以下、本発明のエネルギーマネージメントシステムの実施形態(以下「本EMS」という)について図を参照して説明する。まず、本EMSの基本的な構成(最小構成)について図1〜図6を参照して説明する。図1には、本EMSの屋内システムの最小構成として構成例が図示されている。また図2〜図6には、図1に示す各装置の構成例が図示されている。
本EMSは、屋内空間における制御を最小構成(最小の制御単位)とする下位のEMSを複数有する中間のEMSを複数構成して、さらに上位のEMSがこれらを束ねて制御をするといった、EMSの制御対象を論理的な階層構造にする。これにより、個々のEMSにおける個別の動作をレイヤ間で吸収しながら全体としてエネルギー消費量を抑制可能にする。図1に示す本EMSの屋内システム10は、下位のEMSに相当する。本EMSがエネルギー管理をするエネルギーは、電気、ガス、水道等の生活必需エネルギーを対象とするが、ここでは電気(電力供給)に関する場合を例示して説明する。
ここでいう「屋内空間」とは、建物内の空間であれば任意に設定される概念で、当該建物の所有者や利用者(以下「ユーザ」という)がエネルギー管理を望む空間の最小単位である。そのため、図1に示すように、建物の全体空間を1つの「屋内空間」に設定した場合には、当該建物を単位としてエネルギー管理が行われる。また、建物内の各部屋ごとをそれぞれ「屋内空間」に設定した場合には、各部屋ごとのエネルギー管理が可能になる。なお、イベントホール等のように、床面積が非常に大きく壁等で区切られていない空間を有する建物の場合には、仮想的な壁を設定して、それにより区切られた空間をここでいう「屋内空間」にしてもよい。
<屋内システム10>
図1に示すように、屋内システム10は、屋内制御装置20を中心に、ZigBee(登録商標)や Bluetooth(登録商標)等による近距離無線ネットワークで接続される、センサタグ30、カメラタグ40、リモコン付きタグ50やインテリジェントタップ60等により構成されている。屋内システム10は、既存装置として屋内に存在するエアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等の家電機器や、ガスまたは水道のメータGM等の既存計測器に対して、手を加えることなく、これらに対する制御やエネルギー消費量のモニタを可能にしている。なお、屋内制御装置20に接続されているパソコンPCは、屋内制御装置20に対する操作入力やモニタ画面等の出力に使用される。なお、屋内システム10による近距離無線ネットワークは、特許請求の範囲に記載の「屋内通信ネットワーク」に相当し得るものである。
センサタグ30、カメラタグ40、リモコン付きタグ50およびインテリジェントタップ60は、いずれも既存の家電機器に対して後付け可能である。即ち、既存の家電機器を改造や改修することなく、これらを「後付け(アドオン)」にしても、屋内システム10によるEMSの制御対象になり得るように、これらが構成されている。以下、屋内制御装置20、センサタグ30、カメラタグ40等の構成を図2〜図6に基づいて説明する。なお、図1において、符号「PL」は電源ライン、符号「PT」は電源タップ、符号「SB」は分電盤、をそれぞれ示している。
<屋内制御装置20>
図2に示すように、屋内制御装置20は、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24、無線ユニット25等により構成されている。屋内制御装置20は、屋内空間の温度等の環境物理量に関する情報やエアコンAC等のエネルギー消費機器が消費するエネルギー量の情報を、無線ユニット25による無線ネットワークを介してセンサタグ30等から収集(センサタグ30等からタグ信号を受信)するとともに、これらの情報と後述するように上位システムから取得する所定の目標値とに基づいて制御信号を生成し、この制御信号を無線ユニット25によりリモコン付きタグ50等に送信する機能を有する。
MPU21は、屋内制御装置20を制御するマイクロプロセッサで、システムバス24を介してメモリ22や入出力インタフェース23に接続されている。このMPU21は、コンピュータを構成する演算処理装置であることから、CPUと称される場合もある。
メモリ22は、いわゆるRAM、ROMやEEPROM等の半導体記憶装置で、システムバス24を介してMPU21に接続されている。メモリ22のプログラム領域(例えば、ROMやEEPROM)には、MPU21や無線ユニット25を制御するシステムプログラムのほかに、後述する各制御処理を可能にする制御プログラムが格納(記憶)されている。MPU21は、これらをメモリ22のワーク領域(例えばRAM)に読み出して逐次実行することによって、後述する各制御処理を可能にしている。
入出力インタフェース23は、次に説明する無線ユニット25や外部接続されるパソコンPCとMPU21等との間において、データや信号のやり取りを仲介する装置で、システムバス24に接続されている。本実施形態の場合、無線ユニット25やパソコンPCに対しては、例えば、シリアル接続可能にUSB規格に準拠した信号仕様で接続される。入出力インタフェース23に接続されるパソコンPCは、屋内制御装置20に対する操作入力をキーボードやマウス等のポインティングデバイスにより可能にしたり、液晶ディスプレィにより屋内制御装置20が出力する画像表示を可能にしたりする。
システムバス24は、MPU21、メモリ22および入出力インタフェース23を相互に接続するパラレル信号バスで、MPU21やメモリ22のハードウェア仕様に準拠したバス幅を有する。
無線ユニット25は、数メートルから数10メートル程度の距離において無線通信を可能にする、いわゆる近距離無線ネットワークを構築可能な無線モジュールである。無線ユニット25は、入出力インタフェース23を介してMPU21に接続されている。本実施形態では、通信方式や通信プロトコルとして、例えば、ZigBee(登録商標)の通信規格(物理層/MAC層はIEEE802.15.4)やZigBeeアライアンスの規格に準拠したものを用いる。
ZigBeeは、無線LANに比べると、伝送速度が低速(2.4GHz帯では250Kbps )ではあるが、本実施形態では、後述するように伝送データ量が20バイト程度で少ない。そのため、伝送速度の遅さは問題になることはなく、また通信時間がミリ秒オーダで非常に短いことから、ネットワークに対する負荷も軽い。2.4GHz帯を使用する場合には、通信時の占有帯域が2MHz程度で、チャネル数も16であることから、輻輳も生じ難い。なお、伝送データのフレーム構造はIEEE802.15.4に準拠している。
なお、無線ユニット25は、図1に示すように、屋内空間の各タグ等との通信を行うとともに、後述する最下位EMSの一段上位となる外部EMSとの通信も行う。この場合、無線ユニット25は同一である必要はなく、屋内用の無線ユニットと屋外用の無線ユニットとをそれぞれ別個に設けてもよい。また、1つの無線ユニット内に異なる無線回路を2回路備えてもよい。通信方式も、屋内外で異なる通信方式(例えば、屋内はZigbee、屋外は無線LAN)を用いてもよい。
ZigBeeによるネットワークは、ノードごとに付与されるアドレス(最大65536アドレス;2バイト)によって各ノードを識別する。このアドレスは、例えば、当該無線ユニットを有するノードの種類(屋内制御装置、センサタグ、カメラタグ、リモコン付きタップ、インテリジェントタップ等)と、そのノードがセンサユニットを有する場合にはそのセンサの種類(温度センサ、湿度センサ、照度センサ、電流センサ、電力センサまたはセンサユニットなし)とからなる一意的なユニークな番号により構成されている。そのため、このアドレスから、これらの情報を得ることが可能となる。
また、ZigBeeのノードは中継機能を備えている。このため、中継の繰り返し、つまりマルチホップ通信により前述した距離を超えて情報の伝達が可能になる。また、ZigBeeのノードは、自律的なルーティング機能も備えているため、アドホックネットワークも容易に構成できる。なお、伝送データ量がMB(メガバイト)オーダである場合には、 Bluetooth(登録商標)の通信規格(IEEE802.15.1)や無線LANの通信規格(IEEE802.11シリーズ)に準拠可能な無線モジュールを、無線ユニット25に使用する。
なお、パソコンPCが無線LANや Bluetoothに対応している場合には、無線LANや Bluetoothを介して、パソコンPCと屋内制御装置20とを接続してもよい。この場合、屋内制御装置20は、パソコンPCと入出力インタフェース23との間に、無線LANユニットまたは Bluetoothの無線モジュールを介在させる構成を採る必要がある。
<センサタグ30>
図3に示すように、センサタグ30は、MPU31、メモリ32、入出力インタフェース33、システムバス34、無線ユニット35、センサユニット36等により構成されている。センサタグ30は、センサユニット36によって検出した環境物理量(屋内空間の温度等)やエアコンAC等が消費するエネルギー量を、検出データとして無線ユニット35を介して屋内制御装置20に送信する機能を有する。送信は、所定時間(例えば1秒)ごとに行われる。
MPU31、メモリ32、入出力インタフェース33、システムバス34および無線ユニット35は、それぞれ前述した屋内制御装置20の、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24および無線ユニット25と同様に構成される。このためこれらの説明を省略する。なお、メモリ32のプログラム領域(例えば、ROMやEEPROM)には、MPU31や無線ユニット35を制御するシステムプログラムのほかに、センサユニット36による検出データを生成し無線ユニット35を介して無線ネットワークにタグ信号として送信する制御プログラムが格納(記憶)されている。
センサユニット36は、温度、湿度もしくは照度等の環境物理量、またはエアコンAC等の家電機器に流れる電流量もしくは家電機器が消費する電力量を検出するもので、入出力インタフェース33を介してMPU31に接続されている。センサユニット36は、例えば、センサタグ30が設置された周囲空間の温度を検出する温度センサ、同空間の湿度を検出する湿度センサや、同空間の照度(明るさ)を検出する照度センサであったり、電源ラインPLを流れる交流電流を検出する電流センサや、センサユニット36の取り付けられた家電機器で消費される電力を検出する電力センサであったりする。つまり、検出対象に応じたセンサ素子を備えており、これらの各センサを、適宜、組み合わせた複合タイプのセンサであってもよい。これにより、異なった情報(例えば、温度と湿度、温度と電流、温度と電流と照度等)を効率良く検出することが可能となる。
センサユニット36による検出データは、検出対象(温度、湿度、照度等)の種類に関係なく、通常、電圧信号として取り出すことができる。例えば、電圧信号がアナログ値である場合には、A/Dコンバータによりディジタルデータに変換されたものがMPU31によって情報処理され、また電気信号がディジタル値である場合には、そのディジタルデータがMPU31により情報処理される。情報処理された検出データは、タグ信号として無線ユニット35を介して屋内制御装置20に送信される。
センサユニット36による検出データは、検出対象の種類に関係なくいずれも数値データで、その桁数もせいぜい4桁前後である。そのため、無線ユニット35により送信されるデータ長(ペイロード長)は、バイナリデータであれば3バイト、テキストデータであっても1文字=1バイトの換算で5バイトに収まる。したがって、無線ネットワークに送出される伝送データ量は、送信ヘッダ等の通信制御部分(約15バイト)とアドレスを含めても20バイト前後にしかならないため、無線ネットワークの伝送速度が250Kbps であっても瞬時に検出データ(タグ信号)を屋内制御装置20に伝送することができる。
<カメラタグ40>
図4に示すように、カメラタグ40は、MPU41、メモリ42、入出力インタフェース43、システムバス44、無線ユニット45、カメラユニット46等により構成されている。カメラタグ40は、カメラユニット46により撮影した画像データに基づいて画像解析をすることにより当該屋内空間に人が存在するか否かを検出して、無線ユニット45を介して検出データをタグ信号として屋内制御装置20に送信する機能を有する。また、画像データに含まれる文字情報を認識してテキストデータに変換してそれを検出データ(タグ信号)として屋内制御装置20に送信する機能を有する。文字情報の認識は、水道やガスメータGMのカウンタ表示の検出に用いられる。なお、これらの送信は、所定時間(例えば10秒)ごとに行われる。
MPU41、メモリ42、入出力インタフェース43、システムバス44および無線ユニット45は、それぞれ前述した屋内制御装置20の、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24および無線ユニット25と同様に構成されるため、これらの説明を省略する。なお、メモリ42のプログラム領域(例えば、ROMやEEPROM)には、MPU41や無線ユニット45を制御するシステムプログラムのほかに、画像解析により検出された人の有無や人数に関する情報または画像解析により認識された文字に関する情報を、検出データとして生成し無線ユニット45を介して無線ネットワークに送信する制御プログラムが格納(記憶)されている。
カメラユニット46は、CMOSやCCDによるイメージセンサ(固体撮像素子)と光学レンズとにより画角内の所定範囲に含まれる画像情報を逐次取得して、MPU41に定期的に画像データを出力するものである。カメラユニット46は、入出力インタフェース43を介してMPU41に接続されている。MPU41は、受け取った画像データに基づいて前述した制御プログラムにより画像解析を行う。
なお、人の有無だけを検出する人感センサの機能だけを必要とする場合には、カメラユニット46に代えて、赤外線方式のモーションセンサユニットを用いてもよい。赤外線を照射する反射型は、照射した赤外線のうち人等に反射した赤外線を検出して人の存在を検知する。また、赤外線を受光する受光型は、人の体温とその周囲温度との差を赤外線で検出して人の存在を検知する。
カメラユニット46から出力されるデータは画像データであることから、そのデータ量は膨大である。しかし、MPU41による画像解析によって検出された人の有無や人数に関する情報は、人の有無や人数であることから、バイナリデータであれば1バイト(人の有無だけであれば1ビット(1:有/0:無))、またテキストデータであっても2バイトのデータ量で足りる。一方、画像解析により認識された文字に関する情報は、文字数により左右されるものの、水道やガスメータの表示桁数は7桁以下である。そのため、文字に関する情報は、バイナリデータであれば3バイト、またテキストデータであっても7バイトのデータ量で足りる。したがって、送信データのペイロード長は、最大でも7バイトであることから、伝送データ量は、約15バイトの送信ヘッダ等の通信制御部分とアドレスを含めても20バイト前後に留まる。このため、カメラタグ40も、センサタグ30の場合と同様に、無線ネットワークの伝送速度が250Kbps であっても瞬時に検出データ(タグ信号)を屋内制御装置20に伝送することができる。
<リモコン付きタグ50>
図5に示すように、リモコン付きタグ50は、エアコンACやテレビTV等の複数種類の家電機器に対して遠隔操作可能なワイヤレスリモコン(多機能リモコン)の機能を有するもので、例えば、建物の壁に設けられる埋め込み型コンセントをベースに構成されている。本実施形態では、ワイヤレスの方式として、例えば、赤外線方式のものを例示して以下説明する。リモコン付きタグ50は、センサタグ30と異なり、情報を取得するのではなく、屋内制御装置20から制御信号を受けて外部から家電機器(エアコンAC、シーリングライトCLやテレビTV等)を制御するものである。
リモコン付きタグ50は、MPU51、メモリ52、入出力インタフェース53、システムバス54、無線ユニット55、赤外線通信ユニット56、レセプタクル等により構成されており、典型的には、上下に2口設けられるレセプタクル(コンセント)の間に赤外線通信ユニット56の発光窓(図1に示す枠内(符号50)の黒丸)が設けられている。そのため、リモコン付きタグ50は、図示されていない電源ラインPL用の接続端子や2口分のレセプタクルも備えている。なお、図5には、主にリモコン部が図示され、それ以外の部分は図示されていないことに注意されたい。
MPU51、メモリ52、入出力インタフェース53、システムバス54および無線ユニット55は、それぞれ前述した屋内制御装置20の、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24および無線ユニット25と同様である。そのためこれらの説明は省略する。なお、メモリ52のプログラム領域(例えば、ROMやEEPROM)には、MPU51や無線ユニット55を制御するシステムプログラムのほかに、屋内制御装置20から送信されてくる制御信号に従って赤外線通信ユニット56を制御する制御プログラムが格納(記憶)されている。
赤外線通信ユニット56は、MPU51からシステムバス54を介して入力される制御信号に基づいて、例えばPPM(Pulse Position Modulation)信号を生成し赤外線LEDを点滅させて制御コマンドを出力するもので、システムバス54を介してMPU51に接続されている。このPPM信号は、家電機器の赤外線リモコンによるリモコン信号に用いられており、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等の家電機器は、このようなリモコン信号による制御コマンドを受信すると、それが自分に対するものであるか否かを判断し、自分に対するものである場合には、制御コマンドに従った動作、例えば、主電源のオンオフや、エアコンACであれば設定温度の上げ下げ等を行う。また、シーリングライトCLであれば、照明光の明るさの制御(調光制御)を行う。
これらのリモコン信号による制御コマンドは、エアコンAC等の家電機器に付属するそれぞれの専用リモコンから学習をして得る。制御コマンドの学習は、例えば、専用リモコンから出力される赤外線信号を受信して得られるPPM信号をデコードし記憶することにより行われる。このようにリモコン付きタグ50は多機能リモコンの機能を備えることから、リモコン付きタグ50単独で、エアコンACとテレビTVとシーリングライトCLといった複数のエネルギー消費機器を制御することができる。なお、このような制御コマンドに対応する制御信号(制御データ)は、機器監視処理において後述するように、2バイト前後で構成されるため、リモコン付きタグ50と屋内制御装置20との間で無線ネットワークを介してやり取りされる伝送データ量は、送信ヘッダ等の通信制御部分(約15バイト)とアドレスを含めても20バイトに満たない。リモコン付きタグ50では、屋内制御装置20から送られてくる制御信号もデータ量が少ない。そのため、これらのデータの送受信は、例えばZigbee等の無線方式でよい。
なお、リモコン付きタグ50のワイヤレス方式は、エアコンACやテレビTV等の家電機器を操作するために用いられるリモコン装置に対応するものであれば、電波や音波(超音波を含む)等、赤外線以外の情報伝送媒体を用いた方式や、さらには赤外線や電波以外の電磁波を用いたものでもよい。
<インテリジェントタップ60>
図6に示すように、インテリジェントタップ60は、MPU61、メモリ62、入出力インタフェース63、システムバス64、無線ユニット65、電流センサユニット66、スイッチユニット67、レセプタクル等により構成されており、エアコンAC等の家電機器を制御するとともに電流センサタグとしても機能する。インテリジェントタップ60は、電流センサユニット66により検出された電源ラインPLの電流値を無線ユニット65を介して無線ネットワークに送出するとともに、無線ネットワークから受信した制御信号に従ってスイッチユニット67をオンオフ制御し当該インテリジェントタップ60のレセプタクルに接続された装置への電源供給の制御を行い得るものである。検出された電流値の送信は、所定時間(例えば1秒)ごとに行われる。なお、図6には、レセプタクルは図示されていないことに注意されたい。
MPU61、メモリ62、入出力インタフェース63、システムバス64および無線ユニット65は、それぞれ前述した屋内制御装置20の、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24および無線ユニット25と同様である。そのためこれらの説明は省略する。なお、メモリ62のプログラム領域(例えば、ROMやEEPROM)には、MPU61や無線ユニット65を制御するシステムプログラムのほかに、電流センサユニット66による検出データを生成し無線ユニット65を介して無線ネットワークに送信したり、屋内制御装置20から受信する制御信号に従ってスイッチユニット67をオンオフ制御したりする制御プログラムが格納(記憶)されている。
電流センサユニット66は、レセプタクルに接続された家電機器に流れる電流量を検出するもので、入出力インタフェース63を介してMPU61に接続されている。また、スイッチユニット67は、レセプタクルを介して供給される交流電力をオンオフ制御し得る半導体スイッチで、例えば、IGBTやパワーMOSFET等の大電力用のスイッチング素子とこれを駆動可能なドライバ回路等により構成されている。スイッチユニット67もシステムバス64を介してMPU61に接続されている。電流センサユニット66による検出データは4桁前後の数値データであり、また屋内制御装置20から送られてくる制御信号(制御データ)は、機器監視処理において後述するように、単なるオンオフであれば1ビットで足りる。そのため、無線ネットワークに送出される伝送データ量は、送信ヘッダ等の通信制御部分(約15バイト)とアドレスを含めても20バイトに満たない。なお、インテリジェントタップ60では、屋内制御装置20から送られてくる制御信号もデータ量が少ないことから、これらのデータの送受信は、例えばZigbee等の無線方式でよい。
<論理的な階層構造>
このように構成される屋内システム10は、EMSによる最小の制御単位であり、本EMSにおける位置づけでは最下位に位置して、その上位には数々のノードが存在する。即ち、図7に示すように、本EMSは、屋内システム10の屋内制御装置20を最下位ノード100とするレイヤLy0から、最上位ノード140を頂点とするレイヤLy4のまで、5つのレイヤLy0〜レイヤLy4によって論理的な階層構造を構成している。この階層構造は、実際に電力供給される電力伝送系、つまり配電網を構成するそれぞれの配電系統に基づいて決められており、例えば、同じ配電系統により電力供給される地域や町は、レイヤ内で同じグループに属する。なお、これらの各ノード間は、後述するように、物理的には近距離無線ネットワークによる無線メッシュネットワークにより構成されている。この無線メッシュネットワークは、特許請求の範囲に記載の「屋外通信ネットワーク」に相当し得るものである。
頂点のレイヤLy4は、例えば、レイヤLy3の地域や地区等を複数集めた地方都市(例えば、○○市)に設けられる最上位ノード140で、配下のレイヤ3以下の全体制御を行っている。最上位ノード140は、レイヤLy3,Ly2,Ly1に向けて枝分かれする配電網の基幹部分に相当する。そのため、最上位ノード140を構成する上位制御装置20”は、レイヤLy3以下に供給可能な総電力量を把握している最上位システムに接続されて、本EMSに関して市の全体制御を行う。なお、「市の全体制御」とは、ここでは、例えば、季節や時間帯ごとに予め設定された各地域に対する節電目標(省エネ目標)に従って得られる所定の目標値を各地域ごとの下位レイヤLy3の中間ノード130a等に送ることを意味する。
例えば、中間制御装置20’が制御αを行っている地域単位の中間ノード130aは、所定の目標値として10%、また中間制御装置20’が制御βを行っている地域単位の中間ノード130bには、所定の目標値として5%というように、地域単位ごとに異なった所定の目標値が設定されたり、また同じ目標値が設定されたりする。各地域における目標値を総合すると、当該市の全体制御として設定された所定の目標値を満たすか、または下回るように、それぞれの中間ノード130a,130b,…,130zにおける各目標値が設定される。
なお、最上位ノード140を構成する上位制御装置20”や、中間ノード130a等を構成する中間制御装置20’は、基本的には、図2を参照して説明をした屋内制御装置20と同様に構成されている。即ち、MPU21、メモリ22、入出力インタフェース23、システムバス24および無線ユニット25を備えている。また、必要に応じて入出力インタフェース23を介してパソコンPC等が接続されている。以下説明をするレイヤLy2,1における中間制御装置20’も同様である。
最上位ノード140を構成する上位制御装置20”には、パソコンPC、または配電系統の電力供給を管理するコンピュータ等が接続されており、これらを介して所定の目標値(目標値データ)が入力される。この所定の目標値は、例えば、省エネが考慮されていない通常時の全エネルギー消費量を100%とした場合における省エネ分の割合で、例えば、10%の省エネを促すときには目標値として10%を表すデータが設定される。なお、この目標値は、パソコンPCを介してオペレータ等により入力される場合、当該パソコンPCや電力供給を管理するコンピュータ等から所定の制御プログラムやアプリケーションプログラムを介して自動的に入力される場合、等がある。
また、例えば、温度、湿度、気圧、天気、日付、時間等の各環境情報をインターネット等から取得してこれらを入力することにより、最適な目標値を得られるニューラルネットワークを構成しこの最適な目標値を所定の目標値として入力してもよい。
最上位ノード140の上位制御装置20”から送信される所定の目標値は、その下位のレイヤLy3に属する中間ノード130a,130b,…,130zの各中間制御装置20’によりそれぞれ受信される。例えば、中間ノード130aの地域と同じ配電系統により電力供給される町として、中間ノード120aの町と中間ノード120bの町とが同じグループに属する場合、これらの中間ノード120a,120bは同じ地域単位に包含されて上位の中間ノード130aにより制御される(制御α)。同様に、中間ノード130zの地域と同じ配電系統により電力供給される町として、中間ノード120z等の町は同じ地域単位に包含されて上位の中間ノード130zにより制御される(制御ω)。
上位の中間ノード130a等は、下位の中間ノード120a等の中間制御装置20’に付与されるアドレスによりこれらを識別して制御する。レイヤLy3でいう「制御」とは、図15を参照して後述するように、中間ノード130a等の中間制御装置20’が、予め設定されている制御情報に従って、これら各町に対する所定の目標値をそれぞれ町ごとに設定し、各町ごとの下位レイヤLy2の中間ノード120a等に送ることを意味する。
中間ノード130の中間制御装置20’から送信される所定の目標値は、その下位のレイヤLy2に属する中間ノード120a,120b,…,120zの各中間制御装置20’によりそれぞれ受信される。例えば、中間ノード120aの町と同じ配電系統により電力供給される家庭として、下位ノード110aの家庭と下位ノード110bの家庭とが同じグループに属する場合、これらの下位ノード110a,110bは同じ町単位に包含されて上位の中間ノード120aにより制御される(制御A)。同様に、中間ノード120zの町と同じ配電系統により電力供給される家庭して、下位ノード110z等の家庭は同じ町単位に包含されて上位の中間ノード120zにより制御される(制御Z)。
中間ノード120a等は、下位ノード110a等の中間制御装置20’に付与されるアドレスによりこれらを識別して制御する。レイヤLy2でいう「制御」とは、図15を参照して後述するように、中間ノード120a等の中間制御装置20’が、予め設定されている制御情報に従って、これら各家庭に対する所定の目標値をそれぞれ家庭ごとに設定し、各家庭ごとの下位レイヤLy1の下位ノード110a等に送ることを意味する。
中間ノード120の中間制御装置20’から送信される所定の目標値は、その下位のレイヤLy1に属する下位ノード110a,110b,…,110zの各中間制御装置20’によりそれぞれ受信される。例えば、下位ノード110aの家庭と同じ配電系統により電力供給される各フロアとして、最下位ノード100aのフロア1階と最下位ノード100bのフロア2階とが同じグループに属する場合、これらの最下位ノード100a,100bは同じ家庭単位に包含されて下位ノード110aにより制御される(制御a)。
即ち、最下位のレイヤLy0は、レイヤLy1に含まれる建物内における各部屋や各フロア(階)ごとの空間、における各制御のグループに相当し、例えば、戸建て住宅の1階と2階、ビルの各フロア、あるいはイベントホール等のような広大な空間を仮想的な壁で区切った場合における、各階または各フロアごとに設けられた各屋内制御装置20による制御 I、II、…、*の集まりになる。これらは、原則的に同じ配電系統により電力供給されるため、レイヤLy0の同じグループに含まれる。また、これらも、最下位ノード100a等の屋内制御装置20に付与されるアドレスにより識別されて制御される。
また、例えば、図1に示す2階のない平屋造りの建物においては、屋内における制御単位が複数に分けられていない限り、屋内システム10である最下位ノード100aがそのままレイヤLy1の下位ノード110になる。そのため、レイヤLy0の最下位ノード100aを有しない下位ノード110も存在し得ることに留意されたい。この場合、レイヤLy1の下位ノード110が最下位ノードになる。
なお、屋内制御装置20を設ける位置が建物内の奧になり、屋外から電波が到来し難い位置になる場合には、建物の窓際に中継機能を担う中間制御装置20’を設ける構成を採ることがある。このような場合、物理的には建物奥の屋内制御装置20が最下位ノード100aになり、窓際の中間制御装置20’が下位ノード110となって、下位ノード110の下に最下位ノード100aが1つだけ属する階層構造になる。しかし、論理的にはこれらは1つのノードとして動作して同じレイヤに属する。
なお、レイヤLy1でいう「制御」とは、図15を参照して後述するように、下位ノード110a等の中間制御装置20’が、予め設定されている制御情報に従って、これら各フロアに対する所定の目標値をそれぞれフロアごとに設定し、各フロアごとの最下位レイヤLy0の最下位ノード100a等に送ることを意味する。
このように各レイヤLy4〜Ly1において、送信されて下位の各レイヤLy3〜Ly0に届く「所定の目標値」は、前述したように、例えば、省エネが考慮されていない通常時の全エネルギー消費量を100%とした場合における省エネ分の割合(1%〜99%)であることから、テキストデータで表現をしても2バイトで足り、またバイナリデータであれば7ビットで表現できる。つまり、所定の目標値は、そのデータ量が非常に少ないことから、次に説明をするZigBeeの中継機能による無線メッシュネットワークを形成しても、遅延による影響を受け難い。
<無線メッシュネットワーク>
次に、図8および図9を参照して、ZigBeeの中継機能による無線メッシュネットワークについて説明する。図8には、レイヤ1におけるメッシュネットワークの概念を示す説明図が図示されており、また図9には、メッシュネットワークにおける周波数繰り返しの例を示す説明図が図示されている。
本EMSでは、前述したように、論理的には階層構造を形成するが、物理的には、図8に示すような無線メッシュネットワークを形成する。この無線メッシュネットワークは、ZigBeeの中継機能を利用したもので、マルチホップ通信による無線アドホックネットワークを形成する。このため、論理的な階層構造とは異なった経路で所定の目標値(目標値データ)が送られる。
例えば、図8(B) に示すように、住宅規模(家庭)の下位ノード110a等が複数存在する町の中間ノード120aと、ビル規模の下位ノード110a等が複数存在する町の中間ノード120bと、中間ノード120aと同様に住宅規模(家庭)の下位ノード110a等が複数存在する町の中間ノード120cと、が地理的にそれぞれ隣接して存在している場合、これらは図7を参照して説明したように、論理的には同じレイヤLy2に属する。このため、上位レイヤLy3の中間ノード130aから送信されてきた所定の目標値は、論理的には、これらの各ノードにそれぞれ並行して届くことになる。
ところが、例えば、図8(B) に示す楕円で囲まれたビルに、上位レイヤLy3の中間ノード130aから送信されてきた所定の目標値が届いた場合、この所定の目標値は、当該中間ノード120aのほかに、中間ノード120bや中間ノード120cにも送られる必要があるため、物理的にはこの中間ノード120aを経由してこれらに送信されることがある。例えば、中間ノード120bを宛先にする所定の目標値は、図8に示す太実線の経路を経由して中間ノード120bに届き、また中間ノード120cを宛先にする所定の目標値は、図8に示す太破線の経路を経由して中間ノード120cに届く。
このようにZigBeeでは、受信したデータの宛先が自分に対するものでない場合には、他のノードに転送をする中継機能があるため、これを利用して無線メッシュネットワークを形成することにより、無線アドホックネットワークを構成することができる。またこのような無線アドホックネットワークは、その参加や脱退に時間を要することなく容易に追加や削除が可能であるため、拡張性に優れている。
なお、マルチホップ通信によるメッシュネットワークは伝送速度が遅いが、これまでに説明したように、本EMSでは、最上位ノード140等の各ノード130,120,110から送られてくる所定の目標値はそのデータ長が2バイト未満で、ヘッダ等を含めても数バイト程度と短いことから、伝送速度が遅いことによる伝送遅延を考慮しても制御に問題はない。また、最上位のレイヤLy4の最上位ノード140が送信する所定の目標値の送信間隔を、数秒〜数10秒あるいは数分間隔にすることで、制御間隔が時間的に緩やかになるため、伝送速度が遅いことによる弊害はさらに抑えられる。これは、各EMSが自律分散的に制御を行っていることにより実現できる。
マルチホップ通信は、図8に示すように、レイヤLy3〜Ly1の各中間ノードや各下位ノードを構成する複数の中間制御装置20’によるデータの中継により実現されているが、中小規模の地方都市を想定した場合、例えば、レイヤ3に属する住宅件数は数万個に及び、メッシュネットワークを構成するメッシュポイントもほぼ同数になることが想定される。このため、本EMSでは、例えばZigBeeによる通信可能範囲、つまりセルの形状を図9に例示する、いずれかまたはそれらの組み合わせに設定することで周波数の有効利用を可能にし、また数万個存在するメッシュポイントの周波数割り当てを可能にしている。
ZigBeeでは、セルの半径は数メートルから数10メートルであり、レイヤ2の町規模であってもメッシュポイントの密度は高い。そのため、高い密度で集積するセルを、例えば、図9に示す形状に設定する。図9(A) に示す正三角形セルの場合にはセルの繰り返しパターンは6種類、図9(B) に示す正方形セルの場合にはセルの繰り返しパターンは4種類、図9(C) に示す正六角形セルの場合にはセルの繰り返しパターンは3種類、でそれぞれ済むことから、3種類〜6種類の異なる周波数を用いて隣接するセルの周波数が異なるように各セルの周波数を割り当てる。これにより、効率的な周波数繰り返しが可能になり、メッシュポイントが膨大な数であっても隣合うセル同士が同じ周波数にならない。なお、これらのセルは、その中心に中間制御装置20’が存在しかつ中間制御装置20’から放射される電波が無指向性アンテナによることを前提にしている。そのため、アンテナが指向性を持つ場合には、これらとは異なったセルの配置や周波数繰り返しが可能である。
また、既存の無線LANやBluetooth(登録商標)等に影響を与えることのないように、例えば、コグニティブ通信技術やMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を用いて、これらとの混信を回避する。具体的には、例えば、送信をする前に使用予定のチャネルが空いているか否かを検知して空いていれば送信を行うCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access /Collision Avoidance)方式によるキャリアセンスを行う。もし、既存の無線LANやBluetoothによりチャネルが使用中である場合には、所定時間経過してから再度キャリアセンスを行いチャネルの空き状態を確認してから送信をする。
さらに、ビル等の建物間における電波伝搬を測定し、その測定値に基づいて伝搬解析を行いその解析結果に基づいて、外部アンテナとして有指向性アンテナを配置したり、そのビーム方向を設定する。このような外部アンテナを中間制御装置20’の無線ユニット25に接続することで、建物間における無線通信を良好に行うことも可能になり、前述したセル配置の自由度を高められる。
次に図10〜図15を参照して本EMSにより実行される各制御処理について説明する。まず、屋内制御装置20により実行されるメインルーチンを説明する。図10には、メインルーチンによる処理の流れが図示されている。なお、このメインルーチンが起動される前提として、屋内制御装置20には、操作入力装置および画面出力装置として、EMSアプリケーションプログラム(以下「EMSアプリ」という)を実行するパソコンPCが接続されているものとする。
<メインルーチン>
メインルーチンは、屋内制御装置20の電源投入直後に、メモリ22から読み出されて起動される制御プログラムである。最初のステップS101では初期化処理が行われる。この処理は、メモリ22のワーク領域をクリアしたり各フラグに所定値を設定したり、また入出力インタフェース23を初期化するもので、一般的なアプリケーションプログラムが起動時に行うものに相当する。
続くステップS102ではメニュー画面表示処理が行われる。この処理は、屋内制御装置20に接続されているパソコンPCの表示画面(例えば液晶ディスプレィ)に、EMSアプリによって幾つかの選択項目を表示して、それらのうちから任意の1項目を屋内システム10のユーザに選択させるためのものである。EMSアプリにより表示される選択項目には、例えば、「設定」、「監視」および「終了」がある。「設定」は省エネパターンを選択するため、「監視」はEMSによる監視を開始するため、また「終了」は屋内制御装置20による一連の制御を終了するため、にそれぞれ選択可能に表示される。
ステップS103は選択入力の判断処理である。即ち、ステップS102によるパソコンPCの画面表示に対して、ユーザがどの項目を選択したか、あるいは未だ選択されていないか、を判断する。ユーザによる選択入力はパソコンPCから行われる。例えば、パソコンPCにマウスやタッチパネル等のポインティングデバイスが設けられている場合にはEMSアプリから送られてくるポインタ情報や番号情報により、いずれの項目が選択されたか、または未選択であるかを判断する。未選択の場合には(S103;入力なし)、ステップS102に戻り、再度、メニュー画面表示を行う。
「設定」が選択されている場合には(S103;「設定」)、ステップS200に処理を移行してパターン設定処理を行う。また「監視」が選択されている場合には(S103;「監視」)、ステップS300に処理を移行して機器監視処理を行う。もし、「終了」が選択されている場合には(S103;「終了」)、本メインルーチンを終了して(END)、屋内制御装置20による処理を終了する。なお、パターン設定処理は図12を参照して、また機器監視処理は図14を参照して、それぞれ後述する。
ステップS105は、パターン設定処理(S200)や機器監視処理(S300)からメインルーチンへの戻り時に行われる判断処理である。後述するように、パターン設定処理(S200)や機器監視処理(S300)では、ユーザによる「終了」の選択を可能にしている。そのため、これらの処理中に「終了」が選択された場合には(S105;Yes)、前述したステップS103により「終了」が選択されたと判断されたときと同様に、本メインルーチンを終了して(END)、屋内制御装置20による処理を終了する。
一方、「終了」が選択されていない場合には(S105;No)、メニュー画面をパソコンPCに表示するため、ステップS102に処理を戻す。これにより、メインルーチンは、パターン設定処理(S200)や機器監視処理(S300)に処理を移行しない場合には(S103;「なし」、S105;No)、ユーザによって「終了」が選択されるまで、ステップS102によってメニュー画面がパソコンPCに表示され続ける。
このようにしてパソコンPCの表示画面には、屋内制御装置20のメニュー画面等が表示されるが、屋内制御装置20では、メインルーチンの起動とほぼ同時期またはメインルーチンの起動後の所定時間(例えば、数秒〜数10秒)経過後に、目標値取得処理も起動する。この処理は、上位システムのノード(以下「上位ノード」という)から所定の目標値を待ち受けて取得するもので、例えば、所定時間(例えば、数秒〜数10秒)ごとに発生するタイマ割り込みによっても繰り返し起動される。図11に、この目標値取得処理の流れが図示されているので、ここで同図を参照して目標値取得処理を説明する。
<目標値取得処理>
図11に示すように、目標値取得処理では、まずステップS501により上位ノード信号受信処理が行われる。この処理は、上位ノード(または中間ノード)の制御装置から無線ネットワークを介して送られてくる所定の目標値(目標値データ)を無線ユニット25により受信するものである。所定の目標値は、例えば、省エネが考慮されていない通常時の全エネルギー消費量を100%とした場合における省エネ分の割合で、例えば、10%の省エネを促すときには所定の目標値(目標値データ)として10%を表すデータが上位ノードから送られてくる。
このような所定の目標値を上位ノードから受信した場合には(S503;Yes)、当該屋内制御装置20が管理するエネルギー消費機器による全エネルギー消費量をその受信した所定の目標値以下に抑制するため、当該所定の目標値を保存する(S507)。また前回の受信により目標値が既に保存されている場合には前回保存した所定の目標値を今回受信した当該所定の目標値に更新する(S507)。
一方、所定の目標値を受信していない場合には(S503;No)、本目標値取得処理を一旦終了して次の起動に備える。なお、所定の目標値は、デフォルト値として、例えば30%を予め設定してもよい。つまり、既定値として30%の省エネを促す。この場合、所定の目標値が初めから設定されているため、ステップS507による処理では、デフォルトの所定の目標値を新たに受信した所定の目標値に更新する。
このように目標値取得処理では、所定時間(例えば、数秒〜数10秒)ごとに上位ノード(または中間ノード)から所定の目標値を取得して更新する。このため、屋内制御装置20は、上位システムから届く最新の所定の目標値を常に保持することが可能になる。
<パターン設定処理>
次に、パターン設定処理を図12および図13を参照して説明する。図12には、図10に示すパターン設定処理(S200)の流れが図示されている。また、図13には、省エネパターンの例が図示されている。パターン設定処理は、EMSアプリにより表示される選択項目の中から、ユーザによって「設定」が選択された場合に行われるもので、この処理による画面表示や操作入力もEMSアプリを介して行われる。
最初にステップS201により、設定パターン一覧画面表示処理が行われる。この処理では、予め設定された複数種類の省エネパターンの一覧を、EMSアプリによりパソコンPCの画面に表示する。例えば、図13に示す省エネパターンP1〜P4の4パターンの名称とその特徴が表示される。例えば、「パターンP1:ノーマル」、「パターンP2:エアコン優先」「パターンP3:テレビ優先」および「パターンP4:照明優先」等が、所定のアイコンとともにパソコンPCの画面に表示される。なお、省エネパターンは、特許請求の範囲に記載の「予め設定された制御情報」に相当し得るものである。
省エネパターンP1(ノーマル)は、例えば標準的なパターンで、目標値の%値が大きくなる(省エネの度合いが高まる)ほど、エアコンACの設定温度がその時の設定温度よりも上がり(夏期の場合)または下がり(冬期の場合)、またテレビTVやシーリングライトCLについても省エネの度合いが高まる。これに対し、省エネパターンP2〜P4は、特定のエネルギー消費機器に対する省エネ設定を緩やかにしている。例えば、省エネパターンP2(エアコン優先)ではエアコンAC、省エネパターンP3(テレビ優先)ではテレビTV、省エネパターンP4(照明優先)ではシーリングライトCL、のそれぞれの省エネ設定を緩和し、他のエネルギー消費機器に対する省エネ設定を厳しくしている。これにより、ユーザは、自分の好みに応じた省エネパターンの選択が可能になる。
なお、夏期および冬期は、屋内制御装置20またはパソコンPCが有する日付け機能による日付情報に基づいて判断する。例えば、夏期は5月1日〜10月31日、冬期は11月1日〜4月30日にそれぞれ設定して夏期および冬期を判断する。なお、1年を四季に対応させて4分割(例えば、春期を3月1日〜5月31日、夏期を6月1日〜8月31日、秋期を9月1日〜11月30日、冬期を12月1日〜2月28日(または29日))し季節を判断してもよい。
パソコンPCの画面には、このような「省エネパターン」のほかに、ユーザが、このパターン設定処理を終わりたい場合に選択をする「取消」や、屋内制御装置20による制御処理のすべてを止めたい場合に選択をする「終了」も表示される。表示される複数種類の「省エネパターン」やその他の選択には、例えば、それぞれを特定可能な任意の番号または記号(以下「パターン番号」という)がソフトウェア的に関連付けられている。そのため、ユーザがパソコンPCのポインティングデバイス等により選択した「省エネパターン」等の選択情報として、このパターン番号がEMSアプリから送られてくるので、次のステップS203ではこのパターン番号に基づいて、ユーザの選択項目を判断する。
「省エネパターン」には、例えば、(1) 上位システムから送られてくる所定の目標値に従ってエネルギー消費を抑制する場合にエネルギー消費機器によるエネルギー消費を制御するものと、(2) 上位システムから送られてくる所定の目標値に関係なくエネルギー消費機器によるエネルギー消費を制御するものと、がある。前者(1) は、例えば、図13に示す省エネパターンP1〜P4である。省エネパターンP1〜P4は、いずれも目標値ごとに、エアコンAC、テレビTVおよびシーリングライトCLに許容される制御が設定されている。これに対して後者(2) は、例えば、「屋内に人が存在しない場合には、エアコンAC、テレビTVおよびシーリングライトCLの電源をすべてオフにする」というように、上位システムから送られてくる目標値に関係なくエネルギー消費を最小限に抑えるもので、図13に示す省エネパターンP9がこれに相当する。
これらの省エネパターンは、例えば、当該屋内制御装置20の出荷時(または出荷前)に予め設定される。また、ユーザにより設定される場合もある。ユーザにより設定される場合には、図10を参照して説明をしたメインルーチンによるメニュー画面表示処理(S102)において、パソコンPCで画面表示する選択項目として、例えば「オプション」を追加する。そして、この「オプション」が選択された場合には、ステップS103により「オプション処理」を起動し、当該オプション処理によって省エネパターンの編集を可能にするように(例えば、メモリ22のRAMに記憶されたテーブル(図13に示す一覧表に相当するもの)を編集かつ更新可能にする)、メインルーチンの処理およびオプション処理を構成する。これにより、ユーザ個々の好みに合致した省エネパターンの編集および設定が可能になる。
なお、ユーザによるエネルギー消費機器の使用状態や設定状態を、温度、湿度、気圧、天気、日付、時間等の各環境情報とともにパターン化したもの等を機械学習するように屋内制御装置20を構成し、この学習結果に基づいて省エネパターンを生成してもよい。または、既に設定もしくは生成されている省エネパターンを、このような学習結果に基づいて調整したり更新したりしてもよい。省エネパターンは、例えば、省エネが考慮されていない通常時のエネルギー消費量のうちの最大消費量を100%として、全体のエネルギー消費量がこれの90%時のエアコンAC等の各設定状態を、所定の目標値が10%であるときの各エネルギー消費機器に対する省エネパターンとして設定する。所定の目標値が20%であるときには、全体のエネルギー消費量が先の80%時におけるエアコンAC等の各設定状態を各エネルギー消費機器に対する省エネパターンとして設定する。所定の目標値が30%、40%等についても、同様に各エネルギー消費機器に対する省エネパターンを設定する。
エネルギー消費機器の使用状態は、エアコンAC等の電源オンオフや消費電流(消費電力)をセンサタグ30による消費電流の検出データにより得る。また、エネルギー消費機器の設定状態も、センサタグ30による消費電流の検出データや室内の照度の検出データにより得られるが、エアコンAC等に向けて送信されるリモコン信号による制御コマンドの内容を検出してもよい。例えば、エアコンAC等の赤外線リモコンから送信されるリモコン信号を受信可能な受信ユニットをセンサユニット36の代わりに設けたセンサタグ30をエアコンAC等の近傍に設けて、エアコンAC等に向けて送信されるリモコン信号を受信する。受信したリモコン信号のデコード結果から制御コマンドを検出できるため、その検出データからエアコンACやシーリングライトCLの設定状態を得る。
これにより、ユーザ個々の好みに合致した省エネパターンの自動設定が可能になる。なお、前記の100%とする、省エネが考慮されていない通常時のエネルギー消費量の最大消費量や各省エネパターンは、通年におけるものではなく、例えば、四季に対応して4箇月ごとに区切った期間のそれぞれにおいて作成し設定してもよい。これにより、きめ細かくユーザの好みに合致した省エネパターンの自動設定が可能になる。
ここで、図13に示す一覧表について簡単に説明する。制御対象となる機器がエアコンACである場合の表記として、例えば、「↑1/↓1」は、夏期(/の左側)においては温度設定を1℃上げ、冬期(/の右側)においては温度設定は1℃下げることを表す(夏期/冬期における温度設定の上げ温度/下げ温度を表す)。図13には例示されてないが、「↑1/↓2」は、夏期は1℃上げ冬期は2℃下げることを表す。また「OFF」は、電力供給を強制的に遮断するかまたは電源をオフにするため、使用できない旨、を表す。例えば、「↑3/OFF」は、夏期は3℃上げ、冬期は使用できないことを表す。なお、1年を四季に対応させて4分割した場合には、季節に対応した順番に温度の上げ下げを、例えば、春、夏、秋、冬の順に「↓1/↑1/↑1/↓1」というように表してもよい。
また、制御対象となる機器がテレビTVである場合には、「ON」は電源をオンにすることが可能である旨、「OFF」は電力供給の遮断等により使用できない旨、をそれぞれ表す。さらに、制御対象となる機器がシーリングライトCLである場合、調光制御により許容される照度を示す。例えば、「H」であれば、最高照度を許容し、また「M」であれば、最高照度よりも照度が低い中間照度までを許容する。「L」であれば、照度が最も低い最低照度に限り許容する。なお、「OFF」は、電力供給の遮断等によりシーリングライトCLが使用できない旨を表す。
なお、このような各制御は、後述するように、リモコン付きタグ50またはインテリジェントタップ60により行われる。
ステップS203はパターン番号入力の判断処理である。即ち、ステップS201によるパソコンPCの画面表示に対して、ユーザにより選択されたパターン番号の判断処理が行われる。ユーザによる入力はパソコンPCから行われる。前述したように、ユーザの選択情報としてパターン番号がEMSアプリから送られてくるため、このパターン番号に基づいてユーザの選択項目を判断する。省エネパターンが選択されている場合には(S203;入力あり)、続くステップS205に処理を移行して個別目標値設定処理を行う。一方、省エネパターン等、何も選択されていない場合には(S203;入力なし)、ステップS201に戻り、再度、省エネパターンの一覧画面の表示を行う(S201)。
また、「取消」が選択されている場合には(S203;「取消」)、本パターン設定処理を終了し(RET)、「終了」が選択されている場合には(S203;「終了」)、ステップS207により終了フラグを設定した後、本パターン設定処理を終了する(RET)。本パターン設定処理を終了するとメインルーチン(図10)に処理が戻る(S200)。終了フラグが設定されている場合には、図10を参照して説明したように、判断処理(S105)によってユーザによる「終了」の選択であると判断して(S105;Yes)、本メインルーチンを終了し(END)、屋内制御装置20による処理を終了する。また、終了フラグが設定されていない場合(S203;「取消」)には、ステップS105による判断処理(S105;No)の後、ステップS102に戻り、再度、メニュー画面表示を行う(S102)。
ステップS205による個別目標値設定処理では、ユーザにより選択された省エネパターンが屋内制御装置20に設定される。具体的には、選択された省エネパターンに関する情報として、各目標値に対するエネルギー消費機器の制御情報がメモリ22のワーク領域に設定される。例えば、省エネパターンP1が選択された場合、エアコンACに関しては、目標値が10%のとき、夏期では温度設定を1℃上げ冬期では1℃下げる制御情報がメモリ22のワーク領域に記憶される。同様に、目標値が20%のときには夏期では温度設定を2℃上げ冬期では2℃下げ、目標値が30%や40%のときには夏期では温度設定を3℃上げ冬期では3℃下げ、目標値が50%のときにはエアコンACをオフにするか、電源供給を止める制御情報がメモリ22のワーク領域に記憶される。
<機器監視処理>
続いて、機器監視処理を図14を参照して説明する。図14には、図10に示す機器監視処理(S300)の流れが図示されている。機器監視処理は、EMSアプリにより表示される選択項目の中から、ユーザによって「監視」が選択された場合に行われるもので、この処理による画面表示や操作入力もEMSアプリを介して行われる。
まずステップS301により、モニタ画面表示処理が行われる。この処理は、EMSモニタとして、所定の表示形式に従ってエネルギー消費機器によるエネルギー消費量を時間経過とともに数字やグラフによりグラフィカルに表示するもので、EMSアプリによりパソコンPCの画面に表示する。例えば、現在の電力消費量(エネルギー消費量)をエアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL(エネルギー消費機器)ごとに異なる表示色が設定される棒グラフと数値によりリアルタイムに表示する。また、エネルギー消費機器ごとの対応をX軸、時間をY軸、エネルギー消費量をZ軸にした3次元グラフ等により、エネルギー消費機器ごとのエネルギー消費量を視覚的に容易に把握可能にEMSモニタに表示する。さらに、これらエネルギー消費機器が設置される屋内の現在の温度や湿度のデータを、電力消費量に加えて、数字やグラフにより表示してもよい。なお、パソコンPCの画面には、このような「EMSモニタ」のほかに、ユーザが、この機器監視処理を終わりたい場合に選択をする「取消」や、屋内制御装置20による制御処理のすべてを止めたい場合に選択をする「終了」も表示される。
センサユニット36として電流センサを有するセンサタグ30や、電流センサユニット66を有するインテリジェントタップ60からは、ほぼリアルタイム(例えば1秒間隔)に電流データ(電流値)が送信されてくる。またセンサユニット36として温度センサや湿度センサを有するセンサタグ30からも、温度データや湿度データが送信されてくる。そのため、後述するように、屋内制御装置20では、各センサタグ30から電流データ(電流値)Ic、温度データや湿度データを受信し(S305)、これに基づいて各エネルギー消費機器ごとに電力消費量Pc(Pc(W)=Ic(A)×100(V;電源電圧))を算出して(S306,S307)、これらのデータを前述のグラフ表示に用いるため、パソコンPCのEMSアプリに出力している。
ステップS302は入力の判断処理である。即ち、ステップS301によるパソコンPCの画面表示において、ユーザが「終了」を選択したか否かの判断処理が行われる。ユーザによる入力はパソコンPCから行われる。例えば、パソコンPCにマウスやタッチパネル等のポインティングデバイスが設けられている場合にはEMSアプリから送られてくるポインタ情報や番号情報により、「取消」または「終了」のいずれが選択されたか、または何も入力されていないかを判断する。未入力の場合には(S302;入力なし)、続くステップS303に処理を移行する。
また、「取消」が選択されている場合には(S302;「取消」)、本機器監視処理を終了し(RET)、「終了」が選択されている場合には(S302;「終了」)、ステップS311により終了フラグを設定した後、本機器監視処理を終了する(RET)。本機器監視処理を終了してメインルーチン(図10)に処理が戻った後の処理の流れについては、前述したパターン設定処理の場合と同様である(S300→END、またはS300→S105→S102)。
ステップS303ではタグ信号受信処理が行われる。この処理は、センサタグ30から無線ネットワークを介して送られてくるタグ信号(検出データ)を無線ユニット25により受信する処理で、無線ユニット25がタグ信号を受信した場合にはメモリ22のワーク領域に検出データが一時的に格納(記憶)される。タグ信号(検出データ)には、送信元のセンサタグ30のアドレス情報(識別情報)と宛先のアドレス情報(宛先情報)が付加されているため、当該屋内制御装置20の無線ユニット25を宛先とするタグ信号でないものは、受信をしてもその後に破棄される。
続くステップS304により、タグ信号を受信していると判断された場合には(S304;Yes)、次のステップS305により送信ノード識別処理が行われる。一方、タグ信号を受信していないと判断された場合には(S304;No)、新たな検出データは届いていないため、ステップS301に処理を戻して、再度、モニタ画面表示処理を行う。
ステップS305では送信ノード識別処理が行われる。この処理は、検出データに付加されている送信元のアドレス情報(識別情報)に基づいて送信したセンサタグ30を識別して特定するものである。センサタグ30の特定は、屋内制御装置20が予め持っているアドレス帳に基づいて行われる。
このアドレス帳は、メモリ22のワーク領域に記憶されているデータによるソフトウェア的なもので、無線ネットワークに新たなセンサタグ30等のノードが接続されたときに行われるアドレス情報の交換時に新たなそのノードのアドレスが追加(記憶)される。また、最後のタグ信号(検出データ)を受信してから所定期間を経過しても新たなタグ信号(検出データ)が届かない送信ノードは、無線ネットワークに接続されていない可能性が高い。そのため、当該送信ノードのアドレスはアドレス帳から削除される。
ステップS305により送信ノードが識別され特定されると、次のステップS306により検出データ記憶処理が行われる。即ち、前述したように、アドレス情報から、送信元のノードの種類やそのノードがセンサユニットを有する場合にはそのセンサの種類等がわかる。そのため、受信した検出データを、送信元のノードごとに区別されたワーク領域の所定領域に記憶する。この所定領域は、前述したEMSモニタをパソコンPCに画面表示させるEMSアプリによって参照され、エネルギー消費機器ごとのエネルギー消費量の表示データの生成に使用される。
次のステップS307ではモニタ画面更新処理が行われる。この処理は、ステップS305により所定領域に記憶された新たな検出データによって、前述したパソコンPCによるEMSモニタの表示を最新のものに更新するものである。この処理はEMSアプリを介して行われる。パソコンPCによる表示態様等については、<機器監視処理>の冒頭およびその次の段落で説明したとおりである。
続くステップS308では個別目標読出処理が行われ、さらにステップS309により対象機器制御処理が行われる。この2つのステップによる処理は、屋内制御装置20が管理するエネルギー消費機器、例えば、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCLに対して、省エネパターンに基づく制御を行うものである。そのため、モニタ画面更新処理の際に算出した現在の電力消費量(エネルギー消費量)Pcを、例えば省エネが考慮されていない通常時の電力消費量(エネルギー消費量)Pnと比較して、現在の省エネ分の割合(=100−(Pc/Pn)×100(%))を算出する。そして、現在の省エネ分の割合から、目標値取得処理によって上位システムから取得した最新の目標値を減算することによって、実際の目標値を算出する。
例えば、現在の省エネ分の割合が10%で、最新の目標値が20%の場合には、実際の削減目標値は10%(=20%−10%)になる。また、現在の省エネ分の割合が−10%で、最新の目標値が10%の場合には、実際の削減目標値は20%(=10%−(−10%))になる。これらに対し、現在の省エネ分の割合と最新の目標値とがほぼ同じ場合や、現在の省エネ分の割合の方が最新の目標値よりも大きい場合には、現状を維持すべきであることから、実際の削減目標値を0(ゼロ)%に設定する。なお、図13に示す削減目標値においては、0(ゼロ)%は、「−」と表記されている。
このようにして削減目標値を求めた後、前述したように、パターン設定処理(図12に示すS205)によって屋内制御装置20のメモリ22のワーク領域に記憶された省エネパターンから個別目標を読み出し(S308)、その個別目標に基づいて対応するエネルギー消費機器を制御する(S309)。
例えば、屋内制御装置20に設定されている省エネパターンが図13に示すパターンP1(ノーマル)であって、先に求めた削減目標値が、例えば20%である場合には、エアコンACに対しては、夏期であれば現在の設定温度よりも2℃上げ、また冬期であれば現在の設定温度よりも2℃下げる制御が行われる(図13に示す網掛枠内の「↑2/↓2」)。また、テレビTVに対しては電源オンを許容し(図13に示す網掛枠内「ON」)、シーリングライトCLに対しては中間照度までを許容する(図13に示す網掛枠内「M」)。これらの制御は、リモコン付きタグ50による赤外線リモコンによって行われる。そのため、ステップS309による対象機器制御処理では、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCLに対するそれぞれの制御コマンドに対応する制御信号(制御データ)を、無線ユニット25による無線ネットワークを介してリモコン付きタグ50に送信する。
このとき、温度センサを有するセンサタグ30から受信した温度データに基づいて、屋内の温度、つまり室温が所定の温度を超えている(夏期)、または下回っている(冬期)場合には、設定温度の上げ下げを中止したり、緩和したりしてもよい。例えば、夏期であれば室温32℃を超えている場合には、先に求めた削減目標値がたとえ20%であっても、現在の設定温度よりも2℃上げる制御をすることなく、室温の上昇を回避する。同様に、冬期であれば室温が13℃を下回っている場合には、先に求めた削減目標値がたとえ20%であっても、現在の設定温度よりも2℃下げる制御をすることなく、室温の降下を回避する。これにより、屋内のユーザに対して、省エネ偏重による過酷な温度環境を強いる弊害を防止することができる。
なお、エアコンAC等とともにエネルギー消費機器として、当該屋内に加湿器が設置されている場合、湿度センサを有するセンサタグ30から受信した湿度データに基づいて、屋内の湿度が所定の湿度を超えている(夏期)、または下回っている(冬期)ときには、例えば、削減目標に対する通常制御の例外として、加湿器の運転を中止したり、緩和したりしてもよい。
ステップS309による対象機器制御処理を終了すると、ステップS301に処理を戻して、再度、モニタ画面表示処理を行う。なお、対象機器制御処理(S309)により、シーリングライトCLの電源制御(供給(ON)または遮断(OFF))を行う場合には、これらの制御を行う制御信号(制御データ)を、無線ユニット25による無線ネットワークを介してインテリジェントタップ60に送信する。
このように機器監視処理では、EMSモニタによるエネルギー消費量をパソコンPCの画面に表示するとともに、ユーザの好み等に基づいた省エネパターンに従って、エアコンAC等のエネルギー消費機器を制御する。これにより、屋内システム10によるEMS単位でのエネルギー消費の特性およびユーザの意思を取り込んだ「きめ細かい制御」を実現することが可能になる。
<中間制御装置による目標値取得処理>
次に、中間制御装置20’による目標値取得処理を図15を参照して説明する。図15には、図7に示すレイヤLy1の下位ノード110aやレイヤLy2,Ly3の中間ノード120a等の中間制御装置20’により実行される目標値取得処理の流れが図示されている。この処理は、前述したレイヤLy1〜Ly3に属する、下位ノード110a,110b,…,110zや中間ノード120a,120b,…,120z,130a,130b,…,130zの中間制御装置20’によって行われるもので、当該装置の電源投入後から、例えば所定時間(例えば、数秒〜数10秒)ごとに発生するタイマ割り込みによって繰り返し起動されて実行されるものである。
図15に示すように、まずステップS701により上位ノード信号受信処理が行われる。この処理では、上位ノードの制御装置から無線ネットワークを介して送られてくる所定の目標値(目標値データ)を無線ユニット25により受信する。「上位ノードの制御装置」は、当該目標値取得処理を実行する中間制御装置20’が、中間ノード130a,130b,…,130zの制御装置である場合には最上位ノード140の上位制御装置20”になり、また中間ノード120a,120b,…,120zの制御装置である場合には中間ノード130の中間制御装置20’になり、さらに下位ノード110a,110b,…,110zの制御装置である場合には中間ノード120の中間制御装置20’になる。
そして、所定の目標値を上位ノードから受信した場合には(S703;Yes)、当該中間制御装置20’が管理する配下の各ノードによるエネルギー消費量をその受信した所定の目標値以下に抑制するため、予め設定されている制御情報に従って、新たな所定の目標値を各ノードごとに設定する(S705)。制御情報は、例えば、各ノードが有するグループに含まれる、地域、町、家庭等の属性に従って、新たな所定の目標値を決定可能に構成されている。ただし、新たなに設定される所定の目標値は、それにより各ノードが消費するエネルギー量の総和が、上位ノードから受信した所定の目標値により予定されるエネルギー消費量の総和を超えないように、設定されている。
例えば、その地域等による電力消費量(エネルギー消費量)とその時間的な変化(昼間、夜間、曜日、季節等)とに基づいて、電力消費量が大きい時間帯や季節においては比較的緩やかな値を該当グループを含むノードの新たな所定の目標値に設定し、電力消費量が小さい時間帯や季節においては比較的厳しい値をそのノードの新たな所定の目標値として設定し得るように、制御情報が構成されている。また、工業団地のような平日(月曜日〜土曜日)の電力消費量が大きく、休日(日曜、祝日)および平日の夜間の電力消費量が小さい地域に対しては、平日の昼間は比較的緩やかに、また休日および平日の夜間は比較的厳しくなるように、当該地域が属するグループのノードに新たな所定の目標値を設定し得るように、制御情報が構成されている。
町や家庭についても、地域の場合と同様に、電力消費量(エネルギー消費量)とその時間的な変化(昼間、夜間、曜日、季節等)とに基づいて、電力消費量が大きい時間帯や季節においては比較的緩やかな値を、また電力消費量が小さい時間帯や季節においては比較的厳しい値を、そのノードの新たな所定の目標値として設定し得るように、制御情報が構成されている。なお、このような電力消費量(エネルギー消費量)の時間的な変化に関係なく、上位ノードから受信した所定の目標値をそのまま新たな所定の目標値を設定するように、制御情報を構成してもよい。
既に、新たな所定の目標値が設定されている場合には、今回、新たなに設定する所定の目標値に更新する(S705)。なお、「中間制御装置20’が管理する配下の各ノード」は、当該中間制御装置20’が例えば中間ノード130aの制御装置である場合には、中間ノード120a,120b等になり、当該中間制御装置20’が例えば中間ノード120aの制御装置である場合には、下位ノード110a,110b等になる。また、当該中間制御装置20’が、例えば下位ノード110aの制御装置である場合には、配下の各ノードは最下位ノード100a,100b等になる。
一方、所定の目標値を受信していない場合には(S703;No)、本目標値取得処理を一旦終了して次の起動に備える。
ステップS707では、ステップS705により設定または更新した新たな所定の目標値を中間制御装置20’が管理する配下の各ノードに送信する。これにより、中間ノード120a,120b等や下位ノード110a,110b等、あるいは最下位ノード100a,100b等に、新たな所定の目標値が送られる。
このように中間制御装置20’による目標値取得処理では、所定時間(例えば、数秒〜数10秒)ごとに上位ノード(または中間ノード)から所定の目標値を取得し、それに基づいて新たな所定の目標値を下位の中間ノードや下位ノードに送信する。このため、これを受信した中間制御装置20’や屋内制御装置20は、上位システムから届く最新の所定の目標値を常に保持することが可能になる。
このように本EMSでは、最小制御単位である屋内システム10の屋内制御装置20は、最上位ノード140、中間ノード130、中間ノード120等の上位システムから所定の目標値を受信すること以外、リモコン付きタグ50やインテリジェントタップ60等の機器制御装置に関する制御情報を最上位ノード140等の上位システムから得ることなくこれらの各上位システムから独立して、リモコン付きタグ50等の機器制御装置に送信する各制御信号を生成する。そして、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等のエネルギー消費機器によるエネルギー消費量やエネルギー消費量の総和に関する情報を最上位ノード140等の上位システムに送信しない。
これにより、屋内制御装置20は、所定の目標値以外、最上位ノード140等の上位システムに拘束されることなく、エアコンAC等のエネルギー消費機器によるエネルギー消費量の総和を所定の目標値以下にする制御信号を予め設定された制御情報に従って生成し、エアコンAC等のエネルギー消費機器に送信する。つまり、所定の目標値を受信した後は、最上位ノード140等の上位システムから自律した制御が可能になる。そのため、この屋内制御装置20によって管理されるEMS単位でのエネルギー消費の特性およびユーザの意思を取り込んだ「きめ細かい制御」を実現し得るシステムの構築が可能になる。
また、センサタグ30、カメラタグ40、リモコン付きタグ50、インテリジェントタップ60は、いずれもエアコンAC等のエネルギー消費機器に対して別体に設けられ、センサタグ30やカメラタグ40にあってはエアコンAC等のエネルギー消費機器の温度、湿度、照度等の環境物理量または電流量、電力量等のエネルギー消費量を外部から検出し、リモコン付きタグ50やインテリジェントタップ60においてはエアコンAC等のエネルギー消費機器を外部から制御する。これにより、センサタグ30、カメラタグ40、リモコン付きタグ50、インテリジェントタップ60は、エアコンAC等のエネルギー消費機器に対して「後付け(アドオン)」可能に構成されるため、建物内に予め設けられたエアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等の家電機器を改造や改修することなく、これらを「後付け」にしても、本EMSによる制御対象になり得る。したがって、末端のユーザに対して、EMSに対応した家電機器の購入や、改造、改修等を強いることなく本EMSを実現できるため、「使用者負担」を軽くすることができる。
さらに、本EMSと上位システムとの間には、下位ノード110a,110b,…,110z、中間ノード120a,120b,…,120z、中間ノード130a,130b,…,130z等の1つ以上の中間システムが存在しており、上位システムを最上位ノード140(最上位システム)とし本EMSを最下位ノード100a,100b,…,100z(最下位システム)とする論理的に階層化された構造で、この最下位ノード100,100b,…,100zを複数含む階層構造を形成する。そして、所定の目標値は、最下位ノード100a,100b,…,100zのそれぞれの上位に位置するシステムから、それぞれの屋内制御装置20に送られる。
これにより、自律分散型の本EMSが構築されるので、集中管理システムを必要とすることなく、中小規模の地方都市への展開を容易に実現することができる。また、集中管理システムを必要としないため、集中管理システムによる機能面、管理面、運用面における規制や制限に拘束されることなく、本EMSの柔軟な「拡張性」を可能にする。例えば、図8に示したように、屋外通信ネットワークにおいては、ZigBeeのマルチホップ通信による無線アドホックネットワークにより、階層構造の階層間および各階層のシステムを接続する。これにより、本EMSの柔軟な「拡張性」がさらに高まる。また、既存の通信インフラを利用することなく、本EMSの階層間および各階層のシステムの情報通信が可能となるため、本EMSを地方都市規模に拡張しても、既存の通信網に与える影響を最小限に抑えることができる。さらに、上述したように、最上位ノード140等の上位システムから受信する所定の目標値は、2桁の数値データであることから、テキストデータでも2バイト程度で足りるため、送信ヘッダ等を含めても20バイト程度でデータ量が少ない。このため、屋外通信ネットワークがマルチホップ通信による無線アドホックネットワークであっても、遅延等による影響は少なく、むしろアドホックによる柔軟な「拡張性」を得られるメリットの方が大きい。
なお、上述した実施形態では、本EMSは、屋内通信ネットワークや屋外通信ネットワークとして、ZigBeeによる近距離無線ネットワークを採用したが、これに限られるものではなく、Bluetooth や無線LAN等、他の無線ネットワークを構築してもよい。また、屋内システム10については、屋内制御装置20、センサタグ30、カメラタグ40、リモコン付きタグ50、インテリジェントタップ60等が、電源ラインPL(電灯線)により駆動電力の供給を受ける場合には、当該電源ラインPLを介した電力線通信(PLC)によって、屋内通信ネットワークを構築してもよい。同様に、論理的に階層化された構造(図7に示すレイヤLy0〜Ly4)についても、各レイヤのノードを構成する中間制御装置20’や上位制御装置20”等が、電源ラインPL(電灯線)により駆動電力の供給を受ける場合には、当該電源ラインPLを介した電力線通信(PLC)によって、屋外通信ネットワークを構築してもよい。これにより、建物内にLANケーブル等の通信ケーブルを敷設することなく、屋内通信ネットワークを構築することが可能となり、この点においても「使用者負担」が軽減できる。また、電力線通信は、建物間における電波伝搬障害や、無線通信に特有の混信や干渉等による通信障害の影響を受けることがないため、無線ネットワークに比べて回線品質が安定した屋外通信ネットワークの構築が可能となる。
また、上述した実施形態では、本EMSがエネルギー管理をする生活必需エネルギーのうち、電気(電力供給)に関する場合を例示して説明したが、ガス、水道等についても、ほぼ同様に管理することができる。例えば、エネルギー消費機器として、ガスによる温水式床暖房システムや、水道水による水冷式エアコン等がある。ガスや水道の使用量は、ガスメータGMや水道メータのカウンタ表示(数値表示)をカメラタグ40により読み取ることにより検出する(図1参照)。所定の目標値は、ガスや水道水を供給する事業者による上位システムから送られてくるため、上述した本EMSのエアコンAC等と同様に、図13に示すような省エネパターンに従って、床暖房システムや水冷式エアコンの温度設定やオンオフ制御を行う。これらの設定や制御は、床暖房システムや水冷式エアコンに対しても、「後付け(アドオン)」を可能にするため、ワイヤレスリモコンにより行い、例えば、屋内制御装置20からリモコン付きタグ50を介して制御する。このように構成することによって、ガス、水道等についても上述した本EMSによる制御が可能になる。
なお、このようなガス、水道等に関するEMSと、上述した電力供給に関するEMSとは、それぞれが独立に動作するのではなく、互いに連携している。即ち、例えば、図1に示す屋内システム10のEMSにおいては、屋内制御装置20は、ガス、水道等の制御も電力と統合して行う。これにより、屋内システム10よりも上位のレイヤにおける目標値は、各レイヤの中間制御装置20’ごとに異なるが、「使用者」はこれらの目標値を達成するうえにおいて、電気、ガス、水道等を含めた自分にとって最適な省エネパターンを構築することが可能となる。
なお、上述した本EMSでは、エネルギー消費機器の例として、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等の家電機器を挙げたが、生活必需エネルギーを消費する物以外に、例えば、工場であれば、プレス、旋盤等の加工機械、工作機械、工業用ロボット、運搬ライン設備機械、自動倉庫用設備、照明機器、空調設備機器等々、電気エネルギーを消費するものが含まれる。また、競技場のナイター照明設備等の屋外照明設備や道路や歩道を照らす街灯も含まれる。ネオンサイン、LED看板、デジタルサイネージ等の屋外看板電気設備も含まれる。
ここで、本EMSの改変例を図16に基づいて説明する。図16(A) には、屋内制御装置20により実行される達成度情報生成処理の流れが図示されている。また、図16(B) には、レイヤ2,3の中間ノードの中間制御装置20’により実行される達成度情報取得処理の流れが図示されている。
まず、屋内制御装置20により実行される達成度情報生成処理から説明する。この処理は、例えば、前述した機器監視処理(例えばS309の後でS301に戻る前)において行われる。また、これらの処理とは独立して、例えば、当該装置の電源投入後から所定時間(例えば、数秒〜数10秒)ごとに発生するタイマ割り込みによって繰り返し起動して実行してもよい。
図16(A) に示すように、屋内制御装置20により実行される達成度情報生成処理では、まず、ステップS801により、エアコンAC、テレビTV、シーリングライトCL等のエネルギー消費機器によるエネルギー消費量の総和を所定の目標値以下にすることについて、目標値に対する達成度を算出する。例えば、((1−(エネルギー消費量の総和/省エネが考慮されていない通常時の全エネルギー消費量))×100(%)/所定の目標値(%))×100により、達成度(%)が求められる。また、この達成度(%)を8倍して100で割った値の整数値(小数点第1位で四捨五入)を、0〜7の8段階評価による達成度にしてもよい。さらに、((1−(エネルギー消費量の総和/省エネが考慮されていない通常時の全エネルギー消費量))×100(%))≧(所定の目標値(%))を満たすか否か(Yes/No)により、単に、所定の目標値を達成できた(Yes)か否か(No)を判断し、その結果を達成度として1ビットで表現してもよい。これにより得られた達成度は、ステップS803により上位システムに送信される。
これに対し、図16(B) に示すように、その上位システム(例えば、レイヤLy2の中間ノード120a)の中間制御装置20’では、ステップS901による下位ノード受信処理により、下位ノード信号を受信する(S903;Yes)。そして、下位ノード信号を受信した場合には(S903;Yes)、受信した達成度データを、他の下位ノードから受信した達成度データとともに合算して達成度データの平均を算出する(ステップS905)。算出された達成度の平均値は、当該中間ノード120aの達成度データとして、ステップS907により上位システムに送信される(S907)。下位ノード信号を受信しない場合(S903;No)、本達成度情報取得処理を一旦終了し次の起動に備える。
このように、本EMSの改変例では、所定の目標値に対する達成度データ(達成度合いの情報)は上位システムに送信するが、エアコンAC等の複数のエネルギー消費機器によるエネルギー消費量やその総和に関しては上位システムに送信しない。これにより、例えば、エアコンAC等の複数のエネルギー消費機器によるエネルギー消費量を上位システムに送信する場合には、エネルギー消費機器の台数分のデータを毎回上位システムに送信するか、または複数回に分けて上位システムに送信することになるのに対して、達成度データは、最小で1ビット(所定の目標値を達成できたか否か)、最大でも3バイト(0〜100(%)の数値部分のテキストデータ表現)で足りるため、エネルギー消費機器の台数に関係なく上位システムに送信するデータ量は非常に少ない。したがって、屋外通信ネットワークとして、ZigBeeによる無線メッシュネットワークを用いても、伝送速度が低速であることや、多数の中継を経由するによる影響を受け難い。
また、本EMSを適用した他の実施形態を図17に基づいて説明する。図17には、他の実施形態に係るEMSの構成例を示す説明図が図示されている。図17(A) に示すように、多様な自然エネルギー(太陽光/風力等)による発電装置と、小型蓄電器や電気自動車(蓄電器)とを、住宅やビル等に導入した例においては、これらは直流機器であると同時にその電気特性(電圧、電流)も一定ではない。このため、既存の交流電力系統とは別に直流電力線を設置し、各機器の状態(発電量、蓄電量)に応じた制御を行う必要がある。特に、太陽光発電では、日光の照射量による発電量変化に応じた最適な負荷をかけないと効率が低下する(最適負荷制御機)。また、蓄電池も蓄電量で負荷を制御したり、複数の蓄電池(EV(電気自動車)等)がある場合は適切なものを充電したりする必要がある(充電モニタ)。
そこで、最適負荷制御機、充電モニタ、電力系切替スイッチ(SW)、さらには外部電力系と内部発電系とによる電力供給バランスを調整する電力制御機、を外部から監視したり制御したりし得る構成を前述の屋内制御装置20(図1)に付加した屋内制御装置220を設ける。上述したように本EMSでは、「後付け(アドオン)」により、容易に屋内通信ネットワークが構築できるため、これらの諸機能を有する屋内制御装置220による制御も「使用者負担」を抑えながら可能にする。
また、図17(B) に示すように、地域の随所に自然エネルギーによる発電装置が設置され、これらを含めた地域での最適制御と各地域で生産されたエネルギーをその地域で有効活用するコミュニティの例においては、制御系が、地域の自然エネルギーによる発電装置と街灯等の地域のエネルギー消費機器、公民館等に設置される地域の蓄電装置や商業施設等に集合する電気自動車(EV)への充電装置等を一体化して、地域単位で制御を行う。この場合、住民の居住地域と電力伝送系における配電地域単位(送配電線の接続形態)は必ずしも一致しない。
そこで、上述したように屋外通信ネットワークをメッシュネットワークにより構成する本EMSをこのような地域の制御系に適用することによって、住民の居住地域を1つの論理ネットワークの単位として制御することが可能になる(図17(B) に示す符号220’)。
さらに、図17(C) に示すように、大規模な自然エネルギーによる発電所が国内各地に設置されて、直流超伝導技術による基幹伝送路を導入した例においては、これらは、大都市や主な地方都市に直流で送電され、既存の交流基幹網と併存することになる。このような電力供給システムでは、既存の交流配電綱を前提とした地域単位のEMSと、直流送電網を含めた上位レイヤLy4および全国レベルのEMSと、を制御系に要する。直流超伝導技術による送配電では、遠距離であっても抵抗損失が殆どないことから、発電所と消費/蓄電装置との間が地理的に離れている場合でも制御系による制御上の障害にならない。そのため、このような超伝導伝送路で繋がっている地域間においては、両地域を論理ネットワークによる上位レイヤに包含した制御が可能になる。ただし、一般家庭等のレイヤLy1に含まれる下位ノード110a(図7参照)等は、既存の交流配電綱により電力供給を受けることから、地域単位での制御が必要になる。
そこで、既存の通信インフラから独立した通信ネットワークにより屋外通信ネットワークを構築する本EMSを、このように各地域ごとに電力の供給条件や供給状態が異なる制御系に適用することによって、各地域ごとに電力の供給条件や供給状態に適合した柔軟な制御が可能になる(図17(C) に示す符号220”)。