WO2018221727A1 - 密封装置 - Google Patents

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Abstract

軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる密封装置を提供する。 密封装置(1)は、密封装置本体(2)とスリンガ(3)とを備え、密封装置本体(2)は、環状の補強環(10)と、環状の弾性体部(20)とを備えている。スリンガ(3)は、外周側に向かって延びる環状の部分であるフランジ部(31)を有している。弾性体部(20)は、内側に向かって延びる、フランジ部(31)の外側面(31d)と接触する環状の端面リップ(21)を有している。スリンガ(3)のフランジ部(31)の外側面(31d)には、少なくとも1つの浅い溝(33)が形成されている。

Description

密封装置
 本発明は、軸とこの軸が挿入される孔との間の密封を図るための密封装置に関する。
 車両や汎用機械等において、例えば潤滑油等の密封対象物の漏洩の防止を図るために、軸とこの軸が挿入される孔との間を密封するために従来から密封装置が用いられている。このような密封装置においては、シールリップを軸に又は軸に取りけられる環状部材に接触させることにより軸と密封装置との間の密封を図っている。このような密封装置の中には、端面接触型と言われているものがある。端面接触型の密封装置は、軸に取り付けられたスリンガに軸に沿って延びるシールリップを接触させることにより密封対象物の漏洩の防止を図っている。
 従来の端面接触型の密封装置には、シールリップが接触するスリンガに溝を設け、スリンガの回転時の溝のポンプ作用により、大気側の空気と一緒に油等の密封対象物を密封対象物側へ送ることによりシール性を向上させたものがある。このような従来の端面接触型の密封装置においては、上述のように、スリンガの回転時はポンプ作用により、滲み出た密封対象物を密封対象物側へ戻すことができるが、スリンガの停止時は、スリンガの溝と端面リップとの間に形成される隙間から密封対象物が漏れ出てしまう、所謂静止漏れが発生してしまう場合がある。
 この静止漏れを防止するため、従来の端面接触型の密封装置には、シールリップの内周側にスリンガに接触するシールリップを更に設けて、外周側のシールリップにおいて発生した静止漏れにより滲み出た密封対象物の更なる外部への漏洩の防止を図っているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
実開平4-88773号公報
 このような従来の端面接触型の密封装置においては、上述のように、内周側のシールリップによって静止漏れの防止を図っているが、スリンガに2つのシールリップが接触しており、スリンガの回転時に軸に対する摺動抵抗が上昇してしまう。近年、車両等の低燃費化の要求から、密封装置には、軸に対する摺動抵抗の低減が求められており、端面接触型の密封装置に対しては、静止漏れを防止しつつ軸に対する摺動抵抗の低減を図ることができる構造が求められている。
 本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる密封装置を提供することにある。
 上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、前記孔に嵌着される密封装置本体と、前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部の前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、少なくとも1つの浅い溝が形成されていることを特徴とする。
 本発明の一態様に係る密封装置において、前記スリンガは、複数の浅い溝を有している。
 本発明の一態様に係る密封装置において、前記溝の各々の深さは、15μm以下である。
 本発明の一態様に係る密封装置において、前記溝の各々の深さは、10μm以下である。
 本発明の一態様に係る密封装置において、前記溝は、前記シールリップが接触する部分を交差している。
 本発明に係る密封装置によれば、軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる。
本発明の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための軸線に沿う断面における断面図である。 本発明の実施の形態に係る密封装置の軸線に沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。 本発明の実施の形態に係る密封装置におけるスリンガを外側から見た側面図である。 溝の形状を説明するための図であり、図4Aは、互いに隣接する溝を外側から見たスリンガの部分拡大側面図であり、図4Bは、軸線に沿う断面における溝の形状を示すスリンガの部分拡大断面図である。 図1に示す密封装置が取付対象としてのハウジング及びこのハウジングに形成された貫通孔である軸孔に挿入された軸に取り付けられた使用状態における密封装置の部分拡大断面図である。 密封装置におけるスリンガの溝の変形例を示すための図であり、図6Aは溝の一変形例を示し、図6Bは溝の他の変形例を示している。 密封装置における端面リップの接触する接触面の変形例を示すための図である。 密封装置における端面リップの接触する接触面の他の変形例を示すための図である。 密封装置における端面リップの接触する接触面の他の変形例を示すための図である。
 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
 図1は、本発明の実施の形態に係る密封装置1の概略構成を示すための軸線xに沿う断面における断面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る密封装置1の軸線xに沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
 本実施の形態に係る密封装置1は、軸とこの軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であり、車両や汎用機械において、軸とハウジング等に形成されたこの軸が挿入される孔(軸孔)との間を密封するために用いられる。例えば、エンジンのクランクシャフトとフロントカバーやシリンダブロック及びクランクケースに形成されている軸孔であるクランク孔との間の環状の空間を密封するために用いられる。なお、本発明の実施の形態に係る密封装置1が適用される対象は、上記に限られない。
 以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向(軸線方向において一方の側)を内側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向(軸線方向において他方の側)を外側とする。より具体的には、内側とは、密封対象空間の側(密封対象物側)であり潤滑油等の密封対象物が存在する空間の側であり、外側とは内側とは反対の側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。
 図1に示すように、密封装置1は、後述する取付対象としての孔に嵌着される密封装置本体2と、後述する取付対象としての軸に取り付けられるスリンガ3とを備えている。密封装置本体2は、軸線x周りに環状の補強環10と、補強環10に取り付けられている弾性体から形成されている軸線x周りに環状の弾性体部20とを備えている。スリンガ3は、外周側(矢印c方向)に向かって延びる軸線x周りに環状の部分であるフランジ部31を有している。弾性体部20は、軸線x方向において一方の側(内側、矢印a方向)に向かって延びる、フランジ部31の軸線方向xにおいて他方の側(外側、矢印b方向側)の面(外側面31d)と接触する軸線x周りに環状のリップである端面リップ21を有している。スリンガ3のフランジ部31の外側面31dには、少なくとも1つの浅い溝33が形成されている。以下、密封装置1の密封装置本体2及びスリンガ3の各構成について具体的に説明する。
 密封装置本体2において補強環10は、図1、2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材であり、後述するハウジングの軸孔に密封装置本体2が圧入されて嵌合されて嵌着されるように形成されている。補強環10は、例えば、外周側に位置する筒状の部分である筒部11と、筒部11の外側の端部から内周側に延びる中空円盤状の部分である円盤部12と、円盤部12の内周側の端部から内側且つ内周側へ延びる円錐筒状の環状の部分である錐環部13と、錐環部13の内側又は内周側の端部から内周側へ径方向に延びて補強環10の内周側の端部に至る中空円盤状の部分である円盤部14とを有している。補強環10の筒部11は、より具体的には、外周側に位置する円筒状又は略円筒状の部分である外周側円筒部11aと、外周側円筒部11aよりも外側及び内周側において延びる円筒状又は略筒状の部分である内周側円筒部11bと、外周側円筒部11aと内周側円筒部11bとを接続する部分である接続部11cと有している。筒部11の外周側円筒部11aは、密封装置本体2が後述するハウジング50(図3)の軸孔51に嵌着された際に、密封装置本体2の軸線xと軸孔51の軸線との一致が図られるように、軸孔51に嵌め込まれる。補強環10には、略外周側及び外側から弾性体部20が取り付けられており、補強環10により弾性体部20を補強している。
 弾性体部20は、図1,2に示すように、補強環10の円盤部14の内周側の端の部分に取り付けられている部分である基体部25と、補強環10の筒部11に外周側から取り付けられている部分であるガスケット部26と、基体部25とガスケット部26との間において外側から補強環10に取り付けられている部分である後方カバー部27とを有している。ガスケット部26は、より具体的には、図2に示すように、補強環10の筒部11の内周側円筒部11bに取り付けられている。また、ガスケット部26の外径は、後述する軸孔51の内周面51a(図5参照)の径よりも大きくなっている。このため、密封装置本体2が後述する軸孔51に嵌着された場合、ガスケット部26は、補強環10の内周側円筒部11bと軸孔51との間で径方向に圧縮され、軸孔51と補強環10の内周側円筒部11bとの間を密封する。これにより、密封装置本体2と軸孔51との間が密封される。ガスケット部26は、軸線x方向全体に亘って外径が軸孔51の内周面の径よりも大きくなっていなくてもよく、一部において外径が軸孔51の内周面の径よりも大きくなっていてもよい。例えば、ガスケット部26の外周側の面に、先端の径が軸孔51の内周面51aの径よりも大きい環状の凸部が形成されていてもよい。
 また、弾性体部20において、端面リップ21は、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から内側(矢印a方向)に向かって延びている。密封装置1が取付対象において所望の位置に取り付けられた使用状態において、端面リップ21は、端面リップ21の内周側の面である内周面22のスリンガ接触部23が所定の締め代を持ってスリンガ3のフランジ部31に外側から接触するように形成されている。端面リップ21は、例えば、軸線x方向において内側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径する円錐筒状の形状を有している。つまり、図1,2に示すように、端面リップ21は、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、基体部25から内側及び外周側に、軸線xに対して斜めに延びている。
 また、弾性体部20は、ダストリップ28と中間リップ29とを有している。ダストリップ28は、基体部25から軸線xに向かって延びるリップであり、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から延びており、後述する密封装置1の使用状態において、先端部が所定の締め代を持ってスリンガ3に外周側から接触するように形成されている。ダストリップ28は、例えば、軸線x方向において外側(矢印b方向)に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有している。ダストリップ28は、使用状態において、密封対象物側とは反対側である外側からダストや水分等の異物が密封装置1の内部に侵入することの防止を図っている。ダストリップ28は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触しないように形成されていてもよい。
 中間リップ29は、図2に示すように、基体部25から断面略L字型に内側へ向かって延びるリップであり、軸線x方向を中心または略中心として円環状に基体部25から延びており、基体部25との間に内側に向かって開放する環状の凹部を形成している。中間リップ29は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触していない。中間リップ29は、使用状態において、端面リップ21がスリンガ3に接触するスリンガ接触部23を越えて密封対象物が内部に滲み入った場合に、この滲み入った密封対象物がダストリップ28側へ流れ出すことの防止を図るために形成されている。中間リップ29は、他の形状であってもよく、例えば軸線x方向において内側に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有していてもよい。中間リップ29は、その先端がスリンガ3に接触するように形成されていてもよい。
 上述のように、弾性体部20は、端面リップ21、基体部25、ガスケット部26、後方カバー部27、ダストリップ28、及び中間リップ29を有しており、各部分は一体となっており、弾性体部20は同一の材料から一体に形成されている。なお、弾性体部20の形状は、上述の形状に限られるものではなく、適用対象に応じて種々の形状とすることができる。
 上述の補強環10は、金属材から形成されており、この金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。また、弾性体部20の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
 補強環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋接着により補強環10に接着され、弾性体部20と補強環10とが一体的に成形される。
 スリンガ3は、後述する密封装置1の使用状態において軸に取り付けられる環状の部材であり、軸線xを中心又は略中心とする円環状の部材である。スリンガ3は、断面が略L字状の形状を有しており、フランジ部31と、フランジ部31の内周側の端部に接続する軸線x方向に延びる筒状又は略筒状の筒部34とを有している。
 フランジ部31は、具体的には、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の内周側円盤部31aと、内周側円盤部31aよりも外周側において広がっている径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の外周側円盤部31bと、内周側円盤部31aの外周側の端部と外周側円盤部31bの内周側の端部とを接続する接続部31cとを有している。外周側円盤部31bは、内周側円盤部31aよりも軸線x方向において外側に位置している。なお、フランジ部31の形状は、上述の形状に限られるものではなく、適用対象に応じて種々の形状とすることができる。例えば、フランジ部31は、内周側円盤部31a及び接続部31cを有しておらず、外周側円盤部31bが筒部34まで延びており筒部34に接続しており、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の部分であってもよい。
 スリンガ3が端面リップ21に接触する部分であるリップ接触部32は、フランジ部31において、外周側円盤部31bの外側に面する面である外側面31dに位置されている。外側面31dは径方向に広がる平面に沿う面であることが好ましい。
 上述のように、スリンガ3の外周面31dには、少なくとも1つの浅い溝33が形成されている。本実施の形態においては、図3に示すように、スリンガ3の外周面31dには複数の溝33が形成されている。図3は、密封装置1におけるスリンガ3を外側から見た側面図である。図3に示すように、スリンガ3の外周面31dには、溝33,33,33・・・・33のn個の溝33が形成されている。つまり、スリンガ3が有する溝33の数(条数)はnである。複数の溝33~33の各溝33(m=1,2,3,~,n)は、図3に示すように、端面リップ21が接触する部分を交差している。具体的には、溝33は、内周側と外周側との間に延びており、スリンガ3のフランジ部31の外側円盤部31bの外側面31dにおける端面リップ21との接触部であるリップ接触部32を交差している。
 図4は、溝33(m=1~n)の形状を説明するための図であり、図4Aは、互いに隣接する溝33,33m+1(m=1~n)を外側から見たスリンガ3の部分拡大側面図であり、図4Bは、軸線xに沿う断面における溝33(m=1~n)の形状を示すスリンガ3の部分拡大断面図である。図4Aに示すように、互いに隣接する互いに異なる溝33と溝33m+1との間の径方向における間隔であるピッチはピッチpとなっている。また、図3に示すように、溝33は螺旋状(渦巻き状)に延びており、溝33のリードは、リードlとなっている。なお、リードは、溝33が一周した際に、溝33が径方向に広がる幅である。また、図4Bに示すように、溝33は内側に向かって凹んだ溝であり、例えば底面33aがv字状の又は略v字状の輪郭を有している。底面33aの挟角は挟角αとなっている。また、溝33の深さは深さhとなっており、溝33の周方向の幅は幅wとなっている。
 次いで、上述の構成を有する密封装置1の作用について説明する。図5は、密封装置1が取付対象としてのハウジング50及びこのハウジング50に形成された貫通孔である軸孔51に挿入された軸52に取り付けられた使用状態における密封装置1の部分拡大断面図である。ハウジング50は、例えばエンジンのフロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースであり、軸孔51は、フロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースに形成されたクランク孔である。また、軸52は、例えば、クランクシャフトである。
 図5に示すように、密封装置1の使用状態において、密封装置本体2は軸孔51に圧入されて軸孔51に嵌着されており、スリンガ3は軸52に締り嵌めされて軸52に取り付けられている。より具体的には、補強環10の外周側円筒部11aが軸孔51の内周面51aに接触して、密封装置本体2の軸孔51に対する軸心合わせが図られ、また、弾性体部20のガスケット部26が軸孔51の内周面51aと補強環10の内周側円筒部11bとの間で径方向に圧縮されてガスケット部26が軸孔51の内周面51aに密着して、密封装置本体2と軸孔51との間の密封が図られている。また、スリンガ3の円筒部35が軸52に圧入され、円筒部35の内周面35aが軸52の外周面52aに密着し、軸52にスリンガ3が固定されている。
 密封装置1の使用状態において、弾性体部20の端面リップ21が、内周面22の先端21a側の部分であるスリンガ接触部23において、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bの外側面31dの部分であるリップ接触部32に接触するように、密封装置本体2とスリンガ3との間の軸線x方向における相対位置が決められている。端面リップ21とフランジ部31との接触により、密封装置本体2とスリンガ3との間の密封が図られており、密封対象物側からの密封対象物の漏洩の防止が図られている。また、ダストリップ28は先端側の部分においてスリンガ3の筒部34に外周側から接触している。ダストリップ28は、例えば、スリンガ3の円筒部35の外周面35bに接触している。
 また、密封装置1の使用状態において、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bに形成された複数の溝33は、軸52(スリンガ3)が回転した場合にポンプ作用をもたらす。軸52(スリンガ3)の回転により、フランジ部31と端面リップ21との間の空間である挟空間Sにおいて、スリンガ接触部23及びリップ接触部32近傍の領域にポンプ作用が生じる。このポンプ作用により、密封対象物側から密封対象物が挟空間Sに滲み出た場合であっても、滲み出た密封対象物が挟空間Sからスリンガ接触部23及びリップ接触部32を越えて密封対象物側に戻される。このように、スリンガ3のフランジ部31に形成された溝33が生ずるポンプ作用により、挟空間Sへの密封対象物の滲み出が抑制されている。
 また、上述のように、溝33は、端面リップ21が接触するスリンガ3の部分であるリップ接触部32を内周側と外周側との間で交差しており、互いに接触するスリンガ接触部23とリップ接触部32との間に、溝33によって内周側と外周側との間に延びる隙間が形成される。このため、軸52が静止している、つまりスリンガ3が静止している密封装置1の静止状態において、溝33を通って密封対象物側から密封対象物が滲み出てくる静止漏れが発生すると考えられる。しかし、本密封装置1においては、上述のようにスリンガ3に形成された溝33は浅い溝であり、溝33の深さhは小さな値となっている。このため、密封装置1の静止状態において、静止漏れの発生が防止されている。
 また、スリンガの溝に基づくポンプ作用は、スリンガの回転が高速になるほど低減することが従来より知られている。これは、スリンガの回転が高回転になるほど、ポンプ領域がスリンガ接触部及びリップ接触部側に向かって収縮するためであると考えられる。これに対し、密封装置1においては、ピッチpの値は小さく、スリンガ3に多数の溝33が形成されているため、スリンガ3の回転が高回転になり、スリンガ3の各溝33のポンプ作用が低減した場合でも、スリンガ3に形成された多数の溝33に基づくポンプ作用により、密封対象物の滲み出しの防止に必要なポンプ量を確保することができる。また、スリンガ3に多数の溝33が形成されているため、スリンガ3の回転数に拘らず、スリンガ3の溝33に基づくポンプ作用を向上させることができる。
 次いで、本発明の実施の形態に係る密封装置1の密封性能について説明する。具体的には、密封装置1の静止漏れ防止性能について説明する。
 本発明者は、深さh、底面33aの挟角α、リードl、及び条数nが異なる溝33を有する上記本発明の実施の形態に係る密封装置1を製作し(試験例1~5)、密封装置1の静止漏れ防止性能の評価試験を行った。試験例1においては、深さh=8μm、リードl=5.6mm、条数n=73の溝33とした。試験例2においては、深さh=8μm、リードl=10mm、条数n=99の溝33とした。試験例3においては、深さh=13μm、リードl=5.6mm、条数n=24の溝33とした。試験例4においては、深さh=16μm、リードl=10mm、条数n=43の溝33とした。試験例5においては、深さh=26μm、リードl=5.6mm、条数n=24の溝33とした。また、試験例1~5の全てにおいて、挟角α=165°とした。
 評価試験は、以下の試験条件で行った。
[試験条件]
軸52の軸偏心:0mmT.I.R.(Total Indicator Reading)
取付偏心(軸孔51の偏心):0mmT.I.R.(Total Indicator Reading)
スリンガ3の面ぶれ:0mm(加工の狙い値)
油温:40℃
油種:0W-8(SEA規格、SAEJ300 エンジン油粘度分類(2015年1月)に基づく。)
油量:充満
軸52(スリンガ3)の回転速度:0rpm
 評価試験は、1,000時間を上限として、上記試験条件での漏れの発生が確認されるまでの時間を測定することにより行われた。また、評価試験は、図5に示すような使用状態を擬似的に作った評価装置において行われた。この評価装置において、密封対象物側に上述の密封対象物としての油を注ぎ、密封対象物側において密封装置1全体が油に覆われるようにした。
 本静止漏れ防止性能の評価試験の結果を以下の表1に示す。
[表1]
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000001
表1に示すように、溝33の深さhがh=8μmである浅い溝33を有する試験例1,2においては、1,000時間経っても漏れが発生しなかった。また、溝33の深さhがh=13μmである浅い溝33を有する試験例3においては、550時間漏れの発生がなかった。溝33の深さhがh=16μm,26μmである溝33を夫々有する試験例4,5においては、比較的短時間で漏れが発生した。
 このように、上述の静止漏れ防止性能の評価試験の結果から、溝33は浅いほど、つまり溝33の深さhの値が小さいほど、静止漏れを抑制することができ、静止漏れ防止性能が高いことが分かった。より具体的には、本静止漏れ防止性能の評価試験から、静止漏れ防止に関しては、試験例1~5の中で、試験例5、試験例4、試験例3、試験例2及び試験例1の順で好ましいことが分かった。
 また、本発明者は、夫々の深さh及び条数nを有する溝33を備える本発明の実施の形態に係る密封装置1を製作し(試作例11~21)、上述の試験例1~5と同様に密封装置1の静止漏れ防止性能の評価試験を行った。試験例11においては、深さh=58μm、条数=4の溝33とした。試験例12においては、深さh=52μm、条数=4の溝33とした。試験例13においては、深さh=26μm、条数=24の溝33とした。試験例14においては、深さh=15μm、条数=43の溝33とした。試験例15においては、深さh=15μm、条数=4の溝33とした。試験例16においては、深さh=13μm、条数=24の溝33とした。試験例17においては、深さh=10μm、条数=65の溝33とした。試験例18においては、深さh=10μm、条数=4の溝33とした。試験例19においては、深さh=7μm、条数=99の溝33とした。試験例20においては、深さh=7μm、条数=73の溝33とした。試験例21においては、深さh=4μm、条数=24の溝33とした。
 本静止漏れ防止性能の評価試験の結果を以下の表2に示す。
[表2]
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000002
表2に示すように、溝深さhがh=15μmの溝33を有する密封装置1(試験例14,15)においては、漏れの発生がなく1,000時間漏れの発生が確認されなかったものもある。また、条数nがn=43と、条数nがn=24である溝深さhがh=26μmの試験例13よりも条数nが多い溝深さhがh=15μmの試験例14においては、試験例13よりも漏れ発生時間が約3倍延びている。このように、本発明の実施の形態に係る密封装置1においては、スリンガ2の溝33の深さhは15μm以下であることが好ましいと言える。
 溝33の条数nが多くなれば、スリンガ接触部23及びリップ接触部32を貫通する空間の数が増え、静止漏れしやすくなると考えられる。試験例14,15の評価試験の結果は、この考えのようになっている。つまり、溝深さh=15μmで同じであるが、条数の少ない試験例15(n=4)は漏れの発生がなく1,000時間漏れの発生が確認されなかったが、条数の多い試験例14(n=43)は110時間で漏れが発生している。一方、表2に示すように、深さhがh=10μm,7μmの溝33を有する密封装置1(試験例17~20)であれば、溝33の条数に拘わらず漏れが発生しないことが分かる。試験例17,18の溝33の深さhはともにh=10μmであり、試験例17の溝33の条数nはn=65であり、試験例18の溝33の条数nはn=4であるが、試験例17,18ともに漏れの発生がなく、1,000時間漏れの発生が確認されなかった。
 このように、表2から、溝33の深さhが特定の値(閾値)よりも小さい(浅い)と、溝33の条数nに拘わらず、密封装置1は静止漏れを防止することができることが分かる。表2に示す静止漏れ防止性能の評価試験の結果から、密封装置1においては、スリンガ2の溝33の深さhが10μm以下であれば、溝33の条数nに拘わらず静止漏れを防止することができると言える。従って、本発明の実施の形態に係る密封装置1においては、スリンガ2の溝33の深さhは10μm以下であることが好ましい。
 なお、上述の溝33の深さhは、溝33と端面リップ21の溝33を覆う部分との間の最大距離である。つまり、端面リップ21が溝33内に入り込んでいない場合は、溝33の深さhは、溝33それ自体の深さである。一方、端面リップ21が溝33内に入り込んでいる場合は、例えば、端面リップ21の先端21aが溝33内に入り込んでいる場合は、溝33の深さhは、溝33内に入り込んだ端面リップ21の部分と溝33との間の最大の距離である。
 このように、本発明の実施の形態に係る密封装置1によれば、軸52(スリンガ3)に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる。
 以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る密封装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
 スリンガ3の有する溝33は、上述のように、図4に示す螺旋状(渦巻状)の形状に限らず、他の形状であってもよい。例えば、図6Aに示すように、内周側から外周側に向かって軸線xを中心又は略中心として放射状に延びる溝であってもよく、また、図6Bに示すように、周方向に傾いて延びる溝であってもよい。密封装置本体2において、補強環10及び弾性体部20の形状は上述の形状に限られず、他の形状であってもよい。
 また、上述の本発明の実施の形態に係る密封装置1においては、端面リップ21の接触するリップ接触部32及び溝33は、軸52に取り付けられるスリンガ3のフランジ部31に形成されるとしたが、本発明のリップ接触部及び溝はスリンガのフランジ部に形成されるものに限られない。本発明の端面リップ及び溝が上述のように作用する形態とすることができるものであれば、本発明のリップ接触部及び溝が形成されるものやその形態や構造はいずれであってもよい。
 例えば、図7に示すように、リップ接触部32及び溝33は、軸52に一体に設けられたつば部40に形成されてもよい。つば部40は、軸52の外周面52aから径方向に広がる円盤状の部分であり、外側に面する平面である外側面40aを有している。つば部40の外側面40aは、上述のスリンガ3のフランジ部31の外側面31dに対応し、外側面40aに端面リップ21がスリンガ接触部23において接触し、外側面40aにリップ接触部32及び溝33が形成されている。また、この場合、軸52の外周面52aが、上述のスリンガ3の円筒部35の外周面35bに対応し、ダストリップ28は軸52の外周面52aに接触する。ダストリップ28は軸52の外周面52aに接触しなくてもよい。
 また、図8に示すように、リップ接触部32及び溝33は、軸52に設けられた段部41に形成されてもよい。段部41は、軸52の外周面52aに段差を形成している部分であり、外周面52aにおいて外側の部分である外側外周面41aと、外側外周面41aよりも内側において延びる内側外周面41bと、外側外周面41aと内側外周面41bと接続する段差面41cとを有している。外側外周面41a及び内側外周面41bは円筒状の面であり、内側外周面41bは外側外周面41aよりも外周側において延びている。段部41の段差面41cは、軸線xに直交又は略直交する平面であり、上述のスリンガ3のフランジ部31の外側面31dに対応し、段差面41cに端面リップ21がスリンガ接触部23において接触し、段差面41cにリップ接触部32及び溝33が形成されている。また、この場合、軸52の外周面52aの外側外周面41aが、上述のスリンガ3の円筒部35の外周面35bに対応し、ダストリップ28は軸52の外側外周面41aに接触する。ダストリップ28は軸52の外側外周面41aに接触しなくてもよい。
 また、本発明における端面リップは、上述の端面リップ21のように径方向に延びる面に接触するものに限られない。本発明における端面リップは、図9に示すように、軸線x方向に延びる円筒状の面に外周側から又は内周側から接触するものであってもよい。例えば、図9に示すようにスリンガ3のフランジ部31は、外周側円盤部31bの外周側の端部から軸線xに沿って外側に延びる外周側円筒部42を有するものであってもよい。外周側円筒部42には、内周側の表面に円筒状の面である内周面42aが形成されており、この内周面42aが上述のスリンガ3のフランジ部31の外側面31dに対応し、内周面42aに端面リップ21がスリンガ接触部23において接触し、内周面42aにリップ接触部32及び溝33が形成されている。上述のスリンガ3のフランジ部31の外側面31dには、外周側円筒部42の外周側の表面に形成された円筒状の面である外周面42bが対応していてもよい。この場合は、外周面42bに端面リップ21がスリンガ接触部23において接触し、外周面42bにリップ接触部32及び溝33が形成される。図9に示す外周側円筒部42は、図7,8に夫々示すつば部40及び段部41に夫々形成されていてもよい。つまり、つば部40及び段部41に、上述の内周面42a又は外周面42bが夫々形成され、内周面42a又は外周面42bにリップ接触部32及び溝33が形成されていてもよい。端面リップ21が外周面42bに接触する場合、弾性体部20における端面リップ21の延び方向は、図1,2,5に示すものとは異なり、端面リップ21は、軸線x方向において外側から内側に向かうに連れて縮径するように延びる。
 また、本実施の形態に係る密封装置1は、エンジンのクランク孔に適用されるものとしたが、本発明に係る密封装置の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。例えば、変速機や減速機、モータ、ディファレンシャル機構において、本発明を用いることができる。
1…密封装置、2…密封装置本体、3…スリンガ、10…補強環、11…筒部、11a…外周側円筒部、11b…内周側円筒部、11c…接続部、12…円盤部、13…錐環部、14…円盤部、20…弾性体部、21…端面リップ、21a…先端、22…内周面、23…スリンガ接触部、25…基体部、26…ガスケット部、27…後方カバー部、28…ダストリップ、29…中間リップ、21…端面リップ、31…フランジ部、31a…内周側円盤部、31b…外周側円盤部、31c…接続部、31d…外側面、32…リップ接触部、33(33,33,~33)…溝、33a…底面、34…筒部、35…円筒部、35a…内周面、35b…外周面、40…つば部、40a…外周面、41…段部、41a…外側外周面、41b…内側外周面、41c…段差面、42…外周側円筒部、42a…内周面、42b…外周面、50…ハウジング、51…軸孔、51a…内周面、52…軸、52a…外周面、h…深さ、l…リード、p…ピッチ、S…挟空間、w…幅、x…軸線、α…挟角

Claims (5)

  1.  軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、
     前記孔に嵌着される密封装置本体と、
     前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、
     前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、
     前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、
     前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部の前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、
     前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、少なくとも1つの浅い溝が形成されていることを特徴とする密封装置。
  2.  前記スリンガは、複数の浅い溝を有していることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
  3.  前記溝の各々の深さは、15μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の密封装置。
  4.  前記溝の各々の深さは、10μm以下であることを特徴とする請求項3記載の密封装置。
  5.  前記溝は、前記シールリップが接触する部分を交差していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の密封装置。
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