明 細 書 表示物とこれを用いるマッサージ施術教示方法及びマッサージ施術方法 技術分野
本発明は、 表示物、 マッサージ施術教示方法及びマッサージ施術方法に係 リ、 より詳細には、 マッサージ施術教示の外、 皮膚治療手技教示や皮膚病態診 断法教示などに際して教材として利用することができる表示物、 この表示物を 用いてマッサージ施術を教示するマッサージ施術教示方法、 及びマッサージ施 術方法に関する。 背景技術
マッサージは皮膚を擦過する手技による美容行為であって、 その効果と し ては、 遅滞した血流の改善、 心地良さの具現、 ムクミの改善といったものが既 に知られている。 しかし、 その手技の効果は、 施術者の技量により大きく異な リ、 効果具現のメカニズムについて、 未だ、 知られていない部分がある。 この 為、 施術の手技を標準化し、 その効果が一定に行われるようにする努力がなさ れている。 この様な標準化の例としては、 目頭、 眉頭の浅いくぼみにあるッポ を押し、 脂肪の代謝を高める技術 (例えば、 特許文献 1参照) や、 毛細血管生 成抑制成分を含有する化粧料を用いて、 「なでる」、 「たたく」 等の施術を行う マッサージ技術 (例えば、 特許文献 2参照) がある。 また、 風呂上がりに崩壊 性粒子を含有する化粧料を用いて、 動脈の血流方向に、 次いで静脈の血流方向 に擦過を行うマッサージ技術 (例えば、 特許文献 3参照) や、 膨張性を有する 袋体を膨張、 次いで、 収縮させる工程を繰り返し、 血管を圧迫し、 血流を改善 するマッサージ技術 (例えば、 特許文献 4参照) が知られている。 しかしなが ら、 ただ単に血管を圧迫しただけでは、 血管自体に伸縮性がある為、 弁によつ て血流がせき止められ、 決して血流を改善することが出来ない。 この様な施術
に於いても施術者の技量による差は大きく、 マッサージ効果に係る因子がまだ 隠れていると思われる。
一方、皮膚付近の血管の構造に於いて、その血管分布については、例えば、 非特許文献 1 や非特許文献 2に示されており、 血管が存在する位置の概念につ いては既に公知となっているが、 静脈血管における弁の存在位置等の、 その血 流の制御の機構や血液の大まかな流路については殆どが未知と言って良く、 皮 膚表面に近い位置に於ける、 血流の実態を踏まえた、 静脈血管の解剖学的な解 明は為されていなかった。 また、 この様な皮膚表面に近い位置に於ける、 血流 の実態状況がマッサージの施術やその効果に大きな影響を与えるであろうこ とは推定だにされていなかった。 更に、 かかる状況を綿密に検討して、 マッサ ージの施術の指導、 教示に生かそうとする試みも全く為されていなかった。
【特許文献 1】 特開 2 0 00— 1 1 9 1 5 7号公報
【特許文献 2】 特開 2 0 0 1 — 3 7 5 4 2号公報
【特許文献 3】 特開平 1 0— 1 1 3 3 7 0号公報
【特許文献 4】 特開平 7— 1 7 1 1 8 4号公報
【非特許文献 1】 G r a y' s A n a t o m y 3 8 t h e d . W i l l i a m s P L e t a l . C h u r c h i l l L i v i n g s t o n e .
【非特許文献 2】 T h e a r t e i a l a n a t o m y o f t h e s k i n f l a p C o r m a c k G C e t a I . C h u r c h i I i し i v i n g s t o n e . 本発明は、 上述のような問題に鑑みなされたものであり、 皮膚表面に近い 位置に於ける血流の実態を踏まえ、 静脈血管の解剖学的な解明を行い、 得られ た解剖学的新知見に基き、 マッサージ施術、 皮膚治療手技や皮膚病態診断法等 の教示などに際して教材として利用することができる表示物を提供すること
を目的とする。また、施術者によって効果のバラツキが少なくなるような手段、 すなわち、 このような表示物を用いるマッサージの施術方法、 及びマッサージ 施術の教示説明の方法を提供することを目的とする。 発明の開示
上記目的を達成するため、 本発明における表示物は、 皮膚の静脈血管及び この静脈血管における弁の存在状態を含む皮膚の解剖学的特徴を表示する第 1の表示物を備えることを特徴とする。 このような表示物において、 第 1 の表 示物は; 皮膚の静脈血管が、 動脈に伴走しない非伴行静脈が真皮直下で形成す る真皮直下静脈網の血管と、 この真皮直下静脈網から表皮側に立ち上がる細い 血管とを含み; 弁が、 真皮直下静脈網から立ち上がる細い血管の基部に存在す る弁を含むことが好ましく、 また、 第 1 の表示物は; 皮膚の静脈血管が、 動脈 に伴走しない非伴行静脈が真皮直下で形成する真皮直下静脈網の血管と、 真皮 直下静脈網から表皮側に立ち上がる細い血管とを含み; 弁が、 真皮直下静脈網 の血管の分岐部浅層側に存在する弁を含むことが好適である。 さらに、 第 1 の 表示物は; 皮膚の静脈血管が、 動脈に伴走しない非伴行静脈が真皮深層で形成 する真皮深層静脈網の血管と、 前記真皮深層静脈網から表皮側に立ち上がる細 い血管とを含み; 弁が、 真皮深層静脈網から立ち上がる細い血管の基部に存在 する弁と、 真皮深層静脈網の血管の分岐部浅層側に存在する弁とを含むことが 好ましい。
また、 第 1 の表示物は; 皮膚の静脈血管が、 動脈に伴走しない非伴行静脈 が真皮深層及び 又は真皮直下で形成する真皮深層静脈網及び 又は真皮直 下静脈網の血管と、 真皮深層静脈網及び 又は真皮直下静脈網の血管から延び て、 動脈と伴走する伴行静脈の血管及びノ又は皮下脂肪層深層の非伴行静脈の 血管に合流する静脈網集合皮静脈の血管とを含み; 弁が、 静脈網集合皮静脈の 血管における伴行静脈の血管への合流部浅層側及びノ又は皮下脂肪層深層の 非伴行静脈の血管への合流部浅層側に存在する弁を含むことが好適である。
上述のような表示物では、 第 1 の表示物における表皮、 真皮及び真皮直下 部分の静脈血管及びこの静脈血管における弁の存在状態を含む皮膚の解剖学 的特徴を拡大表示する第 2の表示物を含んでなることが好ましい。 また、 第 2 の表示物において ; 静脈血管が、 動脈に伴走しない非伴行静脈が真皮深層及び /又は真皮直下で形成する真皮深層静脈網及び/又は真皮直下静脈網の血管 と、 真皮深層静脈網及び/又は前記真皮直下静脈網の血管から表皮側に立ち上 がる細い真皮層細血管と、 真皮層細血管から分岐して表皮直下で形成する表皮 直下細静脈網の血管と、 表皮直下細静脈網の血管から表皮乳頭に向けて立ち上 がる細い血管とを含み; 弁が、 真皮深層静脈網及び/又は真皮直下静脈網の血 管から立ち上がる真皮層細血管の基部に存在する弁を含むことが良い。
さらに、 人体の全体もしくは一部についての外観表示上に、 皮膚の静脈血 管及びこの静脈血管における弁の存在状態を示した第 3の表示物を含んでな ることが好ましい。 また、 人体の全体もしくは一部についての外観表示上に、 リンパ管の存在状態を示した第 4の表示物を含んでなることが良く、 さらに、 人体の全体もしくは一部についての外観表示上に、 皮膚内及び Z又は皮膚組織 下における筋の存在状態を示した第 5の表示物を含んでなることが好ましく、 さらにまた、 人体の全体もしくは一部についての外観の表示上に、 ッポの存在 状態を示した第 6の表示物を含んでなることが好適である。 そして、 前記第 3 乃至第 6の表示物のいずれかの表示物表示上に、 皮膚組織下における骨の存在 状態を追加表示しても良い。
上記目的を達成するため、 本発明によるマッサージ施術教示方法は、 上述 のような表示物をマッサージ施術の教材として用いることを特徴とする。 この マッサージ施術教示方法においては、 マッサージ施術が; 皮膚で滞留している 血液循環を改善するためのマッサージ施術であることが好ましく、 また、 マツ サージ施術が; 動脈に伴走しない非伴行静脈が、 真皮深層及びノ又は真皮直下 で形成する真皮深層静脈網及び/又は真皮直下静脈網から立ち上がる細い血 管を、 その静脈網に向かって押す施術 (A ) を備えることが良く、 さらに、 マ
ッサージ施術が; 施術 (A) の後段において、 真皮深層静脈網及ぴノ又は真皮 直下静脈網の血液を集める静脈網集合皮静脈に向かって、 深層静脈網及び/又 は真皮直下静脈網を順次圧迫する施術 (B) を含んでなることが良く、 さらに また、 マッサージ施術が ; 施術 (A)、 (B) の後段において、 静脈網集合皮静 脈を中枢に向かって圧迫する施術 (C) を含んでなることが好適である。 そし て、 マッサージ施術が; 施術 (A) より強い圧迫力で施術 (B) を行い、 施術 (B) より強い圧迫力で施術 (C) を行うマッサージ施術であることが好まし く、 また、 施術 (A) の前段又は施術 (A) と同時に、 マッサージ施術を行う 対象部位の皮膚表面にクリームを軽擦塗布することが良く、 さらに、 マッサ一 ジ施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するリンパ管及びノ又は 筋を圧迫又は摘む施術を含んでなることが好ましく、 さらにまた、 マッサージ 施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するッポを刺激する施術を 含んでも良い。
上記目的を達成するため、 本発明によるマッサージ施術方法は、 皮膚の静 脈血管及びこの静脈血管における弁の存在状態を含む皮膚の解剖学的特徴に 基き、 皮膚で滞留している血液循環を改善するためのマッサージ施術の方法で あって、 動脈に伴走しない非伴行静脈が、 真皮深層及び/又は真皮直下で形成 する真皮深層静脈網及び 又は真皮直下静脈網から立ち上がる細い血管を、 そ の静脈網に向かって押す施術 (A) を備えることを特徴とする。 このようなマ ッサージ施術方法では、 施術 (A) の後段において、 真皮深層静脈網及び/ "又 は真皮直下静脈網の血液を集める静脈網集合皮静脈に向かって、 深層静脈網及 び 又は真皮直下静脈網を順次圧迫する施術 (B) を含んでなることが好まし く、 また、 施術 (A)、 (B) の後段において、 静脈網集合皮静脈を中枢に向か つて圧迫する施術 (C) を含んでなることが良く、 さらにここでは、 施術 (A) より強い圧迫力で施術 (B) を行い、 施術 (B) より強い圧迫力で施術 (C) を行うマッサ一ジ施術であることが好適である。 そして、 上述のようなマッサ ージ施術方法では、 施術 (A) の前段又は施術 (A) と同時に、 マッサージ施
術を行う対象部位の皮膚表面にクリームを輊擦塗布することができ、 また、 マ ッサージ施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するリンパ管及び 又は筋を圧迫又は摘む施術を含んでなることが好ましく、 さらに、 マッサ一 ジ施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するッポを刺激する施術 を含んでなることが好適である。
本発明の表示物によれば、 皮膚表面に近い位置に於ける血流の実態を明ら かにする血管の解剖学的な新知見、 即ち、 皮膚の静脈の立体構造及び皮膚静脈 血管における弁の存在状態の表示を含んでいるので、 効果的な新規マッサージ の施術方法、 皮膚治療手技や皮膚病態診断法等をマッサージ施術者や医師など の被教示者に確実に理解させることができる。また、動脈と伴走しない静脈が、 真皮直下及び/又は皮膚内で形成する静脈網と、 この静脈網から立ち上がる細 い血管と、 この細い血管の基部に存在する弁とを表示した第 1 の表示物と共に, 表皮、 真皮及び真皮直下部分の静脈血管及びこの静脈血管における弁の存在状 態を含む皮膚の解剖学的特徴を拡大表示する第 2の表示物を併せて教材に用 いた場合には、 皮膚の静脈及び静脈血管の弁の存在状態や血流の実態をより詳 細明確に理解させることができる。
本発明のマッサージ施術教示方法によれば、 上述した皮膚の解剖学的特徴 を表示した表示物を教材として用いるものであり、 このような表示物は、 これ まで全く世に存在していなかったことから、 これをマッサージ施術方法の説明 に加えることにより、 施術者に皮膚表面に近い位置に於ける血流の実態を確実 に理解させ、 実効性の高いマッサージ施術の教示をすることができる。 また、 このような教示法によリ、 マッサージ施術の根本的要点が容易に理解されるこ とから、 施術者の技術にバラツキが少なくなる。
本発明のマッサージ施術方法は、 真皮直下で形成する静脈網から立ち上が る細い血管を、 その静脈網に向かって押す施術を行った後、 動脈と伴走しない 真皮直下の静脈網の血液を集める静脈 (静脈網集合皮静脈) に向かって、 静脈 網を順次圧迫する施術を行い、 最後に皮下深層に存在する静脈網を集めた静脈
を、 中枢に向かって圧迫する新規な施術方法であり、 これを行うことにより、 施術者が誰であっても優れた効果を発揮することができる。 図面の簡単な説明
第 1 図は、 第 1の実施形態における表示物を示した説明図であり、 第 2図は、 第 2の実施形態における表示物を示した説明図であり、 第 3図は、 第 3の実施形態における表示物 (顔の正面) を示した説明図で あり、
第 4図は、 第 3の実施形態における表示物 (顔の側面) を示した説明図で あり、
第 5図は、 第 4の実施形態における表示物 (顔の側面) を示した説明図で あリ、
第 6図は、 第 5の実施形態における表示物 (顔の正面) を示した説明図で あり、
第 7図は、 第 5の実施形態における表示物 (顔の側面) を示した説明図で あり、
第 8図は、 第 6の実施形態における表示物 (顔の正面) を示した説明図で あり、
第 9図は、 第 6の実施形態における表示物 (顔の側面) を示した説明図で あり、
第 1 0図は、 第 9の実施形態における表示物 (手及び前腕の静脈) を示し た説明図であり、
第 1 1図は、第 9の実施形態における表示物(手掌側の手及び前腕の静脈) を示した説明図であり、
第 1 2図は、第 9の実施形態における表示物(手背側の手及び前腕の静脈) を示した説明図であり、
第 1 3図は、第 9の実施形態における表示物(手掌側の手及び前腕の筋肉)
を示した説明図であり、
第 1 4図は、 マッサージ施術方法の第 1段階を示した説明図であり、 第 1 5図は、 マッサージ施術方法の第 2段階を示した説明図であり、 第 1 6図は、 マッサージ施術方法の第 3段階を示した説明図であり、 第 1 7図は、 マッサージ施術方法の第 4段階を示した説明図であり、 第 1 8図は、 マッサージ施術方法の第 5段階を示した説明図であり、 第 1 9図は、 マッサージ施術方法の第 6段階を示した説明図であり、 第 2 0図は、 マッサージ施術方法の第 7段階を示した説明図であり、 第 2 1図は、 マッサージ施術方法の第 8段階を示した説明図であり、 第 2 2図は、 マッサージ施術方法の第 9段階を示した説明図であり、 第 2 3図は、 マッサージ施術方法の第 1 0段階を示した説明図であり、 第 2 4図は、 マッサージ施術方法の第 1 1段階を示した説明図であり、 第 2 5図は、 マッサージ施術方法の第 1 2段階を示した説明図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明による表示物とこれを用いるマッサージ施術教示方法及びマ ッサージ施術方法について最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。 本発 明による表示物の利用対象として、 ここでは、 主に、 マッサージ施術方法およ ぴマッサージ施術教示方法の場合を中心に説明するが、 例えば、 皮膚治療手技 や皮膚病態診断法等の教示などの外、 広範な教材として利用可能である。
〔第 1の実施形態〕
第 1 図は、 第 1の実施形態における第 1の表示物 1 0であり、 皮膚の表面 から深部にかけて皮膚の静脈血管及びこの静脈血管における弁を示したもの である。 本第 1 の実施形態では、 第 1の表示物 1 0には、 動脈 7に伴走する静 脈 (伴行静脈 3 ) と'、 伴走しない静脈 (非伴行静脈 4 ) が表示されており、 非 伴行静脈 4の多くは真皮直下 (もしくは真皮深層) で、 血管径の比較的太い真 皮直下 (もしくは真皮深層) の静脈網 (第 1 図中、 血管 A、 B、 Cを含む部分)
を形成していることが表示されている。 また、 真皮直下 (もしくは真皮深層) の静脈網内の血液が浅層へ逆流するのを防ぐように、 真皮直下 (もしくは真皮 深層) の静脈網から立ち上がる細い血管 1 の基部に弁 1 a (図中、 ァスタ リス クマークで示す) の存在が示されている。
—方、 皮膚の深層、 すなわち、 皮下脂肪層には、 上述した真皮直下の静脈 網を集めるような太い血管 2 (静脈網集合皮静脈) が存在していることが表示 され、 この静脈網集合皮静脈 2が皮下脂肪層を斜めに下降して行き、 伴行静脈 3あるいは皮下脂肪層深層に独立して存在する太い非伴行静脈 4 (通常皮膚面 に平行に比較的長く走行している) に合流していることが表示されている。 さ らに、 真皮直下の静脈網 (第 1 図中血管 A , B、 Cを含む部分) の網の目の一 辺から垂直に下降する血管 5があり、 この血管 5は皮下脂肪深層にある非伴行 静脈 4、 あるいは皮膚に栄養を補給する動脈 7の伴行静脈 3、 あるいは筋膜下 にある比較的太い伴行静脈 (図省略) に合流している。
皮下脂肪深層にある太い非伴行静脈 4と筋膜下の伴行静脈の間には、 比較 的太い交通枝が見られる部位もある。 真皮直下に横たわる真皮直下の静脈網の 網の目の大きさや配列は身体各部位で異なっており、 網の目を集める静脈、 皮 下脂肪深層の太い皮静脈の分布なども身体各部位で各々特徴ある構造や分布
(図省略) を呈している。 また、 上述した細い血管 1 の基部に存在する弁 1 a の他にも、 静脈系には多くの弁が存在し、 真皮直下の静脈網の血管の分岐部浅 層側に存在する弁 2 a (図中、 アスタリスクマークで示す) や、 静脈網集合皮 静脈 2の血管における伴行静脈の血管への合流部浅層側に存在する弁 3 a (図 中、 アスタリスクマークで示す) 皮下脂肪層深層め非伴行静脈の血管 4への合 流部浅層側に存在する弁 4 a (図中、 アスタ リスクマークで示す) が存在し、 血液の流れを方向付けている。 尚、 第 1 図中、 矢印は、 血液の流れる方向を表 示している。
以上のような静脈系の立体的構造から、 真皮に栄養を補給した血液は、 ま ず静脈網から立ち上がる細い血管 1 に流入し、 それから真皮直下 (一部は真皮
深層) の静脈網に流れ込みここでプールされ、 網の目を集めるような血管 2あ るいは網の目の一辺から垂直に下降する血管 5を介し、 さらに部位により、 皮 下脂肪深層の非伴行静脈 4を介し、 深部の伴行静脈 3に送られ、 最終的には心 臓に戻されることが理解される。
〔第 2の実施形態〕
第 2図は、 第 2の実施形態としての第 2の表示物を示し、 第 1 図の表示物 1 0における表皮、 真皮及び真皮直下部分の静脈血管と、 この静脈血管におけ る弁の存在状態を含む皮膚の解剖学的特徴を拡大表示したものである。 本第 2 の実施形態では、 第 2の表示物 2 0には、 真皮直下 (もしくは真皮深層) の静 脈網における血管 (A、 B、 C ) から、 表皮に向かい多数の細い血管 1 が立ち 上がり、 分岐しながら表皮直下に向かっていることが表示され、 この多数の細 い血管 1 から表皮直下で、 さらに細かい血管 1 1 で静脈網を形成し、 表皮乳頭 に向けさらに細い血管 1 2で静脈網を形成していることが表示されている。 即 ち、 動脈に伴走しない非伴行静脈血管が、 真皮直下 (もしくは真皮深層) に示 され、 真皮直下静脈網 (もしくは真皮深層静脈網) を形成し、 それぞれの血管 から表皮側に細い血管 1 (真皮層細血管) が立ち上がり、 表皮直下で表皮直下 細静脈網を形成すると共に、 表皮直下細静脈網の血管から表皮乳頭に向けてさ らに細い血管が立ち上がつていることが表示されている。 弁 1 aは、 真皮直下 静脈網 (もしくは真皮深層静脈網) の血管から立ち上がる細い真皮層細血管の 基部に表示されている。
〔第 3の実施形態〕
第 3図及び第 4図は、 第 3の実施形態における第 3の表示物であり、 人体 の全体もしくは一部として、 顏面の外観表示上に皮膚の静脈血管及びこの静脈 血管における弁の存在状態を示したものである。 本第 3の実施形態では、 第 3 の表示物として表示物 3 0 (顔の正面) 及び表示物 3 1 (顏の側面) を含んで いる。 この第 3の表示物 3 0、 3 1 は、 第 1の表示物 1 0及び第 2の表示物 2 0と共に、 顔面マッサージの施術方法を説明するための基礎となり有用である c
以下、 第 3の表示物 3 0、 3 1 について詳述する。
第 3の表示物 3 0 (顔の正面) 及び第 4の表示物 3 1 (顔の側面) には、 頸部 Dから眼窩を周リ耳の付け根部分 Eに至る略 U字形の静脈 1 5が表示さ れている。 この略 U字形の静脈 1 5は、 基本的に表情筋 (後述する) より深い 所を走行しており、 図中 Dで示した一方が頸部の太い静脈に合流し、 他方は、 耳の付け根部分 Eのところから、 深く走行、 下降し、 同様に頸部の太い静脈に 合流する。 また、 略 U字形の静脈 1 5からは、 深部に向かい比較的太い静脈が 出ており、その部位は、内眼角部 I 、眉毛の外側端から一横指耳よりの部位 J、 外眼角と耳の付け根を結ぶ線の中央部 Kの 3力所である。
因みに、 顔面においては、 真皮より浅い所に存在する静脈が、 真皮直下の 静脈網と、 そこから立ち上がる細い静脈より構成 (第 1 図及び第 2図参照) さ れている。 そして上述した真皮直下の静脈網と略 U字形の静脈 1 5とは、 網状 の静脈を集める血管、 即ち静脈網集合皮静脈を介して連結されている。 また、 静脈にはその血流方向を規制する弁が存在する。 即ち、 弁は、 静脈網から細い 静脈が立ち上がる所、 網状の静脈を集める静脈が略 U字形静脈 1 5に流れ込む 所 (図中、 アスタ リスクマークで示す)、 及び、 略 U字形静脈 1 5内に存在す る。 この弁の向きにより静脈血の流れる方向 (図中、 矢印で示す) が決まって お y、 施術者に対して、 顔面皮膚における各位置の血流の実態について確実に 理解させ得る。
この第 3の表示物 3 0、 3 1には、 さらに、 顔面の骨に関し、 脳からの 3 つの神経が頭蓋の外に出るための 3つの孔が表示されている。 3つの孔は、 そ れぞれ、おでこ(前額)の知覚の神経である眼窩上神経が出てくる眼窩上孔 、 眼窩下神経が出てくる眼窩下孔6、 ォトガイ神経が出てくる下顎骨のォ トガイ 部にあるオトガイ孔 Hである。 尚、 3つの神経 (眼窩上神経、 眼窩下神経、 ォ トガイ神経) は、 もともとは三叉神経 (眼神経、 上顎神経、 下顎神経) と呼ば れる神経から枝分かれして出てきているものであり、 顏面の上、 中、 下 1 / 3 ほどづつ支配し、皮膚の知覚を支配する。また、第 3の表示物 3 0、 3 1 には、
顔面の外観表示上に、 皮膚組織下における骨の存在状態が表示されており、 こ れにより、 皮膚の静脈血管及びこの静脈血管における弁の存在状態との位置関 係を確認可能であり、 よリ効果的にマッサ一ジ施術の教示ができる点で好まし い。
〔第 4の実施形態〕
第 5図は、第 4の実施形態における第 4の表示物 4 0 (顔の側面)であり、 人体の全体もしくは一部として、 顔面の外観表示上に、 リンパ管の存在状態か らリンパ液の流れを表示したものである。 本第 4の実施形態では、 第 4の表示 物 4 0は、 リンパ液を流しているリンパ管の存在状態が概略矢印 1 6で表示さ れている。 リンパ液は基本的に静脈の流れに沿ってマッサージすることで、 リ ンパの流れも促進できていることが理解され、 この第 4の表示物 4 0は、 第 1 の表示物 1 0及び第 2の表示物 2 0と共に、 顏面マッサージの施術方法を説明 するための補助的な表示物として有用である。
〔第 5の実施形態〕
第 6図及び第 7図は、 第 5の実施形態における第 5の表示物であり、 人体 の全体もしくは一部として、 顏面の外観表示上に、 皮膚内及び 又は皮膚組織 下、 ここでは皮下組織内における筋の存在状態を示したものである。 本第 5の 実施形態では、第 5の表示物として表示物 5 0 (顔の正面)及び表示物 5 1 (顏 の側面) を含んでいる。 この第 5の表示物 5 0、 5 1 では、 顔面の表情筋が表 示されており、 顔面マッサージの際には、 このような表情筋の繊維の方向や作 用について施術者に理解させるために有用であると共に、 このような筋と醉脈 との位置関係が確認可能であり、 より効率的なマッサージ施術の教示に役立つ < 以下、 各部位の表情筋及びその作用を表 1 に示す。
【表 1】
因みに、 顔面の基本的な構造は、 深部よ y骨 (こつ)、 咀嚼筋 (そしゃく きん)、 表情筋を容れた脂肪組織 (脂肪筋膜組織)、 皮膚から構成されている。 表情筋を容れた脂肪組織とは、 表情筋が基本的には脂肪組織の層でサンドィッ チされた状態にあることである。 このような状態で、 表情筋の下の脂肪組織層 はずるずる動き滑りやすい構造となっている一方、 表情筋よリ上の脂肪組織層 は真皮としっかりとく っついている。 この構造により、 表情筋そのものは下の 骨格に対して動きやすく、 また表情筋の動きが忠実に皮膚に伝わることがわか る
〔第 6の実施形態〕
第 8図及び第 9図は、 第 6の実施形態としての第 6の表示物であり、 人体 の全体もしくは一部として、 顔面の外観表示上に、 ッポの存在状態を表示した ものである。 本第 6の実施形態では、 第 6の表示物として表示物 6 0 (顔の正 面) 及び表示物 6 1 (顔の側面) を含んでいる。 また、 第 6の表示物 6 0、 6 1 に対応させて、 顔に存在する代表的なッポの場所、 関係する神経、 筋肉、 効 能について表 2に示す。
【表 2】
因みに、 顔面の皮膚知覚を支配している神経のおおもとは、 頭蓋内にある 三叉神経と呼ばれる神経である。 ッポの近くには必ずこのような皮神経の根本 があるとは限らないが、 ッポが顔面皮膚の知覚神経とも密接な関係がある。 し たがって、 このようなッポの位置を知ることは、 マッサージ施術においても重 要なことであり、 第 6の表示物 6 0 6 1 は、 第 1 の表示物 1 0及び第 2の表 示物 2 0と併せて、 マッサージの施術方法を教示説明するための補助的な表示 物として有用であると共に、 顔面皮膚における各位置の血流の改善に基くマツ サージ施術の効果との相乗的効果が期待される。
以上、 詳述したような本発明における表示物は、 シート、 ボード、 冊子、 フィルム、 スクリーン、 C R Tや液晶ディスプレイ、 (透明) 模型、 または、 これら 2種の組み合わせ等、 如何なる表示体に表示した表示物であっても良い。 表示方法についても、 印刷、 映写、 コンピュータによるディスプレイ等、 特に 限定されるものではない。 また、 この様な表示物は三次元的なイメージを想起 させるものが好ましい。 特に、 血管系のどこに弁が存在するかは、 滞留した血 液を心臓などの中枢循環系に戻す場合に、 どの様な施術を行えば良いかを、 施 術者に理解させる上で重要な示唆を与える。
尚、 本発明の表示物に於いて、 重要なものの一つには、 弁の存在を明確に することにある。 この為、 本発明の表示物では、 かかる弁を目立つ色で、 他の 部位と色分けして表示することが好ましい。 目立つ色としては、 赤が特に好適
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犛眷ぇ用紙(規則 26》
に例示できる。 更に、 その流れの方向性から、 本発明の表示に於いては動脈と 静脈を色分けして区別することが好ましい。 動脈と静脈の色分け表示では、 動 脈を赤、 静脈を青で表示するのが既に慣例になっているので、 これに従って表 示することが好ましい。 加えて、 弁の存する、 静脈網から立ち上がる細い血管 もマッサージの施術では、 第一に施術されるべき箇所となるので重要であり、 前記静脈網とは区別できる色で識別することが好ましい。 かかる色としては、 例えば、 静脈網と異なった明度、 彩度乃至は色相の青色が好ましい。
〔第 7の実施形態〕
本第 7の実施形態は、 上述した第 1乃至第 6の実施形態における表示物を 利用し、 マッサージ施術の教材として用いたマッサージ施術教示方法である。 このような表示物をマッサージ施術の教材として示した場合は、 施術者の理解 が早く、 且つ、 技術の深い習得が可能になる。 主なポイントは、 マッサージ施 術が、 皮膚で滞留している血液循環を改善するためのマッサージ施術であるこ とを理解させるものである。 また、 マッサージ施術が、 動脈に伴走しない非伴 行静脈が、 真皮深層及び 又は真皮直下で形成する真皮深層静脈網及ぴノ又は 真皮直下静脈網から立ち上がる細い血管を、 その静脈網に向かって押す施術 ( A ) であることを理解させるものである。
さらに、 マッサージ施術が、 上述した施術 (A ) の後段において、 真皮深 層静脈網及びノ又は真皮直下静脈網の血液を集める静脈網集合皮静脈に向か つて、 深層静脈網及びノ又は真皮直下静脈網を順次圧迫する施術 (B ) である ことを理解させるものである。 この際、 施術 (A )、 ( B ) の後段において、 静 脈網集合皮静脈を中枢に向かって圧迫する施術 (C ) を行うこと、 もしくは、 施術 (A ) より強い圧迫力で施術 (B ) を行い、 施術 (B ) より強い圧迫力で 施術 (C ) を行うことであることを理解させるものである。 また、 マッサージ 施術が、 施術 (A ) の前段又は施術 (A ) と同時に、 マッサージ施術を行う対 象部位の皮膚表面にクリームを軽擦塗布すること、 マッサージ施術を行う対象 部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するリンパ管及び/又は筋を圧迫又は摘む
施術を行うこと、 マッサージ施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在 するッポを刺激する施術を行うことが有効であることを理解させるものであ る。
本実施形態におけるマッサージ施術教示方法は、 本発明の表示物を教材と して用いて、 マッサージの施術を教示する方法であるが、 教示の内容は、 マツ サージ施術の他、 皮膚治療手技の方法や皮膚病態診断の方法などにも適用でき る。
〔第 8の実施形態〕
第 8の実施形態は、 上述した第 1乃至第 6の実施の形態における表示物を 利用したマッサージ施術の方法である。 この実施の形態におけるマッサージ施 術の方法は、 皮膚の静脈血管及びこの静脈血管における弁の存在状態を含む皮 膚の解剖学的特徴に基き、 皮膚で滞留している血液循環を改善するためのもの であり、 動脈に伴走しない非伴行静脈が、 真皮深層及び 又は真皮直下で形成 する真皮深層静脈網及び/又は真皮直下静脈網から立ち上がる細い血管を、 そ の静脈網に向かって押す施術 (A ) を備える。 また、 施術 (A ) の後段におい て、 真皮深層静脈網及び 又は真皮直下静脈網の血液を集める静脈網集合皮静 脈に向かって、深層静脈網及び/又は真皮直下静脈網を順次圧迫する施術(B ) を含み、 施術 (A )、 ( B ) の後段において、 静脈網集合皮静脈を中枢に向かつ て圧迫する施術 (C ) を含む。 このようなマッサージ施術方法において、 施術 ( A ) より強い圧迫力で施術 (B ) を行い、 施術 (B ) より強い圧迫力で施術 ( C ) を行うこと、 施術 (A ) の前段又は施術 (A ) と同時に、 マッサージ施 術を行う対象部位の皮膚表面にクリームを軽擦塗布すること、 マッサージ施術 を行う対象部位の皮膚又は皮膚組織下に存在するリンパ管及びノ又は筋を圧 迫又は摘む施術を含むこと、 マッサージ施術を行う対象部位の皮膚又は皮膚組 織下に存在するッポを刺激する施術を含むことは、 それぞれ有効である。
因みに、 マッサージ施術を行う際には、 静脈血を効果的に心臓に戻すこと を心がけるべきであり、 以下にその要点を示す。 即ち、 ( 1 ) 真皮に栄養を補
給した血液を真皮直下にある静脈網に効果的に集める。 ( 2 ) 静脈網にプール された血液を静脈網を集める血管に沿って中枢 (心臓) に効果的に流す。 (3 ) 皮下脂肪深層に皮静脈がある場合、 この中の血液をさらに中枢に効果的に流す, ( 4 ) 弁の向きを考慮する。
ここで、 ( 1 ) の事項に関しては、 細い血管 1 (第 1 図、 第 2図参照) が 静脈網 (第 1 図、 第 2図の A、 B、 C ) から多数立ち上がっているので、 皮膚 面に垂直に深部に向かう圧力を徐々に加えることにより、 血液は静脈網に向か い押され、 しかも弁の存在のために、 真皮内には血液は逆流せず、 静脈網内に プールされることとなる。
( 2 )の事項に関しては、静脈網は真皮直下あるいは真皮深層にあるので、 より強い力で、 静脈網を集めるような静脈 (第 2図の血管 2 ) に向かって静脈 網を順次圧迫していきその延長上で集める血管を順次圧迫していく。 また、 強 い圧迫力を加えることによリ静脈網の一辺から垂直に降りる血管 (第 2図の血 管 5 ) に血液を押し出すようにしてもよい。
( 3 ) の事項に関しては、 皮下脂肪層深層の非伴行静脈の血管 (第 2図の 血管 4 ) が皮下脂肪層の深層にあるので、 より強い力でこの血管を中枢に向か う方に圧迫していく。 これにより、 血液は、 この血管の中を心臓に向かい送ら れるのと同時に、 この皮静脈と深部にある伴行静脈の交通枝の中に、 皮静脈内 の血液を押し出す働きも得られることとなる。
( 4 ) の事項に関しては、 特に静脈網内の弁の方向、 皮下脂肪深層の太い 皮静脈内の弁の方向が重要となってくる。 従来、 この方向性に関し、 皮膚表面 から見た心臓までの最短距離の方向のみしかィメージできないものであった。 従って、 このイメージのみで考えると背中において心臓方向というと肩を越え て心臓に向かう方向なのか、 また腋の下を通って心臓に向かう方向なのか分ら なくなってしまうという問題があった。 しかし、 本実施の形態における心臓方 向は、 皮膚上での心臓までの最短経路を指すものではなく、 静脈血が心臓に向 かって流れていく方向のことである。 即ち、 皮膚の静脈系を 2次元的な構造と
して捉えるのではなく、 3次元的な構造と して捉えることである。 尚、 当然身 体各部位によって、 皮静脈の立体的構造には特徴があることから、 各部位の皮 膚の形状や面積によって、 身体各部位に応じたマッサージ施術の方法があり、 それぞれ施術対象部位に応じて適宜変更することができる。
〔第 9の実施形態〕
第 9の実施形態は、 手及び前腕に関するものである。 以下、 手及び前腕に 関する表示物とこれを用いるマッサージ施術教示方法及びマッサージ施術方 法について説明する。 第 1 0図、 第 1 1 図、 第 1 2図は、 第 9の実施形態にお ける表示物 H 1、 H 2、 H 3である。 表示物 H 1 は、 手や前腕に存在する皮静 脈の一部を示したものであり、 皮膚の比較的浅いところの静脈である。 この静 脈は、 第 1 図において血管 A , B、 Cで示した非伴行静脈と同一の範疇にある ものであり、 真皮直下において血管径の比較的太い静脈網を形成している。 従 つてこの静脈網の 3次元的構造は、 基本的には、 第 1及び第 2の実施形態にお ける第 1 の表示物及び第 2の表示物の場合と同様であり、 予め、 これら第 1 の 表示物及び第 2の表示物を教材と して用いてマッサージ施術を教示すること が好適である。
真皮直下の静脈網は、 皮下脂肪組織深層を長く走行する太い皮静脈 (尺側 皮静脈 1 8もしくは橈側皮静脈 1 9 ) と吻合していることから、 これらの太い 皮静脈に集められる。 このことは、 第 3の実施形態における第 3の表示物の場 合とほぼ同一であり、 皮下脂肪組織深層を長〈走行する太い皮静脈は、 顏面の 略 U字形静脈に相当する。 そして、 上記尺側皮静脈 1 8および橈側皮静脈 1 9 の 2本が作る略 U字形の静脈 (ループ) は、 第 1 2図の表示物 H 3で示したよ うに手のひらの裏側 (手背側) で顕著に示されている。 第 1 1図の表示物 H 2 は、 手のひら側 (手掌側) を示したものであるが、 尺側皮静脈 1 8および橈側 皮静脈 1 9の 2本は、 主には肘窩 (ちゅうか : 肘のでっぱりの裏側) 近傍で、 深部の静脈(図中、記号しで示す) に吻合するものとなっている。その他、 所々 でこの静脈網から枝 (図中、 記号しで示す) が下降し、 深部の静脈と吻合して
いる。 手における静脈網は手背と手掌でその形態は異なるが、 それぞれの面で 前腕の静脈網と連続している。
手、 前腕の静脈においても弁 (図中、 アスタ リスクマークで示す) は存在 し、 顔面より発達している。 その方向 (図中、 矢印で示す) は概ね肩の方向が 順行性となっている。 静脈は前腕の薄い皮膚皮下脂肪組織内でも立体的構造を 示しており、 浅い静脈が深い静脈に吻合するところにも存在し、 この向きは前 腕を 2次元的に表面からみた場合、 必ずしも肩方向となっているわけではない < 因みに、 静脈網を集める静脈、 皮下脂肪深層の太い静脈および弁の方向から、 手、 前腕における静脈の基本的な還流経路は、 第 1 1図及び第 1 2図に示すと おりである。
第 1 3図は、 手及び前腕の筋肉に関する表示物 H 4を示したものである。 マッサージ施術の際には、 このような表示物 H 4によリ理解を深めておくのが よい。 即ち、 この第 1 3図には、 指を曲げたり伸ばしたりする筋肉の本体 (筋 体 N ) が前腕にあり、 その遠位端が腱 M (すじ) となり指の骨に付着している ことが表示され、 さらに、 これら腱 Mの指への付着は手掌、 手背両側とも指先 から一番目、 二番目の骨の根元となっていることが示されている。 尚、 指を曲 げる腱は手掌側に、 指を伸ばす腱は手背側を走行している。 尚、 図は省略する が、 前腕、 手にも、 皮膚皮下組織のリンパ管やッポがあり、 これらの場所につ いての知識についても理解を深めておくことが好ましい。 マッサージを施術す る際には、 例えば、 リンパ液の流れる方向は肩に向かう方向である。 したがつ て、 リンパ液は基本的に静脈の流れに沿ってマッサージすることで、 その流れ を促進する。 実施例
以下、 本発明による表示物とこれを教材として用いるマッサ一ジ施術教示 方法及びマッサージ施術方法について、 実施例、 試験例を示して具体的に説明 するが、 これによつて本発明を限定するものではない。
〔実施例 1〕
実施例 1 は、 第 1 乃至第 6の実施形態における第 1の表示物乃至第 6の表 示物に準じた表示物を利用したマッサージ施術方法の 1例である。 本マッサー ジ施術方法を教示する場合には、 予め、 第 1 図及び第 2図に示した第 1 及び第 2の表示物を教材として用い、 第 1及び第 2の実施形態に基き説明を行った上 で、 以下のマッサージ施術方法に関して教示する。 第 1 4図は、 マッサージ 施術方法の第 1段階 7 0を示したものであり、 クリームを塗布する段階である < このクリームを塗布する段階では、 図中 A O、 B O、 C O、 D O、 E Oの順番 で、 矢印で示した部位及び方向に軽くクリームの軽擦塗布を 3回行う。 この段 階は、 顔面全体に均等にクリーム塗布をするのが目的であるが、 同時に真皮内 の静脈血をループ静脈 (略 U字形の静脈 '第 3図、 第 4図参照) に、 またルー プ静脈に流し込んだ静脈血をその脚 (第 3図、 第 4図中、 Dもしくは Eで示さ れる。) に向かって大まかに流し込むという目的もある。 また、 顔面の静脈血 全体をざっと流し込むためのものであるから、 上述したような順番で心臓から 一番遠い前額部から行う。
第 1 5図は、 マッサージ施術方法の第 2段階 7 1 を示したものである。 こ の段階は、 ループ静脈から頸部に流れ込んだ静脈血をさらに心臓へ送る段階で ある。
その方法は、 第 1 1 図に示したように、 先ず、 下顎の下を 3本の指の腹で ォトガイ部から下顎角に向かって左右同時に 1回圧迫し (図中、 A 1で示す)、 次に、軽擦にて首をまんべんなく上から下へ 2往復させる(図中、 B 1で示す)。 これによリ、 顔面と頸部の境界である部位の静脈血をォトガイから順次中枢方 向へ絞り出していく。 即ち、 頸部に流れ込んだ静脈血を心臓に戻すマッサージ の方法である。 尚、 この段階は、 表情筋の一つである広頸筋をマッサージする 意味合いもある。
第 1 6図は、 マッサージ施術方法の第 3段階 7 2を示したものである。 こ の段階は、 咬筋のマッサージと顔面静脈の絞り出しを行う段階である。 晈筋の
マッサージは、 図中、 A 2で示したように、 両手を握った状態で顎先よリ頰全 体を大きい円を描〈要領で軽擦するものであり、 これにより、 咬筋のマッサ一 ジおよび表情筋の輊擦によるマッサージ効果が期待できる。 また、 図中、 B 2 で示したように、 耳の前から類骨隆起の下を通り、 鼻唇溝のやや外側を圧迫し ながら斜め下外側に移動させる。 これにより、 顔面のループ静脈の脚 D (第 3 図、 第 4図参照) に血液を集めこの脚 Dを絞っていく ことにより、 顔面皮膚に 栄養を補給した血液の中心的血管がきれいになる。
第 1 7図は、 マッサージ施術方法の第 4段階 7 3を示したものである。 こ の段階は、 目より下の皮膚、表情筋および脂肪のマッサージを行う段階である。 この段階は、 頰部、 鼻部、 上 ' 下顎にかけて約 1 5 ~ 2 0秒間バンスモンドウ ジャケッ トを行う段階 (図中、 Vの字マーク A 3で示す) であり、 皮膚、 表情 筋、 脂肪を摘むという動作によりマッサージを行う。 大きく摘むことで、 よし J 深部の組織に対するマッサージとなる。
第 1 8図は、 マッサージ施術方法の第 5段階フ 4を示したものである。 こ の段階は、 眼周囲のマッサージを行う段階である。 この段階では、 先ず、 目頭 A 4、 眉尻 B 4、 こめかみ C 4の 3ポイントを左右同時に 2回指圧し、 上下眼 瞼の中心よリ徐々に小さい円から大きい円を描くように軽く軽擦し (図中、 D 4で示す)、 最後にループの一方の脚 E (第 3図、 第 4図参照) である眉毛部 から耳介に向けて抜けるようにする。 尚、 この動作は左右 1回ずつ行う。
この第 5段階は、 前段において、 晴明、 陽白、 瞳子膠、 糸竹空などのッポ を刺激するものであり、 また、 後段において、 中心から徐々に大き〈円を描く ことによって上下眼瞼の静脈血をループ静脈 (略 U字形の静脈) に流し込み、 最後にこのループ静脈を一方の中枢方向脚 Eに向かって絞り、 眼輪筋および上 眼瞼挙筋に対するマッサージ効果も得られる。
第 1 9図は、 マッサージ施術方法の第 6段階 7 5を示したものである。 こ の第 6段階は、 手の平全体で圧迫を加えながら、 顎から頰全体へと 1回移動さ せる (図中 A 5の線で示す) 施術である。 即ち、 真皮浅層に貯留した静脈血を
一度真皮直下の静脈網に集め、 さらに、 浅層から深層に向かって圧迫 (プッシ ュ) することにより、 静脈血を中枢 (心臓) に流すものである。
第 2 0図は、 マッサージ施術方法の第 7段階 7 6を示したものである。 こ の第 7段階は、 頰部の静脈を流すマッサージ方法である。 この方法は、 頰部の 中心から徐々に大きい円を描きながら耳の前に向かって軽擦 (図中、 A 6で示 す) してから 「こめかみ」 を通り、 8の字 (図中、 B 6で示す) を描くように 反対側へ移るものであり、 この施術を 3回繰り返すものである。 これにより、 頰部の真皮直下の静脈網に貯まった血液を徐々に円を描く ことによリ略 U字 形静脈 (ループ) の一方に押し流す。
第 2 1図は、 マッサージ施術方法の第 8段階 7 7を示したものである。 こ の第 8段階は、 鼻、 口周囲のッボを刺激する段階である。 この方法は、 鼻の両 脇を上から下へ 3力所 (A 7、 B 7、 C 7の順) 親指で指圧したのち、 頰骨隆 起の下を、 図中 D 7で示したように 「なぞる J ようにし、 斜め外側、 耳の下方 向に向け耳の下耳下腺部分 E 7を圧迫するものである。 この施術は 2回繰り返 す。 これにより、 ッポの刺激をすると共に、 ループの一方の脚である静脈の血 管を絞る。
第 2 2図は、 マッサージ施術方法の第 9段階 7 8を示したものである。 こ の第 9段階は、 鼻部の静脈を流すマッサージ方法である。 この方法は、 鼻背を 下から上へ向かって軽擦した後、 その両脇も同様に行うものである。 この施術 は、 鼻の真皮の静脈血をループへ流し込むものであり 1回行う。
第 2 3図は、 マッサ一ジ施術方法の第 1 0段階 7 9を示したものである。 この第 1 0段階は、 口唇部の静脈と口輪筋に対するマッサージ方法であり、 上 口唇周辺を細かく鼻唇溝を越えて下から上へ引き上げ (図中、 A 9で示す)、 口唇全体をバンスモン (図中、 B 9で示す) する。 これにより、 鼻唇溝を越え たところのループに上口唇の静脈血を流し込み、 さらに、 口輪筋を摘むことに よるマッサージを行うものである。
第 2 4図は、 マッサージ施術方法の第 1 1段階 8 0を示したものである。
この第 1 1段階は、 下口唇部およびおとがい部の静脈血を流すマッサージ方法 である。 この方法は、 下顎全体を第一指の腹を利用しながら上から下へ軽擦し
(図中、 A 1 0で示す)、 この動作を反復する (2回行う)。 これにより、 下口 唇およびおとがい部の静脈血を頸部方向へ流す。
第 2 5図は、 マッサージ施術方法の第 1 2段階 8 1 を示したものである。 この第 1 2段階は、 最後に顏全体の真皮浅層の静脈血を真皮直下の静脈網に流 す段階であり、 3本の指を使い、 おとがい部から頸部にかけて 3回真っ直ぐに なでおろす (図中、 A 1 1 で示す)。 次に、 両頰部全体を同時に圧迫しながら 外側へ 3回流し (図中、 B 1 1 で示す)、 前額全体を中央から外に向けて 3回 圧迫する (図中、 C 1 1 で示す)。 これにより、 最後に真皮浅層から深層に貯 留した静脈血をループに流し、 鎮静させる。
以上詳述したマッサージ施術の方法は、 細い血管に存する弁の位置を的確 に認知し、 これを開くような方向から適切な圧力を加え、 順次血液を心臓方向 に押し出すような施術を行うものであり、 かかる施術を正しく行うことにより . 滞留した血波を循環系に戻し、 末梢の血流状態、 血中の酸素の状態を改善する ことが出来る。言い換えれば、 この様な正しい認識無しにマッサージを行えば、 この様な効果は得られず、 これまでマッサージの効果が施術者によって著しく 異なるのは、 この様な正しい認識があつたか、 無かったかに依存していると考 えられる。
即ち、 適切に、 施術者に、 この様な認識形成を促すことにより、 Γムクミ 改善効果 J 「くすみ改善効果」 等効果の明確な施術が、 施術者によらず行える ようになる。 特に、 重要になるのは、 真皮直下の静脈網から立ち上がってくる 細い血管及びこの静脈網を集める血管の基部に存する弁の存在と静脈網を集 める血管と皮下深部皮静脈との吻合状態である。 即ち、 弁の存在および静脈の 血管の走行方向を考慮することが重要であり、 弁の開く方向にまず圧力をかけ ないと血液の移動は起こリにくい。通常マッサージで言われている、血流方向、 言い換えれば顔の表面に沿った方向に加圧、 擦過を行えば、 弁の逆流防止機構
を働かせてしまう部位も多くあらわれ、 血管内の圧力を瞬間的に高めるだけに 終わってしまう。 まず皮膚と垂直方向で、 皮膚内部に向かう方向に加圧して初 めて皮膚の浅い所の弁が開き、 真皮直下静脈網に皮膚表面の血液を送り込むこ とが出来る。 隣り合う真皮直下静脈網同士の真皮内吻合は弱く、 横方向に圧迫 しても血液は隣の静脈網には有効に流れ込まない。 さらに次に真皮直下静脈網 を集める血管が皮下深部の皮静脈に吻合する方向に順次加圧することにより、 集める血管の基部の弁を開かせ、 よリ深部に有効に静脈血を集めることが出来 る。
マッサージ施術の効果としては、 皮膚表面に近い静脈の血流状態を改善し, かかる部位の酸素分圧などを改善できる。 この様な効果は、 分光学的手法によ リ、 ヘモグロビンの酸素分圧を非侵襲的に測定することにより、 モニターでき る。
以下に、 この試験例を挙げて詳細に説明する。
〔試験例〕
皮膚の解剖データをもとに、 動脈と伴走しない静脈が、 真皮直下及び皮膚 内で形成する静脈網と、 該静脈網から立ち上がる細い血管と、 該細い血管の基 部に存在する弁とを表示している皮膚の静脈の存在状態を含んだ第 1 の表示 物シートを作成した。 あわせて、 これを補完する拡大断面図としての第 2の表 示物シート、及び第 3の表示物シートも作成した。これらは、それぞれ第 1図、 第 2図及び第 4図 (第 3の実施の形態において骨の表示を含まないもの) に示 したものに相当する。 これらの表示物を用いて、 エステティ ック ■ スクールの 生徒 2 0名に次のマッサージの施術方法を教示した。 施術の具体的な方法は、 動脈と伴走しない静脈が、 真皮直下及び皮膚内で形成する静脈網から立ち上が る細い血管を、 皮膚深部に向かって押す施術を行った後、 動脈と伴走しない静 脈が、 真皮直下及び皮膚内で形成する静脈網の血液を集める静脈に向かって、 前記静脈網を順次圧迫する施術を行い、 最後に皮下深層に存在する皮静脈を中 枢に向かって圧迫する施術である。 比較群としては、 第 1 図. 第 2図, 第 4図
に代えて従来の皮膚の構造図を用いて説明した群を設定した ( n = 20)。 対 照群として口頭でのみ説明した群 ( n = 20) も用意した。 施術の説明後、 実 際にマッサージを相互に行ってもらい、 効果をへモグロビン酸素ィンデックス を指標に評価した。 ヘモグロビン酸素飽和インデックスは、 皮膚の分光測定結 果より、 下記の式に従って算出した。 結果を表 3に示す。 これより、 本発明の 表示物を用いることにより、 多くの被教示者が適切な施術法を取得でき、 マツ サージの効果を再現良く発揮できることが判明した。 測定条件:室温 2 5 ~ 26 °C、 湿度 50〜 60 %
測定機器:分光光度計 ミノルタ社製 CM2002
計測部位
■計測部位は内眼角下部を測定部位とした。
測定条件
• 2度 C視野、 C光源の条件で行った。
· M 2002分光光度計を用いて対象部位を 3回測定し、 その平均値を用 いた。
解析方法
CM 20 0 2から得られた 400 ~ 7 00 n mの反射率をミノルタ社製 ソフ ト彩チェックを用いて吸光度を算出し、 F e a t h e rの式にあてはめ、 ヘモグロビンインデックス (式 1 )、 ヘモグロビン酸素飽和インデックス (式 2)及びヘモグロビン酸素飽和度(式 3) を算出した。本公式を下記に示すと、 H = [( L 54 4 - L 5 27. 5) 1 6. 5 - ( L 5 7 3 - L 544) 29〕 1 00 (式 1 )
O X= [( L 57 3—し 55 8. 5 ) - ( L 558. 5 - L 544 )] 1 0 0 1 4. 5 H (式 2 )
S a O 2 (酸素飽和度%) = (O X + 0. 8 2 1 ) 1 00/ 1. 97 (式
3)
但し、 L x : x n mにおける吸光度、 H : ヘモグロビンインデックス、 O X : ヘモグロビン酸素飽和インデックスとする。
【表 3】
産業上の利用可能性
本発明の表示物は、 マッサージ施術教示方法、 皮膚治療手技や皮膚病態診 断法等の教示等の外、 例えば理科教育用のような一般教養教育教材などの用途 にも適用できる。