JPWO2009088065A1 - ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ドナーマウス抗ヒトα9インテグリン抗体と比較して、活性および/または物性が改善されたヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体、即ち、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体、並びに、該抗体を用いた、ヒトα9インテグリンが病態形成に関与する各種疾患の予防または治療手段を提供する。
Description
本発明は、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体に関する。詳細には、ヒトα9インテグリン蛋白質に結合してα9インテグリン依存性の細胞接着を阻害する活性を持ち、マウスY9A2抗体と比較して、活性および/または物性が改善されたヒト化Y9A2抗体である。当該ヒト化抗体は、関節リウマチ等の自己免疫疾患、アレルギーや移植片拒絶反応等の免疫疾患、及びその他のα9インテグリンが病態形成に関与する各種疾患の診断、予防または治療薬として期待される。
インテグリン(integrin)は細胞表面糖タンパク質のひとつで、主に細胞外マトリックス(コラーゲン、ラミニンなど)への細胞の接着やイムノグロブリンファミリーのメンバー(ICAM-1、VCAM-1など)の受容体として機能し、細胞外マトリックスからの情報伝達に関与する接着分子である。それにより、細胞は細胞外マトリックスよりシグナルを受け取り、分化、増殖、細胞死などが誘導される。インテグリンはα鎖とβ鎖の2つのサブユニットからなるヘテロダイマーであり、異なるα鎖、β鎖が存在し、多様な組み合わせがあり、インテグリンスーパーファミリーは24種類存在する。インテグリンノックアウトマウスは、全てのサブユニットで致死的あるいは病的で、生命の維持に個々のインテグリンが必用であることが示唆されている。この事から、周辺の環境を細胞に伝え対応を促すインテグリンは、生命現象のあらゆる場面で機能しており、様々な病態に関与していると考えられる。
このように生存に不可欠なインテグリンは病的状態でも役割を演じていると考えられ、阻害が病態改善に働くケースが示されている。例えば、血小板に特異的なインテグリンαIIbβ3の阻害は、PCTA再狭窄治療薬アブシキシマブ(商品名:ReoPro;Eli Lilly社)として認可されている。また、α4β1(VLA4)阻害剤ナタリツマブ(商品名:Antegren;ELAN社)は多発性硬化症治療薬として認可されている。さらに、αvβ3阻害剤Vitaxin(MEDIMMUNE社)も、その血管新生阻害作用、破骨細胞活性化阻害作用などから、現在治験が進んでいる状況にある。
インテグリンα9β1はマクロファージ、NKT細胞、樹状細胞(Dendritic Cell)、好中球に発現しており、これら炎症細胞の浸潤や接着、骨吸収などに重要な役割を果しているとされる。また最近、破骨細胞の形成においてインテグリンα9β1の関与が報告されており、骨破壊への関与が示唆されている(非特許文献1)。そのリガンドとしては切断型オステオポンチン(N末OPN)、VCAM-1、Tenascin-Cなどが知られている。臨床においても、関節リウマチ患者の滑膜組織においてインテグリンα9β1の有意な上昇が認められている(非特許文献2)。
したがって、α9インテグリン蛋白質に特異的に結合し、α9インテグリン依存の細胞接着を阻害する活性を有するモノクローナル抗体を開発することができれば、α9インテグリンが病態形成に関与する各種疾患の診断、予防または治療に有用であることが期待される。
これまで、ヒトα9インテグリンに対して機能阻害作用を示す抗体としては、マウスモノクローナル抗体であるY9A2(非特許文献3)、1K11、24I11、21C5及び25B6(特許文献1)が報告されている。これらの抗体は、ヒトα9依存の細胞接着を抑制し得ることがin vitroの実験結果より示されているが、その中でも、Y9A2は、オステオポンチンやTenascin-Cのいずれに対する細胞接着をも阻害し、α9インテグリンに対する抗体医薬の候補として最も有望視されるものである。
もっとも、Y9A2抗体は、マウスに抗原を免疫して作製されたマウス由来の抗体であるために、安全性(抗原性の惹起)及び有効性(半減期の短縮)の観点から、そのままヒトに投与することは現実的には不可能である。そこで、Y9A2抗体の活性を維持したまま、ヒト抗体のアミノ酸配列を持つ分子に変えるための改変、すなわち、ヒト化を行う必要がある。
今日、ヒト化抗体の作製法としては、ウインター(Winter)らが考案した、相補性決定領域(以下、CDRと表記することがある)アミノ酸の移植を行う方法(非特許文献4)に基づくものが、最も一般的である。ここで、CDRアミノ酸のドナーとなる異種抗体からCDRのアクセプターとなるヒト抗体に対して、CDRのみならず、CDRの構造保持あるいは抗原との結合に関与しているCDR外アミノ酸、いわゆるフレームワーク領域(以下、FRと表記することがある)も併せて移植することが、ドナー抗体の持つ本来の活性を再現するために重要であることも良く知られている(非特許文献4及び5)。
しかし、CDR移植に基づくヒト化抗体の作製においては、いくつかの課題が存在する。まず第一に、最も一般的な課題として、ドナー抗体の活性再現に必要なFRアミノ酸の選択を適切に行ったとしても、抗原への親和性や生物活性がドナー抗体のそれを上回るヒト化抗体を得ることが困難であることが挙げられる。
近年、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体がモノクローナル医薬品として多数上市されているが、いずれについても有効投与量は体重1kgあたり数mgと極めて多量である。それ故、抗体医薬品は高価とならざるを得ず、結果として患者の経済的な負担や医療コストの増大を招いている。この抗体医薬の有効投与量を規定する主な要因としては、抗体の抗原に対する親和性や、体内に存在する抗原の量が挙げられる。このような観点から、特に抗体の抗原に対する親和性を向上させることは、投与量の低減に繋がり、結果として患者の経済的な負担や医療コストの低減にも繋がる極めて有益な改良であると言える。
そこで、抗体の抗原に対する親和性向上を実現するために、抗体の可変領域内にアミノ酸置換を導入する方法が取られることが多い。しかし、抗体や抗原が異なれば、CDRアミノ酸の配列や立体構造、抗原−抗体相互作用に関わるアミノ酸の位置も変化するため、CDRとともに移植すべきFRアミノ酸の位置を、全ての抗体に適用可能なものとして規定することは事実上不可能である。
また、別の課題として、CDR移植に基づくヒト化抗体の作製においては、ドナーであるマウス抗体のCDRアミノ酸全部を鋳型ヒト抗体に移植するのが一般的であるが、マウス抗体由来のCDRアミノ酸配列は抗原との結合に重要である一方で、ヒトに対する抗原性を示すことがあり、しばしば抗イディオタイプ抗体を生じる原因ともなることが挙げられる。
更に、抗体中のメチオニン残基が、抗体溶液の保存中に酸化を受け、しばしば、抗原との親和性低下の原因となることがある。この酸化を防止するために、酸素との接触を防止する方法や、溶液状態での保存を避けるなどの方法が取られることがあるが、根本的な解決方法となっているわけではない。
すなわち、ヒト化抗体の作製において、ヒトにおける抗原性発生や抗体の安定性低下を回避しつつ、ドナー抗体よりも高い活性を付与するためには、適切なアクセプター抗体の選択や、置換すべきCDRアミノ酸及びFRアミノ酸の選択が不可欠であり、これらには、相当の創意工夫と試行錯誤が必要とされる。
WO 2006/075784
Journal of Bone and Mineral Research, 2006, 21: 1657-1665
The Journal of Clinical Investigation, 2005, 115: 1060-1067
Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1996, 15: 664-672
Science, 239, 1534-1536 (1988)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 10029-10033 (1989)
本発明の課題は、ヒト化抗体作製に関する上記の諸課題を克服し、ドナーマウス抗ヒトα9インテグリン抗体(Y9A2)と比較して、活性および/または物性が改善されたヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を提供することにある。
すなわち、本発明は、医学上または産業上有用な物質・方法として下記(1)〜(15)の発明を含むものである。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(2)前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
1)配列番号1または配列番号31の34番目のメチオニン残基のロイシンまたはイソロイシンへの置換;
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;
3)配列番号1または配列番号31の104番目のアスパラギン酸残基及び105番目のフェニルアラニン残基の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換
からなる群より選択される少なくとも1つの置換を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、上記(1)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(3)前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換
を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、上記(2)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(4)前記重鎖可変領域が、配列番号1〜60のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなり、前記軽鎖可変領域が、配列番号61〜63のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、上記(1)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(5)前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(6)前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(7)前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1であり、前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の重鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の軽鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
(10)上記(8)に記載のポリヌクレオチドおよび/または上記(9)に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(11)上記(10)に記載の発現ベクターが導入された宿主細胞。
(12)上記(11)に記載の宿主細胞を培養し、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を発現させる工程を包含する、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を生産する方法。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を含む、関節リウマチの治療薬。
(14)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の治療有効量を投与する工程を包含する、関節リウマチを予防または処置するための方法。
(15)関節リウマチを予防または処置するための医薬の製造における、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の使用。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(2)前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
1)配列番号1または配列番号31の34番目のメチオニン残基のロイシンまたはイソロイシンへの置換;
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;
3)配列番号1または配列番号31の104番目のアスパラギン酸残基及び105番目のフェニルアラニン残基の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換
からなる群より選択される少なくとも1つの置換を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、上記(1)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(3)前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換
を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、上記(2)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(4)前記重鎖可変領域が、配列番号1〜60のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなり、前記軽鎖可変領域が、配列番号61〜63のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、上記(1)に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(5)前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(6)前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(7)前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1であり、前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の重鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の軽鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
(10)上記(8)に記載のポリヌクレオチドおよび/または上記(9)に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(11)上記(10)に記載の発現ベクターが導入された宿主細胞。
(12)上記(11)に記載の宿主細胞を培養し、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を発現させる工程を包含する、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を生産する方法。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を含む、関節リウマチの治療薬。
(14)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の治療有効量を投与する工程を包含する、関節リウマチを予防または処置するための方法。
(15)関節リウマチを予防または処置するための医薬の製造における、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の使用。
本発明によって、ドナーマウス抗ヒトα9インテグリン抗体と比較して、活性および/または物性が改善されたヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体が提供される。本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、ヒトα9インテグリンとその複数のリガンドとの相互作用の遮断を通じ、強力な抗炎症作用や骨破壊抑制作用を有するものであり、ヒトα9インテグリンが病態形成に関与する各種疾患の予防または治療に有用である。
以下に、本発明について詳述する。
本発明者らは、マウス抗ヒトα9インテグリン抗体Y9A2のヒト化抗体の作製において相当の創意検討を重ねた結果、Y9A2と比較して、活性および/または物性が改善された、複数のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体(以下、ヒト化Y9A2抗体またはRY9A2とも称する)を作製することに成功した。
本発明者らは、マウス抗ヒトα9インテグリン抗体Y9A2のヒト化抗体の作製において相当の創意検討を重ねた結果、Y9A2と比較して、活性および/または物性が改善された、複数のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体(以下、ヒト化Y9A2抗体またはRY9A2とも称する)を作製することに成功した。
具体的には、まず、本発明者らは、Y9A2抗体の重鎖可変領域(以下、VHとも称する)及び軽鎖可変領域(以下、VLとも称する)のCDRアミノ酸配列及び数ヶ所のFRアミノ酸を鋳型ヒト抗体に移植して、マウスY9A2抗体と同程度の活性を有するヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体RY9A2v501及びRY9A2v801を作製した。CDRは、カバット(Kabat)らによる分類(Sequences of Proteins of Immunological Interest 4th ed., Public Health Service, NIH, Washington DC, 1987)に従って決定した。RY9A2v501及びRY9A2v801のVHのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1及び配列番号31である。ここで、RY9A2v801のVHは、RY9A2v501のVHのマウスY9A2抗体由来のFRアミノ酸残基のうち4つのアミノ酸残基を、対応する鋳型ヒト抗体アミノ酸に置換したものである。両ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列は、配列番号61に示されるものであり、両抗体共通である。
さらに、本発明者らは、ヒト化抗体における抗原性発生の危険性や抗体の保存安定性の低下を回避しつつ、ヒトα9インテグリンに対する、オリジナルのマウスY9A2抗体よりも高い親和性を有する抗体を作製するために、上記のヒト化抗体のVH及びVLのCDR中のアミノ酸配列の置換を検討した。その結果、当該ヒト化抗体のVHおよび/またはVLのCDRにおける、以下のいずれかの置換が、オリジナルのマウスY9A2抗体と比較して、ヒト化Y9A2抗体における活性および/または物性を改善するために好ましい置換であることが確認された。
1)VHのCDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンまたはイソロイシンへの置換;
2)VHのCDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;
3)VHのCDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換;
4)VLのCDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のグルタミンまたはアルギニンへの置換。
1)VHのCDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンまたはイソロイシンへの置換;
2)VHのCDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;
3)VHのCDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換;
4)VLのCDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のグルタミンまたはアルギニンへの置換。
すなわち、好ましい実施形態において、本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、配列番号1〜60のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号61〜63のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する抗体である。
また、好ましい実施形態において、本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、VHのアミノ酸配列において上記2)の置換を有する場合、VLのアミノ酸配列において上記4)の置換を有する。
本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、本願明細書に開示される、その重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列情報に基づいて、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製され得る。具体的には、本発明の抗体の重鎖可変領域アミノ酸をコードする塩基配列を有する重鎖可変領域遺伝子断片、及び、本発明の抗体の軽鎖可変領域アミノ酸をコードする塩基配列を有する軽鎖可変領域遺伝子断片を作製する。そして、この可変領域遺伝子をヒト抗体の適当なクラスの定常領域遺伝子と連結させてヒト化抗体遺伝子を作製する。次いで、このヒト化抗体遺伝子を適当な発現ベクターに連結し、培養細胞中に導入する。最後にこの培養細胞を培養して培養上清からヒト化抗体を得ることができる。
上記の本発明の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸をコードする各可変領域遺伝子断片は、例えば、該重鎖及び軽鎖可変領域の塩基配列又は該重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列に基づいてデザインされた塩基配列に基づき、当該分野で公知の遺伝子合成方法を利用して合成することが可能である。このような遺伝子合成方法としては、WO90/07861に記載の抗体遺伝子の合成方法等の当業者に公知の種々の方法が使用され得る。また、本発明の抗体の可変領域遺伝子断片を一旦取得すれば、この遺伝子断片の所定の部位に変異を導入することによって、本発明の他の抗体を取得することも可能である。このような変異導入方法としては、部位特異的変異誘発法(Current Protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley & Sons Section 8.1−8.5)等の当業者に公知の種々の方法が使用され得る。
次いで、上記の可変領域遺伝子断片とヒト抗体の定常領域遺伝子とを連結させてヒト化抗体遺伝子を作製する。使用されるヒト抗体の定常領域は、どのようなサブクラスの定常領域(例えば、重鎖としてγ1、γ2、γ3またはγ4、軽鎖としてλまたはκ鎖の定常領域)も選択可能であり得るが、好ましくは、重鎖定常領域としてはヒトIgγ1が、また、軽鎖定常領域としてはヒトIgκを用いることができる。
このヒト化抗体遺伝子の作製につづく、ヒト化抗体遺伝子の発現ベクターへの導入、発現ベクターの培養細胞への導入、培養細胞の培養、抗体の精製等については、当該分野で公知の種々の方法を使用してか、あるいは、WO2007/139164またはWO2003/027151に記載される、ヒト化抗ヒトオステオポンチン抗体の作製方法を参照して行うことができる。
上記のようにして得られたヒト化抗体遺伝子と連結される発現ベクターとしては、国際公開公報WO94/20632に記載のAG−γ1やAG−κ等の発現ベクターが使用できるが、ヒト化抗体遺伝子を発現することができるものであれば特に制限されない。なお、発現ベクターとしてAG−γ1あるいはAG−κ等の予めヒトIg定常領域遺伝子を有するものを利用すれば、これにヒト化抗体可変領域遺伝子を挿入するだけでヒト化抗体遺伝子を有する発現ベクターとなるため好ましい。また、発現ベクターにおいては、抗体の細胞外への分泌発現を促すためのリーダー配列を使用してもよく、このようなリーダー配列としては、Y9A2抗体に由来するリーダー配列や、別の抗体(例えば、WO2007/139164に記載のヒト化抗オステオポンチン抗体)由来のリーダー配列を使用することができる。
上記の発現ベクターは、例えば、FreeStyle 293 Expression system(Invitrogen)、リン酸カルシウム法等の使用により、培養細胞中に導入される。
発現ベクターを導入する培養細胞としては、例えば、293細胞、CHO−DG44細胞等の培養細胞が使用でき、これを常法により培養すればよい。
上記培養後、培養上清中に蓄積された抗体は、各種のカラムクロマトグラフィー、例えば、プロテインAカラムを用いたクロマトグラフィーにより精製することができる。
得られたヒト化抗体のヒトα9インテグリンに対する結合活性を測定する方法としては、ELISAやFACS等の方法がある。例えば、ELISAを用いる場合、α9インテグリンを発現させた細胞(例えば、SW480細胞)をELISAプレートに固定化し、これに対してヒト化抗体を添加して反応させた後、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素で標識したヒトIgG抗体等の二次抗体を添加して反応させ、洗浄した後、発色基質(例えば、HRP標識の場合、TMB)を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することが出来る。
更に、得られたヒト化抗体がヒトα9インテグリンに対する機能阻害活性を有しているか否かを評価する方法としては、例えば、J.Biol.Chem.,274:36328−36334,1999に記載のヒトオステオポンチン分子に対するヒトα9インテグリン分子依存性細胞接着の阻害試験により確認することができる。すなわち、α9のリガンドの一つであるN末OPN(オステオポンチンがトロンビンにより切断された後のN末端側フラグメント;以下、nOPNと表記することがある)のRAA改変体(他のインテグリンとの反応を抑えるためにRGD配列をRAAに改変したもの;以下、nOPN−RAAと表記することがある)をプレートに固定化し、ブロッキングを行う。各種抗体を添加した後、α9発現細胞を添加し、37℃で1時間インキュベートする。細胞をクリスタルバイオレットとメタノールを用いて固定・染色して、洗浄後、接着した細胞中の色素をTriton X−100で抽出し、波長595nmにおける吸光度を測定する。それにより抑制作用が確認されれば、当該抗体はα9インテグリンに対する機能阻害活性を有しているものと判断される。
また、得られたヒト化抗体が酸化に対して耐性を有するか否かを評価する方法としては、例えば、過酸化水素水での抗体の処理を用いる方法がある。具体的には、抗体の溶液に、最終濃度0.4%の過酸化水素水を添加し、25℃で4時間静置した後、PBSに透析して回収し、次いで、この抗体を、Cell ELISAによって非処理の抗体と活性を比較することによって、酸化耐性を評価することができる。
このようにして得られた本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、必要によりさらに精製された後、常法に従って製剤化され、関節リウマチ等の自己免疫疾患、アレルギー、移植片拒絶反応等の免疫疾患、骨粗鬆症、慢性閉塞性肺疾患、癌等のα9インテグリンが病態形成に関与する疾患の治療に用いることができる。
本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、好ましくは、関節リウマチ治療剤として用いることができる。これらの治療剤の剤型の例としては、注射剤、点滴用剤等の非経口剤とすることができ、静脈内投与、皮下投与等により投与することが好ましい。また、製剤化にあたっては、薬学的に許容される範囲で、これら剤型に応じた担体や添加剤を使用することができる。
上記製剤化に当たってのヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体等の添加量は、患者の症状の程度、年齢や使用する製剤の剤型あるいは抗体の結合力価等により異なるが、例えば、0.1mg/kgないし100mg/kg程度を用いればよい。
更に、本発明は、上記の重鎖及び軽鎖可変領域を含み、かつその活性を保持したFab、Fab’、F(ab’)2、scAb、scFv、またはscFv−Fc等のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体フラグメントをも包含する。
scFvの作製に用いられ得る、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを連結させるためのリンカーとしては、本発明の抗体フラグメントが上述したような特性を有し得る限り特に限定されないが、例えばGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号147)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。また、当業者であれば、本発明に基づいて、当該ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体または抗体フラグメントと他のペプチドやタンパク質との融合抗体を作製することや、修飾剤を結合させた修飾抗体を作製することも可能である。融合に用いられる他のペプチドやタンパク質は、抗体の結合活性を低下させないものである限り特に限定されず、例えば、ヒト血清アルブミン、各種tagペプチド、人工へリックスモチーフペプチド、マルトース結合タンパク質、グルタチオンSトランスフェラーゼ、各種毒素、その他多量体化を促進しうるペプチドまたはタンパク質等が挙げられる。修飾に用いられる修飾剤は、抗体の結合活性を低下させないものである限り特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、糖鎖、リン脂質、リポソーム、低分子化合物等が挙げられる。
本発明はまた、本発明の抗体又はそのフラグメントをコードする遺伝子、及びそれを含む発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で本発明の抗体又はそのフラグメントをコードする遺伝子を発現し、これらポリペプチドを産生できるものであれば特に制限されない。例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)等を挙げることができる。
本発明の発現ベクターは、本発明の抗体又はそのフラグメントをコードする遺伝子、及び当該遺伝子に機能可能に連結されたプロモーターを含み得る。細菌中で本発明のポリペプチドを発現させるためのプロモーターとしては、宿主がエシェリキア属菌の場合、例えば、Trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーターなどが挙げられる。酵母中で本発明の抗体又はそのフラグメントを発現させるためのプロモーターとしては、例えば、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターが挙げられ、宿主がバチルス属菌の場合は、SL01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主が哺乳動物細胞等の真核細胞である場合、βアクチンプロモーター、CAGプロモーター(Niwa H. et al., Gene, 108, 193-200, 1991)、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーターなどが挙げられる。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、本発明の発現ベクターは、開始コドン、終止コドン、ターミネーター領域および複製可能単位をさらに含み得る。一方、宿主として酵母、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、本発明の発現ベクターは、開始コドン、終止コドンを含み得る。また、この場合、エンハンサー配列、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、または複製可能単位などを含んでいてもよい。また、目的に応じて通常用いられる選択マーカー(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子)を含んでいてもよい。
本発明はまた、本発明の遺伝子が導入された形質転換体を提供する。このような形質転換体は、例えば、本発明の発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより作製できる。形質転換体の作製に用いられる宿主細胞としては、前記の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞あるいは人工的に樹立された細胞など種々の細胞(例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞または昆虫細胞(例えば、Sf9)など)が例示される。形質転換は、自体公知の方法により行われ得る。
本発明はまた、本発明の遺伝子を宿主細胞に発現させること、即ち、このような形質転換体を用いることを含む、本発明の抗体又はそのフラグメントの生産方法を提供する。
本発明の抗体又はそのフラグメントの生産において、形質転換体は、栄養培地中で培養され得る。栄養培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素(例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。
形質転換体の培養は自体公知の方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は、適宜選択される。例えば、宿主が動物細胞の場合、培地としては、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science,Vol.122,p.501,1952)、DMEM培地(Virology,Vol.8,p.396,1959)、RPMI1640培地(J.Am.Med.Assoc.,Vol.199,p.519,1967)、199培地(proc.Soc.Exp.Biol.Med.,Vol.73,p.1,1950)等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。宿主が昆虫細胞の場合、例えば胎児牛血清を含むGrace’s培地(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.82,p.8404,1985)等が挙げられ、そのpHは約5〜8であるのが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15〜100時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地である。宿主がE.coliの場合、好ましい培地としてLB培地、M9培地(Millerら、Exp.Mol.Genet、Cold Spring Harbor Laboratory,p.431,1972)等が例示される。かかる場合、培養は、必要により通気、撹拌しながら、通常14〜43℃、約3〜24時間行うことができる。宿主がBacillus属菌の場合、必要により通気、撹拌をしながら、通常30〜40℃、約16〜96時間行うことができる。宿主が酵母である場合、培地として、例えばBurkholder最小培地(Bostian,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.77,p.4505,1980)が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。
本発明の抗体又はそのフラグメントは、上述のような形質転換体を培養し、該形質転換体から回収、好ましくは単離、精製することができる。単離、精製方法としては、例えば塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
市販のキットあるいは試薬を用いた部分については、特に断りのない限り添付のプロトコールに従って実験を行った。
《実施例1:キメラY9A2抗体の作製》
マウスY9A2抗体の重鎖可変領域(VH)遺伝子をヒトIgγ1遺伝子に、軽鎖可変領域(VL)遺伝子をヒトIgκ遺伝子に連結してマウス−ヒトのキメラY9A2抗体を作製した。手順は下記の通りである。
マウスY9A2抗体の重鎖可変領域(VH)遺伝子をヒトIgγ1遺伝子に、軽鎖可変領域(VL)遺伝子をヒトIgκ遺伝子に連結してマウス−ヒトのキメラY9A2抗体を作製した。手順は下記の通りである。
まず、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)より提供された、マウスY9A2抗体産生ハイブリドーマからTRIzol試薬(インビトロジェン社)を用いてRNAを抽出した。このRNAを鋳型とし、Random Primer及びSuperScript III Reverse Transcriptase(ともにインビトロジェン社)を用いてcDNAを合成した。次に、このcDNAを鋳型として用い、カバット(Kabat)らによるV領域及びJ領域の配列の分類(Sequences of Proteins of Immunological Interest 4th ed., Public Health Service, NIH, Washington DC, 1987)を参照してデザインしたリーダー領域に対するプライマーとJ領域に対するプライマーを用い、Ex Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社)でVH領域を増幅した。ここで用いた上記リーダー領域に対するプライマーとJ領域に対するプライマーには、それぞれHindIII認識配列とBamHI認識配列が付加されている。VLについてもVHの場合と同様に、リーダー配列に合致するプライマーとJ領域に合致するプライマーを用いて、VL遺伝子断片を得た。
このようにして得たVH、VL遺伝子断片をHindIIIとBamHI(ともにタカラバイオ社)で消化し、それぞれを、発現ベクターであるAG−γ1、AG−κ(WO94/20632)と連結した。AG−γ1は、βアクチンプロモーター、ヒト免疫グロブリン定常領域γ1鎖の遺伝子及び選択マーカーとしてのネオマイシン耐性遺伝子(neo)を持ち、γ1遺伝子の上流にあるHindIII認識配列とBamHI認識配列の間にマウスY9A2抗体VH遺伝子を挿入することにより、キメラY9A2抗体の重鎖を発現するプラスミドとなる。AG−κは、βアクチンプロモーター、ヒト免疫グロブリン定常領域κ鎖の遺伝子及び選択マーカーとしてのジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子を持ち、同じくκ遺伝子の上流にあるHindIII認識配列とBamHI認識配列の間にマウスY9A2抗体VL遺伝子を挿入することにより、キメラY9A2抗体の軽鎖を発現するプラスミドとなる。
これらの発現プラスミドを常法により大腸菌に導入して形質転換クローンを得、それからQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAを鋳型として、GenomeLab DTCS−Quick Start Kitを及びCEQ2000オートシークエンサー(ともにBECKMAN COULTER社)を用いて、クローニングされているVH及びVLの塩基配列を解読した。当該VH及びVLの塩基配列を、それぞれ配列番号128及び配列番号130に示した。得られた配列をもとに決定したVH及びVLのアミノ酸配列をそれぞれ、図1及び図2に示した。また、それぞれを、配列番号127及び配列番号129に示した。
上記大腸菌クローンを大量培養して、EndoFree Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いてキメラY9A2抗体の重鎖発現プラスミド及び軽鎖発現プラスミドを精製し、それらを混合して、FreeStyle 293 Expression System(インビトロジェン社)を用いて細胞に導入することにより、キメラY9A2抗体を一過性に発現させた。得られた培養上清に含まれるキメラY9A2抗体濃度を、ヤギ由来抗ヒトIgG Fc抗体(CAPPEL社)とプロテインA−HRP(ZYMED社)を用いたサンドイッチELISAにより測定した。この際、市販のヒトIgG1抗体(Biogenesis社)の希釈系列を作製し、それを標準試料とした。次に、上記培養上清中のキメラY9A2抗体を、プロテインAカラム(GEヘルスケア社)を用いてアフィニティ精製し、精製キメラY9A2抗体を得た。精製キメラY9A2抗体の濃度は、波長280nmにおける吸光度が1.4の場合に1mg/mLとして算出した。
《実施例2:キメラY9A2抗体とマウスY9A2抗体の活性比較》
前項に記載の方法で調製した精製キメラY9A2抗体について、マウスY9A2抗体(CHEMICON INTERNATIONAL社)との活性を比較するために、J.Biol.Chem.,274:36328−36334,1999に記載の細胞接着阻害試験を行った。すなわち、まずオステオポンチンがトロンビンにより切断されて生じるN末端側の断片(nOPN)に含まれるRGD配列をRAAに置換した改変体(nOPN−RAA)を固定化し、ブロッキングを行った後、マウスY9A2抗体または精製キメラY9A2抗体を添加した。続けてヒトα9インテグリン分子を発現させたSW480細胞(以下、SW480/hα9細胞と表記することがある)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、クリスタルバイオレットとメタノールを用いて固定・染色して、洗浄後、接着した細胞中の色素をTriton X−100で抽出し、波長595nmにおける吸光度を測定した。
前項に記載の方法で調製した精製キメラY9A2抗体について、マウスY9A2抗体(CHEMICON INTERNATIONAL社)との活性を比較するために、J.Biol.Chem.,274:36328−36334,1999に記載の細胞接着阻害試験を行った。すなわち、まずオステオポンチンがトロンビンにより切断されて生じるN末端側の断片(nOPN)に含まれるRGD配列をRAAに置換した改変体(nOPN−RAA)を固定化し、ブロッキングを行った後、マウスY9A2抗体または精製キメラY9A2抗体を添加した。続けてヒトα9インテグリン分子を発現させたSW480細胞(以下、SW480/hα9細胞と表記することがある)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、クリスタルバイオレットとメタノールを用いて固定・染色して、洗浄後、接着した細胞中の色素をTriton X−100で抽出し、波長595nmにおける吸光度を測定した。
その結果、表1に示したように、マウスY9A2抗体及び精製キメラY9A2抗体は、ほぼ同じIC50で、nOPN−RAAに対するSW480/hα9細胞の接着を阻害する活性を持つことが判った。IC50は、抗α9インテグリン抗体を添加しない場合に起こる細胞接着のレベルを基準としたときに、それを50%抑制する抗α9インテグリン抗体の濃度として定義される。
《実施例3:ヒト化Y9A2抗体遺伝子の作製》
マウスY9A2抗体のVH及びVL中の相補性決定領域(CDR)アミノ酸の移植先となる鋳型ヒト抗体は、マウスY9A2抗体のVH、VLのフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列に対して、それらと相同性の高いアミノ酸配列を持つヒト抗体のgermlineの中から選んだ。具体的には、鋳型ヒトVHとしてはDP−88にJH6を組み合わせたもの、鋳型ヒトVLとしてはDPK−1にJκ4を組み合わせたものを選んだ。
マウスY9A2抗体のVH及びVL中の相補性決定領域(CDR)アミノ酸の移植先となる鋳型ヒト抗体は、マウスY9A2抗体のVH、VLのフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列に対して、それらと相同性の高いアミノ酸配列を持つヒト抗体のgermlineの中から選んだ。具体的には、鋳型ヒトVHとしてはDP−88にJH6を組み合わせたもの、鋳型ヒトVLとしてはDPK−1にJκ4を組み合わせたものを選んだ。
上記の鋳型ヒト抗体VH及びVLのFRに、マウスY9A2のVH及びVLから必要なアミノ酸配列を移植してヒト化抗体を作製した。具体的には、まずVHについては、前述の鋳型ヒト抗体VHのCDRアミノ酸配列及びFRアミノ酸の数カ所をマウスY9A2抗体のVH中の対応するアミノ酸配列で置換し、2種類のヒト化Y9A2抗体のVH、すなわち、RY9A2VHv5及びRY9A2VHv8のアミノ酸配列をデザインし(それぞれ、配列番号1及び配列番号31)、更に、それらのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列をデザインした(それぞれ、配列番号64及び配列番号94)。RY9A2VHv8では、RY9A2VHv5におけるマウスY9A2抗体由来のFRアミノ酸残基のうちの4つが鋳型ヒト抗体のものに置換されている。
VLについては、前述の鋳型ヒト抗体VLのCDRアミノ酸配列をマウスY9A2抗体のVLのCDRのアミノ酸配列で置換し、ヒト化Y9A2抗体のVLであるRY9A2VLv01のアミノ酸配列をデザインし(配列番号61)、更に、そのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列をデザインした(配列番号124)。
上記のRY9A2VHv5、RY9A2VHv8及びRY9A2VLv01をコードするDNA断片を作製するために、オリゴDNAを材料としたPCRによる全合成を行った。具体的には、RY9A2VHv5については、それぞれ図3に示したように、VHの全長をカバーするように6種類のオリゴDNA(配列番号131〜136に記載)に分けて合成し、それらを用いて次の手順でPCRを行った。すなわち、まず6種類のオリゴDNAを各々等量混合したものを鋳型として、Pyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ)を用いて、96℃で30秒、50℃で30秒、72℃で3分のステップを15サイクル繰り返した。次に、このPCR産物の1μLを鋳型として用い、図3の太文字表記部分の配列を持つオリゴDNA(配列番号137及び138に記載)をプライマーとして、Pyrobest DNAポリメラーゼを用いて、96℃で20秒、72℃で2分のステップを25サイクル繰り返すことにより、VHの全長を増幅した。RY9A2VHv8についても、概ね同様の方法で作製した。
RY9A2VLv01の作製の場合は、図4に示した6本のオリゴDNA(配列番号139〜144に記載)を用いて、上記と同様に15サイクルのPCRを行った後、その増幅産物を鋳型として用い、図4の太文字表記部分の配列を持つオリゴDNA(配列番号145及び146に記載)をプライマーとして、上記と同様の25サイクルのPCRを行うことにより、VLの全長を増幅した。
上記のVH、VLともに、抗体のリーダー配列としては、WO2007/139164に記載の、ヒト化抗オステオポンチンモノクローナル抗体と同じものを使用した。また、得られたDNA断片の両端には、クローニングのためのHindIII認識配列及びBamHI認識配列が付加されている。
このようにして得たVH及びVLのDNA断片を、制限酵素HindIII及びBamHIで消化し、それぞれ前述の発現ベクターAG−γ1、AG−κと連結して定法により大腸菌に導入してクローニングし、得られた大腸菌クローンからQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAを調製した。得られたプラスミドDNAを鋳型としてGenomeLab DTCS−Quick Start Kitを及びCEQ2000オートシークエンサー(ともにBECKMAN COULTER社)を用いて、クローニングされているVH及びVLの塩基配列を解読することにより、デザイン通りの塩基配列を持つクローンを得た。これらのクローンを培養して、EndoFree Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用い、重鎖、軽鎖の発現プラスミドを精製した。
精製した重鎖発現プラスミド、軽鎖発現プラスミドを混合して、FreeStyle 293 Expression Systemを用いて細胞に導入し、抗体を一過性に発現させた。この際、RY9A2VHv5を挿入した重鎖発現プラスミドと、RY9A2VLv01を挿入した軽鎖発現プラスミドを組み合わせた場合に発現するヒト化Y9A2抗体をRY9Av501抗体と命名し、RY9A2VHv8を挿入した重鎖発現プラスミドと、RY9A2VLv01を挿入した軽鎖発現プラスミドを組み合わせた場合に発現するヒト化Y9A2抗体をRY9Av801抗体と命名した。
培養上清中に蓄積した各ヒト化Y9A2抗体の濃度の測定及び、培養上清からの精製抗体の取得は、前述のキメラY9A2抗体の場合と同じ方法で行った。
《実施例4:α9インテグリン分子発現細胞との結合性確認》
前述の方法で発現させたRY9A2v501抗体、RY9A2v801抗体について、ヒトα9インテグリン分子に対する結合性をCell ELISA法によりキメラY9A2抗体(以下、cY9A2抗体と表記することがある)と比較した。すなわち、ヒトα9インテグリン分子を発現させたSW480細胞をELISAプレートに固定化し、それに対して上記cY9A2抗体またはRY9A2v501抗体またはRY9A2v801抗体を反応させた後、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(American Qualex社)を反応させ、TMBを加えて発色させた後、希硫酸を加えて反応を停止させ波長450nmにおける吸光度を調べた。その結果、図5及び図6に示したようにRY9A2v501抗体及びRY9A2v801抗体はcY9A2抗体と同等のヒトα9インテグリン分子結合性を持つことが確認された。
前述の方法で発現させたRY9A2v501抗体、RY9A2v801抗体について、ヒトα9インテグリン分子に対する結合性をCell ELISA法によりキメラY9A2抗体(以下、cY9A2抗体と表記することがある)と比較した。すなわち、ヒトα9インテグリン分子を発現させたSW480細胞をELISAプレートに固定化し、それに対して上記cY9A2抗体またはRY9A2v501抗体またはRY9A2v801抗体を反応させた後、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(American Qualex社)を反応させ、TMBを加えて発色させた後、希硫酸を加えて反応を停止させ波長450nmにおける吸光度を調べた。その結果、図5及び図6に示したようにRY9A2v501抗体及びRY9A2v801抗体はcY9A2抗体と同等のヒトα9インテグリン分子結合性を持つことが確認された。
《実施例5:RY9A2v501抗体、RY9A2v801抗体の細胞接着阻害試験》
上記の精製RY9A2v501抗体、精製RY9A2v801抗体及びマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験による活性の比較を行った。表2に2回の試験の平均値を示した。
上記の精製RY9A2v501抗体、精製RY9A2v801抗体及びマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験による活性の比較を行った。表2に2回の試験の平均値を示した。
表2に示したように、上記2種のヒト化抗体はマウスY9A2と同等の細胞接着阻害活性を持つことが確認された。
《実施例6:CDRの一部をヒト抗体の配列に改変したRY9A2抗体の作製》
上記2種のヒト化抗体について、さらに、ヒトでの抗原性出現の危険性を回避すべく、ヒト化抗体のCDR中のアミノ酸のヒト抗体アミノ酸への置換可能性を検討した。検討の結果、上記ヒト化抗体の重鎖可変領域(VH)の65番目のリジンと66番目のアスパラギン酸の、それぞれ、鋳型ヒト抗体DP−88における同じ部位のグルタミンとグリシンへの置換、並びに、軽鎖可変領域(VL)の24番目のリジンの、鋳型ヒト抗体のDPK1が属するVκ1のgermlineに由来するグルタミンまたはアルギニンへの置換が、ヒト化抗体の活性の低下を伴うことない、適切な置換であることが見出された。
上記2種のヒト化抗体について、さらに、ヒトでの抗原性出現の危険性を回避すべく、ヒト化抗体のCDR中のアミノ酸のヒト抗体アミノ酸への置換可能性を検討した。検討の結果、上記ヒト化抗体の重鎖可変領域(VH)の65番目のリジンと66番目のアスパラギン酸の、それぞれ、鋳型ヒト抗体DP−88における同じ部位のグルタミンとグリシンへの置換、並びに、軽鎖可変領域(VL)の24番目のリジンの、鋳型ヒト抗体のDPK1が属するVκ1のgermlineに由来するグルタミンまたはアルギニンへの置換が、ヒト化抗体の活性の低下を伴うことない、適切な置換であることが見出された。
具体的な手順としては、まず、前述のようにして作製したRY9A2VHv5のDNA及びRY9A2VLv01のDNAを鋳型として、アミノ酸置換が可能なようにコドンを変更したプライマーを用いて、一般的に行われるPCRを用いた変異導入を行った。得られた変異導入済みのVH(RY9A2VHv11と命名した)及びVL(グルタミンへの置換を含む方をRY9A2VLv011と命名し、アルギニンへの置換を含む方をRY9A2VLv012と命名した)のDNA断片を、前述と同様に発現ベクターAG−γ1、AG−κと連結して、発現プラスミドを作製しFreeStyle 293 Expression Systemを用いて発現させた。RY9A2VHv11、RY9A2VLv011及びRY9A2VLv012のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号16、配列番号62及び配列番号63に、塩基配列を、それぞれ、配列番号79、配列番号125及び配列番号126に示した。RY9A2VHv11とRY9A2VLv011の組み合わせの発現で得られるヒト化抗体をRY9A2v11011抗体、RY9A2VHv11とRY9A2VLv012の組み合わせの発現で得られるヒト化抗体をRY9A2v11012抗体と命名した。発現上清中の抗体のヒトα9インテグリン分子への結合性をCell ELISAによりcY9A2抗体と比較した結果、図7に示したように、cY9A2抗体と同等の結合性を維持していることが判った。
《実施例7:RY9A2v11011抗体及びRY9A2v11012抗体の細胞接着阻害試験》
上記のRY9A2v11011抗体及びRY9A2v11012抗体の発現上清から、前述と同様にプロテインAカラムを用いて精製抗体を取得し、波長280nmにおける吸光度に基づいて濃度を算出した。得られた精製ヒト化抗体とマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験により活性比較を行った結果を表3に示した(2回の試験の平均値)。
上記のRY9A2v11011抗体及びRY9A2v11012抗体の発現上清から、前述と同様にプロテインAカラムを用いて精製抗体を取得し、波長280nmにおける吸光度に基づいて濃度を算出した。得られた精製ヒト化抗体とマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験により活性比較を行った結果を表3に示した(2回の試験の平均値)。
表3に示したように、上記2種類のヒト化抗体ではマウスY9A2抗体よりも2倍以上阻害活性が向上していることが判った。CDRのアミノ酸配列に由来する抗原性出現の危険性を低下させることを意図してアミノ酸置換を導入した結果、このような活性の向上が見られたことは、従来の知見からは予想できなかった効果であった。
《実施例8:メチオニン残基を改変したRY9A2抗体の作製》
さらに、本発明者らは、ヒト化Y9A2抗体(RY9A2)のメチオニン残基の酸化による保存安定性低下を回避すべく、ヒト化抗体のCDR中のメチオニン残基の置換可能性を検討した。
さらに、本発明者らは、ヒト化Y9A2抗体(RY9A2)のメチオニン残基の酸化による保存安定性低下を回避すべく、ヒト化抗体のCDR中のメチオニン残基の置換可能性を検討した。
具体的には、上記ヒト化抗体のVHのCDR1にある34番目のメチオニン部分のアミノ酸置換体を作製した。まずは、抗原との結合性が低下しない置換アミノ酸を選択するために、RY9A2VHv5のDNAを鋳型として変異導入PCRを行うことにより、上記メチオニンのコドンを改変し20種類のアミノ酸に置換したVHのDNAを作製した。以下、前述の方法と同様に、これらを導入した発現プラスミドを作製し、RY9A2VLv01の軽鎖発現プラスミドと組み合わせて発現させた。ロイシンへの置換を含むVHをRY9A2VHv5(M34L)、イソロイシンへの置換を含むVHをRY9A2VHv5(M34I)と命名した。また、RY9A2VHv5(M34L)とRY9A2VLv01の組み合わせで発現させたヒト化抗体をRY9A2v5(M34L)01抗体、RY9A2VHv5(M34I)とRY9A2VLv01の組み合わせで発現させたヒト化抗体をRY9A2v5(M34I)01抗体と命名した。RY9A2VHv5(M34L)及びRY9A2VHv5(M34I)のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号11及び配列番号6に、塩基配列を、それぞれ、配列番号74及び配列番号69に示した。
上記の発現で得られた上清を用いてCell ELISAによりcY9A2抗体との結合性の比較評価を行った。その結果、図8に示したように上記2種のヒト化抗体は、cY9A2抗体と同等の抗原結合性を持つことを見出した。
《実施例9:RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の細胞接着阻害活性》
上記のRY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の発現上清から、前述と同様にプロテインAカラムを用いて精製抗体を取得し、波長280nmにおける吸光度に基づいて濃度を算出した。得られた精製ヒト化抗体とマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験により活性比較を行った結果を表4に示した(2回の試験の平均値)。
上記のRY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の発現上清から、前述と同様にプロテインAカラムを用いて精製抗体を取得し、波長280nmにおける吸光度に基づいて濃度を算出した。得られた精製ヒト化抗体とマウスY9A2抗体について、細胞接着阻害試験により活性比較を行った結果を表4に示した(2回の試験の平均値)。
表4に示したように、上記2種類のヒト化抗体ではマウスY9A2抗体よりも2倍程度阻害活性が向上していることが判った。抗体の安定性低下の回避を意図したアミノ酸置換でも、阻害活性が向上することは、当初の予測にはなかった好ましい効果であった。
《実施例10:RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の酸化に対する耐性の確認》
前述のようにして作製したRY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体が、実際に酸化に対して耐性を持つことを下記の方法で調べた。まず、cY9A2抗体、RY9A2v501抗体、RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の溶液に、最終濃度0.4%の過酸化水素水を添加し、25℃で4時間静置した後、PBSに透析して回収した。続いて、それぞれの抗体について、前述のCell ELISAにより、過酸化水素水で処理していない抗体との比較解析を行った。その結果、図9に示したように、34番目がメチオニンであるcY9A2抗体及びRY9A2v501抗体については、過酸化水素処理によって抗原への結合性が低下しているのに対して、RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体については、過酸化水素処理による結合性低下は見られなかった。
前述のようにして作製したRY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体が、実際に酸化に対して耐性を持つことを下記の方法で調べた。まず、cY9A2抗体、RY9A2v501抗体、RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体の溶液に、最終濃度0.4%の過酸化水素水を添加し、25℃で4時間静置した後、PBSに透析して回収した。続いて、それぞれの抗体について、前述のCell ELISAにより、過酸化水素水で処理していない抗体との比較解析を行った。その結果、図9に示したように、34番目がメチオニンであるcY9A2抗体及びRY9A2v501抗体については、過酸化水素処理によって抗原への結合性が低下しているのに対して、RY9A2v5(M34L)01抗体及びRY9A2v5(M34I)01抗体については、過酸化水素処理による結合性低下は見られなかった。
以上のように、Y9A2抗体の場合、34番目のメチオニンをロイシンまたはイソロイシンに改変することによって、ヒトα9インテグリン分子に対する親和性を維持したまま、酸化に対する耐性を付与できることを発見した。
《実施例11:Y9A2抗体のFabの作製》
Y9A2抗体のFabは以下のように大腸菌を用いて作製した。まず、Y9A2抗体のVH及びVL領域をPCRで増幅し、J.Biochem.138,1−10(2005)に記載のpTrc99A改変ベクターに導入し、Y9A2抗体Fabの発現プラスミドを得た。pTrc99A改変ベクターにはヒトIgγ1のCH1ドメインの遺伝子及びヒトIgκドメインの遺伝子が導入されており、それぞれの上流にVH、VLドメインの遺伝子を導入することができる。またVH及びVLの上流部分には分泌発現に必要なpelBシグナルが付加されており、蛋白の発現はtrcプロモーターとLacIリプレッサーにより制御されている。上記のY9A2抗体のFabの発現プラスミドを大腸菌JM83株に導入し、30℃で2xYT培地で培養し1mMのIPTGを添加した後、一晩培養してFabを上清中に発現させた。この培養上清数100mLに含まれるY9A2抗体のFabを、プロテインGカラム(GEヘルスケア社)を用いて精製し、波長280nmでの吸光度に基づいて濃度を算出した。
Y9A2抗体のFabは以下のように大腸菌を用いて作製した。まず、Y9A2抗体のVH及びVL領域をPCRで増幅し、J.Biochem.138,1−10(2005)に記載のpTrc99A改変ベクターに導入し、Y9A2抗体Fabの発現プラスミドを得た。pTrc99A改変ベクターにはヒトIgγ1のCH1ドメインの遺伝子及びヒトIgκドメインの遺伝子が導入されており、それぞれの上流にVH、VLドメインの遺伝子を導入することができる。またVH及びVLの上流部分には分泌発現に必要なpelBシグナルが付加されており、蛋白の発現はtrcプロモーターとLacIリプレッサーにより制御されている。上記のY9A2抗体のFabの発現プラスミドを大腸菌JM83株に導入し、30℃で2xYT培地で培養し1mMのIPTGを添加した後、一晩培養してFabを上清中に発現させた。この培養上清数100mLに含まれるY9A2抗体のFabを、プロテインGカラム(GEヘルスケア社)を用いて精製し、波長280nmでの吸光度に基づいて濃度を算出した。
《実施例12:Y9A2抗体のFabへの変異導入》
さらに、本発明者らは、ヒト化Y9A2抗体の活性を向上させるために、他のCDR中のアミノ酸残基の置換可能性を検討した。
さらに、本発明者らは、ヒト化Y9A2抗体の活性を向上させるために、他のCDR中のアミノ酸残基の置換可能性を検討した。
具体的には、まず、本発明者らは、抗原との結合に直接的には関与しないが、間接的に影響を与える可能性があるCDR中のアミノ酸残基として、VHのCDR3中にある、N末端から104番目のアスパラギン酸と105番目のフェニルアラニンに着目した。これらの残基への着目は本発明者らの十分な経験と創意に基づくものであり、公知事実に基づいて容易に想到できるものではない。これらの残基をコードするコドン部分をNNKに改変したプライマーと(NはAまたはTまたはGまたはCを意味し、KはGまたはTを意味する)、GeneTailor Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)を用いて、前述のマウスY9A2抗体Fabの遺伝子の上記部位に変異を導入したプラスミドを作製した。このプラスミドを大腸菌に導入してクローニングし、おおよそ900クローンについて個別にFabを発現させた。上清中に分泌されたアミノ酸置換導入Fabの濃度は次のELISA法により算出した。すなわち、ヤギ抗ヒトIgG−Fab(BETHYL社)抗体を固定化したELISAプレートにFabを含む培養上清を添加して反応させ、次にHRP標識ヤギ抗ヒトIgκ抗体(American Qualex社)を結合させ、TMB試薬を加えて発色させた後、希硫酸を加えて反応を停止させて波長450nmにおける吸光度を調べた。濃度算出のための標準試料としては、前述の精製Y9A2抗体のFabを用いた。
次に、上記のアミノ酸置換導入Fab発現上清を用いて、ヒトα9インテグリン分子に対する結合性を前述のCell ELISA法により調べた。比較対照としてY9A2抗体のFabについても同時に測定を行った。その結果、Y9A2抗体の104番目と105番目のアミノ酸がそれぞれ、アラニンとロイシン、アラニンとトリプトファン、トリプトファンとグルタミン酸、セリンとトリプトファンに置換された4種類のクローンが、Y9A2抗体Fabよりも高い抗原結合活性を有することが確認された。これら4種類の置換体及びY9A2抗体のFabについてのCell ELISAの結果を図10及び図11に示した。
《実施例13:RY9A2v501のVHのCDR3アミノ酸置換体の作製》
前項に記載の検討において、Y9A2抗体Fabのヒトα9インテグリン分子への結合性が向上した4種類のアミノ酸置換をRY9A2v501抗体のVHに導入した。アミノ酸置換の導入は、前述のCDRアミノ酸置換と同様に、RY9A2v501のVH遺伝子を鋳型として、コドンを変更したプライマーを用いたPCRにより行った。アラニンとロイシン、アラニンとトリプトファン、トリプトファンとグルタミン酸、セリンとトリプトファンへの置換を導入したVHを、それぞれ、RY9A2VHv5(AL)、RY9A2VHv5(AW)、RY9A2VHv5(WE)、RY9A2VHv5(SW)と命名し、それぞれのアミノ酸配列を、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号4に、塩基配列を、配列番号65、配列番号66、配列番号68及び配列番号67に記載した。
前項に記載の検討において、Y9A2抗体Fabのヒトα9インテグリン分子への結合性が向上した4種類のアミノ酸置換をRY9A2v501抗体のVHに導入した。アミノ酸置換の導入は、前述のCDRアミノ酸置換と同様に、RY9A2v501のVH遺伝子を鋳型として、コドンを変更したプライマーを用いたPCRにより行った。アラニンとロイシン、アラニンとトリプトファン、トリプトファンとグルタミン酸、セリンとトリプトファンへの置換を導入したVHを、それぞれ、RY9A2VHv5(AL)、RY9A2VHv5(AW)、RY9A2VHv5(WE)、RY9A2VHv5(SW)と命名し、それぞれのアミノ酸配列を、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号4に、塩基配列を、配列番号65、配列番号66、配列番号68及び配列番号67に記載した。
これらのVH断片を、前述と同様に発現ベクターAG−γ1と連結して、重鎖発現プラスミドを作製し、RY9A2VLv01の軽鎖発現プラスミドと組み合わせて発現させた。得られた培養上清から、プロテインAカラムを用いて4種類の精製抗体(アラニンとロイシン、アラニンとトリプトファン、トリプトファンとグルタミン酸、セリンとトリプトファンに置換したVHを含む抗体を、それぞれ、RY9A2v5(AL)01、RY9A2v5(AW)01、RY9A2v5(WE)01及びRY9A2v5(SW)01と命名した)を取得した。抗体濃度は波長280nmでの吸光度に基づいて算出した。
《実施例14:2アミノ酸置換導入RY9A2v501抗体の細胞接着阻害試験》
前述のようにして作製した4種類のRY9A2抗体について、前述の細胞接着阻害試験を行った。2回の試験の平均値を表5に示した。IC50の欄の( )内の数値は各ヒト化抗体と同時に測定したマウスY9A2抗体の結果である。その結果、いずれのヒト化抗体もマウスY9A2抗体と比較して阻害活性が向上した。特に、104番目と105番目をそれぞれアラニンとトリプトファンに置換したRY9A2v5(AW)01抗体及びトリプトファンとグルタミン酸に置換したRY9A2v5(WE)01抗体については、マウスY9A2抗体と比較してIC50が2分の1以下の濃度であったことから、阻害活性が大きく向上していることが判った。
前述のようにして作製した4種類のRY9A2抗体について、前述の細胞接着阻害試験を行った。2回の試験の平均値を表5に示した。IC50の欄の( )内の数値は各ヒト化抗体と同時に測定したマウスY9A2抗体の結果である。その結果、いずれのヒト化抗体もマウスY9A2抗体と比較して阻害活性が向上した。特に、104番目と105番目をそれぞれアラニンとトリプトファンに置換したRY9A2v5(AW)01抗体及びトリプトファンとグルタミン酸に置換したRY9A2v5(WE)01抗体については、マウスY9A2抗体と比較してIC50が2分の1以下の濃度であったことから、阻害活性が大きく向上していることが判った。
《実施例15:CDRアミノ酸置換を導入したRY9A2抗体の作製》
上記の結果から、RY9A2における活性および/または物性を改善するために、以下のVHおよび/またはVLのCDRアミノ酸における置換が有効であることが確認された:1)VHのCDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンまたはイソロイシンへの置換;2)VHのCDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;3)VHのCDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換;4)VLのCDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のグルタミンまたはアルギニンへの置換。
上記の結果から、RY9A2における活性および/または物性を改善するために、以下のVHおよび/またはVLのCDRアミノ酸における置換が有効であることが確認された:1)VHのCDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンまたはイソロイシンへの置換;2)VHのCDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;3)VHのCDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換;4)VLのCDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のグルタミンまたはアルギニンへの置換。
この結果に基づいて、RY9A2v501及びRY9A2v801のVHおよび/またはVLのCDRにおいて上記の置換のいずれかを導入した、VH及びVLアミノ酸をデザインした。これらのVH及びVLのアミノ酸配列(前述のVH及びVLを含む)を以下の表6−1〜表6−3に示す。
上記のVH又はVLをコードするDNA配列を、前述のDNA合成方法又は変異導入方法を用いて作製し、これらのDNA配列を、前述と同様に発現ベクターAG−γ1、AG−κにそれぞれ連結して、発現プラスミドを作製する。次いで、作製した重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドを、FreeStyle293 Expression Systemを用いて発現させる。培養上清中に蓄積した各ヒト化Y9A2抗体の濃度の測定及び、培養上清からの精製抗体の取得は、前述と同様の方法で行う。
《実施例16:改良型ヒト化Y9A2抗体の作製》
本発明者らによる相当の創意検討の結果、マウスY9A2抗体よりも有意に優れた活性を有するヒト化Y9A2抗体として、以下の3種の抗体、RY9A2v12(M34L)012抗体、RY9A2v11(M34L)012抗体及びRY9A2v5(IAW)01抗体を作製することに成功した。
本発明者らによる相当の創意検討の結果、マウスY9A2抗体よりも有意に優れた活性を有するヒト化Y9A2抗体として、以下の3種の抗体、RY9A2v12(M34L)012抗体、RY9A2v11(M34L)012抗体及びRY9A2v5(IAW)01抗体を作製することに成功した。
1.RY9A2v12(M34L)012抗体
RY9A2v12(M34L)012抗体の重鎖可変領域(VH)は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v12(M34L)012抗体のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号119及び126に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体のVHは、上記RY9A2VHv8(配列番号31)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンへの置換、並びに、CDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)のそれぞれグルタミン及びグリシンへの置換を有するものである。RY9A2v12(M34L)012抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)の、CDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のアルギニンへの置換を有するものである。RY9A2v12(M34L)012抗体の重鎖は、配列番号56に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号148及び配列番号149に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号63に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号154及び配列番号155に示される。
RY9A2v12(M34L)012抗体の重鎖可変領域(VH)は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域(VL)は、配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v12(M34L)012抗体のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号119及び126に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体のVHは、上記RY9A2VHv8(配列番号31)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンへの置換、並びに、CDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)のそれぞれグルタミン及びグリシンへの置換を有するものである。RY9A2v12(M34L)012抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)の、CDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のアルギニンへの置換を有するものである。RY9A2v12(M34L)012抗体の重鎖は、配列番号56に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号148及び配列番号149に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号63に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号154及び配列番号155に示される。
2.RY9A2v11(M34L)012抗体
RY9A2v11(M34L)012抗体のVHは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を有し、VLは、配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v11(M34L)012抗体のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号89及び126に示される。RY9A2v11(M34L)012抗体のVHは、上記RY9A2VHv5(配列番号1)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンへの置換、並びに、CDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)のそれぞれグルタミン及びグリシンへの置換を有するものである。RY9A2v11(M34L)012抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)の、CDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のアルギニンへの置換を有するものである。RY9A2v11(M34L)012抗体の重鎖は、配列番号26に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号150及び配列番号151に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号63に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号154及び配列番号155に示される。
RY9A2v11(M34L)012抗体のVHは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を有し、VLは、配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v11(M34L)012抗体のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号89及び126に示される。RY9A2v11(M34L)012抗体のVHは、上記RY9A2VHv5(配列番号1)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のロイシンへの置換、並びに、CDR2中のリジン残基及びアスパラギン酸残基(VHアミノ酸配列の65番目及び66番目のアミノ酸残基)のそれぞれグルタミン及びグリシンへの置換を有するものである。RY9A2v11(M34L)012抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)の、CDR1中のリジン残基(VLアミノ酸配列の24番目のアミノ酸残基)のアルギニンへの置換を有するものである。RY9A2v11(M34L)012抗体の重鎖は、配列番号26に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号150及び配列番号151に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号63に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号154及び配列番号155に示される。
3.RY9A2v5(IAW)01抗体
RY9A2v5(IAW)01抗体のVHは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、VLは、配列番号61に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v5(IAW)01のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号71及び124に示される。RY9A2v5(IAW)01抗体のVHは、上記RY9A2VHv5(配列番号1)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のイソロイシンへの置換、並びに、CDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)のそれぞれアラニン及びトリプトファンへの置換を有するものである。RY9A2v5(IAW)01抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)と同じである。RY9A2v5(IAW)01抗体の重鎖は、配列番号8に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号152及び配列番号153に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号61に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号156及び配列番号157に示される。
RY9A2v5(IAW)01抗体のVHは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、VLは、配列番号61に示されるアミノ酸配列を有する。RY9A2v5(IAW)01のVH及びVLの塩基配列は、それぞれ配列番号71及び124に示される。RY9A2v5(IAW)01抗体のVHは、上記RY9A2VHv5(配列番号1)の、CDR1中のメチオニン残基(VHアミノ酸配列の34番目のアミノ酸残基)のイソロイシンへの置換、並びに、CDR3中のアスパラギン酸残基及びフェニルアラニン残基(VHアミノ酸配列の104番目及び105番目のアミノ酸残基)のそれぞれアラニン及びトリプトファンへの置換を有するものである。RY9A2v5(IAW)01抗体のVLは、上記RY9A2VLv01(配列番号61)と同じである。RY9A2v5(IAW)01抗体の重鎖は、配列番号8に示されるVHとヒトIgγ1定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号152及び配列番号153に示される。RY9A2v12(M34L)012抗体の軽鎖は、配列番号61に示されるVLとヒトIgκ定常領域とを連結して得られ、そのアミノ酸配列及び塩基配列は、それぞれ、配列番号156及び配列番号157に示される。
上記の3種の改良型ヒト化Y9A2抗体のVH及びVLのDNA断片を、前述と同様に発現ベクターAG−γ1、AG−κと連結して発現プラスミドを作製し、FreeStyle 293 Expression Systemを用いて発現させ、前述と同様にプロテインAカラムを用いて培養上清から各々の精製抗体を取得した。
《実施例17:改良型ヒト化Y9A2抗体のヒトα9インテグリンに対する結合性確認》
前述のように作製した3種類のヒト化Y9A2抗体およびcY9A2抗体について、実施例4と同様に、CELL ELISAによりヒトα9インテグリンに対する結合性の確認を行った。その結果、改良型ヒト化Y9A2抗体はいずれもキメラY9A2抗体と同様、ヒトα9インテグリンに対する結合性を有することが確認できた。
前述のように作製した3種類のヒト化Y9A2抗体およびcY9A2抗体について、実施例4と同様に、CELL ELISAによりヒトα9インテグリンに対する結合性の確認を行った。その結果、改良型ヒト化Y9A2抗体はいずれもキメラY9A2抗体と同様、ヒトα9インテグリンに対する結合性を有することが確認できた。
《実施例18:改良型ヒト化Y9A2抗体のヒトnOPNに対する細胞接着阻害試験》
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、マウスY9A2抗体との活性を比較するために、実施例2に記載と同様の手順で細胞接着阻害試験を行った。
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、マウスY9A2抗体との活性を比較するために、実施例2に記載と同様の手順で細胞接着阻害試験を行った。
その結果を表7に示した。IC50(μg/mL)は、抗α9インテグリン抗体を添加しない場合に起こる細胞接着のレベルを基準としたときに、それを50%抑制する抗α9インテグリン抗体の濃度として定義される。マウスY9A2抗体のIC50値の平均的は0.039μg/mLであった。表7にはマウスY9A2のIC50値を1とした場合のヒト化Y9A2抗体の比活性を示す。2〜3回の試験の平均値を表7に示した。3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体は、マウスY9A2抗体と比較して4倍以上、細胞接着阻害活性が向上していることが判った。
《実施例19:改良型ヒト化Y9A2抗体のヒトVCAM−1、ヒトTenascinCに対する細胞接着阻害試験》
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、前述の細胞接着阻害試験に用いたnOPN−RAAとは異なるリガンドを用いて検討を行った。具体的にはヒトVCAM−1/Ig(R&D社)、ヒトTenascinCのRGD配列をRAAに置換した改変体ヒトTenascinC−RAAを用いて同様に細胞接着阻害作用の検討を行なった。
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、前述の細胞接着阻害試験に用いたnOPN−RAAとは異なるリガンドを用いて検討を行った。具体的にはヒトVCAM−1/Ig(R&D社)、ヒトTenascinCのRGD配列をRAAに置換した改変体ヒトTenascinC−RAAを用いて同様に細胞接着阻害作用の検討を行なった。
2回の試験の平均値を表8に示した。マウスY9A2抗体のヒトVCAM−1、ヒトTenascinC−RAAに対する細胞接着阻害活性IC50値の平均値は、それぞれ、0.077μg/mL、0.041μg/mLであった。表8にはマウスY9A2抗体のIC50値を1とした場合のヒト化Y9A2抗体の比活性を示す。3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体は、用いるリガンドにより違いはあるが、マウスY9A2抗体と同等以上の阻害活性を示すことが判った。
《実施例20:改良型ヒト化Y9A2抗体の細胞遊走阻害試験》
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、SW480/hα9細胞のnOPN−RAAに対する遊走活性に対する阻害作用を検討した。実験は、Molecular Biology of the cell,12:3214−3225,2001に記載の細胞遊走阻害試験を基に若干の改変を加えて行った。すなわち、nOPN−RAAをトランスウェル(Millipore社)の上層に固定化した後にプレートに取り付け、その後10%FCSを含んだF15培地を下層に加えた。上層にマウスY9A2抗体またはヒト化Y9A2抗体をSW480/hα9細胞と一緒に添加し、37℃で16時間インキュベートした。その後、トランスウェルの下層に遊走してきた細胞をQCM Chemotaxis Cell Migration 24−well Assayキット(Millipore社)を用いて定量化した。過剰量である100μg/mLのマウスY9A2抗体を添加することにより阻害される遊走活性をα9依存的な遊走活性と定義し(100%阻害)、各抗体の阻害率を表9に示す。
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体について、SW480/hα9細胞のnOPN−RAAに対する遊走活性に対する阻害作用を検討した。実験は、Molecular Biology of the cell,12:3214−3225,2001に記載の細胞遊走阻害試験を基に若干の改変を加えて行った。すなわち、nOPN−RAAをトランスウェル(Millipore社)の上層に固定化した後にプレートに取り付け、その後10%FCSを含んだF15培地を下層に加えた。上層にマウスY9A2抗体またはヒト化Y9A2抗体をSW480/hα9細胞と一緒に添加し、37℃で16時間インキュベートした。その後、トランスウェルの下層に遊走してきた細胞をQCM Chemotaxis Cell Migration 24−well Assayキット(Millipore社)を用いて定量化した。過剰量である100μg/mLのマウスY9A2抗体を添加することにより阻害される遊走活性をα9依存的な遊走活性と定義し(100%阻害)、各抗体の阻害率を表9に示す。
マウスY9A2抗体では、50μg/mLでなければ有意な遊走阻害作用が見られないが、本発明者らによって作製された改良型ヒト化Y9A2抗体では、5μg/mLとマウスY9A2抗体の1/10の濃度で有意な阻害活性が見られた。なお、有意差検定は、抗体未添加のウェルに対するStudent’s t−testにて行なった。*: P<0.05、**: P<0.01。
この有意な細胞遊走阻害作用は臨床有効濃度に直結しており、臨床有効濃度が1/10になることは臨床において投与間隔の拡大(例えば、2週に1回投与が数ヶ月に1回投与になる、等)に繋がり、更に、5μg/mL程度の血中濃度維持であれば皮下注製剤の開発が可能となる。皮下注製剤は現在世界中で自己注射が認められており、慢性疾患においては、特に患者、医療機関双方に取って利便性が格段に向上する。このように本発明による生物学的活性の改善は、その治療有効性のみならず患者コンプライアンスの改善に大きく寄与するものである。
《実施例21:改良型ヒト化Y9A2抗体の熱安定性試験》
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体およびマウスY9A2抗体について、70℃で2時間または10時間インキュベートした後に、実施例18に記載の細胞接着阻害試験を用いて熱安定性について評価を行った。
3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体およびマウスY9A2抗体について、70℃で2時間または10時間インキュベートした後に、実施例18に記載の細胞接着阻害試験を用いて熱安定性について評価を行った。
4回の実験の平均値を表10に示した。熱処理をしない場合の細胞接着阻害活性を100%として、熱処理した後の各抗体の活性残存率を示した。マウスY9A2抗体では2時間で活性の低下が認められたが、3種類の改良型ヒト化Y9A2抗体は10時間インキュベートしても活性が85%以上残っていた。このように、改良型ヒト化Y9A2抗体が極めて熱に対して安定である性質は、臨床開発製剤において室温保存可能な利便性の高い製剤の開発に繋がるといえる。
本発明のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体は、ドナーマウス抗ヒトα9インテグリン抗体と比較して、活性および/または物性が改善された抗体であり、ヒトα9インテグリンとその複数のリガンドとの相互作用の遮断を通じ、強力な抗炎症作用や骨破壊抑制作用を有するものであり、ヒトα9インテグリンが病態形成に関与する各種疾患の予防または治療に有用である。
本出願は、日本で出願された特願2008−004975(出願日:平成20年1月11日)および特願2008−282496(出願日:平成20年10月31日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
本出願は、日本で出願された特願2008−004975(出願日:平成20年1月11日)および特願2008−282496(出願日:平成20年10月31日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
Claims (14)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
- 前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
1)配列番号1または配列番号31の34番目のメチオニン残基のロイシンまたはイソロイシンへの置換;
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換;
3)配列番号1または配列番号31の104番目のアスパラギン酸残基及び105番目のフェニルアラニン残基の、それぞれ、アラニン及びロイシン、アラニン及びトリプトファン、トリプトファン及びグルタミン酸、またはセリン及びトリプトファンへの置換
からなる群より選択される少なくとも1つの置換を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列又は配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。 - 前記重鎖可変領域が、配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列において:
2)配列番号1または配列番号31の65番目のリジン残基及び66番目のアスパラギン酸残基の、それぞれ、グルタミン及びグリシンへの置換
を有するアミノ酸配列からなり、かつ、
前記軽鎖可変領域が、配列番号61に示されるアミノ酸配列において:
4)配列番号61の24番目のリジン残基のグルタミンまたはアルギニンへの置換
を有するアミノ酸配列からなる、請求項2に記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。 - 前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1である、請求項1〜3のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
- 前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、請求項1〜3のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
- 前記抗体の重鎖定常領域がヒトIgγ1であり、前記抗体の軽鎖定常領域がヒトIgκである、請求項1〜3のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の重鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の軽鎖可変領域をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
- 請求項7に記載のポリヌクレオチドおよび/または8に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項9に記載の発現ベクターが導入された宿主細胞。
- 請求項10に記載の宿主細胞を培養し、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を発現させる工程を包含する、ヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を生産する方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体を含む、関節リウマチの治療薬。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の治療有効量を投与する工程を包含する、関節リウマチを予防または処置するための方法。
- 関節リウマチを予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載のヒト化抗ヒトα9インテグリン抗体の使用。
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