WO2021152681A1

WO2021152681A1 - 捕虫器

Info

Publication number: WO2021152681A1
Application number: PCT/JP2020/002859
Authority: WO
Inventors: 脩奥矢
Original assignee: 株式会社Ｌｕｃｉ
Priority date: 2020-01-27
Filing date: 2020-01-27
Publication date: 2021-08-05

Abstract

【課題】虫を誘引する光を外部に向かって広範囲に放射する光放射上の開放性と、捕虫器の内部空間を外部から見え難くする視認上の閉鎖性との両立を図る。【解決手段】捕虫器１は、ベース部材との間に内部空間を形成するように、ベース部材と対向して配置されるルーフ部材３を有する。このルーフ部材３は、自己の対角線Ｄを頂部として屋根状に傾斜した一対の傾斜部３Ａ，３Ｂを備えている。捕虫器１における複数の異なる側部には、開口部１０ａ～１０ｃがそれぞれ設けられている。ルーフ部材３の内面には捕虫シート６が取り付けられている。この捕虫シート６は、一対の傾斜部３Ａ，３Ｂによって形成される立体的な内面形状に応じて、自己の対角線を底部として凹状に撓んでいる。

Description

捕虫器

　本発明は、発光体から虫を誘引する光を発して、この光によって誘引された虫を捕虫シートで捕らえる捕虫器に関する。

　従来、紫外線などの誘引光を用いて虫を誘引して、これを捕虫シートで捕らえる捕虫器が知られている。例えば、特許文献１に記載された虫誘引装置は、互いに対向して前後に配置されたリアパネルおよびフロントパネルを有し、フロントパネルの内側には発光ユニットが設けられている。また、リアパネル側の平坦な内周面には、矩形状の捕虫シートが平面の状態を保ちながら取り付けられる。

特許第６３７２９０７号公報

　一般に、捕虫器では、誘引光を効率良く広範囲に放射すること、誘引光が捕虫シートを適切に照射すること、捕虫シートへの到達経路がスムーズであることなどが捕虫性能上の重要なポイントとなっている。その一方で、このような捕虫性能と相反するようなユーザ側のニーズも存在する。例えば、住空間内や飲食店などで使用する場合、捕虫シートに捕らえられた虫を見るのは気持ちが悪いなどの理由から、捕虫器の内部空間が外部から見えないようにして欲しいといった、視認上の閉鎖性に関するニーズが高いが、かかるニーズは、捕虫性能と相反するものである。なぜなら、捕虫器の内部空間を見え難くするために、捕虫器に配置される開口部の数や開口面積を減らしたり、これが配置される向きを限定したりすれば、特定の方向に偏ることなく広範囲に光を放射するといった光放射上の開放性が損なわれるからである。

　本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、虫を誘引する光を外部に向かって広範囲に放射する光放射上の開放性と、捕虫器の内部空間を外部から見え難くする視認上の閉鎖性との両立を図ることである。

　かかる課題を解決すべく、本発明は、ベース部材と、ルーフ部材と、発光体と、複数の開口部と、捕虫シートとを有する捕虫器を提供する。ルーフ部材は、ベース部材との間に内部空間を形成するように、ベース部材と対向して配置されている。ルーフ部材は、自己の対角線を頂部として屋根状に傾斜した一対の傾斜部を備える。発光体は、ベース部材の内側に設けられ、虫を誘引する誘引光を発する。複数の開口部は、内部空間に臨むように、ベース部材およびルーフ部材の間の側部に設けられている。これらの開口部は、発光体から発せられた誘引光を外部に向かって放射すると共に、誘引光によって誘引された虫が内部空間に侵入することを許容する。捕虫シートは、ルーフ部材の内面に取り付けられている。捕虫シートは、一対の傾斜部によって形成される立体的な内面形状に応じて、自己の対角線を底部として凹状に撓んでいる。

　ここで、本発明において、上記ベース部材は、略矩形状かつ略平板状の部材であって、上記ルーフ部材は、略矩形状かつ略平板状の部材をその対角線に沿って屈曲させた屋根形状を有することが好ましい。

　本発明において、上記開口部は、１つの側部の開口形状として、三角形状を有することが好ましい。また、上記開口部は、互いに隣り合った２つの側部において連続しており、同一の高さを共有する２つの三角形を繋ぎ合わせた開口形状を有していてもよい。

　本発明によれば、ルーフ部材が一対の傾斜部を備えることで、その構造上、特定の方向の側部を閉塞する必要がなく、全ての側部に開口部を自在に配置できる。そして、複数の開口部を側部に設けることで、虫を誘引する光を外部に向かって広範囲に放射できる。また、開口部から捕虫器の内部空間を見た場合、ルーフ部材の内面が見え易い角度と見え難い角度とが存在するものの、見る者の手前側に位置する傾斜部によって視線が遮られるような角度では、ルーフ部材の内面の多くが覆い隠されることになる。さらに、捕虫シート自体もルーフ部材の内面形状に応じて撓んでいるため、見上げるような視線に対しても、捕虫シートに捕らえられた虫が見え難くなる。その結果、光放射上の開放性と、視認上の閉鎖性との両立を図ることができる。

非自立時における捕虫器の外観斜視図自立時における捕虫器の外観斜視図捕虫器の展開斜視図発光ユニットの展開斜視図ルーフ部材の内面形状を示す斜視図捕虫シートの取付状態を示す断面図捕虫器の側部に設けられる開口部の説明図第１の比較例の説明図第２の比較例の説明図本実施例の説明図

　図１および図２は、本実施形態に係る捕虫器の外観斜視図であり、図１は非自立状態、図２は自立状態をそれぞれ示す。この捕虫器１は、住空間内や飲食店などに設置され、虫を誘引する特性を有する誘引光を発すると共に、この誘引光によって誘引され、捕虫器１の内部空間に侵入した虫を捕らえる。捕虫器１の筐体は、前後方向に配置された複数の部材、具体的には、ベース部材２およびルーフ部材３を主体に構成されており、捕虫器１の自立性などの付加機能を実現するために、スタンド部材４が設けられている。

　ベース部材２およびルーフ部材３は、永久磁石およびの間に生じる磁気吸引力によって係脱自在に固定される。また、ベース部材２およびルーフ部材３の間に形成される捕虫器１の側部には、向きが異なる複数の開口部１０が設けられている。これらの開口部１０は、外部に向かって誘引光を放射する光放射部として機能すると共に、この誘引光によって誘引された虫が捕虫器１の内部空間に侵入することを許容する虫の侵入部としても機能する。また、複数の開口部１０のうちの少なくとも一つは、捕虫器１内に収容された捕虫シートを外部に取り出すためのシート取出部としても機能させてもよい。

　この捕虫器１の訴求上の特徴としては、第１に、筐体における高さ方向のボリューム（量感）を抑えつつ、設置環境との調和を図るために、ルーフ部材３を傾斜させた立体形状にすると共に、２箇所の角部の高さを抑えることで、軽やかな外観にしたことである。第２に、筐体の背面に永久磁石を取り付けることで、設置作業を簡略化すると共に、自立やフック掛けといった各種の設置形態に対応可能にしたことである。

　第３に、筐体の内部に収容された捕虫シートを交換可能な機構を備え、虫嫌いのユーザでも扱い易くメンテナンス性に優れた構造を採用したことである。第４に、ルーフ部材３によって捕虫器１の内部空間を極力覆い隠して、捕虫シートに捕らえられた不快な虫を見せないようにしつつ、複数の開口部１０によって十分な捕虫性能を確保したことである。最後に、虫を誘引する光を発するＵＶＬＥＤと、白色ＬＥＤとが混在した光源を用いていることである。これにより、人の目には青い誘引光（ＵＶ光）が見え難くなり、捕虫器１があたかも間接照明器具であるかのような印象をユーザに与えることができる。

　図３は、捕虫器１の展開斜視図である。この捕虫器１は、ベース部材２と、ルーフ部材３と、スタンド部材４と、光学ユニット５とを有すると共に、ベース部材２とスタンド部材３との間に形成される内部空間には、捕虫シート６が着脱自在に収容される。

　ベース部材２は、ＡＳＡ樹脂などを用いた射出成形によって一体で形成されており、捕虫器１の筐体の一部をなす。本実施形態では、ベース部材２として、略矩形状で、かつ、平面構造に近いものが用いられる。ベース部材２の内側（同図の前面側）には、少なくとも、誘引光を発する発光体が内蔵された発光ユニット５が設けられている。具体的には、ベース部材２の略中央に位置する中央部位２ａは、周囲に対して円状に陥没しており、この陥没した中央部位２ａに、円筒状の発光ユニット５が着脱自在に取り付けられる。これにより、外部から捕虫器１の内部空間を覗いた際、発光ユニット５を有効に隠すことができる。また、ベース部材２の前面における複数の角部には、ルーフ部材３を取り付けるための凹部２ｂがそれぞれ設けられている。この凹部２ｂには、永久磁石および鉄の一方（例えば永久磁石）が取り付けられている。

　図４は、発光ユニット５の展開斜視図である。この発光ユニット５は、筒状部５ａａを備え、この筒状部５ａの外面に取り付けられた環状光源６ｂから周囲に向かって光が発せられる。筒状部５ａの外面は平坦に形成されており、その内面には、ＬＥＤ５ｃ，５ｄが発する熱を放熱する凹凸状のヒートシンク１１ｄが全周に亘って設けられている。ここで、ヒートシンク１１ｄの放熱性を高めるべく、筒状部５ａはアルミニウム等の放熱性の高い金属で形成することが好ましい。また、筒状部５ａの背面側には、筒状部５ａよりも径が大きな円板部５ｅが一体形成されている。

　環状光源５ｂは、筒状部５ａの周囲（外面）に沿って環状に設けられており、周囲に向かって光を発する。この環状光源５ｂとしては、例えば、筒状部５ａの外面形状に追従可能な可撓性を有するフレキシブル基板を用いることができ、このフレキシブル基板には、２種類の発光体であるＵＶＬＥＤ５ｃおよび白色ＬＥＤ５ｄが交互に配置されている。ＵＶＬＥＤ５ｃは、虫を誘引する効果がある誘引光を発する。誘引光としては、例えば、ピーク波長が３６０～３７０ｎｍ程度である紫外線（ＵＶ）を用いることができる。一方、白色ＬＥＤ５ｄは、白色光を発する。白色ＬＥＤ５ｄを併用することで、誘引光を発しながらも、間接照明器具のような印象をユーザに与えることができる。また、環状光源５ｂには、電源コード５ｆが取り付けられており、この電源コード５ｆを介して、２種類のＬＥＤ５ｃ，５ｄを発光させるための電力が外部から供給される。ただし、外部からの電源供給ではなく、捕虫器１自体に電池を内蔵することによって、電源供給を行ってもよい。

　環状光源５ｂはケース部材５ｇの内部に収容されている。このケース部材５ｇは、透明プラスチック等の透光性（半透光性を含む。）を有する材料によって形成され、内部に収容された環状光源５ｂを全体的に亘って覆う。これにより、ユーザ（交換者等）の手がＬＥＤ５ｃ，５ｄに直接接触することを防止できるので、ＬＥＤ５ｃ，５ｄの劣化や特性の変動を有効に抑制できる。それとともに、誘引光によって誘引された虫がＬＥＤ５ｃなどに直接接触することがなく、また、虫の体液が付着することもないので、ＬＥＤ５ｃなどの汚れも有効に防止きる。なお、ケース部材５ｇに光を拡散させる性能を持たせて、ＬＥＤ５ｃ，５ｄが発した光を拡散させてもよい。

　発光ユニット５の組み立てる際は、まず、筒状部５ａの外周にリング状に巻回された環状光源５ｂを取り付け、つぎに、これにケース部材５ｇを被せた上で、ネジにて一体化する。

　図３に示すように、ベース部材２の前面には、捕虫器１の筐体の一部をなすルーフ部材３が対向して配置されており、これらの対向した部材２，３によって、捕虫器１の内部空間が形成される。ルーフ部材３は、自己の形状を維持しながら適度な弾力を有する可撓性素材、例えば、シリコンゴムなどを用いた射出成形によって一体で形成されている。ルーフ部材３は、自己の対角線Ｄを頂部として後方（すなわち、ベース部材２側）に向かって屋根状に傾斜した一対の傾斜部３Ａ，３Ｂを備えている。換言すれば、ルーフ部材３は、略矩形状の平板部材をその対角線Ｄに沿って屈曲させた屋根形状を有している。

　図５は、ルーフ部材３の内面形状を示す斜視図である。ルーフ部材３の内面には、粘着力によって虫を捕らえる表面（粘着面）を有する捕虫シート６が着脱自在に取り付けられる。具体的には、ルーフ部材３の内側（ベース部材２との対向面側）には、フック形状を有するシート保持部３ａが設けられている。シート保持部３ａは、ルーフ部材３の内面における所定の領域、すなわち、シート配置面３ｂ上に配置された捕虫シート６の角部と係合する。シート保持部３ａは、シート配置面４ａが備える４角のうち、対角線上の２箇所に少なくとも設けられている。また、ルーフ部材３の内周面（シート配置面３ｂ）は、上述した一対の傾斜部３Ａ，３Ｂ（屋根形状）によって規定される屈曲した内面形状を有している。

　図６に示すように、シート保持部３ａによって保持された捕虫シート６は、ルーフ部材３の内面形状に応じて、自己の対角線に底部として凹状に撓んだ状態で保持される。捕虫シート６を撓ませることで、湿気等による捕虫シート６の経時的な変形（浮き上がり）を防止できる。それとともに、捕虫シート６を対角線状に凹状に撓ませることで、捕虫器１の側部に設けられた開口部１０に対して捕虫シート６が奥まって位置するため、捕虫シート６に捕らえられた虫（捕虫面）が見え難くなる。

　ルーフ部材３の一部には、捕虫シート６（シート配置面３ｇ）と位置的に対応して、対角線Ｄに対して対称に配置された一対のシート押出部３ｃが設けられている。シート押出部３ｃは、ユーザが指で加えた外力に起因して、ルーフ部材３の部分的な変位が生じる可動域であり、ルーフ部材３の表裏を貫通するＬ字状のスリット３ｄによって規定される。

　ルーフ部材３の内面における複数の角部には、ベース部材２側の凹部２ｂと位置的に対応して凸部３ｅがそれぞれ設けられている。この凸部３ｅには、永久磁石および鉄の他方（例えば鉄）が取り付けられている。凹部２ｂに凸部３ｅを対向させると、永久磁石と鉄との間に生じる磁気吸引力によって、ベース部材２上にルーフ部材３が位置合わせされた状態で固定される。

　使用済みの捕虫シート６を取り外す場合、ユーザは、磁気吸引力によってベース部材２に固定されているルーフ部材３をベース部材２から取り外した上で、シート押出部３ｃを指で押し下げ、この外力によって、シート保持部３ａに係合していた捕虫シート６を解放する。ルーフ部材３自身が備える弾性力に抗して、シート押出部３ｃが押し下げられると、シート押出部３ｃが弾性変形して、スリット３ｄの近傍に位置していたシート押出部３ｃの縁部が下方に変位する。そして、この縁部が捕虫シート６の裏面と当接して、捕虫シート６が下方に押し出される。これによって、シート保持部３ａと係合していた捕虫シート６が外れて脱落する。これにより、ユーザは、使用済みの捕虫シート６に捕らえられた虫を見ることなく、これを破棄することができる。

　なお、上述したように、開口部１０がシート取出部としての機能も担っている場合、ベース部材２からルーフ部材３を取り外すことなく、捕虫器３内に脱落した捕虫シート６を、開口部１０を介して外部に取り出すようにしてもよい。

　再び図３を参照すると、ベース部材２の背面には、一対のスタンド部材４が左右に取り付けらている。これらのスタンド部材４は、自身が容易に変形しないように、ベース部材２と同様、ＡＳＡ樹脂などで形成され、かつ、左右対称な形状を有する。それぞれのスタンド部材４の上下には、ベース部材２側の凹部と係合する凸状の回転軸４ａが設けられており、スタンド部材４を所定の可動範囲内で開閉させることができる。また、スタンド部材４には、複数のフック用穴４ｂが所定の箇所に設けられている。捕虫器１を自立させて使用する場合、ベース部材２の背面に面一で収納された一対のスタンド部材４が引き出される。これにより、捕虫器１は斜めに倒れかかった状態で自立する。また、捕虫器１を壁などにフック掛けで使用する場合、ベース部材２の背面にスタンド部材４が収納された状態のまま、フック用穴４ａにフックが挿通される。

　図７は、捕虫器１の側面に設けられる開口部１０の説明図である。捕虫器１の側面は、ベース部材２およびルーフ部材３の間に存在する側部として定義され、４つの側面を有している。捕虫器１における複数の異なる側面には、捕虫器１の内部空間に臨んだ開口部１０ａ～１０ｃがそれぞれ設けられている。具体的には、捕虫器１の正面には開口部１０ａが設けられている。正面を正対して見た場合、開口部１０ａの開口形状は、傾斜部３Ｂの縁部が右肩下がりであることに由来して、右側に向かって高さが徐々に低くなるような三角形状を有している。開口部１０ａが存在することで、発光ユニット５から発せられた誘引光は正面方向に有効に放射される。それとともに、捕虫シート６の手前に存在する傾斜部３Ｂによって捕虫シート６の大半が覆い隠されるので、捕虫シート６に捕らえられた虫が見え難くなる。

　捕虫器１の右側面には開口部１０ｂが設けられている。右側面を正対して見た場合、開口部１０ｂの開口形状は、傾斜部３Ｂの縁部が左肩下がりであることに由来して、左側に向かって高さが徐々に低くなるような三角形状を有している。開口部１０ｂが存在することで、発光ユニット５から発せられた誘引光は右方向に有効に放射される。それとともに、捕虫シート６の手前に存在する傾斜部３Ｂによって捕虫シート６の大半が覆い隠されるので、捕虫シート６に捕らえられた虫が見え難くなる。

　捕虫器１の左側面には開口部１０ｃが設けられている。左側面を正対して見た場合、開口部１０ｃの開口形状は、傾斜部３Ａの縁部が左肩下がりであることに由来して、左側に向かって高さが徐々に低くなるような三角形状を有している。開口部１０ｃが存在することで、発光ユニット５から発せられた誘引光は左方向に有効に放射される。それとともに、捕虫シート６の手前に存在する傾斜部３Ａによって捕虫シート６の大半が覆い隠されるので、捕虫シート６に捕らえられた虫が見え難くなる。

　また、互いに隣り合った２つの側部、具体的には、正面および左側面において、２つの開口部１０ａ，１０ｃは連続しており、全体として大きな一つの開口部を形成する。これらの開口形状は、同一の高さを共有する２つの三角形を繋ぎ合わせた開口形状を有している。

　なお、捕虫器１の背面にも同様の開口部を設けることはもちろん可能だが、本実施形態では、背面については開口部を設けることなく閉塞している。その理由は、捕虫シート６から脱落した虫などを受ける受け皿として背面を使用することを想定しているからである。

　このように、本実施形態によれば、ルーフ部材３が一対の傾斜部３Ａ，３Ｂを備えることで、その構造上、特定の方向の側部を閉塞する必要がなく、全ての側部に開口部を自在に配置できる（配置自由度の確保）。そして、複数の開口部１０ａ～１０ｃを側部に設けることで、虫を誘引する光を外部に向かって広範囲に放射できる（放射方向の拡大）。また、開口部１０ａ～１０ｃから捕虫器１の内部空間を見た場合、ルーフ部材３の内面が見え易い角度と見え難い角度とが存在するものの、見る者の手前側に位置する傾斜部３Ａ（または３Ｂ）によって視線が遮られるような角度では、ルーフ部材３の内面の多くが覆い隠されることになる。さらに、捕虫シート６自体もルーフ部材３の内面形状に応じて撓んでいるため、見上げるような視線に対しても、捕虫シート６に捕らえられた虫が見え難くなる。その結果、光放射上の開放性と、視認上の閉鎖性との両立を図ることができる。

　この点について、図８から図１０を参照しつつ、２つの比較例と対比して説明する。図８は、第１の比較例の説明図である。第１の比較例は、下プレートと対向して配置される上プレートの形状を平板とし、上下のプレートの四隅を柱で連結した構造（平板構造）である。下プレートの内側にはＵＶ光源（誘引光を発する光源）が配置され、上プレートの内面には捕虫シートが取り付けられている。この構造では、４つの側面の全てに開口部が存在し、誘引光が全方位に放射されるため（同図（ａ），（ｂ））、光放射上の開放性という観点では最も優れている。しかしながら、上プレートの内面が完全に見えてしまう角度が多く存在することに加えて、特定方向の視点移動、例えば、同図（ｃ），（ｄ）に示すような見上げながらの視点移動については、視認上の閉鎖性が極めて低い。そのため、視認上の閉鎖性という観点では最も劣っている。結論として、第１の比較例では、光放射上の開放性と、視認上の閉鎖性との両立は困難である。

　図９は、第２の比較例の説明図である。第２の比較例が第１の比較例と異なる点は、上プレートを切妻状の曲げ板構造（単純曲げ）にしたことである。この構造では、上プレートの内面が見え易い角度（同図（ａ））と見え難い角度（同図（ｂ））とが存在し、手前側に位置する上プレートの一部が視線を遮る角度では、上プレートの内面の多くが覆い隠される。また、上プレートの屈曲形状に沿って捕虫シート自体も撓んでいるため、第１の比較例と比べて、捕虫シートに捕らえられた虫が見え難くなる。しかしながら、同図（ｃ）の角度では、２辺が完全な閉構造になってしまい、同図（ｄ）の角度では、他方の２辺が完全な開構造になってしまう。結論として、第２の比較例については、第１の比較例よりも優れてはいるが、光放射上の開放性および視認上の閉鎖性について、視線方向の依存性が極端に大きいといった問題がある。

　図１０は、本実施例の説明図である。本実施例では、上プレートを対角線状の曲げ板構造としたものであり、上述したルーフ部材３もこれに属する。この構造では、上プレートの内面が見え易い角度（同図（ａ））と見え難い角度（同図（ｂ））とが存在し、手前側に位置する上プレートの一部が視線を遮る角度では、上プレートの内面の多くが覆い隠される。また、第２の比較例とは異なり、完全な閉構造となる角度や完全な開構造となる角度が存在せず、側部四方にそれぞれある程度の開口面積を常に有している。すなわち、この構造は、各方向にバランスよく開口を持ちながら、上プレートの内面が見え難い構造ということができる（同図（ｃ），（ｄ））。また、上プレートの屈曲形状に沿って捕虫シート自体も撓んでいるため、第１の比較例と比べて、捕虫シートに捕らえられた虫が見え難くなる。結論として、本実施例は、第２の比較例のような極端な視線方向の依存性がない点で優れており、光放射上の開放性と視認上の閉鎖性との両立を図る上で好ましい構造といえる。なお、本実施例では、第２の比較例と比較して、上下のプレート間の内部空間が約１．３倍程度広くなるので、捕虫空間を拡大できるといったメリットもある。

　また、本実施形態によれば、ルーフ部材３にシート押出部３ｃを設け、この部位を外力によって変位させることで、使用済みの捕虫シート６を目視せずとも、これを簡単に押し出すことができる。これにより、使用済みの捕虫シート６に捕らえられた虫が目に入る機会が減り、使用済みの捕虫シート６を触る機会も減るため、ユーザに対して不快感を与えることを有効に低減できる。それとともに、捕虫器１を分解することなく、捕虫シート６をワンタッチで押し出すことができるので、メンテナンス性の向上を図ることができる。その際、シート押出部３ｃの機能を有するルーフ部材３を一体成形すれば、シート押出部３ｃ付のルーフ部材３を容易かつ安価に実現できる。

　１　捕虫器
　２　ベース部材
　２ａ　中央部位
　２ｂ　凹部
　３　ルーフ部材
　３Ａ，３Ｂ　傾斜部
　３ａ　シート保持部
　３ｂ　シート配置面
　３ｃ　シート押出部
　３ｄ　スリット
　３ｅ　凸部
　３ｆ　開口部
　４　スタンド部材
　４ａ　回転軸
　４ｂ　フック用穴
　５　発光ユニット
　５ａ　筒状部
　５ｂ　環状光源
　５ｃ　ＵＶＬＥＤ
　５ｄ　白色ＬＥＤ
　５ｅ　円板部
　５ｆ　電源コード
　５ｇ　ケース部材
　６　捕虫シート
　１０，１０ａ～１０ｃ　開口部

Claims

　捕虫器において、
　ベース部材と、
　前記ベース部材との間に内部空間を形成するように、前記ベース部材と対向して配置されていると共に、自己の対角線を頂部として屋根状に傾斜した一対の傾斜部を備えるルーフ部材と、
　前記ベース部材の内側に設けられ、虫を誘引する誘引光を発する発光体と、
　前記内部空間に臨むように、前記ベース部材および前記ルーフ部材の間の側部に設けられ、前記発光体から発せられた前記誘引光を外部に向かって放射すると共に、前記誘引光によって誘引された虫が前記内部空間に侵入することを許容する複数の開口部と、
　前記ルーフ部材の内面に取り付けられ、前記一対の傾斜部によって形成される立体的な内面形状に応じて、自己の対角線を底部として凹状に撓んだ捕虫シートと
を有することを特徴とする捕虫器。
　前記ベース部材は、略矩形状の平板部材であって、
　前記ルーフ部材は、略矩形状の平板部材をその対角線に沿って屈曲させた屋根形状を有することを特徴とする請求項１に記載された捕虫器。
　前記開口部は、１つの側部の開口形状として、三角形状を有することを特徴とする請求項１または２に記載された捕虫器。
　前記開口部は、互いに隣り合った２つの側部において連続しており、同一の高さを共有する２つの三角形を繋ぎ合わせた開口形状を有することを特徴とする請求項１または２に記載された捕虫器。