本発明は、無線通信に使用されるアンテナおよび無線通信装置に関する。
近年、医療、ヘルスケア等の用途において、比較的狭いエリアで近距離無線通信を行うためのWBAN(Wireless Body Area Network)が注目されている。WBANは生体モニタ用センサやIC(Integrated Circuit)等が内蔵されている無線通信装置をユーザーが携帯または装着して通信を行うためのネットワークである。この場合、WBANは、生体情報などのデータを収集・伝送することによって、リアルタイム性と効率性の向上を目的として使用される。ここで、生体情報は、例えば、ユーザーの体温、脈拍、血圧等の情報である。
図32は、WBANシステム構成の一例を示す図である。
図32に示されるWBANシステムでは、人体近傍ネットワークNW10内において、センサノード501とマスタノード502とが通信を行う。センサノード501およびマスタノード502の各々は無線通信装置である。センサノード501およびマスタノード502の各々は、人体(ユーザー)の各部に装着される。各センサノード501は、生体情報を取得し、該生体情報を、マスタノード502へ送信する。
マスタノード502は、各センサノード501から生体情報を受信する。
マスタノード502は、外部機器500と通信を行う。マスタノード502は、各マスタノード502から受信した生体情報を、外部機器500へ送信する。
外部機器500は、受信した生体情報を元に、リアルタイムにユーザーへ健康状態の通知を行う。また、外部機器500は、病院などの医療機関へ生体情報を通知する。これにより、ユーザーの病気の早期発見などに役立てる。
なお、マスタノード502を利用せず、人体(ユーザー)の各部に装着されている各センサノード501が直接、外部機器500と通信を行ってもよい。
従来の近距離無線通信を利用するシステムには、RFID(Radio Frequency Identification)システムがある。RFIDシステムには、電波を用いて改札清算や入退場管理などのデータの記録や読み出しを行うICカードシステム、荷札や商品タグを用いた商品物流システムなどがある。つまり、RFIDシステムは、現在多方面で利用されている。
これらのRFIDシステムで用いられる無線通信装置に搭載されるアンテナとして、平面としてのハウジング上に形成された複数の線上導体から構成されるアンテナ(以下、従来アンテナという)が、特許文献1に開示されている。
しかしながら、従来アンテナは平面上に構成される。すなわち、従来アンテナの形状は、平面形状である。そのため、例えば、従来アンテナに対し垂直な面における、従来アンテナから放射される電波の指向性の偏りは大きい。つまり、従来アンテナでは、従来アンテナに対する面の位置によっては、電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在する。
ここで、従来アンテナが、WBANシステムで使われたとする。この場合、図33(a)のように、ユーザー毎に、無線通信装置(センサノード501、マスタノード502)の貼り付け位置が異なる。また、図33(b)のように、ユーザー毎に、無線通信装置(センサノード501、マスタノード502)の装着向きが変わったりする。また、図33(c)のように、ユーザーの動きにより、無線通信装置(センサノード501)の向きが変わったりする。
したがって、アンテナの指向性が3次元的に変化し、ユーザーの姿勢や動きによっては通信が途切れるという可能性がある。これは、3次元空間のある平面において、従来アンテナから放射される電波の指向性の偏りが大きいことが原因である。すなわち、従来アンテナでは、従来アンテナに対する面の位置によっては、電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在することが原因である。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナを提供することである。
上述の課題を解決するために、この発明のある局面に従うアンテナは、無線通信に使用される。アンテナは、接地される平面状の平面導体と、少なくとも第1線状導体、第2線状導体および第3線状導体が一体形成される立体線状導体とを備える。前記第1線状導体は、前記平面導体の主面側に設けられ、かつ、前記主面に対し垂直に設けられる。前記第2線状導体は、前記主面側に設けられ、かつ、前記主面と平行であり、前記第3線状導体は、前記主面側に設けられ、かつ、前記主面と平行であり、かつ、前記第2線状導体に対し垂直に設けられ、前記第2線状導体の一端と前記第3線状導体の一端とは電気的に接続され、前記平面導体には、前記無線通信に使用される高周波電流が外部から供給される給電点が、前記平面導体と電気的に非接続となるように設けられ、前記給電点は、前記立体線状導体の前記第1線状導体の一端と電気的に接続され、前記立体線状導体には前記高周波電流が流れ、前記立体線状導体に前記高周波電流が流れることにより前記平面導体には電流が流れる。x軸、y軸およびz軸の各々が互いに直交する3次元座標系において、前記平面導体の主面が前記3次元座標系のz−y平面と平行であるとし、前記x軸に沿った2つの方向の一方を+x方向とし、前記x軸に沿った2つの方向の他方を−x方向とし、前記y軸に沿った2つの方向の一方を+y方向とし、前記y軸に沿った2つの方向の他方を−y方向とし、前記z軸に沿った2つの方向の一方を+z方向とし、前記z軸に沿った2つの方向の他方を−z方向とし、前記立体線状導体の前記x軸方向の長さをLxとし、前記立体線状導体の前記y軸方向の長さをLyとし、前記平面導体の前記z軸方向の長さをLz1とし、前記立体線状導体の前記z軸方向の長さをLz2とし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち前記+x方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIxとし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち前記+y方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIyとし、前記平面導体に流れる電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz1とし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz2とし、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、Mx=My=Mzの関係式が満たされる。
すなわち、アンテナは、平面状の平面導体と、少なくとも第1線状導体、第2線状導体および第3線状導体が一体形成される立体線状導体とを備える。第1線状導体は、前記平面導体の主面に対し垂直に設けられる。第2線状導体は、前記主面と平行である。第3線状導体は、前記主面と平行であり、かつ、前記第2線状導体に対し垂直に設けられる。
また、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナが構成される。
本願発明者は、シミュレーションおよび試作品の測定により、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように構成されたアンテナは、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナであることを確認した。
したがって、当該アンテナは、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナである。
また、好ましくは、前記平面導体の形状は、四角形であり、前記給電点は、前記平面導体の角の近傍に設けられる。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および第4線状導体が一体形成されており、前記第4線状導体は、前記主面側に設けられ、前記第4線状導体は、前記第1線状導体と平行であり、前記第4線状導体の長さは、前記第1線状導体の長さと同じであり、前記第2線状導体の他端と前記平面導体とは、前記第4線状導体により電気的に接続される。
また、好ましくは、前記平面導体の前記z軸方向の長さおよび前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および前記第4線状導体の各々の長さは、前記高周波電流の周波数の波長の1/4以下である。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および前記第4線状導体と、該第3線状導体と電気的に接続される第5線状導体とが一体形成されており、前記第5線状導体は、前記主面側に設けられる。
また、好ましくは、前記第2線状導体の長さは、前記平面導体の前記y軸方向の長さ以下であり、前記第3線状導体の長さは、前記平面導体の前記z軸方向の長さ以下である。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体と、前記平面導体の主面と反対側に設けられる第6線状導体とが一体形成されており、前記第6線状導体は、該第6線状導体および前記第1線状導体が同一直線上に並ぶように設けられ、前記給電点には、前記第6線状導体の一端が電気的に接続され、前記給電点に電気的に接続される前記第1線状導体の一端と、前記給電点に電気的に接続される前記第6線状導体の一端とは電気的に接続される。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つには、ローディングコイルが挿入される。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つの形状は、メアンダ形状である。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つは、ローディングキャパシタと接続される。
また、好ましくは、前記平面導体には、さらに、スリットが設けられる。
また、好ましくは、前記アンテナの入力インピーダンスおよび出力インピーダンスは、外部の整合回路により整合される。
この発明の他の局面に従う無線通信装置は、前記アンテナを利用して無線通信を行う。
本発明により、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナを実現することができる。
図1は、第1の実施の形態における無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2は、3次元座標系を示す図である。
図3は、第1の実施の形態におけるアンテナの構成を示す図である。
図4は、平面導体の形成場所を示す図である。
図5は、給電領域を説明するための図である。
図6は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図7は、各電界の放射特性を示す図である。
図8は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図9は、各電界の放射特性を示す図である。
図10は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図11は、各電界の放射特性を示す図である。
図12は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図13は、各電界の放射特性を示す図である。
図14は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図15は、各電界の放射特性を示す図である。
図16は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図17は、各電界の放射特性を示す図である。
図18は、電界の放射特性を示す図である。
図19は、比較アンテナの構成を示す図である。
図20は、電界の放射特性を示す図である。
図21は、アンテナの構成を示す図である。
図22は、アンテナの構成を示す図である。
図23は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナの構成を示す図である。
図24は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナの構成を示す図である。
図25は、第1の実施の形態の変形例2におけるアンテナの構成を示す図である。
図26は、第1の実施の形態の変形例3におけるアンテナの構成を示す図である。
図27は、第1の実施の形態の変形例4におけるアンテナの構成を示す図である。
図28は、第1の実施の形態の変形例5におけるアンテナの構成を示す図である。
図29は、第1の実施の形態の変形例6におけるアンテナの構成を示す図である。
図30は、第1の実施の形態の変形例7におけるアンテナの構成を示す図である。
図31は、無線通信装置に含まれる整合回路を示す図である。
図32は、WBANシステム構成の一例を示す図である。
図33は、WBANシステムにおける無線通信装置の使用例を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は行わない場合がある。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における無線通信装置1000の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、無線通信装置1000は、無線IC(Integrated Circuit)20と、給電線L10と、アンテナ200とを備える。
詳細は後述するが、無線IC20は、給電線L10により、アンテナ200と電気的に接続される。無線IC20は、無線通信に使用する高周波電流(電力)を、給電線L10を介してアンテナ200へ供給する。
ここで、本明細書における3次元座標系について説明する。
図2は、3次元座標系を示す図である。
図2に示されるように、3次元座標系では、x軸、y軸およびz軸の各々が互いに直交する。x軸に沿った2つの方向の一方を+x方向とし、x軸に沿った2つの方向の他方を−x方向とする。また、y軸に沿った2つの方向の一方を+y方向とし、y軸に沿った2つの方向の他方を−y方向とする。また、前記z軸に沿った2つの方向の一方を+z方向とし、z軸に沿った2つの方向の他方を−z方向とする。
以下においては、x軸とy軸とを含む平面を、x−y平面という。また、以下においては、z軸とx軸とを含む平面を、z−x平面という。また、以下においては、z軸とy軸とを含む平面を、z−y平面という。
図3は、第1の実施の形態におけるアンテナ200の構成を示す図である。
図3(a)は、アンテナ200の斜視図である。図3(b)は、アンテナ200を、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200は、平面導体M20と、立体線状導体201を備える。
平面導体M20の形状は、平面状である。また、平面導体M20の形状は、四角形である。なお、平面導体M20の形状は、四角形に限定されず、他の形状(例えば、六角形)であってもよい。平面導体M20は接地されている。
図4に示されるように、平面導体M20は、基板SB20上に形成される。
平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと同じである。なお、平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと異なってもよい。
再び、図3を参照して、立体線状導体201は、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240は、それぞれ、第1線状導体、第2線状導体、第3線状導体および第4線状導体である。
線状導体210,220,230,240の各々は、直線状の導体である。なお、線状導体210,220,230,240の各々は、直線状の導体に限定されず、他の形状の導体であってもよい。線状導体210,220,230,240の各々は、すず、銅などの金属材料から構成される。
線状導体210,220,230,240の各々は、平面導体M20の主面側に設けられる。平面導体M20の主面とは、図4の平面導体M20において、基板SB20が接する面と反対側の面である。
線状導体210は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。線状導体220,230の各々は、平面導体M20の主面と平行である。線状導体230は、線状導体220に対し垂直に設けられる。線状導体230の一端は、接点N10において、線状導体220と電気的に接続される。線状導体230は、接点N10から−z方向に延在するように設けられる。
線状導体240の長さは、線状導体210の長さと同じである。線状導体240は、線状導体210と平行である。
線状導体220の長さは、平面導体M20のy軸方向の長さ以下である。また、線状導体230の長さは、平面導体M20のz軸方向の長さ以下である。
線状導体210,220,230,240の各々の太さは、ほぼ同一である。線状導体220,230の各々の半径は、線状導体210の長さよりも短いとする。すなわち、線状導体220,230の各々の太さは、線状導体220,230が、平面導体M20に接しないような太さである。
線状導体240の一端は、平面導体M20と電気的に接続される。前述したように、線状導体220の一端と線状導体230の一端とは電気的に接続される。線状導体220の他端と平面導体M20とは、線状導体240により電気的に接続される。
また、図3(b)に示されるように、線状導体220、230の各々は、平面導体M20の端部の上方に配置される。なお、線状導体220、230の各々は、平面導体M20の内部の上方に配置されてもよい。
ここで、平面導体M20の主面が3次元座標系のz−y平面と平行であるとする。この場合、線状導体210,240は、3次元座標系のx軸に平行である。また、線状導体220は、3次元座標系のy軸に平行である。また、線状導体230は、3次元座標系のz軸に平行である。
図3には、後述する給電点PT10を含む給電領域P10が示される。
図5は、給電領域P10を説明するための図である。
図5(a)は、給電領域P10付近の構成を詳細に示す図である。
給電領域P10は、平面導体M20の主面上に設けられる。給電領域P10は、給電点PT10を含む。給電点PT10は、平面導体M20の主面上に設けられる。給電点PT10は、絶縁膜PX20により、平面導体M20と電気的に非接続とされる。すなわち、平面導体M20には、給電点PT10が、平面導体M20と電気的に非接続となるように設けられる。
給電点PT10は、図3に示されるように、平面導体M20の角の近傍に設けられる。なお、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられなくてもよい。
ここで、給電線L10の詳細な構成について説明する。
図5(b)は、給電線L10の詳細な構成を示す図である。
図5(b)に示されるように、給電線L10は、電源線PL10を含む。電源線PL10は、高周波電流を伝達する導電線である。電源線PL10は、絶縁膜PX10により覆われる。絶縁膜PX10の表面には、グランド膜G10が形成される。すなわち、電源線PL10と、グランド膜G10とは電気的に非接続とされる。また、グランド膜G10は接地される。
給電点PT10は、給電線L10の電源線PL10と電気的に接続される。平面導体M20に設けられる給電領域P10の境界は、グランド膜G10と電気的に接続される。電源線PL10およびグランド膜G10は、無線IC20と電気的に接続される。
無線IC20は、無線通信に使用する高周波電流(電力)を、電源線PL10を介して給電点PT10へ供給する。すなわち、給電点PT10には、無線通信に使用される高周波電流が外部から供給される。給電点PT10は、立体線状導体201の線状導体210の一端と電気的に接続される。
これにより、立体線状導体201には、給電点PT10に供給される高周波電流が流れる。この場合、立体線状導体201を含むアンテナ200から、電波が放射される。平面導体M20は、当該電波の放射のために有効に利用される。
すなわち、無線IC20は、アンテナ200を利用して無線通信を行う。言い換えれば、無線通信装置1000は、アンテナ200を利用して無線通信を行う。
また、立体線状導体201に高周波電流が流れることにより、平面導体M20には給電点PT10に向かって電流が流れる。
なお、立体線状導体201が外部から電波を受信した場合、当該電波は高周波電流となり、該高周波電流は、給電点PT10および電源線PL10を介して、無線IC20へ流れる。
また、線状導体210の他端は、線状導体220における接点N11と電気的に接続される。
平面導体M20のz軸方向の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。また、線状導体210、220,230,240の各々の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。
ここで、アンテナ200から電波を放射するために、給電点PT10に供給される高周波電流が立体線状導体201に流れている状態において、以下の定義をする。
平面導体M20の主面が、図2の3次元座標系のz−y平面と平行であるとする。また、立体線状導体201のx軸方向の長さをLxとする。すなわち、線状導体210、240の各々の長さをLxとする。また、立体線状導体201のy軸方向の長さをLyとする。すなわち、線状導体220の長さをLyとする。また、立体線状導体201のz軸方向の長さをLz2とする。すなわち、線状導体230の長さをLz2とする。また、平面導体M20のz軸方向の長さをLz1とする。
さらに、立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+x方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIxとする。立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+y方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIyとする。平面導体M20に流れる電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz1とする。立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz2とする。
また、さらに、Ix×Lxを電磁気モーメントMxと定義する。また、Iy×Lyを電磁気モーメントMyと定義する。Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzと定義する。
この場合、線状導体210には、+x方向に向かって、電流Ix1が流れる。また、この場合、線状導体240には、−x方向に向かって、電流Ix2が流れる。電流Ixは、Ix1+(−Ix2)により算出される電流である。
また、この場合、線状導体220には、接点N11から+y方向へ電流Iy1が流れる。また、この場合、線状導体220には、接点N11から−y方向へ電流Iy2が流れる。電流Iyは、Iy1+(−Iy2)により算出される電流である。
また、この場合、線状導体230には、−z方向に向かって、電流Iz2が流れる。すなわち、線状導体230に流れる電流は、+z方向を正とすると、−電流Iz2と示される。
本願発明者らは、電磁気モーメントMx,My,Mzにおいて、以下の式(1)が満たされることにより、3次元空間における全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現できるという仮説(以下、仮説Aという)をたてた。
Mx=My=Mz ・・・式(1)
なお、電磁気モーメントMx,My,Mzは、それぞれ、以下の式(2),(3),(4)で定義される。
Mx=Ix×Lx ・・・式(2)
My=Iy×Ly ・・・式(3)
Mz=Iz1×Lz1−Iz2×Lz2 ・・・式(4)
すなわち、本願発明者らは、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナのサイズおよび形状を設計することにより、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現できるという仮説Aをたてた。ここで、直交する各平面は、x−y平面、z−y平面およびz−x平面である。そして、当該仮説Aの正当性を立証するために、コンピュータで動作する電磁界シミュレータを使用してシミュレーションを行った。
ここで、シミュレーション対象のアンテナは、図3のアンテナ200である。シミュレーションの条件(以下、条件Aという)は以下のとおりである。線状導体210、240の各々の長さは15mmである。線状導体220の長さは40mmである。線状導体230の長さは38mmである。平面導体M20のy軸方向およびz軸方向の長さは40mmである。給電点PT10に供給される高周波電流の周波数は950MHzである。
以下においては、条件AにおけるシミュレーションをシミュレーションAという。
図6は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図6の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
以下においては、電界をEと表記する。また、以下においては、電界Eのθ成分をEθと表記する。ここで、θとは、図3に示されるように、z軸と電界の向きとの成す角度である。また、以下においては、電界Eのφ成分をEφと表記する。ここで、φとは、図3に示されるように、x軸と電界の向きとの成す角度である。
特性線Lθ10は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ10は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE10は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。電界Eは、以下の式(5)で算出される値である。
図7は、図6に示される各電界の放射特性を示す図である。図7において、縦軸は各特性線の振幅(利得)を示し、横軸は角度を示す。
図7の特性線LE11,Lθ11,Lφ11は、それぞれ、特性線LE10,Lθ10,Lφ10に対応する。
図7の特性線LE11の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図6および図7の結果から、x−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図8は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図8の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ20は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ20は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE20は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図9は、図8に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図9の特性線LE21,Lθ21,Lφ21は、それぞれ、特性線LE20,Lθ20,Lφ20に対応する。
図9の特性線LE21の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図8および図9の結果から、z−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図10は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図10の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ30は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ30は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE30は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図11は、図10に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図11の特性線LE31,Lθ31,Lφ31は、それぞれ、特性線LE30,Lθ30,Lφ30に対応する。
図11の特性線LE31の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図10および図11の結果から、z−x平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
次に、式(1)の関係を満たさない、比較対象としてのアンテナ(以下、比較対象アンテナという)に対し、電磁界シミュレータを使用してシミュレーションを行った結果について説明する。
以下においては、比較対象アンテナに対し行ったシミュレーションを、シミュレーションJという。シミュレーションJの条件(以下、条件J)は、前述の条件Aと比較して、平面導体M20のz軸方向の長さが70mmである点のみが異なる。それ以外の条件は、条件Aと同じである。
図12は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図12の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ40は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ40は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE40は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図13は、図12に示される各電界の放射特性を示す図である。縦軸および横軸は、図7と同じである。
図13の特性線LE41,Lθ41,Lφ41は、それぞれ、特性線LE40,Lθ40,Lφ40に対応する。
図13の特性線LE41の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図12および図13の結果から、x−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図14は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図14の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ50は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ50は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE50は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図15は、図14に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図15の特性線LE51,Lθ51,Lφ51は、それぞれ、特性線LE50,Lθ50,Lφ50に対応する。
図15の特性線LE51の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dBより大きい。
すなわち、図14および図15の結果から、z−y平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
図16は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図16の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ60は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ60は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE60は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図17は、図16に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図17の特性線LE61,Lθ61,Lφ61は、それぞれ、特性線LE60,Lθ60,Lφ60に対応する。
図17の特性線LE61の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dBより大きい。
すなわち、図16および図17の結果から、z−x平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
以上のシミュレーション結果から、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナのサイズおよび形状を設計することにより、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナが得られると推定できる。
本願発明者らは、式(1)および前述の条件Aを満たすアンテナの試作品(以下、試作アンテナAという)を作成し、実際の電界の放射特性を測定した。試作アンテナAは、図3のアンテナ200である。
図18は、試作アンテナAから放射される電界の放射特性を示す図である。
図18(a)の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ110は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ110は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE110は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE110の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(a)から、x−y平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図18(b)の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ120は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ120は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE120は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE120の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(b)から、z−y平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図18(c)の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ130は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ130は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE130は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE130の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(c)から、z−x平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
また、本願発明者らは、式(1)を満たさないアンテナ(以下、比較アンテナ900という)を作成し、実際の電界の放射特性を測定した。比較アンテナ900は、前述の条件Jを満たすように形成されたアンテナである。
図19は、比較アンテナ900の構成を示す図である。
図19に示されるように、比較アンテナ900は、図3のアンテナと比較して、平面導体M20のz軸方向の長さのみが異なる。それ以外の構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。平面導体M20のz軸方向の長さLz1は、一例として、70mmであるとする。
Lz1が70mmである場合、すなわち、Lz1が大きくなった場合、式(4)により、電磁気モーメントMzが、電磁気モーメントMx,Myに対して大きくなる。その結果、式(1)は満たされない。すなわち、比較アンテナ900において、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々は等しくない。
図20は、比較アンテナ900から放射される電界の放射特性を示す図である。
図20(a)の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。特性線LE210は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。
特性線LE210の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図20(a)から、x−y平面では、全方位において比較アンテナ900から放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図20(b)の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
図20(b)から、z−y平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
図20(c)の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
図20から、z−x平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
つまり、図18により、式(1)および前述の条件Aを満たす試作アンテナAは、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナと言える。言い換えれば、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように設計されたアンテナは、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。したがって、上記仮説Aは、正しいことが証明された。
以上により、本実施の形態におけるアンテナ200は、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。すなわち、アンテナ200は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。すなわち、アンテナ200は、3次元空間における直交する各平面において指向性の偏りが小さいアンテナである。
したがって、アンテナ200を備える無線通信装置1000が、人体上や人体から離れた場所で、どの位置にどの向きに設置されても安定した通信を行うことができる。
すなわち、アンテナ200を備える無線通信装置1000は、人体における装着位置、向き、人の動きに関わらず安定した通信を行うことができる。つまり、アンテナ200は、人体に装着される複数の無線通信装置間で通信が行われる場合、各無線通信装置に使用される場合に特に有効である。
また、人体に装着する無線通信装置と、人体から離れた無線通信装置とが通信を行う場合においても、各無線通信装置に使用される場合に特に有効である。
さらに、平面導体M20を、電波(電界)の放射に積極的に利用するため、アンテナ200を備える無線通信装置1000を小型化することができる。
なお、図3の立体線状導体201において、給電点PT10に近い部分ほど流れる電流が大きくなる。そのため、各電磁気モーメントに対応する導体の長さは小さくすることができる。一方、立体線状導体201において、給電点PT10から遠い部分(例えば、線状導体230)に流れる電流は、給電点PT10に近い部分(例えば、線状導体210)に流れる電流より小さい。
線状導体210と線状導体240との距離は、アンテナ200の入力インピーダンスが、アンテナ200に流れる、無線通信に使用される高周波電流の周波数に対して50Ωとなる距離であることが望ましい。アンテナ200の入力インピーダンスは、給電点PT10からアンテナ200側を見た場合のインピーダンスである。
しかしながら、大抵の場合、アンテナ形状等の影響から、アンテナ200の入力インピーダンスは50Ωにはならない。そのため、図示しない整合回路が使用される。当該整合回路により、アンテナ200の入力インピーダンスは50Ωになるように、インピーダンス整合が行われる。整合回路は、無線通信装置1000に含まれる。
前述したように、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられる。これにより、線状導体220、線状導体230の長さを有効に確保することができる。そのため、アンテナ200を備える無線通信装置1000を小型化することができる。
また、前述したように、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の各々の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。
アンテナ200は、給電点PT10を中心として波長λの高周波電流を励起する。平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の長さがλ/4以上となると、平面導体M20上に正と負の振幅が同時に発生する。そのため放射特性の劣化を招く。
したがって、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の長さを、λ/4以下とする。これにより、アンテナ200の放射特性の劣化を防ぎ、アンテナ200の性能を向上することができる。
なお、図3の線状導体230は、接点N10から−z方向に延在するように設けられるとしたがこれに限定されない。線状導体230は、図21(a)および図21(b)に示されるアンテナ200Aのように、接点N10から+z方向に延在するように設けられてもよい。
図21(a)は、アンテナ200Aの斜視図である。図21(b)は、アンテナ200Aを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。アンテナ200Aにおいても、前述したのと同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
この場合、線状導体230には+z方向に電流が流れる。当該電流は、Iz2と表される。
この場合、電磁気モーメントMzは、以下の式(6)で表される。
Mz=Iz1×Lz1+Iz2×Lz2 ・・・式(6)
式(4)および式(6)より、アンテナ200Aにおける電磁気モーメントMzの値は、アンテナ200における電磁気モーメントMzの値より大きいことがわかる。この場合、アンテナ200Aは、アンテナ200よりも、平面導体M20のz軸方向の長さを短くすることができる。
また、前述したように、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられなくてもよい。例えば、図22のアンテナ200Bのように、給電点PT10は、中央付近に配置されてもよい。図22(a)は、アンテナ200Bの斜視図である。図22(b)は、アンテナ200Bを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200Bにおいても、前述したのと同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
<第1の実施の形態の変形例1>
本実施の形態の変形例1における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Cを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図23は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナ200Cの構成を示す図である。
図23(a)は、アンテナ200Cの斜視図である。図23(b)は、アンテナ200Cを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
図23に示されるように、アンテナ200Cは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Cを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Cの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Cは、図3の立体線状導体201と比較して、さらに、線状導体250を含む点が異なる。
立体線状導体201Cは、線状導体210、線状導体220、線状導体230、線状導体240および線状導体250が一体形成された線状導体である。線状導体250は、第5線状導体である。
線状導体250は、直線状の導体である。なお、線状導体250は、直線状の導体に限定されず、他の形状の導体であってもよい。線状導体250は、平面導体M20の主面側に設けられる。
線状導体250の一端は、接点N21において、線状導体230と電気的に接続される。線状導体250は、接点N21から−y方向に延在するように設けられる。
なお、線状導体250は、接点N21から、+y方向,−z方向,±x方向のいずれに延在するように設けられてもよい。
また、図24に示されるアンテナ200Dのように、線状導体250は、x,y,z軸のいずれにも平行とならないように設けられてもよい。図24(a)は、アンテナ200Dの斜視図である。図24(b)は、アンテナ200Dを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200Cおよびアンテナ200Dにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例1によれば、線状導体250により、電波を効率よく放射するのに必要な、立体線状導体201Cにおける電気長を調整することができる。また、さらに、線状導体250により、電磁気モーメントの大きさを柔軟に調整することができる。よって、アンテナ200Cまたはアンテナ200Dを備える無線通信装置1000を小型化できる。また、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
<第1の実施の形態の変形例2>
本実施の形態の変形例2における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Eを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図25は、第1の実施の形態の変形例2におけるアンテナ200Eの構成を示す図である。
図25に示されるように、アンテナ200Eは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Eを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Eの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Eは、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体260が一体形成された線状導体である。すなわち、立体線状導体201Eは、線状導体240を含まない。線状導体260は、第6線状導体である。
線状導体260は、平面導体M20の主面と反対側に設けられる。線状導体260は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。また、線状導体260は、該線状導体260および線状導体210が同一直線上に並ぶように設けられる。
給電領域P10に含まれる給電点PT10には、線状導体260の一端が電気的に接続される。すなわち、給電点PT10に電気的に接続される線状導体210の一端と、給電点PT10に電気的に接続される線状導体260の一端とは電気的に接続される。
アンテナ200Eにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例2によれば、線状導体260により、線状導体210のx軸方向の長さを短くすることができる。その結果、アンテナの柔軟な設計に対応することができる。
なお、線状導体260は線状導体210と同一の金属材料で構成されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例3>
本実施の形態の変形例3における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Fを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図26は、第1の実施の形態の変形例3におけるアンテナ200Fの構成を示す図である。
図26に示されるように、アンテナ200Fは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Fを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Fの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Fは、図3の立体線状導体201と比較して、線状導体220の代わりに線状導体220Fを含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Fの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Fは、線状導体210、線状導体220F、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。
線状導体220Fは、図3の線状導体220の全てまたは一部にローディングコイルL22が挿入された線状導体である。
ローディングコイルL22は、通常、アンテナの電気的な長さが足りない場合、または、意図的にアンテナの物理的な長さを短くしたい場合に、アンテナのリアクタンス成分を無くしてアンテナに効率よく電流を流すために使用される。
ここで、物理的な長さとは、x軸、y軸またはz軸方向に延在する線状導体において、対応する方向の長さである。例えば、x軸方向に沿って延在する線状導体210のx軸方向の長さが、線状導体210の物理的な長さである。
つまり、y軸方向に延在する線状導体220Fの物理的な長さは、線状導体220Fのy軸方向の長さである。
アンテナ200Fにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例3によれば、ローディングコイルL22を用いることにより、立体線状導体201Fの線状導体220Fの電気的な長さを長くすることができ、所望の共振周波数に設定することが可能となる。その結果、アンテナの放射特性を向上させることができる。また、ローディングコイルL22が挿入された線状導体の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、ローディングコイルL22は、線状導体210,230,240のいずれに挿入されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例4>
本実施の形態の変形例4における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Gを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図27は、第1の実施の形態の変形例4におけるアンテナ200Gの構成を示す図である。
図27に示されるように、アンテナ200Gは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Gを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Gの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Gは、図3の立体線状導体201と比較して、線状導体220の代わりに線状導体220Gを含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Gの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Gは、線状導体210、線状導体220G、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。
立体線状導体201Gは、図3の線状導体220の全てまたは一部の形状を、メアンダ形状(ジグザグ形状)としたものである。
メアンダ形状の導体は、通常、アンテナの電気的な長さを保持しつつ、アンテナの小型化を実現することができる。そのため、メアンダ形状の導体は、携帯電話等で使用される小型アンテナに用いられている。
アンテナ200Gにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例4によれば、メアンダ形状の立体線状導体201Gを用いることで、アンテナの電気な長さを長くすることができる。つまり、アンテナの電気な長さを柔軟に調整できる。これにより、当該アンテナにおいて無線通信に使用される高周波電流の周波数を、所望の共振周波数に設定することが可能となる。その結果、アンテナの放射特性を向上させることができる。また、線状導体の形状をメアンダ形状とすることにより、当該線状導体の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、線状導体210,230,240の各々における全てまたは一部の形状を、メアンダ形状としてもよい。
<第1の実施の形態の変形例5>
本実施の形態の変形例5における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Hを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図28は、第1の実施の形態の変形例5におけるアンテナ200Hの構成を示す図である。
図28に示されるように、アンテナ200Hは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Hを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Hの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Hは、図3の立体線状導体201と比較して、さらに線状導体270を含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Hの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
線状導体270は、線状導体210と平行に設けられる。線状導体270は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。
立体線状導体201Hは、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240および線状導体270が一体形成された線状導体である。
線状導体270には、ローディングキャパシタC22が挿入される。
ローディングキャパシタC22は、通常、アンテナの電気的な長さが足りない場合、または、意図的にアンテナの物理的な長さを短くしたい場合に、アンテナのリアクタンス成分を無くしてアンテナに効率よく電流を流すために使用される。
線状導体220および線状導体230の接点N10と、平面導体M20とは、線状導体270により接続される。つまり、ローディングキャパシタC22は、線状導体220および線状導体230の接点N10と、平面導体M20との間に設けられる。すなわち、線状導体220および線状導体230は、ローディングキャパシタC22と電気的に接続される。
アンテナ200Hにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例5によれば、ローディングキャパシタC22を用いることにより、ローディングキャパシタC22と電気的に接続される線状導体220の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、ローディングキャパシタC22は、線状導体210,230,240のいずれに挿入されてもよい。すなわち、ローディングキャパシタC22は、線状導体210,230,240のいずれと電気的に接続されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例6>
図29は、第1の実施の形態の変形例6におけるアンテナ200の構成を示す図である。なお、図29には、説明のために、アンテナ200に含まれない基板SB20が示される。
図29に示されるように、アンテナ200に含まれる平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと異なる。
直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現させるためには、式(1)〜式(4)を満たすように、アンテナのサイズおよび形状を決定すればよい。したがって、平面導体M20の平面のサイズが、基板SB20の平面のサイズと異なっていても、アンテナのサイズおよび形状が式(1)〜式(4)を満たすようになっていればよいため、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
<第1の実施の形態の変形例7>
本実施の形態の変形例7における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Jを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図30は、第1の実施の形態の変形例7におけるアンテナ200Jの構成を示す図である。
図30に示されるように、アンテナ200Jは、アンテナ200と比較して、平面導体M20に、スリットSL22が設けられる点が異なる。それ以外のアンテナ200Jの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
スリットSL22の形状およびサイズを調整することにより、平面導体M20に流れる電流量を調整することができる。
なお、アンテナ200Jにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。すなわち、アンテナ200Jでは、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体230の長さが規定される。これにより、平面導体M20にスリットSL22を設けることにより、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
(整合回路)
図31は、無線通信装置1000に含まれる前述した整合回路300を示す図である。整合回路300は、基板SB20に実装される。
図31に示されるように、整合回路300は、アンテナ200と無線IC20とを接続する給電線L10において、アンテナ200の近傍に設けられる。
整合回路300は、アンテナ200の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの各々が、50Ωとなるように整合をとる回路である。整合回路300は周知な回路であるので、整合回路300の詳細な説明は行わない。整合回路300は、例えば、抵抗、インダクタ、キャパシタ等の受動素子から構成される。
アンテナ200の入力インピーダンスは、給電点PT10からアンテナ200側を見た場合のインピーダンスである。アンテナ200の出力インピーダンスは、給電点PT10から無線IC20側を見た場合のインピーダンスである。
以上のように、アンテナ200の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの整合をとることにより、無線IC20から出力された高周波信号が効率よくアンテナ200から放射される。また、アンテナ200が受信した高周波信号を効率よく無線ICへ送信できる。
なお、無線通信装置1000は、図31に示されるアンテナ200の代わりに、前述したアンテナ200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200Jのいずれを備えてもよい。この場合、整合回路300により、無線通信装置1000が備えるアンテナ(例えば、アンテナ200A)の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの整合をとることができる。
以上、本発明におけるアンテナ(例えば、アンテナ200)について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、あるいは異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナとして、利用することができる。
20 無線IC
200,200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200J アンテナ
201,201C,201E,201F、201G,201H 立体線状導体
210,220,220F,220G,230,240,250,260,270 線状導体
300 整合回路
1000 無線通信装置
C22 ローディングキャパシタ
L10 給電線
L22 ローディングコイル
M20 平面導体
P10 給電領域
PT10 給電点
SB20 基板
SL22 スリット
本発明は、無線通信に使用されるアンテナおよび無線通信装置に関する。
近年、医療、ヘルスケア等の用途において、比較的狭いエリアで近距離無線通信を行うためのWBAN(Wireless Body Area Network)が注目されている。WBANは生体モニタ用センサやIC(Integrated Circuit)等が内蔵されている無線通信装置をユーザーが携帯または装着して通信を行うためのネットワークである。この場合、WBANは、生体情報などのデータを収集・伝送することによって、リアルタイム性と効率性の向上を目的として使用される。ここで、生体情報は、例えば、ユーザーの体温、脈拍、血圧等の情報である。
図32は、WBANシステム構成の一例を示す図である。
図32に示されるWBANシステムでは、人体近傍ネットワークNW10内において、センサノード501とマスタノード502とが通信を行う。センサノード501およびマスタノード502の各々は無線通信装置である。センサノード501およびマスタノード502の各々は、人体(ユーザー)の各部に装着される。各センサノード501は、生体情報を取得し、該生体情報を、マスタノード502へ送信する。
マスタノード502は、各センサノード501から生体情報を受信する。
マスタノード502は、外部機器500と通信を行う。マスタノード502は、各マスタノード502から受信した生体情報を、外部機器500へ送信する。
外部機器500は、受信した生体情報を元に、リアルタイムにユーザーへ健康状態の通知を行う。また、外部機器500は、病院などの医療機関へ生体情報を通知する。これにより、ユーザーの病気の早期発見などに役立てる。
なお、マスタノード502を利用せず、人体(ユーザー)の各部に装着されている各センサノード501が直接、外部機器500と通信を行ってもよい。
従来の近距離無線通信を利用するシステムには、RFID(Radio Frequency Identification)システムがある。RFIDシステムには、電波を用いて改札清算や入退場管理などのデータの記録や読み出しを行うICカードシステム、荷札や商品タグを用いた商品物流システムなどがある。つまり、RFIDシステムは、現在多方面で利用されている。
これらのRFIDシステムで用いられる無線通信装置に搭載されるアンテナとして、平面としてのハウジング上に形成された複数の線上導体から構成されるアンテナ(以下、従来アンテナという)が、特許文献1に開示されている。
しかしながら、従来アンテナは平面上に構成される。すなわち、従来アンテナの形状は、平面形状である。そのため、例えば、従来アンテナに対し垂直な面における、従来アンテナから放射される電波の指向性の偏りは大きい。つまり、従来アンテナでは、従来アンテナに対する面の位置によっては、電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在する。
ここで、従来アンテナが、WBANシステムで使われたとする。この場合、図33(a)のように、ユーザー毎に、無線通信装置(センサノード501、マスタノード502)の貼り付け位置が異なる。また、図33(b)のように、ユーザー毎に、無線通信装置(センサノード501、マスタノード502)の装着向きが変わったりする。また、図33(c)のように、ユーザーの動きにより、無線通信装置(センサノード501)の向きが変わったりする。
したがって、アンテナの指向性が3次元的に変化し、ユーザーの姿勢や動きによっては通信が途切れるという可能性がある。これは、3次元空間のある平面において、従来アンテナから放射される電波の指向性の偏りが大きいことが原因である。すなわち、従来アンテナでは、従来アンテナに対する面の位置によっては、電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在することが原因である。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナを提供することである。
上述の課題を解決するために、この発明のある局面に従うアンテナは、無線通信に使用される。アンテナは、接地される平面状の平面導体と、少なくとも第1線状導体、第2線状導体および第3線状導体が一体形成される立体線状導体とを備える。前記第1線状導体は、前記平面導体の主面側に設けられ、かつ、前記主面に対し垂直に設けられる。前記第2線状導体は、前記主面側に設けられ、かつ、前記主面と平行であり、前記第3線状導体は、前記主面側に設けられ、かつ、前記主面と平行であり、かつ、前記第2線状導体に対し垂直に設けられ、前記第2線状導体の一端と前記第3線状導体の一端とは電気的に接続され、前記平面導体には、前記無線通信に使用される高周波電流が外部から供給される給電点が、前記平面導体と電気的に非接続となるように設けられ、前記給電点は、前記立体線状導体の前記第1線状導体の一端と電気的に接続され、前記立体線状導体には前記高周波電流が流れ、前記立体線状導体に前記高周波電流が流れることにより前記平面導体には電流が流れる。x軸、y軸およびz軸の各々が互いに直交する3次元座標系において、前記平面導体の主面が前記3次元座標系のz−y平面と平行であるとし、前記x軸に沿った2つの方向の一方を+x方向とし、前記x軸に沿った2つの方向の他方を−x方向とし、前記y軸に沿った2つの方向の一方を+y方向とし、前記y軸に沿った2つの方向の他方を−y方向とし、前記z軸に沿った2つの方向の一方を+z方向とし、前記z軸に沿った2つの方向の他方を−z方向とし、前記立体線状導体の前記x軸方向の長さをLxとし、前記立体線状導体の前記y軸方向の長さをLyとし、前記平面導体の前記z軸方向の長さをLz1とし、前記立体線状導体の前記z軸方向の長さをLz2とし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち前記+x方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIxとし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち前記+y方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIyとし、前記平面導体に流れる電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz1とし、前記立体線状導体に流れる前記高周波電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz2とし、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、Mx=My=Mzの関係式が満たされる。
すなわち、アンテナは、平面状の平面導体と、少なくとも第1線状導体、第2線状導体および第3線状導体が一体形成される立体線状導体とを備える。第1線状導体は、前記平面導体の主面に対し垂直に設けられる。第2線状導体は、前記主面と平行である。第3線状導体は、前記主面と平行であり、かつ、前記第2線状導体に対し垂直に設けられる。
また、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナが構成される。
本願発明者は、シミュレーションおよび試作品の測定により、Ix×Lxを電磁気モーメントMxとし、Iy×Lyを電磁気モーメントMyとし、Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzとした場合、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように構成されたアンテナは、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナであることを確認した。
したがって、当該アンテナは、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナである。
また、好ましくは、前記平面導体の形状は、四角形であり、前記給電点は、前記平面導体の角の近傍に設けられる。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および第4線状導体が一体形成されており、前記第4線状導体は、前記主面側に設けられ、前記第4線状導体は、前記第1線状導体と平行であり、前記第4線状導体の長さは、前記第1線状導体の長さと同じであり、前記第2線状導体の他端と前記平面導体とは、前記第4線状導体により電気的に接続される。
また、好ましくは、前記平面導体の前記z軸方向の長さおよび前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および前記第4線状導体の各々の長さは、前記高周波電流の周波数の波長の1/4以下である。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体、前記第3線状導体および前記第4線状導体と、該第3線状導体と電気的に接続される第5線状導体とが一体形成されており、前記第5線状導体は、前記主面側に設けられる。
また、好ましくは、前記第2線状導体の長さは、前記平面導体の前記y軸方向の長さ以下であり、前記第3線状導体の長さは、前記平面導体の前記z軸方向の長さ以下である。
また、好ましくは、前記立体線状導体は、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体と、前記平面導体の主面と反対側に設けられる第6線状導体とが一体形成されており、前記第6線状導体は、該第6線状導体および前記第1線状導体が同一直線上に並ぶように設けられ、前記給電点には、前記第6線状導体の一端が電気的に接続され、前記給電点に電気的に接続される前記第1線状導体の一端と、前記給電点に電気的に接続される前記第6線状導体の一端とは電気的に接続される。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つには、ローディングコイルが挿入される。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つの形状は、メアンダ形状である。
また、好ましくは、前記第1線状導体、前記第2線状導体および前記第3線状導体の少なくとも1つは、ローディングキャパシタと接続される。
また、好ましくは、前記平面導体には、さらに、スリットが設けられる。
また、好ましくは、前記アンテナの入力インピーダンスおよび出力インピーダンスは、外部の整合回路により整合される。
この発明の他の局面に従う無線通信装置は、前記アンテナを利用して無線通信を行う。
本発明により、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナを実現することができる。
図1は、第1の実施の形態における無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2は、3次元座標系を示す図である。
図3は、第1の実施の形態におけるアンテナの構成を示す図である。
図4は、平面導体の形成場所を示す図である。
図5は、給電領域を説明するための図である。
図6は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図7は、各電界の放射特性を示す図である。
図8は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図9は、各電界の放射特性を示す図である。
図10は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図11は、各電界の放射特性を示す図である。
図12は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図13は、各電界の放射特性を示す図である。
図14は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図15は、各電界の放射特性を示す図である。
図16は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図17は、各電界の放射特性を示す図である。
図18は、電界の放射特性を示す図である。
図19は、比較アンテナの構成を示す図である。
図20は、電界の放射特性を示す図である。
図21は、アンテナの構成を示す図である。
図22は、アンテナの構成を示す図である。
図23は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナの構成を示す図である。
図24は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナの構成を示す図である。
図25は、第1の実施の形態の変形例2におけるアンテナの構成を示す図である。
図26は、第1の実施の形態の変形例3におけるアンテナの構成を示す図である。
図27は、第1の実施の形態の変形例4におけるアンテナの構成を示す図である。
図28は、第1の実施の形態の変形例5におけるアンテナの構成を示す図である。
図29は、第1の実施の形態の変形例6におけるアンテナの構成を示す図である。
図30は、第1の実施の形態の変形例7におけるアンテナの構成を示す図である。
図31は、無線通信装置に含まれる整合回路を示す図である。
図32は、WBANシステム構成の一例を示す図である。
図33は、WBANシステムにおける無線通信装置の使用例を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は行わない場合がある。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における無線通信装置1000の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、無線通信装置1000は、無線IC(Integrated Circuit)20と、給電線L10と、アンテナ200とを備える。
詳細は後述するが、無線IC20は、給電線L10により、アンテナ200と電気的に接続される。無線IC20は、無線通信に使用する高周波電流(電力)を、給電線L10を介してアンテナ200へ供給する。
ここで、本明細書における3次元座標系について説明する。
図2は、3次元座標系を示す図である。
図2に示されるように、3次元座標系では、x軸、y軸およびz軸の各々が互いに直交する。x軸に沿った2つの方向の一方を+x方向とし、x軸に沿った2つの方向の他方を−x方向とする。また、y軸に沿った2つの方向の一方を+y方向とし、y軸に沿った2つの方向の他方を−y方向とする。また、前記z軸に沿った2つの方向の一方を+z方向とし、z軸に沿った2つの方向の他方を−z方向とする。
以下においては、x軸とy軸とを含む平面を、x−y平面という。また、以下においては、z軸とx軸とを含む平面を、z−x平面という。また、以下においては、z軸とy軸とを含む平面を、z−y平面という。
図3は、第1の実施の形態におけるアンテナ200の構成を示す図である。
図3(a)は、アンテナ200の斜視図である。図3(b)は、アンテナ200を、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200は、平面導体M20と、立体線状導体201を備える。
平面導体M20の形状は、平面状である。また、平面導体M20の形状は、四角形である。なお、平面導体M20の形状は、四角形に限定されず、他の形状(例えば、六角形)であってもよい。平面導体M20は接地されている。
図4に示されるように、平面導体M20は、基板SB20上に形成される。
平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと同じである。なお、平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと異なってもよい。
再び、図3を参照して、立体線状導体201は、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240は、それぞれ、第1線状導体、第2線状導体、第3線状導体および第4線状導体である。
線状導体210,220,230,240の各々は、直線状の導体である。なお、線状導体210,220,230,240の各々は、直線状の導体に限定されず、他の形状の導体であってもよい。線状導体210,220,230,240の各々は、すず、銅などの金属材料から構成される。
線状導体210,220,230,240の各々は、平面導体M20の主面側に設けられる。平面導体M20の主面とは、図4の平面導体M20において、基板SB20が接する面と反対側の面である。
線状導体210は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。線状導体220,230の各々は、平面導体M20の主面と平行である。線状導体230は、線状導体220に対し垂直に設けられる。線状導体230の一端は、接点N10において、線状導体220と電気的に接続される。線状導体230は、接点N10から−z方向に延在するように設けられる。
線状導体240の長さは、線状導体210の長さと同じである。線状導体240は、線状導体210と平行である。
線状導体220の長さは、平面導体M20のy軸方向の長さ以下である。また、線状導体230の長さは、平面導体M20のz軸方向の長さ以下である。
線状導体210,220,230,240の各々の太さは、ほぼ同一である。線状導体220,230の各々の半径は、線状導体210の長さよりも短いとする。すなわち、線状導体220,230の各々の太さは、線状導体220,230が、平面導体M20に接しないような太さである。
線状導体240の一端は、平面導体M20と電気的に接続される。前述したように、線状導体220の一端と線状導体230の一端とは電気的に接続される。線状導体220の他端と平面導体M20とは、線状導体240により電気的に接続される。
また、図3(b)に示されるように、線状導体220、230の各々は、平面導体M20の端部の上方に配置される。なお、線状導体220、230の各々は、平面導体M20の内部の上方に配置されてもよい。
ここで、平面導体M20の主面が3次元座標系のz−y平面と平行であるとする。この場合、線状導体210,240は、3次元座標系のx軸に平行である。また、線状導体220は、3次元座標系のy軸に平行である。また、線状導体230は、3次元座標系のz軸に平行である。
図3には、後述する給電点PT10を含む給電領域P10が示される。
図5は、給電領域P10を説明するための図である。
図5(a)は、給電領域P10付近の構成を詳細に示す図である。
給電領域P10は、平面導体M20の主面上に設けられる。給電領域P10は、給電点PT10を含む。給電点PT10は、平面導体M20の主面上に設けられる。給電点PT10は、絶縁膜PX20により、平面導体M20と電気的に非接続とされる。すなわち、平面導体M20には、給電点PT10が、平面導体M20と電気的に非接続となるように設けられる。
給電点PT10は、図3に示されるように、平面導体M20の角の近傍に設けられる。なお、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられなくてもよい。
ここで、給電線L10の詳細な構成について説明する。
図5(b)は、給電線L10の詳細な構成を示す図である。
図5(b)に示されるように、給電線L10は、電源線PL10を含む。電源線PL10は、高周波電流を伝達する導電線である。電源線PL10は、絶縁膜PX10により覆われる。絶縁膜PX10の表面には、グランド膜G10が形成される。すなわち、電源線PL10と、グランド膜G10とは電気的に非接続とされる。また、グランド膜G10は接地される。
給電点PT10は、給電線L10の電源線PL10と電気的に接続される。平面導体M20に設けられる給電領域P10の境界は、グランド膜G10と電気的に接続される。電源線PL10およびグランド膜G10は、無線IC20と電気的に接続される。
無線IC20は、無線通信に使用する高周波電流(電力)を、電源線PL10を介して給電点PT10へ供給する。すなわち、給電点PT10には、無線通信に使用される高周波電流が外部から供給される。給電点PT10は、立体線状導体201の線状導体210の一端と電気的に接続される。
これにより、立体線状導体201には、給電点PT10に供給される高周波電流が流れる。この場合、立体線状導体201を含むアンテナ200から、電波が放射される。平面導体M20は、当該電波の放射のために有効に利用される。
すなわち、無線IC20は、アンテナ200を利用して無線通信を行う。言い換えれば、無線通信装置1000は、アンテナ200を利用して無線通信を行う。
また、立体線状導体201に高周波電流が流れることにより、平面導体M20には給電点PT10に向かって電流が流れる。
なお、立体線状導体201が外部から電波を受信した場合、当該電波は高周波電流となり、該高周波電流は、給電点PT10および電源線PL10を介して、無線IC20へ流れる。
また、線状導体210の他端は、線状導体220における接点N11と電気的に接続される。
平面導体M20のz軸方向の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。また、線状導体210、220,230,240の各々の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。
ここで、アンテナ200から電波を放射するために、給電点PT10に供給される高周波電流が立体線状導体201に流れている状態において、以下の定義をする。
平面導体M20の主面が、図2の3次元座標系のz−y平面と平行であるとする。また、立体線状導体201のx軸方向の長さをLxとする。すなわち、線状導体210、240の各々の長さをLxとする。また、立体線状導体201のy軸方向の長さをLyとする。すなわち、線状導体220の長さをLyとする。また、立体線状導体201のz軸方向の長さをLz2とする。すなわち、線状導体230の長さをLz2とする。また、平面導体M20のz軸方向の長さをLz1とする。
さらに、立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+x方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIxとする。立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+y方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIyとする。平面導体M20に流れる電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz1とする。立体線状導体201に流れる高周波電流のうち+z方向に向かう電流を正値で表した場合の該電流の大きさをIz2とする。
また、さらに、Ix×Lxを電磁気モーメントMxと定義する。また、Iy×Lyを電磁気モーメントMyと定義する。Iz1×Lz1−Iz2×Lz2を電磁気モーメントMzと定義する。
この場合、線状導体210には、+x方向に向かって、電流Ix1が流れる。また、この場合、線状導体240には、−x方向に向かって、電流Ix2が流れる。電流Ixは、Ix1+(−Ix2)により算出される電流である。
また、この場合、線状導体220には、接点N11から+y方向へ電流Iy1が流れる。また、この場合、線状導体220には、接点N11から−y方向へ電流Iy2が流れる。電流Iyは、Iy1+(−Iy2)により算出される電流である。
また、この場合、線状導体230には、−z方向に向かって、電流Iz2が流れる。すなわち、線状導体230に流れる電流は、+z方向を正とすると、−電流Iz2と示される。
本願発明者らは、電磁気モーメントMx,My,Mzにおいて、以下の式(1)が満たされることにより、3次元空間における全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現できるという仮説(以下、仮説Aという)をたてた。
Mx=My=Mz ・・・式(1)
なお、電磁気モーメントMx,My,Mzは、それぞれ、以下の式(2),(3),(4)で定義される。
Mx=Ix×Lx ・・・式(2)
My=Iy×Ly ・・・式(3)
Mz=Iz1×Lz1−Iz2×Lz2 ・・・式(4)
すなわち、本願発明者らは、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナのサイズおよび形状を設計することにより、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現できるという仮説Aをたてた。ここで、直交する各平面は、x−y平面、z−y平面およびz−x平面である。そして、当該仮説Aの正当性を立証するために、コンピュータで動作する電磁界シミュレータを使用してシミュレーションを行った。
ここで、シミュレーション対象のアンテナは、図3のアンテナ200である。シミュレーションの条件(以下、条件Aという)は以下のとおりである。線状導体210、240の各々の長さは15mmである。線状導体220の長さは40mmである。線状導体230の長さは38mmである。平面導体M20のy軸方向およびz軸方向の長さは40mmである。給電点PT10に供給される高周波電流の周波数は950MHzである。
以下においては、条件AにおけるシミュレーションをシミュレーションAという。
図6は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図6の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
以下においては、電界をEと表記する。また、以下においては、電界Eのθ成分をEθと表記する。ここで、θとは、図3に示されるように、z軸と電界の向きとの成す角度である。また、以下においては、電界Eのφ成分をEφと表記する。ここで、φとは、図3に示されるように、x軸と電界の向きとの成す角度である。
特性線Lθ10は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ10は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE10は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。電界Eは、以下の式(5)で算出される値である。
図7は、図6に示される各電界の放射特性を示す図である。図7において、縦軸は各特性線の振幅(利得)を示し、横軸は角度を示す。
図7の特性線LE11,Lθ11,Lφ11は、それぞれ、特性線LE10,Lθ10,Lφ10に対応する。
図7の特性線LE11の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図6および図7の結果から、x−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図8は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図8の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ20は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ20は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE20は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図9は、図8に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図9の特性線LE21,Lθ21,Lφ21は、それぞれ、特性線LE20,Lθ20,Lφ20に対応する。
図9の特性線LE21の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図8および図9の結果から、z−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図10は、シミュレーションAで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図10の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ30は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ30は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE30は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図11は、図10に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図11の特性線LE31,Lθ31,Lφ31は、それぞれ、特性線LE30,Lθ30,Lφ30に対応する。
図11の特性線LE31の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図10および図11の結果から、z−x平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
次に、式(1)の関係を満たさない、比較対象としてのアンテナ(以下、比較対象アンテナという)に対し、電磁界シミュレータを使用してシミュレーションを行った結果について説明する。
以下においては、比較対象アンテナに対し行ったシミュレーションを、シミュレーションJという。シミュレーションJの条件(以下、条件J)は、前述の条件Aと比較して、平面導体M20のz軸方向の長さが70mmである点のみが異なる。それ以外の条件は、条件Aと同じである。
図12は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図12の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ40は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ40は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE40は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図13は、図12に示される各電界の放射特性を示す図である。縦軸および横軸は、図7と同じである。
図13の特性線LE41,Lθ41,Lφ41は、それぞれ、特性線LE40,Lθ40,Lφ40に対応する。
図13の特性線LE41の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dB以下である。
すなわち、図12および図13の結果から、x−y平面では、全方位においてアンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図14は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図14の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ50は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ50は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE50は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図15は、図14に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図15の特性線LE51,Lθ51,Lφ51は、それぞれ、特性線LE50,Lθ50,Lφ50に対応する。
図15の特性線LE51の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dBより大きい。
すなわち、図14および図15の結果から、z−y平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
図16は、シミュレーションJで示された、アンテナから放射される電界の放射特性を示す図である。
図16の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ60は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ60は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE60は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
図17は、図16に示される各電界の放射特性を示す図である。なお、縦軸および横軸は、図7と同じである。
図17の特性線LE61,Lθ61,Lφ61は、それぞれ、特性線LE60,Lθ60,Lφ60に対応する。
図17の特性線LE61の振幅(利得)の最大値と最小値との差は5dBより大きい。
すなわち、図16および図17の結果から、z−x平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
以上のシミュレーション結果から、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるようにアンテナのサイズおよび形状を設計することにより、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナが得られると推定できる。
本願発明者らは、式(1)および前述の条件Aを満たすアンテナの試作品(以下、試作アンテナAという)を作成し、実際の電界の放射特性を測定した。試作アンテナAは、図3のアンテナ200である。
図18は、試作アンテナAから放射される電界の放射特性を示す図である。
図18(a)の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ110は、x−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ110は、x−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE110は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE110の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(a)から、x−y平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図18(b)の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ120は、z−y平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ120は、z−y平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE120は、z−y平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE120の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(b)から、z−y平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図18(c)の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
特性線Lθ130は、z−x平面における電界Eθの放射特性を示す。特性線Lφ130は、z−x平面における電界Eφの放射特性を示す。特性線LE130は、z−x平面における電界Eの放射特性を示す。当該電界Eは、電界Eθと電界Eφとを合成した電界である。
特性線LE130の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図18(c)から、z−x平面では、全方位において試作アンテナAから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
また、本願発明者らは、式(1)を満たさないアンテナ(以下、比較アンテナ900という)を作成し、実際の電界の放射特性を測定した。比較アンテナ900は、前述の条件Jを満たすように形成されたアンテナである。
図19は、比較アンテナ900の構成を示す図である。
図19に示されるように、比較アンテナ900は、図3のアンテナと比較して、平面導体M20のz軸方向の長さのみが異なる。それ以外の構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。平面導体M20のz軸方向の長さLz1は、一例として、70mmであるとする。
Lz1が70mmである場合、すなわち、Lz1が大きくなった場合、式(4)により、電磁気モーメントMzが、電磁気モーメントMx,Myに対して大きくなる。その結果、式(1)は満たされない。すなわち、比較アンテナ900において、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々は等しくない。
図20は、比較アンテナ900から放射される電界の放射特性を示す図である。
図20(a)の電界の放射特性は、x−y平面における電界の放射特性である。特性線LE210は、x−y平面における電界Eの放射特性を示す。
特性線LE210の形状は、ほぼ円形状である。すなわち、図20(a)から、x−y平面では、全方位において比較アンテナ900から放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在しないといえる。
図20(b)の電界の放射特性は、z−y平面における電界の放射特性である。
図20(b)から、z−y平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
図20(c)の電界の放射特性は、z−x平面における電界の放射特性である。
図20から、z−x平面では、アンテナから放射される電界の強度が大きく低下する箇所(ヌル点)が存在するといえる。
つまり、図18により、式(1)および前述の条件Aを満たす試作アンテナAは、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナと言える。言い換えれば、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように設計されたアンテナは、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。したがって、上記仮説Aは、正しいことが証明された。
以上により、本実施の形態におけるアンテナ200は、3次元空間における直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。すなわち、アンテナ200は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナである。すなわち、アンテナ200は、3次元空間における直交する各平面において指向性の偏りが小さいアンテナである。
したがって、アンテナ200を備える無線通信装置1000が、人体上や人体から離れた場所で、どの位置にどの向きに設置されても安定した通信を行うことができる。
すなわち、アンテナ200を備える無線通信装置1000は、人体における装着位置、向き、人の動きに関わらず安定した通信を行うことができる。つまり、アンテナ200は、人体に装着される複数の無線通信装置間で通信が行われる場合、各無線通信装置に使用される場合に特に有効である。
また、人体に装着する無線通信装置と、人体から離れた無線通信装置とが通信を行う場合においても、各無線通信装置に使用される場合に特に有効である。
さらに、平面導体M20を、電波(電界)の放射に積極的に利用するため、アンテナ200を備える無線通信装置1000を小型化することができる。
なお、図3の立体線状導体201において、給電点PT10に近い部分ほど流れる電流が大きくなる。そのため、各電磁気モーメントに対応する導体の長さは小さくすることができる。一方、立体線状導体201において、給電点PT10から遠い部分(例えば、線状導体230)に流れる電流は、給電点PT10に近い部分(例えば、線状導体210)に流れる電流より小さい。
線状導体210と線状導体240との距離は、アンテナ200の入力インピーダンスが、アンテナ200に流れる、無線通信に使用される高周波電流の周波数に対して50Ωとなる距離であることが望ましい。アンテナ200の入力インピーダンスは、給電点PT10からアンテナ200側を見た場合のインピーダンスである。
しかしながら、大抵の場合、アンテナ形状等の影響から、アンテナ200の入力インピーダンスは50Ωにはならない。そのため、図示しない整合回路が使用される。当該整合回路により、アンテナ200の入力インピーダンスは50Ωになるように、インピーダンス整合が行われる。整合回路は、無線通信装置1000に含まれる。
前述したように、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられる。これにより、線状導体220、線状導体230の長さを有効に確保することができる。そのため、アンテナ200を備える無線通信装置1000を小型化することができる。
また、前述したように、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の各々の長さは、無線通信に使用される高周波電流の周波数の波長λの1/4以下である。
アンテナ200は、給電点PT10を中心として波長λの高周波電流を励起する。平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の長さがλ/4以上となると、平面導体M20上に正と負の振幅が同時に発生する。そのため放射特性の劣化を招く。
したがって、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体210、220,230,240の長さを、λ/4以下とする。これにより、アンテナ200の放射特性の劣化を防ぎ、アンテナ200の性能を向上することができる。
なお、図3の線状導体230は、接点N10から−z方向に延在するように設けられるとしたがこれに限定されない。線状導体230は、図21(a)および図21(b)に示されるアンテナ200Aのように、接点N10から+z方向に延在するように設けられてもよい。
図21(a)は、アンテナ200Aの斜視図である。図21(b)は、アンテナ200Aを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。アンテナ200Aにおいても、前述したのと同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
この場合、線状導体230には+z方向に電流が流れる。当該電流は、Iz2と表される。
この場合、電磁気モーメントMzは、以下の式(6)で表される。
Mz=Iz1×Lz1+Iz2×Lz2 ・・・式(6)
式(4)および式(6)より、アンテナ200Aにおける電磁気モーメントMzの値は、アンテナ200における電磁気モーメントMzの値より大きいことがわかる。この場合、アンテナ200Aは、アンテナ200よりも、平面導体M20のz軸方向の長さを短くすることができる。
また、前述したように、給電点PT10は、平面導体M20の角の近傍に設けられなくてもよい。例えば、図22のアンテナ200Bのように、給電点PT10は、中央付近に配置されてもよい。図22(a)は、アンテナ200Bの斜視図である。図22(b)は、アンテナ200Bを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200Bにおいても、前述したのと同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
<第1の実施の形態の変形例1>
本実施の形態の変形例1における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Cを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図23は、第1の実施の形態の変形例1におけるアンテナ200Cの構成を示す図である。
図23(a)は、アンテナ200Cの斜視図である。図23(b)は、アンテナ200Cを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
図23に示されるように、アンテナ200Cは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Cを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Cの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Cは、図3の立体線状導体201と比較して、さらに、線状導体250を含む点が異なる。
立体線状導体201Cは、線状導体210、線状導体220、線状導体230、線状導体240および線状導体250が一体形成された線状導体である。線状導体250は、第5線状導体である。
線状導体250は、直線状の導体である。なお、線状導体250は、直線状の導体に限定されず、他の形状の導体であってもよい。線状導体250は、平面導体M20の主面側に設けられる。
線状導体250の一端は、接点N21において、線状導体230と電気的に接続される。線状導体250は、接点N21から−y方向に延在するように設けられる。
なお、線状導体250は、接点N21から、+y方向,−z方向,±x方向のいずれに延在するように設けられてもよい。
また、図24に示されるアンテナ200Dのように、線状導体250は、x,y,z軸のいずれにも平行とならないように設けられてもよい。図24(a)は、アンテナ200Dの斜視図である。図24(b)は、アンテナ200Dを、3次元座標系のz−y平面に投影した図である。
アンテナ200Cおよびアンテナ200Dにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例1によれば、線状導体250により、電波を効率よく放射するのに必要な、立体線状導体201Cにおける電気長を調整することができる。また、さらに、線状導体250により、電磁気モーメントの大きさを柔軟に調整することができる。よって、アンテナ200Cまたはアンテナ200Dを備える無線通信装置1000を小型化できる。また、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
<第1の実施の形態の変形例2>
本実施の形態の変形例2における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Eを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図25は、第1の実施の形態の変形例2におけるアンテナ200Eの構成を示す図である。
図25に示されるように、アンテナ200Eは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Eを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Eの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Eは、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体260が一体形成された線状導体である。すなわち、立体線状導体201Eは、線状導体240を含まない。線状導体260は、第6線状導体である。
線状導体260は、平面導体M20の主面と反対側に設けられる。線状導体260は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。また、線状導体260は、該線状導体260および線状導体210が同一直線上に並ぶように設けられる。
給電領域P10に含まれる給電点PT10には、線状導体260の一端が電気的に接続される。すなわち、給電点PT10に電気的に接続される線状導体210の一端と、給電点PT10に電気的に接続される線状導体260の一端とは電気的に接続される。
アンテナ200Eにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例2によれば、線状導体260により、線状導体210のx軸方向の長さを短くすることができる。その結果、アンテナの柔軟な設計に対応することができる。
なお、線状導体260は線状導体210と同一の金属材料で構成されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例3>
本実施の形態の変形例3における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Fを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図26は、第1の実施の形態の変形例3におけるアンテナ200Fの構成を示す図である。
図26に示されるように、アンテナ200Fは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Fを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Fの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Fは、図3の立体線状導体201と比較して、線状導体220の代わりに線状導体220Fを含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Fの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Fは、線状導体210、線状導体220F、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。
線状導体220Fは、図3の線状導体220の全てまたは一部にローディングコイルL22が挿入された線状導体である。
ローディングコイルL22は、通常、アンテナの電気的な長さが足りない場合、または、意図的にアンテナの物理的な長さを短くしたい場合に、アンテナのリアクタンス成分を無くしてアンテナに効率よく電流を流すために使用される。
ここで、物理的な長さとは、x軸、y軸またはz軸方向に延在する線状導体において、対応する方向の長さである。例えば、x軸方向に沿って延在する線状導体210のx軸方向の長さが、線状導体210の物理的な長さである。
つまり、y軸方向に延在する線状導体220Fの物理的な長さは、線状導体220Fのy軸方向の長さである。
アンテナ200Fにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例3によれば、ローディングコイルL22を用いることにより、立体線状導体201Fの線状導体220Fの電気的な長さを長くすることができ、所望の共振周波数に設定することが可能となる。その結果、アンテナの放射特性を向上させることができる。また、ローディングコイルL22が挿入された線状導体の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、ローディングコイルL22は、線状導体210,230,240のいずれに挿入されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例4>
本実施の形態の変形例4における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Gを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図27は、第1の実施の形態の変形例4におけるアンテナ200Gの構成を示す図である。
図27に示されるように、アンテナ200Gは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Gを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Gの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Gは、図3の立体線状導体201と比較して、線状導体220の代わりに線状導体220Gを含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Gの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Gは、線状導体210、線状導体220G、線状導体230および線状導体240が一体形成された線状導体である。
立体線状導体201Gは、図3の線状導体220の全てまたは一部の形状を、メアンダ形状(ジグザグ形状)としたものである。
メアンダ形状の導体は、通常、アンテナの電気的な長さを保持しつつ、アンテナの小型化を実現することができる。そのため、メアンダ形状の導体は、携帯電話等で使用される小型アンテナに用いられている。
アンテナ200Gにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例4によれば、メアンダ形状の立体線状導体201Gを用いることで、アンテナの電気な長さを長くすることができる。つまり、アンテナの電気な長さを柔軟に調整できる。これにより、当該アンテナにおいて無線通信に使用される高周波電流の周波数を、所望の共振周波数に設定することが可能となる。その結果、アンテナの放射特性を向上させることができる。また、線状導体の形状をメアンダ形状とすることにより、当該線状導体の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、線状導体210,230,240の各々における全てまたは一部の形状を、メアンダ形状としてもよい。
<第1の実施の形態の変形例5>
本実施の形態の変形例5における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Hを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図28は、第1の実施の形態の変形例5におけるアンテナ200Hの構成を示す図である。
図28に示されるように、アンテナ200Hは、アンテナ200と比較して、立体線状導体201の代わりに立体線状導体201Hを備える点が異なる。それ以外のアンテナ200Hの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
立体線状導体201Hは、図3の立体線状導体201と比較して、さらに線状導体270を含む点が異なる。それ以外の立体線状導体201Hの構成は、立体線状導体201と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
線状導体270は、線状導体210と平行に設けられる。線状導体270は、平面導体M20の主面に対し垂直に設けられる。
立体線状導体201Hは、線状導体210、線状導体220、線状導体230および線状導体240および線状導体270が一体形成された線状導体である。
線状導体270には、ローディングキャパシタC22が挿入される。
ローディングキャパシタC22は、通常、アンテナの電気的な長さが足りない場合、または、意図的にアンテナの物理的な長さを短くしたい場合に、アンテナのリアクタンス成分を無くしてアンテナに効率よく電流を流すために使用される。
線状導体220および線状導体230の接点N10と、平面導体M20とは、線状導体270により接続される。つまり、ローディングキャパシタC22は、線状導体220および線状導体230の接点N10と、平面導体M20との間に設けられる。すなわち、線状導体220および線状導体230は、ローディングキャパシタC22と電気的に接続される。
アンテナ200Hにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。
以上、本実施の形態の変形例5によれば、ローディングキャパシタC22を用いることにより、ローディングキャパシタC22と電気的に接続される線状導体220の物理的な長さを短くできるため、アンテナの小型化を実現できる。
なお、ローディングキャパシタC22は、線状導体210,230,240のいずれに挿入されてもよい。すなわち、ローディングキャパシタC22は、線状導体210,230,240のいずれと電気的に接続されてもよい。
<第1の実施の形態の変形例6>
図29は、第1の実施の形態の変形例6におけるアンテナ200の構成を示す図である。なお、図29には、説明のために、アンテナ200に含まれない基板SB20が示される。
図29に示されるように、アンテナ200に含まれる平面導体M20の平面のサイズは、基板SB20の平面のサイズと異なる。
直交する各平面の全方位において電界強度が大きく低下する箇所(ヌル点)の発生を防止するアンテナを実現させるためには、式(1)〜式(4)を満たすように、アンテナのサイズおよび形状を決定すればよい。したがって、平面導体M20の平面のサイズが、基板SB20の平面のサイズと異なっていても、アンテナのサイズおよび形状が式(1)〜式(4)を満たすようになっていればよいため、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
<第1の実施の形態の変形例7>
本実施の形態の変形例7における無線通信装置1000は、アンテナ200の代わりにアンテナ200Jを備える。それ以外の無線通信装置1000の構成は、図1の無線通信装置1000と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図30は、第1の実施の形態の変形例7におけるアンテナ200Jの構成を示す図である。
図30に示されるように、アンテナ200Jは、アンテナ200と比較して、平面導体M20に、スリットSL22が設けられる点が異なる。それ以外のアンテナ200Jの構成は、アンテナ200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
スリットSL22の形状およびサイズを調整することにより、平面導体M20に流れる電流量を調整することができる。
なお、アンテナ200Jにおいても、第1の実施の形態と同様に、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように各部のサイズおよび形状が規定される。すなわち、アンテナ200Jでは、電磁気モーメントMx,My,Mzの各々が等しくなるように、平面導体M20のz軸方向の長さおよび線状導体230の長さが規定される。これにより、平面導体M20にスリットSL22を設けることにより、アンテナの柔軟な設計が可能となる。
(整合回路)
図31は、無線通信装置1000に含まれる前述した整合回路300を示す図である。整合回路300は、基板SB20に実装される。
図31に示されるように、整合回路300は、アンテナ200と無線IC20とを接続する給電線L10において、アンテナ200の近傍に設けられる。
整合回路300は、アンテナ200の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの各々が、50Ωとなるように整合をとる回路である。整合回路300は周知な回路であるので、整合回路300の詳細な説明は行わない。整合回路300は、例えば、抵抗、インダクタ、キャパシタ等の受動素子から構成される。
アンテナ200の入力インピーダンスは、給電点PT10からアンテナ200側を見た場合のインピーダンスである。アンテナ200の出力インピーダンスは、給電点PT10から無線IC20側を見た場合のインピーダンスである。
以上のように、アンテナ200の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの整合をとることにより、無線IC20から出力された高周波信号が効率よくアンテナ200から放射される。また、アンテナ200が受信した高周波信号を効率よく無線ICへ送信できる。
なお、無線通信装置1000は、図31に示されるアンテナ200の代わりに、前述したアンテナ200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200Jのいずれを備えてもよい。この場合、整合回路300により、無線通信装置1000が備えるアンテナ(例えば、アンテナ200A)の入力インピーダンスおよび出力インピーダンスの整合をとることができる。
以上、本発明におけるアンテナ(例えば、アンテナ200)について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、あるいは異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明は、3次元空間における直交する各平面において電界強度が大きく低下する箇所の発生を防止するアンテナとして、利用することができる。
20 無線IC
200,200A,200B,200C,200D,200E,200F,200G,200H,200J アンテナ
201,201C,201E,201F、201G,201H 立体線状導体
210,220,220F,220G,230,240,250,260,270 線状導体
300 整合回路
1000 無線通信装置
C22 ローディングキャパシタ
L10 給電線
L22 ローディングコイル
M20 平面導体
P10 給電領域
PT10 給電点
SB20 基板
SL22 スリット