JPWO2017188257A1 - メチル化ポリロタキサンおよびその合成方法 - Google Patents

メチル化ポリロタキサンおよびその合成方法 Download PDF

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篤志 田村
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Abstract

本発明は、メチル化された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を提供する。粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む製造方法によって、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を製造することができる。メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物は、ライソゾーム病や癌などの疾患の治療薬として有用となりうる。

Description

関連出願の相互参照
本願は、特願2016−90121号(出願日:2016年4月28日)の優先権の利益を享受する出願であり、これは引用することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
本発明は、メチル化された複数の環状分子を有する、酸分解性のポリロタキサン化合物、およびその合成方法に関する。より詳細には、メチル化された複数のβ−シクロデキストリンを有する、酸分解性のポリロタキサン化合物、およびその合成方法に関する。また、メチル化された複数の環状分子を有する、酸分解性のポリロタキサン化合物のオートファジー誘導剤としての使用、および疾患の治療薬としての使用にも関する。
ポリロタキサンは、軸となる直鎖状の分子(主軸とも言う)が複数の大環状分子(リング)を貫通した構造を有する化合物であり、軸の両末端に嵩高い部位を結合させることで、立体障害により大環状分子が軸から抜けなくなっている。両末端の嵩高い部位はストッパーまたはキャップ、末端基と呼ばれる。ストッパーがない場合や、ストッパーがあっても嵩高さが不十分な場合は、リングと軸が分かれることがあり、擬ロタキサンと呼ばれる。
国際公開パンフレットWO2015/025815(特許文献1)には、β−シクロデキストリンを環状分子として含有する酸分解性ポリロタキサンが開示されている。この酸分解性ポリロタキサンは、細胞内環境で分解し、貫通していたβ−シクロデキストリンを細胞内局所で放出することが可能である。従来的な遊離β−シクロデキストリンは主に細胞膜と作用することから、酸分解性ポリロタキサンはβ−シクロデキストリンの作用部位を変化させることが可能な化合物として、疾患治療への応用が検討されている。上記WO2015/025815では、細胞のリソソームにコレステロールが蓄積するニーマンピック病C型に対する治療効果が試験され、酸分解性ポリロタキサンは従来のβ−シクロデキストリンよりも低濃度でコレステロールの蓄積を改善することが報告されている。
β−シクロデキストリンによる物質包接作用は、β−シクロデキストリンへの化学修飾によって変化することが知られている。様々なβ−シクロデキストリン誘導体の中でも、水酸基をメチル化した誘導体(メチル化β−シクロデキストリン)はコレステロールやアダマンタン等、種々の化合物との結合定数(錯安定度定数)が最も高いことが知られている(非特許文献1)。よって、メチル化β−シクロデキストリンを環状分子として有する酸分解性ポリロタキサンは上記ニーマンピック病C型に対する治療効果を高めることや、新たな細胞機能を誘導することが期待されるものの、メチル化β-シクロデキストリンを含有する酸分解性ポリロタキサンの合成は、これまで達成されていなかった。
国際公開第2015/025815号
T.Irie, K.Uekama, J. Pharm. Sci. 1997, 86(2), pp.147-162.
本発明は、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を提供することを目的の一つとする。また、本発明は、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の合成方法を提供することを目的の一つとする。さらに、本発明は、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、疾患の治療剤を提供することを別の目的の一つとする。
本発明の態様は以下の事項に関する。
[1]メチル化された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
[2]細胞内の酸性環境下で分解する、[1]記載のポリロタキサン化合物。
[3]pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する、[1]または[2]記載のポリロタキサン化合物。
[4]環状分子がβ−シクロデキストリンである、[1]〜[3]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[5]β−シクロデキストリンの水酸基がメチル化されている、[4]記載のポリロタキサン化合物。
[6]β−シクロデキストリンが1分子あたり6〜21個のメチル基を有する、[4]または[5]記載のポリロタキサン化合物。
[7]直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む、[1]〜[6]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[8]直鎖状分子がポロキサマーを含む、[1]〜[7]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[9]直鎖状分子の分子量が4000〜7000である、[1]〜[8]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[10]直鎖状分子と環状分子との分子数の比率が1:10〜1:15であることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[11]末端基が、置換基を有する又は有さないO−トリフェニルメチル基、置換基を有する又は有さないS−トリフェニルメチル基、および置換基を有する又は有さないN−トリフェニルメチル基から成る群より選択される、[1]〜[10]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[12]末端基が直鎖状分子にペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、またはエーテル結合を介して連結されている、[1]〜[11]のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
[13]メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む、製造方法。
[14]メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程、および粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む、製造方法。
[15]メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物。
[16]メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、癌を治療するための医薬組成物。
[17]癌がアポトーシス耐性の癌である、[16]記載の医薬組成物。
[18]メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物。
[19]メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
[20]メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための方法。
[21]対象に対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、癌を治療するための方法。
[22]癌がアポトーシス耐性の癌である、[21]記載の方法。
[23]対象に対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための方法。
[24]対象に対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法。
[25]細胞においてオートファジーを誘導するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[26]癌を治療するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[27]癌がアポトーシス耐性の癌である、[26]記載の使用。
[28]細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[29]ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用。
[30]環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
[31]環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
本発明の一態様によると、メチル化された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物が提供される。このようなポリロタキサン化合物は、酸性環境下で分解し、メチル化された複数の環状分子を放出することができる。
ポリロタキサンのβ−シクロデキストリンにメチル基を導入するための反応スキームを示した図である。 サイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。PRXおよびMe−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く、高分子量化していることから、合成が確認される。 Me−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果を示した図である。 HEE−PRXのサイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。 Me−PRXのプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果を示した図である。 Me−PRXのN−トリチル基脱離率を示した図である。 Me−PRXのサイズクロマトグラフィーの結果を示した図である。N−トリチル基の脱離率に応じて12.2Me−P103に由来したピークが減少し、β−CD由来のピークが増加した。 HEE−PRXのN−トリチル基脱離率を示した図である。 HEE−PRXのサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を示した図である。N−トリチル基の脱離率に応じてHEE−PRXに由来したピークが減少し、β−CD由来のピークが増加した。 さまざまな濃度の各種Me−PRXの600nmにおける透過率の測定結果を示した図である。 3−メチルアデニン(3−MA)の存在下および非存在下においてDM−β−CDまたはMe−PRXで処置した細胞中のGFP陽性オートファゴソームを示した写真(左)と、3−メチルアデニン(3−MA)の存在下および非存在下においてDM−β−CDまたはMe−PRXで処置した細胞中のGFP陽性のオートファゴソーム数を計測した結果を示すグラフ(右)である。 Me−P103、HEE−PRX、およびMe−β−CDで処置したHeLa細胞の細胞生存率を示したグラフである。 オートファジー阻害剤である3−メチルアデニンの存在下で細胞をMe−PRXとMe−β−CDで処置した場合の細胞生存率を示したグラフである。 Caspase阻害剤であるzVAD−FMKの存在下で、Bax/Bak DKO MEF細胞をMe−PRX、Me−β−CD、またはDM−β−CDにより処置した場合の細胞の写真(左)と、細胞生存率を示したグラフ(右)である。 HP−β−CDまたはPRXで処置したニーマン・ピック病C型患者由来皮膚繊維芽細胞におけるコレステロールの局在を観察した結果を示す写真である。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させることにより、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を製造した。
ポリロタキサン(PRX)化合物
ロタキサンは、大環状分子を直鎖状分子が貫通し、直鎖状分子の両末端に嵩高い部位を結合させることで、立体障害でリングが軸から抜けなくなったものである。ポリロタキサンでは、複数の大環状分子の環内を1本の直鎖状分子が貫いている。
本発明において用いられる直鎖状分子や環状分子は特に限定されないが、直鎖状分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体(ポロキサマー)、ポリエチレンイミン、ポリアミノ酸、及びポリメチルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。また、直鎖状分子の平均分子量は1000〜20000、特に2000〜10000あるいは4000〜7000であることが好ましく、例えば、分子量およそ5000のポロキサマーが使用されうる。
環状分子としては、α、β又はγ−シクロデキストリンであることが好ましいが、これと類似の環状構造を持つものであってもよく、そのような環状構造としては環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等が挙げられる。コレステロール包接能の観点から好ましい環状分子は、β−またはγ−シクロデキストリンであり、β−シクロデキストリンが特に好ましい。
本発明に係るポリロタキサンに含まれる環状分子はメチル基を有する。環状分子は、好ましくはβ−シクロデキストリンであり、β−シクロデキストリンの水酸基がメチル化されている。β−シクロデキストリンは、例えば、1分子あたり1〜21個、好ましくは6〜21個のメチル基を有する。環状分子は、メチル基以外の置換基を有していても良い。他の置換基としては、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(DMAE基と称することもある)、カルボキシル基、一級アミノ基、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、トランスフェリンなどのタンパク質分子、オリゴアルギニンなどのペプチド分子などが挙げられる。これらの基は、環状分子に直接結合していても、リンカーを介して結合していても良い。リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、エーテル結合(−O−)などが挙げられる。
直鎖状分子と環状分子の組み合わせとしては、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せが好ましい。なお、β−シクロデキストリンとポロキサマーとの組合せによるポリロタキサンの合成は、上記の特許文献1にも開示されており、その内容は参照により本明細書にも取り込まれる。好ましい直鎖状分子の分子数と環状分子の分子数との比率は1:4〜1:50であり、1:8〜1:20の比率がより好ましく、例えば、1:10〜1:15の比率が用いられる。すなわち、好ましくは直鎖状分子1分子に4〜50個の環状分子が含まれ、より好ましくは8〜20個の環状分子が含まれ、例えば、10〜15個の環状分子が含まれうる。
本発明において用いられる末端基(嵩高い置換基とも言う)としては、例えば、O−トリフェニルメチル(O−Trt)基、S−トリフェニルメチル(S−Trt)基、N−トリフェニルメチル(N−Trt)基が挙げられるが、限定はされない。末端基は、置換基を有するO−トリフェニルメチル基、S−トリフェニルメチル基、N−トリフェニルメチル基などであってもよい。好ましくは、N−トリフェニルメチル基が用いられる。N−Trt基は、弱酸性環境下において分解され、ポリロタキサン骨格が崩壊し、β−CDなどの環状分子がリリースされる。末端基は、ペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、エーテル結合などを介して直鎖状分子に連結されうるが、好ましくはペプチド結合が用いられる。よって、本発明の一態様は、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物に関する。β−シクロデキストリンが有する置換基は、好ましくはメチル基であるが、限定はされず、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチル(HEE)基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基(DMAE基と称することもある)、カルボキシル基、一級アミノ基、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子や、トランスフェリンなどのタンパク質分子、オリゴアルギニンなどのペプチド分子などであってもよい。これらの基は、環状分子に直接結合していても、リンカーを介して結合していても良い。リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(−O−CO−NH−)、エステル結合(−O−CO−)、カルボネート結合(−O−CO−O−)、エーテル結合(−O−)などが挙げられる。
本発明に係るポリロタキサン化合物は、酸分解性の結合を介して末端基が直鎖状分子に連結された構造を有していても良い。酸分解性の結合としては、例えば、アセタール結合、ケタール結合、ジスルフィド結合、エステル結合、オルトエステル結合、ビニルエーテル結合、ヒドラジド結合、アミド結合などが挙げられるが、限定はされない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。末端基としては、例えば、N−トリチルグリシン、1以上のベンゼン環を有する基、1以上の第三ブチルを有する基等が使用されうるが、これらに限定はされない。1以上のベンゼン環を有する基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基等が挙げられ、また、1以上の第三ブチルを有する基としては、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)等が挙げられる。なお、酸分解性の結合と末端基とは、直接的に連結されている必要はなく、当業者に公知のリンカー部分を介して連結されていてもよい。
本発明に係るポリロタキサンの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1万〜10万程度とすることが好ましい。
本発明に係るポリロタキサン化合物としては、直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)を含むポロキサマーであり、環状分子がβ−シクロデキストリンであり、末端基がN−トリフェニルメチル基であり、末端基が直鎖状分子にペプチド結合を介して連結されていることが特に好ましい。この場合、ポロキサマーの分子量は4000〜7000(例えば、約5000)であり、直鎖状分子1分子あたりのβ−シクロデキストリンの数は10〜15個(例えば、約12個)でありうる。よって、本発明に係るポリロタキサン化合物は、以下に示す化学構造を有するポリロタキサンを含む:
Figure 2017188257


ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である(ここでは、括弧内にポリプロピレングリコールの繰返し単位を3つ記載しているため、「m/3」と記載しているが、mが3の倍数である必要は無い)。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。xは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。Rは、置換基を示しており化学結合Lを介してβ−シクロデキストリンに結合している。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基(例えば、メチル基)は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。場合によっては化学結合Lは介さなくてもよい。Zは、キャッピング分子(例えば、N−トリフェニルメチル基)を示しており化学結合Y(例えば、ペプチド結合)を介して主軸高分子両末端に結合している。場合によっては化学結合Yは介さなくてもよい。
細胞内環境
本発明に係るポリロタキサン化合物は、酸性環境下で分解する酸分解性のポリロタキサン化合物であり、例えば、pH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する。上述のとおり、末端基としてN−Trt基を用いた場合、N−Trt基は弱酸性環境下において分解され、ポリロタキサン骨格が崩壊し、β−CDなどの環状分子がリリースされる。
ヒトを含む真核生物の細胞内には、リソソームや後期エンドソームといった小胞が存在しており、これらの小胞の内腔は酸性化されていることが知られている。例えば、リソソームの内腔のpHは5前後である。よって、本発明に係るポリロタキサン化合物は、これらの小胞に取り込まれることにより分解されうる。本発明に係るポリロタキサン化合物は、分解に伴い、β−CDなどの環状分子をリリースする。例えば、リソソーム内でβ−シクロデキストリンが放出された場合、リソソーム内に存在するコレステロールを包接することができ、それにより、リソソーム内のコレステロールの過剰蓄積を原因とするニーマン・ピック病C型などのライソゾーム病が治療もしくは予防されうる。
上述のとおり、メチル化されたβ−シクロデキストリンは、コレステロールの包接能が特に高いことが知られている。細胞内のコレステロールをメチル化されたβ−シクロデキストリンが包接することで、細胞内の過剰なコレステロールが引き起こす疾患の治療が可能であることが当業者には理解される。よって、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患としては、ライソゾーム病、より具体的には、ゴーシェ病(Gaucher病)、ニーマン・ピック病A型(Niemann−Pick病A型)、ニーマン・ピック病B型(Niemann−Pick病B型)、ニーマン・ピック病C型(Niemann−Pick病C型)、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(「Tay−Sachs Sandhoff AB型」と称することもある。)、クラッベ病(Krabbe病)、異染性白質変性症、マルチプルサルタファーゼ欠損症(Multiple sulfatese欠損症)、ファーバー病(Farber病)、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型(「ハンター病」と称することもある。)、ムコ多糖症III型(「サンフィリポ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IV型、ムコ多糖症VI型(「マロトー・ラミー病」と称することもある。)、ムコ多糖症VII型(「スライ病」と称することもある。)、ムコ多糖症IX型(「Hyaluronidase欠損症」と称することもある。)、シアリドーシス、ガラクトシアリドーシス、I−cell病/ムコリピドーシスIII型、α−マンノシドーシス、β−マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、シンドラー/神崎病(Schindler/神崎病)、ウォルマン病(Wolman病)、ダノン病(Danon病)、遊離シアル酸蓄積症、セロイドリポフスチノーシス、ファブリー病が挙げられる。なお、前記ライソゾーム病は、オートファゴソームの蓄積を生じる、オートファジー機能異常に起因する疾患でもある。
よって、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。また、本発明の一態様は、上述のように、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物にも関する。さらに、本発明の一態様は、環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物にも関する。
オートファジー
本発明者らは、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を作用させることにより、細胞にオートファジーを誘導できることを見出した。シクロデキストリンは、好ましくはβ−シクロデキストリンである。よって、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、細胞においてオートファジーを誘導するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明に係るメチル化ポリロタキサンは、細胞にオートファジー性細胞死を誘発しうる。オートファジー性細胞死を利用して、癌細胞に細胞死を誘導できることが当業者には知られている。よって、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、癌を治療するための医薬組成物、好ましくはアポトーシス耐性の癌を治療するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、癌を治療するため、特にアポトーシス耐性の癌を治療するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。
また、本発明に係るメチル化ポリロタキサンは、細胞にオートファジーを誘導することから、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するために使用されうることが当業者には理解される。よって、本発明の一態様は、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物に関する。また、別の観点からは、本発明の一態様は、対象に対して、好ましくはヒトに対して、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を投与する工程を含む、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための方法に関する。さらに、本発明の一態様は、オートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための薬剤の製造における、メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の使用にも関する。オートファジーの機能障害に起因する疾患としては、例えば、上述のライソゾーム病や、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患が挙げられる。
製造方法
メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物は、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む方法により、製造されうる。より具体的には、本発明に係る製造方法の一態様は、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程(工程A)、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程(工程B)、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程(工程C)、および粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程(工程D)を含む。
本発明に係る方法において、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる際には、脱水ジメチルスルホオキシドに溶解させたポリロタキサンが用いられうる。また、粉末化水酸化ナトリウムの存在下での酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルとの反応は、30分から3時間程度、好ましくは約1時間、撹拌することで行うことができる。撹拌は激しく行うことが好ましい。メチル基修飾数は、反応時のヨウ化メチルの当量により制御することが可能である。
医薬組成物
本発明に係るポリロタキサン化合物は、上記のような疾患の治療または予防に用いる医薬組成物中の有効成分として利用することができる。よって、本発明の一つの態様は、疾患の治療または予防に用いる医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物中のその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。担体にも、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。本発明に係る医薬組成物における含有量についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、体温付近、例えば、34℃〜42℃、より好ましくは35℃〜38℃あるいは37℃において水溶性である。
本発明に係る医薬組成物の剤形としては、特に制限はなく、所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、吸入散剤などが挙げられる。注射剤としては、例えば、本発明に係るポリロタキサン化合物に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、医薬組成物の剤形、患者の状態等に応じて、局所投与、全身投与のいずれかを選択することができる。例えば、局所投与としては、脳室内投与などが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、好ましくはヒトである。
本発明に係る医薬組成物の投与量としては、特に制限はなく、投与形態や、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
本発明に係る医薬組成物の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記疾患に感受性の患者に対して予防的に投与されてもよいし、症状を呈する患者に治療的に投与されてもよい。また、投与回数としても、特に制限はなく、投与対象の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<例1:ポリロタキサンの製造>
線状高分子としてプルロニックP103(ADEKA社製、商品名:アデカプルロニックP−103;ポリエチレングリコ−ル(以下、「PEG」と称することがある。)とポリプロピレングリコ−ル(以下、「PPG」と称することがある。)が、PEG−PPG−PEGの順に重合した共重合体;PPG部分の数平均分子量は3250、PEG部分の数平均分子量は810×2)を用い、以下のようにして、その両末端に一級アミノ基を結合させた。
前記プルロニックP103を10g、1,1’−カルボニルジイミダゾ−ル(シグマ−アルドリッチ社製)を12.8g量り取り、広口瓶へ加えた。テトラヒドロフラン(関東化学社製)を135mL加えて溶解させ、室温で24時間撹拌した。反応後、超純水を1mL加え10分間撹拌した。エチレンジアミン(和光純薬社製)を2.45g量り取り、ナス型フラスコへ加え、テトラヒドロフランを10mL加え溶解させた。プルロニックP103反応溶液をナス型フラスコへ滴下して加え、室温で24時間撹拌した。反応後、分画分子量3500の透析膜(スペクトラム社製)へ加え、メタノール(関東化学社製)に対し透析をすることで未反応物を除去した。ロータリーエバポレーターで濃縮することで両末端に一級アミノ基を有するプルロニックP103(以下、「P103−NH」と称することがある。)を7.22g得た。
前記P103−NHと、β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」と称することがある。)を用い、以下のようにして、擬ポリロタキサンを調製した。
前記β−CDを6.81g量り取り、広口瓶に加え、リン酸緩衝溶液340mLに溶解させた。前記P103−NHを1g量り取り、少量のメタノールに溶解させた。P103−NH溶液をβ−CD溶液に加え、室温で24時間撹拌した。反応後、得られた沈殿物を遠心分離により回収した。回収した固体を凍結乾燥することで擬ポリロタキサンを3.88g得た。
前記擬ポリロタキサンの両端部を、以下のようにしてN−トリチルグリシン(シグマ−アルドリッチ社製)でキャッピングすることにより、複数のβ−CDを貫通した線状高分子の両端部に酸性pH環境下で脱離する嵩高い置換基を有するポリロタキサン(以下、「PRX」と称することがある。)を得た。
N−トリチルグリシンを760mg、N−Hydroxysuccinimide(Acros Organics社製)を276mg、Ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride(東京化成工業社製)を536mg量り取り、スクリュー管に加え、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)を6.46mL加え、室温で3時間撹拌した。前記擬ポリロタキサンに対し、超純水17.2mL、メタノール8.62mL、および前記N−トリチルグリシン反応溶液を加え、室温で24時間撹拌した。反応後、得られた沈殿物を遠心分離により回収した。メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、超純水の順で得られた沈殿物を洗浄し、未反応物を除去した。回収した固体を凍結乾燥することで末端をN−トリチルグリシンでキャッピングされたポリロタキサンを1.79g得た。
前記ポリロタキサンのβ−CDにメチル(以下、「Me」と称することがある。)基を以下のようにして導入し(図1)、メチル化ポリロタキサン(以下、「Me−PRX」と称することがある。)を得た(ポリロタキサン1分子当たりのβ−CD平均貫通数は12.8;Me基の修飾数は平均12.2)。メチル化PRXの一般化学構造を以下に示す:
Figure 2017188257


ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。xは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。
前記ポリロタキサンを300mg量り取り、脱水ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)15mLに溶解させた。粉末化した水酸化ナトリウム(和光純薬社製)322mg、ヨウ化メチル(和光純薬社製)167μLを続けて加え、1時間激しく撹拌した。反応後、ジエチルエーテル(昭和エーテル社製)を加え沈殿物を回収し、分画分子量3500の透析膜へ加え、超純水に対し透析をすることで未反応物を除去した。回収した水溶液を凍結乾燥させることでメチル基を導入した、末端をN−トリチルグリシンでキャッピングされたポリロタキサン(Me−PRX)を227mg得た(図2)。
前記Me−PRXについて、溶離液を10mM LiBr含有ジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフィー測定、及び重水(関東化学社製)中で測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定を行った。
図2に示すサイズクロマトグラフィーの結果において、PRX、及びMe−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く高分子量化していることから、合成が確認された。また、遊離β−CDやN−トリチル基のピークが見られないことから、Me−PRXは超分子構造を損なうことなく高純度で合成されたことが示された。図3に示すプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、ポリロタキサンのβ−CDに導入されたMe基の修飾数がPRXのβ−CD1分子あたり12.2であることが明らかとなった。
また、プルロニックP103を主軸高分子としたMe−PRXの他に、プルロニックP123(シグマ−アルドリッチ社製;平均分子量5800)、プルロニックP105(第一工業製薬社製、商品名:エパンU−105;平均分子量6500)、プルロニックP84(ADEKA社製、商品名:アデカプルロニックP−84;平均分子量4200)、プルロニックL121(シグマ−アルドリッチ社製;平均分子量4400)を主軸高分子としたMe−PRXを合成した。プロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、算出したβ−CD貫通数、Me基修飾数、及び分子量を以下の表1に示す。
Figure 2017188257

前記N−トリチルグリシンでキャッピングを行ったポリロタキサンについて、上記のように調製した軸高分子をプルロニックP123としたポリロタキサンのβ−CDにヒドロキシエトキシエチル(以下「HEE」)基を以下の様に導入し、水溶性のポリロタキサン(以下、「HEE−PRX」)を得た(ポリロタキサン当たりのβ−CDの平均貫通数は12.7;β−CD一つ当たりのHEE基の修飾数は6.53)。ヒドロキシエトキシエチル化PRXの一般化学構造を以下に示す:
Figure 2017188257


ここで、mは、ポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。nは、ポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数である。xは、β−シクロデキストリンの数を示す整数である。ここでは、β−シクロデキストリンが括弧内の環状構造として示されている。図示の都合上、β−シクロデキストリン上の置換基は1つのみが示されているが、置換基の数は複数であってもよい。
前記プルロニックP123を主軸高分子とした末端がN−トリチルグリシンでキャッピングされたポリロタキサンを200mg量り取り、窒素雰囲気下でN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解した。1,1’−カルボニルジイミダゾールを282mg加え、室温で24時間撹拌した。その後、反応溶液に2−(2−アミノエトキシ)エタノール(東京化成工業社製)を900μL加え、さらに室温で24時間撹拌した。反応後、分画分子量3,500の透析膜へ加え、超純水に対し透析をすることで未反応物を除去した。回収した水溶液を凍結乾燥することで、β−CDにヒドロキシエトキシエチル基が導入され、プルロニックの末端がN−トリチルグリシンでキャッピングされたポリロタキサン(HEE−PRX)を得た。
前記HEE−PRXについて、溶離液を10mM LiBr含有ジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフフィー測定、及び重水(関東化学社製)中で測定した、400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル測定を行った。
図4に示すサイズクロマトグラフィーの結果から、PRX、及びHEE−PRXは溶出時間がβ−CDよりも早く、高分子量化していることより合成が確認された。また、遊離β−CDやN−トリチル基のピークが見られないことから、HEE−PRXは超分子構造を損なうことなく高純度で合成されたことが示された。図5に示すプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果から、ポリロタキサンのβ−CDに導入されたHEE基の修飾数がPRXのβ−CD1分子あたり6.53であることが明らかとなった。
<例2:pH酸分解性>
10mgの12.2Me−P103を2mLの10mM酢酸緩衝食塩水(pH5.0)、または10mMリン酸緩衝食塩水(pH7.4)(以下、「PBS」と称することがある。)に溶解し、37℃で所定の時間(1、3、6、12、24、48時間)静置した。時間毎に100μL回収し、50mM炭酸緩衝液(pH9.0)200μL、アセトニトリル(関東化学社製)300μLと混合した。0.22μmのフィルタ−を通し、ガラスバイアルに加え、高速液体クロマトグラフィー(日本分光社製)測定を行った。カラムとしてCosmosil 5C18−AR−II packed column及びCosmosil 5C18−AR−II guard column(ナカライテスク社製)、溶離液として超純水:アセトニトリル=20:80を使用し、カラム温度40℃、流速0.8mL/minにて測定を行い、12.2Me−P103より脱離したN−トリチル基の205nmにおける吸収強度を求めた。N−トリチル基が完全に脱離した際の吸収強度を100%として、以下のようにしてN−トリチル基脱離率を算出した。結果を図6に示す。
また、各pH、時間毎の12.2Me−P103測定溶液を凍結乾燥し、溶離液を10mM LiBr含有ジメチルスルホオキシドとしたサイズ排除クロマトグラフィー分析(東ソー社製)により12.2Me−P103の分解とβ−CDの放出を確認した。結果を図7に示す。
[試料]
(1)12.2Me−P103(例1で作製)
(2)HEE−PRX
[N−トリチル基脱離率の算出方法]
脱離率(%)={(各pH、時間におけるMe−PRX溶液の吸収強度)/(N−トリチル基が完全に脱離した際の吸収強度)}×100
図6の結果から、12.2Me−P103はpH5.0では3時間で60.9%、24時間で100%のN−トリチル基が脱離したのに対し、pH7.4では48時間後でも脱離率は10.5%であった。また図7の結果より、N−トリチル基の脱離率に応じて12.2Me−P103に由来したピークが減少し、β−CD由来のピークが増加した。以上の結果より、生理pH条件下ではMe−PRXは安定であるが、酸性pH環境下では末端のN−トリチルが脱離し、ポリロタキサン構造が崩壊することが明らかとなった。図8の結果から、HEE−PRXはpH5.0では3時間で66.9%,24時間で98.8%のN−トリチル基が脱離したのに対し,pH7.4では48時間後でも脱離率は7.33%であった。また図9の結果より、N−トリチル基の脱離率に応じてHEE−PRXに由来したピークが減少し、β−CD由来のピークが増加した。以上より、HEE−PRXはMe−PRXと同様に酸性pH環境下で末端のN−トリチルが脱離し、ポリロタキサン構造が崩壊することが明らかとなった。
<例3:温度応答性の評価>
各濃度のMe−PRX(表1)を10mMリン酸緩衝液(pH7.4)1mLに石英セル中で溶解させた。UV/Vis分光光度計(日本分光社製)を用いて、600nmにおける透過率測定(昇温温度:1.0℃/min)を行った。結果を図10に示す。
図10の結果は、主軸高分子の異なる各Me−PRXの透過率が2.5mg/mLにおいて50%となる温度(LCST)は、13.8Me−P105(46.9℃)>14.3Me−P123(40.0℃)>12.2Me−P103(39.1℃)>15.3Me−P84(33.1℃)>15.2Me−L121(30.6℃)の順に低下することを示している。各プルロニック(ポロキサマー)は分子鎖に占めるPPG部分の重量分率が異なるが、PPG重量分率が増加するにつれてLCSTが低下することが明らかとなった。また、メチル基修飾数が異なるプルロニックP123を軸高分子としたMe−PRXでは、6.3Me−P123では43.0℃、14.1Me−P123では36.5℃、21.0Me−P123では35.9℃であり、メチル基導入数の増加に伴いLCSTが低下することが明らかとなった。Me−PRXは構成成分により相転移温度を調整することが可能であることが示された。
<例4:オートファジーの誘導評価>
GFP−LC3を安定発現するHeLa細胞を35mmガラスボトムディッシュに1.0×10cells/dishの濃度で播種し、1日インキュベ−ションした。下記試料をβ−シクロデキストリン濃度換算で1mMとなるように培地中に加えた。24時間後に共焦点顕微鏡観察を行い、細胞中のGFP陽性のオートファゴソーム数を計測した。また、オートファジー阻害剤である3−メチルアデニン(メルク社製)を10mMの濃度で培地に添加した状態で前記と同様の実験を行った。結果を図11に示す。
[試料]
(1)12.2Me−P103(例1で作製)
(2)メチル−β−シクロデキストリン(以下、「Me−β−CD」と称する。;下記構造式(1)で表される化合物;シグマ−アルドリッチ社製;製品番号332615;構造式(1)では、前記メチル基の修飾がx個(x=0〜21)の場合を示している。)
Figure 2017188257


構造式(1)
各試料を添加した細胞中のGFP−LC3陽性のオートファゴソーム数の計測を行った結果、12.2Me−P103を作用させた細胞中には、未処理細胞、DM−β−CDを作用させた細胞よりも有意に多いGFP−LC3陽性オートファゴソームが生成していることが確認された。これらの小胞は3−メチルアデニンにより生成数が減少したことより、オートファジーの誘導により生成したオートファゴソームであると考えられる。以上の結果より、Me−PRXはオートファジーの誘導作用を示すことが明らかとなった。
<例5:細胞死の評価>
96wellプレートにHeLa細胞を0.5×10cells/well播種し、一日インキュベーションした。下記試料をβ−シクロデキストリン濃度換算で、各濃度培地に加えた。48時間後にCellCountingKit−8(同仁化学研究所社製)を添加し、37℃で1.5時間インキュベーションした。マイクロプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific社製)で450nmの吸光度を測定することで、細胞生存率を評価した。結果を図12に示す。また、オートファジー阻害剤である3−メチルアデニンを10mMの濃度で培地に添加した状態で、下記試料をβ−シクロデキストリン濃度換算で12.2Me−PRXを1mM、Me−β−CDを2mMとなるように培地中に加えた。前記と同様の実験を行い、細胞生存率を評価した。結果を図13に示す。
[試料]
(1)12.2Me−P103(例1で作製)
(2)HEE−PRX(例1で作製)
(3)Me−β−CD
各試料を添加した細胞の生存率を評価した結果、12.2Me−P103を作用させた細胞は、HEE−PRXやMe−β−CDを作用させた細胞よりも有意に細胞生存率が低下、つまり細胞死を強く誘導していた。この結果は12.2Me−P103が、メチル化β−CDを細胞内局所に放出し作用したためと考えられる。また3−メチルアデニンの存在下では、Me−β−CDを作用させた細胞は細胞生存率が低下したのに対し、12.2Me−P103を作用させた細胞では細胞生存率が増加した。つまり12.2Me−P103は、オートファジー阻害下では細胞死の誘導が抑制されたものと考えられる。以上の結果より、Me−PRXはオートファジー細胞死の誘導作用を示すことが明らかとなった。
<例6:アポトーシス抵抗性細胞に対する細胞死の誘導評価>
96wellプレートに、抗アポトーシス細胞としてアポトーシス亢進性タンパク質Bax/BakをノックアウトしたBax/Bak DKO MEF細胞を0.2×10cells/well播種し、一日インキュベーションした。Caspase阻害剤であるzVAD−FMKを50μMの濃度で培地に添加した状態で、下記試料をβ−シクロデキストリン濃度換算で、12.2Me−PRXを0.75mM、Me−β−CDを2mMとなるよう培地に加えた。48時間後にCellCountingKit−8(同仁化学研究所社製)を添加し、37℃で1.5時間インキュベーションした。マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定することで、細胞生存率を評価した。結果を図14に示す。
[試料]
(1)12.2Me−P103(例1で作製)
(2)Me−β−CD
(3)2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリン(以下、「DM−β−CD」と称することがある;下記構造式(2)で表される化合物;シグマ−アルドリッチ社製;製品番号H0513)
Figure 2017188257


構造式(2)
各試料を添加した細胞の生存率を評価した結果、Me−β−CD、DM−β−CDを作用させた細胞は、正常細胞 (WT MEF)と比較してアポトーシス抵抗性細胞 (Bax/Bak DKO MEF + zVAD)において細胞生存率が有意に増加していた。一方12.2Me−P103を作用させた細胞では、WT MEF細胞の細胞生存率が7.51%に対してBax/Bak DKO MEF細胞 + zVADでは8.50%であり,同等な殺細胞作用を示していた。この結果は、Me−β−CDやDM−β−CDがアポトーシスを誘導したのに対し、12.2Me−P103はアポトーシスとは異なる細胞死を誘導したと考えられる。Me−PRXによるオートファジー細胞死は、アポトーシス抵抗性細胞種に対して有意に細胞死を誘導するものと期待される。
<例7:NPC病細胞中のコレステロール減少作用>
健常者由来皮膚線維芽細胞(以下、「NHF」と称する。Coreill Instituteより入手)、ニーマン・ピック病C型患者由来皮膚繊維芽細胞(以下、「NPC1」と称する。Coreill Instituteより入手)を用い、以下のようにして細胞内のコレステロールの集積を調べた前記NPC1をガラスボトムディッシュに播種し(細胞数:1×10個/ディッシュ)、37℃で24時間培養後、下記試料をシクロデキストリン濃度に換算して10μM〜1000μM添加し、さらに37℃で24時間培養した。前記培養後、4%パラホルムアルデヒド溶液で細胞を固定し、50μg/mLに調製したフィリピン(Polysciences社製)のPBS溶液を加え45分間室温で静置した。PBSで3回洗浄した後、共焦点レーザー操作顕微鏡FluoView FV10i(オリンパス社製)でコレステロールの局在を観察した。結果を図15に示す。
[試料]
(1)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 1000μM(以下、「HP−β−CD」と称することがある;下記構造式(3)で表される化合物;シグマ−アルドリッチ社製;製品番号332607;構造式(3)では、前記ヒドロキシプロピル基の修飾がx個(x=1〜7)の場合を示している。)
(2)HEE−PRX(例1で作製) 100μM(β−CD濃度換算)
(3)HEE−PRX 1000μM(β−CD濃度換算)
(4)12.2Me−P103(例1で作製) 100μM(β−CD濃度換算)
(5)12.2Me−P103 1000μM(β−CD濃度換算)
Figure 2017188257


構造式(3)
図15の結果から、前記NHF細胞に比べ、前記NPC1細胞では多量のコレステロールが細胞内に沈着している様子が認められた。前記NPC1細胞に対し、前記HP−β−CDを1000μMの濃度で作用させると蛍光強度が減少したことより、コレステロールの排泄が促進されたと予想される。一方、細胞内分解性結合を有するHEE−PRXでは1000μMの濃度で処理した場合には、前記NHF細胞と同程度まで蛍光強度が減少し、前記HP−β−CDよりも優れたコレステロール除去作用が示された。Me−PRX(12.2Me−PRX)で処理したNPC1細胞も、前記NHF細胞と同程度まで蛍光強度が減少し、前記HP−β−CDよりも優れたコレステロール除去作用が示された。
本明細書には、本発明の好ましい実施態様を示してあるが、そのような実施態様が単に例示の目的で提供されていることは、当業者には明らかであり、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変形、変更、置換を加えることが可能であろう。本明細書に記載されている発明の様々な代替的実施形態が、本発明を実施する際に使用されうることが理解されるべきである。また、本明細書中において参照している特許および特許出願書類を含む、全ての刊行物に記載の内容は、その引用によって、本明細書中に明記された内容と同様に取り込まれていると解釈すべきである。
上記のとおり、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む製造方法によって、メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物が製造された。特に、メチル化された複数のβ−シクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物は、リソソーム内のコレステロールの過剰蓄積を原因とするニーマン・ピック病C型などのライソゾーム病の治療もしくは予防、癌、特にアポトーシス耐性の癌の治療等において有用となりうる。

Claims (23)

  1. メチル化された複数の環状分子と、末端基を有する直鎖状分子とを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
  2. 細胞内の酸性環境下またはpH4.0〜6.0の酸性環境下で分解する、請求項1記載のポリロタキサン化合物。
  3. 環状分子がβ−シクロデキストリンである、請求項1または2のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  4. β−シクロデキストリンの水酸基がメチル化されている、請求項3記載のポリロタキサン化合物。
  5. β−シクロデキストリンが1分子あたり6〜21個のメチル基を有する、請求項3または4記載のポリロタキサン化合物。
  6. 直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  7. 直鎖状分子がポロキサマーを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  8. 直鎖状分子の分子量が4000〜7000である、請求項1〜7のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  9. 直鎖状分子と環状分子との分子数の比率が1:10〜1:15であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  10. 末端基が、置換基を有する又は有さないO−トリフェニルメチル基、置換基を有する又は有さないS−トリフェニルメチル基、および置換基を有する又は有さないN−トリフェニルメチル基から成る群より選択される、請求項1〜9のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  11. 末端基が直鎖状分子にペプチド結合、カーバメート結合、エステル結合、またはエーテル結合を介して連結されている、請求項1〜10のいずれか一項記載のポリロタキサン化合物。
  12. 下記構造式を有する、メチル化されたβ−シクロデキストリンと直鎖状分子を含むポリロタキサン化合物であって、
    Figure 2017188257


    ここで、mはポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、nはポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、xはβ−シクロデキストリンの数を示す整数であり、
    β−シクロデキストリンが1分子あたり6〜21個のメチル基を有し、直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含み、直鎖状分子の平均分子量が4000〜7000であり、β−シクロデキストリンの数xが10〜15であり、末端基がN−トリフェニルメチル基から成り、酸分解性であり、全体の平均分子量が18,000〜27,000であるポリロタキサン化合物。
  13. メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む、製造方法。
  14. メチル化された複数の環状分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物の製造方法であって、ポロキサマーの両末端に一級アミノ基を有するポロキサマーを得る工程、前記ポロキサマーとβ−シクロデキストリンとを反応させて擬ポリロタキサンを得る工程、前記擬ポリロタキサンの両末端をN−トリチルグリシンでキャッピングする工程、および粉末状の水酸化ナトリウム存在下で酸分解性ポリロタキサンとヨウ化メチルを反応させる工程を含む、製造方法。
  15. メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物。
  16. メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、癌を治療するための医薬組成物。
  17. 癌がアポトーシス耐性の癌である、請求項15記載の医薬組成物。
  18. メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物。
  19. メチル化された複数のシクロデキストリン分子を含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
  20. 環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物。
  21. 環状分子として置換基を有するβ−シクロデキストリンと、直鎖状分子として末端にN−トリフェニルメチル基を有するポロキサマーとを含む、酸分解性のポリロタキサン化合物を含有する、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
  22. 下記構造式を有する、ヒドロキシエトキシエチル化されたβ−シクロデキストリンと直鎖状分子を含むポリロタキサン化合物であって、
    Figure 2017188257


    ここで、mはポロキサマー中のポリプロピレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、nはポリエチレングリコールの繰返し単位の数を示す整数であり、xはβ−シクロデキストリンの数を示す整数であり、
    β−シクロデキストリンが1分子あたり6〜21個のヒドロキシエトキシエチル基を有し、直鎖状分子がポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)を含み、直鎖状分子の平均分子量が4000〜7000であり、β−シクロデキストリンの数xが10〜15であり、末端基がN−トリフェニルメチル基から成り、酸分解性であるポリロタキサン化合物。
  23. 請求項22に記載のポリロタキサン化合物を含む、細胞においてオートファジーを誘導するための組成物、アポトーシス耐性の癌を治療するための医薬組成物、細胞内のコレステロール蓄積に起因する疾患またはオートファジーの機能障害に起因する疾患を治療または予防するための医薬組成物、または、ニーマンピック病C型(NPC)を治療または予防するための医薬組成物。
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