JPWO2017163600A1 - 医療用双方向縫合装置およびその作動方法 - Google Patents

医療用双方向縫合装置およびその作動方法 Download PDF

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Abstract

簡便にかつ安全に作動する医療用双方向縫合装置およびその作動方法を提供する。針部材(10)と、保持部材(20)とを有する医療用双方向縫合装置(1)であって、針部材(10)は、医療用双方向縫合装置(1)の遠近方向に移動可能に配されており、保持部材(20)は、糸状物保持部(21)を有しており、糸状物保持部(21)は、医療用双方向縫合装置(1)の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられている。

Description

本発明は、近位側から遠位側および遠位側から近位側の双方向に糸状物による対象物の縫合が可能な医療用双方向縫合装置とその作動方法に関する。
脳下垂体にできた腫瘍を摘出するために、しばしば経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術(TSS;Trans−Sphenoidal Surgery)が行われる。TSSは、一般的に以下の手順で行われる。まず、術者は鼻中隔に沿って鼻粘膜を剥離しながら進展し、蝶形骨を開窓し硬膜を開くことで、下垂体に到達する。次に、下垂体腫瘍を摘出する。最後に硬膜を縫合し、蝶形骨や鼻粘膜を再建する。
従来、TSSにおいて硬膜の縫合は、切開した硬膜の両側に1箇所ずつ糸を通した後、糸の両端を引張りながら硬膜を閉じた後、ノット(結び目)を作り固定することにより行う。硬膜に縫合糸を通す方法は次のとおりである。まず、一方の硬膜に、硬膜よりも近位側から遠位側、すなわち、鼻腔側から下垂体側に向かって縫合糸付きの縫合針を通した後、他方の硬膜に、硬膜の遠位側から近位側、すなわち、下垂体側から鼻腔側に向かって、縫合糸付きの縫合針を通す。このとき、縫合糸は、鼻腔側から下垂体側に入り、再び、鼻腔側に出てくることになる。
TSSでの硬膜の縫合は、術者が、鉗子状の先端部を有する持針器によって直径3mmから10mm程度の湾曲縫合針を保持することにより手作業で行う。しかし、術者の手元から実際の縫合箇所までは十数cm離れており、また、切開創の大きさは、5mmから大きくても20mmくらいであるため非常に小さい。したがって、術者は顕微鏡下もしくは内視鏡画像下で縫合作業を行わなければならず、手術が長時間化するという問題がある。このため、硬膜の遠位側から近位側、および近位側から遠位側の2方向に縫合糸を通すことができる縫合装置が提案されている。
例えば、特許文献1および対応する特許文献2には、側面に縫合糸を捕捉する切り欠き部を有する針を移動させ、切り欠き部とブームアームハウジングの溝とが並んだ際に、切り欠き部に捕捉されている縫合糸をブームアームハウジングの溝に移動させることで、生体組織を双方向で縫合できる糸通し装置が記載されている。
特許文献3および対応する特許文献4には、予めノット等を作製した縫合糸を、ノットが縫合糸保持器の遠位側と取り外し可能に結合することで、生体組織の双方向縫合を実現する縫合糸保持器が記載されている。
特許文献5および対応する特許文献6には、縫合糸を両端が鋭利な針に結びつけ、針が往復することで組織を縫合できる縫合具が記載されている。
特許文献7には、縫合糸をフェルールに結びつけ、フェルールが往復することで組織を縫合できる縫合具が記載されている。
特表2012−515636号公報 国際公開第2010/085793号 特表2014−528768号公報 国際公開第2013/024466号 特表2011−509121号公報 国際公開第2009/089101号 特開2011−72790号公報
しかし、特許文献1、2に記載された糸通し装置において、針の切り欠きから遠位側ブームアームハウジングの溝内に縫合糸を移動させることは、物理的に難しいという課題がある。また、縫合針をブームアームハウジングに密着させながら移動させる必要があるため、移動の際に縫合糸がブームアームハウジングに擦れることで縫合糸が破断したり変形するリスクがある。
特許文献3、4および特許文献7に記載された装置では、縫合糸にノットを作製したり、フェルールに結びつけたりする必要があるため、これらの作業に時間を要する。
特許文献5、6に記載された縫合糸保持器において針を双方向に往復させるためには、その都度、針を把持し直して把持位置を変更する必要があるが、針が脱落して生体組織を不用意に傷つけたり、脱落した針を探す手間が発生する可能性がある。
そこで、本発明は、簡便にかつ安全に作動する医療用双方向縫合装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成し得た本発明の医療用双方向縫合装置とは、針部材と、保持部材とを有するものであって、針部材は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に移動可能に配されており、保持部材は、糸状物保持部を有しており、糸状物保持部は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられていることを特徴とするものである。本発明の装置は糸状物保持部を回転させることができるため、糸状物保持部で保持された糸状物を装置の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できる。このため、針部材が糸状物保持部で保持された糸状物を保持しやすくなる。したがって、本発明によれば、従来の縫合装置のように針の把持位置を変更したり、糸状物にノットを形成したり、または部材同士を密着させながら針を移動させなくても、特に縫合対象物よりも遠位側から近位側に簡便にかつ安全に糸状物を移動させることが可能である。
糸状物保持部は、対向する2つの把持部材を有していることが好ましい。2つの把持部材の間に糸状物を挟むという単純な構造で糸状物保持部を構成することができるからである。
2つの把持部材は、針部材の挿通路を有していることが好ましい。挿通路が設けられていれば、把持部材で保持された糸状物は挿通路において外側に露出する。このため、挿通路に針部材を挿入するときに針部材は糸状物と接触しやすくなり、糸状物を保持しやすくなる。
挿通路は、2つの把持部材の対向方向に貫通しているものであることが好ましい。針部材を挿通路に挿入したときに針部材をより遠位側に移動させることが可能になるため、針部材は糸状物を保持しやすくなる。
把持部材は、挿通路につながる切り欠きを有していることが好ましい。2つの把持部材で糸状物を保持した状態で把持部材を回転させると、糸状物は把持部材に絡まりやすくなるが、把持部材が切り欠きを有していれば、切り欠き部分を介して糸状物が外れやすくなる。
把持部材の対向方向が医療用双方向縫合装置の遠近方向と垂直に配置されている状態での把持部材の遠位側を遠位領域、近位側を近位領域としたとき、遠位領域の厚みが近位領域の厚みよりも大きいことが好ましい。2つの把持部材によって保持されている糸状物を針部材が保持して近位側に移動させようとすると、糸状物が引張力に耐えられない場合に破断するおそれがある。このため、把持部材の厚みに差を設けることで、遠位領域では糸状物を保持しつつ近位領域では糸状物を抜けやすくすることができる。
保持部材は、把持部材に接続されている棒状部材と、棒状部材に接続されている回転部材と、を有しており、さらに、医療用双方向縫合装置は、短径が遠近方向と平行な楕円孔が形成されている規制部を有しており、楕円孔内に棒状部材の一部が配置されていることが好ましい。棒状部材が楕円孔の中心を通る最短の線分の一方端部と他方端部の位置に配置されたときに2つの棒状部材の離間距離は最小となるため、これら棒状部材に接続されている2つの把持部材の間に糸状物を保持することが可能となる。他方、回転部材が回転して、棒状部材が楕円孔の中心を通る最長の線分の一方端部と他方端部の位置に配置されたときには、2つの棒状部材の離間距離は最大となるため、棒状部材に接続されている2つの把持部材は互いに離間し、把持部材による糸状物の保持を解除できる。したがって、本構成によれば、把持部材による糸状物の保持または解除動作の少なくとも一部の時間と、把持部材の回転動作の時間が重なっていることとなる。これにより、操作が簡便となり、操作時間を短縮することもできる。
把持部材の最大回転角度が80度以上100度以下であることが好ましい。最大回転角度を上記範囲に設定することによって、把持部材を回転させた状態で針部材を挿通路に挿入しやすくなるからである。
針部材の遠位端部が4つ存在していることが好ましい。また、針部材は、中空状に形成されており、さらに、医療用双方向縫合装置は、針部材の内側に配置されている内筒部材を有することが好ましい。糸状物が、針部材または針部材と内筒部材によって保持されることが好ましい。
保持部材は、針部材の遠位端よりも遠位側に設けられていることが好ましい。これにより、縫合対象物よりも遠位側で保持部材が糸状物を保持しやすくなる。
また、本発明は、針部材と、保持部材とを有する、糸状物により対象物を縫合する医療用双方向縫合装置の作動方法であって、針部材は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に移動可能に配されており、保持部材は、糸状物保持部を有しており、糸状物保持部は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられており、糸状物保持部は対向する2つの把持部材を有しており、2つの把持部材は針部材の挿通路を有しており、2つの把持部材を、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させるステップと、2つの把持部材で糸状物を保持するステップと、挿通路に針部材を挿入するステップと、針部材で糸状物を保持するステップと、針部材の遠位端を2つの把持部材よりも近位側に移動させるステップと、2つの把持部材による糸状物の保持を解除するステップと、を含むことを特徴とする。
本発明は、2つの把持部材を、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させるステップを有しているため、糸状物を装置の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できる。このため、針部材は糸状物を保持しやすくなり、糸状物を針部材によって遠位側から近位側に容易に移動させることができる。
本発明の医療用双方向縫合装置の作動方法は、針部材で糸状物を保持するステップと、2つの把持部材の間に針部材を挿入するステップと、針部材による糸状物の保持を解除するステップと、針部材の遠位端を2つの把持部材よりも近位側に移動させるステップと、2つの把持部材で糸状物を保持するステップと、を含むことが好ましい。
本発明の医療用双方向縫合装置は、糸状物保持部が回転するため、糸状物保持部で保持された糸状物を装置の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できる。このため、針部材が糸状物保持部で保持された糸状物を保持しやすくなり、糸状物を縫合対象物よりも遠位側から近位側に簡便に移動させることが可能である。
また、本発明の医療用双方向縫合装置の作動方法は、2つの把持部材を、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させるステップを有しているため、2つの把持部材によって保持された糸状物を装置の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できる。このため、針部材で糸状物を保持しやすくなり、遠位側から近位側に糸状物を簡便に移動させることができる。
本発明の医療用双方向縫合装置の斜視図を表す。 本発明の医療用双方向縫合装置の内部を示す斜視図を表す。 本発明の医療用双方向縫合装置の内部を示す側面図を表す。 本発明の医療用双方向縫合装置の遠位側における斜視図を表す。 本発明の医療用双方向縫合装置の遠位側の内部を示す斜視図を表す。 本発明の医療用双方向縫合装置と縫合対象物の位置関係を示す斜視図を表す。 本発明に係る針部材の側面図を表す。 図7に示した針部材の遠位側における斜視図を表す。 本発明に係る針部材の他の例の遠位側における側面図を表す。 本発明に係る針部材のさらに他の例の遠位側における斜視図を表す。 図10に示した針部材の遠位側から見た正面図を表す。 図10に示した針部材の第1側面から見た側面図を表す。 図10に示した針部材の第2側面から見た側面図を表す。 本発明に係る内筒部材の側面図を表す。 本発明に係る内筒部材の遠位側における斜視図を表す。 本発明に係る針部材と内筒部材の遠位側における斜視図を表す。 本発明に係る針部材と内筒部材の遠位側における側面図(一部断面図)を表す。 本発明に係る針部材と内筒部材の遠位側における側面図(一部断面図)を表す。 本発明に係る針部材と内筒部材の遠位側における側面図(一部断面図)を表す。 本発明に係る保持部材の斜視図を表す。 本発明に係る保持部材の斜視図を表す。 本発明に係る保持部材の斜視図を表す。 本発明に係る保持部材の斜視図を表す。 本発明に係る把持部材、棒状部材および回転部材の斜視図を表す。 本発明に係る把持部材、棒状部材および回転部材の斜視図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。 本発明に係る医療用双方向縫合装置の作動方法の説明図を表す。
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
1.医療用双方向縫合装置
医療用双方向縫合装置は、例えば、顕微鏡下や内視鏡画像下で、生体組織等の縫合対象物に、一方側から他方側および他方側から一方側の双方向に向かって針を通すことができる処置具である。本明細書では単に「装置」または「縫合装置」と称することがある。
糸状物は、医療用として使用される縫合糸であり、単糸、編糸であってもよく、外径は一般な縫合糸で使用される径であれば適宜選択可能である。また、糸状物は、分解性材料から構成されていてもよい。糸状物の長さは、手術の邪魔にならない程度に十分に長いことが望ましく、20cm以上200cm以下が好ましい。例えばTSSでは、縫合糸は体外から硬膜まで往復できる長さに、医師が患者の体外で縫合糸にノットを作製するのに十分な長さを加えた長さを有することが好まれ、TSSで好ましい糸状物の長さは、具体的には70cm以上150cm以下である。
本発明の装置について図面を用いて説明する。図1〜図5は、それぞれ本発明の縫合装置の斜視図、内部を示す斜視図、内部を示す側面図、遠位側における斜視図、遠位側の内部を示す斜視図を表す。図6は、本発明の縫合装置と縫合対象物の位置関係を示す斜視図を表す。図1〜図5に示すように、本発明の縫合装置1は、針部材10と、保持部材20とを有するものである。縫合は、針部材10と保持部材20の間に縫合対象物を配置することにより行う。穿刺部11を含む針部材10の一部もしくは全部は縫合対象物よりも近位側および遠位側に移動可能であり、保持部材20は縫合対象物の遠位側に配置される。
なお、本発明において、装置1の近位側とは使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向を指す。
(1)針部材
図7、図8は、それぞれ本発明に係る針部材10(10A)の側面図、遠位側における斜視図を表す。針部材10は、縫合対象物100である硬膜等の生体組織に糸状物70を通すために用いられる部材である。このため、針部材10は糸状物70を保持する機能を有する。
縫合対象物100が生体組織の場合には、装置1の可動域が限られている。例えば、内視鏡下で硬膜を縫合する際には、内視鏡の挿入方向の都合上、硬膜の近位側のみを観察しながら作業を行う必要がある。このため、縫合位置を確認できるように、初めに近位側から遠位側に向かって針部材10を通す作業を行うのが一般的である。したがって、図1〜図8に示すように、針部材10の遠位端部に穿刺部11が配置されていることが好ましい。穿刺部11は、遠位側に向かって尖った1つもしくは複数の鋭利な先端を持つ様に形成されていればよく、例えば、遠位側に向かって断面積が減少するように形成されていてもよく、テーパ状に形成されていてもよい。
針部材10は、装置1の遠近方向に移動可能に配されている。また、後述するように、針部材10は保持部材20に対しても遠近方向に移動する。針部材10を近位側から遠位側に移動させることによって、針部材10よりも遠位側に配置されている対象物に針部材10を刺すことができる。対象物に穿刺している針部材10を近位側に移動させることによって、針部材10を対象物から抜くことができる。針部材は、少なくとも遠位端部が遠近方向に延びているものであることが好ましく、全体として遠近方向に延びているものであることがより好ましい。
針部材10の長さは、術者の手元側から縫合位置までの距離を目安に設定すればよく、例えばTSSに使用する場合には鼻腔から下垂体までの距離である2cm以上30cm以下程度に設定できる。
針部材10は、直線状、曲線状、またはこれらの組み合わせであってもよく、折り曲げ部を有していてもよい。
図9〜図13を用いて、針部材10の他の構成例について説明する。図9、図10は、それぞれ針部材10(10B)の遠位側における側面図、針部材10(10C)の遠位側における斜視図を表す。図11〜図13はそれぞれ図10の針部材の遠位側から見た正面図、第1の側面から見た側面図、第2の側面から見た側面図を表す。針部材10は、図9〜図13に示すように中実状であってもよく、図8に示すように中空状であってもよい。後述する内筒部材60と組み合わせて糸状物70を保持する場合には、針部材10は中空状であることが好ましい。
針部材10の外径は、一般的な縫合針で使用される径であれば特に限定されないが、例えば、0.05mm以上1.5mm以下であることが好ましい。中空状の針部材10の肉厚は、例えば0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
針部材10は、生体適合性と生体組織等の対象物を穿刺可能な強度を有していることが好ましい。針部材10の材質は、例えば、ステンレス等の金属材料や樹脂材料が好ましく、特に抗錆性や加工の容易性の観点からステンレスであることが好ましい。
針部材10は、術者の手元側に設けられる第1操作部81(後述する)に接続されていてもよく、例えば、針部材10の近位側に接続されている針支持部材(図示せず)を介して第1操作部81に接続されていてもよい。
図8、図9、図10に示すように、針部材10には、糸状物70が掛けられる開口12、13、16が形成されている。糸状物70を掛けやすくするために、図8、図10に示すように、針部材10の開口12、16は、遠位端まで延在していることが好ましい。
針部材10の開口数は特に制限されないが、加工の容易性と糸状物70の保持のし易さの観点から、中実状の針部材10の開口は複数であることが好ましく、4つであることがより好ましく、また、中空状の針部材10の開口は複数であることが好ましく、2つであることがより好ましい。針部材10は、後述する内筒部材60と組み合わせて糸状物70を保持する場合には、図8に示すように中空であり、側部に対向する2つの開口12が設けられて遠位端部が2つに分かれており、遠位端部では遠位側に向かって先細りになっている形状(いわゆるツインピーク形状)であることがより好ましい。ここで、開口は側面に現われている数を1として数えるものとする。したがって、図8に示す中空状の2ピーク形状の針部材10Aの開口数は2であり、詳細は後述する図9に示す返し部を有する針部材10Bの開口数は2であり、図10に示す中実状の4ピーク形状の針部材10Cの開口数は4である。
図8に示すように、中空状の針部材10に2つの開口12が設けられる場合、針部材10の周方向において、一方の開口12と他方の開口12が互いに対向していることが好ましい。これにより、2つの把持部材22A、22Bによって保持されている糸状物70を針部材10が保持しやすくなる。
糸状物70の変形や切断を防止するために、針部材10の開口12の最小径は糸状物70の外径よりも大きいことが好ましい。
装置1の遠近方向における針部材10の開口12の長さは、例えば、1mm以上100mm以下の範囲に設定できる。
図9に示す針部材10Bは、針部材10Bの側面に糸状物を掛ける開口13を有する。その結果、針部材10Bに返し部14が設けられている。図9に示す針部材10Bは、糸状物70を針部材10Bの側面の開口13の導入領域13Aから開口13の保持領域13Bへ移動させることにより、糸状物70を保持することができる。また、図9に示す針部材10Bは、糸状物70を針部材10Bの開口13の保持領域13Bから開口13の導入領域13Aに移動させることにより、糸状物70の保持の解除をすることができる。針部材10Bが返し部を有することにより、針部材単体であっても糸状物の保持および解除ができる。図9に示すように、針部材10Bの開口13の導入領域13Aには幅狭部15が形成されていてもよい。導入領域13Aから糸状物が抜けやすくなることを抑制できる。
図10に示す針部材10Cには、糸状物70を掛ける4つの開口16が形成されている。4つの開口16は、針部材10Cの遠位端まで延在している。その結果、図11に示すように、針部材10Cの遠位端部が4つ存在する。このように針部材が複数の遠位端部を有する場合、各遠位端部の先端部の遠近方向の位置は、同じであってもよく、異なっていてもよい。図12に示すように第1の側面から見た場合、針部材10Cの開口16(16A)は遠位端から開口16Aの近位端まで一定の幅を有している。他方、図13に示すように第2の側面から見た場合、針部材10Cの開口16(16B)は遠位端から近位端の間に、開口16Bが狭くなっている幅狭部17を有していることが好ましい。幅狭部17の最大径は、糸状物70の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、第2の側面から見た開口16Bの幅狭部17では糸状物を強固に保持することができる。針部材10Cの開口16Bの幅狭部17は、開口16Bの遠位側に設けられていることが好ましい。なお、第1の側面と、第2の側面とは、針部材10Cの軸方向に垂直な方向から見た場合に、90度異なる位置であることが好ましい。このように遠位端部を4つ有する、いわゆる4ピーク形状の針部材において、周方向に隣り合う開口の形状が異なるものであることが好ましい。また、糸状物を掛けやすくするためには、対向する開口の形状が同一であることが好ましい。第1の側面から見た開口16Aの最小幅が、第2の側面から見た開口16Bの最小幅よりも大きいことが好ましい。糸状物を掛ける開口を変えることによって、糸状物の保持の強弱を変えることができる。例えば、糸状物が針部材から脱落しにくい近位側から遠位側への縫合では第1の側面から見える開口16Aに糸状物を掛けて、糸状物が針部材から脱落する可能性がある遠位側から近位側への縫合では第2の側面から見た開口16Bを用いることにより、縫合方向に応じて糸状物の保持の強度を変えることが可能となる。
図12に示す針部材10Cは、第1の側面から見た開口16Aに糸状物70を掛けることで、糸状物を開口16Aに保持して遠位側に前進することができる。針部材10Cが近位側に後退することにより、糸状物70の保持が解除される。糸状物70を針部材10Cに巻きつけて強固に保持するために、針部材10Cの前進の前に、針部材10Cを長軸方向を軸に所定角度回転させてもよい。図13に示す針部材10Cは、第2の側面から見た近位側の開口16Bに糸状物70を掛けることで、糸状物70を開口16Bに保持して後退することができる。第2の側面から見た近位側の開口16Bの遠位端部に糸状物70が接触することで、針部材10Cは糸状物70を保持することができる。このとき、第2の側面から見た開口16Bに幅狭部17が設けられていれば、針部材10Cは糸状物を強固に保持することができるため、針部材を後退させても針部材の開口16Bから糸状物が抜けにくくなる。糸状物70の保持の解除は、近位側の開口16の側面から糸状物70を抜くか、糸状物70を遠位側の開口16に移動させることにより行う。糸状物70を針部材10Cに巻きつけて強固に保持するために、針部材10Cの後退の前に、針部材10Cを、長軸方向を軸に所定角度回転させてもよい。
(2)内筒部材
針部材10による糸状物70の把持および解除は、以下説明する内筒部材60と組み合わせることによって行ってもよい。
図14、図15は、それぞれ本発明に係る内筒部材60の側面図、遠位側における斜視図を表し、図16は、本発明に係る針部材10と内筒部材60の遠位側における斜視図を表し、図17〜図19は、本発明に係る針部材10と内筒部材60の遠位側における側面図を表す。
針部材10は中空状に形成されており、さらに、装置1は、針部材10の内側に配置されている内筒部材60を有することが好ましい。また、糸状物70が針部材10と内筒部材60によって保持されていることが好ましい。これにより、針部材10と内筒部材60によって糸状物70の保持および解除を行うことができる。
内筒部材60の外径は、針部材10の内径よりも小さければよく、例えば、0.02mm以上1.5mm以下に設定することができる。
内筒部材60の肉厚は、例えば、0.01mm以上0.5mm以下に設定することができる。
内筒部材60の材質は、針部材10と同様に、例えば、ステンレス等の金属材料や樹脂材料が好ましく、特に抗錆性や加工の容易性の観点からステンレスであることが好ましい。
中空状の針部材10の内側に内筒部材60が配置されている場合、図8に示すように、針部材10の側部には遠位端まで延在している開口12が形成されていることが好ましい。内筒部材60が針部材10に対して遠近方向に移動したり、回転することによって針部材10の開口12は内筒部材60に覆われて狭くなる。針部材10と内筒部材60によって狭くなった開口12で糸状物70を保持することができる。
図15に示すように、内筒部材60の側部に開口61が設けられていることが好ましい。これにより、開口61に糸状物70を掛けることができる。内筒部材60の開口61は、遠位端まで延在していることが好ましい。当該遠位端から糸状物70を掛けやすくなるからである。
内筒部材60は、針部材10に対して回転可能であることが好ましい。針部材10に対して内筒部材60を回転させることにより、針部材10の開口12と内筒部材60の開口61の重なる領域の形状や大きさを変更することができる。図17、図18、図19はそれぞれ針部材10に対して内筒部材60を0度、40度、70度回転させた状態を示している。図17に示すように、内筒部材60を回転させない状態、すなわち回転角度が0度のときに、針部材10および内筒部材60は、針部材10の開口12と開口61が重なるように形成されていることが好ましい。これにより、針部材10および内筒部材60の遠位端から、針部材10の開口12と内筒部材60の開口61が重なる領域に糸状物70を挿入することが可能となる。糸状物70を挿入しやすくするためには、内筒部材60を回転させない状態で、針部材10の開口12と内筒部材60の開口61が重なる領域が、針部材10および内筒部材60の遠位端まで延在していることがより好ましい。
図18に示すように、針部材10に対して内筒部材60を回転させると、針部材10の開口12の一部が内筒部材60により覆われる。
図19に示すように、さらに針部材10に対して内筒部材60を回転させると、針部材10の開口12と内筒部材60の開口61が重なる領域が小さくなる。糸状物70は針部材10と内筒部材60によって挟まれて保持される。
糸状物70の保持解除は、針部材10に対して内筒部材60を逆回転させて、回転角度を小さくすることにより行える。
針部材10に対して内筒部材60を回転させることによって糸状物70の保持および解除を容易に行うために、内筒部材60は図15に示すような開口61を有していることが好ましい。すなわち、内筒部材60の開口61は、遠位側の第1領域61Aと、該第1領域とつながっており第1領域61Aよりも近位側の第2領域61Bとを有していてもよい。この場合、内筒部材60の周方向における第1領域61Aの幅は、第2領域61Bの幅よりも小さいことが好ましい。これにより、針部材10に対して内筒部材60を最も回転させたときに、内筒部材60の第1領域61Aは針部材10に覆われているが、第2領域61Bの少なくとも一部が露出することになる。
内筒部材60の開口61の形状は糸状物70を挿入可能であれば特に限定されず、開口61を上方向から見て、三角形、四角形等の多角形状、円形状、楕円形状、またはこれらの組み合わせにすることができる。内筒部材60の開口61は、内筒部材60の遠位端まで延在していることが必要である。図15では、開口61は、長方形状の第1領域61Aと長方形状の第2領域61Bとを組み合わせた形状である。
内筒部材60の開口61の数は、1つ以上であることが好ましく、2つ以上がより好ましい。特に、内筒部材60の開口61の数は、針部材10の開口12の数と同じであることが好ましい。例えば、針部材10がツインピーク形状である場合には、針部材10の開口61と内筒部材60の開口61が重なる領域を設けるために、内筒部材60の開口61の数も2つであることが好ましい。
糸状物70の変形や切断を防止するために、内筒部材60の開口の最小径は糸状物70の外径よりも大きいことが好ましい。
図示していないが、針部材10に対する内筒部材60の回転角度を制御するために、内筒部材60に固定手段が設けられていてもよい。固定手段として、例えば、内筒部材60の外側に凸部が設けられて、針部材10の内側に内筒部材60の凸部と係合する溝が設けられてもよい。
以上では中空状の針部材10と内筒部材60を用いて糸状物70を保持する構成例を示したが、このほか、糸状物70を引っ掛けることができるフック形状の針部材10(図示せず)を用いてもよく、糸状物70を保持および解除する機構は特に制限されない。
(3)保持部材
保持部材20について、図1〜図5、図20〜図23を用いて説明する。図20〜図23は、本発明に係る保持部材20の斜視図を表す。
保持部材20は、縫合対象物100よりも遠位側で糸状物70を保持するために設けられる部材である。保持部材20は、糸状物保持部21を有しており、該糸状物保持部21は、医療用双方向縫合装置1の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられている。医療用双方向縫合装置1に保持部材20を回転可能に設けるために、保持部材20は、棒状部材と回転部材を含むことができる。保持部材20は、針部材10の遠位側に設けられることが好ましい。なお、図1〜図5に示すように、装置1を使用していない状態で、保持部材20は、針部材10の遠位端よりも遠位側に設けられていることが好ましい。これにより、縫合対象物100よりも遠位側で保持部材20が糸状物70を保持しやすくなる。
本発明では、糸状物保持部21を回転させることにより、糸状物保持部21で保持された糸状物70を装置1の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できる。つまり、糸状物70が針部材10の軸方向に対してほぼ垂直であり、なおかつ、針部材10の開口12の長さ方向の中央線上を糸状物70が通過するように糸状物70を配置できる。針部材10の開口12と内筒部材60の開口61とが重なった状態で、針部材10を糸状物側に移動させたときに、糸状物がこれら開口が重なった領域に配置されやすい。このため、針部材10が糸状物保持部21で保持された糸状物70を保持しやすくなり、糸状物70を縫合対象物100の遠位側から近位側に簡便に移動させることが可能である。加えて、従来の縫合装置のように針の把持位置を変更したり、縫合前に糸状物70にノットを形成したり、部材同士を密着させながら針を移動させる必要がないため、本発明によれば、糸状物70を縫合対象物100よりも遠位側から近位側に簡便にかつ安全に移動させることが可能である。
糸状物保持部21は、糸状物70の保持および解除が可能な機構であればよく、例えば、糸状物70を掛けるスリットを有し、該スリットから糸状物70が脱落しないためのストッパを有する機構(図示せず)、円形に配置された複数のアームが縮径方向に集まる、または拡径方向に広がることで糸状物70を保持および解除する機構(図示せず)、糸状物70を挟んで保持するための対向する2つの把持部材22(22A、22B)等である。図1〜図5、図20〜図23に示すように、糸状物保持部21は、対向する2つの把持部材22A、22Bを有していることが好ましい。2つの把持部材22A、22Bの間に糸状物70を挟むという単純な構造により糸状物保持部21を構成することができるからである。糸状物保持部21は、糸状物70を保持しやすくするために、遠近方向と垂直な方向に延在していることが好ましい。
まず、図20〜図23を用いて、2つの把持部材22A、22Bの保持および回転動作について説明する。針部材10を用いて遠位側に糸状物70を移動させることにより、2つの把持部材22A、22Bの間に糸状物70を配置する(図20)。本装置の操作により、針部材10は糸状物70を保持し、遠位側の把持部材22A、22Bの間に移動する。これに伴い糸状物70も把持部材22A、22Bの間に移動する。針部材10が、糸状物70の保持を解除し、近位側の元の位置に移動する。以上の操作により、糸状物70が、2つの把持部材22A、22Bの間に配置される。2つの把持部材22A、22Bを互いに接近させて、2つの把持部材22A、22Bの間に糸状物70を挟んで保持する(図21)。糸状物70を保持した2つの把持部材22A、22Bを装置1の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させる(図22)。2つの把持部材22A、22Bによって保持された糸状物70を針部材10で保持し、近位側に引き出す(図23)。以上の操作により、装置1の遠位側で保持部材20によって保持された糸状物70を近位側に移動させることができる。
TSSでは、縫合装置1の近位側から遠位側に向かう方向が、重力方向と略平行になるように使用されるため、糸状物70も概ね重力方向に沿って配置される。このため、図20に示すように2つの把持部材22A、22Bの間に配置される糸状物70は装置1の遠近方向に沿って延在する。
把持部材22は、糸状物70を保持できる強度を有していればよく、板状や塊状でもよいが、軽量化の観点から板状であることが好ましい。
図20に示すように、把持部材22は挿通路23を有していることが好ましい。挿通路23が設けられていれば、把持部材22で保持された糸状物70は挿通路23において、把持部材22によって覆われないため、外側から針部材10を糸状物70に接触させることが可能となる。このため、挿通路23に針部材10を挿入するときに針部材10は糸状物70と接触しやすくなり、糸状物70を保持しやすくなる。
把持部材22の対向方向から見たときの挿通路23の形状は、円形状や楕円形状、多角形状またはこれらの組み合わせにすることができる。図20の把持部材22A、22Bでは、上記挿通路23の形状は四角形状である。
挿通路23の内径は、針部材10を挿入できるように、例えば、0.1mm以上2.0mm以下にすることができる。
挿通路23は、2つの把持部材22A、22Bの対向方向に貫通しているものであることが好ましい。ここで、貫通とは、把持部材に針部材10が通過することができる通路が形成されることをいう。挿通路23が貫通していれば、把持部材22を回転させて針部材10を挿通路23に挿入したときに、針部材10をより遠位側に移動させることが可能になるため糸状物70の保持操作を行いやすくなる。図示していないが、把持部材22を回転させたときに近位側に配置される把持部材22の挿通路23が貫通しており、遠位側に配置される把持部材22の挿通路23は貫通していなくてもよい。2つの把持部材22A、22Bの挿通路23に針部材10を挿入したときに、針部材10の穿刺部11が外側に露出されにくくなるため、安全上好ましい。
針部材10を安定して挿入するためには、挿通路23は、把持部材22の重心を含む領域に形成されていることが好ましい。
図20に示すように、把持部材22は挿通路23につながる切り欠き24を有していることが好ましい。2つの把持部材22A、22Bで糸状物70を保持した状態で把持部材22を回転させると、糸状物70は把持部材22に絡まりやすくなる。糸状物70の絡まりは、特に針部材10を挿通路23に挿入して針部材10で糸状物70を保持して、針部材10と糸状物70を近位側に移動させた後、把持部材22を逆回転させて2つの把持部材22A、22Bを離間させて糸状物70の保持を解除するときに起こりやすい。しかし、把持部材22が上記切り欠きを有していれば、切り欠きから糸状物70が外れやすくなり、把持部材22に絡まることを抑制できる。図20〜図23の把持部材22は重心を含む領域に挿通路23を有し、該挿通路23とつながる切り欠き24を挿通路23の上側に有しているため、コの字状に形成されているものである。
2つの把持部材22A、22Bの対向方向の厚みは、例えば、1mm以上100mm以下である。一方の把持部材(例えば22A)と他方の把持部材(例えば22B)の対向方向の厚みは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
把持部材22の製造や構造を簡便にする観点からは、2つの把持部材22A、22Bの対向方向における把持部材22の厚みは一定であることが好ましい。他方、把持部材22の部位により糸状物70の保持力に差を設ける観点からは、把持部材22の厚みは一定でなくてもよい。把持部材22の対向方向が遠近方向と垂直に配置されている状態での把持部材22の遠位側を把持部材22の遠位領域、近位側を把持部材22の近位領域と定義する。この場合、把持部材22の遠位領域の厚みが近位領域の厚みよりも大きいことが好ましい。また、遠位領域における2つの把持部材22A、22Bの離間距離が、近位領域における2つの把持部材22A、22Bの離間距離よりも小さいことが好ましい。図23に示すように2つの把持部材22A、22Bによって保持されている糸状物70を針部材10が保持して近位側に移動させようとすると、糸状物70が引張力に耐えられない場合には破断するおそれがある。しかし、把持部材22の厚みに差を設けることで、遠位領域では糸状物70を保持しつつ近位領域では糸状物70を抜けやすくすることができる。なお、一方の把持部材22Aと他方の把持部材22Bの厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。
把持部材22の把持面は、平坦であってもよく、凹凸が設けられていてもよい。例えば、近位領域の把持面に凹凸が設けられており、遠位領域の把持面が平坦であってもよく、その逆であってもよい。近位領域の把持面に凹凸を設け、遠位領域の把持面が平坦の場合、遠位領域の平坦な把持面と近位領域の凹部に糸状物70を配置させることは、上述した把持部材22の遠位領域の厚みが近位領域の厚みよりも大きいことと同じであるため、遠位領域では糸状物70を保持しつつ近位領域では糸状物70を抜けやすくすることができる。糸状物70との摩擦を小さくするために、把持面は滑り性の高い材料から構成されていてもよく、または把持面は潤滑剤層を有していてもよい。
把持部材22の回転角度は、2つの把持部材22A、22Bの対向方向と垂直な方向と装置1の遠近方向のなす角度である。把持部材22の最大回転角度は、装置1を上からみて時計回りまたは反時計回りの少なくとも一方の回転方向(より好ましくはいずれか一方の方向)について、例えば、80度以上100度以下であることが好ましく、85度以上95度以下であることがより好ましく、87度以上93度以下であることがさらに好ましい。最大回転角度を上記範囲に設定することによって、把持部材22を回転させた状態で針部材10を挿通路23に挿入しやすくなる。
把持部材22は生体適合性を有していることが好ましい。把持部材22の材質は、例えば、ステンレス等の金属材料や樹脂材料であることがより好ましく、抗錆性や加工の容易性の観点からはステンレスであることがさらに好ましい。
把持部材22による糸状物70の保持または解除動作の少なくとも一部の時間と、把持部材22の回転動作の時間を重ならせるために、装置1を次のように構成することもできる。図24、図25は、本発明に係る把持部材、棒状部材および回転部材の斜視図を表し、図24は2つの把持部材22A、22Bを非回転、かつ離間させた状態を示し、図25は2つの把持部材22A、22Bを回転かつ近接させた状態を示す。なお、図24〜図25では各部材の動作の理解に資するために、筐体50の楕円孔51の付近以外を省略している。
図24、図25に示すように、本装置1は、把持部材22に接続されている棒状部材30と、棒状部材30に接続されている回転部材40と、回転部材40が内側に配置されている筐体50と、を有していてもよい。2つの把持部材22(22A、22B)には、それぞれ棒状部材30(30A、30B)が接続されている。
(4)棒状部材
棒状部材30は、把持部材22と後述する回転部材40を接続するための部材である。棒状部材30は、例えば、外径が0.01mm以上1mm以下、長さが1mm以上10mm以下の中実状または中空状の棒状部材30を用いることができる。棒状部材30を軸方向から見た形状は、円形状、楕円形状、多角形状やこれらの組み合わせとすることができる。棒状部材30は、直線状に形成されていてもよく、折り曲げ部(図示せず)を有していてもよい。
棒状部材30の材質は、把持部材と同様に、ステンレス等の金属材料や樹脂材料であることがより好ましい。
棒状部材30は他の部材と接触することにより撓み、2つの棒状部材30A、30Bに接続されている2つの把持部材22A、22Bが互いに近接または離間するように変位することが好ましい。このため、棒状部材30は弾性を有していることが好ましく、例えば、金属製や樹脂製であってもよく、ステンレス製のワイヤーであることがより好ましい。
棒状部材30と把持部材22の接続方法は、例えば、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、レーザーや金属ロウ等による溶接、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着等の方法を用いることができる。
図4〜図5では、2つの把持部材22A、22Bにそれぞれ回転軸方向に沿った貫通孔25(25A、25B)が形成されており、図24〜図25では、把持部材22に回転軸方向に沿った非貫通孔(図示せず)が形成されている。棒状部材30は、把持部材22に形成された貫通孔25または非貫通孔に挿入されて、把持部材22と接続されている。
(5)回転部材
回転部材40は、棒状部材30を介して把持部材22と接続されるものである。また、回転部材40は、例えば、金属ワイヤー等の牽引部材41、42を介して手元側(近位側)の操作部と接続されている。
回転部材40は、棒状部材30や把持部材22を支持する強度を有していることが好ましい。回転部材40の最大外径は、例えば、0.5mm以上3cm以下とすることができる。
図24〜図25に示すように、回転部材40は、最も簡便には板状、具体的には円板状や角板状に形成することができる。回転部材40との接触による牽引部材41、42の損傷、破断のリスクを低減する観点からは、回転部材40は円板状であることが好ましい。
回転部材40が板状である場合、回転部材40の厚み方向が棒状部材30の延在方向と平行であることが好ましい。回転部材40は、例えば0.5mm〜10mmの厚みにすることができる。
2つの把持部材22A、22Bによって糸状物70をバランス良く保持するために上記2つの棒状部材30は、回転部材40の回転中心に対して点対称に配置されていることが好ましく、上記2つの把持部材22A、22Bも回転部材40の回転中心に対して点対称に配置されていることが好ましい。
牽引部材41、42が配される位置を固定するために、回転部材40の周方向の側部または対向面上には牽引部材41、42を案内するための溝もしくは貫通穴もしくは非貫通穴が設けられていてもよい。牽引部材41、42と回転部材40の接続方法は、例えば、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、レーザーや金属ロウ等による溶接、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着等の方法を用いることができる。
回転部材40の材質は、把持部材22と同様に、ステンレス等の金属材料や樹脂材料であることがより好ましい。
(6)筐体
筐体50は、少なくとも回転部材40を内側に配置するものであり、各部材と生体組織が直接接触するのを抑制する。
筐体50は、遠近方向に延在しており、回転部材40と牽引部材41、42が筐体50の内側に配置され、かつ回転部材40は遠位側に配置され、牽引部材41、42は回転部材40に接続されて遠位側から近位側にかけて配置されていることが好ましい。これにより、回転部材40と牽引部材41、42が生体組織と直接接触することが防止され、牽引および回転の駆動を邪魔されることなく実施できる。
使用者の手元から縫合対象物100までの距離に応じて遠近方向における筐体50の長さを調整することができるが、TSSに使用される場合、遠近方向における筐体50の長さは例えば5cm以上50cm以下にすることができる。
筐体50は、近位側に使用者が手で把持するハンドル部55を有していることが好ましい。
筐体50の材質は、把持部材22と同様に、ステンレス等の金属材料や樹脂材料であることがより好ましい。
(7)規制部
本装置は、短径が遠近方向と平行な楕円孔が形成されている規制部を有していることが好ましい。また、棒状部材が楕円孔を通過していることが好ましい。すなわち、楕円孔の内側に棒状部材30の一部が位置することが好ましい。この場合、2つの棒状部材30A、30Bの離間距離は楕円孔の半径や形状に依存するため、楕円孔の設計を適切に行うことにより、2つの把持部材22A、22Bの開閉度を調整することができる。
規制部が設けられる部材は特に制限されないが、図3に示すように、筐体50には、短径が遠近方向と平行な楕円孔51が形成されていることが好ましい。把持部材22および棒状部材30の少なくとも一部が、筐体50の外側に配置されていることが好ましい。すなわち、把持部材22および棒状部材30の少なくとも一部が、上記筐体の楕円孔51を介して筐体50の外側に配置されていることが好ましい。筐体50に規制部を設けることにより、以下に説明する規制部材を作製する必要がないため、部品数削減の観点から好ましい。なお、規制部は、上記筐体に接続されている規制部材(図示せず)に設けられていてもよい。規制部材は、最も簡便には板状、具体的には円板状や角板状に形成することができる。規制部材は、筐体の内側に配置されてもよく、外側に配置されてもよい。規制部材に規制部を設けることにより、筐体に規制部を設ける必要がないため、規制部を容易に製造することができる。
楕円孔51の短径が、針部材10の軸方向と平行に配置されていることが好ましい。また、2つの棒状部材30A、30Bが楕円孔51の中心を通る最長の線分52の一方端部52Aと他方端部52Bの位置に配置されることが好ましい。
楕円孔51の中心は、回転部材40の回転軸上にあることが好ましい。
回転部材40を回転操作することによって、図24に示すように、2つの棒状部材30A、30Bがそれぞれ楕円孔51の中心を通る最長の線分52の一方端部52Aと他方端部52Bの位置に配置されたときには、2つの棒状部材30A、30Bの離間距離は最大となる。このため、棒状部材30A、30Bに接続されている2つの把持部材22A、22Bは互いに離間し、把持部材22による糸状物70の保持を解除できる。
他方、回転部材40を回転操作することによって、図25に示すように、2つの棒状部材30A、30Bがそれぞれ楕円孔51の中心を通る最短の線分53の一方端部53Aと他方端部53Bの位置に配置されると、2つの棒状部材30A、30Bの離間距離は最小となる。このため、2つの棒状部材30A、30Bに接続されている2つの把持部材22A、22Bの間に糸状物70を保持することが可能となる。
なお、上記では把持部材22と回転部材40が棒状部材を介して接続される例を示したが、把持部材22と回転部材40が直接接続されてもよい。この場合、把持部材22が上記棒状部材と同様の構成の棒状部(図示せず)を有しており、把持部材22の棒状部が回転部材40と接続されていてもよい。また、別の方法として、回転部材40が上記棒状部材と同様の構成の棒状部(図示せず)を有しており、回転部材40の棒状部が把持部材22と接続されていてもよい。また、さらに別の方法として、把持部材22が、上記棒状部材と同様の構成の棒状部(図示せず)と、上記回転部材40と同様の構成の回転部(図示せず)を有していてもよい。つまり、保持部材は、把持部材と、棒状部材と、回転部材とが一体に形成されていてもよい。
(8)針部材と保持部材の位置関係
生体組織等の縫合対象物100を不用意に傷つけないようにするため、針部材10の先端を保持部材20よりも近位側に移動させた状態で、縫合対象物100を針部材10と保持部材20の間に配置する。針部材10の遠位端から保持部材20の近位端までの離間距離は、装置1の遠近方向における縫合対象物100の厚みよりも大きい必要がある。TSSに使用する場合には、針部材10を最も近位側に移動させた状態における針部材10の遠位端から保持部材20の近位端までの離間距離は、例えば、0.5mm以上10mm以下に設定することができる。他方、針部材10を最も遠位側に移動させたときの針部材10の遠位端から保持部材20の遠位端までの離間距離は、装置1の遠位側の縫合対象物100以外の生体組織等を不用意に傷つけることを抑止するために、例えば、10mm以内であることが好ましい。
(9)操作部
本発明は、針部材10の近位側と接続されており、針部材10を遠近方向に移動させるための第1操作部81が設けられる装置1を含む。図1〜図3には、第1操作部81がレバーの例を示しており、レバーを近位側に引くと針部材10は遠位側に移動し、レバーを遠位側に戻すと針部材10は近位側に移動するようになっている。
中空状の針部材10と、針部材10の内側に配置される内筒部材60によって糸状物70を保持する場合、装置1には針部材10に対して内筒部材60を回転、または遠近方向に移動させる第2操作部が設けられていることが好ましい。
第1操作部81が第2操作部の機能を兼ねていてもよい。すなわち、第1操作部81が針部材10と、内筒部材60の両方に接続されていてもよい。これにより、針部材10を遠近方向に移動させる操作と、内筒部材60の回転または移動操作の両方を第1操作部81で行うことができる。
本発明は、保持部材20と接続されており、保持部材20による糸状物70の保持および解除を行うための第3操作部83が設けられる装置1を含む。図2〜図3では、第3操作部83と保持部材20(2つの把持部材22A、22B)は、棒状部材30、回転部材40、牽引部材41、42を介して接続されている。
本発明は、保持部材20と接続されており、保持部材20の回転操作を行うための第4操作部が設けられる装置1を含む。
第3操作部83が第4操作部の機能を兼ねていてもよい。すなわち、第3操作部83は、保持部材20による糸状物70の保持および解除操作と、保持部材20の回転操作の両方を同時に行えるように構成されていることが好ましい。第3操作部83が第4操作部を兼ねる態様としては、上述したように、筐体50に、短径が遠近方向と平行な楕円孔51が形成されており、把持部材22および棒状部材30の少なくとも一部が、筐体50の外側に配置されている態様において、回転部材40と第3操作部83が牽引部材41、42を介して接続されていることが好ましい。例えば、第3操作部83であるレバーを操作していない状態では、回転部材40は回転せずに、2つの棒状部材30A、30Bはそれぞれ筐体50の楕円孔51の中心を通る最長の線分の一方端部と他方端部の位置に配置される。このため、棒状部材30A、30Bに接続されている把持部材22A、22Bも互いに離間して配置されている。他方、第3操作部83であるレバーを近位側に引くと回転部材40は図2〜図3では装置1の上側からみて半時計回りに回転する。このとき、棒状部材30は筐体50の楕円孔51の形状に沿って回転移動するため、2つの棒状部材30A、30Bの離間距離は徐々に小さくなる。2つの棒状部材30A、30Bが楕円孔51の中心を通る最短の線分の一方端部と他方端部の位置に配置されたときに2つの把持部材22A、22Bの離間距離は最小となる。このように、回転部材40の回転とともに、保持部材20による糸状物70の保持操作を行うことができる。レバーを元に戻すと、回転部材40はレバーを引いたときとは反対側に(図2〜図3では装置1の上側からみて時計回りに)回転し、棒状部材30A、30Bの離間距離は徐々に大きくなるため、把持部材22も互いに離間して配置されるようになる。このように第3操作部83および第4操作部を構成することにより、保持部材20による糸状物70の保持および解除と、保持部材20の回転を一連の操作で行うことができる。
第1操作部〜第4操作部としては、種々の入力手段を用いることができ、例えば、トリガー(レバー)、スライダー、ダイヤル(ギアを含む回転体)、ボタン等とすることができる。
第1操作部〜第4操作部として同種類の入力手段を用いる場合、使用者が手元の感覚でどの操作部か容易に把握できることが好ましい。例えば、第1操作部81と第3操作部83がいずれもレバーである場合、第1操作部81のレバーの長さを第3操作部83のレバーの長さよりも短くすることができる。使用者の操作感覚と実際の装置1における部材配置を一致させるために、第1操作部81は、第3操作部83よりも近位側に設けられることが好ましい。
2.医療用双方向縫合装置の作動方法
本発明は、針部材と、保持部材とを有する、糸状物により対象物を縫合する医療用双方向縫合装置の作動方法であって、
針部材は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に移動可能に配されており、
保持部材は、糸状物保持部を有しており、該糸状物保持部は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられており、
糸状物保持部は対向する2つの把持部材を有しており、該2つの把持部材は針部材の挿通路を有しており、
2つの把持部材を、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させるステップと、
2つの把持部材で糸状物を保持するステップと、
挿通路に針部材を挿入するステップと、
針部材で糸状物を保持するステップと、
針部材の遠位端を2つの把持部材よりも近位側に移動させるステップと、
2つの把持部材による糸状物の保持を解除するステップと、を含むことを特徴とするものである。それぞれのステップは、他のステップと同時に行われてもよいし、個別に行われてもよい。また順序を入れ替えて行われてもよい。
本発明の医療用双方向縫合装置は、糸状物を用いて対象物を縫合するために用いられる。以下、上記装置の作動方法について、図26〜図37を用いて詳細に説明する。図26〜図37は、本発明の装置の作動方法の説明図を表す。なお、装置を構成する各部材については、本明細書の「1.医療用双方向縫合装置」に記載したとおりである。
(1)装置の準備
針部材10と、保持部材20とを有する医療用双方向縫合装置1を準備する。針部材10は、医療用双方向縫合装置1の遠近方向に移動可能に配されているものである。保持部材20は、糸状物保持部21を有している。糸状物保持部21は、医療用双方向縫合装置1の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられている。また、糸状物保持部21は対向する2つの把持部材22(22A)、22(22B)を有しており、該2つの把持部材22A、22Bは針部材10の挿通路23を有している。以降では、内筒部材60が内側に配置されている針部材10の例を挙げて説明するが、針部材の態様はこれに限定されず、「1.医療用双方向縫合装置」で挙げた返し部を有する針部材や4ピーク形状の針部材を用いてもよい。
(2)近位側から遠位側への縫合
図26に示すように、針部材10で糸状物70を保持する(ステップS1)。針部材10の内側には内筒部材60が配置されていてもよい。なお、内筒部材60が針部材10の内部に配置される構造である場合、内筒部材60の遠位端は、針部材10の遠位端より遠位側には移動しない。例えば、図26では、中空状の針部材10の側部には遠位端まで延在している開口が形成されており、針部材10の内側には内筒部材60が配置されている。内筒部材60の側部には遠位端まで延在している開口が形成されている。内筒部材60を針部材10に対して回転させることによって、針部材10の開口と内筒部材60の開口が重なる領域が狭くなるため、針部材10で糸状物70を保持することができる。
図27に示すように、装置1の針部材10と、2つの把持部材22A、22Bの間に縫合対象物100を配置する(ステップS2)。
図28に示すように、2つの把持部材22A、22Bの間に針部材10を挿入する(ステップS3)。糸状物70を保持した針部材10は縫合対象物100を貫通するため、糸状物70は装置1の遠近方向に概ね沿って配置される。
図29に示すように、針部材10による糸状物70の保持を解除する(ステップS4)。針部材10で糸状物70を保持しなくても、糸状物70が縫合対象物100を貫通することにより固定されているため、糸状物70が意図せずに移動することを抑制できる。針部材10による糸状物70の保持の解除は、例えば、針部材10の内側に配置されている内筒部材60を、保持時(ステップS1)とは逆向きに回転させることにより行う。糸状物70の意図しない移動を防ぐためには、装置1の遠近方向が重力方向に沿うように配置することが好ましい。
図30に示すように、針部材10の遠位端を2つの把持部材22A、22Bや縫合対象物100よりも近位側に移動させる(ステップS5)。これにより、後述するステップS6において、把持部材22による糸状物70の保持を針部材10が邪魔することを防ぐ。
図31に示すように、2つの把持部材22A、22Bで糸状物70を保持する(ステップS6)。これにより、装置1の遠位側で糸状物70が確実に保持される。図31では、図24〜図25と同様に、2つの把持部材22A、22Bによる糸状物70の保持動作(ステップS6)の少なくとも一部の時間と2つの把持部材22A、22Bの回転動作(ステップS7)の時間を重ならせることができる構成例を示している。この場合、本ステップS6に続いて後述する(3)遠位側から近位側への縫合を行う際に、ステップS7およびS8を省略することができる。これにより、操作が簡便となり、操作時間を短縮することもできる。図24〜図25に示す構成例に限られず、少なくとも2つの把持部材22A、22Bで糸状物70を保持すればよい。
近位側から遠位側への縫合は以上で完了する。ここで、作業を終える場合は、2つの把持部材22A、22Bで糸状物70を保持したまま装置1を近位側に移動させることで、糸状物70の一方端を回収することができる。
(3)遠位側から近位側への縫合
上記(2)で説明した近位側から遠位側への縫合時に針部材10を穿刺した位置とは別の位置に針部材10が配置されるように装置1を移動させる。図32では、縫合位置を上側から下側に移動させるために、装置1全体を回転させて上下反転させている。装置を上下反転させた後のステップは、以下の3つの種類に分けられる。(A)図31に示すように、把持部材が糸状物70を保持した状態で回転し、糸状物が遠近方向とは異なる方向に延在するように配置されたまま、図32に示すように装置1を上下反転させた場合には、装置1は糸状物70を保持した状態であるため、上述のとおり、ステップS7およびS8を省略し、図33に示すステップS9以降を行うことができる。(B)把持部材が糸状物70を保持し、回転していない状態、つまり糸状物が遠近方向に延在するように配置された状態で装置1を上下反転させた場合には、ステップS7を実行しS8を省略し、ステップS9以降を行う。(C)装置1が糸状物70を保持していない場合は、以下に示すステップS7、S8、およびS9以降を実行する。
図32に示すように、2つの把持部材22A、22Bを、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させる(ステップS7)。2つの把持部材22A、22Bを回転させることによって、2つの把持部材22A、22Bによって糸状物70を装置1の遠近方向とは異なる方向に延在するように配置できるため、挿通路に針部材10を挿入しやすくなる。図27は、糸状物70が、装置1の遠近方向と垂直な方向に延在するように配置される例を示している。
図32に示すように、2つの把持部材22A、22Bで糸状物70を保持する(ステップS8)。これにより、装置1の遠位側で糸状物70が確実に保持される。図32では、図24〜図25と同様に、2つの把持部材22A、22Bによる糸状物70の保持動作(ステップS8)の少なくとも一部の時間と2つの把持部材22A、22Bの回転動作(ステップS7)の時間を重ならせることができる構成例を示している。
図33に示すように、挿通路に針部材10を挿入する(ステップS9)。これにより、挿通路に針部材10を挿入するときに、2つの把持部材22A、22Bにより保持されている糸状物70を針部材10によって保持することができる。針部材10が確実に糸状物70を保持するように、針部材10の遠位端を、2つの把持部材22A、22Bの遠位端よりも遠位側に移動させることが好ましい。挿通路は、2つの把持部材22A、22Bが重なった状態のときに針部材が通ることができるように貫通していることが好ましい。
図34に示すように、針部材10で糸状物70を保持する(ステップS10)。針部材10で糸状物70を保持する方法は、ステップS1と同様である。
図35に示すように、針部材10の遠位端を2つの把持部材22A、22Bよりも近位側に移動させる(ステップS11)。針部材10を近位側に移動させる方法は、ステップS5と同様である。
図36に示すように、2つの把持部材22A、22Bによる糸状物70の保持を解除する(ステップS12)。2つの把持部材22A、22Bによる糸状物70の保持を解除する方法は、ステップS6と逆の手順により達成される。
次いで、縫合を続ける場合には、針部材10が糸状物70を保持したまま、ステップS2から行うことができる。縫合対象物100は、これまでのステップにより糸状物70を遠位側から近位側に通した側の対象物でもよく、近位側から遠位側に通した側の対象物でもよい。また、これまでのステップにより糸状物70を通していない、図示をしていない別の縫合対象物を縫合しても構わない。縫合対象物の決定は、縫合の目的、切創部の大きさや形などから総合的に術者によってなされる。縫合を完了する場合には、図37に示すように装置1を近位側に移動させる。縫合対象物100の近位側に露出している糸状物70の一方側と他方側を引っ張り、縫合対象物100同士を引き寄せて、ノットを作製することで縫合が完了する。
上記の1.項および2.項では、TSSでの硬膜の縫合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、手術の種類や縫合対象物(すなわち、生体組織の種類)は適宜選択できる。例えば、開頭手術・開腹手術・開胸手術といったあらゆる手術位置において、また内視鏡や顕微鏡の使用の有無にも限定されずに使用できる。また、縫合対象となる生体組織は、例えば、硬膜・くも膜・胸膜・心膜・腹膜等の膜組織のみに限定されず、皮膚・血管・肺・心臓・消化管・骨・筋等のあらゆる生体組織を含むことができる。
本願は、2016年3月25日に出願された日本国特許出願第2016−061814号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年3月25日に出願された日本国特許出願第2016−061814号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
1:医療用双方向縫合装置
10:針部材
11:穿刺部
12:針部材の開口
20:保持部材
21:糸状物保持部
22、22A、22B:把持部材
23:挿通路24:切り欠き
30、30A、30B:棒状部材
40:回転部材
50:筐体
51:楕円孔
52:楕円孔の中心を通る最長の線分
53:楕円孔の中心を通る最短の線分
55:ハンドル部
60:内筒部材
61:内筒部材の開口
61A:第1領域
61B:第2領域
70:糸状物
81:第1操作部
83:第3操作部
100:縫合対象物(硬膜)

Claims (13)

  1. 針部材と、保持部材とを有する医療用双方向縫合装置であって、
    前記針部材は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に移動可能に配されており、
    前記保持部材は、糸状物保持部を有しており、該糸状物保持部は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられていることを特徴とする医療用双方向縫合装置。
  2. 前記糸状物保持部は、対向する2つの把持部材を有している請求項1に記載の医療用双方向縫合装置。
  3. 前記2つの把持部材は、前記針部材の挿通路を有している請求項2に記載の医療用双方向縫合装置。
  4. 前記挿通路は、前記2つの把持部材の対向方向に貫通しているものである請求項3に記載の医療用双方向縫合装置。
  5. 前記把持部材は、前記挿通路につながる切り欠きを有している請求項3または4に記載の医療用双方向縫合装置。
  6. 前記把持部材の対向方向が医療用双方向縫合装置の遠近方向と垂直に配置されている状態での前記把持部材の遠位側を遠位領域、近位側を近位領域としたとき、前記把持部材の前記遠位領域の厚みが前記近位領域の厚みよりも大きい請求項2〜5のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  7. 前記保持部材は、前記把持部材に接続されている棒状部材と、該棒状部材に接続されている回転部材と、を有しており、
    さらに、医療用双方向縫合装置は、短径が遠近方向と平行な楕円孔が形成されている規制部を有しており、前記楕円孔内に前記棒状部材の一部が配置されている請求項2〜6のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  8. 前記把持部材の最大回転角度が80度以上100度以下である請求項2〜7のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  9. 前記針部材の遠位端部が4つ存在している請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  10. 前記針部材は、中空状に形成されており、
    さらに、医療用双方向縫合装置は、前記針部材の内側に配置されている内筒部材を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  11. 前記保持部材は、前記針部材の遠位端よりも遠位側に設けられている請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療用双方向縫合装置。
  12. 針部材と、保持部材とを有する、糸状物により対象物を縫合する医療用双方向縫合装置の作動方法であって、
    前記針部材は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に移動可能に配されており、
    前記保持部材は、糸状物保持部を有しており、該糸状物保持部は、医療用双方向縫合装置の遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転可能に設けられており、
    前記糸状物保持部は対向する2つの把持部材を有しており、該2つの把持部材は前記針部材の挿通路を有しており、
    前記2つの把持部材を、遠近方向に対して垂直な方向を軸として回転させるステップと、
    前記2つの把持部材で糸状物を保持するステップと、
    前記挿通路に前記針部材を挿入するステップと、
    前記針部材で糸状物を保持するステップと、
    前記針部材の遠位端を前記2つの把持部材よりも近位側に移動させるステップと、
    前記2つの把持部材による糸状物の保持を解除するステップと、を含むことを特徴とする医療用双方向縫合装置の作動方法。
  13. 前記針部材で糸状物を保持するステップと
    前記2つの把持部材の間に前記針部材を挿入するステップと、
    前記針部材による糸状物の保持を解除するステップと、
    前記針部材の遠位端を前記2つの把持部材よりも近位側に移動させるステップと、
    前記2つの把持部材で糸状物を保持するステップと、を含む請求項12に記載の医療用双方向縫合装置の作動方法。
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