JPWO2017191827A1 - 内部分解型ポリロタキサンおよびその合成方法 - Google Patents

内部分解型ポリロタキサンおよびその合成方法 Download PDF

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篤志 田村
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慶紀 有坂
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Abstract

本発明は、製造が簡便で、分解時の物性変化が大きい、分解性のポリロタキサン化合物を提供する。より具体的には、線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を合成することにより上記のポリロタキサン化合物を提供する。このようなポリロタキサン化合物は、線状高分子主鎖の内部に分解性部分を有していることから、両末端に分解性結合を有する従来的な分解性ポリロタキサン化合物に比べて、分解時により大きな分子量変化を生じることが可能であり、粘度・溶解性・ガラス転移点などの高分子の基本的物性を劇的に変化させうる。

Description

関連出願の相互参照
本願は、特願2016−92550号(出願日:2016年5月2日)の優先権の利益を享受する出願であり、これは引用することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
本発明は、線状高分子の内部に少なくとも1つの分解性結合を有する分解性のポリロタキサン化合物、およびその合成方法に関する。
ポリロタキサンは、線状高分子が複数の環状分子空洞部を貫通した骨格を有する超分子である。たとえば、生体適合性の高いポリエチレングリコール(PEG)(線状高分子)と医薬や食品に使用されているシクロデキストリン(CD)(環状分子)を水溶液中で混合した場合、自発的にPEGがCDの空洞部を貫通した包接錯体を沈殿として回収できることが知られている。また、この包接錯体の線状高分子末端に嵩高い官能基(封鎖基)を修飾することによってポリロタキサンを調製することができる。
国際公開パンフレットWO2015/025815(特許文献1)では、線状高分子の両末端と封鎖基の間に生体内分解性結合を含む官能基団を配置したポリロタキサンが合成され、末端分解による封鎖基の解離に伴ってポリロタキサン全体の分解消失が誘起されることが示されている。従来の分解型高分子は分解性基を修飾した一部分のみが順次分解して経時的に低分子量化していく性質をもっているが(非特許文献1および2)、分解型ポリロタキサンは封鎖基の解離によって線状高分子から環状分子が遊離する大きな分子量変化を伴う分解特性を有している。このような分解型ポリロタキサンの分解性官能基団を目的に応じて選択することによって、この分解型ポリロタキサンを生体内など様々な環境下で活用することが可能である。更にグルコースがα−1,4結合で環状に結合したCDは多数の水酸基を有するため様々な官能基をポリロタキサンに修飾することが可能であり、ポリロタキサンを容易に機能化することができる。
国際公開第2015/025815号
Middleton & Tipton, Synthetic biodegradable polymers as orthopedic devices, Biomaterials 21 (2000) 2335-2346 Lakshmi et al., Biodegradable polymers as biomaterials, Prog. Polym. Sci. 32 (2007) 762-798
本発明は、線状高分子の内部に少なくとも1つの分解性結合を有する分解性のポリロタキサン化合物を提供することを目的の一つとする。また、本発明は、線状高分子の内部に少なくとも1つの分解性結合を有する分解性のポリロタキサン化合物の製造方法を提供することを目的の一つとする。これまでに報告された分解性のポリロタキサン化合物は、いずれも、線状高分子鎖の両末端に分解性結合を有しており、1分子のポリロタキサンに対して分解性結合を2箇所配置する必要があり、そのために合成方法は6〜7工程以上を要していた。さらに、本発明は、線状高分子の内部に少なくとも1つの分解性結合を有する分解性のポリロタキサン化合物を含有する、さまざまな用途の組成物を提供することを別の目的の一つとする。
本発明者らは、生体内環境下で分解しうる結合を含む官能基団を末端部位から離れた主鎖内部に配置した線状高分子を合成し、この線状高分子が多数の環状分子(例えば、シクロデキストリン)の空洞部を貫通した超分子であるポリロタキサンを高純度・高収量で得ることに成功した。このポリロタキサンは、外部刺激による線状高分子内の分解性部分(分解性結合)の分解に伴って全ての環状分子が線状高分子から放出される新たな解離機構を有している。分解性結合の種類を組織内や細胞内局所など任意な部位・環境で治療や診断などの必要に応じて分解するよう選択できるので、たとえば細胞小器官内の様々な刺激(特異的酵素など)に応答して解離する細胞内分解性ポリロタキサンを精密に調製できる。またシクロデキストリン(CD)への重合性基などの修飾をもとにポリロタキサン骨格を有する生体内分解性3次元架橋体が多種多様に調製できるので、組織再生や歯科治療などへ応用する際に架橋体の物性(機械的強度、組織接着性、細胞分化増殖性など)を適用部位の治癒過程や治療目的に沿って自在に低下させることができる。
本発明の態様は、以下の事項に関する。
[1]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物。
[2]前記線状高分子が以下の式:
−Y(−Z−Y−X
に示される構造を有し、ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分であり、(−Z−Yは、分解性部分Yと線状高分子部分Zから成る繰り返し単位がi個存在することを示し、線状高分子中の各ZおよびYは同一でも異なっていてもよく、iは1〜500の整数である、[1]記載のポリロタキサン化合物。
[3]前記線状高分子が以下の式:
−Y−Z−Y−X
に示される構造を有し、ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分である、[1]記載のポリロタキサン化合物。
[4]前記分解性部分に連結された2つの線状高分子部分の長さの比が1:1〜1:4に含まれる、[1]〜[3]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[5]前記分解性部分が、酸分解性、酵素分解性、熱分解性、または光分解性である、[1]〜[4]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[6]前記分解性部分が、少なくとも一つの分解性基を含み、該分解性基が、p−メトキシフェナシル基、2−ニトロベンジル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロフェニルエチレングリコール基、ベンジルオキシカルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニル基、3−ニトロフェノキシ基、3,5−ジニトロフェノキシ基、3−ニトロフェノキシカルボニル基、フェナシル基、4−メトキシフェナシル基、α−メチルフェナシル基、3,5−ジメトキシベンゾイニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルフェニル基、(クマリン−4−イル)メチル基、7−ニトロインドリニル基、アリールアゾ燐酸エステル、エステル結合、シッフ塩基結合、カーバメート結合、ペプチド結合、エーテル結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合、ジスルフィド結合、有機過酸化物、およびアシルヒドラジン結合から成る群より選択される、[1]〜[5]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[7]環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンから成る群より選択される、[1]〜[6]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[8]環状分子が1つ又は複数の置換基を有する、[1]〜[7]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[9]置換基が、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、カルボキシル基、メチル基、スルホ基、一級アミノ基、ポリエチレングリコール、コラーゲン、トランスフェリン、RGDペプチド、オリゴアルギニン、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基、ビニル基、アリール基、スチリル基、および(メタ)アクリルアミド基から成る群より選択される、[8]記載のポリロタキサン化合物。
[10]線状高分子部分が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアミノ酸、およびポリメチルビニルエーテルから成る群より選ばれる、[1]〜[9]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[11]末端基が、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、O−トリフェニルメチル(O−Trt)基、S−トリフェニルメチル(S−Trt)基、N−トリフェニルメチル(N−Trt)基、N−トリチルグリシン、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)、トリチル基、フルオレセイン、ピレン、置換ベンゼン、置換されていてもよい多核芳香族、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、BMA(n−ブチルメタクリレート)、MPCとBMAとの組み合わせ、およびステロイドから成る群より選択される、[1]〜[10]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[12]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、接着用組成物。
[13]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、歯科材料組成物。
[14]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、表面コーティング剤。
[15]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、癒着防止剤。
[16]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、体内埋植剤。
[17]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、組織再生器材。
[18]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、疾患の治療または予防に用いるための医薬組成物。
[19]対象に対して、好ましくはヒトに対して、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する医薬組成物を投与する工程を含む、疾患の治療または予防のための方法。
[20]疾患の治療または予防のための薬剤の製造における、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物の使用。
[21]前記疾患が、細胞代謝機能の異常に起因する疾患、細胞内コレステロール蓄積に起因する疾患、またはオートファジーの機能障害に起因する疾患である、[18]記載の医薬組成物、[19]記載の方法、または[20]記載の使用。
[22]前記疾患が、ライソゾーム病、神経変性疾患、および癌から成る群より選択される、[18]記載の医薬組成物、[19]記載の方法、または[20]記載の使用。
[23]前記疾患が、ゴーシェ病(Gaucher病)、ニーマン・ピック病A型(Niemann−Pick病A型)、ニーマン・ピック病B型(Niemann−Pick病B型)、ニーマン・ピック病C型(Niemann−Pick病C型)、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、クラッベ病(Krabbe病)、異染性白質変性症、マルチプルサルタファーゼ欠損症(Multiple sulfatese欠損症)、ファーバー病(Farber病)、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型、ムコ多糖症III型、ムコ多糖症IV型、ムコ多糖症VI型、ムコ多糖症VII型、ムコ多糖症IX型、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、I−cell病/ムコリピドーシスIII型、α−マンノシドーシス、β−マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、シンドラー/神崎病(Schindler/神崎病)、ウォルマン病(Wolman病)、ダノン病(Danon病)、遊離シアル酸蓄積症、セロイドリポフスチノーシス、ファブリー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、およびアポトーシス耐性の癌から成る群より選択される、[18]記載の医薬組成物、[19]記載の方法、または[20]記載の使用。
[24]複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物の製造方法であって、a)線状高分子部分の両末端に反応性基を付加する工程、b)両末端に反応性基を付加した線状高分子部分を分解性部分を介して連結させて、少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む線状高分子を得る工程、c)線状高分子を環状分子と反応させて、擬ポリロタキサンを得る工程、およびd)擬ポリロタキサンの両末端に末端基を付加する工程を含む、製造方法。
[25]線状高分子部分の両末端に付加する反応性基が、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルファニル基、アジド基、アルキニル基、トシル基、および活性エステル基から成る群より選択される、[24]記載の製造方法。
本発明の一態様によると、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含むポリロタキサン化合物、言い換えれば、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子の内部に少なくとも1つの分解性部分を有するポリロタキサン化合物が提供される。
本発明に係る分解性ポリロタキサン化合物は、線状高分子主鎖の内部に分解性部分を有していることから、両末端に分解性結合を有する従来的な分解性ポリロタキサン化合物に比べて、分解時により大きな分子量変化を生じることが可能であり、粘度・溶解性・ガラス転移点などの高分子の基本的物性を劇的に変化させうる。また、これまでの両末端分解型ポリロタキサンとは根本的に設計が異なり、線状高分子主鎖の末端部位より離れた内部に分解性結合を配置するため酵素などの嵩高い構造をもった分子の分解性部位への接近も容易となり、広範な分解応答性の設計や分解効率の向上が期待できる。さらに、従来の分解型機能性ポリロタキサンは線状高分子鎖の両末端に分解性結合を導入するため、1分子のポリロタキサンに対して分解性結合を2箇所配置する必要があり、そのために合成方法は6〜7工程以上を要した。一方で本発明に係る分解型機能性ポリロタキサンは、線状高分子の中央付近にのみ分解性結合が配置されており、そのため合成方法が4工程以内に簡素化され、作製時間の短縮化の実現と回収量の向上が達成できるという利点もある。
分解性基を有するポリロタキサンAのH−NMRスペクトルを示した図である。 紫外線照射後のポリロタキサンAのGPCチャートを示した図である。 重合性基としてのメタクリロイル基を有するポリロタキサンBのH−NMRスペクトルを示した図である。 ポリロタキサンを含まないBis−GMA含有硬化体の引張試験の結果を示した図である。 ポリロタキサンBを含む硬化体の引張試験の結果を示した図である。 シリコーン製のモールド(厚さ1mm、長さ15mm、中心部の幅1mm、端部の幅2mmのダンベル状)に、ポリロタキサン、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、カンファーキノン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを混合して調製した光重合型接着剤を添加することによって、硬化体を作製することについて示した図である。 異なる質量部のポリロタキサンについて、非UV照射群とUV照射群の微小引張強さを示したグラフである。
本発明の態様の一つは、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含むポリロタキサン化合物、言い換えれば、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子の末端から離れた内部に少なくとも1つの分解性部分を有するポリロタキサン化合物に関する。以下に、本発明を詳細に説明する。
ポリロタキサン(PRX)化合物
ロタキサンは、大環状分子を線状高分子が貫通し、線状高分子の両末端に嵩高い部位を結合させることで、立体障害でリングが軸から抜けなくなったものである。ポリロタキサンでは、複数の大環状分子の環内を1本の線状高分子が貫いている。本発明において用いられる線状高分子や環状分子としては、公知の分子を使用でき、特に限定はされない。
本発明の一態様に係るポリロタキサンに含まれる線状高分子は、以下の式で示される構造を有する:
−Y(−Z−Y−X
ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分であり、(−Z−Yは、分解性部分Yと線状高分子部分Zから成る繰り返し単位がi個存在することを示し、線状高分子中の各ZおよびYは同一でも異なっていてもよい。iは特に限定はされないが、好ましくは1〜500の整数であり、より好ましくは1〜10、例えば1もしくは2である。
例えば、i=1の場合、線状高分子は、以下の式に示されるように、2つの線状高分子部分が1つの分解性部分を介して連結された構造となる:
−Y−Z−Y−X
ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分である。
例えば、i=2の場合、線状高分子は、以下の式に示されるように、3つの線状高分子部分が2つの分解性部分を介して連結された構造となる:
−Y−Z−Y−Z−Y−X
ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、Y、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、ZおよびZは同一もしくは異なる分解性部分である。
線状高分子または線状高分子部分としては、公知のポリロタキサンの構成を適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体(ポロキサマー)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリメチルビニルエーテル、ポリプロピレン、ポリペルフルオロオキシプロピレン、オリゴテトラフルオロエチレン、ポリカプロラクタム、ポリエチレンイミン、ポリアミノ酸、及びポリメチルビニルエーテルからなる群より選ばれることが好ましい。また、線状高分子の平均分子量は特に限定はないが、1000〜100000、特に2000〜40000あるいは5000〜20000であることが好ましい。1つの線状高分子に含まれる2以上の線状高分子部分は互いに同一でも、異なっていてもよい。また、線状高分子部分の平均分子量も特に限定はないが、100〜100000、特に200〜40000あるいは500〜20000であることが好ましい。
環状分子としては、従来公知の環状分子を使用することができる。α、β又はγ−シクロデキストリンであることが好ましいが、これと類似の環状構造を持つものであってもよく、そのような環状構造としては環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、シクロファン、クラウンエーテル等が挙げられる。例えば、擬ポリロタキサンの形成能という観点から好ましい環状分子は、α、β又はγ−シクロデキストリンであり、α−シクロデキストリンが特に好ましい。
本発明に係るポリロタキサンに含まれる環状分子は、1または複数の置換基を有していてもよい。環状分子としてシクロデキストリンを使用する場合、シクロデキストリンの水酸基に置換基を導入することができる。置換基としては、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(DMAE基と称することもある)、カルボキシル基、メチル基、硫酸基(スルホ基)、一級アミノ基、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、コラーゲンやトランスフェリンなどのタンパク質分子、RGDモチーフを含むペプチドやオリゴアルギニンなどのペプチド分子、および分子間の架橋に用いられる重合性基などが挙げられる。環状分子は複数種の置換基を含んでいてもよい。重合性基としては、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基などの(メタ)アクリロイル基の誘導体基;ビニル基;アリール基;スチリル基や、(メタ)アクリルアミド基などを好適に使用できる。好ましい重合性基は、メタクリロイル基である。本発明に係るポリロタキサン化合物は、複数種の重合性基を含んでいても良い。これらの基は、環状分子に直接結合していても、リンカーを介して結合していても良い。リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、エーテル結合(−O−)などが挙げられる。
線状高分子と環状分子の組み合わせとしては、α−シクロデキストリンとポリエチレングリコールの組み合わせ、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せなどが好ましい。なお、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せによるポリロタキサンの合成は、上記の特許文献1にも開示されており、その内容は参照により本明細書にも取り込まれる。線状高分子の分子数と環状分子の分子数との比率は、特に限定はないが、好ましくは1:1〜1:500であり、1:5〜1:200の比率がより好ましく、例えば、1:10〜1:100の比率が用いられる。すなわち、好ましくは線状高分子1分子に1〜500個の環状分子が含まれ、より好ましくは5〜200個の環状分子が含まれ、例えば、10〜100個の環状分子が含まれうる。
本発明において用いられる末端基(嵩高い置換基とも言う)としては、例えば、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、O−トリフェニルメチル(O−Trt)基、S−トリフェニルメチル(S−Trt)基、N−トリフェニルメチル(N−Trt)基、N−トリチルグリシン、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)、トリチル基、フルオレセイン、ピレン、置換ベンゼン(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない)、置換されていてもよい多核芳香族(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つまたは複数存在してもよい)、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、BMA(n−ブチルメタクリレート)、MPCとBMAとの組み合わせ、およびステロイドから成る群より選択されるものを使用できるが、これらに限定はされない。好ましい末端基の一つは、アダマンタン基である。末端基は、線状高分子部分に直接的に連結されている必要はなく、当業者に公知のリンカー部分(例えば、ペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、またはエーテル結合を含む部分)を介して連結されていてもよい。
本発明に係るポリロタキサン化合物は、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、線状高分子の末端から離れた内部に少なくとも1つの分解性部分を有する。本発明に係るポリロタキサン化合物が有する分解性部分は、少なくとも1つの分解性基を含む。分解性基の具体例としては、p−メトキシフェナシル基、2−ニトロベンジル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロフェニルエチレングリコール基、ベンジルオキシカルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニル基、3−ニトロフェノキシ基、3,5−ジニトロフェノキシ基、3−ニトロフェノキシカルボニル基、フェナシル基、4−メトキシフェナシル基、α−メチルフェナシル基、3,5−ジメトキシベンゾイニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルフェニル基、(クマリン−4−イル)メチル基、7−ニトロインドリニル基、アリールアゾ燐酸エステルユニット等の光開裂性基;エステル結合、シッフ塩基結合、カーバメート結合、ペプチド結合、エーテル結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合等の種々の加水分解性の結合;ジスルフィド結合等の還元剤によって分解可能な結合;有機過酸化物などの熱分解性基、アシルヒドラジン結合等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましい分解性基としては、例えば、光開裂性基、ジスルフィド基、2〜30アミノ酸残基からなるペプチドが挙げられる。ペプチドは特定のプロテアーゼやペプチダーゼなどの酵素によって認識され、切断される特定の配列を有していてもよい。
線状高分子が分解性部分を1つのみ有する場合、その位置は、線状高分子の中央付近であることが好ましく、別の言い方をすれば、分解性部分に連結された2つの線状高分子部分の長さの比が1:1であることが好ましいが、この位置に限定はされない。分解性部分に連結された2つの線状高分子部分の長さの比は、例えば、1:1〜1:4に含まれる任意の比でありうる。例えば、分解性部分が線状高分子内の中央に位置する場合、分解性部分の分解に伴い、線状高分子の半分の長さの2本の線状高分子部分が生じ、末端基の存在しない末端から環状分子が放出される。線状高分子が複数の分解性部分を有する場合、各分解性部分に連結された線状高分子部分の長さの比も、1:1であることが好ましいが、特に限定はなく、例えば、1:1〜1:4に含まれる任意の比でありうる。
本発明に係るポリロタキサンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1万〜50万程度とすることが好ましい。
歯科材料組成物/接着用組成物
本発明に係るポリロタキサン化合物は、歯科用接着材として使用されうる。複数のシクロデキストリン(CD)に重合性官能基を導入した光分解型ポリロタキサンは、架橋剤として働くため、他のモノマーと共重合することによって、簡便に三次元構造体を作製することができる。更にその三次元構造体は紫外線照射によって分解し、機械的強度を減少させることができる。たとえば、歯科材料におけるレジンモノマーとして、このような光分解型ポリロタキサン架橋剤を用いれば、可視光照射によって硬化し、紫外光照射によって分解する歯科用接着材への展開が可能となる。たとえば、Seoらは、紫外線照射によって光分解するニトロベンジルを線状高分子の両末端と封鎖基の間に配置した光分解型ポリロタキサンを用いた三次元構造体の構築を報告している(Seo et al.,ACS Macro Lett.,4,1154,2015)。よって、本発明の実施態様の一つは、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、接着用組成物に関する。また、本発明の別の実施態様は、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、歯科材料組成物に関する。
本発明に係る上記組成物は、重合性単量体をさらに含みうる。本発明に係る組成物に含まれるポリロタキサン化合物は、好ましくは重合性単量体の溶液に溶解性である。重合性単量体は、例えば、重合性不飽和基、開環重合性基、重縮合性基等の従来公知の重合性基を分子中に少なくとも一つ有するものを使用することができ、従来公知の接着性組成物において使用されている従来公知の重合性単量体が制限なく使用できる。これら重合性単量体は、熱、重合開始剤、ガンマ線、電解、プラズマ等の作用により重合開始反応を生じる。重合性単量体としては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、4-メタクリロキシエチルトリメリテートアンハイドライド等が挙げられる。
本発明に係る上記組成物は、重合開始剤をさらに含みうる。重合開始剤としては、従来公知のラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、重付加反応、重縮合反応、カップリング反応、無機合成ポリマー合成等に使用される従来公知の重合開始剤を使用できる。例えば、光重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノン等が挙げられる。
表面コーティング剤/癒着防止剤
本発明に係るポリロタキサン化合物は、材料表面のコーティング剤として使用されうる。例えば、Seoらは、様々な官能基や細胞接着性オリゴペプチドをCDに修飾することにより、タンパク質の不活性な表面吸着や細胞の迅速な接着などタンパク質レベル、細胞レベルのバイオ界面制御が可能となることが報告している(J.Am.Chem.Soc.,2013,135,5513)。さらに、Seoらは、たとえば、CDをメチル化したポリロタキサン表面を用いて血小板を活性化するフィブリノーゲンの吸着について解析した結果、表面に吸着したフィブリノーゲンは、コンフォメーション変化が抑えられ、不活性な状態であることも報告している(Soft Matter, 2012, 8, 5477)。ポリロタキサンを用いて作製した三次元構造体は、皮膚や血管を構成するコラーゲン線維のような機械特性をもっていることが知られている。すなわち、小さな変形に対しては柔軟性を示し、大きな変形に対しては高い剛性を示す(例えば、Ito,Polym.J.,2007,39,489を参照)。このような性質を有した材料は、筋肉や腱の伸縮もしくは胃の収縮や心臓の拍動などの生体の運動を追従しうる上に、細胞や細胞外マトリックスから構成される組織との接着を制御しうるため、ウェアラブルデバイスや創傷治癒材料、癒着防止剤としての展開が可能である。よって、本発明の実施態様の一つは、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、表面コーティング剤に関する。また、本発明の別の実施態様は、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、癒着防止剤に関する。
体内埋植剤/組織再生器材
本発明に係るポリロタキサン化合物は、その架橋などによって作製した三次元構造体が体内埋植剤や組織再生器材として使用されうる。例えば、Seoらは、ポリロタキサンを基盤とした先行研究において、シクロデキストリン(CD)貫通数を制御することによって、細胞骨格系タンパク質の形成を調節することが可能であり、表面分子運動性の低い表面上の間葉系幹細胞は、細胞骨格系タンパク質であるアクチン繊維の形成が促進され骨芽細胞に分化し、表面分子運動性の高い表面では、アクチン繊維の形成が阻害され、脂肪細胞に分化することを報告している(Adv. Healthcare Mater.,2015,4,215)。このような性質を有した材料は、生体内で細胞の分化や増殖を促進あるいは抑制した一定期間後に速やかに分解消失させることが可能であることから、各種埋植型医療デバイスの表面加工、体内埋植剤、組織再生を目的として生体内あるいは生体外で使用する細胞培養用の各種器材としての展開が可能である。
培養器材に接着した細胞では、器材の物理化学的特性を反映して生理活性シグナルが細胞内へ伝達され、それによって細胞の増殖、分化、死滅など代謝活動が調節されることが知られている。そのため、材料表面の物理化学的因子を制御し、それに従った細胞機能制御に関する研究がここ十年ほど活発に行われてきた。例えば、種々の弾力性を有するエラストマー表面上での間葉系幹細胞の分化特性は、接着しているエラストマーのヤング率が低くなることにより神経及び脂肪細胞への分化が促進され、高くなることにより骨芽細胞への分化が促進されることなどが知られている。
また、ヒト胚性幹細胞(hESC)は物理刺激感受性であり、培養器上のマイクロポストアレイのマトリクス剛性が高まると、細胞骨格の収縮性が増加し、硬い基質によってhESCの多能性の維持が促進されることが知られている。
このような器材の物理化学的特性を調整することで幹細胞の分化もしくは未分化維持を制御する技術として、分子運動性の異なるポリロタキサンブロック共重合体表面を有する培養器を用いて多能性幹細胞を培養して、その未分化性を維持すること、あるいは特定の細胞への分化を誘導することが可能である。
上述のように器材の物理化学的特性を調整することによって細胞の分化もしくは未分化維持の制御を生体なもしくは生体外で実現しても、それら細胞もしくは形成された組織を生体内で使用するには、それら器材の除去が必要である。また、生体内での組織欠損部位での再生の場合には、スカホールドの埋植使用によって欠損部位の空間を維持しつつ当該部位の組織を再生する特性が必要であることから、スカホールドの生体内分解が必須である(非特許文献1,2)。
本発明に係る埋植材や細胞培養器材は、分解型ポリロタキサンの架橋などによって作製することができる。線状高分子末端もしくは末端近傍、あるいは環状分子に架橋点を形成する官能基を導入して分解性ポリロタキサンを調製し、それを単独もしくは他の反応性分子とともに架橋することによって作製できる。架橋性官能基としては、例えばビニル基、アルデヒド基、カルボキシル基などがあげられる。架橋反応に用いる反応性分子としては、例えばビニル重合性モノマー、多糖類、タンパク質(ポリペプチド)などがあげられる。
分解性ポリロタキサンからなるスカホールドでは、ポリロタキサンの分子運動性によって生体内で細胞の分化増殖を促進した一定期間後に分解消失して細胞もしくは組織が周囲組織と一体化することが可能であり、生体内での欠損部位の空間確保、欠損部位における組織再生、再生後のスカホールド除去のいずれもが可能となる。
よって、本発明の実施態様の一つは、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、体内埋植剤に関する。また、本発明の別の実施態様は、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、組織再生器材に関する。これらの体内埋植剤および組織再生器材は、コラーゲンやゼラチンなどの他の材料、好ましくは生体吸収性の材料を含んでいてもよい。
医薬組成物
本発明に係るポリロタキサン化合物は、ライソゾーム病などの細胞代謝機能の異常に起因する疾患、細胞内コレステロール蓄積に起因する疾患、またはオートファジーの機能障害に起因する疾患の治療に用いるための医薬組成物の有効成分として使用されうる。本発明に係るポリロタキサン化合物の分解性部分として、細胞内の酸性環境下、pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する分解性基を採用することができる。このようなポリロタキサン化合物は、酸性環境下において分解され、ポリロタキサン骨格が崩壊し、β−CDなどの環状分子がリリースされる。
ヒトを含む真核生物の細胞内には、リソソームや後期エンドソームといった小胞が存在しており、これらの小胞の内腔は酸性化されていることが知られている。例えば、リソソームの内腔のpHは5前後である。よって、本発明に係るポリロタキサン化合物は、これらの小胞に取り込まれることにより分解されうる。本発明に係るポリロタキサン化合物は、分解に伴い、β−CDなどの環状分子をリリースする。例えば、リソソーム内でβ−シクロデキストリンが放出された場合、リソソーム内に存在するコレステロールを包接することができ、それにより、リソソーム内のコレステロールの過剰蓄積を原因とするニーマン・ピック病C型などのライソゾーム病が治療もしくは予防されうる(例えば、Tamura and Yui,Sci.Rep., 2014,4, 4356を参照)。
細胞内のコレステロールをβ−シクロデキストリンが包接することで、細胞内の過剰なコレステロールが引き起こす疾患の治療が可能であることが当業者には理解される。よって、本発明の一態様は、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、ポリロタキサン化合物の使用にも関する。医薬組成物として好ましい酸分解性ポリロタキサン化合物には、例えば、線状高分子の内部、好ましくは中央部にジスルフィド結合を有し、末端にN−トリフェニルメチル(N−Trt)基を有する化合物が含まれる。
代謝物がリソソームに蓄積することに起因する疾患としては、ライソゾーム病、より具体的には、ゴーシェ病(Gaucher病)、ニーマン・ピック病A型(Niemann−Pick病A型)、ニーマン・ピック病B型(Niemann−Pick病B型)、ニーマン・ピック病C型(Niemann−Pick病C型)、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(「Tay−Sachs Sandhoff AB型」と称することもある。)、クラッベ病(Krabbe病)、異染性白質変性症、マルチプルサルタファーゼ欠損症(Multiple sulfatese欠損症)、ファーバー病(Farber病)、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型(「ハンター病」と称することもある。)、ムコ多糖症III型(「サンフィリポ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IV型、ムコ多糖症VI型(「マロトー・ラミー病」と称することもある。)、ムコ多糖症VII型(「スライ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IX型(「Hyaluronidase欠損症」と称することもある。)、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、I−cell病/ムコリピドーシスIII型、α−マンノシドーシス、β−マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、シンドラー/神崎病(Schindler/神崎病)、ウォルマン病(Wolman病)、ダノン病(Danon病)、遊離シアル酸蓄積症、セロイドリポフスチノーシス、ファブリー病が挙げられる。なお、前記ライソゾーム病は、オートファゴソームの蓄積を生じる、オートファジー機能異常に起因する疾患でもある。
よって、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、ポリロタキサン化合物の使用にも関する。
本発明に係るポリロタキサン化合物は、細胞におけるオートファジーの誘導に用いるための組成物の有効成分として使用されうる。よって、本発明の一態様は、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、細胞においてオートファジーを誘導するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、細胞においてオートファジーを誘導するための薬剤の製造における、ポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明に係るメチル化ポリロタキサンは、細胞にオートファジー性細胞死を誘発しうる。オートファジー性細胞死を利用して、癌細胞に細胞死を誘導できることが当業者には知られている。よって、本発明の一態様は、癌を治療するための医薬組成物、好ましくはアポトーシス耐性の癌を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、癌を治療するため、特にアポトーシス耐性の癌を治療するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の製造における、ポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明の一態様は、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、ポリロタキサン化合物の使用にも関する。オートファジーの機能障害に起因する疾患としては、例えば、上述のライソゾーム病や、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患が挙げられる。
本発明に係るポリロタキサン化合物は、上記のような疾患の治療または予防に用いる医薬組成物中の有効成分として利用することができる。よって、本発明の一つの態様は、疾患の治療または予防に用いる医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物中のその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。担体にも、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。本発明に係る医薬組成物における含有量についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、体温付近、例えば、34℃〜42℃、より好ましくは35℃〜38℃あるいは37℃において水溶性である。
本発明に係る医薬組成物の剤形としては、特に制限はなく、所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、吸入散剤などが挙げられる。注射剤としては、例えば、本発明に係るポリロタキサン化合物に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、医薬組成物の剤形、患者の状態等に応じて、局所投与、全身投与のいずれかを選択することができる。例えば、局所投与としては、脳室内投与などが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、好ましくはヒトである。
本発明に係る医薬組成物の投与量としては、特に制限はなく、投与形態や、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
本発明に係る医薬組成物の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記疾患に感受性の患者に対して予防的に投与されてもよいし、症状を呈する患者に治療的に投与されてもよい。また、投与回数としても、特に制限はなく、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
製造方法
本発明に係る分解性ポリロタキサン化合物は、両末端に分解性基を有する従来的な分解性ポリロタキサン化合物に比べて、より簡便に、短い時間で合成することができる。本発明の一態様は、複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物の製造方法であって、a)線状高分子部分の両末端に反応性基を付加する工程、b)両末端に反応性基を付加した線状高分子部分を分解性部分を介して連結させて、少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む線状高分子を得る工程、c)線状高分子を環状分子と反応させて、擬ポリロタキサンを得る工程、およびd)擬ポリロタキサンの両末端に末端基を付加する工程を含む製造方法に関する。
上記の工程aにおいて、線状高分子部分の両末端に付加する反応性基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルファニル基、アジド基、アルキニル基、トシル基等の脱離基、カルボン酸スクシンイミドエステル等の活性エステル基でありうる。
上記の工程bの後に、線状高分子の長さに基づいて、線状高分子を選別してもよい。好ましくは、2つの線状高分子部分が1つの分解性部分を介して連結された線状高分子を選別する。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
実施例1:中央分解型ポリロタキサン架橋剤の合成
〔合成例1〕
<線状軸ポリマーの分子内に分解性基を有するポリロタキサンAの合成>
(1)ポリエチレングリコール両末端のカルボジイミダゾールによる活性化(PEG5k−CDIの調製)
1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI)10.8gに、テトラヒドロフラン240mLにポリエチレングリコール(PEG5k−OH)(重量平均分子量:4,400−4,800)20.0gを溶解させた溶液を窒素雰囲気下室温にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、窒素雰囲気下室温にて24時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後ジエチルエーテル中に滴下して、析出物を回収し乾燥した(回収量19.9g)。
Figure 2017191827

(2)ポリエチレングリコール両末端のアミノ化(PEG5k−NHの調製)
上記(1)で得られたPEG5k−CDI19.9gを、テトラヒドロフラン240mLに完全に溶解させた後、エチレンジアミン28.5mLに窒素雰囲気下、室温にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温下窒素雰囲気下にて24時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後ジエチルエーテル中に滴下して、析出物を回収した。得られた析出物は透析膜(分画分子量500)を用いて超純水に対して2日間透析を行った後、凍結乾燥を行い固体として回収した(回収量16.42g)。
Figure 2017191827

(3)アミノ化ポリエチレングリコールへの分解性基の導入(cNBPEG10k−NHの調製)
上記(2)で得られたPEG5k−NH15.0gをテトラヒドロフラン45mLに完全に溶解させた。また別のガラス容器を用いてCDIおよび2−ニトロ−p−キシレングリコール137.4mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解し室温で2時間反応させた後、この反応溶液をPEG5k−NH/テロラヒドロフラン溶液に滴下した。滴下終了後、室温下窒素雰囲気下にて24時間撹拌した。反応溶液をジエチルエーテル中に滴下して、析出物を回収した。得られた析出物は透析膜(分画分子量3,500)を用いて超純水に対して5日間透析を行った後、凍結乾燥を行い固体として回収した(回収量7.4g)。
Figure 2017191827

(4)cNBPEG10k−NHとα−シクロデキストリンを用いた包接錯体の調製および包接錯体の封鎖(線状軸ポリマーの分子内に分解性基を有するポリロタキサンAの調製)
α−シクロデキストリン(α−CD)15gを超純水103mLに溶解させ、そこに上記(3)で得られたcNBPEG10k−NH3gを12mLの超純水に溶解した溶液を滴下した。室温で24時間撹拌させた後、白濁析出した包接錯体を凍結乾燥して回収した。
BOP試薬4.0gおよび1−アダマンタンカルボン酸2.2g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1mLをN,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解させた溶液と回収した包接錯体を混合し、室温にて24時間反応させた。
反応溶液をメタノールに滴下して生成した析出物を遠心分離により回収した。回収した析出物をジメチルスルホキシドに溶解し、メタノールにて析出させる操作を数回繰り返した。つぎに回収した析出物をジメチルスルホキシドに溶解し、水にて析出させる操作を数回繰り返した。遠心分離で回収後、凍結乾燥することで精製したポリロタキサン(分解性基を有するポリロタキサンA)(回収量9.2g)を得た。
得られたポリロタキサン(分解性基を有するポリロタキサンA)は、H−NMRおよびGPCで同定し、未包接のCDが含まれないことを確認した。図1にPolyrotaxaneAのH−NMRスペクトルを示す。また、PEGに対するα−CDの貫通数を計算したところ、α−CDの貫通数は28.1分子であった。
Figure 2017191827

ポリロタキサンAをジメチルスルホキシド1mLに溶解した。その後1、5、10分間紫外線(254nm、2.5mW/cm)照射を行い、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)により低分子量化したことを確認した。図2に紫外線照射後のPolyrotaxaneAのGPCチャートを示す。この結果は光分解性を有するニトロベンゼンの開裂により切断され軸高分子鎖が分解し、一部または全部のα−CDが包接状態から非包接状態に遊離したことを示す。すなわち、ポリロタキサンAの超分子構造は紫外線(254nm、2.5mW/cm)照射によって分解・崩壊することが確認された。
〔合成例2〕
<疎水性基および重合性基としてのメタクリロイル基を有するポリロタキサンAの合成(ポリロタキサンBの調製)>
(5)分解性基を有するポリロタキサンAの重合性の賦与および疎水化(ポリロタキサンBの調製)
上記(4)で合成した1gの「分解性基を有するポリロタキサンA」を15mLの脱水ジメチルスルホキシドに溶解し、2−イソシアナートエチルメタクリレート209.9μLおよびブチルイソシアナート1.3mLを加えた。1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン500mgを加え、室温下24時間反応させた。反応後、透析膜(分画分子量3,500)を用いてジメチルスルホキシドに対して2日間の透析を行った。続いて同透析膜(分画分子量3,500)を用いて水に対して2日間の透析を行った。1H−NMR測定結果よりα−CD由来のピーク、アミノブチル基由来のピーク、メタクリロイル基由来のピークから包接したα−CD1分子当り1.2分子のメタクリロイル基と8.5分子のブチルイソシアナート基が導入されたことを確認した。図3にPolyrotaxaneBの1H−NMRスペクトルを示す。GPCにより分子量を確認した。また、吸収スペクトルを確認した結果、ポリロタキサンBがニトロベンジル基に由来する吸収を有すことを確認した。即ち、ポリロタキサンBは、分解性基として光開裂性基であるニトロベンジル基、および重合性基としてのメタクリロイル基を有する所定のポリロタキサンBであることを確認した。
Figure 2017191827

〔比較合成例1〕
<分解性基を有さないポリロタキサンの合成>
(6)ポリエチレングリコール両末端のカルボジイミダゾールによる活性化(PEG5k−CDIの調製)
1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI)2.4gに、テトラヒドロフラン100mLにポリエチレングリコール(PEG10k−OH)(重量平均分子量:10,000)10.0gを溶解させた溶液を窒素雰囲気下室温にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、窒素雰囲気下室温にて24時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後ジエチルエーテル中に滴下して、析出物を回収し乾燥した(回収量9.6g)。
(7)ポリエチレングリコール両末端のアミノ化(PEG10k−NHの調製)
上記(6)で得られたPEG10k−CDI9.5gを、テトラヒドロフラン100mLに完全に溶解させた後、エチレンジアミン6.3mLに窒素雰囲気下室温にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温下窒素雰囲気下にて24時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後ジエチルエーテル中に滴下して、析出物を回収した。得られた析出物は透析膜(分画分子量3,500)を用いて超純水に対して2日間透析を行った後、凍結乾燥を行い固体として回収した(回収量7.5g)。
(8)PEG10k−NHとα−シクロデキストリンを用いた包接錯体の調製および包接錯体の封鎖(線状軸ポリマーの分子内に分解性基を有さないポリロタキサンXの調製)
α−シクロデキストリン(α−CD)15gを超純水103mLに溶解させ、そこに上記(7)で得られたPEG10k−NH、3gを12mLの超純水に溶解した溶液を滴下した。室温で24時間撹拌させた後、白濁析出した包接錯体を凍結乾燥して回収した。BOP試薬4.0gおよび1−アダマンタンカルボン酸2.2g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1mLをN,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解させた溶液と回収した包接錯体を混合し、室温にて24時間反応させた。
反応溶液をメタノールに滴下して生成した析出物を遠心分離により回収した。回収した析出物をジメチルスルホキシドに溶解し、メタノールにて析出させる操作を数回繰り返した。回収した析出物をジメチルスルホキシドに溶解し、水にて析出させる操作を数回繰り返した。遠心分離で回収後、凍結乾燥することで精製したポリロタキサン(分解性基を有さないポリロタキサンX)(回収量10.1g)を得た。得られたポリロタキサン(分解性基を有さないポリロタキサンX)は、H−NMRおよびGPCで同定し、未包接のCDが含まれないことを確認した。またPEGに対するα−CDの貫通数を計算したところα−CDの貫通数は28.8分子であった。ポリロタキサンXをジメチルスルホキシド1mLに溶解した。その後1、5、10分間紫外線(254nm、2.5mW/cm)照射を行い、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量変化がないことを確認した。この結果は、光分解性を有するニトロベンゼンを含まない軸高分子鎖は紫外線照射に応答せず、α−CDが包接状態を維持したことを示す。
〔比較合成例2〕
<疎水性基および重合性基としてのメタクリロイル基を有するポリロタキサンXの合成(ポリロタキサンYの調製)>
(9)分解性基を有さないポリロタキサンXの重合性の賦与および疎水化(ポリロタキサンYの調製)
上記(8)で合成した1gのポリロタキサンXを15mLの脱水ジメチルスルホキシドに溶解し、2−イソシアナートエチルメタクリレート209.9μLおよびブチルイソシアナート1.3mLを加えた。1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン500mgを加え、室温下24時間反応させた。反応後、透析膜(分画分子量3,500)を用いてジメチルスルホキシドに対して2日間の透析を行った。続いて同透析膜(分画分子量3,500)を用いて水に対して2日間の透析を行った。
実施例2:疎水性基および重合性基を有するポリロタキサンBを用いて作製した硬化体の光誘起分解に対する最大引張強度低減効果
合成例2で合成したポリロタキサンBの29.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの69.5質量部、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの0.3質量部、カンファーキノンの0.7質量部を混合し、これを溶液型の光重合型接着剤Bとして使用した。シリコーン製のダンベル型モールドに光重合型接着剤Bを添加し、歯科用可視光線照射器(700mW/cm)で180秒間光照射し硬化体を作製した。硬化体は、シリコーン製のモールド(厚さ1mm、長さ15mm、中心部の幅1mm、端部の幅2mmのダンベル状)に光重合型接着剤Bを添加した後、可視光線照射器(波長400〜450nm、700mW/cm)で180分間光照射し硬化体を作製した。尚、波長400〜450nmにおける今回の光照射条件下ではポリロタキサンBのニトロベンジル基は開裂しないことを確認した。硬化体の一つはそのまま遮光下で静置した(非UV照射群、n=4)。硬化体の別の一つはUV照射(254nm、2.5mW/cm)を2分間行い、遮光下で静置した(UV照射群、n=4)。
光重合型接着剤Bの分解性について評価するために、上記と同様な方法を用いて比較硬化体を作製した。比較合成例2で合成したポリロタキサンYの29.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの69.5質量部、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの0.3質量部、カンファーキノンの0.7質量部を混合し、これを溶液型の光重合型接着剤Yとして使用した。シリコーン製のダンベル型モールドに光重合型接着剤Yを添加し、歯科用可視光線照射器(700mW/cm)で180秒間光照射し硬化体を作製した。硬化体は、シリコーン製のモールド(厚さ1mm、長さ15mm、中心部の幅1mm、端部の幅2mmのダンベル状)に光重合型接着剤Yを添加した後、可視光線照射器(波長400〜450nm、700mW/cm)で180分間光照射し硬化体を作製した。尚、波長400〜450nmにおける今回の光照射条件下ではポリロタキサンYのニトロベンジル基は開裂しないことを確認した。硬化体の一つはそのまま遮光下で静置した(非UV照射群、n=4)。硬化体の別の一つはUV照射(254nm、2.5mW/cm)を2分間行い、遮光下で静置した(UV照射群、n=4)。またポリロタキサンを含まない硬化体として、架橋剤であるBis−GMAを用いて硬化体を作製した。Bis−GMAの29.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの69.5質量部、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの0.3質量部、カンファーキノンの0.7質量部を混合し、この溶液を上記と同様な方法で硬化した。これら作製した硬化体を用いて引張試験を行い、得られた応力−歪み曲線から微小引張強度を算出した。尚、クロスヘッドスピードは、1mm/minにて測定した(島津製作所製、オートグラフ EZ Test)。
Bis−GMA含有硬化体は、弾性域において応力と歪みは線形に増加し、約60MPaで破断した(図4)。しかしながらポリロタキサンBを含む硬化体は、小さな変形に対して応力がほとんど変わらず大きな変形に対して応力が線形相関関係にあった。また非UV照射群では塑性域で材料が伸長した後破断したが、UV照射群では塑性域での硬化体の変形は認められず破断した。また光重合型接着剤Bおよび光重合型接着剤YにおけるUV照射前後の微小引張強さにも大きな違いが認められた。光重合型接着剤Bを使用した場合、非UV照射群の微小引張強さは45.7MPa(標準偏差2.4MPa)であったのに対し、UV照射群の微小引張強さは24.1MPa(標準偏差4.7MPa)と低かった(図5)。UV照射群においては、UV照射による光開裂性基(ニトロベンジル基)の開裂に伴うポリロタキサンBの分解により、微小引張強度が大幅に低減したことが考えられた。特に、比較的短時間のUV照射という簡便な処理により、微小引張強度を大幅に低減することができた。一方で光重合型接着剤Yを使用した場合、非UV照射群の微小引張強さは41.3MPa(標準偏差4.6MPa)であったのに対し、UV照射群の微小引張強さは38.2MPa(標準偏差4.9MPa)と低かった。即ち、分解性基として光開裂性基であるニトロベンジル基、および重合性基としてのメタクリロイル基を有するポリロタキサンBを使用して調製した光重合型接着剤Bにおいては、ポリロタキサンBの分解性結合であるニトロベンジルを開裂するように作用する特定波長UV光を作用させることで、調製した硬化体の微小引張強度を大幅に低減する効果が得られることを確認した。例えば光重合型接着剤Bの硬化体にポリロタキサンBの分解性結合を切断するように作用する光照射を行うという簡単な操作により、短時間の作用時間においても大幅に接着性を低下できることが示された。
実施例3:ポリロタキサンBの含有量を変えて作製した硬化体の光誘起分解に対する最大引張強度低減効果
合成例2で合成したポリロタキサンB及び比較合成例2で合成したポリロタキサンYの質量部を9.5、29.5、49.5とし2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの0.3質量部、カンファーキノンの0.7質量部を固定し、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの質量部を質量部の合計が100となるように混合し、光重合型接着剤として使用した(図6)。実施例2は、ポリロタキサンYの質量部を29.5とした場合であり、本実施例3に合わせて記載している。実施例2と同様にシリコーン製のモールド(厚さ1mm、長さ15mm、中心部の幅1mm、端部の幅2mmのダンベル状)に光重合型接着剤を添加した後、可視光線照射器(波長400〜450nm、700mW/cm)で180分間光照射し硬化体を作製した。尚、波長400〜450nmにおける今回の光照射条件下ではポリロタキサンBのニトロベンジル基は開裂しないことを確認した。硬化体の一つはそのまま遮光下で静置した(非UV照射群、n=4)。硬化体の別の一つはUV照射(254nm、2.5mW/cm)を2分間行い、遮光下で静置した(UV照射群、n=4)。UV分解型でない重合型接着剤Yの場合、ポリロタキサンYのいずれの質量部でも非UV照射群とUV照射群の微小引張強さは差がなかった(表1および図7)。一方、UV分解型の重合型接着剤Bの場合、質量部が29.5と49.5の場合は、非UV照射群に比べてUV照射群の微小引張強さは各々47%、20%の減少が見られ(図7)、UV裂性基であるニトロベンジル基を有するポリロタキサンBを使用して調製した光重合型接着剤BにおいてはUV光を作用させることで調製した硬化体の微小引張強度を大幅に低減する効果が得られることを確認した。光重合型接着剤Bの硬化体にポリロタキサンBの分解性結合を切断するように作用する光照射を行うという簡単な操作により、短時間の作用時間においても大幅に接着性を低下できることが示された。
Figure 2017191827
本発明に係る中央分解型の機能性ポリロタキサンは、両端に分解性リンカーを有する従来的なポリロタキサンを置き換える形で、さまざまな用途に利用することができる。このような中央分解型の機能性ポリロタキサンは、合成ステップが両端分解型よりも少ないので、製造上も利点があり、また、両端への導入が難しいペプチドなどの機能性分子を利用することも可能となる。可能な用途としては、上述のように、歯科材料におけるレジンモノマーとしての利用や、ニーマンピック病C型(NPC)の治療薬としての使用などが挙げられる。

Claims (25)

  1. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物。
  2. 前記線状高分子が以下の式:
    −Y(−Z−Y−X
    に示される構造を有し、ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分であり、(−Z−Yは、分解性部分Yと線状高分子部分Zから成る繰り返し単位がi個存在することを示し、線状高分子中の各ZおよびYは同一でも異なっていてもよく、iは1〜500の整数である、請求項1記載のポリロタキサン化合物。
  3. 前記線状高分子が以下の式:
    −Y−Z−Y−X
    に示される構造を有し、ここで、XおよびXは同一もしくは異なる末端基であり、YおよびYは同一もしくは異なる線状高分子部分であり、Zは分解性部分である、請求項1記載のポリロタキサン化合物。
  4. 前記分解性部分に連結された2つの線状高分子部分の長さの比が1:1〜1:4に含まれる、請求項1〜3のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  5. 前記分解性部分が、酸分解性、酵素分解性、熱分解性、または光分解性である、請求項1〜4のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  6. 前記分解性部分が、少なくとも一つの分解性基を含み、該分解性基が、p−メトキシフェナシル基、2−ニトロベンジル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロフェニルエチレングリコール基、ベンジルオキシカルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニル基、3−ニトロフェノキシ基、3,5−ジニトロフェノキシ基、3−ニトロフェノキシカルボニル基、フェナシル基、4−メトキシフェナシル基、α−メチルフェナシル基、3,5−ジメトキシベンゾイニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルフェニル基、(クマリン−4−イル)メチル基、7−ニトロインドリニル基、アリールアゾ燐酸エステル、エステル結合、シッフ塩基結合、カーバメート結合、ペプチド結合、エーテル結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合、ジスルフィド結合、有機過酸化物、およびアシルヒドラジン結合から成る群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  7. 環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンから成る群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  8. 環状分子が1つ又は複数の置換基を有する、請求項1〜7のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  9. 置換基が、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、カルボキシル基、メチル基、スルホ基、一級アミノ基、ポリエチレングリコール、コラーゲン、トランスフェリン、RGDペプチド、オリゴアルギニン、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基、ビニル基、アリール基、スチリル基、および(メタ)アクリルアミド基から成る群より選択される、請求項8記載のポリロタキサン化合物。
  10. 線状高分子部分が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアミノ酸、およびポリメチルビニルエーテルから成る群より選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  11. 末端基が、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、O−トリフェニルメチル(O−Trt)基、S−トリフェニルメチル(S−Trt)基、N−トリフェニルメチル(N−Trt)基、N−トリチルグリシン、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)、トリチル基、フルオレセイン、ピレン、置換ベンゼン、置換されていてもよい多核芳香族、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、BMA(n−ブチルメタクリレート)、MPCとBMAとの組み合わせ、およびステロイドから成る群より選択される、請求項1〜10のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  12. 下記構造式を有する、α−シクロデキストリンと直鎖状分子を含むポリロタキサン化合物であって、
    Figure 2017191827

    ここで、nはポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、
    直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、α−シクロデキストリンの数が20〜40であり、末端基がアダマンタン基から成り、分解性基が2−ニトロベンジル基であるポリロタキサン化合物。
  13. 下記構造式を有する、メタクリロイル基とブチルイソシアナート基が結合したα−シクロデキストリンと直鎖状分子を含むポリロタキサン化合物であって、
    Figure 2017191827

    ここで、nはポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、
    α−シクロデキストリン1分子あたり1〜10個のメタクリロイル基と5〜20個のブチルイソシアナート基を有し、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、α−シクロデキストリンの数が20〜40であり、末端基がアダマンタン基から成り、分解性基が2−ニトロベンジル基であるポリロタキサン化合物。
  14. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、接着用組成物。
  15. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、歯科材料組成物。
  16. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、表面コーティング剤。
  17. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、癒着防止剤。
  18. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、体内埋植剤。
  19. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、組織再生器材。
  20. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物を含有する、疾患の治療または予防に用いるための医薬組成物。
  21. 請求項12または請求項13に記載のポリロタキサン化合物を含有する、接着用組成物、歯科材料組成物、表面コーティング剤、癒着防止剤、体内埋植剤、組織再生器材、または疾患の治療もしくは予防に用いるための医薬組成物。
  22. 複数の環状分子と、末端基を有する1つの線状高分子とを含み、該線状高分子が少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む、ポリロタキサン化合物の製造方法であって、a)線状高分子部分の両末端に反応性基を付加する工程、b)両末端に反応性基を付加した線状高分子部分を分解性部分を介して連結させて、少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む線状高分子を得る工程、c)線状高分子を環状分子と反応させて、擬ポリロタキサンを得る工程、およびd)擬ポリロタキサンの両末端に末端基を付加する工程を含む、製造方法。
  23. 線状高分子部分の両末端に付加する反応性基が、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルファニル基、アジド基、アルキニル基、トシル基、および活性エステル基から成る群より選択される、請求項22記載の製造方法。
  24. 請求項12または請求項13に記載のポリロタキサン化合物の製造方法であって、a)線状高分子部分の両末端に反応性基を付加する工程、b)両末端に反応性基を付加した線状高分子部分を分解性部分を介して連結させて、少なくとも1つの分解性部分を介して連結された少なくとも2つの線状高分子部分を含む線状高分子を得る工程、c)線状高分子を環状分子と反応させて、擬ポリロタキサンを得る工程、およびd)擬ポリロタキサンの両末端に末端基を付加する工程を含む、製造方法。
  25. 線状高分子部分の両末端に付加する反応性基が、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルファニル基、アジド基、アルキニル基、トシル基、および活性エステル基から成る群より選択される、請求項24記載の製造方法。
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