JP2013127393A - 蛍光検出装置及び蛍光検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定対象物にレーザ光を照射したときに発せられる蛍光を検出する蛍光検出装置であって、強度変調したレーザ光を測定対象物に照射するレーザ光源部と、レーザ光を強度変調するための変調周波数を有する変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、散乱光の光信号の増幅を行う第1の光増幅部と、増幅された散乱光の光信号を受光し、散乱光の電気信号を出力する第1の受光素子と、前記変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、蛍光の光信号の増幅を行う第2の光増幅部と、増幅された蛍光の光信号を受光し、蛍光の電気信号を出力する第2の受光素子とを含む受光部と、散乱光の電気信号と蛍光の電気信号とを用いて、変調信号に対する蛍光の位相差を算出し、位相差から蛍光の蛍光緩和時間を求める処理部と、を有する。
【選択図】図1
Description
蛍光検出装置及び蛍光検出方法を用いたフローサイトメータは、蛍光試薬でラベル化された細胞、DNA、RNA、酵素、蛋白等の測定対象物をシース液に流す。この測定対象物にレーザ光を照射することにより、測定対象物に付与された蛍光色素が蛍光を発する。フローサイトメータは、この蛍光を検出することにより、測定対象物の情報を取得することができる。
当該蛍光検出装置は、
強度変調したレーザ光を前記測定対象物に照射するレーザ光源部と、
前記レーザ光を強度変調するための変調周波数を有する変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに前記測定対象物で散乱する前記レーザ光の散乱光の光信号を増幅する第1の光増幅部と、第1の光増幅部によって増幅された前記散乱光の光信号を受光し、前記散乱光の電気信号を出力する第1の受光素子と、前記変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに発せられる蛍光の光信号を増幅する第2の光増幅部と、第2の光増幅部によって増幅された前記蛍光の光信号を受光し、前記蛍光の電気信号を出力する第2の受光素子とを含む受光部と、
前記受光部から出力された前記散乱光の電気信号と前記蛍光の電気信号とを用いて、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差を算出し、前記位相差から前記蛍光の蛍光緩和時間を求める処理部と、を有する。
また、前記第1の光増幅器は、前記変調信号に対する前記散乱光の位相差の情報を含む光信号を出力する、ことが好ましい。
さらに、前記第2の光増幅器は、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差の情報を含む光信号を出力する、ことが好ましい。
当該蛍光検出方法は、
強度変調したレーザ光を前記測定対象物に照射するステップと、
前記レーザ光を強度変調するための変調周波数を有する変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに前記測定対象物で散乱する前記レーザ光の散乱光の光信号を増幅するステップと、
増幅された前記散乱光の光信号を受光し、前記散乱光の電気信号を出力するステップと、
前記変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに発せられる蛍光の光信号を増幅するステップと、
増幅された前記蛍光の光信号を受光し、前記蛍光の電気信号を出力するステップと、
出力された前記散乱光の電気信号と前記蛍光の電気信号とを用いて、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差を算出し、前記位相差から前記蛍光の蛍光緩和時間を求めるステップと、を有する。
<第1実施形態>
(フローサイトメータの構成)
まず、図1を参照して、第1実施形態のフローサイトメータの構成について説明する。図1は、本実施形態のフローサイトメータの一例を示す概略構成図である。フローサイトメータは、測定対象物12にレーザ光を照射し、レーザ光が照射された測定対象物12から発せられる蛍光を受光することにより、測定対象物12の情報を取得することができる。
フローサイトメータは、フローセル10と、レーザ光源部20と、第1受光部30と、第2受光部40と、制御部50と、分析装置60と、出力部70と、を備える。また、フローセル10の下流には、測定対象物12を回収するための容器16が配置される。以下、各構成について詳細に説明する。
図2に示すように、レーザ光源部20は、レーザ光源21と、レンズ系22と、レーザドライバ23とを有している。
レーザ光源21は、強度が一定のCW(連続波)レーザ光を強度変調して出射する。
レンズ系22は、レーザ光源21から出射されたレーザ光を、フローセル10中の所定の測定点(測定場)に集束させる。
レーザドライバ23は、後述する制御部50と電気的に接続されており、制御部50から供給された変調信号の周波数(変調周波数)でレーザ光の強度を変調するように構成されている。
なお、レーザ光源部20は、1つのレーザ光源を用いてもよいし、複数のレーザ光源を用いてもよい。複数のレーザ光源が用いられる場合には、複数のレーザ光源からのレーザ光がダイクロイックミラー等を用いて合成されることにより、測定場に向けて出射されるレーザ光が形成されることが好ましい。
第1受光部30は、例えば、フォトダイオード等の光電変換器を備える。光電変換器は、受光した前方散乱光を電気信号に変換する。
第1受光部30の光電変換器によって変換された電気信号は分析装置60へ出力され、当該電気信号は、測定対象物12がフローセル10の測定場を通過するタイミングを知らせるためのトリガ信号として用いられる。
また、第1受光部30は、例えば、前方散乱光を光電変換器に集束させるレンズ系(図示省略)と、レーザ光が光電変換器に直接入射しないようにレンズ系の測定対象物12側前面に設けられた遮蔽板(図示省略)とを有してもよい。
図3に示すように、第2受光部40は、レンズ系41と、ダイクロイックミラー42と、ハーフミラー43a,43bと、バンドパスフィルタ(BPF)44a,44b,44c,44dと、光増幅器45a,45b,45c,45dと、信号処理部46a,46b,46c,46dと、パワースプリッタ47a,47bと、90度位相シフタ48a,48bと、を有する。
レンズ系41は、第2受光部40に入射した光を集光する。
ダイクロイックミラー42は、レンズ系41を透過した光のうち、レーザ光の側方散乱光の波長領域の光を反射し、蛍光の波長領域を含む波長領域の光を透過させるミラーである。
ハーフミラー43aは、ダイクロイックミラー42で反射した側方散乱光の一部を透過させるとともに、残りの側方散乱光を反射することにより、側方散乱光を2方向に分配するミラーである。また、ハーフミラー43bは、ダイクロイックミラー42を透過した蛍光の一部を透過させるとともに、残りの蛍光を反射することにより、蛍光を2方向に分配するミラーである。なお、ハーフミラー43a,43bの代わりに、ビームスプリッタを用いてもよい。
BPF44a,44b,44c,44dは、光増幅器45a,45b,45c,45dそれぞれの前面に設けられ、所定の波長帯域の蛍光あるいは側方散乱光のみを透過させるフィルタである。なお、透過させる側方散乱光あるいは蛍光の波長帯域は、側方散乱光の波長帯域、あるいは蛍光色素14が発する蛍光の波長帯域に対応して設定されている。また、BPF44a,44b,44c,44dの代わりに、バンドリジェクトフィルタを用いてもよい。
光増幅器45a,45bは、側方散乱光の光信号を増幅するために設けられており、パワースプリッタ47aを介して制御部50と電気的に接続され、制御部50から送信された変調信号でバイアスされている。また、光増幅器45bは、90度位相シフタ48aを介してパワースプリッタ47aと接続されている。制御部50から送信された変調信号は、パワースプリッタ47aにより分配される。そして、光増幅器45aには、制御部50から送信された変調信号と同相の信号が供給される。一方、光増幅器45bに供給される信号は、90度位相シフタ48aによって、制御部50から送信された変調信号に対して90度位相がシフトしている。これにより、光増幅器45a,45bのそれぞれを構成するレーザ媒質の原子あるいは分子は、変調信号により励起される。そして、側方散乱光が入射すると、レーザ媒質の原子あるいは分子の誘導放出により、光増幅器45a,45bに入射した側方散乱光は増幅される。なお、光増幅器45a,45bは、本発明における第1の光増幅部の一例である。
光増幅器45a,45bを用いることにより、側方散乱光の光信号が電気信号に変換される前に、側方散乱光の光信号を増幅することができる。
光増幅器45c,45dを用いることにより、蛍光の光信号が電気信号に変換される前に、蛍光の光信号を増幅することができる。
光増幅器45cを構成するレーザ媒質の原子あるいは分子は、変調信号のエネルギーを吸収すると、基底状態から励起状態に遷移し、一定時間後に光を放出(自然放出)して、再び基底状態に戻る。また、励起状態の原子あるいは分子は、変調信号と同じ周波数の光信号(蛍光信号)が入射されると、同一方向に向けて連鎖反応的に光を放出(誘導放出)する。レーザ媒質の原子あるいは分子が単位時間あたりに自然放出、吸収または誘導放出する確率は、それぞれA、B12W、B21Wで表される。ここで、Wは入射光のエネルギー密度であり、A,B12,B21は状態が遷移する確率である。また、原子あるいは分子の集団が熱平衡状態にある場合、B12=B21であることから、以降ではB12及びB21のそれぞれを単にBと表す。
基底状態の原子あるいは分子の密度(占位数)をN1、励起状態の原子あるいは分子の密度(占位数)をN2としたとき、N1,N2の時間変化を表す微分方程式(レート方程式)は、以下の式(1)のように示される。下記の式(1)では、励起状態の原子あるいは分子の密度の時間変化(式(1)の左辺)は、励起状態の原子あるいは分子の自然放出の発生頻度(式(1)の右辺第1項)と、誘導放出の発生頻度(式(1)の右辺第2項)に応じて低減することを示している。
また、光増幅器45dは、制御部50から送信された変調信号に対して90度位相シフトした信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、光増幅器45cと同様に、蛍光の光信号を増幅する。このとき、光増幅器45dは、蛍光の光信号とバイアス信号とをミキシングした結果を得ることができる。なお、光増幅器45dから出力された蛍光の光信号の低周波成分は、後述する信号処理部46dにおいて、変調信号に対する蛍光の位相差の情報である虚数部成分(Im成分)として得られる。
さらに、光増幅器45aは、変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、側方散乱光の光信号を増幅することができるとともに、側方散乱光の光信号と変調信号とをミキシングした結果を得ることができる。なお、光増幅器45aから出力された側方散乱光の光信号の低周波成分は、後述する信号処理部46aにおいて、変調信号に対する側方散乱光の位相差の情報である実数部成分(Re成分)として得られる。
さらにまた、光増幅器45bは、制御部50から送信された変調信号に対して90度位相シフトした信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、光増幅器45aと同様に、側方散乱光の光信号を増幅する。このとき、光増幅器45bは、側方散乱光の光信号とバイアス信号とをミキシングした結果を得ることができる。なお、光増幅器45bから出力された側方散乱光の光信号の低周波成分は、後述する信号処理部46bにおいて、変調信号に対する側方散乱光の位相差の情報である虚数部成分(Im成分)として得られる。
光電変換器462は、例えばフォトダイオードや光電子増倍管等であり、蛍光あるいは側方散乱光の光信号を受光し、光信号を電気信号に変換して出力する受光素子を有している。ここで、フォトダイオードは、光電子増倍管と比べて、量子効率が優れている一方で、増幅率が劣るという特性を有している。このため、蛍光の光信号を増幅する光電変換器を用いて蛍光を検出する従来技術の構成では、フォトダイオードを光電変換器に用いることが困難であった。一方、本実施形態では、蛍光の光信号が光増幅器45c,45dによって増幅されていることから、光電変換器で蛍光の光信号を増幅させなくてもよい。これにより、本実施形態では、従来技術において光電変換器に用いることが困難であったフォトダイオードを、光電変換器462に用いることができる。なお、信号処理部46a,46bの光電変換器462に含まれる受光素子は、本発明における第1の受光素子の一例であり、信号処理部46c,46dの光電変換器462に含まれる受光素子は、本発明における第2の受光素子の一例である。
LPF463は、光電変換器462から出力された蛍光あるいは側方散乱光の電気信号のうち、変調信号の周波数と蛍光信号の周波数との加算周波数を成分とする高周波成分を除去し、変調信号の周波数と蛍光信号の周波数との差分周波数を成分とする低周波成分を通過させるためのフィルタである。これにより、側方散乱光の電気信号の実数部成分(Re成分)が、信号処理部46aのLPF463から出力され、側方散乱光の電気信号の虚数部成分(Im成分)が、信号処理部46bのLPF463から出力される。また、蛍光の電気信号の実数部成分(Re成分)が、信号処理部46cのLPF463から出力され、蛍光の電気信号の虚数部成分(Im成分)が、信号処理部46dのLPF463から出力される。LPF463から低周波信号が出力されることにより、LPF463以降の信号処理において、高周波回路よりも製作するのが容易な低周波回路を用いてフローサイトメータを構成することができる。
なお、光電変換器462に低速な受光素子を用いた場合、電気信号の高周波成分が受光素子において自ずと除去されるので、例えば、光電変換処理後に、電気信号用のフィルタを用いて電気信号の高周波成分を除去する処理を行なくてもよい。これにより、信号処理部46a,46b,46c,46dの部品点数を低減することができるので、結果として、フローサイトメータの製造コストを低減することができる。
信号処理部46aのA/D変換器464は、LPF463から出力された側方散乱光の電気信号のRe成分をデジタルデータに変換する。信号処理部46bのA/D変換器464は、LPF463から出力された側方散乱光の電気信号のIm成分をデジタルデータに変換する。信号処理部46cのA/D変換器464は、LPF463から出力された蛍光の電気信号のRe成分をデジタルデータに変換する。信号処理部46dのA/D変換器464は、LPF463から出力された蛍光の電気信号のIm成分をデジタルデータに変換する。変換されたデジタルデータのそれぞれは、分析装置60に供給される。
発振器51から出力された所定の周波数の信号(変調信号)は、パワースプリッタ52により、2つのアンプ53,54に分配される。アンプ53で増幅された変調信号
は、レーザ光源部20へ出力される。また、アンプ54で増幅された変調信号は、第2受光部40へ出力される。アンプ54で増幅された変調信号を第2受光部40へ出力するのは、前述したように、変調信号を、第2受光部40の光増幅器45a,45b,45c,45dのバイアス信号として用いるためである。
なお、分析装置60は、本発明における処理部の一例である。
また、位相差算出部61は、第2受光部40の信号処理部46cから受信した蛍光の電気信号のRe成分のデータと、第2受光部40の信号処理部46dから受信した蛍光の電気信号のIm成分のデータとを用いてtan−1(Im/Re)(ImはIm成分のデータの値、ReはRe成分のデータの値である)を算出することにより、変調信号に対する蛍光の位相差θを算出する。
さらに、位相差算出部61は、θ−θ´を算出することにより、変調信号に対する蛍光の位相差θを補正する。このように補正が行われるのは、変調信号の伝送線路と、蛍光や側方散乱光の光信号の伝送経路による位相のずれを補正するためである。
そして、位相差算出部61は、補正された位相差θを蛍光緩和時間算出部62に送信する。
蛍光緩和時間算出部62は、位相差算出部61から受信した位相差θを用いて、蛍光緩和時間τをτ=tanθ/(2πf)(fは変調信号の周波数の値である)に従って求める。蛍光緩和時間τを、上記式に従って求めることができるのは、蛍光は、略1次遅れの緩和応答に従うからである。
以上が本実施形態のフローサイトメータの概略構成である。
図7は、本実施形態の蛍光検出方法のフローの一例を説明する図である。本実施形態の蛍光検出方法は、測定対象物12にレーザ光を照射し、レーザ光が照射された測定対象物12から発せられる蛍光を受光することにより、測定対象物12の情報を取得することができる。
まず、制御部50の発振器51は、所定の周波数の信号、例えば正弦波信号やパルス信号等を変調信号として生成し(ステップS1)、生成された変調信号をレーザ光源部20及び第2受光部40に供給する(ステップS2)。
一方、第2受光部40の光増幅器45a,45b,45c,45dは、発振器51から供給された変調信号を用いたバイアス信号でバイアスされている。測定場を通過する測定対象物12にレーザ光が照射された際に発せられる蛍光が第2受光部40に受光されると、光増幅器45c,45dは、蛍光の光信号の増幅を行う(ステップS4)。これにより、変調信号に対する蛍光の位相差の情報であるRe成分を含む光信号と、変調信号に対する蛍光の位相差の情報であるIm成分を含む光信号とがそれぞれ増幅される。また、レーザ光が照射された際に測定対象物12で散乱したレーザ光の側方散乱光が第2受光部40に受光されると、光増幅器45a,45bは、側方散乱光の光信号の増幅を行う。これにより、変調信号に対する側方散乱光の位相差の情報であるRe成分を含む光信号と、変調信号に対する側方散乱光の位相差の情報であるIm成分を含む光信号とがそれぞれ増幅される。光増幅器45a,45b,45c,45dにて増幅された光信号は、信号処理部46a,46b,46c,46dにおいて電気信号に変換される。このとき、蛍光の電気信号のRe成分及びIm成分のデジタルデータと、側方散乱光の電気信号のRe成分及びIm成分のデジタルデータとが、信号処理部46a,46b,46c,46dから出力される。
そして、蛍光緩和時間算出部62は、位相差算出部61が算出した位相差θを用いて、蛍光緩和時間τを求める(ステップS6)。
出力部70は、求められた蛍光緩和時間τ等の情報を出力する。
また、側方散乱光の電気信号と蛍光の電気信号とを用いて、変調信号に対する蛍光の位相差θを算出しているので、変調信号の伝送線路と、蛍光や側方散乱光の光信号の伝送経路とによる位相を含まない位相差θを算出することができる。したがって、精度の高い位相差θを用いて蛍光緩和時間を求めることができるので、精度の高い蛍光緩和時間を取得することができる。
さらに、変調信号を用いたバイアス信号でバイアスされた光増幅部45a,45b,45c,45dが、蛍光あるいは側方散乱光の光信号を増幅することにより、蛍光あるいは側方散乱光の光信号と、バイアス信号とがミキシングされる。このため、例えば、電気信号を混合するためのミキサー等の混合器を設ける必要がない。したがって、光信号を増幅するための装置と、混合器とを個別に設ける必要がないので、部品点数を低減することができ、フローサイトメータの製造コストを低減することができる。
図8を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。図8は、図3に示した第2受光部の変形例を説明する図である。
上記実施形態では、側方散乱光の光信号を2つに分配して光増幅器45a,45bに入射するとともに、蛍光の光信号を2つに分配して光増幅器45c,45dに入射するように構成されている。本変形例では、図8に示すように、側方散乱光の光信号を1つの光増幅器45aに入射するとともに、蛍光の光信号を1つの光増幅器45cに入射するように構成した点において上記実施形態と異なる。
本変形例の光増幅器45a,45cは、パワースプリッタ47aを介して制御部50と電気的に接続されている。また、光増幅器45cは、90度位相シフタ48aを介してパワースプリッタ47aと接続されている。制御部50から送信された変調信号は、パワースプリッタ47aにより分配される。そして、光増幅器45aには、制御部50から送信された変調信号と同相の信号が供給される。一方、光増幅器45cに供給される信号は、90度位相シフタ48aによって、制御部50から送信された変調信号に対して90度位相がシフトしている。また、制御部50は、所定時間(例えば数マイクロ秒)経過する毎に、変調信号の位相を切替えて第2受光部40に送信する。具体的には、制御部50は、発振器51から出力された変調信号と同相の信号、例えば正弦波信号を第2受光部40に送信し、所定時間経過すると、発振器51から出力された変調信号に対して90度位相シフトした信号、例えば余弦信号を第2受光部40に送信する。そして、制御部50は、所定時間経過すると、第2受光部40に送信する信号を、発振器51から出力された変調信号と同相の信号に切替える。このような処理が繰り返されることにより、制御部50から送信される変調信号の位相が切替えられる。
これにより、側方散乱光の位相差のRe成分を含む光信号と、側方散乱光の位相差のIm成分を含む光信号とを、1つの光増幅器45aから時間的に前後して出力するとともに、蛍光の位相差のRe成分を含む光信号と、蛍光の位相差のIm成分を含む光信号とを、1つの光増幅器45cから出力することができる。
このように、本変形例によれば、上記実施形態と同様に、光増幅部45cを用いて蛍光の光信号を増幅しているので、蛍光の光信号が電気信号に変換される前に蛍光の光信号を増幅することができる。これにより、入射する蛍光の光子数が少ない場合であっても、蛍光の強度を高めることができるので、蛍光の光信号が電気信号に変換された後に、蛍光の電気信号が他の電気信号に埋もれて抽出困難となる可能性、さらに蛍光の電気信号がノイズとして除去される可能性を低減することができる。したがって、蛍光の強度が低い場合であっても、蛍光を検出することができ、ひいては精度の高い蛍光緩和時間を取得することができる。
また、側方散乱光の電気信号と蛍光の電気信号とを用いて、変調信号に対する蛍光の位相差θを算出しているので、変調信号の伝送線路と、蛍光や側方散乱光の光信号の伝送経路とによる位相を含まない位相差θを算出することができる。したがって、精度の高い位相差θを用いて蛍光緩和時間を求めることができるので、精度の高い蛍光緩和時間を取得することができる。
さらに、変調信号を用いたバイアス信号でバイアスされた光増幅部45a,45cが、蛍光あるいは側方散乱光の光信号を増幅することにより、蛍光あるいは側方散乱光の光信号と、バイアス信号とがミキシングされる。このため、例えば、電気信号を混合するためのミキサー等の混合器を設ける必要がない。したがって、光信号を増幅するための装置と、混合器とを個別に設ける必要がないので、部品点数を低減することができ、フローサイトメータの製造コストを低減することができる。
また、本変形例では、蛍光の光信号を2つに分配する必要がないので、上記実施形態のハーフミラー43a,43b、BPF44b,44d、光増幅器45b,45d、信号処理部46b,46dを設ける必要がない。このため、部品点数を低減して、フローサイトメータの製造コストを低減することができる。
以下に、第2実施形態の蛍光検出装置及び蛍光検出方法を適用したフローサイトメータについて説明する。第2実施形態のフローサイトメータの構成は、第1実施形態のフローサイトメータの構成とほぼ同じである。第2実施形態のフローサイトメータが第1実施形態のフローサイトメータと異なる点は、信号値が符号化された信号(符号化系列信号)を、レーザ光を強度変調するための変調信号及びバイアス信号として用いる点にある。具体的には、本実施形態の発振器51の構成が、第1実形態の発振器51の構成と異なっている。
発振器51は、所定の符号化系列信号を生成し、この符号化系列信号を、アンプ53,54に供給する。発振器51は、変調信号としてレーザ光源部20に供給される符号化系列信号の生成と、光増幅器45a,45bのバイアス信号として第2受光部40に供給される符号化系列信号の生成を繰り返し行う。
なお、符号化系列信号として、信号値が所定長さで符号化された信号であって、ビット方向にビット単位でシフトすることにより、シフト前の信号とシフト後の信号とが互いに略直交するように構成された信号が用いられる。ビット方向とは、信号値の配列方向をいう。このような符号化系列信号として、例えば、PN符号化系列信号が好適に用いられる。PN符号化系列信号は、M系列あるいはGold系列の符号を用いた信号であることが好ましく、特に、M系列が後述する相関特性の点で好ましい。
なお、M系列とは、発振器20が、シフトレジスタ符号発生器を有し、このシフトレジスタ符号発生器は、m段(mは自然数)のシフトレジスタと、シフトレジスタの各段の状態の論理結合をシフトレジスタの入力へフィードバックする論理回路とで構成されるとき、信号長さLが2m−1で表されたものをいう。Gold系列は、2つのM系列を、同期してビットごとに加算したものである。従って2つの符号発生器の位相関係は不変であり、生成される系列の長さはもとになる系列の長さと同じ長さであるが、M系列にはならないものである。
PN符号化系列信号は、一例を挙げると以下のように作成されるPN系列符号のデータを用いて信号化したものである。
次数k=5、符号系列の長さn=31とし、係数h1=1,h2=1,h3=0,h4=1,h5=1とし、初期値a0=1,a1=1,a2=0,a3=1,a4=0としたとき下記式(15)に示す漸化式で一意的にPN系列符号C={ak}(kは自然数)を求めることができる。
この符号化系列信号を生成するために用いられる系列符号C,Tq1・C,Tq2・Cは、互いに直交する特性を有するので、生成される符号化系列信号も互いに直交する性質を有する。
すなわち、系列符号CとC´は自己相関性を持ち、かつ略直交性を有するといえる。
このようなPN系列符号の値を0,1として時系列信号としたのがPN符号化系列信号である。
発振器51は、このようなPN符号化系列信号を生成する。
パラレル・シリアル変換器51b,51cを用いるのは、符号化系列信号を高速化させるためである。また、クロック信号発生器51fを用いるのは、パラレル・シリアル変換器51b,51cのシリアル信号として生成され、アンプ53及びアンプ54に送られる2つの符号化系列信号を同期あるいは遅延時間を制御するためである。同期あるいは遅延時間を制御するのは、例えば、光増幅器45c,45dを用いて蛍光の増幅処理を行うとき、アンプ54に送られる符号化系列信号が、光増幅器45c,45dにて蛍光の光信号とミキシングされることにより、光増幅器45c,45dに入射する蛍光の光信号との間で相関関数を作成するためである。なお、光増幅器45c,45dに入射する蛍光の光信号は、アンプ53に送られる符号化系列信号によって変調されている。
発振器51は、分析装置60からのパルス信号、あるいは図示されない制御装置からのパルス信号、に応じて、符号化系列信号を繰り返し生成する。
光増幅器45a,45b,45c,45dでの増幅時におけるミキシングでは、遅延した符号化系列信号をa(t+Δ)とし、入射光(蛍光)の光信号をb(t)としたとき、a(t+Δ)×b(t)の演算を行う。ここでΔは、遅延時間であり、Δ=k・Δt(kは自然数であり、データポイント上の1ビットのシフト量を表す)である。
また、位相差算出部61は、符号化系列信号の1周期の時間のうち相関関数の値が最大となる遅延時間Δ1を求め、求められた遅延時間Δ1を用いて2πf・Δ1(fは変調周波数の値である)を算出することにより、変調信号に対する蛍光の位相差θと、変調信号に対する側方散乱光の位相差θ´とを算出する。なお、位相差算出部61において求められる相関関数は、回路の帯域が無限大である場合、自己相関関数となる。
さらに、位相差算出部61は、θ−θ´を算出することにより、変調信号に対する蛍光の位相差θを補正する。
蛍光緩和時間算出部62は、位相差算出部61から受信した位相差θを用いて、蛍光緩和時間τをτ=tanθ/(2πf)に従って求める。
したがって、符号化系列信号を用いて蛍光検出を行う場合、測定場における測定対象物12の滞在時間を長くすることが好ましく、例えば、蛍光顕微鏡に本実施形態の蛍光検出装置及び蛍光検出方法を適用することが好ましい。
12 測定対象物
20 レーザ光源部
30 第1受光部
40 第2受光部
45a,45b,45c,45d 光増幅器
50 制御部
51 発振器
60 分析装置
61 位相差算出部
62 蛍光緩和時間算出部
70 出力部
Claims (5)
- 測定対象物にレーザ光を照射したときに発せられる蛍光を検出する蛍光検出装置であって、
強度変調したレーザ光を前記測定対象物に照射するレーザ光源部と、
前記レーザ光を強度変調するための変調周波数を有する変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに前記測定対象物で散乱する前記レーザ光の散乱光の光信号を増幅する第1の光増幅部と、第1の光増幅部によって増幅された前記散乱光の光信号を受光し、前記散乱光の電気信号を出力する第1の受光素子と、前記変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに発せられる蛍光の光信号を増幅する第2の光増幅部と、第2の光増幅部によって増幅された前記蛍光の光信号を受光し、前記蛍光の電気信号を出力する第2の受光素子とを含む受光部と、
前記受光部から出力された前記散乱光の電気信号と前記蛍光の電気信号とを用いて、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差を算出し、前記位相差から前記蛍光の蛍光緩和時間を求める処理部と、を有する、
ことを特徴とする蛍光検出装置。 - 前記バイアス信号は、前記変調信号と同相の信号と、前記変調信号に対して90度位相シフトした信号とを含む、請求項1に記載の蛍光検出装置。
- 前記第1の光増幅器は、前記変調信号に対する前記散乱光の位相差の情報を含む光信号を出力する、請求項1または2に記載の蛍光検出装置。
- 前記第2の光増幅器は、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差の情報を含む光信号を出力する、請求項1〜3の何れか1項に記載の蛍光検出装置。
- 測定対象物にレーザ光を照射したときに発せられる蛍光を検出する蛍光検出方法であって、
強度変調したレーザ光を前記測定対象物に照射するステップと、
前記レーザ光を強度変調するための変調周波数を有する変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに前記測定対象物で散乱する前記レーザ光の散乱光の光信号を増幅するステップと、
増幅された前記散乱光の光信号を受光し、前記散乱光の電気信号を出力するステップと、
前記変調信号を用いたバイアス信号で誘導放出を行うことにより、前記測定対象物に前記レーザ光を照射したときに発せられる蛍光の光信号を増幅するステップと、
増幅された前記蛍光の光信号を受光し、前記蛍光の電気信号を出力するステップと、
出力された前記散乱光の電気信号と前記蛍光の電気信号とを用いて、前記変調信号に対する前記蛍光の位相差を算出し、前記位相差から前記蛍光の蛍光緩和時間を求めるステップと、を有する、
ことを特徴とする蛍光検出方法。
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