明 細 書
共振ァクチユエータ
技術分野
[0001] 本発明は共振ァクチユエータに関し、より詳しくは圧電セラミック材料を使用した共 振ァクチユエータに関する。
背景技術
[0002] 圧電ァクチユエータの変位量は、通常、圧電定数 dによって決定されることから、従 来より、大きな圧電定数を有する Pb (Zr, Ti) 0 (チタン酸ジルコン酸鉛;以下「PZT」
3
という。 )をベースとした圧電セラミック材料の研究'開発が盛んに行われている。
[0003] 例えば、非特許文献 1では、圧電ァクチユエータ等のパワーデバイスでは圧電セラ ミックの大振幅弾性振動を利用していることから、圧電セラミックの大振幅特性につい て記載されている。
[0004] この非特許文献 1には、振動速度(=振動振幅 X周波数)は、理論的には印加電 界 Εに比例して変化するが、 ΡΖΤ系圧電セラミックを共振周波数で駆動させた場合、 電界強度がある一定レベルを超えると振動速度が徐々に理論値を下回るようになり、 最終的に飽和すると報告されている。また、この非特許文献 1には、 ΡΖΤの振動速度 限界と駆動電界との関係も示されており、前記振動速度限界は材料糸且成によって変 化するものの、 ΡΖΤ系圧電セラミック材料では、振動速度は最大でも lmZsを超えな いことが報告されている。
[0005] また、非特許文献 2では、圧電ァクチユエータ等の分野では、高 、振動レベルのハ ィパワー材料が求められて ヽることから、圧電性の評価法や PZT系圧電セラミックの 組成と振動レベル特性等のハイパワー特性との関係が報告されている。
[0006] この非特許文献 2には、 PZT系圧電セラミックを共振周波数で駆動した場合、振動 レベルがある一定値を超えると共振周波数 frと機械的品質係数 Qmが低下すること が報告されている。
[0007] 非特許文献 1 :高橋貞行著「圧電材料の新展開」、株式会社 TIC、ニューセラミックス VOL.11, No.8 (1988) ,p29-34
非特許文献 2 :高橋貞行著「ハイパワー材料の評価」、株式会社 TIC、ニューセラミツ タス(1995) , No.6, pl7-21
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 非特許文献 1に記載されて 、るように、従来の PZT系圧電セラミックを共振ァクチュ エータに使用しても、ある一定以上の高電界を負荷すると振動速度は理論値を下回 つて安定性を欠くようになり最終的に飽和する。
[0009] すなわち、 PZT系圧電セラミックを使用した共振ァクチユエータでは、振動速度が 大きくなると振動速度が飽和するため、結果として lmZsを超える振動速度を得るこ とができず、このため大きな変位量を有する共振ァクチユエータを得ることができな!/ヽ という問題点があった。し力も、ある一定以上の高電界では振動速度が印加電界 Eに 比例しなくなって理論値を下回るため、振動速度を理論値に制御するためのフィード ノ ック回路が必要となり、デバイスの煩雑ィ匕を招くという問題点があった。
[0010] また、非特許文献 2に記載されて 、るように、従来の PZT系圧電セラミックを共振ァ クチユエータに使用した場合、振動速度が上昇するに伴い、共振周波数 frや機械的 品質係数 Qmは低下することが知られている。したがって、共振周波数 frの変化に追 随するためのフィードバック回路を設ける必要があり、デバイスの煩雑ィ匕を招くと共に 、機械的品質係数 Qmの低下によって機械的損失が増大し、圧電セラミックの発熱量 の増大を招くことから、大きな振動速度で使用するのは実用的に困難であるという問 題点があった。
[0011] 本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、飽和振動速度が大きぐ振 動速度を上昇させても該振動速度の不安定化を招くこともなく共振周波数 frや機械 的品質係数 Qmの低下を極力抑制することができ、かつ、高電界を印カロしても大きな 変位量を得ることができる共振ァクチユエータを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0012] 共振ァクチユエータのように大変位量が要求されるパワーデバイスの場合、従来で は圧電定数 dが高いことが重要と考えられており、このため材料面からは圧電定数 d の高い PZTをベースとした圧電セラミック材料し力検討されてこな力 た。
[0013] しかしながら、〔発明が解決しょうとする課題〕の項でも述べたように、 PZT系圧電セ ラミック材料は、振動速度 Vが上昇したときに機械的品質係数 Qmや共振周波数 frが 低下し、またある一定以上の高電界を印加すると振動速度 Vが印加電界 Eに比例し なくなり、理論値を下回って飽和する。これにより、結果として大きな振動速度を有す る共振ァクチユエータを得ることができな力つた。
[0014] そこで、本発明者らが種々の材料につ 、て鋭意研究を行ったところ、変位素子とし てビスマス層状化合物からなる圧電セラミック素体を使用することにより、飽和振動速 度を大きくすることができ、これにより振動速度 Vが上昇しても該振動速度 Vの不安定 化を招くこともなく機械的品質係数 Qmや共振周波数 frの低下を極力抑制することが でき、また、ある一定以上の高電界を印加しても振動速度 Vが飽和することもなく印加 電界 Eに略比例して変化すると 、う知見を得た。
[0015] 本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る共振ァクチ ユエータは、共振周波数又は共振周波数近傍の周波数領域で振動する変位素子を 備えた少なくとも一つの駆動部と、前記変位素子によって駆動される被駆動部材とを 有する共振ァクチユエータにおいて、前記変位素子が、ビスマス層状ィ匕合物からなる 圧電セラミック素体を有して 、ることを特徴として 、る。
[0016] また、ビスマス層状ィ匕合物は異方性が大きぐ変位方向が、分極方向と同一方向の 場合は、分極方向と垂直方向の場合に比べ、振動速度 Vが大幅に上昇し、より大きな 変位量を有する共振ァクチユエータを得ることが可能となる。
[0017] すなわち、本発明の共振ァクチユエータは、前記変位素子の変位方向と前記圧電 セラミック素体の分極方向とが同一方向であることを特徴としている。
[0018] また、本発明者らの更なる鋭意研究の結果、ビスマス層状ィ匕合物の結晶軸中、 c軸 を圧電セラミック素体の分極方向と直交する方向に配向させることにより、振動速度 V の上昇時に機械的品質係数 Qmを大きくすることができることが分力 た。
[0019] しカゝも、共振ァクチユエータでは、振動速度 Vが圧電定数 dと機械的品質係数 Qmと の積に比例することから、圧電定数 dが小さくても機械的品質係数 Qmが低下しない のであれば、振動速度 Vを大きくすることが可能であり、結果的に PZT系圧電セラミツ ク材料よりも大きな変位量を得ることが可能となる。
[0020] すなわち、本発明の共振ァクチユエータは、前記ビスマス層状ィ匕合物は、結晶軸の c軸が前記圧電セラミック素体の分極方向と直交する方向に配向していることを特徴 としている。
[0021] 特に、 c軸の配向度 Fがロットゲーリング法で 75%以上の場合は、振動速度 Vを上昇 させても共振周波数 frの変動を抑制することができ、また、消費電力 Wの節約にも寄 与することができ、さらに比較的低い印加電界 Eで大きな振動速度 Vを得ることができ 、より好まし ヽ。
[0022] すなわち、本発明の共振ァクチユエータは、前記 c軸の配向度力 ロットゲーリング 法で 75%以上であることを特徴として 、る。
発明の効果
[0023] 本発明の共振ァクチユエータによれば、共振周波数又は共振周波数近傍の周波 数領域で振動する変位素子を備えた少なくとも一つの駆動部と、前記変位素子によ つて駆動される被駆動部材とを有する共振ァクチユエータにおいて、前記変位素子 力 ビスマス層状ィ匕合物力 なる圧電セラミック素体を有しているので、圧電セラミック 素体として PZT系化合物を使用した場合に比べ、飽和振動速度が大きくなり、振動 速度 Vを上昇させても該振動速度 Vが不安定化することなく共振周波数 frや機械的品 質係数 Qmの低下を極力抑制することが可能となり、また広範な電界強度範囲にお Vヽて振動速度 Vは印加電界 Eに略比例して変化させることが可能となる。したがって、 高電界を印加しても振動速度 Vが飽和することなく、大きな振動速度 Vを得ることがで き、大きな変位量を有する共振ァクチユエータを得ることができる。し力も、このように 振動速度 Vが上昇しても共振周波数 frが低下するのを抑制することができ、また振動 速度 Vは印加電界 Eに略比例して変化することから、共振周波数 frや振動速度 Vを制 御するためのフィードバック回路が不要となり、デバイスの簡素化、コスト削減、小型 化が可能となる。
[0024] また、前記変位素子の変位方向と前記圧電セラミック素体の分極方向とが同一方 向であるので、同一電界を印加した場合、変位方向と分極方向とが垂直方向のとき に比べ、振動速度 Vを大きくすることができ、共振ァクチユエータのより一層の特性向 上を図ることができる。
[0025] また、前記ビスマス層状ィ匕合物は、結晶軸の c軸が前記圧電セラミック素体の分極 方向と直交する方向に配向しているので、機械的品質係数 Qmを大きくすることがで きる。これにより安定して使用できる振動速度 Vを大きくすることができ、より大きな変 位量を有する共振ァクチユエータを実現することができる。
[0026] 特に、前記 c軸の配向度 Fを、ロットゲーリング法で 75%以上とすることにより、振動 速度 Vが上昇しても共振周波数の変動を抑制でき、また、消費電力 Wの節約にも寄 与することができ、さらには比較的低い印加電界 Eで大きな振動速度 Vを得ることが可 能となる。
図面の簡単な説明
[0027] [図 1]本発明に係る共振ァクチユエータの一実施の形態を示す模式図である。
[図 2]変位素子の一実施の形態を示す断面図である。
[図 3]共振ァクチユエータの動作原理を説明する模式図である。
[図 4]〔実施例 1〕における試料番号 1〜3の試料の概略を示す斜視図である。
[図 5]〔実施例 1〕における試料番号 4の試料の概略を示す斜視図である。
[図 6]〔実施例 1〕で使用した測定装置の概略ブロック図である。
[図 7]消費電力の振動速度依存性を示す図である。
[図 8]機械的品質係数の振動速度依存性を示す図である。
[図 9]共振周波数の振動速度依存性を示す図である。
[図 10]変位率の振動速度依存性を示す図である。
[図 11]〔実施例 2〕における共振周波数の振動速度依存性を示す図である。
[図 12]〔実施例 2〕における消費電力の振動速度依存性を示す図である。
[図 13]〔実施例 2〕における振動速度の電界依存性を示す図である。
符号の説明
[0028] la、 lb 駆動部
2 被駆動部材
3a、 3b 変位素子
5圧電セラミック素体
発明を実施するための最良の形態
[0029] 次に、本発明の実施の形態を詳説する。
[0030] 図 1は本発明に係る共振ァクチユエータの一実施の形態を示す断面図であって、 本実施の形態では、共振ァクチユエータは 2個の駆動部を有している。
[0031] すなわち、本共振ァクチユエータは、駆動部 1 (第 1及び第 2の駆動部 la、 lb)と、 該駆動部 1によって矢印 A方向又は矢印 B方向に駆動する被駆動部材 2とを備えて いる。
[0032] 駆動部 1 (第 1及び第 2の駆動部 la、 lb)は、共振周波数で振動して矢印 Ca方向、 矢印 Cb方向に変位する変位素子 3 (第 1及び第 2の変位素子 3a、 3b)と、該変位素 子 3から突設された振動片 4 (第 1及び第 2の振動片 4a、 4b)とを有している。
[0033] 変位素子 3は、図 2に示すように、矢印 D方向に分極されると共にビスマス層状ィ匕合 物で形成された単板構造の圧電セラミック素体 5と、該圧電セラミック素体 5の両主面 に形成された Ag等からなる電極 6、 7とを有している。そして、この電極 6、 7に電界が 印加されると変位素子 3は共振周波数 frで振動し、矢印 C方向に変位する。
[0034] 圧電セラミック素体 5を上述のようにビスマス層状ィ匕合物で形成したのは以下の理 由による。
[0035] すなわち、ビスマス層状ィ匕合物は、 PZT系圧電セラミック材料とは異なり、共振ァク チユエータに使用した場合、振動速度 Vが上昇しても該振動速度 Vが不安定ィ匕するこ ともなく共振周波数 frや機械的品質係数 Qmの低下を極力抑制することができるから である。また、ある一定以上の高電界を印加しても、振動速度 Vが不安定になることも なく印加電界 Eに略比例して上昇することから、大きな変位量を有する共振ァクチュ エータを得ることができる力もである。
[0036] ビスマス層状ィ匕合物が、 PZT系化合物とは異なり、上述のような作用効果を奏する のは、以下の理由によると考えられる。
[0037] すなわち、 PZT系化合物はぺロブスカイト型結晶構造 (一般式 ABO )を有している
3
ため、結晶の異方性がビスマス層状ィ匕合物に比べて小さぐこのため振動速度 Vが上 昇すると比較的容易に非 180° ドメインが回転し、その結果振動速度 Vの上昇に伴つ て共振周波数 frや機械的品質係数 Qmの低下を招くと考えられる。
[0038] これに対しビスマス層状ィ匕合物は、ビスマス層が結晶軸の c軸に対し垂直方向に周
期的に形成されているため、非 180° ドメインの回転がほとんど生じないと考えられる 。このため振動速度 Vが上昇しても共振周波数 frや機械的品質係数 Qmの低下を抑 制できるものと思われる。
[0039] そして、このようなビスマス層状ィ匕合物としては、特に限定されるものではなぐ例え ば、 Bi SrNb O、 BiWO、 CaBiNb O、 BaBiNb O、 PbBi Nb O、 Bi TiNbO
2 2 9 6 2 9 2 9 2 2 9 3 9
、 Bi TiTaO , Bi Ti O 、 SrBi Ti NbO 、 BaBi Ti NbO 、 PbBi Ti NbO 、 Ca
3 9 4 3 12 3 2 12 3 2 12 3 2 12
Bi Ti O 、 SrBi Ti O 、 BaBi Ti O 、 PbBi Ti O 、 Na Bi Ti O 、 K Bi Ti
4 4 15 4 4 15 4 4 15 4 4 15 0.5 4.5 4 15 0.5 4 4
O 、 Ca Bi Ti O 、 Sr Bi Ti O 、 Ba Bi Ti O 、 Bi Ti Wo 、 Bi Ti NbO 、 Bi
15 2 4 5 18 2 4 5 18 2 4 5 18 6 3 18 7 4 21 10
Ti W O 等を使用することができる。
3 3 30
[0040] また、本実施の形態のように、変位方向 Cと分極方向 Dは同一方向であるのが好ま しい。すなわち、上述したように圧電セラミック素体 5をビスマス層状ィ匕合物で形成す ることにより、振動速度 Vが上昇しても該振動速度 Vが不安定ィ匕することなく共振周波 数 frや機械的品質係数 Qmの低下を極力抑制することができる。だが、ビスマス層状 化合物は異方性が大きいため、同一電界を印加した場合、変位方向が分極方向と 同一方向のときは変位方向が分極方向と垂直方向のときに比べ、振動速度 Vを大きく することが可能となり、より大きな変位量を有する共振ァクチユエータを得ることができ る。
[0041] さらに、ビスマス層状ィ匕合物は、結晶軸の c軸をセラミック素体 5の分極方向 Dと直 交する方向に配向させるのが好まし 、。
[0042] すなわち、ビスマス層状ィ匕合物は、上述したように異方性が大きぐ結晶軸の c軸を セラミック素体 5の分極方向 Dと直交する方向に配向させることにより、機械的品質係 数 Qmを大きくすることができる。
[0043] 一方、振動速度 Vと印加電界 Eとの関係は数式(1)で表される。
[0044] v^C 1 2-d-Qm-E
E
ここで、 Cは弾性スチフネス係数である。
E
[0045] この数式(1)から明らかなように、振動速度 Vは、圧電定数 dと機械的品質係数 Qm との積に比例する。したがって、ビスマス層状ィ匕合物の場合、上述したように圧電定 数 dが PZT系圧電セラミック材料に比べて小さ 、ものの、機械的品質係数 Qmを大き
くすることができることから、結果として大きな振動速度 Vを得ることができ、したがって 大きな変位量を有する共振ァクチユエータを得ることができる。
[0046] し力も、上述したように印加電界 Eが高くなつても振動速度 Vは印加電界 Eに略比例 して上昇するので、高電界でも安定した駆動が可能となる。
[0047] また、このように c軸をセラミック素体 5の分極方向 Dと直交する方向に配向させるこ とにより、機械的品質係数 Qmを大きくすることができるが、その配向度 Fは、ロットゲ 一リング法で 75%以上が好まし 、。
[0048] すなわち、ロットゲーリング法によると、 c軸の配向度 Fは下記数式(2)で算出される
[0049] [数 1]
Σΐ(θθΐ) _ ΣΙο(θΟΐ)
∑l(M/) ∑lo(hkl)
( 2 )
∑Io[001j"
∑lo(hkl)
[0050] ここで、 Σ Ι (ΟΟΙ)は、測定試料の c軸配向を示す結晶面 (001)の X線ピーク強度 の総和であり、∑ I (hkl)は測定試料の全結晶面 (hkl)の X線ピーク強度の総和であ る。また、 Σ Ιο (001)は比較用試料 (例えば、無配向試料)の結晶面 (001)の X線ピ ーク強度の総和であり、∑ Io (hkl)は比較用試料の全結晶面 (hkl)の X線ピーク強度 の総和である。
[0051] そして、数式(2)で算出される配向度 Fが 75%以上の場合は、振動速度 Vを lmZs 以上に上昇させても共振周波数 frは殆ど変化せず、また、消費電力 Wの増加が鈍化 し、したがって消費電力 Wの節約にも寄与する。しかも、この場合、比較的低い印加 電界 Eで大きな振動速度 Vを得ることができ、変位量の大きな共振ァクチユエ一タを容 易に得ることができる等の利点がある。
[0052] したがって、結晶軸の c軸をセラミック素体 5の分極方向 Dと直交する方向に配向さ せ、かつ c軸の配向度 Fはロットゲーリング法で 75%以上がより好ましい。
[0053] 尚、配向化したビスマス層状ィ匕合物は、後記〔実施例〕で詳述するように、 TGG (Te mplated Grain Growth)法等で容易に作製することができる。すなわち、例えば、 c軸
配向した板状セラミック粉末と無配向の仮焼粉末とを含有したセラミック成形体を作 製した後、該セラミック成形体に熱処理を施すことにより、容易に作製することができ る。また、配向度 Fは、板状セラミック粉末と無配向の仮焼粉末との含有比率を調整 すること〖こより ff¾御することができる。
[0054] そして、このような変位素子 3を有する共振ァクチユエータでは、図 3 (a)に示すよう に、駆動部 laの振動片 4aが被駆動部 2に圧接された状態で変位素子 3aに電界が 印加されると、矢印 Ca方向の振動によって被駆動部 2が矢印 A方向に駆動する。
[0055] また、図 3 (b)に示すように、駆動部 lbの振動片 4bが被駆動部 2に圧接された状態 で変位素子 3bに電界が印加されると、矢印 Cb方向の振動によって被駆動部 2が矢 印 B方向に駆動する。
[0056] このように本実施の形態では、変位素子 3 (第 1及び第 2の変位素子 3a、 3b)が、ビ スマス層状ィ匕合物力 なる圧電セラミック素体 5を有して 、るので、振動速度 Vが上昇 しても共振周波数 frや機械的品質係数 Qmが低下するのを抑制することができる。ま た広範な電界強度範囲で振動速度 Vは印加電界 Eに略比例して変化するので、共振 周波数 frや振動速度 Vを制御するためのフィードバック回路が不要となり、したがって デバイスの簡素化、コスト削減、小型化が可能になる。
[0057] また、従来の PZT系圧電セラミックスでは振動速度 Vが lmZsを超えて使用するの は困難であった力 ビスマス層状ィ匕合物では lmZsを超える振動速度 Vでも安定して 使用することが可能であり、共振ァクチユエータの特性を向上させることができる。
[0058] 尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、 共振ァクチユエータを共振周波数で駆動させているが、共振周波数力 数%程度偏 位した共振周波数近傍の周波数領域で駆動させても同様の作用効果を得ることがで きる。
[0059] また、上記実施の形態では、 2個の駆動部を有する場合について説明したが、 1個 あるいは 3個以上の駆動部を有する場合にっ 、ても、同様に適用できるのは 、うまで もない。
[0060] また、上記実施の形態では、変位素子 3は単板形状であるが、セラミックグリーンシ ートを貼り合わせた形態のものや、内部電極と共焼結されて積層された積層型の共
振ァクチユエータについても同様の作用効果を得ることができる。
[0061] 次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
実施例 1
[0062] 〔試料の作製〕
ビスマス層状化合物である無配向の Bi SrNb O (以下、「SBN」という。)系材料、
2 2 9
及び c軸に配向した SBN系材料を使用し、変位方向と分極方向とが同一方向の試 料番号 1、 2の変位素子を作製した。
[0063] また、比較例として PZT系材料を使用し、変位方向と分極方向と同一方向の試料 番号 3の変位素子、及び変位方向が分極方向と垂直方向の試料番号 4の変位素子 を作製した。
[0064] 以下、各試料の作製手順を詳述する。
[0065] 〔試料番号 1〕
セラミック素原料として SrCO、: Bi O、 Nb O、 Nd O、及び MnCOを用意し、最
3 2 3 2 5 2 3 3
終組成が組成式 { 100 (Sr Nd Bi Nb O ) +MnO}を満たすように前記セラミック
0.9 0.1 2 2 9
素原料を秤量した。この秤量物を PSZ (Partially Stabilized Zirconia;部分安定化ジル コユア)ボール及び水と共にボールミルに投入し、該ボールミル内で約 16時間湿式 混合して混合物を得た。
[0066] 次 、で、得られた前記混合物を乾燥した後、 800°Cの温度で 2時間仮焼し、仮焼粉 末を得た。
[0067] そしてこの後、仮焼粉末、適量の有機バインダ、分散剤、消泡剤及び表面活性剤を 添加し、 PSZボール及び水と共にボールミルに投入し、該ボールミル内で約 16時間 湿式混合してセラミックスラリーを作製した。その後ドクターブレード法を使用してこの セラミックスラリーに成形力卩ェを施し、厚みが約 60 mのセラミックグリーンシートを作 製した。
[0068] 次いで、このセラミックグリーンシートを所定枚数積層した後、温度 60°C、圧力 30M Paの加圧条件で 30秒間圧着処理を行 ヽ、積層成形体を作製した。
[0069] 次いで、この積層成形体を温度 350°Cで 5時間加熱し、さらに温度 500°Cで 2時間 加熱して脱バインダ処理を行い、その後温度 1150°Cで 2時間焼成処理を行い、焼
結体ブロックを作製し、縦 7mm、横 7mm、厚み 5mmに切り出してセラミック焼結体を 得た。
[0070] 次に、 Agをターゲットとしてスパッタリング処理を行 、、両主面に電極を形成した後 、浴温 200°Cのオイル中で 10. OkVZmmの電界を 30分間印加し、厚み方向に分 極処理を行った。そして分極処理された試料を、図 4に示すように、横 (X)が 2mm、 縦 (y)が 2mm、厚み (t)が 5mmの寸法にダイサーカットを使用して切り出し、電極面 11、 12に銀線 13、 14をはんだ付けし、変位方向 Eと分極方向 Fとが同一である無配 向の試料番号 1の SBN系試料 15を作製した。
[0071] 〔試料番号 2〕
試料番号 1と同様、最終組成が組成式 { 100 (Sr Nd Bi Nb O ) +MnO}を満
0.9 0.1 2 2 9
たすように各セラミック素原料を秤量し、ボールミル内で約 16時間湿式混合して混合 物を得た。その後前記混合物を乾燥した後、 800°Cの温度で 2時間仮焼し、仮焼粉 末を得た。
[0072] 次 、で、この仮焼粉末の一部を取り出し、該仮焼粉末と KC1とが重量比で 1: 1とな るように混合し、 900°Cの温度で 10時間熱処理を行い、その後水洗して KC1を除去 し、セラミック粒子を得た。
[0073] ここで、走査型電子顕微鏡を使用してセラミック粒子を観察したところ、形状が異方 性を有しており、最大径 φと高さ Hとの比 φ ZH (アスペクト比)が 5程度の板状になつ ていることが確認された。
[0074] 次いで、板状セラミック粒子と上記仮焼粉末とが重量比で 1: 1となるように混合し、 さらに適量の有機バインダ、分散剤、消泡剤及び表面活性剤とを添加し、 PSZボー ル及び水と共にボールミルに投入し、該ボールミル内で約 16時間湿式混合してセラ ミックスラリーを作製した。その後ドクターブレード法を使用してこのセラミックスラリー に成形加工を施し、厚みが約 60 mの配向セラミックシートを作製した。
[0075] 次いで、この配向セラミックシートを所定枚数積層した後、温度 60°C、圧力 30MPa の加圧条件で 30秒間圧着処理を行 ヽ、積層成形体を作製した。
[0076] 次いで、この積層成形体を温度 350°Cで 5時間加熱し、さらに温度 500°Cで 2時間 加熱して脱バインダ処理を行い、その後温度 1150°Cで 2時間、焼成処理を行って焼
結体ブロックを作製した。すなわち、焼成処理により、板状セラミック粒子が種結晶( テンプレート)として仮焼粉末を取り込みながらホモェピタキシャル成長し、これにより 配向した焼結体ブロックが得られる (TGG法)。そして、焼結体ブロック力 縦 7mm、 横 7mm、厚み 5mmのセラミック焼結体を、結晶軸の c軸が、縦 7mm、横 7mmの主 面の面内方向を向くように、すなわち a— b面が厚み方向を向くように切り出し、配向 性セラミツ焼結体を得た。
[0077] ここで、上記配向性セラミック焼結体について、ロットゲーリング法により c軸の配向 度 Fを測定した。
[0078] すなわち、まず、 X線回折装置 (線源: CuK a線)を使用し、この配向性セラミック焼 結体について、回折角 2 0が 20° 〜80° における X線ピーク強度を測定した。また 、比較試料として試料番号 1の無配向のセラミック焼結体を使用し、同様に回折角 2 0力 20° 〜80° における X線ピーク強度を測定した。
[0079] 次 、で、配向性焼結体及び無配向のセラミック焼結体の結晶面 (001)及び全結晶 面 (hkl)における X線ピーク強度の総和を算出し、〔発明を実施するための最良の形 態〕の項に記載した数式(2)に基づいて c軸の配向度 Fを求めた。そしてその結果、 配向度 Fは 90%であった。
[0080] 次に、 Agをターゲットとしてスパッタリング処理を行 、、配向性セラミック焼結体の両 主面に電極を形成した後、浴温 200°Cのオイル中で 10. OkVZmmの電界を 30分 間印加し、厚み方向に分極処理を行った。そして分極処理された試料を、試料番号 1と同様、横 (X)が 2mm、縦 (y)が 2mm、厚み(t)が 5mmの寸法にダイサーカットを 使用して切り出し、電極面に銀線をはんだ付けし、変位方向が分極方向と同一であ る、 c軸が分極方向と直交する方向に配向した試料番号 2の SBN系試料を作製した
[0081] 〔試料番号 3〕
セラミック素原料として Pb O、 TiO、 MnCO、及び Nb Oを用意し、最終組成が
3 4 2 3 2 5
組成式〔Pb{ (Mn Nb ) Ti Zr }0〕を満たすように前記セラミック素原料を
1/3 2/3 0.10 0.46 0.44 3
秤量し、この秤量物を PSZボール及び水と共にボールミルに投入し、該ボールミル内 で約 16時間湿式混合して混合物を得た。
[0082] 次 、で、得られた前記混合物を乾燥した後、 900°Cの温度で 2時間仮焼し、仮焼粉 末を得た。
[0083] そしてこの後、仮焼粉末、適量の有機バインダ、分散剤、消泡剤及び表面活性剤を 添加し、 PSZボール及び水と共にボールミルに投入し、該ボールミル内で約 16時間 湿式混合してセラミックスラリーを作製した。その後ドクターブレード法を使用してこの セラミックスラリーに成形力卩ェを施し、厚みが約 60 mのセラミックグリーンシートを作 製した。
[0084] 次いで、このセラミックグリーンシートを所定枚数積層した後、温度 60°C、圧力 30M Paの加圧条件で 30秒間圧着処理を行 ヽ、積層成形体を作製した。
[0085] 次いで、この積層成形体を温度 350°Cで 5時間、更に温度 500°Cで 2時間加熱して 脱バインダ処理を行い、その後温度 1200°Cで 2時間焼成処理を行い、焼結体ブロッ クを作製し、縦 7mm、横 7mm、厚み 5mmに切り出してセラミック焼結体を得た。
[0086] 次に、 Agをターゲットとしてスパッタリング処理を行 、、両主面に電極を形成した後 、浴温 200°Cのオイル中で 10. OkVZmmの電界を 30分間印加し、厚み方向に分 極処理を行った。そして分極処理された試料を、試料番号 1と同様、横 (X)が 2mm、 縦 (y)が 2mm、厚み (t)が 5mmの寸法にダイサーカットを使用して切り出し、電極面 に銀線を半田付けし、変位方向が分極方向と同一である試料番号 3の PZT系試料を 作製した。
[0087] 〔試料番号 4〕
試料番号 3と同様の方法.手順で縦 7mm、横 7mm、厚み 5mmのセラミック焼結体 を得た。このセラミック焼結体を、横 (X)が 5mm、縦 (y)が 2mm、厚み (t)が 2mmの 寸法に切断し、横 (X)が 5mm、縦 (y)が 2mmの互いに対向する 2面に Agをターゲッ トとしてスパッタリング処理を行い、電極を形成した。この電極形成後、浴温 200°Cの オイル中で 10. OkVZmmの電界を 30分間印加し、厚み方向に分極処理を行った 。次いで、図 5に示すように、電極面 11' 、 12' に銀線 13' 、 14' をはんだ付けし 、変位方向 Eと分極方向^ とが垂直である試料番号 4の PZT系試料 15' を作製し た。
[0088] 〔各試料の特性評価〕
図 6は、各試料の特性評価に使用した測定装置の概略ブロック図である。
[0089] すなわち、この測定装置は、試料 15 (15' )を支持する試料支持部材 16と、振動 時の変位量や振動速度を検出するレーザードップラー振動計 17と、試料 15 (15^ ) に電界を印加すると共に電流値が常に一定となるように駆動電圧が調節されるように 回路構成した電源,定電流回路 18と、入出力部等を備え前記電源,定電流回路 18 を制御する制御部 19とを有し、制御部 19と電源 ·定電流回路 18とは電気的に接続さ れている。
[0090] そして、試料 15 (1 )の変位方向の中心部を試料支持部材 16で支持し、電源- 定電流回路 18からの信号に基づいて試料 15 )に電界を印加し、共振特性を 測定して共振周波数 frを求めた。尚、本実施例では、最も低周波側の共振周波数を 共振周波数 とした。
[0091] また、共振周波数 fr近傍のインピーダンス曲線に基づいて機械的品質係数 Qmを 求めた。
[0092] さらに、電源 *定電流回路 18からの信号に基づき試料 15 )に種々の強度の 電界を印カロしながらレーザードップラー振動計 17を使用して試料 15 (15^ )端面の 振動速度を測定した。尚、試料番号 3、 4では、印加電界 Eを上昇させていった場合、 振動速度が不安定化するが、その不安定化する直前の振動速度を飽和振動速度と して求めた。
[0093] また、レーザードップラー振動計 17を使用して種々の印加電界 Eにおける変位量 s を測定し、電界が印加されていない無電界時に対する各試料の変位率 A sを算出し た。
[0094] また、試料が小さく発熱量を測定するのが困難であったことから、発熱量の指標とな る消費電力を測定した。
[0095] 表 1は、各試料における配向性の有無、分極方向、消費電力が lmWZmm3、 3m
WZmm3及び 5mWZmm3のときの振動速度及び飽和振動速度を示している。
表 1から明らかなように、試料番号 3は変位素子に PZT系圧電セラミック材料を使用 しているので、振動速度は、消費電力力 SlmWZmm3のときで 0. 50m/s,消費電
力が 3mWZmm3のときで 0. 79mZsであり、消費電力が 5mWZmm3のときでも 0. 94mZsであり、 lmZsを超える大きな振動速度を得ることができな力つた。また、飽 和振動速度も 0. 94mZsと小さぐしたがって振動速度の小さい領域でないと安定し て駆動させることができな 、ことが分力つた。
[0098] 試料番号 4も、試料番号 3と同様、変位素子に PZT系圧電セラミック材料を使用し ているので、振動速度は、消費電力が lmWZmm3のときで 0. 52m/s,消費電力 力 S3mWZmm3のときで 0. 72mZsであり、消費電力が 5mWZmm3のときでも 0. 8 2mZsであり、 lmZsを超える大きな振動速度を得ることができな力つた。また、飽和 振動速度も 0. 78mZsと小さぐしたがって振動速度の小さい領域でないと安定して 駆動させることができないことが分力つた。し力も、試料番号 4は、変位方向が分極方 向に対し垂直であるため、試料番号 3と比べても飽和振動速度が小さぐ消費電力が 大きくしてもより小さな振動速度し力得られないことが分力つた。
[0099] これに対し SBN系圧電セラミック材料を使用した試料番号 1は、消費電力が lmW Zmm3のときには試料番号 3、 4とほぼ同じ振動速度であった力 消費電力が 3mW Zmm3になると振動速度は 0. 85mZsとなり、また消費電力が 5mWZmm3のときは 振動速度が 1. 07mZsとなって試料番号 3、 4に比べると若干上昇することが分かつ た。また、印加電界 Eを上昇させていったところ、振動速度が 2. 12mZsとなった時 点で銀線が断線してしまったことから、飽和振動速度は少なくとも 2. 12mZs以上で あることが確認され、大きな飽和振動速度が得られることが分力つた。
[0100] さらに、試料番号 2は、消費電力が lmWZmm3のときで振動速度は 0. 95m/s, 消費電力が 3mWZmm3のときで振動速度は 1. 32m/s,消費電力が 5mWZmm3 のときで振動速度が 1. 66mZsとなった。したがって c軸配向させたことにより、試料 番号 1に比べ、振動速度を更に大きくすることができた。また印加電界 Eを上昇させて いったところ、振動速度が 2. 62mZsとなった時点で銀線が断線してしまったことか ら、飽和振動速度は少なくとも 2. 62mZs以上であり、大きな飽和振動速度が得られ ることが分かった。
[0101] 図 7は消費電力の振動速度依存性を示した図であり、横軸が振動速度 v、縦軸は 消費電力 Wを示し、口印が試料番号 1、國印が試料番号 2、參印が試料番号 3、〇
印が試料番号 4である。図中、 X印は振動速度 Vが安定しなくなった点を示している。
[0102] また、図 8は機械的品質係数の振動速度依存性を示した図であり、横軸が振動速 度 v、縦軸が機械的品質係数 Qmを示し、口印が試料番号 1、國印が試料番号 2、參 印が試料番号 3、〇印が試料番号 4である。図中、 X印は振動速度 Vが安定しなくな つた点を示している。
[0103] この図 7及び図 8から明らかなように、無配向の SBN系圧電セラミック材料を使用し た試料番号 1では、振動速度 Vが 1. OmZs以下の場合には、消費電力 Wが PZT系 圧電セラミック材料を使用した試料番号 3、 4とほぼ同等となっている。したがって、発 熱量もほぼ同等であることが分力つた。また、図 8から明らかなように、試料番号 1は、 振動速度 Vが 1. OmZs以下の場合には発熱量と相関関係を有する機械的品質係数 Qmも試料番号 4とほぼ同等であることが確認された。
[0104] 一方、 c軸配向の SBN系材料を使用した試料番号 2は、図 7から明らかなように、 P ZT系材料を使用した試料番号 3、 4と比較して消費電力 Wが顕著に低下しており、し たがって、発熱量も低下することが分力つた。また、図 8から明らかなように、試料番号 2は、試料番号 3、 4と比較して機械的品質係数 Qmが上昇することが確認された。
[0105] また、共振ァクチユエータとして使用する場合には、消費電力 Wが lmWZmm3より 小さいことが望まれるが、 PZT系圧電セラミック材料 (試料番号 3、 4)では振動速度 V が 0. 50mZs以上になると消費電力 Wが lmWZmm3を超えているのに対し、 c軸配 向した SBN系圧電セラミック材料 (試料番号 2)では振動速度 Vを 0. 95mZsまで上 昇させても消費電力 Wを lmWZmm3以下に抑制できた。したがって振動速度 vが 0 . 50mZsを超える用途では c軸配向した SBN系圧電セラミック材料が好ましいことが 確認された。
[0106] また、試料番号 1と試料番号 2とを比較すると、表 1から明らかなように、 c軸配向した 試料番号 2は、無配向の試料番号 1と比べ、消費電力 Wが同一の場合は振動速度 V を大きくすることができ、図 7及び図 8から明らかなように同一の振動速度 Vでは消費 電力 Wは少なくて済み、また機械的品質係数 Qmを大きくすることができることが分か つた。すなわち、 c軸配向した SBN系圧電セラミック材料を使用することにより、より一 層の特性向上を図ることができることが確認された。
[0107] 図 9は、共振周波数の振動速度依存性を示した図であり、横軸が振動速度 v、縦軸 が共振周波数変化率 A frを示し、口印が試料番号 1、國印が試料番号 2、參印が試 料番号 3、〇印が試料番号 4である。図中、試料番号 3中の X印は振動速度 Vが安定 しなくなつた点を示して 、る。
[0108] この図 9から明らかなように、 PZT系圧電セラミック材料を使用した試料番号 3、 4は 振動速度 Vが上昇するに伴い、共振周波数変化率 A frが大きくなり、共振周波数 fr の低下が顕著になることが分力つた。
[0109] これに対し、無配向の SBN系材料を使用した試料番号 1は共振周波数 A frの変化 力 S小さぐまた、 c軸配向した試料番号 2は振動速度 Vが上昇しても、共振周波数 frは 殆ど変化しな 、ことが分力つた。
[0110] 共振ァクチユエータとして使用する場合には、共振周波数変化率 A frは— 0. 05% 以内であるのが望ましいが、 PZT系圧電セラミック材料 (試料番号 3、 4)では振動速 度 Vが 0. 5mZsを超えると共振周波数変化率 A frは 0. 05%を超えて顕著な低下 傾向を示している。
[0111] これに対し、無配向の SBN系圧電セラミック材料 (試料番号 1)では振動速度 Vが 1 . OmZs程度までは、共振周波数変化率 A frは 0. 05%以内に抑制することがで き、この振動速度 Vの範囲で共振ァクチユエータとして好適に使用しうることが分かつ た。さら〖こ、 c軸配向した SBN系材料 (試料番号 2)では振動速度 Vが 2. OmZsに到 達しても共振周波数変化率 A frは 0. 03%程度しか低下せず、したがって振動速 度 Vが 0. 5mZsを超える用途では SBN系圧電セラミック材料がさらに好ましいことが 分かった。
[0112] 図 10は、変位率の電界依存性を示した図であり、横軸が印加電界 E、縦軸が変位 率 A sを示し、口印が試料番号 1、國印が試料番号 2、參印が試料番号 3、〇印が試 料番号 4である。図中、 X印は振動速度 Vが安定しなくなった点を示している。
[0113] この図 10から明らかなように、印加電界 Eを上昇させていった場合、 PZT系材料を 使用した試料番号 3、 4のうち、試料番号 3は印加電界 Eが約 lVZmmで振動速度 V が不安定化し、試料番号 4では印加電界 Eが約 1. 8VZmmで振動速度 Vが不安定 化している。
[0114] これに対し SBN系材料を使用した試料番号 1、 2では、印加電界 Eが上昇しても変 位率 Δ sは印加電界 Eに略比例して上昇し、高電界が印加されても大きな変位量 sの 得られることが分力つた。
[0115] 尚、この実施例 1では最も低周波側の共振周波数 frで駆動させている力 高次の 共振周波数 frで駆動しても同様の作用効果が得られることを確認した。
[0116] また、実施例 1では、単板構造の変位素子を用いているが、積層型の変位素子を 用いても同様の作用効果が得られるのは 、うまでもな!/、。
実施例 2
[0117] c軸の配向度 Fが異なる種々の SBN系試料を作製し、特性を評価した。
[0118] すなわち、〔実施例 1〕の試料番号 2と同様の方法 '手順で、仮焼粉末及び板状セラ ミック粒子を作製した。
[0119] そしてその後、セラミック焼結体における c軸の配向度 Fが 54%、 75%、 95%となるよう に、板状セラミック粒子と仮焼粉末とを重量比を変えて混合し、その他は〔試料番号 2 〕と同様の方法 ·手順で試料番号 22 (配向度 F: 54%)、試料番号 23 (配向度 F: 75 %)、及び試料番号 24 (配向度 F: 95%)の SBN系試料を作製した。
[0120] 尚、試料番号 22〜24の各配向度 Fは、〔実施例 1〕の試料番号 2と同様、ロットゲー リング法で算出し、確認した。
[0121] また、試料番号 21として、試料番号 1と同様、無配向の SBN系試料を作製した。
[0122] そして、試料番号 21〜24について、〔実施例 1〕と同様の方法.手順で種々の印加 電界 Eおける振動速度 v、共振周波数 fr、消費電力 Wを測定した。
[0123] 図 11は共振周波数の振動速度依存性を示した図であり、横軸が振動速度 v、縦軸 は共振周波数変化率 Δ ίι:である。また、図 12は消費電力の振動速度依存性を示し た図であり、横軸が振動速度 ν、縦軸は消費電力 Wである。また、図 13は、振動速度 の電界依存性を示した図であり、横軸が印加電界 Ε、縦軸が振動速度 Vである。尚、 各図中、 印は試料番号 21、△印が試料番号 22、口印が試料番号 23、〇印が試 料番号 24を示している。
[0124] 図 11から明らかなように、試料番号 21は無配向であり、また試料番号 22は c軸の 配向度 Fが 54%と低いため、振動速度 Vが lmZs以上になると共振周波数変化率 Δ
frが負側に変位し、共振周波数 frの低下を招いていることが分力つた。
[0125] これに対し配向度 Fが 75%、 90%の試料番号 23、 24は、振動速度 vが lmZs以 上となっても共振周波数変化率 Δ frはほぼ「0」であり、共振周波数 frの変動を抑制 できることが確認された。
[0126] また、図 12から明らかなように、 c軸の配向度 Fが 75%、 90%の試料番号 23、 24 は、無配向の試料番号 21や配向度 Fが 54%の試料番号 22に比べ、振動速度 Vの 上昇に対して消費電力 Wの上昇程度が鈍化し、消費電力 Wを節約できることが分か つた。また、 c軸の配向度 Fが 75%と 90%とでは、消費電力は略同等であり、したが つて c軸の配向度 Fが 75%以上になると消費電力 Wは略飽和状態になることが分か つた o
[0127] また、図 13から明らかなように、試料番号 21〜24のいずれにおいても振動速度 V は印加電界 Eに略比例して上昇している力 c軸の配向度 Fが大きくなるに伴い、低 い印加電界 Eで大きな振動速度 Vの得られることが確認された。
[0128] 以上よりビスマス層状ィ匕合物は、 c軸を分極方向と直交する方向に配向させるのが 好ましぐこの場合、 c軸の配向度 Fは 75%以上であるのがより好ましいことが分かつ