WO2024024368A1

WO2024024368A1 - 電線の端末加工装置

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Publication number: WO2024024368A1
Application number: PCT/JP2023/023684
Authority: WO
Inventors: 信人築地; 高宏岩▲崎▼
Original assignee: 矢崎総業株式会社
Priority date: 2022-07-27
Filing date: 2023-06-26
Publication date: 2024-02-01
Also published as: JP2024017163A

Abstract

露出した一対の線芯（３）の基端部の金属箔の切り残し部分（２ａ）又は編組の折り曲げ部分（６ａ）を押し込む可動板（２０）を備える。可動板（２０）は、電線（Ｗ）の軸線回りに回転可能で、一対の開閉板（２１、２１）を閉じたときに、対向縁に形成された２つの半円状凹部（２２）を一対の線芯（３）の外周に密着させる。可動板（２０）は、スライド機構によって閉じた状態のままスライドされて、金属箔の切り残し部分（２ａ）又は編組の折り曲げ部分（６ａ）を電線（Ｗ）の基端側に押し込む。

Description

電線の端末加工装置

　本発明は、例えば、高速通信用ケーブル等の端末加工に使用される電線の端末加工装置に関する。

　高速通信用ケーブルとして、導体を絶縁体で被覆した線芯を、一対（ペア）で配置し、その周囲をアルミや銅などの金属箔（シールド材）で包囲し、その外側をシースで覆った電磁シールドタイプの電線がある。また、金属箔とシースとの間に更に編組（更なるシールド材）を配置したものもある。また、２本の線芯を平行に配したもの（平行線芯タイプ）や、ツイスト状に捩ったもの（ツイスト線芯タイプ）もある。

　この種の金属箔をシールド材として有する電線の端末処理を行う場合、電線の先端のシースを除去し、その上で金属箔を切除し、線芯を露出させた上で、線芯の導体に端子を圧着する等の加工が行なわれている。編組がある場合は、シースを除去して露出した編組をシース側に折り返し、シースの端部に被せて、その編組を被せた部分にアース側端子を圧着する等の加工を行っている。なお、編組を被せる位置のシースの外周に、金属のスリーブが嵌合されているものもある。

　ところで、このような電線の端末処理の一部あるいは全部を自動化することが望まれている。金属箔の切除の自動化例として、例えば特許文献１に記載の技術が知られている。この特許文献１に記載の技術によれば、シースを除去して露出した金属箔に切断刃を当てることにより金属箔が切り落とされるようになっている。

日本国特許第５２４７４０４号公報

　しかし、金属箔を自動で切断する場合、金属箔の切り残し部分が、露出した線芯の基端側に発生する可能性がある。切り残し部分がある状態で端子圧着などの端末加工を行うと、ショートなどが発生し、不良品化するおそれがある。

　そこで、切り残し部分が発生せず、金属箔が完全に除去されたか否かをカメラを用いて電線の周方向全体にわたって確認する方法が考えられる。しかし、その場合は、少なくとも電線に金属箔が残っていることを識別可能なカメラを用意する必要があるためコストがかかり、切り残し部分の金属箔の有無を判定するための画像処理に時間がかかるという問題が発生する。

　本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属箔の切り残し部分の影響を無くして加工品質の向上を図ることができ、それにより、端末加工の自動化に貢献することのできる電線の端末加工装置を提供することにある。

　前述した目的を達成するために、本発明に係る電線の端末加工装置は、下記を特徴としている。

　線芯と、前記線芯の周囲を覆う金属製の外周部材と、前記外周部材の周囲を覆うシースとを有する電線における先端部のシースおよび外周部材が加工されて、露出した線芯の基端部の前記外周部材の残り部分を処理するための電線の端末加工装置であって、
　露出した前記線芯の外周輪郭に沿った曲線状の凹部を対向端縁に有し、互いに離間する開方向と接近する閉方向に開閉自在とされた一対の開閉板を備え、前記電線の軸線回りに回転可能とされた可動板と、
　前記一対の開閉板を開閉駆動する開閉機構と、
　前記可動板を前記電線の軸線回りに回転すると共に回転方向に位置決めする回転機構と、
　前記一対の開閉板を閉じた状態で、前記可動板を前記電線の基端方向に相対的にスライドさせることで、前記残り部分を前記電線の基端側に押し込むスライド機構と、を備え、
　前記回転機構は、前記可動板を前記開閉機構を介して支持する回転フレームを備えており、該回転フレームと前記可動板との間に、前記可動板の回転方向への逃げを許容するための弾性機構が介装されている、
　電線の端末加工装置。

　本発明によれば、金属箔の切り残し部分が、露出した線芯の基端側に発生している場合でも、可動板を閉じた上でのスライド操作によって、その切り残し部分を電線の基端側に押し込むことができる。したがって、金属箔の切り残し部分による悪影響を無くすことができて、端末加工品質の向上を図ることができ、その結果、端末加工の自動化に貢献することができる。

　以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態（以下、「実施形態」という。）を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。

図１は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置による処理を説明するための電線の斜視図である。図２は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の上から見た概略図である。図３は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の横から見た概略図である。図４は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の正面から見た概略図である。図５は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の可動板を閉じる前の状態を示す正面図である。図６は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の可動板を閉じた後の状態を示す正面図である。図７は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の可動板を閉じた後の状態を示す側面図である。図８は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置の可動板をスライドさせたときの状態を示す側面図である。図９は、本発明の別の実施形態に係る電線の端末加工装置の側面図である。図１０は、本発明の第２実施形態に係る電線の端末加工装置の正面図である。図１１は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板を閉じる途中の状態を示す正面図である。図１２は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板を所定角度だけ回転させたときの状態を示す正面図である。図１３は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板の形状的特徴点を説明するために示す正面図である。

　本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。

　図１は、本発明の第１実施形態に係る電線の端末加工装置による処理を説明するための電線の斜視図である。

　本実施形態の電線の端末加工装置は、一例として、図１の左側の上下の図に示すような電線Ｗを処理対象としている。これらの電線Ｗは、一対（２本）の線芯３の周囲がアルミや銅等の金属箔２で包囲され、その外側が絶縁材料のシース１で覆われている。各線芯３は、導体４の周囲を絶縁体５で包囲したものであり、金属箔２は、ペアの線芯３、３の周囲を覆っている。金属箔２は、金属製の外周部材の一例である。左上の図は、２本の線芯３が互いに平行に延びた平行線芯タイプの電線Ａ、左下の図は、２本の線芯３がツイスト状に捩られたツイスト線芯タイプの電線Ｂを示している。本実施形態の端末加工装置は、平行線芯タイプおよびツイスト線芯タイプの両方のタイプの電線Ｗを処理の対象としている。また、本実施形態の電線の端末加工装置は、後述するような、金属箔２とシース１との間に更に編組を配置した構造の電線も処理の対象としている。

　本実施形態の端末加工装置は、このような電線Ｗの先端部の端末処理に当たり、電線Ｗの先端部のシース１および金属箔２が除去されて、一対の線芯３が露出状態とされた電線の端末加工部Ｐｗにおける、露出した線芯３の基端部の金属箔２の切り残し部分２ａを処理する。なお、本端末加工装置による処理の前に多くの場合、シース１の端部外周には、金属製円筒状のスリーブ１０が加締められている。

　本実施形態の端末加工装置は、電線の端末加工部Ｐｗにおける金属箔２の切り残し部分２ａを、図１の右図のＣで示すように、電線Ｗの基端側（スリーブ１０のある側）に押し込む処理を行う。

　図２は、本実施形態の電線の端末加工装置をある時点で上から見た概略図、図３は、図２と同じ時点で横から見た概略図、図４は、正面から見た概略図である。また、図５は、本実施形態の電線の端末加工装置の可動板を閉じる前の状態を示す正面図、図６は、可動板を閉じた後の状態を示す正面図、図７は、可動板を閉じた後の状態を示す側面図、図８は、可動板をスライドさせたときの状態を示す側面図である。

　本実施形態の電線の端末加工装置は、図２～図４に示すように、半割眼鏡状の可動板２０と、検出ユニット３０と、回転機構４０と、を有している。

　半割眼鏡状の可動板２０は、図４～図６に示すように、電線Ｗの軸線方向と直交する方向に隣接して並んだ一対の露出した線芯３、３の各半周分の外周輪郭に対応した２つの半円状凹部２２を対向端縁に有する一対の開閉板２１、２１を備えている。隣接して設けられた２つの半円状凹部２２、２２の境界部には、隣接した一対の線芯３、３間の窪みに挿入される突起２３が設けられている。

　一対の開閉板２１、２１は、互いに離間する開方向と互いに接近する閉方向に開閉自在（図３～図６矢印Ｆの方向に開閉自在）とされている。開閉方向は、電線の軸線方向に直交する方向である。本端末加工装置は、可動板２０の一対の開閉板２１、２１を開閉駆動する図示しない開閉機構を備えている。可動板２０は、図６に示すように、一対の開閉板２１、２１が閉じたときに、隣接して並んだ一対の露出した線芯３、３の外周に、２つの半円状凹部２２、２２を密着させるものとして構成されている。なお、可動板２０は、金属や樹脂（例えば、ウレタン）で構成されている。

　可動板２０は、図２～図４中の矢印Ｒで示すように、電線Ｗの軸線回りに回転可能に支持されており、回転機構４０は、可動板２０を電線Ｗの軸線回りに回転駆動すると共に回転方向に位置決めする機能を果たす。また、本端末加工装置は、一対の開閉板２１、２１を閉じた状態で、図７および図８の矢印Ｓ、Ｓ1で示すように、可動板２０を電線Ｗの基端方向に相対的にスライドさせることで、金属箔２の切り残し部分２ａを、電線Ｗの基端側に押し込むスライド機構を備えている。

　検出ユニット３０は、一対の露出した線芯３、３の側方投影像を、当該一対の露出した線芯３、３の回りを回転しながら取得し、取得した側方投影像の寸法により一対の線芯の並び方向を検出する。具体的には、検出ユニット３０としてレーザセンサユニットを採用した場合は、一対の露出した線芯３、３に向けてレーザ光を投射し、その受光データにより、一対の露出した線芯３、３の側方から見た投影像（側方投影像）を採取する。そして、採取した投影像の寸法、即ち電線の軸線方向と直交する方向の寸法（２本の線芯３、３の見かけ上の幅）が最小となる回転位置を、一対の露出した線芯３、３の並び方向として検出する。レーザセンサユニットに代えて、一対の露出した線芯３、３を側方から撮影するカメラを用いてもよい。

　回転機構４０は、可動板２０の一対の開閉板２１、２１の開閉方向が、検出ユニット３０の検出した一対の露出した線芯３、３の並び方向に対して垂直な方向となるように、可動板２０の回転位置を調整する機能を果たす。そして、図示しない開閉機構は、可動板２０の開閉方向が、一対の線芯３、３の並び方向に対して垂直な方向となるように可動板２０の回転方向の位置が調整された状態で、可動板２０の一対の開閉板２１、２１を開位置から閉位置に閉じ操作する。

　本実施形態では、検出ユニット３０と可動板２０は、回転方向に９０°の角度ずれた位置に互いに固定されて一体に回転するように設けられている。したがって、検出ユニット３０が、一対の線芯３、３の並び方向を検出した位置で回転が止まることで、自動的に可動板２０の一対の開閉板２１、２１の開閉方向が線芯３、３の並び方向に対して垂直な方向となる回転位置に設定される。なお、検出ユニット３０と可動板２０は、軸線方向において同じ位置かできるだけ近接した位置に配置するのが望ましい。

　本実施形態では、検出ユニット３０と回転機構４０とが、可動板２０を適正な回転位置に調整する位置調整手段の役割を果たす。なお、端末加工装置は、検出ユニット３０、開閉機構、回転機構４０、スライド機構などを連携して駆動制御するための図示しない制御部を備えている。

　次に作用を説明する。
　加工作業の準備として、先端部のシース１を除去し、金属箔２を切除した電線Ｗの端末加工部（図１中のＰｗで示す部分）を、本端末加工装置にセットする。この際、電線Ｗは回転しないよう保持固定されている。この状態で、検出ユニット３０が必要量だけ回転することにより、一対の線芯３、３の並び方向を自動検出する。

　検出ユニット３０としてレーザセンサユニットを採用した場合、一対の線芯３、３の並び方向の検出は、前述したように行う。即ち、一対の露出した線芯３、３に向けてレーザ光を投射し、その受光データにより、一対の露出した線芯３、３の側方から見た投影像（側方投影像）を採取する。そして、採取した投影像の電線の軸線方向と直交する方向の幅寸法（２本の線芯３、３の見かけ上の幅）が最小となる回転位置を、一対の露出した線芯３、３の並び方向として検出する。

　一対の線芯３、３の並び方向を自動検出した位置で検出ユニット３０の回転を止めると、図５に示すように、自動的に可動板２０の一対の開閉板２１、２１の開閉方向が、線芯３、３の並び方向に対して垂直な方向となる回転位置に設定される。そこで、開閉機構により、可動板２０の一対の開閉板２１、２１を開位置から閉位置に閉じ操作する（図５、図６中の矢印Ｆの操作）。図５は一対の開閉板２１、２１が開位置にある状態、図６は一対の開閉板２１、２１が閉位置にある状態を示している。そうすると、一対の開閉板２１、２１の半円状凹部２２が、図６に示すように、一対の線芯３、３の外周に密着する。つまり、線芯３、３にスムーズに半円状凹部２２、２２を嵌めることができる。したがって、線芯３、３に無理な力が加わらず、線芯３、３に傷や圧痕が付かない。

　図７は、このときの状態における電線の端末加工装置の側面図である。この状態で、図８に示すように、スライド機構により可動板２０を電線Ｗの基端側にスライドさせる。そうすると、可動板２０によって、金属箔の切り残し部分２ａが電線Ｗの基端側に押し込まれる。

　このように、金属箔の切り残し部分２ａが、露出した線芯３、３の基端側に発生している場合であっても、可動板２０を閉じた上でのスライド操作によって、切り残し部分２ａを電線Ｗの基端側に押し込むことができる。したがって、金属箔の切り残し部分２ａによる悪影響を無くすことができて、端末加工品質の向上を図ることができ、その結果、端末加工の自動化に貢献することができる。

　特に本実施形態では、可動板２０を閉じた際に、一対の開閉板２１、２１の半円状凹部２２、２２を、露出した一対の線芯３、３の外周に密着させることができる。よって、１回の可動板２０のスライド操作で、金属箔の切り残し部分２ａをきれいに電線Ｗの基端側に押し込むことができる。

　また、本実施形態によれば、検出ユニット３０が、一対の線芯３、３の並び方向を自動的に検出して可動板２０の位置が適正に調整される。よって、電線Ｗを装置に挿入した際の電線Ｗの向きによらず、容易に効率よく、金属箔の切り残し部分２ａを電線Ｗの基端側に押し込むことができる。

　また、本実施形態では、検出ユニット３０と可動板２０を一体に回転させる構成としているので、構造の簡略化が図れる。

　また、本実施形態では、開閉板２１に形成した二つの半円状凹部２２、２２の境界に突起２３を残しているので、２本の線芯３、３間の窪み部分に残った金属箔も、突起２３によって電線の基端側に押し込むことができる。この際、開閉板２１、２１に余計な力を加えずに、２本の線芯３、３間の窪み部分に残った金属箔に突起２３を届かせることができるので、線芯３、３への開閉板２１、２１の当たりを強くする必要がなく、線芯３、３に傷や圧痕が付くこともない。

　なお、処理対象の電線がツイスト線芯タイプの場合は、スリーブ１０から少し離れた位置で可動板２０を閉じ、可動板２０を、線芯３、３の撚りを解く方向に回転させてから、軸線方向にスライドさせるのがよい。

　また、図９に示すように、予め折り返し加工した編組６が端末加工部にある場合は、可動板２０あるいは同様の形状を有する可動板のスライド操作により、編組６の折り曲げ部分６ａをスリーブ１０側に押し込む。編組６は、金属製の外周部材の一例である。こうすることで、折り曲げ部分６ａを、スリーブ１０の近くで更に小さく折り曲げることができ、編組６を規定寸法に成形することが可能になる。したがって、金属箔２や編組６等の、スリーブ１０の根元にある不要物をすべてコンパクトな形態に納めることができ、端末加工部の品質向上が図れる。なお、編組６は、予め成形ブロックや成形スリーブといった編組押込筒１６のスライド操作（矢印Ｓ２の操作）によって、スリーブ１０の外周に折り返し部分６ｂを重ねる折り返し処理を済ませておくとよい。

　また、編組押込筒１６が、スリーブ１０の周囲に向かってスライド操作されることで、折り返し部分６ｂをスリーブ１０に押し込むことができる。可動板２０及び編組押込筒１６のスライド操作を同時に行うことにより、折り曲げ部分６ａが押し込まれて折り返し部分６ｂが開いたり、折り返し部分６ｂが押し込まれることで折り曲げ部分６ａが起き上ったりすることを防止できる。

　このように、可動板２０による金属箔の押し込み操作によって、編組６の折り曲げ部分６ａを電線Ｗの基端側に強く押し込むことができるので、編組６の折り返し寸法品質を高めることができる。

　図１０は、本発明の第２実施形態に係る電線の端末加工装置の正面図、図１１は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板を閉じる途中の状態を示す正面図、図１２は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板を所定角度だけ回転させたときの状態を示す正面図、図１３は、図１０に示した電線の端末加工装置の可動板の形状的特徴点を説明するために示す正面図である。以下、第１実施形態との相違点について説明する。

　図１０～図１２に示すように、本実施形態の端末加工装置は、可動板２０を備えるものの、検出ユニットを省略している。そして、回転機構４０は、可動板２０を開閉機構（図示略）を介して支持する回転フレーム４１を備えており、回転フレーム４１と可動板２０との間に、可動板２０の回転方向への逃げを許容するためのバネ５０が介装されている。

　この装置では、バネ５０の働きにより、可動板２０を線芯３、３に柔軟に押し当てることができるので、線芯３、３に傷や圧痕を付けずに、金属箔２の切り残し部分２ａを電線の基端側に押し込むことができる。つまり、可動板２０の一対の開閉板２１、２１を、図１０に示す開位置から図１１に示すように閉位置に操作したとき、可動板２０が遊びを持って線芯３、３に当たることになる。したがって、ある程度閉じた状態で可動板２０をスライドさせる操作を、図１２に示すように、可動板２０の回転位置を変えながら繰り返し何回か行うことで、金属箔２の切り残し部分２ａを電線Ｗの基端側に押し込むことができる。この操作の繰り返し回数は、多いほど端末加工品質の向上に寄与するが、サイクルタイムの制限内で例えば８回程度繰り返すことで端末加工品質を向上できる。この場合、可動板２０の一対の開閉板２１、２１が線芯３、３に当たるとバネ５０により逆方向に逃げるようになっているので、線芯３、３を傷付けることがない。この実施形態の場合は、図１３に示すように、可動板２０の一対の開閉板２１、２１の２つの半円状凹部２２の境界の突起２３は、２本の線芯３、３間の窪みに嵌まる必要がないので、鋭角的でなく、滑らかな円弧状に面取りされている。

　また、第２実施形態の端末加工装置においても、図９に示すように、予め折り返し加工した編組６が端末加工部にある場合は、可動板２０あるいは同様の形状を有する可動板のスライド操作により、編組の折り曲げ部分６ａをスリーブ１０側に押し込むことができる。こうすることで、折り曲げ部分６ａを、スリーブ１０の近くで更に小さく折り曲げることができ、編組６を規定寸法に成形することが可能になる。したがって、金属箔２や編組６等の、スリーブ１０の根元にある不要物をすべてコンパクトな形態に納めることができ、端末加工部の品質向上が図れる。

　また、編組押込筒１６が、スリーブ１０の周囲に向かってスライド操作（図９の矢印Ｓ２の操作）されることで、折り返し部分６ｂをスリーブ１０に押し込むことができる。可動板２０及び編組押込筒１６のスライド操作を同時に行うことにより、折り曲げ部分６ａが押し込まれて折り返し部分６ｂが開いたり、折り返し部分６ｂが押し込まれることで折り曲げ部分６ａが起き上ったりすることを防止できる。

　このように、第２実施形態の端末加工装置においても、可動板２０による押し込み操作によって、編組６の折り曲げ部分６ａを電線Ｗの基端側に強く押し込むことができるので、編組６の折り返し寸法品質を高めることができる。

　なお、上述した各実施形態では、電線を回転しないよう固定し、可動板２０を回転させるようにした場合を示したが、可動板２０を回転させる代わりに電線Ｗを回転させることも可能である。また、図示しない制御部が、回転機構４０による１回あたりの回転角度を入力可能とし、操作者が、電線の種類に応じて１回あたりの回転角度を設定できるようにしてもよい。

　また、上述した各実施形態では、金属箔２又は編組６を除去又は折り返しにより加工した残り部分である切り残し部分２ａ又は折り曲げ部分６ａを、可動板２０によりスリーブ１０側に押し込む例を示したが、切り残し部分２ａ及び折り曲げ部分６ａの双方を押し込んでもよい。

　ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線の端末加工装置の特徴をそれぞれ以下［１］～［４］に簡潔に纏めて列記する。

［１］　線芯（３）と、前記線芯の周囲を覆う金属製の外周部材（金属箔２、編組６）と、前記外周部材の周囲を覆うシース（１）とを有する電線（Ｗ）における先端部のシース（１）および外周部材（金属箔２、編組６）が加工されて、露出した線芯（３）の基端部の前記外周部材の残り部分（切り残し部分２ａ、折り曲げ部分６ａ）を処理するための電線の端末加工装置であって、
　露出した前記線芯（３）の外周輪郭に沿った曲線状の凹部（２２、２２）を対向端縁に有し、互いに離間する開方向と接近する閉方向に開閉自在とされた一対の開閉板（２１、２１）を備え、前記電線の軸線回りに回転可能とされた可動板（２０）と、
　前記一対の開閉板（２１、２１）を開閉駆動する開閉機構と、
　前記可動板（２０）を前記電線（Ｗ）の軸線回りに回転すると共に回転方向に位置決めする回転機構（４０）と、
　前記一対の開閉板（２１、２１）を閉じた状態で、前記可動板（２０）を前記電線（Ｗ）の基端方向に相対的にスライドさせることで、前記残り部分（切り残し部分２ａ、折り曲げ部分６ａ）を前記電線（Ｗ）の基端側に押し込むスライド機構と、を備え、
　前記回転機構（４０）は、前記可動板（２０）を前記開閉機構を介して支持する回転フレーム（４１）を備えており、該回転フレーム（４１）と前記可動板（２０）との間に、可動板（２０）の回転方向への逃げを許容するための弾性機構（バネ５０）が介装されている、
　電線の端末加工装置。

　上記［１］の構成によれば、外周部材の残り部分（切り残し部分２ａ、折り曲げ部分６ａ）が、露出した線芯（３、３）の基端側に発生している場合でも、可動板（２０）を閉じた上でのスライド操作によって、その残り部分を電線（Ｗ）の基端側に押し込むことができる。したがって、金属箔の切り残し部分（２ａ）による悪影響を無くすことができて、端末加工品質の向上を図ることができ、その結果、端末加工の自動化に貢献することができる。また、弾性機構（バネ５０）の働きにより可動板（２０）を線芯（３）に柔軟に押し当てることができるので、線芯（３）に傷や圧痕を付けずに、外周部材の残り部分（切り残し部分２ａ、折り曲げ部分６ａ）を電線（Ｗ）の基端側に押し込むことができる。よって、電線の中心軸に対する回転方向の位置を正確に把握することなく、外周部材の残り部分を電線の基端側に押し込むことができる。

［２］　前記線芯は、一対の線芯（３、３）を含み、
　前記凹部は、露出した前記一対の線芯（３、３）の各半周分の外周輪郭に対応した２つの半円状凹部である、
　上記［１］に記載の電線の端末加工装置。

　上記［２］の構成によれば、可動板（２０）を閉じた際に、開閉板（２１、２１）の半円状凹部（２２、２２）を、露出した一対の線芯（３、３）の外周に密着させることが可能になる。よって、端末加工精度の向上が可能となる。

［３］　前記外周部材は、金属箔及び編組の少なくともいずれか一方である、
　上記［１］又は［２］に記載の電線の端末加工装置。

　上記［３］の構成によれば、金属箔（２）の切り残し部分（２ａ）や編組（６）の折り曲げ部分（６ａ）を電線（Ｗ）の基端側に押し込むことができる。

［４］　前記電線は、前記外周部材として編組（６）を含み、
　前記可動板（２０）は、前記シース（１）上に折り返された前記編組（６）の折り曲げ部分（６ａ）を前記電線（Ｗ）の基端側に押し込み、
　前記端末加工装置は、前記編組（６）の折返し部分（６ｂ）を前記シース（１）側に押し込み可能に構成された編組押込筒（１６）を備える、
　上記［１］から［３］のいずれか一に記載の電線の端末加工装置。

　上記［４］の構成によれば、可動板（２０）及び編組押込筒（１６）により、折り曲げ部分（６ａが押し込まれて折り返し部分６ｂが開いたり、折り返し部分６ｂが押し込まれることで折り曲げ部分６ａが起き上ったりすることを防止できる。

　なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。

　本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。

　本出願は、2022年7月27日出願の日本特許出願（特願2022－119626）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明によれば、金属箔の切り残し部分が、露出した線芯の基端側に発生している場合でも、可動板を閉じた上でのスライド操作によって、その切り残し部分を電線の基端側に押し込むことができる。したがって、金属箔の切り残し部分による悪影響を無くすことができて、端末加工品質の向上を図ることができ、その結果、端末加工の自動化に貢献することができる。本発明は、例えば、高速通信用ケーブル等の端末加工に使用される電線の端末加工装置等に有用である。

　１　シース
　２　金属箔
　２ａ　金属箔の切り残し部分
　３　線芯
　６　編組
　６ａ　編組の折り曲げ部分
　２０　可動板
　２１　開閉板
　２２　半円状凹部
　３０　検出ユニット
　４０　回転機構
　４１　回転フレーム
　５０　バネ
　Ｗ　電線
　Ｐｗ　端末加工部

Claims

　線芯と、前記線芯の周囲を覆う金属製の外周部材と、前記外周部材の周囲を覆うシースとを有する電線における先端部のシースおよび外周部材が加工されて、露出した線芯の基端部の前記外周部材の残り部分を処理するための電線の端末加工装置であって、
　露出した前記線芯の外周輪郭に沿った曲線状の凹部を対向端縁に有し、互いに離間する開方向と接近する閉方向に開閉自在とされた一対の開閉板を備え、前記電線の軸線回りに回転可能とされた可動板と、
　前記一対の開閉板を開閉駆動する開閉機構と、
　前記可動板を前記電線の軸線回りに回転すると共に回転方向に位置決めする回転機構と、
　前記一対の開閉板を閉じた状態で、前記可動板を前記電線の基端方向に相対的にスライドさせることで、前記残り部分を前記電線の基端側に押し込むスライド機構と、を備え、
　前記回転機構は、前記可動板を前記開閉機構を介して支持する回転フレームを備えており、該回転フレームと前記可動板との間に、前記可動板の回転方向への逃げを許容するための弾性機構が介装されている、
　電線の端末加工装置。
　前記線芯は、一対の線芯を含み、
　前記凹部は、露出した前記一対の線芯の各半周分の外周輪郭に対応した２つの半円状凹部である、
　請求項１に記載の電線の端末加工装置。
　前記外周部材は、金属箔及び編組の少なくともいずれか一方である、
　請求項１に記載の電線の端末加工装置。
　前記電線は、前記外周部材として編組を含み、
　前記可動板は、前記シース上に折り返された前記編組の折り曲げ部分を前記電線の基端側に押し込み、
　前記端末加工装置は、前記編組の折返し部分を前記シース側に押し込み可能に構成された編組押込筒を備える、
　請求項１に記載の電線の端末加工装置。