JPWO2017056305A1 - 回折型多焦点眼用レンズおよび回折型多焦点眼用レンズの製造方法 - Google Patents

回折型多焦点眼用レンズおよび回折型多焦点眼用レンズの製造方法 Download PDF

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Abstract

回折型多焦点の眼用レンズに関し、ハロ抑制などの光学特性改善が図られる新規な構造および製造方法を提供すること。
ゾーン系列の複数が重ね合わされたブレーズ状の位相関数からなる回折格子によって複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、標準プロファイルにおける特定の調節ゾーンのブレーズの傾きが逆とされた位相関数で表される構造を採用した。

Description

本発明は、人眼に用いられて人眼光学系への矯正作用等を発揮するコンタクトレンズや眼内レンズなどの眼用レンズに係り、特に複数の焦点が設定された回折型多焦点の眼用レンズの技術に関連する発明である。
従来から、人眼の光学系における屈折異常の矯正用光学素子や水晶体摘出後の代替光学素子などとして、眼用レンズが用いられている。具体的な眼用レンズとしては、眼鏡レンズのほかに、角膜上に重ね合わせて用いられるコンタクトレンズや、眼内の水晶体に代えて嚢内に挿入して用いられる眼内レンズ(IOL)、眼内の水晶体の前方の房内に挿入して用いられる有水晶体眼内レンズ(ICL)などのように、人眼に直接に装用される眼用レンズがあり、大きな視野を提供すると共に見え方の違和感を軽減することができることから広く利用されている。
ところで、近年では老眼年齢に達した人達においても継続してコンタクトレンズを使用する人が増えている。かかる老眼となった人は焦点の調節機能が低下しているため、近くのものにピントが合わせにくいという症状が現れる。よって、かかる老眼患者に対しては近くのものにも焦点を合わせることのできる多焦点コンタクトレンズが必要となる。また、白内障手術を施術された患者においては調整機能を司る水晶体が除去されるため、その代替としての眼内レンズを挿入しても近方が見づらいという症状が残る。かかる眼内レンズにおいても複数の焦点を有する多焦点機能を有することが必要となっている。このように近年の高齢者社会を反映して多焦点眼用レンズの必要性が一層高まっている。
かかる多焦点眼用レンズを実現する方法としては、屈折原理に基づき複数の焦点を形成する屈折型多焦点眼用レンズと回折原理に基づき複数の焦点を形成する回折型多焦点眼用レンズの例が知られている。後者の回折型の眼用レンズにおいては、レンズの光学部に同心円状に複数形成された回折構造を備えており、かかる複数の回折構造(ゾーン)を通過した光波の相互干渉作用によって複数の焦点を与えるものである。それ故、屈折率の相違する境界面からなる屈折面での光波の屈折作用によって焦点を与える屈折型レンズに比して、レンズ厚さの増大を抑えつつ大きなレンズ度数を設定することができる等の利点がある。
一般に回折型多焦点レンズは、フレネル間隔というある規則に従いレンズ中心から周辺に向うにつれて回折ゾーンの間隔が徐々に狭くなった回折構造を有するものであり、かかる構造から生成する0次回折光と1次回折光を利用して多焦点とするものである。通常は、0次回折光を遠方視用の焦点とし、+1次回折光を近方視用の焦点とする。かかる回折光の分配によって遠近用の焦点を有するバイフォーカルレンズとすることができる。
また、本出願人が開示した特開2010−158315号公報(特許文献1)や、特表2013−517822号公報(特許文献2)のように、更に焦点数を増やしたものも知られており、これによって遠方視用と近方視用に加えて中間視用の焦点も設定することができる。
更にまた、本出願人は、PCT出願第PCT/JP2014/071113号(特許文献3)において、中間視用の焦点設定位置の自由度を向上せしめた回折型多焦点レンズを提案している。この先願に係る回折型多焦点レンズは、同心円状の複数のゾーンからなる回折構造を有する回折多焦点レンズであって、該回折構造の少なくとも一部において少なくとも2つのゾーンプロファイルを同一領域上に重ね合わせた重ね合わせ領域が設けられており、該重ね合わせ領域において、該第一のゾーンプロファイルの少なくとも一部が[数1]で表されるゾーン間隔を有していると共に、該第二のゾーンプロファイルの少なくとも一部が[数2]で表されるゾーン間隔を有しており、且つ該第一のゾーンプロファイルの与える付加屈折力P1と該第二のゾーンプロファイルの与える付加屈折力P2が[数3]の関係式で定められ、a、bは互いに異なる実数で、且つa/bの値が自然数Xまたは1/Xで表され得ない値である回折多焦点レンズを、特徴とするものである。
さらに、特許文献3に記載した回折型多焦点レンズでは、例えば[数3]において、a、bをゼロ以上の整数とすることにより、重ね合わせて合成されたプロファイルが周期的なゾーンの繰り返し構造とされて、少なくとも3つの焦点の生成が合成プロファイルの全域に亘ってより明確に発現され得る。また、かかる[数3]において、a、bを、a/b>1/2に設定することにより、遠方と近方との中間の位置に設定される焦点を、遠方の焦点よりも近方の焦点に近づけて例えばコンピュータ画面の視認用などに好適な焦点を設定することができる。
ところで、このような回折型多焦点レンズでは、特に眼用レンズとしての適用に際しての問題点として「ハロ」の存在が指摘されている。「ハロ」は、例えば夜間の遠方の光源を目視した場合に光源の周りに帯状、あるいはリング状の光の暈が生成する現象であり、特に遠方の街灯や自動車のヘッドライトなどの点状の光源に対して発生しやすく、眼用レンズの夜間の使用時における見え方の低下を招く。
「ハロ」の現象については、後述の[発明を実施するための形態]欄において具体例を挙げて説明するが、本発明者が特開2014−228660号公報(特許文献4)やWO2013/118176(特許文献5)で開示したように、例えば遠方視用焦点に着目すると、遠方からの光は遠方焦点の像面中心に主ピークを形成するが、他の焦点位置で強め合った光なども遠方焦点の像面位置に到達することなどに伴い、遠方焦点の像面において遠方焦点を形成する主ピークの周りに存在する多次光の小ピーク群に起因すると考えられる。この多次光の強度は主ピークの強度と比較すると極めて小さなものであるが、暗い環境やコントラスト差のある環境下で物を見た場合には、人の眼の感度の高さと相まって網膜に感知されることとなり、これがハロとして認識されるものと考えられるのである。また、物を見る時に靄がかかったような或いは霧の中で物を見ているような見え方の症状をあらわすブラードビジョンの問題も、ハロと同様な機序によって生ずるものと考えられるのである。
特開2010−158315号公報 特表2013−517822号公報 PCT出願第PCT/JP2014/071113号 特開2014−228660号公報 WO2013/118176
本発明は、ハロの改善などに効果がある回折型多焦点眼用レンズの新規な構造および製造方法を提供することを解決課題とする。
[語句の定義]
以下、本発明の説明に先立ち、本発明で用いられる語句などについて以下のように定義する。
[瞳関数]
瞳関数は、レンズに入射した光の状態を変化させ得るレンズの物理的な作用を記述したレンズの特性関数のことで、具体的には以下の[数4]に記載のとおり、振幅関数A(r)と、位相関数φ(r)の指数関数との積で表されるものである。
[位相関数]
位相関数は、レンズに入射した光に対して何らかの方法で光の位相(波の山と谷の位置)に変化を与えるようなレンズに設けられた物理的な作用を数学的に表したものと定義される。位相関数の変数は、主にレンズの中心から半径方向の位置rで表わし、位置rの地点におけるレンズに入射した光の位相が、位相関数φ(r)分の変化を受けてレンズから出射されるものとする。具体的には[図1]に示すようなr−φ座標系で表わすこととする。本明細書では位相をφで表記することとし、その単位はラジアンである。例えば光の1波長を2πラジアン、半波長をπラジアンとして表す。位相関数が設けられた全域の位相の分布を同座標系で表したものを位相プロファイル(Profile)、あるいは単純にプロファイルまたはゾーンプロファイルと呼ぶ。なお、φ=0のr軸を基準線とし、φ=0の地点では入射した光はその位相を変化させることなく射出されることを意味する。そして、この基準線に対してφが正の値を取るとき、光はその位相分だけ進行が遅れ、φが負の値を取るとき、光はその位相分だけ進行が進むことを意味する。実際の眼用レンズにおいては回折構造が付与されていない屈折面がこの基準線(面)に相当する。光はかかる位相関数に基づく位相の変化を受けてレンズから出射されるものとする。
[振幅関数]
振幅関数は上記[数4]のA(r)で表される関数である。本明細書ではレンズを通過する際の光の透過量の変化を表すものとして定義する。振幅関数の変数はレンズの中心から半径方向の位置rで表わされ、位置rの地点におけるレンズの透過率を表すものとする。また振幅関数はゼロ以上1以下の範囲にあるものとし、A(r)=0の地点では光は透過せず、A(r)=1の地点では入射光はそのまま損失なしで透過することを意味する。本明細書では特に断りのない限り、振幅関数A(r)は1である。
[ゾーン]
ゾーンは、本明細書においてはレンズに設けられた回折構造又は回折格子における最小の単位として用いる。
[ゾーン系列]
ゾーン系列は、以下の[数5]で定められるゾーン半径rnで構成されたプロファイルのことをいう。[数5]においてr1、P、λのいずれか一つが異なれば、それは異なった別のゾーン系列と解される。本明細書ではゾーン系列(1)、ゾーン系列(2)、・・・、などの記述でゾーン系列を区分する。
[ブレーズ]
ブレーズは、回折格子の構成を位相関数をもって表して、回折格子を構成する各ゾーンを特定すると共に、それら各ゾーンを透過する光波における位相変化が特定された一形態であり、例えば屋根状の形で位相が変化しているものを指す。本発明では、光軸に直交する面上の位相を断面形状であらわした[図2]において、(a)に示すような一つのゾーンにおいて片流れ屋根形の山(頂点又は稜線)と谷(底点又は谷線)の間が直線で変化するものをブレーズの基本とするが、(b)に示すように山と谷の間を放物線状の曲線で変化するものや、(c)に示すように凹凸形状(方形波状)であらわされるものなども、本発明におけるブレーズ状の位相関数の概念に含まれる。また、[図2]の(d)に示すように、山と谷の間が正弦波の関数の一部で変化するようにつながれたもの、さらにはある関数において極値を含まない区間で変化するようにつながれたものも、光波に対して回折格子として機能して複数焦点を生成することから、本発明におけるブレーズ状の位相関数の概念に含まれる。
なお、本明細書では、回折格子の各ゾーンにおけるブレーズの山と谷位置を、ブレーズの傾きと基準線(面)からのずれ量を用いて定めることとする。具体的には以下の定数を用いて定める。先ず、[図2]の(a)に示すようにレンズの中心から半径方向に第i番目のゾーン(輪帯)のブレーズにおいて、ゾーンの内径半径ri-1 の位置の位相φi-1 と、外径半径riの位置の位相φi の絶対値が基準面(線)に対して等しくなるように、つまり|φi |= |φi-1 |となるようにしたものを基本とし、[数6]で定められる位相定数hにてブレーズの傾きを定めるものとする。
次に、ブレーズの傾きを維持したままブレーズの基準線(面)からφ方向のずれを定めるのに位相ずれ量τを用いる。かかるずれ量が与えられたブレーズの形態を[図3]に示す。ブレーズが基準線より上(プラス方向)へずれて配されている場合は、τは正の値とし、基準線より下(マイナス方向)へずれて配されている場合は、τは負の値とする。なお、τの単位はラジアンとする。本明細書ではかかる設定方法に基づきゾーンの内径半径位置と外径半径位置の一般的な位相の表記をそれぞれφi-1’、φi’とするとこれらは位相定数hと位相ずれ量τを用いて[数7]で表される。
具体的には位相定数hがh=0.5で、位相ずれ量τがτ=0とされる場合のφi-1’は1.5704ラジアン、φi’は−1.5704ラジアンとして定められる。もし正方向に1ラジアン分のずれがある場合は、τ=1としてφi-1’=2.5704ラジアン、φi’=−0.5704ラジアンと定められる。また、位相定数が負の場合は、例えば位相定数hがh=−0.5の場合でτがτ=0の場合は、φi-1’は−1.5704ラジアン、φi’は1.5704ラジアンと定められる。つまり、位相定数が正の符号の時、ブレーズはr−φ座標系で右下がりの傾きとなり、位相定数が負の符号の時は同座標系で右上がりの傾きとなることを意味する。後述の各実施例においても、ブレーズの山と谷位置の位相を、かかる位相定数とずれ量にて表記することとする。
[標準プロファイル]
標準プロファイルとは、[図4]に示すように前記[数5]で定められる複数のゾーン系列の各ゾーンの重ね合わせ構造からなる。すなわち、各ゾーン系列を構成する複数のゾーンが、レンズの中心から外周に向かってゾーン半径の大きさの順に回折格子を構成する同じ領域内に配されたものであり、各ゾーンにはブレーズ状の位相関数が設定されたものである。例えば、[図4]には、2つのゾーン系列(1)、(2)からなる標準プロファイルのゾーン配置が示されている。
[本発明プロファイル]
本発明プロファイルとは、上記の標準プロファイルに対して、本発明に従い特定のゾーンのブレーズの傾きが逆とされたものをいう。すなわち、本発明プロファイルは、本発明に従う構造とされた回折型多焦点の眼用レンズにおいて、その回折格子の光学特性をブレーズ状の位相関数をもって表したものである。なお、本発明における「逆向きの傾き」、即ちブレーズの傾きが逆とされたものとは、ブレーズの傾きの符号(具体的には位相定数の符号)が逆とされたものと解され、傾きの絶対値の同一を要件とせず、対称的に反転されたものに限定されない。
[光軸]
光軸は、レンズの光学部における回折格子の回転対称軸であり、本明細書では、レンズ幾何中心を光学中心に設定したものとして、レンズ中心を貫き物体空間および像側空間へ延長された軸のことをいう。なお、レンズの回折格子の回転対象軸である光軸は、レンズ幾何中心から径方向に偏倚設定することも可能である。
[0次焦点]
0次焦点は、0次回折光の焦点位置をいう。以下、+1次回折光の焦点位置に対しては+1次焦点、+2次回折光の焦点位置に対しては+2次焦点、・・・という。
[光軸上強度分布]
光軸上強度分布は、レンズ通過後の光の強度を像側空間の光軸上に亘ってプロットしたものである。
[点像強度分布]
点像強度分布とは、点光源から発せられた光がレンズを通過後、ある像面になす強度分布のことで、像面の中心から半径方向の距離に対する光の強度をプロットしたものである。なお、本明細書において、像面は、光軸に直交する投射平面とする。
[レリーフ]
本発明プロファイルで特定される位相関数をもった眼用レンズを実現する一つの現実的且つ例示的な手法として、所定の屈折率をもった公知のレンズ材料からなるレンズ表面に対して実形状を与えることで目的とする位相関数を有する回折格子を実現することができる。ここにおいて、レリーフとは、位相プロファイルで定められる位相に相当する光路長を反映して具体的にレンズの実形状に変換して得られるレンズの表面に形成される微小な凸凹構造の総称である。なお、ブレーズ状の位相をレリーフ形状に変換する具体的な換算式は下記[数8]で定められ、ブレーズの位相の段差が実形状としてのレリーフ段差に変換され得る。
ここにおいて、本発明は、前記[背景技術]欄に記載の事情を背景として、前記[発明が解決しようとする課題]欄に記載の課題を解決することを目的としてなされたものであり、本発明の特徴的な態様は、上述の定義された語句を用いて以下のように表される。
先ず、回折型多焦点眼用レンズに関する本発明は、以下第一〜四の何れかの態様に従って新規な構造の回折型多焦点眼用レンズを提供するものである。そして、これら第一〜四の態様に従う構造とされた本発明の回折型多焦点眼用レンズにあっては、後述する各実施例の記載からも明らかなように、目的とする焦点位置の光強度を確保しつつ、多次光のピークを抑えることが可能となり、ハロの低減効果が発揮されることとなる。
本発明の第一の態様は、ゾーン半径が[数9]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、該調節ゾーンにおいて、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されている回折型多焦点眼用レンズを特徴とする。
本発明の第二の態様は、ゾーン半径が[数10]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、該調節ゾーンにおいて、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されている回折型多焦点眼用レンズを特徴とする。
本発明の第三の態様は、ゾーン半径が[数11]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、該調節ゾーンにおいて、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されている回折型多焦点眼用レンズを特徴とする。
本発明の第四の態様は、ゾーン半径が[数12]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、以下(A)、(B)、(C)の少なくとも一つに記載の調節ゾーンが設けられている回折型多焦点眼用レンズを特徴とする。
(A)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
(B)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
(C)前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
また、上記第四の態様に係る回折型多焦点眼用レンズでは、後述する実施例に示されているように、以下第五〜七の態様に従って、調節ゾーンが選択設定されることが好適であり、それにより、本発明によるハロ低減などの効果を得るに際して、調節ゾーンの選択をより効率的且つ適切に行うことが可能になる。
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも内周側に位置して設定された前記調節ゾーンを備えており、且つ該調節ゾーンが前記(B)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされているものである。
本発明の第六の態様は、前記第四又は第五の態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも外周側に位置して設定された前記調節ゾーンを備えており、且つ該調節ゾーンが前記(A)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされているものである。
本発明の第七の態様は、前記第四〜六の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも内周側と外周側とにそれぞれ少なくとも一つの前記調節ゾーンが設定されており、該内周側に設定された該調節ゾーンが少なくとも前記(B)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされていると共に、該外周側に設定された該調節ゾーンが少なくとも前記(A)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされているものである。
また、上述の本発明に従う各態様の回折型多焦点眼用レンズでは、後述する実施例にも示されているように、以下第八〜十の態様が、必要に応じて組み合わせられて好適に採用され得る。それにより、例えば焦点位置の光強度の確保や多次光の抑制といった効果を一層有利に得ることなども可能になり、または目的とする光学特性を備えた回折格子の実現の容易化などが図られ得る。
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記回折格子が設けられた回折格子領域において、前記調節ゾーンの数が、該回折格子領域における前記ゾーンの総数の1/2未満とされているものである。
本発明の第九の態様は、前記第一〜八の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記調節ゾーンに設定される前記位相関数が、該調節ゾーンに隣接する隣接ゾーンとの間の谷底点をなくすブレーズ状の位相関数とされているものである。なお、本態様に従う位相関数においてなくされる谷底点は、調節ゾーンの一方の側に隣接する隣接ゾーンとの間の谷底点であり、例えば後述する実施例1、2の標準プロファイルにおけるi=2、5、8、11の各ゾーンと右側の隣接ゾーンとの間の谷底点とされる。また、実施例2−2、2−3、2−4などに例示されているように、調節ゾーンと隣接ゾーンとの間の谷底点をなくすブレーズ状の位相関数は、調節ゾーンの両側に隣接する隣接ゾーンとの間で谷部と頂点部をつなぐ位相関数のほか、谷部と頂点部との間のいずれとも一致をみない或いはいずれか一方でしか一致を見ないブレーズ状の位相関数なども採用可能である。
本発明の第十の態様は、前記第一〜九の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記調節ゾーンにおいて逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されていない標準プロファイルを有する標準型回折多焦点レンズに対して、前記回折格子による多次光の強度ピークが小さい光学特性を有するものである。
本発明の第十一の態様は、前記第一〜十の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が、位相に相当する光路長を反映したレリーフ構造として設定されているものである。
本発明の第十二の態様は、前記第一〜十一の何れかの態様に係る回折型多焦点眼用レンズであって、前記複数の焦点のうち一つが遠方視用焦点とされ、かつ該焦点が前記ブレーズ状の位相関数からなる回折格子の0次回折光で与えられているものである。
さらに、本発明の第十三の態様は、複数の焦点が設定された回折格子を、ゾーン半径が[数13]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数をもって設定する工程と、以下(A)、(B)、(C)の少なくとも一つに記載の調節ゾーンを設定する工程と、前記調節ゾーンを含む前記複数のゾーンを備えた前記回折格子を光学材料に形成する工程とを、含む回折型多焦点眼用レンズの製造方法を特徴とする。
(A)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
(B)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
(C)前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
本発明方法に従えば、例えば前記第一〜十二の何れかの態様に係る新規な構造を有し、目的とする焦点位置の光強度を確保しつつ多次光のピークを抑えることが可能とされて、ハロが低減される新規な構造の回折型多焦点眼用レンズを得ることができる。
上述の説明と後述する実施例から理解されるように、本発明に従えば、従来構造の回折型多焦点眼用レンズに比してハロが抑えられて見え方の質向上が図られ得る、新規な構造の回折型多焦点眼用レンズが実現可能とされる。
回折レンズに設けられた位相変調構造の位相φをレンズ半径方向位置rとの関係で表す、r−φ座標系における位相関数のグラフである。 回折レンズにおける位相関数の一形態としてのブレーズを、(a)、(b)、(c)、(d)にそれぞれ例示するグラフである。 位相ずれ量τが与えられたブレーズの形態を示す説明図である。 複数のゾーン系列を重ね合わせて構成される回折格子のブレーズとして、二つのゾーン系列の重ね合わせからなる標準プロファイルを例示する説明図である。 本発明に従う回折型多焦点眼用レンズの基礎となる標準プロファイルの構造および特性を説明する図であって、(a)は標準プロファイルであり、(b)は(a)に示された標準プロファイルの光軸上強度分布であり、(c)は(a)に示された標準プロファイルの0次焦点像面における点像強度分布であり、(d)は(a)に示された標準プロファイルの像面における点像強度分布のプロット図である。 本発明に従う回折型多焦点眼用レンズの基本的構造と特性を説明する図であって、(a)は本発明プロファイルを[図5]に記載の標準プロファイルと比較して示す図であり、(b)は(a)に示された本発明プロファイルの光軸上強度分布をかかる標準プロファイルと比較して示す図であり、(c)は(a)に示された本発明プロファイルの像面における点像強度分布である。 本発明の実施例1としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例1の本発明プロファイルを比較例1と併せて示す図であり、(b)は実施例1の光軸上強度分布を比較例1と併せて示す図であり、(c)は比較例1の像面における点像強度分布であって実施例1の点像強度分布を示す[図6](c)に対応する図であり、(d)は実施例1の像面における点像強度分布のプロット図を比較例1と併せて示すものである。 本発明の実施例2としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2の本発明プロファイルを比較例2と併せて示す図であり、(b)は実施例2の光軸上強度分布を比較例2と併せて示すものである。 本発明の実施例2としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例2の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例2の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例2の像面における点像強度分布のプロット図を比較例2と併せて示す図である。 本発明の実施例2−2としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2−2の本発明プロファイルを示す図であり、(b)は実施例2−2の光軸上強度分布を比較例2と併せて示す図であり、(c)は実施例2−2の像面における点像強度分布であり、(d)は実施例2−2の像面における点像強度分布のプロット図を比較例2と併せて示すものである。 本発明の実施例2−3としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2−3の本発明プロファイルを示す図であり、(b)は実施例2−3の光軸上強度分布を比較例2と併せて示す図であり、(c)は実施例2−3の像面における点像強度分布であり、(d)は実施例2−3の像面における点像強度分布のプロット図を比較例2と併せて示すものである。 本発明の実施例2−4としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2−4の本発明プロファイルを示す図であり、(b)は実施例2−4の光軸上強度分布を比較例2と併せて示す図であり、(c)は実施例2−4の像面における点像強度分布であり、(d)は実施例2−4の像面における点像強度分布のプロット図を比較例2と併せて示すものである。 本発明の実施例2−5としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2−5の本発明プロファイルを示す図であり、(b)は実施例2−5の光軸上強度分布を比較例2と併せて示す図である。 本発明の実施例2−6としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例2−6の本発明プロファイルを示す図であり、(b)は実施例2−6の光軸上強度分布を比較例2と併せて示す図である。 本発明に従う構造とされた別の実施例としての回折多焦点レンズの構造を例示する図であって、(a)は本発明の実施例2−7としての回折型多焦点眼用レンズに設定された本発明プロファイルを示す図であり、(b)は本発明の実施例2−8としての回折型多焦点眼用レンズに設定された本発明プロファイルを示す図であり、(c)は本発明の実施例2−9としての回折型多焦点眼用レンズに設定された本発明プロファイルを示す図である。 本発明の実施例1、2における特定ゾーンの光軸上強度分布を示す説明図であって、(a)はゾーン番号3、4、9、10の光軸上強度分布、(b)はゾーン番号1、6、7、12の光軸上強度分布、(c)ゾーン番号2、5、8、11の光軸上強度分布を、それぞれ示す。 本発明の実施例3としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例3の本発明プロファイルを比較例3と併せて示す図であり、(b)は実施例3の光軸上強度分布を比較例3と併せて示すものである。 本発明の実施例3としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例3の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例3の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例3の像面における点像強度分布のプロット図を比較例3と併せて示す図である。 本発明の実施例4としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例4の本発明プロファイルを比較例4と併せて示す図であり、(b)は実施例4の光軸上強度分布を比較例4と併せて示すものである。 本発明の実施例4としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例4の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例4の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例4の像面における点像強度分布のプロット図を比較例4と併せて示す図である。 本発明の実施例5としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例5の本発明プロファイルを比較例5と併せて示す図であり、(b)は実施例5の光軸上強度分布を比較例5と併せて示すものである。 本発明の実施例5としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例5の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例5の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例5の像面における点像強度分布のプロット図を比較例5と併せて示す図である。 本発明の実施例6としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例6の本発明プロファイルを比較例6と併せて示す図であり、(b)は実施例6の光軸上強度分布を比較例6と併せて示すものである。 本発明の実施例6としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例6の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例6の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例6の像面における点像強度分布のプロット図を比較例6と併せて示す図である。 本発明の実施例7としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例7の本発明プロファイルを比較例7と併せて示す図であり、(b)は実施例7の光軸上強度分布を比較例7と併せて示すものである。 本発明の実施例7としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例7の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例7の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例7の像面における点像強度分布のプロット図を比較例7と併せて示す図である。 本発明の実施例8としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例8の本発明プロファイルを比較例8と併せて示す図であり、(b)は実施例8の光軸上強度分布を比較例8と併せて示すものである。 本発明の実施例8としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例8の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例8の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例8の像面における点像強度分布のプロット図を比較例8と併せて示す図である。 本発明の実施例9としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例9の本発明プロファイルを比較例9と併せて示す図であり、(b)は実施例9の光軸上強度分布を比較例9と併せて示すものである。 本発明の実施例9としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例9の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例9の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例9の像面における点像強度分布のプロット図を比較例9と併せて示す図である。 本発明の実施例10としての回折型多焦点眼用レンズの構造と特性を説明する図であって、(a)は実施例10の本発明プロファイルを比較例10と併せて示す図であり、(b)は実施例10の光軸上強度分布を比較例10と併せて示すものである。 本発明の実施例10としての回折型多焦点眼用レンズの特性を説明する図であって、(a)は比較例10の像面における点像強度分布であり、(b)は実施例10の像面における点像強度分布であり、(c)は実施例10の像面における点像強度分布のプロット図を比較例10と併せて示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について述べることで、本発明をより具体的に明らかにする。はじめに、以下の実施例で用いられる計算シミュレーションの方法や条件などについて説明する。
[光軸上強度分布のシミュレーション]
光軸上の強度分布のシミュレーションにおいて、計算ソフトは、スカラー回折理論と呼ばれる該分野にて知られた理論から導出される回折積分式に基づいて、各ゾーンからの振幅分布や強度分布を計算できるものを用いた。かかる計算ソフトを用いて光軸上の強度分布を計算した。計算に際しては、光源として遠方に存在する点光源を設定し、レンズには同位相の平行光が入射するとして計算した。また、物体側空間および像側空間の媒体は真空、レンズは収差が存在しない理想レンズ(レンズから出た光は射出位置に関わらず全て同一の焦点に結像する)として計算した。また計算は、波長=546nm、レンズの0次回折光の屈折力(ベースとなる屈折力)=7Dで行った。
また、以下の実施例において、ブレーズは、特に断りがない限り直線状の関数とし、以下の[数14]で定められる関数で表されるものとして計算を行った。
光軸上強度分布は、レンズを基点とした光軸上の距離をdiopterに換算して、0次回折光の焦点位置を0Dとして規格化し、かかる規格化されたスケールに対して強度をプロットしたものとした。なお、計算対象のレンズ開口範囲は、特に断りがない限り、各実施例に記載されているゾーン番号までの領域とした。
[点像強度分布(画像など)のシミュレーション]
点像強度分布のシミュレーションにおいては、本発明の回折プロファイルを下記の各レンズの前面にレリーフ構造として設け、人の眼球に該レンズを挿入、あるいは装着した状況を模擬的に構築し、かかる眼光学系において網膜上に形成される像を調べるために点像強度分布を求めた。シミュレーションはライト−トランス(Light Trans)社のVirtualLab(商品名)を用い、眼内レンズとコンタクトレンズについてそれぞれ以下の条件で行った。
[眼内レンズとしてのシミュレーション]
眼光学系は、角膜、房水、虹彩、眼内レンズ、硝子体、網膜の順で配され、人の眼のデータに基づき屈折率や形状を定めた。また眼内レンズの屈折力と瞳孔径は以下のとおり定められたものとした。
眼内レンズの0次回折光の屈折力(度数):20D
瞳孔径:直径3mm(実施例8以外の実施例)または3.15mm(実施例8)
[コンタクトレンズとしてのシミュレーション]
眼光学系は、コンタクトレンズ、角膜、房水、虹彩、水晶体、硝子体、網膜の順で配され、人の眼のデータに基づき屈折率や形状を定めた。またコンタクトレンズの屈折力と瞳孔径は以下のとおり定められたものとした。
コンタクトレンズの0次回折光の屈折力(度数):0D
瞳孔径:直径3.8mm
また、点像強度分布に係る本シミュレーションにおいても、光軸上強度分布のシミュレーションと同様、入射光の波長を546nmとし、光源は無限遠方の点状光源であるとして行った。
上述の如き計算シミュレーションの方法や条件のもとで得られた本発明の具体例を実施例に基づき説明するに際して、最初に本発明に基づく回折レンズの構造と特性を概説する。前述の[課題を解決するための手段]欄の記載などからも明らかなように、本発明に係る回折型多焦点眼用レンズの回折構造は、対象となる標準プロファイルの特定のゾーンのブレーズの傾きが逆とされた位相関数で表される構造を基本とするものである。ここでいう標準プロファイルとは、同心円状のゾーンからなる間隔を有し、ゾーンの位相関数がブレーズ状の関数とされ、かかるプロファイルからなる回折構造によって少なくとも2つの焦点を生成しうるプロファイルとして解される。
[表1]及び[図5](a)に、本発明の回折構造の基となる標準プロファイルの一例を示す。該標準プロファイルは、[表1]に示すようにゾーン系列(1)で定められるゾーン半径と、ゾーン系列(2)で定められるゾーン半径が、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。換言すると、かかる標準プロファイルは、ゾーン系列(1)とゾーン系列(2)が互いに重ね合わされた同心状のゾーン構造とされている。そして、それぞれのゾーン半径にて設定されたゾーンが、標準プロファイルにおける新たな構成ゾーンとなる。
具体的には、ゾーン系列(1)は以下の[数15]においてr1=0.5225mm、P=4diopter(以下、diopterは「D」と略記することとする)、設計波長λ=546nmで定められるゾーン半径を有している。ゾーン系列(2)は同じく[数15]においてr1=0.4266mm、P=3D、設計波長λ=546nmで定められるゾーン半径を有するものである。かかるゾーン系列(1)と(2)のゾーン半径で定められるゾーンが本実施例の標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。なお、標準プロファイルのゾーン番号は記号i(iは自然数)にて定められるものとする。該標準プロファイルのゾーン毎にブレーズ状の位相関数が設定されており、ここでは各ブレーズの位相定数がh=0.5、位相ずれ量がτ=0で設定されたものが例として示されている。なお、以降の[数15]を用いるゾーンの設計に際して設計波長は、特に断りがない限りλ=546nmとした。かかる標準プロファイルは[図5](a)に示す形状となる。
この標準プロファイルの光軸上強度分布を[図5](b)に示す。本標準プロファイルは、0Dの位置に0次回折光に基づくピークが生成し、4Dの位置にゾーン系列(1)の+1次回折光由来のピーク、そして、3Dの位置にゾーン系列(2)の+1次回折光由来のピークがそれぞれ生成する。このレンズを、例えば眼内レンズとして眼内に配した場合、0Dのピークは遠方視用の焦点として作用し、4Dのピークは手前約35~40cmを視認できる近方視用の焦点とすることができ、さらに3Dのピークは手前約50cmを視認できる中間視用の焦点とすることができ、遠方視はもちろん、読書からパソコンモニター画面まで視認可能な多焦点眼内レンズとして有用なものとなる。つまり、かかる標準プロファイルは0次回折光に基づく0D位置の焦点と、ゾーン系列(1)由来の4D位置の焦点と、そして、ゾーン系列(2)由来の3D位置の焦点、の3つの焦点が生成しうる回折レンズとしてのプロファイルを与えるものとなる。
しかし、かかる標準プロファイルからなる回折レンズ(標準型回折多焦点レンズ)では[図5](b)に示すように目的とする焦点位置以外(図中矢印)にも小ピーク群が生成する。かかる小ピークは高次の回折光に基づくものであり、通常、多次光と呼ばれている。多次光の発生が多いと、入射光を、目的とする主要焦点位置へ光を集中させることが困難となり、主ピーク群の利得の低下をきたすこととなる。また、多次光はハロの生成を招く原因ともなる。ハロは回折レンズを眼内レンズやコンタクトレンズ等として眼に装着し、夜間遠方の点状光源(たとえば遠方の街灯や車のヘッドライト)を目視した際に光源の周りに発生するリングあるいは暈状の光の広がりのことである。ハロが生成するとかかる光の広がりによって他の物体の視認性が損なわれるおそれがある。
[図5](c)、(d)は、[図5](a)の標準プロファイルを眼内レンズ前面にレリーフ状の回折構造として付与したものを眼球に挿入した状態で遠方の点状の物体を目視した時のシミュレーション結果を示すもので、網膜に遠方用焦点を結んだ状態を想定して計算した点像強度分布が示されている。[図5](c)に示すように本標準プロファイルを回折レンズとした場合、点状光源の周りにリングあるいは暈状の光の広がりが生成することが分かる。一般にハロの成因は、遠方視用の焦点像面上に紛れ込む多次光などの迷光成分によるものとして理解されている。[図5](d)に示す点像強度分布のプロット図は、これら迷光が、中心のピークの周りにノイズ状のピークとして混入している状態を示している。かかるピーク群の強度は主ピークの強度と比較すると極めて小さなものであるが、夜間という背景が暗い環境においては微弱な強度の光でも目立ちやすくなること、さらには人の眼の感度の高さと相まって網膜に感知されることとなり、ハロとして認識されるのである。このように多次光は、ハロの原因となるノイズを生成する元にもなる。したがって、多次光の生成を抑え、ハロの生成を抑えることが多焦点レンズにおいて重要な課題となっている。
本発明は、かかる標準プロファイルの課題を解決しうる回折構造を提案するものである。本発明の回折構造をなすプロファイルを以降、「本発明プロファイル」と称す。本発明プロファイルの基本的な構造を以下に説明する。
前記標準プロファイルの第2、5、8、11番目のゾーンのブレーズの傾きを反対にし、隣接するゾーンの谷と頂点の位置を結ぶようにして、それら谷と頂点の間に存在する一つの谷をなくすように繋いだ例を以下に示す。かかるゾーンのブレーズの傾きを反対にすることによって新たに形成されるプロファイルを、前記標準プロファイル([図5](a))と対比して示したのが[図6](a)である。この本発明プロファイルの詳細を[表1]に示す。ブレーズの傾きを逆とすることは位相定数の符号を反対にすることとなり、ここでは負の位相定数が設定されたこととなる。なお、標準プロファイルにおける特定のゾーンが、ブレーズの傾きを反対に設定される調節ゾーンとされる。
かかるプロファイルの光軸方向の強度分布を[図6](b)に標準プロファイルのものと併せて表示した。なお、[図6](b)中、実線は本発明プロファイルであり、破線は標準プロファイルを示す。なお、以降の標準プロファイルと本発明プロファイルを同一図の中で示した例において、本発明プロファイルのものを実線で、標準プロファイルのものを破線でそれぞれ示すものとする。本例では標準プロファイルと比較すると、「0D位置のピーク強度は維持」されつつ「多次光のピークが減少」して「3Dと4Dのピーク強度が増加」することが分かる。つまり、本発明者は、「標準プロファイルの所定のゾーンのブレーズの傾斜を逆向きにすることによって、標準プロファイルでは多次光として損失してしまう光が、目的とするピークに有効に振り分けられ利得が向上する」ことを新たに見出したのである。さらには、本発明プロファイルにおける0次焦点位置の像面上の点像強度分布は、[図6](c)に示すように外周領域のリングがほとんど認められなくなり、ハロが低減されたものとなること、をも新たに見出したのである。なお、後述の各実施例における点像強度分布は、特に断りのない限り0D位置の像面上の点像強度分布を示すものとする。
かかる特定ゾーン(調節ゾーン)の位相関数におけるブレーズ傾斜を逆向きにすることによる光学特性の改善作用に関しては、後述する各実施例を含む本発明者が行った多くの実験結果から明らかであって、例えば後述するフーリエ変換に基づく焦点像面の外周領域に発現する光強度の相違による現象からも理解することができる。そして、本発明者は、多数の実験を行って詳細に検討を加えた結果、ブレーズ傾斜を逆向きにすることにより、光軸上強度分布において多次光のピークを抑えつつ目的とする焦点位置での光強度ピークを確保または相加的に増大することが可能であり、焦点の像面における外周側の光強度を低減してハロを抑制するのに好適なゾーンを、回折型多焦点眼用レンズの設計に有利な態様で特定し得たのである。
すなわち、ゾーン半径が前記[数15]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、その標準プロァイルにおけるブレーズ傾斜を逆向きに設定することでハロ抑制などに効果が認められる特定ゾーンは、前述の[課題を解決するための手段]欄における各態様に記載のとおりである。そして、これらの特定ゾーンにおいてブレーズ傾斜を逆向きに設定することが有効であることは、例えば以下に示す実施例1〜10からも認めることができる。
[実施例1]
本発明に基づく実施例1を以下に示す。実施例1の本発明プロファイルは前述の[表1]及び[図7](a)に示すプロファイルを有するものである。一方、比較例1は、前記[表1]及び[図5](a)に示す標準プロファイルにおいて各ゾーンの位相定数をh=0.6としたものであり、かかる比較例1としての標準プロファイルは[表2]および[図7](a)に破線で示すものである。
なお、ハロが特に問題視される遠方視用焦点位置での利得の変化や点像強度分布の相違を比較するために、以降の比較例としての標準プロファイルは、近方視用、あるいは中間視用のピーク強度が、本発明プロファイルのそれらと同じとなるように、元の標準プロファイルから位相定数と位相ずれ量を少し変量したものとした。
また、比較例1は、[図7](b)に破線で示すように実施例1の本発明プロファイルとの間で3D及び4D位置のピーク強度がほぼ同じになるようにされたものである。換言すると各ゾーンに逆向きの傾斜を設定しない標準プロファイルでは、多次光による光のロスが発生するため、本発明プロファイルと同程度の3D及び4Dの強度を発現するには本比較例1のように位相定数を大きくして+1次回折光の生成割合を増やす必要がある。
しかし、かかる設定によって比較例1のプロファイルでは0Dのピーク強度が大きく低下したものとなる。つまり、実施例1の本発明プロファイルは、比較例1のプロファイルよりブレーズ段差を低くしても、特定のゾーンの傾きを逆にするだけで3D、4Dのピーク強度を維持しつつ、かつ0次回折強度を増やすことが可能となるのである。
また、実施例1と比較例1の点像強度分布を比較すると、実施例1の点像強度分布([図6](c))は、比較例1([図7](c))よりもハロの広がりが低減したものとなっている。両者のプロット図([図7](d))からも像面周辺のピーク群が実施例1(実線)では比較例1(破線)に比してかなり減少していることが分かる。
従って、本実施例1より、本発明プロファイルでは標準プロファイルで実現される3焦点を生成しつつ、多次光の生成を抑え、その分、遠方視用のピークの利得が向上し、かつ、ハロが低減されたものとなることが分かる。よって、本発明プロファイルからなる回折構造を眼用レンズとして例えば眼内レンズなどに利用すると近方視、中間視、遠方視が良好で、かつ夜間のハロも低減された多焦点眼内レンズとすることができるのである。
[実施例2]
実施例2は、実施例1に関連する別態様を示すものである。比較例2としての標準プロファイルの構成ゾーンの半径は前記比較例1と同じであるが、[表3]及び[図8](a)に示すようにブレーズの位相定数とずれ量が新たに設定し直されたものである。かかる比較例2としての標準プロファイルの光軸上の強度分布は[図8](b)の破線で表示されている。比較例2の標準プロファイルは、比較例1と同様に0Dと、3D、4Dの位置にピークが生成するものとなる。比較例2は標準プロファイルそのものが多次光の生成が少なく、比較例1より遠方視用の0Dのピーク強度が増加したものとされている。比較例2の標準プロファイルも遠方視、近方視、中間視を可能とする多焦点眼用レンズとなりうるものである。しかし、本比較例2においても多次光は少なからず生成し、また、[図9](a)に示すように前記比較例1と同様にまだハロの広がりが目立つ点像強度分布を与える。
実施例2は、比較例2としての標準プロファイルに基づき、全体のブレーズの位相定数と位相ずれ量を変量して谷(谷底点)と頂点の位置を少し減じた上で、第2、5、8、11番目のゾーンのブレーズの傾きを反対とし、隣接するゾーンの谷と頂点が繋がるように設定したものである。実施例2としての本発明プロファイルの詳細は、上記[表3]及び[図8](a)に示されているとおりである。本発明プロファイルは実施例1と同じゾーン間隔から構成されるが、傾きが逆になったブレーズが、実施例1とは異なる山と谷位置で繋がった形状となる。なお、かかるブレーズの傾きが逆とされた調節ゾーンの位相定数は負の値となっている。
本発明プロファイルの光軸強度分布を[図8](b)に実線で示す。比較例2の標準プロファイルよりさらに多次光が減少し、その分が遠方視用とされる0Dのピークの増量分に振り分けられているのが分かる。[図9](b)は実施例2の点像強度分布である。[図9](c)はそのプロット図(プラス座標軸のみ表示)が比較例2と併せて表示されている。実施例2は比較例2と比して像面周辺のノイズが減り、明らかにハロが減少していることが分かる。本例から分かるように、ブレーズの調節によって標準プロファイルそのものにおいても多次光をある程度減少することができるが、かかる標準プロファイルに対して特定のブレーズの傾きの符号を逆とすることによってさらに多次光が減少し、主要ピークの利得向上に繋がり、かつハロの生成が抑制されたものとなることが分かる。
[実施例2−2、2−3、2−4]
上述の実施例1及び2は、何れも、特定ゾーンにおけるブレーズの傾きの符号を逆にして隣接するゾーンの谷と頂点を繋ぐように設定されたものである。尤も、本発明では、ブレーズの傾きの符号を逆とするゾーンの谷部と頂点部と、隣接するゾーンの谷部と頂点部の連結位置は完全に一致する必要はなく、谷部と谷部だけが一致し頂点部と頂点部の一致をみない形態であってもよい。あるいは、頂点部と頂点部だけが一致し、谷部と谷部の一致を見ないものであってもよい。さらには、谷部と頂点部の両サイドとも一致を見ない形態でもよい。このような部分的な一致の具体例を、以下に実施例2−2、2−3、2−4として例示する。
[図10]に示された実施例2−2は、前述の実施例2においてブレーズの傾きの符号が反対とされた第2、5、8、11番目のゾーンの谷部と頂点部が、隣接するゾーンの谷部と頂点部のいずれとも一致せず、隣接ゾーンの谷部、頂点部から基準線に下した垂線の途中でつながった形態のものである。また、[図11]に示された実施例2−3は、対象とされるゾーンの谷部での一致をみるが頂点部ではつながらない逆傾斜ブレーズの一例を示すものであり、[図12]に示された実施例2−4は、対象とされるゾーンの頂点部で繋がるが谷部での一致をみない逆傾斜ブレーズの一例を示すものである。
各実施例2−2、2−3、2−4に係る本発明プロファイルの詳細は、以下の[表4]、[表5]、[表6]及び[図10](a)、[図11](a)、[図12](a)に示す通りである。これら実施例群は、実施例2との間で構成のゾーン半径は変わらず、また、傾きが逆とされる調節ゾーン以外のゾーンのブレーズの位相定数と位相ずれ量は全く変わっていない。傾斜が逆とされるブレーズの位相定数とずれ量が若干変わり、連結位置が変わっただけのものである。かかる実施例群のプロファイルの光軸方向の強度分布を[図10](b)、[図11](b)、[図12](b)に、点像強度分布を[図10](c)、[図11](c)、[図12](c)にそれぞれ示す。
いずれの実施例2−2、2−3、2−4においても、前記比較例2と比較して多次光が少なく、そして、遠方視用のピーク強度が増大し利得向上が図られ、さらにハロの広がりが減少していることが分かる。そして、これらの実施例群から分かるように位相関数において傾きの符号が反対とされるブレーズは、傾きが逆とされていればよく、隣接ゾーン間で谷、頂点部と一致をみない構造であってもよいのである。
[実施例2−5、2−6]
さらに、前記各実施例に示されたブレーズにおける逆傾斜部分は、いずれも直線的に変化する位相関数とされていたが、傾きを逆向きとされるブレーズは、隣接するゾーンの谷部と頂点部の間で直線的に変化するブレーズとされていなくてもよい。例えば実施例2−5、2−6は傾きが逆とされるゾーンのブレーズを、隣接する谷部と頂点部の間で放物線状の関数で連結したものであり、実施例2−5は上に凸([図13](a))、実施例2−6は下に凸の放物線([図14](a))で形成したものである。かかる関数で連結したものにおいても、光軸上の光強度分布のシミュレーション結果を示す[図13](b)、[図14](b)から、多次光が減少し遠方視用のピーク強度の利得が向上することが分かる。
[実施例2−7、2−8、2−9]
また、上記実施例2−5、2−6に例示した放物線状の軌跡に基づくブレーズは、傾きの符号が反対とされる調節ゾーン以外のゾーンに適用されてもよい。たとえば実施例2−7は[図15](a)に示すように正の位相定数のブレーズを下に凸の放物線状の軌跡として設定し、負の位相定数のブレーズを上に凸状の放物線として設定したものである。また、実施例2−8は[図15](b)に示すように正の位相定数のブレーズを上の凸状の放物線の軌跡とし、負の位相定数のブレーズを下に凸の放物線の軌跡としたものである。さらに実施例2−9は[図15](c)に示すように各ブレーズをSin関数の軌跡として表したものである。
本発明プロファイルは、特定のゾーン(調節ゾーン)のブレーズの傾きの符号が反対とされることが重要であって、ブレーズの軌跡は直線であっても、放物線状であっても、さらにはSin関数などの三角関数の軌跡で表されるものにも適用できる。換言すれば、本発明プロファイルの基礎となる標準プロファイルは、複数焦点を有する回折格子であって、かかる標準プロファイルの位相関数におけるブレーズの具体的形状は限定されるものでなく、直線形状によるほか各種湾曲形状又は直線と湾曲線との組み合わせ形状などによって形成されたブレーズであっても良い。また、標準プロファイルにおけるブレーズが湾曲形状であっても、本発明プロファイルにおいて逆傾斜とされたブレーズを直線形状とすることなども可能である。
[上記実施例における結像特性の検討]
上記実施例から、本発明プロファイルを採用することで回折型多焦点眼用レンズにおいて多次光の生成が抑えられること、そして0次回折光の焦点像面の点像強度分布の周辺のピーク群が低減し、ハロの広がりが減少することがわかる。このような光学特性の改善作用については、本発明者がおこなった上記実施例を含む多数の実験や検討などにより、以下のように説明することができる。
一般にレンズに入射して出射される光のうち0次回折光の焦点像面結像特性は、レンズの特性を表す瞳関数のフーリエ変換で記述される。瞳関数を構成する位相関数に対してもフーリエ変換のアナロジーからその結像特性を把握することができる。たとえば、位相関数としてブレーズ状の関数が設定されたものは例えば鋸歯のような形状となるが、一般に鋸歯状の周期関数のフーリエ変換スペクトルはスペクトル強度が次第に減衰するものの高周波数領域までスペクトルが続く分布を与える。ここにおいてスペクトル分布は、結像光学では0次焦点像面における光の振幅特性を表すものと解すことができることから、像面の中心から外周部に亘る広い領域に、鋸歯のフーリエ変換スペクトル分布に類似したピーク分布を有する点像強度分布を与えることとなるのである。かかるピークは像面の中心から離れるにしたがって減衰して強度を減じる分布となるが、外周部に亘って微弱なピークが残る。かかるピークは微弱な強度であっても前述のとおり人の眼においては知覚されうるものとなり、光源の周りのリングや暈として認識されることとなる。つまり広がりのあるハロとなるのである。
一方、かかる鋸歯形状において特定のゾーンのブレーズの傾きを逆としたものは、隣接するゾーンとの間で三角形あるいは疑似三角形の形態を与えるものとなる。かかる形状はフーリエ成分としての三角関数の形態に近いものとなるため、フーリエ変換スペクトルは高周波までのスペクトルを必要とせず低周波のスペクトルを主とした構成となる。すなわち、点像強度分布においては外側までノイズピークが広がらない強度分布となるのである。
ところで、ブレーズの傾きの符号を反対にするゾーンは、基本的にはどのゾーンも対象になりうるのであるが、本発明の効果を発現するための好適な特定のゾーンが存在する。
まず、点像強度分布において像面周辺のノイズの発生を抑えるために好適となるゾーンが存在する。前記鋸歯のフーリエ変換のアナロジーから、ゾーン周期の短い、つまりゾーン間隔の狭い領域のブレーズがまず好適な対象ゾーンとなりうる。つまり、周期の短いゾーンにおいては高周波数のスペクトルを生成しやすい。すなわち点像強度分布で外周部まで微弱なピークノイズが生成しやすくなる。したがってかかる周期の短い、換言すると間隔の狭い、あるいは面積の小さなゾーンがブレーズの傾きの符号を逆にするのに好適な調節ゾーン候補の第一に挙げられる。
したがって、かかる好適なゾーンを選択する基準の一つとして、まずゾーン間隔に着目した選択基準が挙げられる。ゾーン間隔を選択基準とする際に最大間隔を与えるゾーンで各構成ゾーンの間隔を規格化したものが本発明では好適に用いられる。たとえば、構成ゾーンの中で最大間隔を与えるゾーンの間隔をΔrmaxとした場合、これで各構成ゾーンの間隔Δrを除したもの、Δr/Δrmaxを選択の目安として用いることができる。
また、それ以外のパラメーターを選択することもできる。例えば、ゾーン面積に着目した選択を併用してもよい。たとえば、構成ゾーンの中で最大面積を与えるゾーンの面積をSmaxとした場合、これで各構成ゾーンの面積Sを除したもの、S/Smaxを選択の目安として用いることができる。
ちなみに前記実施例1及び2においてブレーズの傾きが逆とされたゾーン(第2、5、8、11番目のゾーン)のΔr/Δrmaxは第2ゾーンの約0.22が最大とされ、いずれも間隔は狭いものである。なお、かかるゾーンのS/Smaxはいずれも0.33であり、ゾーン面積が最も小さいものが選択されている。
さらに、上述のフーリエ変換のアナロジーから特定される選択パラメーターとは別に、プロファイルの構成ゾーンごとの光軸上強度分布の幅を、ブレーズの傾きの符号を逆とするに好適なゾーンを選択する際のパラメーターとして用いることもできる。
具体的には、実施例1または実施例2のプロファイルを構成する各ゾーン領域から出射される光の光軸上強度分布は図16(a)、(b)、(c)に示すような強度分布に分類される。第3、4、9、10番目の各ゾーンの光軸方向の強度分布の幅はいずれも同じで最も狭い。次に第1、6、7、12ゾーンからの強度分布が狭く、第2、5、8、11番目のゾーンからの強度分布の幅は最も広いものとなる。本発明ではかかる広い強度分布の幅を与えるゾーンのブレーズの符号を逆にしてもよい。蓋し、かかる対象ゾーンから射出される光は回折して光軸上の広い範囲に到達することとなり、標準プロファイルの与える主要なピーク位置に無駄なく光のエネルギーを分配することとなる。したがって、かかるゾーンのブレーズの符号を逆向きとしても主要ピークの利得の低下はなく、本発明の効果を好適に享受できると考え得る。
なお、かかる強度分布の幅は、本発明のプロファイルを前述の理想レンズ上に構成して得られる強度分布を用いることとする。したがって、本発明の回折構造を収差のあるレンズや非球面状のレンズに設定するとしても、いったん該回折構造を理想レンズ上に配して得られる強度分布を用いればよい。これにより、かかる強度分布の幅は、光軸上の座標軸をDiopterで表示することによってレンズの基準度数(0次回折光の与える度数)に依らないゾーン固有のパラメーターとなる。したがって、Diopter表示された強度分布の幅を以て本発明の選択パラメーターとすることができる。
なお、本発明では強度分布の幅として半値幅(強度分布における強度の値が半分となる度数の幅)を用い、構成ゾーンの中で最も狭い半値幅をΔDminとし、各ゾーンからの強度分布の半値幅ΔDをΔDminで規格化した値、ΔD/ΔDminを選択の基準とする。ちなみに実施例1または2において傾きを逆とした第2、5、8、11番目のゾーンのΔD/ΔDminは約3となり、広い強度分布を与えるゾーンであることが分かる。
以上の理由より、前記パラメーターに基づきブレーズの傾きの符号を逆とするに好適なゾーンを容易に且つ有効に選択することが可能となり、その結果として多次光の発生を抑制し、ピークの強度の利得向上を達成しつつ、ハロが低減された、多焦点を与える回折型多焦点眼用レンズを得ることができるのである。
なお、ゾーンのブレーズの傾きの符号を逆向きとすることの他の利点としては、前述の結像、光学特性の向上以外に、回折構造の製造のしやすさを挙げることができる。たとえば比較例2([図8](a))の標準プロファイルをレリーフ状の回折構造とする場合、複雑に入り組んだ段差の加工が必要となるため、かかるレリーフを精度よく効率的に加工することは難しい。
一方、同図に実施例2として示された本発明プロファイルでは、たとえば谷と頂点が連結し結果として三角形の形状が部分的に導入されたものにおいては加工がしやすくなるのである。特に面積の小さいゾーン、あるいは間隔の狭いゾーンにおいて逆向きとすることが好適とされる場合、入り組んだ構造が単純な三角形構造と変換されるため、加工が容易となり、ひいては加工精度の向上に繋がるという効果をも有するのである。
以上の説明から、本発明を理解することは可能であるが、本発明の技術的意義をより具体的に理解すると共に、本発明を一層容易に実施することができるように、本発明の他の具体例を実施例3〜10として以下に挙げておく。
[実施例3]
本例の標準プロファイルはゾーン系列(1)で定められるゾーン半径と、ゾーン系列(2)で定められるゾーン半径とが、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心的に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.57mm、P=4Dで設定され、ゾーン系列(2)は同[数15]においてr1=0.5048mm、P=2.67Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)と(2)で定められるゾーン半径が、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて同心状に配されて、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。該標準プロファイルの位相定数はどのゾーンもh=0.6、τ=0とされている。
本標準プロファイルの詳細を[表7]及び[図17](a)に比較例3として示す。また、比較例3としての標準プロファイルの光軸上強度分布を[図17](b)(破線)に示す。本標準プロファイルは、0D、2.67D、4Dの位置に3つの主要焦点ピークを生成するものとなる。したがって、かかる標準プロファイルからなる回折レンズを眼用レンズ、たとえば眼内レンズとして用いると遠方視、近方視、さらに中間視の可能な3焦点の眼内レンズとして有用なものとなる。
しかし、比較例3としての標準プロファイルにおいては、多次光に基づくピークの生成(図中矢印)が見られ、0Dの主要ピークの利得が大きく低下するものとなっている。
一方、実施例3の本発明プロファイルは、該標準プロファイルの位相定数をh=0.5とした時の第2、4、7、9、12番目のゾーンのブレーズを、位相定数を負にして隣接するゾーンの谷と頂点を繋ぐように逆向きにしたものとされている。かかる実施例3としての本発明プロファイルの詳細を[表7]及び[図17](a)に、比較例3と併せて示す。また、実施例3としての本発明プロファイルの光軸上強度分布を[図17](b)に、比較例3と併せて示す。
かかる[図17](b)に示す結果から、本発明プロファイルでは近方及び中間視の強度が維持されつつ多次光のピークが消失し、遠方視用とされる0Dのピーク強度が大幅に向上していることが分かる。さらに点像強度分布は、[図18]に示すように、比較例3では周辺に亘る広い範囲でリング状のハロの生成が見られる([図18](a))が、実施例3ではリングの多くが消失してハロが減少している([図18](b))ことが分かる。
本発明プロファイルでは、ブレーズの傾きが逆向きとされた調節ゾーンのΔr/Δrmaxは、第2ゾーンの0.13が最大で、いずれの調節ゾーンの間隔も狭いものである。また、S/Smaxはいずれも0.26以下のもので、面積の小さいゾーンが逆向きとされている。これら周期の短いゾーンは標準プロファイルの状態では多次光を発生しやすく、主要ピークの利得の低下を招く原因となる。また、前記したフーリエ変換のアナロジーから0次焦点像面に高周波(周辺領域)のノイズを生成しやすいため、ハロも目立つものとなる。然るにかかるゾーンの傾きを逆にすることによってノイズ生成を抑え、ハロを低減することができるのである。
また、これら調節ゾーンのΔD/ΔDminは3.93以上で強度分布の半値幅が大きいため、主要ピークの利得向上も可能となるのである。
したがって、本例の本発明プロファイルは、遠方、中間、近方の3焦点を与えつつ標準プロファイルよりさらに遠方視の見え方が改善され、かつ、夜間のハロが低減された回折型多焦点眼用レンズとして有用なものとなるのである。
[実施例4]
本実施例4は、本発明プロファイルとしての詳細を[表8]及び[図19](a)に、比較例4としての標準プロファイルと併せて示すように、上記実施例3の標準プロファイルにおいて逆向きとするゾーンを第2、4、7、9、11にしたものである。すなわち、実施例3では第2、4、7、9、12のゾーンを調節ゾーンとしてブレーズの傾きの符号を逆にしたが、本実施例では第12番目のゾーンの代わりに第11番目のゾーンを調節ゾーンとして逆向きにした例である。
比較例4としての標準プロファイルは比較例3と同じゾーン半径を有しているが、[図19](a)及び[表8]に示すようにブレーズの位相定数と位相ずれ量が変量されたものとなっている。かかる標準プロファイルの光軸上強度分布を[図19](b)(破線)に、点像強度分布を[図20](a)、(c)(破線)にそれぞれ示す。本標準プロファイルは比較例3と同様に0D、2.67D、4Dに主要焦点ピークを生成するものとなる。比較例4は標準プロファイルの段階で比較例3よりも多次光の生成とハロの広がりが少ないものであるが、本発明プロファイルとすることによってさらに多次光を低減し利得を向上させ、かつハロを低減させることができる。
本例の標準プロファイルに対して第2、4、7、9、11番目のゾーンのブレーズの傾きを隣接するゾーンの谷部と頂点部が連結するように逆向きとし本発明プロファイルを得た([表8]、[図19](a))。また、光軸上強度分布を[図19](b)に、点像強度分布を[図20](b)(c)にそれぞれ示す。逆向きにすることによって標準プロファイルよりも0Dのピーク強度が大きくなっていることが分かる。また点像強度分布において、比較例4では目立っていた外周のリングが減少し、ハロがさらに低減されたものとなることが分かる。
本実施例で逆向きとされるゾーンは、第11番目のゾーンのΔr/Δrmax、約0.15を最大としていずれもゾーン間隔の狭いものである。なお、第11番目のゾーンはプロファイルの外周部近くに位置しており、本実施例の回折格子の設定領域(回折格子領域)において径方向中央より外周側に位置している。このように格子領域の外周側に位置するゾーンでは、周長が大きくなることによりゾーン面積Sが大きくなり、また光軸上の分布幅も狭くなる傾向にあるが、ゾーン間隔を指標とすることでかかるゾーンも、前記フーリエ変換のアナロジーに基づくと像面上に高周波のノイズ発生の原因となる場合があると推定され調節ゾーンとして選定されたものである。
比較例4は標準プロファイルの段階で多次光の発生が少なく、主要ピークの利得も前記比較例3ほど損なわれていないものである。よって本例ではハロの低減を主目的とするために、逆向きとするゾーン群の中に実施例4のような光軸上の分布幅は狭いが、ゾーン間隔の狭いゾーンを加えてもよいとした例である。かかるゾーンのΔD/ΔDminは約1.35であり、かかるゾーンから射出される光の光軸上の強度分布はそれほど広くなく、利得向上の寄与分は僅かである。しかし、主要ピークの利得向上よりもハロノイズ低減を主とするためにかかるゾーンを選択することができる。
[実施例5]
本例は標準プロファイルを構成するゾーン系列(1)と(2)において、ゾーン系列(1)、(2)とも実施例3と同じゾーン間隔とされているが、ゾーン系列(2)を第1から4番目の領域に限定して標準プロファイルのゾーン構成としたものである。
本例の標準プロファイルの詳細を比較例5として[表9]及び[図21](a)に示す。本標準プロファイルでは第1から10番目のゾーンのブレーズの位相定数をh=0.5とし、第11、12番目のゾーンは表9に示す通りの位相定数と位相ずれ量としたものである。かかる比較例5としての標準プロファイルの光軸上強度分布と点像強度分布を[図21](b)、[図22](a)にそれぞれ示す。本標準プロファイルにおいても0D、2.67D、4Dの位置に主要ピークが生成するものとなり、多焦点眼用レンズとなりうるものである。本比較例は標準プロファイルそのものが多次光によるロスの少ないものとなっている。しかし、点像強度分布においてはリングが強調されたハロパターンを示すため、夜間遠方視力の低下を招くおそれがある。
かかる標準プロファイルにおいて第2、4、7、9、11番目のゾーンのブレーズを隣接する谷部と頂点部が繋がるように逆向きにしたものが実施例5としての本発明プロファイルである。本発明プロファイルの詳細を[表9]及び[図21](a)、(b)に、比較例5と併せて示す。また光軸上強度分布、点像強度分布を[図21](b)、[図22](b)(c)にそれぞれ示す。元の標準プロファイルそのものがロスの少ないものであるが、本発明プロファイルはさらに多次光のロスが少なくなったものとなる。また、点像強度分布はリングパターンが消失し、標準プロファイルよりも輝度が低くなり、ハロが大幅に低減されることが分かる。
本実施例で逆向きとされるゾーンは、第11番目のゾーンのΔr/Δrmax、約0.2を最大としていずれも間隔の狭いものである。なお、第11番目のゾーンは回折格子の外周部分に位置しており、ゾーン面積Sが大きくなるが、前記実施例4の第11番目のゾーンと同様に対象のゾーンに選定した。また、かかる第11番目のゾーンのΔD/ΔDminは1で、最も狭い幅の強度分布を与えるものとなる。前記実施例4と同じく主要ピークの利得向上への寄与分は僅かであっても、ハロ低減を主目的とする場合には、かかる分布幅の狭いゾーンも対象ゾーンの一部として加えてもよいものと理解されるべきである。
[実施例6]
実施例6は、本発明プロファイルとしての詳細を[表10]及び[図23](a)に、比較例6としての標準プロファイルと併せて示すように、ゾーン系列(1)で定められるゾーン半径とゾーン系列(2)で定められるゾーン半径とが、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心上に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.5225mm、P=4Dで設定され、ゾーン系列(2)は前記[数15]においてr1=0.3695mm、P=2.67Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)と(2)で定められるゾーンが、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。
ここでの標準プロファイルを形成するゾーン系列(1)とゾーン系列(2)の付加屈折力は前記実施例3と同じものであるが、それぞれの第一番目のゾーン半径が異なったものとなっている。したがって標準プロファイルのゾーン径も異なったものとなっている。本標準プロファイルのブレーズは[表10]に示す位相定数と位相ずれ量で設定されるものとなっており、[図23](b)に破線で示す光軸上強度分布を示すものである。0Dと2.67Dと4Dの位置に主要焦点ピークが生成することとなる。本例の標準プロファイルの構成ゾーン系列(1)、(2)は、実施例3と同じ付加屈折力で設定されているので、実施例3と同じ位置に焦点が生成するものとなる。
したがって、本例の標準プロファイルも遠方視、近方視に加え中間視も可能な多焦点眼用レンズとして利用可能なものとなる。しかし多次光が少なからず発生し、また、[図24](a)に示す点像強度分布において輝度は低めだが、広がりのあるハロパターンを示すため、これをさらに目立たなくなるようにする必要がある。
かかる比較例6としての標準プロファイルの位相定数と位相ずれ量を僅かに変量した上で第2、5、9番目のゾーンのブレーズを隣接するゾーンの谷部と頂点部が繋がるように逆向きにしたものが実施例6である。本実施例では第2ゾーンのΔr/Δrmaxが約0.41、第5ゾーンが約0.2、第9ゾーンが約0.14となっている。逆向きとされた第2ゾーンの間隔はさほど狭いものではないが、ΔD/ΔDminは約2で、第5、9ゾーンと並んで構成ゾーンの中で最も光軸上の強度分布が広いものとなるため、かかるゾーンも逆向きとするに好適なゾーンとして選択されている。なお、第2ゾーンのS/Smaxは0.5で他の第5、9ゾーンと同じ面積となり、構成ゾーンの中で最も小さな面積ともなっている。
このように逆向きにした実施例6の本発明プロファイルでは光軸上強度分布([図23](b))は多次光が減少し、遠方視用とされる0D位置のピーク強度が増し、利得の改善に繋がっていることが分かる。また、[図24](b)(c)に示す本発明プロファイルの点像強度分布では、標準プロファイルよりノイズが減少し、リングの広がりが少なくなっていることが分かる。本実施例6は、ゾーン半径は異なるが実施例3と同じ付加屈折力のゾーン系列から構成されたものである。このように同じ位置に焦点を形成する別の態様のプロファイルにおいても等しく本発明を適用できることが本実施例から分かるのである。
[実施例7]
実施例7は、本発明プロファイルとしての詳細を[表11]及び[図25](a)に、比較例7としての標準プロファイルと併せて示すように、ゾーン系列(1)で定められるゾーン半径とゾーン系列(2)で定められるゾーン半径とが、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心上に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.5225mm、P=4Dで設定され、ゾーン系列(2)は前記[数15]においてr1=0.58mm、P=2Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)と(2)で定められるゾーンが、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。
本標準プロファイルにおける各ゾーンのブレーズの位相定数と位相ずれ量は、上記[表11]に比較例7として示すように設定されている。かかる標準プロファイルの光軸上強度分布を[図25](b)に示す。ここでは0Dと2Dと4Dの位置に主要な焦点ピークが生成するものとなる。ゾーン系列(2)の付加屈折力が2Dとされていることから、これを構成成分とする標準プロファイルでは2Dの位置にもピークが出現する。かかる2Dのピークも本プロファイルを眼内レンズとした場合、中間視用の焦点として利用でき、中間視領域が少し遠方寄りになった多焦点眼内レンズとすることができるのである。
しかし、標準プロファイルでは多次光が生成し、また、点像強度分布([図26](a))では薄いリングが外周に亘って発生する。そこで、標準プロファイルのブレーズを[表11]に示すように位相定数と位相ずれ量を若干変量した上で第2、5、8、11番目のゾーンのブレーズを隣接するゾーンの谷部と頂点部がつながるように逆向きにしたのが実施例7である。[表11]中、逆向きとされたゾーンの位相定数は負となっている。
かかるブレーズの傾きが逆向きとされたゾーンは、第2ゾーンのΔr/Δrmax、約0.11を最大としていずれも間隔は狭いものである。また、S/Smaxは約0.23で、いずれのゾーンも構成ゾーンの中で面積が最も小さいものである。さらには、ΔD/ΔDminは約4.33で、構成ゾーンの中で最も光軸上強度分布が広いものが選択されている。
このように特定のゾーンのブレーズを逆向きにしたところ、[図25](b)に示す光軸強度分布においては多次光の発生が抑えられ、その分が0Dと2Dのピーク強度の増量分となり、各々のピークの利得が向上することが分かる。また、[図26](b)(c)に示されるように、標準プロファイルとしての比較例7([図26](a))では外周部まで広がっていたリングが薄くなり、目立たなくなったものとなっている。よって、本発明プロファイルは、ハロが低減され、近方、中間、そして遠方視を可能とする多焦点眼内レンズとして有用なものとなるのである。
[実施例8]
実施例8は、本発明プロファイルとしての詳細を[表12]及び[図27](a)に、比較例8としての標準プロファイルと併せて示すように、ゾーン系列(1)で定められるゾーン半径とゾーン系列(2)で定められるゾーン半径とが、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心上に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.5225mm、P=4Dで設定され、ゾーン系列(2)は前記[数15]においてr1=0.6399mm、P=1.6Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)と(2)で定められるゾーンが、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルとされる比較例8の構成ゾーンとなっている。
かかる標準プロファイルの光軸上強度分布は[図27](b)に破線で示すものとなり、0D、1.6D、4Dの位置に主要な焦点ピークが生成するものとなる。かかる1.6Dの位置の焦点ピークは、ゾーン系列(2)の付加屈折力に基づき発現するものである。この標準プロファイルを備えた比較例8を眼用レンズとしてたとえば眼内レンズとして用いたとすると、1.6Dとされるピークは手前約1m地点のものを見るに適した焦点位置となる。よってかかる眼内レンズでは遠方、近方に加えて約1m地点のものも見える3焦点眼内レンズとして有用なものとなる。
ただし、多次光によるロスが少なからず発生する。また、比較例8の点像強度分布である[図28](a))に示されるように、リング状のハロが目立つものとなり、夜間の遠方視力を損なうおそれがある。
ここにおいて、かかる比較例8としての標準プロファイルのブレーズの位相定数と位相ずれ量を若干変量した上で第2、3、8、9番目のゾーンのブレーズを隣接するゾーンの谷部と頂点部が繋がるように逆向きにしたものが実施例8の本発明プロファイルである。なお、逆向きとされたゾーンの位相定数は[表12]において負となっている。かかる逆向きとされたゾーンは、第2ゾーンのΔr/Δrmax、約0.22を最大としていずれの間隔も狭いものである。なお、S/Smaxは0.5で、いずれのゾーンも構成ゾーンの中で面積が最も小さいものである。また、ΔD/ΔDminは約2で、構成ゾーンの中で光軸上の強度分布が広いものが選択されている。
実施例8としての本発明プロファイルの光軸方向の強度分布は[図27](b)に示されるもので、標準プロファイルである比較例8のものより多次光が低減され、その分、0D位置のピークの強度が増加し、また4Dのピークも僅かに強度が大きくなっており、利得の向上が図られていることが分かる。[図28](b)(c)に示された実施例8の点像強度分布においては、外周部のリングが消失し、標準プロファイルのものよりもハロの広がりが抑制されていることが分かる。かかるプロファイルでは第2と3、そして第8と9の隣り合う連続した2つのゾーンのブレーズが逆向きとされたものである。このような連続して逆向きとする態様も本発明では好適に利用することができる。よって本実施例に基づく回折レンズは、ハロが低減され、遠方視、近方視、そして中間視が可能な多焦点眼内レンズとして有用なものとなるのである。
[実施例9]
実施例9は、本発明プロファイルとしての詳細を[表13]及び[図29](a)に、比較例9としての標準プロファイルと併せて示すように、ゾーン系列(1)で定められるゾーン半径と、ゾーン系列(2)で定められるゾーン半径と、さらにゾーン系列(3)で定められるゾーン半径が、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心上に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.5396mm、P=3.75Dで設定され、ゾーン系列(2)は前記[数15]においてr1=0.4406mm、P=2.81Dで設定され、ゾーン系列(3)は前記[数15]においてr1=0.5396mm、P=1.88Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)、(2)、そして(3)で定められるゾーンが、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。
[図29](a)に示された比較例9としての標準プロファイルの光軸上強度分布を、[図29](b)に破線で示す。これより0D、2.81D、3.75Dの3つの焦点ピークに加えて約1.88Dの地点にもピークが生成することが分かる。つまり本標準プロファイルでは4焦点を生成しうるプロファイルとなるのである。0Dを遠方視用、3.75Dは手前約38cm地点を見る近方視用、2.81Dは手前約50cmを見る第一の中間視用、そして、1.88Dは手前約75cmを見る第二の中間視用、となる多焦点レンズとなるもので、4焦点眼用レンズとして有用なものとなる。
しかし、該標準プロファイルでは多次光が少なからず発生するものとなり、また[図30](a)に示されているように、点像強度分布においてはリング状にハロが生成するものとなる。
そこで、かかる比較例9としての標準プロファイルの位相定数と位相ずれ量を若干変更した上で第2、5、8、11のゾーンのブレーズを隣接するゾーンの谷部と頂点部が繋がるように逆向きとしたものが本実施例9の本発明プロファイルである。なお、逆向きとされるゾーンの位相定数は[表13]中において負となっている。本例ではかかる逆向きとされたゾーンは、第2ゾーンのΔr/Δrmax、約0.22を最大としていずれも間隔の狭いものである。なお、S/Smaxは0.33で、いずれのゾーンも構成ゾーンの中で面積が最も小さいものである。また、ΔD/ΔDminは約3で、構成ゾーンの中で光軸上の強度分布が広いものが選択されている。
実施例9としての本発明プロファイルの光軸方向の強度分布は[図29](b)に示されるもので、標準プロファイルである比較例9のものより多次光の発生が抑えられ、0Dのピークが増大し、利得の向上が図られていることが分かる。また、[図30](b)(c)に示された実施例9の点像強度分布においては、標準プロファイルよりもハロの広がりは小さくなり、目立たないものとなることが分かる。
このように、本実施例9は標準プロファイルにおいて4焦点レンズとなるものを用いた例である。かかる多焦点レンズに対しても本発明は好適なものとなるのである。また、上述の各実施例からは、4焦点に限らず、さらに多くの焦点数を有するプロファイルに対しても本発明は同様に適用可能であるものと理解され得る。
[実施例10]
実施例10は、本発明プロファイルとしての詳細を[表14]及び[図31](a)に、比較例10としての標準プロファイルと併せて示すように、ゾーン系列(1)で定められるゾーン半径とゾーン系列(2)で定められるゾーン半径とが、該標準プロファイルの同一領域上に重ね合わされるようにして同心上に組み込まれて設定されたものである。ゾーン系列(1)は前記[数15]においてr1=0.7389mm、P=2Dで設定され、ゾーン系列(2)は前記[数15]においてr1=0.6033mm、P=1.5Dで設定されたものである。ゾーン系列(1)と(2)で定められるゾーン半径が、半径の小さい順に同一領域内で中心から外周部に向けて配され、標準プロファイルの構成ゾーンとなっている。
[図31](a)に示された比較例10としての標準プロファイルの光軸上強度分布を、[図31](b)に破線で示す。かかる標準プロファイルの光軸上強度分布は、0D、1.5D、2Dの地点に主要ピークが生成する分布となっている。かかる標準プロファイルからなる回折型多焦点眼用レンズは一般の老視患者に対する多焦点コンタクトレンズとして有用なものとなる。
すなわち、眼内レンズが適用される患者、例えば白内障患者においては自己の水晶体の除去に伴い焦点調節力が消失するので読書をするための近方視焦点位置は、眼内レンズ単体としては4D相当にあることが必要とされる。しかし、自己の調節力がまだ残っている一般の老視患者においてはコンタクトレンズの処方が好適であり、コンタクトレンズにおいては自己の残余調節力との併用で必要とされるレンズ単体での焦点位置は2D相当であれば十分である。したがって、本例は2Dを近方視用、1.5Dを中間視用、0Dを遠方視用として割り当てることによって、自己の焦点調節力が残っている老視患者に対する3焦点用コンタクトレンズとして有用なものとなる。かかる処方例においても中間視用とされる焦点が設定されることから、遠方視はもちろんのこと、読書距離からパソコンモニター画面の視認距離まで広く視力が確保されたものとなる。
しかし、比較例10としての本標準プロファイルでは、[図31](b)に破線で示されるように多次光が発生するとともに、[図32](a)に示される点像強度分布においてハロの生成も認められる。
そこで、かかる標準プロファイルの位相定数と位相ずれ量を若干変量した上で第2、5、8、11番目のゾーンのブレーズを、隣接するゾーンの谷部と頂点部が繋がるように逆向きにしたものが実施例10の本発明プロファイルである。なお、逆向きとされるゾーンの位相定数は上記[表14]中で、負とされている。本実施例10において、かかる逆向きとされたゾーンは、第2ゾーンのΔr/Δrmax、約0.22を最大としていずれも間隔の狭いものである。なお、S/Smaxは0.33で、いずれのゾーンも構成ゾーンの中で面積が最も小さいものである。また、ΔD/ΔDminは2.97で、構成ゾーンの中で光軸上の強度分布が広いものが選択されている。
実施例10としての本発明プロファイルの光軸上強度分布は、[図31](b)に示されているように、標準プロファイルと比べて多次光が減少し、0Dのピーク強度が増し、利得が向上することが分かる。また、また、[図32](b)(c)に示された実施例10の点像強度分布では、標準プロファイルとしての比較例10に比して周辺のリング状のノイズが低減し、ハロの広がりが少なくなることが分かる。
したがって、本実施例10としての多焦点眼用レンズは、ハロが抑制された多焦点のコンタクトレンズとして有用なものとなるのである。
以上の実施例1〜10および比較例1〜10の記載からも具体的にわかるように、前記[数15]で与えられる複数のゾーン系列の重ね合わせ構造からなる同心状の複数のゾーンによりブレーズ状の位相関数からなる回折格子が設定された標準プロファイルは複数の焦点を生成しうるものであるが、多次光の生成による利得の低下が避けられず、また、リングや暈が目立つハロが生成されるという問題がある。この標準プロファイルにおいて特定のゾーンのブレーズの傾きを逆とされた本発明プロファイルでは多次光の発生が抑制され、かつ主要焦点ピークの利得が向上し、さらにはハロの低減された回折型多焦点眼用レンズとなるのである。
そして、本発明において、かかるブレーズの傾きを逆とされる特定のゾーンは、前述したようにゾーンの間隔や面積、あるいはゾーン単位での光軸上強度分布の幅(半値幅など)を勘案して選択するのが好適である。
ここにおいて、ゾーンの間隔の選択基準としては、例えば前記Δr/Δrmaxを用いることが可能であり、Δr/Δrmaxが0.5以下のゾーンを選択するのが望ましく、0.45以下となるのがより好ましく、0.25以下となるのが特に好ましい。特に回折格子が設けられた領域における半径方向の中央よりも外周側に位置する領域、又は、眼光学系に光学作用を及ぼすレンズ光学部の半径方向の中央よりも外周側に位置する領域においては、Δr/Δrmaxが0.25以下となるゾーンを逆傾斜ブレーズの設定ゾーンとして選択することが好適である。
また、ゾーンの間隔を選択基準として特定のゾーンを選択することに代えて、又は加えて、ゾーン面積を選択基準として用いてもよい。たとえば前記実施例6における第2ゾーンは、ゾーン間隔はさほど狭いものではないが、面積としては構成ゾーンの中で最も小さくなることから選択されたものである。特に回折格子が設けられた領域における半径方向の中央よりも内周側に位置する領域、又は、眼光学系に光学作用を及ぼすレンズ光学部の半径方向の中央よりも内周側に位置する領域においては、面積を選択の基準とすると効果的な場合がある。面積を選択の基準とする際は、例えば前記S/Smaxを用いることができる。S/Smaxを用いる場合には、当該値が0.5以下のゾーンを選択するのが望ましく、0.35以下となるものがより好ましい。
更にまた、ゾーンの間隔や面積を選択基準として特定のゾーンを選択することに代えて、又は加えて、ゾーンからの出射光による光軸上の強度分布の幅を選択基準として用いても良い。所定ゾーンの強度分布の幅は、たとえばピークの最大強度に対して相対的に30%や50%、60%などとなる所定基準値の幅ΔDを選択の基準とすることが可能である。このような光軸上の強度分布の幅を選択の基準とする際は、例えば前記ΔD/ΔDminを用いることができる。ΔD/ΔDminを用いる場合には、当該値が2以上となるゾーンを選択するのが好ましく、2.5以上となるのがより好ましい。なお、特に回折格子が設けられた領域における半径方向の中央よりも内周側に位置する領域、又は、眼光学系に光学作用を及ぼすレンズ光学部の半径方向の中央よりも内周側に位置する領域においては、ゾーンからの出射光による光軸上の強度分布の幅を選択の基準とすると効果的な場合がある。
なお、このような本発明に従う選択基準によって選択された対象ゾーンは、該当する対象ゾーンの全てについてブレーズの傾きを逆とする必要はない。前記実施例による例示や結像特性の検討結果からもわかるように、かかる対象ゾーンの中で少なくとも一つのゾーンにおいてブレーズの傾きが逆向きとされることによって、ハロの抑制などの本発明の効果が発揮されることとなる。
また、前記実施例としてはコンタクトレンズとIOLを具体的に例示したが、回折格子によって発現される光学特性は基本的に同じに把握され得る。それ故、レンズが装用される環境条件さえ考慮すれば、コンタクトレンズやIOLとして特定された前記実施例は、何れの区別なく理解することが可能であり、またICL更には眼鏡レンズとしても、本発明の実施例として把握することができる。
更にまた、調節ゾーンにおけるブレーズ状の位相関数の傾斜を本発明に従って逆向きにする態様としては、前記[図10〜14]等に例示するように直線状であると曲線状であるとを問わず、また、逆向きにする前の標準プロファイルにおける該当するブレーズ状の位相関数の態様も、前記[図2]に例示するように特定形状に限定されるものでない。なお、標準プロファイルにおいて該当するブレーズの傾斜角度についてプラス傾斜が0を含むものと把握する。従って、例えば[図2](c)に示される方形波のブレーズ状の場合にも、該当ゾーンに対して前記実施例のようにマイナスの任意の傾斜角度を設定することで本発明を適用することができる。
さらに、前記実施例では、[図4]に示されているようにレンズ全面が実質的に光学部とされていたが、コンタクトレンズのようにレンズ外周部分において眼光学系に光学作用を及ぼさない周辺部などは適宜に設けられ得る。また、光学部においても、径方向の所定領域だけに部分的に回折格子を設けることも可能である。例えば、光学部の内周側に屈折レンズを設けると共に、その外周側に回折格子を設けて回折レンズとすることなども可能である。
また、径方向で部分的に回折格子を設けた眼用レンズに本発明を適用した場合には、逆向き傾斜を設定する特定のゾーンを、前述の如きゾーン間隔やゾーン面積、光軸上強度分布幅などの選択基準をもって選択するに際して、各基準値を与える標準プロファイルは理論値とされる。すなわち、例えば光学部の径方向中間部分よりも外周側にだけ回折格子が設けられる場合であっても、前記[本課題を解決するための手段]の欄において本発明の第一、四、十三の態様に記載の「同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmax」や第二、四、十三の態様に記載の「同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smax」、第三、四、十三の態様に記載の「同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDmin」は、何れも、図5(a)に例示されるように光学部の光学中心から外周端まで連続するブレーズ状の位相関数からなる標準プロファイルを対象として把握されることとなり、それによって客観的且つ妥当な選択基準の設定が為される。
一方、本発明において逆向き傾斜を設定するゾーンを特定するに際しては、当然ながら、回折格子の設定領域内に現存するゾーンが対象とされる。すなわち、前記[本課題を解決するための手段]の欄において本発明の第一〜四、十三の各態様に記載の「前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーン」である調節ゾーンは、レンズ光学部に設定されて実在するゾーンとされる。
また、本発明は回折型多焦点眼用レンズにおける回折格子の設定領域の少なくとも一部に適用可能であり、例えば前記特許文献5に記載の如き等間隔のブレーズ状の位相関数のみが設定された領域を径方向で部分的に備えた眼用レンズ等に対しても、かかる等間隔のブレーズ領域を外れた位置に本発明が適用され得る回折格子を併せ備えているような場合には、本発明が有効に適用され得る。
更にまた、本発明によって与えられる位相関数は、眼用レンズにおいて回折格子として設定されて実現される。ここにおいて、回折格子を実現するための眼用レンズの光学材料は、コンタクトレンズやIOL、ICL、眼鏡レンズなどの目的とする眼用レンズに応じて従来から公知の各種材料が採用可能である。また、本発明に基づいて設定されたブレーズ状の位相関数を与える回折格子は、例えばレンズ各部位における光透過速度を調節設定することで実現することも可能であるが、実用的には、例えばレンズ表面において、位相に相当する光路長を反映したレリーフ構造を設けることで実現することが好ましい。或いは、異なる光透過速度の材質からなる積層構造のレンズでは、材質の境界面にレリーフ構造を設定することも可能であり、それによってレンズ表面を滑らかにしたり、屈折面とすることなども可能となる(特開2001−42112号公報等参照)。なお、レンズ表面や内面におけるレリーフ構造は、コンタクトレンズやIOL、ICL等の公知の製造方法を基本として、例えば光学材料に対してエッチングや旋削などの化学的又は機械的な表面加工を施す公知の手法によって形成することが可能である。
また、前述のように、本発明が適用される眼用レンズとしては、コンタクトレンズ、眼鏡、眼内レンズなどが、何れも具体的な対象となり得るほか、角膜実質内に埋植して視力を矯正する角膜挿入レンズ、あるいは人工角膜なども対象となり得る。またコンタクトレンズにおいては硬質性の酸素透過性ハードコンタクトレンズ、含水または非含性のソフトコンタクトレンズ、さらにはシリコーン成分を含有した酸素透過性の含水または非含水性のソフトコンタクトレンズなどに好適に用いることができる。また、眼内レンズにおいても硬質性の眼内レンズや、折り畳んで眼内に挿入可能な軟質眼内レンズなど、いずれの眼内レンズにも好適に用いることができる。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。

Claims (13)

  1. ゾーン半径が[数1]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、
    前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、
    該調節ゾーンにおいて、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されていることを特徴とする回折型多焦点眼用レンズ。
  2. ゾーン半径が[数2]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、
    前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、
    該調節ゾーンにおいて、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されていることを特徴とする回折型多焦点眼用レンズ。
  3. ゾーン半径が[数3]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、
    前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンが調節ゾーンとされており、
    該調節ゾーンにおいて、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されていることを特徴とする回折型多焦点眼用レンズ。
  4. ゾーン半径が[数4]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が構成されて複数の焦点が設定された回折型多焦点眼用レンズにおいて、
    以下(A)、(B)、(C)の少なくとも一つに記載の調節ゾーンが設けられていることを特徴とする回折型多焦点眼用レンズ。
    (A)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
    (B)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
    (C)前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
  5. 前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも内周側に位置して設定された前記調節ゾーンを備えており、且つ該調節ゾーンが前記(B)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされている請求項4に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  6. 前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも外周側に位置して設定された前記調節ゾーンを備えており、且つ該調節ゾーンが前記(A)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされている請求項4又は5に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  7. 前記回折格子が設けられた回折格子領域において、該回折格子領域の径方向中央よりも内周側と外周側とにそれぞれ少なくとも一つの前記調節ゾーンが設定されており、
    該内周側に設定された該調節ゾーンが少なくとも前記(B)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされていると共に、
    該外周側に設定された該調節ゾーンが少なくとも前記(A)に記載の条件を満たす前記調節ゾーンとされている
    請求項4〜6の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  8. 前記回折格子が設けられた回折格子領域において、前記調節ゾーンの数が、該回折格子領域における前記ゾーンの総数の1/2未満とされている請求項1〜7の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  9. 前記調節ゾーンに設定される前記位相関数が、該調節ゾーンに隣接する隣接ゾーンとの間の谷底点をなくすブレーズ状の位相関数とされている請求項1〜8の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  10. 前記調節ゾーンにおいて逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定されていない標準プロファイルを有する標準型回折多焦点レンズに対して、前記回折格子による多次光の強度ピークが小さい光学特性を有する請求項1〜9の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  11. 前記ブレーズ状の位相関数からなる回折格子が、位相に相当する光路長を反映したレリーフ構造として設定されている請求項1〜10の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ
  12. 前記複数の焦点のうち一つが遠方視用焦点とされ、かつ該焦点が前記ブレーズ状の位相関数からなる回折格子の0次回折光で与えられている請求項1〜11の何れか一項に記載の回折型多焦点眼用レンズ。
  13. 複数の焦点が設定された回折格子を、ゾーン半径が[数5]で与えられるゾーン系列の複数が重ね合わされた同心状の複数のゾーンにより、ブレーズ状の位相関数をもって設定する工程と、
    以下(A)、(B)、(C)の少なくとも一つに記載の調節ゾーンを設定する工程と、
    (A)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン間隔を有する最大間隔ゾーンにおけるゾーン間隔Δrmaxに対してΔr≦0.5×Δrmaxを満たすゾーン間隔Δrを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大間隔ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
    (B)前記同心状の複数のゾーンのうちで最大のゾーン面積を有する最大面積ゾーンにおけるゾーン面積Smaxに対してS≦0.5×Smaxを満たすゾーン面積Sを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該最大面積ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
    (C)前記同心状の複数のゾーンのうちで該ゾーンからの出射光の光軸上強度分布の半値幅が最狭となる強度分布最狭ゾーンにおける半値幅ΔDminに対してΔD≧2×ΔDminを満たす半値幅ΔDを有する、前記回折格子を構成する少なくとも一つの前記ゾーンであって、該強度分布最狭ゾーンにおける前記ブレーズ状の位相関数の傾きに対して逆向きの傾きとなるブレーズ状の位相関数が設定された調節ゾーン。
    前記調節ゾーンを含む前記複数のゾーンを備えた前記回折格子を光学材料に形成する工程と
    を、含むことを特徴とする回折型多焦点眼用レンズの製造方法。
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