(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100と、それと共に使用するフェイシャルシート200の構成例を示す図である。図2は、第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100の一部構成例を示す側面図である。
第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100は、フェイシャルシート200と共に使用する。フェイシャルシート200は、例えばコットン、パルプ、レーヨン、ポリエステルなどの繊維素材から成るものであり、顔に直接被せて使用する。フェイシャルシート200の目の部分、鼻の部分、口の部分には穴が開いている。このフェイシャルシート200には、顔に被せて使用するときに、化粧液や美容液などを塗布することが可能である。
第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100は、顔に被せたフェイシャルシート200の上から更に被せて使用するものであり、フェイシャルシート200を振動させて、当該フェイシャルシート200を介して顔全体に振動を与えるための装置である。すなわち、第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100の特徴は、直接に肌を刺激するものではなく、フェイシャルシート200を振動させることを介して間接的に肌を刺激することにある。
第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100は、マスク(後述する振動付与体300を除いた顔面形状の面)上の鼻の部分に設けた開口部11と、当該開口部11の側方において顔面に向かって膨らむ部位である膨らみ部12と、マスク上で膨らみ部12とは異なる部位において、顔面とは反対側に向かって膨らんだ部位である振動呈示部13とを有している。振動呈示部13には、振動素子や振動モータ等の振動付与体300が着脱可能に設置される。
開口部11は、どんなユーザでも鼻がマスクに触れることがないような大きさと形状に形成されている。第1の実施形態では、マスクは日本人の標準的な顔面形状に概ね沿うような曲面形状に構成されており、鼻の位置の開口部11は、マスクの曲面形状の一部に設けられている。開口部11のある位置は、その周囲の面と比べて、顔面方向にもその反対方向にも膨らんでおらず、単に面の一部に鼻の形状に沿って穴が開けられた構成となっている。
膨らみ部12は、開口部11の両側において、当該開口部11の面よりも顔面の方向に向かって膨らむ2つの部位である。膨らみ部12は、顔面側に最も膨らんだ部分が、マスクを装着したユーザの両頬に当たるように構成されている。膨らみ部12の膨らみ形状は任意であり、最も膨らんだ部分がユーザの両頬に当たるように構成されていればよい。
振動呈示部13は、マスク上で膨らみ部12とは異なる部位において、周囲の面よりも顔面とは反対側に向かって膨らんだ部位である。振動呈示部13を顔面とは反対側に向かって膨らませるのは、フェイシャルシート200の上にマスクを装着した状態でフェイシャルシート200の一部が振動呈示部13に直接当たらないようにするためである。従って、振動呈示部13の膨らみ形状や膨らみ程度は任意であり、振動呈示部13がフェイシャルシート200に直接当たらないように構成されていればよい。例えば、振動呈示部13を局部的に膨らませる構成としてもよいし、周囲の面から徐々に膨らませる構成としてもよい。あるいは、人の口の大凡の形に合わせて膨らませる構成としてもよい。第1の実施形態では、振動呈示部13を局部的に膨らませる構成としている。
第1の実施形態では、振動呈示部13と膨らみ部12とをマスク上の離れた場所に設けている。振動呈示した部位が顔面(正確には、フェイシャルシート200の表面)に直接フィットしてしまうと、その接触点に振動が吸収されてしまい、顏全体に振動が行き渡りにくくなる。そこで、振動呈示部13を顔面とは反対側に向かって膨らませることにより、振動呈示部13がフェイシャルシート200にフィットしないようにしている。また、振動呈示部13から離れた鼻横の位置に、顔面に向かって膨らむ膨らみ部12を設け、当該膨らみ部12の2点がフェイシャルシート200の頬部分に当たるようにすることで、この2点から顔全体に振動が行き渡るようにしている。鼻横の位置は、どんな顔の形にも影響を受けにくく、膨らみ部12をフェイシャルシート200に確実にフィットさせることができる点で好ましい。
振動呈示部13により振動を呈示する位置(1点)は、マスク上の幅方向中央部が望ましい。第1の実施形態では、マスク上の顎の部分に振動呈示部13を設けている。なお、前額部に振動呈示部13を設けてもよい。また、振動呈示部13により呈示された振動がフェイシャルシート200に伝わる膨らみ部12の位置は、目の位置以外とするのが望ましい。振動が眼球に直接伝わると、ユーザが不快に感じるからである。
以上のように構成した第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100を使用するときは、まず、ユーザは美容液などを塗布したフェイシャルシート200を顔面上に貼付する。そして、その上からマスク型振動マッサージ装置100を被せ、振動呈示部13に設置した振動付与体300により振動を与える。これにより、振動付与体300において発生した振動が、マスク型振動マッサージ装置100の膨らみ部12を介してフェイシャルシート200に伝わり、フェイシャルシート200の全体が振動して、顔全体に振動が与えられる。
なお、フェイシャルシート200は、美容液を肌へと浸潤させるためのみならず、局所的な振動を緩衝し、かつ、振動を顔全体へと伝播させるための振動媒体として重要な役割を持つ。フェイシャルシート200は、このような機能を発揮できるものであればよい。例えば、乾燥状態のティッシュペーパーなど、美容液等の液体が塗布されていないものでもよい。
以上詳しく説明したように、第1の実施形態によれば、顔に被せたフェイシャルシート200の上からマスク型振動マッサージ装置100を更に被せると、顎部分の振動呈示部13はフェイシャルシート200に接触せず、そこから離れた場所にある膨らみ部12がフェイシャルシート200に対して接触するようになる。そして、振動付与体300から振動呈示部13に振動を与えると、その振動が膨らみ部12からフェイシャルシート200に伝わり、フェイシャルシート200の全体が振動することにより、顔全体に振動が与えられるようになる。
このように、第1の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100によれば、振動付与体300は1箇所の振動呈示部13に設置すればよく、顔面に向かって膨らむ膨らみ部12と、顔面とは反対側に向かって膨らむ振動呈示部13とを有する程度の製造コストが増大しない簡易な構成で、顔全体に対して振動を与えてマッサージを行うことができる。また、マスクから直接的ではなく、顔に被せたフェイシャルシート200を介して振動が顔全体に伝えられるので、振動で触感の細かな差異を顔全体に感じさせること、顔全体に密着感を感じさせること、顔全体が包み込まれる感じを作ることが可能となる。これにより、ユーザに心地よい振動マッサージを提供することができる。
なお、上記第1の実施形態では、マスク上の鼻の部分に開口部11を設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、大きな鼻でも入る立体構造としてよい。すなわち、鼻の部分を、顔面とは反対側に向かって膨ませた構造としてもよい。この場合、顔面とは反対側に向かって膨ませた鼻の部分に振動呈示部13を設けるようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態では、鼻の部分にのみ開口部11を設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、目の部分や口の部分にも開口部を設けるようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態では、膨らみ部12を鼻の横部分に設けるとともに、振動呈示部13を顎の部分に設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、膨らみ部12を顎の部分に設けるとともに、振動呈示部13を顎以外の部分(例えば、額の部分または立体構造とした鼻の部分)に設けるようにしてもよい。
顎部に膨らみ部12を設けた場合は、マスクからフェイシャルシート200を介して顔面に伝えられた振動が、下顎骨を介して頬骨から前額部へと伝達していくために、顔全体を刺激しやすい。これは、ボクシング競技において、下顎への打撃により頭頸部全体に大きな振動刺激が与えることからも示唆される。また、顎部は皮下脂肪が比較的少ない部位であるため、マスクから伝えられた振動が顎部において吸収されず、顔全体に伝わりやすい。
また、顎部に膨らみ部12を設けた場合において、マスクから膨らみ部12に対して局所的に伝わる振動がフェイシャルシート200により緩衝され、顔全体の振動との差異が気にならなくなるように、振動付与体300の振動強度を調整できるようにしてもよい。このようにすれば、膨らみ部12からの振動伝導で顔全体を心地よく振動マッサージすることが可能になる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図3は、第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’の構成例を示す正面図である。図4は、第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’の構成例を示す側方斜視図である。なお、第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’も第1の実施形態と同様、フェイシャルシート200と共に使用する。フェイシャルシート200は、第1の実施形態と同様の構成でよい。
第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’は、マスク上の鼻の部分に設けた開口部11’と、マスク上の両目の部分に設けた開口部14と、顔面に向かって膨らむ部位である膨らみ部12’と、マスク上で膨らみ部12’とは異なる部位において、顔面とは反対側に向かって膨らんだ部位である振動呈示部13A,13Bとを有している。振動呈示部13A,13Bには、振動素子や振動モータ等の振動付与体300A,300Bが設置される。
第2の実施形態では、マスク上の鼻の部分を、顔面とは反対側に向かって膨ませた立体構造とし、当該立体構造の最も膨らんだ部分(鼻の頭に相当する部分)に開口部11’を設けている。立体構造は、ユーザの鼻がマスクに触れることがないような大きさと形状に形成されている。そして、立体構造の鼻の根元に相当する部分の両側に、両目に相当する位置に2つの開口部14が設けられている。
膨らみ部12’は、開口部11’を有する立体構造の両側において、当該立体構造の根元の部分の面よりも顔面の方向に向かって膨らむ2つの部位である。第1の実施形態と同様、膨らみ部12’は、顔面側に最も膨らんだ部分がユーザの両頬に当たるように構成されている。膨らみ部12’の膨らみ形状は任意であり、最も膨らんだ部分がユーザの両頬に当たるように構成されていればよい。
振動呈示部13A,13Bは、マスク上で膨らみ部12’とは異なる部位において、周囲の面よりも顔面とは反対側に向かって膨らんだ部位である。振動呈示部13A,13Bの膨らみ形状や膨らみ程度は任意であり、振動呈示部13A,13Bがフェイシャルシート200に直接当たらないように構成されていればよい。第2の実施形態では、振動呈示部13A,13Bを何れも周囲の面から徐々に、僅かに膨らませる構成としている。
第2の実施形態では、2つの振動呈示部13A,13Bを形成し、それぞれに振動付与体300A,300Bを設置している。第1の振動呈示部13Aは顎の位置に、第2の振動呈示部13Bは額の位置に設置している。振動付与体300A,300Bは、例えば、一般的なスピーカの磁気回路やボイスコイルを備えたものとすることが可能である。振動付与体300A,300Bは、スピーカのコーン(振動板)は備えていない。本実施形態では、振動付与体300A,300Bによって振動させるマスク面をスピーカの振動板として機能させるようにしている。すなわち、振動付与体300A,300Bは、マスクを振動板として用いて、当該マスクに振動を付与する。これにより、振動付与体300A,300Bおよびマスクにより、当該マスクを振動板とするスピーカが構成される。
例えば、振動付与体300A,300Bに対して振動を与える振動源のデータとして音楽データを用い、音声再生装置(図示せず)で再生した音声信号を振動付与体300A,300Bに供給するようにする。このようにすると、音声信号に応じた振動を振動付与体300A,300Bからマスクに与え、マスク全体を振動させることにより、マスクをスピーカのコーン代わりとして放音することができる。これにより、マスクを装着しているユーザは、マスク全体から音楽が聞こえてくるような体感を得ることができる。このようなことは、1つの振動付与体300のみを備えた第1の実施形態にも同様に適用することが可能である。
また、第2の実施形態では、マスク全体から響いてくる音楽をユーザが聴きやすいように、マスクの両耳の部分に、外側に向かって側方に広がる広がり部15を設けている。このような広がり部15を設けることにより、マスク全体が振動することによってマスク全体から響いてくる音楽を、広がり部15を通してユーザが聴きやすくなるようにすることができる。
以上詳しく説明したように、第2の実施形態によれば、振動付与体300A,300Bは2箇所の振動呈示部13A,13Bに設置すればよく、顔面に向かって膨らむ膨らみ部12’と、顔面とは反対側に向かって膨らむ振動呈示部13A,13Bとを有する程度の製造コストが増大しない簡易な構成で、顔全体に対して振動を与えてマッサージを行うことができる。また、第1の実施形態と同様、振動で触感の細かな差異を顔全体に感じさせること、顔全体に密着感を感じさせること、顔全体が包み込まれる感じを作ることを通じて、ユーザに心地よい振動マッサージを提供することができる。
さらに、第2の実施形態によれば、振動源として音楽データを用いることにより、マスク全体から音楽が聴こえてくるような感覚をユーザに与えながら、顔全体に対して振動を与えてマッサージを行うことができる。振動源としての音楽データを適宜変えることにより、様々なリズムのバリエーションを持った振動マッサージをユーザに提供することができ、マッサージを受けるユーザを飽きさせることなく、心地よい振動マッサージを提供することが可能である。
また、第2の実施形態では、2つの振動付与体300A,300Bを設けているので、それぞれから異なる振動をマスクに付与することも可能である。例えば、第1の振動付与体300Aには音楽データを用いて音声再生装置で再生した音声信号を供給し、第2の振動付与体300Bには所定の感覚をユーザにイメージさせるように生成された振動信号を供給するようにすることが可能である。所定の感覚とは、音を聞いたときに感じる聴感(緩やか、激しい、リズミカルなど)であってもよいし、物に触れたときに感じる触感(柔らかい、硬いなど)であってもよい。このようにすれば、第2の振動付与体300Bに供給する振動信号によってユーザに所定の感覚を与えつつ、第1の振動付与体300Aに供給する音声信号によってマスク全体から音楽が聞こえてくるような体感をユーザに与えることができる。
以下に、第1の振動付与体300Aに供給する音声信号および第2の振動付与体300Bに供給する振動信号の生成について説明する。ここで生成する振動信号は、触覚に関する所定の感覚をユーザにイメージさせる振動信号である。本明細書では、このような振動信号のことを「触覚コンテンツ」と呼ぶ。また、当該振動信号と音声信号とを合わせて「音響コンテンツ」と呼ぶ。
図5は、本実施形態による触覚コンテンツ生成装置500の基本構成例を示す機能ブロック図である。図5に示すように、本実施形態の触覚コンテンツ生成装置500は、記憶媒体として触質コンテンツ記憶部50を備えている。また、本実施形態の触覚コンテンツ生成装置500は、その機能構成として、触質コンテンツ抽出部51、触覚コンテンツ生成部52、対象情報入力部53および触質パラメータ特定部54を備えている。
上記各機能ブロック51〜54は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11,12は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
触質コンテンツ記憶部50は、それぞれが触感の一要素を表したn個(n≧2)の触質パラメータにより特定される固有の触覚効果を持った触質コンテンツを、n個の触質パラメータの組み合わせに対応付けて記憶する。本実施形態では、n=2の例を示す。また、2個の触質パラメータとして、情報の強度に関する第1の触質パラメータと、情報の分割区間の長さに関する第2の触質パラメータとを用いる例を示す。強度および分割区間の長さは、何れも触感の一要素を成すものである。
すなわち、本実施形態において、触質コンテンツ記憶部50は、情報の強度に関する第1の触質パラメータおよび情報の分割区間の長さに関する第2の触質パラメータにより特定される固有の触覚効果を持った触質コンテンツを、第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータの組み合わせに対応付けて記憶する。触質パラメータとは、例えば<硬い−柔らかい>、<粗い−滑らか>のように対立する触質(以下、触質対という)の程度を表すパラメータである。
例えば、<硬い−柔らかい>という触質対に関する触質パラメータとして、情報の強度を用いることが可能である。すなわち、強度を表す値が大きいほど硬いことを表し、強度を表す値が小さいほど柔らかいことを表す。また、<粗い−滑らか>という触質対に関する触質パラメータとして、情報の分割区間の長さを用いることが可能である。すなわち、長さを表す値が大きいほど滑らかであることを表し、長さを表す値が小さいほど粗いことを表す。
図6は、触質コンテンツ記憶部50が記憶する触質コンテンツの記憶例を模式的に示す図である。図6は、縦軸に第1の触質パラメータとしての「強度」をとり、横軸に第2の触質パラメータとしての「分割区間の長さ」をとって表したマトリクス状の触質対空間を示している。図6の例では、第1の触質パラメータ(強度)で表される触質対として<硬い−柔らかい>を用い、第2の触質パラメータ(分割区間の長さ)で表される触質対として<粗い−滑らか>を用いたものを示している。
図6の例では、強度の最大値から最小値までを5段階に分けるとともに、分割区間の長さの最大値から最小値までを5段階に分けることにより、25個のマトリクス空間を形成している。25個のマトリクス空間には、それぞれ1番〜25番のインデックス番号が付与されている。触質コンテンツ記憶部50は、これら25個のマトリクス空間内にそれぞれ、強度および分割区間の長さの組み合わせに応じた触質コンテンツを記憶する。
ここで記憶する触質コンテンツは、人が触感を得ることが可能な情報である。本実施形態では、触質コンテンツとして、振動情報を用いる。触質コンテンツとして振動情報を記憶する場合、例えばインデックス番号“1”の位置には、強度が最大で分割区間の長さが最小の振動情報、つまり、最も硬くて最も粗いというイメージを伝達可能な振動情報が記憶される。また、例えばインデックス番号“25”の位置には、強度が最小で分割区間の長さが最大の振動情報、つまり、最も柔らかくても最も滑らかというイメージを伝達可能な振動情報が記憶される。
なお、触質コンテンツを特定するための2組の触質対として何を用いるかは、本実施形態の触覚コンテンツ生成装置500において生成する触覚コンテンツの用途に応じて任意に定めることが可能である。すなわち、ここでは2組の触質対として<硬い−柔らかい>および<粗い−滑らか>を用いているが、これに限定されない。例えば、触質対の別の例として、<大きい−小さい>、<鋭い−鈍い>、<重い−軽い>、<ざらざら−つるつる>などを用いてもよい。
なお、図5では、触覚コンテンツ生成装置500が触質コンテンツ記憶部50を備える構成を示したが、触質コンテンツ記憶部50は触覚コンテンツ生成装置500の外部に備え、触覚コンテンツ生成装置500が外部の触質コンテンツ記憶部50から触質コンテンツを取得して利用できる構成としてもよい。
例えば、触覚コンテンツ生成装置500の外部にある触質コンテンツ記憶部50は、触覚コンテンツ生成装置500に着脱可能なリムーバル記憶媒体により構成される。または、触覚コンテンツ生成装置500の外部にある触質コンテンツ記憶部50は、触覚コンテンツ生成装置500に通信ネットワークを介して接続された外部機器(例えば、外部ストレージ、サーバなど)により構成される。
対象情報入力部53は、強度に相当する値が連続的または断続的に連なって成る対象情報を入力する。当該対象情報の一例として、本実施形態では時系列の波形情報を入力する。ここで入力する波形情報は、アナログ信号でもよいし、デジタルデータでもよい。また、入力する波形情報は、時間の経過と共に振幅が変化する情報であればよく、その種類は任意である。
例えば、音声信号、映像信号、地震計・風力計・光量計など各種計測機器の測定信号、オシロスコープによる波形測定データ、株価変動データなどが挙げられるが、これらは一例に過ぎない。音声信号を入力する場合、それは音響コンテンツを構成する音声信号(第1の振動付与体300Aに供給する音声信号)と同一の音声信号であってもよいし、他の音声信号であってもよい。ただし、音響コンテンツを構成する音声信号と同一の音声信号を対象情報として入力するのが好ましい。その理由は後述する。
触質パラメータ特定部54は、対象情報入力部53により入力された波形情報を時間軸方向に複数に分割し、それぞれの分割区間から、第1の触質パラメータとして振幅を特定するとともに、第2の触質パラメータとして分割区間の時間の長さを特定する。このとき、前処理として、波形情報にローパスフィル処理を施すことにより、入力された波形情報のエンベロープを抽出し、当該エンベロープを対象として、複数の分割区間から第1の触質パラメータ(振幅)および第2の触質パラメータ(分割区間の時間の長さ)を特定するようにしてもよい。
図7は、触質パラメータ特定部54による処理内容の一例を説明するための図である。図7は、対象情報入力部53により入力された波形情報(または、触質パラメータ特定部54により前処理としてローパスフィルタ処理が施されたエンベロープ波形情報)を示している。
触質パラメータ特定部54は、まず、図7に示す波形情報を時間軸方向に複数に分割する。図7では一例として、波形の振幅が極小となる時間毎に分割している。すなわち、波形の開始点から1つ目の極小値までを第1の分割区間T1、1つ目の極小値から2つ目の極小値までを第2の分割区間T2、2つ目の極小値から3つ目の極小値までを第3の分割区間T3、・・・のように、波形情報を時間軸方向に複数に分割している。
なお、波形情報の分割のし方は、図7に示した例に限定されない。例えば、波形の振幅が極大となる時間毎に波形情報を複数の区間に分割するようにしてもよい。あるいは、正の値の振幅および負の値の振幅がある波形情報の場合は、振幅値がゼロとなる時間毎に波形情報を複数の区間に分割するようにしてもよい。
触質パラメータ特定部54は、それぞれの分割区間T1,T2,T3,・・・から、第1の触質パラメータとして代表振幅h1,h2,h3,・・・を特定するとともに、第2の触質パラメータとして分割区間の時間の長さt1,t2,t3,・・・を特定する。ここで、代表振幅h1,h2,h3,・・・は、それぞれの分割区間T1,T2,T3,・・・における開始点の極小値または終了点の極小値のうち値が大きい方と、分割区間T1,T2,T3,・・・における極大値との差分の値を示している。
すなわち、分割区間T1に関しては、極小値が1つしかないので、この極小値と極大値との差分が代表振幅h1となる。分割区間T2に関しては、当該区間の開始点の極小値の方が終了点の極小値よりも大きいので、開始点の極小値と極大値との差分が代表振幅h2となる。分割区間T3に関しては、当該区間の開始点の極小値よりも終了点の極小値の方が大きいので、終了点の極小値と極大値との差分が代表振幅h3となる。
なお、ここで示した代表振幅の特定方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、それぞれの分割区間T1,T2,T3,・・・における開始点の極小値または終了点の極小値のうち値が小さい方と、分割区間T1,T2,T3,・・・における極大値との差分を代表振幅として特定するようにしてもよい。
また、正の値の振幅および負の値の振幅がある波形情報を、振幅値がゼロとなる時間毎に分割した場合は、各分割区間における正の極大値または負の極小値を第1の触質パラメータの代表振幅として特定するようにしてもよい。ここで、負の極小値に関しては、その絶対値を第1の触質パラメータの代表振幅として特定するようにしてもよい。
触質コンテンツ抽出部51は、触質パラメータ特定部54によりそれぞれの分割区間から特定された第1の触質パラメータ(振幅)および第2の触質パラメータ(分割区間の時間の長さ)の組み合わせを順に指定して、当該指定した複数組の組み合わせに対応する複数の触質コンテンツを触質コンテンツ記憶部50から順に抽出する。
すなわち、触質コンテンツ抽出部51は、各分割区間T1,T2,T3,・・・から特定された代表振幅および分割区間の長さの組み合わせ{h1,t1},{h2,t2},{h3,t3},・・・を指定する。そして、図6に示した触質コンテンツのマトリクス空間上において、上記指定したそれぞれの組み合わせに対応する触質コンテンツを順に抽出する。
触覚コンテンツ生成部52は、触質コンテンツ抽出部51により順に抽出された複数の触質コンテンツが、2つ以上の異なる触質コンテンツの組み合わせから成るパターンの繰り返しを有するか否かを判定し、繰り返しを構成している触質コンテンツ群を抽出し、これを触覚コンテンツとして生成する。繰り返しを構成している触質コンテンツ群は、受け手に対して意味のあるメッセージを伝えることが可能な情報であり、本実施形態ではこれを触覚コンテンツとして生成するようにしている。その理由を以下に説明する。
触覚によって何らかのメッセージを人に伝える場合、第1に、触感に差異を作ることが大事である。例えば、人は、ずっと同じ圧力を受け続けると圧力を感じなくなるが、圧力に差異を作ると、より強く圧力を感じるようになる。そして、その差異の連なりから、ある種のメッセージを表現することが可能となる。例えば、図6に示したマトリクス空間において、インデックス番号が20番の触質コンテンツと25番の触質コンテンツとを順に抽出すると、比較的弱い強度で長い時間をかけてゆったりと強度が変化するという差異が生じ、この差異によって「柔らかくて滑らか」な感じというメッセージを表現することが可能となる。
第2に、上記のような触感の差異を2回以上繰り返すことにより、それが何か特別なもの(偶然ではないもの)という印象を人に与えることができる。すなわち、20番の触質コンテンツと25番の触質コンテンツとを順に1回ずつ抽出するだけなく、20番→25番→20番→25番のように2回以上繰り返すことにより、差異によって生じるメッセージをより強く伝えることが可能となる。なお、ここでは2つの触質コンテンツが繰り返される例を示したが、3つ以上の触質コンテンツが繰り返されるものも触覚コンテンツとなる。
なお、触覚コンテンツ生成部52により生成された触覚コンテンツは、例えば、触覚コンテンツ生成装置500が備える記憶媒体、あるいは触覚コンテンツ生成装置500に着脱可能なリムーバル記憶媒体に保存される。または、触覚コンテンツ生成装置500に通信ネットワークを介して接続された外部機器(例えば、外部ストレージ、サーバなど)に触覚コンテンツを送信して保存するようにしてもよい。本実施形態では、このように保存した触覚コンテンツを、音響コンテンツの一要素として利用する。
以下に、触覚コンテンツ生成部52による繰り返しパターンの判定アルゴリズムの一例を説明する。図8は、触覚コンテンツ生成部52による繰り返しパターンの判定アルゴリズムを説明するための図である。図8(a)は、触質コンテンツ抽出部51により順に抽出された10個の触質コンテンツのインデックス番号の順列を示している。
触覚コンテンツ生成部52は、まず、触質コンテンツ抽出部51により抽出された先頭のインデックス番号をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出する。ここで、パターンとは、2つ以上の異なるインデックス番号(それにより示される触質コンテンツ)の組み合わせをいうものとする。
例えば、keyと同じインデックス番号が連続する場合(例えば、“11”のようなケース)、「2つ以上の異なる」という制限を設けることなく、keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出すると、最初の1つ目のインデックス番号“1”だけがパターンとして抽出されることになる。本実施形態では、このような1つのインデックス番号のみから成るものをパターンとしては抽出しない。これをパターンとして抽出すると、“11”は“1”が2回繰り替えされている触覚コンテンツとなってしまうが、これだと触質コンテンツの連なりに差異がないので、触覚コンテンツとしては不適だからである。
触覚コンテンツ生成部52は、1つのパターンを抽出したら、次に、当該抽出したパターンの次のインデックス番号をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして新たに抽出する。触覚コンテンツ生成部52は、以上の処理を、触質コンテンツ抽出部51により順に抽出されたインデックス番号の最後まで行う。
なお、先頭のインデックス番号をkeyとして、最後のインデックス番号まで探索を行っても、そのkeyと同じインデックス番号が見つからない場合は、先頭から2番目のインデックス番号をkeyに設定し直して、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出する。この処理は、パターンが見つかるまで、keyを変えながら繰り返し行う。図8(b)は、このようなパターン抽出処理を行った結果を示している。
図8の例では、まず、先頭のインデックス番号“1”をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出している。これにより、“123”が1つ目のパターンとして抽出されている。次に、抽出した1つ目のパターンの次のインデックス番号(4番目のインデックス番号)“1”をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出している。これにより、“123”が2つ目のパターンとして抽出されている。
次に、抽出した2つ目のパターンの次のインデックス番号(7番目のインデックス番号)“1”をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出している。これにより、“14”が3つ目のパターンとして抽出されている。さらに、抽出した3つ目のパターンの次のインデックス番号(9番目のインデックス番号)“1”をkeyとして、当該keyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出しようとしたが、同じインデックス番号はみつからず、残りの “13”が4つ目のパターンとして抽出されている。
図8の例では、“123”のパターンが2回繰り返されている。よって、触覚コンテンツ生成部52は、この繰り返しを構成している触質コンテンツ群“123123”を抽出し、これを触覚コンテンツとして生成する。
なお、図8の例では、図8(c)に示すように、2番目のインデックス番号“2”をkeyとして設定すると、“231”というパターンの繰り返しを抽出することができる。そこで、触覚コンテンツ生成部52は、keyの設定位置を先頭から順に変えながらパターン抽出処理を行うことにより、繰り返しを構成している複数の触質コンテンツ群“123123”、“231231”を抽出し、これらを触覚コンテンツとして生成するようにしてもよい。また、インデックス番号の全てを順次keyに設定して、繰り返しパターンの判定処理を行うようにしてもよい。
なお、ここでは、触質コンテンツ抽出部51により抽出された触質コンテンツが10個の場合における繰り返しパターンの判定例を説明したが、触質コンテンツが多数の場合もある。そこで、触覚コンテンツ生成部52は、触質コンテンツ抽出部51により順に抽出された複数の触質コンテンツを先頭から所定数毎に区切ってグループ化し、グループ毎に繰り返しパターンの判定処理を行うようにしてもよい。
以上のようにして生成した触覚コンテンツを、音響コンテンツの一要素として、マスク型振動マッサージ装置100’を通じてユーザに伝達することにより、繰り返される複数の触質コンテンツの差異の連なりにより、意味を持った触覚効果を与え、触覚のメッセージ性(物語性)をユーザに明確に伝えることができる。
なお、上記実施形態では、触質コンテンツ記憶部50より抽出した複数の触質コンテンツの中から、1種類の繰り返しパターンから成る触質コンテンツ群を抽出し、抽出した触質コンテンツ群をそのまま触覚コンテンツとする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数種類の繰り返しパターンから成る触質コンテンツ群を抽出し、これらを組み合わせることによって触覚コンテンツを生成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、1つのインデックス番号をKeyに設定して、そのKeyと同じインデックス番号が出現する直前までをパターンとして抽出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数のインデックス番号の組み合わせをKeyに設定して、そのKeyと同じインデックス番号の組み合わせが出現する直前までをパターンとして抽出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、例えば図8(b)のように“123|123”とパターンの繰り返しが検出された場合に、その繰り返しを構成している触質コンテンツ群“123123”を触覚コンテンツとして生成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、“123”を任意の数だけ組み合わせたものを触覚コンテンツとして生成するようにしてもよい。
また、“123”の順序をサイクリックに置き換えたもの(“231”または“312”)を生成し、これを組み合わせたものを触覚コンテンツとして生成するようにしてもよい。ここで、“231231”や “312312”のように、同一のパターンを組み合わせて触覚コンテンツを生成してもよいし、“123231312”のように、異なるパターンを任意に組み合わせて触覚コンテンツを生成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、対象情報入力部53により入力する対象情報として、強度に相当する値が連続的または断続的に連なっている形態の波形情報を扱う例について説明したが、元々がそのような形態になっていない情報を当該形態に変換した情報を入力するようにしてもよい。
例えば、音声信号の場合、ある程度の時間的な長さを持ったものであれば、強度に相当する値が連続的または断続的に連なっているものといえる。一方、一瞬で終わる音の場合、振幅は存在するが、時間軸に沿って複数に分割可能な長さを持たない。しかし、その瞬時音を周波数解析して周波数軸の信号に変換すると、周波数毎に異なる振幅を持った情報、つまり、強度に相当する振幅が周波数軸に沿って連なった情報となるため、対象情報入力部53において入力可能な情報となる。その他、周波数スペクトル情報、ヒストグラム情報、画像情報、動画情報、テキスト情報、物体の動きを表す動作情報なども、対象情報入力部53より対象情報として入力し得る。
また、上記実施形態では、図6に示すように、横軸に分割区分の長さをとる例について説明したが、当該長さの逆数を取るようにしてもよい。
また、上記実施形態では、n=2とし、2個の触質パラメータとして、情報の強度に関する第1の触質パラメータと、情報の分割区間の長さに関する第2の触質パラメータとを特定する例について説明したが、nは3以上であってもよい。なお、n≧3とする場合、図6のような2次元状のマトリクス空間ではなく、3階層以上のn次元階層空間として、n個の触質パラメータの組み合わせに対応する触質コンテンツをそれぞれ記憶することになる。
また、上記実施形態では、情報の強度に関する第1の触質パラメータと、情報の分割区間の長さに関する第2の触質パラメータとの両方を特定する例について説明したが、何れか一方のみとしてもよい。
すなわち、触質パラメータ特定部54は、対象情報入力部53により入力された対象情報を複数に分割し、それぞれの分割区間から、情報の強度に関する第1の触質パラメータおよび分割区間の長さに関する第2の触質パラメータの少なくとも一方を用いて、n個(n≧2)の触質パラメータを特定することが可能である。
例えば、n=3とする場合、第1の触質パラメータを1個または2個特定するとともに、第2の触質パラメータを2個または1個特定するといったことが可能である。あるいは、第1の触質パラメータとして異なるものを3個特定するようにしてもよいし、第2の触質パラメータとして異なるものを3個特定するようにしてもよい。
情報の強度に関する第1の触質パラメータだけでn個の触質パラメータを特定する場合、例えば、対象情報入力部53によりn種の対象情報を入力するようにする。そして、触質パラメータ特定部54は、入力されたn種の対象情報をそれぞれ複数に分割し、n種の対象情報のそれぞれの分割区間から、第1の触質パラメータを1個ずつ特定することにより、n個の第1の触質パラメータの組み合わせを複数組特定する。
一例として、対象情報入力部53が、触質変換対象の情報として、心拍、加速度(身体の動き)、血流量の3種の情報に関して以下のようなデジタル値を入力したとする。
心拍 :79,60,79,75,74,79,75
加速度:40,10,30,40,35,40,20
血流量:80,60,40,60,80,60,80
この場合、触質パラメータ特定部54は、入力された3種の対象情報をそれぞれ入力値ごとに分割し、3種の対象情報のそれぞれの分割区間から、第1の触質パラメータを特定することにより、3個の第1の触質パラメータの組み合わせを以下のように特定する。
{79,40,80},{60,10,60},{79,30,40},・・・
また、情報の分割区間の長さに関する第2の触質パラメータだけでn個の触質パラメータを特定する場合も、例えば、対象情報入力部53によりn種の対象情報を入力するようにする。そして、触質パラメータ特定部54は、入力されたn種の対象情報をそれぞれ複数に分割し、n種の対象情報のそれぞれの分割区間から、第2の触質パラメータを1個ずつ特定することにより、n個の第2の触質パラメータの組み合わせを複数組生成する。
一例として、対象情報入力部53が、心拍、加速度、血流量の3種の情報に関して、上記と同様のデジタル値を入力したとする。この場合、触質パラメータ特定部54は、例えば、同じ値が入力されるまでを単位として3種の対象情報をそれぞれ分割し、3種の対象情報のそれぞれの分割区間から、第2の触質パラメータを特定することにより、3個の第2の触質パラメータの組み合わせを複数組特定する。
上記の例の場合、心拍に関して、最初の“79”と同じ値が次に現れるのは2つ後、その次に同じ値が現れるのは更に3つ後なので、分割区間の長さは2,3となる。加速度に関して、最初の“40” と同じ値が次に現れるのは3つ後、その次に同じ値が現れるのは更に2つ後なので、分割区間の長さは3,2となる。血流量に関して、最初の“80”と同じ値が次に現れるのは4つ後、その次に同じ値が現れるのは更に2つ後なので、分割区間の長さは4,2となる。この場合、触質パラメータ特定部54は、第2の触質パラメータの組み合わせを{2,3,4},{3,2,2}のように特定する。
なお、ここでは、複数種類の触質変換対象の情報としてデジタル値を入力する例について説明したが、アナログ信号を入力するようにしてもよいことは言うまでもない。この場合、強度に関する触質パラメータおよび分割区間の長さに関する触質パラメータの特定法は、上記実施形態で説明した方法を適用することが可能である。
また、ここでは、強度に関する触質パラメータ、あるいは分割区間の長さに関する触質パラメータの何れか一方のみを、複数種類の触質変換対象の入力情報から特定する例について説明したが、1種類の対象情報から特定するようにしてもよい。例えば、上記実施形態と同様にして1種類の対象情報を複数の区間に分割し、それぞれの分割区間から、強度に関する触質パラメータを複数特定するようにしてもよい(例えば、強度の最大値と最小値をそれぞれ触質パラメータとするなど)。また、1種類の対象情報を複数の区間に分割する際に、異なる方法に従って複数の区間に分割し、それぞれの方法で分割した分割区間の長さを触質パラメータとするようにしてもよい。
また、ここでは、複数種類の触質変換対象の入力情報から、強度に関する触質パラメータだけ、あるいは分割区間の長さに関する触質パラメータだけを特定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数種類の触質変換対象の入力情報から、強度に関する触質パラメータおよび分割区間の長さに関する触質パラメータの両方を組み合わせて特定するようにしてもよい。
次に、音響コンテンツ生成装置について説明する。図9は、本実施形態による音響コンテンツ生成装置600の機能構成例を示す機能ブロック図である。図9に示すように、本実施形態の音響コンテンツ生成装置600は、その機能構成として、触覚コンテンツ取得部61、音声信号取得部62、振動波形加工部63および音響コンテンツ生成部64を備えている。また、本実施形態の音響コンテンツ生成装置600には、触覚コンテンツ記憶部601および音声信号記憶部602が接続されている。
上記各機能ブロック61〜64は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック61〜64は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
触覚コンテンツ記憶部601は、図5のように構成した触覚コンテンツ生成装置500により生成された触覚コンテンツを記憶する。本実施形態では、触覚コンテンツ記憶部601は、図5の触質コンテンツ記憶部50に記憶する触質コンテンツとして振動情報を用いた場合に、触覚コンテンツ生成装置500により振動情報として生成される触覚コンテンツを記憶する。触覚コンテンツ記憶部601が記憶する触覚コンテンツは、2つ以上の異なる触質コンテンツ(振動情報)の組み合わせから成るパターンの繰り返しを有する触質コンテンツ群から成る時系列の波形情報である。
なお、触覚コンテンツ記憶部601は、図5に示した触覚コンテンツ生成装置500が内部に備える記憶媒体であってもよいし、触覚コンテンツ生成装置500の外部にあるパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの情報処理機器、あるいはリムーバル記憶媒体であってもよい。また、触覚コンテンツ記憶部601は、音響コンテンツ生成装置600に通信ネットワークを介して接続された外部機器(例えば、外部ストレージ、サーバなど)であってもよい。
音声信号記憶部602は、任意の音声信号の波形情報を記憶する。例えば、音声信号記憶部602は、任意の音楽の楽曲を表した音声信号の波形情報を記憶する。音声信号記憶部602が記憶する音声信号の波形情報は、アナログ信号でもよいし、デジタルデータでもよい。なお、音声信号記憶部602は、音響コンテンツ生成装置600の外部にあるパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの情報処理機器、あるいはリムーバル記憶媒体として構成することが可能である。また、音声信号記憶部602は、音響コンテンツ生成装置600に通信ネットワークを介して接続された外部機器(例えば、外部ストレージ、サーバなど)であってもよい。
触覚コンテンツ取得部61は、触覚コンテンツ記憶部601に記憶された触覚コンテンツ、すなわち、上述したように、図5の触覚コンテンツ生成装置500により振動情報である触質コンテンツから生成された触覚コンテンツを取得する。音声信号取得部62は、音声信号記憶部602に記憶された音声信号を取得する。
振動波形加工部63は、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報に基づいて、触覚コンテンツ取得部61により取得された触覚コンテンツの波形情報を加工する。なお、触覚コンテンツ取得部61により取得される触覚コンテンツの波形情報の全時間長と、音声信号取得部62により取得される音声信号の波形情報の全時間長とが同じでない場合がある。この場合、振動波形加工部63は、触覚コンテンツの波形情報を、その全時間長が音声信号の波形情報の全時間長と同じとなるように前加工をした上で、後述する本加工を行う。
なお、前加工は、例えば、触覚コンテンツ取得部61により取得された触覚コンテンツの波形情報を繰り返し繋げていき、音声信号の波形情報の全時間長と同じになったところでカットする処理とすることが可能である。あるいは、前加工は、触覚コンテンツ取得部61により取得された触覚コンテンツの波形情報のピッチを伸長する処理としてもよい。ただし、触覚コンテンツの波形情報のピッチを変えると、触覚コンテンツが有するメッセージ性が変わってしまう可能性があるので、前者の方法を用いるのが好ましい。
なお、触覚コンテンツ取得部61により取得される触覚コンテンツの波形情報の全時間長と、音声信号取得部62により取得される音声信号の波形情報の全時間長とを必ずしも合わせなくてもよい。例えば、音声信号の波形情報の全時間長のうち、特定の区間に対してのみ触覚コンテンツの波形情報を組み合わせて音響コンテンツを生成するようにしてもよい。この場合、振動波形加工部63は、触覚コンテンツの波形情報を、音声信号の波形情報の全時間長の中の特定の区間に同期させるように前加工をした上で、後述する本加工を行う。
音響コンテンツ生成部64は、音声信号取得部62により取得された音声信号と、振動波形加工部63により加工された触覚コンテンツとの組み合わせにより音響コンテンツを生成する。例えば、音響コンテンツ生成部64は、音声信号取得部62により取得された音声信号を第1チャネル情報(第1の振動付与体300Aに供給する音声信号)とし、振動波形加工部63により加工された触覚コンテンツを第2チャネル情報(第2の振動付与体300Bに供給する振動信号)とする音響コンテンツを生成する。
音響コンテンツの詳細については後述するとして、以下に、振動波形加工部63が行う本加工の詳細を説明する。図10は、振動波形加工部63の機能構成例を示すブロック図であり、振動波形加工部63が触覚コンテンツの波形情報に対して本加工を行うため機能構成例を示している。図10に示すように、振動波形加工部63は、その機能構成として、特徴抽出部63A、重み情報生成部63Bおよび重み加工部63Cを備えている。
特徴抽出部63Aは、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報において、他の箇所の区別し得る複数の特徴箇所を抽出する。例えば、特徴抽出部63Aは、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報において、所定時間の間に振幅値が所定値以上大きくなる箇所を特徴箇所として抽出する。
重み情報生成部63Bは、特徴抽出部63Aにより抽出された複数の特徴箇所に基づいて、隣接する特徴箇所の時間区間において経時的に値が変化する重み情報を生成する。例えば、重み情報生成部63Bは、特徴抽出部63Aにより抽出された複数の特徴箇所に基づいて、一の特徴箇所が抽出された時間から次の特徴箇所が抽出された時間まで値が経時的に徐々に小さくなる重み情報を生成する。
図11は、特徴抽出部63Aおよび重み情報生成部63Bの処理内容を説明するための図である。ここで、図11(a)は、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報を示している。図11(b)は、触覚コンテンツ取得部61により取得された触覚コンテンツの波形情報に対し、重み情報生成部63Bにより生成される重み情報を模式的に重ねて示した状態を示している。ここでは、触覚コンテンツの波形情報を、その全時間長が音声信号の波形情報の全時間長と同じとなるように前加工した後の波形情報を示している。
特徴抽出部63Aは、図11(a)に示す音声信号の波形情報において、所定時間(例えば、0.1秒)の間に振幅値が所定値以上大きくなる箇所を複数の特徴箇所F1,F2,F3,・・・として抽出する。すなわち、特徴抽出部63Aは、音声信号の波形情報の振幅値が急激に大きくなる箇所を特徴箇所F1,F2,F3,・・・として抽出する。
重み情報生成部63Bは、特徴抽出部63Aにより抽出された複数の特徴箇所F1,F2,F3,・・・に基づいて、一の特徴箇所Fi(i=1,2,・・・)が抽出された時間から、次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間まで、値が経時的に徐々に小さくなる重み情報を生成する。この重み情報は、重み値(何れも正の値)が最小値から最大値までの間をとる情報であり、図11(b)においてノコギリ波として模式的に示されている。
図11(b)の例では、一の特徴箇所Fiが抽出された時間において重み値が最大となり、そこから線形的あるいは段階的に値が経時的に徐々に小さくなり、次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間において重み値が再び最大となるような重み情報を生成している。ここで、重み情報生成部63Bは、一の特徴箇所Fiが抽出された時間において重み値が最大となり、次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間に達する時点で重み値がちょうど最小値となるような重み情報を生成している。
なお、ここに示した重み情報の生成処理は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図11(b)では、重み値が一定の割合で直線的に徐々に小さくなる例を示したが、一の特徴箇所Fiが抽出された時間から次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間まで、所定の2次関数あるいは対数関数などに従って値が曲線的に徐々に小さくなるような重み情報を生成するようにしてもよい。
また、重み値が徐々に小さくなる割合(ノコギリ波で示される斜線部の傾斜角)を、どの区間も同じとするようにしてもよい。この場合、一の特徴箇所Fiと次の特徴箇所Fi+1との間が長い区間があると、次の特徴箇所Fi+1に至る前に重み値が最小値に達する。この場合、重み情報生成部63Bは、例えば、重み値が最小値に達した後、次の特徴箇所Fi+1に至るまで、重み値が最小値に固定するような重み情報を生成する。
また、重み値の最大値と最小値とを固定せず、所定の条件に応じて変動する変動値とするようにしてもよい。例えば、特徴箇所における振幅値の大きさに応じて、重み値の最大値を可変とするようにしてもよい。この場合、重み情報生成部63Bは、一の特徴箇所Fiにおける振幅値が大きいほど重み値が大きくなるようにし、そこから次の特徴箇所Fi+1まで値が徐々に小さくなるような重み情報を生成する。このようにすれば、所定時間の間に振幅値が所定値以上大きくなる複数の特徴箇所Fiのうち、その特徴箇所Fiの振幅値が大きいほど大きな重み値が設定されるようになる。
重み加工部63Cは、触覚コンテンツ取得部61により取得された触覚コンテンツ(振動波形加工部63により前加工の処理が行われた触覚コンテンツを含む。以下同様)の波形情報を、重み情報生成部63Bにより生成された重み情報によって加工する。例えば、重み加工部63Cは、触覚コンテンツの波形情報の振幅値に対して重み情報の重み値を乗算することにより、触覚コンテンツの波形情報を加工する。
すなわち、重み加工部63Cは、図11(b)に示している触覚コンテンツの波形情報の各時間における振幅値に対し、同じく図11(b)にノコギリ波として模式的に示している各時間における重み値を乗算する。図11(b)において、触覚コンテンツの波形情報と重み情報とを重ねて示しているのは、各時刻における波形情報の振幅値と、これに対して乗算する重み値との対応関係を明示するためである。
なお、音声信号の波形情報の全時間長のうち、特定区間における音声信号の波形情報に対してのみ触覚コンテンツの波形情報を組み合わせて音響コンテンツを生成する場合、特徴抽出部63A、重み情報生成部63Bおよび重み加工部63Cは、当該特定区間においてのみ各処理を実行すればよい。すなわち、特徴抽出部63Aは、特定区間においてのみ音声信号の特徴領域を抽出すればよい。また、重み情報生成部63Bは、特定区間においてのみ重み情報を生成すればよい。また、重み加工部63Cは、特定区間においてのみ、当該特定区間の音声信号の波形情報に同期する触覚コンテンツの波形情報の振幅値に対して重み値を乗算すればよい。
上述したように、音響コンテンツ生成部64は、以上のようにして振動波形加工部63により加工された触覚コンテンツを第2チャネル情報とし、音声信号取得部62により取得された音声信号を第1チャネル情報とする組み合わせにより音響コンテンツを生成する。図12は、音響コンテンツ生成部64により生成される音響コンテンツを示す図である。図12(a)は、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報(第1チャネル情報)を示し、図12(b)は、動波形加工部23により加工された触覚コンテンツの波形情報(第2チャネル情報)を示している。図12(a)に示す音声信号の波形情報は、図11(a)に示す音声信号の波形情報と同じである。
なお、音声信号取得部62により取得される音声信号がモノラルの音声信号である場合は、上述したように、図11(a)に示す音声信号の波形情報(音響コンテンツの波形情報を加工する重み情報を生成するために特徴箇所の抽出対象とする音声信号の波形情報)と、図12(a)に示す音声信号の波形情報(音響コンテンツの第1チャネル情報を構成する音声信号の波形情報)とは同じになる。
一方、音声信号取得部62により取得される音声信号がステレオの音声信号である場合は、図11(a)に示す音声信号の波形情報と、図12(a)に示す音声信号の波形情報とを同じとしてもよいが、必ずしも同じとする必要はない。例えば、特徴箇所の抽出対象とする音声信号は左チャネルの音声信号とし、音響コンテンツの第1チャネル情報を構成する音声信号は右チャネルの音声信号としてもよい。もちろん、その逆でもよい。
前者の場合、特徴抽出部63Aが左チャネルの音声信号の波形情報から複数の特徴箇所を抽出し、重み情報生成部63Bがその特徴箇所に基づいて重み情報を生成し、重み加工部63Cがその重み情報によって触覚コンテンツの波形情報を加工することにより、触覚コンテンツの波形情報(第2チャネル情報)を生成する。そして、音響コンテンツ生成部64は、以上のようにして振動波形加工部63により加工された触覚コンテンツと、音声信号取得部62により取得された右チャネルの音声信号との組み合わせにより音響コンテンツを生成する。
以上のようにして生成される音響コンテンツは、2つ以上の異なる触質コンテンツ(振動情報)の組み合わせから成るパターンの繰り返しによって構成される触覚コンテンツと、任意の音声信号との組み合わせから構成されるものである。しかも、音声信号に組み合わされる触覚コンテンツは、当該音声信号の特徴箇所と同期する態様で重み値が変動する重み情報によって波形の振幅値が加工された触覚コンテンツである。このため、この音響コンテンツをマスク型振動マッサージ装置100’を通じて人に伝達することにより、音声信号に基づき再生される音声を提供するのと同時に、その音声の特徴と同期した触覚コンテンツの振動によって触覚のメッセージ性(物語性)を明確に伝えることができる。
なお、上記実施形態では、音声信号取得部62が取得する音声信号は任意であるが、例えば以下のようにすることが可能である。すなわち、図5に示す触覚コンテンツ生成装置500によって触覚コンテンツを生成する際に、対象情報入力部53が入力する時系列の波形情報として、音声信号取得部62により取得される音声信号の波形情報と同じ波形情報を、触質変換対象の情報として入力する。換言すると、対象情報入力部53が、音声信号取得部62により取得される音声信号の波形情報と同じ波形情報を触質変換対象の情報として入力し、これによって触覚コンテンツ生成装置500により生成された触覚コンテンツを触覚コンテンツ取得部61が取得するようにする。
このようにすれば、音声信号に組み合わされる触覚コンテンツが、当該音声信号自身の特徴要素である触質パラメータ(分割区間の振幅および分割区間の時間の長さ)に基づき生成され、かつ、当該音声信号自身から抽出される特徴箇所に基づき生成される重み情報によって波形の振幅値が加工されたものとなる。このため、音声信号自体がもともと有している音声によるメッセージ性と、当該音声信号が持つ特徴に基づき生成される触覚コンテンツの振動によるメッセージ性とが相まって人に伝わるようになる。これにより、相乗効果によってメッセージ性が人に強く伝わるようにすることができる。
なお、特徴抽出部63Aが音声信号の波形情報から抽出する複数の特徴箇所は、上記実施形態に示した例に限定されない。例えば、特徴抽出部63Aは、音声信号取得部62により取得された音声信号の波形情報において、振幅値が所定値以上となる箇所を特徴箇所として抽出するようにしてもよい。あるいは、音声信号の波形情報を時間ごとに周波数解析し、含まれる周波数成分が急激に変わる箇所を特徴箇所として抽出するようにしてもよい。あるいは、音声信号の波形情報に対して図7と同様の解析を行い、h/tの値が急激に変わる箇所を特徴箇所として抽出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、重み情報生成部63Bは、一の特徴箇所Fiが抽出された時間から次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間まで値が徐々に小さくなるような重み情報を生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、特徴抽出部63Aが、音声信号の波形情報において所定時間の間に振幅値が急激に小さくなる箇所を特徴箇所として抽出するようにし、重み情報生成部63Bが、一の特徴箇所Fiが抽出された時間から次の特徴箇所Fi+1が抽出された時間まで値が徐々に大きくなるような重み情報を生成するようにしてもよい。
次に、音響再生装置について説明する。第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’は、図3に示した構成に加えて、音響再生装置を更に備える。すなわち、図3に示す振動付与体300A,300Bからケーブルを介して繋がれたイヤホンプラグ17が、図3では図示しない音響再生装置のイヤホンジャックに装着された状態で、第2の実施形態によるマスク型振動マッサージ装置100’が構成される。
図13は、本実施形態による音響再生装置700の機能構成例を示す機能ブロック図である。図13に示すように、本実施形態の音響再生装置700は、その機能構成として、音響コンテンツ取得部71、音声出力制御部72および振動出力制御部73を備えている。また、本実施形態の音響再生装置700には、音響コンテンツ記憶部701、第1の振動付与体300Aおよび第2の振動付与体300Bが接続されている。
上記各機能ブロック71〜73は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック71〜73は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
音響コンテンツ記憶部701は、図9のように構成した音響コンテンツ生成装置600により生成された音響コンテンツを記憶する。音響コンテンツ記憶部701が記憶する音響コンテンツは、図9の音声信号取得部62により取得された音声信号を第1チャネル情報とし、振動波形加工部63により加工された触覚コンテンツを第2チャネル情報とする、2種類の波形情報の組み合わせである。上述した通り、第2チャネル情報の触覚コンテンツは、音声信号の波形情報において他の箇所と区別し得る複数の特徴箇所を区切りとして、隣接する特徴箇所の時間区間において経時的に値が変化する重み情報によって、パターンの繰り返しを構成している触質コンテンツ群の波形情報が加工されたものである。
なお、音響コンテンツ記憶部701は、図9に示した音響コンテンツ生成装置600が内部に備える記憶媒体であってもよいし、音響コンテンツ生成装置600の外部にあるパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの情報処理機器、あるいはリムーバル記憶媒体であってもよい。また、音響コンテンツ記憶部701は、音響再生装置700に通信ネットワークを介して接続された外部機器(例えば、外部ストレージ、サーバなど)であってもよい。また、音響再生装置700が音響コンテンツ記憶部701を内蔵する構成としてもよい。
音響コンテンツ取得部71は、音響コンテンツ記憶部701から音響コンテンツを取得する。音声出力制御部72は、音響コンテンツ取得部71により取得された音響コンテンツに第1チャネル情報として含まれる音声信号に基づいて音声を第1の振動付与体300Aから出力するように、音声信号の再生を制御する。振動出力制御部73は、音響コンテンツ取得部71により取得された音響コンテンツに第2チャネル情報として含まれる触覚コンテンツに基づいて第2の振動付与体300Bに振動を与えるように、触覚コンテンツの再生を制御する。
以上のように構成した音響再生装置700によれば、第1の振動付与体300Aから出力される音声自体がもともと有しているメッセージ性と、第2の振動付与体300Bに付与される触覚コンテンツの振動によるメッセージ性とが相まって人に伝わるようになる。これにより、第1の振動付与体300Aから出力する音声によってユーザに所定の意味やメッセージを与えつつ、その意味やメッセージに同調するような振動を第2の振動付与体300Bに付与することによって、当該意味やメッセージがユーザに強く伝わるような感覚をユーザに与えることができる。
特に、本実施形態では、マスク型振動マッサージ装置100’のマスクを、2つの振動付与体300A,300Bに対応する振動板として兼用するようにしている。すなわち、第2の振動付与体300Bから出力される触覚コンテンツによって振動させるマスクを、第1の振動付与体300Aによって音声を出力するスピーカの振動板として機能させるようにしている。
このようにすると、音声信号の波形情報に応じた振動をマスクに与え、マスク全体を振動させることにより、マスクをスピーカのコーン代わりとして放音することができる。これにより、マスクを装着しているユーザは、マスク全体から音声が聞こえてくるような体感を得ることができる。これと同時に、触覚コンテンツの波形情報に応じた振動もマスクに与えられるので、所定の感覚をユーザにイメージさせることができる。このようにすれば、第2の振動付与体300Bによりマスクに付与される触覚コンテンツの振動によってユーザに所定の感覚を与えつつ、第1の振動付与体300Aにより出力される音声信号の振動によってマスク全体から音声が聞こえてくるような体感をユーザに与えることができる。
なお、上記実施形態では、図5の対象情報入力部53により入力された対象情報を解析することにより、当該対象情報から特定された第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータを触質コンテンツ抽出部51が入力することによって、第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータの組み合わせを順次指定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、所望の触覚コンテンツを生成したいユーザが、第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータの指定を手動で行うようにしてもよい。この場合、図5に示した対象情報入力部53および触質パラメータ特定部54は不要である。一例として、触質コンテンツ抽出部51は、図6に例示したマトリクスをコンピュータの画面上に表示させ、タッチパネルやマウス等の操作デバイスを用いてユーザに所望の位置を順に指定させることにより、第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータの組み合わせを複数組順に指定する。これに応じて、触質コンテンツ抽出部51は、マトリクス上で順に指定された位置に対応する触質コンテンツを順次触質コンテンツ記憶部50から抽出する。
また、触質コンテンツ抽出部51がランダムに、あるいは所定の規則に従って第1の触質パラメータおよび第2の触質パラメータの組み合わせを順次指定するようにしてもよい。
また、上記第2の実施形態では、音声信号を第1チャネル情報とし、触覚コンテンツを第2チャネル情報とする音響コンテンツを生成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記2つのチャネル情報に加えて、3つ目あるいはそれ以上の数のチャネル情報を含めて音響コンテンツを生成するようにしてもよい。
その一例として、左チャネルの音声信号を第1チャネル情報、触覚コンテンツを第2チャネル情報、右チャネルの音声信号を第3チャネル情報とする音響コンテンツを生成するようにしてもよい。第3チャネル情報を追加する場合、マスク型振動マッサージ装置100’に対して3つ目の振動付与体を追加するようにしてよい。ただし、マスク型振動マッサージ装置100’が備える振動付与体の数が多くなるので、第3チャネル情報の音声信号については、マスク型振動マッサージ装置100’とは別に設けたスピーカから出力するようにしてもよい。
また、上記第2の実施形態において、第1の振動呈示部13Aに対して、触覚に関する所定の感覚をユーザにイメージさせるように生成された第1の振動信号である第1の触覚コンテンツを供給する一方、第2の振動呈示部13Bに対して、触覚に関する所定の感覚をユーザにイメージさせるように生成された第2の振動信号である第2の触覚コンテンツを供給するようにしてもよい。ここで、第1の触覚コンテンツと第2の触覚コンテンツは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
なお、上記第2の実施形態では、立体構造の最も膨らんだ部分に開口部11’を設ける構成を示したが、第1の実施形態と同様に、鼻の位置に単に開口を有する構成としてもよい。
また、上記第2の実施形態では、鼻の部分に開口部11’を設けるとともに、目の部分に開口部14を設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、口の部分にも開口部を更に設けるようにしてもよい。また、第1の実施形態と同様に、鼻の部分にのみ開口部を設けるようにしてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態では、振動呈示部13,13A,13Bを、マスク上で顔面とは反対側に向かって膨らんだ部位とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、振動呈示部13,13A,13Bは、周囲の面から膨らませる構成としなくても、フェイシャルシート200の一部が振動呈示部13,13A,13Bに接触しないように形成されていればよい。
例えば、振動呈示部13,13A,13Bの周囲の面がフェイシャルシート200から十分に離間するような形状に構成されていて、膨らみ部12,12’がフェイシャルシート200に接触するように十分に膨らんでいれば、振動呈示部13,13A,13Bは、周囲の面から膨らむことなく連続した部位であってもよい。また、マスク上で顔面に向かって、フェイシャルシート200に接触しない程度に膨らんだ部位または窪んだ部位としてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態では、ユーザの顔全体を覆うマスク型振動マッサージ装置100,100’と、ユーザの顔全体を覆うフェイシャルシート200とを用いて、顔全体に振動を与える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、顔の一部に振動を与える構成としてもよい。例えば、ユーザの顔の上半分または下半分に振動を与える構成とすることが可能である。
顔の上半分に振動を与える構成とする場合は、例えば、図14(a)に示すように、図3の膨らみ部12’を含めてこれより上側の構成のみでマスク型振動マッサージ装置100”を構成するとともに、上側半分のみでフェイシャルシート200”を構成する。また、顔の下半分に振動を与える構成とする場合は、例えば、図14(b)に示すように、図3の膨らみ部12’を含めてこれより下側の構成のみでマスク型振動マッサージ装置100”を構成するとともに、下側半分のみでフェイシャルシート200”を構成する。
あるいは、図14(a)または図14(b)のように、上半分または下半分でマスク型振動マッサージ装置100”を構成する一方、フェイシャルシート200を図1のように顔全体を覆う構成とすることにより、半分のみで簡易的に構成したマスク型振動マッサージ装置100”を用いて、フェイシャルシート200を介して顔全体に振動を与えるようにしてもよい。
その他、上記第1および第2の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。