本発明は、ディーゼルエンジンの始動時等に用いるグロープラグに関するものである。
ディーゼルエンジンの始動時等に使用されるグロープラグは、発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータを、軸孔を有する筒状の主体金具の先端部において直接又は間接的に保持する。主体金具の軸孔には、棒状の中軸が挿通され、中軸は主体金具とは絶縁された状態で配置される。中軸の一端部はヒータの後端部に接続され、他端部は主体金具の後端から突出している。発熱抵抗体に接続される2つの電極が、主体金具と中軸とのそれぞれに電気的に接続されている。軸孔内の後端側には、主体金具の軸孔内の気密性を維持するため、軸孔の内周面と中軸との間に環状の当接部材が配置される。
上記の構造を有するグロープラグが用いられるディーゼルエンジンは、近年、小型化、高燃費化、および高出力化等への要望から、従来の副室式ディーゼルエンジンに代わり直噴式ディーゼルエンジンへと移行しつつある。これに伴ってエンジンへの取り付け構造が変更される場合もあり、グロープラグには、小径化および長尺化が求められている。
グロープラグの全長が長くなることで中軸の固有振動数が低下し、ディーゼルエンジンの稼動に伴い発生する振動負荷の振動数が中軸の固有振動数に一致する機会が増える。即ち、中軸が共振することが頻発する可能性がある。中軸が共振すると、中軸における振動の腹に相当する部位が主体金具の内周面に接触し、中軸と主体金具との絶縁性が保てなくなる可能性がある。中軸の振幅が大きくなれば中軸の撓りも大きくなり、中軸が破断する可能性がある。
そこで中軸と主体金具との間の間隙に絶縁性のシリコンからなるチューブを介在させ、チューブの内周面の内側に中軸を収容させるグロープラグが知られている(例えば、特許文献1参照)。このグロープラグは、チューブによって中軸の共振時の振幅を制限する。その結果グロープラグは、中軸の破断を防止し、主体金具と中軸との接触も防止することができる。
しかしながら特許文献1開示の発明では、中軸のうち当接部材が配置されている位置において、中軸の共振時に振動が発生する場合が依然ある。この振動により、当接部材には、当接部材の径方向に瞬間的な荷重負荷がかかり、当接部材が変形等の劣化を起こす可能性がある。当接部材の径方向は、当接部材の軸線方向と垂直な平面において、軸線を起点とする方向である。
本発明は、共振時における中軸の振幅を抑え、当接部材の劣化を防ぐグロープラグを提供することを目的とする。
本発明の実施態様のグロープラグによれば、通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、自身の軸線方向に沿って延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接又は間接的に保持する主体金具と、棒状に形成され、前記主体金具の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の先端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の後端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、環状に形成され、前記軸孔の後端部において前記軸孔に挿入されて、前記主体金具の前記内周面と前記中軸とのそれぞれに当接した状態で配置される、絶縁性の粘弾性部材からなる当接部材と、を備えるグロープラグであって、前記当接部材の50℃以上150℃以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上であるグロープラグが提供される。
本実施態様において、当接部材の動的粘弾性のtanδが0.1以上である場合、当接部材の防振性が顕著に向上する。すなわち、グロープラグに振動が加わり中軸が共振しても当接部材が十分に振動を吸収するため、振幅が顕著に抑制される。従って、当接部材の配置される位置において振幅は顕著に低減されるため、当接部材に径方向に加わる瞬間的な荷重負荷が低減し、当接部材の変形等の劣化を防止することができる。
本実施態様において、前記当接部材のゴム硬度が80以上100以下であってもよい。当接部材のゴム硬度が80以上であれば、当接部材を主体金具の後端部の内周面と中軸との間隙に挿入する際、当接部材はゴム硬度が80未満の場合と比較して変形量が小さく、軸孔の開口部近傍にて引っかかることがない。これにより当接部材を挿入するために要する軸線方向の荷重を、ゴム硬度80未満である場合と比較して顕著に低減し、当接部材の組み付け性を向上させることができる。
本実施態様において、前記当接部材とは別体であり、50℃以上150℃以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上である防振部材が前記間隙に配置されていてもよい。動的粘弾性のtanδが0.1以上である防振部材を、中軸先端部から当接部材の配置位置までの間に配置させることで、中軸共振時における振幅をさらに抑制することができる。
本実施態様において、前記防振部材の少なくとも一部が、前記軸線方向において、前記ヒータの先端と前記中軸の後端との中心位置から前記当接部材までの間に配置されていてもよい。中軸が共振を起こす場合、ヒータの先端と中軸の後端との中心位置から、当接部材の配置箇所までの間に、振動の腹が発生する。振動の腹が生じる位置近傍に動的粘弾性のtanδが0.1以上の防振部材を、中軸と主体金具との間隙に、中軸と当接させながら配置させることで、防振部材の防振機能を高めることができる。
本実施態様において、前記当接部材の主成分は、フッ素ゴムからなってもよい。この場合のグロープラグは、当接部材の主成分をフッ素ゴムとすることにより、当接部材の耐熱性および絶縁性を十分に確保することができる。尚、「当接部材の主成分は、フッ素ゴムからなる」とは、当接部材中にフッ素ゴムが50%以上含まれることを意味する。
本実施態様において、前記グロープラグに組み付ける前の前記当接部材を、前記当接部材の軸線である第2軸線を含む平面にて切断し、切断片のそれぞれが有する2つの断面のうちの一方の断面の輪郭線をみた場合に、前記当接部材は、前記輪郭線を部分的に構成する輪郭部であって、前記第2軸線に沿いつつも、径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる前記輪郭部である第一輪郭部と、前記第2軸線に沿いつつも、曲率半径R2がR1<R2を満たして径方向内向きに膨らむ曲線状又は直線状に延びる前記輪郭部である第二輪郭部とを備えてもよい。この場合のグロープラグは、曲率半径R2の第二輪郭部が、曲率半径R1の第一輪郭部に比べてより大きな曲率半径で、第2軸線に沿って延びている。このため、グロープラグの組み付け時において、当接部材が第2軸線に沿って押し込まれる際に、第二輪郭部が、当接部材の全体を支えて曲がりおよび巻き込みを抑制する芯として機能することができる。従って、グロープラグは、第二輪郭部において、当接部材に曲がりおよびシワが生じたりすることが抑制できる。当接部材は、主体金具の軸孔の内周面と中軸との2点(2面)に接する。このため、主体金具の軸孔によって囲まれる空間は、当接部材によって気密性が確保される。グロープラグは、主体金具および中軸の少なくとも一方に複雑なシール面を形成して主体金具の軸孔によって囲まれる空間の気密性を確保する場合に比べ、加工が容易で、コストダウンを図ることができる。
グロープラグ1の縦断面図である。
グロープラグ1の後端側を拡大した縦断面図である。
グロープラグ1に組み付ける前の当接部材7の斜視図である。
グロープラグ1に組み付ける前の当接部材7を斜視および断面で示す図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7が接続端部36を通過する状態を示す縦断面図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7が、テーパ部47の先端位置B2を通過する状態を示す縦断面図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7がテーパ部47へ押し込まれる状態を示す縦断面図である。
中軸3の中胴部33および後端部32に防振部材90を取り付けた場合のグロープラグ1の縦断面図である。
中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅と、当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
中軸3の一次共振時の振幅と当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
中軸3の二次共振時の振幅と当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
当接部材7をテーパ部47へ挿入するために必要な軸線O方向の荷重と、挿入量との関係を、当接部材7のゴム硬度ごとに示す図である。
測定システム16の模式図である。
以下、本発明を具体化したグロープラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。図1および図2を参照して、一例としてのグロープラグ1の全体の構造について説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、主体金具4の軸線を軸線Oとし、軸線Oを、主体金具4に組み付けられた、グロープラグ1を構成する各部品の位置関係や向き、方向を説明する上での基準とする。軸線Oの延伸方向(以下、「軸線O方向」ともいう)において、セラミックヒータ2の配置された側(図1における下側)をグロープラグ1の先端側とする。軸線Oと直交する平面上の、軸線Oを起点とする方向を、径方向外向きと定義する。軸線Oと直交する平面上の、軸線Oに向かう方向を、径方向内向きと定義する。径方向外向きと、径方向内向きとを総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、径方向という。
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、当接部材7と、接続リング85とを主に備える。
セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は基体21及び発熱素子24を有する。基体21は、丸棒状をなし、先端部22が半球状に曲面加工された絶縁性セラミックからなる。基体21の内部には、発熱素子24が埋設されている。発熱素子24は、導電性セラミックからなり、断面が略U字状である。発熱素子24は、発熱抵抗体27と、リード部28および29とからなる。発熱抵抗体27はセラミックヒータ2の先端部22に配置され、先端部22の曲面にあわせて両端が略U字状に折り返されている。リード部28および29は発熱抵抗体27の両端にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱抵抗体27の断面積は、リード部28および29の断面積よりも小さくなるように成形されている。通電時、セラミックヒータ2による発熱は主に発熱抵抗体27において行われる。セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28および29のそれぞれから電極取出部25および26が径方向外向きに突出されている。電極取出部25および26は、軸線O方向において互いにずれた位置にて、セラミックヒータ2の外周面に露出している。
保持部材8について説明する。保持部材8は軸線O方向に延びる円筒状の金属部材からなる。保持部材8は、自身の筒孔84内にてセラミックヒータ2の胴部分を保持する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の胴部81の後端側には、肉厚の鍔部82が形成されている。鍔部82の後端には、後述する主体金具4の先端部41に係合する段状の金具係合部83が形成されている。セラミックヒータ2の電極取出部25および26のうち先端側に形成された電極取出部25は、保持部材8の筒孔84の内周面に接触しており、電極取出部25と保持部材8とは電気的に接続されている。
保持部材8の金具係合部83から後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング85が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2の電極取出部26は接続リング85の内周面に接触している。電極取出部26と接続リング85とは電気的に接続されている。後述する主体金具4の先端部41が保持部材8の金具係合部83に接合されることによって、電極取出部25は、保持部材8を介して主体金具4と電気的に接続される。電極取出部26に接続された接続リング85は、主体金具4内に配置される。保持部材8によってセラミックヒータ2と主体金具4とが位置決められので、接続リング85と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4は、自身の先端部41においてセラミックヒータ2を直接又は間接的に保持する。具体的には、主体金具4の先端部41の内周は、前述した保持部材8の金具係合部83の外周に係合されている。主体金具4は、保持部材8を介してセラミックヒータ2の電極取出部25と電気的に接続されている。先端部41と金具係合部83との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、主体金具4と保持部材8とが一体に接合されている。主体金具4の先端部41と後端部45との間は、中胴部44である。中胴部44は、軸線O方向に長く形成されており、後端側外周面に取付部42が設けられている。取付部42にはグロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成されている。取付部42よりも後端側には、工具係合部46がその断面形状を六角形状にして形成されている。工具係合部46には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する。図2に示すように、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、後端48から先端側に向かってテーパ状に先細るテーパ部47が形成されている。
中軸3について説明する。図1に示すように、中軸3は軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43に挿通される。中軸3の先端部31と後端部32との間の中胴部33は、先端部31および後端部32と比べ、外径が小さく形成されている。中軸3は、主体金具4の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の先端部31がセラミックヒータ2の後端部に接続されている。具体的には、先端部31には、その先端に、接続リング85の内周に係合するための小径のリング係合部34が形成されている。リング係合部34が接続リング85に係合することで、セラミックヒータ2と中軸3とが接続リング85を介して軸線Oに沿って一体に連結される。図示しないが、先端部31と接続リング85との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、先端部31と接続リング85とが一体に接合されている。これにより、中軸3は、接続リング85を介し、セラミックヒータ2の電極取出部26と電気的に接続されている。上記したように、セラミックヒータ2と主体金具4とは保持部材8によって位置決めされているので、軸孔43内で、中軸3と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
図2に示すように、中軸3の後端部32は、接続端部36と、接続基部37とを有する。接続端部36は、主体金具4の後端48から突出している。接続基部37は、接続端部36と中胴部33との間を接続する。接続端部36には、外周面にローレット状の表面加工を施した係止部39が形成されている。係止部39を含め、接続端部36の外径は、接続基部37の外径と比べて小さい。接続端部36と接続基部37との間には、接続端部36と接続基部37とをテーパ状に接続する肩部38が形成されている。
当接部材7と絶縁部材6とはそれぞれ中軸3の後端部32に配置される。当接部材7は主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37との間に配置されている。当接部材7は、軸孔43内で中軸3を保持して中軸3の振動を抑制するとともに、軸孔43によって囲まれる空間の気密性を保つ。当接部材7の詳細については後述する。
絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から形成される筒体である。絶縁部材6は、絶縁部材6に中軸3の後端部32が挿通され、且つ、主体金具4のテーパ部47に、自身の外周に設けられたテーパ部63が当接することで位置決めされる。絶縁部材6は、主体金具4と中軸3とを絶縁状態に維持する。絶縁部材6の後端65は主体金具4の後端48よりも後方に突出して配置される。接続端子5の鍔部51(後述)は後端65に当接した状態に配置される。このため、接続端子5と主体金具4とは絶縁状態に維持される。
接続端子5は中軸3の接続端部36に固定される。接続端子5は、接続端部36に覆い被せるキャップ状の胴部52を有し、胴部52から後端側にピン状の突起部53が突設されている。胴部52の先端の開口端には、一周にわたって径方向外向きに突設する鍔部51が形成されている。接続端子5を中軸3の接続端部36に被せた場合に、絶縁部材6の後端65に鍔部51が当接する。接続端子5は、接続端子5を軸線O方向の先端向きに押圧した状態で、胴部52の外周から内向きに加締められる。胴部52の内周面は接続端部36の係止部39に強固に係止される。係止部39はローレット形状であるため、加締めにより、胴部52の係止部39への固着力が高められ、接続端子5と中軸3とが一体に固定される。加締めにより、接続端子5と中軸3とは電気的に接続される。
図1に示すように、接続端子5の突起部53には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱素子24の発熱抵抗体27は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地される電極取出部25と、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される電極取出部26との間に通電されることによって、発熱する。
図2および図3を参照して当接部材7について説明する。上記したように、当接部材7は、環状に形成され、軸孔43の後端部45において軸孔43に挿入されて、主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37とのそれぞれに当接した状態で配置される部材である。当接部材7は、軸孔43で中軸3を保持して中軸3の振動を抑制するとともに、主体金具4と中軸3との間の空間の気密性を保つ。図3に示すように、当接部材7は、自身の軸線Pの延伸方向(以下、軸線P方向ともいう)に延びる筒孔76を有する。軸線P方向と直交する方向からみた当接部材7の外周面の輪郭線は、径方向外向きに膨らむ形状をなす。
図4に示すように、グロープラグに組み付ける前の当接部材7は、軸線Pについて対称な形状(鏡像体)を有している。すなわち、当接部材7が、軸線Pを含む平面で2つの断片に切断(分割)された場合、各断片はそれぞれ2箇所に略同一な断面を有する。当接部材7は、軸線P方向の中点を通る平面F(図5参照)について対称な形状を有している。本実施形態の当接部材7では、断片に形成される2つの断面のうちの一方の断面75に着目し、断面75の輪郭線70をみたときに、輪郭線70は以下の形態をなす。
輪郭線70は、輪郭線70を部分的に構成する輪郭部(輪郭線を構成する線分)として、第一輪郭部72、第二輪郭部71および第三輪郭部73の3つの輪郭部を有する。第一輪郭部72は、軸線Pに沿いつつも、径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる。第二輪郭部71は、軸線Pに沿いつつも、径方向内向きに膨らむ曲率半径R2の曲線状又は直線状に延びる。曲率半径R1は曲率半径R2よりも小さい。本実施形態の第二輪郭部71は、直線状である。本実施形態の第二輪郭部71は、曲率半径R2が無限大である曲線状の輪郭部とみなすことができる。第三輪郭部73は、第一輪郭部72と第二輪郭部71とを、軸線P方向で同じ側の端部においてそれぞれ接続する輪郭部であり径方向内向きに膨らむ曲線状をなす。第一輪郭部72と第三輪郭部73との接続点は、軸線P方向における当接部材7の上下(先後)の両端部を形成している。
当接部材7は、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム等の耐熱性および絶縁性を有する粘弾性部材からなる。当接部材7の主成分はフッ素ゴムからなることが好ましい。当接部材7の主成分をフッ素ゴムとすることにより、当接部材7の耐熱性および絶縁性を十分に確保することができる。当接部材7の動的粘弾性のtanδは0.1以上であることが好ましい。後述する実施例1に示すように動的粘弾性のtanδが0.1未満であると、当接部材7の防振機能が不十分である。当接部材7の動的粘弾性のtanδは0.1以上1.0以下であることがさらに好ましい。tanδが大きくなると、当接部材7は弾性よりも粘性が優位になり、当接部材をグロープラグに取り付ける際の組み付け性が低下する可能性がある。これに対して、動的粘弾性のtanδを1以下にすることにより、当接部材7の組み付け性は、動的粘弾性のtanδを1より大きい場合に比べ向上する。当接部材7のゴム硬度は80以上100以下であることが好ましく、ゴム硬度は80であることが特に好ましい。ゴム硬度の上限は100である。後述する実施例3に示すようにゴム硬度が80以上であると、組み付け性が向上するが、ゴム硬度が80未満であると、当接部材7の組み付け性が低下する。ゴム硬度は、例えば、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計A型を用いてJIS K6253の規定に準拠して測定しており、以下の測定でも同様な条件とする。
グロープラグ1は、概略、以下のように組み立てられる。導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱素子24の原形となる素子成形体が形成される。絶縁性セラミック粉末を原料として金型プレス成形によって、セラミックヒータ2の基体21の原形となる基体成形体が、2分割の成形体として形成される。基体成形体で素子成形体を挟んで収容した状態で、基体成形体はプレス圧縮される。脱バインダ処理、およびホットプレス等の焼成工程後、外周面の研磨によって、棒状で先端が半球状のセラミックヒータ2が形成される。セラミックヒータ2の製造方法は適宜変更が可能である。例えば、基体成形体の製造方法として、金型に、予め成形された2分割の成型体のうちの一方を配置し、その上に素子成形体を載置し、さらに絶縁性セラミック粉末を充填してプレス圧縮する製造方法等を適用することができる。
ステンレス等の鋼材をパイプ状に成形した接続リング85に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、接続リング85と電極取出部26とが導通される。同様に、所定の形状に成形された保持部材8に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、保持部材8と電極取出部25とが導通される。一方、中軸3は、一定の寸法に切断された鉄系材料(例えば、Fe−Cr−Mo鋼)からなる棒状部材に塑性加工および切削等が施されて形成される。中軸3のリング係合部34を、セラミックヒータ2に嵌められた接続リング85に係合させた状態で、合わせ部位がレーザ溶接されて、中軸3とセラミックヒータ2とが一体に接合される。
S45C等の鉄系素材から筒状の主体金具4が形成され、取付部42にねじ山が転造される。さらに切削加工等により、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、後端48から先端側に向かってテーパ状に先細るテーパ部47が形成される。主体金具4の軸孔43に、セラミックヒータ2等と一体となった中軸3が挿通される。主体金具4と保持部材8との合わせ部位がレーザ溶接され、両者が一体に接合される。
次に、主体金具4の後端48から突出する中軸3の接続端部36から先端へ向って当接部材7が嵌められる。上記したように、当接部材7が軸線Pおよび平面Fのそれぞれについて対称な形状(鏡像体)を有しているので、当接部材7を中軸3の後端部32に嵌める際に、軸線P方向の向きは問われない。
図5に示すように、当接部材7の筒孔76が、中軸3の接続端部36に嵌められた後、筒孔76の内周面は中軸3の肩部38の先端位置B1に当接する。先端位置B1は、肩部38と接続基部37との境目が相当する。肩部38に達した当接部材7は、軸線O方向の先端側へ向けてさらに押し込まれる。当接部材7の筒孔76の内径C2は、中軸3の接続端部36の外径C1よりも大きく形成されている。これにより、当接部材7は接続端部36に嵌められる際に、筒孔76の内周面と接続端部36の係止部39とが擦れ合って、筒孔76(当接部材7の内周面)が傷付く可能性を低減する。筒孔76の内径C2は、中軸3の接続基部37の外径C3よりも小さい。これにより肩部38に達した当接部材7が押し込まれると、筒孔76の内径が肩部38のテーパに沿って押し広げられる。
肩部38によって筒孔76の内径が押し広げられた当接部材7は、筒孔76の内周面が接続基部37の外周面に当接した状態で、軸線O方向の先端側へ向けさらに押し込まれる。これにより、当接部材7の外周面側は主体金具4のテーパ部47に当接する。この状態で当接部材7がさらに軸線O方向の先端側へ押し込まれると、図6に示すように、当接部材7は外周面側がテーパ部47のテーパに沿って弾性変形する。当接部材7の先端部はテーパ部47の先端位置B2よりも先端側に挿入される。図7に示すように、軸線O方向の先端側へさらに挿入された当接部材7は、弾性変形によって軸孔43の内周面と接続基部37とに当接した状態を維持し、軸孔43と中軸3との間の空間の気密性を確保する。
軸孔43の内周面と接続基部37との間に当接部材7が配置されたら、図2に示すように、絶縁部材6は、主体金具4のテーパ部47に絶縁部材6のテーパ部63が当接して位置決めされた状態で、中軸3の後端部32に嵌められる。その後、接続端子5が中軸3の接続端部36に嵌められ、接続端子5の胴部52が加締められることで、接続端子5が中軸3の接続端部36に固定されて、グロープラグ1の組み立てが完成する。
当接部材7の動的粘弾性のtanδと中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅との関係について試験を行った。具体的には、外径が直径3.9(mm)、内径が直径1.9(mm)、高さが3(mm)の形状をなし、動的粘弾性のtanδを0.01以上10以下の範囲で適宜異ならせた当接部材7を複数作製した。当接部材7の動的粘弾性のtanδは、以下の簡易的な測定方法によって測定した。
動的粘弾性のtanδを0.01以上10以下の範囲で適宜異ならせた各当接部材7をグロープラグ1へ組み付けた状態で、中軸3に一次共振を発生させ、中軸3の振動の腹の振幅を測定した。中軸3の振動の腹の振幅の測定は、上記のグロープラグ1の主体金具4に1つ以上の孔を形成し、形成した孔を介して中軸3にレーザ光を照射して行った。
当接部材7の動的粘弾性のtanδは、当接部材7の防振性が低下する高温領域で、かつ、グロープラグ1の使用環境下で想定される、50(℃)以上150(℃)以下の温度範囲にて定められる。さらに動的粘弾性のtanδは、グロープラグ1に加わることが想定される最大の振動数である2000(Hz)を上限として定められる。
具体的には、中軸3の振動の腹の振幅の測定を経たグロープラグ1の当接部材1の動的粘弾性のtanδを、以下の簡易的な方法で測定した。測定対象のグロープラグ1において当接部材7が取り付けられている状態と同一の状態の測定システム16を準備し、測定対象を測定システム16にセットした。測定システム16は、測定対象固定治具11、中軸固定治具12、加振装置14、およびレーザ測定装置15を主に備える。測定対象固定治具11は、測定対象の外周面を挟持固定する。測定対象は、当接部材7又は基準部材である。当接部材7は、上記構成を有するグロープラグ1から取り外されたものである。基準部材は、当接部材7と同一形状を有し、動的粘弾性のtanδが既知の部材である。基準部材のtanδは、例えば、0.06、0.13、0.2、および0.4である。中軸固定治具12は、中軸3に相当する部材である中軸相当部材13の一端を固定する。中軸相当部材13の他端側は、測定対象を介して測定対象固定治具11によって固定される。中軸相当部材13として、中軸3と同一材質、同一外形、軸線O方向の長さが同一の部材を準備した。加振装置14は、所定の周波数の振動を発生するよう構成された装置である。レーザ測定装置15は、レーザ光の反射を利用して物体までの距離を測定するよう構成された装置である。
図13に模式的に示すように、中軸固定治具12および測定対象固定治具11を加振装置14の上面に固定した。中軸相当部材13の一方端を中軸固定治具12に固定した。測定対象固定治具11は、中軸相当部材13と測定対象固定治具11との径方向の距離が、グロープラグ1における中軸3と主体金具4の内周面との径方向距離と同一となるように配置した。このとき、中軸相当部材13の中軸固定治具12による固定位置から測定対象の配置位置までの長さは、セラミックヒータ2後端から当接部材7の配置位置までの長さと同一にした。中軸相当部材13が加振装置14により加振されたときの中軸相当部材13の振幅を、レーザ測定装置15を用いて測定した。
上記のように構成された測定システム16に、測定対象のグロープラグ1から取り外された当接部材7をセットし、加振装置14により中軸相当部材13の共振周波数にて中軸相当部材13を加振した。共振周波数で中軸相当部材13を加振したときに、レーザ測定装置15を中軸相当部材13の長手方向17に移動させて、中軸相当部材13の振幅が最も大きい位置を特定し、その位置にて中軸相当部材13の振幅を測定した。尚、測定は測定対象および測定対象固定治具11を、測定対象固定治具11の周囲に配置されたヒータ等で加熱することで、100(℃)の温度雰囲気にて実施した。
当接部材7と同様に、測定対象として各基準部材を測定システム16にセットした。当接部材7と同様に、各基準部材をセットしたときの中軸相当部材13の振幅を測定した。当接部材7で得られた振幅と、複数の基準部材で得られた各振幅とを比較し、当接部材7のtanδを判定した。例えば、当接部材7の振幅が、tanδが0.13である基準部材の振幅より小さく且つtanδが0.2である基準部材の振幅値より大きい場合、当接部材7のtanδは0.13以上0.2未満であると判定した。
試験結果を図9の両対数グラフに示す。図9に示すように、動的粘弾性のtanδが0.1以上であれば、中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅を10(μm)以下と顕著に抑制できることが確認できた。
次に、当接部材7の動的粘弾性のtanδと共振時の中軸3の軸線方向に亘る振幅との関係について試験を行った。具体的には、外径が直径3.9(mm)、内径が直径1.9(mm)、高さが3(mm)の形状をなし、動的粘弾性のtanδが0.06と0.13との2種類の当接部材7を作製した。各当接部材7をグロープラグ1へ組み付けた状態で、中軸3に一次共振又は二次共振を発生させ、共振発生時の中軸3および接続端子5の振幅を測定した。振幅の測定方法は、実施例1と同様である。試験結果を図10および図11のグラフに示す。図10および図11の横軸は、接続端子5の後端面からの距離を示す。横軸上のXは接続端子5の後端面から当接部材7の位置X(図1参照)までの距離を示す。横軸上のYは接続リング85と係合する位置Y(図1参照)までの距離を示す。図10および図11では、動的粘弾性のtanδが0.06である場合を点線で示し、動的粘弾性のtanδが0.13である場合を実線で示す。
図10に示すように、中軸3が一次共振した場合、当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.13である方が動的粘弾性のtanδが0.06である場合と比較して、中軸3の振幅を、軸線O方向に亘って顕著に抑制できることが確認できた。図11に示すように中軸3が二次共振した場合にも、同様に、動的粘弾性のtanδが0.13である方が動的粘弾性のtanδが0.06である場合と比較して、中軸3の振幅を抑制でき、かつ、当接部材7の配置部における振幅を、ほぼ振動しない程度にまで顕著に抑制できることが確認できた。一次共振発生時においては、中軸3の振動の腹は一つ発生し、一つの振動の腹はセラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置M(図1参照)から、当接部材7の配置位置までの間の範囲H(図1参照)内にあることが確認された。二次共振発生時においては、中軸3の振動の腹は、二つ発生し、二つの振動の腹はいずれも範囲H内にあることが確認された。
当接部材7をテーパ部47へ押し込む際に必要な軸線方向の荷重と、当接部材7のゴム硬度との関係について試験を行った。具体的にはゴム硬度60、70、および80の当接部材7をそれぞれ作製し、当接部材7の挿入量および挿入荷重を測定する試験機を用いて、テーパ部47への挿入量と挿入荷重とを測定した。試験結果を図12のグラフに示す。横軸の挿入量は、当接部材7とテーパ部47とが接触した当接部材7の位置を基準とする。図12では、ゴム硬度が60である場合を点線で示し、ゴム硬度が70である場合を二点鎖線で示し、ゴム硬度が80である場合を実線で示す。
ゴム硬度が70以下の場合、グロープラグ1の組み立て工程における挿入規定荷重である500(N)以上の荷重を加えても、当接部材7の外周面がテーパ部47へ乗り上げてしまった。この結果、図12に示すように、当接部材7をテーパ部47に1(mm)程度しか挿入することができず、当接部材7を組み付けることができなかった。一方でゴム硬度が80であれば、ゴム硬度が70以下の場合と比較して顕著に低い100(N)程度の挿入荷重で十分に、当接部材7をテーパ部47の組み付け位置まで挿入できた。以上の結果から、当接部材7のゴム硬度を80以上とすることで当接部材7の組み付け性が向上することがわかった。
上記グロープラグ1では以下の効果が得られる。当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.1以上である場合には、エンジン(図示外)の振動により中軸3に共振が発生した場合であっても、中軸3の振幅を顕著に抑制することができる。この結果、当接部材7が配置される位置において、中軸3の振幅が顕著に低減されるため、当接部材7に径方向外向きに加わる瞬間的な荷重負荷が低減し、当接部材7の変形等の劣化を防止することができる。セラミックヒータ2と中軸3とを接続リング85を介して一体に連結したグロープラグの場合、中軸3の振動に伴いセラミックヒータ2に内部応力が生じてセラミックヒータ2が折損する可能性がある。グロープラグ1は、当接部材7の動的粘弾性のtanδを0.1以上にすることにより、中軸3の振動に伴いセラミックヒータ2に生じる内部応力を効果的に低減することができ、セラミックヒータ2の折損を防止することができる。
図6に示すように、当接部材7が軸孔43に挿入される際、テーパ部47の先端位置B2よりも先端側に挿入された当接部材7の外周面は径方向内向きへ変形する。一方、先端位置B2よりも後端側に位置する当接部材7の外周面の一部は、径方向外向きへ変形しテーパ部47に乗り上げる。当接部材7のゴム硬度が80以上100以下の場合、挿入時におけるテーパ部47への当接部材7の乗り上げ量が80未満である場合に比べて少ないまま、当接部材7は軸孔43へ挿入される。従ってゴム硬度が80以上100以下である場合は、当接部材7がテーパ部47に乗り上げることで当接部材7の外周面がテーパ部47から受ける挿入方向とは逆方向の抗力を抑制でき、かつ、乗り上げに伴う当接部材7の周方向へのねじれも抑制できる。周方向とは、軸線Pを中心として軸線Pの回りを回る方向である。これにより当接部材7の挿入荷重を低減させ、組み付け性を向上させることができる。
本発明は各種の変形が可能である。例えば、自身の少なくとも一部が、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置Mから当接部材7までの間の範囲Hに配置されるように防振部材が配置されてよい。より具体的には、図8に示すように、上記実施形態のグロープラグ1の中軸3の中胴部33から後端部32にかけて、50(℃)以上150(℃)以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上である円筒状の防振部材90を、インサート成形等の方法により配置しても良い。図8では、図1のグロープラグ1と同様な部材には同一の符号を付与している。防振部材90の軸線O方向の位置および長さは、想定される振動範囲内での中軸3の振幅の腹の位置を考慮して設定されればよい。前述のように、中軸3にて共振(より詳細には、一次共振又は二次共振)が発生する場合、振動の腹は、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端部22と中軸3の後端35との中心位置Mから、当接部材7の配置位置までの間にて発生する。従って範囲Hに防振部材90の少なくとも一部を配置することで、中軸3が共振した場合の振幅を抑制することができる。自身の少なくとも一部が、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置Mから当接部材7までの間の範囲Hに防振部材90を配置する場合、軸線O方向において、範囲Hの一部に防振部材90が配置されてもよい。範囲Hの全体に防振部材90が配置されてもよい。防振部材90は、チューブ状で、軸孔43の内周面と中軸3との間に挿通させることで配置させても、同様の防振効果を得ることができる。防振部材90の軸線Oと垂直な断面はC字形状等、非円形形状でも良い。
上記実施例に加えて、グロープラグは、当接部材7が当接する、軸孔43の内周面および中軸3にテーパ部を設けても良い。この場合、絶縁部材6の先端側端面によって当接部材7がテーパ部に向けて押圧されることで、軸孔43の内周面と中軸3と絶縁部材6との3つの接触面のそれぞれにて当接部材7が密着し、軸孔43と中軸3との間の空間の気密性を保つことができる。同時に、当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.1以上であることにより、中軸3が共振する場合の振幅は上記実施例と同様に顕著に抑制され、グロープラグ1は当接部材7の劣化を防止することができる。
上記実施例では、セラミックヒータ2と中軸3とを接続リング85を介して一体に連結したグロープラグに本発明を採用したが、セラミックヒータ2と中軸3とを金属線を介して電気的に接続したグロープラグに本発明を採用しても良い。このようなグロープラグの場合、中軸3の振動に伴い金属線に内部応力が生じて金属線が断線する可能性がある。しかし、当接部材7の動的粘弾性のtanδを0.1以上にすることにより、グロープラグ1は、中軸3の振動に伴い金属線に生じる内部応力を効果的に低減することができ、金属線の断線を防止することができる。
当接部材7の材料、形状、および配置は適宜変更されてよい。例えば、第二輪郭部71は、径方向内向きに膨らむ曲率半径R2の曲線状であってもよい。このとき、R1<R2を満たすことが好ましい。このようにすれば、当接部材を、軸孔43の内周面と中軸3との間に配置する場合に、第二輪郭部71よりも膨らみの大きい第一輪郭部72をスムーズに弾性変形させることができる。グロープラグ1は、第一輪郭部72よりも膨らみが小さく、より直線状に近い、第二輪郭部71を、当接部材の全体を支えて曲がりや巻き込みを抑制する芯として機能させることができる。
なお、本実施形態においては、セラミックヒータ2が「ヒータ」に相当する。
本発明は、ディーゼルエンジンの始動時等に用いるグロープラグに関するものである。
ディーゼルエンジンの始動時等に使用されるグロープラグは、発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータを、軸孔を有する筒状の主体金具の先端部において直接又は間接的に保持する。主体金具の軸孔には、棒状の中軸が挿通され、中軸は主体金具とは絶縁された状態で配置される。中軸の一端部はヒータの後端部に接続され、他端部は主体金具の後端から突出している。発熱抵抗体に接続される2つの電極が、主体金具と中軸とのそれぞれに電気的に接続されている。軸孔内の後端側には、主体金具の軸孔内の気密性を維持するため、軸孔の内周面と中軸との間に環状の当接部材が配置される。
上記の構造を有するグロープラグが用いられるディーゼルエンジンは、近年、小型化、高燃費化、および高出力化等への要望から、従来の副室式ディーゼルエンジンに代わり直噴式ディーゼルエンジンへと移行しつつある。これに伴ってエンジンへの取り付け構造が変更される場合もあり、グロープラグには、小径化および長尺化が求められている。
グロープラグの全長が長くなることで中軸の固有振動数が低下し、ディーゼルエンジンの稼動に伴い発生する振動負荷の振動数が中軸の固有振動数に一致する機会が増える。即ち、中軸が共振することが頻発する可能性がある。中軸が共振すると、中軸における振動の腹に相当する部位が主体金具の内周面に接触し、中軸と主体金具との絶縁性が保てなくなる可能性がある。中軸の振幅が大きくなれば中軸の撓りも大きくなり、中軸が破断する可能性がある。
そこで中軸と主体金具との間の間隙に絶縁性のシリコンからなるチューブを介在させ、チューブの内周面の内側に中軸を収容させるグロープラグが知られている(例えば、特許文献1参照)。このグロープラグは、チューブによって中軸の共振時の振幅を制限する。その結果グロープラグは、中軸の破断を防止し、主体金具と中軸との接触も防止することができる。
しかしながら特許文献1開示の発明では、中軸のうち当接部材が配置されている位置において、中軸の共振時に振動が発生する場合が依然ある。この振動により、当接部材には、当接部材の径方向に瞬間的な荷重負荷がかかり、当接部材が変形等の劣化を起こす可能性がある。当接部材の径方向は、当接部材の軸線方向と垂直な平面において、軸線を起点とする方向である。
本発明は、共振時における中軸の振幅を抑え、当接部材の劣化を防ぐグロープラグを提供することを目的とする。
本発明の実施態様のグロープラグによれば、通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、自身の軸線方向に沿って延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接又は間接的に保持する主体金具と、棒状に形成され、前記主体金具の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の先端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の後端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、環状に形成され、前記軸孔の後端部において前記軸孔に挿入されて、前記主体金具の前記内周面と前記中軸とのそれぞれに当接した状態で配置される、絶縁性の粘弾性部材からなる当接部材と、を備えるグロープラグであって、前記当接部材の50℃以上150℃以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上であるグロープラグが提供される。
本実施態様において、当接部材の動的粘弾性のtanδが0.1以上である場合、当接部材の防振性が顕著に向上する。すなわち、グロープラグに振動が加わり中軸が共振しても当接部材が十分に振動を吸収するため、振幅が顕著に抑制される。従って、当接部材の配置される位置において振幅は顕著に低減されるため、当接部材に径方向に加わる瞬間的な荷重負荷が低減し、当接部材の変形等の劣化を防止することができる。
本実施態様において、前記当接部材のゴム硬度が80以上100以下であってもよい。当接部材のゴム硬度が80以上であれば、当接部材を主体金具の後端部の内周面と中軸との間隙に挿入する際、当接部材はゴム硬度が80未満の場合と比較して変形量が小さく、軸孔の開口部近傍にて引っかかることがない。これにより当接部材を挿入するために要する軸線方向の荷重を、ゴム硬度80未満である場合と比較して顕著に低減し、当接部材の組み付け性を向上させることができる。
本実施態様において、前記当接部材とは別体であり、50℃以上150℃以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上である防振部材が前記間隙に配置されていてもよい。動的粘弾性のtanδが0.1以上である防振部材を、中軸先端部から当接部材の配置位置までの間に配置させることで、中軸共振時における振幅をさらに抑制することができる。
本実施態様において、前記防振部材の少なくとも一部が、前記軸線方向において、前記ヒータの先端と前記中軸の後端との中心位置から前記当接部材までの間に配置されていてもよい。中軸が共振を起こす場合、ヒータの先端と中軸の後端との中心位置から、当接部材の配置箇所までの間に、振動の腹が発生する。振動の腹が生じる位置近傍に動的粘弾性のtanδが0.1以上の防振部材を、中軸と主体金具との間隙に、中軸と当接させながら配置させることで、防振部材の防振機能を高めることができる。
本実施態様において、前記当接部材の主成分は、フッ素ゴムからなってもよい。この場合のグロープラグは、当接部材の主成分をフッ素ゴムとすることにより、当接部材の耐熱性および絶縁性を十分に確保することができる。尚、「当接部材の主成分は、フッ素ゴムからなる」とは、当接部材中にフッ素ゴムが50%以上含まれることを意味する。
本実施態様において、前記グロープラグに組み付ける前の前記当接部材を、前記当接部材の軸線である第2軸線を含む平面にて切断し、切断片のそれぞれが有する2つの断面のうちの一方の断面の輪郭線をみた場合に、前記当接部材は、前記輪郭線を部分的に構成する輪郭部であって、前記第2軸線に沿いつつも、径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる前記輪郭部である第一輪郭部と、前記第2軸線に沿いつつも、曲率半径R2がR1<R2を満たして径方向内向きに膨らむ曲線状又は直線状に延びる前記輪郭部である第二輪郭部とを備えてもよい。この場合のグロープラグは、曲率半径R2の第二輪郭部が、曲率半径R1の第一輪郭部に比べてより大きな曲率半径で、第2軸線に沿って延びている。このため、グロープラグの組み付け時において、当接部材が第2軸線に沿って押し込まれる際に、第二輪郭部が、当接部材の全体を支えて曲がりおよび巻き込みを抑制する芯として機能することができる。従って、グロープラグは、第二輪郭部において、当接部材に曲がりおよびシワが生じたりすることが抑制できる。当接部材は、主体金具の軸孔の内周面と中軸との2点(2面)に接する。このため、主体金具の軸孔によって囲まれる空間は、当接部材によって気密性が確保される。グロープラグは、主体金具および中軸の少なくとも一方に複雑なシール面を形成して主体金具の軸孔によって囲まれる空間の気密性を確保する場合に比べ、加工が容易で、コストダウンを図ることができる。
本実施態様において、前記ヒータは、絶縁性セラミックからなる基体と、導電性セラミックからなる発熱素子とを有するセラミックヒータであり、前記主体金具は、前記セラミックヒータを直接又は間接的に保持し、前記中軸は、前記セラミックヒータに一体に連結されてもよい。
グロープラグ1の縦断面図である。
グロープラグ1の後端側を拡大した縦断面図である。
グロープラグ1に組み付ける前の当接部材7の斜視図である。
グロープラグ1に組み付ける前の当接部材7を斜視および断面で示す図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7が接続端部36を通過する状態を示す縦断面図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7が、テーパ部47の先端位置B2を通過する状態を示す縦断面図である。
グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、当接部材7がテーパ部47へ押し込まれる状態を示す縦断面図である。
中軸3の中胴部33および後端部32に防振部材90を取り付けた場合のグロープラグ1の縦断面図である。
中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅と、当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
中軸3の一次共振時の振幅と当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
中軸3の二次共振時の振幅と当接部材7の動的粘弾性のtanδとの関係を示す図である。
当接部材7をテーパ部47へ挿入するために必要な軸線O方向の荷重と、挿入量との関係を、当接部材7のゴム硬度ごとに示す図である。
測定システム16の模式図である。
以下、本発明を具体化したグロープラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。図1および図2を参照して、一例としてのグロープラグ1の全体の構造について説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、主体金具4の軸線を軸線Oとし、軸線Oを、主体金具4に組み付けられた、グロープラグ1を構成する各部品の位置関係や向き、方向を説明する上での基準とする。軸線Oの延伸方向(以下、「軸線O方向」ともいう)において、セラミックヒータ2の配置された側(図1における下側)をグロープラグ1の先端側とする。軸線Oと直交する平面上の、軸線Oを起点とする方向を、径方向外向きと定義する。軸線Oと直交する平面上の、軸線Oに向かう方向を、径方向内向きと定義する。径方向外向きと、径方向内向きとを総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、径方向という。
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、当接部材7と、接続リング85とを主に備える。
セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は基体21及び発熱素子24を有する。基体21は、丸棒状をなし、先端部22が半球状に曲面加工された絶縁性セラミックからなる。基体21の内部には、発熱素子24が埋設されている。発熱素子24は、導電性セラミックからなり、断面が略U字状である。発熱素子24は、発熱抵抗体27と、リード部28および29とからなる。発熱抵抗体27はセラミックヒータ2の先端部22に配置され、先端部22の曲面にあわせて両端が略U字状に折り返されている。リード部28および29は発熱抵抗体27の両端にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱抵抗体27の断面積は、リード部28および29の断面積よりも小さくなるように成形されている。通電時、セラミックヒータ2による発熱は主に発熱抵抗体27において行われる。セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28および29のそれぞれから電極取出部25および26が径方向外向きに突出されている。電極取出部25および26は、軸線O方向において互いにずれた位置にて、セラミックヒータ2の外周面に露出している。
保持部材8について説明する。保持部材8は軸線O方向に延びる円筒状の金属部材からなる。保持部材8は、自身の筒孔84内にてセラミックヒータ2の胴部分を保持する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の胴部81の後端側には、肉厚の鍔部82が形成されている。鍔部82の後端には、後述する主体金具4の先端部41に係合する段状の金具係合部83が形成されている。セラミックヒータ2の電極取出部25および26のうち先端側に形成された電極取出部25は、保持部材8の筒孔84の内周面に接触しており、電極取出部25と保持部材8とは電気的に接続されている。
保持部材8の金具係合部83から後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング85が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2の電極取出部26は接続リング85の内周面に接触している。電極取出部26と接続リング85とは電気的に接続されている。後述する主体金具4の先端部41が保持部材8の金具係合部83に接合されることによって、電極取出部25は、保持部材8を介して主体金具4と電気的に接続される。電極取出部26に接続された接続リング85は、主体金具4内に配置される。保持部材8によってセラミックヒータ2と主体金具4とが位置決められので、接続リング85と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4は、自身の先端部41においてセラミックヒータ2を直接又は間接的に保持する。具体的には、主体金具4の先端部41の内周は、前述した保持部材8の金具係合部83の外周に係合されている。主体金具4は、保持部材8を介してセラミックヒータ2の電極取出部25と電気的に接続されている。先端部41と金具係合部83との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、主体金具4と保持部材8とが一体に接合されている。主体金具4の先端部41と後端部45との間は、中胴部44である。中胴部44は、軸線O方向に長く形成されており、後端側外周面に取付部42が設けられている。取付部42にはグロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成されている。取付部42よりも後端側には、工具係合部46がその断面形状を六角形状にして形成されている。工具係合部46には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する。図2に示すように、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、後端48から先端側に向かってテーパ状に先細るテーパ部47が形成されている。
中軸3について説明する。図1に示すように、中軸3は軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43に挿通される。中軸3の先端部31と後端部32との間の中胴部33は、先端部31および後端部32と比べ、外径が小さく形成されている。中軸3は、主体金具4の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の先端部31がセラミックヒータ2の後端部に接続されている。具体的には、先端部31には、その先端に、接続リング85の内周に係合するための小径のリング係合部34が形成されている。リング係合部34が接続リング85に係合することで、セラミックヒータ2と中軸3とが接続リング85を介して軸線Oに沿って一体に連結される。図示しないが、先端部31と接続リング85との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、先端部31と接続リング85とが一体に接合されている。これにより、中軸3は、接続リング85を介し、セラミックヒータ2の電極取出部26と電気的に接続されている。上記したように、セラミックヒータ2と主体金具4とは保持部材8によって位置決めされているので、軸孔43内で、中軸3と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
図2に示すように、中軸3の後端部32は、接続端部36と、接続基部37とを有する。接続端部36は、主体金具4の後端48から突出している。接続基部37は、接続端部36と中胴部33との間を接続する。接続端部36には、外周面にローレット状の表面加工を施した係止部39が形成されている。係止部39を含め、接続端部36の外径は、接続基部37の外径と比べて小さい。接続端部36と接続基部37との間には、接続端部36と接続基部37とをテーパ状に接続する肩部38が形成されている。
当接部材7と絶縁部材6とはそれぞれ中軸3の後端部32に配置される。当接部材7は主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37との間に配置されている。当接部材7は、軸孔43内で中軸3を保持して中軸3の振動を抑制するとともに、軸孔43によって囲まれる空間の気密性を保つ。当接部材7の詳細については後述する。
絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から形成される筒体である。絶縁部材6は、絶縁部材6に中軸3の後端部32が挿通され、且つ、主体金具4のテーパ部47に、自身の外周に設けられたテーパ部63が当接することで位置決めされる。絶縁部材6は、主体金具4と中軸3とを絶縁状態に維持する。絶縁部材6の後端65は主体金具4の後端48よりも後方に突出して配置される。接続端子5の鍔部51(後述)は後端65に当接した状態に配置される。このため、接続端子5と主体金具4とは絶縁状態に維持される。
接続端子5は中軸3の接続端部36に固定される。接続端子5は、接続端部36に覆い被せるキャップ状の胴部52を有し、胴部52から後端側にピン状の突起部53が突設されている。胴部52の先端の開口端には、一周にわたって径方向外向きに突設する鍔部51が形成されている。接続端子5を中軸3の接続端部36に被せた場合に、絶縁部材6の後端65に鍔部51が当接する。接続端子5は、接続端子5を軸線O方向の先端向きに押圧した状態で、胴部52の外周から内向きに加締められる。胴部52の内周面は接続端部36の係止部39に強固に係止される。係止部39はローレット形状であるため、加締めにより、胴部52の係止部39への固着力が高められ、接続端子5と中軸3とが一体に固定される。加締めにより、接続端子5と中軸3とは電気的に接続される。
図1に示すように、接続端子5の突起部53には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱素子24の発熱抵抗体27は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地される電極取出部25と、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される電極取出部26との間に通電されることによって、発熱する。
図2および図3を参照して当接部材7について説明する。上記したように、当接部材7は、環状に形成され、軸孔43の後端部45において軸孔43に挿入されて、主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37とのそれぞれに当接した状態で配置される部材である。当接部材7は、軸孔43で中軸3を保持して中軸3の振動を抑制するとともに、主体金具4と中軸3との間の空間の気密性を保つ。図3に示すように、当接部材7は、自身の軸線Pの延伸方向(以下、軸線P方向ともいう)に延びる筒孔76を有する。軸線P方向と直交する方向からみた当接部材7の外周面の輪郭線は、径方向外向きに膨らむ形状をなす。
図4に示すように、グロープラグに組み付ける前の当接部材7は、軸線Pについて対称な形状(鏡像体)を有している。すなわち、当接部材7が、軸線Pを含む平面で2つの断片に切断(分割)された場合、各断片はそれぞれ2箇所に略同一な断面を有する。当接部材7は、軸線P方向の中点を通る平面F(図5参照)について対称な形状を有している。本実施形態の当接部材7では、断片に形成される2つの断面のうちの一方の断面75に着目し、断面75の輪郭線70をみたときに、輪郭線70は以下の形態をなす。
輪郭線70は、輪郭線70を部分的に構成する輪郭部(輪郭線を構成する線分)として、第一輪郭部72、第二輪郭部71および第三輪郭部73の3つの輪郭部を有する。第一輪郭部72は、軸線Pに沿いつつも、径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる。第二輪郭部71は、軸線Pに沿いつつも、径方向内向きに膨らむ曲率半径R2の曲線状又は直線状に延びる。曲率半径R1は曲率半径R2よりも小さい。本実施形態の第二輪郭部71は、直線状である。本実施形態の第二輪郭部71は、曲率半径R2が無限大である曲線状の輪郭部とみなすことができる。第三輪郭部73は、第一輪郭部72と第二輪郭部71とを、軸線P方向で同じ側の端部においてそれぞれ接続する輪郭部であり径方向内向きに膨らむ曲線状をなす。第一輪郭部72と第三輪郭部73との接続点は、軸線P方向における当接部材7の上下(先後)の両端部を形成している。
当接部材7は、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム等の耐熱性および絶縁性を有する粘弾性部材からなる。当接部材7の主成分はフッ素ゴムからなることが好ましい。当接部材7の主成分をフッ素ゴムとすることにより、当接部材7の耐熱性および絶縁性を十分に確保することができる。当接部材7の動的粘弾性のtanδは0.1以上であることが好ましい。後述する実施例1に示すように動的粘弾性のtanδが0.1未満であると、当接部材7の防振機能が不十分である。当接部材7の動的粘弾性のtanδは0.1以上1.0以下であることがさらに好ましい。tanδが大きくなると、当接部材7は弾性よりも粘性が優位になり、当接部材をグロープラグに取り付ける際の組み付け性が低下する可能性がある。これに対して、動的粘弾性のtanδを1以下にすることにより、当接部材7の組み付け性は、動的粘弾性のtanδを1より大きい場合に比べ向上する。当接部材7のゴム硬度は80以上100以下であることが好ましく、ゴム硬度は80であることが特に好ましい。ゴム硬度の上限は100である。後述する実施例3に示すようにゴム硬度が80以上であると、組み付け性が向上するが、ゴム硬度が80未満であると、当接部材7の組み付け性が低下する。ゴム硬度は、例えば、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計A型を用いてJIS K6253の規定に準拠して測定しており、以下の測定でも同様な条件とする。
グロープラグ1は、概略、以下のように組み立てられる。導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱素子24の原形となる素子成形体が形成される。絶縁性セラミック粉末を原料として金型プレス成形によって、セラミックヒータ2の基体21の原形となる基体成形体が、2分割の成形体として形成される。基体成形体で素子成形体を挟んで収容した状態で、基体成形体はプレス圧縮される。脱バインダ処理、およびホットプレス等の焼成工程後、外周面の研磨によって、棒状で先端が半球状のセラミックヒータ2が形成される。セラミックヒータ2の製造方法は適宜変更が可能である。例えば、基体成形体の製造方法として、金型に、予め成形された2分割の成形体のうちの一方を配置し、その上に素子成形体を載置し、さらに絶縁性セラミック粉末を充填してプレス圧縮する製造方法等を適用することができる。
ステンレス等の鋼材をパイプ状に成形した接続リング85に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、接続リング85と電極取出部26とが導通される。同様に、所定の形状に成形された保持部材8に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、保持部材8と電極取出部25とが導通される。一方、中軸3は、一定の寸法に切断された鉄系材料(例えば、Fe−Cr−Mo鋼)からなる棒状部材に塑性加工および切削等が施されて形成される。中軸3のリング係合部34を、セラミックヒータ2に嵌められた接続リング85に係合させた状態で、合わせ部位がレーザ溶接されて、中軸3とセラミックヒータ2とが一体に接合される。
S45C等の鉄系素材から筒状の主体金具4が形成され、取付部42にねじ山が転造される。さらに切削加工等により、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、後端48から先端側に向かってテーパ状に先細るテーパ部47が形成される。主体金具4の軸孔43に、セラミックヒータ2等と一体となった中軸3が挿通される。主体金具4と保持部材8との合わせ部位がレーザ溶接され、両者が一体に接合される。
次に、主体金具4の後端48から突出する中軸3の接続端部36から先端へ向って当接部材7が嵌められる。上記したように、当接部材7が軸線Pおよび平面Fのそれぞれについて対称な形状(鏡像体)を有しているので、当接部材7を中軸3の後端部32に嵌める際に、軸線P方向の向きは問われない。
図5に示すように、当接部材7の筒孔76が、中軸3の接続端部36に嵌められた後、筒孔76の内周面は中軸3の肩部38の先端位置B1に当接する。先端位置B1は、肩部38と接続基部37との境目が相当する。肩部38に達した当接部材7は、軸線O方向の先端側へ向けてさらに押し込まれる。当接部材7の筒孔76の内径C2は、中軸3の接続端部36の外径C1よりも大きく形成されている。これにより、当接部材7は接続端部36に嵌められる際に、筒孔76の内周面と接続端部36の係止部39とが擦れ合って、筒孔76(当接部材7の内周面)が傷付く可能性を低減する。筒孔76の内径C2は、中軸3の接続基部37の外径C3よりも小さい。これにより肩部38に達した当接部材7が押し込まれると、筒孔76の内径が肩部38のテーパに沿って押し広げられる。
肩部38によって筒孔76の内径が押し広げられた当接部材7は、筒孔76の内周面が接続基部37の外周面に当接した状態で、軸線O方向の先端側へ向けさらに押し込まれる。これにより、当接部材7の外周面側は主体金具4のテーパ部47に当接する。この状態で当接部材7がさらに軸線O方向の先端側へ押し込まれると、図6に示すように、当接部材7は外周面側がテーパ部47のテーパに沿って弾性変形する。当接部材7の先端部はテーパ部47の先端位置B2よりも先端側に挿入される。図7に示すように、軸線O方向の先端側へさらに挿入された当接部材7は、弾性変形によって軸孔43の内周面と接続基部37とに当接した状態を維持し、軸孔43と中軸3との間の空間の気密性を確保する。
軸孔43の内周面と接続基部37との間に当接部材7が配置されたら、図2に示すように、絶縁部材6は、主体金具4のテーパ部47に絶縁部材6のテーパ部63が当接して位置決めされた状態で、中軸3の後端部32に嵌められる。その後、接続端子5が中軸3の接続端部36に嵌められ、接続端子5の胴部52が加締められることで、接続端子5が中軸3の接続端部36に固定されて、グロープラグ1の組み立てが完成する。
当接部材7の動的粘弾性のtanδと中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅との関係について試験を行った。具体的には、外径が直径3.9(mm)、内径が直径1.9(mm)、高さが3(mm)の形状をなし、動的粘弾性のtanδを0.01以上10以下の範囲で適宜異ならせた当接部材7を複数作製した。当接部材7の動的粘弾性のtanδは、以下の簡易的な測定方法によって測定した。
動的粘弾性のtanδを0.01以上10以下の範囲で適宜異ならせた各当接部材7をグロープラグ1へ組み付けた状態で、中軸3に一次共振を発生させ、中軸3の振動の腹の振幅を測定した。中軸3の振動の腹の振幅の測定は、上記のグロープラグ1の主体金具4に1つ以上の孔を形成し、形成した孔を介して中軸3にレーザ光を照射して行った。
当接部材7の動的粘弾性のtanδは、当接部材7の防振性が低下する高温領域で、かつ、グロープラグ1の使用環境下で想定される、50(℃)以上150(℃)以下の温度範囲にて定められる。さらに動的粘弾性のtanδは、グロープラグ1に加わることが想定される最大の振動数である2000(Hz)を上限として定められる。
具体的には、中軸3の振動の腹の振幅の測定を経たグロープラグ1の当接部材7の動的粘弾性のtanδを、以下の簡易的な方法で測定した。測定対象のグロープラグ1において当接部材7が取り付けられている状態と同一の状態の測定システム16を準備し、測定対象を測定システム16にセットした。測定システム16は、測定対象固定治具11、中軸固定治具12、加振装置14、およびレーザ測定装置15を主に備える。測定対象固定治具11は、測定対象の外周面を挟持固定する。測定対象は、当接部材7又は基準部材である。当接部材7は、上記構成を有するグロープラグ1から取り外されたものである。基準部材は、当接部材7と同一形状を有し、動的粘弾性のtanδが既知の部材である。基準部材のtanδは、例えば、0.06、0.13、0.2、および0.4である。中軸固定治具12は、中軸3に相当する部材である中軸相当部材13の一端を固定する。中軸相当部材13の他端側は、測定対象を介して測定対象固定治具11によって固定される。中軸相当部材13として、中軸3と同一材質、同一外形、軸線O方向の長さが同一の部材を準備した。加振装置14は、所定の周波数の振動を発生するよう構成された装置である。レーザ測定装置15は、レーザ光の反射を利用して物体までの距離を測定するよう構成された装置である。
図13に模式的に示すように、中軸固定治具12および測定対象固定治具11を加振装置14の上面に固定した。中軸相当部材13の一方端を中軸固定治具12に固定した。測定対象固定治具11は、中軸相当部材13と測定対象固定治具11との径方向の距離が、グロープラグ1における中軸3と主体金具4の内周面との径方向距離と同一となるように配置した。このとき、中軸相当部材13の中軸固定治具12による固定位置から測定対象の配置位置までの長さは、セラミックヒータ2後端から当接部材7の配置位置までの長さと同一にした。中軸相当部材13が加振装置14により加振されたときの中軸相当部材13の振幅を、レーザ測定装置15を用いて測定した。
上記のように構成された測定システム16に、測定対象のグロープラグ1から取り外された当接部材7をセットし、加振装置14により中軸相当部材13の共振周波数にて中軸相当部材13を加振した。共振周波数で中軸相当部材13を加振したときに、レーザ測定装置15を中軸相当部材13の長手方向17に移動させて、中軸相当部材13の振幅が最も大きい位置を特定し、その位置にて中軸相当部材13の振幅を測定した。尚、測定は測定対象および測定対象固定治具11を、測定対象固定治具11の周囲に配置されたヒータ等で加熱することで、100(℃)の温度雰囲気にて実施した。
当接部材7と同様に、測定対象として各基準部材を測定システム16にセットした。当接部材7と同様に、各基準部材をセットしたときの中軸相当部材13の振幅を測定した。当接部材7で得られた振幅と、複数の基準部材で得られた各振幅とを比較し、当接部材7のtanδを判定した。例えば、当接部材7の振幅が、tanδが0.13である基準部材の振幅より小さく且つtanδが0.2である基準部材の振幅値より大きい場合、当接部材7のtanδは0.13以上0.2未満であると判定した。
試験結果を図9の両対数グラフに示す。図9に示すように、動的粘弾性のtanδが0.1以上であれば、中軸3の一次共振時の振動の腹の振幅を10(μm)以下と顕著に抑制できることが確認できた。
次に、当接部材7の動的粘弾性のtanδと共振時の中軸3の軸線方向に亘る振幅との関係について試験を行った。具体的には、外径が直径3.9(mm)、内径が直径1.9(mm)、高さが3(mm)の形状をなし、動的粘弾性のtanδが0.06と0.13との2種類の当接部材7を作製した。各当接部材7をグロープラグ1へ組み付けた状態で、中軸3に一次共振又は二次共振を発生させ、共振発生時の中軸3および接続端子5の振幅を測定した。振幅の測定方法は、実施例1と同様である。試験結果を図10および図11のグラフに示す。図10および図11の横軸は、接続端子5の後端面からの距離を示す。横軸上のXは接続端子5の後端面から当接部材7の位置X(図1参照)までの距離を示す。横軸上のYは接続リング85と係合する位置Y(図1参照)までの距離を示す。図10および図11では、動的粘弾性のtanδが0.06である場合を点線で示し、動的粘弾性のtanδが0.13である場合を実線で示す。
図10に示すように、中軸3が一次共振した場合、当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.13である方が動的粘弾性のtanδが0.06である場合と比較して、中軸3の振幅を、軸線O方向に亘って顕著に抑制できることが確認できた。図11に示すように中軸3が二次共振した場合にも、同様に、動的粘弾性のtanδが0.13である方が動的粘弾性のtanδが0.06である場合と比較して、中軸3の振幅を抑制でき、かつ、当接部材7の配置部における振幅を、ほぼ振動しない程度にまで顕著に抑制できることが確認できた。一次共振発生時においては、中軸3の振動の腹は一つ発生し、一つの振動の腹はセラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置M(図1参照)から、当接部材7の配置位置までの間の範囲H(図1参照)内にあることが確認された。二次共振発生時においては、中軸3の振動の腹は、二つ発生し、二つの振動の腹はいずれも範囲H内にあることが確認された。
当接部材7をテーパ部47へ押し込む際に必要な軸線方向の荷重と、当接部材7のゴム硬度との関係について試験を行った。具体的にはゴム硬度60、70、および80の当接部材7をそれぞれ作製し、当接部材7の挿入量および挿入荷重を測定する試験機を用いて、テーパ部47への挿入量と挿入荷重とを測定した。試験結果を図12のグラフに示す。横軸の挿入量は、当接部材7とテーパ部47とが接触した当接部材7の位置を基準とする。図12では、ゴム硬度が60である場合を点線で示し、ゴム硬度が70である場合を二点鎖線で示し、ゴム硬度が80である場合を実線で示す。
ゴム硬度が70以下の場合、グロープラグ1の組み立て工程における挿入規定荷重である500(N)以上の荷重を加えても、当接部材7の外周面がテーパ部47へ乗り上げてしまった。この結果、図12に示すように、当接部材7をテーパ部47に1(mm)程度しか挿入することができず、当接部材7を組み付けることができなかった。一方でゴム硬度が80であれば、ゴム硬度が70以下の場合と比較して顕著に低い100(N)程度の挿入荷重で十分に、当接部材7をテーパ部47の組み付け位置まで挿入できた。以上の結果から、当接部材7のゴム硬度を80以上とすることで当接部材7の組み付け性が向上することがわかった。
上記グロープラグ1では以下の効果が得られる。当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.1以上である場合には、エンジン(図示外)の振動により中軸3に共振が発生した場合であっても、中軸3の振幅を顕著に抑制することができる。この結果、当接部材7が配置される位置において、中軸3の振幅が顕著に低減されるため、当接部材7に径方向外向きに加わる瞬間的な荷重負荷が低減し、当接部材7の変形等の劣化を防止することができる。セラミックヒータ2と中軸3とを接続リング85を介して一体に連結したグロープラグの場合、中軸3の振動に伴いセラミックヒータ2に内部応力が生じてセラミックヒータ2が折損する可能性がある。グロープラグ1は、当接部材7の動的粘弾性のtanδを0.1以上にすることにより、中軸3の振動に伴いセラミックヒータ2に生じる内部応力を効果的に低減することができ、セラミックヒータ2の折損を防止することができる。
図6に示すように、当接部材7が軸孔43に挿入される際、テーパ部47の先端位置B2よりも先端側に挿入された当接部材7の外周面は径方向内向きへ変形する。一方、先端位置B2よりも後端側に位置する当接部材7の外周面の一部は、径方向外向きへ変形しテーパ部47に乗り上げる。当接部材7のゴム硬度が80以上100以下の場合、挿入時におけるテーパ部47への当接部材7の乗り上げ量が80未満である場合に比べて少ないまま、当接部材7は軸孔43へ挿入される。従ってゴム硬度が80以上100以下である場合は、当接部材7がテーパ部47に乗り上げることで当接部材7の外周面がテーパ部47から受ける挿入方向とは逆方向の抗力を抑制でき、かつ、乗り上げに伴う当接部材7の周方向へのねじれも抑制できる。周方向とは、軸線Pを中心として軸線Pの回りを回る方向である。これにより当接部材7の挿入荷重を低減させ、組み付け性を向上させることができる。
本発明は各種の変形が可能である。例えば、自身の少なくとも一部が、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置Mから当接部材7までの間の範囲Hに配置されるように防振部材が配置されてよい。より具体的には、図8に示すように、上記実施形態のグロープラグ1の中軸3の中胴部33から後端部32にかけて、50(℃)以上150(℃)以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上である円筒状の防振部材90を、インサート成形等の方法により配置しても良い。図8では、図1のグロープラグ1と同様な部材には同一の符号を付与している。防振部材90の軸線O方向の位置および長さは、想定される振動範囲内での中軸3の振幅の腹の位置を考慮して設定されればよい。前述のように、中軸3にて共振(より詳細には、一次共振又は二次共振)が発生する場合、振動の腹は、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端部22と中軸3の後端35との中心位置Mから、当接部材7の配置位置までの間にて発生する。従って範囲Hに防振部材90の少なくとも一部を配置することで、中軸3が共振した場合の振幅を抑制することができる。自身の少なくとも一部が、軸線O方向において、セラミックヒータ2の先端20と中軸3の後端35との中心位置Mから当接部材7までの間の範囲Hに防振部材90を配置する場合、軸線O方向において、範囲Hの一部に防振部材90が配置されてもよい。範囲Hの全体に防振部材90が配置されてもよい。防振部材90は、チューブ状で、軸孔43の内周面と中軸3との間に挿通させることで配置させても、同様の防振効果を得ることができる。防振部材90の軸線Oと垂直な断面はC字形状等、非円形形状でも良い。
上記実施例に加えて、グロープラグは、当接部材7が当接する、軸孔43の内周面および中軸3にテーパ部を設けても良い。この場合、絶縁部材6の先端側端面によって当接部材7がテーパ部に向けて押圧されることで、軸孔43の内周面と中軸3と絶縁部材6との3つの接触面のそれぞれにて当接部材7が密着し、軸孔43と中軸3との間の空間の気密性を保つことができる。同時に、当接部材7の動的粘弾性のtanδが0.1以上であることにより、中軸3が共振する場合の振幅は上記実施例と同様に顕著に抑制され、グロープラグ1は当接部材7の劣化を防止することができる。
上記実施例では、セラミックヒータ2と中軸3とを接続リング85を介して一体に連結したグロープラグに本発明を採用したが、セラミックヒータ2と中軸3とを金属線を介して電気的に接続したグロープラグに本発明を採用しても良い。このようなグロープラグの場合、中軸3の振動に伴い金属線に内部応力が生じて金属線が断線する可能性がある。しかし、当接部材7の動的粘弾性のtanδを0.1以上にすることにより、グロープラグ1は、中軸3の振動に伴い金属線に生じる内部応力を効果的に低減することができ、金属線の断線を防止することができる。
当接部材7の材料、形状、および配置は適宜変更されてよい。例えば、第二輪郭部71は、径方向内向きに膨らむ曲率半径R2の曲線状であってもよい。このとき、R1<R2を満たすことが好ましい。このようにすれば、当接部材を、軸孔43の内周面と中軸3との間に配置する場合に、第二輪郭部71よりも膨らみの大きい第一輪郭部72をスムーズに弾性変形させることができる。グロープラグ1は、第一輪郭部72よりも膨らみが小さく、より直線状に近い、第二輪郭部71を、当接部材の全体を支えて曲がりや巻き込みを抑制する芯として機能させることができる。
なお、本実施形態においては、セラミックヒータ2が「ヒータ」に相当する。
本発明の実施態様のグロープラグによれば、通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、自身の軸線方向に沿って延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接又は間接的に保持する主体金具と、棒状に形成され、前記主体金具の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の先端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の後端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、環状に形成され、前記軸孔の後端部において前記軸孔に挿入されて、前記主体金具の前記内周面と前記中軸とのそれぞれに当接した状態で配置される、絶縁性の粘弾性部材からなる当接部材と、を備えるグロープラグであって、前記ヒータは、絶縁性セラミックからなる基体と、導電性セラミックからなる発熱素子とを有するセラミックヒータであり、前記主体金具は、前記セラミックヒータを直接又は間接的に保持し、前記中軸は、前記セラミックヒータに一体に連結され、前記当接部材の50℃以上150℃以下の温度範囲における動的粘弾性のtanδが0.1以上であるグロープラグが提供される。
本実施態様において、前記グロープラグに組み付ける前の前記当接部材を、前記当接部材の軸線である第2軸線を含む平面にて切断し、切断片のそれぞれが有する2つの断面のうちの一方の断面の輪郭線をみた場合に、前記当接部材は、前記輪郭線を部分的に構成する輪郭部であって、前記第2軸線に沿いつつも、径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる前記輪郭部である第一輪郭部と、前記第2軸線に沿いつつも、曲率半径R2がR1<R2を満たして径方向内向きに膨らむ曲線状又は直線状に延びる前記輪郭部である第二輪郭部とを備えてもよい。この場合のグロープラグは、曲率半径R2の第二輪郭部が、曲率半径R1の第一輪郭部に比べてより大きな曲率半径で、第2軸線に沿って延びている。このため、グロープラグの組み付け時において、当接部材が第2軸線に沿って押し込まれる際に、第二輪郭部が、当接部材の全体を支えて曲がりおよび巻き込みを抑制する芯として機能することができる。従って、グロープラグは、第二輪郭部において、当接部材に曲がりおよびシワが生じたりすることが抑制できる。当接部材は、主体金具の軸孔の内周面と中軸との2点(2面)に接する。このため、主体金具の軸孔によって囲まれる空間は、当接部材によって気密性が確保される。グロープラグは、主体金具および中軸の少なくとも一方に複雑なシール面を形成して主体金具の軸孔によって囲まれる空間の気密性を確保する場合に比べ、加工が容易で、コストダウンを図ることができる。