以下、添付図面に基づき、本発明における介護通報装置の一実施例を説明する。図1および図2は、本実施例で用いる介護通報装置1単体の外観構成を示したものであり、2は装置の本体外郭をなす縦長状の外装体、3は表面に透明なタッチパネルを配設した表示手段としてのLCD(液晶ディスプレイ)であり、このLCD3は外装体2の正面に形成した窓穴4に臨んで設けられている。前記外装体2の正面上部には、居住者の出入りする空間(例えば居間)に向けられた撮影手段としての広角カメラ5が一体的に配置される。この広角カメラ5は低照度でも居間内の動きを捕えられる機能を有し、居間の様々な方向(上下左右)を撮影できるように、外装体2の内部に設けられた旋回台6の上に載置されている。
7は音声入力手段としての集音マイクであり、居住者を含む居間内の音を電気信号に変換する。なお、ここに示す集音マイク7は、ケーブル8により外装体2と離れた位置に設けられ、高音量でもハウリングしない構造となっているが、外装体2と一体的に配置してもよい。前記広角カメラ5からの撮影情報と、集音マイク7からの音声情報は、後述する制御部12に取込まれてリアルタイムに処理されようになっている。9は音声出力手段としてのスピーカーであって、これは外装体2の下部に配置され、居住者に対し必要に応じて様々なメッセージを出力するものである。
外装体2の内部には、電源部11と制御部12がそれぞれ配置される。電源部11は例えばAC100Vなどの商用交流電圧を直流電圧に変換して、LCD3や、広角カメラ5や、制御部12などの各部に供給するものである。また、制御手段に相当する制御部12はLCD3の後方にあって、広角カメラ5からの撮影情報と、集音マイク7からの音声情報を常時取込んで監視するものである。なお、制御部12の機能構成については、後ほど詳しく説明する。
また、15は居住者である老人が携帯する例えば首掛け式のペンダントである。このペンダント15は外装体2と非連結状態に設けられ、当該ペンダント15に設けた緊急ボタン16を操作すると、無線による緊急呼出し信号が外装体2に向けて送信されるようになっている。
図3は、上記介護通報装置1を、通信手段であるインターネット網18に接続する端末として用いる場合の構成を示したものである。ここにある介護システムは、一乃至複数の介護通報装置1と、センター装置であるセンターサーバ21とをインターネット網18で相互に接続することで構成され、必要に応じて、監視者またはヘルパーの自宅などに設置された一乃至複数の通報先端末22がこれに付加される。介護通報装置1は、後述のように制御部12からインターネット網18を介して通報信号や警報信号を出力するが、こうした通報信号や警報信号の通報先となるのが、センターサーバ21や通報先端末22である。
センターサーバ21は、いわゆるパーソナルコンピュータの形態を有し、周知のように操作手段であるキーボード24やマウス25と、表示手段であるTVモニタ26と、インターネット網18に接続可能なモデムを内蔵する制御本体27とにより構成される。勿論、別な形態でセンター装置を構成しても構わない。また、遠隔地にある介護通報装置1と双方向通信を可能にする通信手段としては、インターネット網18以外のものを使用してもよい。
通報先端末22は、本体外郭をなす縦長状の外装体32に、透明なタッチパネルを表面に配設した表示手段としてのLCD33と、旋回可能な撮影手段としての広角カメラ35と、音声出力手段であるスピーカー39を備えている。これらの各部は、介護通報装置1のLCD3,広角カメラ5,およびスピーカー9と同じ部品を使用している。但し、ここでの通報先端末22は、介護通報装置1との画像および音声による通話(テレビ電話)を行なうために設けられているので、介護通報装置1のような集音マイク7ではなく、通話機能を有する電話機37が代わりに設置されている。
次に、被観察者である老人の生活空間に置かれる介護通報装置1の電気的な構成について、図4を参照しながら説明する。同図において、41は前記制御部12に設けられた処理装置で、この処理装置41にはハードウェア的な構成として、広角カメラ5や前記インターネット網18につながるLAN(Local Area Network)40を通じて送られる画像情報を処理する画像処理部42と、集音マイク7やLAN40を通じて送られてくる音声信号を処理する音声処理部43と、広角カメラ5からの画像情報を、通報先である通報先端末22にLAN40およびインターネット網18を通じて画像データに変換して出力する画像出力部44と、スピーカー9に適切な音量で音声データを出力する音声制御部45と、広角カメラ5を載置する旋回台6に動作信号を供給して広角カメラ5を任意の方向に向けるカメラ制御部46と、必要に応じてLCD3に適切な画像データを出力するLCD制御部47と、処理装置41を所定の手順で動作させるためのプログラムや、居住者の生活行動パターンなどを記憶する記憶装置48と、通報先端末22との通話を確立するための通話制御部49と、符号化/復号化手段を含むLAN制御部50とにより構成される。また、処理装置41には、LCD3の表面にあるタッチパネル52と、前記ワイヤレス式のペンダント15からの緊急呼出し信号を受信するアンテナ53を備えた無線受信部54がそれぞれ接続され、タッチパネル52からの操作信号と、無線受信部54からの緊急呼出し信号を受け付けるようになっている。
図5は、前記処理装置41の特に機能的な構成を示したものである。61はこの老人が監視対象となる居間に存在する時間帯や、特に夜間において老人が居間で照明を点消灯する時間帯などの老人の生活行動パターンを記憶するパターン記憶部である。このパターン記憶部61は、前記記憶装置48のデータ領域に対応して設けられており、予めタッチパネル52などからの入力により、個々の生活行動パターンが記憶格納されている。62は、広角カメラ5から得られる撮影情報を解析して、人間の存在および照明状態を刻々と分析し、この分析結果が記憶手段であるパターン記憶部61に記憶した生活行動パターンと大きく異なる場合に、インターネット網18を通じて通報先であるセンターサーバ21に通報信号を出力する監視分析手段としてのリズム監視手段である。このリズム監視手段62は、広角カメラ5からの撮影情報だけでなく、集音マイク7から出力される音声情報をも解析し、例えばパターン記憶部61に記憶される生活行動パターンでは、老人が居間に存在しない時間帯であるにも拘らず、通常よりも大きな音声レベルや特異な周波数帯の音声情報(例えば、叫び声やガラスの割れる音など)が集音マイク7から出力された場合は、同様に通報信号を出力する機能を有している。
63は呼出し手段であり、これはタッチパネル52に設けた呼出し用の操作部に触れると動作し、インターネット網18を通じてセンターサーバ21に呼出し信号を出力すると共に、センターサーバ21と接続され登録されている専任担任者若しくはヘルパー宅の通報先端末22と、双方向の画像/音声通話を可能にするものである。このときの集音マイク7の感度や、スピーカー9の出力音量は予め記憶装置48に登録したレベルに設定される。但し、こうした集音マイク7の感度や、スピーカー9の出力音量の設定レベルは、相手の状況に応じてセンターサーバ21側で自由に変更できるようになっている。
64は緊急呼出し手段であり、これは前記ペンダント15に設けた緊急ボタン16を押動操作したり、タッチパネル52に設けた緊急呼出し用の操作部に触れると動作し、インターネット網18を通じて通報先であるセンターサーバ21に緊急呼出し信号が出力される。この場合にセンターサーバ21は、他の複数の介護通報装置1から呼出し信号が重複して送信されていても、TVモニタ26などに最優先で告知を行なう機能を有する。これによりセンターサーバ21側では、緊急時の呼び出しに最優先で対応することが可能になる。また、緊急呼出し時には、集音マイク7の感度や、スピーカー9の出力音量は何れも最大レベルに設定される。センターサーバ21は緊急呼出し信号の発信元(老人)を特定して、自身のデータベースに記憶される登録者情報から、緊急連絡先や医者などの患者情報を取得し、これをTVモニタ26に表示する。
65は、例えばケアセンターなどへの宿泊などの長期外出時に、タッチパネル52に設けた外出用の操作部に触れると、この外出用の操作部からの操作信号を受けて、リズム監視手段62による生活行動パターンの監視動作を停止させ、操作信号を受け付けてから一定時間が経過した後で、広角カメラ5からの撮影情報により画像の部分的な変化を検知した場合や、不在時にはありえない大きな音声レベルや特異な周波数帯の音声情報が集音マイク7から出力された場合に、インターネット網18を介して通報先であるセンターサーバ21に警報信号を出力する警報出力手段としての外出監視手段である。なお、操作信号を受け付けてから一定時間が経過した後で、広角カメラ5や集音マイク7からの監視を行なう理由は、直ぐに監視を開始すると、居住者自身を感知して警報信号が出力されるからで、このようにすることで、誤検知なく確実に警報信号を出力できる。
66は、予め記憶装置48に設定した時間(例えば、毎日午前8:00)になると、LCD3に人物が写り、スピーカー9からの音声メッセージ(例えば「おはようございます。お元気ですか? 確認ボタンを押してください。」など)で、タッチパネル52の安否確認用の操作部に入力を促すと共に、一定時間が経過しても安否確認用の操作部から操作信号が出力されない場合には、インターネット網18を介して通報先であるセンターサーバ21に安否不明信号を出力する定刻確認手段66である。
67は、センターサーバ21に予め登録してある定形文(例えば、「元気です」,「用事があります家に来て下さい」,「電話下さい」,など)を指定して、同じくセンターサーバ21に予め登録してある家族,親戚や知人などの連絡先にワンタッチで送信するためのメール送信手段である。このメール送信手段67は、他に食事や物品などの注文を行なう際にも使用するものである。
68は、タッチパネル52から老人の健康状態や各種バイタル(血圧など)に関する健康情報を入力すると、当該健康情報をセンターサーバ21に送信するバイタル送信手段である。センターサーバ21は、各介護通報装置1から送信される健康情報を収集して、登録者である老人個々の健康状態の推移を監視する。なお、本実施例のバイタル送信手段68は、ヘルパーなどが老人宅を巡回した時点で健康情報を入力できるように、予め利用者とパスワードが関連付けられて登録され、タッチパネルから入力した利用者名とパスワードが一致した場合にのみ、健康情報の入力を受付ける構成となっている。これにより、老人が不用意に健康情報を入力するのを防止できる。
次に、上記構成についてその作用を説明する。先ず、老人の家庭内遭難を防ぐ各機能の動作について、図6に示すフローチャートをもとに説明する。老人が生活空間としている居間などにおいて、インターネット網18に常時接続で繋がれたLAN40に介護通報装置1を接続し、この介護通報装置1に設けた電源コード(図示せず)をAC100Vのコンセントに差し込むと、電源部11から介護通報装置1の各部に所定の動作電圧が供給され、制御部12が起動する。ここでステップS1において、例えばタッチパネル52を利用して、一日の中で老人が居間にいる時間帯や、夜間に老人が居間の照明を点消灯する時間などを、老人の生活行動パターンとして入力すると、リズム監視手段62はこの入力した生活行動パターンをパターン記憶部61に記憶する(ステップS2)。また、ステップS3において、定刻確認手段66による音声メッセージの出力時間をタッチパネル52から入力すると、定刻確認手段66はその時間を記憶装置48のデータ領域に記憶する(ステップS4)。
上記ステップS1〜ステップS4の初期設定が完了すると、介護通報装置1の処理装置41は、後述する外出ボタン75の操作により、外出モードに設定されているか否かをステップS5で判断する。外出モードが解除されている場合は、被観察者である老人が家屋内にいるものとしてリズム監視手段62が動作し、ステップS6〜ステップS9の各手順が処理される。より具体的には、リズム監視手段62は一定時間毎に広角カメラ5の撮影角度を動かしながら、介護通報装置1を設置した部屋の人間の存在および照明状態を撮影情報として入力して常に監視する。そしてステップS6において、この監視結果がパターン記憶部61に記憶した生活行動パターンと異なる場合には、センターサーバ21に通報信号を出力する(ステップS7)。また、ここでのリズム監視手段62は、集音マイク7から出力される音声情報をも解析し、パターン記憶部61に記憶される生活行動パターンではありえない音声レベルの音声情報を受取った場合にも、センターサーバ21に同様の通報信号を出力する。
さらにステップS8では、内蔵するタイマにより計時した現在時刻が、記憶装置48に記憶されたメッセージの出力時間(例えば午前8:00)に一致したか否かを定刻確認手段66によって判断する。そして、現在時刻がメッセージの出力時間と一致したら、ステップS9においてスピーカー9から音声メッセージを出力する。図12は、このときLCD3に表示される内容を示しているが、安否確認用の操作部である確認ボタン77と、この確認ボタン77の入力を促すメッセージ部78が、同じLCD3の表示部上にあらわれる。それと同時に、定刻確認手段66は、例えば「おはようございます、確認ボタンを押してください。」というような音声案内をスピーカー9から出力させる。定刻確認手段66は一定時間が経過しても応答がなく、確認ボタン77の操作が行なわれなかった場合に、センターサーバ21に対し自動的に通報信号を出力する。これにより、万一リズム監視手段62による生活行動パターンの監視で異常を発見できなかった場合でも、定刻確認手段66による毎日の安否確認により、老人などの家庭内遭難を確実に防ぐことができる。
通報信号を受取ったセンターサーバ21は、通報信号の発信元である介護通報装置1の広角カメラ5から撮像情報を取得し、TVモニタ26に表示する。これにより、通報を受けた部屋の様子をセンターサーバ21側で把握でき、必要な処置を講ずることができる。一例としてセンターサーバ21は、被観察者の介護通報装置1と専任担任者若しくはヘルパー宅の通報先端末22とを関連付ける登録者情報を記憶手段(図示せず)に記憶しており、この登録者情報を基に、通報信号を発信した被観察者の介護通報装置1と特定の通報先端末22とを接続することができる。また、登録者情報には連絡先のメールアドレスも含まれており、通報信号を受けて指定された家族などに、通報があった旨のメールを送信することができる。
一方、前記ステップS5で外出モードに設定した場合は、リズム監視手段62に代わり外出監視手段65が一定時間後に動作し、広角カメラ5や集音マイク7による不法侵入の監視を開始する。そして、ステップS11で外出監視手段65は、広角カメラ5からの撮影情報により画像の部分的な変化を検知した場合や、不在時にはありえない大きな音声レベルや特異な周波数帯の音声情報を集音マイク7から取得した場合に、スピーカー9から確認音声を出力すると共に、インターネット網18を介してセンターサーバ21に不法侵入が発生した旨の警報信号を出力する(ステップS12)。センターサーバ21は、介護通報装置1の広角カメラ5を遠隔操作して、室内の状況を把握すると共に、必要な処置を直ちに講じる。なお、外出モードの設定時には、被観察者が不在なため、定刻確認手段66による安否確認を行なわないように構成している。
上記図6に示す一連の動作で、センターサーバ21や通報先端末22は任意に老人宅の介護通報装置1に接続して、状況の把握および音声および映像によるテレビ通話を行なうことが可能である。また、例えばIP(Internet Protocol)電話や携帯電話からの操作により、介護通報装置1の広角カメラ5を直接操作する(撮影方向など)ことも可能である。図13はテレビ電話機能を利用した通話中のLCD3を示すもので、81は介護通報装置1の広角カメラ5から取得した画像の表示部、82は通報先端末22の広角カメラ35から取得した画像の表示部である。なお、通話を中止したい場合には、中止用の操作部であるやめるボタン83を押せばよい。
また本実施例では、センターサーバ21に接続した介護通報装置1が個々にグローバルIPアドレスを取得することによるコスト負担を和らげるために、一定時間(例えば1時間)毎に介護通報装置1からセンターサーバ21に定期情報を通報し、その通報を受けた時点でセンターサーバ21から何か送りたい情報が有れば、該当する介護通報装置1に送信する機能をシステムとして備えている。センターサーバ21は、例えば送りたい情報とその情報の重要度を共に送信し、介護通報装置1は送られた情報が重要なものであれば、広角カメラ5から人の動きを感知した時点で、直ちにLCD3やスピーカー9からその重要な情報を強制的に出力する。一方、送られた情報の重要度がさほど高くない場合は、LCD3に例えば「お知らせがあります」などのメッセージを表示して、老人がタッチパネル52によるボタン操作を行なった時に、情報の詳細内容をLCD3やスピーカー9から出力させる。このように、送られた情報の重要度に応じて出力の形態を変えるので、例えば就寝中にさほど重要でない情報が強制的に報知されるのを防ぐことができる。
また、介護通報装置1からセンターサーバ21に送られる定期情報によって、センターサーバ21は各介護通報装置1が正しく動作しているか否かを定期的に判断する。すなわち、ある介護通報装置1から定期情報が送られていなければ、その介護通報装置1は例えばLAN40への接続が外れたなどの不具合が発生していると判断できる。こうして、全ての介護通報装置1が正しくセンターサーバ21に接続できるように常時監視することで、介護通報装置1からの通報信号や警報信号をセンターサーバ21側で確実に受取ることが可能になる。
図7は、LCD3に表示されるトップメニューの一形態を示し、ここからLCD3の表面上にあるタッチパネル52を押すことで、処理装置41の種々の機能を呼出すことができる。ここでは、LCD3の表示機能と組み合わせて、呼出しボタン71,緊急呼出しボタン72,伝言ボタン73,注文ボタン74,外出ボタン75,およびバイタル送信手段68を動作させるためのバイタル入力ボタン76がそれぞれ配置される。このなかで、呼出し用の操作部である呼出しボタン71を押すと、処理装置41の呼出し手段63が動作して、図8に示すような呼出し中であることを示す表示がLCD3にあらわれる。それと同時に、呼出し手段63は、例えば「呼出し中です、少々お待ち下さい。」というような音声案内をスピーカー9から出力させる。なお、79は呼出し中の表示画面であらわれるとりけしボタンであり、このとりけしボタン79を押すと、センターサーバ21への呼出し動作が中断するようになっている。
そして、センターサーバ21への呼出しが完了すると、当該センターサーバ21は予め記憶されている登録者情報から、呼出しを受けた老人の専任担任者若しくはヘルパー宅の通報先端末22を特定し、その通報先端末22と介護通報装置1との通信を確立させる。後は、介護通報装置1と通報先端末22との間でテレビ電話による通話が可能になる。図12は、そうした通話中の一例を示すLCD3の表示画面である。
一方、図9は、前記伝言ボタン73を操作した後のLCD3の表示画面を示したものである。同図において、ここではどのような要望があるのかを選択する要望選択手段として、用事ボタン85と、伝言ボタン86と、急用ボタン87と、注文ボタン88と、その他ボタン89が設けられると共に、要望を取消す場合に操作する取消し操作手段としてのやめるボタン90が設けられる。また、この表示と同時にメール送信手段67は、例えば「希望する内容を押してください。」というような音声案内をスピーカー9から出力させる。このように、老人が前記伝言ボタン73などを押して呼出しを要求すると、センターサーバ21からインターネット網18を通じて、どのような要望であるのかを介護通報装置1のLCD3上で問い合わせる。老人は上記要望選択手段のいずれか一つを押すだけでよく、センターサーバ21に簡単に要望を伝えることができる。
図10は、前記用事ボタン85を押動操作したときにあらわれるLCD3の表示画面である。ここでは接続先すなわちお知らせ先を特定するための接続先選択手段として、家族ボタン91と、知人ボタン92と、親戚ボタン93が設けられると共に、接続先の選択を取消す場合に操作する取消し操作手段としてのやめるボタン90が設けられる。また、この表示と同時にメール送信手段67は、例えば「お知らせ先を押してください。」というような音声案内をスピーカー9から出力させる。このように、老人がどのような要望であるのかを例えば用事ボタン85を押して特定すると、センターサーバ21からインターネット網18を通じて、その要望を誰に伝えるのかを介護通報装置1のLCD3上で問い合わせる。老人は上記接続先選択手段のいずれか一つを押すだけでよく、センターサーバ21に簡単に接続先を伝えることができる。
図11は、前記家族ボタン91を押動操作したときにあらわれるLCD3の表示画面である。この場合、家族にどのような用事を知らせたいのかを特定する用件選択手段として、「電話を下さい。」と表示された第1のボタン95と、「用事があるので、すぐ来て下さい。」と表示された第2のボタン96と、「用事があるので、今日来て下さい。」と表示された第3のボタン97と、「用事があるので、明日来て下さい。」と表示された第4のボタン98が設けられる。また、この表示と同時にメール送信手段67は、例えば「お知らせしたい事を押してください。」というような音声案内をスピーカー9から出力させる。このように、老人が誰に連絡したいのかを例えば家族ボタン91を押して特定すると、センターサーバ21からインターネット網18を通じて、どのような用件を伝えたいののかを介護通報装置1のLCD3上で問い合わせる。老人は上記用件選択手段のいずれか一つを押すだけでよく、センターサーバ21に簡単に接続先を伝えることができる。なお、上述の接続先(連絡先)や用件の内容は、センターサーバ21に予め登録されており、介護通報装置1からの操作によりその都度読み出されてLCD3上に表示されるようになっているが、介護通報装置1に登録して同様の機能を実現してもよい。
そして、例えば第1のボタン95を押すと、メール送信手段67からセンターサーバ21を介して、家族のメールアドレスに「電話を下さい。」というメールを自動配信する。なお、同様の内容をメールではなく電話で直接報知してもよい。
また、前記図7に示すトップメニューの画面で、緊急呼出しボタン72を操作すると、緊急呼出し手段64によってセンターサーバ21に緊急呼出し信号が出力される。なお、この緊急呼出し信号は、老人が携帯するペンダント15に設けた緊急ボタン16を押すことでも同様に出力される。この場合、センターサーバ21は、他の複数の介護通報装置1から呼出し信号が重複して送信されていても、緊急呼出し信号を受けた介護通報装置1との接続を最優先し、広角カメラ5からの撮像情報や集音マイク7からの音声情報を取得する。センターサーバ21のTVモニタ26には緊急呼出し信号の発信元(老人)に関連して、緊急連絡先や医者などの患者情報が表示されるので、直ちに電話での連絡を取るなど必要な処置を施すことができる。
以上のように、本実施例における介護通報装置1は、居住者(老人など)の出入りする空間(居間など)を撮影する撮影手段としての広角カメラ5と、居住者の生活行動パターンとして、居住者が空間に存在する時間帯および空間の明暗の時間帯を記憶する記憶手段としてのパターン記憶部61と、広角カメラ5から得られる撮影情報を分析し、この分析結果がパターン記憶部61に記憶した生活行動パターンと異なる場合に、通信手段であるインターネット網18やLAN40を介して通報先に通報信号を出力する監視分析手段してのリズム監視手段62と、を備えて構成される。
この場合、居住者の出入りする空間として、例えば老人が普段使用する居間の様子が広角カメラ5により撮影される一方で、一日の中で老人が居間に存在する時間帯と、夜間の照明の点消灯に伴なう居間の明暗の時間帯が、予めパターン記憶部61に記憶登録される。そして、もし老人が居間に存在する時間帯であるにも拘らず、広角カメラ5から取得する撮影情報の中に、老人の存在が確認できない場合や、夜間に照明が点灯している時間帯であるにも拘らず、撮影情報では照明が点灯していない場合には、老人が動けない状況になったなどの何らかの異変が生じたと判断して、通報先に通報信号が自動的に出力される。このように、居住者の出入りする空間に広角カメラ5を向けるだけで、居住者が普段の生活行動パターンを逸脱した時点で、自動的に通報先に通報を行なうことができ、居住者の家庭内遭難を防ぐことができる。
また本実施例では、居住者の不在時に操作する操作手段としての外出ボタン75と、この外出ボタン75からの操作信号を受取ると、リズム監視手段62による動作を停止させ、広角カメラ5により動きを検知した場合は、インターネット網18やLAN40を介して通報先に警報信号を出力する警報出力手段としての外出監視手段65と、を備えている。
外出などで老人が居間から暫く離れる場合は、不在である旨を伝えるために外出ボタン75を操作する。これによりリズム監視手段62による動作が停止するので、不在時に不必要な通報信号が通報先に出力されるのを防止できる。また、不在時に居間で不審な動きがあった場合は、その動きを広角カメラ5が捕えて、外出監視手段65により通報先に警報信号を出力する。従って、本装置を家庭内遭難の監視機能としてだけではなく、防犯機能として利用することができる。
次に、本発明における別な介護通報装置の変形例を説明する。なお、上記実施例と共通する構成には共通する符号を付し、共通する箇所の説明は重複を避けるため極力省略する。
図14は、当該変形例の機能構成をあらわしたもので、この変形例は処理装置41の機能的な構成だけが上記実施例と異なり、その他の構成は上記実施例と共通してる。そのため図14では、処理装置41以外についての各構成の記載を省略している。ここでの処理装置41は、前記実施例のパターン記憶部61やリズム監視手段62に代わり、度数算出手段102と、度数記憶手段103と、平均値算出手段104と、重み付け記憶手段105と、監視分析手段106と、をそれぞれ備えている。なお、処理装置41のその他の構成である呼出し手段63,緊急呼出し手段64,外出監視手段65,定刻確認手段66,メール送信手段67,およびバイタル送信手段68は、上記実施例と共通している。
度数算出手段102は、広角カメラ5から得られる撮影情報や、集音マイク7から得られる音声情報により、照明の点消灯に伴なう居間の明暗や、被観察者の動きや、一定以上の音声レベルなど、一定の時間帯(例えば、午前6時から午前7時,午後5時から午後6時など)内に居間の撮影画像データや音声データに一定以上の変化が認められると、その毎にカウントを行なって度数を集計し、各時間帯毎に度数を算出するもので、ここで算出された最新の時間帯における度数のデータは、度数記憶手段103と監視分析手段106にそれぞれ出力される。
度数記憶手段103は、居住者の生活行動パターンとして、一定期間に亘る度数の各値を時間帯毎に記憶するものである。ここでいう一定期間とは、生活リズムに大きな変化が生じない例えば10日程度とする。その理由は、一定期間を短く設定し過ぎると、通常とは異なる不規則な生活行動パターンが基準値として定められてしまい、逆に一定期間を長くし過ぎると、例えば季節により照明の点消灯の時間が変化しているにも拘らず、いつも同じ生活行動パターンが基準値として定められてしまい、実情に合わなくなるからである。したがって、一定期間を7日〜14日の間に設定することは非常に重要である。
平均値算出手段104は、ある時間帯における一定期間に亘る各度数を度数記憶手段103から読み出し、この各度数の平均値を算出して監視分析手段106に出力するものである。
重み付け値記憶手段105は、度数記憶手段103と共に上記実施例における記憶装置48のデータ領域に対応して設けられている。この重み付け値記憶手段105は、監視の重要度に応じた重み付け値を、各時間帯毎に区画して記憶するもので、ここでの重み付け値は、重要な監視の時間帯であるほど高い値に設定されている。なお、この重み付け値は季節や監視対象などに応じて、適宜書換え変更してもよい。
監視分析手段は106は、度数算出手段102で算出したある時間帯における度数と、平均値算出手段104で得た同じ時間帯の平均値と、重み付け記憶手段105から読み出した同じ時間帯の重み付け値とから、通報先に通報信号を出力するか否かを判断するもので、具体的には、度数算出手段102が実測値としてある時間帯の度数を算出する毎に、この時間帯の度数が同じ時間帯の平均値を中心とした正常範囲から逸れていれば、重み付け値記憶手段105に記憶される同じ時間帯の重み付け値を累算して行き、この累算値が予め設定した閾値に達したら、インターネット網18を通じて通報先であるセンターサーバ21に通報信号を出力する機能を有する。なお、この累算した値は、通報信号を出力した時点、または決められた時間(例えば午後2時)になると、自動的に0にリセットされるようになっている。
次に、この変形例による作用を図15のグラフに基づき説明する。なお、同図において、横軸は時間,縦軸は各時間帯毎の度数を示しており、ここでは午前6時から午後2時(14時)までの前記平均値X0と、この平均値X0を中心とした正常範囲の上限値X1および下限値X2と、度数算出手段102で各時間帯毎に算出される最新の度数すなわち実測値Yと、をそれぞれ記している。
介護通報装置1が起動すると、処理装置41の度数算出手段102は、広角カメラ5から得られた撮影情報や、集音マイク7から得られた音声情報を基に、監視対象である居間の撮影画像データや音声データに一定以上の変化が認められたか否かを判断する。仮に、照明を点消灯したり、被観察者が動いたり、音声レベルが一定値以上に達するなどして、撮影画像データに一定以上の変化が認められれば、内蔵するカウント値を一つずつ加算する。そして、一定時間(この例では1時間)が経過したら、このカウント値を度数として度数記憶手段103と監視分析手段106にそれぞれ出力する。なお、この時点で度数算出手段102は、次の時間帯における度数を算出するために、カウント値を0にリセットする。こうして各時間帯毎に算出された度数の値が、図15の実測値Yに示されている。
度数算出手段102は、各時間帯の度数を算出する毎に、それを度数記憶手段103に記憶させる。特にこの変形例では、一定期間である例えば10日間に亘る度数の各値が、それぞれの時間帯毎に度数記憶手段103に記憶されており、度数算出手段102から最新の時間帯に関する度数が算出されると、その時間帯における最も古い度数の値(すなわち、10日前の度数の値)が度数記憶手段103から削除され、代わりにこの最新の度数の値が度数記憶手段103に書き込まれる。こうすれば、居住者の生活行動パターンとなる一定期間に亘る度数の値を、常に最新の実情に合ったものに保持することができる。
こうして、その時間帯における度数の書き込みが終了すると、平均値算出手段104は、当該時間帯における一定期間に亘る度数の平均値を算出し、その値を監視分析手段106に出力する(図15の平均値X0)。これを受けて監視分析手段106は、度数算出手段102で得たその時間帯の度数が、同じ時間帯の平均値を中心とした正常範囲(図15の上限値X1と下限値X2の間)から逸れているか否かを判断する。なお、この正常範囲の幅は平均値の大きさや時間に応じて、適宜変更すればよい。
ここで、もし当該時間帯の度数が、同じ時間帯における平均値を中心とした正常範囲の中に入っていれば、重み付け値の累算は行なわないが、そうでなければ、その時間帯に対応する重み付け値を重み付け記憶手段105から読み出して、それまで累算した重み付け値に加算する。そして、度数算出手段102が新たな時間帯の度数を算出する毎に、監視分析手段106が上述した判断を行って、重み付け値を累算した値が予め設定した閾値に達すると、監視分析手段106はセンターサーバー21に通報信号を出力し、何らかの異常が発生したことを発令する。
上記一連の手順を、図15に基づきさらに詳しく説明すると、各時間帯における重み付けの値は、前述のように重要な監視の時間帯であるほど高い値に設定されている。ここでは、特に被観察者が日常生活のために活動する割合が高く、したがってこの時間帯に撮影画像データや音声データに何も変化がない場合に、異常が発生している確率が高いと推測される午前7時〜午前8時と、午前8時〜午前9時の時間帯に、最も高い値の重み付け値(=7)を与え、次に被観察者が日常生活のために活動する割合の高い午前5時〜午前6時と、午前6時〜午前7時と、午前9時〜午前10時の時間帯に、この活動の度合いに対応した重み付け値(=5)を与え、同様に他の午前10時〜午前11時と、午前11時〜午後0時にも、活動の度合いに対応した重み付け値(=3、または=1)をそれぞれ与える。逆に、被観察者が外出している可能性が高く、撮影画像データや音声データに何も変化がない確率の高い午後0時〜午後1時と、午前1時〜午後2時は、重み付け値を0にして監視対象から外すようにしている。
また、図15に示す居住者の平均的な生活行動パターンの指標となる平均値は、過去10日間における撮影情報から取得した実際の居間の変化の度合いに基づいて算出される。これにより居住者個々の生活行動パターンに対応して、基準となる平均値を最適なものにすることができる。しかもこの平均値を算出するのに必要な各時間帯毎の度数は、最新の10日間のものだけが度数記憶手段103に記憶されており、メモリ容量を必要以上に増加させずに済むと共に、季節などの要因で刻々と変化する生活行動パターンに対し、最適な平均値を与えることができる。
そしてこの図15では、午前5時〜午前6時と、午前6時〜午前7時の時間帯で、度数算出手段102で得られた各時間帯の度数が、同じ時間帯の平均値を中心とした正常範囲に何れも入っている。したがって、この場合は居住者が通常の生活行動パターンで活動しているものと判断して、重み付け値の累算を行わない。
一方、午前7時〜午前8時以降の時間帯は、午前11時〜午後0時に至るまで、度数算出手段102で得られた各時間帯の度数が、同じ時間帯の平均値を中心とした正常範囲から連続して逸れていて、特に午前9時〜午前10時の時間帯以降は、撮影画像データに殆ど変化が現れない状態になっている。こうなると、監視分析手段は106は何らかの異常の兆候があるものとして、各時間帯毎の重み付け値を累算して行き、午前10時〜午前11時の時間帯が終了した時点で、この累算した値が予め設定した発令点数(閾値)に到達すると、異常が起きたことを発令する。
このように本変形例では、撮影手段としての広角カメラ5と、広角カメラ5から得られる撮影情報により、空間である居間における変化の程度を、ある時間帯の度数として算出する度数算出手段102と、居住者の生活行動パターンとして、一定期間に亘る時間帯毎の度数を記憶する度数記憶手段103と、この度数記憶手段103から読み出した一定期間に亘る時間帯の度数の平均値を算出する平均値算出手段104と、重要な監視の時間帯であるほど高い値に設定された重み付け値を、各々の時間帯毎に記憶する重み付け値記憶手段105と、度数算出手段102がある時間帯の度数を算出する毎に、この度数算出手段102で得たある時間帯の度数が、平均値算出手段104で得た同じ時間帯の平均値を中心とした正常範囲から逸れていれば、重み付け値記憶手段105から読み出した当該時間帯の重み付け値を累算し、この累算した値が閾値に達したら、インターネット網18やLAN40を介して通報先に通報信号を出力する監視分析手段106と、を備えている。
この場合も、居住者の出入りする空間に広角カメラ5を向けるだけで、居住者が普段の生活行動パターンを逸脱した時点で、自動的に通報先に通報を行なうことができ、居住者の家庭内遭難を防ぐことができる。
また特にこの変形例では、各時間帯毎に異常の兆候があれば、その時間帯における重み付け値を累算して行き、この累算した値が一定の発令点数に達した時点で、実際に異常が発生したものと判断して通報信号の出力を行なうので、例えば短時間の外出などで、特定の時間帯に異常の兆候が見られた場合でも、すぐに通報信号が出力されるようなことはなく、誤動作の通報を大幅に減らすことができる。しかも、監視の重要度の高い時間帯であるほど、重み付け値を大きく設定するので、異常と判断する見かけ上の時間が短縮して、異常を早期に発見することができ、逆に就寝時や外出時など、監視の重要度の低い時間帯では、重み付け値を小さく設定して、異常と判断する見かけ上の時間を長くするので、この点でも誤動作の通報を相乗的に減らすことができる。
また本実施例では、空間の音声情報を取得する音声入力手段としての集音マイク7をさらに備え、この集音マイク7で得た音声情報と、広角カメラ5で得た撮影情報とにより、度数算出手段102が空間における変化の程度を、ある時間帯の度数として算出するように構成している。こうすると、空間内の撮影情報のみならず、空間内の音声情報に基づいて、異常の発生の有無を正しく判断することができる。
さらに、この変形例での度数算出手段102は、ある時間帯において新たな度数を算出する毎に、一定期間内にある最も古い度数を度数記憶手段103から削除し、この新たな度数を度数記憶手段103に書き込む構成を有している。
こうすると、居住者の生活行動パターンとなる一定期間に亘る度数の値を、常に季節の移り変わりなどを考慮した最新の実情に合ったものに保持することができる。
なお、それ以外の動作については、上記実施例と共通することは云うまでもない。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。例えば、LCD3に表示される内容は、図7〜図13に示すものに限られない。また、タッチパネル52を用いず、複数の押し釦式スイッチにより同様の機能を実現してもよい。さらに、度数算出手段102は、撮影情報および音声情報の何れか一方に基づいて、度数の算出を行なってもよく、撮影情報と音声情報のそれぞれについて、独自に異常の判断を行なうように構成してもよい。