JP2006283431A - H形鉄骨梁の耐火被覆構造 - Google Patents

H形鉄骨梁の耐火被覆構造 Download PDF

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長之 松石
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Abstract

【課題】 火災時における梁の伸び出し量を大幅に低減することにより柱の部材角を抑制することで鉄骨構造体の層崩壊を防ぐ。
【解決手段】
鉄骨構造体2を構成する鉄骨柱22が両側に接合されるH形鉄骨梁22の耐火被覆構造において、H形鉄骨梁11は、略鉛直に向けられたウェブ12の上下端に上部フランジ13と下部フランジ14がそれぞれ形成され、上部フランジ13は、上記H形鉄骨梁11の軸線方向に沿って耐火被覆材2が被覆されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、鉄骨構造体を構成する鉄骨柱が両側に接合されるH形鉄骨梁の耐火被覆構造に関するものである。
従来において、集合住宅やビル等の鉄骨構造体を構成する梁や柱には、鉄骨が用いられている。これら鉄骨梁や鉄骨柱は、国土交通省告示2999号や「JIS A 1304」等に基づいて、耐火性能基準が定められている。このため、かかる基準を満たすべく、鉄骨梁や鉄骨柱の表面に耐火性の優れた耐火被覆材を被覆する方法が従来において案出されている。
この耐火被覆材としては、例えば特許文献1に示すように、水ガラスや水硬性セメントにバーミュライト、ロックウール等の無機成分を混合した耐火被覆材を鉄骨梁や鉄骨柱に吹き付けることにより、これらの耐火性能を向上させるものが知られている。
また、これら構造物を構成する鉄骨梁の、上部フランジと下部フランジとウェブとによって囲まれる空間に耐火被覆材を充填する耐火被覆構造も従来において案出されている(例えば、特許文献2参照。)。この耐火被覆構造によれば、鉄骨梁に伝わる熱を抑えて温度上昇を抑えることができる。また、鉄骨梁の実質的な梁せいを増加させることなく、しかも耐火被覆材を厚く吹き付ける必要もないため、耐火被覆材自体の脱落の可能性を低減させることも可能となる。
また鉄骨材の断面内における温度上昇率の違いに着目し、かかる温度上昇率に応じて耐火被覆材の被覆厚を調整することで鉄骨材に生じる曲げ変形等を押さえ込む耐火被覆方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、上記従来の開示技術では、鉄骨梁全周に亘って耐火被覆処理を施すことにより、あくまで鉄骨梁そのものの熱膨張を抑えることを念頭に置いている。このため、大量の耐火被覆材が必要となるところ、かかる耐火被覆処理を現場で実行することになれば作業効率が著しく低下し、工期の延長の原因ともなる。また、梁の下部においてボードを配設することになるため、室内空間が狭くなり、建物の外観から生じる美観を損なう原因ともなりえる。
このため、構造体に負荷する応力は一様でないことに着目し、鉄骨梁全面に耐火被覆することなく、部分的な耐火被覆にとどめることにより、作業効率の改善を図るとともに、コストダウンも図ることを目的とした耐火梁も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
図17は、この特許文献4に開示されている耐火梁の一例を示している。この耐火梁100は、一方のフランジ101bのフランジ面に構造物103の平面部が取り付けられるH形断面の鉄骨梁で構成されている。この耐火梁100は、中央部においてH形断面の両フランジ101b、101cのエッジ面を残して全て耐火被覆材102で耐火被覆されている。
このため、耐火梁100としてのH形鋼は、部分的な耐火被覆状態となり、吹付け作業が困難となる箇所については耐火被覆量が削減される。このため、耐火被覆面積の減少に伴うコストダウンが図れ、作業効率を改善することが可能となる。
ちなみに、この特許文献4における開示技術では、この耐火被覆を省略する箇所について、梁に荷重が作用する場合における許容応力度比をチェックすることにより決定している。
特開平6−32664号公報 特開平11−117423号公報 特開2001−214553号公報 特開平8−144393号公報 特開平07−018758号公報 特開平10−245889号公報
上記従来の特許文献4における開示技術では、相対的な耐火被覆量を軽減させることができる一方、耐火梁100の各箇所のうち耐火被覆する領域を細かく選択し、さらに選択した領域に対して耐火被覆材を部分的に吹付けまたは取付けていくことになるため、現実のところ作業効率の改善を図ることができず、工期の短縮化を図ることができないという問題点があった。
また、鉄骨構造体が火災を受けた場合には、火災階の鉄骨柱と梁が熱せられ、鋼材強度が低下する現象が生じる。しかし、図18に示すように、鉄骨梁121は、鋼材強度が低下して床荷重を支えきれなくなったとしても、その上部に取り付けられる床123が代わりに荷重を負担して、鉄骨梁121も床123に吊るされた形になるため、建物崩壊を回避することができる。これに対して、鉄骨柱122は、鉄骨梁121が熱膨張して伸び出すことにより大きな部材角が生じる。即ち、鉄骨柱122には、鉄骨梁121の伸び出しに伴う曲げモーメントが発生することに加え、鉄骨構造体の自重が負荷されることになるが、この双方の力に耐え得るように設計されていない。このため、鉄骨柱122が最初に降伏する結果、鉄骨構造体の層崩壊に至ることになる。このことから、鉄骨柱122の部材角を低減させること、すなわち鉄骨梁121の伸び出しを抑えることに着目する必要があることが分かる。平成12年建設省告示第1433号として告示された「耐火性能検証法」では、柱の部材角δ/h(ここで、δは、梁の伸び出し量の総和、hは階の高さ)を1/50以下にするため、火災区画の床面積Sの規模(火災区画の加熱梁の総延長L≒√Sに応じた温度制限を設けている。
また、梁の伸び出し量を低減できる構造としては、例えば特許文献5において、梁継手に形状記憶合金を用いることにより、梁の伸び出しをキャンセルすることができる熱変形吸収構造が開示されている。
また、特許文献6において、ブレース構面骨組の梁を長期曲げモーメントが小さくなる位置で分割し、この分割梁の分割側の端部を水平方向に摺動自在に接続するスライド継手を設けて梁の伸び出し量を低減させる構造が開示されている。
しかしながら、特許文献5記載の開示技術では、数十mm以上に達する梁の伸び出し量を吸収させることは困難であり、また梁上部の床スラブに拘束される場合では、熱変形吸収効果が十分に発揮されない等の問題点があった。
また、特許文献6記載の開示技術では、対象がブレース構面骨組及び分割梁構造に限定され、かつ特殊なスライド継手の採用によるコスト高に加えて、梁上部の床スラブに拘束される場合には、スライド継手の効果が十分に発揮されないという問題点があった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、火災時における梁の伸び出し量を大幅に低減することにより柱の部材角を最終的に1/50以下に抑制することで鉄骨構造体の層崩壊を防ぐことを目的とした耐火被覆構造を提供することを目的とし、特に、かかる構造を施工する際に作業効率を極力向上させつつ工期を短縮化可能なH形鉄骨梁の耐火被覆構造を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、略鉛直に向けられたウェブの上下端に上部フランジと下部フランジがそれぞれ形成されたH形鉄骨梁における上部フランジに耐火被覆材を被覆させたH形鉄骨梁の耐火被覆構造を発明した。
即ち、本発明を適用したH形鉄骨梁の耐火被覆構造は、鉄骨構造体を構成する鉄骨柱が両側に接合されるH形鉄骨梁の耐火被覆構造において、H形鉄骨梁は、略鉛直に向けられたウェブの上下端に上部フランジと下部フランジがそれぞれ形成され、上部フランジは、上記H形鉄骨梁の軸線方向に沿って耐火被覆材が被覆されている。
ただし、H形鉄骨梁に用いる鋼材は、一般的な建築構造物に用いられる鋼材では高温時の強度が低いため、高温強度の高い耐火鋼を用いることが望ましい。ここに、耐火鋼と呼称される鋼材は、600℃以上での高温強度を有する鋼材であり、例えば、特開平2−77523号公報に記載の発明では、600℃での常温降伏強度の2/3以上(約70%)の高温強度を有する耐火鋼が提案されている。その他の耐火鋼に関する発明の例でも、600℃での降伏強度を常温降伏強度の2/3以上とすることが一般的となっている。
本発明を適用したH形鉄骨梁の耐火被覆構造では、H形鉄骨梁の軸線方向に沿って上部フランジのみに耐火被覆材で被覆することにより、火災時において上部フランジと下部フランジとの間で温度勾配を大きくすることが可能となる。その結果、H形鉄骨梁が下に凸となるように変形させることができ、軸線方向への伸び出し量を抑えることができ、ひいてはその両端において接合される鉄骨柱の部材角を抑制することが可能となる。このため、鉄骨柱は、その部材角を抑制することができることで曲げモーメントを低減することができるため、鉄骨柱自身の降伏を遅延または回避することができ、ひいては鉄骨構造体の層崩壊そのものを遅延させ、また防止することもでき、構造物全体の耐火性をより向上させることも可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、鉄骨構造体を構成する鉄骨柱が両側に接合されるH形鉄骨梁の耐火被覆構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した耐火被覆構造と、これが形成される鉄骨構造体の一部を示す斜視図である。
鉄骨構造体1は、例えば、集合住宅やビル等の構造物に加えて、立体駐車場等のあらゆる鉄骨構造を含むものである。この鉄骨構造体1は、図1に示すように所定の間隔をおいて立ち上げられてなる鉄骨柱21と、この鉄骨柱21間を架設するように軸線方向が水平へ向けて配設されてなるH形鉄骨梁11とを組み合わせることにより構成される。またこのH形鉄骨梁11の上部フランジには、その軸線方向に沿って耐火被覆材2が被覆されている。この図1に示す例では、H形鉄骨梁11の軸全長に亘って耐火被覆材2が被覆される場合を示しているが、かかる場合に限定されるものではなく、一部において耐火被覆材2が形成されていない箇所が存在していてもよい。
図2(a)は、この耐火被覆材2が吹付けまたは取付けられたH形鉄骨梁11の断面構成図を示している。H形鉄骨梁11は、例えば耐火鋼等からなり、略鉛直に向けられたウェブ12の上下端に上部フランジ13と下部フランジ14がそれぞれ形成されている。この上部フランジ13における上面13aには、床5が取り付けられることになる。また、このH形鉄骨梁11の上部フランジ13には、当該H形鉄骨梁11の上部フランジ13における下面13bとフランジ側面13cのみを覆うようにして吹付けまたは取付けられている。
その結果、ウェブ12並びに下部フランジ14に関しては、何ら耐火被覆材2で被覆されていない状態とされており、いわば鉄骨がむき出しの状態で構成されることになる。ちなみに、この耐火被覆材2は、例えば、水ガラスや水硬性セメントにバーミュライト、ロックウール等の無機成分を混合した材料で構成される。以下の解析例では、この耐火被覆材2の比熱を0.29〜0.31[kcal/kg℃]である場合を例にあげて説明をする。
ちなみに、以下の説明では、このH形鉄骨梁2における上部フランジ13並びに下部フランジ14の板厚は18mm、ウェブの12の板厚は11mm、また、上部フランジ13並びに下部フランジ14の幅は300mm、ウェブ12の高さは440mmで構成され、さらにH形鉄骨梁2における上部フランジ13の上面13aに取り付けられている床5の板厚は180mmであるケースを例にとり、これらH形鉄骨梁2に対して厚さ25mmの耐火被覆材2が被覆されている場合を考える。
ここで鉄骨構造体1において火災が発生した結果、このH形鉄骨梁2に対してもその火災に伴う熱が伝わると、その5分後においてH形鉄骨梁2内は、図2(b)に示すような温度分布に近似してくる。上部フランジ13には耐火被覆材2が被覆されているため、火災に伴う熱が伝わりにくくなっているのに対して、下部フランジ14には何ら耐火被覆材2が被覆されていないため、火災に伴う熱が直接的に伝わることになる。その結果、上部フランジ13と下部フランジ14との間における温度勾配が大きくなる。
このように上部フランジ13と下部フランジ14との間で温度勾配を大きくすると、下部フランジ14は、温度上昇に伴う熱膨張により変形が生じることになるが、上部フランジ13に関しては、温度が上昇しないことから熱膨張が生じることはない。その結果、図3のH形鉄骨梁の側面図に示すように下部フランジ14は熱膨張によりB方向に伸び出す一方、上部フランジ13によりその変形が拘束されることから、H形鉄骨梁2は、図中C方向に曲げ変形することになる。
ここで、このH形鉄骨梁2の軸方向全長に亘って耐火被覆材2が形成されていれば、かかる現象もH形鉄骨梁2の軸方向全長に亘って発生することになる。その結果、図4に示すようにH形鉄骨梁2の軸方向全長に亘って曲げ変形することになり、H形鉄骨梁2が下方向に向かって凸となるように撓むことになる。その結果、H形鉄骨梁2の両端は外側へ向かって伸び出すよりもむしろ鉛直方向へ変位することになる結果、H形鉄骨梁2の外側への伸び出し量dは、相対的に小さくなる。また、このH形鉄骨梁2の外側への伸び出し量dが抑えられることから、このH形鉄骨梁2の両端に接合された鉄骨柱21の部材角(=d/H、Hは階の高さ)を最終的に1/50以下に抑制することも可能となる。
このように、本発明を適用した耐火被覆構造では、H形鉄骨梁2の軸線方向に沿って上部フランジ13のみに耐火被覆材2で被覆することにより、火災時において上部フランジ13と下部フランジ14との間で温度勾配を大きくすることが可能となる。その結果、H形鉄骨梁2が下に凸となるように変形させることができ、軸線方向への伸び出し量dを抑えることができ、ひいてはその両端において接合される鉄骨柱21の部材角を抑制することが可能となる。このため、鉄骨柱21は、その部材角を抑制することができることで曲げモーメントを低減することができるため、鉄骨柱21自身の降伏を遅延または回避することができ、ひいては鉄骨構造体1の層崩壊そのものを遅延させ、また防止することもでき、構造物全体の耐火性をより向上させることも可能となる。
図5は、本発明を適用した耐火被覆構造の他の例を示している。この例において、耐火被覆材2は、H形鉄骨梁の上部フランジ13における下面13bのみを覆うようにして吹付けまたは取付けられている。従って、耐火被覆材2は、フランジ側面13c、下部フランジ14、ウェブ12に関しては、被覆されていない状態とされており、いわば鉄骨がむき出しの状態で構成されることになる。フランジ側面13について耐火被覆材2による被覆を省略しても、上部フランジ13と下部フランジ14との間で温度勾配を大きくすることができ、上述と同様の効果を得ることが可能となる。
以下、上述の如き本発明の作用を熱応力変形解析を利用して検証した結果について説明をする。この解析モデルでは、例えば図6に示すように、4本の鉄骨柱21をH形鉄骨梁11で架設することにより構成される区画31を3×4×2層(1スパンの梁長9m,1層の柱高さ4m)に亘って配置し、各区画31の上部には床を設けた設定としている。このとき、床に対して床荷重0.7t/m2が負荷されていることを条件とし、さらに1層目に位置する区画31の図中点線で示される火災発生領域について火災が発生したものと仮定する。また鉄骨柱21には全周に亘って耐火被覆材が厚さ25mmに亘って形成されているものとする。
図7は、この解析モデルで発生させる火災の標準火災温度曲線を示している。一般的に火災温度の気体による熱伝導と燃焼発熱物からの輻射熱がH形鉄骨梁11に伝わってくるが、この火災温度は火災室内に存在する可燃物量,火災室の窓の位置と大きさ,火災が発生してからの時間等によって異なってくる。以下の解析例では、この図7に示す標準火災温度曲線に基づく火災性状を仮定し、例えば、火災発生10分後では火災温度はおよそ695℃になり、耐火被覆材2に対して695℃の気体による熱伝導と輻射により入熱される場合を考える。そして、この標準火災温度曲線に基づいて火災発生領域の温度を徐々に上昇させていった場合における梁の伸び出し量、ウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度を算出していく。
このような解析モデルに基づき本発明を適用した耐火被覆構造の耐火性能を解析する前に、先ず参考のため、H形鉄骨梁2に何ら耐火被覆を施していない参考例について解析を行う。
図8は、この無耐火被覆状態の参考例に基づいて解析を行い、ウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度の経時的な変化傾向を算出した結果を示している。この図8に示すように時間の経過につれて図7に基づく標準火災温度曲線に基づきH形鉄骨梁2に熱が伝わり、全体的に温度が上昇していくことになる。ウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度上昇は、各板の周長比A/Hs(ここで、Aは断面積,Hsは加熱を受ける周長)の値によって異なり、周長比が小さい下部フランジ14の方が上部フランジ13よりも温度が高くなる。この参考例では、火災発生後10分間経過時において、上部フランジ13と下部フランジ14の温度差は290℃に達することが示されている。
また図9は、鉄骨柱21の柱頭部における水平変位量(H形鉄骨梁2の伸び出し量)の経時的な変化を示している。上部フランジ13と下部フランジ14との温度勾配があまり大きくないため、温度上昇に伴ってH形鉄骨梁2は、水平方向に熱膨張していくことになる。その結果、H形鉄骨梁2の水平方向への伸び出し量が相対的に大きくなり、鉄骨梁21の部材角もこれに応じて大きくなってしまう。そして、火災発生後10分間経過時において、H形鉄骨梁2の水平方向への伸び出し量は、7.4cmに達し、火災発生のおよそ11分後(H形鉄骨梁2の下フランジの鋼材温度がおよそ620℃)において、H形鉄骨梁2の水平方向への伸び出し量は、柱部材角が1/50となる8cmに達し、構造物が崩壊していないものの柱部材角≧1/50という規定を満足できなくなる状態であることが示されている。
ここで、上部フランジ13と下部フランジ14の温度勾配が、H形鉄骨梁2の伸び出し量に与える影響を考察するために、上部フランジ13と下部フランジ14の温度勾配を0℃にした、換言すればH形鉄骨梁2内部の温度を一様にした場合について、上述の如き解析を行った。
その結果、図10に示すようにウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度は平均化されて徐々に上昇していくことになる。これに対して図11から、H形鉄骨梁2の伸び出し量は、参考例と比較して大きくなっており、火災発生のおよそ10分後(H形鉄骨梁2の鋼材温度がおよそ400℃)においてH形鉄骨梁2の水平方向への伸び出し量は、柱部材角が1/50となる8cmに達し、構造物が崩壊していないものの柱部材角≧1/50という規定を満足できなくなる状態であることが示されている。
ちなみに参考例では、上部フランジ13、下部フランジ14ともに耐火被覆は施されていないものの火災発生後10分経過時においてなお290℃の温度差が生じ、これが上部フランジ13、下部フランジ14の熱膨張の相対的な割合について差異を生み出し、伸び出し量全体が若干抑えられていた。これに対して、上部フランジ13、下部フランジ14の温度勾配をなくすことにより、温度上昇に応じて両フランジ13は水平方向へ向けて一様に熱膨張してゆき、伸び出し量が抑制されることもなくなる。即ち、上部フランジ13と下部フランジ14の温度勾配を大きくすることにより、H形鉄骨梁12の伸び出し量を抑えることがで、層崩壊を導きにくくなることについて、理論的な裏付けを持たせることができる。
次に、本発明を適用した耐火被覆構造を上記解析モデルに当てはめて検討した結果について説明をする。
先ず、図2に示すような上部フランジ13における下面13bとフランジ側面13cに耐火被覆材2で被覆した場合について、解析を行った。ちなみに、この解析では上部フランジ13に被覆する耐火被覆材2の厚さを25mmとしている。
かかる解析の結果、ウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度の経時的な変化傾向は、上部フランジ13には耐火被覆材2が吹付けまたは取付けられていることから、上部フランジ13の温度はウェブ12からの熱伝導のみにより上昇するため、図12に示すようにこの上部フランジ13と下部フランジ14との温度勾配は、参考例と比較して大きくなることが分かる。この図12に示す結果から、火災発生後10分間経過時において、上部フランジ13と下部フランジ14の温度差は410℃に達することが示されており、上部フランジ13をむき出しのままで解析した参考例と比較して温度差がさらに120℃も拡大させることができることが示されている。
次に、図5に示すように上部フランジ13における下面13bのみに耐火被覆材2で被覆した場合について、解析を行った。ちなみに、この解析においても上部フランジ13に被覆する耐火被覆材2の厚さを25mmとしている。
かかる解析の結果、ウェブ12、上部フランジ13並びに下部フランジ14の温度の経時的な変化傾向は、かかる上部フランジ13に施した耐火被覆により、図13に示すように上部フランジ13と下部フランジ14との温度勾配は、参考例と比較して大きくなることが分かる。この図13に示す結果から、火災発生後10分間経過時において、上部フランジ13と下部フランジ14の温度差は400℃に達することが示されており、上部フランジ13をむき出しのままで解析した参考例と比較して温度差をさらに110℃も拡大させることができることが示されている。
また図14は、上部フランジ13に耐火被覆材2を吹付けまたは取付けられた場合について、鉄骨柱21の柱頭部における水平変位量(H形鉄骨梁2の伸び出し量)の経時的な変化を参考例と比較した結果を示している。上部フランジ13に耐火被覆が施された本発明は、何ら耐火被覆が施されていない参考例と比較して伸び出し量が小さく、時間が経過するにつれて、その伸び出し量の格差が大きくなることが示されている。
例えば、上部フランジ13における下面13bとフランジ側面13cに耐火被覆材2で被覆した場合には、火災発生後10分経過時において、鉄骨柱21の柱頭部の水平変位量(鉄骨梁の伸び出し量)は、5.4cmまで抑えられる。これは、上記参考例の伸び出し量の74%まで抑え込むことができたことを意味している。また、構造物崩壊時まで柱頭の水平変位量は、柱の部材角が1/50となる8cm未満に抑えることが可能となることを示しており、鋼材が保有する耐力を最大限に発揮することができていると言える。
同様に、上部フランジ13における下面13bのみに耐火被覆材2で被覆した場合には、火災発生後10分経過時において、鉄骨柱21の柱頭部の水平変位量(鉄骨梁の伸び出し量)は、5.7cmまで抑えられる。これは、上記参考例の伸び出し量の78%まで抑え込むことができたことを意味している。また、この場合も構造物崩壊時まで柱頭の水平変位量は、柱の部材角が1/50となる8cm未満に抑えることが可能となることを示しており、鋼材が保有する耐力を最大限に発揮することができていると言える。
これらの結果は、上部フランジ13に耐火被覆が施されている関係上、上部フランジ13と下部フランジ14との温度勾配が大きくなり、温度上昇に伴ってH形鉄骨梁2は、下に凸になるように変形する結果、水平方向への伸び出し量が相対的に小さくなる上記メカニズムを裏付けるものといえる。
このように、本発明を適用した耐火被覆構造では、火災時においてH形鉄骨梁11の上下方向に温度差を発生させることにより、H形鉄骨梁11を下方に湾曲させる。H形鉄骨梁11端部は、これに接合される鉄骨梁21により拘束されることから、ここに大きな曲げモーメントを発生させることにより、早期に塑性ヒンジを形成させる。これにより、H形鉄骨梁11の伸び出しはそれまでの自由膨張に比べ小さくなる。以上のメカニズムに着目し、あくまで鉄骨柱21の部材角を低減させる点と、上部フランジ13と下部フランジ14との間で火災時において温度勾配を大きくする点を念頭において上記構成を採用している。
このため、本発明では、上記趣旨を遵守していれば足りるものであるため、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明では、上部フランジ13と下部フランジ14との間で温度勾配を大きくするように耐火被覆材2をH形鉄骨梁11に被覆するものであればいかなる形態であってもよい。
図15は、本発明を適用した耐火被覆構造の変形例である。この例では、上部フランジ13の下面13bやフランジ側面13cに加えて、ウェブ12側面の上部フランジ側の一部を耐火被覆している。これによっても上述と同様に上下フランジ間で温度勾配を作り出すことが可能となることから、本発明所期の効果を得ることが可能となる。
図16は、本発明を適用した耐火被覆構造の変形例である。この例では、上部フランジ13の上面13aに構造物5が取り付けられないケース、例えば鉄骨梁の上部の床が合成スラブでなくデッキプレートの波方向が鉄骨梁の軸方向と直交しているとき等を想定している。かかる場合には、上部フランジの上面13aにも耐火被覆材2を被覆するようにしてもよい。これによっても、上述と同様に上下フランジ間で温度勾配を作り出すことが可能となることから、本発明所期の効果を得ることが可能となる。
なお、本発明では、上部フランジ13の下面13bやフランジ側面13cのみに対して耐火被覆材2を全長に亘って被覆することで作業を完了させることができる。このため、耐火梁の各箇所のうち耐火被覆する領域を細かく選択する必要もなく、さらに選択した領域に対して耐火被覆材を細かく部分的に吹付けまたは取付ける必要もなくなることから、作業効率を大幅に改善することができ、工期を短縮化させることも可能となる。耐火被覆材2をH形鉄骨梁2全周に亘って形成される場合と比較して、耐火被覆量を大幅に減らすことも可能となることから、材料費の節減にも寄与することは勿論である。
本発明を適用した耐火被覆構造と、これが形成される鉄骨構造体の一部を示す斜視図である。 耐火被覆材が吹付けまたは取付けられたH形鉄骨梁の断面構成図である。 H形鉄骨梁の熱膨張に伴う曲げ変形について説明するための図である。 H形鉄骨梁の軸方向全長に亘って下方向に凸となるように撓んだ状態について説明するための図である。 本発明を適用した耐火被覆構造の他の例について説明するための図である。 本発明の作用について検討するための解析モデルを説明するための図である。 標準火災温度曲線について示す図である。 参考例におけるウェブ、フランジの温度の経時的な変化傾向を示す図である。 参考例におけるH形鉄骨梁の伸び出し量について示す図である。 フランジ間の温度勾配を0℃にした場合における解析結果を示す図である。 フランジ間の温度勾配を0℃にした場合における解析結果を示す他の図である。 上部フランジにおける下面とフランジ側面に耐火被覆材で被覆した場合について、温度の経時的な変化傾向を示す図である。 上部フランジにおける下面のみに耐火被覆材で被覆した場合について、温度の経時的な変化傾向を示す図である。 本発明におけるH形鉄骨梁の伸び出し量について示す図である。 本発明を適用した耐火被覆構造の変形例について説明するための図である。 本発明を適用した耐火被覆構造の変形例について説明するための図である。 特許文献4に開示されている耐火梁の一例を示す図である。 従来技術の問題点について説明するための図である。
符号の説明
1 鉄骨構造体
2 耐火被覆材
5 床
11 H形鉄骨梁
12 ウェブ
13 上部フランジ
14 下部フランジ
21 鉄骨柱

Claims (3)

  1. 鉄骨構造体を構成する鉄骨柱が両側に接合されるH形鉄骨梁の耐火被覆構造において、
    上記H形鉄骨梁は、略鉛直に向けられたウェブの上下端に上部フランジと下部フランジがそれぞれ形成され、
    上記上部フランジは、上記H形鉄骨梁の軸線方向に沿って耐火被覆材が被覆されていること
    を特徴とするH形鉄骨梁の耐火被覆構造。
  2. 上記上部フランジにおける下面、又は上記上部フランジにおける下面及び側面に、上記耐火被覆材が被覆されていること
    を特徴とする請求項1記載のH形鉄骨梁の耐火被覆構造。
  3. 上記H形鉄骨梁は、耐火鋼であること
    を特徴とする請求項1又は2記載のH形鉄骨梁の耐火被覆構造。
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