WO2013099976A1 - 車両用シート - Google Patents

Abstract

　表皮端末に設けられた掛け止め部を、シートフレームに取り付けたワイヤに引っ掛けることにより表皮材を取り付ける構造において、ワイヤに掛け止め部が引っ掛けられている状態を良好に維持する。　クッション材５を被覆するトリムカバー７と、トリムカバー７を取り付けるための取り付けワイヤ３７を備えたシートバックフレーム１６と、を有する車両用シートにおいて、取り付けワイヤ３７は、トリムカバー７の一端側に設けられたトリムコード８ａが引っ掛けられる第１ワイヤ部３８と、トリムカバー８の他端側に設けられたトリムコード８ｂが引っ掛けられる第２ワイヤ部３９と、シートの幅方向において第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９とを連結する連結ワイヤ部４０と、を有する。

Description

車両用シート

　本発明は、車両用シートに係り、特に、クッション材を被覆する表皮材と、表皮材を取り付けるために形成された表皮材取り付け部を備えたフレームと、を有する車両用シートに関する。

　クッション材を表皮材で被覆して構成される車両用シートは、既に周知であり、かかる車両用シートの中には、シートのフレームに、表皮材を取り付けるために形成された表皮材取り付け部を備えているものが存在する（例えば、特許文献１参照）。特許文献１に開示されたシートでは、表皮材取り付け部としてのワイヤフレームがクッションフレームに備えられており、表皮材の端末に設けられた掛け止め部（トリムコード）がワイヤフレームに引っ掛けられることにより、表皮材がシートに取り付けられる。

特開２０００－１５７３７５号公報

　ところで、特許文献１に記載のシートのように、表皮材取り付け部としてワイヤを用いる構成では、ワイヤに掛け止め部が引っ掛けられている状態を安定させることができないと、表皮材の取り付け状態が悪化し、車両用シートの外観が著しく損なわれてしまう虞がある。

　そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トリムコード等のように表皮材端末に設けられた掛け止め部を、シートフレームに取り付けたワイヤに引っ掛けることにより表皮材を取り付ける構造において、上記のワイヤに掛け止め部が引っ掛けられている状態を良好に維持することが可能な車両用シートを提供することにある。

　前記課題は、本発明の車両用シートによれば、クッション材を被覆する表皮材と、該表皮材を取り付けるために形成された表皮材取り付け部を備えたフレームと、を有する車両用シートであって、前記表皮材取り付け部は、前記表皮材を取り付ける際に、前記表皮材に設けられた掛け止め部が引っ掛けられる第１ワイヤ部と、前記車両用シートの幅方向において前記第１ワイヤ部から離れた位置にあり、前記表皮材を取り付ける際に、前記表皮部材に設けられた他の掛け止め部が引っ掛けられる第２ワイヤ部と、前記幅方向において前記第１ワイヤ部と前記第２ワイヤ部とを連結する連結ワイヤ部と、を有することにより解決される。

　上記の車両用シートであれば、連結ワイヤ部によって連結されることにより第１ワイヤ部及び第２ワイヤ部の各々の剛性が向上する。これにより、各ワイヤ部に掛け止め部が引っ掛けられても変形し難く、掛け止め部が引っ掛けられた状態を良好に維持することが可能である。

　また、上記の車両用シートにおいて、前記連結ワイヤ部は、前記第１ワイヤ部のうち、前記掛け止め部が引っ掛けられる第１引っ掛け部分以外の部分と、前記第２ワイヤ部のうち、前記他の掛け止め部が引っ掛けられる第２引っ掛け部分以外の部分とを連結することとしてもよい。
　以上の構成の車両用シートであれば、掛け止め部をワイヤ部に引っ掛ける際に、連結ワイヤ部との干渉を抑えることが可能となるので、作業性が向上する。

　また、上記の車両用シートにおいて、前記フレームは、前記幅方向において互いに離れた状態で配置された一組の側部フレームを備え、前記第１ワイヤ部は、前記一組の側部フレームのうち、一方の側部フレームに溶接され、前記第２ワイヤ部は、前記一組の側部フレームのうち、他方の側部フレームに溶接され、前記連結ワイヤ部は、前記第１ワイヤ部のうち、前記一方の側部フレームに溶接された第１溶接部分と、前記第２ワイヤ部のうち、前記他方の側部フレームに溶接された第２溶接部分とを連結することとしてもよい。
　以上の構成の車両用シートであれば、側部フレームにおいてワイヤ部が溶接された箇所周りの剛性が向上し、側部フレームに対して各ワイヤ部を良好に支持させることが可能になる。

　また、上記の車両用シートにおいて、前記第１溶接部分は、前記幅方向において、前記一方の側部フレームのうち、前記他方の側部フレームと対向している領域に位置し、前記第２溶接部分は、前記幅方向において、前記他方の側部フレームのうち、前記一方の側部フレームと対向している領域に位置していることとしてもよい。
　以上の構成の車両用シートであれば、各溶接部分が側部フレームの内側に位置するようになるので、各溶接部分が側部フレームの外側に位置する場合と比較して、溶接部分間の距離が短くなり、連結ワイヤ部の長さをより短くすることが可能である。すなわち、上記の構成により表皮取り付け部をコンパクトにすることが可能になる。

　また、上記の車両用シートにおいて、前記車両用シートが車体本体に取り付けられた状態において、前記第１ワイヤ部のうち、前記掛け止め部が引っ掛けられる第１引っ掛け部分、及び、前記第２ワイヤ部のうち、前記他の掛け止め部が引っ掛けられる第２引っ掛け部分は、前記連結ワイヤ部よりも下側に位置していることとしてもよい。
　以上の構成の車両用シートであれば、各ワイヤ部の引っ掛け部分にアクセスし易くなる結果、当該引っ掛け部分に掛け止め部を引っ掛ける作業（すなわち、表皮材を取り付ける作業）がより容易になる。

　本発明によれば、連結ワイヤ部によって連結されることにより第１ワイヤ部及び第２ワイヤ部の各々の剛性が向上する。これにより、各ワイヤ部に掛け止め部が引っ掛けられても変形し難く、掛け止め部が引っ掛けられた状態を良好に維持することが可能である。
　本発明によれば、掛け止め部をワイヤ部に引っ掛ける際に、連結ワイヤ部との干渉を抑えることが可能となるので、作業性が向上する。
　本発明によれば、側部フレームにおいてワイヤ部が溶接された箇所周りの剛性が向上し、側部フレームに対して各ワイヤ部を良好に支持させることが可能になる。
　本発明によれば、各溶接部分が側部フレームの内側に位置するようになるので、各溶接部分が側部フレームの外側に位置する場合と比較して、溶接部分間の距離が短くなり、連結ワイヤ部の長さをより短くすることができるため、表皮取り付け部をコンパクトにすることが可能になる。
　本発明によれば、各ワイヤ部の引っ掛け部分にアクセスし易くなる結果、当該引っ掛け部分に掛け止め部を引っ掛ける作業（すなわち、表皮材を取り付ける作業）がより容易になる。

本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。 本実施形態に係る車両用シートの内部構造を示す図である。 本実施形態に係るフレームを上方から見たときの図である。 本実施形態に係るフレームの正面図である。 図３中の範囲Ｘの拡大図である。 本実施形態に係る第１ワイヤ部、第２ワイヤ部及び連結ワイヤ部を示す図である。 本実施形態に係る表皮材が取り付けられている状態を示す模式図である。

　以下、本発明の一実施形態（以下、本実施形態）について、図１乃至７を参照しながら説明する。
　図１は、本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。図２は、本実施形態に係る車両用シートの内部構造を示す図である。図３は、本実施形態に係るフレームを上方から見たときの図である。図４は、本実施形態に係るフレームの正面図である。図５は、図３中の範囲Ｘの拡大図である。図６は、本実施形態に係る第１ワイヤ部、第２ワイヤ部及び連結ワイヤ部を示す図であり、本実施形態に係るフレームを下方から見たときの図である。図７は、本実施形態に係る表皮材が取り付けられている状態を示す模式図である。

　以下の説明において、車両（車両用シート）の前後方向とは、車両が通常走行している際の走行方向と一致する方向のことである。また、車両（車両用シート）の幅方向とは、車両（車両用シート）を正面から見た際の左右方向のことである。また、以下の説明において、上下方向とは、車両が平坦面上に位置している際の上下方向のことである。

　＜＜本実施形態に係る車両用シートの全体構成＞＞
　先ず、本実施形態に係る車両用シート（以下、本シート１）の全体構成について説明する。
　本シート１は、折り畳み可能なシートであり、使用時には乗員が着座可能な姿勢となり、不使用時には折り畳まれた姿勢となる。

　具体的に説明すると、本シート１は、図１に示すように、シートクッション４と、シートバック６とを備えており、シートバック６を起立させた状態から前方に倒伏させると、これに連動して、シートクッション４が後方かつ下方に揺動する。そして、シートクッション４がその揺動範囲の下端且つ後端に至ると、シートバック６がシートクッション４上に折り重なった状態となる。かかる状態は、本シート１の収納状態（不使用時状態）である。

　一方、シートバック６を倒伏した状態から起立状態に復帰させると、これに連動して、シートクッション４が前方且つ上方に揺動する。そして、シートクッション４がその揺動範囲の上端且つ前端に至ると、シートクッション４が車体フロアから幾分上方に位置し、シートバック６がシートクッション４に対して略垂直に起立した状態となる。かかる状態は、本シート１が乗員を着座させることが可能な状態（使用時状態）である。

　また、本シート１は、左右一対の支持ブラケット２，２を備えており、当該支持ブラケット２，２を介して車体に固定されている。つまり、左右一対の支持ブラケット２，２は、本シート１を車体に固定するために形成された部分であり、本実施形態では、板金に対してプレス加工を施すことにより形成されている。なお、本実施形態において、支持ブラケット２，２は、シートクッション４の両脇に位置した状態で車体に固定されている。

　ここで、各支持ブラケット２，２の構造について図２乃至４を参照しながら説明すると、各支持ブラケット２，２は、複数の断片を繋ぎ合わせることにより構成され、本実施形態では、前端部１１と、後端部１２と、前端部１１と後端部１２との間を連結する中間部１３とによって構成される。換言すると、各支持ブラケット２，２は、前端部１１、後端部１２及び中間部１３の３つの断片に分割することが可能である。
　支持ブラケット２，２各部（すなわち、前端部１１、後端部１２、中間部１３）は、車体フロアに対して略垂直に起立している。なお、本実施形態では、支持ブラケット２，２の外縁の略全周に亘って、外側に張り出した張出部２ａが形成されており、かかる張出部２ａの形成により支持ブラケット２，２の剛性が確保されている。

　各支持ブラケット２，２の後端部１２は、シートバック６（厳密には、シートバック６のフレーム（シートバックフレーム）１６）の下端に取り付けられている。より具体的に説明すると、シートバック６は、前述したように、起立した位置（本シート１が着座可能状態にある際の位置）と、倒伏した位置（本シート１が収納状態にある際の位置）との間を往復するように回動可能な状態で、支持ブラケット２，２に支持されている。

　各支持ブラケット２，２の前端部１１は、図３に示すように、回動アーム２１，２１を介してシートクッション４を支持する部分である。また、前端部１１の下端には、略水平なベース壁２ｂが隣接しており、かかるベース壁２ｂが車体フロアにボルト結合されることにより、支持ブラケット２，２が車体に固定されるようになる。この結果、本シート１が車体フロアに固定されるようになる。

　また、本実施形態では、支持ブラケット２，２が内側（すなわち、対をなした支持ブラケット２，２側）に倒れるのを抑制するために、支持ブラケット２，２の前端部１１同士を連結している連結パイプ３が設けられている。

　次に、シートクッション４及び周辺部品について図２乃至５を参照しながら説明する。
　シートクッション４は、車両の幅方向において支持ブラケット２，２の間に挟まれた位置に配置され、フレームとしてのシートクッションフレーム１４を備えている。このシートクッションフレーム１４は、シートクッションフレーム基部３１と、前方ブラケット３２，３２と、後方ブラケット３３とを有している。シートクッションフレーム基部３１は、略Ｕ字状に折り曲げられたパイプからなり、左端部に左端フレーム３４を有し、右端部に右端フレーム３５を有している。ここで、左端フレーム３４及び右端フレーム３５は、本シート１の幅方向において互いに離れた状態で配置された一組の側部フレームに相当する。つまり、左端フレーム３４は、上記一組の側部フレームのうち、一方の側部フレームに相当し、右端フレーム３５は、上記一組の側部フレームのうち、他方の側部フレームに相当する。

　前方ブラケット３２，３２は、左端フレーム３４及び右端フレーム３５の各々の外表面前方部に溶接されている。この前方ブラケット３２，３２の各々は、上方に膨出した膨出部３２ａを有しており、この膨出部３２ａに、後述する回動アーム２１，２１の長手方向一端が固定されている。
　後方ブラケット３３は、本シート１の幅方向において左端フレーム３４の後端と右端フレーム３５の後端との間に配置されている。

　さらに、シートクッションフレーム１４の前端部には、左側の前方ブラケット３２から右側の前方ブラケット３２に亘ってシートクッションパン３６が設けられており、シートクッションパン３６の後端と後方ブラケット３３との間にＳバネ９が架設され、当該Ｓバネ９上には、シートクッション４のクッション材５が載置される（図７参照）。
　なお、シートクッションパン３６の前端は、シートクッションフレーム基部３１の前端に掛かっており、具体的に説明すると、弧状に湾曲することによりシートクッションフレーム基部３１の前端に掛合している。一方、シートクッションフレーム基部３１を構成するパイプの折り曲げ箇所、すなわち、シートクッション４の前方角部に相当する箇所には、シートクッションパン３６の前端が掛かっていない。これは、シートクッション４の前方角部に相当する箇所にまでシートクッションパン３６が掛かっていた場合、乗員が本シート１に着座した際に不快感が生じる虞があるためであり、上記の構成により、当該不快感の発生を抑制することが可能となる。

　また、シートクッションフレーム基部３１の内側（具体的には、シートクッションフレーム基部３１の左端フレーム３４と右端フレーム３５との間の位置）には、上記のクッション材５を被覆するトリムカバー７の端末に取り付けられたトリムコード８ａ，８ｂを引っ掛けるための取り付けワイヤ３７が設けられている（例えば、図７参照）。

　一方、シートクッションフレーム１４の周囲には、車両の幅方向に沿った回動軸を中心にして回動可能な回動アーム２１，２１が左右一対設けられている。各回動アーム２１，２１の長手方向一端部には、前述したように、シートクッションフレーム１４（具体的には、前方ブラケット３２，３２の膨出部３２ａ）が固定されている。この結果、回動アーム２１，２１の回動に連動してシートクッションフレーム１４が揺動することになる。つまり、回動アーム２１，２１が回動すると、これに伴ってシートクッション４が揺動することになる。

　回動アーム２１，２１の構成について図４を参照しながら説明すると、回動アーム２１，２１の長手方向一端部は、前述したように、前方ブラケット３２，３２の膨出部３２ａにボルトにて固定されている。回動アーム２１，２１の長手方向他端部は、回動軸となる固定ピボット２０，２０を介して、支持ブラケット２，２の前端部１１に回動自在に支持されている。したがって、各回動アーム２１，２１は、前後且つ上下方向に回動することとなり、これに伴って、シートクッション４が同方向に揺動することとなる。

　シートクッション４は、その揺動範囲の前端且つ上端に至ると、車体フロアから幾分上方に位置し、かかる位置にて乗員を着座させることが可能である。すなわち、シートクッション４の揺動範囲における前端且つ上端の位置は、シートクッション４の着座位置に相当する。なお、シートクッション４が着座位置に位置する状態では、回動アーム２１，２１が鉛直方向に対して若干後傾した姿勢となっており、シートクッション４は、その前端が後端よりも持ち上がった姿勢となっている。

　他方、シートクッション４は、揺動範囲の後端且つ下端に至ると、車体フロアに接近して収納された状態となる。すなわち、シートクッション４の揺動範囲における後端且つ下端の位置は、シートクッション４の収納位置に相当する。なお、収納位置は、上記の着座位置よりも下側に位置し、シートクッション４が収納位置に位置する状態では、回動アーム２１，２１及びシートクッションフレーム１４が略水平姿勢となっている。

　次に、シートバック６について図２を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、シートバック６の上下方向とは、シートバック６が起立姿勢にある時（すなわち、本シート１が使用時状態にある時）の上下方向を意味し、同様に、シートバック６の前後方向とは、シートバック６が起立姿勢にある時の前後方向を意味する。

　シートバック６は、シートクッション４の後端部に接続され、枠体としてのシートバックフレーム１６を備えている。このシートバックフレーム１６は、シートバックフレーム基部１７と、左右一対のサイドフレーム１８，１８と、バックパンフレーム１９とを有している。シートバックフレーム基部１７は、略下向きＵ字状に折り曲げられたパイプからなる。サイドフレーム１８，１８は、シートバックフレーム基部１７の左端部及び右端部に各々に溶接されている。

　また、サイドフレーム１８，１８の各々は、その前端部及び後端部が折り曲げ加工されることにより、内側（対をなすサイドフレーム１８側）に向かって張り出すように形成された張出部１８ａを備えている。かかる張出部１８ａが形成されていることにより、サイドフレーム１８，１８の剛性が確保されている。また、サイドフレーム１８，１８の下端部には前方に膨出した膨出部１８ｂが形成されており、この膨出部１８ｂは、左端フレーム３４及び右端フレーム３５のうち、対応するフレームの外側面にボルト止めされている。
　なお、サイドフレーム１８，１８の間には、サイドフレーム１８，１８の下端部の後端（より具体的には、後端側の張出部１８ａ）同士を連結する連結ブラケット４１が設けられている。

　バックパンフレーム１９は、矩形状の金属パネルからなり、シートバックフレーム基部１７の後端及びサイドフレーム１８，１８の後端に溶接されている。このバックパンフレーム１９の幅（左右方向の長さ）は、シートクッションフレーム１４の幅よりも一回りほど大きくなっている。そして、本シート１が折り畳まれた状態では、シートクッション４全体がバックパンフレーム１９の下に潜り込むようになる。

　＜＜本実施形態に係る表皮材取り付け部の構成＞＞
　次に、本実施形態に係る表皮材取り付け構造の構成について図６及び７を参照しながら説明する。なお、以下では、表皮材の一例として、シートクッション４のクッション材５を被覆するトリムカバー７を具体例に挙げて、当該トリムカバー７を取り付けるために形成された表皮材取付け部について説明することとする。

　既に説明したように、シートクッションフレーム１４は、トリムカバー７を取り付けるために取り付けワイヤ３７を備えている。この取り付けワイヤ３７が、本発明の表皮材取り付け部に相当し、本実施形態では、前述したように、本シート１の幅方向において、シートクッションフレーム基部３１の左端フレーム３４と右端フレーム３５との間の位置に設けられている。
　以上のように、本シート１は、クッション材５を被覆する表皮材としてのトリムカバー７と、トリムカバー７を取り付けるために形成された取り付けワイヤ３７（表皮材取り付け部）を備えたフレームとしてのシートクッションフレーム１４を備えている。

　取り付けワイヤ３７について図６を参照しながらより詳しく説明すると、取り付けワイヤ３７は、本シート１の幅方向一端側（左側）に位置する第１ワイヤ部３８と、幅方向他端側（右側）に位置する第２ワイヤ部３９と、幅方向において第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９とを連結する連結ワイヤ部４０とを有する。第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９は、左右対称の形状及び配置になっており、本実施形態ではいずれも略横向きＵ字状の形状となっている。連結ワイヤ部４０は、第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９より前側に位置し、第１ワイヤ部３８及び第２ワイヤ部３９の各々の前端同士を連結している。

　第１ワイヤ部３８は、トリムカバー７のうち、シートクッションフレーム１４に取り付ける際に本シートの幅方向一端側に位置する端部（左端部）を係止しておくものである。この第１ワイヤ部３８には、掛け止め部としてトリムカバー７の左端部に設けられたトリムコード８ａが引っ掛けられる。具体的に説明すると、トリムカバー７の左端部には略J字状のトリムコード８ａが縫い付けられており、このトリムコード８ａが第１ワイヤ部３８に引っ掛かることにより、トリムカバー７の左端部がシートクッションフレーム１４に対して係止されるようになる。

　第１ワイヤ部３８の構造について説明すると、図６に示すように、前端及び後端に設けられたＬ字状部分３８ａと、前後方向中央部に位置する第１引っ掛け部分３８ｂとが備えられている。Ｌ字状部分３８ａは、第１ワイヤ部３８をシートクッションフレーム１４に固定するために形成された部分であり、本実施形態では、シートクッションフレーム１４の左端フレーム３４に溶接されている。

　具体的に説明すると、本シート１の前後方向において、前端側のＬ字状部分３８ａは、前方ブラケット３２，３２（厳密には、左側の前方ブラケット３２）と並ぶ位置に設けられ、後端側のＬ字状部分３８ａは、左端フレーム３４の後端部（より正確には、後方ブラケット３３と隣り合う部分）と並ぶ位置に設けられている。

　そして、前端及び後端の各々のＬ字状部分３８ａについては、互いに直交する２つの断片により構成され、図６に示すように、一方の断片は、シートクッションフレーム１４の左端フレーム３４の内表面に溶接されており、他方の断片は、内側（すなわち、右端フレーム３５側）に向かって延出している。ここで、左端フレーム３４の内表面とは、左端フレーム３４のうち、右端フレーム３５と対向している領域に相当する。

　第１引っ掛け部分３８ｂは、第１ワイヤ部３８のうち、トリムカバー７の左端部に縫い付けられたトリムコード８ａが引っ掛けられる部分であり、左端フレーム３４よりも内側に位置し、本シート１の前後方向に沿って延びている。
　また、本実施形態に係る第１引っ掛け部分３８ｂは、本シート１が正規の姿勢で車体本体に取り付けられた状態（特に、シートクッション４が収納位置にある状態）において、連結ワイヤ部４０よりも幾分下方側に位置しており、より詳しく説明すると、図４に示すように、左端フレーム３４よりも下側に位置して露出している。この結果、上下方向において第１引っ掛け部分３８ｂが連結ワイヤ部４０と同じ位置に設けられている場合に比して、第１引っ掛け部分３８ｂにトリムコード８ａを引っ掛ける際に第１引っ掛け部分３８ｂにアクセスし易くなり、トリムコード８ａを引っ掛けることがより容易となる。

　第２ワイヤ部３９は、本シート１の幅方向において第１ワイヤ部３８から離れた位置（より具体的には、第１ワイヤ部３８に対して間隔を空けて平行に並んだ位置）にあり、トリムカバー７のうち、シートクッションフレーム１４に取り付ける際に本シートの幅方向他端側に位置する端部（右端部）を係止しておくものである。この第２ワイヤ部３９には、他の掛け止め部としてトリムカバー７の右端部に設けられたトリムコード８ｂが引っ掛けられる。具体的に説明すると、トリムカバー７の右端部には略J字状のトリムコード８ｂが縫い付けられており、このトリムコード８ｂが第２ワイヤ部３９に引っ掛かることにより、トリムカバー７の右端部がシートクッションフレーム１４に対して係止されるようになる。

　第２ワイヤ部３９の構造について説明すると、図６に示すように、第１ワイヤ部３８と左右対称の構造となっている。すなわち、第１ワイヤ部３８と同様に、前端及び後端に設けられたＬ字状部分３９ａと、前後方向中央部に位置する第２引っ掛け部分３９ｂとが備えられている。また、Ｌ字状部分３９ａについても、図６に示すように、互いに直交する２つの断片により構成され、一方の断片は、シートクッション１４の右端フレーム３５の内表面に溶接されており、他方の断片は、内側（すなわち、左端フレーム３４側）に向かって延出している。ここで、右端フレーム３５の内表面とは、右端フレーム３５のうち、左端フレーム３４と対向している領域に相当する。

　第２ワイヤ部３９のうち、第２引っ掛け部分３９ｂは、トリムカバー７の右端部に縫い付けられたトリムコード８ｂが引っ掛けられる部分であり、右端フレーム３５よりも内側に位置し、本シート１の前後方向に沿って延びている。そして、第２引っ掛け部分３９ｂについても、第１引っ掛け部分３８ｂと同様、本シート１が正規の姿勢で車体本体に取り付けられた状態において、連結ワイヤ部４０よりも幾分下方側に位置している。つまり、本実施形態において、第２引っ掛け部分３９ｂは、右端フレーム３５よりも下側に位置して露出している。この結果、上下方向において第２引っ掛け部分３９ｂが連結ワイヤ部４０と同じ位置に設けられている場合に比して、第２引っ掛け部分３９ｂにトリムコード８ｂを引っ掛ける際に第２引っ掛け部分３９ｂにアクセスし易くなり、トリムコード８ｂを引っ掛けることがより容易となる。

　連結ワイヤ部４０は、第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９とを連結するために設けられ、本実施形態では、本シート１の幅方向において左端フレーム３４の内表面から右端フレーム３５の内表面に亘って設けられている。この連結ワイヤ部４０が設けられることにより、第１ワイヤ部３８及び第２ワイヤ部３９の双方について剛性が向上する。この結果、第１ワイヤ部３８及び第２ワイヤ部３９の各々は、トリムコード８ａ，８ｂが引っ掛けられても変形し難くなり、トリムコード８ａ，８ｂが引っ掛けられた状態を良好に維持することが可能である。つまり、本実施形態では、第１ワイヤ部３８と第２ワイヤ部３９とが連結ワイヤ部４０によって連結されることにより、トリムカバー７を適切に取り付けることが可能になり、以て、本シート１の品質（商品性）を向上させることが可能である。

　なお、本実施形態において、連結ワイヤ部４０は、第１ワイヤ部３８のうち、第１引っ掛け部分３８ｂ以外の部分と、第２ワイヤ部３９のうち、第２引っ掛け部分３９ｂ以外の部分とを連結している。この結果、第１ワイヤ部３８や第２ワイヤ部３９にトリムコード８ａ，８ｂを引っ掛ける際に、連結ワイヤ部４０に干渉する（手が当たる）ことが抑えられ、以て、作業性が向上することになる。

　より具体的に説明すると、連結ワイヤ部４０は、第１ワイヤ部３８のうち、前端側のＬ字状部分３８ａ（正確には、左端フレーム３４に溶接された方の断片の先端）と、第２ワイヤ部３９のうち、前端側のＬ字状部分３９ａ（正確には、右端フレーム３５に溶接された方の断片の先端）とを連結している。ここで、第１ワイヤ部３８のうち、前端側のＬ字状部分３８ａは、左端フレーム３４に溶接された第１溶接部分に相当し、第２ワイヤ部３９のうち、前端側のＬ字状部分３９ａは、右端フレーム３５に溶接された第２溶接部分に相当する。つまり、本実施形態において連結ワイヤ部４０は、第１ワイヤ部３８及び第２ワイヤ部３９の各々の、シートクッションフレーム１４に溶接した部位同士を連結している。これにより、各溶接部分周りの剛性が向上するので、第１ワイヤ部３８及び第２ワイヤ部３９の各々を、左端フレーム３４及び右端フレーム３５のうち、対応する側部フレームに良好に支持させることが可能になる。

　さらに、本実施形態では、前述したように、第１ワイヤ部３８の前端側のＬ字状部分３８ａが、左端フレーム３４の内表面に溶接され、第２ワイヤ部３９の前端側のＬ字状部分３９ａが、右端フレーム３５の内表面に溶接されている。つまり、本実施形態では、上述した第１溶接部分及び第２溶接部分が、左端フレーム３４及び右端フレーム３５のうち、対応する側部フレームの内側に位置するようになるので、当該側部フレームの外側に位置する場合と比較して、第１溶接部分と第２溶接部分との間の距離が短くなる。そして、当該距離が短くなった分、連結ワイヤ部４０の長さを短くすることが可能になるので、シートの小型化や低コスト化が実現される。

　＜＜その他の実施形態＞＞
　上記の実施形態では、本発明の車両用シートの具体例（すなわち、本シート１）について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した各部材の材質、配置位置、形状等については、本発明の効果を奏するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。

　上記の実施形態では、表皮材の一例として、シートクッション４のクッション材５を被覆するトリムカバー７を具体例に挙げて、当該トリムカバー７を取り付けるために形成された表皮材取付け部について説明した。ただし、本発明は、上記以外の表皮材を取り付ける場合にも適用可能であり、例えば、シートバック６のクッション材を被覆するトリムカバーを取り付ける場合にも適用可能である。

１　本シート
２　支持ブラケット
２ａ　張出部
２ｂ　ベース壁
３　連結パイプ
４　シートクッション
５　クッション材
６　シートバック
７　トリムカバー
８ａ，８ｂ　トリムコード
９　Ｓバネ
１１　前端部
１２　後端部
１３　中間部
１４　シートクッションフレーム
１６　シートバックフレーム
１７　シートバックフレーム基部
１８　サイドフレーム
１８ａ　張出部
１８ｂ　膨出部
１９　バックパンフレーム
２０　固定ピボット
２１　回動アーム
３１　シートクッションフレーム基部
３２　前方ブラケット
３２ａ　膨出部
３３　後方ブラケット
３４　左端フレーム
３５　右端フレーム
３６　シートクッションパン
３７　取り付けワイヤ
３８　第１ワイヤ部
３８ａ　Ｌ字状部分
３８ｂ　第１引っ掛け部分
３９　第２ワイヤ部
３９ａ　Ｌ字状部分
３９ｂ　第２引っ掛け部分
４０　連結ワイヤ部
４１　連結ブラケット

Claims (5)

1. 　クッション材を被覆する表皮材と、該表皮材を取り付けるために形成された表皮材取り付け部を備えたフレームと、を有する車両用シートであって、
   　前記表皮材取り付け部は、
   　前記表皮材を取り付ける際に、前記表皮材に設けられた掛け止め部が引っ掛けられる第１ワイヤ部と、
   　前記車両用シートの幅方向において前記第１ワイヤ部から離れた位置にあり、前記表皮材を取り付ける際に、前記表皮部材に設けられた他の掛け止め部が引っ掛けられる第２ワイヤ部と、
   　前記幅方向において前記第１ワイヤ部と前記第２ワイヤ部とを連結する連結ワイヤ部と、を有することを特徴とする車両用シート。
2. 　前記連結ワイヤ部は、前記第１ワイヤ部のうち、前記掛け止め部が引っ掛けられる第１引っ掛け部分以外の部分と、前記第２ワイヤ部のうち、前記他の掛け止め部が引っ掛けられる第２引っ掛け部分以外の部分とを連結することを特徴とする請求項１に記載の車両用シート。
3. 　前記フレームは、前記幅方向において互いに離れた状態で配置された一組の側部フレームを備え、
   　前記第１ワイヤ部は、前記一組の側部フレームのうち、一方の側部フレームに溶接され、
   　前記第２ワイヤ部は、前記一組の側部フレームのうち、他方の側部フレームに溶接され、
   　前記連結ワイヤ部は、前記第１ワイヤ部のうち、前記一方の側部フレームに溶接された第１溶接部分と、前記第２ワイヤ部のうち、前記他方の側部フレームに溶接された第２溶接部分とを連結することを特徴とする請求項１又は２に記載の車両用シート。
4. 　前記第１溶接部分は、前記幅方向において、前記一方の側部フレームのうち、前記他方の側部フレームと対向している領域に位置し、
   　前記第２溶接部分は、前記幅方向において、前記他方の側部フレームのうち、前記一方の側部フレームと対向している領域に位置していることを特徴とする請求項３に記載の車両用シート。
5. 　前記車両用シートが車体本体に取り付けられた状態において、前記第１ワイヤ部のうち、前記掛け止め部が引っ掛けられる第１引っ掛け部分、及び、前記第２ワイヤ部のうち、前記他の掛け止め部が引っ掛けられる第２引っ掛け部分は、前記連結ワイヤ部よりも下側に位置していることを特徴とする請求項１乃至４のいずれか１項に記載の車両用シート。

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