相対距離Dが、距離下限値DLよりも大きく、かつ距離上限値DHよりも小さい範囲(以下、「加速抑制範囲」という。)内である場合に、自車40が加速中であるときの加速抑制を行う。一方、相対距離Dが距離下限値DL以下である場合、及び相対距離Dが距離上限値DH以上である場合には、自車40が加速中であるときにはその加速の状態を維持する。
距離下限値DL及び距離上限値DHについて、本実施形態では、自車40に対する隣接車42の相対速度Wに応じて設定することとしている。具体的には、図5(a)に示すように、相対速度Wが低速であるほど、距離下限値DLが小さい値になるように設定される。距離上限値DHについては、図5(b)に示すように、相対速度Wが低速であるほど、距離上限値DHが小さい値になるように設定される。また、相対速度Wが低速であるほど、加速抑制範囲が広くなるように距離上限値DH及び距離下限値DLが設定される。
次に、本実施形態のウインカ連動制御の処理手順について、図6〜図8のフローチャートを用いて説明する。図6のウインカ連動制御は、自車40の走行中にウインカがオフからオンに切り替わったことの検出信号を入力したことに伴い、車両制御装置10が実行する。
図6において、ステップS11では、ウインカ連動制御を行うための前提条件が成立しているか否かを判定する。前提条件について本実施形態では、車速センサ23で検出された自車40の車速が閾値Vth以上(例えば70〜80km/h以上)であること、及びLCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が許可されていることを含む。
ここで、LCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が許可されていることは、LCS許可フラグが、車線変更を許可しないことを表す「オフ」か、車線変更を許可することを表す「オン」かによって判定する。このLCS許可フラグは、自車40の前方及び後方を含む周囲の環境に基づき設定される。具体的には、自車40の隣接車線52において自車40の前方、側方又は後方に自車40と衝突可能性がある障害物が存在していると認識されていること、自車40の後続車の接近速度が所定速度以上であること、及び画像によって区画線を認識できなくなったこと、等を含む所定のレーンチェンジ禁止条件のうちの少なくともいずれかが成立している場合には、LCS許可フラグをオフにし、自車線51から隣接車線52への車線変更を禁止する。一方、レーンチェンジ禁止条件がいずれも成立していない場合には、LCS許可フラグをオンにし、自車線51から隣接車線52への車線変更を許可する。なお、この場合、走行制御部15が「車線変更判定部」として機能する。
ステップS11で前提条件が成立していると判定されると、ステップS12へ進み、自車40が追従走行している先行車41が存在しているか否かを判定する。先行車41が存在していると判定された場合には、ステップS13へ進み、第1連動制御を実行する。一方、先行車41が存在していないと判定された場合、つまり設定車速で定常走行しているか、又は設定車速に向けての加速又は減速を行っている状況であると判定された場合には、ステップS14へ進み、第2連動制御を実行する。
次に、第1連動制御の処理手順について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7において、ステップS21では、自車40がウインカを出した方向において自車40の前方に隣接車42が存在しているか否かを判定する。隣接車42が存在していない場合にはステップS21で否定判定されてステップS25へ進み、自車40を加速させる。自車40の加速は、例えば目標車間距離又は目標車間時間を一時的に短縮することにより行う。なお、ウインカ作動時に加速中の場合には、そのときの加速度を維持する。
自車40がウインカを出した方向において自車40の前方に隣接車42が存在している場合には、ステップS21で肯定判定され、ステップS22へ進み、その隣接車42の自車40に対する相対速度Wが負であるか否かを判定する。相対速度Wが正の場合にはステップS25へ進み、自車40の加速を開始させる。
相対速度Wが負の場合にはステップS23へ進み、ウインカをオンする前の自車40が加速中であったか否かを判定する。自車40が加速中でない、つまりウインカをオンする前の自車40が定常走行中又は減速中の場合には、ステップS26へ進み、ウインカをオンする前の自車40の走行状態を維持する。つまり、定常走行中の場合には目標加速度をゼロのままにして定速走行を継続し、減速中の場合には目標加速度を負のままにして減速を維持する。この場合、ウインカオンに連動した自車40の加速は行われない。
一方、ウインカをオンする前の自車40が加速中であった場合には、ステップS24へ進み、自車40に対する隣接車42の相対速度Wに基づいて、加速抑制範囲の距離下限値DL及び距離上限値DHをそれぞれ設定する。本実施形態では、図5に示すテーブルが予め記憶部に記憶されており、走行制御部15は、相対速度Wに応じた距離下限値DL及び距離上限値DHを読み出す。また、自車40に対する隣接車42の相対距離Dが加速抑制範囲内か否かを判定する。相対距離Dが加速抑制範囲よりも近い距離か又は遠い距離の場合には、ステップS26へ進む。この場合には、ウインカをオンする前の自車40の加速度がそのまま維持される。一方、相対距離Dが加速抑制範囲内である場合には、ステップS27へ進み、自車40の目標加速度がゼロに設定される。これにより自車40の加速が抑制される。
次に、第2連動制御の処理手順について、図8のフローチャートを用いて説明する。図8において、ステップS31では、自車40がウインカを出した方向の自車40の前方に隣接車42が存在しているか否かを判定する。隣接車42が存在していることを条件にステップS32へ進み、自車40に対する隣接車42の相対速度Wが負であるか否かを判定する。相対速度Wが正の場合には、ステップS36へ進み、ウインカをオンする前の自車40の走行状態を維持する。
一方、相対速度Wが負の場合にはステップS33へ進み、ウインカをオンする前の自車40が加速中であったか否かを判定する。自車40が加速中でない、つまり自車40が定常走行中又は減速中の場合には、ステップS36へ進み、ウインカをオンする前の自車40の走行状態を維持する。
ウインカをオンする前の自車40が加速中であった場合には、ステップS33で肯定判定されてステップS34へ進み、相対速度Wに基づいて加速抑制範囲の距離下限値DL及び距離上限値DHをそれぞれ設定するとともに、相対距離Dが加速抑制範囲内か否かを判定する。相対距離Dが加速抑制範囲よりも近い距離か又は遠い距離の場合には、ステップS36へ進む。この場合には、ウインカをオンする前の自車40の加速度がそのまま維持される。一方、相対距離Dが加速抑制範囲内である場合には、ステップS35へ進み、自車40の目標加速度がゼロに設定される。これにより自車40の加速が抑制される。
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
自車40の前方での隣接車42の有無や、隣接車42の走行状態によっては、自車40のウインカの作動に伴い自車40を加速させると、加速後に直ぐに自車を減速させる必要が生じることがある。こうした点に鑑み、自車40のウインカが作動された場合には、自車40の前方の隣接車情報に基づいて自車40の加速制御を行う構成とした。この構成によれば、隣接車42の状況に応じて、車線変更時の自車40の加速を制御することができ、加速後直ぐに減速する等の不自然な挙動が発生することを抑制することができる。その結果、ドライバの感覚に合った車両挙動とすることができる。
先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動され、その作動時において自車40の前方に隣接車42が存在していない場合には、ウインカ作動に連動した自車40の加速を実施する一方、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動され、その作動時において自車40の前方に隣接車42が存在している場合には、ウインカ作動に連動した自車40の加速を実施しない構成とした。こうした構成によれば、車線変更後、速い隣接車42に追従するようなシーンでは、自車40を加速させることでスムーズなレーンチェンジを実現可能にすることができる。また、車線変更後、遅い隣接車42の存在によって自車40の減速につながるようなシーンでは、自車40を加速させないことで、加速後直ぐに減速する、といった不自然な挙動が発生することを抑制することができる。
先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動され、その作動時において自車40の前方に隣接車42が存在している場合でも、隣接車42が自車40よりも速い場合には、ウインカ作動に連動した自車40の加速を実施する構成とした。この構成によれば、車線変更後、速い隣接車42に追従するようなシーンでは、自車40を加速させることで、スムーズなレーンチェンジを実現できるとともに、次の先行車41への追従走行をスムーズに開始することができる。
自車40の加速中に自車40のウインカが作動された場合、その作動時に自車40の前方に隣接車42が存在しており、かつ隣接車42が自車40より遅い場合には、自車40の加速を抑制する構成とした。加速を維持したまま車線変更すると、車線変更後に自車40を減速させる必要が生じることがある。この点を考慮し、上記構成とすることにより、車線変更後に直ぐに減速させるようなシーンが発生することを抑制することができる。
自車40より速度が遅い隣接車42が自車40の前方に存在している場合でも、その隣接車42が遠方に存在している場合には自車40の加速を抑制してもしなくても変わらない。また、隣接車42が自車40から近すぎる位置にいる場合には、自車40の加速を抑制しても、隣接車42の後方に割り込むような状況となり、安全に車線変更できない場合がある。これらの点に鑑み、自車40に対する隣接車42の相対距離Dに応じて、自車40が加速中である場合に加速の抑制を実施するかしないかを決定する構成とした。こうした構成とすることにより、自車40の加速の機会を必要以上に低減しないようにすることができる。
先行車41がいないときに自車40のウインカが作動された場合、その作動時に自車40の前方に隣接車42が存在しており、かつ隣接車42が自車40より速いシーンでは、自車40のウインカが作動される前の加速状態(加速、減速、加速ゼロ)を維持する構成とした。隣接車42の車速が自車40より速ければ、車線変更後、直ぐに減速につながるような状況は起こりにくい。したがって、上記構成とすることにより、不自然な自車挙動によってドライバに違和感を与えないようにすることができる。
ウインカ連動制御を行うための前提条件として、LCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が許可されていることを含む構成とすることにより、LCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が可能と判定されている場合に、先行車41への追従走行中のウインカ操作に連動した自車40の加速を行い、LCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が不可と判定されている場合には、先行車41への追従走行中のウインカ操作に連動した自車40の加速を行わない構成とした。LCS機能によって隣接車線52への車線変更が制限されている状況で自車40の加速を行っても、加速後直ぐにその加速をやめたり減速したりする必要が生じることがある。したがって、LCS機能との協調制御を行い、隣接車線52への車線変更が制限されている状況では、ウインカが作動された場合でもそもそも加速させない構成とすることにより、無駄な加速の動作を行わないようにすることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動された場合に、隣接車情報に基づいて自車40の加速制御を行う構成とした。これに対し、本実施形態では、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動された場合に、自車線51から隣接車線52への車線変更の可否の判定結果に基づいて自車40の加速制御を行う。
すなわち、自車線51から隣接車線52への車線変更が不可と判定されている状況で、自車40のウインカの作動に伴い自車40を加速させると、加速後に直ぐにその加速をやめたり、あるいは自車40を減速させたりする場合がある。かかる場合、自車40の加速状態が短時間に変化する不自然な挙動によって、ドライバに不快感を与えてしまうことが懸念される。
そこで本実施形態では、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動された場合、自車線51から隣接車線52への車線変更が可能なときには、自車40のウインカの作動に伴い自車40の加速を開始させる一方、自車線51から隣接車線52への車線変更が不可のときには、自車40のウインカの作動に伴い自車40の加速を開始させないようにする。これにより、ドライバの感覚に合った車両挙動とするようにしている。
図9は、本実施形態のウインカ連動制御の処理手順を示すフローチャートである。図9のウインカ連動制御は、自車40の走行中にウインカがオフからオンに切り替わったことの検出信号を入力したことに伴い、車両制御装置10が実行する。
図9において、ステップS41では、LCS機能によって自車線51から隣接車線52への車線変更が許可されているか否かを判定する。ここでは、LCS許可フラグを入力し、LCS許可フラグがオンであるか否かを判定する。LCS許可フラグがオンである場合には、ステップS42へ進み、先行車41への追従走行中のウインカ作動に連動した自車40の加速を実施する。つまり、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動された場合には、そのウインカ作動に連動させ、車線変更の開始前の時点で自車40の加速を開始させる。一方、LCS許可フラグがオフである場合には、ステップS43へ進み、先行車41への追従走行中のウインカ作動に連動した自車40の加速を禁止する。この場合、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動されても自車40の加速を開始させない。そして本処理を終了する。
(他の実施形態)
本発明は上記の実施形態に限定されず、例えば以下のように実施されてもよい。
・上記第1実施形態では、先行車41への追従走行中に自車40のウインカがオンされた場合、隣接車42の自車40に対する相対速度Wが正である場合に、自車40を加速させる構成としたが、相対速度Wが、正側の速度判定値よりも大きい場合に、自車40を加速させる構成としてもよい。具体的には、図7のステップS22で否定判定された場合には、相対速度Wが正側の速度判定値(例えば数km/h〜数十km/h)よりも大きいか否かを判定し、肯定判定されたことを条件にステップS25の処理を実行する。
・上記第1実施形態では、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動された場合に自車40が加速中であるときには、目標加速度をそのまま保持し、ウインカ作動前の加速を維持したままにする構成としたが、先行車41への追従走行中に自車40のウインカが作動されたことに伴い目標加速度を大きくなる側に変更し、自車40を更に加速させる構成としてもよい。
・上記第1実施形態では、先行車41に追従走行しているときには第1連動制御を実行し、先行車41に追従走行していないときには第2連動制御を実行する構成としたが、いずれか一方のみを実行するシステムとしてもよい。
・上記第1実施形態では、隣接車情報のうち、隣接車42の有無及び自車40に対する隣接車42の相対速度Wに関する情報を用いて、自車40のウインカ作動に連動した自車40の加速制御を行う構成としたが、隣接車42の有無に関する情報のみを用いて、当該加速制御を行う構成としてもよい。つまり、隣接車ありと判定された場合には、隣接車42の自車40に対する相対速度Wに関わらず、ウインカ作動に連動した自車40の加速を行わない構成としてもよい。
・上記第1実施形態では、前提条件として、自車速が閾値Vth以上であること、及びLCS機能によって自車線から隣接車線への車線変更が許可されていることを含む構成としたが、これらの一方を含まない構成としてもよい。また、上記以外のその他の条件を更に含んでいてもよい。
・上記実施形態では、自車に対する右車線及び左車線に隣接車を選択したが、左右のいずれか一方のみを隣接車の選択対象としてもよい。例えば、左側からの追い越しが法定で禁止されている場合には、自車に対して右車線のみを隣接車の選択対象としてもよい。
・上記実施形態では、測距装置としてレーダ装置22を搭載するシステムについて説明したが、これに限らず、例えばロケータやライダ等の任意の測距装置を用いることが可能である。また、レーダ装置22を設けず、撮像装置21に測距装置としての機能を持たせてもよい。この場合、撮像装置21はステレオカメラ等の複眼カメラとするとよい。
・上記の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散して実現したり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素で実現したりしてもよい。