WO2023027012A1 - コバルトクロム合金部材及びその製造方法、並びにこれを用いたデバイス - Google Patents

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Abstract

医療用、ガスタービン用、又はその他の産業機器用のデバイスに用いて好適なコバルトクロム合金部材を提供する。当該コバルトクロム合金部材は、質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40、を満たす組成からなり、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、引張強度が800~1200MPaかつ破断伸びが30~80%を示すコバルトクロム合金部材。

Description

コバルトクロム合金部材及びその製造方法、並びにこれを用いたデバイス
 本発明は、ステント、医療用チューブ、医療用ガイドワイヤーなどの医療用デバイスや、高温環境や腐食性環境で使用されるガスタービン用デバイス、又はその他の産業機器用デバイスに好適に用いられるコバルトクロム合金部材及びその製造方法に関する。特に、耐腐食特性と生体親和性に優れ、かつ高強度で延性に優れ、体内留置型医療用デバイスに好適なコバルトクロム合金素材の改良に関する。
 医療機器に用いられる金属部材、特に、体内にインプラントされる金属部材には、耐腐食特性と生体親和性に優れ、しかも高い機械的性質を有する金属が求められ、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金、コバルトクロム合金等が用いられてきた。このような生体適合性の合金として、例えば、歯科鋳造用コバルトクロム合金(JIS T6115)が知られており、ニッケル含有合金には歯科用ステンレス鋼線(JIS T6103)が知られている。
 コバルトクロム合金部材のうち、ステントは狭窄した体内脈管を拡張して維持することを目的とした中空の管状物であり、大きく分けて自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントがある。
 自己拡張型ステントはカテーテル先端に固定し、所定の位置にてカテーテルより超弾性合金、形状記憶合金を用いることで自己拡張性を付与したものであり、例えばニッケル・チタン合金を用いたステントが実用化されている。
 バルーン拡張型ステントは管径圧縮によりバルーンカテーテルに固定し、所定の位置にてバルーンの拡張により管径拡張するステントであり、主にステンレス鋼SUS316Lやコバルトクロム系合金が実用化されている。例えば血管内に狭窄が生じた場合、その狭窄部をバルーンカテーテルにより広げた後に留置され、血管内壁を内側から支持し、再狭窄を防止するために使用される。ステントの挿入に関しては、ステントは収縮状態のバルーンの外側に縮径状態でカテーテル先端に装着され、バルーン部と一緒に血管内に挿入される。バルーン部を狭窄部位に位置させた後、バルーン部を膨らませる事によりステントを拡張させ、狭窄部を拡張した状態でステントを留置させ、バルーンカテーテルが引き抜かれる。
 バルーン拡張型ステント用合金としては外科インプラント材料としてASTMF90-14(Co-20Cr-15W-10Ni合金(L605合金))、ASTMF562-13(Co-20Cr-10Mo-35Ni合金(MP35N合金))、SUS316Lが知られている(非特許文献1、3、4参照)。
 一方、整形外科領域におけるインプラントした金属の破断や、循環器内科領域におけるステントの早期破断が報告され、より疲労特性に優れた金属部材への要求がある。我々は、冠動脈ステント材料として最も一般的に用いられているL605(Co-20Cr-15W-10Ni)合金、MP35N(Co-20Cr-10Mo-35Ni)合金に対して、低サイクル疲労特性を改善した合金を提案している(特許文献1参照)。この合金は組成が質量%で、Crが10~27%、Moが3~12%、Niが22~34%で残部は実質的にCo及び不可避不純物からなるが、Coは37~48%が望ましい。
 ガイドワイヤーは血管内で用いる診断用あるいは治療用のカテーテルを血管内の所定の位置まで挿入するのを補助するものであり、芯材ワイヤーに細いワイヤーを巻き付けた構造をしている。ガイドワイヤーには先端の回転が手元の回転に追従するトルク伝達性や施術時に破断しない為に充分な強度と延性が必要とされる。なお、非特許文献2には、強度と硬さの一般的な関係が説明されている。
特開2019-147982号公報
Comparing and Optimizing Co-Cr Tubing for Stent Applications", Medical Device Materials II, p.274-278, (2004) ASM International. P.Zhang, S.X.Li, Z.F.Zhang, Materials Science and Engineering, A529(2011)62-73 Fort Wayne Metals, Inc.(米国インディアナ州フォートウェイン)ホームページ、材料、ハイパフォーマンス合金、L-605https://www.fwmetals.jp/materials/high-performance-alloys/l-605/ ASM Aerospace Specification Metals Inc.(米国フロリダ州Pompano Beach)ホームページ、AISI Type 316 Stainless Steel, annealed sheethttp://asm.matweb.com/search/SpecificMaterial.asp bassnum=MQ316A
 現在用いられているCo-Cr系合金であるL605やTi-Ni合金は冷間加工が難しい材料でありSUS316と比較すると加工コストが非常に高くなる。
 また最近では、医療用デバイスや、ガスタービン用デバイスや、その他の産業機器用デバイスに好適であって、高い機械的強度と延性を有するコバルトクロム合金部材が求められる。
 特に、神経欠陥や脳血管などの微細で複雑な形状の血管にステントなどの体内留置型医療用デバイスを用いる要求があり、その為には薄く細いチューブを用いてステントの金属部分であるストラットを細くする必要があり、それでも充分な血管保持力を確保するためにはできるだけ高強度の材料が必要である。これはまた体内に留置する金属量の低減にもつながる。
 ガイドワイヤーにおいてもできるだけ細いワイヤーを用いる事で、微細な血管に挿入しやすくなるが、さらに良好なトルク伝達性を実現するにはできるだけ強度が高い必要がある。さらに使用時の破断を防ぐためには延性のある材料が望ましい。
 本発明の目的は、医療用デバイス、ガスタービン用デバイス、その他の産業機器用デバイスに用いて好適なコバルトクロム合金部材を提供することにある。
 特に、本発明の他の目的は、ステントなどの体内留置型医療用デバイスを微細な血管に挿入し易くするガイドワイヤーに好適なコバルトクロム合金部材を提供することである。
 上記目的を達成するために本発明のコバルトクロム合金部材は以下の構成を採用した。
[1]質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
  20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40、
を満たす組成からなり、
 面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、
 引張強度が800~1200MPa、かつ破断伸びが30~80%を示す
 コバルトクロム合金部材。
[2][1]に記載のコバルトクロム合金部材は、好ましくは、
 前記組成からなるコバルトクロム合金素材を所定形状に冷間で塑性加工したコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超える熱処理温度で熱処理して得られるとよい。
[3][1]又は[2]に記載のコバルトクロム合金部材は、好ましくは、質量%で、Niが25~29%、Coが37~48%、Moが9~11%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
  23≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦38、
を満たす組成からなるとよい。
[4][3]に記載のコバルトクロム合金部材は、
 前記組成からなるコバルトクロム合金素材を所定形状に冷間で塑性加工したコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超える熱処理温度で熱処理として、800℃以上1100℃以下で、1分以上60分間以下で熱処理されるとよい。
[5][1]乃至[4]の何れかに記載のコバルトクロム合金部材において、
 前記不可避不純物は、Ti、Mn、Fe、Nb、W、Al、Zr、B、およびCの含有量が質量%で、Tiが1.0%以下、Mnが1.0%以下、Feが1.0%以下、Nbが1.0%以下、Wが1.0%以下、Alが0.5%以下、Zrが0.1%以下、Bが0.01%以下およびCが0.1%以下であるとよい。
[6][1]乃至[5]の何れかに記載の組成を有するコバルトクロム合金部材において、
 前記冷間で塑性加工された所定形状はチューブ状であり、
 結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.1以上0.8以下であると共に、
 引張強度が800~1000MPa、かつ破断伸びが30~80%を示す
 コバルトクロム合金部材であるとよい。
[7][1]乃至[5]の何れかに記載の組成を有するコバルトクロム合金部材において、
 前記冷間で塑性加工された所定形状はワイヤー状であり、
 結晶粒径の平均値は4~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、
 引張強度が1000~1200MPa、かつ破断伸びが30~60%を示す
 コバルトクロム合金部材であるとよい。
[8][1]乃至[7]の何れか1項に記載のコバルトクロム合金部材を使用したデバイスであるとよい。好ましく、このデバイスは医療用デバイス、ガスタービン用デバイス、又はその他の産業機器用デバイスであるとよい。
[9][8]に記載の前記デバイスは、ステント、チューブ、ワイヤー、インプラントの何れかの医療用デバイスであるとよい。
[10][9]に記載の前記デバイスは、尾筒、燃焼筒、スプレーバー、フレームホルダー、アフターバーナー、テールパイプなどの航空用および産業用ガスタービンエンジンの燃焼器および排気構成部品の何れかのガスタービン用デバイスであるとよい。
[11][9]に記載の前記デバイスは、廃棄物焼却炉、ボイラ、高温反応容器および回転式仮焼炉、並びに石油化学製品の製造プラントおよび合成ガスプラントに用いられる産業機器用デバイスであるとよい。
[12]質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
  20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40、
を満たす組成からなるコバルトクロム合金素材を準備し、
 前記準備したコバルトクロム合金素材を1100℃~1300℃で均質化処理し、
 前記均質化処理したコバルトクロム合金素材を、チューブ状又はワイヤー状の形状に冷間で塑性加工を施し、コバルトクロム合金加工まま材を得て、
 前記冷間で塑性加工されたコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超え1100℃以下で、1分以上60分間以下の熱処理を行ない、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であることを特徴とするコバルトクロム合金部材を得る
 コバルトクロム合金部材の製造方法。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、冷間で塑性加工した後の再結晶温度を超えた熱処理により、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下となるため、強度や延性が改善されるなどの機械的特性に優れており、既存製品よりも信頼性が高い。このことより、例えば本発明のコバルトクロム合金部材を用いてステントのような体内留置型医療用デバイスを作製すると、装着時のステント信頼性が高まり、患部への装着がより容易となる。
 本発明のコバルトクロム合金部材では、Co、Ni、Cr、Moを主成分とする合金を冷間で塑性加工した後、再結晶温度以上での熱処理を施すことにより、面心立方格子(fcc)相が安定化される。これにより、形成されたfcc相では、コバルトクロム合金部材の変形に際して、fcc双晶変形および変形誘起によるfccから六方晶系格子(hcp)への変態が生じ、高い加工硬化能と優れた機械的強度・延性を示す。
 なお、本発明のコバルトクロム合金部材において、Mo,Nb等の溶質原子をさらに含有する場合には、転位芯ないしは拡張転位の積層欠陥に偏析させて交差すべりを起き難くすることができ、加工硬化により、機械的強度がさらに高くなる。
本発明に用いられるコバルトクロム合金素材の低サイクル疲労寿命の比較図である。 本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金素材を冷間加工によりチューブ状に作製したコバルトクロム合金加工まま材(上)、およびこれを1050℃で5分間熱処理したコバルトクロム合金部材(下)としてのチューブの全体の外観写真である。 本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金素材を冷間加工によりチューブ状に作製したコバルトクロム合金加工まま材(上)、およびこれを1050℃で5分間熱処理したコバルトクロム合金部材(下)としてのチューブの要部の外観写真(拡大写真)である。 本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金素材を冷間加工によりチューブ状に作製した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理をした熱処理材についての引張試験で得られた応力-歪み線図である。 本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金素材を冷間加工によりチューブ状に作製した加工まま材、およびこれをさらに各温度で熱処理をした熱処理材についての降伏応力、引張強度、及び破断伸びと、熱処理温度との関係を示す図面である。 本発明のコバルトクロム合金部材としてのチューブ(実線)およびL605合金チューブ(破線)についての降伏応力(σ0.2)、引張強度(σUTS)、および破断伸び(Total elongation:全伸び)を比較した図面である。 本発明にかかる合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたIQマップである。 本発明にかかる合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたKAMマップである。 本発明にかかるチューブ状に冷間加工した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材について、結晶方位マップから算出した結晶粒径を示す図面である。 本発明にかかるコバルトクロム合金部材としてのワイヤーの全体の外観写真である。 本発明にかかるコバルトクロム合金部材としてのワイヤーの要部の外観写真(拡大写真)である。 本発明にかかるコバルトクロム合金素材をワイヤー状に冷間加工した加工まま材に対して、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材について、引張試験で得られた応力―歪み線図である。 本発明にかかるワイヤーとしてのコバルトクロム合金部材について、降伏応力、引張強度、および破断伸びと、熱処理温度との関係を示した図面である。 本発明にかかるワイヤー状に冷間加工した加工まま材、およびこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたIQマップである。 本発明にかかるワイヤーについて加工まま材、およびこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたKAMマップである。 本発明にかかるワイヤー状に冷間加工した加工まま材、およびこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材について、EBSDで測定した結晶方位マップから算出した結晶粒径を示す図面ある。
[本発明の概要]
 本発明のコバルトクロム合金部材は、特定の組成からなるコバルトクロム合金素材をチューブ状やワイヤー状などの所定形状に冷間で塑性加工(以下、単に「冷間加工」ともいう)したコバルトクロム合金加工まま材に対して、再結晶温度を超えた特定の熱処理をすることで、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、引張強度が800~1200MPa、かつ破断伸びが30~80%を示す部材が得られる。特に、本発明のコバルトクロム合金部材は、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下である部材が得られることに特徴を有する。これにより、高い加工硬化能と優れた機械的強度・延性を示すコバルトクロム合金部材が得られる。
 以下、本発明の詳細について説明する。
[本発明の詳細]
(コバルトクロム合金素材)
 本発明のコバルトクロム合金素材は、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40を満たす組成からなる。
 不可避不純物とは、意図的に添加した成分ではなく、材料あるいは工程に由来して不可避的に混入した成分をいう。不可避不純物の成分は、特に限定されないが、例えば、Ti、Mn、Fe、Nb、W、Al、Zr、B、又はC等であり、含まれなくてもよい。
 また、本発明のコバルトクロム合金素材は、特定の組成範囲を有すれば特に限定されず、後述するように、均質化処理されたものであってもよく、熱間圧延や熱間鍛造等の熱間加工されたものであってもよく、切削加工などにより特定の形状に加工されたものであってもよい。
 本発明のコバルトクロム合金素材の組成範囲を限定した理由を以下に説明する。
 尚、コバルトクロム合金素材の各成分の含有量は、コバルトクロム合金素材全体を100質量%としたときの含有量(質量%、以下単に「%」と示す。)である。
 また、本発明の数値範囲は、上限値と下限値を含む。以下に示す組成範囲だけでなく、温度処理の範囲、引張強度の範囲、破断伸びや均一伸びの範囲においても同様とする。但し、『超える』とか『未満』のように、数値範囲に上限値又は下限値を含まないことを明記した場合はこの限りでない。
 Ni(ニッケル)は、面心立方格子相を安定化し、加工性を維持し、耐食性を高め、低サイクル疲労寿命を改善し、冷間加工後の再結晶温度を超えた熱処理により強度や延性を改善する効果がある。しかし、本発明のコバルトクロム合金素材のCo、Cr、Moの組成範囲において、Niの含有量が23%未満では当該熱処理による強度や延性の改善効果を得ることが困難であると共に、32%を越えても当該熱処理による強度や延性の改善効果を得ることが困難であることから、本発明のNi含有量は、23~32%であり、好ましくは、25~29%である。これにより、強度及び延性の改善効果が一層得られる。
 Co(コバルト)は、それ自体加工硬化能が大きく、切り欠け脆さを減じ、疲労強度を高め、高温強度を高めると共に、低サイクル疲労寿命を改善し、冷間加工後の再結晶温度を超えた熱処理により強度や延性を改善する効果がある。
 Coの含有量は、37%未満ではその効果が弱く、本組成では48%を越えるとマトリクスが硬くなり過ぎて加工困難となると共に、冷間加工後の再結晶温度を超えた熱処理により強度や延性を改善する効果がなくなる。このため、本発明のCoの含有量は、37~48%であり、好ましくは40~45%である。これにより、強度及び延性の改善効果が一層得られる。
 Mo(モリブデン)は、マトリクスに固溶してこれを強化する効果、加工硬化能を増大させる効果、及びCrとの共存において耐食性を高める効果がある。しかし、Moの含有量が8%未満では所望する効果が得られず、12%を越えると加工性が急激に低下すること、及び脆いσ相が生成しやすくなる。このことから、本発明のMoの含有量は、8~12%であり、好ましくは、9~11%である。これにより、強度及び延性の改善効果が一層得られる。
 Cr、Mo、及び不可避不純物の合計含有量が、コバルトクロム合金素材全体を100%として、20%未満では六方晶系格子(hcp)相が安定になり、40%を越えると、面心立方格子(fcc)相が不安定になり体心立方格子(bcc)層が出現しやすくなる。つまり、Cr、Mo、及び不可避不純物の合計含有量が20~40%でない場合、fcc相が安定化しにくく、これにより得られたコバルトクロム合金部材を変形した際、fcc双晶変形や、変形誘起によるfccからhcpへの変態が生じにくく、優れた延性と共に低サイクル疲労寿命が得られない。このことから、本発明のCr、Mo、及び不可避不純物の合計含有量は、20~40%であり、好ましくは23~38%である。これにより、優れた延性と共に低サイクル疲労寿命が得られる。
 尚、不可避不純物の含有量は、0%であってもよく、0%を超える場合には、Co、Ni、Cr、Moの組成割合を基準に全体が100%となるように不可避不純物の組成割合が調整される。
 Cr(クロム)は耐食性を確保するのに不可欠な成分であり、またマトリクスを強化する効果がある。不可避不純物が0%の場合、本発明のCrの含有量は、好ましくは12~28%であり、より好ましくは14~27%であり、更に好ましくは18~22%である。12%以上で優れた耐食性が得られやすく、28%以下で、加工性及び靱性が急激に低下しにくい。これにより、加工性及び靱性を確保しながら、より優れた耐食性が得られる。
 Ti(チタン)は強い脱酸、脱窒、脱硫の効果があるが、多過ぎると合金中に介在物が増えたり、η相(NiTi)が析出して靱性が低下することから、本発明のTiの含有量は、不可避不純物として1.0%以下であることが望ましい。
 Mn(マンガン)は脱酸、脱硫の効果、及び面心立方格子相を安定化する効果があるが、多過ぎると耐食性、耐酸化性を劣化させるため、本発明のMnの含有量は、1.5%以下であることが望ましい。より望ましくは不可避不純物としての上限は1.0%以下である。
 Fe(鉄)は、面心立方格子相を安定化し加工性を向上させる働きがあるが、多過ぎると耐酸化性が低下するため、本発明のFeの含有量は、不可避不純物として1.0%以下であることが望ましい。
 C(炭素)はマトリクスに固溶するほか、Cr、Mo等と炭化物を形成し、結晶粒の粗大化の防止効果があるが、多過ぎると靭性の低下、耐食性の劣化等が生じるため、本発明のCの含有量は、0.1%以下であることが望ましい。
 Nb(ニオブ)はマトリクスに固溶してこれを強化し、加工硬化能を増大させる効果があるが、3.0%を越えるとσ相やδ相(NiNb)が析出して靭性が低下することから、本発明のNbの含有量は、3.0%以下であることが望ましい。より望ましくは不可避不純物としての上限は1.0%以下である。
 W(タングステン)は、マトリクスに固溶してこれを強化し、加工硬化能を著しく増大させる効果があるが、5.0%を越えるとσ相を析出して靭性が低下することから、本発明のWの含有量は、5.0%以下であることが望ましい。より望ましくは、不可避不純物としての上限は1.0%以下である。
 Al(アルミ)は、脱酸、及び耐酸化性を向上させる効果があるが、多過ぎると耐食性の劣化等が生じるため、本発明のAlの含有量は、0.5%以下であることが望ましい。
 Zr(ジルコニウム)は、高温での結晶粒界強度を上げて、熱間加工性を向上させる効果があるが、多過ぎると逆に加工性が悪くなるため、本発明のZrの含有量は、0.1%以下であることが望ましい。
 B(ホウ素)は、熱間加工性を改善する効果があるが、多過ぎると逆に熱間加工性が低下し割れやすくなるため、本発明のBの含有量は、0.01%以下であることが望ましい。
(コバルトクロム合金加工まま材)
 本発明のコバルトクロム合金加工まま材は、上記コバルトクロム合金素材を所定形状に冷間加工して得られる。
 本発明では、冷間加工中に双晶変形や誘起変態が生じることで、fcc変形双晶やhcp相(ε相)が導入され、高い密度の帯状の変形帯組織が形成される。これにより、非常に高い強度が得られる。その他、本発明では冷間加工により、結晶粒が微細化され、さらに高い強度が得られやすい。
 所定形状はとしては、特に限定されないが、例えば、チューブ状、ワイヤー状であることが好ましい。これにより、チューブやワイヤー形状の医療用又は航空宇宙用のデバイスに用いることができる。
(コバルトクロム合金部材)
 本発明のコバルトクロム合金部材は、上記コバルトクロム合金加工まま材を結晶温度以上の特定の熱処理をして得られる。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、上記コバルトクロム合金素材と同様の組成を有し、質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40を満たす組成からなり、好ましくは、質量%で、Niが25~29%、Coが37~48%、Moが9~11%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、23≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦38を満たす組成からなるとよい。
 不可避不純物は、Ti、Mn、Fe、Nb、W、Al、Zr、B、およびCの含有量が質量%で、Tiが1.0%以下、Mnが1.0%以下、Feが1.0%以下、Nbが1.0%以下、Wが1.0%以下、Alが0.5%以下、Zrが0.1%以下、Bが0.01%以下およびCが0.1%以下であるとよい。
 これにより、高い加工硬化能と優れた機械的強度・延性が得られやすい。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有する。
 すなわち、本発明では、熱処理をすることでコバルトクロム合金加工まま材におけるfcc変形双晶又はhcp相が、fcc相に変化する。fcc相が形成されることで、コバルトクロム合金部材を変形させた際、再び、fcc双晶変形又は変形誘起によるfccからhcpへの変態が生じる。このような変形や変態が生じる本発明のコバルトクロム合金部材は、機械的強度及び延性に優れる。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下である。
 KAM値は、例えば、後方電子散乱回折(EBSD)測定によって得られる結晶方位の局所的な変化であり、次式(1)で定義される局所方位差(Kernel Average Misorientation: KAM)で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
           (1)
 ここで、αi,jは測定点iとjの間の結晶方位差を示す。具体的な計算手順は、例えば佐々木孔英他、『微視的な塑性ひずみ分布と結晶方位差の関係』日本金属学会誌、第74巻、467頁-474頁(2010)に記載されている。KAM値は、転位などの格子欠陥密度の高い領域や結晶格子面の湾曲が著しい領域で高い値をとる。
 KAM値により、結晶粒内の歪分布を評価することができる。本発明では、KAM値が0.0以上1.0以下と低く、転位などの格子欠陥密度が低いことで、本発明のコバルトクロム合金部材は機械的強度に優れる。また、結晶粒子が均一化されやすいことで、結晶性に優れ、均質化された機械的特性が得られやすい。
 本発明のコバルトクロム合金部材の結晶粒径の平均値は、2μm以上15μm以下であり、好ましくは4μm以上15μm以下であり、より好ましくは4μm以上10μm以下である。これにより、高い機械的強度が確保されやすい。
 結晶粒径の平均値は、EBSDによるエリアフラクション法により算出される。詳細には、結晶粒径の平均値は、JIS G0551「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」やASTM E112-13「Standard Test Methods for Determining Average Grain Size(平均結晶粒度決定のための標準試験方法)に準拠し算出できる。
 本発明のコバルトクロム合金部材では、引張強度が800~1200MPaである。
 コバルトクロム合金部材では、破断伸びが30~80%であり、好ましくは30~60%であり、更に好ましくは50~60%である。
 引張強度、破断伸びは、例えば、島津製作所製オートグラフを用いた引張試験により測定される。
 上記物性を有するコバルトクロム合金部材は、機械的強度及び延性に優れる。
 コバルトクロム合金部材では、均一伸びが25~60%であることが好ましく、より好ましくは30~60%であり、更に好ましくは50~60%である。
 均一伸びは、例えば、島津製作所製オートグラフを用いた引張試験により測定される。
 上記物性を有するコバルトクロム合金部材は、機械的強度及び延性により優れる。
 特に、本発明のコバルトクロム合金部材が、内部が中空で周面がコバルトクロム合金で囲われたチューブ状である場合、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.1以上0.8以下であると共に、引張強度が800~1000MPa、かつ破断伸びが30~80%を示すことが好ましい。
 本発明のコバルトクロム合金部材が、断面形状が円形断面、楕円形断面、平板状断面、凹状や凸状の異形断面等のワイヤー状である場合、結晶粒径の平均値は4~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、引張強度が1000~1200MPa、かつ破断伸びが30~60%を示すことが好ましい。
 これにより、より高い強度と優れた延性が得られる。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、以下の条件の熱処理により得られることが好ましい。
 本発明の熱処理の温度は、コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超え1100℃以下であることが好ましく、より好ましくは800℃以上1100℃以下であり、更に好ましくは900℃以上1100℃以下である。コバルトクロム合金素材の再結晶温度は、例えば本実施例の組成であるCo-20Cr-10Mo-26Ni合金では780℃~820℃の範囲にあるが、コバルトクロム合金素材の合金組成によっては750℃~1000℃の範囲にあることもある。
 再結晶化温度以上とすることで、再結晶化され、fcc相が安定化する。1100℃以下とすることで、結晶粒径の粗大化が抑えられる。
 これにより、上記範囲の引張強度、均一伸び、破断伸びを有し、高い機械的強度及び延性を有するコバルト合金部材が得られる。
 本発明の熱処理の時間は、1分以上60分間以下であることが好ましい。1分以上とすることで、充分に再結晶化され、fcc相が安定化する。60分以下とすることで、結晶粒径の粗大化が抑えられる。
 これにより、上記範囲の引張強度、均一伸び、破断伸びを有し、高い機械的強度及び延性を有するコバルト合金部材が得られやすい。
 特に、コバルトクロム合金部材は、コバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超える熱処理温度で熱処理として、800℃以上1100℃以下で、1分以上60分間以下で熱処理して得られることが好ましい。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、帯状の変形帯組織を有してもよい。本発明の帯状の変形帯組織とは、冷間加工により生じた多数の転位が密集した転位セルの集合体組織であり、冷間加工時に導入されたfcc変形双晶やhcp相(ε相)近傍にある組織である。
 本発明のコバルトクロム合金部材は、積層欠陥エネルギーが低く、変形に際し部分転位が運動しプレート状の微細なfcc双晶およびhcp相が形成することによって、高い加工硬化能が得られる。また、原子半径の大きさが1.25ÅであるCo、Ni、Crに比べ、原子半径が大きいかあるいは近似しているMo,Nb等の溶質原子が、転位芯ないしは拡張転位の積層欠陥に強く引き付けられて偏析して交差すべりが起き難くなるため、高い加工硬化能が発現する。
 また、本発明のコバルトクロム合金部材の高い加工硬化能は体温付近のみならず高温下においても発現するため、高温強度特性も高いという特徴を有している。そこで、コバルトクロム合金部材の用途は、医療用に限定されるものではなく、航空宇宙用や蒸気タービン用等の産業機器用として本発明のコバルトクロム合金部材はより過酷な条件下での使用に耐えるものである。
(コバルトクロム合金部材の製造方法)
 コバルトクロム合金部材の製造方法は、コバルトクロム合金素材を準備する工程と、上記準備したコバルトクロム合金素材を1100℃~1300℃で均質化処理する工程と、上記均質化処理したコバルトクロム合金素材を、チューブ状又はワイヤー状の形状に冷間で塑性加工を施し、コバルトクロム合金加工まま材を得る工程と、上記冷間で塑性加工されたコバルトクロム合金加工まま材を、上記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超え1100℃以下で、1分以上60分間以下の熱処理を行う工程を含む。上記コバルトクロム合金素材の再結晶温度は、例えば800℃である。
 これにより、高い機械的強度及び延性を有するコバルトクロム合金部材が得られる。
 コバルトクロム合金素材を準備する工程では、上記コバルト合金素材が用いられる。
 冷間で塑性加工を施す工程では、チューブ状又はワイヤー状に冷間加工した上記コバルトクロム合金加工まま材が得られる。
 コバルトクロム合金加工まま材に対して熱処理を行う工程では、上記コバルトクロム合金部材が得られる。
 均質化処理では、コバルトクロム合金素材に対して、1100℃~1300℃で熱処理を行うことで、各組成を均一に分散させる。これにより、後工程の冷間加工において機械的特性の均一性が確保される。
 均質化処理温度を1100℃以上とすることで、効率よく材料の均質化が可能となり、1300℃以下とすることで、結晶粒子が過度に粗大化するのを防ぐことができ、かつ、材料表面の著しい酸化を防ぐことができる。その他の均質化処理の条件は、得られるコバルトクロム合金部材の物性を損なわない範囲で適宜設定可能である。
 均質化処理されるコバルトクロム合金素材は、上記特定の組成を有するコバルトクロム合金素材であればよく、例えば、高周波溶解により作製された合金インゴットであってもよい。
 また、均質化処理後のコバルトクロム合金素材は、丸棒状などの冷間加工しやすい形状に熱間加工されてもよい。
 また、本発明のコバルトクロム合金部材の製造方法では、コバルトクロム合金素材をステント用の板材に冷間加工したコバルトクロム合金加工まま材に対して、再結晶温度以上1100℃以下の熱処理後、200℃以上再結晶温度以下の温度で時効処理がなされてもよい。これにより、転位芯ないしは拡張転位の積層欠陥にMo等の溶質原子が引き付けられ転位を固着する、いわゆる静的ひずみ時効により、一層高い強度特性が得られる。
 本発明のコバルトクロム合金素材は、上記コバルトクロム合金素材と同様の組成を有する合金インゴットを、高周波溶解にて作製し、1100℃~1300℃で熱間鍛造及び均質化処理をし、熱間圧延と切削加工により直径8mm、長さ270mmの丸棒を作成することで得られる。
 本発明の上記製造方法により、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であることを特徴とするコバルトクロム合金部材が得られる。
 本発明の第1の実施例は、本発明のコバルトクロム合金素材を用いて、チューブ状の部材としたものである。
 即ち、上記のコバルトクロム合金素材を冷間加工する事で直径1.6mm、厚さ0.1mm,長さ1mのチューブ材を得た。このチューブ材がコバルトクロム合金加工まま材に相当する。さらにこのチューブ材に、所定の熱処理を施すことによって延性を付与して、チューブ材としてのコバルトクロム合金部材を得た。
 本実施例に使用されたコバルトクロム合金素材の組成を表1に示す。単位は質量%である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 実施例1~4では、Cr20質量%とMo10質量%と含有量を一定にし、Niの含有量に対しCoの含有量を変化させた。Niの含有量は、23~32質量%の範囲で変化させた。
 比較例1~4では、比較材料として、それぞれ、市販されているCo-20Cr-10Mo-35Ni合金(以下、単に「MP35N合金」という)、Co-20Cr-10Mo-20Ni合金、Co-20Cr-15W-10Ni合金(以下、単に「L605合金」という」)、SUS316L(Hayes社製)を用いた。実施例1~4では、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有することを確認している。
 棒状に熱間加工後、1200℃で1分間熱処理をした実施例1~4の組成のコバルトクロム合金素材及び比較例1~4の組成の合金について、歪み振幅0.01での低サイクル疲労試験を行った。
 試験結果を図1に示した。実施例1~4では、いずれも疲労寿命が3000回以上と良好であった。特に、23質量%のNi(実施例4)、26質量%のNi(実施例3)、29質量%のNi(実施例2)のコバルトクロム合金素材は、比較例1~4のいずれの既製品に比べ、低サイクル疲労寿命に改善が認められた。
 また、棒状に熱間加工後、1200℃で1分間熱処理をした実施例1~4の組成のコバルトクロム合金素材及び比較例1~4の組成の合金について、ヱイ・アンド・デイ製テンシロン引張試験機を用いて歪み速度2.5×10-4-1で引張試験を実施し、その結果を表2に示した。実施例1~4に係るコバルトクロム合金素材では、848~886MPaの引張強度を示し、MP35N合金(比較例1)と同等のコバルトクロム合金特有の高い引張強度を示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 図2は、コバルトクロム合金素材において、最も優れた疲労寿命を有する、実施例3に係るCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材の冷間加工により作製したコバルトクロム合金加工まま材(上)、1050℃で5分間熱処理したコバルトクロム合金部材(下)としてのチューブの外観写真で、図2Aは全体写真、図2Bは要部の拡大写真である。サイズは外径1.6mm、厚さ0.1mm、長さ980~1280mmであり、良好な表面性状を有している。
 図3は作製したCo-20Cr-10Mo-26Ni合金のチューブ材であって、冷間加工あがりの状態のコバルトクロム合金加工まま材(以下、単に「加工まま材」ともいう)と、加工まま材に対して、650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃で5分間熱処理をしたコバルトクロム合金部材(以下、単に「熱処理材」ともいう)製チューブの引張強度測定結果を示した図面で、横軸が歪[%]、縦軸が応力[MPa]を示している。引張試験は島津製作所製オートグラフを用い、試験速度1.2mm/s、標点間距離110mmで行った。
 また表3には、図3から得られた0.2%耐力[MPa]、引張強度[MPa]、破断伸び[%]を示した。650℃、750℃で熱処理したもの(単に、「650℃、750℃熱処理材」等ともいう。)は加工まま材に比べて高い引張強度と低い延性を示した。850℃以上の温度で熱処理により引張強度は低下するが延性は高くなり、1050℃,5分の熱処理したものは破断伸び63.7%、降伏応力が561.1MPa、引張強度は1040.6MPaであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 図4にCo-20Cr-10Mo-26Ni合金のチューブ材についての、降伏応力(YS)、引張強度(UTS)、破断伸び(Total elongation:全伸び)と熱処理温度(Annealing temperature)の関係を示した。尚、降伏応力は0.2%耐力(σ0.2)として示した。熱処理温度が850℃以上になると降伏応力と引張強度が低下するとともに、破断伸びが顕著に大きくなる。
 図5はCo-20Cr-10Mo-26Ni合金のチューブ材(加工まま材)、及び650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃で5分間熱処理をした熱処理材における降伏応力(σ0.2)と引張強度(σUTS)、破断伸び(Total elongation:全伸び)の値をL605合金の文献値(非特許文献2参照)と比較した図面である。縦軸は降伏応力と引張強度[MPa]、横軸は破断伸び歪み[%]である。実線が本実施例に係るコバルトクロム合金部材としてのチューブを示し、点線がL605合金チューブを示す。引張強度の文献値と比較すると、本発明のチューブの降伏応力は同程度の伸びを示すL605合金チューブよりも高い。また同程度の降伏応力を示すL605よりも大きな伸びを示す。また850℃以上の温度で5分間熱処理した材料はL605材と同程度の強度で、より大きな破断伸びを示す。
 図6はCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についての後方電子散乱回折(EBSD)法により得られたIQマップである。IQマップとは、イメージクォリティーマップとも呼ばれ、結晶性の良し悪しを記すマップである。EBSDパターンをHough変換(直線を点に変換する手法)した際のHough空間上のバンドを示すピークの強度をプロットしたもので、バンドが鮮明なほどパターンの発生領域の結晶性が良くIQは高い値をとる。
 図6で線状に見えるのは結晶粒界または転位、積層欠陥などの結晶性の悪い領域である。加工まま材や、650℃、750℃熱処理材は転位密度が高く、加工組織が残存しているが、850℃以上の温度で熱処理した熱処理材は再結晶組織となっている。また熱処理温度が高くなると結晶粒径が大きくなっている。
 図7はCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたKAM値を示すKAMマップである。KAM値は上記式(1)より算出され、図中の数値は視野内の平均のKAM値である。
 加工まま材、650℃、750℃熱処理材は転位密度が高く、加工組織が残存しており平均のKAM値が1以上と高いが、850℃以上の温度で熱処理した熱処理材はKAM値が1以下と低く欠陥密度の低い再結晶組織となっている。また熱処理温度が高くなると結晶粒径が大きくなっている。
 即ち、加工まま材のKAM値は、1.32±0.74であるのに対して、再結晶温度よりも低い温度である650℃熱処理材は1.26±0.71、750℃熱処理材は1.25±0.69である。他方で、再結晶温度よりも高い温度である850℃熱処理材は0.48±0.30、950℃熱処理材は0.47±0.30、1050℃熱処理材は0.32±0.15である。
 図8はCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材、およびこれを650℃、750℃、850℃、950℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材の結晶粒径を示した。結晶粒径は、EBSDで測定した結晶方位マップ(指定した結晶方位の分布状況を示すマップ)から算出した。
 加工まま材の平均結晶粒径は、5.1μmであるのに対して、再結晶温度よりも低い温度である650℃熱処理材は5.3μm、750℃熱処理材は4.3μmである。他方で、再結晶温度よりも高い温度である850℃熱処理材は2.3μm、950℃熱処理材は3.2μm、1050℃熱処理材は7.6μmである。850℃の熱処理では再結晶により2.3μmの微細な結晶粒が得られている。
 本発明の第2の実施例は、本発明の実施例3のコバルトクロム合金素材を用いて、ワイヤー状の部材としたものである。即ち、コバルトクロム合金素材について、冷間加工により、直径0.5mm、長さ1mのワイヤー材を得た。このワイヤー材がコバルトクロム合金加工まま材に相当する。さらにこのワイヤー材に、所定の熱処理を施すことによって延性を付与して、ワイヤー材としてのコバルトクロム合金部材を得た。
 図9は冷間加工で作製したワイヤー状のコバルトクロム加工まま材の外観の写真で、図9Aは全体写真、図9Bは要部の拡大写真である。直径0.5mm、長さは1000mmであり、良好な外観を呈している。
 図10は、作製したCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をワイヤー状に冷間加工したコバルトクロム加工まま材に対して、650℃、850℃、1050℃で5分間保持の熱処理をした熱処理材について、引張強度測定結果を示した図面で、横軸が歪[%]、縦軸が応力[MPa]を示している。引張試験は島津製作所製オートグラフを用い、試験速度1.2mm/s、標点間距離110mmで行った。同条件にて作製されたNo.1,2では、同様の結果が得られた。
 表4は本発明のワイヤー状に冷間加工したコバルトクロム合金加工まま材、およびこのワイヤー状の加工まま材に対して、450℃、650℃、850℃、1050℃で5分間熱処理をしたコバルトクロム合金部材としてのワイヤー、並びに比較材ワイヤーの引張強度[MPa]と破断伸び[%]を示したものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 表5は、本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金部材としてのワイヤーの引張強度と破断伸びのSUS316L、L605合金、およびMP35N合金との比較である。表5で作製したコバルトクロム合金部材は、表4で作製したコバルトクロム合金部材と同様の条件により作製され、同様の結果が得られた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
比較例 SUS316L:引張強度480MPa、破断伸び40%、
表5中の「比較例L605」及び「比較例MP35N」の数値(%)は、冷間加工率を示す。
 本発明の一実施例にかかるコバルトクロム合金部材としてのワイヤーは、ガイドワイヤーとして最も広く用いられているSUS316Lを上回る強度を示し、L605合金及びMP35Nのワイヤーとは同程度の引張強度と破断伸びを示した(図10、表5)。
 図11にはCo-20Cr-10Mo-26Ni合金ワイヤーについて降伏応力、引張強度、破断伸びと熱処理温度の関係を示した。熱処理温度が850℃以上になると降伏応力と引張強度が低下するとともに、破断伸びが顕著に大きくなる。
 図12にはCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をワイヤー状に冷間加工した加工まま材、およびこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたIQマップである。加工まま材、450℃、650℃熱処理材は転位密度が高く、加工組織が残存しているが、850℃以上の温度で熱処理した熱処理材は再結晶組織となっている。また熱処理温度が高くなると結晶粒径が大きくなっている。
 図13にはCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をワイヤー状に冷間加工した加工まま材、およびこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材についてのEBSDにより得られたKAMマップである。
 即ち、加工まま材のKAM値は、1.76±0.93であるのに対して、再結晶温度よりも低い温度である450℃熱処理材は2.34±1.07、650℃熱処理材は2.04±1.05である。他方で、再結晶温度よりも高い温度である850℃熱処理材は0.33±0.43、1050℃熱処理材は0.96±0.61である。
 加工まま材、450℃、650℃熱処理材はKAM値が1.76~2.01と高く、転位密度が高く、加工組織が残存しているが、再結晶温度よりも高い温度である850℃以上の温度で熱処理した試料はKAM値が1以下に低下しており、転位などの欠陥の密度が低下している。
 図14はCo-20Cr-10Mo-26Ni合金素材をチューブ状に冷間加工した加工まま材とこれを450℃、650℃、850℃、1050℃の温度で5分間熱処理した熱処理材について、EBSDで測定した結晶方位マップから算出した結晶粒径を示した。
 即ち、加工まま材の平均結晶粒径は、9.04μmであるのに対して、再結晶温度よりも低い温度である450℃熱処理材は10.3μm、650℃熱処理材は7.78μmである。他方で、再結晶温度よりも高い温度である850℃熱処理材は4.43μm、1050℃熱処理材は12.1μmである。再結晶温度よりも高い温度である850℃の熱処理では再結晶により4.4μmの微細な結晶粒が得られている。
 以上詳細に説明したように、本発明の合金組成を有するコバルトクロム合金素材を冷間加工により、チューブやワイヤーのような所定形状に作製してから、コバルト合金素材の再結晶温度を超える熱処理をすることで高強度と高延性を有するコバルトクロム合金部材が得られる。このようなコバルトクロム合金部材は、疲労寿命の長いコバルトクロム合金部材を用いている関係で、医療用デバイス、ガスタービン用デバイス、又はその他の産業機器用デバイスでの利用に適している。
 医療用デバイスとしては、ステント、カテーテル、締結ケーブル、ガイドロッド、整形外科用ケーブル、心臓弁、インプラント等の体内留置型医療用デバイスがある。その他の医療用デバイスとしては、骨ドリルビットや胆石の除去用ワイヤーとしても使用できる。
 ガスタービン用デバイスとしては、尾筒、燃焼筒、スプレーバー、フレームホルダー、アフターバーナー、テールパイプなどの航空用および産業用ガスタービンエンジンの燃焼器および排気構成部品がある。産業機器用デバイスとしては、廃棄物焼却炉、ボイラ、高温反応容器および回転式仮焼炉、並びに石油化学製品の製造プラントおよび合成ガスプラントに用いられる。

Claims (12)

  1.  質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
      20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40、
    を満たす組成からなり、
     面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、
     引張強度が800~1200MPa、かつ破断伸びが30~80%を示す
     コバルトクロム合金部材。
  2.  前記組成からなるコバルトクロム合金素材を所定形状に冷間で塑性加工したコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超える熱処理温度で熱処理して得られる
     請求項1に記載のコバルトクロム合金部材。
  3.  質量%で、Niが25~29%、Coが37~48%、Moが9~11%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
      23≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦38、
    を満たす組成からなる
     請求項1又は2に記載のコバルトクロム合金部材。
  4.  前記組成からなるコバルトクロム合金素材を所定形状に冷間で塑性加工したコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超える熱処理温度で熱処理として、800℃以上1100℃以下で、1分以上60分間以下で熱処理して得られる
     請求項3に記載のコバルトクロム合金部材。
  5.  前記不可避不純物は、Ti、Mn、Fe、Nb、W、Al、Zr、B、およびCの含有量が質量%で、Tiが1.0%以下、Mnが1.0%以下、Feが1.0%以下、Nbが1.0%以下、Wが1.0%以下、Alが0.5%以下、Zrが0.1%以下、Bが0.01%以下およびCが0.1%以下である
     請求項1乃至4の何れか1項に記載のコバルトクロム合金部材。
  6.  前記冷間で塑性加工された所定形状はチューブ状であり、
     結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.1以上0.8以下であると共に、
     引張強度が1000~1200MPa、かつ破断伸びが30~80%を示す
     請求項1乃至5の何れか1項に記載のコバルトクロム合金部材。
  7.  前記冷間で塑性加工された所定形状はワイヤー状であり、
     結晶粒径の平均値は4~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であると共に、
     引張強度が1000~1200MPa、かつ破断伸びが30~60%を示す
     請求項1乃至5の何れか1項に記載のコバルトクロム合金部材。
  8.  請求項1乃至7の何れか1項に記載のコバルトクロム合金部材を使用したデバイス。
  9.  前記デバイスは、ステント、チューブ、ワイヤー、インプラントの何れかの医療用デバイスである
     請求項8に記載のデバイス。
  10.  前記デバイスは、尾筒、燃焼筒、スプレーバー、フレームホルダー、アフターバーナー、テールパイプなどの航空用および産業用ガスタービンエンジンの燃焼器および排気構成部品の何れかのガスタービン用デバイスである
     請求項8に記載のデバイス。
  11.  前記デバイスは、廃棄物焼却炉、ボイラ、高温反応容器および回転式仮焼炉、並びに石油化学製品の製造プラントおよび合成ガスプラントでの用途の産業機器用デバイスである
     請求項8に記載のデバイス。
  12.  質量%で、Niが23~32%、Coが37~48%、Moが8~12%であって、残部にCrと不可避不純物が含まれると共に、
      20≦[Cr%]+[Mo%]+[不可避不純物%]≦40、
    を満たす組成からなるコバルトクロム合金素材を準備し、
     前記準備したコバルトクロム合金素材を1100℃~1300℃で均質化処理し、
     前記均質化処理したコバルトクロム合金素材を、チューブ状又はワイヤー状に冷間で塑性加工を施し、コバルトクロム合金加工まま材を得て、
     前記冷間で塑性加工されたコバルトクロム合金加工まま材に対して、前記コバルトクロム合金素材の再結晶温度を超え1100℃以下で、1分以上60分間以下の熱処理を行ない、面心立方格子(fcc)からなる結晶構造、または面心立方格子(fcc)及び六方晶系格子(hcp)からなる結晶構造を有し、結晶粒径の平均値は2~15μmであって、局所的な結晶方位変化量(KAM値)が0.0以上1.0以下であることを特徴とするコバルトクロム合金部材を得る
     コバルトクロム合金部材の製造方法。
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