JP2009184172A - ガラス積層体、支持体付き表示装置用パネル、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1主面および第2主面を有する薄板ガラス基板、第1主面および第2主面を有する支持ガラス基板ならびに樹脂層を有し、薄板ガラス基板の第1主面に、支持ガラス基板の第1主面に固定された易剥離性を有する樹脂層が密着しているガラス積層体であって、さらにシートを有し、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との間に前記シートの一部が挟まり、前記シートの残部の少なくとも一部は前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とに接していない、ガラス積層体。
【選択図】図2
Description
この課題に対応するために、表示装置に用いるガラス基板の板厚をさらに薄くすることが望まれている。板厚を薄くする方法としては、一般に、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成する前または形成した後に、フッ酸等を用いてガラス基板をエッチング処理し、必要に応じてさらに物理研磨して薄くする方法が行われる。
また、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成した後にエッチング処理等をしてガラス基板を薄くすると、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成する過程においてガラス基板の表面に形成された微細な傷が顕在化する問題、すなわちエッジピットの発生という問題が生じる。
例えば特許文献2には、液晶表示装置の基板と支持体との端部をガラスフリット系の接着剤を用いて接着して、その後、電極パターン等を形成する液晶表示装置の製造方法が記載されている。
例えば特許文献3には、2枚のガラス基板の少なくとも周縁部の端面近傍にレーザ光を照射して前記2枚のガラス基板を融合させる工程を有する表示装置用基板の製造方法が記載されている。
例えば特許文献5には、液晶表示素子用電極基板を紫外線硬化型粘着剤が支持体上に設けられた治具を用いて、液晶表示素子用電極基板に所定の加工を施した後、紫外線硬化型粘着剤に紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化型粘着剤の粘着力を低下させ、前記液晶表示素子用電極基板を前記治具から剥離することを特徴とする液晶表示素子の製造方法が記載されている。
例えば特許文献6には、粘着材によって薄板を支持板に仮固定し、前記粘着材の周縁部をシール材によって封止し、薄板を仮固定した支持板を搬送する搬送方法が記載されている。
本発明は以下の(1)〜(13)である。
(1)第1主面および第2主面を有する薄板ガラス基板、第1主面および第2主面を有する支持ガラス基板ならびに樹脂層を有し、薄板ガラス基板の第1主面に、支持ガラス基板の第1主面に固定された易剥離性を有する樹脂層が密着しているガラス積層体であって、さらにシートを有し、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との間に前記シートの一部が挟まり、前記シートの残部の少なくとも一部は前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とに接していない、ガラス積層体。
(2)前記シートが前記支持ガラス基板に固定されている、上記(1)に記載のガラス積層体。
(3)前記シートが、5%加熱質量減温度が200℃以上の有機樹脂製フィルムである、上記(1)または(2)に記載のガラス積層体。
(4)前記樹脂層が、アクリル系樹脂層、ポリオレフィン系樹脂層、ポリウレタン樹脂層またはシリコーン樹脂層である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガラス積層体。
(5)前記シートが金属製フィルムである、上記(1)または(2)に記載のガラス積層体。
(6)前記樹脂層の厚さが5〜50μmであり、前記シートの厚さが5〜100μmである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガラス積層体。
(7)前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との線膨張係数の差が300×10−7/℃以下である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のガラス積層体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のガラス積層体における前記薄板ガラス基板の第2主面に表示装置用部材を有する、支持体付き表示装置用パネル。
(9)上記(8)に記載の支持体付き表示装置用パネルを用いて形成される表示装置用パネル。
(10)上記(9)に記載の表示装置用パネルを有する表示装置。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のガラス積層体の製造方法であって、支持ガラス基板の第1主面上に易剥離性を有する樹脂層を形成し固定する樹脂層形成工程と、前記支持ガラス基板の第1主面上および/または前記樹脂層の表面上にシートの一部を固定するシート固定工程と、薄板ガラス基板の第1主面に、前記支持ガラス基板の第1主面上に固定された前記樹脂層を密着する密着工程とを具備する、ガラス積層体の製造方法。
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のガラス積層体における前記薄板ガラス基板の第2主面に、表示装置用部材を形成する工程を具備する、支持体付き表示装置用パネルの製造方法。
(13)上記(12)に記載の製造方法によって得られる支持体付き表示装置用パネルにおける前記シートの前記残部を引張り、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とを分離する分離工程を具備する、表示装置用パネルの製造方法。
本発明は、第1主面および第2主面を有する薄板ガラス基板、第1主面および第2主面を有する支持ガラス基板ならびに樹脂層を有し、薄板ガラス基板の第1主面に、支持ガラス基板の第1主面に固定された易剥離性を有する樹脂層が密着しているガラス積層体であって、さらにシートを有し、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との間に前記シートの一部が挟まり、前記シートの残部の少なくとも一部は前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とに接していない、ガラス積層体である。
このようなガラス積層体を、以下では「本発明の積層体」ともいう。
図1は、本発明の積層体の一態様を示す概略正面図であり、図2はそのA−A’断面図(概略断面図)である。
ここで説明する本発明の積層体の一態様を、以下では「態様1」ともいう。
態様1において本発明の積層体10は、薄板ガラス基板12、樹脂層14、シート16および支持ガラス基板18を有している。そして、薄板ガラス基板12と支持ガラス基板18とが樹脂層14およびシート16を挟むように積層されている。また、図1に示すように、正面から見ると、薄板ガラス基板12、樹脂層14、シート16および支持ガラス基板18は各々矩形であり、薄板ガラス基板12の主面面積は樹脂層14の表面面積と同程度であるが、支持ガラス基板18の主面面積よりもやや小さい。そして、薄板ガラス基板12および樹脂層14は、正面から見た場合に、支持ガラス基板18の内側に含まれるように位置している。換言すると、薄板ガラス基板12と支持ガラス基板18とによって挟持された樹脂層14の外周には、両基板に挟まれた、平面方向において略コの字状に間隙が存在している。
また、樹脂層14は、支持ガラス基板18の第1主面に固定されており、薄板ガラス基板12の第1主面と樹脂層14の表面とは密着して付いている。
また、シート16と樹脂層14とは重なっておらず、樹脂層14の端面の一部14αとシート16の端面16αとが接するように配置されている。
図3は、本発明の積層体の別の一態様を示す概略正面図であり、図4はそのB−B’断面図(概略断面図)である。
ここで説明する本発明の積層体の一態様を、以下では「態様2」ともいう。
ここでは主に態様1と異なる点について説明する。
そして、図4に示すように、シート26の一部分26aが薄板ガラス基板22と支持ガラス基板28とに挟まれている。さらに、挟まれていない部分であって薄板ガラス基板22にも支持ガラス基板28にも接していない部分26bを有している。なお、ここに示す態様2の場合、シート26は、薄板ガラス基板22と支持ガラス基板28とに挟まれてはいないが、一方の基板(支持ガラス基板28)には接している部分26cを有している。
また、シート26と樹脂層24とは一部が重なっている。すなわち、シート26と支持ガラス基板28との間に、樹脂層24の端部が挟まっている。そして、樹脂層24の端面の一部24αとシート26の端面の一部26αとは各々の一部で接しているが、接していない部分もあり、端面24αと端面26αと薄板ガラス基板22の第1主面とによって空間25が形成されている。
図5は、本発明の積層体の別の一態様を示す概略正面図であり、図6はそのC−C’断面図(概略断面図)である。
ここでは主に態様1、態様2と異なる点について説明する。
また、シート36は、図5に示すように、正面から見た場合に本発明の積層体30が有する4辺中の対向する2辺と重なる位置に各々1つずつ存在している。そして、一方は図1を用いて説明したシート16と同様であるが、他方はそれよりも辺方向において小さく、かつ辺の中央付近に存在している。
そして、図6に示すように、シート36の一部分(36a)が薄板ガラス基板32と支持ガラス基板38とに挟まれている。さらに、挟まれていない部分であって薄板ガラス基板32にも支持ガラス基板38にも接していない部分(36b)を有している。なお、ここに示す態様3の場合、シート36は、態様1のシート16における一部分(16c)や、態様2のシート26における一部分(26c)に相当する部分は有していない。また、樹脂層34に対して、シート36の厚さがやや厚い。
また、態様2と同様にシート36と樹脂層34とは一部が重なっている(図6参照)。そして、樹脂層34の端面(34α)とシート36の端面(36α)とは一部が接している。ただし、接していない部分はわずかであり、態様2において存在していた空間25に相当する空間35も極わずかなものとなっている。
薄板ガラス基板の厚さ、形状、大きさ、物性(熱収縮率、表面形状、耐薬品性等)、組成等は特に限定されず、例えば従来のLCD、OLED等の表示装置用のガラス基板と同様であってよい。
また、前記薄板ガラス基板の熱収縮率は小さいことが好ましい。具体的には熱収縮率の指標である線膨張係数が500×10−7/℃以下であるものを用いることが好ましい。前記線膨張係数は、300×10−7/℃以下であることがより好ましく、200×10−7/℃以下であることがより好ましく、100×10−7/℃以下であることがより好ましく、45×10−7/℃以下であることが最も好ましい。
その理由は熱収縮率が大きいと高精細な表示装置を作ることができないためである。
なお、本発明において線膨張係数はJIS R3102(1995年)に規定のものを意味する。
支持ガラス基板は樹脂層を介して薄板ガラス基板を支持し、薄板ガラス基板の強度を補強する。
支持ガラス基板の厚さは特に限定されないが、現行の製造ラインで処理できるような厚さであることが必要である。
例えば0.1〜1.1mmの厚さであることが好ましく、0.3〜0.8mmであることがより好ましく、0.4〜0.7mmであることがさらに好ましい。
例えば、現行の製造ラインが厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、薄板ガラス基板の厚さが0.1mmである場合、支持ガラス基板の厚さと樹脂層の厚さとの和を0.4mmとする。また、現行の製造ラインは厚さが0.7mmのガラス基板を処理するように設計されているものが最も一般的であるが、例えば薄板ガラス基板の厚さが0.4mmならば、支持ガラス基板の厚さと樹脂層の厚さとの和を0.3mmとする。
支持ガラス基板の厚さは、前記薄板ガラス基板よりも厚いことが好ましい。
薄板ガラス基板と支持ガラス基板との線膨張係数の差は300×10−7/℃以下であることが好ましく、100×10−7/℃以下であることがより好ましく、50×10−7/℃以下であることがさらに好ましい。
本発明の積層体において、樹脂層は前記支持ガラス基板の第1主面に固定されている。そして、樹脂層は、前記薄板ガラス基板の第1主面と密着しているが、容易に剥離することができる。すなわち樹脂層は、前記薄板ガラス基板に対して易剥離性を有する。
本発明の積層体において、樹脂層と薄板ガラス基板とは粘着剤が有するような粘着力によっては付いていないと考えられ、固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力、すなわち、密着力によって付いていると考えられる。
また、樹脂層が2層以上からなる場合は、各々の層を形成する樹脂の種類が異なってもよい。
後述するシートについても同様である。
また、樹脂層は、ガラス転移点が室温(25℃程度)よりも低いまたはガラス転移点を有しない材料からなることが好ましい。非粘着性の樹脂層となり、より易剥離性を有し、より容易に薄板ガラス基板と剥離することができ、同時に薄板ガラス基板との密着も十分になるからである。
また、樹脂層が耐熱性を有していることが好ましい。本発明のパネル製造方法では、例えば前記薄板ガラス基板の第2主面上に表示装置用部材を形成する場合に、シートを有する薄板ガラス基板と樹脂層と支持ガラス基板との積層体を熱処理に供し得るからである。
また、樹脂層の弾性率が高すぎると薄板ガラス基板との密着性が低くなるので好ましくない。また弾性率が低すぎると易剥離性が低くなるので好ましくない。
シートは前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との間に存在し、その一部が両ガラス基板に挟まれている。そして、挟まれていない部分(残部)の少なくとも一部は、前記薄板ガラス基板にも前記支持ガラス基板にも接していない。
シートの大きさ、面積(2つの主面のうちの一方の主面面積)も特に限定されない。例えば矩形の場合は1枚のシートの面積が1〜4000cm2であってよく、2〜2000cm2であることが好ましく、4〜1000cm2であることがより好ましい。
なお、ここでいうシートの「挟まれている部分の大きさ」とは、例えば態様1の場合であれば、16aの部分が有する2つの主面のうち、支持ガラス基板18と対向する側の主面の面積を意味するものとする。
また、面積としては0.5〜2000cm2であってよく、1〜1000cm2であることが好ましく、2〜500cm2であることがより好ましい。このような範囲であると、薄板ガラス基板の第2主面上に表示装置用部材を形成する際に、障害にならないという点で好ましい。
なお、ここでいうシートの「挟まれていない部分(残部)の一部であって、前記薄板ガラス基板にも前記支持ガラス基板にも接していない部分」とは、例えば態様1の場合であれば、16bの部分が有する2つの主面のうち、支持ガラス基板18の第1主面と端部において接している方の主面の面積を意味するものとする。
なお、ここでいうシートの「挟まれていない部分であって、前記薄板ガラス基板または前記支持ガラス基板に接している部分」とは、例えば態様1の場合であれば、16cの部分が有する2つの主面のうち、支持ガラス基板18の第1主面と接している方の主面の面積を意味するものとする。態様2の場合も同様である。態様3の場合はこのような部分がない。
シートを前記支持ガラス基板の第1主面に固定する方法は限定されない。容易に剥がれない方法であればよい。例えば接着剤、貼着剤を用いて固定することができる。接着剤としてはウレタン系、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系の接着剤が挙げられる。また、無機系の接着剤であってもよい。このような中でもエポキシ系、アクリル系、シリコーン系の接着剤または無機系の接着剤であることが好ましい。耐熱性が高いからである。
前記樹脂層の厚さが5〜100μmの場合に、シートの厚さが5〜120μmであることが好ましく、さらにシートの方が5〜20μm厚いことがより好ましい。
また、有機樹脂の中でも、5%加熱質量減温度が200℃以上の有機樹脂であることが好ましい。本発明の積層体を加熱工程に供しても、溶融等の形態変化が生じにくいからである。5%加熱質量減温度とは、混合エアー気流下1分間に10℃ずつ昇温し、試料の質量が初期試料質量の95%に達したときの温度を意味する。
シートは、5%加熱質量減温度が200℃以上の有機樹脂製のフィルムであることが好ましい。
しかし、薄板ガラス基板と支持ガラス基板との間(特に薄板ガラス基板と樹脂層との界面)に、その端部から空気層が導入されるようにシートを引張ると、容易に剥離することができる。図7に示したような方法でシートを引張ると、より容易に剥離でき好ましい。図7は、水平な定磐51上に、薄板ガラス基板52が下、支持ガラス基板58が上になるように載置し、薄板ガラス基板52の第2主面を平らな状態で定磐51に真空吸着し、シート56を図7に示すように上方に引張り、支持ガラス基板58を持ち上げる。すると、薄板ガラス基板52と樹脂層54との界面に隙間ができ、ここを起点として空気層が界面に入り込むことで剥離が進む。ここで、この隙間に向かって空気を吹き込むと当該界面における剥離現象がより進行し易くなるので好ましい。
表示装置用部材とは、従来のLCD、OLED等の表示装置用のガラス基板がその表面に有する発光層、保護層、カラーフィルター、液晶、ITOからなる透明電極等、各種回路パターン等を意味する。
本発明の支持体付き表示装置用パネルには、例えば、TFTアレイ(以下、単に「アレイ」という。)が薄板ガラス基板の第2主面に形成された本発明の支持体付き表示装置用パネル薄板ガラス基板に、さらにカラーフィルタが形成された他のガラス基板(例えば0.3mm以上程度の厚さのガラス基板)が貼り合わされたものも含まれる。
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、支持ガラス基板の第1主面上に易剥離性を有する樹脂層を形成し固定する樹脂層形成工程と、前記支持ガラス基板の第1主面上および/または前記樹脂層の表面上にシートの一部を固定するシート固定工程と、薄板ガラス基板の第1主面に、前記支持ガラス基板の第1主面上に固定された前記樹脂層を密着する密着工程とを具備する製造方法であることが好ましい。このような製造方法を、以下では「本発明の積層体の製造方法」ともいう。
初めに薄板ガラス基板および支持ガラス基板を用意する。
薄板ガラス基板および支持ガラス基板の製造方法は特に限定されない。例えば従来公知の方法で製造することができる。例えば従来公知のガラス原料を溶解し溶融ガラスとした後、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法等によって板状に成形して得ることができる。
例えばフィルム状の樹脂を支持ガラス基板の表面に接着する方法が挙げられる。具体的にはフィルムの表面に高い接着力を付与するために表面改質処理(プライミング処理)を行い、支持ガラス基板の第1主面に接着する方法が挙げられる。例えば、シランカップリング剤のような化学的に密着力を向上させる化学的方法(プライマー処理)や、フレーム(火炎)処理のように表面活性基を増加させる物理的方法、サンドブラスト処理のように表面の粗度を増加させることにより引っかかりを増加させる機械的処理方法などが例示される。
例えば、無溶剤型の剥離紙用シリコーンを樹脂組成物として用いた場合、ダイコート法、スピンコート法またはスクリーン印刷法が好ましい。
上記のような方法で支持ガラス基板の第1主面上に樹脂層を形成した後、または形成する前に、シートを付ける。
例えばシートを支持ガラス基板の表面に接着する方法が挙げられる。具体的にはシートの表面に高い接着力を付与するために表面改質処理し、支持ガラス基板の第1主面に接着する方法が挙げられる。
樹脂層を形成した後にシートを付ける場合は、態様2、態様3のようにシートの一部が樹脂層上に付けられ、残部が支持ガラス基板に付けられてもよい。全部が樹脂層または支持ガラス基板上に形成されてもよい。
上記のような方法で支持ガラス基板の第1主面上に樹脂層を形成し、シートを付け、樹脂層の表面に薄板ガラス基板を積層する。
薄板ガラス基板と樹脂層とは、非常に近接した、相対する固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力、すなわち、密着力によって樹脂層と密着する。この場合、支持ガラス基板と薄板ガラス基板とを積層させた状態に保持することができる。
本発明の支持体付き表示装置用パネルの製造方法は本発明の積層体における前記薄板ガラス基板の第2主面に、表示装置用部材を形成する工程を具備する。
具体的には、例えば上記のようにして製造した本発明の積層体における薄板ガラス基板の第2主面上に表示装置用部材を形成する。
表示装置用部材は特に限定されない。例えばLCDが有するアレイやカラーフィルタが挙げられる。また、例えばOLEDが有する透明電極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層が挙げられる。
例えば表示装置としてTFT−LCDを製造する場合、従来公知のガラス基板上にアレイを形成する工程、カラーフィルタを形成する工程、アレイが形成されたガラス基板とカラーフィルタが形成されたガラス基板とを貼り合わせる工程(アレイ・カラーフィルタ貼り合わせ工程)等の各種工程と同様であってよい。より具体的には、これらの工程で実施される処理として、例えば純水洗浄、乾燥、成膜、レジスト塗布、露光、現像、エッチングおよびレジスト除去が挙げられる。さらに、アレイ・カラーフィルタ貼り合わせ工程を実施した後に行われる工程として、液晶注入工程および該処理の実施後に行われる注入口の封止工程があり、これらの工程で実施される処理が挙げられる。
本発明の表示装置用パネルは、例えば上記のような製造方法によって得られる支持体付き表示装置用パネルにおける前記シートの前記残部を引張り、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とを分離する分離工程を具備する。
本発明の表示装置用パネルは、本発明の支持体付き積層体のうちの支持体の部分を剥離して、必要な場合はさらに加工して得ることができる。剥離する方法は、具体的には、上記で図7を用いて説明した方法と同様であってよい。以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
縦720mm、横600mm、板厚0.4mm、線膨張係数38×10−7/℃の支持ガラス基板(旭硝子株式会社製、AN100)を純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。
次に、無溶剤付加反応型剥離紙用シリコーン(信越シリコーン社製、KNS−320A(粘度:0.40Pa・s))100質量部と、白金系触媒(信越シリコーン社製、CAT−PL−56)2質量部との混合物を、支持ガラス基板上に、縦705mm、横595mmの大きさで、スクリーン印刷機にて塗工した(塗工量30g/m2)。そして、180℃にて30分間大気中で加熱硬化して厚さ20μmのシリコーン樹脂層を得た。
次に、シートとして縦20mm、横595mm、厚さ30μmの耐熱性粘着材付ポリイミドフィルム(耐熱性ポリイミドテープNo.7416)を用意し、これを図8、図9に示すガラス積層体が得られるように、支持ガラス基板の端部に貼合した。
次に、縦720mm、横600mm、板厚0.3mm、線膨張係数38×10−7/℃の薄板ガラス基板(旭硝子株式会社製、AN100)の第1主面(後にシリコーン樹脂層と接触させる側の面)を純水洗浄、UV洗浄して清浄化した。そして、保護ガラス基板のシリコーン樹脂層の表面と薄板ガラス基板とを、室温下、真空プレスにて貼り合わせガラス積層体を得た。
図8は、実施例1で得たガラス積層体の概略正面図であり、図9はそのD−D’断面図(概略断面図)である。
ガラス積層体70は、薄板ガラス基板72、樹脂層74、シート76および支持ガラス基板78を有している。そして、薄板ガラス基板72と支持ガラス基板78とが樹脂層74およびシート76を挟むように積層している。また、図8に示すように、正面から見ると、薄板ガラス基板72、樹脂層74、シート76および支持ガラス基板78は各々矩形であり、薄板ガラス基板72と支持ガラス基板78と同じ大きさなので重なっている。また、樹脂層74は、正面から見た場合に、薄板ガラス基板72および支持ガラス基板78の内側に含まれるように位置している。
また、樹脂層74は、支持ガラス基板78の第1主面に固定されており、薄板ガラス基板72の第1主面と樹脂層74の表面とは密着して付いている。
実施例1の場合、76aで示す部分の縦方向の長さは10mmであり、76bで示す部分の縦方向の長さは10mmである。
また、シート76と樹脂層74とは重なっておらず、樹脂層74の端面(74α)とシート76の端面(76α)とが接するように付いている。
<剥離試験1>
ガラス積層体70を10枚製造した。そして、図7を用いて説明した方法と同じように、そのうちの1枚を、支持ガラス基板78が上側、薄板ガラス基板72が下側となるように定盤上に設置し、薄板ガラス基板72を定盤上に真空吸着した。
この状態でシート76の端部を垂直上方へ引っ張り上げた。すると、シリコーン樹脂層74と薄板ガラス基板72との界面へ、その端部から空気層が形成され、その空気層が界面の全面に広がり、容易に剥離することができた。
この操作を残りの9枚のガラス積層体70について行った。すると、10枚のガラス積層体70について20分以内に剥離作業を問題なく行うことができた。
次に、さらにもう1枚のガラス積層体70を用意した。そして、これを300℃で1時間大気中で加熱処理した。加熱処理に対する耐熱性は良好であった。
そして、上記と同様の後の剥離作業を行った。この場合も同様に、剥離作業を問題なく行うことができた。
シートとして、SUS304製の金属フィルム(厚さ15μm)を用い、これをコトロニクス社製耐熱接着用エポキシ接着剤デュラルコ4700を用いて支持ガラス基板に接着したこと以外は、実施例1と同様にガラス積層体を製造した。
実施例3は実施例1と同様であるが、支持ガラス基板、樹脂層、シートおよび薄板ガラス基板の大きさ等が異なるものを用いた。
支持ガラス基板として、縦720mm、横600mm、板厚0.6mm、線膨張係数38×10−7/℃のガラス基板(旭硝子株式会社製、AN100)を用いた。
また、樹脂層を形成するための樹脂として、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン(荒川化学工業株式会社製、商品名「8500」)と、分子内にハイドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(荒川化学工業株式会社製、商品名「12031」)とを用いた。そして、これを白金系触媒(荒川化学工業株式会社製、商品名「CAT12070」)と混合して混合物を調製し、縦705mm、横595mmの大きさで、スクリーン印刷機にて塗工し(塗工量20g/m2)、180℃にて30分間大気中で加熱硬化して厚さ20μmのシリコーン樹脂層を形成した。ここで、ハイドロシリル基とビニル基のモル比は1/1となるように、直鎖状ポリオルガノシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの混合比を調整した。白金系触媒は、直鎖状ポリオルガノシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの合計100質量部に対して5質量部添加した。
また、実施例1で用いたものであって、大きさが縦20mm、横295mmのシートを用いた。シートを貼合する位置は、図5を用いて説明した態様3が有する2つのシートのうちの小さい方のように、ガラス積層体が有する1つの辺の中央付近とした。
また、薄板ガラス基板として、縦720mm、横600mm、厚さ0.1mm、線膨張係数200×10−7/℃のガラス基板(旭硝子株式会社製AN100)を用いた。
このような実施例3に係るガラス積層体において、薄板ガラス基板および支持ガラス基板は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、凸状欠点もなく平滑性も良好であった。
実施例4は実施例1と同様であるが、樹脂層の材質が異なるものである。
樹脂層について説明する。
初めに、PET剥離フィルム(東洋紡社製 離型PETフィルム E7002 厚さ100μm)を2枚用意した。次に、無溶剤付加反応型剥離紙用シリコーン(信越シリコーン社製、KNS−320A(粘度:0.40Pa・s))100質量部と白金系触媒(信越シリコーン社製、CAT−PL−56)2質量部との混合物を、1枚のPET剥離フィルムの表面に厚さ25μmとなるように塗工した。そして、100℃にて30分間大気中で加熱硬化した後、もう1枚のPET剥離フィルムを貼合させて、2枚のPET剥離フィルム間にシリコーン樹脂を挟持させたフィルム積層物を得た。
そして、このフィルム積層物を縦705mm、横595mmの大きさに切断した後、両面のPET剥離フィルムのうちの一方を剥がし、実施例1における樹脂層と同様の配置となるように、支持ガラス基板の表面に貼合した。ここで支持ガラス基板のフィルム積層物を貼る面は、予め純水洗浄、UV洗浄して清浄化した後、さらに3−アミノプロピルトリメトキシシランの1%エタノール溶液で洗浄し、乾燥した。
この例のガラス積層体において、薄板ガラス基板および支持ガラス基板は、樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、凸状欠点もなく平滑性も良好であった。
本例では、実施例3で得たガラス積層体を用いてLCDを製造する。
2枚のガラス積層体を準備して、1枚はアレイ形成工程に供して薄板ガラス基板の第2主面上にアレイを形成する。残りの1枚はカラーフィルタ形成工程に供して薄板ガラス基板の第2主面上にカラーフィルタを形成する。アレイが形成されたガラス積層体と、カラーフィルタが形成されたガラス積層体とを貼り合わせた後、片面ずつフィルムを持ち上げることによって、各々の保護ガラス基板を分離する。分離後の薄板ガラス基板の表面には、強度低下につながるような傷はみられない。
続いて、ガラス基板を切断し、縦51mm×横38mmの168個のセルに分断した後、液晶注入工程および注入口の封止工程を実施して液晶セルを形成する。形成された液晶セルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは特性上問題は生じない。
本例では、実施例1で得たガラス積層体を用いてLCDを製造する。
2枚のガラス積層体を準備して、1枚はアレイ形成工程に供して薄板ガラス基板の第2主面にアレイを形成する。残りの1枚はカラーフィルタ形成工程に供して薄板ガラス基板の第2主面にカラーフィルタを形成する。アレイが形成されたガラス積層体と、カラーフィルタが形成されたガラス積層体とを貼り合わせた後、各々、フィルムを持ち上げることによって、各々保護ガラス基板を分離する。分離後の薄板ガラス基板の表面には強度低下につながるような傷はみられない。
続いて、ケミカルエッチング処理によりそれぞれの薄板ガラス基板の厚さを0.15mmとする。ケミカルエッチング処理後の薄板ガラス基板の表面には光学的に問題となるようなエッジピットの発生はみられない。
その後、薄板ガラス基板を切断し、縦51mm×横38mmの168個のセルに分断した後、液晶注入工程および注入口の封止工程を実施して液晶セルを形成する。形成された液晶セルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは特性上問題は生じない。
本例では、実施例2で得たガラス積層体と、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(旭硝子製AN−100)とを用いてLCDを製造する。
ガラス積層体を準備して、カラーフィルタ形成工程に供してガラス積層体の薄板ガラス基板の第2主面にカラーフィルタを形成する。一方、無アルカリガラス基板はアレイ形成工程に供して一方の主面上にアレイを形成する。
カラーフィルタが形成されたガラス積層体と、アレイが形成された無アルカリガラス基板とを貼り合わせた後、フィルムを持ち上げることによって、ガラス積層体から支持ガラス基板を分離する。分離後の薄板ガラス基板表面には強度低下につながるような傷はみられない。
続いて、支持ガラス基板を分離したものを縦51mm×横38mmの168個のセルにレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて分断する。その後、液晶注入工程および注入口の封止工程を実施して液晶セルを形成する。形成された液晶セルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは特性上問題は生じない。
実施例8では、実施例4で得たガラス積層体を用いてOLEDを製造する。
透明電極を形成する工程、補助電極を形成する工程、ホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する工程、これらを封止する工程に供して、ガラス積層体の薄板ガラス基板上に有機EL構造体を形成する。次にシートを引張り、支持ガラス基板を分離する。分離後の薄板ガラス基板の表面には強度低下につながるような傷はみられない。
続いて、薄板ガラス基板をレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて切断し、縦41mm×横30mmの288個のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたガラス基板と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施してOLEDを作成する。こうして得られるOLEDは特性上問題は生じない。
シートを貼り付けず、縦705mm、横595mmの樹脂層の大きさを縦715mm、横595mmとしたこと以外は、実施例1と同様とした試験を行った。得られた比較例1に係るガラス積層体は、シリコーン樹脂層と気泡を発生することなくガラス基板が密着しており、凸状欠点もなく平滑性も良好であった。
また、以下に示す剥離試験2に供した。
ガラス積層体を10枚製造した。そして、そのうちの1枚を、支持ガラス基板が上側、薄板ガラス基板が下側となるように定盤上に設置し、薄板ガラス基板を定盤上に真空吸着した。そして、薄板ガラス基板と樹脂層との間に鋭利な剃刀をあてがい、界面の端をこじ開け、徐々に端から剥離した。
この操作を残りの9枚のガラス積層体について行った。すると、10枚のガラス積層体について剥離作業を行うのに1時間を要した。また、10枚のうち2枚においてガラス積層体の端部に傷がついた。
このようにシートを有しないガラス積層体から支持ガラス基板を剥離することは可能ではあるが、剥離作業の効率が低く、ガラス基板を損傷する可能性があることがわかった。
12、22、32、52、72 薄板ガラス基板
14、24、34、54、74 樹脂層
16、26、36、56、76 シート
18、28、38、58、78 支持ガラス基板
25、35 空間
51 定盤
Claims (13)
- 第1主面および第2主面を有する薄板ガラス基板、第1主面および第2主面を有する支持ガラス基板ならびに樹脂層を有し、薄板ガラス基板の第1主面に、支持ガラス基板の第1主面に固定された易剥離性を有する樹脂層が密着しているガラス積層体であって、
さらにシートを有し、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との間に前記シートの一部が挟まり、前記シートの残部の少なくとも一部は前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とに接していない、ガラス積層体。 - 前記シートが前記支持ガラス基板に固定されている、請求項1に記載のガラス積層体。
- 前記シートが、5%加熱質量減温度が200℃以上の有機樹脂製フィルムである、請求項1または2に記載のガラス積層体。
- 前記樹脂層が、アクリル系樹脂層、ポリオレフィン系樹脂層、ポリウレタン樹脂層またはシリコーン樹脂層である、請求項1〜3のいずれかに記載のガラス積層体。
- 前記シートが金属製フィルムである、請求項1または2に記載のガラス積層体。
- 前記樹脂層の厚さが5〜50μmであり、前記シートの厚さが5〜100μmである、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス積層体。
- 前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板との線膨張係数の差が300×10−7/℃以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のガラス積層体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のガラス積層体における前記薄板ガラス基板の第2主面に表示装置用部材を有する、支持体付き表示装置用パネル。
- 請求項8に記載の支持体付き表示装置用パネルを用いて形成される表示装置用パネル。
- 請求項9に記載の表示装置用パネルを有する表示装置。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のガラス積層体の製造方法であって、
支持ガラス基板の第1主面上に易剥離性を有する樹脂層を形成し固定する樹脂層形成工程と、
前記支持ガラス基板の第1主面上および/または前記樹脂層の表面上にシートの一部を固定するシート固定工程と、
薄板ガラス基板の第1主面に、前記支持ガラス基板の第1主面上に固定された前記樹脂層を密着する密着工程とを具備する、ガラス積層体の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれかに記載のガラス積層体における前記薄板ガラス基板の第2主面に、表示装置用部材を形成する工程を具備する、支持体付き表示装置用パネルの製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法によって得られる支持体付き表示装置用パネルにおける前記シートの前記残部を引張り、前記薄板ガラス基板と前記支持ガラス基板とを分離する分離工程を具備する、表示装置用パネルの製造方法。
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