以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.第1の実施形態の基本構成 >>>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報提供システムの基本構成を示すブロック図である。この第1の実施形態は、本発明の最も基本的な実施形態であり、各利用者の嗜好を正確に把握し、利用者の嗜好を正確に反映させた情報提供を行う機能を有する。
図示のとおり、この情報提供システムは、店舗情報格納部100、利用者嗜好情報格納部110、店舗評価情報格納部120、店舗情報提供部130、嗜好値更新部140、関心店舗記録部150の各構成要素からなり、インターネット200を介して、店舗情報格納部100内に用意された店舗情報を、各利用者が操作する利用者端末10,20,30に提供する機能を有する。なお、ここでは説明の便宜上、各構成要素をそれぞれ独立したブロックで示してあるが、実際には、本実施形態に係る情報提供システムは、サーバ用コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって実現されるものであり、図示の各ブロック構成要素は、このサーバ用コンピュータのCPUや記憶装置といったハードウエアに、後述する各処理を実施するためのソフトウエアを組み込むことにより構成される。
このシステムの動作概要は次の通りである。まず、利用者嗜好情報格納部110には、各利用者ごとに、各ジャンルの特徴項目についての嗜好値を含む利用者嗜好情報Tが格納され、店舗評価情報格納部120には、各店舗ごとに、そのジャンルの特徴項目についての評価値を含む店舗評価情報Eが格納される。店舗情報提供部130は、利用者嗜好情報Tに合致した店舗評価情報Eをもつ店舗情報を選択して利用者の端末装置に提供する。また、利用者が、特定の店舗情報を閲覧したり、特定の店舗を利用したりすると、当該特定の店舗が関心店舗記録部150に関心店舗として蓄積される。嗜好値更新部140は、蓄積された関心店舗の店舗評価情報Eに基づき利用者嗜好情報Tを更新する。以下、このような動作を行うための仕組みを詳述する。
店舗情報格納部100は、個々の店舗に関する店舗情報をそれぞれ格納する機能を有する。ここで、店舗情報とは、個々の店舗の宣伝や案内の情報を広く意味する。図示する実施形態では、店舗情報は、店舗情報提供部130によって、インターネット200を介して、各利用者端末10,20,30に提供される。このため、店舗情報格納部100には、個々の店舗情報がそれぞれWebコンテンツデータ(たとえば、HTML形式のファイル)として格納されており、店舗情報提供部130は、インターネット200を介して、各利用者端末10,20,30に対して、このWebコンテンツデータを送信する機能を有している。各利用者端末10,20,30には、いずれもWebブラウザ機能が備わっており、利用者は、各利用者端末10,20,30の表示画面上で、このWebコンテンツデータ(すなわち、提供された店舗情報)を閲覧することができる。
なお、図1では、利用者端末10が携帯電話機、利用者端末20がノートパソコン、利用者端末30がデスクトップパソコンによって構成されている例が示されているが、もちろん、利用者用の端末装置は、これらの端末装置に限定されるものではなく、Webコンテンツデータを受信してこれを閲覧するWebブラウザ機能を備えたものであれば、どのような端末装置であってもかまわない。また、図1には3台の利用者端末のみが描かれているが、この情報提供システムを商業的に運用した場合は、より多数の利用者端末が用いられることになる。
図2は、図1に示す情報提供システムの店舗情報格納部100内に格納された店舗情報の表示例を示す平面図である。上述したとおり、ここに示す実施形態の場合、各店舗情報はいずれもWebコンテンツデータで構成されており、図2に示す表示例は、いずれもWebブラウザによるWebページの表示画面である。一般に店舗といっても、レストラン、喫茶店、百貨店など様々な種類がある。そこで、ここに示す実施形態の場合、店舗の種類を特定するために、いくつかのジャンルを定義している。図2(a) ,(b) ,(c) は、いずれも「イタリア料理」なるジャンルに入る店舗(イタリア料理店)の店舗情報であり、図2(d) ,(e) ,(f) は、いずれも「婦人服」なるジャンルに入る店舗(婦人服店)の店舗情報であり、図2(g) ,(h) ,(i) は、いずれも「映画」なるジャンルに入る店舗(映画館)の店舗情報である。
たとえば、図2(a) に示す店舗情報「S1301」は、「リストランテPAT」なるイタリア料理店のWebページであり、図2(b) に示す店舗情報「S1302」は、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なるイタリア料理店のWebページである。ここで、個々の店舗情報を示す符号「S1301」,「S1302」は、当該Webコンテンツデータを特定するためのコンテンツID(たとえば、HTMLデータのファイル名)である。なお、ここで述べる例の場合、1つの店舗情報(Webコンテンツデータ)は、1つの店舗に関する宣伝や案内の情報であり、店舗情報と店舗とが1対1に対応している。そこで、以下に示す実施形態では、Webコンテンツデータを特定するためのコンテンツIDをそのまま店舗IDとして利用する例を述べることにする。たとえば、「S1301」なるIDコードは、図2(a) に示すようなWebページを表示させるためのWebコンテンツデータを特定するためのコンテンツIDであり、かつ、「リストランテPAT」なるイタリア料理店を特定するための店舗IDでもある。
もちろん、店舗情報(Webコンテンツデータ)と店舗とは、必ずしも1対1に対応させる必要はなく、1つの店舗について複数の店舗情報を用意してもよいし、複数の店舗の宣伝や案内の情報を含む1つの店舗情報を用意してもよい。この場合、個々の店舗情報を特定するためのコンテンツIDと個々の店舗を特定するための店舗IDとは、それぞれ別個のIDコードを用いる必要があるので、どのコンテンツデータがどの店舗についての情報であるかを認識できるように、何らかの対応表を用意しておくようにする。
また、ここで述べる実施形態では、個々のジャンルにそれぞれジャンルコードを付与している。例えば、図2には、「ジャンルG13:イタリア料理」、「ジャンルG32:婦人服」、「ジャンルG41:映画」なる見出しが示されているが、これは、「イタリア料理」なるジャンルのジャンルコードがG13、「婦人服」なるジャンルのジャンルコードがG32、「映画」なるジャンルのジャンルコードがG41であることを示している。なお、説明の便宜上、ここでは、コンテンツID(店舗ID)の4桁の数字の上2桁は、当該店舗が所属するジャンルのジャンルコードの2桁の数字に一致させるようにした。たとえば、図2(a) に示す店舗情報S1301は、コンテンツID(店舗ID)として「S1301」が付された店舗情報であるが、4桁の数字の上2桁「13」は、ジャンルコードG13の2桁「13」に一致させてある。
図3は、本発明に係る情報提供システムにおいて定義されるジャンルの一例を示す表である。この例では、まず、個々の店舗の種別を大分類で大まかに分けた後、個々の大分類ごとに細かなジャンルを定義する階層構造をとっている。たとえば、大分類「食事」には、「日本料理」,「フランス料理」,「イタリア料理」,「メキシコ料理」なるジャンルが定義され、それぞれジャンルコードG11,G12,G13,G14が定められている。同様に、大分類「喫茶」には、「純喫茶」,「ジャズ喫茶」,「同伴喫茶」なるジャンルが定義され、それぞれジャンルコードG21,G22,G23が定められている。もちろん、この図3に示すジャンルは一例として示したものであり、どのようなジャンルを設定するか、ジャンルにどのような階層構造を設定するか、といった事項は、システムの設計者が任意に決めるべき事項である。
なお、本願において「店舗」という文言は、利用者に対して種々の商品や役務を提供する施設や場所を広く意味する文言として用いており、いわゆる屋内の「お店」と呼ばれている狭義の店舗のみならず、屋外の施設なども含むものである。たとえば、図3の大分類「ショー」には、「映画」,「観劇」,「寄席」,「コンサート」なるジャンルが定義されているが、これは「映画館」,「劇場」,「コンサートホール」や「野外音楽場」なども本願にいう「店舗」に含まれることを意味している。同様に、「屋外遊園地」,「野球場」,「サッカー場」,「ゴルフ場」,「プール」なども本願にいう「店舗」であり、「ホテル」,「旅館」,「ペンション」などの宿泊施設も本願にいう「店舗」である。
さて、図1に示す店舗評価情報格納部120には、店舗情報格納部100にその店舗情報が格納されている様々な店舗について、それぞれ店舗評価情報Eが格納されている。この店舗評価情報Eは、個々の店舗について、提供する商品や役務の内容や価格に関する特徴、提供場所の特徴、店舗スタッフの特徴など、様々な特徴を定量的に評価するための情報である。本発明では、店舗評価情報Eを、店舗を特定するための店舗ID(ここに述べる実施形態の場合は、上述したとおり、店舗情報のコンテンツIDをそのまま店舗IDとして用いている)と、当該店舗のジャンルを示すジャンルコードと、このジャンルコードに対応して予め定められた特定の特徴項目についての当該店舗の評価値と、を含む情報によって構成している。
図4は、店舗評価情報格納部120内に格納された店舗評価情報Eの構成例を示す図である。図4(a) 〜(i) には、図2(a) 〜(i) に店舗情報(Webページ)を示した9つの店舗についての店舗評価情報の一例が示されている。たとえば、図4(a) に示す店舗評価情報E1301は、図2(a) のWebページに店舗情報が掲載されている「リストランテPAT」なる店舗についての店舗情報であり、店舗ID「S1301」と、ジャンルコード「G13」と、3種類の特徴項目(格式、ボリューム、価格)の評価値と、によって構成されている。この店舗評価情報E1301は、店舗ID「S1301」で特定される店舗のジャンルが、ジャンルコード「G13」で示されるジャンル(イタリア料理)であることと、当該店舗の特徴として、格式(店内の雰囲気)の評価値が95、ボリューム(提供食材の量)の評価値が20、価格(提供品目の価格)の評価値が80であることを示している。
ここでは、説明の便宜上、各評価値が0〜100の範囲内の値をとるものとし、特定の特徴項目の評価値が100の場合、当該特徴が最も顕著もしくは当該特徴の程度が最も高いことを示し、特定の特徴項目の評価値が0の場合、当該特徴が最も隠微もしくは当該特徴の程度が最も低いことを示すものとする。たとえば、図4(a) の店舗評価情報E1301の評価対象となるイタリア料理店は、非常にフォーマルな雰囲気の店であり、食材の量は少なめで、価格はかなり高い店舗である、との評価を受けていることになる。一方、図4(b) の店舗評価情報E1302の評価対象となるイタリア料理店は、図2(b) のWebページに店舗情報が掲載されている「ゆでたてスパゲティの店XYZ」であり、格式:20、ボリューム:83、価格:32なる評価値が与えられていることから、かなりカジュアルな雰囲気の店であり、食材の量は多めで、価格は比較的安い店舗である、との評価を受けていることになる。
なお、同じジャンルの店舗であれば、同じ特徴項目についての評価を行うことが可能であるが、ジャンルが異なる店舗では、同じ特徴項目をそのまま適用するのが不適切な場合がある。たとえば、同じ「イタリア料理」というジャンルの店であれば、上述した例のように、格式、ボリューム、価格という特徴項目についての評価を行うことは適切である。しかし、「婦人服」や「映画」といった異なるジャンルの店舗の場合、通常、異なる特徴項目についての評価を行った方が適切である。
そこで、ここで述べる実施形態では、個々のジャンルコードごとに、それぞれ特定の特徴項目を予め定めている。たとえば、図4(a) ,(b) ,(c) に示す店舗評価情報は、いずれも「イタリア料理」なるジャンルの店舗についてのものであるので、格式、ボリューム、価格という特徴項目を設定しており、図4(d) ,(e) ,(f) に示す店舗評価情報は、いずれも「婦人服」なるジャンルの店舗についてのものであるので、モダン(取り扱っている品物のデザイン)、年齢(ターゲットの客層の年齢)、価格(提供品目の価格)という特徴項目を設定しており、図4(g) ,(h) ,(i) に示す店舗評価情報は、いずれも「映画」なるジャンルの店舗についてのものであるので、ゆったり(座席・館内のスペース)、売店(売店の充実度)、深夜(深夜上映の回数)という特徴項目を設定している。
もちろん、どのジャンルの店舗にどのような特徴項目を設定するかは、システムの設計者が任意に決めるべき事項であり、異なるジャンルに同一の特徴項目を設定することも可能である(たとえば、図4に示す例では、「価格」という特徴項目は、「イタリア料理」と「婦人服」との双方のジャンルで設定されている)。また、図4に示す例では、いずれのジャンルについても3つの特徴項目が設定されているが、個々のジャンルについて、それぞれいくつの特徴項目を設定するか、という事項も、システムの設計者が任意に決めるべき事項である。
図5は、図4に例示された店舗評価情報に含まれる各評価値の概念を示す模式図である。図の左側には、各特徴項目のタイトルが記載され、図の右側には、0〜100の評価値を示す数直線が描かれている。このように、本発明で設定する特徴項目は、何らかの定量的な評価が可能になる特徴であれば、どのような項目を設定してもかまわない。たとえば、「価格」や「年齢」といった項目は、もともと定量的な数値として与えられるものなので、客観的な評価が可能であるが、本発明で設定する特徴項目は、必ずしも客観的な評価が可能な項目にする必要はない。たとえば、図5の「モダン」なる特徴項目は「モダン」と「クラシック」という両極端に位置する概念上の尺度を示す項目であり、評価値が100の場合は「最もモダン寄り」であることを示し、評価値が0の場合は「最もクラシック寄り」であることを示す。このような評価は、主観的な評価にならざるを得ないが、定量的な評価が可能であれば、それが主観的な評価であっても差し支えない。
本発明に係るシステムでは、各評価値は人間の主観的な判断によって与えられることになる。したがって、「価格」や「年齢」のように、客観的な数値に関連した特徴項目であっても、評価する人間の主観的判断によって評価値が定められる。図5に示すように、「価格」や「年齢」の評価値も0〜100の範囲内の数値で表現され、具体的な価格の数値や年齢の数値とは直接的な関係はない。「価格」が高いか安いか、といった評価基準は、評価する人間によって異なるが、本発明では、何らかの定量的な評価値が定義できれば十分である。また、図5に示す「年齢」なる項目も、概念上は、「熟年層向け」か「若年層向け」かという主観的な評価を与えるものとなっている。結局、「価格」や「年齢」のように、客観的な数値に結びついた特徴項目であっても、実用上は、図5に示す例のように、主観的な概念としての評価値を定義するのが好ましい。
続いて、図1に示す利用者嗜好情報格納部110に格納される利用者嗜好情報Tについて説明する。この利用者嗜好情報Tは、様々な利用者について、それぞれの嗜好を示す情報であり、ここに示す実施形態の場合、利用者を特定するための利用者IDと、ジャンルコードと、このジャンルコードに対応する特徴項目についての当該利用者の嗜好値と、を含む情報になっている。ここで、ジャンルコードに対応する特徴項目は、店舗評価情報Eについて設定された特徴項目に一致する。たとえば、上述した例の場合、「イタリア料理」なるジャンルについては、格式、ボリューム、価格なる3つの特徴項目が設定されていたので、利用者嗜好情報Tにおいても、「イタリア料理」なるジャンルについては、全く同じように、格式、ボリューム、価格なる3つの特徴項目が設定されることになる。
図6は、利用者嗜好情報格納部110内に格納された利用者嗜好情報Tの構成例を示す図である。図に示す情報は、いずれも利用者甲の嗜好情報である。すなわち、図6(a) に示す利用者嗜好情報T甲13は、利用者甲のジャンルコードG13(イタリア料理)に関する嗜好を示し、図6(b) に示す利用者嗜好情報T甲32は、利用者甲のジャンルコードG32(婦人服)に関する嗜好を示し、図6(c) に示す利用者嗜好情報T甲41は、利用者甲のジャンルコードG41(映画)に関する嗜好を示す。利用者の嗜好は嗜好値という数値で表現されており、ここに述べる実施形態の場合、嗜好値は、前述した評価値と同様に、0〜100の範囲内の値をとる。
図4に示す同じジャンルの店舗評価情報と比較すればわかるように、「イタリア料理」に関する利用者嗜好情報(図6(a) )の特徴項目は、格式、ボリューム、価格であり、これは「イタリア料理」に関する店舗評価情報(図4(a) 〜(c) )の特徴項目に一致する。同様に、「婦人服」に関する利用者嗜好情報(図6(b) )の特徴項目は、モダン、年齢、価格であり、これは「婦人服」に関する店舗評価情報(図4(d) 〜(f) )の特徴項目に一致し、「映画」に関する利用者嗜好情報(図6(c) )の特徴項目は、ゆったり、売店、深夜であり、これは「映画」に関する店舗評価情報(図4(g) 〜(i) )の特徴項目に一致する。
もっとも、図4に示す店舗評価情報Eは、個々の店舗について、各特徴項目の評価値を示すものであるが、図6に示す利用者嗜好情報は、利用者甲という特定の個人についての各ジャンルごとの嗜好値を示すものである。このように、利用者嗜好情報Tに含まれる嗜好値と、店舗評価情報Eに含まれる評価値とは、若干、意味合いが異なる値であるが、いずれも所定の特徴項目について、0〜100の範囲内の定量的な値を示す点で共通する。たとえば、図6(a) に示す利用者嗜好情報T甲13は、利用者甲が、「イタリア料理」というジャンルに関して、フォーマルとカジュアルとのほぼ中間的な雰囲気の店が好みであり(格式:45)、食材の量は多めがよく(ボリューム:78)、価格は若干安めが好み(価格:42)という嗜好をもっていることを示している。
図6には、利用者甲の3つのジャンルについての利用者嗜好情報を示したが、利用者嗜好情報格納部110内には、必要に応じて、利用者甲の他のジャンルについての利用者嗜好情報Tも格納される。また、利用者甲のみではなく、利用者乙や丙といった他の利用者についても、同様に利用者嗜好情報Tが格納される。もちろん、各利用者について、すべてのジャンルの利用者嗜好情報Tを用意する必要はなく、個々の利用者ごとにそれぞれ関心のあるジャンルについて、利用者嗜好情報Tを用意すれば十分である。なお、ここでは便宜上、利用者甲,乙,丙の利用者IDとして、そのまま甲,乙,丙という漢字を用いた例を説明するが、一般的には、個々の利用者ごとに、数字やアルファベットを用いた記号からなる利用者IDが定義される。
<<< §2.第1の実施形態の店舗情報提供処理 >>>
さて、上述したように、同じジャンルに関して、店舗評価情報の特徴項目と利用者嗜好情報の特徴項目とを同じにすると、同一の特徴項目についての嗜好値と評価値とを比較する処理を行うことができる。図1に示す店舗情報提供部130は、このような比較処理を行うことにより、個々の利用者の嗜好に合致した店舗情報を取捨選択して提供する機能を有している。すなわち、店舗情報提供部130は、利用者から特定の検索条件に合致する店舗情報の提供要求を受けたときに、「利用者嗜好情報格納部110に格納されている当該利用者の利用者嗜好情報T」と「店舗評価情報格納部120に格納されている様々な店舗についての店舗評価情報E」とを、同一のジャンルコードを含むもの同士で比較する。そして、その結果、与えられた検索条件に合致し、かつ、当該利用者に適した店舗情報を取捨選択し、選択された店舗情報を店舗情報格納部100から抽出して、これを当該利用者の端末装置に提供する処理を実行する。
店舗情報提供部130による基本的な検索機能自体は、Webページ用検索サイトで用いられている一般的な検索エンジンの機能と同じである。たとえば、利用者が、何らかのキーワードを検索条件として入力すると、店舗情報格納部100内に格納されている店舗情報(Webページ用のコンテンツデータ)の中から、このキーワードに関連した店舗情報が検索されることになる。このような検索処理を可能にするためには、予め、店舗情報格納部100内に格納されている個々の店舗情報について、その内容から、検索用キーワードをピックアップして保存する作業を行っておけばよい。このような一般的な検索エンジンの機能は、既に公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
ここに示す実施形態では、利用者は、店舗情報提供部130に対して所望の店舗情報の提供要求を行う場合、まず、利用者IDを入力してログインした後、検索用のキーワードの入力を行う。したがって、店舗情報提供部130は、利用者から店舗情報の提供要求を受けたときに、当該利用者を特定することができ、与えられた検索条件に合致し、かつ、当該利用者に適した店舗情報を取捨選択することができる。
図7は、利用者甲が店舗情報提供部130に対してログインした後、検索キーワードとして「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なる語句を入力して店舗情報の提供要求を行った場合に、店舗情報提供部130から提示される店舗情報の概要リストの一例を示す図である。利用者甲が「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なるキーワードの入力を行うと、店舗情報提供部130は、まず、一般的な検索エンジンの機能により、当該キーワードにヒットする店舗情報(コンテンツデータ)の検索を行う。続いて、検索結果として得られた個々の店舗情報に対応する店舗評価情報Eを店舗評価情報格納部120から読み出す一方、利用者甲についての同じジャンルの利用者嗜好情報Tを利用者嗜好情報格納部110から読み出し、両者を比較して、取捨選択を行う。
図7に示す表示例は、こうして選択された店舗情報の概要リストである。この概要リストに掲載されている事項は、各店舗情報の内容の一部分(概要部分)のみであるが、この概要リストを閲覧した利用者甲が、関心のある店舗部分をクリックする操作を行うと、本来の店舗情報全文が表示されることになる。たとえば、当該リストの一番目に表示されている「1.ゆでたてスパゲティの店XYZ」なるタイトル部分をクリックする操作を行うと、図2(b) に示すような本来のWebページへ移行することになる。このように、検索結果として、まず概要リストを提示し、利用者が、このリストの中から1つの店舗を特定した場合に、当該店舗の本来の店舗情報をWebページとして表示する技術は、既に公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
ここでは、一般的な検索エンジンの機能により、「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なるキーワードに対して、図2(a) ,(b) ,(c) に示す店舗情報S1301,S1302,S1303がヒットして抽出された場合を考えよう。この場合、店舗情報提供部130は、まず、店舗評価情報格納部120から、上記各店舗に対応した店舗評価情報E1301,E1302,E1303(図4(a) ,(b) ,(c) )を読み出す。これらの店舗評価情報内のジャンルコードはG13(イタリア料理)であるので、店舗情報提供部130は、利用者嗜好情報格納部110から、検索を行った利用者と同一の利用者ID:甲をもち、同一のジャンルコード:G13をもつ利用者嗜好情報T甲13(図6(a) )を読み出す。そして、両者を比較して、各店舗情報S1301,S1302,S1303のそれぞれが、利用者甲に適したものである否かの取捨選択が行われる。
図6(a) に示す利用者嗜好情報T甲13によると、利用者甲は、「イタリア料理」なるジャンルに関して、格式:45,ボリューム:78,価格:42という嗜好値を有していることが認識できる。そこで、店舗情報提供部130は、図4(a) ,(b) ,(c) に示す各店舗評価情報E1301,E1302,E1303の中から、上記各嗜好値に近い評価値をもつものを選択し、選択された店舗評価情報に対応する店舗情報を概要リストに含ませる処理を行う。図7のリストの一番目に表示されている「1.ゆでたてスパゲティの店XYZ」という店舗情報の概要は、このようにして選択されたものである。
なお、「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なるキーワードに対して、たまたま図2(e) に示す店舗情報S3202(「婦人服」なるジャンルの店舗情報)がヒットして抽出されてしまった場合には、これに対応する店舗評価情報は、図4(e) に示す店舗評価情報E3202ということになる。そこで、この店舗評価情報E3202の各評価値と、同一のジャンルに係る利用者嗜好情報T甲32(図6(b) )の嗜好値との比較が行われる。なお、同一のジャンルに係る利用者嗜好情報が用意されていない場合には、嗜好値と評価値との比較を行うことができない。このように比較ができない場合には、当該店舗情報を失格扱いとして、利用者への提供対象として選択しないようにしてもよいし、逆に、新ジャンルの店舗情報として、利用者への提供対象として選択するようにしてもよい。
結局、店舗情報提供部130は、店舗情報格納部100に格納されている多数の店舗情報を2つのふるいにかけて取捨選択し、最終的に選択された店舗情報を概要リストに掲載して提示する処理を行うことになる。ここで、第1のふるいは、利用者が入力した検索条件(上述の例の場合、キーワード)であり、第2のふるいは、利用者嗜好情報Tと店舗評価情報Eとの比較である。このように2つのふるいを通って吟味された店舗情報のみが利用者に提示されることになるので、利用者の嗜好を反映させた情報提供が可能になる。
上記第2のふるいによる取捨選択の基準は、対比対象となる利用者嗜好情報Tと店舗評価情報Eとの類似度、すなわち、対比対象となる個々の特徴項目の嗜好値と評価値との近似度ということになる。ここに示す実施形態の場合、各嗜好値によって定義される嗜好ベクトルと、各評価値によって定義される評価ベクトルとを定義し、両者の近似の程度に基づいて、上記第2のふるいによる取捨選択を行っている。これを、具体例で示そう。
いま、第1のふるい(たとえば、「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なるキーワードの入力)によって、図2(a) ,(b) ,(c) に示す3つの店舗情報S1301,S1302,S1303が選択された場合を考える。第2のふるいは、これら3つの店舗情報の中から、利用者に適したもののみを選択する処理であり、具体的には、図6(a) に示す利用者嗜好情報T甲13と、図4(a) ,(b) ,(c) に示す3つの店舗評価情報E1301,E1302,E1303とを相互に比較する処理ということになる(ジャンルコードが同一のもの同士を比較することになる)。この比較は、図8に示すベクトル空間上で行われる。このベクトル空間は、「イタリア料理」なるジャンルについて定義された3種類の特徴項目、格式・ボリューム・価格を各座標軸にとった三次元座標空間であり、図示のとおり、各座標軸には、評価値もしくは嗜好値の設定範囲である0〜100の値が定義されている。
利用者嗜好情報Tおよび店舗評価情報Eは、いずれもこのベクトル空間内のベクトルとして定義できる。たとえば、図6(a) に示す利用者嗜好情報T甲13は、原点Oから座標値(45,78,42)で示される点T0へ向かう嗜好ベクトルVt0として定義され、図4(a) に示す店舗評価情報E1301は、原点Oから座標値(95,20,80)で示される点E1へ向かう評価ベクトルVe1として定義され、図4(b) に示す店舗評価情報E1302は、原点Oから座標値(20,83,32)で示される点E2へ向かう評価ベクトルVe2として定義され、図4(c) に示す店舗評価情報E1303は、原点Oから座標値(53,62,51)で示される点E3へ向かう評価ベクトルVe3として定義される。
2つのベクトルの近似の程度は、両者の先端点の座標空間上のユークリッド距離によって定義することができる。たとえば、嗜好ベクトルVt0と評価ベクトルVe1との近似の程度は、2点T0−E1間の距離で示される。距離が短いほど、近似の程度が高いことになる。上記第2のふるいによる取捨選択は、利用者の嗜好ベクトルと個々の店舗の評価ベクトルとの近似の程度(先端点間距離)に基づいて行うことができる。取捨選択の基準は、種々の方法で設定可能である。たとえば、「先端点間距離が所定値α以下(近似の程度が所定レベル以上)である店舗に係る店舗情報のみを提示対象として選択する」という基準を設定すれば、利用者の嗜好値に近い評価値を有しているか否かという絶対的な基準に基づく選択が行われる。これに対して、「先端点間距離の短い順にソートして、上位m個の店舗に係る店舗情報のみを提示対象として選択する」という基準を設定すれば、第1のふるいを通った店舗情報のうち、近似の程度の高い順にm個の店舗情報を選択するという相対的な基準に基づく選択が行われる。
このように、特徴項目が3つ存在する場合には、図8に示すような三次元座標空間上でベクトルの比較が行われるが、特徴項目が4つ存在する場合には、四次元座標空間上でベクトルの比較を行えばよい。同様に、店舗評価情報格納部120に、複数N個の特徴項目のそれぞれについての評価値を含む店舗評価情報Eが格納されており、利用者嗜好情報格納部110に、複数N個の特徴項目のそれぞれについての嗜好値を含む利用者嗜好情報Tが格納されていた場合の一般論に拡張した場合には、次のような方法で第2のふるいの取捨選択を行えばよい。すなわち、店舗情報提供部130が、利用者から店舗情報の提供要求を受けたときに、「当該利用者の利用者嗜好情報Tに含まれているN個の特徴項目のそれぞれについての嗜好値を、N次元座標系の各座標軸にとることにより得られる嗜好ベクトル」と、「第1のふるいを通った各店舗の店舗評価情報Eに含まれているN個の特徴項目のそれぞれについての評価値を、N次元座標系の各座標軸にとることにより得られる評価ベクトル」とを比較し、両ベクトルの近似の程度(先端点間距離)に基づいて、店舗情報の取捨選択を行えばよい。
なお、こうして第2のふるいを通った複数の店舗情報を、図7に示すような概要リストとして提示する際には、ベクトルの近似の程度の高い順(先端点間距離の短い順)にソートして、提示するのが好ましい。これは、図7に示すようなリストの提示を受けた利用者は、通常、リストの上の方にある項目を優先的に選択してクリックする傾向があるためである。近似の程度の高い順にソートして提示すれば、近似の程度の高い項目ほど選択される確率が高くなる。
<<< §3.第1の実施形態の更新処理 >>>
さて、§1および§2では、図1に示す情報提供システムにおける店舗情報格納部100、利用者嗜好情報格納部110、店舗評価情報格納部120、店舗情報提供部130の基本機能を説明し、これら各部の機能により、利用者の嗜好を反映させた情報提供を行うことが可能になることを述べた。しかし、利用者の嗜好を正確に把握し、利用者の嗜好を正確に反映させた情報提供を行うためには、上記構成要素だけでは不十分である。その理由は、利用者嗜好情報格納部110内に、個々の利用者の嗜好を正確に把握した利用者嗜好情報Tを用意することが、現実的には困難であるためである。もちろん、Webページ上でのアンケート調査により、趣味や興味のある事項を利用者に入力してもらうような運用も従来から行われているが、このような調査では、§1で述べたようなきめの細かな利用者の嗜好情報を収集することは困難である。
たとえば、図6には、利用者甲の3つのジャンルについての利用者嗜好情報を例示した。この例では、各ジャンルにはそれぞれ3つの特徴項目が設定されているため、3つのジャンルについての利用者嗜好情報を用意するためには、合計9つの特徴項目のそれぞれについて0〜100の範囲をとる所定の嗜好値を設定しなければならない。各ジャンルごとの特徴項目の数がより多い場合や、多数のジャンルについての嗜好情報をそれぞれ用意する必要がある場合には、設定すべき嗜好値の数は更に増えることになる。しかも、各利用者の嗜好値は、利用者個人個人でなければ知り得ない情報なので、利用者嗜好情報格納部110内に各利用者の利用者嗜好情報Tを用意するには、個々の利用者に、嗜好値の設定入力を行ってもらう必要がある。このような手間のかかる入力作業をアンケートとして利用者に行ってもらうことは現実的ではない。また、利用者の嗜好は、時間の経過とともに変遷するものであるから、利用者の各時点における嗜好を正確に把握するためには、頻繁に嗜好値の修正を行ってもらう必要がある。個々の一般利用者に対して、そのような労力を課することは極めて困難である。
本発明に係る情報提供システムの重大な特徴は、利用者嗜好情報格納部110内に格納されている各利用者の利用者嗜好情報Tを自動更新する仕組みが備わっている点である。図1に示す嗜好値更新部140および関心店舗記録部150は、この仕組みを実現するための構成要素である。
関心店舗記録部150は、利用者により特定の店舗に対する関心が示されたときに、個々の利用者ごとに、当該特定の店舗の店舗IDを、関心店舗IDとして蓄積記録する処理を行う。「利用者により特定の店舗に対する関心が示された」という事実を認識するための具体的な手法は後述するが、利用者が特定の店舗に関心を示すたびに、当該店舗の店舗IDが、関心店舗記録部150に蓄積記録されてゆくことになる。ここに示す実施形態の場合、前述したとおり、店舗情報(Webコンテンツデータ)を特定するためのコンテンツIDをそのまま店舗IDとして利用しているので、関心店舗記録部150には、コンテンツIDが店舗IDとして蓄積記録されることになる。
図9は、関心店舗記録部150内に記録された関心店舗IDの一例を示す図である。図示の例は、特定の利用者1人(たとえば、利用者甲)についての記録内容を示しており、関心店舗記録部150内には、このような記録が、個々の利用者ごとにそれぞれ行われることになる。また、図示の例では、個々のジャンルごとに関心店舗IDの記録が行われており、しかも関心店舗IDを記録する際に記録時の時間情報も併せて記録されるようにしてある。具体的には、図9には、「G13:イタリア料理」なるジャンルと「G32:婦人服」なるジャンルについて、それぞれ関心店舗IDが時間情報とともに記録された例が示されている。たとえば、「G13:イタリア料理」なるジャンルについての「S1380(2006/11/25)」なる記録内容は、店舗ID「S1380」(コンテンツID)が2006年11月25日に関心店舗IDとして記録された事実を示すものである。これは、この利用者が、2006年11月25日に、店舗ID「S1380」に対応する店舗に関心を示したことを意味する。なお、本願において、「店舗に関心を示した」とは、店舗それ自体に直接関心を示した場合のみならず、当該店舗のWebコンテンツなどに関心を示すことによって間接的に当該店舗に関心を示した場合も含むものである。
結局、関心店舗記録部150内に図9に示すような記録が行われていた場合、この利用者は、これまでに、「G13:イタリア料理」なるジャンルに関しては、「S1380」,「S1364」,「S1302」なる関心店舗IDで特定される店舗に関心を示し、「G32:婦人服」なるジャンルに関しては、「S3203」,「S3218」なる関心店舗IDで特定される店舗に関心を示したことになる。
嗜好値更新部140は、この関心店舗記録部150内に蓄積記録された情報に基づいて、利用者嗜好情報格納部110内の利用者嗜好情報Tを更新する処理を行う。すなわち、嗜好値更新部140は、個々の利用者ごとに、関心店舗記録部150に記録されている「更新対象となる所定のジャンルの関心店舗ID」を更新用店舗IDとして抽出し、店舗評価情報格納部120から当該更新用店舗IDを含む店舗評価情報Eを更新用店舗評価情報として抽出し、この更新用店舗評価情報の評価値に基づいて、利用者嗜好情報格納部110に格納されている当該利用者についての更新対象となる所定のジャンルに関する利用者嗜好情報Tの嗜好値を更新する。
この処理を、図9に示す具体例について説明しよう。ここでは、この図9に示す関心店舗記録部150に記録されている関心店舗IDが、利用者甲について蓄積記録されたものであり、この利用者甲の「G13:イタリア料理」なるジャンルを更新対象として更新処理を行う場合を考える。嗜好値更新部140は、まず、関心店舗記録部150に記録されている「更新対象となる所定のジャンルの関心店舗ID」を更新用店舗IDとして抽出する。すなわち、この場合の更新対象は「G13:イタリア料理」なるジャンルであるから、図9に示す関心店舗記録部150から、店舗ID「S1380」,「S1364」,「S1302」が更新用店舗IDとして抽出される。続いて、店舗評価情報格納部120からこの更新用店舗ID「S1380」,「S1364」,「S1302」を含む店舗評価情報「E1380」,「E1364」,「E1302」が、更新用店舗評価情報として抽出される。図10の上段は、こうして抽出された更新用店舗評価情報の一例を示す。最後に、こうして抽出された更新用店舗評価情報の評価値に基づいて、利用者嗜好情報格納部110に格納されている当該利用者甲についての更新対象となる「G13:イタリア料理」なるジャンルに関する利用者嗜好情報T甲13の嗜好値の更新が行われる。図10の下段は、こうして更新された利用者嗜好情報T甲13の一例を示す。
このような更新処理によって得られる利用者嗜好情報T甲13は、利用者甲の嗜好を十分に反映したものになる。図10の上段に示す各店舗評価情報「E1380」,「E1364」,「E1302」は、利用者甲が関心を示した店舗に関する各特徴項目の評価値を示すものである。したがって、利用者甲の各特徴項目に関する嗜好値は、これら店舗の各特徴項目の評価値に近いものと予想される。そこで、嗜好値更新部140は、この更新用店舗評価情報「E1380」,「E1364」,「E1302」に基づいて、利用者嗜好情報T甲13の各特徴項目ごとの新たな嗜好値を決定する処理を行うのである。
ここに示す実施形態では、更新用店舗評価情報「E1380」,「E1364」,「E1302」の各特徴項目ごとの評価値の平均値を、利用者嗜好情報T甲13の同じ特徴項目についての新たな嗜好値とする更新処理を実行している。たとえば、図10の下段に示された利用者嗜好情報T甲13の特徴項目「格式」の嗜好値36は、図10の上段に示された更新用店舗評価情報「E1380」,「E1364」,「E1302」の特徴項目「格式」の各評価値38,50,20の平均値として求められた値である。
なお、上述した更新処理を実行する場合、関心店舗記録部150に記録されている「更新対象となる所定のジャンルの関心店舗IDの全部」を更新用店舗IDとして抽出する代わりに、関心店舗記録部150に記録されている「更新対象となる所定のジャンルの関心店舗IDの一部」を更新用店舗IDとして抽出してもよい。特に、ここに述べる実施形態の場合、前述したとおり、関心店舗記録部150は、関心店舗IDを記録する際に記録時の時間情報を併せて記録している。そこで、嗜好値更新部140は、関心店舗記録部150に記録されている関心店舗IDのうち、記録時が所定期間内のもののみを更新用店舗IDとして抽出することが可能である。
たとえば、現時点を基準として、過去3ヶ月以内に記録された関心店舗IDのみを更新用店舗IDとして抽出するようにすれば、最近3ヶ月の間に関心を示した店舗の評価値のみを参照した更新が可能になる。一般に、利用者の嗜好は時とともに変遷することが少なくない。関心店舗記録部150には、関心店舗IDが逐次記録されてゆくことになるが、1年も前に記録された関心店舗IDは、もはや利用者の関心の的にはなっていない可能性もある。上述の例のように、過去3ヶ月以内に記録された関心店舗IDのみを更新用店舗IDとして抽出するようにすれば、常に、最近の新しい嗜好のみを反映した利用者嗜好情報の更新が可能になる。もちろん、この場合、3ヶ月以上前に記録された関心店舗IDは逐次消去するようにしてかまわない。
また、関心店舗IDの記録時を利用して、重みづけ平均値を求めるようなことも可能である。図10に示す例では、各評価値の単純な平均値を新たな嗜好値として更新を行っていたが、たとえば、より最近に記録された関心店舗IDについての評価値に、より大きな重みをつけるようにして重みづけ平均値を算出し、これを新たな嗜好値として更新を行うようにすれば、より最近の嗜好に重みをおいた利用者嗜好情報を得ることができる。
<<< §4.第1の実施形態の関心認識処理 >>>
続いて、関心店舗記録部150により、「利用者により特定の店舗に対する関心が示された」という事実を認識するための具体的な手法をいくつか述べておく。§2で述べたとおり、店舗情報提供部130は、利用者端末に対して、たとえば図7に示すような店舗情報の概要リストを提示する。そして、この概要リストを閲覧した利用者が、関心のある店舗部分をクリックする操作を行うと、本来の店舗情報全文が表示されることになる。たとえば、図7において「1.ゆでたてスパゲティの店XYZ」なるタイトル部分をクリックする操作を行うと、図2(b) に示すような本来のWebページへと移行することになる。
店舗情報提供部130によって実行される上記処理は、結局、「検索条件に合致し、かつ、利用者に適した複数の店舗情報を選択し、選択した各店舗情報の概要のみを羅列したリストを提供する第1の提供ステップ」と、「このリストの中から利用者が指定した店舗に係る店舗情報の全内容を提供する第2の提供ステップ」との2段階の処理から構成されている。ここで、第2の提供ステップへの移行は、利用者の指定操作(クリック操作)に基づいて行われていることは重要である。
たとえば、利用者によって、図7における「1.ゆでたてスパゲティの店XYZ」なるタイトル部分をクリックする操作が行われた場合、それは当該利用者が、当該店舗に関心を示したことを意味する。この場合、この利用者は、この概要リストにおける「ゆでたてスパゲティの店XYZ」の説明文に記載されている「ボリューム満点」、「ランチ650円から」、「お子様連れでも気楽に入れる明るい店内」といった特徴を参考にして、当該店舗に関心を示したものと推定される。そこで、このように、利用者の指定に基づき店舗情報提供部130により第2の提供ステップが実施されたときには、当該第2の提供ステップで店舗情報が提供された店舗の店舗IDを、当該利用者についての関心店舗IDとして蓄積記録するようにすればよい。具体的には、店舗情報提供部130が、第2の提供ステップを実行する際に、関心店舗記録部150に対して、利用者が指定した店舗の店舗ID(この実施形態の場合は、コンテンツID)を送信すればよい。
「利用者による関心」を認識するための別な方法は、特定の店舗に関心がある旨の報告を利用者自身によって行ってもらう方法である。たとえば、利用者が端末装置を用いて、店舗情報提供部130から提供される様々な店舗のWebページ(店舗情報)を閲覧しているときに、もし関心をもったWebページに遭遇したら、現在閲覧中のWebページに関心をもったことを、何らかの方法で店舗情報提供部130へ報告してもらえばよい。たとえば、店舗情報提供部130が各店舗のWebコンテンツデータを利用者端末に提供する際に、「関心」ボタンを表示するためのデータを併せて送信するようにし、利用者が「関心」ボタンをクリックした場合に、関心を示す報告があったものとして取り扱うようにすればよい。「関心」ボタンのクリックが検知された場合、店舗情報提供部130が、利用者が現在閲覧中のWebページに係る店舗IDを関心店舗記録部150に送信するようにすれば、当該店舗IDを関心店舗IDとして、関心店舗記録部150に記録することができる。
もちろん、「利用者による関心」は、利用者によるWebページの閲覧によってのみ示されるものではない。たとえば、利用者が、特定の店舗を実際に利用した場合(たとえば、レストランで実際に食事をした場合)に、その旨を関心店舗記録部150に対して報告してもらうような運用をとれば、当該利用者が当該店舗に対して関心をもっていることを認識でき、当該店舗の店舗IDを関心店舗記録部150に記録することができる。具体的には、店舗情報提供部130が各店舗のWebコンテンツデータをWebページとして利用者端末に提供した場合に、利用者の操作により、特定のWebページを店舗情報提供部130内に登録することができるようにしておけばよい。そうすれば、利用者は、種々の店舗のWebページを閲覧しながら、利用したいと思った店舗を発見したら、当該店舗のWebページを登録する操作を行うことができる。そして、実際にその店舗を利用した場合には、登録しておいたWebページを呼び出し、当該Webページ上で実際に利用した旨の報告を行うようにすればよい。このような報告があった場合には、当該Webページに係る店舗IDを関心店舗記録部150に送信するようにすれば、当該店舗IDを関心店舗IDとして、関心店舗記録部150に記録することができる。
あるいは、利用者が携帯端末装置(たとえば、携帯電話機)を所持しており、店舗情報提供部130が、この携帯端末装置に対して店舗情報を提供しているような場合であれば、携帯端末装置の位置を検知することにより、特定の店舗が利用された旨の判断を行うことが可能になる。すなわち、この携帯端末装置の位置を認識する機能をもった位置認識装置を用意しておき、この位置認識装置から関心店舗記録部150に、認識した位置の情報を送信させる。関心店舗記録部150は、この位置の情報に基づいて、利用者が特定の店舗の所在位置に来訪したことを認識することができるので、その場合には、当該利用者が当該店舗を利用したものと判断し、当該店舗の店舗IDを関心店舗IDとして蓄積記録することができる。
たとえば、利用者が、GPS機能付きの携帯端末装置を所持している場合、携帯端末装置は、このGPS機能を利用して、自分自身の位置(たとえば、緯度経度情報)を認識することができる。そこで、所定のタイミングもしくは所定周期で、携帯端末装置が自分の位置情報を関心店舗記録部150へと報告するようにしておく。一方、関心店舗記録部150には、個々の店舗の位置情報(たとえば、緯度経度情報)を格納しておく。そうすれば、関心店舗記録部150は、携帯端末装置から報告された位置情報が、特定の店舗の位置情報に一致したときに、当該携帯端末装置を所持する利用者が当該店舗を利用したものと判断することができ、当該店舗の店舗IDを関心店舗IDとして蓄積記録することができる。なお、より正確な判断を行うために、当該店舗の位置に所定時間以上(たとえば、レストランの場合は、食事に必要な時間以上)にわたって滞在した場合に限り、当該店舗を利用したという判断を行うようにしてもよい。
また、店舗が遊園地のような広い敷地を有する場合は、かなり精度の低い位置情報であっても、利用者が当該店舗(遊園地)を利用した旨の判断が可能になる。したがって、GPSのような精度の高い位置認識装置を用いないでも、同様の判断が可能である。たとえば、携帯電話機は所定周期で基地局と交信しているので、「特定の利用者の所持する携帯電話機と交信した」という事実を各基地局から報告してもらうようにすれば、基地局の設置密度に応じた精度で、特定の利用者の現在位置を認識することができる。したがって、遊園地のような広い敷地を有する店舗について、店舗の利用があったことを認識できる。
別なアプローチは、所定の店舗に設置されている店舗設置装置と利用者が所持する携帯端末装置との間で交信が行われた場合に、関心店舗記録部150が、この店舗設置装置もしくは携帯端末装置からの通知を受けて、当該利用者が当該店舗を利用したとの判断を行う方法である。この場合も、当該店舗の店舗IDを関心店舗IDとして蓄積記録することができる。
具体的には、多くの店舗には、店舗利用に対する対価の支払処理を行う支払処理装置(たとえば、クレジットカードやプリペイドカード用の課金処理装置)が設置されている。最近では、携帯電話機などの携帯端末装置に、クレジットカードやプリペイドカードの機能をもたせる技術が実用化されており、利用者は、自分が所持する携帯端末装置と店舗に設置された支払処理装置とを無線交信させて、支払処理を行うことができる。利用者が、このような方法で店舗において支払処理を実行したときに、当該利用者が所持する携帯端末装置と店舗に設置された支払処理装置とが交信した旨の事実を、当該携帯端末装置からもしくは当該支払処理装置から関心店舗記録部150へと報告させるようにする。そうすれば、関心店舗記録部150は、どの利用者がどの店舗を利用したか、という事実を把握することができるので、当該店舗の店舗IDを関心店舗IDとして蓄積記録することができる。
なお、利用者が所持する携帯端末装置と交信する機能をもった店舗設置装置は、上述した支払処理装置に限られるものではない。たとえば、遊園地や映画館などの入場ゲートを通過するためのパスとして、携帯電話機などの携帯端末装置が利用されている。この場合、入場ゲートには、利用者が所持する携帯端末装置と無線交信するゲート管理装置が設置されている。そこで、利用者が、このようなゲート管理装置が設置された入場ゲートを通過して店舗へ入ったときに、当該利用者が所持する携帯端末装置と店舗に設置されたゲート管理装置とが交信した旨の事実を、当該携帯端末装置からもしくは当該ゲート管理装置から関心店舗記録部150へと報告させるようにする。そうすれば、関心店舗記録部150は、どの利用者がどの店舗を利用したか、という事実を把握することができるので、当該店舗の店舗IDを関心店舗IDとして蓄積記録することができる。
<<< §5.第1の実施形態の運用手順 >>>
これまで、図1に示す第1の実施形態に係る情報提供システムの各構成要素の機能を個別に述べてきた。ここでは、このシステム全体の運用手順を説明する。
このシステムを動作させるためには、まず、店舗情報格納部100内に、個々の店舗ごとの店舗情報(この実施形態の場合は、Webページを提示するためのWebコンテンツデータ)を用意しておく必要がある。もっとも、この店舗情報格納部100は、本システム専用のものである必要はないので、実用上は、既存のWebサーバをそのまま転用することが可能である。すなわち、現在、多くの店舗がそれぞれ独自のWebサーバを用いて、Webページのサイトを開設している。図1に示す店舗情報格納部100は、これらのサイトを提供する既存のWebサーバの集合体をそのまま流用することが可能なので、本システムを構築するために新たなWebサーバを設置する必要はない。
一方、利用者嗜好情報格納部110および店舗評価情報格納部120は、本システムに固有の構成要素であり、本システムを構築する上では、新たに設置する必要がある。§1で述べたとおり、利用者嗜好情報格納部110内には、個々の利用者ごと、かつ、個々のジャンルごとに、それぞれ利用者嗜好情報Tを格納しておく必要があり、店舗評価情報格納部120内には、個々の店舗ごとに(ここに示す実施形態の場合は、個々のWebコンテンツごとに)、それぞれ店舗評価情報Eを格納しておく必要がある。
§3で述べたとおり、利用者嗜好情報格納部110内の利用者嗜好情報Tは、本システムを運用している間に、嗜好値更新部140によって自動的に更新されてゆく。しかしながら、運用初期段階には、何らかの利用者嗜好情報Tを用意しておく必要がある。そこで、実用上は、すべての利用者のすべてのジャンルのすべての特徴項目の嗜好値として、何らかのデフォルト値を定義し、このデフォルト値が定義された利用者嗜好情報Tを利用者嗜好情報格納部110内に格納しておくようにすればよい。たとえば、嗜好値=50(嗜好値の数値範囲の中間値)をデフォルト値に定めておけば、運用初期段階では、いずれの利用者のいずれのジャンルのいずれの特徴項目も嗜好値=50に設定されることになる。また、本システム運用後に、新たに利用者となった者についても同様である。このような新利用者については、すべての特徴項目の嗜好値=50とした利用者嗜好情報Tを用意して、利用者嗜好情報格納部110に格納すればよい。
もちろん、初期段階でデフォルト値を設定する代わりに、個々の利用者にアンケート調査を行い、各特徴項目についての嗜好値の初期値を自分自身で設定してもらうようにすることも可能である。ただ、前述したとおり、このようなアンケート調査を行うと、各利用者に多大な労力を課することになるので、実用上は、上述したように、初期段階でデフォルト値を設定するのが好ましい。初期段階でデフォルト値を設定したとしても、嗜好値更新部140による最初の更新処理が実行されれば、利用者嗜好情報Tは、その時点で各利用者の嗜好を反映した正しい嗜好値をもったものに修正されるので、大きな問題は生じない。
なお、嗜好値更新部140による更新処理のタイミングは、システムの運用形態に応じて、種々の設定が可能である。たとえば、関心店舗記録部150に新たな関心店舗IDが記録されるたびに、当該関心店舗IDに係る利用者およびジャンルに関する利用者嗜好情報Tを更新する処理を行うことも可能である。あるいは、個々の利用者ごとに、1週間に1回だけ更新を行う、というスケジュールを定め、このスケジュールに従って適宜更新を行うようにすることもできる。
一方、店舗評価情報格納部120内には、個々の店舗ごとに、それぞれ店舗評価情報Eを格納しておく必要がある。そこで、この第1の実施形態に係るシステムの場合、システムの運用開始時までに、システムの運用管理者が、各店舗についての店舗評価情報Eを用意する作業を行うようにする。店舗情報格納部100内の各店舗情報(Webコンテンツデータ)を閲覧しながら、ジャンルコードと各特徴項目についての評価値を入力する作業を行えばよい。場合によっては、実際に店舗を訪問して、評価値を決めることできる。もっとも、実用上は、§6で述べる第2の実施形態に係るシステムを構築するのが好ましい。この第2の実施形態に係るシステムでは、利用者の投票行為によって、各店舗の評価値が自動的に決定されるため、運用初期段階には、すべての店舗のすべての特徴項目について、たとえば、評価値=50のようなデフォルト値を与えておけば足りる。
<<< §6.第2の実施形態の構成とその特徴 >>>
これまで述べてきた第1の実施形態の特徴は、§3で述べたように、嗜好値更新部140によって、利用者嗜好情報格納部110内の利用者嗜好情報Tが自動的に更新される点である。ここで述べる第2の実施形態は、更に、店舗評価情報格納部120内の店舗評価情報Eを自動的に更新する機能を付加したシステムに係るものである。
図11は、この第2の実施形態に係る情報提供システムの基本構成を示すブロック図である。この第2の実施形態に係るシステムは、図1に示すシステムに、評価値更新部160と投票結果記録部170を付加したものである。そこで、以下、これら2つの新たな構成要素の機能について説明する。
まず、投票結果記録部170は、利用者から特定の店舗の特徴項目についての個人評価値が投票されたときに、個々の店舗ごとに、当該投票結果を蓄積記録する機能をもった構成要素である。具体的には、投票結果記録部170は、利用者端末に対して投票用のWebページを提示するWebサーバと、この投票用のWebページ上で各利用者の個人評価値(投票値)を入力する入力部と、投票結果を記憶する記憶部と、によって構成することができる。
図12は、この投票結果記録部170によって、利用者端末の画面上に提示される投票用画面(Webページ)の一例を示す図である。図示の例は、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗に関する評価値を、利用者甲が投票するための画面である。利用者甲が、利用者端末から投票結果記録部170に対して、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗についての投票を行う旨の指示を与えると、図示のようなWebページ表示用のデータが投票結果記録部170から利用者端末に対して送信される。利用者甲は、このWebページ上で、評価対象となる「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗についての各特徴項目、すなわち、格式、ボリューム、価格の3つの項目について、それぞれ0〜100の範囲内の個人評価値を入力する。
図12に示す例では、この個人評価値の入力作業を容易にするために、左側に、各特徴項目のタイトルを表示し、その右側に、0〜100の評価値を示す数直線を表示するようにしてある。この数直線上の所定箇所には、黒い逆三角形で示されたマーカが配置されており、利用者は、マウスなどを用いて、このマーカを左右にドラッグすることにより、0〜100の範囲内の所望の個人評価値を設定することができる。利用者が、各特徴項目ごとに、それぞれ所望の個人評価値を設定し、最後に、「投票」ボタンをクリックすると、当該利用者が設定した個人評価値が、当該店舗についての個人評価情報として、投票結果記録部170に記録されることになる。
この第2の実施形態に係るシステムを運用する場合は、個々の利用者に、各店舗を実際に利用した場合には、当該店舗についての個人評価値の投票を行うよう協力を求める必要がある。協力に応じる利用者は、利用者端末から投票結果記録部170へとアクセスし、自分の利用者IDと評価対象となる店舗IDとを特定する入力を行い、投票を行う旨の指示を与えればよい。
図13の上段に、投票結果記録部170に記録された投票結果(個人評価情報)の一例を示す。ここに示す3通りの個人評価情報は、いずれも店舗ID「S1302」で特定される「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗に関するものであり、それぞれ甲,乙,丙の3人の利用者による投票結果である。各個人評価情報は、店舗IDと、利用者IDと、個人評価値(各特徴項目のそれぞれについての利用者個人の評価値)と、によって構成される。たとえば、一番左に示す個人評価情報E1302甲の場合、「店舗ID:S1302」,「利用者ID:甲」,「個人評価値:格式18,ボリューム85,価格41」なるデータから構成されている。
なお、この投票は、匿名で行うようにしてもかまわない。その場合、利用者は、投票時に利用者IDを入力する必要はなく、個人評価情報内に利用者IDを含ませる必要もない。ただ、実用上は、悪戯によるデタラメな投票行為を防ぐために、利用者IDを特定した投票を行わせるようにするのが好ましい。もちろん、各個人評価値は、個々の利用者が当該店舗を利用したときの主観的な印象に基づいて恣意的に決定する値であるので、個人個人によって差が生じることになる。ただ、多数の利用者による投票が行われれば、評価の精度はそれだけ向上することになる。
こうして、投票結果記録部170には、個々の店舗ごとに、多数の利用者による投票結果がそれぞれ蓄積記録されてゆく。そこで、評価値更新部160は、個々の店舗ごとに、この投票結果記録部170に記録されている投票結果を抽出し、抽出した投票結果に基づいて、店舗評価情報格納部120に格納されている当該店舗についての店舗評価情報Eの評価値を更新する処理を行う。
図13の下段は、評価値更新部160の処理によって更新された店舗評価情報Eの一例を示す図である。ここに示す実施形態では、個人評価情報「E1302甲」,「E1302乙」,「E1302丙」の各特徴項目ごとの個人評価値の平均値を、店舗評価情報E1302の同じ特徴項目についての新たな評価値とする更新処理を実行している。たとえば、図13の下段に示された店舗評価情報E1302の特徴項目「格式」の評価値21は、図13の上段に示された個人評価情報「E1302甲」,「E1302乙」,「E1302丙」の特徴項目「格式」の各評価値18,22,23の平均値として求められた値である。
なお、上述した更新処理を実行する場合、投票結果記録部170に記録されている「個々の店舗ごとの投票結果の全部」を抽出する代わりに、「個々の店舗ごとの投票結果の一部」を抽出して更新に利用するようにしてもよい。たとえば、投票結果記録部170が、投票結果を記録する際に記録時の時間情報を併せて記録するようにしておけば、評価値更新部160は、投票結果記録部170に記録されている投票結果のうち、記録時が所定期間内のもののみを抽出して店舗評価情報の評価値を更新することが可能になる。そこで、たとえば、現時点を基準として、過去3ヶ月以内に記録された投票結果のみを抽出して更新に利用するようにすれば、最近3ヶ月の間の個人評価値のみを参照した更新が可能になる。したがって、店舗が内装を一新して新装開店したような場合にも、各特徴項目の評価値を最新の評価値に保持することができるようになる。もちろん、この場合、3ヶ月以上前に記録された投票結果は逐次消去するようにしてかまわない。
また、投票結果の記録時を利用して、重みづけ平均値を求めるようなことも可能である。図13に示す例では、各個人評価値の単純な平均値を新たな評価値とする更新を行っているが、たとえば、より最近に記録された投票結果に係る個人評価値に、より大きな重みをつけるようにして重みづけ平均値を算出し、これを新たな評価値として更新を行うようにすれば、より最近の評価に重みをおいた店舗評価情報を得ることができる。
評価値更新部160による更新処理のタイミングは、システムの運用形態に応じて、種々の設定が可能である。たとえば、投票結果記録部170に新たな投票結果(個人評価情報)が記録されるたびに、当該投票結果に係る店舗の店舗評価情報Eを更新する処理を行うことも可能である。あるいは、個々の店舗ごとに、1週間に1回だけ更新を行う、というスケジュールを定め、このスケジュールに従って適宜更新を行うようにすることもできる。このように、自動的な更新が行われるため、本システムの運用初期段階では、各店舗の店舗評価情報Eの評価値としてデフォルト値を設定しておいても、システムを運用してゆくことにより、各評価値は適確な値へと自動的に是正されてゆく。
このように、ここで述べた第2の実施形態に係るシステムでは、嗜好値更新部140によって利用者嗜好情報Tが自動的に更新されるだけではなく、評価値更新部160によって店舗評価情報Eも自動的に更新されることになる。前述したとおり、嗜好値更新部140による利用者嗜好情報Tの更新処理には、店舗評価情報E内の評価値が利用される。この第2の実施形態に係るシステムでは、店舗評価情報E内の評価値が更新されて常に適正な値に維持されるため、これを利用して更新される利用者嗜好情報Tの内容も適正な値に維持されるという相乗効果が見込まれる。
ところで、§4では、関心店舗記録部150による関心認識処理(利用者により特定の店舗に対する関心が示されたことを認識する処理)の具体的な方法をいくつか例示した。ここで述べた第2の実施形態では、利用者が特定の店舗を利用した場合、当該店舗について、投票結果記録部170に対して投票を行うことになる。この投票行為は、利用者による「当該店舗に関心をもっている」との意思表示に他ならない。そこで、このような投票があった場合、投票結果記録部170は、当該投票結果を記録するとともに、関心店舗記録部150に対して、「特定の利用者が特定の店舗に対して投票を行った」旨の報告を行うようにする。そうすれば、報告を受けた関心店舗記録部150は、当該利用者について、当該店舗IDを関心店舗IDとして記録することができる。
<<< §7.第3の実施形態の構成とその特徴 >>>
ここで述べる第3の実施形態は、同伴者の嗜好まで考慮した取り扱いを可能にする情報提供システムに係るものである。利用者が種々の店舗を利用する場合、通常、同伴者を伴って利用することが多い。このように、複数の利用者からなるグループとして、特定の店舗を利用した場合、当該店舗が、自分の嗜好どおりの店舗であった利用者は満足度が高くなるが、自分の嗜好に合致しない店舗であった利用者は満足度が低くなるであろう。ここで述べる第3の実施形態に係るシステムは、各利用者がグループとして店舗を利用した場合に、当該店舗についての満足度を報告させ、この満足度を考慮して、各利用者に提供する店舗情報の選択を行う機能を有している。
図14は、この第3の実施形態に係る情報提供システムの基本構成を示すブロック図である。この第3の実施形態に係るシステムは、図1に示す第1の実施形態に係るシステムに、満足度比率算出部180と個人満足情報記録部190を付加したものである。そこで、以下、これら2つの新たな構成要素の機能について説明する。
まず、個人満足情報記録部190は、複数の利用者が特定の店舗を利用した際に、当該グループを構成する利用者を特定するグループ構成情報と、利用した店舗のジャンルと、個々の利用者を特定するための利用者IDと、当該利用者の個人満足度と、を含む個人満足情報を蓄積記録する機能を有する。具体的には、個人満足情報記録部190は、利用者端末に対して個人満足情報入力用のWebページを提示するWebサーバと、このWebページ上で各利用者の個人満足情報を入力する入力部と、入力された個人満足情報を記憶する記憶部と、によって構成することができる。
ここでは、2人の利用者甲,乙が一緒に、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」を利用した場合を考えよう。この場合、「甲,乙」という2人の利用者からなるグループが、当該店舗を利用したことになるが、利用者甲から見ると、乙を同伴して当該店舗を利用したことになり、利用者乙から見ると、甲を同伴して当該店舗を利用したことになる。そこで、甲乙双方から、利用後の満足度を報告してもらうようにする。
図15は、この個人満足情報記録部190によって、利用者端末の画面上に提示される個人満足情報入力用画面(Webページ)の一例を示す図である。図示の例は、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗に関する満足度を、利用者甲が入力するための画面である。利用者甲が、利用者端末から個人満足情報記録部190に対して、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」なる店舗についての満足度を入力する旨の指示を与えると、図示のようなWebページ表示用のデータが個人満足情報記録部190から利用者端末に対して送信される。利用者甲は、このWebページ上で、同伴者および甲自身の満足度を入力する。
なお、同伴者の情報は、個人満足情報記録部190内では、利用者IDとして取り扱われるが、ここに示す実施形態の場合は、入力操作を簡便にするために、予め、利用者甲にとっての同伴者を登録させておき、入力画面上では、この登録されている同伴者名をリストとして提示し、所望の同伴者名を選択するだけで同伴者を特定する入力作業が完了するようにしてある。図15に示すWeb画面では、「御同伴者:」の右側の欄に、予め登録されている同伴者名がリスト表示されることになり、利用者甲は、このリストの中から「乙」を選択する操作を行えばよい。
一方、個人満足度は、0〜100の範囲内の数値として定義している。図15に示す例では、この個人満足度の入力作業を容易にするために、0〜100の評価値を示す数直線を表示し、その所定箇所には、黒い逆三角形で示されたマーカを配置するようにしている。利用者は、マウスなどを用いて、このマーカを左右にドラッグすることにより、0〜100の範囲内の所望の個人満足度を入力することができる。利用者が、マーカを所望の位置に動かし、「入力」ボタンをクリックすると、当該利用者が入力した個人満足情報が、個人満足情報記録部190に記録されることになる。
なお、ここで述べる第3の実施形態と前述した第2の実施形態とを併合したシステムを用いる場合には、第2の実施形態で必要な投票用画面と第3の実施形態で必要な満足情報入力用画面とを統合するのが好ましい。図16は、図12に示す投票用画面と図15に示す満足情報入力画面とを統合した入力画面の一例を示す図である。この入力画面では、「満足度」が、「格式」,「ボリューム」,「価格」と同列に取り扱われている。もちろん、システムの処理上は、「満足度」と、「格式」,「ボリューム」,「価格」とは、全く異なるパラメータである。後者は、§6で述べたとおり、評価値更新部160による更新処理に利用される個人評価値であるのに対して、前者は、後述するとおり、店舗情報提供部130による取捨選択作業に利用される値である。しかしながら、利用者側から見れば、いずれも0〜100の範囲をとる数値であり、ユーザインターフェイス上は、図16に示す例のように、同列に取り扱うと便利である。利用者甲は、図16に示す入力画面上で、「格式」,「ボリューム」,「価格」,「満足度」なる4項目についての値を設定し、「投票」ボタンをクリックすればよい。
以上、図15および図16の入力画面例を参照しながら、利用者甲の入力作業を説明したが、全く同様の入力作業が、利用者乙によっても実行される。この場合、「利用者:乙、同伴者:甲」という設定での入力が行われることになる。このように、各利用者には、複数の利用者同士が同伴して店舗を利用した場合でも、個々の利用者ごとに、それぞれ個人満足情報を入力してもらう。
図17は、こうして、甲,乙双方の入力作業を経て、個人満足情報記録部190内に記録された個人満足情報の一例を示す図である。図17(a) は、甲の入力作業によって記録された個人満足情報M1甲であり、「利用者ID:甲」、「同伴者ID:乙」、「店舗ID:S1302」、「ジャンルコード:G13」、「個人満足度:85」なるデータから構成される。この個人満足情報M1甲は、利用者甲乙というグループで、S1302なる店舗IDで特定されるジャンルコードG13の店舗を利用したときの、利用者甲の個人満足度が85である、という事項を示す情報である。一方、図17(b) は、乙の入力作業によって記録された個人満足情報M1乙であり、「利用者ID」と「同伴者ID」が入れ替わっている点と、個人満足度の値が23になっている点とが、個人満足情報M1甲と異なる。
なお、図17に示す各個人満足情報M1甲,M1乙には、店舗IDが含まれているが、この店舗IDは省略してもかまわない。個人満足情報の必須項目は、特定の店舗を利用したグループを構成する利用者を特定するグループ構成情報、利用した店舗のジャンルを示すジャンルコード、個々の利用者を特定するための利用者ID、当該利用者の個人満足度、である。図17(a) に示す例の場合、「利用者ID:甲」および「同伴者ID:乙」がグループ構成情報として機能していることになり、図17(b) に示す例の場合、「利用者ID:乙」および「同伴者ID:甲」がグループ構成情報として機能していることになる。
さて、満足度比率算出部180は、この個人満足情報記録部190に記録されている個人満足情報Mに基づいて、「特定のグループで特定のジャンルの店舗を利用する」というグループ利用条件下における利用者相互の満足度比率を算出する処理を行う。これを具体例で説明しよう。
いま、個人満足情報記録部190内に、図17(a) ,(b) に示すような個人満足情報M1甲,M1乙が記録されている場合を考える。これらの情報は、「特定のグループで特定のジャンルの店舗を利用する」というグループ利用条件に対応している。具体的には、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13の店舗を利用する」というグループ利用条件に対応していることになる。したがって、これらの情報に基づいて、当該グループ利用条件下における利用者相互の満足度比率として、「85:23」という比率が求められる。この比率の意味するところは、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13の店舗を利用する」というグループ利用条件下での過去の利用実績では、甲の個人満足度85に対して、乙の個人満足度は23である、という事実である。別言すれば、当該利用条件下では、甲の満足度はかなり高いが、乙の満足度はかなり低いことがわかる。
なお、図17に示す例では、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13の店舗を利用する」という固有のグループ利用条件における甲の個人満足度情報が1組、乙の個人満足度情報が1組だけ存在するため、それぞれの個人満足度85,23の比をそのままとることにより、「85:23」という満足度比率が算出できた。しかしながら、実際には、同一のグループ利用条件における各利用者の個人満足度情報が複数組存在する場合もありうる。たとえば、利用者甲乙が、「イタリア料理」のレストラン3軒で食事をした場合、個々のレストランごとにそれぞれ個人満足度情報が収集されることになる(合計6件の個人満足情報が得られる)。この場合、いずれもグループ利用条件は同一である。このような場合は、算出に利用する個人満足情報に含まれる個人満足度の個々の利用者ごとの平均値の比率を満足度比率として算出するようにすればよい。たとえば、甲の3軒の個人満足度がそれぞれ85,80,75であり、乙の3軒の個人満足度がそれぞれ23,25,30であった場合、当該利用条件下の満足度比率は、((85+80+75)/3):(23+25+30)/3)=80:26なる計算で求めることができる。
また、個人満足情報記録部190には、逐次、個人満足情報が記録されてゆくことになるが、満足度比率算出部180が、満足度比率を算出するにあたって、個人満足情報記録部190に記録されている特定の利用条件下での個人満足情報の全部を用いて算出を行う代わりに、その一部を用いて算出を行うようにしてもよい。たとえば、個人満足情報記録部190が、個人満足情報を記録する際に記録時の時間情報を併せて記録するようにしておけば、満足度比率算出部180は、個人満足情報記録部190に記録されている個人満足情報のうち、記録時が所定期間内のもののみを抽出して満足度比率の算出を行うことが可能になる。たとえば、現時点を基準として、過去3ヶ月以内に記録された個人満足情報のみを抽出して算出に利用するようにすれば、最近3ヶ月の間の個人満足情報のみを参照した算出が可能になる。もちろん、この場合、3ヶ月以上前に記録された個人満足情報は逐次消去するようにしてかまわない。もちろん、個人満足情報の記録時を利用して、重みづけ平均値を求めるようなことも可能である。
なお、満足度比率算出部180による満足度比率の算出タイミングは、システムの運用形態に応じて、種々の設定が可能である。たとえば、個人満足情報記録部190に新たな個人満足情報が記録されるたびに、当該個人満足情報に係る所定の利用条件下での満足度比率を算出する処理を行うことも可能である。あるいは、各利用条件ごとに、1週間に1回だけ更新を行う、というスケジュールを定め、このスケジュールに従って適宜更新を行うようにすることもできるし、店舗情報提供部130から要求を受けたときに、当該要求に係る利用条件についての満足度比率をその都度算出することもできる。
もちろん、各グループ利用条件は、グループの構成メンバーごとに異なり、また、利用する店舗のジャンルによっても異なる。したがって、たとえば、「利用者甲&丙というグループで、ジャンルコードG13の店舗を利用する」というグループ利用条件下での満足度比率は別個に定義されることになり、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG21の店舗を利用する」というグループ利用条件下での満足度比率も別個に定義されることになる。
ここで、グループ利用条件をグループの構成メンバーごとにそれぞれ異ならせるのは、「店舗選びの主導権を誰がとるか」という命題に対する答えが、利用者の組合わせによって異なると考えられるからである。たとえば、「利用者甲&乙」というグループでは、専ら甲が店舗選びをする傾向があるのに、「利用者甲&丙」というグループでは、専ら丙が店舗選びをする傾向がある、ということも少なくないであろう。また、グループ利用条件を利用する店舗のジャンルごとにそれぞれ異ならせるのは、「店舗選びの主導権を誰がとるか」という命題に対する答えが、店舗のジャンルによって異なると考えられるからである。たとえば、同じ「利用者甲&乙」というグループであっても、「イタリア料理」の店舗選びは甲が主導権をとり、「婦人服」の店舗選びは乙が主導権をとる、といったケースも少なくないであろう。
こうして、満足度比率算出部180で算出された各グループ利用条件下における利用者相互の満足度比率の値は、店舗情報提供部130における店舗情報の取捨選択に利用される。すなわち、店舗情報提供部130は、特定のグループ利用条件下における店舗情報の提供要求を受けたときに、当該特定のグループ利用条件に係る個々の利用者ごとにそれぞれ適した店舗情報を候補として抽出した後、当該グループ利用条件下における満足度比率に応じて、候補として抽出した店舗情報を取捨選択して提供する。
これを具体例を参照しながら、より詳細に説明しよう。いま、図14に示すシステムにおいて、利用者甲が操作する端末装置から店舗情報提供部130に対して、「同伴者:乙」なる同伴者情報と、「イタリアン レストラン 渋谷」なるキーワードとを含む店舗情報の提供要求があったものとしよう(このような提供要求を可能にするためには、検索指示を入力するWebページの画面上に、キーワード入力欄と同伴者名入力欄とを用意しておけばよい)。この提供要求は、結局、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13(イタリア料理)の店舗を利用する」という固有のグループ利用条件下における店舗情報の提供要求ということになる。
このような提供要求を受けた店舗情報提供部130は、§2で述べたように、店舗情報格納部100に格納されている多数の店舗情報を2つのふるいにかけて取捨選択し、最終的に選択された店舗情報を概要リストに掲載して提示する処理を行う。ここで、第1のふるいは、上記キーワードに基づくふるいであり、第2のふるいは、利用者嗜好情報Tと店舗評価情報Eとの比較に基づくふるいである。ただ、上記例のように、同伴者情報を含む提供要求は、グループで店舗を利用する予定を立てていることが前提となっているので、第2のふるいによる選択処理は、本来、当該グループを構成する個々の利用者の嗜好をすべて反映させた処理にすべきである。すなわち、上記例の場合、利用者甲の利用者嗜好情報T甲と利用者乙の利用者嗜好情報T乙との双方を考慮した選択を行うべきである。
そこで、この第3の実施形態では、この第2のふるいを、個々の利用者ごとに別個に行うようにしている。すなわち、個々の利用者ごとにそれぞれ適した店舗情報が候補として抽出されることになる。図18の左側には、利用者甲について抽出された店舗情報の候補を示し、同図の右側には、利用者乙について抽出された店舗情報の候補を示す。利用者嗜好情報格納部110内に格納されている利用者甲についての利用者嗜好情報T甲と、利用者乙についての利用者嗜好情報T乙とは、もちろん別個のものである。そして、図18の左側に列挙された各候補は、前者を利用して抽出された候補(利用者嗜好情報T甲と各店舗評価情報Eとの比較に基づくふるい分けで抽出された候補)であり、同図の右側に列挙された候補は、後者を利用して抽出された候補(利用者嗜好情報T乙と各店舗評価情報Eとの比較に基づくふるい分けで抽出された候補)である。
このように、第2のふるいを利用者ごとに別々にかけると、当然、その結果として抽出される候補も利用者ごとに別々のものとなる。そこで、この第3の実施形態では、更に第3のふるいをかけ、これらの抽出候補を更に取捨選択するようにしている。この第3のふるいの取捨選択処理に、満足度比率算出部180で算出された満足度比率を用いるのである。
上記例の場合、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13(イタリア料理)の店舗を利用する」というグループ利用条件下における店舗情報の提供要求がなされているので、当該グループ利用条件下における満足度比率に応じて、候補として抽出した店舗情報の取捨選択(第3のふるい分け)が行われる。たとえば、当該グループ利用条件下における満足度比率「M(甲):M(乙)」が「85:23」と算出されていた場合であれば、この「85:23」という比率に応じて、甲についての抽出候補と乙についての抽出候補とが含まれるような選択を行えばよい。ここで、「比率に応じた選択」を行う場合、具体的には、次の2とおりの方針が考えられる。
第1の方針は、個々の利用者ごとに抽出された店舗情報の候補の中から、個々の利用者ごとの満足度比率の逆比に応じた確率で、店舗情報を選択する方針である。たとえば、図18に示す例において、満足度比率「M(甲):M(乙)」=「85:23」の逆比に応じた確率で店舗情報を選択すると、図の左側に示す甲についての抽出候補の中から選択される確率が23/(85+23)、図の右側に示す乙についての抽出候補の中から選択される確率が85/(85+23)となるような取捨選択が行われることになる。
この第1の方針は、「各利用者ごとに平等な満足度が得られるような調整を行う」という考え方に基づいている。上記例の場合、満足度比率「M(甲):M(乙)」=「85:23」という結果が得られているが、これは、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13(イタリア料理)の店舗をこれまでに利用してきた結果、甲の満足度が85であるのに対して、乙の満足度が23しかない」という事実を示すものである。すなわち、「これまで、甲乙でイタリア料理店を利用してきた結果、甲の満足度はかなり高いのに、乙の満足度はかなり低い」という事実を示すものである。したがって、「各利用者ごとに平等な満足度が得られるような調整を行う」という考え方を採れば、次回、甲乙でイタリア料理店を利用する際には、できるだけ乙が満足するような店舗を推奨すべきである、という結論が得られる。満足度比率の逆比に応じた確率で店舗情報を選択すれば、甲の嗜好に合致した店舗情報は23/(85+23)の確率で選択されるのに対し、乙の嗜好に合致した店舗情報は85/(85+23)の確率で選択されることになり、乙の嗜好に合致した店舗情報が優先的に選択されることになる。
これに対して、第2の方針は、個々の利用者ごとに抽出された店舗情報の候補の中から、個々の利用者ごとの満足度比率の正比に応じた確率で、店舗情報を選択する方針である。たとえば、図18に示す例において、満足度比率「M(甲):M(乙)」=「85:23」の正比に応じた確率で店舗情報を選択すると、図の左側に示す甲についての抽出候補の中から選択される確率が85/(85+23)、図の右側に示す乙についての抽出候補の中から選択される確率が23/(85+23)となるような取捨選択が行われることになる。
この第2の方針は、「過去の店舗選びの主導権者を尊重する」という考え方に基づいている。上記例の場合、満足度比率「M(甲):M(乙)」=「85:23」という結果が得られているが、これは、「利用者甲&乙というグループで、ジャンルコードG13(イタリア料理)の店舗をこれまでに利用してきた結果、甲の満足度が85であるのに対して、乙の満足度が23しかない」という事実を示すものであるが、これは裏を返せば、「甲乙でイタリア料理店を利用する場合、店舗選びの主導権は甲にある」という事実を示すものである。したがって、「過去の店舗選びの主導権者を尊重する」という考え方を採れば、次回も、甲乙でイタリア料理店を利用する際には、甲が主導権をもって店舗選びを行う可能性が高いので、できるだけ甲の嗜好に合わせた店舗を推奨すべきである、という結論が得られる。満足度比率の正比に応じた確率で店舗情報を選択すれば、甲の嗜好に合致した店舗情報は85/(85+23)の確率で選択されるのに対し、乙の嗜好に合致した店舗情報は23/(85+23)の確率で選択されることになり、甲の嗜好に合致した店舗情報が優先的に選択されることになる。
第1の方針(逆比)を採るべきか、第2の方針(正比)を採るべきかは、一般に、グループを構成する利用者の関係によって異なる問題であろう。したがって、実用上は、甲乙が恋人同士の場合、夫婦の場合、同僚の場合、同級生の場合などに分けて、いずれの方針を採用するかを予め設定しておくようにすればよい。
なお、第3のふるい分けを行って統合された店舗情報を、図7に示すような概要リストとして提示する際にも何通りかの方法が考えられる。第1の方法は、第2のふるい分けにおいて図8に示すようなベクトル空間上で近似の程度が調べられたので、この近似の程度の高い順(ベクトルの先端点間距離の短い順)にソートしてリストに並べる、という方法である。この方法では、図18の左側の候補と右側の候補とが入り乱れた状態で概要リストに並ぶことになる。第2の方法は、満足度比率の小さい利用者についての候補をリストの先に配置する、という方法である。上記例の場合、乙について抽出された候補がリストの先に並ぶことになる。これは、「各利用者ごとに平等な満足度が得られるような調整を行う」という考え方に合致した方法ということになる。第3の方法は、満足度比率の大きい利用者についての候補をリストの先に配置する、という方法である。上記例の場合、甲について抽出された候補がリストの先に並ぶことになる。これは、「過去の店舗選びの主導権者を尊重する」という考え方に合致した方法ということになる。
以上、甲乙2人のグループによる店舗利用を例にとって、第3の実施形態を説明したが、この実施形態は、もちろん3人以上のグループについても適用可能である。たとえば、甲乙丙の3名で店舗を利用した場合、それぞれが個人満足情報記録部190に個人満足情報を入力すればよい。この場合、たとえば、甲の入力画面では、同伴者を乙丙とする入力を行えばよい。また、満足度比率は、「M(甲):M(乙):M(丙)」のように、3つの数比で与えられることになる。
<<< §8.第4の実施形態の構成とその特徴 >>>
通常、利用者が、インターネットにアクセスして何らかの情報を得ようとする場合、何らかの行動を行うことを意図していることが多い。たとえば、レストランのWebページをアクセスしている場合、利用者は食事を行うことを意図していると考えられる。また、映画館のWebページをアクセスしている場合、利用者は映画を見にゆくことを意図していると考えられる。しかも、個々の利用者ごとに、それぞれ独特の行動パターンが定着していることが多い。
たとえば、同伴者と映画を見た後にレストランで食事をし、映画の内容を語りあう、という行動パターンが日常化している利用者もいるであろうし、先に食事を済ませ、満腹な状態で映画を楽しむ、という行動パターンが日常化している利用者もいるであろう。前者の場合、利用者から映画の情報が要求されたときに、併せて食事の情報を提供すると有意義であろう。しかし、後者の場合は、利用者から映画の情報が要求されたときには、既に食事を済ませてしまっている可能性もあるので、映画の情報とともに食事の情報を提供しても、役に立たないケースもあるであろう。
この§8で述べる第4の実施形態に係るシステムは、個々の利用者ごとの日常の行動パターンを考慮して、的確な情報提供を行う機能をもったシステムである。
図19は、この第4の実施形態に係る情報提供システムの基本構成を示すブロック図である。この第4の実施形態に係るシステムは、図1に示す第1の実施形態に係るシステムに、後続ジャンル予測部210、行動履歴情報格納部220、行動履歴情報収集部230を付加したものである。そこで、以下、これら3つの新たな構成要素の機能について説明する。
まず、行動履歴情報収集部230は、各利用者が特定の店舗を利用したときに、当該利用者の利用者IDと、当該店舗のジャンルコードと、利用時間と、を含む行動履歴情報を収集する機能を有する。たとえば、利用者甲が、「ゆでたてスパゲティの店XYZ」を利用した場合、「利用者ID:甲」,「ジャンルコード:G13」,「利用時間:2006/11/25/17:53」のようなデータを含む行動履歴情報が収集される(店舗の利用順が特定できればよいので、利用時間のデータは、必ずしも時分のデータまで含む必要はない)。要するに、行動履歴情報は、「いつ、誰が、どのジャンルの店を利用したか」を示す情報ということになる。
このような情報を収集するには、「特定の利用者が特定の店舗を利用したこと」を認識する必要があるが、それには、たとえば、§4で述べた種々の方法(利用者に店舗利用の事実を報告してもらう方法、GPS機能付きの携帯端末装置の位置を認識する方法、店舗設置装置と利用者が所持する携帯端末装置との間で交信が行われたことを認識する方法など)を用いればよい。あるいは、§6で述べた第2の実施形態や§7で述べた第3の実施形態を併用する場合であれば、利用者が、図15もしくは図16に示すようなWeb画面上で所定事項を入力する作業を行うことにより、「特定の利用者が特定の店舗を利用したこと」を認識することができる。
こうして行動履歴情報収集部230が収集した行動履歴情報は、行動履歴情報格納部220に格納される。図20は、この行動履歴情報格納部220に格納された行動履歴情報の一例を示す図である。図示のとおり、個々の利用者ごとに別個独立した格納領域が確保されており、図20(a) に示す格納領域には、利用者甲に関する行動履歴情報が格納され、図20(b) に示す格納領域には、利用者乙に関する行動履歴情報が格納されている。
この図20に示す例の場合、個々の利用者ごとの行動履歴情報は、曜日ごとに24時間単位の連続時間枠を設定し、この連続時間枠内に時間軸上での順列として、ジャンルコードの大分類(図3参照)を羅列したデータになっている。たとえば、図20(a) には、利用者甲に関する行動履歴情報の格納例が示されている。図には、便宜上、日曜日と月曜日の欄しか示されていないが、実際には、火曜日〜土曜日についての欄も設けられており、利用者甲に関する行動履歴情報が、各曜日ごとに分類して格納されている。
たとえば、日曜日の欄の1行目に示されている「2006/10/08」,「ショー」,「食事」なるデータは、利用者甲が、2006年10月8日に、「ショー」なる大分類のジャンルに属する店舗を利用した後、「食事」なる大分類のジャンルに属する店舗を利用した事実を示している。もちろん、「ショー」や「食事」といった大分類を用いる代わりに、「イタリア料理」や「映画」といったジャンル自身のコードを用いるようにしてもかまわない。
さて、この図20に示すような行動履歴情報を収集すると、個々の利用者ごとの行動パターンを予測することができる。たとえば、利用者甲の日曜日の行動パターンを見てみると、「ショー」を見た後には、「食事」をする習慣があることがわかる。別言すれば、利用者甲の日曜日の行動として、「ショー」というジャンルの店舗を利用した場合には、後続して「食事」というジャンルの店舗を利用する可能性が高いことがわかる。そこで、後続ジャンル予測部210は、行動履歴情報格納部220に格納されている行動履歴情報に基づいて、特定の利用者が所定のジャンルを利用した後、これに後続して利用する可能性の高いジャンルを予測する処理を行う。
一方、店舗情報提供部130は、このような後続ジャンルの予測結果を利用して、利用者からの提供要求に応じた店舗情報とともに、当該店舗情報に係るジャンルの後続ジャンルに係る店舗情報を付加情報として提供することができる。別言すれば、利用者甲が「ショー」に関する店舗情報を要求してきた場合、要求どおりの店舗情報を提供するとともに、「ショー」に関する店舗を利用した後には、「食事」というジャンルの店舗が利用されるであろうとの予測を行い、「食事」というジャンルの店舗情報を付加情報として提供するのである。
たとえば、利用者甲が日曜日に、店舗情報提供部130に対して、「映画 渋谷」のようなキーワードを用いた検索を伴う店舗情報の提供要求を行い、その結果、利用者甲の嗜好に合致した店舗情報の概要リストが提示され、この概要リスト上で、利用者甲が「テアトル○○」なるタイトル部分をクリックする操作を行ったために、この「テアトル○○」なる店舗(映画館)の店舗情報D1が提示されることになったものとしよう。この場合、店舗情報提供部130は、後続ジャンル予測部210に対して、「利用者甲の日曜日の『ショー』に後続するジャンルを予測せよ」との命令を与える。後続ジャンル予測部210は、この命令に応じて、行動履歴情報格納部220内に格納されている「利用者甲の日曜日の行動履歴」を参照し、「利用者甲の日曜日の『ショー』に後続するジャンル」が「食事」であることを予測し、これを店舗情報提供部130に報告する。そこで、店舗情報提供部130は、「食事」のジャンルに属し、利用者甲の嗜好に合致する店舗情報D2を付加情報として選択する。そのためには、店舗評価情報格納部120内を検索し、食事のジャンルコードをもった店舗ID(コンテンツID)の中から利用者甲の嗜好に合致するものを選択すればよい。そして、利用者甲の要求に応じて、「テアトル○○」なる店舗の店舗情報D1の提供を行う際に、付加情報として選択された「食事」のジャンルに属する店舗情報D2を併せて提供する。
図21は、上述の例についての、具体的な提供形態の一例を示す図である。この例では、利用者甲が操作する端末装置上に、まず、図21(a) に示すように、店舗情報D1が表示される。この店舗情報D1は、利用者甲が要求した本来の店舗情報(すなわち、「映画 渋谷」なるキーワードに合致する店舗情報)である。ただし、図示のとおり、「特別なお知らせ」なる文字列からなる移行ボタンBが、店舗情報提供部130によって付加されている。利用者甲が、この移行ボタンBをクリックすると、図21(b) に示すように、店舗情報D2の表示が行われる。すなわち、この図21に示す提示形態の場合、まず、店舗情報提供部130が、利用者甲の要求どおりの店舗情報D1に移行ボタンBを付加したWebページデータを送信し、移行ボタンBがクリックされた場合に、店舗情報D2のWebページデータを付加情報として送信することになる。
一方、図22は、上述の例についての、別な提供形態の一例を示す図である。この例では、店舗情報提供部130が、利用者甲の要求どおりの店舗情報に付加情報を融合させることにより新たなWebページデータを作成して提供する処理を行う。その結果、図示のような店舗情報D3が提示されることになる。この店舗情報D3は、基本的には、「テアトル○○」なる映画館に係る店舗情報であるが、図示のとおり、「リストランテPATで本日お得なパスタフェア開催中」なる文字列からなる付加情報Aが付加されている。この付加情報Aは、後続ジャンルとして予測された「食事」のジャンルに属する店舗情報D2(図21(b) 参照)内の一部から抽出した情報である。利用者甲は、「映画」に関連する店舗情報を要求するだけで、図22に示すような表示を得ることができる。この表示には、要求に応じた「映画」に関連する店舗情報とともに付加情報Aが含まれており、この付加情報Aは、利用者甲が「映画」の後に実行すると期待される「食事」に関連した店舗情報になっている。
以上、図21および図22に、付加情報の具体的な提示形態の例を示したが、もちろん、付加情報の提示形態はこれらの例に限定されるものではなく、この他にも種々の形態で提示が可能である。たとえば、利用者端末の表示画面を二分割して、「映画」に関連する店舗情報と「食事」に関連した店舗情報(付加情報)とを同時に表示させるようにしてもよい。あるいは、「映画」に関連する店舗情報を表示させた画面上の一部に、小さな窓を重ねて表示し、その窓内に「食事」に関連した店舗情報(付加情報)を表示させるような形態も可能である。
なお、後続ジャンル予測部210による予測は、たとえば、次のようないくつかのアルゴリズムに基づいて行うことができる。第1のアルゴリズムは、特定の利用者に関して、過去に「特定ジャンル」の直後に実行された回数が所定の基準値以上となるジャンルを「当該特定ジャンルについての後続ジャンル」として選出する方法である。たとえば、図20(a) に示す例の場合、各曜日ごとにそれぞれ基準値を3に設定しておくと、日曜日に関しては、「ショー」の直後に「食事」が実行された回数は3回であるから、「ショー」なるジャンルの後続ジャンルとして、「食事」なるジャンルが選出されることになる。一方、図20(b) に示す例の場合、日曜日に関しては、「ショー」の直後に「喫茶」が実行された回数は2回、「ショー」の直後に「食事」が実行された回数は1回であるから、同じ基準の場合、後続ジャンルが選出されることはない(この場合、付加情報は提供されない)。
条件を若干緩くした予測を行うことも可能である。具体的には、過去に「特定ジャンル」の直後もしくは数回後までに実行された回数が所定の基準値以上となる行動を「当該特定ジャンルについての後続ジャンル」として選出すればよい。ここで、「数回後までに実行された」なる意味は、「直後」でなく、間に別な行動が介在してもかまわない、という意味である。たとえば、図20(b) の日曜日の欄の5行目には、「買物」・「ショー」・「食事」・「喫茶」という順序の行動履歴情報が格納されている。ここで、「喫茶」は「ショー」の直後(1回後)に実行された行動には該当しない。しかしながら、「2回後」までに実行された行動には該当する。したがって、この図20(b) の日曜日の例の場合、「数回後」として「2回後」なる条件を設定し、基準値を3に設定し、過去に「特定ジャンル」の直後もしくは2回後までに実行された回数が3以上となるジャンルを「後続ジャンル」として選出するようにすれば、「ショー」の直後もしくは2回後までに「喫茶」が実行された回数は3回であるから、「喫茶」が「ショー」の後続ジャンルとして選出されることになる。
もちろん、「後続ジャンル」として選出されるジャンルは複数であってもかまわない。たとえば、「ショー」の後続ジャンルとして、「食事」と「喫茶」の両方が選出された場合には、「食事」に関連した店舗情報と「喫茶」に関連した店舗情報との双方を付加情報として提供すればよい。もっとも、付加情報の数があまり多いと、利用者にとって煩しいので、実用上は、回数の最も多いジャンルを1つだけ、もしくは、上位のいくつかのジャンルのみを「後続ジャンル」として選出するのが好ましい。
また、過去に実行された回数ではなく、過去に実行された割合を基準にして、「後続ジャンル」の選出を行うことも可能である。たとえば、「ショー」の直後もしくは2回後までに行われたジャンルを集計した結果、「食事」が3回、「喫茶」が1回、「スポーツ」が1回であった場合、「ショー」の直後もしくは2回後までに行われたジャンルの割合は、「食事」が60%、「喫茶」が20%、「スポーツ」が20%ということになる。そこで、たとえば、この割合が50%以上であるジャンルを「後続ジャンル」として選出することにしておけば、「食事」が「後続ジャンル」として選出されることになる。
実際には、回数を基準とした選出よりも、割合を基準とした選出を行う方が好ましい。これは、行動履歴情報収集部230によって収集された行動履歴情報のサンプル数が増加した場合、回数を基準とした選出を行うと基準値以上となる行動が増えてしまうのに対して、割合を基準とした選出を行えば、基準値以上となる行動が増えることはないからである。
なお、回数を基準にする場合にも、割合を基準にする場合にも、共通して言えることであるが、直後に行われた行動回数を、2回後に行われた行動回数よりも重くカウントする、といった重みづけを考慮した集計を行うことも可能である。たとえば、直後に行われた場合の回数には係数2を乗じ、2回後に行われた回数には係数1を乗じて集計するようにすれば、直後に行われた場合をより重くカウントした集計が可能になる。
なお、図20に示す例で既に説明したとおり、実際に「後続ジャンル」の予測を行う際には、予測時点の曜日を認識し、認識した曜日と同一曜日に関する行動履歴情報を参照することにより「後続ジャンル」を予測するのが好ましい。これは、一般人の行動パターンは、曜日ごとにそれぞれ異なっているケースが多いためである。もちろん、各曜日ごとに別個の取り扱いをする代わりに、土日と平日との2通りの取り扱いを行うことも可能である。あるいは、祝日については、日曜日と同じ取り扱いを行うというような運用も可能である。
また、実際に「後続ジャンル」の予測を行う際には、24時間単位で設定した連続時間枠内において、「直後もしくは数回後までに実行された」との判断を行うのが好ましい。たとえば、図20(a) の日曜日の1行目には、「ショー」・「食事」という順序の行動履歴情報が格納されており、2行目には、「喫茶」・「ショー」・「食事」という順序の行動履歴情報が格納されているが、「後続ジャンル」の予測を行う際に考慮する行動順序は、各行ごと(すなわち、24時間単位で設定した連続時間枠内)に完結するものとし、行を跨がった順序は考慮しないようにする。すなわち、上記1行目の情報から、「ショー」の直後に「食事」を行った、という行動パターンを認識することができ、上記2行目の情報から、「喫茶」の直後に「ショー」を行った、あるいは、「ショー」の直後に「食事」を行った、という行動パターンを認識することができるが、1行目の最後の「食事」と2行目の先頭の「喫茶」とについての時間的前後関係に基づいて、「食事」の直後に「喫茶」を行った、という行動パターンを認識するのは適切ではない。これは、一般人の行動パターンは、通常、1日単位で把握されるべきものであるからである。
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最後に、本発明のその他の変形例を述べておく。
(1) ジャンル分けを行わない変形例
これまで述べてきた実施形態は、いずれも個々の店舗(Webコンテンツデータ)をいくつかのジャンルに分けて取り扱うために、店舗評価情報Eや利用者嗜好情報Tにジャンルコードを含ませるようにし、両者の比較は、同一のジャンルコードを含むもの同士で行っていた。しかしながら、本発明を実施する際には、§8で述べた第4の実施形態を除き、必ずしも店舗のジャンル分けを行う必要はなく、ジャンルコードを用いることも必須ではない。たとえば、飲食店の店舗情報のみを提供するシステムとして運用する場合であれば、取り扱う店舗情報はすべて飲食店のジャンルに属するものであるので、敢えてジャンル分けを行う必要はない。もちろん、この場合でも、日本料理、フランス料理、イタリア料理のような細分化のジャンル分けを行う意味はある。
(2) 評価値の提示を行う変形例
図2(a) 〜(i) には、種々の店舗についての店舗情報の表示例を示したが、店舗評価情報格納部120内には、これら各店舗についての店舗評価情報が用意されており、それぞれの店舗ごとに、所定の特徴項目に関する評価値が保存されている。そこで、店舗情報提供部130が、店舗情報の提供を行う際に、当該店舗情報に関する店舗についての店舗評価情報に含まれる評価値を併せて提供するようにしておくと便利である。そうすれば、利用者は、図2(a) 〜(i) に示すような店舗情報とともに、図4(a) 〜(i) に示す各評価値を把握することができるので、店舗選びの参考に供することができる。
(3) 第1〜第4の実施形態の組合わせ
これまで、第2〜第4の実施形態を、ベースとなる第1の実施形態のシステムに新たな特徴を付加したシステムとして説明してきたが、第1〜第4の実施形態のシステムは、任意の組合わせで利用することが可能である。たとえば、第2の実施形態と第3の実施形態を組み合わせたシステムや、第1〜第4の実施形態のすべてを組み合わせたシステムなども実現可能である。
(4) 店舗情報提供部の取捨選択に利用される検索条件
本発明に係る情報提供システムの店舗情報提供部130は、利用者から、特定の検索条件に合致する店舗情報の提供要求を受けたときに、当該検索条件に合致し、かつ、当該利用者に適した店舗情報を取捨選択する機能を果たす。すなわち、店舗情報提供部130は、店舗情報格納部100に格納されている多数の店舗情報を、2つのふるいにかけて取捨選択することになる。第1のふるいは「特定の検索条件に合致する」という基準に基づく選択であり、第2のふるいは「利用者に適した」という基準に基づく選択である。ここで、第2のふるいが、利用者嗜好情報Tと店舗評価情報Eとの比較に基づいて行われる点は既に述べたとおりである。
一方、第1のふるいの基準となる「特定の検索条件」として、これまで述べてきた実施形態では、「利用者自身が入力したキーワードに合致する」という条件を設定した例を示した。たとえば、利用者が、「イタリアン」,「レストラン」,「渋谷」なるキーワードを入力して店舗情報の提供要求を行った場合、これらのキーワードに関連する店舗情報が第1のふるいで選択されることになる。しかしながら、本発明に係る情報提供システムにおける第1のふるいの基準となる「特定の検索条件」は、「利用者自身が入力したキーワードに合致する」という条件に限定されるものではなく、この他にも様々な条件設定が可能である。
たとえば、「利用者自身が入力したジャンルに合致する」という条件を検索条件に設定することもできる。この場合、利用者は、店舗情報の提供要求を行う際に、「イタリア料理」や「婦人服」といったジャンルを指定する入力を行えばよい。この場合、店舗情報提供部130は、キーワードに基づく検索ではなく、ジャンルコードに基づく検索を行うことになる。もちろん、「食事」,「喫茶」,「買物」といった大分類のジャンルを検索条件として指定してもかまわない。
また、「特定の検索条件」は、必ずしも利用者自身に入力させる必要はない。たとえば、「利用者の現在位置」を検索条件として設定することにすれば、第1のふるいの基準は、「利用者の現在位置に合致する店舗情報」ということになる。この場合、「利用者の現在位置(たとえば、緯度経度情報)」は、様々な手法で自動認識することができるので、必ずしも利用者自身に入力してもらう必要はない。「利用者の現在位置」をシステムに認識させる手法としては、§4で例示したとおり、利用者に店舗利用の事実を報告してもらう方法、GPS機能付きの携帯端末装置の位置を認識する方法、店舗設置装置と利用者が所持する携帯端末装置との間で交信が行われたことを認識する方法、などを利用することができる。そこで、「利用者の現在位置」を検索条件として設定しておけば、店舗情報提供部130は、上記手法により、個々の利用者の現在位置を自動認識し、各利用者について現在位置に合致する店舗情報を選択することが可能になる。たとえば、「渋谷」にいると認識された利用者に店舗情報の提供を行う場合は、第1のふるい分け処理において、「渋谷」地区にある店舗の店舗情報を選択すればよい。
もちろん、キーワードやジャンルという検索条件と、現在位置という検索条件とを組み合わせて利用することも可能である。たとえば、「イタリアン」,「レストラン」というキーワードを入力して店舗情報の提供要求を行った利用者の現在位置が「渋谷」であることが認識できれば、第1のふるい分け処理において、「渋谷」地区に店舗があるイタリア料理店の店舗情報を選択すればよい。
別な検索条件として、「利用者のスケジュール」を検索条件として設定しておき、第1のふるい分けで、「利用者のスケジュールに合致する店舗情報」を選択するようにしてもよい。この場合、利用者には、予め自分の行動スケジュールを、店舗情報提供部130(もしくは本願システム外のサーバ装置でもよい)に登録させておくようにする。たとえば、予定を記入したり閲覧したりできる個人別カレンダーをWebページの形式で利用者端末に提供し、個々の利用者に月間スケジュールなどを登録してもらうようにする。そうすれば、店舗情報提供部130は、この登録内容を参照することにより、どの利用者が、いつ、どのような行動を計画しているかを認識することができるので、このスケジュールを検索条件として、第1のふるい分け処理を行うことができる。
たとえば、ある利用者のスケジュールとして、「2006年11月20日午後6:00より結婚記念日の食事」という計画が登録されていたものとしよう。この場合、「2006年11月20日」に当該利用者から店舗情報の提供要求があれば、「結婚記念日の食事」というスケジュールを検索条件として用い、第1のふるい分けで、レストランに関する店舗情報を選択することができる。たとえば、「結婚記念日」AND「食事」というキーワードで検索を行えばよい。もちろん、「2006年11月20日」という日付だけでなく、時間まで考慮してもよい。たとえば、利用者からの要求があった時刻から、6時間以内に設定されているスケジュールに関する店舗情報を第1のふるい分けで選択するようにすれば、上例の場合、「2006年11月20日の正午〜午後6時」に要求があった場合に、「結婚記念日」AND「食事」というキーワードによる検索が行われることになる。また、「毎週金曜日は外食」というように、曜日ごとにスケジュールが設定されている利用者の場合は、「金曜日」に要求があった場合に、レストランに関する店舗情報を第1のふるい分けで選択することもできる。一方、「毎日、正午からの昼食は外食」というように、時間帯ごとにスケジュールが設定されている利用者の場合は、たとえば、現時点より1時間以内に設定されているスケジュールを参照することにしておけば、「午前11時〜正午」に要求があった場合に、レストランに関する店舗情報を第1のふるい分けで選択することができる。このように、店舗情報の提供要求があった時点の日付、時刻、曜日に基づいて、第1のふるい分けを行うことが可能である。
(5) 同伴者の認識
§8では、第4の実施形態として、個々の利用者ごとの日常の行動パターンを収集し、この収集結果に基づいて、ある1つのジャンルに係る行動の後に実行されると期待される後続ジャンルを予測する手法を述べた。すなわち、図19に示すように、行動履歴情報収集部230により、「いつ、誰が、どのジャンルの店を利用したか」を示す行動履歴情報を収集して行動履歴情報格納部220に格納してゆき、後続ジャンル予測部210によって、この行動履歴情報に基づき、特定の利用者が、1つのジャンルに係る行動を行った場合に、次にどのジャンルに係る行動を行う可能性が高いか、を予測する処理が行われる。
この後続ジャンル予測は、あくまでも個々の利用者自身の過去の行動パターンを参照して、「後続ジャンル」を予測することを前提としたものであったが、同じ利用者であっても、同伴者の相違によって、その行動パターンが異なるのが一般的である。たとえば、同じ利用者の行動パターンであっても、婚約者と外出したときの行動パターン、会社の同僚と外出したときの行動パターン、大学の同級生と外出したときの行動パターンは、それぞれ異なることが多い。
そこで、行動履歴情報収集部230により、「いつ、誰が、誰と、どのジャンルの店を利用したか」を示す行動履歴情報を収集して行動履歴情報格納部220に格納してゆけば、後続ジャンル予測部210は、同伴者を考慮した後続ジャンルの予測を行うことができるようになる。たとえば、図20(a) に示す行動履歴情報は、利用者甲についての行動パターンを示すものであるが、利用者甲が乙を同伴した場合の「乙同伴時の行動履歴情報」や利用者甲が丙を同伴した場合の「丙同伴時の行動履歴情報」などをそれぞれ別個に収集するようにすれば、もし、現在、利用者甲が乙を同伴して外出していることが認識できれば、「乙同伴時の行動履歴情報」に基づいて「後続ジャンル」の予測を行うことが可能になり、より適切な予測が可能になる。
もっとも、このように同伴者を考慮した予測を行うためには、個々の利用者の行動を把握するだけでなく、当該行動の同伴者を認識する必要がある。行動履歴情報収集部230に、同伴者の情報を含んだ行動履歴情報を収集させる具体的な方法としては、「各メンバーの自己申告による方法」が最も簡単な方法である。各メンバーに自己申告させる際に、「誰と」という同伴者を示す情報を含ませるようにすればよい。あるいは、前述した「予めスケジュールを入力させておく方法」を用いてもよい。この場合は、スケジュールを入力する際に、「誰と」という同伴者を示す情報を含ませるようにすればよい。
また、同伴者がGPS付き携帯電話機などを所持していれば、GPSが認識した位置情報を携帯電話機から本システムに定期的に自動報告させるようにしておけば、同伴者の位置情報の入手が可能であるから、本人と同一位置に存在する者を同伴者と認識することが可能になる。あるいは、店舗設置装置により同伴者の情報を収集することも可能である。たとえば、同じ施設の入出ゲート装置を用いれば、本人のみならず同伴者の出入りに関する情報を入手することができるので、当該入出ゲート装置からの報告により、同伴者の認識が可能になる。他にも、レストランなどの店舗施設に、レストランカードやクーポン券などを電子データとして配付する交信装置が設置されている場合は、同伴者の所持する携帯端末装置にも当該電子データを取り込んでもらうようにし、この電子データに含まれている店舗を特定する情報と当該同伴者の識別コードとを、当該携帯端末装置もしくは当該交信装置から本システムに自動報告させるようにすれば、本人と同一店舗に居る者として、同伴者の認識が可能である。また、同伴者の所持する携帯端末装置によって、施設に配置されたチラシなどの媒体上に印刷された二次元コードなどから店舗を特定する情報を含む電子データを取り込んでもらうようにした場合も同様である。
別な方法は、個々の利用者が所持する携帯端末装置間での通信機能を利用する方法である。最近利用されている携帯端末装置には、赤外線、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどを利用して、別な携帯端末装置と通信する機能が備わっている。そこで、もし、本人が所持する携帯端末装置と同伴者が所持する携帯端末装置との間で、上述したような通信機能(端末間で直接情報のやりとりを行うことができれば、どのような形態の通信機能でもよい)を利用して直接通信を行うことが可能であれば、この直接通信を介して、同伴者を特定する情報を入手することが可能になる。たとえば、赤外線通信機能を利用するのであれば、両方の携帯端末装置を向かい合わせて、所定の通信操作を行えば、同伴者の携帯端末装置内に格納されている同伴者を特定する識別コードを、本人の携帯端末装置側に取り込むことができる。したがって、この本人の携帯端末装置から行動履歴情報収集部230に対して、これまで述べてきた様々な方法で行動履歴情報を伝える際に、同伴者を特定する識別コードを含んだ情報を伝えることが可能になる。
また、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの無指向性の通信機能が利用できる場合は、利用者が意図的な通信操作を行わなくても、同伴者を特定する識別コードの収集が可能である。たとえば、双方の携帯端末装置に、所定周期(たとえば、5分間隔)で近隣に存在する他の携帯端末装置を探索して交信する機能をもたせておけば、何ら意図的な通信操作を行わなくても、常に、近隣にいる携帯端末装置から、相手方利用者の識別コードを入手することができ、「現在、誰と一緒にいるか」という最新の情報を常に更新することができる。
また、これらの方法を、前述した「予めスケジュールを入力させておく方法」と組み合わせることも可能である。すなわち、予め、同伴者識別コードを伴うスケジュール(誰と一緒に行う行動であるかを特定したスケジュール)を登録しておいた場合、「実際に店舗において取り込んだ同伴者識別コード」と「登録されていたスケジュール内の同伴者識別コード」とが一致したときに、スケジュールに係る行動が実際に実行された、との自動判断を行うことができる。
なお、上述した同伴者を認識する種々の手法は、§7で述べた第3の実施形態に応用することも可能である。この第3の実施形態では、たとえば、利用者甲が同伴者乙とともに何らかの店舗を利用する計画を立てている場合に、「利用者甲&乙」というグループ利用条件下での店舗情報の提供要求を行うと、両利用者甲&乙双方の利用者嗜好情報を考慮した店舗情報の選択が行われることになる。そこで、利用者甲からの店舗情報要求があった場合に、もし、上述した種々の手法により、甲の同伴者が乙であることが自動認識できれば、利用者甲自身が「同伴者が乙であること」を店舗情報提供部130に積極的に伝えなくても、甲&乙双方の利用者嗜好情報を考慮した店舗情報の選択が可能になる。