JP2016199467A - フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上
であるガラスからなる、p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板である。以下、本発明のガラス基板と記載する場合、本発明の第1の態様のガラス基板を意味する)。
[2]
前記ガラスは、Sb2O3を実質的に含有しない[1]に記載のガラス基板。
[3]
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜13質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
を含有し、Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8.9〜20の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは7.5以上
であるガラスからなる、p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板の一例である。)。
[4]
SiO2含有量が58〜72質量%であり、Al2O3含有量が10〜23質量%であり、B2O3含有量が3〜11質量%未満である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[5]
前記ガラスは、SiO2及びAl2O3の合計含有量が75質量%以上であり、
RO、ZnO及びB2O3の合計含有量が7〜20質量%未満であり、かつ
B2O3の含有量が3〜11質量%未満である[1]〜[4]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[6]
前記ガラスは歪点が688℃以上である[1]〜[5]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[7]
前記ガラスはR2O(但し、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oの合量)の含有量が0.01〜0.8質量%である[1]〜[6]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[8]
前記ガラスはβ-OH値が0.05〜0.4mm-1である[1]〜[7]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[9]
前記ガラスはZrO2の含有量が0.2質量%未満である[1]〜[8]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[10]
前記ガラスはSrO及びBaOの合計含有量が0〜2質量%未満である[1]〜[9]のいずれか1項に記載のガラス基板。
[11]
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜13質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%を含有し、
Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第2の態様のガラス基板)。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理前後でのガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
[12]
熱収縮率が60ppm以下である[11]に記載のガラス基板。
[13]
前記熱収縮率は、ガラス基板をTgで30分保持した後、Tg-100℃まで100℃/minで冷却し、室温まで放冷する徐冷操作を行った後に前記熱処理を施して得た値である、[11]又は[12]に記載のガラス基板。
[14]
SiO2 57〜75質量%、
Al2O3 8〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO及びBaOの合量 0〜3質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、
かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第3の態様のガラス基板)
[15]
SiO2 57〜75質量%、
Al2O3 8〜25質量%、
B2O3 3〜10質量%未満、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO及びBaOの合量 0〜3質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
を含有し、
Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第3の態様の一例のガラス基板)。
[16]
TFT液晶ディスプレイ用である[1]〜[15]のいずれかに記載のガラス基板。
[17]
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上であるガラスからなる、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
本発明のp−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板)は、
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上
であるガラスからなる基板である。また、本発明の第1の態様のガラス基板の一例としては、SiO2 52〜78質量%、Al2O3 3〜25質量%、B2O3 3〜15質量%、RO 3〜13質量%、Fe2O3 0.01〜1質量%を含有し、Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスであって、質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8.9〜20の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは7.5以上であるガラスからなるガラス基板を挙げることができる。以下に、本発明の第1の態様のガラス基板における各ガラス成分を含有する理由及び含有量や組成比の範囲について説明する。
SiO2は、ガラスの骨格成分であり、従って、必須成分である。含有量が少なくなると、耐酸性、耐BHF(バッファードフッ酸)および歪点が低下する傾向がある。また、SiO2含有量が少なくなると、熱膨張係数が増加する傾向がある。また、SiO2含有量が少なすぎると、ガラス基板を低密度化するのが難しくなる。一方、SiO2含有量が多すぎると、ガラス融液の比抵抗が上昇し、熔融温度が著しく高くなり熔解が困難になる傾向がある。SiO2含有量が多すぎると、耐失透性が低下する傾向もある。このような観点から、SiO2の含有量は、52〜78質量%の範囲とする。SiO2の含有量は、好ましくは57〜75 質量%、より好ましくは58〜72質量%、さらに好ましくは59〜70質量%、一層好ましくは59〜69質量%、より一層好ましくは61〜69質量%、さらに一層好ましくは61〜68質量%、尚一層好ましくは62〜67質量%の範囲である。他方、SiO2含有量が多すぎると、ガラスのエッチングレートが遅くなる傾向がある。ガラス板をスリミングする場合の速度を示すエッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、SiO2の含有量は、好ましくは53〜75 質量%、より好ましくは55〜70質量%、さらに好ましくは55〜65質量%、一層好ましくは58〜63質量%の範囲である。尚、SiO2含有量は、上記耐酸性等の特性とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
Al2O3は、分相を抑制し、歪点を高くする必須成分である。含有量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。また、歪点が低下する。さらに、ヤング率及びエッチングレートも低下する傾向がある。
Al2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する傾向がある。このような観点から、Al2O3の含有量は 3〜25質量%の範囲である。Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは12〜21質量%、一層好ましくは12〜20質量%または14〜21質量%、より一層好ましくは14〜20質量%、尚一層好ましくは15〜19質量%の範囲である。他方、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは14〜23質量%、一層好ましくは17〜22質量%である。尚、Al2O3の含有量は、上記ガラスが分相特性等とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
B2O3は、ガラスの熔融温度に代表される高温粘性域における温度を低下させ、清澄性を改善する必須成分である。B2O3含有量が少なすぎると、熔解性、耐失透性及び耐BHFが低下する傾向にある。また、B2O3含有量が少なすぎると、比重が増加して低密度化が図りがたくなる。他方、B2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、B2O3含有量が多すぎると、歪点が低下し、耐熱性が低下する。また、耐酸性及びヤング率が低下する傾向にある。また、ガラス熔解時のB2O3の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは3〜12質量%、好ましくは3〜11質量%未満、より好ましくは3〜10質量%未満、さらに好ましくは4〜9質量%、一層好ましくは5〜9質量%、尚一層好ましくは7〜9質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは5〜15質量%、よりましくは6〜13質量%、さらにましくは7〜11質量%未満である。尚、B2O3含有量は、上記熔解性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
ROは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる必須成分である。RO含有量が少なすぎると、比抵抗が上昇し、熔解性が悪化する。RO含有量が多すぎると、歪点及びヤング率が低下する。さらに、密度が上昇する。また、RO含有量が多すぎると、熱膨張係数が増大する傾向もある。このような観点から、ROは、3〜25質量%の範囲であり、好ましくは3〜14質量%の範囲、より好ましくは3〜13質量%の範囲であり、さらに好ましくは6〜13質量%、一層好ましくは6〜12質量%、より一層好ましくは7〜12質量%、さらに一層好ましくは8〜11質量%の範囲である。
Fe2O3は、清澄剤としての働きを有する以外に、ガラス融液の比抵抗を低下させる必須成分である。熔融温度(高温粘性域における温度)が高く、難熔なガラスにおいては、上記所定量のFe2O3を含有させることで、ガラス融液の比抵抗を低下させることができ、直接通電加熱による熔解において熔解槽熔損の問題の発生を回避しつつガラスの熔解が可能になる。しかし、Fe2O3含有量が多くなりすぎると、ガラスが着色し、透過率が低下する。そこで、Fe2O3含有量は、0.01〜1質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.4質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%、一層好ましくは0.01〜0.2質量%、より一層好ましくは0.01〜0.1質量%、さらに一層好ましくは0.02〜0.07質量%の範囲である。
CaO含有量が多すぎると、歪点が低下する傾向にある。また、熱膨張係数が増加する傾向があり、さらに密度が上昇する傾向がある。CaO含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは1〜15質量%、一層好ましくは2〜15質量%、より一層好ましくは3.6〜15質量%、さらに一層好ましくは4〜14質量%、尚一層好ましくは5〜12質量%、さらに一層好ましくは5〜10質量%、さらに一層好ましくは6超〜10質量%、最も好ましくは6超〜9質量%の範囲である。
しかし、R2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出してTFT特性を劣化させるおそれがある。また、熱膨張係数が増大する傾向がある。
R2Oの合量であるLi2O+Na2O+K2Oは、好ましくは0〜0.8質量%、より好ましくは0〜0.5質量%、より好ましくは0〜0.4質量%、さらに好ましくは0〜0.3質量%、一層好ましくは0.01〜0.8質量%、一層好ましくは0.01〜0.3質量%、より一層好ましくは0.1〜0.3質量%の範囲である。
また、ガラスの比抵抗を確実に低下させたい場合、R2Oは、好ましくは0.1〜0.8質量%、より好ましくは0.1〜0.6質量%、より好ましくは0.2超〜0.6質量%、さらに好ましくは0.2超〜0.5質量%の範囲である。
K2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出してTFT特性を劣化させる傾向がある。また、熱膨張係数も増大する傾向がある。K2O含有量は、好ましくは0〜0.8質量%、より好ましくは0〜0.5質量%、さらに好ましくは0〜0.3質量%、一層好ましくは0.1〜0.3質量%の範囲である。
Li2O及びNa2Oの割合が大きいと、ガラス基板から溶出してTFT特性を劣化させる傾向が強くなる。質量比K2O/R2Oは、好ましくは0.5〜1であり、より好ましくは0.6〜1であり、さらに好ましくは0.7〜1、一層好ましくは0.75〜1、さらに一層好ましくは0.8〜1、より一層好ましくは0.9〜1、より一層好ましくは0.95〜1、より一層好ましくは0.99〜1の範囲である。
ZnO含有量が多くなりすぎると、失透温度及び密度が上昇する傾向がある。また、歪点が低下する傾向がある。そのため、ZnO含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜2質量%、一層好ましくは0〜1質量%の範囲である。ZnOは実質的に含有しないことが好ましい。
エッチングレート(μm/h)は、ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬した場合の、単位時間(1時間)当たりのガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)として表す。
β-OH値=(1/X)log 10(T1/T2)
X : ガラス肉厚(mm)
T1 : 参照波長2600nm における透過率(%)
T2 : 水酸基吸収波長2800nm付近における最小透過率(%)
低収縮率と熔解性を両立するために、本発明の第1の態様のガラス基板を構成するガラスのβ-OH値は、0.05〜0.40mm-1とすることが好ましく、0.10〜0.35mm-1がより好ましく、0.10〜0.30mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.25mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.20mm-1が一層好ましく、0.10〜0.15mm-1がより一層好ましい。
熱収縮率(ppm)={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
SiO2 57〜75質量%、
Al2O3 8〜25質量%、
B2O3 3〜10質量%未満、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO及びBaOの合量 0〜30質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
を含有し、
Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなる、p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を挙げることができる。
SiO2は、ガラスの骨格成分であり、従って、必須成分である。含有量が少なくなると、耐酸性、耐BHF(バッファードフッ酸)及び歪点が低下する傾向がある。また、熱膨張係数が増加する傾向がある。また、SiO2含有量が少なすぎると、ガラス基板を低密度化するのが難しくなる。一方、SiO2含有量が多すぎると、ガラス融液の比抵抗が上昇し、熔融温度が著しく高くなり熔解が困難になる傾向がある。SiO2含有量が多すぎると、耐失透性が低下する傾向もある。このような観点から、SiO2の含有量は、57〜75質量%の範囲とする。SiO2の含有量は、好ましくは58〜72質量%、より好ましくは59〜70質量%、さらに好ましくは61〜69質量%、一層好ましくは62〜67質量%の範囲である。他方、SiO2含有量が多すぎると、ガラスのエッチングレートが遅くなる傾向がある。ガラス板をスリミングする場合の速度を示すエッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、SiO2の含有量は、好ましくは57〜75 質量%、より好ましくは57〜70質量%、さらに好ましくは57〜65質量%、一層好ましくは58〜63質量%の範囲である。尚、SiO2含有量は、上記耐酸性等の特性とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
Al2O3は、分相を抑制し、かつ、歪点を高くする必須成分である。含有量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。また、歪点が低下する傾向にある。さらに、ヤング率及びエッチングレートも低下する傾向がある。Al2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する傾向がある。このような観点から、Al2O3の含有量は 8〜25質量%の範囲である。Al2O3の含有量は、好ましくは10〜23質量%、より好ましくは12〜21質量%、さらに好ましくは12〜20質量%、一層好ましくは14〜20質量%、より一層好ましくは15〜19質量%の範囲である。他方、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、Al2O3の含有量は、好ましくは10〜23質量%、より好ましくは12〜23質量%、さらに好ましくは14〜23質量%、一層好ましくは17〜22質量%である。尚、Al2O3の含有量は、上記ガラスが分相特性等とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
B2O3は、ガラスの粘性を低下させ、熔解性および清澄性を改善する必須成分である。B2O3含有量が少なすぎると、熔解性及び耐失透性が低下すると共に、耐BHFが低下する。また、B2O3含有量が少なすぎると、比重が増加して低密度化が図りがたくなる。B2O3含有量が多すぎると、ガラス融液の比抵抗が上昇する。また、B2O3含有量が多すぎると、歪点が低下し、耐熱性が低下する。さらに、耐酸性及びヤング率が低下する。また、ガラス熔解時のB2O3の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは3〜10質量%未満、より好ましくは4〜9質量%、さらに好ましくは5〜9質量%、一層好ましくは7〜9質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、B2O3含有量は、好ましくは5〜15質量%、よりましくは6〜13質量%、さらにましくは7〜11質量%未満である。尚、B2O3含有量は、上記熔解性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
一方、CaO含有量が多すぎると、歪点が低下する傾向がある。また、熱膨張係数増加及び密度上昇の傾向がある。CaO含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは1〜15質量%、一層好ましくは3.6〜15質量%、より一層好ましくは4〜14質量%、尚一層好ましくは5〜12質量%、さらに一層好ましくは5〜10質量%、さらに一層好ましくは6超〜10質量%、最も好ましくは6超〜9質量%の範囲である。
Fe2O3は、清澄剤としての働きを有する以外に、ガラス融液の比抵抗を低下させる必須成分である。熔融温度(高温粘性)が高く、難熔なガラスにおいては、上記所定量のFe2O3を含有させることで、ガラス融液の比抵抗を低下させることができ、直接通電加熱による熔解において熔解槽熔損の問題の発生を回避しつつガラスの熔解が可能になる。しかし、Fe2O3含有量が多くなりすぎると、ガラスが着色し、透過率が低下する。そこで、Fe2O3含有量は、0.01〜1質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.4質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%、一層好ましくは0.01〜0.2質量%、より一層好ましくは0.01〜0.1質量%、さらに一層好ましくは0.02〜0.07質量%の範囲である。
本発明のp−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板)の製造方法は、
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上のガラスとなるように調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解して熔融ガラスを得る熔解工程と、
前記熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する徐冷工程と、を有する。
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜13質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
を含有し、Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8.9〜20の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは7.5以上のガラスとなるように調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解して熔融ガラスを得る熔解工程と、前記熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する徐冷工程と、を有するガラス基板の製造方法を包含する。
熔解工程においては、所定のガラス組成となるように調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する。ガラス原料は、公知の材料から適宜選択できる。ガラス融液の1550℃における比抵抗が、50〜300Ω・cmの範囲となるように、ガラス組成、特に、Fe2O3の含有量を調整することが好ましい。ROの含有量を3〜15質量%、Fe2O3の含有量を0.01〜1質量%の範囲とすることで、1550℃における比抵抗を上記範囲内とすることができる。
また、ガラス基板のβ-OHの値が0.05〜0.4mm-1となるように、熔解工程を調整することが好ましい。尚、本発明の第2の態様のガラス基板の製造においては、ROを3〜13質量%の範囲で調整できる。
成形工程では、熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する。平板状ガラスへの成形方法は、例えば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法が好適である。その他、フロート法、リドロー法、ロールアウト法などを適用できる。ダウンドロー法を採用することにより、フロート法など他の成形方法を用いた場合に比べ、得られたガラス基板の主表面が熱間成形された表面であるために、極めて高い平滑性を有しており、成形後のガラス基板表面の研磨工程が不要となるために、製造コストを低減することができ、さらに生産性も向上させることができる。さらに、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板の両主表面は均一な組成を有しているために、エッチング処理を行った際に、均一にエッチングを行うことができる。加えて、ダウンドロー法を使用して成形することで、マイクロクラックのない表面状態を有するガラス基板を得ることができるため、ガラス基板自体の強度も向上させることができる。
徐冷時の条件を適宜調整することでガラス基板の熱収縮率をコントロールすることができる。ガラス基板の熱収縮率は上述のように、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下であることが好ましく、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下のガラス基板を製造するためには、例えば、ダウンドロー法を使用する場合は、平板状ガラスの温度を、TgからTg-100℃の温度範囲を20〜120秒で冷却するように、成形を行うことが望ましい。20秒未満であると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、120秒を超えると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。あるいは、平板状ガラスの平均の冷却速度を、TgからTg-100℃の温度範囲において、50〜300℃/分とするように徐冷(冷却)を行うことが好ましい。冷却速度が、300℃/分を超えると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、50℃/分未満であると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。冷却速度の好ましい範囲は、50〜300℃/分であり、50〜200℃/分がより好ましく、60〜120℃/分がさらに好ましい。他方、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)工程を別途設けることで、熱収縮率を小さくすることもできる。しかし、徐冷工程とは別にオフラインアニール工程を設けると、生産性が低下し、コストが高騰してしまうという問題点がある。そのため、上述したように、徐冷工程において平板状ガラスの冷却速度を制御するという熱収縮低減処理(オンラインアニール)を施すことによって、熱収縮率を所定範囲内におさめることがより好ましい。
表1に示すガラス組成になるように、実施例1〜34および比較例1〜2の試料ガラスを以下の手順に従って作製した。得られた試料ガラスおよび試料ガラス基板について、失透温度、Tg、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数(α)、熱収縮率、密度、歪点、熔解温度(粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度、表1中ではT(log(η=2.5)と表示)、液相粘度、1550℃における比抵抗、エッチング速度を求め、表1に示す。
まず、表1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料である、シリカ,アルミナ,酸化ホウ素,炭酸カリウム,塩基性炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸ストロンチウム,二酸化スズおよび三酸化二鉄を用いて、ガラス原料バッチ(以下バッチと呼ぶ)を調合した。なお、ガラスで400gとなる量で調合した。
前記試料ガラスを、3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工して、試験片とした。この試験片に対して、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定を行い、ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、計算により歪点を求めた。
熱収縮率は、前記熱収縮測定用試料ガラス基板を550℃で2時間の熱処理が施された後のガラス基板の収縮量を用いて、以下の式にて求めた。
熱収縮率(ppm)
={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
本実施例では、具体的に、以下の方法によって収縮量の測定を行った。
前記試料ガラスの熔融時の比抵抗は、HP社製 4192A LF インピーダンス・アナライザーを用いて、四端子法にて測定し、前記測定結果より1550℃での比抵抗値を算出した。
前記試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得た。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れた。この白金ボートを、1080〜1320℃(あるいは1140℃〜1380℃)の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察した。失透が観察された最高温度を、失透温度とした。
前記試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とした。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量を測定した。この時の昇温速度は5℃/minとした。前記温度と試験片の伸縮量との測定結果を元に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数およびTgを得た。なお、本願でのTgとは、ガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却した試料ガラスについて測定した値である。
ガラスの密度は、アルキメデス法によって測定した。
前記試料ガラスの高温粘性は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定した。前記測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度を算出し、熔融温度を得た。
前記高温粘性の測定結果より、前記失透温度での粘性を算出し、液相粘度を得た。表1には、10ndPa・sで示される液相粘度の指数部分nのみを表示する。
ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬し、ガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)を測定した。単位時間(1時間)当たりの減少量(μm)としてエッチングレート(μm/h)を求めた。
Claims (17)
- SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上
であるガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。 - 前記ガラスが、Sb2O3を実質的に含有しない請求項1に記載のガラス基板。
- SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜13質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
を含有し、Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8.9〜20の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは7.5以上
であるガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。 - SiO2含有量が58〜72質量%であり、Al2O3含有量が10〜23質量%であり、B2O3含有量が3〜11質量%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板。
- SiO2及びAl2O3の合計含有量が75質量%以上であり、
RO、ZnO及びB2O3の合計含有量が7〜20質量%未満であり、かつ
B2O3の含有量が3〜11質量%未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板。 - 前記ガラスは歪点が688℃以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板。
- 前記ガラスはR2O(但し、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oの合量)の含有量が0.01〜0.8質量%であるガラスからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板。
- 前記ガラスはβ-OH値が0.05〜0.4mm-1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス基板。
- 前記ガラスはZrO2の含有量が0.2質量%未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス基板。
- 前記ガラスはSrO及びBaOの合計含有量が0〜2質量%未満である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス基板。
- SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜13質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%を含有し、
Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理前後でのガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106 - 熱収縮率が60ppm以下である請求項11に記載のガラス基板。
- 前記熱収縮率は、ガラス基板をTgで30分保持した後、Tg-100℃まで100℃/minで冷却し、室温まで放冷する徐冷操作を行った後に前記熱処理を施して得た値である、請求項11又は12に記載のガラス基板。
- SiO2 57〜75質量%、
Al2O3 8〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO及びBaOの合量 0〜3質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、
As2O3は実質的に含有しないガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。 - SiO2 57〜75質量%、
Al2O3 8〜25質量%、
B2O3 3〜10質量%未満、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO及びBaOの合量 0〜3質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%
を含有し、
Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3は実質的に含有しないガラスからなる、
p−Si・TFTフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。 - TFT液晶ディスプレイ用である請求項1〜15のいずれかに記載のガラス基板。
- SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25質量%、
Fe2O3 0.01〜1質量%、
Sb2O3 0〜0.3質量%、
を含有し、かつAs2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上あるガラスからなる、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
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