JP2005154654A - インジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液 - Google Patents

インジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液 Download PDF

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Abstract

【課題】 平滑で透明なITO薄膜を、クラックを生じることなく形成させることの可能な、塗布液を提供すること。
【解決手段】 脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物を溶媒中に含有し、該脂肪族モノカルボン酸スズ塩が、30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩である、インジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液。
【選択図】 なし

Description

本発明は酸化スズと酸化インジウムとからなる金属酸化物膜を形成するための、カルボン酸スズ塩とインジウム化合物とを含有する塗布液に関する。
インジウム−スズ酸化物(ITO)薄膜は、透明導電膜として、現在、広い分野で用いられている。例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、タッチパネル、太陽電池の透明電極などに用いられており、あるいは電磁波シールド材、自動車・建築用窓の赤外線反射膜などとして、さらに、航空機、自動車、ショーケースなどのための防曇用薄膜、氷着防止用の面発熱体に使用する薄膜などとして利用されている。
従来、ITO薄膜をはじめとする金属酸化物の薄膜を形成する手法としては、スパッタ法、イオンビーム法などの、真空蒸着法という物理的な成膜法が多く用いられている。これらの手法を採用すると、均ーで繊密な結晶性の高い薄膜が得られる反面、真空系で成膜を行うため、大型かつ複雑で高価な装置が必要である。また、バッチ式での生産であるため生産効率が悪く、製造コストが高くなるという問題がある。
一方、物理的成膜法に比べて、高価で複雑な装置の必要がなく、しかも簡単な工程で金属酸化物薄膜を形成できる手法として、基板上に金属化合物を含む塗布液を付与して塗膜を形成し、これを熱分解して金属酸化物薄膜を形成するスピンコート法、ディップコート法、バーコート法、レベルコート法、スプレー法などの焼成法がある。
ITO薄膜を焼成法で調製する際は、スズ化合物およびインジウム化合物を溶媒に溶解し、これを成膜用の塗布液とする。このため、上記スズ化合物およびインジウム化合物の両者が溶媒に良好に溶解することが必要である。
ITO薄膜の調製に用いられ得るスズ化合物として、例えば、特許文献1には塩化第一スズおよび塩化第二スズが、特許文献2にはアセチルアセトンスズが、特許文献3にはテトラメチルスズ、トリブチル酢酸スズ、テトラn−プロポキシスズなどが記載されている。しかし、これらのスズ化合物を溶解させ得る溶媒が限られており、かつ該スズ化合物は溶解性に乏しい。さらに、これらのスズ化合物は結晶性が高いため、該スズ化合物を溶解させた塗布液を用いて形成された塗膜が予備焼成する際に結晶化や凝集を生じたり、焼成後の薄膜が白濁するという問題がある。
上記特許文献3には、さらに、スズ化合物として、カルボン酸スズ塩が記載され、その例としては、酢酸スズ、蟻酸スズ、蓚酸スズなどが挙げられている。しかし、これらのカルボン酸スズ塩は結晶性が非常に高いため、前記のスズ化合物と同様に、予備焼成の段階で結晶化や凝集が非常に起こりやすい問題がある。ITO薄膜調製用スズ化合物として使用される他のカルボン酸スズ塩としては、2−エチルヘキサン酸スズなどの分岐アルキル基を有するカルボン酸スズ塩が知られている。2−エチルヘキサン酸スズは室温で液状であり、溶媒に対する溶解性も高いことから汎用されている。しかしながら、このような2−エチルヘキサン酸スズに代表される分岐アルキル基を有するカルボン酸スズ塩を用いると、焼成時に塗膜が収縮しやすく、ヒビが入りやすい。
従ってITO薄膜を形成する際に用いるカルボン酸スズ塩は、嵩高い分岐のカルボン酸スズ塩を使用するよりも直鎖状アルキル基を有するカルボン酸スズ塩を用いることが望ましい。しかし、カルボン酸スズ塩のうちアルキル基が直鎖のものは、通常、常温では固体であり、各種有機溶媒に対する溶解性が極めて乏しく、ITO薄膜用塗布液を調製して充分な膜特性を有するITO薄膜を得ることが困難である。
特開2002‐175733号公報 特開平6‐325637号公報 特開2002−15631号公報
本発明は、上記従来の課題を解決し、その目的は、平滑で透明なインジウム−スズ酸化物薄膜を、クラックを生じることなく形成させることの可能な、塗布液を提供することである。
本発明のインジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液は、脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物を溶媒中に含有し、該脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩である。
好適な実施態様においては、上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物は、合計で1〜95重量%の割合で塗布液中に含有される。
好適な実施態様においては、上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、炭素数4〜10の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を酸素供給性物質に接触させることにより得られる。
好適な実施態様においては、上記液状の直鎖脂肪酸モノカルボン酸スズ塩の30重量%エタノール溶液を30℃において1時間放置した場合に、該溶液は透明である。
好適な実施態様においては、上記インジウム化合物は、塩化インジウム、硝酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、もしくは、炭素数1〜8のカルボン酸インジウム塩である。
好適な実施態様においては、上記インジウム化合物は、炭素数5〜8のモノカルボン酸インジウム塩である。
好適な実施態様においては、上記モノカルボン酸インジウム塩を構成するモノカルボン酸は、直鎖モノカルボン酸である。
好適な実施態様においては、上記溶媒は、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、およびケトン系溶媒でなる群から選択される少なくとも1種である。
好適な実施態様においては、上記溶媒は、炭化水素系溶媒、もしくは炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒である。
本発明によれば、平滑で透明なITO薄膜を、クラックを生じることなく形成させることの可能な、ITO薄膜形成用塗布液が提供される。この塗布液を用いて得られるITO薄膜は、均一であり、透明性および導電性に優れる。
本発明のITO薄膜形成用塗布液に含有される各材料、および該材料を含む塗布液について、順次説明する。
1.30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩
本発明のITO薄膜形成用塗布液に含有される直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、30℃において液状であるという性質を有する(本明細書においては、30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を単に「液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩」という場合がある)。この液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、例えば、炭素数4〜10の直鎖脂肪族モノカルボン酸またはその塩と、無機スズ化合物とから得られる、常温(例えば、30℃)で固体状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩に由来し、該常温で固体状のスズ塩よりも融点が低い。この液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、例えば、上記常温で固体状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩に酸素供給物質を接触させることにより調製される。
1.1 常温で固体状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩
本発明の塗布液に含有される液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を調製するための原料として直鎖脂肪族モノカルボン酸またはその塩が用いられる。このような直鎖脂肪族モノカルボン酸は、好適には炭素数4〜10、さらに好適には炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸である。そのような脂肪族モノカルボン酸としては、n−酪酸、n−吉草酸、n−カプロン酸、n−エナント酸、n−カプリル酸、n−ペラルゴン酸、n−カプリン酸などがある。これらのカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;およびモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、モノプロパノールアミン塩などの有機アミン塩が挙げられる。これら直鎖脂肪族カルボン酸またはその塩は、1種または2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
上記炭素数4〜10の直鎖脂肪族モノカルボン酸とスズ化合物との反応により得られる直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩に、後述のように酸素接触処理を行なうと、処理後のカルボン酸スズ塩は、溶媒への溶解性が特に良好となる。従って、このようなカルボン酸スズ塩をITO薄膜の形成材料として用いた場合、溶媒への溶解性が良好であり、得られた塗布液を用いて形成されるITO薄膜の透明性に優れる。
一方、直鎖のカルボン酸ではなく、2−エチルヘキサン酸などの分岐状のアルキル基を有するモノカルボン酸のスズ塩を用いた場合には、このカルボン酸スズ塩は該アルキル基が嵩高いため、分子間の空隙が生じやすい。そのため、塗膜の焼成時にITO薄膜が収縮しやすく、特に大面積で厚膜のITO薄膜を作成する場合、焼成時に塗膜にクラックが入りやすく、均一な膜特性を有するITO薄膜が得られない。
上記直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の製造に用いられる無機スズ化合物は、上記直鎖脂肪族モノカルボン酸またはその塩と反応できる無機スズ化合物であればいずれでもよい。例えば、酸化第一スズ、塩化第一スズ、水酸化第一スズ、硫酸第一スズ、硝酸第一スズなどの2価のスズ化合物、および塩化第2スズなどの4価のスズ化合物が用いられ得る。なかでも、2価のスズ化合物、特に水中で安定に溶解し、効率的にカルボン酸塩と反応することの可能な塩化第一スズが好ましい。
上記直鎖脂肪族モノカルボン酸のスズ塩は、直鎖脂肪族モノカルボン酸またはその塩と無機スズ化合物とを反応させることにより得られる。反応方法としては、複分解法、直接法などの当該分野で利用される方法が用いられ得る。複分解法においては、上記直鎖脂肪族モノカルボン酸の水溶性塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)および無機スズ化合物を、水などの溶媒に溶解させて、これらを0〜100℃で混合することにより塩交換反応が進行し、カルボン酸スズ塩が形成される。直接法においては、脂肪族モノカルボン酸と無機スズ化合物とを100〜200℃の温度で直接混和することにより反応が行われ、これにより直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩が形成される。これらの方法のうち、効率良く純度の高い直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を得るためには、複分解法を用いるのが好ましい。
1.2 30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩
上記常温で固体状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩に、酸素供給性物質を接触させることにより、液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩が得られる。本明細書において、酸素供給性物質と接触させることを「酸素接触処理を行なう」と表現する場合がある。上記酸素供給性物質とは、上述のように、酸素、もしくは酸素を供給し得る物質である。その例としては、酸素ガス;空気などの酸素含有ガス;オゾンなどの活性酸素化合物;および過酸化水素などの過酸化物などがある。酸素供給性物質との接触方法としては、該酸素供給性物質として、酸素、酸素含有ガス、またはオゾンのようなガス状物質を用い、この中に上記直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を放置する方法;該ガス状の酸素供給性物質を、溶融した直鎖脂肪族カルボン酸スズ塩の中にバブリングする方法;および直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を過酸化水素水など液状の酸素供給性物質と混合する方法が挙げられる。
上記方法のうち、酸素ガスまたは酸素含有ガスを用いて、直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の酸素接触処理を行うことが好ましく、特に純度50%以上の酸素ガスを用いることが好ましい。酸素供給性物質と脂肪族モノカルボン酸スズ塩との接触面積が広くなるほど効率がよいため、具体的には、脂肪族モノカルボン酸スズ塩を、該化合物の融点以上の温度に加熱して融解させた後、上記酸素ガスなどをバブリングするのが好ましい。オゾンは環境への負荷が高いので、環境負荷に対する措置が必要である。過酸化水素水などの過酸化物を用いた場合には、形成された脂肪族モノカルボン酸スズ塩が分解しやすいという傾向があるため、処理後速やかに余剰の過酸化物を取り除くことが好ましい。
このようにして処理されて得られる直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩(液状の脂肪族モノカルボン酸スズ塩)は、処理前の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩に比較して融点が低い。融点は、通常処理前のカルボン酸スズ塩と比較すると20℃以上低く、30℃においては液状であるという性質を有する。さらに、このカルボン酸スズ塩は、処理前のカルボン酸スズ塩に比較して重量が増加している。この液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を、エタノールの30重量%溶液とし、該溶液を30℃において1時間放置した場合に、該溶液は透明であり、白濁を生じない。このような良好な溶媒溶解性と安定性を示すためには、重量増加率が酸素接触処理前の直鎖モノカルボン酸スズ塩のスズ原子の重量を基準として1重量%を超えることが望ましく、10重量%を超えることがより好ましい。重量増加率が1重量%以下の場合は、30℃において液状ではなく、かつ溶媒に対する溶解性が不良である。酸素接触処理によって増加した重量は、脱気、もしくは真空乾燥などによって減少することはなく、酸素接触処理によって重量が増加する現象は不可逆である。上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩のスズ含有量は、熱重量分析法などの既知の分析法を用いて求めることができる。
このようにして得られた液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の同定は、赤外線吸収スペクトル法、核磁気共鳴スペクトル法など既知の分析法を用いて行なうことができる。赤外線吸収スペクトルを参照すると、処理前の脂肪族モノカルボン酸スズ塩が1550cm−1付近にC=O二重結合由来の強いピークを示すのに対し、酸素接触処理により生成した液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は、1610cm−1付近にC=O二重結合由来の強いピークを示す。
上述のように、液状の直鎖脂肪旗モノカルボン酸スズ塩は様々な有機溶媒に対する溶解性が極めて良好である。このため、後述のように、本発明の塗布液を調製するにあたっては、溶媒の選択性が非常に幅広く、用いられるインジウム化合物に合わせて適宜溶媒を選択することが可能である。
2.インジウム化合物
本発明のITO薄膜形成用塗布液に含有されるインジウム化合物は、溶媒に溶解可能であり、焼結することで酸化インジウムとなる化合物であれば良く、例えば、次の化合物が用いられ得る:カルボン酸インジウム塩、塩化インジウム、ヨウ化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、インジウムアルコキシド、スルファミン酸インジウム、インジウムトリスベンゾイルメタネートなど。これらの化合物のうち、塩化インジウム、硝酸インジウムなどの水和物を形成するインジウム化合物は水和物を形成した状態で用いても良い。上記インジウム化合物は単独で用いても、組み合わせて用いても良い。
上述のインジウム化合物のうち、溶媒溶解性が良好で、ITO成膜用インジウム化合物として好適な化合物としては、塩化インジウム、硝酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、および炭素数1〜8のカルボン酸インジウム塩が挙げられる。
上記ITO成膜用インジウム化合物として好適な化合物のうち、塩化インジウムは特に各種溶媒に対する溶解性が高い。例えば、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、THFなどのエーテル系溶媒、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルなどのケトン系溶媒などに良好に溶解する。そのため、塗布液を容易に調製してITO薄膜を形成することができる。しかし、塩化インジウムは揮発性が高いため、該塩化インジウムを含む塗布液を用いて塗布膜を形成し、本焼成を行うと、該塩化インジウムの揮発により、生じるITO薄膜が白濁するおそれがある。さらに、塩素を含む化合物であるため、焼成時に有害な塩素ガスを発生する恐れがある。このため、成膜条件を限定したり、塩素ガスをトラップする装置や浄化する装置などを設置する必要がある。
硝酸インジウムは、アセチルアセトンなどに代表されるケトン系溶媒に可溶であり、炭化水素系溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒にも可溶である。アセチルアセトンインジウムは、トルエンなどの炭化水素系溶媒、およびアセトン、アセチルアセトンなどのケトン系溶媒に良好に溶解する。これらの硝酸インジウムおよびアセチルアセトンインジウムは、塩素などのハロゲンを含まないため、焼成時に有害なガスを発生しないという点では好ましい。しかし、これらの化合物を含む塗布液を用いて成膜を行うと、予備焼成、本焼成などの際に凝集を生じる場合がある。
カルボン酸インジウム塩の炭素数は1〜8が好ましい。カルボン酸インジウム塩の炭素数が9以上のものは、溶媒に対する溶解性が低く、塗布液の調製が困難である。
上記炭素数1〜8のカルボン酸インジウム塩のうち、炭素数が1〜4のカルボン酸インジウム塩は、ケトン系溶媒に可溶であり、炭化水素系溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒にも可溶である。しかし、上記硝酸インジウムなどと同様に、予備焼成、本焼成などの際に凝集することがあるため、取り扱いに注意を要する。炭素数1〜8のカルボン酸インジウム塩のうち炭素数が5〜8のカルボン酸インジウム塩がより好ましい。炭素数が5〜8のカルボン酸インジウム塩は、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒、炭化水素系溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系とアルコール系との混合溶媒などに可溶である。この炭素数が5〜8のカルボン酸インジウム塩は、上述のように炭化水素系溶媒をはじめとする各種溶媒に可溶であり、塗膜形成後に焼成の際、凝集が起こり難く、有害ガスの発生もなく、ムラなども非常に起こりにくい。その結果得られたITO薄膜は平滑でクラックが生じ難い。
上記炭素数5〜8のカルボン酸インジウム塩の中でも、モノカルボン酸塩は、溶媒に溶解させたときの粘度が低いため、取り扱いが容易である。ジカルボン酸塩やトリカルボン酸塩などの多価カルボン酸インジウム塩は、溶媒に溶解させたときの粘度が非常に高く、このため、得られた塗布液は高粘度であり、薄膜にムラが生じやすいため、取り扱いに注意を要する。
炭素数5〜8のモノカルボン酸インジウム塩において、モノカルボン酸インジウム塩を構成するモノカルボン酸が直鎖状のアルキル基を有していることがより好ましい。これは、本発明の塗布液に含有されるスズ化合物が液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩であり、該化合物が有するアルキル基が直鎖状であるためである。このようにアルキル基が直鎖状のカルボン酸スズ塩に対しては、アルキル基が直鎖状のカルボン酸インジウム塩を用いることが好ましい。塗布液中においては、これら化合物のアルキル基同士の親和力が強く、該塗布液を基板上に塗布すると、非常に膜密度が高く、強固で安定な塗布膜が形成される。このような塗布膜の焼成を行うと、得られたITO薄膜はクラックが無く、透明性に優れる。
炭素数5〜8の直鎖モノカルボン酸インジウム塩と液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩とを含有する塗布液を用いてITO薄膜を調製すると、クラックをほとんど生じることなく、優れた透明性および平滑性を有する、ITO薄膜を形成することが可能である。
3.溶媒
ITO薄膜形成用塗布液を形成する際に用いることのできる溶媒としては、液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩は多種多様の溶媒に高濃度で溶解するため、インジウム化合物が溶解する溶媒を採用すれば良い。例えば、次の溶媒が利用され得る:エタノールなどのアルコール系溶媒;トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;、クロロホルムなどの含ハロゲン系系溶媒;アセトン、アセチルアセトンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;および酢酸などのカルボン酸系溶媒。これらの溶媒は、単独で用いても混合して用いてもよい。上記以外に、酢酸水溶液などカルボン酸と水の混合溶媒もまた利用され得る。上述したこれらの溶媒の中では、ハロゲンおよび窒素を含有しない溶媒が好ましい。これらの元素を含む溶媒を含有する塗布液を用いて薄膜を形成すると、得られるITO薄膜にハロゲン化物や窒化物が含まれ、透明性、導電性などの膜特性を損なう恐れがある。上述した溶媒の中で、ハロゲンおよび窒素を含有しない溶媒としては、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒およびエーテル系溶媒が挙げられる。
上記インジウム化合物として、炭素数5〜8のモノカルボン酸インジウム塩を用いる場合には、炭化水素系溶媒、もしくは炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒が好適に用いられる。炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどが挙げられ、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。このような溶媒を含む塗布液を用いることで透明性の高い、平滑な薄膜が形成できる。
上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物は、好適には、その合計量が1〜95重量%、さらに好適には5〜50重量%の割合となるように塗布液中に含有される。これらの成分の濃度が1重量%未満であると、固形分濃度が低いため、薄膜の厚みが薄すぎて実用に耐えない、あるいは、多数回塗布して焼成を行うという操作を繰り返さねばならず、生産性が悪い。95重量%を超えると溶媒への溶解が困難であり、塗布する際にムラが生じやすい。
上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物の塗布液中における含有割合は特に限定されない。通常、塗布液中に含まれるスズ原子1モルに対して、インジウム原子が5〜10000モルの割合、好ましくは10〜10000モルの割合となるように、これらの化合物を含有させる。特に良好な導電性を有するITO薄膜を得たい場合には、10〜10000モルの割合で含有させることが好ましい。
4.塗布液に含有され得るその他の材料
本発明の塗布液は、必要に応じて、インジウムおよびスズ以外の金属を含む有機酸金属塩、添加剤などを含有する。
上記、インジウムおよびスズ以外の金属を含む有機酸塩としては、次の金属成分を含む有機酸の塩がある:マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの2族の金属;イットリウム、ランタン系列のランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムなどの3族の金属;チタン、ジルコニウムなどの4族の金属;バナジウム、ニオブなどの5族の金属;クロムなどの6族の金属;マンガンなどの7族の金属;鉄などの8族の金属;コバルトなどの9族の金属;ニッケルなどの10族の金属;銅、銀、金などの11族の金属;亜鉛などの12族の金属;ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの13族の金属;ケイ素、ゲルマニウムなどの14族の金属;およびアンチモン、ビスマスなどの15族の金属。この様な金属を含む有機酸塩としては、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、四酢酸ケイ素、カプロン酸マグネシウムなどがある。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で塗布液中に含有される。
本発明の塗布液に含有され得る添加剤としては、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、粘度調整剤などがある。増粘剤としては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどがある。消泡剤およびレベリング剤としては、アニオン型活性剤、ノニオン型活性剤、カチオン型活性剤、ポリマー系レベリング剤などがある。粘度調整剤は、焼成時の粘度を調整する目的で含有され、通常、炭素数11以上の有機酸マグネシウムが用いられる。そのような化合物としては、ウンデカン酸マグネシウム、ドデカン酸マグネシウム、トリデカン酸マグネシウム、テトラデカン酸マグネシウム、ヘプタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸マグネシウムなどがある。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲内、すなわち溶媒中にすべての成分が均一に溶解する範囲内において含有され得る。
5.ITO薄膜形成用塗布液およびそれを用いた薄膜の形成
本発明の塗布液は、上記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩、インジウム化合物、および必要に応じてその他の有機酸金属塩、添加剤などを溶媒中に溶解させることにより得られる。各成分の含有割合は、上記のとおりであり、通常の方法により各成分の混合が行われる。
この塗布液を用いて、ITO薄膜を調製するには、まず、該塗布液を所望の基板上に付与(塗布)する。次いで、得られた塗膜を焼成し、あるいは該塗膜に紫外線照射を行うなどの処理を行うことにより、ITO薄膜が得られる。上記基板としては、当該分野で一般的に知られている基板のいずれもが用いられ得る。例えば、ガラス基板;ポリカーボネート、エポキシ樹脂などの樹脂でなる基板などが挙げられる。特に200℃以上での焼成によりITO薄膜を作成する場合は、ガラスが好ましく、紫外光照射により薄膜を形成する場合は、樹脂基板(プレート、シート、フィルムなど)を用いることが好ましい。
本発明の塗布液を基板上に塗布するには、刷毛塗り法、浸漬法、スピナー法、スプレー法、スクリーン印刷法、ロールコーター法、インクジェット方式によるパターン形成など、当該分野で用いられるいずれの方法を用いてもよい。得られた塗膜を予備焼成し、溶媒を揮発させ乾燥し、次いで本焼成するか、あるいは、紫外光を照射するなどの一般に用いられている酸化薄膜形成法により、ITO薄膜が得られる。上記複数の方法を併用することもできる。本焼成を行う場合は、通常、200℃以上の温度で焼成が成される。塗布液中に不飽和脂肪族モノカルボン酸スズ塩が含まれる場合には、焼成温度が低すぎると薄膜が着色することがある。そのため、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸スズ塩を含む塗布液を用いた場合と比較して、高温(例えば、300℃以上)でより長時間にわたって本焼成を行うなどの注意を要する。
以下に液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩とインジウム化合物とを溶媒中に含有する本発明のITO薄膜形成用塗布液の調製およびその使用について具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
A.直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびこれを用いた液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の調製
(調製例1)
攪拌装置、冷却管、温度計、および窒素導入管を取り付けた4つ口フラスコ中に、直鎖脂肪族モノカルボン酸として、n−ヘプタン酸0.95molを入れた。これにアルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム(0.95mol)の20%水溶液を徐々に加え、窒素気流下、25℃で30分間攪拌した。さらに無機スズ化合物として、塩化第一スズ・2水和物0.46molを含む50%水溶液を全量加えて、30分間攪拌した。これを5分間静置し分層させた。上層の水層をデカンテーションで除き、50℃に加温しながら、下層を5回水洗後、脱水し、脂肪族モノカルボン酸スズ塩として、n−ヘプタン酸スズを得た。この化合物は赤外吸収スペクトル法により、n−ヘプタン酸のスズ塩であることを確認した。得られたn−ヘプタン酸スズに25℃にて30%過酸化水素水を滴下し、0.5時間攪拌することにより酸素接触処理を行った。その結果、液状のn−ヘプタン酸スズ塩(調製物i)が得られた。使用した直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩、酸素供給性物質、ならびに得られた化合物の重量増加率(%;スズ原子重量を基準)、融点および30℃における性状を表1に示す。後述の調製例2〜5、および比較調製例1〜2についても併せて表1に示す。
(調製例2〜5)
表1に示す直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を該表に示す方法(複分解法または直接法)により調製した。これを表1に示す酸素供給性物質と接触させることにより酸素接触処理を行った。調製例2、4および5においては、脂肪族モノカルボン酸スズ塩を加熱溶融し、酸素ガスまたは空気を75℃にて12時間バブリングさせることにより、酸素との接触処理を行った。調製例3においては、脂肪族モノカルボン酸スズ塩を、オゾン雰囲気下で6時間放置することによって酸素との接触処理を行った。その結果、30℃において液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩(調製物ii〜v)が得られた。
(比較調製例1)
カプロン酸と無機スズ化合物とから、複分解法によりカプロン酸スズ塩(調製物vi)を待た。これについては、酸素接触処理を行わなかった。
(比較調製例2)
n−ヘプタン酸スズ塩を加熱溶融した。この加熱溶融物に窒素を75℃で20時間バブリングした。その結果、調製物viiが得られた。
Figure 2005154654
表1から明らかなように、酸素接触処理により得られた調製物i〜vはいずれも、処理前の化合物と比較して、スズ重量を基準とした重量増加率が2%以上であり、融点が低下し、性状は固体状から液状に変化した。例えば、酸素接触処理を施していない比較調製例1と比較して、重量増加が認められ、性状は固体から液状に変化した。比較調製例2のように酸素の代わりに窒素を接触させた場合は、重量増加は認められず、融点も変化せず、かつ固体状であった。これに対して、同様の直鎖モノカルボン酸スズ塩に酸素接触処理を施した調製例3の場合には、重量が増加し、融点が低下し、性状は液状に変化した。
B.液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の溶剤溶解性
(実施例1〜5)
調製例1〜5で得られた液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩(調製物i〜v)の各々を表2に示す各種溶媒に、表2に示す濃度(各溶媒名の下に記載)で溶解させた。これを30℃にて1時間放置した後の状態を目視にて観察した。上記試験の結果を表2に示す。表2において、溶液が目視により透明であった場合を○、白濁していた場合を×とした。
(比較例1および2)
比較調製例1および2で得られた調製物viおよびviiの各々について、実施例1〜5と同様に試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2005154654
表2から明らかなように、酸素接触処理を十分に施して得られた30℃において液状の直鎖モノカルボン酸スズ塩(実施例1〜5;調製物i〜v)は、いずれも非極性溶媒から極性溶媒に至るまで、様々な溶媒に可溶であった。溶液は、1時間経過後も良好な透明性を維持した。これに対して、酸素接触処理を施していない、または、不十分な酸素接触処理を行った直鎖モノカルボン酸スズ塩(比較調製例1〜2;調製物vi〜vii)は、いずれも溶媒に対して不溶であり、溶液が白濁し、1時間後に白濁物が沈殿した。
C.ITO薄膜の調製
(実施例6〜12)
表3に示すカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物を表3に示す割合(重量%)で表3に記載の溶媒(単独溶媒または混合溶媒)に溶解させてITO薄膜調製用塗布液を得た。使用したカルボン酸スズ塩は、調製例1〜5で得られた調製物i〜vのいずれかである。実施例10で使用したカプロン酸インジウムは塩化インジウム1molに対し、n−カプロン酸ナトリウムを3mol反応させ、複分解法により調製した。その他のインジウム化合物については、市販品を用いた。
上記塗布液を調製した段階での該塗布液の状態を目視観察した。その結果を表3の「塗布液の状態」の項に示す。塗布液に沈殿物などが無く、透明な状態であれば○、沈殿物や濁りがあれば×とした。
次いで、得られた塗布液を、スピンコーターを用いてガラス基板上に塗布し、50〜60℃で予備焼成を行い乾燥させた。この予備焼成後の薄膜の状態を目視によりを観察した。その結果を表3の「予備焼成後の薄膜の状態」の項に示す。薄膜に凝集やムラなどが全く無く、非常に透明である場合を○、凝集やムラなどは無いがやや透明性に欠ける場合は△、凝集やムラ、白濁が著しい場合を×とした。
次いで、予備焼成後のガラス基板を550℃まで昇温し、550℃で2時間本焼成することにより、ITO薄膜を得た。本焼成により最終的に得られた薄膜の均一性および平滑性を目視観察した。その結果を表3の「本焼成後の薄膜の均一・平滑性」項に示す。◎は極めて平滑であり、ムラなどが全く無い場合、○は平滑で、ムラが全く無い場合、△は平滑性にやや欠け、ムラが少し存在する場合、×は平滑性に欠け、ムラも多い場合とした。さらに、本焼成後の薄膜に存在するひび割れの有無を目視により観察した。これを表3の「ひび割れ」の項に示す。本焼成後の薄膜の透明性については、極めて透明な場合を◎、十分に透明な場合を○、濁りや曇りがある場合を×とした。これを表3の「本焼成後の薄膜の透明性」の項に示す。
(比較例3〜5)
表3に示すカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物を表3に示す割合で表3に記載の溶媒(単独溶媒または混合溶媒)に溶解させてITO薄膜調製用塗布液を得た。使用したカルボン酸スズ塩は、比較例3においては、比較調製例1で得られた調製物vi、比較例4においては、比較調製例2で得られた調製物viiであり、比較例5においては、市販の2−エチルヘキサン酸スズをそのまま用いた。
得られた塗布液を用い、実施例6〜12の場合と同様にITO薄膜を調製し、同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2005154654
表3に示すように、液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩(調製物i〜v)と種々のインジウム化合物とを組み合わせて調製した塗布液は、透明であり、該塗布液を用いて成膜したITO薄膜は、均一で、ひび割れが無く、かつ透明であった(実施例6〜12)。インジウム化合物として炭素数5〜8のモノカルボン酸インジウム塩を用いると非常に透明性の高いITO薄膜が得られ(実施例10および11)、モノカルボン酸インジウム塩を構成するモノカルボン酸が直鎖状(実施例10)であれば、さらに均一性および平滑性に優れた、極めて良好な薄膜が得られた。
一方、固体状の直鎖モノカルボン酸スズ塩と種々のインジウム化合物を用いて塗布液を調製した場合(比較例3〜4)には、透明な塗布液は得られず、塗膜が形成された基板を焼成すると、得られた薄膜は不均一でひび割れが多数存在しており、もしくは、基板上から剥離した。
比較例5では、2−エチルヘキサン酸スズはヘキサン−エタノール混合溶媒に溶解し、透明な塗布液が得られたものの、焼成後の薄膜の均一性は不十分であり、白濁していた。
本発明によれば、平滑で透明なITO薄膜を、クラックを生じることなく形成させることの可能な、塗布液が提供される。この塗布液は、種々の分野で利用されるITO薄膜の製造に好適に利用される。例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、タッチパネル、太陽電池の透明電極などに用いられるITO薄膜、あるいは電磁波シールド材、自動車・建築用窓の赤外線反射膜などとして利用されるITO薄膜などの製造に好適である。

Claims (9)

  1. 脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物を溶媒中に含有するインジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液であって、該脂肪族モノカルボン酸スズ塩が、30℃において液状の、直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩である、インジウム−スズ酸化物薄膜形成用塗布液。
  2. 前記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩およびインジウム化合物が、合計で1〜95重量%の割合で含有される、請求項1に記載の塗布液。
  3. 前記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩が、炭素数4〜10の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩を酸素供給性物質に接触させることにより得られる、請求項1または2に記載の塗布液。
  4. 前記液状の直鎖脂肪族モノカルボン酸スズ塩の30重量%エタノール溶液を30℃において1時間放置した場合に、該溶液が透明である、請求項1から3のいずれかに記載の塗布液。
  5. 前記インジウム化合物が、塩化インジウム、硝酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、もしくは、炭素数1〜8のカルボン酸インジウム塩である、請求項1から4のいずれかに記載の塗布液。
  6. 前記インジウム化合物が、炭素数5〜8のモノカルボン酸インジウム塩である、請求項5に記載の塗布液。
  7. 前記モノカルボン酸インジウム塩を構成するモノカルボン酸が、直鎖モノカルボン酸である、請求項6に記載の塗布液。
  8. 前記溶媒が、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、およびケトン系溶媒でなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から7のいずれかに記載の塗布液。
  9. 前記溶媒が、炭化水素系溶媒、もしくは炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒である、請求項8に記載の塗布液。
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