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WO2017038101A1 - 癌における食事療法の開発 - Google Patents

癌における食事療法の開発 Download PDF

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WO2017038101A1
WO2017038101A1 PCT/JP2016/004023 JP2016004023W WO2017038101A1 WO 2017038101 A1 WO2017038101 A1 WO 2017038101A1 JP 2016004023 W JP2016004023 W JP 2016004023W WO 2017038101 A1 WO2017038101 A1 WO 2017038101A1
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圭祐 萩原
欣也 芦田
秀和 殿内
中村 健太郎
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国立大学法人大阪大学
株式会社明治
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Abstract

本発明は新たながんの治療のための組成物またはその組合せを提供する。より詳細には、本発明は、高脂肪食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せを提供する。具体的には、前記高脂肪食は、脂肪を、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたり約120g以上、または1日の総エネルギーの約70%以上とすることを特徴とし、好ましくは、糖質制限高脂肪食であり、さらに好ましくはケトンフォーミュラおよび/またはMCTオイルで提供される。本発明の高脂肪食による食事療法は、手術療法、化学療法もしくは放射線療法またはそれらの組合せとともに提供される。

Description

癌における食事療法の開発

 本発明は癌の予防または治療のための組成物または組合せに関連する技術分野に関する。より詳細には、本発明は癌治療における食事療法を提供するための組成物または組合せに関する。さらに特定すると、高脂肪食、例えば糖質制限高脂肪食の末期がんに対する治療における用途に関する。

 近年、早期発見され切除可能となった胃癌・大腸癌などの癌腫では.患者の生命予後は著しく改善したが、膵癌・胆嚢癌・肺癌などは、進行癌で発見されることが多く、副作用が大きくQOLを損ねる化学療法や放射線療法が併用されることもあり、明らかに予後が改善されているとはいえない(全国がん国立がん研究センター全国がん罹患モニタリング集計2000-2002生存率報告)。

 近年食生活の欧米化に伴い、胃癌に代わり、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌などの欧米に多くみられる癌が増加している。厚生労働省研究班が全国9地域で40~69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡調査結果、Cペプタイド値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍大腸癌になりやすいことも報告されている(非特許文献1=Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.)。

Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.

 本発明者は、鋭意検討した結果、高脂肪食、特に糖質制限高脂肪食(例えばいわゆる「ケトン食」)が末期癌患者に対する治療方法の一つとなり得ることに想定し、日本人の末期肺癌患者に対するケトン食に代表される高脂肪食の有用性を検討し、高脂肪食、例えば糖質制限高脂肪食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せにより、好ましくは、脂肪を120g以上とし、および/または炭水化物を1日30g以下に制限し、および/または一日摂取カロリーを20kcal/kg体重以上とし、および/または中鎖脂肪酸油(MCTオイル)等を組み合わせることで、予想外に顕著にがんを処置しQOLを改善することを見出し本発明を完成させた。

 高脂肪食(例えば、糖質制限高脂肪食)の効果の確認として、限定するものではないが、1つの試験例として、マウスを用いたColon26細胞移植担癌モデルを用いて、癌に対するケトンフォーミュラの有用性について評価した。Colon26細胞移植後21日目の腫瘍重量を測定したところ、ケトンフォーミュラ群の腫瘍重量は対照群に対して統計学的に有意に減少した(p<0.01)。また、体重から腫瘍重量を除いた除腫瘍体重に関しては、ケトンフォーミュラ群の除腫瘍体重は対照群に対して統計学的に有意に高かった。また、動物にケトン食(糖質制限高脂肪食)を与えた場合には摂取エネルギー量が減少することが、一般的に知られているが、ケトンフォーミュラ群は対照群と比べて総摂取熱量に差はなく、摂取エネルギー量が維持された。血中ケトン体濃度は、ケトンフォーミュラ群の血中ケトン体濃度は、対照群に対しては有意に高かった。さらに、血中の炎症性サイトカイン(IL-6)濃度が、対照群に比べてケトンフォーミュラ群で有意に抑制されることが明らかになった。以上のことから、ケトンフォーミュラは、血中のケトン体濃度を有効的に上昇させ、炎症性サイトカインを抑制させ、さらに総摂取エネルギーや除腫瘍体重を減らすことなく腫瘍を縮小させることが判明した。

 限定するものではないが、臨床研究の試験例において、2013年1月より開始し、2015年3月までに5例のインフォームドコンセントを取得した。男性2名、女性3名、平均年齢58.4土10.1歳、身長161.4±9.7cm、体重55.1±10.4kg、BMI20.9±1.5の全例肺腺癌stage lV、4例で化学療法、2例で放射線療法の施行歴があった。1例が同意撤回、1例は胃部不快感によりケトン食は導入せず、3例に導入した。食事指導に加えてMCTオイル、ケトンフォーミュラを使用することにより、血中ケトン体は、1か月でアセト酢酸986.6±453.3μmol/L、βH酪酸2298土1270.4μmol/Lまで上昇し、想定された低血糖、嘔気、倦怠感などは認めず、3か月での全身状態スケール11.7±9.6→61.1±9.6、GSRSスコア1.64±0.42→l.24±0.15と改善傾向を示した。3か月でのPET-CTでは、1例で一部縮小、2例では変化を認めなかった。1例は3か月評価後、頭部の転移を認め、ケトン食を離脱したが、γナイフで腫瘍の消失、エルロチニプ投与で原発巣の縮小を認め、手術にてCRとなった。1例は、エルロチニプ継続、1例は複数の化学療法を併用し、優先日時点で3例とも生存し、その後出願日までに一例死亡したが顕著に延命効果があったことが認められた。また、これら5例についてカプランマイヤー法により解析したところ、出願日時点の解析でp<0.05で統計学的に有意な差があったことが判明し(図11)、本発明の食事療法に有意な効果があることが判明した。既存の癌治療は、外科的切除、化学療法、放射線治療であり、肺癌や膵癌などは化学療法による治療効果は十分とはいえない状況である。これらの進行癌に対して、ケトン食が、生命予後を改善する可能性が示されたことから、癌患者における有効な食事療法の開発が可能と考えられる。したがって、本発明の食事療法は、三大療法(手術、放射線療法、抗がん剤(化学療法))のいずれか1つまたは複数を実施する際の支持療法ということができる。

 別の臨床研究の試験例において、再発乳がん患者に3カ月間、本発明の糖質制限高脂肪食を実施した。3カ月のみの実施であるが、それでもなお、治療期間初期から本発明の糖質制限高脂肪食の実施により腫瘍マーカーの顕著な減少が見られた。驚くべきことに、本発明の食事療法により、初期(導入期)の治療を施すだけで、顕著に腫瘍マーカーの減少がみられ、所見でも顕著にがんが快方に向かっていることが観察された。腫瘍マーカーからの判断ではあるが、6回目の再発患者において5回目まででこれほどの効果がなかったことを考慮すると、本発明の食事療法は他の抗がん治療に拘わらず奏功することを示唆し、食事療法を単独で導入することでも奏功することを示唆する。また、導入期の予後を見るとすでに改善傾向があることから、導入期の処置(食事療法)のみでも奏功することを示唆する。

 さらなる臨床研究の試験例において、肺癌患者(上記5症例)以外の癌患者におけるケトン食の有用性を確認した。疾患背景は、肺癌2例、子宮体癌再発1例、膀胱癌再発1例、卵巣癌再発2回目1例、腹膜癌再発4回目1例であった。肺癌2例は、1例が嘔気、1例が治療途中に腺癌より小細胞癌に形質変化し中止。膀胱癌1例は、その他の癌治療に伴う有害事象により中止。中止した膀胱癌の症例では、その後すぐに被験者が亡くなられた。中止した肺癌2例も予後が極めて不良である。これらの非処置群は比較例として評価可能である。実施例として評価可能な症例は3例であった。血中ケトン体は、1か月でアセト酢酸およびβH酪酸において上昇傾向を示し、低血糖、嘔気、倦怠感などは認めず、3か月でのGSRSスコアは改善傾向を示した。全身状態スケールはやや悪化を示した。3か月でのPET-CTでは、子宮体癌症例でSD(=stable disease)、卵巣癌、腹膜癌症例はPR(=partial response)であった。子宮体癌1例は、導入時、腹水貯留が強かったが、ケトンフォーミュラ中心に栄養補給を行ったところ、ケトン食導入前は急激に悪化しいていたにもかかわらずケトン食導入1か月後CA125 6815→4486U/mlにまで改善し、腹水の緊満の改善や胸水の減少も認められ、外出が可能になるなどQOLも改善したが、化学療法の再開は拒否され、導入後4ヶ月で永眠されたが、医学的にはこの子宮体癌の例は本発明を実施しない場合に比べて著効を示したと評価できる。2016年7月現在、その他の2例は生存し、卵巣癌症例は根治術が行われ、本出願の出願時現在は寛解している。3例のうち卵巣癌および腹膜癌の2例は、ケトン食導入によりPRを示した。したがって、肺癌および乳癌以外の癌患者においてもケトン食治療は安全に施行され、延命効果を示すものと評価され得る。

 以上から本発明は以下を提供する。
(項目1)
高脂肪食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せ。
(項目2)
前記高脂肪食は、脂肪を、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたり約120g以上、または1日の総エネルギーの約70%以上とすることを特徴とする、項目1に記載の組成物またはその組合せ。
(項目3)
前記高脂肪食は糖質制限されていることを特徴とする、項目1または2に記載の組成物またはその組合せ。
(項目4)
前記高脂肪食は、炭水化物を1日30g以下に制限することを特徴とする、項目3に記載の組成物またはその組合せ。
(項目5)
前記高脂肪食は、一日摂取カロリーを20kcal/kg体重以上とすることを特徴とする、項目1~4のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目6)
前記高脂肪食は、約60%(w/w)以上の脂肪を含む、項目1~5のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目7)
前記高脂肪食は、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物を含む、項目6に記載の組成物またはその組合せ。
(項目8)
前記高脂肪食は、約10%(w/w)~約20%(w/w)のタンパク質を含む、項目6または7に記載の組成物またはその組合せ。
(項目9)
中鎖脂肪酸油(MCTオイル)を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目10)
前記高脂肪食は、約25%(w/w)~約40%(w/w)の長鎖脂肪酸油、約35%(w/w)~約50%(w/w)の中鎖脂肪酸油(MCTオイル)、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物、および約10%(w/w)~約20%(w/w)のタンパク質を含む、項目6~9のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目11)
前記高脂肪食はケトンフォーミュラを含む、項目6~10のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目12)
前記中鎖脂肪酸油は炭素数8~11の脂肪酸で構成される、項目9に記載の組成物またはその組合せ。
(項目13)
前記炭水化物は乳糖を含む、項目7~12のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目14)
他の治療と組み合わされることを特徴とする、項目1~13のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目15)
前記他の治療は、手術療法、化学療法もしくは放射線療法またはそれらの組合せを含む、項目14に記載の組成物またはその組合せ。
(項目16)
前記がんは、非小細胞性肺悪性腫瘍、乳がん、子宮体がん、卵巣がん、および腹膜がんからなる群から選択される、項目1~15のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目17)
前記高脂肪食は、修正アトキンス食であって、該修正アトキンス食は、
1)最初の一週間は、実質体重を50kgを基準とした場合、1日カロリー約1500kcal、脂質約140g:タンパク質的約60g:炭水化物約10gの比率で提供され、
2)2週目~3か月目では、炭水化物の1日摂取量は約20g以下とし、1日カロリー約1400~約1600kcal、脂質約120~約140g:タンパク質約70g:炭水化物約20gの比率で提供され、
3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、約10g/回として、1日摂取量は約30g以下とし、その他は、2)に準じて提供される
ことを特徴とする、項目1~15のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目18)
前記修正アトキンス食は、ケトンフォーミュラおよび/またはMCTオイルで提供される、項目17に記載の組成物またはその組合せ。
(項目19)
前記がんの患者は、パフォーマンスステータス(PS)2以下である、項目1~18のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目20)
前記がんの患者は糖尿病を合併していない、項目1~19のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目21)
高脂肪食を含む、がん治療の効果を強化するための組成物またはその組合せ。
(項目22)
前記組成物またはその組合せは食品である、項目1~21のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目23)
前記食品は、冷凍食品、乳製品、チルド食品、栄養食品、流動食、介護食、および飲料からなる群から選択される、項目22に記載の組成物またはその組合せ。
(項目A1)
約60%(w/w)以上、または総エネルギーの約75%以上の脂肪を含む、がんを処置するための組成物。
(項目A2)
約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物を含む、項目A1に記載の組成物。
(項目A3)
約5%(w/w)~約40%(w/w)、または総エネルギーの2%~25%のタンパク質を含む、項目A1またはA2に記載の組成物。
(項目A4)
前記脂肪のうち約30%(w/w)以上がMCTオイルである、項目A1~A3のいずれか1項に記載の組成物。
(項目A5)
前記炭水化物が乳糖を含む、項目A1~A4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目A6)
ケトンフォーミュラで構成される、項目A1~A5のいずれか1項に記載の組成物。
(項目A7)
前記組成物は食品である、項目A1~A6のいずれか1項に記載の組成物。
(項目B1)
糖質制限食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せ。
(項目B2)
前記糖質制限食は、炭水化物を1日30g以下に制限することを特徴とする、項目B1に記載の組成物またはその組合せ。
(項目B3)
前記糖質制限食は、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物を含む、項目B1またはB2に記載の組成物またはその組合せ。
(項目B4)
前記炭水化物が乳糖を含む、項目B1~B3のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目B5)
前記組成物またはその組合せは食品である、項目B1~B4のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
(項目C1)
中鎖脂肪酸油(MCTオイル)を含む、がんを処置するための組成物。
(項目C2)
前記MCTオイルは炭素数8~10の脂肪酸で構成される、項目C1に記載の組成物。
(項目C3)
約30%(w/w)以上のMCTオイルを含む、項目1または2に記載の組成物。
(項目C4)
前記組成物は食品である、項目C1~C3のいずれか1項に記載の組成物。
(項目D1)
 がんを処置するための高脂肪食による食事療法であって、
 該高脂肪食は、修正アトキンス食であって、該修正アトキンス食は、
1)最初の一週間は、実質体重を50kgを基準とした場合、1日カロリー約1500kcal、脂質約140g:タンパク質的約60g:炭水化物約10gの比率で提供する工程、
2)2週目~3か月目では、炭水化物の1日摂取量は約20g以下とし、1日カロリー約1400~約1600kcal、脂質約120~約140g:タンパク質約70g:炭水化物約20gの比率で提供する工程、および
3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、約10g/回として、1日摂取量は約30g以下とし、その他は、2)に準じて提供する工程
を含む、食事療法。

 本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。

 1つの想定される治療形態では、例えば、非小細胞性肺悪性腫瘍、Stage IV期、PS0-1、経口摂取可能な患者を対象とし、化学療法、放射線療法などの併用は可能とした。この他に、本発明が対象とするがんは、結腸癌(大腸癌)、乳癌、子宮体癌、膀胱癌、卵巣癌、腹膜癌、直腸癌、肝癌、口唇腺様嚢胞癌、これらの癌の転移(肝臓転移、骨転移等)、再発癌、などが挙げられる。ケトン食は、1)最初の1週間は、カロリーは、実質体重をもとに30kcal/kgとし脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物10g以下を目標とする。具体的には、導入初期には、実質体重を50kgとして、1日カロリー約1500kcal、脂質約140g:タンパク質的約60g:炭水化物約10gの比率とする。ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は2:1を目標とする。その他の栄養素は制限なく摂取可能とする。必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する。2)2週目~3か月目では、血中ケトン体の値を参考に、炭水化物の1日摂取量は約20g以下とし、1日カロリー約1400~約1600kcal、脂質約120~約140g:タンパク質約70g:炭水化物約20gの比率とし、ケトン比は2:1~1:1を目標とする。カロリー補給に際しては、MCTオイル、ケトンフォーミュラを使用する。3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、約10g/日として、1日摂取量は約30g以下とし、その他は、2)に準じる。エネルギー補給に際しては、MCTオイル、ケトンフォーミュラを使用することで、従来法に比べて、容易に血中ケトン体を誘導することが可能となる。経口摂取不可能な癌患者、または、PS3以上の癌患者や糖尿病を合併している患者を除くことが好ましい。

 本発明において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。

 癌患者におけるケトン食の導入は安全に施行され、QOLの改善も認め、延命効果を示す可能性も示唆された。抗ガン剤や放射線治療を併用する際に、治療効果を高めることができ、抗ガン剤の投与回数を減らしたり、放射線治療の回数を減らせる可能性を秘めており、これは医療費削減に寄与するものと考える。また、末期癌患者を含むすべての癌患者に対する、栄養療法が根本から覆り、まったく新しい栄養療法が確立できる可能性がある。国立がん研究センターの2015年の癌患者予測数は、982,100例であることから、そのすべてに適応となる可能性があり、その経済効果は測り知れない。

図1は、対照群およびKF群における腫瘍移植後の21日目の腫瘍重量のデータを示す。 図2は、対照群およびKF群における腫瘍移植後の21日目の腫瘍を除いた体重を示す。 図3は、対照群およびKF群における総摂取熱量のデータを示す。 図4は、対照群およびKF群における腫瘍移植後の21日目の血中βヒドロキシ酪酸濃度のデータを示す。 図5は、対照群およびKF群における腫瘍移植後の21日目の血中IL-6濃度のデータを示す。 図6は、健常成人における血中βヒドロキシ酪酸濃度のデータを示す。左が、プラセボフォーミュラ(ケトンフォーミュラと同等の組成で脂質が全て長鎖脂肪酸油脂である(中鎖脂肪酸油脂を含まない)組成物)を摂取した場合の血中βヒドロキシ酪酸濃度を示すグラフであり、右は、ケトンフォーミュラを摂取した場合の血中βヒドロキシ酪酸濃度を示すグラフである。各グラフの横軸は、摂取後の時間経過(時間)を示す。 図7は、ケトン食継続3症例の血液データを示す。左上からグルコース、インスリン、左下から1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)、HbA1Cの時間経過(12か月まで)を示す。各々のグラフにはエラーバーおよび単位を示す。 図8は、ケトン食継続3症例の血液データを示す。左上から総コレステロール(T-cho)、トリグリセリド(TG)、左下からHDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)HDL-C。各々のグラフにはエラーバーおよび単位を示す。 図9は、ケトン食継続3症例の血液データを示す。上段は静血アセト酢酸を示し、下段は静血βH酪酸を示す。各々のグラフにはエラーバーおよび単位を示す。 図10は、ケトン食継続3症例の血液データを示す。上段は尿酸(UA)を示し、下段はC反応性タンパク質(CRP)を示す。各々のグラフにはエラーバーおよび単位を示す。 図11はカプランマイヤー法の結果を示す。実線はケトン食非投与群を示し、破線は、ケトン食投与群を示す。縦軸は生存率、横軸はコホートに入ってからの時間(日数)を示す。解析法としてlog-rank testを使用した。グラフ下の「No. at Risk」の数値は、上段がケトン食なし、下段がケトン食ありの、各時点における死亡する可能性のある患者数を意味する(症例4については894日目で最終確認されており、抜け落ちとなるためこのようなグラフとなっている)。 図12は、一症例におけるPEG-CTの治療前後(3カ月後)の比較を示す。放射線科の読影によれば、左肺S6中枢側の既知の腫瘤は僅かに縮小と思われ、FDG集積(SUVmax:前回2.4→今回2.8)で、活動性は持続していると判断される。また、左胸水貯留と、左胸膜、葉間胸膜に広範にFDG集積が増強しており、葉間胸膜に接して認める小結節は前回より僅かに拡大し、FDG集積を伴っていると観察される。 図13は、症例8のCTの治療前後(3カ月後)の比較を示す。 図14は、症例11のPET-CTの治療前後(4か月後)の比較を示す。 図15は、症例11のPET-CTの治療前後(4か月後)の比較を示す。 図16は、症例11のPET-CTの治療前後(4か月後)の比較を示す。 図17は、症例12のPET-CTの治療前後(3か月後)の比較を示す。 図18は、症例12のPET-CTの治療前後(3か月後)の比較を示す。 図19は、症例12のPET-CTの治療前後(3か月後)の比較を示す。

 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。

 高脂肪食とは、厚生労働省の報告書によれば、炭水化物とタンパク質との関係で決定され、総エネルギーの中での割合となる。平成17年及び18年国民健康・栄養調査2,3)によれば、通常、1gあたり9kcalで計算して総エネルギー量の30%以上を脂質から摂取することをいうことになる。特定の実施形態では、高脂肪食は、総エネルギー量の約50%以上、総エネルギー量の約55%以上、総エネルギー量の約60%以上、総エネルギー量の約65%以上、総エネルギー量の約70%以上であり、総エネルギー量の約75%以上、総エネルギー量の約80%以上、総エネルギー量の約85%以上、または総エネルギー量の約90%以上の脂肪を含む。好ましい実施形態では、高脂肪食は、総エネルギー量の約80%以上の脂肪を含む。別の実施形態では、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたりの脂肪の摂取量は、約80g以上、約90g以上、約100g以上、約110g以上、約115g以上、約120g以上、約125g以上、約130g以上、約135g以上、約140g以上、約145g以上、または約150g以上である。別の好ましい実施形態では、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたりの脂肪の摂取量は、約140g以上である。高脂肪食は糖質が制限されている(すなわち、糖質制限高脂肪食)のが好ましい。

 高脂肪食に含まれる脂肪は、低鎖脂肪酸油、中鎖脂肪酸油、長鎖脂肪酸油、またはこれらの任意の組合せであり得る。高脂肪食に含まれる脂肪は、中鎖脂肪酸油の比率が高いのが好ましい。具体的には、高脂肪食に含まれる脂肪のうち、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上が中鎖脂肪酸油である。

 本明細書において「中鎖脂肪酸油」とは、油脂中を構成する脂肪酸の長さが中鎖であるものをいい、MCT(Medium Chain Triglyceride)とも称され、代表的には炭素数が6~12、好ましくは炭素数8~12の脂肪酸で構成されるもの、あるいは炭素数8~10の脂肪酸で構成されるものを指す。一般的な油より消化吸収がよく、エネルギーになりやすい。例えば、中鎖脂肪酸としては、ヘキサン酸(カプロン酸;C6)、オクタン酸(カプリル酸;C8)、ノナン酸(ペラルゴン酸;C9)、デカン酸(カプリン酸;C10)、ドデカン酸(ラウリン酸;C12)を挙げることができる。

 本明細書において「糖質制限高脂肪食」(いわゆる「ケトン食」)とは、通常の食事よりも糖質の摂取が少なく、脂肪が多い食事をいう(すなわち、上記の高脂肪食にさらに糖質制限を加えた食事をいう)。通常は糖質制限は、1日糖質摂取量が100g以下を指す。この数値は、2010年の厚生労働省の栄養の報告書に基づき、「仮に基礎代謝量を1,500kcal/日とすれば、脳のエネルギー消費量は300kcal/日になり、ぶどう糖75g/日に相当する。上記のように脳以外の組織もぶどう糖をエネルギー源として利用することから、ぶどう糖の必要量は少なくとも100g/日と推定され、すなわち、消化性炭水化物の最低必要量はおよそ100g/日と推定される」とされていることから算出されるものであり、変動し得ることが理解される。本発明で利用され得るケトン食は、一般に難治性てんかん患者の発作軽減作用、グルコーストランスポーター1欠損症ピルビン酸脱水素酵素複合体異常症の軽減作用が知られており、その安全性も確かめられている。ケトン食の一例として、ケトンフォーミュラ(明治817-B;株式会社明治)があげられる。

 本明細書において使用される用語「炭水化物」とは、単糖を構成成分とする有機化合物をいう。高脂肪食、糖質制限食、糖質制限高脂肪食等の文脈において使用される「炭水化物」は、糖質を指し、「炭水化物」と「糖質」は互換可能に使用される。本明細書において使用される用語「糖質」とは、食物繊維ではない炭水化物をいい、単糖類、二糖類、および多糖類が含まれる。単糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等が挙げられる。二糖類としては、マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)等が挙げられる。多糖類としては、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲン、デキストリン等が挙げられる。

 本明細書では、通常「糖質制限高脂肪食」は1日糖質摂取量約100g以下、脂質の摂取量が総摂取エネルギーに対して約30%以上をいう。

 好ましい実施形態では、糖質は、1日糖質摂取量約90g以下、約80g以下、約70g以下、約60g以下、約50g以下、約40g以下、約35g以下、約30g以下、約25g以下、約20g以下、約15g以下、約10g以下であり得る。高脂肪について言えば、好ましくは、総摂取エネルギーに対して約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上であり得る。

 好ましい実施形態では、糖質制限高脂肪は、ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))(重量比)をみて判断することができ、ケトン比が約1:約1と等しいまたは高い(脂質が多い)場合は、糖質制限高脂肪食として好ましい。約1:約1またはそれより脂質が多い場合はどのような比率でもよいが、1つの実施形態では、約1:約1~約2:約1に設定してもよく、導入時は2:1前後であることが好ましい。タンパク質および炭水化物の量はケトン比がこの定義を充足する限りどのような量でもよいが、好ましくは、1日約30g以下であり、より好ましくは1日約20g以下であり、さらに好ましくは1日約10g以下であり、あるいは時期によってこれらを組み合わせてもよい。1回の摂取量は、1日の摂取量の範囲であればどのような範囲でもよいが、好ましくは、1回約10g以下とする。理論に束縛されることを望まないが、摂取エネルギーの約60~約90%を脂肪で摂ることになるとされる。糖質制限高脂肪食は、例えば、ケトンフォーミュラ(明治817-B;株式会社明治)により提供することができる。小児に使用される場合はアトキンス食を使用してもよく、成人には修正アトキンス食を使用してもよい。修正アトキンス食は以下のとおりである。1)最初の1週間は、カロリーは、実質体重をもとに約30kcal/kgとし脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物約10g以下を目標とする。具体的には、導入初期には、1)実質体重を50kgとして、1日カロリー約1500kcal、脂質約140g:タンパク質的約60g:炭水化物約10gの比率とする。ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は2:1を目標とする。その他の栄養素は制限なく摂取可能とする。必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する。2)2週目~3か月目では、血中ケトン体の値を参考に、炭水化物の1日摂取量は約20g以下とし、1日カロリー約1400~約1600kcal、脂質約120~約140g:タンパク質約70g:炭水化物約20gの比率とし、ケトン比は2:1~1:1を目標とする。カロリー補給に際しては、MCTオイル、ケトンフォーミュラを使用する。3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、10g/日として、1日摂取量は約30g以下とし、その他は、2)に準じる。

 別の好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食(例えば、糖質制限高脂肪食)は、約60%(w/w)以上の脂肪、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物、および約10%(w/w)~約20%(w/w)のタンパク質を含む。より好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食(例えば、糖質制限高脂肪食)は、約25%(w/w)~約40%(w/w)の長鎖脂肪酸油、約35%(w/w)~約50%(w/w)の中鎖脂肪酸油(MCTオイル)、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物、および約10%(w/w)~約20%(w/w)のタンパク質を含む。さらなる好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食(例えば、糖質制限高脂肪食)は、ケトンフォーミュラまたはこれと同等の主成分で構成される組成物を含む。ケトンフォーミュラ(明治817-B;株式会社明治)の主要な組成は、以下の表1に示される。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001

 ケトンフォーミュラは、上記主成分の他、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、塩素、鉄、銅、亜鉛を含む。

 好ましい実施形態では、本発明の糖質制限高脂肪食は、低カロリー食(例えば、600kcal/日等の1000kcal/日未満の食事)を回避することが有利である。低カロリー食を加えると患者の予後の状態がよくないからである。ある程度のカロリーを確保することはがん治療において重要であることが理解される。例えば、一日の摂取カロリーは基礎代謝量を下回らないことが好ましい。基礎代謝量は、当該分野に公知の計算式等で対象患者の実質体重をもとに算出することができる。例えば、厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)によれば、50歳以上の男性で21.5kcal/kg体重/日であり、50歳以上の女性で21.5kcal/kg体重/日であるが、18~29歳の男性では、24.0kcal/kg体重/日であり、18~29歳の女性では、22.1kcal/kg体重/日である。

 当該分野においてケトン食と言っているものは、糖質約60~約70g/日で行っているものもあるが、糖質は約30g/日以下に制限することが好ましい。理論に束縛られることを望まないが、糖質を約30g/日以下に制限することで、血中ケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)を誘導することが可能となり、その結果が癌患者の予後を改善する。

 特に断りがなければ、本明細書において記載される脂肪、炭水化物またはタンパク質の一日摂取量のグラム数は、実質体重50kgを基準としている。本明細書において使用される「実質体重」とは、現実の体重をいう。当業者であれば、実質体重が異なれば、一日摂取量のグラム数も変動し得ることを理解する。例えば、実質体重が80kgの場合、実質体重50kgを基準とした摂取量の1.6倍の摂取量となることが理解される。

 本明細書において使用される「がん」は、例えば、正常な細胞が突然変異を起こして発生する腫瘍を含む。悪性腫瘍は全身のあらゆる臓器や組織から生じ得る。特に識別しない場合、本明細書では「癌」「悪性腫瘍」と同義で用いる。例えば、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、副腎がん、胆道がん、乳がん、大腸がん、小腸がん、卵巣がん、子宮がん、子宮体がん、子宮内膜がん、膀胱がん、前立腺がん、尿管がん、腎盂がん、尿管がん、陰茎がん、精巣がん、脳腫瘍、中枢神経系のがん、末梢神経系のがん、頭頸部がん、グリオーマ、多形性膠芽腫、皮膚がん、メラノーマ、甲状腺がん、唾液腺がん、悪性リンパ腫、がん腫、肉腫、白血病および血液悪性腫瘍からなる群から選ばれる1種以上を含む。肺がんは、例えば、非小細胞肺がん(例えば、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)、または小細胞肺がんを含む。好ましい実施形態では、本発明は進行がんや転移がん等を含む末期がんの患者も治療し得ることが特徴である。特に末期がんの患者では予後の改善が非常に著明であり、寛解する例もみられており、このような効果は、従来の食事療法や通常のがん治療では見られなかったものである。

 本明細書において「転移」(metastasis)とは、がんが体の原発部位から他の領域に広がるか移って新しい場所に類似したがん性の病巣が発達する過程を指す。「転移性」または「転移する」細胞は、隣接細胞との接着性接触を失い、血流またはリンパを通して疾患の原発部位から移動して、近隣の体構造に侵入する細胞である。本明細書において転移の用語は好ましくは、ただし限定はされないが、本明細書に記載のがんの、より好ましくは固形がんの、より好ましくは乳房、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、胸腺、子宮、睾丸、子宮頸部および/または肝臓のがんからなる群から選択されるがんの、転移を含む。

 本発明はどのような進行度のがんでも治療することができ、どのような種類のがんも治療することができる。

 例えば、TNM分類で分類すると、
原発腫瘍(T:tumor=腫瘍):
 T0=腫瘍なし(固まりを作っていない)
 T1~T4=がんの大きさ、浸潤の程度により、各臓器別に分類
リンパ節転移(N:lymphnodes=リンパ節):
 N0=リンパ節転移なし
 N1~N4=リンパ節転移の程度により、各臓器別に分類
遠隔転移(M:metastasis=転移):
 M0=遠隔転移なし
 M1=遠隔転移あり
で分類できる。そして、TNM分類をもとに、癌の進行度と広がりの程度を、一度に表わすことが出来るように作られたのがステージ分類であり、本明細書でも、ステージ分類を進行度の指標として利用することができる。臨床に沿った分類であるので、邦訳では臨床進行期分類、といも言われる。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002

 理論に束縛されることは望まないが、本発明は、あらゆる種類のがん、またはあらゆる段階のがん(初期の癌、末期がんを含む)においても予後を損なうことなく、むしろ改善し、QOLを高めたうえで、寛解例も出る程度に治療効果もある療法を提供する。

 好ましい実施形態では、本発明の組成物またはその組合せまたは食事療法では、他の治療と組み合わせることが好ましい。他の治療としては、がんの治療として使用されているものであれば、どのようなものも利用することができ、例えば、手術療法(例えば、切除・摘出術)、化学療法もしくは放射線療法などを挙げることができる。

 手術療法とは、がんの病巣を切除し、その臓器の周辺組織やリンパ節に転移があれば、一緒に切り取るあるいは臓器自体を摘出することをいう。早期のがんや、ある程度進行しているがんでも、切除可能な状態であれば、手術療法が積極的に行われる。切除する範囲をできるだけ最小限にとどめる方法(縮小手術)や、内視鏡(小型カメラ)を使った腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術なども開発されており、これらも手術療法に含まれる。

 化学療法とは、主に、抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療方法である。抗がん剤の投与方法は、点滴や注射、内服等がある。血液を通して全身をめぐるため、ごく小さな転移にも効果がある。ホルモン療法(内分泌療法)もこの化学療法に含まれることがある。

 放射線療法とは、がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法である。治療前の検査技術や照射方法の進歩によって、がんの大きさや位置を正確に測り、その部分だけに集中的に照射することが可能である。体の外側から放射線を照射する「外部照射」だけでなく、放射線を出す物質を密封した針やカプセルを病巣部に挿入する「密封小線源治療」、放射性物質を注射や内服で投与する「放射性同位元素内用療法」がある。放射線療法に使われる放射線としてX線がよく使用されるが、粒子線を使う陽子線治療や重粒子線(炭素イオン線)治療も利用され得る。

 いずれの治療も、本発明の食事療法と組み合わせることができることが理解される。

 1つの具体的な実施形態では、本発明が対象とするがんは非小細胞性肺悪性腫瘍(例えば、肺腺癌)、結腸癌(大腸癌)、乳癌、子宮体癌、膀胱癌、卵巣癌、腹膜癌、直腸癌、肝癌、口唇腺様嚢胞癌、これらの癌の転移(肝臓転移、骨転移等)、再発癌、などを含むが、本明細書で実証されるように、具体的例はこれらに限定されず、任意の癌や悪性腫瘍が含まれることが理解される。別の具体的な実施形態では、本発明が対象とするがんは、非小細胞性肺悪性腫瘍(例えば、肺腺癌)等のStage IVを含み、このような後期の段階の癌も具体的な例に含まれる。

 (好ましい実施形態)
 以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。

 (高脂肪食によるがん治療)
 1つの局面において、本発明は、高脂肪食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せを提供する。本発明では、高脂肪食を導入することによって、従来寛解がきわめて困難であった末期がんを含む広い範囲の種類および進行度のがんを治療することができ、場合によっては寛解まで達成することができる。

 1つの実施形態では、本発明の高脂肪食は、脂肪を、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたり約80g以上、約90g以上、約100g以上、約110g以上、約120g以上、約120g以上、約125g以上、約130g以上、約135g以上、または約140g以上とする。より具体的には、本発明の高脂肪食は、脂肪を、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたり約80g~約180g、好ましくは、1日あたり約90g~約170g、より好ましくは、1日あたり約100g~約160g、さらに好ましくは、1日あたり約110g~約150g、最も好ましくは、1日あたり約120g~約140gである。

 別の実施形態では、本発明の高脂肪食は、脂肪を、総エネルギー量の約50%以上、総エネルギー量の約55%以上、総エネルギー量の約60%以上、総エネルギー量の約65%以上、総エネルギー量の約70%以上であり、総エネルギー量の約75%以上、総エネルギー量の約80%以上、総エネルギー量の約85%以上、または総エネルギー量の約90%以上とする。より具体的には、本発明の高脂肪食は、脂肪を、総エネルギー量の約50%~約95%、好ましくは、総エネルギー量の約60%~約90%、より好ましくは、総エネルギー量の約65%~約85%、最も好ましくは、総エネルギー量の約70%~約80%とする。

 好ましい実施形態では、高脂肪食は糖質制限されている、すなわち糖質制限高脂肪食であることを特徴とする。本発明の糖質制限高脂肪食は、炭水化物を1日約30g以下に制限することを特徴とする。糖質制限としては、例えば、約60~約70g/日のものも含まれるが、理論に束縛されることは望まないが、この量をさらに制限することにより、予後の改善が期待されることから、従前にも増して治療効果を上げることができることが理解される。好ましい実施形態では、さらに、導入期の糖質制限をさらに制限し約20g/日以下、より好ましくは約10g/日以下に制限してもよい。導入期の糖質制限をさらに限定することにより血中ケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)を急速に誘導することが可能となり、その結果が癌患者の予後を改善する。ただし、導入初期の食事内容は、従来の食習慣と異なることから、継続が困難であり、徐々に糖質摂取量の制限を軽減していくことで、糖質制限高脂肪食の継続が可能となり、治療効果も認められる。以上の2点という画期的な効果が期待されるからである。したがって、糖質の制限量(炭水化物の摂取量)は、初期量において厳格な制限(例えば、約10g/日以下)から徐々に緩やかにするという特徴を有する限り、約10g/日→約20g/日→約30g/日等に限定されるものではない。したがって、初期導入量では例えば、場合により約5~約15g/日あるいはその前後(±約5g/日)で開始することができ、第2段階では約15~約25g/日あるいはその前後(±約5g/日)で維持することができ、最後の維持段階では、約25~約35g/日あるいはその前後(±約10g/日)で継続することができる。

 糖質制限(例えば、上記の1日糖質摂取量)の下で、糖質制限高脂肪食は、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースなどの単糖類、マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)などの二糖類、またはデンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲン、デキストリンなどの多糖類、あるいはこれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、糖質制限高脂肪食は、グルコースまたはグルコースを基本構成要素とする多糖類を含まない。糖質制限(例えば、上記の1日糖質摂取量)の下で、糖質制限高脂肪食はラクトース(乳糖)を含むのが好ましい。別の好ましい実施形態ではグルコースを含まずラクトース(乳糖)を糖質として含むことが好ましい。別の好ましい実施形態では、実質的にラクトース(乳糖)のみを糖質として含むことも好ましくありうる。理論に束縛されることを望まないが、腫瘍の減縮効果や予後の改善が期待されるからである。糖質制限高脂肪食に乳糖を含む実施形態において、例えば、全糖質のうち約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上がラクトースであり、好ましくは、すべての糖質がラクトースである。

 (糖質制限食)
 別の局面では、糖質制限食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せを提供する。糖質制限食は、通常の食事よりも糖質の摂取が少ない食事をいう。例えば、糖質制限食は、炭水化物を1日約30g以下に制限されている。または、糖質制限食は、約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物を含む。本発明の組成物またはその組合せは、上記炭水化物の摂取量に限定されず、上記または下記に示される任意の特徴を有し得る。

 (MCTオイルを含む組成物)
 さらに別の局面では、中鎖脂肪酸油(MCTオイル)を含む、がんを処置するための組成物を提供する。例えば、本発明の組成物は、MCTオイルが炭素数約8~約10の脂肪酸で構成され、および/または約30%(w/w)以上のMCTオイルを含む。本発明の組成物は、上記または下記に示される任意の特徴を有し得る。

 (摂取カロリー)
 さらに好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食は、一日摂取カロリーを約20kcal/kg体重以上(標準体重50kgで約1000kcal以上)とすることを特徴とする。理論に束縛されることは望まないが、低カロリー(例えば、標準体重50kgで約600kcal/日)を回避することで、予後を改善することができるからである。したがって、20kcal/kg体重/日以下でも例えば、約14kcal/kg体重/日以上、約16kcal/kg体重/日以上、約18kcal/kg体重/日以上等でも、場合によっては利用することができる、あるいは、好ましくは、約22kcal/kg体重/日以上であってもよく、約24kcal/kg体重/日以上、約26kcal/kg体重/日以上、約28kcal/kg体重/日以上等であってもよく、代表例では、約30kcal/kg体重/日が利用され得る。

 (好ましい組成、成分及び摂取形態)
 好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食はケトンフォーミュラ(明治817-B;株式会社明治)またはその改変物(例えば、糖質および/またはタンパク質をさらに低減したもの(例えば、各成分について独立して±約5%、±約10%、±約15%、±約20%、±約25%変更したもの))により提供される。したがって、本発明は、がんを処置するためのケトンフォーミュラ(もしくはそれと同等の組成を有する組成物)またはその改変物を提供する。

 別の好ましい実施形態では、本発明の高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食は、中鎖脂肪酸油を含む。使用される中鎖脂肪酸油としては、当該分野で利用される任意の中鎖脂肪酸油を利用することができるが、代表的には炭素数が6~12、好ましくは炭素数8~12の脂肪酸で構成されるもの、あるいは炭素数8~10の脂肪酸で構成されるものを利用することができる。例えば、日清オイリオから販売される日清MCTオイル&パウダー、エキストラバージンココナッツオイル等を利用することができる。高脂肪食に含まれる脂肪のうち、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上が中鎖脂肪酸油(MCTオイル)であり得る。別の実施形態では、高脂肪食に含まれる脂肪のうち、約10%~約90%、約20%~約80%、約30%~約80%、または約40%~約70%であり、好ましくは、約50%~約60%が中鎖脂肪酸油(MCTオイル)である。

 1つの好ましい実施形態では、修正アトキンス食として改変したものを用いることができ、例えば、
 1)最初の1週間は、カロリーは実質体重をもとに30kcal/kg体重とし、脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物10g以下を目標とし、具体的には、導入初期には、実質体重を50kgとして1日カロリー1500kcal、脂質140g:タンパク質的60g:炭水化物10gの比率(ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は2:1)し、その他の栄養素は制限なく摂取可能とし、必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する処置を行うことができる。期間は、適宜伸縮することができ数日から数週間にしてもよい。

 2)2週目~3か月目では、血中ケトン体の値を参考にして適宜調整する。例えば、アセト酢酸500μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸1000μmol/L以下にならないように指導し、可能であれば、アセト酢酸1000μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸2000μmol/L以上を目標にする。炭水化物の1日摂取量は20g以下とし、1日カロリー1400~1600kcal、脂質120~140g:タンパク質70g:炭水化物20gの比率とし、ケトン比は2:1~1:1を目標とする。カロリー補給に際しては、MCTオイル、ケトンフォーミュラを使用する。期間は、適宜伸縮することができ2週間を少し前後してもよく、3カ月目も多少前後ずれてもよい(1、2週間または数週間のずれ程度は許容される)。

 3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、10g/日として、1日摂取量は30g以下とし、その他は、2)に準じる。2)以降であるため3カ月目がずれた場合は自ずからずれることになる。

 エネルギー補給に際しては、MCTオイル、ケトンフォーミュラを使用することで、従来法に比べて、容易に血中ケトン体を誘導することが可能となる。経口摂取不可能な癌患者、または、PS3以上の癌患者および糖尿病を合併している患者を除くことが好ましい。

 1つの実施形態では、本発明の高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食は、他の治療と組み合わせてもよい。そのような他の治療としては、手術療法、化学療法もしくは放射線療法またはそれらの組合せを含みうる。理論に束縛されることを望まないが、本発明の高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食は、既存のがん治療を補助する性格も有する。したがって、すでに治療を受けている患者に対して追加で実施することができるものである。

 したがって、別の局面では、本発明は、高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食を含む、がん治療の効果を強化するための組成物またはその組合せを提供する。

 本発明で提供される高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食は、種々のモジュールの組合せであることから、狭義の組成物またはその組合せとして提供されるのみならず、種々の成分(個別の食物)のキットまたは組合せとして提供されることが理解される。

 (食品組成物またはその組合せ)
 別の局面では、本発明は、高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食を含む、がんを処置するための食品組成物またはその組合せを提供する。1つの実施形態では、本発明の組成物または組合せは、食品として提供される。本明細書において、「食品」とは、栄養素を1種以上含む天然物及びその加工品をいい、あらゆる飲食物を含み、例えば弁当の形態やレストランや給食として提供される一式の食事形態を含む。「食品」は、ヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、飼料を含む意味で用いることができる。食品としては、例えば、冷凍食品、乳製品、チルド食品、栄養食品、流動食、介護食、飲料などが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、食品組成物またはその組合せは、胃瘻(いろう)により提供される場合がある。末期がん患者が、食物を経口摂取することが不可能または困難な場合があるからである。本発明における食品組成物またはその組合せは、MCTオイルおよび/またはケトンフォーミュラを添加することにより調製されてもよい。あらかじめ栄養素の組成が調整された食品組成物またはその組合せを提供することにより、本発明の食事療法を実施することが可能である。本発明の食品組成物またはその組合せは、本明細書中上記または下記に記載される任意の特徴を有するものであり得る。

 (その他の形態)
 別の局面では、本発明の組成物またはその組合せは、医薬品として提供されるほか、サプリメントまたは日本国での医薬部外品として提供され得る。食事療法で不足した分の栄養素をサプリメントまたは医薬部外品で補うことが可能である。例えば、高脂肪食において、不足した脂肪をサプリメントにより追加的に摂取することができる。脂肪を含むサプリメントの場合、含まれる脂肪は中鎖脂肪酸であるのが好ましい。特定の実施形態では、本願発明の組成物または組合せは、医薬品として提供されることが好ましい。本発明の組成物またはその組合せは、本明細書において上記または下記に記載される任意の特徴を有するものであり得る。

 本発明が対象とするがんは、任意のがんであり、どのようながんであっても、治療を受けたあるいは受けていない患者であっても対象とすることができるし、がんの種類は特に限定されない。また、がんのステージや分類も特に限定されない。したがって、本発明は、従来治療が難しいとされていた種類やステージのがんにも有効であり、しかも、予後が順調であり、寛解が困難または達成できていなかった種類やステージのがんでも寛解を達成することができたという点で意義深い。特に、ステージIV等の末期がんや、転移または進行がん、あるいは難治性のがんも対象とすることができる点で顕著といえる。例えば、非小細胞性肺悪性腫瘍を処置することができ、患者が寛解した例も実証されている。特に本発明の食事療法を受けなかった患者は残念ながら亡くなったのに対して、本発明の食事療法を受けた患者はいずれも予想を超えて存命であり、しかも腫瘍が消失した患者も存在する。このような効果は従来の治療では予想できなかったことであり、理論に束縛されることを望まないが、特に厳格に炭水化物を制限し、カロリーを比較的高めにし、脂肪も比較的高いカロリー%とすることで、このような効果を達成したものと考えられる。

 対象となる患者はどのような状態でも対象とすることができるが、患者はパフォーマンスステータス(PS)2以下であることが好ましい。通常の食事療法が支障なく実施し得る患者であるからである。また、好ましい実施形態では、対象となる患者は糖尿病を合併していないことが有利である。糖尿病患者は別途糖質の制限をする必要があるからである。ただし、適宜糖質を糖尿病にも対応するよう制限することで、本発明のがん治療を併用することができることが理解される。所期の臨床試験において糖尿病患者を除外したのは、倫理委員会に提出した際に、安全性を優先したからであり、糖質制限を行っても、筋肉や肝臓からの糖質の供給で、低血糖が起こらないことが確認できているので、糖尿病患者でも実施可能である。

 本発明において使用され得る対象の患者としては、任意の哺乳動物を挙げることができ、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(マウス等)または霊長類(ヒト等)であり、より好ましくは霊長類、さらに好ましくはヒトである。

 本発明は、例えば、食事療法であるため、経口摂取されるが、場合によっては、点滴、胃瘻等により摂取してもよい。したがって、本発明の組成物または組合せは、輸液としても提供され得る。

 摂取頻度は、通常1日に3回に分けて摂取されるが、1日2回、または1回でもよく、逆に4回でも5回でもよいことが理解される。上述のように、導入期(通常最初の一週間)、遷移期(通常2週間から3カ月)、および維持期(通常3カ月経過後)に別々の処方がされることから、摂取方法を適宜変更してもよく、おなじとしてもよい。

 したがって、本発明はまた、本発明(例えば、高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食を摂取させる工程)を用いる、対象となる疾患(例えば、がん)の治療または予防のための方法を提供する。本発明の実施形態において、がんの治療または予防のための方法において、高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食を摂取させることは、単独で行うことも想定し得るが、通常、他の癌治療例えば、三大治療と呼ばれる、手術、放射線療法および化学療法(抗がん剤)のうちの1つまたはそれらの任意の組合せ(化学療法については、1または複数の抗がん剤による処置を含む)と組み合わせて行われる。したがって、このような他の抗がん治療との組合せで行われる場合は、本発明の治療は支持療法と称することがある。

 本発明の方法は、上記に説明した高脂肪食、糖質制限食または糖質制限高脂肪食を摂取させる工程を包含する。他の好ましい実施形態は本発明の方法において適宜応用することができる。代表的な食事療法は以下のとおりである。

 1)実質体重をもとに約30±10kcal/kg体重のカロリーで、脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物約40g以下、望ましくは10g以下で食事を最初の約1週間(期間は、適宜伸縮することができ数日から数週間にしてもよい)摂取させる工程であって、好ましくは、実質体重を50kgとして1日カロリー約1500±500kcal、脂質約110~170g:タンパク質的約35~85g:炭水化物約10~40gの比率(ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は約2±1:約1)とし、その他の栄養素は制限なく摂取可能とし、必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する工程;
 2)約2週目~約3か月目(期間は、適宜伸縮することができ約2週間を少し前後してもよく、3カ月目も多少前後ずれてもよい(1、2週間または数週間のずれ程度は許容される))において、血中ケトン体の値を参考に、アセト酢酸約500±100μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸約1000±200μmol/L以下にならないように指導し、可能であれば、アセト酢酸約1000±200μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸約2000±400μmol/L以上を目標にする。炭水化物の1日摂取量は約40g以下とし、1日カロリー約1200~約2000kcal、脂質約90~170g:タンパク質約45~95g:炭水化物約10~40gの比率とし、ケトン比は約2:1~約1:1を目標として、好ましくは、MCTオイル、ケトンフォーミュラで食事を提供する工程;ならびに
 3)3か月目以降(2)の終期が3カ月目がずれた場合は自ずからずれることになる。)において、炭水化物の1回摂取量を約30g以下/日として、1日摂取量を約75g以下、望ましくは30g以下とし、その他は、2)に準じて食事を提供する工程を包含する。

 1つの実施形態では、一日の摂取カロリーは基礎代謝量を下回らないことが好ましくありうる。基礎代謝量は、当該分野に公知の計算式等で対象患者の実質体重をもとに算出することができる。例えば、厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)によれば、50歳以上の男性で21.5kcal/kg体重/日であり、50歳以上の女性で21.5kcal/kg体重/日であるが、18~29歳の男性では、24.0kcal/kg体重/日であり、18~29歳の女性では、22.1kcal/kg体重/日である。

 具体的な実施形態としては、例えば、修正アトキンス法の例は以下のような工程を包含する:
 1)実質体重をもとに約30kcal/kg体重のカロリーで、脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物約10g以下で食事を最初の約1週間(期間は、適宜伸縮することができ数日から数週間にしてもよい)摂取させる工程であって、好ましくは、実質体重を50kgとして1日カロリー約1500kcal、脂質約140g:タンパク質的約60g:炭水化物約10gの比率(ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は約2:約1)とし、その他の栄養素は制限なく摂取可能とし、必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する工程;
 2)約2週目~約3か月目(期間は、適宜伸縮することができ約2週間を少し前後してもよく、3カ月目も多少前後ずれてもよい(1、2週間または数週間のずれ程度は許容される))において、血中ケトン体の値を参考に、アセト酢酸約500μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸約1000μmol/L以下にならないように指導し、可能であれば、アセト酢酸約1000μmol/L以上、βヒドロキシ酪酸約2000μmol/L以上を目標にする。炭水化物の1日摂取量は約20g以下とし、1日カロリー約1400~約1600kcal、脂質約120~約140g:タンパク質約70g:炭水化物約20gの比率とし、ケトン比は約2:1~約1:1を目標として、好ましくは、MCTオイル、ケトンフォーミュラで食事を提供する工程;ならびに
 3)3か月目以降(2)の終期が3カ月目がずれた場合は自ずからずれることになる。)において、炭水化物の1回摂取量を約10g/日として、1日摂取量を約30g以下とし、その他は、2)に準じて食事を提供する工程を包含する。

 本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また「約」は特に断らない限り、その有効数字を示す。本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。

 以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。

 以下、本発明を実施した例を記載する。臨床試験はヘルシンキ宣言に従い、大阪大学内の基準に従い、非臨床試験は動物愛護の精神に基づき、株式会社明治付属の研究所において規定される基準に従って行った。

 (実施例1)
 マウスを用いたColon26細胞移植担癌モデルを用いて、癌に対するケトンフォーミュラの有用性について評価した。

 (材料および方法)
 7週齢の雄性CDF1マウス30匹に、大腸(結腸)癌細胞株であるColon26細胞(5x105個)を脇の皮下に移植した。移植後、マウスを各群10匹の対照群およびKF群(ケトンフォーミュラ群)に分けた。対照群には、動物用の精製飼料AIN-93G、KF群にはケトンフォーミュラを、Colon26細胞移植後から21日間与えた。ケトンフォーミュラは、株式会社明治により提供される817-Bを使用した。ケトンフォーミュラ(817-B)の組成は、以下の表2Aに示す。各試料の主要成分のエネルギーバランスを表2Bに示す。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003

 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004

 

 (結果)
 Colon26細胞移植後21日目の腫瘍重量は、対照群は1.69±0.25gであったのに対し、KF群の腫瘍重量は1.33±0.16gであり、対照群に対して有意に減少した(p<0.01)(図1)。また、体重から腫瘍重量を除いた除腫瘍体重に関しては、KF群の除腫瘍体重は対照群に対して有意に高かった(図2)。また、動物にケトン食(糖質制限高脂肪食)を与えた場合には摂取エネルギー量が減少することが、一般的に知られているが、本実施例では、KF群は対照群と比べて総摂取熱量に差はなく、摂取エネルギー量が維持された(図3)。血中ケトン体濃度は、KF群の血中ケトン体濃度は、対照群に対しては有意に高かった(図4)。さらに、血中の炎症性サイトカイン(IL-6)濃度が、対照群に比べてKF群で有意に抑制されることが明らかになった(図5)。以上のことから、ケトンフォーミュラは、血中のケトン体濃度を有効的に上昇させ、炎症性サイトカインを抑制させ、さらに総摂取エネルギーや除腫瘍体重を減らすことなく腫瘍を縮小させることが判明した。

 (実施例2)
 中鎖脂肪酸油脂によるケトン体の上昇効果の検証を行った。健常成人3名に対してケトンフォーミュラまたはプラセボフォーミュラ(ケトンフォーミュラと同等の組成で脂質が全て長鎖脂肪酸油脂である(中鎖脂肪酸油脂を含まない)組成物)を摂取してもらい、摂取後の血中ケトン体濃度を測定したところ、プラセボフォーミュラよりもケトンフォーミュラで、血中ケトン体濃度の上昇が確認された(図6)。ケトンフォーミュラがケトン食の中で特にケトン体を上昇させることが、動物だけでなくヒトにおいても判明した。また、脂質として中鎖脂肪酸を利用することが、ケトン体の上昇効果を得るのに望ましいと考えられる。

 本実施例では、5人の患者で単施設オープントライアル試験を行った。以下の基準で対象となる患者を選抜した。

 (適応基準)
切除標本や生検による病理により診断された非小細胞性の肺悪性腫瘍患者で、Stage IV、PS2以下を対象とする。
患者本人ならびに家族が食事療法を継続することを了承していること
 (除外基準)
経口摂取不可能な癌患者、または、PS3以上の癌患者
糖尿病を合併している患者
 (評価項目)
 選抜した患者について、以下の評価項目を評価した。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005

 

 評価項目については、以下に説明する。
(1)ケトン食:低炭水化物高脂肪食の指導、継続率の評価
(2)癌治療のQOLスコアの推移:EORTCQLQ-C30
(3)消化器症状スコアの推移:GSRS
(4)臨床検査値の推移:以下を測定した:
 各種腫瘍マーカー
 一般生化学(hs-CRP、T.G.、T.Chol、LDL-C、HDL-C、TP、ALB、Cr、BUN、AST、ALT、ALP、γ-GTP、血糖、IRI、HbA1c)
 血中ケトン体分画
 WBC分画、Hb、Ht、血小板数
 炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)
(5)ケトン食導入前後でのPET-CTによる画像評価
(6)次世代シークエンサー(例えば、ロシュ454、Illumina等の市販のシークエンサーを利用する。)による末梢血単核球由来のmRNAの網羅解析(実施例3において詳述)
 (ケトン食導入について)
 ケトン食としては、修正アトキンス食を指導する。その詳細は以下のとおりであった。

 1)最初の1週間は、カロリーは、実質体重をもとに30kcal/kgとし、脂質制限なし、タンパク質制限なし、炭水化物10g以下を目標とした。具体的には、導入初期には、実質体重を50kgとして、1日カロリー1500kcal、脂質140g:タンパク質60g:炭水化物10gの比率とした。
 ケトン比(脂質/(タンパク質+炭水化物))は2:1を目標とした。その他の栄養素は制限なく摂取可能とした。必要な微量元素やビタミンはサプリメントなどの使用で適宜摂取する。初めは、栄養管理室が作成したメニューに沿った食事を準備した。
 2)2週目~3か月目では、血中ケトン体の値を参考に、炭水化物の1日摂取量は20g以下とし、1日カロリー1400~1600kcal、脂質120~140g:タンパク質70g:炭水化物20gの比率とし、ケトン比は2:1~1:1を目標とする。カロリー補給に際しては、MCTオイル(日清オイリオ)、ケトンフォーミュラ(明治)を使用した。
 3)3か月目以降は、炭水化物の1回摂取量は、10g/日として、1日摂取量は30g以下とし、その他は、2)に準じた。
 導入にしては、一時的な低血糖、嘔気、倦怠感などが出現することを説明し、実際の栄養学的な指導は、栄養士の指導の下行った。調理対象者は、栄養指導に同席して行った。

 ケトン食(KetogenicDietともいう。脂質75~80%)は小児てんかん患者に対して長期投与が行われており、その安全性も確かめられているため、2010年版COCHRANE LIBRARYに記載されており、実際の方針については同文献も参考として援用した。導入初期に、嘔気、倦怠感、低血糖などが一時的にみられることがあるが、十分対処可能であることが確認されている。脂質の多い食事になるため、嗜好の問題により、ケトン食を継続できない患者が一定の割合で出る可能性がある。これらの問題に対して、栄養管理室と共同して対処していくことができる。

 (患者)
 実際に対象とした患者は5人であり、以下の表に評価項目とともにまとめる。なお、生存日数は、生存症例については2015年8月31日現在の日数である。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006

 

 以下の表には、各症例におけるケトン食療法以外の治療についての記録を提示する。また、図7~10に本実施例の3症例(症例1、3および4)の血液データを示す。図7には、グルコース、インスリン、1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)、HbA1Cの時間経過(12か月まで)を示す。図8には、総コレステロール(T-cho)、トリグリセリド(TG)、左下らからHDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)HDL-Cを示す。図9には、静血アセト酢酸を示し、下段は静血βH酪酸を示す。図10には、尿酸(UA)を示し、下段はC反応性タンパク質(CRP)を示す。

 以上の治療判定のように、同意した症例1、3および4は、2例が寛解し(CR=Complete Response)、1例も顕著な治癒が見られた(PD=Progressive Disease)。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007

 

 以下に各症例について詳述する。

 (症例1)
 症例 56歳 女性、 診断名 肺腺癌(stage IV)
 現病歴:2012年6月、受診。肺腺癌(stage IV, EGFR遺伝子変異陽性)と診断された。同年7月下旬より、抗がん剤治療を開始。
 (本発明の食事療法の開始前の治療経過)
 2012年7月から同年11月まで、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブを6コース施行し、胸水貯留は改善
 2012年12月から2013年2月まで、ペメトレキセド+ベバシズマブを4コース施行
 2013年初旬より、CEA上昇見られ、癌の補助療法を希望2013年3月4日から、本発明のケトン食による癌の補助療法を開始
 2013年6月13日頭部MRIで、脳転移が認められ(5mm)、γ-ナイフで消失、現在も再発なし
 同時期より、タルセバ開始
 当院ではケトン食介入中止。
 2013年8月8日人参養栄湯を処方。
 2013年10月3日よりメトグルコ(メトホルミン塩酸塩)処方
 2014年1月肺の原発巣の手術
 2014年4月より、人参養栄湯・クレストール(ロスバスタチン)・ロトリガ(オメガ-3脂肪酸エチル)を処方され、経過観察中
 2014年5月末、ケトン食介入1年後の診察
 仕事は変わらずできており、体重は変わらず、45kg前後で、食事について、夕食は糖質を控えており、オリーブ油・ココナッツオイル等、油は摂るように心がけているとの報告がされ、聴取結果から本発明の食事療法が継続されていると判断された。

 (症例2)
 症例 73歳 女性、 診断名 肺腺癌(stage IV)
 (治療経過)
 2012年11月、胸部CTで、間質性肺炎・多発肺結節を認め、原発性肺癌が疑われた
 2012年12月、プレドニゾロン5mg サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)500mgで経過観察
 2013年3月、胸部CTにおいて、間質性肺炎・膠原病肺炎・左肺尖部結節は変化なし、左肺S10の結節はわずかながら増大
 2013年4月、気管支鏡目的で入院左B1+2bにてキュレッティング3回施行、肺腺癌と診断
 2013年5月、PET-CTにおいて、左肺・直腸・頸椎に集積あり、左S10CTGB目的にて入院、EGFR遺伝子変異検査にてL858Rの変異が陽性
 2013年9月、本発明のケトン食による癌の補助療法を検討したが同意撤回
 2013年11月、ゲフィチニブ(イレッサ)250mg内服開始
 2014年5月、イレッサの副作用はでていないことから内服継続
 2014年6月、貯水貯留コントロールを目的に入院
 2014年8月、入院し8kg体重減少(50kg→42kg)、同年10月(41kg)
 2015年2月23日 永眠される。

 (症例3)
 症例 65歳 男性、 診断名 左上葉原発肺腺癌(胸膜播種stage IV)
 (治療経過)
 2011年6月27日、開胸手術を行ったところ、胸膜播種を認め化学療法導入
 2011年8月、シスプラチン+ペメトレキサド(アリムタ)導入、その後、ペメトレキサド単剤で維持療法20コースを施行
 2013年2月、CEA上昇と胸膜播種より、ドセタキセル(タキソテール)治療を開始
 2013年9月4日、本発明のケトン食療法を開始
 2013年11月、末梢神経障害が出現、抗がん剤を中止
 2013年12月、メトホルミン、人参養栄湯追加処方
 2014年3月、癌性胸膜炎と診断、ロスバスタチン・ピオグリタゾン・EPA製剤を追加処方
 2014年6月、人参養栄湯増量、ロスバスタチン一旦中止、アムロジピン5mg内服開始
 2014年7月、パクリタキセル+カルボプラチン+ベバシズマブ4コース目
 2014年8月、退院
 2014年9月、ベバシズマブ単剤の治療
 2014年10月、アバスチン単剤の治療、ケトン食は糖質30g制限
 2014年11月、ベバシズマブ単剤の治療
 2014年12月、CEA上横ばいとしてベバシズマブ継続、オリーブオイル、マクトンオイル、ケトン食継続
 2015年1月、ベバシズマブ中止、カルベジロール(アーチスト)2.5mg、アスピリン100mg、ニトロールR 20mgで経過観察
 2015年2月、入院、TS-1開始
 2015年6月、ビノレルビン(ナベルピン)開始するも、同年6月22日で中止
 2015年7月24日、ゲムシタビン(ジェムザール)開始、温熱治療8回
 2015年9月29日、ゲムシタビン4回目で終了
 2015年11月、骨シンチ7箇所転移、抗RANKL抗体(ランマーク)開始、脳MRIより脳転移確認、γナイフは使用せず
 2015年11/17からエルロチニブ(タルセバ)150mg朝1回開始
 2016年1月7日よりニボルマブ(オプジーボ)投与開始、計4回投与
 2016年3月11日、脳部MRI脳梗塞と診断、呂律が回らないなどの症状
 2016年4月、腸間膜転移絶食状態
 2016年5月3日、永眠される

 (症例4)
 症例 52歳 女性、 診断名 非小細胞肺癌(stage IV)
 (治療経過)
 2011年7月、胸部異常陰影を指摘、肺癌のため同年10月18日に左下葉切除術を施行、非小細胞肺癌(腺癌,pT2aNOMO,pStage IB)と診断
 2011年12月、UFT400の内服を開始
 2013年7月、左側頭葉に7cm大の腫瘤が認められ、左側頭葉腫瘤摘出術を施行、腺癌と診断
 2013年9月、EGFR遺伝子変異を認め、エルロチニブ(タルセバ)100mgの内服開始、頭部MRIで局所再発を認めており、城山病院にてγ-ナイフを施行
 2014年2月、本発明のケトン食療法を開始
 2014年3月、尿酸値が急上昇、アロプリノール(ザイロリック)処方
 2014年5月、ケトン食介入3ヶ月後の評価、PET-CTにおいて、再発・転移を示唆する異常集積なし、コレステロール高値のためロスバスタチン(クレストール)追加処方
 2014年7月、ケトン食介入4ヶ月後、糖質制限30gにて代謝系データ問題なし、アロプリノール、ロスバスタチン継続
 2014年8月、ケトン食介入5ヶ月後、糖質制限30g、アロプリノールからフェブキソスタットに変更、エルロチニブの湿疹が頭部にみられる
 2014年10月、ケトン食介入7ヶ月後、糖質制限30g、フェブキソスタットで続行
 2015年2月、ケトン食介入1年後、糖質制限30g、PET-CTにおいて再発・転移を示唆する異常集積なし、
 2016年2月、ケトン食介入2年後、糖質制限30g、PET-CTにおいて左廃部リンパ集積やや増強傾向
 2016年4月、ケトン食介入2年2か月後、糖質制限30g、エルロチニブ処方
 2016年6月、ケトン食介入2年4か月後、糖質制限30g、エルロチニブ処方
 2016年8月、ケトン食介入2年4か月後、糖質制限30g、エルロチニブ処方。

 (症例5)
 症例 46歳 男性、 診断名 非小細胞肺癌(腺癌、stage IV)
 (治療経過)
 2010年6月、右上肺野の腫瘤影を指摘、肺癌(腺癌、右S1原発、T1bNOMO、stage Ib)との診断、同年8月17日上葉切除、(ND2a、T3NOM1a、Stage IV(肺尖部に肺内転移、胸膜播種)
 2010年9月、CBDCA+PACを3コース施行、CEAは3.0まで低下し、一旦終了
 2011年7月、胸部CTにて数ミリの肺内転移が多発していることを確認
 2011年9月、PEM単剤2コース施行
 2012年5月、ゲフィチニブ(イレッサ)開始
 2012年9月、はすみワクチン併用
 2013年8月、CEA 150となりPET・CT施行被包化胸水が認められる、肋骨左頸部リンパ節転移
 2013年10月、ゲフィチニブ、はすみワクチン終了
 2013年10月から2014年2月、CBDCA 500mg+PAC 300mg+Bev1000mgを5コース施行、
 2014年3月14日から同年4月26日、右上位椎体と肋骨の関節周囲の軟部組織に対し、放射線照射を開始、計60Gyにて終了
 2014年7月、ケトン食療法を予定していたが、胃腸の調子が悪く、嘔吐などもあり、介入一旦中止
 2014年12月7日、永眠される。

 (結果)
 2013年1月より開始し、2015年3月までに5例のインフォームドコンセントを取得した。男性2名、女性3名、平均年齢58.4土10.1歳、身長161.4±9.7cm、体重55.1±10.4kg、BMI20.9±1.5の全例肺腺癌stage lV、4例で化学療法、2例で放射線療法の施行歴があった。1例が同意撤回、1例は胃部不快感によりケトン食は導入せず、3例に導入した。食事指導に加えてMCTオイル、ケトンフォーミュラを使用することにより、血中ケトン体は、1か月でアセト酢酸986.6±453.3μmol/L、βH酪酸2298土1270.4μmol/Lまで上昇し、想定された低血糖、嘔気、倦怠感などは認めず、3か月での全身状態スケール11.7±9.6→61.1±9.6、GSRSスコア1.64±0.42→l.24±0.15と改善傾向を示した。3か月でのPET-CTでは、1例で一部縮小、2例では変化を認めなかった(図12)。1例は3か月評価後、頭部の転移を認め、ケトン食を離脱したが、γナイフで腫瘍の消失、エルロチニプ投与で原発巣の縮小を認め、手術にてCRとなった。1例は、エルロチニプ継続、1例は複数の化学療法を併用し、優先日当時3例とも生存しており、出願日の時点でも2例生存している。しかしながら本発明の食事療法を受けなかった症例2人は残念ながら生存できなかった。

 なお、その他の血中指標(グルコース、インスリン、1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)、HbA1C、総コレステロール(T-cho)、トリグリセリド(TG)、左下らからHDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)HDL-C、尿酸(UA)、C反応性タンパク質(CRP)については、ケトン食を施行中に特段問題となる異常はなく推移した(図7~10)。

 平成28年9月1日現在、寛解(CR)を示した2名は現在も存命しており、同意取得から1282日(症例1)、925日(症例4)生存している(表6)。PDの1名は、死亡したが、同意取得から979日の延命を認めた。国立がん研究センター東病院において化学療法を受けたstage IV非小細胞肺がん患者の生存曲線2002~2006年(569人)の3年生存率は11%である(http://www.ncc.go.jp/jp/about/disclosere/result_e.html#05)ことからも、本実施例における結果は、ケトン食により非小細胞肺がん患者の生命予後を大幅に改善されると結論付けることができる。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008

 症例1について、本発明の治療前後のPET-CT写真を図12に示す。放射線科の読影によれば、治療前は、左肺S6中枢側に、約3cm大の、辺縁不整な腫瘤を認めたが、治療後は左肺S6中枢側の既知の腫瘤は僅かに縮小と思われ、FDG集積(SUVmax:前回2.4→今回2.8)で、活動性は持続していると判断される。また、左胸水貯留と、左胸膜、葉間胸膜に広範にFDG集積の増強しており、葉間胸膜に接して認める小結節は前回より僅かに拡大し、FDG集積を伴っていると観察される。

 (考察)
 以上実施例2の結果から、本発明の食事療法を受けた症例3人とも寛解または顕著な治癒を見せた一方で、本発明の食事療法を受けなかった症例2人は残念ながら生存できなかった。したがって、本発明の食事療法は同様のコントロールに比較して顕著にがんに対する効果があることが分かり、QOLも顕著に改善したことが分かる。既存の癌治療は、外科的切除、化学療法、放射線治療であり、肺癌や膵癌などは化学療法による治療効果は十分とはいえない状況である。これらの進行癌に対して、ケトン食が、生命予後を改善する可能性が示されたことから、癌患者における有効な食事療法の開発が可能と考えられる。

 (カプランマイヤー法による評価)
 次に、本実施例の5症例についてカプランマイヤー法により生存率の評価を行った。肺がん患者5症例のうち、ケトン食事療法を行わない2例と行った3例について、生存曲線(3年)をプロットし、解析法としてlog-rank testを使用した。この曲線は、ケトン食による生存率の改善効果を、治療後の生存期間の延びで確認するものである。グラフの下には、0日目(コホートに入った時点、200日、400日、600日、800日、1000日、1200日目における、ケトン食のあるなしでの死亡する可能性のある生存被験者数を記載している。統計学的有意かどうかを検定したところ、p<0.05(0.038)で有意に生存期間が延長していることが判明した。この結果から、ケトン食投与群では生命予後の改善が見られたといえ(図11)、本発明の食事療法に有意な効果があることが判明した。

 (実施例3)
 本実施例では、非小細胞性肺悪性腫瘍患者の末梢血単核球由来のRNAを用いて、DNAマイクロアレイ解析を行った。

 (方法)
 実施例2においてケトン食を導入した3例(CR2例、PD1例)の末梢血単核球からRNAを抽出し、ケトン食治療前、ケトン食治療1年後のtotal RNAを解析した。RNA抽出は、QIAGEN RNeasyミニキットを使用して行った。Agilent Expression Array(SurePrint G3 Human Gene Expression 8x60K v3)を用いて遺伝子発現解析を行い、アレイデータを正規化後、変動遺伝子の抽出を行った。

 (シグナル値の算出およびスケーリング)
 比較するチップ間のシグナル値の平均値が同じ値になるように、スケーリングを以下の手順に従って行った。
1)コントロール遺伝子群の除去:「ControlType]で「0」を選択
2)gProceedSignalの上位、下位それぞれ2%、計4%を除いたプローブのトリムシグナル平均値を計算
3)scaling factorの計算
scaling factor=target signal定数(2500)÷それぞれのアレイのトリムシグナル平均値
4)scaling factorを個々のプローブシグナル値に掛けてシグナル値を計算(gScale Signal)

 (フィルタリング)
 Feature Extraction由来の表7に示すフラグの判定に基づいて、信頼性の低いデータの除去を行った。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009

 (パターン解析)
 上記フィルタリングで得られた有効プローブに対してSET Aの平均シグナル値を算出した後、SET毎に下記条件:
発現比=log2(比較群/対照群)
で対照と比較した発現比の算出をした。得られた発現比を用いていずれかのSETで発現比±2倍以上かつ発現差(シグナル値の変動幅)100以上を示すプローブ群を抽出した。

 抽出されたプローブに対して、ケトン食治療前と比較した治療後の挙動パターン毎に分類するため、以下に示す閾値を適用しUp/Down/No changeを以下のように定義した。
・2倍以上(Log2Ratioの場合:1)以上:Up
・1/2倍以下(Log2Ratioの場合:-1)以下:Down
・それ以外:No change

 ケトン食治療が著効を示した2例(CR2例)をset A、ケトン食の効果は見られたが寛解にまで至らなかった1例(PD1例)をset Bとし、定義に従い比較検体を以下のグループに分類した。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010

 

 (結果)
 シグナル値の算出およびスケーリングをおこなった後に、フィルタリングにより32447遺伝子を除外し、28454遺伝子を抽出した。Ratio>=±2かつDifferential>=100を示すプローブ群1115を抽出し、27339遺伝子を除外した。変動が2倍以上をUp、1/2倍以下をDown、それ以外をNo changeとして、CRを示した2症例をSet A、PDを示した症例をSet Bとし、それぞれの反応パターンを組み合わせて、8グループに分類した。KEGG pathway頻度解析にて、Group1(Set A Up/Set B Up)HIV-I infection p=0369, telomerase reverse transcriptase, Group 4(Set A No change/Set B Up)Non-small cell lung cancer p=0.0121, PI3-kinase, Group 7 (Set A Down/ Set B no change)NF-kappa B signaling pathway, p<0.0001, TNF-α、IL-1β、IL-8, Group 8(Set A Down/Set B Down)Nitrogen metabolism, p=0.0049, carbonic anhydrase Iなどの遺伝子群が検出された。特にSet Aでは有意に減少したが、Set Bでは変化しなかったGroup7では、NFκBシグナル伝達経路に関与する炎症性マーカーが分類された。

 (考察)
 Group4では、CRの症例では変化なかったが、PDの症例では、糖質を極端に減らしても、インスリンシグナルに関係するPI3キナーゼが機能していることが示された。これは、癌の増殖に、インスリンに依存しないインスリンシグナルの活性化が関与していることを示唆している。重要なことに、Group7からわかるように、肺癌患者において、ケトン食治療に著効を示した患者群においては、炎症関連遺伝子が改善し、PD症例では、炎症関連遺伝子の改善がみられなかったことから、ケトン食治療では抗炎症効果を示すことにより、病態が改善し、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆された。この結果は、実施例1において、ケトンフォーミュラを与えたマウスにおいて炎症性サイトカインが抑制されたことと一貫している。

 (実施例4:他の症例での検証:再発乳がんでの例)
 別のがん患者でも奏功するかを検証した。

 本実施例では、再発乳がん患者に3カ月間、本発明の糖質制限高脂肪食を実施した。プロトコルは実施例2に準じた。

 本実施例は3カ月のみの実施であるが、それでもなお、治療期間初期から本発明の糖質制限高脂肪食の実施により腫瘍マーカーの顕著な減少が見られた。以下に症例および結果を表に示す。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011

 

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012

 

 得られた結果は以下のとおりである。図7~10と同様のデータである。3つの腫瘍マーカーに関するデータも含めている。表中Wは週間、Mは月間を示す。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013

 表11のCEA,CA15-3およびNCC-ST-439は腫瘍マーカーである。驚くべきことに、本発明の食事療法により、初期(導入期)の治療を施すだけで、顕著に腫瘍マーカーの減少がみられ、所見でも顕著にがんが快方に向かっていることが観察された。腫瘍マーカーからの判断ではあるが、6回目の再発患者において5回目まででこれほどの効果がなかったことを考慮すると、本発明の食事療法は他の抗がん治療に拘わらず奏功することを示唆し、実施例2との結果も合わせて考慮すると、食事療法を単独で導入することでも奏功することを示唆する。また、導入期の予後を見るとすでに改善傾向があることから、導入期の処置(食事療法)のみでも奏功することを示唆する。なお、本症例においても、血中グルコース、インスリン、1,5-AG、HbA1c、T-cho、TG、HDL-c、LDL-c、UA、CRPで特段問題となることはなかった。

 (実施例5:他の症例での検証)
 本実施例では、実施例2および4以外のがん患者(症例8、症例11および症例12)に、実施例2と同様の糖質制限高脂肪食を実施した。評価項目も実施例2と同様に記録して評価した。表12に、各症例の情報を示す。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014

 症例7および10は、ケトン食導入に至らなかった例であり、予後は不良であった。症例9も同様にケトン食導入に至らなかった例であり、IC取得から130日で死亡した。

 以下に各症例について詳述する。
 (症例8)
 症例 65歳 女性
 診断名 子宮体癌(stage IIIa)
 (治療経過)
 2014年7月:子宮全摘+両側付属器摘除+骨盤リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清+ダグラス窩腹膜剥離 術施行、
術後は化学療法(TAC療法)4コースを施行
T=ドセタキセル(タキソテール)
A=ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン)
C=シクロホスファミド
 2014年12月:化学療法6コース終了
 2015年3月:自家癌ワクチン 2週間に3回予定
 2015年3月から7月:レトロネクチン誘導Tリンパ球療法 2週に1回
 2015年9月:ケトン食導入開始

 (症例11)
 症例 56歳 女性
 診断名 卵巣癌(stage IIc)
 (治療経過)
 2003年10月:卵巣癌(stage IIc)と診断
 2003年11月:単純子宮全摘術+両側附属器切除術+骨盤内リンパ節切除、傍大動脈リンパ節+汎大網切除術+虫垂切除術を施行
 2011年11月:卵巣癌再発
 2011年12月:腹式腫瘍摘出術+低位前方切除術+小腸部分切除術
 2011年1月から8月:TC療法6コース施行
 2015年9月:卵巣癌再再発と診断される
 2015年10月:TC療法開始
 2015年11月:ケトン食導入開始
 2016年4月:腫瘍切除術+低位前方切除術+DJカテーテル留置、癌が完全切除される、現在もケトン食は継続中

 (症例12)
 症例 50歳 女性
 診断名 腹膜癌(stage IIIa)
 (治療経過)
 2011年1月:腹膜癌(stage IIIa)と診断、同年2月から8月まで、TC6コースを施行
 2012年7月:肝S7に肝転移、TC6コースを施行
 2014年8月:肝転移、多発リンパ節再発、Doxil+CBCDA 7コースを施行
 2015年7月:再再発
 2015年11月:ケトン食導入開始

 (結果)
 表13に症例8の血中ケトン体、糖代謝、脂質、QOL、消化器症状、および腫瘍マーカーに関するデータを示している。図13は、ケトン食導入前と導入後の症例8のCTの画像を示している。表14に症例11の血中ケトン体、糖代謝、脂質、QOL、GSRSおよび腫瘍マーカーに関するデータを示している。図14~16は、ケトン食導入前と導入後の症例11のPET-CTの画像を示している。表15に症例12の血中ケトン体、糖代謝、脂質、QOL、GSRS、および腫瘍マーカーに関するデータを示している。図17~19は、ケトン食導入前と導入後の症例12のPET-CTの画像を示している。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015

 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017

 

 疾患背景は、肺癌2例、子宮体癌再発1例、膀胱癌再発1例、卵巣癌再発2回目1例、腹膜癌再発4回目1例であった。肺癌2例は、1例が嘔気、1例が治療途中に腺癌より小細胞癌に形質変化し中止。膀胱癌1例は、その他の癌治療に伴う有害事象により中止。中止した膀胱癌の症例では、その後すぐに被験者が亡くなられた。中止した肺癌2例も予後が極めて不良である。これらの非処置群は比較例として評価可能である。実施例として評価可能な症例は3例であった。血中ケトン体は、1か月でアセト酢酸およびβH酪酸において上昇傾向を示し、低血糖、嘔気、倦怠感などは認めず、3か月でのGSRSスコアは改善傾向を示した。全身状態スケールはやや悪化を示した。3か月でのPET-CTでは、子宮体癌症例でSD(=stable disease)、卵巣癌、腹膜癌症例はPR(=partial response)であった。子宮体癌1例は、導入時、腹水貯留が強かったが、ケトンフォーミュラ中心に栄養補給を行ったところ、ケトン食導入前は急激に悪化していたにもかかわらず1か月後CA125 6815→4486U/mlにまで改善し、腹水の緊満の改善や胸水の減少も認められ(図13)、外出が可能になるなどQOLも改善したが、化学療法の再開は拒否され、導入後4ヶ月で永眠されたが、医学的にはこの子宮体癌の例は著効を本発明を実施しない場合に比べて著効を示したと評価できる。2016年7月現在、その他の2例は生存し、卵巣癌症例は根治術が行われ、現在は寛解している。3例のうち卵巣癌および腹膜癌の2例は、ケトン食導入によりPRを示した。したがって、肺癌および乳癌以外の癌患者においてもケトン食治療は安全に施行され、延命効果を示す可能性も示唆される。ケトン食の導入に至らなかった症例(肺癌2例および膀胱癌再発1例)では、ケトン食導入症例で観察された改善は認められなかった。

 症例8において、ケトン食導入前には腹水の緊満や背側に胸水が認められたが、ケトン食導入後には腹水の緊満が改善され、胸水は減少していた(図13)。症例11は、放射線科の読影によれば、ケトン食導入前のPET時に見られた骨盤左側の腫瘤は特に嚢胞部分が縮小し、FDG集積も軽減した(SUVMaxケトン食導入前15.7→ケトン食導入後10.2)と判断される。S状結腸術後部頭側の腫瘤も縮小傾向でFDG集積も軽減傾向であった(SUVMax14.9→11.4)。また、転移や再発を示唆する様な異常集積も認められなかった。このように、症例11では改善傾向がPET観察から示された(図14~16)。症例12においては、放射線科の読影によれば、右胸膜への集積が低下(SUVMax7.9→4.1)し、右葉間胸膜の結節影も縮小したと判断される。ケトン食導入後の胸膜播種の活動性が低下していることが疑われた。さらに、ケトン食導入前と比べてケトン食導入後に胸水が消失していたことが認められた(図18および図19)。

 表16に、ケトン食導入によりCRおよびPRを示した2例の血中ケトン体、QOLおよび腫瘍マーカーの評価指標の結果を示す。示される通り、ケトン体の数値は顕著に上昇しており、腫瘍マーカーは、顕著に改善されているか、またはその上昇を抑制していることが理解される。

Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018

 

 (実施例6)
 以下の患者でもケトン食導入を行い、好成績を上げつつある。
 症例13:直腸癌、多発肝転移 女性 29歳 生存日数199日
 症例14:膀胱癌術後再発 男性 71歳 生存日数80日
 症例15:左口唇腺様嚢胞癌、骨転移 男性 46歳 生存日数71日
 (生存日数は、IC取得から2016/09/01現在の生存日数)

 以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は2015年9月4日に日本国に出願した特願2015-175198に対して優先権を主張するものであり、その内容はその全体が本明細書において参考として援用される。

 本発明は癌治療に関する分野および食事療法の産業に有用性を提供する。

Claims (10)

  1. 高脂肪食を含む、がんを処置するための組成物またはその組合せ。
  2. 前記高脂肪食は、脂肪を、実質体重50kgを基準とした場合に1日あたり約120g以上、または1日の総エネルギーの約70%以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の組成物またはその組合せ。
  3. 前記高脂肪食は糖質制限されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物またはその組合せ。
  4. 前記高脂肪食は、炭水化物を1日30g以下に制限することを特徴とする、請求項3に記載の組成物またはその組合せ。
  5. 前記高脂肪食は、一日摂取カロリーを20kcal/kg体重以上とすることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物またはその組合せ。
  6. 約60%(w/w)以上、または総エネルギーの約75%以上の脂肪を含む、がんを処置するための組成物。
  7. 約0%(w/w)~約15%(w/w)の炭水化物を含む、請求項6に記載の組成物。
  8. 約5%(w/w)~約40%(w/w)、または総エネルギーの2%~25%のタンパク質を含む、請求項6または7に記載の組成物。
  9. 前記脂肪のうち約30%(w/w)以上がMCTオイルである、請求項6~8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記炭水化物が乳糖を含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の組成物。
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