JP2007112768A - 肝指向性リポソーム組成物 - Google Patents

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あゆみ 佐藤
Motoki Takagi
基樹 高木
Akira Shimamoto
顕 嶋本
Shigeru Kawakami
茂 川上
Mitsuru Hashida
充 橋田
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Abstract

【課題】オリゴヌクレオチドを含む、肝指向性のリポソーム組成物、およびその製造方法と用途の提供。
【解決手段】糖修飾コレステロール誘導体を構成成分とするリポソームと、オリゴヌクレオチドの複合体を有効成分として含有する、肝指向性のリポソーム組成物が提供された。リポソーム組成物を構成する糖修飾コレステロール誘導体は、下記の一般式(1)を有する。リポソーム組成物を血中に投与することにより、siRNAをはじめとするオリゴヌクレオチドを、効率的に肝に送達することができる。

(式中、nは1〜10の整数を示し;Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;Lはリンカーを示し;Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
【選択図】なし

Description

本発明は、肝指向性のリポソーム組成物に関する。
医薬品開発において、有効成分を目的とする組織あるいは細胞に効果的に到達させる技術は重要な研究課題の一つである。たとえば、いかに優れた薬理作用を有する化合物も、目的とする組織に到達しなければ、薬理効果は期待できない。局所的な投与方法を除けば、通常、医薬品の有効成分(薬物)は、血中や経口的に投与された後に、作用部位に到達することによってその薬理効果を発揮する。投与された薬物が作用部位に効率的に到達できない場合には、大量の薬物を投与しなければならない。その結果、薬物投与による副作用の危険が高まる。薬物を目的とする部位に送達(Delivery)するために、様々なメカニズムが考え出された。このようなメカニズムは、薬物送達システム(Drug Delivery System;以下DDSと省略する)と呼ばれている。
生体に投与された薬物は、生体から次のような影響を受ける。これらの影響を逃れて最終的に作用部位に到達した薬物によって、期待された治療効果がもたらされる。結果として治療効果につながらなかった薬物は、代謝あるいは排泄される。
−吸収−
薬物はまず生体に吸収されなければならない。局所投与を除けば、薬物は、通常、患部から離れた部位に投与され、生体に吸収された後に、生体内に拡散することにより、患部に到達する。生体による薬物の吸収は、薬物が作用部位に到達するための最初の関門となる。たとえば、経口投与、経皮的投与、経腸的投与、あるいは経気道投与などの投与方法においては、薬物の吸収量がその生体内濃度を左右する。
薬物を静脈内に投与する場合には、通常、生体における薬物濃度は投与量に依存し、吸収の影響は受けない。ただし、静脈内に投与する場合であっても、作用部位が血流から隔離されているときには、血中から作用部位への薬物の移行の程度が、薬物の最終的な作用濃度を左右することになる。たとえばがん組織は、血管新生が亢進していて、血流の豊富な組織である。しかし組織を構成する個々の細胞に薬物が到達するためには、薬物が細胞膜を透過する必要がある。抗体医薬などのように、細胞表面への結合によって治療効果が得られる場合を除けば、多くの抗がん剤の作用部位は細胞内部である。つまり、がん細胞の細胞膜を透過した薬物によって治療効果が達成される。薬物が生体に吸収されて血中に移行した後、更に作用部位に到達する過程も、薬物の吸収に位置づけることができる。
−生体による薬物の代謝−
多くの場合、薬物は、生体にとっては異物である。そのため生体に投与(あるいは吸収)された薬物は、通常、生体から除去される。具体的には、生体が有する分解機構や排泄機構は、薬物に対してそれを除去する方向に作用する。その結果、一般に、生体に投与された薬物の生体内濃度は、時間とともに低下する。もしも薬物が作用部位に対する蓄積性が無い場合には、生体内濃度は薬物の作用濃度と一致する。つまり、時間とともに薬物の効果が低下することを意味する。あるいは血液から作用部位への移行性が良好な薬物であっても、速やかに排泄され血中濃度を維持できない薬物では、高い治療効果を期待することは難しい。すなわち薬物による治療効果は、投与された薬物が生体から除去されるまでの間にもたらされているといってよい。
DDSによる薬物の送達は、薬物に対する生体の影響を制御し、薬物を効率的に作用部位に送達することを目的としている。具体的には、たとえば次のようなアプローチによって薬物を効率的に作用部位に到達させる努力が続けられてきた。
−薬物の作用部位への標的化:特定の細胞に親和性の高い物質を利用して、薬物を特定の細胞に選択的に移送する技術が公知である。たとえば抗体に細胞障害性物質を結合した抗がん剤が公知である。このようなアプローチによる治療方法を、標的治療(targeting therapy)を呼ぶ。標的化により、薬物は特定の細胞に結合させられる。その結果、作用部位(あるいはその近く)における薬物濃度を高く維持することができる。また標的化によって、薬物の肝臓あるいは腎臓などの代謝をつかさどる器官への移行が妨げられる。その結果、薬物を生体内に長く保持することができる。
−薬物の保護:薬物の生体による代謝を防ぐことができれば、投与した薬物をより長時間、生体内に存在させることができる。たとえば、経口投与においては、しばしば強酸性に耐えるカプセルに薬物が充填される。投与されたカプセルは胃を経て腸内で溶解し薬物を放出する。胃内の強酸性条件下による薬物の分解を防ぎ、吸収量を高めることがカプセルの役割である。また、たんぱく質製剤に高分子化合物を結合することによって、血中濃度を高い水準に維持できることも公知である。この方法は生体によるたんぱく質の代謝が、高分子化合物の結合によって阻害される現象を利用している。
さて、遺伝子の発現を効果的に制御することができる技術として、RNA干渉(RNA interferance;RNAi)と呼ばれる現象が明らかにされている。RNAiは、2本鎖RNAが相同な塩基配列を有する遺伝子の発現を特異的に抑制する現象である。当初、線虫において確認された現象で(Fire et al., Nature, 391, 806-811, 1998)、その後哺乳動物細胞においても21塩基の2本鎖RNAによるRNAiが確認された(Elbashir et al., Nature, 411, 494-498, 2001)。RNAiのメカニズムは、現在のところ、完全には明らかにされていない。さまざまな解析によって次のようなモデルが推定されている。
すなわち、まず細胞内に導入された2本鎖RNAがRNaseIII型の核酸分解酵素によって、21−23塩基程度の長さを有する短いRNAに断片化される。このとき作用するRNaseIII型の核酸分解酵素は、ダイサー(dicer)と呼ばれている。断片化されたRNAはヘリカーゼなどの複数のたんぱく質と複合体を形成する。このとき形成されるRNAとたんぱく質との複合体がRISC(RNA -induced silencing cmplex)である。ヘリカーゼは、2本鎖の核酸をATP依存的に1本鎖に解きほぐす作用を有する酵素である。RISCは、それを構成している2本鎖RNAがヘリカーゼの作用によって1本鎖化されると、活性型となる。続いて活性型RISCが有する1本鎖RNAに相補的な塩基配列を含むmRNAが分解される。RISCを構成する断片化されたRNAは、特にsiRNA(small interfering RNA)と呼ばれた。しかし現在では、細胞への導入によって遺伝子発現抑制をもたらす人為的に合成された2本鎖RNAも含めて広くsiRNAと呼んでいる。
siRNAによる遺伝子発現抑制作用は非常に強力である。そのため、アンチセンスやリボザイムに代わる、新たな遺伝子発現抑制技術として注目されている。siRNAが有する遺伝子発現の抑制作用は、さまざまな遺伝子に応用された。たとえば医療においては、疾患の原因となる遺伝子の発現を、siRNAの作用によって抑制する試みが報告されている。以下に医療分野において効果が確認されたsiRNAの標的を示す。
感染性病原体の遺伝子:HIV、HBV、HCVなど
がん遺伝子:Her2/neu, EGFR, VEGF, HPVなど
本発明者らも、各種のヘリカーゼの発現をsiRNAによって抑制することによって、がん細胞にアポトーシスを誘導しうることを明らかにして特許出願している(WO2004/100990)。
これらのsiRNAの医療分野における利用には、なお解決すべき課題が残されている。課題のひとつは、siRNAの安定性である。もともとRNAはきわめて分解されやすい生体分子である。たんぱく質の発現レベルが遺伝子の転写調節によってコントロールできるのは、RNAが分解されやすいために他ならない。生体内においては、たんぱく質合成を終えたmRNAは速やかに分解される。加えて、血中に存在する短鎖のRNAは、そのままでは腎臓によって速やかに尿中に排泄される。ところがRNAを医薬として利用するときには、RNAが安定に維持されなければ持続的な薬効が望めない恐れがある。これらの課題に対して、たとえば各種のベクターを用いて、細胞内でsiRNAを発現させる試みがある。
生体内においてsiRNAの治療効果を期待するためには、目的とする組織に効率的にsiRNAを送達する技術が必要である。特に、たとえばがんのように、特定の組織に対してsiRNAを運搬したい場合には、薬剤が組織移行性を有することが好ましい。ところが現在知られている生体への遺伝子導入用ベクターは、細胞に対する選択性が低い。そのため、全身性に投与した場合には、特定の組織を標的とすることが難しい。
更に、コレステロールをキャリアーとして用い、化学修飾した2本鎖RNAを組み合わせて遺伝子の発現抑制を実現した報告もある(Soutschek et al., Nature, 432, 173-178, 2004)。この報告においては肝のアポリポプロテインBの発現が抑制された。一方、ガラクトースで修飾されたリポソームなどが肝実質細胞(liver parenchymal cells)に取り込まれる現象が知られている。すなわち、ガラクトースは、肝実質細胞に対するリガンドとして機能する。この機能を利用して、さまざまな物質の肝への標的化(targeting)が試みられた。
たとえば、特定のリン脂質で構成されたリポソームは、ガラクトース修飾によって肝への集積性が高まることが確認された(特開平6-271597)。この実験では、モデル化合物として放射標識したイヌリンの肝への移行が観察された。あるいは、肝実質細胞への親和性を有するガラクトース誘導体も提供されている(特開平7-188274、特開平9-235292)。更に、ガラクトース修飾したコレステロールで構成したリポソームによって、薬剤(Hattori Y. et al. J . Control Release. 2000, 3;69(3): 369-77; Kawakami S. et al. J. Pharm. Sci. Vol. 90, No. 2, 105-113, 2001)や、プラスミドDNA(Kawakami S. et al. Pharm Res. 2000, 17(3):306-13)の肝への送達も試みられた。
Fire et al., Nature, 391, 806-811, 1998 Elbashir st al., Nature, 411, 494-498, 2001 Soutschek et al., Nature, 432, 173-178, 2004 Hattori Y. et al. J . Control Release. 2000, 3;69(3): 369-77 Kawakami S. et al. J. Pharm. Sci. 90(2), 105-113, 2001 Kawakami S. et al. Pharm Res. 2000, 17(3):306-13 特開平6-271597 特開平7-188274 特開平9-235292
先に述べたように、ガラクトースやその誘導体で修飾されたコレステロールを含むリポソームは、肝への種々の物質の送達に利用できることが示されている。しかし、オリゴヌクレオチドの肝への送達を試みた報告は無い。たとえばプラスミドDNAは、特殊な投与法である門脈内投与でのみ、ガラクトース修飾したカチオン性リポソームによって肝に送達されるが、静脈内投与では肝に送達されないことが報告されている(Kawakami S. et al. Pharm Res. 2000, 17(3):306-13)。この報告においては、N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-n,n,n-trimethylammonium chloride(DOTMA)とcholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-beta-D-thiogalactosyle thyl)amino)butyl)formamide(Gal-C4-Chol)等を使ってカチオン性リポソームが調製された。ルシフェラーゼを発現するプラスミドDNAをこのカチオン性リポソームに吸着させて、マウスに門脈内投与された。プラスミドDNAは門脈から肝へ直接投与したときに、肝におけるルシフェラーゼの発現が確認されている。
更に、カチオン性リポソームは、in vitroにおける形質転換試薬としてしばしば用いられていた。たとえばインビトロジェン社の「リポフェクチン試薬(Lipofectin Reagent)」(商品名)は、カチオン性脂質と中性脂質からなるリポソームを利用している。プラスミドDNAは、カチオン性リポソームとの接触によって、ナノパーティクルに凝縮される。更に、両者の静電的な結合によって、リン酸骨格の陰性電荷の大部分が中和される。ナノパーティクルを形成したプラスミドDNAは、ヌクレアーゼ等に対する耐性も獲得する。カチオン性リポソームを構成している脂質膜は、細胞膜と接触すると容易に融合し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれると考えられている。
ところが構成塩基数の少ないオリゴヌクレオチドでは、カチオン性リポソームとプラスミドDNAで見られるような凝縮と複合化のメカニズムが必ずしも機能しないことが指摘されている。まずプラスミドDNAとオリゴヌクレオチドでは、構造的にも電気的にも大きな相違がある。たとえばプラスミドDNAは、カチオン性リポソームとの静電的な結合によって凝縮され、ナノパーティクルとなる。一方オリゴヌクレオチドは、それ自身が、既にナノパーティクルである。このような構造上の違いから、立体構造と負電荷の関係も、両者の間には、大きな相違がある。
したがって、プラスミドDNAの送達に成功したカチオン性リポソームを、そのままオリゴヌクレオチドに応用しても、通常、両者の複合体の形成効率は著しく低い。このような条件で調製されたオリゴヌクレオチド−カチオン性リポソーム複合体においては、構造的な安定性やヌクレアーゼ耐性も期待できないことが指摘されている。すなわち、オリゴヌクレオチドをカチオン性リポソームを使って肝に送達するためには、オリゴヌクレオチドに最適化された条件を見出す必要がある。たとえばインビトロジェン社の「オリゴフェクトアミン (Oligofectamine)」(登録商標)は、オリゴヌクレオチドやsiRNAを培養細胞に導入するために最適化された導入用試薬である。
更に公知技術においては、リポソーム−プラスミドDNA複合体を門脈(portal vein;PV)に投与することによってプラスミドDNAが肝に送達された。つまり公知技術においては、門脈、すなわち肝臓につなる血管に投与した場合に、肝への送達が確認されている。しかし操作上は、門脈への投与と肝への直接注入とは、特定の組織への注入が必要な点では大きな違いは無い。肝への送達をより容易に行うためには、任意の血管への投与によって肝への送達を可能とする技術が望まれる。
本発明は、カチオン性リポソームを利用して、オリゴヌクレオチドを、標的臓器である肝に送達するための技術の提供を課題とする。
本発明者らは、ガラクトース修飾されたカチオン性リポソームの組成、あるいはカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドとのチャージ比などのさまざまな条件について検討を重ねた。その結果、特定の糖修飾コレステロール誘導体(Glycosylated Cholesterol Derivatives)を利用することによって、オリゴヌクレオチドの肝への送達を可能とする条件を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の肝指向性のリポソーム組成物、その製造方法、そしてオリゴヌクレオチドの肝への送達方法に関する。また本発明は、本発明のリポソーム組成物の用途を提供する。
〔1〕下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームと、オリゴヌクレオチドとを含む複合体を含有する、肝指向性のリポソーム組成物;
(式中、nは1〜10の整数を示し;
Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
〔2〕前記式(1)で表される化合物のGの末端が、ガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンである〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記Gが、ガラクトース、ラクトース、N-アセチルガラクトサミン、およびマンニノトリオースからなる群から選択されたいずれかの糖である〔2〕に記載の組成物。
〔4〕オリゴヌクレオチドが機能性オリゴヌクレオチドである〔1〕に記載のリポソーム組成物。
〔5〕機能性オリゴヌクレオチドが、次の(a)-(c)からなる群から選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドである〔4〕に記載のリポソーム組成物;
(a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド、
(b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド、および
(c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド。
〔6〕リポソーム組成物におけるカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドのチャージ比が、0.5〜10である〔1〕に記載のリポソーム組成物。
〔7〕リポソームの平均粒径が20〜200nmである〔1〕に記載のリポソーム組成物。
〔8〕オリゴヌクレオチドが、5〜200塩基の長さを有する〔1〕に記載のリポソーム組成物。
〔9〕オリゴヌクレオチドが、2本鎖RNAである〔1〕に記載のリポソーム組成物。
〔10〕RNAが機能性RNAである〔9〕に記載のリポソーム組成物。
〔11〕機能性RNAが、肝実質細胞で発現している遺伝子の塩基配列から選択された部分塩基配列を含む2本鎖RNAである〔10〕に記載のリポソーム組成物。
〔12〕機能性RNAがsiRNA効果を有するRNAである〔10〕に記載のリポソーム組成物。
〔13〕下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームにオリゴヌクレオチドを複合化する工程と、オリゴヌクレオチドとリポソームの複合体を回収する工程を含む、肝指向性のリポソーム組成物の製造方法。
(式中、nは1〜10の整数を示し;
Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
〔14〕リポソーム組成物におけるカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドのチャージ比が、0.5〜10である〔13〕に記載のリポソーム組成物の製造方法。
〔15〕下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームとオリゴヌクレオチドの複合体を含有するリポソーム組成物を血液中に投与する工程を含む、オリゴヌクレオチドを肝実質細胞に送達するための方法。
(式中、nは1〜10の整数を示し;
Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
〔16〕血液中に投与する工程が、静脈投与である〔15〕に記載の方法。
〔17〕次の工程を含む、肝における遺伝子の機能解析方法;
(1) 下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームと、機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドとの複合体を形成させる工程、
(式中、nは1〜10の整数を示し;
Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
(2)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を非ヒト動物の血中に投与する工程;
(3)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を投与された非ヒト動物の表現型を観察し対照と比較する工程;および
(4)対照と比較して表現型の相違が検出されたときに、前記遺伝子の肝における機能抑制に起因する表現型が同定される工程。
〔18〕機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドが、次の(a)-(c)からなる群から選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドである、〔17〕に記載の肝における遺伝子の機能解析方法;
(a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド、
(b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド、および
(c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド。
本発明によって、オリゴヌクレオチドを含む肝指向性のリポソーム組成物が提供された。本発明のリポソーム組成物を、ヒトあるいは哺乳動物の血中に投与することにより、オリゴヌクレオチドを肝に送達することができる。本発明の肝指向性リポソーム組成物をsiRNAの送達に応用することによって、siRNAの血中における滞留性が改善される。また、本発明の肝指向性リポソーム組成物においては、siRNAのヌクレアーゼ耐性も向上する。更に、肝指向性を有するリポソーム組成物は、効率的に肝に送達される。これらの特性によって、肝への効果的なオリゴヌクレオチドの送達が可能となった。
更に本発明は、静脈投与によるオリゴヌクレオチドの肝への送達を可能とした。カチオン性リポソームを使ってプラスミドDNAの肝への送達を試みた公知の方法においては、門脈への投与によって肝への送達を実現した。門脈への投与には高度な医療技術が必要である。一方、本発明に基づく肝指向性のリポソーム組成物は、静脈への投与によって、オリゴヌクレオチドを肝に送達することができる。つまり本発明によれば、静脈注射によって、オリゴヌクレオチドを肝に送達することができる。静脈注射は、門脈への投与に比べると、より一般的な医療行為である。したがって本発明は、より実用的な操作によって、オリゴヌクレオチドの肝への送達を可能とする方法を提供した。
本発明は、治療や予防のみならず、肝における遺伝子の機能解析方法にも有用である。たとえば、本発明に基づいて、肝実質細胞に遺伝子の機能や発現を抑制するオリゴヌクレオチドを送達し、その影響を観察することによって、当該遺伝子の機能を解析することができる。本発明によれば、静脈投与によって、オリゴヌクレオチドを肝実質細胞に送達することができる。すなわち、より簡便な操作によって、遺伝子の機能を解析することができる。
本発明は、下記一般式(1)で示される糖修飾コレステロールを構成成分として含有するリポソームとオリゴヌクレオチドを含む複合体を有効成分として含有する肝指向性のリポソーム組成物に関する。あるいは本発明は、下記一般式(1)で示される糖修飾コレステロールを構成成分として含有するリポソームとオリゴヌクレオチドを含む複合体の、肝指向性のリポソーム組成物の製造における使用に関する。
前記一般式(1)において、nは1〜10の整数である。nは、好ましくは2〜8であり、より具体的には2〜6、たとえば、2、4、あるいは6である。一般式(1)を有する化合物は、図1Aに示すように、糖(たとえばガラクトース構造)、リンカー、そしてコレステロール構造の3つの構成要素を含む化合物である。リンカー部分は、C数1〜10のアルキル鎖からなるスペーサーを含むことができる。
また前記一般式(1)においてGは、アシアログライコプロテインレセプターに結合する単糖(monosaccharide)または多糖鎖(polysaccaride-chain)をあらわす。アシアログライコプロテインレセプターに結合する単糖または多糖鎖とは、具体的にはガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンを末端に含む単糖または多糖鎖である。ガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンを末端に含む単糖または多糖鎖は、肝実質細胞のアシアログライコプロテインレセプターに結合する。そしてこのような構造を末端に有する物質が肝に標的化されることも明らかにされている(Glycans as endocytosis signals: the cases of the asialoglycoprotein and hyaluronan/chondroitin sulfate receptors. Biochim Biophys Acta. 2002 Sep 19;1572(2-3):341-63.; Wu J, Nantz MH, Zern MA. Targeting hepatocytes for drug and gene delivery: emerging novel approaches and applications. Front Biosci. 2002 Mar 1;7:d717-25.)。この条件を満たす糖として、たとえば以下の単糖または多糖鎖を示すことができる。
ガラクトース、
N-アセチルガラクトサミン、
ガラクトースやN-アセチルガラクトサミンを含む二糖:
(例えば、ラクトース(グルコースとガラクトースがβ-1,4結合した二糖)または、
ガラクトースやN-アセチルガラクトサミンを末端に含むオリゴ糖:
(例えば、マンニノトリオース (α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-D-グルコース))
本発明において、これらの単糖または多糖鎖は、糖残基の1位の炭素と-O-あるいは-S-を介して式(2)または(3)の構造を有するLと結合する。糖をLに結合するために、たとえばLに結合する糖残基の一位の水酸基に、メトキシ基を持つイミンの炭素を含む構造を付加することができる。本発明における糖の誘導体は、たとえばLeeらの方法に従って合成することができる((Lee YC. et al., Biochemistry. 1976 Sep 7;15(18):3956-63.))。前記一般式において、Gを構成する糖の誘導体として、ガラクトースの1位の炭素が-S-を介してLと結合する構造(4)を示すことができる。
Leeらの方法によって前記式(4)に示すガラクトースの誘導体を得るための合成スキームを図8に示した。図8の合成スキームにおいて、チオウレア(5)に代えてウレア(6)を用いて合成された誘導体は、-O-を介してガラクトースの1位の炭素とリンカーLを結合させることができる。あるいはN-アセチルガラクトサミンやラクトースは、図7に示す位置において、-O-あるいは-S-を介してリンカーLと結合することができる。
更に前記一般式(1)において、Lは前記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示す。本発明において、特に(3)の構造を有するリンカーは、プロトンスポンジ効果を有する。一般に、遺伝子発現効率を向上させるためには、DNAを細胞質内へ効率よく移行させることが必要である。多くのウイルスは、リソソームの分解を回避し、細胞質内へ効率良く遺伝子を導入するための様々な分子メカニズムを有している。エンドソーム内のpHは酸性であるので、エンドサイトーシスにより取り込まれたウイルスは、pH7からpH5といった外部pHの変化にさらされる。ある種のウイルスは、pHなどの外部環境の変化をセンシングして、エンドソーム膜との融合活性を変化させることにより、巧みに細胞質内へ移行している。非ウイルス性キャリアーの設計において、このようなウイルスの「インテリジェント性」を付与することが多いに望まれる。
Behrらは、DNAをエンドソームから細胞質内へ移行させるための、「プロトンスポンジ」という機構を示した。エンドサイトーシスによる内在化の後、エンドソーム膜上のプロトンATPaseがエンドソーム内のpHを下げる。この時に、ポリカチオンが生理pH以下でプロトン化する窒素原子を持っていれば、エンドソーム内へ集積してきたプロトンをポリカチオンが消費し、pHの低下を抑制することになる。そして、エンドソーム内へ塩化物イオンの流入を伴ったプロトンの集積が続くことにより、浸透圧が増大する。その結果、エンドソーム内外の浸透圧のバランスがくずれ、遂にはエンドソームが崩壊し、内包物を細胞質内へ放出すると考えられている。弱塩基性の官能基(ヒスチジンやポリエチレンイミン)をもつ化合物は、プロトンスポンジ効果を示すことが知られている。式(3)に示した構造はヒスチジンである。本発明においてLにヒスチジンを有する構造のガラクトース修飾コレステロール誘導体(Gal-His-C4-Chol)は、たとえば図10に示すような工程によって製造することができる。
nが2、4、あるいは6、Lが式(2)、そしてGが前記式(4)のガラクトース誘導体であるときの、ガラクトース修飾コレステロールの構造と名称を以下に示す。これらの構造を有するガラクトース修飾コレステロールは、本発明における好ましい化合物に含まれる。
C2:Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-D-thiogalactosylethyl) amino) ethyl)formamide (Gal-C2-Chol)
C4:Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-D-thiogalactosylethyl) amino) butyl)formamide (Gal-C4-Chol)
C6:Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-D-thiogalactosylethyl) amino) hexyl)formamide (Gal-C6-Chol)
本発明に用いられる一般式(1)の化合物は、カチオン性リポソームの構成材料として公知である。カチオン性リポソームとは、極性溶媒中でカチオンチャージを有するリポソームである。リポソームの脂質膜を構成する脂質として、カチオン性脂質を加えることによって、カチオン性リポソームを得ることができる。カチオン性脂質とは、その構造の中に極性溶媒中でカチオン性チャージを持つ部分を含む脂質を言う。本発明においては、一般式(1)の化合物は、式(2)あるいは(3)に含まれるイミノ基がカチオン性にチャージするカチオン性脂質である。本発明におけるリポソームは、一般式(1)を含む、複数種類のカチオン性脂質を配合することもできる。
当該化合物、並びにこの化合物を利用してカチオン性リポソームを構成する方法も公知である。たとえば一般式(1)に記載の化合物は、次のようにして合成することができるすなわち、まずコレステロール骨格にリンカー構造を結合してコレステロール誘導体を得る。リンカーは、CHCl3などの適当な溶媒中でコレステロールと反応させることによって、コレステロール骨格に結合される。たとえば、リンカーとしてN-(4-aminobutyl) carbamic acid tert-butyl esterを用いることにより、コレステロール誘導体N-(4-aminobutyl)-(cholesten-5-yloxyl)formamideを得ることができる。リンカーのアルキル鎖の長さを調節することによって、異なる長さのリンカーを含む化合物を得ることができる。たとえばN-(4-aminobutyl) carbamic acid tert-butyl esterに代えて以下の化合物を利用することにより、それぞれC2あるいはC6の化合物を得ることができる。
C2:N-(4-aminoethyl) carbamic acid tert-butyl ester
C6:N-(4-aminohexyl) carbamic acid tert-butyl ester
こうして得られたアミノ基を持つコレステロール誘導体にガラクトース構造を結合することにより、目的とするガラクトース修飾コレステロール誘導体を得ることができる。たとえば、Leeらの方法に従い合成した2-Imino-2-methoxyethyl-1-thiogalactoside (IME-thiogalactoside)を、先に得られたコレステロール誘導体に結合することができる。リンカーと結合することができる糖の誘導体を得る方法は公知である(Lee YC. et al., Biochemistry. 1976 Sep 7;15(18):3956-63.)。Leeらの方法によって糖の誘導体を得る方法を図8に示した。
同様にコレステロールとリンカーの結合についても公知の方法を利用することができる(Chipowsky et al. Carbohydr. Res. 31, 339, 1973)。両者をトリエチルアミンを含むピリジン溶液中で、室温、24時間反応させることにより、コレステロール誘導体のアミノ基にガラクトース構造が導入される。このようにして、最終的に、ガラクトース修飾コレステロール誘導体Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-β-D-thiogalactosylethyl)amino)butyl)formamide (Gal-C4-Chol)が合成される。Gal-C4-Cholの合成工程を図9に示した。
得られたガラクトース修飾コレステロール誘導体は、リポソームを構成することができる脂質成分と配合することにより、リポソームとすることができる。リポソームとは脂質膜で構成された小胞 (vesicle)を言う。通常、リポソームは脂質2重層の閉鎖された小胞膜で構成される。リン脂質などの極性脂質の膜を極性溶媒に分散すると、単分子膜は、その極性基を外側(極性溶媒側)に向けて整列する。その結果、互いの脂質部分を内部に向けた脂質層の2重層が構成される(図1B)。極性溶媒中においては、脂質層を構成する極性脂質の脂質部分が完全に極性溶媒から遮断された構造がもっとも安定な構造である。言い換えれば、極性脂質の極性基が極性溶媒側に並び、脂質部分が2重層の膜内部に配置された構造が、最も安定な構造となる。すなわち、リポソームは、極性脂質を極性溶媒中に再分散したときにできる二重膜で構成される小胞と定義することもできる。なおリポソームを構成する脂質膜には、異なる脂質を含みうる。そして、たとえば本発明の糖構造などによって脂質を修飾することによって、極性溶媒に接する部分、あるいは膜内部に位置する脂質部分に、種々の性状を与えることができる。
脂質として、たとえば次のような天然または合成のリン脂質、水素添加リン脂質、グリセロ等脂質、コレステロール、およびカチオン性脂質等を示すことができる。このような素材を利用するリポソームの調製方法は公知である(Kawakami et al. Biochem Biophys Res Commun. 252(1), 78-83, 1998)。
Dioleoylphosphatidylethanolamine (DOPE)
Distearoylphosphatidylcholine (DSPC)
ホスファチジルコリン
ホスファチジルエタノールアミン
ホスホコリン
ホスファチジルセリン
ホスファチジン酸
ホスファチジルグリセロール
リゾホスファチジルコリン
スフィンゴミエリン
卵黄レシチン
大豆レシチン
コレステロール
2,3-dioleyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propanaminium trifluoroacetate (DOSPA)
N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-N,N,N-trimetylammonium chloride (DOTMA)
3β[N',N',N',-dimethylaminoethane)carbamoyl]cholesterol (DC-Chol)
N-(1,2-dioleyl-dihydroxypropyl)-N,N,N-trimethylammonium (DOTAP)
Dimethyldioctadecylammonium Bromide (DDAB)
本発明において、リポソームには、安定剤として更にステロールやトコフェロールなどを配合することもできる。
ガラクトース修飾コレステロール誘導体と脂質成分を適当な溶媒中で混和し、溶媒を除去することにより、脂質膜が形成される。ガラクトース修飾コレステロール誘導体と脂質成分の配合比は、利用する素材やその後の分散工程などの条件に合わせて適宜調整することができる。たとえばガラクトース修飾コレステロール誘導体としてCholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-β-D-thiogalactosylethyl)amino)butyl)formamide (Gal-C4-Chol)を、そして脂質としてDOPEを用いた場合、好ましい配合比としては、4:1〜1:4を示すことができる。
得られた脂質膜は、適当な水性媒質に分散させることよって、リポソームを形成する。脂質膜は、かくはんや超音波処理によって水性媒質に分散させることができる。こうして得られたリポソームの脂質膜の構造を図1Bに示した。すなわち、コレステロール部分は脂質膜構成成分としてリポソームの膜を構成する。一方、リポソームの脂質膜表面(内表面と外表面)は、ガラクトースによって覆われる。
本発明におけるリポソームは、脂質膜の組成、水性媒質の種類、そして分散条件などを調節することによって、その粒径を調節することができる。あるいは、得られたリポソームの懸濁液を適当なメンブレンでろ過することによって、目的とする大きさのリポソームとすることができる。たとえばポアサイズ0.1〜0.5μmのメンブレンフィルターを利用して、本発明に好適な大きさのリポソームを調製することができる。メンブレンによるろ過には、エクストルーダーを利用することもできる。
本発明におけるリポソームの大きさは、肝実質細胞が取り込むことができる大きさであれば制限されない。本発明において、リポソームの平均粒径は、具体的には、通常20〜200nm、好ましくは50〜100nmである。リポソームの平均粒径は、光散乱光度計などによって測定することができる。
本発明において、リポソームがオリゴヌクレオチドとの複合体形成によって粒径が変化する場合には、オリゴヌクレオチドを吸着したリポソームの大きさが望ましい範囲となるように調節する。たとえば後に述べるように、Gal-C4-Chol:DOPE=3:2のリポソームでは、2本鎖RNAとの複合体形成によって、粒径は50%程度増加した。このようなリポソームにおいては、最終的に形成される2本鎖RNAとの複合体の粒径(平均直径)が、望ましい範囲となるように調節する。
本発明のリポソーム組成物は、前記リポソームにオリゴヌクレオチドを配合することによって得ることができる。本発明においてオリゴヌクレオチドは、たとえば1000塩基以下のヌクレオチド単位で構成された短いオリゴヌクレオチドを言う。本発明におけるオリゴヌクレオチドを構成する塩基数は、通常5〜200塩基、たとえば5〜100塩基、具体的には5〜80塩基、あるいは10〜50塩基である。ここで言う塩基数とは、オリゴヌクレオチドの構造とは無関係に、オリゴヌクレオチドを構成する全ての塩基数をさす。したがって、たとえば50塩基の相補配列によって形成された2本鎖オリゴヌクレオチドを構成する塩基数は、100(50×2=100)である。
本発明のオリゴヌクレオチドの構造は、限定されない。したがって、1本鎖、2本鎖、あるいは3本鎖などのオリゴヌクレオチドを利用することができる。1本鎖オリゴヌクレオチドは、同じ分子内に相補的な塩基配列を含むことができる。相補的な塩基配列を含む1本鎖オリゴヌクレオチドは、相補的な塩基配列が互いにハイブリダイズすることによって部分的な2本鎖を形成する。その結果、ステムループやステムバルジなどの構造が形成される。これらの構造を複数含むことによって、更に高度な高次構造が形成される場合もある。これらの構造を有するオリゴヌクレオチドを、本発明における複合体形成に用いることもできる。オリゴヌクレオチドが相補配列を含み、2本鎖構造を有する場合、いずれかの末端にオーバーハングを含む構造とすることもできる。
本発明のリポソーム組成物に配合されるオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、あるいはDNA-RNAキメラ分子を含む。更に、DNAとRNAがハイブリダイズした分子、あるいはヌクレオチドの誘導体を含むDNAやRNAなども、本発明におけるオリゴヌクレオチドに含まれる。たとえば、ヌクレアーゼ耐性を付与するために末端を修飾したオリゴヌクレオチドが公知である。あるいは、蛍光性の分子を導入したオリゴヌクレオチドも公知である。これらの人工的に合成されたオリゴヌクレオチドも、本発明のオリゴヌクレオチドに含まれる。
たとえばRNAは、本発明のリポソーム組成物に配合するオリゴヌクレオチドとして好ましい。リポソームとの複合体を形成するRNAは、天然のRNAを構成するリボヌクレオチド核酸に加え、人工的な塩基に置換したものや、その誘導体を含む。したがって、天然の塩基であるa、u、c、およびgに代えて、イノシン(i)を有するRNAを複合体形成に用いることができる。あるいはリン酸結合をチオエート結合やボラノフォスフェート結合に置換した核酸誘導体を人工的に合成する方法も公知である。リボヌクレオチド核酸の糖構造を修飾することもできる。糖構造の修飾方法として、2’-O-メチル修飾、2’-フルオロ修飾、あるいはlocked nucleic acid (LNA)修飾等を用いることもできる。また、部分的にDNAを導入したDNA-RNAキメラ分子も公知である。
RNAは、さまざまな機能を有することが明らかにされている。たとえば、RNAi効果やアンチセンス効果は、遺伝子に相補的な塩基配列を含むRNAが有する、遺伝子発現の抑制効果である。同様に、さまざまな構造を有するリボザイムが細胞内において、遺伝子発現を抑制することも明らかにされている。これらの遺伝子発現抑制作用を有するRNAは、いずれも本発明に利用することができる。あるいは、特定の塩基配列を有するRNAが、蛋白質などの高分子化合物に特異的に結合する現象も明らかにされている。核酸以外の物質に対する結合活性を有するRNAは、アプタマーと呼ばれる。アプタマーは、蛋白質への結合によって、その活性を調節する作用を有する場合がある。アプタマーとして機能するRNAを、本発明に利用することすることもできる。
これらの、遺伝暗号の伝達以外の機能を有するRNAを、本発明においては特に機能性RNA(functional RNA)と呼ぶ場合がある。本発明において、機能性RNAとは、遺伝暗号をアミノ酸配列に翻訳する機能以外の、機能を有するRNAを言う。遺伝暗号の翻訳機能には、DNAの塩基配列の転写とアミノ酸の移送が含まれる。したがって、たとえば以下のような機能を有するRNAは、機能性RNAに含まれる。
核酸の切断
蛋白質の合成阻害
核酸以外の物質に対する結合
なお遺伝暗号の翻訳機能は、細胞内においては、通常、mRNAとtRNAによって支えられている。本発明においては、mRNAやtRNAと同じ塩基配列を含むRNAであっても、そのRNAが翻訳以外の機能を有する場合には、機能性RNAに含まれる。これらの機能性RNAは、目的とするRNAの塩基配列をコードするDNAを適当なプロモーターの下流に連結し、RNAポリメラーゼによって転写することによって合成することができる。RNAへの転写は、細胞内で行っても良いし、適当な環境を与えれば、in vitroにおける転写反応によって合成することもできる。鋳型となるDNAのコード配列の3'側には、好ましくは転写終結シグナルを配置することができる。以下に各種の機能性RNAについて更に具体的に説明する。
RNAi効果を有するRNA:
本発明における機能性RNAとして、遺伝子に対してRNAi(RNA interferance;RNA干渉)効果を有する二本鎖RNAを示すことができる。一般的にRNAiとは、標的遺伝子のmRNA配列と相同な配列からなるセンスRNAおよびこれと相補的な配列からなるアンチセンスRNAとからなる二本鎖RNAを細胞内に導入することにより、標的遺伝子mRNAの破壊を誘導し、標的遺伝子の発現が阻害される現象を言う。
RNAi効果は、現在のところ、次のようなメカニズムを含むと考えられている。
−DICERといわれる酵素(RNase III核酸分解酵素ファミリーの一種)と2本鎖RNAとの接触;および
−2本鎖RNAのDICERによるsmall interfering RNAまたはsiRNAと呼ばれる小さな断片への分解.
本発明におけるRNAi効果を有する2本鎖RNAには、このsiRNAも含まれる。
RNAiのために使用されるRNAは、発現抑制すべき遺伝子の部分領域と完全に同一(相同)である必要はないが、完全な同一(相同)性を有することが好ましい。以下、発現抑制の対象とする遺伝子を標的遺伝子と言う。
本発明において、RNAi効果を有する2本鎖RNAは、通常、標的遺伝子のmRNAにおける任意の連続する塩基配列と相同な配列からなるセンスRNA、および該センスRNAに相補的な配列からなるアンチセンスRNAからなる2本鎖RNAである。上記「任意の連続する塩基配列」の長さは、通常20〜30塩基であり、好ましくは21〜23塩基である。しかしながら、そのままの長さではRNAi効果を有さないような長鎖のRNAであっても、細胞においてRNAi効果を有するsiRNAへ分解されるため、本発明における2本鎖RNAの長さは、特に制限されない。
また、標的遺伝子のmRNAの全長もしくはほぼ全長の領域に対応する長鎖二本鎖RNAを、例えば、予めDICERで分解させ、その分解産物をRNAi効果を有するRNAとして利用することもできる。このような分解産物には、RNAi効果を有する二本鎖RNA分子(siRNA)が含まれることが期待される。この方法によれば、RNAi効果を有することが期待されるmRNA上の領域を、特に選択しなくともよい。
また、末端に数塩基のオーバーハングを有する二本鎖RNAは、RNAi効果が高いことが知られている。したがってRNAi効果を有する二本鎖RNAは、末端に数塩基のオーバーハングを有することが望ましい。このオーバーハングを形成する塩基の長さは特に制限されない。オーバーハングの塩基の数は、好ましくは、2塩基である。本発明においては例えば、TT(チミンが2個)、UU(ウラシルが2個)、その他の塩基のオーバーハングを有する二本鎖RNAが好ましい。たとえばヒトにおいては、19塩基の二本鎖RNAと2塩基(TT)のオーバーハングを有する分子は、RNAi効果が高いといわれている。RNAi効果を有する二本鎖RNAには、オーバーハングを形成する塩基がDNAであるようなキメラ分子も含まれる。
ここでいう2本鎖RNAは、相補配列が互いにハイブリダイズした構造を含むRNAを言う。したがって、先に述べたように1本鎖RNA中に相補的な塩基配列を含み、それが互いにハイブリダイズすることによって2本鎖構造を取った場合には、2本鎖RNAに含まれる。すなわちステムループ構造を取る1本鎖RNAは、2本鎖構造(ステム部分)を含むため、2本鎖RNAに含まれる。
当業者は、標的遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNAを、その塩基配列をもとに、適宜デザインすることができる。すなわち、標的遺伝子の塩基配列をもとに、該配列の転写産物であるmRNAの任意の連続するRNA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖RNAを作製することができる。また、該配列の転写産物であるmRNA配列から、より強いRNAi効果を有するsiRNA配列を選択する方法も公知である。例えば、Reynoldsらが発表した論文(Reynold et al. Nature biotechnology 22. 326-330 (2004))や、Ui-Teiらが発表した論文(Ui-Tei et al. Nucleic Acids Res. 32. 936-948 (2004))等に基づいて、siRNAに必要な塩基配列を予測することができる。
siRNAは、遺伝子の部分的な塩基配列に基づいてデザインすることもできる。siRNAの塩基配列を特定するためには、選択すべき任意の連続する塩基配列が判明していればよい。必要な塩基配列の長さは、たとえば、少なくとも20〜30塩基である。つまり、全長配列が明らかでない標的遺伝子に対して、siRNAをデザインすることもできる。従って、EST(Expressed Sequence Tag)等のようにmRNAの一部は判明しているが、全長が判明していない遺伝子断片からも、該断片の塩基配列を基に当該遺伝子の発現を抑制する二本鎖RNAを作製することができる。
アンチセンス効果を有するRNA:
本発明における機能性RNAとして、遺伝子に対してアンチセンス効果を有するRNAを用いることもできる。特定の遺伝子の発現を阻害(抑制)する方法として、アンチセンス技術を利用する方法が公知である。アンチセンス核酸による標的遺伝子の発現阻害には、以下のような複数のメカニズムが関与している。
−三重鎖形成による転写開始阻害、
−RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が作られた部位とのハイブリッド形成による転写阻害、
−合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害;、
−イントロンとエキソンとの接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング阻害;
−スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害;
−mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行阻害;
−キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、
−翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始阻害;
−開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳阻害;
−mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻害;および
−発現制御領域と転写調節因子との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現阻害など
このようにアンチセンス核酸は、転写、スプライシングまたは翻訳など様々な過程を阻害することで、標的遺伝子の発現を阻害する(平島および井上著、新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現、日本生化学会編、東京化学同人、1993年、p.319-347)。
本発明で用いられるアンチセンス効果を有するRNAには、これらのいずれかの作用によって標的遺伝子の発現を阻害しうるRNAが含まれる。一つの態様としては、標的遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、標的遺伝子の翻訳領域だけでなく、非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むRNAも、本発明におけるアンチセンス効果を有するRNAに含まれる。
本発明におけるアンチセンスRNAは、任意の方法によって合成することができる。具体的には、RNAポリメラーゼによる転写反応、あるいは化学合成によって、必要な塩基配列からなるRNAを得ることができる。合成RNAオリゴマーとしてアンチセンスRNAを合成する場合には、リン酸エステル結合部のO(酸素)をS(硫黄)に置換したSオリゴ(ホスホロチオエート型オリゴヌクレオチド)とすることができる。Sオリゴとすることによって、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を付与することができる。したがって本発明において、Sオリゴは、機能性RNAとして好ましい。
アンチセンスRNAの配列は、標的遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましい。ただし、遺伝子の発現を有効に抑制できる限り、アンチセンスRNAを構成する塩基配列は、標的遺伝子の塩基配列に対して完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンスRNAを用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、アンチセンスRNAの長さは少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上である。
リボザイム活性を有するRNA:
本発明における機能性RNAとして、リボザイム活性を有するRNAを利用することもできる。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子を指す。リボザイムには種々の活性を有するものが存在する。たとえば、RNAを部位特異的に切断するリボザイムを設計することもできる。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子、蛋白質核酸酵素、1990年、35、2191)。
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15という配列のC15の3'側を切断する。その切断活性にはU14とA9との塩基対形成が重要とされている。また、C15の代わりにA15またはU15でも切断されることも示されている(Koizumi, M.ら著、FEBS Lett、 1988年、228、228.)。基質結合部位が標的部位近傍のRNA配列と相補的なリボザイムを設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを人工的に作り出すことができる(Koizumi, M.ら著、FEBS Lett, 1988年、239, 285.、小泉誠および大塚栄子、蛋白質核酸酵素、1990年、35, 2191.、Koizumi, M.ら著、Nucl Acids Res、 1989年、17, 7059.)。
また、ヘアピン型リボザイムもRNAの切断に有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan, JM., Nature, 1986年、323, 349.)。ヘアピン型リボザイムに基づいて、標的配列特異的なRNA切断リボザイムを作り出すことができる(Kikuchi, Y. & Sasaki, N., Nucl Acids Res, 1991, 19, 6751.、菊池洋, 化学と生物, 1992, 30, 112.)。このように、標的遺伝子の転写産物を特異的に切断することができるリボザイム活性を有するRNAをデザインし、本発明に利用することもできる。
本発明のリポソーム組成物を構成するオリゴヌクレオチドには、種々の機能を有するオリゴヌクレオチドを用いることができる。具体的には、遺伝子の発現や蛋白質の機能を修飾する作用を有するオリゴヌクレオチドを本発明に利用することができる。本発明において、遺伝子の発現や蛋白質の機能を修飾する作用を有するオリゴヌクレオチドを、機能性オリゴヌクレオチドという。更に、オリゴヌクレオチドがDNAやRNAである場合には、それぞれ、機能性DNAや機能性RNAと記載することがある。本発明において、機能性オリゴヌクレオチドは、蛋白質の発現の調節、あるいは蛋白質への結合によるその活性の調節などによって、その機能を修飾することができる。機能性オリゴヌクレオチドを本発明のリポソーム組成物に用いることによって、機能性オリゴヌクレオチドを肝に送達することができるリポソーム組成物を得ることができる。
本発明におけるオリゴヌクレオチドとして、機能性オリゴヌクレオチドを利用することによって、肝に機能性オリゴヌクレオチドを送達するためのリポソーム組成物を得ることができる。すなわち本発明は、機能性オリゴヌクレオチドと前記一般式を有する糖修飾コレステロール誘導体の複合体を有効成分として含有する、機能性オリゴヌクレオチドを肝に送達するためのリポソーム組成物に関する。あるいは本発明は、機能性オリゴヌクレオチドと前記一般式を有する糖修飾コレステロール誘導体の複合体の、機能性オリゴヌクレオチドを肝に送達するためのリポソーム組成物の製造における使用に関する。
本発明において、機能性オリゴヌクレオチドとは、肝実質細胞の細胞機能に何らかの影響を与えるオリゴヌクレオチドである。細胞機能には、たとえば、細胞内蛋白質の活性、遺伝子発現、肝実質細胞におけるウイルスの感染や複製、あるいはシグナル伝達などが含まれる。本発明における機能性オリゴヌクレオチドとして、次の(a)-(c)から選択されたいずれかのオリゴヌクレオチドを用いることができる。
(a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド、
(b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド、および
(c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド
本発明における機能性オリゴヌクレオチドには、たとえば次のようなオリゴヌクレオチドが含まれる。
(a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド:
RNA転写ユニットは、DNAと、そのDNAの塩基配列に基づいて対応するRNAを合成するRNAポリメラーゼの認識配列によって構成される。RNA転写ユニットにおけるDNAは、たとえば特定のアミノ酸配列をコードするDNAとすることができる。このRNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチドを肝実質細胞に送達することによって、肝実質細胞において特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現させることができる。より具体的には、ドミナントネガティブ効果を有するポリペプチドをコードするDNAを肝実質細胞に導入し、特定の蛋白質の活性を抑制することができる。あるいは、肝実質細胞における蛋白質の機能低下を、外来DNAの導入によって補うこともできる。
更に、DNAとして先に述べた機能性RNAをコードするDNAを利用することもできる。たとえばRNAi効果を有するRNAをコードするDNAを肝実質細胞に送達することによって、肝実質細胞中でsiRNAを合成させることができる。同様に、アンチセンス、リボザイム、あるいはアプタマーとして機能するRNAをコードするDNAをRNA転写ユニットに組み込むこともできる。
(b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド:
遺伝子の発現を制御することができる、多くのメカニズムが明らかにされている。そして公知の遺伝子発現制御メカニズムの多くに、オリゴヌクレオチドが関与している。たとえば先に述べたようなsiRNA、アンチセンスRNA、あるいはリボザイムのような各種の機能性RNAは、遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチドに含まれる。また、RNAのみならずDNAによってもアンチセンス効果は期待できる。したがって、DNAからなるアンチセンスオリゴヌクレオチドも、本発明におけるオリゴヌクレオチドとして有用である。
(c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド:
蛋白質の中には、核酸に結合することによって機能を発現するものも多い。たとえば転写調節因子は、核酸に結合する代表的な蛋白質である。そして転写調節因子の認識配列の塩基配列を模倣したDNAが、転写因子の働きを抑制することが知られている。この現象を利用したのが"核酸デコイ"である。核酸デコイは、転写因子認識配列を模倣したDNAからなる。核酸デコイを構成する転写因子認識配列は、複数であっても良い。核酸デコイを含むオリゴヌクレオチドを本発明によって肝に送達すれば、肝実質細胞における転写調節因子の活性を抑制することができる。
あるいは、アプタマーのように蛋白質に結合してその活性を調節する核酸の存在も明らかにされている。したがって、アプタマーとして機能するオリゴヌクレオチドを蛋白質に結合するオリゴヌクレオチドとして利用することもできる。
本発明によって、たとえば、肝疾患の原因となっている遺伝子の発現や、当該遺伝子によってコードされる蛋白質の活性を抑制することができるオリゴヌクレオチドを、肝に送達することができる。したがって本発明は、遺伝子の機能異常を伴う肝疾患の治療および/または予防に有用である。本発明による治療や予防が期待できる肝疾患として、たとえば次のような疾患を例示することができる。疾患の名称の後に各疾患の原因とされている遺伝子の名称を記載した。
ウイルス性肝炎:HBV、HCV
高脂血症(hyperlipidemia):アポリポプロテインB、あるいはHMG-CoA (3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A)還元酵素
あるいは、特定の遺伝子の発現が不十分なことによってもたらされる病態に対して、原因遺伝子を肝実質細胞に送達し、発現させることによって、治療効果を期待できる。このようなメカニズムに基づいて、本発明による治療や予防が期待できる疾患として、たとえば次のような疾患を例示することができる。疾患の名称の後に各疾患の原因とされている遺伝子の名称を記載した。
糖尿病(インスリンの低下)
ADA欠損症(アデノシン・デアミナーゼの欠損)
血友病(第VIII因子や第IX因子の不足)
本発明のリポソーム組成物は、上記リポソームをオリゴヌクレオチドと混合することによって得ることができる。本発明においてリポソームとオリゴヌクレオチドの使用量は限定されない。適切なオリゴヌクレオチドとリポソームの複合化の効率、そして肝への送達性能などを達成できる範囲に適宜調節することができる。たとえば、リポソーム組成物におけるカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドのチャージ比が0.5〜10、好ましくは0.5〜5、特に好ましくは1〜3のときに、肝へのより効率的な送達を期待できることを確認している。
チャージ比(charge ratio)は、リポソームに存在する正電荷を帯びた基のモル数/siRNAのリン酸基のモル数で表される。式(1)の化合物を構成脂質として含有するリポソームにおいては、式(1)のイミノ基がプラスにチャージする。したがって、カチオン性脂質として式(1)の化合物のみを含むリポソームにおいては、式(1)の化合物のモル数/siRNAのリン酸基のモル数によってチャージ比が決定される。たとえば、1分子のsiRNAに40個のリン酸基があるとき、siRNA 1 nmolあたり、リン酸基は40 nmolある。リポソームを構成するGal-C4-chol中には正電荷を帯びたアミノ基が一つ含まれる。チャ−ジ比を2.3とするためには、1 nmolのsiRNAに対してアミノ基は92 nmol必要である。つまりGal-C4-cholが92 nmol必要であることを意味する。
オリゴヌクレオチドは、適切な水性媒体中でリポソームに混合することで、複合体が形成される。本発明において、複合体とは、リポソームにオリゴヌクレオチドが複合化したものを言う。たとえば、リポソームは、吸着(adsorption)や封入(encapsulation)によってオリゴヌクレオチドと複合体を構成することができる。すなわち本発明は、前記一般式(1)で示される糖修飾コレステロールを構成成分として含有するリポソームにオリゴヌクレオチドを複合化する工程と、オリゴヌクレオチドとリポソームの複合体を回収する工程を含む、肝指向性のリポソーム組成物の製造方法を提供する。
たとえば、室温で、オリゴヌクレオチド溶液にリポソーム懸濁液をゆっくりと加え、混合せずに30分間以上静置することによって、本発明の複合体を得ることができる。複合化のための溶媒としては、たとえば5%グルコース溶液を使用することができる。静置後の複合体は、投与前に、0.22μmのフィルターで処理することにより、リポソームのサイズを調節することができる。このとき、フィルターによって滅菌処理を兼ねることができる。
オリゴヌクレオチドは、主に静電的な作用によって、リポソームに吸着される。実施例に示すように、前記一般式(1)を含むリポソームに吸着されたオリゴヌクレオチドは、血中においても安定に保持され、肝に送達される。
肝臓は、組織学的には、肝実質細胞と肝非実質細胞とに大別される。肝実質細胞は、代謝や解毒などの肝機能を担う細胞である。一方、肝非実質細胞は、類洞と呼ばれる血管組織で構成される。本発明に基づく肝指向性のリポソーム組成物は、これらの肝組織へのオリゴヌクレオチドの送達に有用である。中でも本発明のリポソーム組成物は、特に肝実質細胞へのオリゴヌクレオチドの送達に有用である。
本発明におけるリポソーム組成物は、血中に投与することによって、オリゴヌクレオチドを肝に送達する。プラスミドDNAを、ガラクトース修飾されたカチオン性リポソームとの複合体として、肝実質細胞に送達した報告がある。しかし公知の方法においては、リポソーム複合体は門脈に投与された。一方本発明によれば、たとえば任意の静脈に投与した場合であっても、オリゴヌクレオチドは効率的に肝に送達される。
本発明において、血中への投与とは、血管内への投与に加え、採血された血液中へ予めリポソーム組成物を混合した後に、当該血液を生体に投与すること(ex vivo)も含まれる。また、輸血のために採取された血液に、特定の遺伝子の発現を抑制するsiRNAを含む本発明の組成物を加えることもできる。リポソーム組成物を混合する血液は、全血のみならず、全血を分画したものであってもよい。たとえば、血清、血漿、血小板、リンパ球などの血液成分に、予めリポソーム組成物を混合することができる。
本発明におけるリポソーム組成物は、目的に応じて、リポソーム組成物のみを投与してもよいし、あるいは他の化合物とともに投与することもできる。たとえば、本出願人は、ある種の薬剤の作用が、特定の酵素の遺伝子発現の抑制によって増強される場合があることを明らかにしている。本発明においては、特定の酵素の遺伝子発現を抑制することができるsiRNAを含むリポソーム組成物を、薬剤とともに投与することもできる。この場合、リポソーム組成物の投与によって、siRNAが酵素遺伝子の発現を抑制すれば、ともに投与された薬剤の作用を増強することができる。本発明のリポソーム組成物とともに投与される薬剤を、リポソーム内部に封入することもできる。
本発明のリポソーム組成物は、オリゴヌクレオチドの血中の滞留性が向上している。その結果、本発明にしたがって血中に投与されたオリゴヌクレオチドは、肝をはじめとする血流の多い臓器、あるいは組織に、効果的に送達される。そのうえ、本発明のリポソーム組成物は、肝に対するリガンドであるガラクトースによって修飾されている。そのため肝に送達されたリポソーム組成物は、効率的に肝実質細胞内部に取り込まれる。
本発明において、血中に投与されるリポソーム組成物は、その使用方法、使用目的等により応じて、適宜調節することができる。例えば、注射投与に用いる場合の投与量は、通常、1日量として約0.1μg/kg〜200mg/kg、より具体的には1日量約1μg/kg〜100mg/kgである。
本発明により、肝へのオリゴヌクレオチドの送達が実現した。この方法を利用して、各種の機能性オリゴヌクレオチド、あるいは機能性RNAを生体に投与し、肝実質細胞に送達できることが確認された。したがって本発明を利用すれば、機能性オリゴヌクレオチドが肝に与える影響を明らかにすることができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、肝における遺伝子の機能解析方法に関する。
(1) 下記一般式(1)で示される糖修飾コレステロールを構成成分として含有するリポソームと、機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドとの複合体を形成させる工程;
(式中、nは1〜10の整数を示し;
Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
Lは、式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
(2)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を非ヒト動物の血中に投与する工程;
(3)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を投与された非ヒト動物の表現型を観察し対照と比較する工程;および
(4)対照と比較して表現型の相違が検出されたときに、前記遺伝子の肝における機能抑制に起因する表現型が同定される工程
本発明における好ましいリポソームは先に述べたとおりである。他方、本発明における機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドとは、たとえば機能性オリゴヌクレオチドとして示した(a)-(c)のいずれかに含まれるオリゴヌクレオチドであって、機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドが含まれる。より具体的には、次のようなオリゴヌクレオチドを示すことができる。中でも、解析すべき遺伝子の発現を抑制するsiRNAは、オリゴヌクレオチドとして好ましい。siRNAは微量でも強力に遺伝子の発現を抑制する。そのため、本発明に基づく遺伝子の機能解析方法において、より明瞭な表現型の変化を期待できる。
(a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド;
たとえば、siRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、あるいは蛋白質に結合してその活性を抑制するアプタマーをコードするDNAを含むRNA転写ユニットを、本発明におけるオリゴヌクレオチドに利用することができる。あるいは、ドミナントネガティブ効果を有するポリペプチドをコードするDNAを含むRNA転写ユニットも、本発明におけるオリゴヌクレオチドに利用することができる。
(b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド;
たとえば、siRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、あるいは蛋白質に結合してその活性を抑制するアプタマーとして機能するオリゴヌクレオチドは、本発明におけるオリゴヌクレオチドとして有用である。
(c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド;
アプタマー解析すべき遺伝子の転写調節因子に結合することができるデコイ核酸として機能するオリゴヌクレオチドも、本発明におけるオリゴヌクレオチドとして有用である。あるいは(b)に記載したアプタマーも、蛋白質に結合するオリゴヌクレオチドに含まれる。アプタマーは蛋白質への結合によってその活性を修飾する。
本発明において、リポソーム組成物を投与する非ヒト動物としては、ヒト以外の任意の動物を利用することができる。たとえば、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、あるいはウサギなどの、一般的な実験動物を利用することができる。あるいは、各種の、疾患モデル動物を利用して、疾患と遺伝子の関係を明らかにすることもできる。疾患モデル動物とは、特殊な飼育環境、薬物の投与、外科的処置、あるいは遺伝学的な改変などによって、人為的に病的な状態に置かれた動物である。
本発明において、動物へのリポソーム組成物の投与方法は限定されない。本発明においては、リポソーム組成物は血中に投与される。したがって、通常、複合体は、血管への注射によって、投与される。リポソーム組成物を投与された非ヒト動物は、投与後の表現型が観察される。対照と比較して表現型の相違が確認された場合には、その相違がリポソーム組成物として投与されたオリゴヌクレオチドの影響によるものであることがわかる。
たとえば、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有するRNAをリポソーム組成物として投与したときには、表現型の相違は、当該遺伝子の発現抑制によってもたらされたと考えることができる。すなわち、標的遺伝子の機能抑制に起因する表現型を同定することができる。
本発明において、対照とは、たとえばリポソーム組成物を構成するリポソームのみを投与した動物の表現型とすることができる。あるいは、非ヒト動物が有していない塩基配列を含むRNAを配合したリポソーム組成物を投与して対照とすることもできる。あるいは、一定のレベルの遺伝子抑制作用を有することが明らかなRNAを含むリポソーム組成物を投与した非ヒト動物を対照として用いれば、そのRNAよりも、より大きな作用を有するRNAを見出すことができる。
本発明において、リポソーム組成物は、単独で投与することもできるし、あるいはリポソーム組成物以外の他の成分とともに投与することもできる。たとえば、薬物の代謝メカニズムを解明するために、薬物とリポソーム組成物とをともに投与することもできる。標的遺伝子の発現抑制によって、薬物の薬理作用や副作用が増強(あるいは抑制)されれば、標的遺伝子が、その薬物の薬理作用や副作用と関連していることがわかる。
その他、非ヒト動物にさまざまな病態を誘導する物質を投与して疾患モデル動物とし、リポソーム組成物を投与して、RNAの治療効果を検証することができる。たとえば、発がん物質を投与したモデル動物において、本発明に基づいて、さまざまな標的遺伝子の発現抑制を試みることができる。もしもある遺伝子の発現抑制によって発癌が防止できれば、その遺伝子は、発癌に関与している遺伝子であると同定される。
更に、患者から採取されたがん組織を移植した非ヒト動物に、本発明のリポソーム組成物を投与することもできる。移植したがん組織が複合体の投与によって退縮すれば、当該標的遺伝子が治療標的として有用であることが確認できる。たとえば、がん治療に有効な可能性のある複数の標的遺伝子があるとき、患者のがんに対してどの標的遺伝子が有効なのかを評価する方法としても有用である。以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
<実験材料>
siRNAを北海道システムサイエンス社にて化学合成した。蛍光ラベルしたsiRNAとして、センス鎖の3’末端にAlexa Fulor 546を修飾したsiRNAを、QIAGEN社にて合成した。マウスは、ICR、雄性、4週令とBALB/cA nu/nu、雄性、7週令を日本クレアより購入した。
<実験方法>
〔実施例1〕ガラクトース修飾コレステロール誘導体の合成
ガラクトース修飾コレステロール誘導体は、Cholesteryl chloroformateにN-(4-aminobutyl) carbamic acid tert-butyl esterをCHCl3中で、室温、24時間反応させた。次に、反応液を4℃に冷却し、トリフルオロ酢酸を加え、アミノ基を持つコレステロール誘導体N-(4-aminobutyl)-(cholesten-5-yloxyl)formamideを得た。
2-Imino-2-methoxyethyl-1-thiogalactoside (IME-thiogalactoside)は、Leeらの方法に従い合成した。Galactose 7.5 gをacetic anhydride 10 ml中室温で3時間攪拌後、30%HBr/AcOH 20 ml中、冷所で一晩インキュベーションし、アセトハロ糖を調製した。次に、これをThioureaと1:1のモル比でacetoneに溶解後、15分間灌流した。反応生成物 4.5 gとClCH2CN 3.33 g、K2CO3 1.49 g、NaHSO3 1.95gを水/acetone (1:1) 20 ml中で2時間氷冷下において反応させ、Cyanomethyl 2,3,4,6,-tert-O-acethyl-1-thiogalactoside (CNM-thiogalactoside)を合成した。CNM-thiogalactosideをMeOH中、0.01 M CH3ONaと室温で一晩インキュベーションしIME-thiogalactosideを合成した(図8)。
IME-thiogalactosideとN-(4-aminobutyl)-(cholesten-5-yloxyl)formamideのアミノ基を、トリエチルアミンを含むピリジン溶液中で、室温、24時間反応させることによりCholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-β-D-thiogalactosylethyl)amino)butyl)formamide (Gal-C4-Chol)を合成した。ピリジンを減圧下で留去後、精製水を加えることによりミセルを形成させ、透析により精製した。その溶液を凍結乾燥後、結晶をジエチルエーテルで3回洗浄し、ガラクトース結合カチオン性コレステロール誘導体 (Gal-C4-Chol)を得た(図9)。誘導体の構造は、核磁気共鳴および、質量分析により確認した。Gal-C4-Cholの構造式は次のとおりである。
〔実施例2〕リポソームの調製と物理化学性質の測定
Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-D-thiogalactosylethyl)amino)butyl)formamide (Gal-C4-Chol)とDioleoylphosphatidylethanolamine(DOPE) (Avanti Polar-Lipids)を3:2のモル比でクロロホルム中にて混合し、有機溶媒を減圧下で留去した。これを5 %デキストロース溶液に懸濁し、数分間攪拌した。プローブ型超音波発生器を用いて、2分間超音波処理した。次に、0.2μmおよび、0.1μmのポリカーボネート膜とエクストルーダーを用いて、加圧ろ過を行った。リン定量法により、脂質濃度を調製した。脂質組成比や脂質の種類が異なるリポソームも同様に調製した。ガラクトース修飾リポソームの構造を図1Bに示す。
粒子径はスーパーダイナミック光散乱光度計 (Photal LS-900、大塚電子株式会社)を用いて動的光散乱により測定され、表面電荷を示すゼータ電位は電気泳動光散乱光度計 (Laser Electrophoresis Zeta-Potential Analyzer, LEZA 500T, 大塚電子株式会社)を用いて電気泳動光散乱法により測定された。結果を表1に示す。
表1
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ゼータ電位 (mV) 平均粒径 (nm)
-------------------------------------------------------------------------
ガラクトース修飾リポソーム 47.9±0.7 50.1±3.6
(Gal-C4-Chol:DOPE=3:2)
-------------------------------------------------------------------------
ガラクトース修飾リポソーム+siRNA複合体 35.3±1.8 75.3±5.8
(Gal-C4-Chol:DOPE=3:2)
=========================================================================
〔実施例3〕血中滞留性
蛍光標識したsiRNA 0.64 nmolと非標識siRNA 2.56 nmolを混合し、チャージ比が2.3になるようにリポソームを加え、siRNA/リポソーム複合体を調製した。チャージ比とは、リポソームに存在する正電荷を有するアミノ基のモル数/siRNAのリン酸基のモル数で表す。調製した複合体をマウス(ICR、5週令、雄)の尾静脈より投与し、経時的に眼底採血した。血液にエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムをそれぞれ終濃度10 mM、1 %となるように加え、フェノール/クロロホルム処理にてsiRNAを抽出した。抽出液をポリアクリルアミド電気泳動し、蛍光標識siRNAをイメージアナライザー(FMBIOII、HITACHI)で検出した。siRNA単独を静脈内投与した場合、投与後約5分で血中から消失した。これに対し、siRNA/ガラクトース修飾リポソーム複合体を投与した場合、siRNAは、投与後60分まで血中に検出された(図2)。
血中滞留性試験に使用したsiRNAの塩基配列を以下に示す。
21mer siRNA
guu cag acc acu uca gcu u、3'オーバーハング:dTdT (DNA)(配列番号:1)
aag cug aag ugg ucu gaa c、3'オーバーハング:dTdT (DNA)(配列番号:2)
〔実施例4〕組織分布
蛍光標識したsiRNA 3.2 nmolに、チャージ比が2.3になるようにリポソームを加え、siRNA/リポソーム複合体を調製した。配列番号:1および配列番号:2の塩基配列からなるRNAの2本鎖RNA(実施例3と同じ)をsiRNAとして用いた。血中滞留性と同条件で、マウスにsiRNA/リポソーム複合体を投与した。5分、60分に組織を回収し、リン酸緩衝液で洗浄した。その組織中の蛍光標識siRNAをイメージアナライザー(FMBIOII、HITACHI)で検出した。siRNA/ガラクトース修飾リポソーム投与後、5分で肺と肝臓に蓄積し、60分後においても肝臓に多く蓄積していることが判明した(図3(A))。
また、上記条件で投与後、45分の組織を回収し、溶解液を加え、ホモジナイズした。Proteinase Kで処理後、フェノール/クロロホルム処理にてsiRNAを抽出した。抽出液をポリアクリルアミド電気泳動し、蛍光標識siRNAをイメージアナライザー(FMBIOII、HITACHI)で検出した。その結果、Aと同様に、肺と肝臓で分解を受けていないsiRNAが検出された(図3(B))。
〔実施例5〕内在性遺伝子の発現抑制
内在性遺伝子Ubc13に対するsiRNA 5 nmolに、チャージ比が2.3になるようにリポソームを加え、siRNA/リポソーム複合体を調製した。得られた複合体をマウス(ICR、5週令、雄)の静脈内または、門脈内に投与した。48時間後に肺、肝臓、腎臓、脾臓、心臓を回収し、RNeasy Kit (キアゲン)を用いてメーカーのプロトコールに従い、RNAを抽出した。また、コントロールとして、Ubc13の発現に影響を及ぼさないNon-silencing (NS) siRNAを用いて同様の処理を行った。
定量的PCRには、ABI PRISM 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用いた。Ubc13遺伝子および、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子のRT-PCR用プライマーおよび、TaqManプローブを、Applied Biosystemsより購入した。RT-PCR反応は、QuantiTect Probe RT-PCR Kit(Qiagen)を用いて、そのマニュアルに従って行った。Ubc13遺伝子のmRNAの発現量は、GAPDHの発現量を標準として用いて定量比較した。
その結果、門脈内投与ではガラクトース修飾リポソームとガラクトース非修飾リポソームどちらでも肝臓と肺で遺伝発現の抑制効果が観察された。しかしながら、静脈内投与では、ガラクトース修飾リポソームのみが、肺と肝臓で抑制効果が観察され、特に肝臓では抑制効果が高かった(図4)。
ガラクトース修飾リポソームの脂質組成を変更したリポソームおよび、siRNAとガラクトース修飾コレステロール誘導体のチャージ比を変更したときに、静脈内投与後の各臓器でのRNAi効果を調べた。リポソームは、実施例2と同様の操作により調製した。実験に用いたリポソームの脂質組成は次のとおりである。配合比はモル比で示した。
Gal-DOPE;Gal-C4-Chol:DOPE=3:2
Gal-EggPC;Gal-C4-Chol:卵由来のホスファチジールコリン=3:2
Gal-Chol-DOPE;Gal-C4-Chol:コレステロール:DOPE=1:1:1
siRNA溶液に、得られたリポソームをゆっくりと加え、室温で30分間静置して、リポソームsiRNA複合体とした。各リポソームのカチオン性脂質とsiRNAのチャージ比を以下に示す。
Gal-DOPE(2.3);2.3
Gal-DOPE(1.5);1.5
Gal-EggPC(1.5);1.5
Gal-Chol-DOPE(2.3);2.3
それぞれのリポソームとマウス生体内でRNAi効果を示さないsiRNA (NS-siRNA)で調製したsiRNA/リポソーム複合体の投与群におけるそれぞれの臓器での遺伝子発現量を100%として、発現量を算出した。
その結果、いずれの脂質組成やチャージ比においても肝臓で高いRNAi効果を観察された。また、脂質組成やチャージ比を変更することで肝臓選択的にRNAi効果を引き起こすことが可能となった(図5)。
ガラクトース修飾リポソームとガラクトース非修飾リポソームを用いて、静脈投与を行ったときの肝実質細胞と非実質細胞でのRNAi効果を調べた。肝実質細胞と非実質細胞は、コラゲナーゼ灌流法によって分離した。実験に用いたリポソームは次の組成(モル比)に基づいて実施例2と同様の操作により調製した。チャージ比はいずれも2.3とした。
DC/DOPE;3β[N',N',N',-dimethylaminoethane)carbamoyl]cholesterol (DC-Chol):DOPE=3:2
Gal-DOPE;Gal-C4-Chol:DOPE=3:2
グルコース溶液投与群のそれぞれの細胞における遺伝子発現量を100%として、遺伝子発現量を算出した。
その結果、ガラクトース非修飾リポソームでは、非実質細胞でも実質細胞でも同様のRNAi効果が観察されたのに対して、ガラクトース修飾リポソームを用いたときには実質細胞のみでRNAi効果が観察された。このことから、ガラクトース修飾リポソームを用いることにより、siRNAを肝実質細胞へ特異的に送達させることができ、さらにRNAi効果が起こることが実証された(図6)。
内在性遺伝子の発現抑制に使用した、Ubc13遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を以下に示す。
gua cgu uuc aug acc aaa a、3'オーバーハング:dTdT (DNA)(配列番号:3)
uuu ugg uca uga aac gua c、3'オーバーハング:dTdT (DNA)(配列番号:4)
本発明の肝指向性リポソーム組成物によって、オリゴヌクレオチドを血中に投与し、効率的に肝に送達することができる。オリゴヌクレオチドには、siRNA、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、あるいはデコイヌクレオチド等の、遺伝子発現調節作用を有するヌクレオチドが含まれる。したがって本発明の肝指向性リポソーム組成物は、これらのヌクレオチドを利用した遺伝子の発現調節技術に利用することができる。
本発明は、遺伝子の発現抑制による、疾患の治療や予防、あるいは遺伝子の機能解析などに利用することができる。治療や予防に利用した場合には、本発明に基づいて、治療用のRNAを血中に投与し、肝に送達することができる。あるいは、遺伝子の機能解析においては、肝における機能を解析すべき遺伝子の発現を抑制しうるsiRNAを生体中に投与し、発現抑制に伴う表現型の変化を知ることができる。
生体に対して、効果的な遺伝子発現抑制を実現できるので、生体の生理的な変化や、実際の疾患モデル動物に対する影響を知ることができる。あるいは、肝における特定の遺伝子発現の抑制が、他の臓器や全身の機能に与える影響を観察することができる。このような知見は、培養細胞における遺伝子発現抑制では得ることができない。
一般式(1)で示されるガラクトース修飾コレステロール誘導体の構造を示す図である。 ガラクトース結合カチオン性コレステロール誘導体Cholesten-5-yloxy-N-(4-((1-imino-2-D-thiogalactosylethyl)amino)butyl)formamide (Gal-C4-Chol)を含む、ガラクトース修飾リポソームの構造を示す図である。 Gal-C4-CholとDOPE (3:2)で調製したガラクトース修飾リポソームとsiRNAの複合体をマウスに投与したときのマウス体内での血中滞留性を調べた結果を示した写真である。 図2と同様の条件で実験を行った場合の、siRNA/ガラクトース修飾リポソームの組織分布を示す写真である。siRNA/ガラクトース修飾リポソーム投与後、その組織中の蛍光標識siRNAをイメージアナライザー(FMBIOII、HITACHI)で検出した(図3(A))。siRNA/ガラクトース修飾リポソームを投与し、45分後の組織を回収し、組織からsiRNAを抽出して電気泳動にてsiRNAを検出した(図3(B))。 内在性遺伝子Ubc13に対するsiRNAの遺伝子発現の抑制効果 を示す図である。ガラクトース修飾リポソームとガラクトース非修飾リポソームを用いて、静脈内投与と門脈内投与を行ったときの各臓器でのRNAi効果を示した。図4(A)はガラクトース非修飾リポソーム(DC/DOPE)を用いた場合、図4(B)はガラクトース修飾リポソーム(Gal/DOPE)を用いた場合を示す。ガラクトース修飾リポソーム(Gal/DOPE)を用いてNS-siRNAを投与したマウスの各組織における遺伝子発現量を100%とし、Ubc13遺伝子に対するsiRNAを投与したマウスでの各組織での発現量を求めた。 内在性遺伝子Ubc13に対するsiRNAの遺伝子発現の抑制効果を示す図である。ガラクトース修飾リポソームの脂質組成を変更したリポソームおよび、siRNAとガラクトース修飾コレステロール誘導体のチャージ比を変更したときに、静脈内投与後の各臓器でのRNAi効果を調べた。NS-siRNAを投与したマウスの各組織における遺伝子発現量を100%とし、Ubc13遺伝子に対するsiRNAを投与したマウスでの各組織での発現量を求めた。 内在性遺伝子Ubc13に対するsiRNAの遺伝子発現の抑制効果を示す図である。ガラクトース修飾リポソームとガラクトース非修飾リポソームを用いて、静脈投与を行ったときの肝実質細胞と非実質細胞でのRNAi効果を示す。NS-siRNAを投与したときの、実質細胞または非実質細胞における遺伝子発現量を100%とし、Ubc13遺伝子に対するsiRNAを投与したマウスでの発現量を求めた。 N-アセチルガラクトサミン、またはラクトースとリンカーとの結合位置を示す。 IME-thiogalactosideの合成スキームを示す図。 ガラクトース結合カチオン性コレステロール誘導体 (Gal-C4-Chol)の合成スキームを示す図。 ガラクトース修飾コレステロール誘導体(Gal-His-C4-Chol)の合成スキームを示す図。

Claims (18)

  1. 下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームと、オリゴヌクレオチドとを含む複合体を含有する、肝指向性のリポソーム組成物;
    (式中、nは1〜10の整数を示し;
    Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
    Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
    Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
  2. 前記式(1)で表される化合物のGの末端が、ガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンである請求項1に記載の組成物。
  3. 前記Gが、ガラクトース、ラクトース、N-アセチルガラクトサミン、およびマンニノトリオースからなる群から選択されたいずれかの糖である請求項2に記載の組成物。
  4. オリゴヌクレオチドが機能性オリゴヌクレオチドである請求項1に記載のリポソーム組成物。
  5. 機能性オリゴヌクレオチドが、次の(a)-(c)からなる群から選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドである請求項4に記載のリポソーム組成物;
    (a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド、
    (b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド、および
    (c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド。
  6. リポソーム組成物におけるカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドのチャージ比が、0.5〜10である請求項1に記載のリポソーム組成物。
  7. リポソームの平均粒径が20〜200nmである請求項1に記載のリポソーム組成物。
  8. オリゴヌクレオチドが、5〜200塩基の長さを有する請求項1に記載のリポソーム組成物。
  9. オリゴヌクレオチドが、2本鎖RNAである請求項1に記載のリポソーム組成物。
  10. RNAが機能性RNAである請求項9に記載のリポソーム組成物。
  11. 機能性RNAが、肝実質細胞で発現している遺伝子の塩基配列から選択された部分塩基配列を含む2本鎖RNAである請求項10に記載のリポソーム組成物。
  12. 機能性RNAがsiRNA効果を有するRNAである請求項10に記載のリポソーム組成物。
  13. 下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームにオリゴヌクレオチドを複合化する工程と、オリゴヌクレオチドとリポソームの複合体を回収する工程を含む、肝指向性のリポソーム組成物の製造方法。
    (式中、nは1〜10の整数を示し;
    Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
    Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
    Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
  14. リポソーム組成物におけるカチオン性脂質とオリゴヌクレオチドのチャージ比が、0.5〜10である請求項13に記載のリポソーム組成物の製造方法。
  15. 下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームと、オリゴヌクレオチドとの複合体を含有するリポソーム組成物を血液中に投与する工程を含む、オリゴヌクレオチドを肝実質細胞に送達するための方法。
    (式中、nは1〜10の整数を示し;
    Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
    Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
    Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
  16. 血液中に投与する工程が、静脈投与である請求項15に記載の方法。
  17. 次の工程を含む、肝における遺伝子の機能解析方法;
    (1) 下記一般式(1)で示される化合物を構成成分として含有するリポソームと、機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドとの複合体を形成させる工程、
    (式中、nは1〜10の整数を示し;
    Gはアシアログライコプロテインレセプターに結合しうる単糖または多糖鎖を示し;
    Lは、下記式(2)または(3)の構造を有するリンカーを示し;
    Lは、G中の糖の1位の炭素と、-O-または-S-で結合する。)。
    (2)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を非ヒト動物の血中に投与する工程;
    (3)(1)のオリゴヌクレオチド−リポソーム複合体を投与された非ヒト動物の表現型を観察し対照と比較する工程;および
    (4)対照と比較して表現型の相違が検出されたときに、前記遺伝子の肝における機能抑制に起因する表現型が同定される工程。
  18. 機能解析の対象遺伝子の発現および活性のいずれか、または両方を調節するオリゴヌクレオチドが、次の(a)-(c)からなる群から選択される少なくとも一つのオリゴヌクレオチドである、請求項17に記載の肝における遺伝子の機能解析方法;
    (a) RNA転写ユニットを含むオリゴヌクレオチド、
    (b) 肝実質細胞で発現している遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチド、および
    (c) 肝実質細胞で発現している蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド。
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