JP2011241704A - インペラの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、少なくとも2つのインペラ構成部材の接合部分にNiを含有するAu合金からなるろう材を配置した組付け体に熱処理を施すインペラの製造方法に関する。この方法は、組付け体に固溶化熱処理を施し、ろう材を溶融、凝固させる工程と、固溶化熱処理が施されるとともに、ろう材により少なくとも2つのインペラ構成部材が接合された組付け体に時効硬化熱処理を施す工程とを備える。インペラ構成部材は析出硬化型であるJIS SUS630からなり、ろう材は、15%〜20%のNiを含有するAu合金からなるとともに、200〜1000μmの厚さを有する。そして、時効硬化熱処理の冷却時の冷却速度を0.5〜10℃/分とする。
【選択図】図3
Description
このインペラ10は、ディスク11と、カバー12と、ブレード13とを、個別に製作し相互に接合し組付ける3ピース型と呼ばれるもの、カバー12とブレード13とを一体に作製し、これとは個別に作製されたディスク11とを接合する2ピース型と呼ばれるものがある。3ピース型及び2ピース型のいずれのインペラ10も、接合は溶接又はろう付けにより行われる。接合を溶接又はろう付けのいずれかで行うかは、インペラ10のサイズ、強度等によって定められる。なお、図4、5に示すインペラ10は、2ピース型を示しており、ディスク11と、ブレード13と一体に作製されたカバー12とが、ろう付け部14により接合されている例を示している。
特許文献1は、ろう材の液相よりもわずかに低い温度で焼入れ処理を始めていたが、これではろう付け接合部の強度が不十分であり、その結果、ろう付け接合部にクラックが入ることがある、というそれまでのろう付け方法の問題を解消するためになされたものである。
特許文献1は、図6に代表例が示されるろう付け熱サイクルを提案している。図6において、ろう材の液相または液相線温度、約華氏1850度(1010℃)まで約6時間かけてろう付けされる組立品を加熱し、その温度で約1時間保持する。さらに、ろう付け組立品を約2時間かけて約華氏1300度(704.4℃)まで冷却し、その後、組立品を約華氏350度(176.7℃)の温度まで1時間かけて下げてガス焼入れする。この熱サイクルにより、回転翼組立品は熱誘導歪みを示さず、ろう付け接合部すべてが堅固であり、クラックが生じなかったことを、特許文献1は述べている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、継手部分の靭性を確保しながらインペラをろう付け方により得る方法を提供することを目的とする。
以上に対して、特許文献1で好ましいとして開示されるNi−Au合金のろう付け後の引張強度は760〜780MPaである。
また、硬度を重視して時効硬化熱処理の温度を低くすると、以上のように引張強度を900MPa程度にできるので、Ni−Au合金の引張強度との差異を比較的小さくできる。しかし、時効硬化熱処理の温度を低くすると、引張強度の低下に伴って耐力も低下してしまい、インペラに要求される機械的性質を母材が満足しなくなる。
そこでなされた本発明のインペラの製造方法は、少なくとも2つのインペラ構成部材の接合部分にNiを含有するAu合金からなるろう材を配置した組付け体に熱処理を施す。この熱処理は、固溶化熱処理と時効硬化熱処理からなる。固溶化熱処理においては、ろう材の溶融、凝固によるろう付けもなされ、時効硬化熱処理においては、すでに固溶化熱処理が施されるとともに、ろう材により少なくとも2つのインペラ構成部材が接合された組付け体に対して時効硬化が施される。
本発明の製造方法は、インペラ構成部材が、Cr;15.5%〜17.5%、Ni;3.0%〜5.0%、Cu;3.0%〜5.0%を主要元素とする析出硬化型のステンレス鋼からなる。また、ろう材は、15%〜20%のNiを含有するAu合金からなるとともに、200〜1000μmの厚さを有している。
また、本発明の製造方法は、時効硬化熱処理の冷却時の冷却速度を0.5〜10℃/分とする。
本発明のインペラの製造方法は、詳しくは後述するが、ろう材の厚さを特定するとともに、時効硬化熱処理の冷却時の冷却速度を特定することにより、継手部分の靭性を確保するものである。
本実施形態は、図4、図5に示す2ピース型のインペラを例にして説明する。ただし、3ピース型のインペラを製造する場合にも本発明を適用できることは言うまでもない。
図1に示すように、ディスク11用、カバー12用の素材が各々用意される。この素材は、棒状の鋼材として提供される。この素材は、基本的にはSUS630で規定される以下の化学組成(質量%)を有している。SUS630は、固溶化熱処理によりCuを基地中に固溶させ、その後の時効硬化熱処理により微細なCu−Ni金属間化合物を析出させることにより鋼の強度を向上させる析出硬化型のステンレス鋼である。なお、以下の元素以外に、SUS630の特定の特性を向上させる元素を含んでいてもよい。
Cr;15.5%〜17.5%(好ましくは15.5%〜17.0%)
Ni;3.0%〜5.0%(好ましくは3.5%〜4.5%)
Cu;3.0%〜5.0%(好ましくは3.0%〜4.0%)
Nb+Ta;0.15%〜0.40%(好ましくは0.3%〜4.0%)
C;0.07%以下
Si;1.0%以下
Mn;1.0%以下
P;0.004%以下
S;0.03%以下
残部;Feおよび不可避不純物
ディスク11用、カバー12用の素材は、各々鍛造、切削により、ディスク11、カバー12の形状に加工される。カバー12はブレード13を一体的に備えているものであるから、ブレード13形成のための切削加工が施される。
各々作製されたディスク11とブレード13一体のカバー12を、各々の接合面側を突き合わせて組付け体を得る。なお、カバー12はブレード13側をディスク11の接合面側に対向させる。この突合せ面には、ろう材を配置させる。この際、ろう付け後のろう材の厚さを確保するために、ディスク11とカバー12の突合せ面における間隔を保持するように治具を用いることができる。
本実施の形態で用いられるろう材は、AuをベースとしてNiを含む合金である。この金ろう材は、15〜20%のNiを含み、残部がAu及び不可避不純物からなる。この組成範囲とすることにより、母材に対する濡れ性が良好であり、かつ、高い接合強度を得ることができる。この金ろう材は、融点(液相線温度)が固溶化熱処理の保持温度よりも低い930〜1050℃のものを用いる。この金ろう材は、好ましくは16〜19%Ni−81〜84%Au、より好ましくは17.5〜18.5%Ni−81.5〜82.5%Auの化学組成を有する。この金ろう材は、典型的には18%のNi−Auの組成を有し、約1000℃の融点を有している。この金ろう材のろう付け後の引張強度は、760〜780MPaである。
ディスク11とカバー12の突合せ面に配置されるろう材の形態は任意である。例えば、薄片、薄帯、線状材、粉末、ペーストの形態など、ろう付けにおいて公知のいずれのものであってもよい。ただし、継手部分の靭性を確保するために設定されるろう付け後のろう材の厚さを満足できるものである必要がある。
ディスク11とカバー12をろう材を介して組み付けた後に、組付け体を加熱炉内に挿入して熱処理を行う。熱処理は、図2に示すように、固溶化熱処理と時効硬化熱処理の2段からなる。
SUS630の熱処理に関する規格(JIS G4303より)を表1に示す。
本実施形態において、固溶化熱処理はこの規格に基づいて、組付け体が保持される温度(保持温度)を1020〜1060℃の範囲から選択する。保持温度までにかかる時間(昇温時間)、保持温度で保持する時間(保持時間)は任意であるが、昇温時間は3〜8時間の範囲から、また、保持時間は0.5〜3時間の範囲から選択する。固溶化熱処理の冷却時の冷却速度は、Cuを基地中に固溶させるという目的を達成できることを前提に任意に定めうるが、1〜10℃/分、好ましくは3〜5℃/分とする。
本実施形態で用いる金ろう材は、融点が930〜1050℃のものであるから、固溶化熱処理の過程で、ろう材は溶融・凝固してディスク11とカバー12をろう付けする。これにより、ろう付けと固溶体化処理を兼用できる。なお、組織をマルテンサイト化するためにはMf点(マルテンサイト変態終了温度)まで低下させる必要があり、その温度は組成及び冷却速度に依存するが100−140℃であり、この温度以下にする必要がある。
時効硬化熱処理は、保持温度として表1に示すH1150(610〜630℃)を採用する。これは、金ろう材の引張強度が760〜780MPa程度であり、カバー12、ディスク11の引張強度を金ろう材のそれに近づけるためである。ただし、表1で示されるH1150の温度で時効硬化熱処理した場合の耐力では、インペラとして要求される値を満足しない。そこで本実施形態では、耐力の低下を抑制するために時効硬化熱処理の冷却速度を0.5℃/分以上に規定する。
本実施形態において、継手部分の靭性を確保するためにろう材の厚さが200〜1000μmに設定される。なお、この厚さはろう付け後における厚さである。
ろう材の厚さが200μm未満になると、シャルピ吸収エネルギが小さく、ろう付けした後の継手部分の靭性が不足する。したがってろう材の厚さの下限を200μmとするが、好ましい下限は250μm、さらに好ましい上限は300μmである。
靭性を考慮するとろう材は厚いほど好ましいといえるが、Ni−Au合金からなるろう材は剛性が劣るので、接合されているディスク11とカバー12の間に回転中に倒れが生じるおそれがある。したがって、本実施の形態では、ろう材の厚さを1000μm以下とする。
SUS630からなる2つの鋼片を突き合わせて金ろう材でろう付けしてシャルピ衝撃試験用の試験片(JIS Z2242準拠)を作製した。用いた鋼片の化学組成、ろう材の組成、固溶化熱処理の条件、時効硬化熱処理の条件、ろう材の厚さを下記するが、時効硬化熱処理の冷却速度、ろう材の厚さを変動させている。なお、ろう材は下記厚さの薄帯を用い、当初の厚さが保持されるように2つの鋼片の間隔を維持しながら熱処理を行った。
Cr;15.5%、Ni;4.3%、Cu;3.5%、Nb+Ta;0.35%、
C;0.05%、Si;0.25%、Mn;0.8%、P;0.0035%、
S;0.007%、残部;Feおよび不可避不純物
ろう材の組成:18%Ni−82%Au
保持温度;1000〜1040℃、保持時間;1.5時間、冷却速度;5.0℃/分
保持温度;620℃、保持時間;1.5時間
冷却速度;0.1℃/分,0.5℃/分,0.7℃/分
1.0℃/分,1.5℃/分,2.0℃/分
ろう材の厚さについて観ると、100μmの厚さでは10J以下のシャルピ吸収エネルギしか得られないのに対して、200μmにすると15J以上のシャルピ吸収エネルギが得られており、ろう材の厚さを200μm以上にすることによるシャルピ吸収エネルギの向上効果には顕著性がある。また、時効硬化熱処理の冷却速度について観ると、0.1℃/分の場合に比べて0.5℃/分にすると、シャルピ吸収エネルギが顕著に向上している。このように、ろう材の厚さが200μm以上の場合に、時効硬化熱処理の冷却速度を0.5℃/分以上にすると、シャルピ吸収エネルギが顕著に向上する。特に、ろう材の厚さを500μm以上にすると、API(American Petroleum Institute)規格で要求される溶接継手のシャルピ吸収エネルギである27Jを超えるシャルピ吸収エネルギが得られる。
また、引張強度(σB)、耐力(σY)について観ると、時効硬化熱処理の冷却速度が速くなると、引張強度の低下の程度に比べて耐力の低下の程度が小さくなることがわかる。
以上の結果に基づいて、本発明者らは、ろう材の厚さ、時効硬化熱処理の冷却速度を本発明のように特定した。
Claims (3)
- 少なくとも2つのインペラ構成部材の接合部分にNiを含有するAu合金からなるろう材を配置した組付け体に熱処理を施すインペラの製造方法であって、
前記組付け体に固溶化熱処理を施し、前記ろう材を溶融、凝固させる工程と、
前記固溶化熱処理が施されるとともに、前記ろう材により少なくとも2つの前記インペラ構成部材が接合された前記組付け体に時効硬化熱処理を施す工程とを備え、
前記インペラ構成部材は、Cr;15.5%〜17.5%、Ni;3.0%〜5.0%、Cu;3.0%〜5.0%を主要元素とする析出硬化型のステンレス鋼からなり、
前記ろう材は、15%〜20%のNiを含有するとともに、200〜1000μmの厚さを有し、
前記時効硬化熱処理の冷却時の冷却速度が0.5〜10℃/分である、
ことを特徴とするインペラの製造方法。 - 前記ろう材の厚さが、250〜500μmである、
請求項1に記載のインペラの製造方法。 - 前記時効硬化熱処理の冷却時の冷却速度が、0.5〜2.0℃/分である、
請求項1又は2に記載のインペラの製造方法。
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