明 細 書
多段式圧造成形機
技術分野
[0001] この発明は、ダイスとパンチとからなる金型組を複数並列に備え、各金型組で加工 された素材を、チヤッ外こより順送りするよう構成した多段式圧造成形機に関するもの である。
背景技術
[0002] 対をなすダイスとパンチとからなる金型組を複数備え、これら金型組により金属素材 を段階的に順次圧造成形する多段式圧造成形機 (例えば、特許文献 1参照)は、一 般に以下の基本的な構成を有している。すなわち、装置フレームには、送り装置によ り供給される線材を、その先端から所定寸法で切断する切断手段が配設される。また 装置フレームの前端面にダイブロックを備え、このダイブロックに、一定の間隔を保つ て横一列に複数のダイスが設けられる。更に、駆動機構によりダイスに対して進退移 動するラムに、各ダイスに対応する複数のパンチが配設されている。ダイブロックの前 面には、各ダイスに対応して開閉機構により開閉作動される複数のチャックが配設さ れ、各チャックは、揺動機構により前段のダイスの前面位置から次段のダイスの前面 位置まで水平揺動される。そして、前記ラムがダイブロックから後退した際に、前記切 断手段により切断された素材または各チャックが前段の金型組により所要の成形が 施された素材を各チャックが把持して次段の金型組まで移送することを、金型組の数 だけ繰返すことによって、該素材が所要形状に成形される。なお、ダイスとパンチとに より圧造した素材は、各ダイスに対応して配設されたプッシヤーにより押出されて、前 記チャックにより把持可能となるよう構成される。
特許文献 1:特開平 10 - 244341号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0003] 前記多段式圧造成形機を構成する切断手段、ダイスおよびパンチからなる多段圧 造手段、複数のプッシヤーからなる押出し手段および移送手段は、装置フレームに
個別に配設されている。そのため、製造する製品を変更する場合 (オーダチェンジ)に は、各手段の交換作業を別々に行なう必要があり、オーダチェンジに時間が掛かつ ている。し力も、ダイスおよびパンチを交換したときには芯出し等の調整作業が必要と なるため、この調整作業を現場で行なうのに手間と時間が掛かり、段取り時間が長く なって生産能率が低下する原因となる問題が指摘される。
[0004] すなわち本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを 好適に解決するべく提案されたものであって、オーダチェンジの際に要する時間を短 縮し、生産能率の低下を抑制し得る多段式圧造成形機を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段
[0005] 前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため、本発明に係る多段式圧造 成形機は、
供給される線材を定寸に切断する切断手段と、ダイブロックに一定の間隔を保つて 横一列に設けられた複数のダイスおよび各ダイスに対応して進退移動するよう設けら れた複数のパンチからなる多段圧造手段と、前記各ダイスの前面に水平揺動可能に 設けられて素材を把持する複数のチャックからなる移送手段とからなり、各ダイスとパ ンチとにより圧造した素材をチャックで把持して次段のダイスの前面に順次移送する よう構成した多段式圧造成形機にぉレ、て、
前記切断手段、多段圧造手段および移送手段を、装置フレームに対して着脱可能 な取付台に搭載すると共に、切断手段、多段圧造手段および移送手段の各駆動手 段を装置フレームに配設し、
前記切断手段、多段圧造手段および移送手段と、対応する各駆動手段とを相互に 連結離脱自在に構成したことを特徴とする。
発明の効果
[0006] 本発明に係る多段式圧造成形機によれば、切断手段、多段圧造手段および移送 手段を、装置フレームに対して着脱自在な取付台に搭載してカセット化したから、ォ ーダチェンジに要する時間を短縮することができ、生産能率の低下を抑制し得る。ま た、製品毎に対応するダイスとパンチとを搭載した取付台を用意しておけば、取付台 を交換する際にはダイスとパンチとの芯出しを行なう必要はなぐ段取り時間を省略
することができる。更に、装置フレームに設けた被係合部材を、取付台に設けた係合 部材に係合するだけの簡単な構成で、装置フレームに対して取付台を簡単かつ短 時間で位置決め固定し得るから、これによつてもオーダチェンジに要する時間短縮を 図り得る。
図面の簡単な説明
[0007] [図 1]実施例に係る多段式圧造成形機の概略構成を一部破断して示す要部平面図 である。
[図 2]実施例に係る多段式圧造成形機の概略構成を示す縦断側面図である。
[図 3]実施例に係る多段式圧造成形機の多段圧造手段、切断手段および移送手段 を示す要部縦断正面図である。
[図 4]実施例に係る多段式圧造成形機の多段圧造手段、切断手段および移送手段 を示す要部平面図である。
発明を実施するための最良の形態
[0008] 次に、本発明に係る多段式圧造成形機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面 を参照しながら以下説明する。
実施例
[0009] 図 1に示す多段式圧造成形機 10は、装置フレーム 12に対して着脱自在な取付台 14を備え、該取付台 14に、後述する切断手段 16、多段圧造手段 18、押出し手段 2 0および移送手段 22が搭載されて、カセットィ匕されている。この取付台 14には、図 2 に示す如ぐ係合部材 24が配設されると共に、該係合部材 24に対して係脱可能な 被係合部材 26が、装置フレーム 12に回動自在に配設されている。また被係合部材 2 6には、その枢支部より下側の端部に、装置フレーム 12に配設された作動手段として の油圧シリンダ 28が連結されており、該シリンダ 28を正逆付勢することで、被係合部 材 26における枢支部より上側の端部が、係合部材 24に対する係合位置と係合解除 位置との間を移動 (傾動)するよう構成される。すなわち、装置フレーム 12に設けた台 取付部 30に取付台 14を載置 (セット)した状態で、油圧シリンダ 28を付勢して被係合 部材 26を係合解除位置から係合位置に移動することで、該被係合部材 26が取付台 14の係合部材 24に係合し、これによつて取付台 14が装置フレーム 12に位置決め固
定されるようになつている。
[0010] なお、被係合部材 26が係合部材 24に係合した状態では、取付台 14の一側面が、 油圧シリンダ 28の付勢力によって常に台取付部 30における規制面 30aに圧接され て、該取付台 14の装置フレーム 12に対する適正な位置決めがなされるよう構成され る。また油圧シリンダ 28の付勢方向は、装置フレーム 12に配設されている図示しな レ、切換えハンドルを操作することにより、切換えられるようになってレ、る。
[0011] 前記取付台 14には、装置フレーム 12に配設されて線材を給送する送り装置 (図示 せず)の下流側に対応して、該線材を案内する線材ガイド 32が配設される。この線材 ガイド 32の開放端側の取付台 14に、該ガイド 32で案内された線材を、その先端から 所定寸法で切断する切断手段 16が配設されている。この切断手段 16は、後述する ラム 52の移動方向に対して直交する水平横方向に往復移動する往復移動体 34と、 この往復移動体 34の先端に取付けられた可動切断刃 36と、取付台 14に配設された 切断ダイ 38およびストッパ (図示せず)から構成されている。
[0012] 前記往復移動体 34には、装置フレーム 12に配設されたリンク部材 (切断用の駆動 手段) 40が、連結ピン 42を介して着脱自在に連結されており、該リンク部材 40を図示 しないモータにより駆動して往復移動体 34を往復移動することで、前記送り装置によ り供給された線材は、前記可動切断刃 36と切断ダイ 38との協働により定寸で切断さ れるようになっている。また、連結ピン 42を取外して往復移動体 34とリンク部材 40と の連結を解除することで、取付台側の切断手段 16と装置フレーム側のリンク部材 40 とを切離し得るよう構成される。
[0013] 前記取付台 14には、図 3に示す如ぐその前端面にダイブロック 44が配設され、該 ダイブロック 44に、一定の間隔を保って横一列に複数のダイス 46が設けられている。 また装置フレーム 12に配設された図示しないモータにより回転駆動されるクランク軸 48に、ラム往復駆動用アーム (多段圧造用の駆動手段) 50が配設されると共に、該ァ ーム 50が、取付台 14に摺動自在に配設したラム 52に係脱自在に係合されている。 すなわち、ラム 52は、クランク軸 48の回転に伴って、ラム往復駆動用アーム 50を介し てダイブロック 44に対して進退移動するよう構成される。また、ラム 52のダイブロック 4 4を指向する面に、各ダイス 46に対応する複数のパンチ 54が配設される。そして、前
記切断手段 16により切断された素材をダイス 46の前面に臨ませた状態で、パンチ 5 4をダイス 46に向けて近接させることにより、該素材を所要形状に圧造成形するよう になっている。すなわち、複数のダイス 46と対応する複数のパンチ 54とによって多段 圧造手段 18が構成されている。前記ラム 52には、前記ラム往復駆動用アーム 50の 係合状態を維持する規制部材 56が着脱自在に配設されており、該規制部材 56を取 外すことで、ラム 52に対してラム往復駆動用アーム 50を離間し、取付台側の多段圧 造手段 18と装置フレーム側のラム往復駆動用アーム 50とを切離し得るようになって いる。
[0014] 前記取付台 14には、前記ダイブロック 44を挟んでラム 52とは反対側に、各ダイス 4 6に対応してガイド通孔 58が夫々穿設されており、各ガイド通孔 58にプッシヤー 60が 夫々摺動自動に揷通され、これら複数のプッシヤー 60により押出し手段 20が構成さ れる。各プッシヤー 60の後端部は取付台 14の外方に所定長さだけ突出し、装置フレ ーム 12に配設された蹴り出しレバー (押出し用の駆動手段) 62が接離可能に構成さ れる。この蹴り出しレバー 62は、装置フレーム 12に配設された図示しないモータによ り、前記プッシヤー 60の後端から離間する後退位置と当接する前進位置との間を往 復傾動し、前記後退位置から前進位置に傾動する際に、前記プッシヤー 60を押圧し て、ダイス内から素材を押し出すよう構成される。なお、プッシヤー 60に対して後退位 置に臨む蹴り出しレバー 62は非連結状態であり、前記取付台 14の装置フレーム 12 に対する取付けおよび取外しは支障なく行ない得るようになつている。
[0015] 前記ダイブロック 44の前面には、図 3に示す如ぐ各ダイス 46に対応して、前記素 材を解放可能に把持する複数のチャック 64からなる移送手段 22が配設されている。 各チャック 64は、ダイブロック 44に沿って横方向に延在する取付部材 66に夫々開閉 自在に配設され、後述する揺動機構 68により取付部材 66を左右方向に揺動させる ことにより、各チャック 64が隣接するダイス 46,46の間を移動するよう構成される。また 各チャック 64は、開閉機構 70により開閉作動されて、素材の把持と解放とを行なうよ うになつている。
[0016] 前記移送手段 22は、図 4に示す構成の揺動機構 68を備えている。すなわち、前記 チャック 64が配設される取付部材 66の一端部と、装置フレーム 12との間に、平行リ
ンク機構 72が配設されると共に、このリンク機構 72に作動杆 74が連結されている。 作動杆 74の開放端部は、図示しないモータで回転される駆動部材 (移送用の駆動手 段) 76に偏心的に接続され、駆動部材 76の回転により作動杆 74は左右方向に移動 するよう構成される。この結果として、平行リンク機構 72を介して取付部材 66が左右 方向に平行移動し、前記各チャック 64を隣接するダイス 46,46の間を移動させる。な お、駆動部材 76に対して作動杆 74は連結部材 78を介して着脱自在に接続されて おり、該駆動部材 76から作動杆 74を取外すことで、移送手段 22は装置フレーム 12 に配設された駆動系から切離され、前記取付台 14の装置フレーム 12からの取外し を許容するようになっている。
[0017] 前記開閉機構 70は、取付台 14に配設されたカム機構 80を備え、該カム機構 80は 、装置フレーム 12に配設されている駆動軸 (移送用の駆動手段) 82にクラッチ 84を介 して連結されており、図示しないモータで駆動軸 82を回転することで、カム機構 80が 作動して前記各チャック 64が開閉作動されるよう構成される。またクラッチ 84の連結 状態を解除して駆動軸 82とカム機構 80とを切離すことで、前記取付台 14の装置フレ ーム 12からの取外しを許容するようになっている。
[0018] 〔実施例の作用〕
次に、前述した実施例に係る多段式圧造成形機の作用につき説明する。
[0019] 前記送り装置により切断手段 16に供給された線材は、該切断手段 16により予め設 定された長さ寸法に切断される。この得られた素材は、線材が送り装置により更に供 給されることで切断手段 16から前方に押出され、前記開閉機構 70の作動により、そ の前面に臨む最上流側のチャック 64に把持される。このようにチャック 64が素材を把 持すると、前記揺動機構 68が作動し、取付部材 66を左右方向に移動することで、該 チャック 64は最初のダイス 46の前面に移動される。
[0020] 前記チャック 64がダイス 46の前面に到来するタイミングで、前記ラム 52がダイブ口 ック 44に向けて近接移動し、パンチ 54がチャック 64に把持されている素材をダイス 4 6に押込む。この素材の後端が、ダイブロック 44に配設されているプッシヤー 60の先 端に当接して移動が規制されることで、該素材の先端にはパンチ 54により打撃が加 えられ、所定形状に圧造成形される。
[0021] 次に、前記ラム 52がダイブロック 44から離間した後に、前記取付部材 66が左右方 向に移動することで、最上流側のチャック 64は切断手段 16の前面に臨むと共に、先 端に成形された素材を保持しているダイス 46の前面に、隣接する別のチャック 64が 臨む。この状態で、プッシヤー 60が後退位置から前進位置まで移動することで、素材 はダイス 46から押出される。このとき、前記チャック 64は開閉機構 70により開閉作動 され、ダイス 46から押出される素材を把持する。なお、上流側のチャック 64では、切 断手段 16から線材により押出される次の素材が把持される。
[0022] 以上の動作を、ダイス 46の配設数だけ繰返すことで、最終的な形状に成形された 製品が得られる。
[0023] 次に、オーダチェンジにより異なる製品を製造する場合は、前記切断手段 16、多段 圧造手段 18、押出し手段 20および移送手段 22に対する各駆動系の連結状態を解 除する。すなわち、切断手段 16に関しては、前記連結ピン 42を取外して往復移動体 34とリンク部材 40との連結を解除する。また多段圧造手段 18に関しては、前記規制 部材 56を取付台 14から取外して、前記ラム往復駆動用アーム 50をラム 52から離間 させる。更に、移送手段 22に関しては、揺動機構 68における連結部材 78を取外し て作動杆 74と駆動部材 76との連結を解除すると共に、開閉機構 70におけるクラッチ 84の連結状態を解除することで、カム機構 80と駆動軸 82との連結を解除する。なお 、押出し手段 20に関しては、前記蹴り出しレバー 62を後退位置に位置決めすること で、プッシヤー 60に対して非当接状態とする。これにより、装置フレーム側の駆動系 と、取付台 14に搭載されている切断手段 16、多段圧造手段 18、押出し手段 20およ び移送手段 22との連結状態は全て解除される。
[0024] この状態で、前記油圧シリンダ 28を付勢して被係合部材 26を係合解除位置に移 動することで、該被係合部材 26と取付台 14の係合部材 24との係合状態は解除され 、該取付台 14は装置フレーム 12から取外し可能となる。この取付台 14は、図示しな いチェンブロック等の吊下げ手段を用いて台取付部 30から吊り上げて取外し、外部 の交換台等に載置する。次い、予め芯出し等の各種調整を行なった新たな製品に対 応する切断手段 16、多段圧造手段 18、押出し手段 20および移送手段 22が搭載さ れている取付台 14を、吊下げ手段を用いて装置フレーム 12の台取付部 30に載置
する。この状態で、前記油圧シリンダ 28を付勢して被係合部材 26を係合解除位置か ら係合位置に移動することで、該被係合部材 26が取付台 14の係合部材 24に係合し 、当該取付台 14は装置フレーム 12に位置決め固定される。なお、被係合部材 26を 油圧シリンダ 28の付勢力によって係合部材 24に係合させることで、取付台 14は装 置フレーム 12の規制面 30aに自動的に当接するようになるから、正確な位置決めが 達成される。
[0025] すなわち、製品毎に対応する切断手段 16、多段圧造手段 18、押出し手段 20およ び移送手段 22が搭載されている取付台 14を複数用意しておけば、オーダチェンジ に際しては取付台 14の交換を行なうだけでよぐ現場での各手段の調整作業を省略 すること力 Sできる。し力、も、装置フレーム 12に対する取付台 14の取外しおよび取付け は、油圧シリンダ 28を付勢するだけでよぐ複数のネジ等を緩み外したり締付ける煩 雑で時間の掛カ 作業を不要とし、段取り時間を短縮して生産能率を向上することが できる。
[0026] 実施例では、被係合部材を係合部材に対して移動する作動手段として油圧シリン ダを挙げたが、エア等、他の流体を用いるシリンダ、あるいはネジ軸を正逆回転する ことで被係合部材を係合位置と係合解除位置との間を移動する構成、その他各種の 手段を採用し得る。この場合に、ネジ軸は、手動あるいはモータ等の駆動手段により 回転することが可能である。