JPWO2013061982A1 - 金属部材の疲労亀裂進展抑制方法及び疲労亀裂進展抑制された金属部材 - Google Patents
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Abstract
金属部材の疲労亀裂進展抑制方法は、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体(12)に、疲労亀裂(14)の先端部(14a)の亀裂方向に対して側方に穴(18)を形成し、金属部材本体(12)より剛性が高く、穴(18)より外形が大きい圧入体(20)を穴(18)に圧入し、疲労亀裂(14)の先端部(14a)に、亀裂方向に対して側方から圧縮応力(C)を作用させる
Description
本発明は、金属部材の疲労亀裂進展抑制方法及び疲労亀裂進展抑制された金属部材に係り、特に、橋梁、船舶、クレーン等に用いられる金属部材に発生する疲労亀裂の進展を抑制する金属部材の疲労亀裂進展抑制方法及び疲労亀裂進展抑制された金属部材に関する。
従来、橋梁、船舶、クレーン等に用いられる金属部材に発生する疲労亀裂の進展を抑制するために、ストップホールと呼ばれる方法が用いられている。ストップホールによる方法は、疲労亀裂の先端に亀裂と連通する丸孔を設けることにより、亀裂先端の応力集中を緩和して疲労亀裂を抑制する方法である。
また、他の疲労亀裂の進展抑制方法としては、特許文献1、2に記載されているように、亀裂表面をピーニング処理等して、表面部の疲労亀裂を閉じることで疲労亀裂の進展を抑制することが行われている。
ところで、ストップホールによる方法は、疲労亀裂の先端に丸孔を設けることで一時的には応力集中を緩和できるが、繰返し応力の作用によりストップホールの円孔部から疲労亀裂が発生し、成長する場合がある。また、亀裂表面をピーニング処理等して疲労亀裂を閉じる方法では、金属部材における板厚方向の内部の疲労亀裂まで閉口させることが難しく、疲労亀裂が更に進展する可能性がある。
そこで、本発明の目的は、金属部材に発生した疲労亀裂の進展を更に抑制することができる金属部材の疲労亀裂進展抑制方法及び疲労亀裂進展抑制された金属部材を提供することである。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法は、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体に、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方に穴を形成する穴形成工程と、前記金属部材本体より剛性が高く、前記穴より外形が大きい圧入体を前記穴に圧入し、前記疲労亀裂の先端部に、前記亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させる圧入工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記穴形成工程は、前記穴が、前記穴の中心と前記疲労亀裂の先端とを結ぶ直線が前記亀裂方向と直交するように形成されることが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端の応力集中により生じる応力集中領域を予め求め、前記応力集中領域を除く位置に前記穴を形成することが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端部において、前記亀裂方向とのなす角度θとなる方向と、亀裂方向とにより挟まれた位置に、前記穴を形成すると共に、前記角度θを応力解析で求めることが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記角度θは、前記亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合に、55度であることが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記穴形成工程は、前記圧入体を前記穴に圧入したときに、前記穴と前記疲労亀裂の先端部とが連通することを防止するために、前記穴の周縁と前記疲労亀裂の先端部との間の最短距離が1mm以上となる位置に前記穴を形成することが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して直交方向の対称となる位置に前記穴を各々形成することが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記疲労亀裂は、前記金属部材本体の厚み方向に貫通しており、前記穴は、前記金属部材本体の厚み方向に貫通して形成され、前記圧入体は、前記穴の長さと同じかまたは前記穴の長さより長く形成されていることが好ましい。
本発明に係る金属部材の疲労亀裂進展抑制方法において、前記圧入体は、前記穴に圧入される圧入部と、前記圧入部の一端側に設けられ、前記圧入部の外形よりも大きい頭部と、を有し、前記圧入体の頭部には、鍔、ネジまたは溝が設けられていることが好ましい。
本発明に係る疲労亀裂進展抑制された金属部材は、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体に形成され、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方に設けられる穴と、前記金属部材本体より剛性が高く、前記穴より外形が大きく、前記穴に圧入され、前記疲労亀裂の先端部に、前記亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させる圧入体と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る疲労亀裂進展抑制された金属部材において、前記穴は、前記穴の中心と前記疲労亀裂の先端とを結ぶ直線が前記亀裂方向と直交するように形成されていることが好ましい。
本発明に係る疲労亀裂進展抑制された金属部材において、前記穴は、前記疲労亀裂の先端の応力集中により生じる応力集中領域を除く位置に形成されていることが好ましい。
本発明に係る疲労亀裂進展抑制された金属部材において、前記穴は、前記疲労亀裂の先端部において、前記亀裂方向とのなす角度θとなる方向と、亀裂方向とにより挟まれた位置に形成されていると共に、前記角度θが応力解析で求められていることが好ましい。
本発明に係る疲労亀裂進展抑制された金属部材において、前記角度θは、前記亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合に、55度であることが好ましい。
上記構成によれば、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材において、疲労亀裂の先端部に、亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させることが可能となるので、金属部材の疲労亀裂進展を更に抑制できる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、疲労亀裂進展抑制された金属部材10の構成を示す図であり、図1(a)は、疲労亀裂進展抑制された金属部材10の構成を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すX−X方向の断面図である。
金属部材本体12には、疲労荷重による繰返し引張応力Fの作用により、繰返し引張応力Fの応力方向と直交方向に疲労亀裂14が生じている。疲労亀裂14は、例えば、金属部材本体12の厚み方向に貫通して形成されている。このような疲労亀裂14は、繰返し引張応力Fの作用に伴う疲労亀裂14の先端部14aの繰返し塑性ひずみの蓄積等により進展する。
金属部材本体12は、例えば、橋梁、船舶、クレーン等に用いられている鋼製の金属構造部材である。このような鋼製の金属構造部材は、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材等で形成されている。金属部材本体12の厚みは、例えば、1mmから20mm程度である。
疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して側方には、金属部材本体12の厚み方向に穴18が形成されている。穴18は、例えば、金属部材本体12の厚み方向に貫通して形成されている。穴18の形状は、丸穴でもよいし、角穴等でもよい。また、穴18は、1つでもよいし、複数でもよい。なお、穴18は、金属部材本体12の厚み方向に有底で形成されていてもよい。
穴18には、圧入体20が圧入されている。圧入体20は、金属部材本体12より剛性が高い材料で形成されている。金属部材本体12が鋼材で形成されている場合には、圧入体20は、鋼材よりも圧縮弾性率や硬度(例えば、ビッカース硬度)が高く、圧入による塑性変形、割れ、座屈等が生じ難い材料で形成される。このような材料としては、例えば、WC(タングステンカーバイト)系の超硬合金等がある。
圧入体20は、穴18より外形が大きく形成され、穴18に圧入される圧入部20aを有している。圧入部20aは、円柱状や角柱状等の柱状に形成されている。圧入部20aが円柱状である場合には、その外径は、例えば、3mmから5mmである。
圧入部20aは、穴18と同じ長さか穴18の長さより長く形成されていることが好ましいが、穴18の長さより短く形成されていてもよい。圧入部20aの長さは、例えば、5mmから20mmである。また、圧入体20を穴18に打ち込み易くするために、圧入部20aの長手方向の一端側に、圧入部20aよりも外形が大きい頭部20bを設けるようにしてもよい。
図2は、疲労亀裂進展抑制された金属部材10の作用を示す平面図である。金属部材本体12に形成された穴18に圧入体20を圧入することにより、疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から圧縮応力Cが作用する。この圧縮応力Cにより疲労亀裂14の先端部14aの開口を潰して閉口することができる。
更に、繰返し引張応力Fが金属部材本体12に作用する場合でも、亀裂方向の側方からの圧縮応力Cにより繰返し引張応力Fの一部または全てが相殺されるので、疲労亀裂14の先端部14aの開口の広がりを抑え、疲労亀裂14の先端部14aの塑性変形を抑えることが可能となる。このようにして、疲労亀裂14の進展が抑制される。
次に、金属部材の疲労亀裂進展抑制方法について説明する。図3は、金属部材の疲労亀裂進展抑制方法を示すフローチャートである。金属部材の疲労亀裂進展方法は、疲労亀裂14が生じた金属部材本体12に穴18を形成する穴形成工程(S10)と、穴18に圧入体20を圧入する圧入工程(S12)と、を備えている。
穴形成工程(S10)は、繰返し引張応力Fが作用して疲労亀裂14が生じた金属部材本体12に、疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して側方に穴18を形成する工程である。
図4は、疲労亀裂14が生じた金属部材本体12に穴18を形成した状態を示す平面図である。穴18は、圧入体20を圧入したときに、疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させるために、疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して側方に形成される。穴18は、例えば、金属部材本体12をドリル等で穿孔して形成される。
また、穴18は、圧入体20を圧入したときに、穴18と、疲労亀裂14の先端部14aとが連通しない位置に形成される。穴18と、疲労亀裂14の先端部14aとの連通を防止するために、穴18の周縁と、疲労亀裂14の先端部14aとの間の最短距離Dが、例えば、1mm以上となる位置に穴18を形成するとよい。なお、疲労亀裂14の先端部14aにより大きな圧縮応力を作用させるために、疲労亀裂14の先端部14aとの間の最短距離Dは、1mm以上2mm以下であることが好ましい。
穴18が丸穴である場合には、穴18は、穴18の中心と疲労亀裂14の先端とを結ぶ直線が、亀裂方向と直交するように形成されるとよい。このような位置に穴18を形成することで、圧入体20を穴18に圧入したときに、疲労亀裂14の先端部14aの先端側に、亀裂方向に対して側方からより大きな圧縮応力を作用させることが可能となる。
複数の穴18を形成する場合には、亀裂方向に対して一側方のみに複数の穴18を形成してもよいし、亀裂方向に対して一側方と他側方との両側方に穴18を形成してもよい。また、各穴18は、疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向の対称となる位置に形成されるようにしてもよい。図5は、2つの穴18を疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向の対称となる位置に形成した状態を示す平面図である。各穴18をこのような位置に形成することにより、疲労亀裂14の先端部14aの同じ位置に、亀裂方向に対して一側方と他側方との両側方から圧縮応力を作用させることができる。勿論、各穴18の位置は、疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向の対称となる位置に限定されることはない。
穴形成工程(S10)では、疲労亀裂14の先端の応力集中により生じる応力集中領域を予め求めて、この予め求めた応力集中領域を除く位置に穴を形成するようにしてもよい。
図6は、疲労亀裂14の先端の応力集中により生じる応力集中領域22を除いて穴18aを形成する方法を示す平面図である。疲労亀裂14の先端の周りには、応力集中により他の部分より引張応力が大きい応力集中領域22が形成されている。応力集中領域22の中の矢印22aは、応力線(応力の流れ)を表している。応力集中領域22は、疲労亀裂14の先端の周りの領域において、金属部材本体12に一様な引張応力を作用させたときに、この一様な引張応力よりも大きい引張応力を示す領域として定められる。
応力集中領域22は、予め、応力解析や実験による応力測定で求められる。応力解析には、一般的な有限要素法(FEM)等が用いられる。実験による場合には、X線等による応力分布測定、歪みゲージを用いた応力分布測定等が利用可能である。
穴18aは、予め応力解析や実験による応力測定で求めた応力集中領域22を除いて形成されている。応力集中領域22の応力線22aから明らかなように、疲労亀裂14の先端部14aの周りに作用する応力は、疲労亀裂14の先端を迂回して流れている。そのため、応力集中領域22を除いた疲労亀裂14の先端部14aの周りの位置には、繰返し引張応力Fがほとんど作用していない。
このように、応力集中領域22を除いた疲労亀裂14の先端部14aの周りの位置には繰返し引張応力Fがほとんど作用していないので、圧入体20を穴18aに圧入して亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させたとき、この圧縮応力と相殺される引張応力が僅かであり、この引張応力が亀裂進展の駆動力とはなりえない。
また、穴18の一部または全部がこの応力集中領域22に含まれる場合には、疲労亀裂14の先端の応力集中による応力レベルが高いために穴周縁が新たな亀裂発生の起点となる可能性があるが、応力集中領域22を除いて穴18aを形成することにより、新たな亀裂発生を抑えることができる。
応力集中領域22を除いて穴18aを形成するためには、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、亀裂方向とのなす角度θとなる方向と、亀裂方向とにより挟まれた位置に、穴18aを形成すると共に、角度θを応力解析で求めるとよい。例えば、遠方に、亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合には、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、亀裂方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた領域に穴18aを形成するとよい。後述する実施例で示すように、有限要素法(FEM)により応力解析を行ったところ、亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合には、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、亀裂方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた領域に穴18aを形成することにより、応力集中による応力集中領域22を避けて穴18aを形成できることがわかった。
なお、繰返し引張応力Fの応力レベルが異なる場合には、応力集中による応力集中領域22内の応力レベルが異なるだけであり、応力集中領域22の範囲は略同じになる。そのため、繰返し引張応力Fの応力レベルが異なる場合でも、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、亀裂方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた領域に穴18aを形成することにより、応力集中領域22を避けることができる。
圧入工程(S12)は、金属部材本体12より剛性が高く、穴18より外形が大きい圧入体20を穴18に圧入し、疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させる工程である。
図7は、穴18に圧入体20を圧入する方法を示す断面図であり、図7(a)は、圧入体20の圧入前の状態を示す断面図であり、図7(b)は、圧入体20の圧入後の状態を示す断面図である。
まず、図7(a)に示すように、圧入体20は、穴18の位置に位置決めされる。圧入体20には、例えば、圧入用ピンやリベット等が用いられる。圧入体20は、例えば、ハンマによる打撃、空気圧、油圧、火薬等を用いることにより穴に圧入される。図7(b)に示すように、圧入体20の圧入後は、穴18を圧入体20で押し広げることで亀裂方向に対して側方から圧縮応力Cが作用する。この圧縮応力Cにより疲労亀裂14の先端部14aの開口を潰して閉口させることができる。
また、圧入体20の圧入部20aの外径と、穴18の穴径とは、亀裂方向に対して側方から作用させる圧縮応力Cの大きさに基づいて定められる。圧入部20aの外径は、例えば、穴18の穴径の1.1倍から1.15倍であり、穴18の穴径が4.0mmであるとき、圧入部20aの外径は、4.5mmである。
なお、後に、疲労亀裂14の恒久対策として溶接補修するために、圧入体20を穴18から引き抜く場合がある。圧入体20は、金属部材本体12と圧入部20aとの摩擦により引き抜き難くなっていることから、圧入体20を穴18から治具等で容易に引き抜くために、圧入体20の頭部20bの外周面に鍔、ねじ、溝等を設けてもよい。
図8は、圧入体32、34、36、37、38の構成を示す側面図である。図8(a)に示す圧入体32では、頭部20bの外周面に鍔32aが設けられている。図8(b)に示す圧入体34では、頭部20bの外周面にねじ34aが設けられている。図8(c)に示す圧入体36では、頭部20bの外周面に溝36aが設けられている。このように、頭部20bの外周面に鍔32a、ねじ34a、溝36a等を設けることにより、圧入体32、34、36を金属部材本体12から治具等を用いて容易に引き抜くことが可能となる。また、図8(d)、図8(e)に示す圧入体37、38では、テーパが設けられている。このように圧入体37、38にテーパを設けることで、圧入し易くなると共に、例えば、金属部材本体12の板厚が厚い場合でも圧入体37、38の座屈を抑えて圧入することができる。
次に、橋梁の金属構造体に上記の疲労亀裂進展抑制方法を適用する場合について説明する。図9は、橋梁の金属構造体40の構成を示す図であり、図9(a)は、橋梁の金属構造体40の全体構造を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)に示される領域Aの拡大図である。
図9(a)に示すように、橋梁の金属構造体40の典型的な部材として、複数の主桁42を結合するため横桁44が回し溶接で取り付けられている。そして、図9(b)に示すように、金属構造体40に繰返し応力が負荷されると、溶接部46の止端に疲労亀裂14が発生する場合がある。この疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して側方に穴を形成して圧入体20を圧入することにより、疲労亀裂の進展を抑制することができる。なお、橋梁の金属構造体40だけでなく、船殻の内構部材や自動倉庫用クレーンの主塔等にも適用可能である。
以上、上記構成によれば、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体に、疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方に穴を形成し、金属部材本体より剛性が高く、穴より外形が大きい圧入体を穴に圧入し、疲労亀裂の先端部に、亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させているので、この圧縮応力により疲労亀裂の先端部の開口を潰してより小さくすることができると共に、繰返し引張応力が金属部材本体に作用する場合でも、疲労亀裂の先端部には亀裂方向の側方から圧縮応力が作用しているので、疲労亀裂の先端部の開口の広がりを抑えることができる。
上記構成によれば、疲労亀裂の先端部の亀裂方向の側方にドリル等で穴を形成し、ハンマの打撃等で圧入体を圧入すればよいので、大掛かりな溶接機等の設備を必要とせずに簡易に作業を行うことができる。そのため、金属構造物の点検中に疲労亀裂を見つけた場合には、現場で応急的な補修として適用可能である。また、疲労亀裂の恒久対策時には、圧入体を引き抜いて穴を溶接等で埋め戻せばよいので恒久対策も容易に行うことができる。
上記構成によれば、金属部材本体の厚み方向における穴の長さと、圧入体の長さとを調節することにより、金属部材本体の表面部に生じた疲労亀裂だけでなく、金属部材本体の厚み方向に貫通した疲労亀裂でも疲労亀裂の進展を抑制することが可能となる。
次に、疲労試験を行って上記の疲労亀裂進展抑制方法の有効性について評価した。
(疲労試験片)
図10は、疲労試験片50の形状を示す平面図である。疲労試験片50の形状は、長さ600mm、幅100mm、板厚9mmの矩形状平板とした。疲労試験片50には、軟鋼(JIS SS400、SM490等)を使用した。疲労試験片50の中央にドリルで直径4mmの孔52を開けると共に、孔52の両側(疲労試験片50の長手方向に対して直交方向)に放電加工でスリットを各々形成した。各スリットの長さは、孔52の中心から4mmの長さとし、一方のスリットの先端から他方のスリットの先端までの長さを8mmとした。また、各スリットの幅を、0.2mmとした。
図10は、疲労試験片50の形状を示す平面図である。疲労試験片50の形状は、長さ600mm、幅100mm、板厚9mmの矩形状平板とした。疲労試験片50には、軟鋼(JIS SS400、SM490等)を使用した。疲労試験片50の中央にドリルで直径4mmの孔52を開けると共に、孔52の両側(疲労試験片50の長手方向に対して直交方向)に放電加工でスリットを各々形成した。各スリットの長さは、孔52の中心から4mmの長さとし、一方のスリットの先端から他方のスリットの先端までの長さを8mmとした。また、各スリットの幅を、0.2mmとした。
次に、疲労試験片50に繰返し引張応力Fを作用させて、疲労亀裂14を導入した。図11は、疲労試験片50に作用させる繰返し引張応力Fを示すグラフである。繰返し引張応力Fは、疲労試験片50の長手方向に作用させることとした。繰返し引張応力Fは、最大引張応力(公称応力)Fmax=90MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとした。繰返し引張応力Fの最大引張応力を90MPaとした理由は、橋梁等の金属構造体に疲労亀裂が発生する場合に作用する繰返し引張応力の最大値が70MPaから80MPaであるからである。なお、疲労試験片50に作用させる繰返し引張応力Fの周波数は、5Hzとした。
疲労試験機によりスリットを入れた疲労試験片50に繰返し引張応力Fを作用させて、孔52の中心から各々15mmの長さまで疲労亀裂14を進展させて(一方の疲労亀裂14の先端から他方の疲労亀裂14の先端までの長さが30mm)、疲労試験片50に疲労亀裂14を導入した。
(穴位置の検討)
疲労亀裂進展抑制のために、疲労試験片50の穴位置について検討を行った。まず、疲労試験片50の長手方向に一様に引張応力を作用させたときに疲労亀裂14の先端部14aの周りに生じる応力分布について有限要素法(FEM)により応力解析した。
疲労亀裂進展抑制のために、疲労試験片50の穴位置について検討を行った。まず、疲労試験片50の長手方向に一様に引張応力を作用させたときに疲労亀裂14の先端部14aの周りに生じる応力分布について有限要素法(FEM)により応力解析した。
図12は、疲労亀裂14の先端部14aの周りに生じる疲労試験片50の長手方向の応力分布を示す図である。疲労試験片50の長手方向には、繰返し引張応力Fの最大引張応力(公称応力)90MPaを一様に作用させた。疲労亀裂14先端部14aの周りの応力レベルがグレースケールで示されており、白色が強調される部位ほど引張応力が大きいことを表しており、黒色が強調される部位ほど圧縮応力が大きいことを表している。
図12から明らかなように、疲労亀裂14の先端の応力集中により、疲労試験片50に一様に作用させた90MPaよりも引張応力が大きい応力集中領域が形成されることを確認した。また、引張応力の応力線が疲労亀裂14の先端を迂回することにより、疲労亀裂14の先端部14aの周りには、疲労試験片50に一様に作用させた90MPaより引張応力が小さい応力領域が形成されることを確認した。
そこで、今回の疲労試験では、この応力集中による応力集中領域を除いた位置に穴18aを設けることとした。図12に示す応力解析から、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、疲労亀裂14の方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた領域に穴18aを形成することにより、穴18aの一部または全部が応力集中による引張応力が大きい応力集中領域に含まれることを避けられることを見出した。
(圧入による応力分布の検討)
次に、穴18aに圧入体20を圧入したときの疲労亀裂14の先端部14aへの影響について、有限要素法(FEM)により応力解析した。図13は、応力解析を行うための疲労試験片50のモデル図であり、図13(a)は、疲労試験片50の全体を示すモデル図であり、図13(b)は、図13(a)に示される領域Aを拡大したモデル図であり、図13(c)は、図13(b)に示される穴18a周りを拡大したモデル図である。
次に、穴18aに圧入体20を圧入したときの疲労亀裂14の先端部14aへの影響について、有限要素法(FEM)により応力解析した。図13は、応力解析を行うための疲労試験片50のモデル図であり、図13(a)は、疲労試験片50の全体を示すモデル図であり、図13(b)は、図13(a)に示される領域Aを拡大したモデル図であり、図13(c)は、図13(b)に示される穴18a周りを拡大したモデル図である。
穴18aは、穴径(h)4mmの丸穴とした。そして、穴18aを、孔52の両側に導入された各疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向に対称となる位置に2つ配置した。また、疲労亀裂14の先端の応力集中による応力集中領域を除いた位置に穴18aを設けるために、穴18aは、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、疲労亀裂14の方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた位置に配置した。更に、圧入時に穴18aの周縁と、疲労亀裂14の先端部14aとが連通することを防止するために、穴18aの周縁と疲労亀裂14の先端部14aとの間の最短距離Dが1mmとなる位置に穴18aを配置した。穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした垂線の長さHは3.0mmであり、疲労亀裂14の先端と、穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした位置との間の距離Lは4.5mmである。
有限要素法(FEM)による応力解析では、圧入体20に外径4.5mmの圧入用の鋲を用いることを想定して、穴径4mmの穴18aを穴径4.5mmに強制変位で広げることにより圧入を模擬して行った。また、応力解析では、疲労試験片50の下端部を長手方向に拘束し、疲労試験片50の長手方向に対して直交方向を対称条件とし、疲労亀裂面に接触条件を付与した(接触解析)。
図14は、圧入体20の圧入に伴う疲労試験片50の長手方向の応力分布を示す図である。疲労亀裂14の先端部14aの周りに作用する応力レベルがグレースケールで示されており、図12と同様に、白色が強調される部位ほど引張応力が大きいことを表しており、黒色が強調される部位ほど圧縮応力が大きいことを表している。疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から圧縮応力が作用しており、疲労亀裂14の先端部14aの開口が潰されていることを確認した。
更に、圧入後に疲労試験片50の長手方向に一様な引張応力を作用させたときの応力分布について有限要素法(FEM)により応力解析した。図15は、圧入後に疲労試験片50に一様な引張応力を作用させたときの疲労試験片50の長手方向の応力分布を示す図である。疲労試験片50の長手方向に一様に作用させる引張応力は、公称応力で90MPaとした。疲労亀裂14の先端部14aの周りに作用する応力レベルがグレースケールで示されており、図12と同様に、白色が強調される部位ほど引張応力が大きいことを表しており、黒色が強調される部位ほど圧縮応力が大きいことを表している。
疲労試験片50に一様な引張応力を作用させた場合でも、疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から作用する圧縮応力が残存しており、疲労亀裂14の先端部14aの開口が潰されて閉口したままの状態であることを確認した。
(疲労亀裂進展抑制処理)
上記の応力解析結果に基づいて、疲労亀裂14を導入した疲労試験片50にドリルで穿孔して穴径4mmの穴18aを形成した。穴18aの位置は、図13のモデルに示すように、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、疲労亀裂14の方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた位置であり、穴18aの周縁と疲労亀裂14の先端部14aとの間の最短距離Dが1mmとなる位置とした。また、穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした垂線の長さHを3.0mmとし、疲労亀裂14の先端と、穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした位置との間の距離Lを4.5mmとした。
上記の応力解析結果に基づいて、疲労亀裂14を導入した疲労試験片50にドリルで穿孔して穴径4mmの穴18aを形成した。穴18aの位置は、図13のモデルに示すように、疲労亀裂14の先端部14aにおいて、疲労亀裂14の方向とのなす角度θが55度となる方向24と、亀裂方向とにより挟まれた位置であり、穴18aの周縁と疲労亀裂14の先端部14aとの間の最短距離Dが1mmとなる位置とした。また、穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした垂線の長さHを3.0mmとし、疲労亀裂14の先端と、穴18aの中心から疲労亀裂14の先端部14aに垂直に下ろした位置との間の距離Lを4.5mmとした。
また、孔52に対して一方の疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して両側方と、他方の疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して両側方とに穴18aを設けることにより、合計4つの穴18aを形成した。各疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して両側方に設けられた2つの穴18aは、疲労亀裂14の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向(繰返し応力方向と平行方向)に対称となる位置とした。
圧入体20には、軟鋼より剛性が高いヒルティ(Hilti)社の鋲(X−BT M8−15−6 SN12−R)を使用した。この鋲は、CR500(オーステナイト系ステンレス鋼)で形成されている。この鋲の圧入部の外径は4.5mmであり、圧入部の長さは5mmである。この鋲を、疲労亀裂14を導入した疲労試験片50に形成した4つの穴18aにハンマで打鋲した。図16は、打鋲後における一方の疲労亀裂14の先端部14aの周りの断面図である。図16に示すように、疲労試験片50の一方の面と他方の面とから打鋲を行った。
(疲労試験)
上記の疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片について疲労試験を行った。疲労試験条件は、図11に示すように、最大引張応力(公称応力)を90MPaとし、最小引張応力を0MPaとした。疲労試験の周波数は、5Hzとした。また、比較例として、上記の疲労亀裂進展抑制処理を行っていないスリットのみを入れた疲労試験片についても同様に疲労試験を行った。
上記の疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片について疲労試験を行った。疲労試験条件は、図11に示すように、最大引張応力(公称応力)を90MPaとし、最小引張応力を0MPaとした。疲労試験の周波数は、5Hzとした。また、比較例として、上記の疲労亀裂進展抑制処理を行っていないスリットのみを入れた疲労試験片についても同様に疲労試験を行った。
図17は、疲労試験結果を示すグラフである。図17のグラフでは、横軸に繰返し数(N)を取り、縦軸に孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を取り、疲労進展抑制処理した実施例のデータを黒四角形でプロットし、比較例のデータを白丸でプロットした。
なお、実施例の疲労試験片では、上述したように、予め孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を15mmまで進展させた後(図17のAの時点、約70万回後)、疲労試験機から疲労試験片を外して上記の疲労亀裂進展抑制処理を行い、再び疲労試験機に疲労試験片を取り付けて疲労試験を行っている。
比較例の疲労試験片では、繰返し数が約62万回で孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さが35mmを超えて破断に至った。これに対して実施例の疲労試験片では、疲労亀裂進展抑制処理してから繰返し数が600万回以上経過後でも、孔52の中心からの一方の疲労亀裂の長さは、疲労亀裂進展抑制処理前と略同じであった。この疲労試験結果から、実施例の疲労試験片は、比較例の疲労試験片と比較して疲労亀裂の進展が抑制されていることが明らかとなった。
次に、圧入体である鋲を圧入するための穴位置や、繰返し引張応力Fの応力レベルを変えることにより、疲労亀裂進展抑制処理の有効性について更に評価した。また、いわゆるストップホールによる疲労亀裂進展抑制方法についても合わせて評価した。
まず、実施例A、Bの疲労亀裂進展抑制処理について説明する。実施例A,Bの疲労亀裂進展抑制処理には、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた図10に示す疲労亀裂を導入した疲労試験片50と同じ形状(幅100mm、長さ600mm、厚み9mmの矩形状試験片)で、同じ材質(軟鋼 JIS SS400、SM490等)のものを使用した。
また、疲労亀裂の導入方法については、疲労亀裂を導入するときの繰返し引張応力Fの最大引張応力(公称応力)をFmax=120MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとした以外は、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた疲労試験片50と同じ方法で疲労亀裂の導入を行った。
すなわち、図10に示す疲労試験片50と同様に、放電加工によりスリット(各スリットの長さは、孔52の中心から4mmの長さとし、一方のスリットの先端から他方のスリットの先端までの長さを8mm)を入れた疲労試験片に疲労試験機により繰返し引張応力Fを作用させて、孔52の中心から各々15mmの長さまで疲労亀裂14を進展させた(一方の疲労亀裂14の先端から他方の疲労亀裂14の先端までの長さが30mm)。
実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理については、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理と同じ処理を行った。図18は、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理における疲労亀裂14を導入した疲労試験片50に、圧入体である鋲を圧入するための穴18aを形成した部位の拡大図である。
疲労亀裂14を導入した疲労試験片50にドリルで穿孔して穴径4mmの穴18aを形成した。穴18aの位置は、図13のモデル図に示すように、疲労亀裂の先端部14aにおいて、疲労亀裂14の亀裂方向とのなす角度θが55度となる方向24と、疲労亀裂14の亀裂方向とにより挟まれた位置であり(疲労亀裂14の亀裂方向とのなす角度θが55度となる方向24の線は、穴18aの周縁と接している)、穴18aの周縁と疲労亀裂の先端部14aとの間の最短距離が1mmとなる位置とした。
また、穴18aの中心から疲労亀裂の先端部14aに垂直に下ろした垂線の長さを3mmとし、疲労亀裂の先端14bと、穴18aの中心から疲労亀裂の先端部14aに垂直に下ろした位置との間の距離を4.5mmとした。
そして、孔52に対して一方の疲労亀裂の先端部14aの亀裂方向に対して両側方と、他方の疲労亀裂の先端部14aの亀裂方向に対して両側方とに穴18aを設けることにより、合計4つの穴18aを形成した。各疲労亀裂の先端部14aの亀裂方向に対して両側方に設けられた2つの穴18aは、疲労亀裂の先端部14aの亀裂方向に対して直交方向(繰返し引張応力Fの方向と平行方向)に対称となる位置とした。
次に、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理と同じ方法で、圧入部の外径が4.5mmのヒルティ(Hilti)社製の鋲(X−BT M8−15−6 SN12−R)を4つの穴18aにハンマで打鋲した。なお、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については1体作製した。
実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理では、圧入体である鋲を圧入する穴を、穴の中心と疲労亀裂の先端とを結ぶ直線が疲労亀裂の亀裂方向と直交するように形成した。図19は、実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理における疲労亀裂14を導入した疲労試験片50に、圧入体である鋲を圧入するための穴18bを形成した部位の拡大図である。
疲労亀裂14を導入した疲労試験片50にドリルで穿孔して穴径4mmの穴18bを形成した。実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理では、圧入体である鋲を圧入する穴18bを、穴18bの中心と疲労亀裂の先端14bとを結ぶ直線54が疲労亀裂14の亀裂方向と直交するように形成した。すなわち、穴18bの中心は、疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向と直交する方向54の直線上に位置している。穴18bの周縁と疲労亀裂の先端14bとの間の最短距離を1mmとし、穴18bの中心から疲労亀裂の先端14bに垂直に下ろした垂線の長さを3mmとした。
孔52に対して一方の疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して両側方と、他方の疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して両側方とに穴18bを設けることにより、合計4つの穴18bを形成した。各疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して両側方に設けられた2つの穴18bは、疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して直交方向(繰返し引張応力Fの方向と平行方向)に対称となる位置とした。
次に、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理と同じ方法で、圧入部の外径が4.5mmのヒルティ(Hilti)社製の鋲(X−BT M8−15−6 SN12−R)を4つの穴18bにハンマで打鋲した。なお、実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については2体作製した。
比較例Aとして、いわゆるストップホールによる疲労亀裂進展抑制処理についても評価した。
比較例Aの疲労亀裂進展抑制処理には、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた図10に示す疲労亀裂を導入した疲労試験片50と同じ形状(幅100mm、長さ600mm、厚み9mmの矩形状試験片)で、同じ材質(軟鋼、JIS SS400、SM490等)のものを使用した。
また、疲労亀裂の導入方法についても、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた疲労試験片50と同じ方法で行った。すなわち、図10に示す疲労試験片50と同様に、放電加工によりスリット(各スリットの長さは、孔52の中心から4mmの長さとし、一方のスリットの先端から他方のスリットの先端までの長さを8mm)を入れた疲労試験片に疲労試験機により繰返し引張応力Fを作用させて、孔52の中心から各々15mmの長さまで疲労亀裂14を進展させた(一方の疲労亀裂14の先端から他方の疲労亀裂14の先端までの長さが30mm)。
なお、疲労亀裂を導入するときの繰返し引張応力Fについては、最大引張応力(公称応力)をFmax=90MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとしたものについて1体作製し、最大引張応力(公称応力)をFmax=120MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとしたものについて1体作製した。
次に、疲労亀裂を導入した疲労試験片にストップホールを形成した。図20は、比較例Aの疲労亀裂進展抑制処理における疲労亀裂14を導入した疲労試験片50に、ストップホール60を形成した部位の拡大図である。
孔52に対して一方の疲労亀裂の先端14bと、他方の疲労亀裂の先端14bとを中心にしてドリルで各々穿孔し、合計2つのストップホール60を形成した。ストップホール60の穴径は18mmとした。
実施例A、B及び比較例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片について室温大気中で疲労試験を行った。実施例A、Bの疲労亀裂進展抑制処理を行った疲労試験片の疲労試験条件については、最大引張応力(公称応力)をFmax=120MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとした。疲労試験の周波数については、5Hzとした。また、疲労亀裂の長さについては、クラックゲージで測定した。なお、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については1体試験し、実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については2体試験した。
比較例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については2体試験し、1体の疲労試験条件を、最大引張応力(公称応力)Fmax=90MPa、最小引張応力Fmin=0MPaとし、他の1体の疲労試験条件を、最大引張応力(公称応力)Fmax=120MPa、最小引張応力Fmin=0MPaとした。また、疲労試験の周波数については、5Hzとした。なお、比較例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については、疲労亀裂の先端にストップホールを形成していることから、クラックゲージによる疲労亀裂の長さの測定については行っていない。
図21は、疲労試験結果を示すグラフである。図21のグラフでは、横軸に繰り返し数(N)を取り、縦軸に孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を取り、実施例A,Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータをプロットした。なお、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータについては、黒三角形で表し、実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータについては、×と、白菱形とで表している。
また、図21のグラフ中には、上記の図17のグラフに示す疲労亀裂進展抑制処理を行っていない比較例の疲労試験片のデータ(図17のグラフの白丸)及び実施例の疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータ(図17のグラフの黒四角形)についても合わせて記載した。疲労亀裂進展抑制処理を行っていない比較例の疲労試験片のデータについては、白丸で表し、実施例の疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータについては、黒四角形で表している。
なお、図21のグラフ中には、疲労亀裂進展抑制処理前における疲労亀裂の導入時のデータについても合わせて記載した。実施例A,Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、上述したように、予め孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を15mmまで進展させた後(図21のグラフにおいて、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では繰り返し数が約26万回のXの時点、実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では繰り返し数が約35万回のYの時点と、繰り返し数が約28万回のZの時点)、疲労試験機から疲労試験片を一度外して上記の各疲労亀裂進展抑制処理を行い、再び疲労試験機に各疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片を取り付けて疲労試験を行っている。図21のグラフにおいて、疲労亀裂進展抑制処理前のデータについては点線で表しており、疲労亀裂進展抑制処理後のデータについては実線で表している。
比較例の疲労亀裂進展抑制処理を行っていない疲労試験片では、繰り返し数が約62万回で孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さが35mmを超えて破断に至った。また、比較例Aのストップホールによる疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、疲労試験条件を、最大引張応力(公称応力)Fmax=90MPa、最小引張応力Fmin=0MPaとしたものは、ストップホールを空けた後の繰り返し数が約57万回で破断に至り、疲労試験条件を、最大引張応力(公称応力)Fmax=120MPa、最小引張応力Fmin=0MPaとしたものは、ストップホールを空けた後の繰り返し数が約15万回で破断に至った。
これに対して、実施例Aの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、繰り返し数が約180万回で破断に至った。実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、1体が約150万回で破断に至り、他の1体が500万回以上経過後でも、孔52の中心からの一方の疲労亀裂の長さが疲労亀裂進展抑制処理前と略同じであった。
また、実施例、実施例A及びBの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片について疲労試験後に鋲周りの外観観察を行ったところ、鋲を圧入した穴18a、18bの周りからの疲労亀裂発生は認められなかった。
この疲労試験結果から、実施例、実施例A及び実施例Bの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、比較例における疲労亀裂進展抑制処理をしていない疲労試験片、比較例Aのストップホールによる疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片に対して疲労亀裂の進展が抑制されていることが明らかとなった。
したがって、圧入体である鋲を圧入するための穴を、疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方、例えば、穴の中心が、疲労亀裂の先端における亀裂方向と直交する方向から疲労亀裂側に位置するように設けることで、疲労亀裂の進展を抑制できることがわかった。
次に、テーパピンを用いて圧入した場合における疲労亀裂進展抑制処理の有効性について評価した。
まず、テーパピンを用いて圧入した実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理について説明する。実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理には、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた図10に示す疲労亀裂を導入した疲労試験片50と同じ形状(幅100mm、長さ600mm、厚み9mmの矩形状試験片)で、同じ材質(軟鋼 JIS SS400、SM490等)のものを使用した。
また、疲労亀裂の導入方法については、疲労亀裂を導入するときの繰返し引張応力Fの最大引張応力(公称応力)をFmax=120MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとした以外は、上記の実施例の疲労亀裂進展抑制処理に用いた疲労試験片50と同じ方法で疲労亀裂の導入を行った。
すなわち、図10に示す疲労試験片50と同様に、放電加工によりスリット(各スリットの長さは、孔52の中心から4mmの長さとし、一方のスリットの先端から他方のスリットの先端までの長さを8mm)を入れた疲労試験片に疲労試験機により繰返し引張応力Fを作用させて、孔52の中心から各々15mmの長さまで疲労亀裂14を進展させた(一方の疲労亀裂14の先端から他方の疲労亀裂14の先端までの長さが30mm)。
実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理では、テーパピンを圧入する穴をテーパ穴で形成した。図22は、実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理における疲労亀裂14を導入した疲労試験片50に、テーパピンを圧入するためのテーパ穴18cを形成した部位の拡大図である。また、図23は、テーパ穴18cの形状を示す断面図である。
疲労亀裂14を導入した疲労試験片50にテーパピンドリルで穿孔してテーパ穴18cを形成した。実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理では、テーパピンを圧入するテーパ穴18cを、テーパ穴18cの中心と疲労亀裂の先端14bとを結ぶ直線54が疲労亀裂14の亀裂方向と直交するように形成した。すなわち、テーパ穴18cの中心は、疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向と直交する方向54の直線上に位置している。テーパ穴18cの周縁と疲労亀裂の先端14bとの間の最短距離を1mmとし、テーパ穴18cの中心から疲労亀裂の先端14bに垂直に下ろした垂線の長さを約3.5mmとした。また、テーパ穴18cの形状については、大端穴径を5.36mmとし、小端穴径を5.00mmとした。
孔52に対して一方の疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して側方と、他方の疲労亀裂の先端14bにおける亀裂方向に対して側方とにテーパ穴18cを設けることにより、合計2つのテーパ穴18cを形成した。
次に、テーパピンをテーパ穴18cにハンマで圧入した。図24は、テーパピンの形状を示す断面図である。テーパピンについては、合金工具鋼SKD11で円錐形状に形成した。テーパピンの形状については、大端部の直径を6.06mmとし、小端部の直径を5.18mmとし、長さを22.0mmとした。なお、実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片については1体作製した。
疲労試験を行う前に、テーパピンを圧入したときの疲労亀裂14の先端部14aへの影響について、有限要素法(FEM)により応力解析した。なお、テーパピンについては図24に示す形状とし、テーパ穴についてはテーパピンのピン径より0.5mm小さくなるようにして圧入を模擬して応力解析した。
図25は、テーパピンの圧入に伴う疲労試験片50の長手方向の応力分布を示す図である。疲労亀裂14の先端部14aの周りに作用する応力レベルがグレースケールで示されており、図12と同様に、白色が強調される部位ほど引張応力が大きいことを表しており、黒色が強調される部位ほど圧縮応力が大きいことを表している。疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から圧縮応力が作用しており、疲労亀裂14の先端部14aの開口が潰されていることを確認した。
更に、テーパピンの圧入後に疲労試験片50の長手方向に一様な引張応力を作用させたときの応力分布について有限要素法(FEM)により応力解析した。図26は、テーパピンの圧入後に疲労試験片50に一様な引張応力を作用させたときの疲労試験片50の長手方向の応力分布を示す図である。疲労試験片50の長手方向に一様に作用させる引張応力は、公称応力で150MPaとした。疲労亀裂14の先端部14aの周りに作用する応力レベルがグレースケールで示されており、図12と同様に、白色が強調される部位ほど引張応力が大きいことを表しており、黒色が強調される部位ほど圧縮応力が大きいことを表している。
疲労試験片50に一様な引張応力を作用させた場合でも、疲労亀裂14の先端部14aに、亀裂方向に対して側方から作用する圧縮応力が残存しており、疲労亀裂14の先端部14aの開口が潰されて閉口したままの状態であることを確認した。
実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片について室温大気中で疲労試験を行った。実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理を行った疲労試験片の疲労試験条件については、最大引張応力(公称応力)をFmax=120MPaとし、最小引張応力をFmin=0MPaとした。疲労試験の周波数については、5Hzとした。また、疲労亀裂の長さについては、クラックゲージで測定した。
図27は、疲労試験結果を示すグラフである。図26のグラフでは、横軸に繰り返し数(N)を取り、縦軸に孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を取り、実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータを黒丸でプロットした。
なお、図27のグラフ中には、疲労亀裂進展抑制処理前における疲労亀裂の導入時のデータについても合わせて記載した。実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、上述したように、予め孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を15mmまで進展させた後(図27のグラフにおいて、実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では繰り返し数が約100万回のAの時点)、疲労試験機から疲労試験片を一度外して上記の実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理を行い、再び疲労試験機に疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片を取り付けて疲労試験を行っている。図27のグラフにおいて、疲労亀裂進展抑制処理前のデータについては点線で表しており、疲労亀裂進展抑制処理後のデータについては実線で表している。
実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片では、繰り返し数が約500万回経過後でも、孔52の中心からの一方の疲労亀裂の長さが疲労亀裂進展抑制処理前と略同じであった。そこで、繰り返し数が約500万回経過後のBの時点で、最大引張応力(公称応力)をFmax=150MPaに変更して疲労試験を継続したところ、更に約227万回経過後に破断に至った。このように、圧入体としてテーパピンを用いた場合でも、疲労亀裂の進展を抑制できることがわかった。
本発明は、繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材において、疲労亀裂の先端部に、亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させることが可能となり、金属部材の疲労亀裂進展を抑制できることから、橋梁、船舶、クレーン等に用いられる金属部材に有用なものである。
図27は、疲労試験結果を示すグラフである。図27のグラフでは、横軸に繰り返し数(N)を取り、縦軸に孔52の中心からの一方の疲労亀裂長さ(mm)を取り、実施例Cの疲労亀裂進展抑制処理した疲労試験片のデータを黒丸でプロットした。
Claims (14)
- 金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体に、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方に穴を形成する穴形成工程と、
前記金属部材本体より剛性が高く、前記穴より外形が大きい圧入体を前記穴に圧入し、前記疲労亀裂の先端部に、前記亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させる圧入工程と、
を備えることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1に記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記穴形成工程は、前記穴が、前記穴の中心と前記疲労亀裂の先端とを結ぶ直線が前記亀裂方向と直交するように形成されることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1に記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端部の応力集中により生じる応力集中領域を予め求め、前記応力集中領域を除く位置に前記穴を形成することを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項3に記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端部において、前記亀裂方向とのなす角度θとなる方向と、亀裂方向とにより挟まれた位置に、前記穴を形成すると共に、前記角度θを応力解析で求めることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項4に記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記角度θは、前記亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合に、55度であることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1から5のいずれか1つに記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記穴形成工程は、前記圧入体を前記穴に圧入したときに、前記穴と前記疲労亀裂の先端部とが連通することを防止するために、前記穴の周縁と前記疲労亀裂の先端部との間の最短距離が1mm以上となる位置に前記穴を形成することを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1から5のいずれか1つに記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記穴形成工程は、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して直交方向の対称となる位置に前記穴を各々形成することを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1から5のいずれか1つに記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記疲労亀裂は、前記金属部材本体の厚み方向に貫通しており、
前記穴は、前記金属部材本体の厚み方向に貫通して形成され、
前記圧入体は、前記穴の長さと同じかまたは前記穴の長さより長く形成されていることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 請求項1から5のいずれか1つに記載の金属部材の疲労亀裂進展抑制方法であって、
前記圧入体は、前記穴に圧入される圧入部と、前記圧入部の一端側に設けられ、前記圧入部の外形よりも大きい頭部と、を有し、
前記圧入体の頭部には、鍔、ネジまたは溝が設けられていることを特徴とする金属部材の疲労亀裂進展抑制方法。 - 疲労亀裂進展抑制された金属部材であって、
繰返し引張応力が作用して疲労亀裂が生じた金属部材本体に形成され、前記疲労亀裂の先端部の亀裂方向に対して側方に設けられる穴と、
前記金属部材本体より剛性が高く、前記穴より外形が大きく、前記穴に圧入され、前記疲労亀裂の先端部に、前記亀裂方向に対して側方から圧縮応力を作用させる圧入体と、
を備えることを特徴とする疲労亀裂進展抑制された金属部材。 - 請求項10に記載の疲労亀裂進展抑制された金属部材であって、
前記穴は、前記穴の中心と前記疲労亀裂の先端とを結ぶ直線が前記亀裂方向と直交するように形成されていることを特徴とする疲労亀裂進展抑制された金属部材。 - 請求項10に記載の疲労亀裂進展抑制された金属部材であって、
前記穴は、前記疲労亀裂の先端部の応力集中により生じる応力集中領域を除く位置に形成されていることを特徴とする疲労亀裂進展抑制された金属部材。 - 請求項12に記載の疲労亀裂進展抑制された金属部材であって、
前記穴は、前記疲労亀裂の先端部において、前記亀裂方向とのなす角度θとなる方向と、亀裂方向とにより挟まれた位置に形成されていると共に、前記角度θが応力解析で求められていることを特徴とする疲労亀裂進展抑制された金属部材。 - 請求項13に記載の疲労亀裂進展抑制された金属部材であって、
前記角度θは、前記亀裂方向に対して直交方向に一様な引張応力を作用させた場合に、55度であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制された金属部材。
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