本発明は、窒素を含む原料ガスを用いて水素含有ガスを生成する水素生成装置と、この水素生成装置から水素含有ガスが燃料電池に供給されて発電する燃料電池システムと、それらの運転方法と、に関する。
従来から、エネルギーを有効に利用することが可能である分散型の発電装置として、発電効率及び総合効率が共に高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に「燃料電池システム」という)が注目されている。
この燃料電池システムは、発電部の本体として、燃料電池を備えている。この燃料電池としては、例えば、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、アルカリ水溶液形燃料電池、固体高分子形燃料電池、或いは、固体電解質形燃料電池等が用いられる。これらの燃料電池の内、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池(略称、「PEFC」)は、発電運転の際の動作温度が比較的低いため、燃料電池システムを構成する燃料電池として好適に用いられる。特に、固体高分子形燃料電池は、リン酸形燃料電池と比べて、電極触媒の劣化が少なく、かつ電解質の逸散が発生しないため、携帯用電子機器や電気自動車等の用途において特に好適に用いられる。
さて、燃料電池の多く、例えば、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池は、発電運転の際に水素を燃料として用いる。しかし、それらの燃料電池において発電運転の際に必要となる水素の供給手段は、通常、インフラストラクチャーとして整備されてはいない。従って、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムにより電力を得るためには、その燃料電池システムの設置場所において、燃料としての水素を生成する必要がある。そのため、従来の燃料電池システムでは、燃料電池と共に、水素生成装置が併設されることが多い。この水素生成装置では、例えば、水素生成方法の1つである水蒸気改質法が用いられて、水素が生成される。この水蒸気改質法では、天然ガス、プロパンガス、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料(原料ガス)、又は、メタノール等のアルコール系の原料と水とが混合される。そして、その混合物が、改質触媒を備える改質器に供給される。すると、改質器では、水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスが生成される。
一方、水蒸気改質法により水素生成装置の改質器で生成された水素含有ガスは、副生成物として生成される一酸化炭素(CO)を含有している。例えば、水素生成装置の改質器で生成された水素含有ガスは、約10〜15%の濃度で一酸化炭素を含有している。ここで、水素含有ガスが含有する一酸化炭素は、固体高分子形燃料電池の電極触媒を著しく被毒する。そして、この電極触媒の被毒は、固体高分子形燃料電池の発電性能を著しく低下させる。そのため、従来の水素生成装置では、水素含有ガスを生成する改質器に加え、その水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減するために、CO低減器が併設されることが多い。このCO低減器により、改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、100ppm以下、好ましくは、10ppm以下にまで低減される。この一酸化炭素が十分に除去された水素含有ガスが、発電運転の際、燃料電池システムの燃料電池に供給される。これにより、固体高分子形燃料電池において、電極触媒の被毒が防止される。
尚、水素生成装置を構成するCO低減器は、通常、その内部に配設される変成触媒において水性ガスシフト反応を進行させて一酸化炭素と水蒸気とから水素と二酸化炭素とを生成する変成器を備えている。又、このCO低減器は、変成器の下流側に、空気中の酸素と一酸化炭素との酸化反応を進行させる酸化触媒、又は、一酸化炭素のメタン化反応を進行させるメタン化触媒の少なくとも何れか一方を有する浄化器を更に備えている。これらの変成器及び浄化器により、CO低減器は、改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を100ppm以下にまで低減する。
ところで、水素生成装置の改質器に原料として供給される天然ガスは、通常、微量の窒素を含有している。この窒素の含有率は、例えば、天然ガスを供給する地域により異なっている。そして、燃料電池システムの発電運転の際、この窒素を含有する天然ガスが水素生成装置の改質器に供給されると、その改質器が備える改質触媒上において、水蒸気改質反応により生成される水素と窒素との化学反応が進行することにより、アンモニアが生成されることがある。ここで、アンモニアは、固体高分子形燃料電池の発電性能を大幅に低下させる化学物質であることが知られている。従って、燃料電池システムの発電運転の際には、天然ガスを原料として利用し、高濃度でアンモニアが生成する場合、水素生成装置で生成された水素含有ガスが固体高分子形燃料電池に供給される前に、その水素含有ガスが含有するアンモニアを除去する必要がある。
そこで、固体高分子形燃料電池の上流側にアンモニア除去器を設け、このアンモニア除去器により水素含有ガスが含有するアンモニアを除去し、このアンモニアが除去された水素含有ガスを固体高分子形燃料電池に供給する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−31247号公報
しかしながら、アンモニア除去器を備える従来の燃料電池システムの構成では、アンモニアによる固体高分子形燃料電池の発電性能の低下を防止することはできるが、改質器で生成されたアンモニアは浄化器を通過した後に除去されるので、浄化器に設けられた酸化触媒が、触媒種によっては、アンモニアにより被毒される場合がある。このアンモニアによる酸化触媒の被毒は、浄化器の一酸化炭素除去能力を著しく低下させる。これは、固体高分子形燃料電池における電極触媒の一酸化炭素による被毒の原因となる。ここで、この一酸化炭素による電極触媒の被毒は、アンモニアによる発電性能の低下に比べて、固体高分子形燃料電池の発電性能を著しく低下させる。
つまり、上述のように、改質器の改質触媒上でアンモニアが生成されると共に、浄化器の酸化触媒がアンモニアに対して被毒する金属を含有する場合、水素生成装置の運転時間が長くなるに伴い、酸化触媒の被毒が進行し、固体高分子形燃料電池に供給前にアンモニア除去器により水素含有ガスからアンモニアを除去するだけでは、燃料電池システムから安定した電力を得ることはできない。
又、アンモニアによる発電性能の低下を防止しかつ浄化器の酸化触媒がアンモニアにより被毒されることを防止する構成としては、水素生成装置における改質器と浄化器との間にアンモニア除去器を配設する構成が考えられる。しかし、かかる構成では、水素生成装置の構成が非常に複雑化するので、燃料電池システムを安価に提供することが難しい。
そのため、アンモニア除去器を設けることなく、水素生成装置の改質器で生成されたアンモニアによる酸化触媒の被毒に起因する発電性能の著しい低下を抑制し、長期間に渡り安定して電力を供給することができる燃料電池システムが切望されている。
本発明は、上記従来の燃料電池システムが有する課題を解決するためになされたものであって、改質反応中に窒素等の含窒素化合物が供給され、生成したアンモニアにより浄化器の酸化触媒が被毒されるような水素生成装置であっても長期間に渡り一酸化炭素濃度が十分に低減された高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能である水素生成装置と、この水素生成装置から水素含有ガスが燃料電池に供給されて電力を安定して供給することが可能である燃料電池システムと、それらの運転方法とを提供することを目的としている。
上記従来の課題を解決するため、本発明に係る水素生成装置は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給する第1ガス供給器と、アンモニア被毒する金属を含有する酸化触媒を有し該酸化触媒と酸化ガスとを用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、前記CO除去器に前記酸化ガスを供給する第2ガス供給器と、制御器とを備え、前記改質反応中に前記第1ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置であって、前記制御器は、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、制御器が、CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが所定の閾値以上になると酸化触媒の再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒の性能が長期間に渡り好適に維持される。これにより、一酸化炭素が十分に低減された高品質の水素含有ガスを長期間に渡り安定して供給することが可能な水素生成装置を提供することが可能になる。
この場合、前記含窒素化合物を含むガスは、該含窒素化合物を含む前記原料、及び、前記改質反応の方式がオートサーマル方式又は部分酸化方式である場合に前記改質器に供給される空気の何れかであることを特徴とする。
この場合、前記含窒素化合物は、窒素分子、アミン、及び、イソニトリルの何れかであることを特徴とする。
又、上記の場合、前記制御器は、前記第1ガス供給器から前記改質器に供給される前記含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、制御器が、第1ガス供給器から改質器に供給される含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると再生動作を行うよう制御するので、水素生成装置の改質器への含窒素化合物を含むガスの累積供給量に応じて酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記含窒素化合物を含むガス中の該含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する情報取得器と、前記所定の閾値を設定する閾値設定器と、を更に備え、前記閾値設定器は、前記情報取得器が取得する情報に基づき前記所定の閾値を設定するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、情報取得器と閾値設定器とを更に備え、閾値設定器が、情報取得器が取得する情報に基づき所定の閾値を設定するように構成されているので、含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度に応じて酸化触媒の再生動作を容易に実行させることが可能になる。
この場合、前記情報は、前記含窒素化合物の濃度に係る情報、前記含窒素化合物を含むガスの種類に係る情報、位置情報、及び、前記含窒素化合物を含むガスの供給主体に係る情報の何れかであることを特徴とする。
かかる構成とすると、情報取得器が取得する情報の何れもが含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度と密接に関連する情報であるので、燃料電池システムを納入する地域が如何なる地域であっても、又、燃料電池システムに供給する含窒素化合物を含むガスの供給主体が如何なる供給主体であっても、含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度に応じて酸化触媒の再生動作を適切に実行させることが可能になる。
又、上記の場合、前記CO除去器の温度を検出する温度検出器と、前記CO除去器の温度を制御する温度制御器と、を更に備え、前記制御器は、前記再生動作として、前記温度検出器により検出される前記CO除去器の温度が、該再生動作開始以前の制御温度、或いは、通常の制御温度よりも高くなるよう前記温度制御器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、温度検出器と温度制御器とを更に備え、制御器が、再生動作時に温度検出器により検出されるCO除去器の温度が、再生動作開始以前の制御温度、或いは通常の制御温度よりも高くなるよう温度制御器を制御するので、還元反応により酸化触媒上から被毒物質を確実に脱離させることが可能になる。これにより、酸化触媒の被毒を確実に解消することが可能になる。
この場合、前記水素生成装置がその内部に備えるガス流路をパージガスで置換するためのパージガス供給器を更に備え、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の停止動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給が停止されると共に前記パージガス供給器から前記パージガスの供給が開始される前に、前記温度検出器により検出される前記CO除去器の温度が、該再生動作開始以前の制御温度、或いは、通常の制御温度よりも高くなるよう前記温度制御器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、CO除去器の内部のガス流路内を還元性の雰囲気とした後、制御器が、再生動作時に温度検出器により検出されるCO除去器の温度が、再生動作開始以前の制御温度、或いは通常の制御温度よりも高くなるよう温度制御器を制御するので、酸化触媒上での還元反応を促進させることが可能になると共に、その還元反応により酸化触媒上から被毒物質を確実に脱離させることが可能になる。
一方、上記の場合、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の起動動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給開始時期が通常の起動動作時における該供給開始時期よりも遅くなるよう該第2ガス供給器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、水素生成装置の起動動作時にCO除去器の内部を過渡的に還元性の雰囲気とするので、酸化触媒の被毒を容易に解消することが可能になる。
更に、上記の場合、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の起動動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給量が通常運転時における該供給量よりも少なくなるよう該第2ガス供給器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、水素生成装置の起動動作時にCO除去器の内部を過渡的に概ね還元性の雰囲気とするので、酸化触媒の被毒を容易に解消することが可能になる。
又、上記の場合、前記制御器は、前記水素生成装置の累積運転時間が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、水素生成装置の累積運転時間が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記改質器に水を供給する水供給器を更に備え、前記制御器は、前記水供給器から前記改質器に供給される前記水の累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、水供給器から改質器に供給される水の累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記制御器は、前記第2ガス供給器から前記CO除去器に供給される前記酸化ガスの累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、第2ガス供給器からCO除去器に供給される酸化ガスの累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
ここで、上記何れかの場合、前記累積アンモニア供給量の上限界は、前記CO除去器を通過した前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度が、前記再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、前記CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量であることを特徴とする。
又、前記累積アンモニア供給量の上限界は、前記CO除去器を通過した前記水素含有ガス中の酸素の濃度が、前記再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、前記CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量であることを特徴とする。
かかる構成とすると、累積アンモニア供給量の上限界が、CO除去器を通過した水素含有ガス中の一酸化炭素又は酸素の濃度が、再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量とされるので、酸化触媒の再生動作をより一層適切な時期に実施することが可能になる。
一方、上記従来の課題を解決するため、本発明に係る燃料電池システムは、上記何れかに記載の水素生成装置と、前記水素生成装置により生成される前記水素含有ガスと酸素含有ガスとが供給されて発電する燃料電池と、を備える。
かかる構成とすると、燃料電池システムが本発明に係る特徴的な水素生成装置を備えているので、長期間に渡り電力を安定して供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る水素生成装置の運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器と、Ruを含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、を備え、前記改質反応中に前記ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置の運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。
かかる構成とすると、CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、酸化触媒の再生動作が行われるので、水素生成装置により長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して得ることが可能になる。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器、該改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器、並びに、Ruを含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器を備える水素生成装置と、前記水素生成装置により生成される前記水素含有ガスと酸素含有ガスとが供給されて発電する燃料電池と、を備え、前記改質反応中に前記水素生成装置のガス供給器から改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される燃料電池システムの運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。
かかる構成とすると、水素生成装置が備えるCO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、酸化触媒の再生動作が行われるので、燃料電池システムにより長期間に渡り所望の電力を安定して得ることが可能になる。
本発明に係る水素生成装置及びその運転方法によれば、経時的に進行する酸化触媒のアンモニア被毒を確実に解消させることができるので、改質反応中に含窒素化合物を含むガスが供給され、生成したアンモニアが酸化触媒に供給されても、長期間に渡り水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が十分に低減された高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能になる。
又、本発明に係る燃料電池システム及びその運転方法によれば、長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して供給可能な水素生成装置を備えているので、長期間に渡り電力を安定して供給することが可能になる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。一方、図2(b)は、浄化器が備える酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図3(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。一方、図3(b)は、浄化器が備える酸化触媒からニトロシルがアンモニアとして脱離される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態2に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図6は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図7は、天然ガスに含まれる窒素の濃度と、その窒素を含む天然ガスを用いた場合の水素含有ガス中のアンモニア濃度との関係を、天然ガスを供給する地域毎に示した対応図である。
図8は、制御装置の記憶部に予め記憶されている、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報と、天然ガス中の窒素濃度と、所定の閾値と、情報取得器を介して入力される番号との関係を模式的に示す対応図である。
符号の説明
1 原料供給装置(第1ガス供給器)
1a 流量調整弁
1b 流量検出部
2 水供給装置(水供給器)
2a 流量調整弁
2b 流量検出部
3 空気供給装置(第2ガス供給器)
3a ブロア
4 水素生成装置
5 改質器
5a 加熱器
6 変成器
7 浄化器(CO除去器)
7a 温度検出器
7b 冷却器
7c 加熱器
8 流路切替弁
9 燃料電池
10 制御装置(制御器)
10a 計時部
11 触媒担体
12 Ru触媒
13 酸化触媒体
14 閾値設定器
15 情報取得器
100,200 燃料電池システム
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
先ず、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。尚、図1においては、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを示しており、その他の構成要素については図示を省略している。
本実施の形態では、水素含有ガスを生成するための原料ガスとして窒素を含む天然ガスが用いられる形態について例示する。ここで、本明細書では、この窒素を含む天然ガスに代表される原料ガスを総称して、「含窒素化合物を含むガス」と記載する。尚、天然ガスは、その天然ガスを供給する地域(原料ガスの供給地域)や、天然ガスを供給する供給会社(原料ガスの供給主体)によっても異なるが、数%程度の窒素を含有していることがある。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100は、天然ガスのインフラストラクチャーから原料ガスとしての天然ガスを導入してこれを後述する水素生成装置4の改質器5に供給する原料供給装置1を備えている。この原料供給装置1は、流量調整弁1aを備えており、この流量調整弁1aの動作により天然ガスのインフラストラクチャーから改質器5への天然ガスの供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の改質器5に向けて原料ガスとしての天然ガスを供給する。又、この原料供給装置1は、流量検出部1bを備えている。この流量検出部1bは、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される天然ガスの流量を検出する。そして、流量検出部1bは、天然ガスの流量に応じた電気信号を出力する。この流量検出部1bの出力信号に基づいて、流量調整弁1aが制御される。これにより、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5への天然ガスの供給量が調整される。
又、図1に示すように、この燃料電池システム100は、水道等の水のインフラストラクチャーから水蒸気を発生させるための水を導入してこれを上述した水素生成装置4における改質器5に供給する水供給装置2を備えている。この水供給装置2は、流量調整弁2aを備えており、この流量調整弁2aの動作により水道等の水のインフラストラクチャーから改質器5への水の供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の改質器5に向けて水蒸気を発生させるための水を供給する。又、この水供給装置2は、流量検出部2bを備えている。この流量検出部2bは、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される水の流量を検出する。そして、流量検出部2bは、水の流量に応じた電気信号を出力する。この流量検出部2bの出力信号に基づいて、流量調整弁2aが制御される。これにより、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への水の供給量が調整される。
又、図1に示すように、この燃料電池システム100は、大気中から酸素の供給源としての空気を導入してこれを後述する本発明に係るCO除去器である浄化器7に供給する空気供給装置3を備えている。この空気供給装置3は、ブロア3aを備えている。ブロア3aは、その動作が後述する制御装置10により制御されることにより、大気中から浄化器7への空気の供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の浄化器7に向けて酸素の供給源としての空気を供給する。
一方、この燃料電池システム100は、上述した改質器5及び浄化器7と、変成器6とを備える水素生成装置4を備えている。
具体的には、図1に示すように、水素生成装置4は改質器5を備えている。この改質器5は、原料供給装置1から原料ガスとしての天然ガスが供給されると共に、水供給装置2から水蒸気を発生させるための水が供給されて、図1では特に図示しない改質触媒によって水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスを生成する。この水素含有ガスが改質器5において生成される際、改質器5が有する改質触媒は、水蒸気改質反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この改質触媒の加熱及び保温は、例えば、燃焼用燃料の燃焼により発生する熱エネルギーが用いられて行われる。そこで、図1に示すように、水素生成装置4の改質器5は、加熱器5aを備えている。この加熱器5aは、原料ガスとして供給される天然ガスの一部、水素生成装置4から排出される一酸化炭素が十分に除去されていない水素含有ガス、又は、後述する燃料電池9から排出される発電に用いられなかった余剰の水素含有ガス等を燃焼させることにより、熱エネルギーを発生させる。この加熱器5aが発生させる熱エネルギーにより、改質器5の改質触媒が水蒸気改質反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、改質器5は、水素含有ガスを生成する。
本実施の形態では、改質器5の改質触媒として、Ruからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガスを生成する際には、改質器5の改質触媒は、加熱器5aによって600℃〜700℃の温度にまで加熱される。そして、改質器5の改質触媒は、水素含有ガスの生成時、加熱器5aによって600℃〜700℃の温度で保温される。これにより、改質器5は、水素を主成分として含有する水素含有ガスを生成する。尚、本実施の形態では、改質器5の改質触媒としてRuからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、この形態に限定されることはなく、例えばNiからなる遷移金属触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、Niの触媒作用とRuの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。又、本実施の形態では、加熱器5aは燃焼バーナーを備えている。この燃焼バーナーに燃焼用燃料が供給されることにより、加熱器5aはその供給される燃焼用燃料を燃焼して熱エネルギーを発生させる。
又、図1に示すように、水素生成装置4は、改質器5で生成された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、変成器6を備えている。この変成器6は、改質器5から水素含有ガスが供給されて、図1では特に図示しない変成触媒によって水性ガスシフト反応が進行することにより、その水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する。この水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が低減される際、変成器6が有する変成触媒は、水性ガスシフト反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この変成触媒の加熱及び保温は、例えば、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスにより変成触媒が加熱及び保温されることにより行われる。そのため、本実施の形態では、図1に示すように、水素生成装置4の変成器6は、改質器5が有する加熱器5aに相当する加熱器を有してはいない。本実施の形態では、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスにより、変成器6の変成触媒が水性ガスシフト反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、変成器6は、改質器5で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する。
本実施の形態では、変成器6の変成触媒として、Ptからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する際には、変成器6の変成触媒は、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスによって200℃〜300℃程度の温度にまで加熱される。そして、変成器6の変成触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減するとき、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスによって200℃〜300℃程度の温度で保温される。これにより、変成器6は、改質器5で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を、一酸化炭素と水蒸気とを反応させる水性ガスシフト反応によって、約10%〜15%から約0.3%程度にまで低減する。尚、本実施の形態では、変成器6の変成触媒としてPtからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、この形態に限定されることはなく、例えばCu−Znを含む触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、Cu−Znの触媒作用とPtの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。
更に、図1に示すように、水素生成装置4は、変成器6において一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、浄化器7を備えている。この浄化器7は、変成器6から水性ガスシフト反応により一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスが供給されると共に、空気供給装置3から酸素(酸化ガス)の供給源としての空気が供給されて、図1では特に図示しない浄化触媒(本実施の形態では、酸化触媒)によって酸化反応が進行することにより、変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する。この水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が更に低減される際、浄化器7が有する酸化触媒は、酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この酸化触媒の加熱及び保温は、例えば、変成器6から供給される高温状態の水素含有ガスや、酸化反応が進行する際に発生する反応熱により酸化触媒が加熱及び保温されることによって行われる。その一方で、図1に示すように、この浄化器7は、酸化触媒の温度、又は、浄化器7内の温度の少なくとも一方の温度を検出するための温度検出器7aを備えている。この温度検出器7aは、例えばサーミスター等の検温素子を備え、そのサーミスター等の検温素子が、酸化触媒の内部又は表面、又は、浄化器7の内部等の所定位置に設けられている。この温度検出器7aでは、酸化触媒の温度や浄化器7の内部を通流する水素含有ガスの温度等に応じて、例えばサーミスターの電気抵抗が変化する。この温度検出器7aが有するサーミスターの電気抵抗の変化に基づき、浄化器7が有する酸化触媒が、酸化反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、浄化器7は、変成器6で生成された一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する。
浄化器7の酸化触媒を酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温する際、空気供給装置3から浄化器7に空気を供給すると、後述するが、浄化器7の酸化触媒が劣化する場合がある。そこで、図1に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム100では、酸化触媒の温度を適切に制御するために、浄化器7が冷却器7b及び加熱器7cを備えている。これらの冷却器7b及び加熱器7cを適切に駆動させることにより、酸化触媒を劣化させることなく、酸化触媒の温度を酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温することができる。尚、これらの冷却器7b及び加熱器7cを合わせて温度制御器を構成してもよい。
本実施の形態では、浄化器7における酸化触媒量を200mlとしている。又、浄化器7の酸化触媒として、Ruからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する際には、浄化器7の酸化触媒は、変成器6から供給される高温状態の水素含有ガス等によって100℃〜200℃程度の温度にまで加熱される。これにより、浄化器7は、変成器6で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を、酸化ガスとしての酸素により一酸化炭素を酸化させる酸化反応によって、約0.3%程度から10ppm以下にまで低減する。
尚、本実施の形態では、浄化器7の酸化触媒としてRuからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、このような形態に限定されることはなく、例えばPtやRh等からなる遷移金属触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、PtやRh等の触媒作用とRuの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。但し、Ptの触媒作用は、RuやRhを使用する構成に対して、比較的劣化し難い。従って、浄化器7の酸化触媒としてPtからなる遷移金属触媒を使用する場合には、本発明を実施する必要がない場合がある。
又、本実施の形態では、浄化器7が酸化触媒を有し、その酸化触媒により酸化反応を進行させる形態について例示しているが、この形態に限定されることはない。例えば、浄化器7が浄化触媒としてのメタン化触媒を有し、このメタン化触媒によりメタン化反応を進行させて水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する形態としてもよい。又は、浄化器7が酸化触媒とメタン化触媒とを共に備え、その2つの触媒により酸化反応とメタン化反応とを同時に進行させて水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する形態としてもよい。但し、浄化器7がメタン化触媒を有し、メタン化反応により水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する構成では、浄化器7に酸素を供給する必要がないため、浄化触媒は比較的劣化し難い。従って、浄化器7がメタン化触媒を有する場合には、本発明を実施する必要がない場合がある。
一方、図1に示すように、この燃料電池システム100は、浄化器7で一酸化炭素濃度が更に低減された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、流路切替弁8を備えている。この流路切替弁8は、例えば三方弁により構成され、水素生成装置4で生成された一酸化炭素濃度が十分に低減された水素含有ガスの供給先を、後述する燃料電池9と水素生成装置4の改質器5における加熱器5aとの間で適宜切り替える。
そして、この燃料電池システム100は、その発電部の本体としての燃料電池9を備えている。この燃料電池9としては、本実施の形態では、例えば、固体高分子型燃料電池が用いられている。この固体高分子型燃料電池は、水素生成装置4で生成された一酸化炭素濃度が十分に低減された水素含有ガスがそのアノード側に供給されると共に、酸化ガスとしての酸素を含む空気(酸素含有ガス)が大気中からそのカソード側に供給され、各々の電極触媒上で所定の電気化学反応が進行することにより、所定の電力を出力する。尚、この燃料電池9としては、固体高分子型燃料電池の他に、例えば、リン酸型燃料電池を用いることも可能である。このリン酸型燃料電池は、発電運転の際の動作温度がその他の燃料電池の場合と比較して低温であるため、固体高分子型燃料電池と共に、燃料電池システム100を構成する燃料電池9として好適に用いられる。
更に、この燃料電池システム100は、燃料電池システム100を構成する各構成要素の動作を適宜制御する制御装置10を備えている。この制御装置10は、例えば、図1では特に図示しないが、中央演算処理装置(CPU)、記憶部等を備えている。
ここで、この制御装置10は、原料供給装置1及び水供給装置2が備える流量検出部1b及び流量検出部2bの出力信号や、空気供給装置3が備えるブロア3aの駆動信号等に基づき、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される原料ガスの累積供給量や、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に供給される水の累積供給量や、空気供給装置3から浄化器7への空気の累積供給量等を適宜検出することが可能に構成されている。又、燃料電池システム100が備える図1では図示されないインバータ等の出力信号に基づき、燃料電池9の累積発電量を検出することが可能に構成されている。
又、図1に示すように、この制御装置10は、計時部10aを備えている。この計時部10aは、燃料電池システム100や水素生成装置4等の構成要素の連続運転時間及び累積運転時間や、予め記憶部に記憶されている処理命令が実行された場合の経過時間等を必要に応じて計測する。
更には、図1では特に図示しないが、この制御装置10は、各種所定の閾値(例えば、燃料電池システム100や水素生成装置4の連続運転時間や累積運転時間、原料供給装置1から水素生成装置4への原料ガスの累積供給量、燃料電池9の累積発電量、或いは、燃料電池システム100の起動若しくは停止回数等に代表される所定のパラメータに係る所定の閾値)を設定するための設定部を備えている。ここで、燃料電池システム100の各構成要素の動作に係るプログラムは、予め制御装置10の記憶部に記憶されている。そして、この記憶部に記憶されているプログラムに基づいて、制御装置10が燃料電池システム100の動作を適宜制御する。
尚、図1に示すように、燃料電池システム100を構成する各構成要素は、所定の接続配管や配線材料等によって相互に接続されている。
次に、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100の動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを4NL/分の割合で供給する形態を例示する。
燃料電池システム100のオペレーターや制御装置10によってその燃料電池システム100が起動されると、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われるよう、燃料電池システム100の動作を制御する。
そして、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われた後、改質器5における改質触媒の温度が所定の温度にまで到達したことを検出すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて原料ガスとしての天然ガスが所定の供給量で供給されるよう制御する。又、制御装置10は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5への天然ガスの供給開始と共に、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に向けて水が所定の供給量で供給されるよう制御する。すると、水素生成装置4の改質器5では、その改質器5が備える改質触媒上に天然ガスと水とが各々供給され、改質器5の改質触媒上で天然ガスと水蒸気とを用いる水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスが生成される。この改質器5で生成される高温状態の水素含有ガスは、原料供給装置1から改質器5に連続して供給される天然ガスにより押し出されて、改質器5の下流側に配設された変成器6及び浄化器7にその順で導入される。そして、改質器5で生成された水素含有ガスは、その変成器6や浄化器7に配設されている変成触媒や酸化触媒を加熱しながら、かつそれらの変成触媒や酸化触媒の温度上昇に応じて進行する水性ガスシフト反応や酸化反応により一酸化炭素濃度が徐々に低減され、水素生成装置4から排出される。この際、制御装置10は、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7に向けて酸化ガスとしての酸素が所定の供給量で供給されるよう、ブロア3aの動作を制御する。これにより、水素生成装置4の浄化器7では、酸化触媒による酸化反応が進行する。
水素生成装置4における変成器6及び浄化器7の変成触媒及び酸化触媒の温度が所定の温度に到達するまでは、水素生成装置4から排出される水素含有ガスには、高濃度の一酸化炭素が含まれている。そこで、燃料電池システム100では、制御装置10が流路切替弁8を制御することにより、水素生成装置4で生成された水素含有ガスが、燃料電池9に供給されることなく、水素生成装置4における改質器5の加熱器5aに供給される。すると、改質器5の加熱器5aは、その一酸化炭素濃度が十分に低減されていない水素含有ガスを燃焼用燃料として用いて、改質器5の改質触媒を加熱及び保温する。
その後、水素生成装置4における改質器5、変成器6、及び、浄化器7の運転温度が各々所定の運転温度に到達すると、制御装置10は、流路切替弁8を制御することにより、水素生成装置4から加熱器5aへの水素含有ガスの供給を停止させる。そして、制御装置10は、水素生成装置4から燃料電池9への水素含有ガスの供給を開始させる。又、それと同時に、制御装置10は、酸化ガスとしての酸素を含む空気が大気中から燃料電池9に供給されるよう制御する。これにより、燃料電池9は発電運転を開始する。
ところで、水素含有ガスを生成するための原料ガスとして用いる天然ガスは、含窒素化合物として微量の窒素(窒素ガス)を含有している場合がある。そして、燃料電池システム100の発電運転の際、この窒素を含有する天然ガスが水素生成装置4の改質器5に供給されると、その改質器5が備える改質触媒上において、水蒸気改質反応により生成される水素と窒素との化学反応が進行することにより、アンモニアが生成される場合がある。尚、アンモニアは、固体高分子型燃料電池の発電性能を低下させる化学物質であることが知られている。
本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて、約3%の濃度で窒素を含有する天然ガスが供給される実施形態を例示する。この場合、後に詳しく説明する図7に示すように、水素生成装置4の改質器5では、燃料電池9の発電運転の開始後、その約3%の濃度で含有する窒素と水蒸気改質反応により生成される水素とが用いられて、約5ppmのアンモニアが生成される。つまり、燃料電池システム100の発電運転が開始された場合、水素生成装置4では、改質器5から浄化器7に向けて約5ppmの濃度でアンモニアが常時供給されることになる。そして、アンモニアを含む水素含有ガスが改質器5から浄化器7に供給される場合、浄化器7における酸化触媒の被毒が経時的に進行する。又、アンモニアを含む水素含有ガスが燃料電池9に供給される場合、アンモニアを含まない水素含有ガスを用いて発電する場合と比べて、燃料電池9の出力電圧が経時的に低下することが知られている。
以下、燃料電池9の発電運転が開始された後の、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池9の出力電圧の経時的な変化について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。
尚、図2(a)において、左側の縦軸は、一酸化炭素濃度(ppm)、又は、アンモニア濃度(ppm)を示している。又、図2(a)において、右側の縦軸は、燃料電池の出力電圧(V)を示している。更に、図2(a)において、横軸は経過時間(h)を示している。ここで、便宜上、図2(a)の横軸について、経過時間5h〜55hの範囲では5h/目盛とし、その他の範囲では1h/目盛としている。そして、図2(a)において、曲線aは一酸化炭素濃度の経時的な変化を示しており、曲線bは燃料電池の出力電圧の経時的な変化を示しており、曲線cはアンモニア濃度の経時的な変化を示している。
図2(a)に示すように、経過時間0hに燃料電池9の発電運転が開始されると、その発電運転の開始から約1時間(経過時間0h〜1h)は、水素生成装置4からはアンモニアの濃度が1ppm未満にまで低減された良質の水素含有ガスが排出される。又、水素生成装置4からは、一酸化炭素の濃度が3ppm程度にまで低減された良質の水素含有ガスが排出される。このため、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間は、燃料電池9の出力電圧に電圧降下が発生することはない。
しかしながら、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が徐々に上昇する。又、浄化器7において酸化触媒のアンモニアによる被毒が徐々に進行するため、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が緩やかに上昇する。その結果、図2(a)に示すように、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後からは、燃料電池9の出力電圧に電圧降下が発生する。
本実施の形態では、図2(a)に示すように、燃料電池9の発電運転が開始されてから約3時間経過後、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が約5ppmにまで上昇する。又、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が約3.5ppmにまで上昇する。その結果、燃料電池システム100において、燃料電池9の出力電圧が約1%低下する。但し、燃料電池9の発電運転が開始されてから約3時間経過以降は、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度がその後更に上昇することはない。一方、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇し始めてから数十時間は、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度は5ppm程度の濃度で推移する。そのため、図2(a)に示すように、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度やアンモニア濃度が上昇し始めてから数十時間は、燃料電池9の出力電圧は約1%低下した状態で推移する。
そして、図2(a)に示すように、燃料電池9の発電運転が開始されてから約40時間経過後、酸化触媒のアンモニアによる被毒が更に進行すると、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度は約5ppmの濃度で推移するが、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が10ppmを超える濃度にまで上昇する。そのため、燃料電池9の発電運転が開始されてから約40時間経過後においては、燃料電池9の出力電圧が約5%低下する。そして、その後は、浄化器7においてアンモニアによる酸化触媒の被毒が更に進行するため、その酸化触媒の被毒の進行度合いに応じて、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が更に上昇する。その結果、燃料電池システム100において、燃料電池9の出力電圧が更に低下する。
ここで、浄化器7の酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムについて、図面を参照しながら説明する。
図2(b)は、浄化器の酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図2(b)に示すように、浄化器7では、触媒担体11の上部にRu触媒12が設けられており、これにより、酸化触媒体13が構成されている。そして、酸化反応が進行する際、空気供給装置3から浄化器7に向けて酸化ガスとしての酸素を含む空気が供給されると、Ru上でその酸素と上流側の変成器6から供給される水素含有ガスに含まれるアンモニアとの反応式(1)に示す化学反応が進行する。この化学反応により、ニトロシル(NO)が生成される。
4NH3+5O2→4NO+6H2O ・・・(1)
反応式(1)が進行して生成されたニトロシルは、Ru上に吸着して、酸化触媒体13が被毒された状態となる。これにより、浄化器7の酸化触媒は触媒活性を失う。そして、浄化器7の酸化触媒は、酸化反応を促進することが不能となり、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減することができない状態となる。
このような、浄化器7の酸化触媒の被毒が進行して、水素生成装置4の変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することができない状態(即ち、燃料電池9の出力電圧が低下し続ける状態)のまま燃料電池システム100の発電運転を継続することは、燃料電池9の発電効率が著しく悪化するため好ましくはない。又、その後、長期間に渡り燃料電池システム100の出力電圧が所定の電圧値以下で推移することは、燃料電池システム100を使用する上で大きな問題となる。
そこで、本実施の形態では、燃料電池システム100において、浄化器7の酸化触媒の被毒が進行して、水素生成装置4の変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減できない状態に陥る前に、制御装置10が燃料電池9の発電運転を停止させる。そして、制御装置10は、浄化器7の酸化触媒を再生させるために、浄化器7の酸化触媒の再生処理(再生動作)が実施されるよう制御する。
以下、浄化器7の酸化触媒を再生させるための再生処理の詳細と、その再生処理が実施される場合の水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池9の出力電圧の経時的な変化とについて説明する。
図3(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。
尚、図2(a)の場合と同様にして、図3(a)において、左側の縦軸は、一酸化炭素濃度(ppm)又はアンモニア濃度(ppm)を示している。又、右側の縦軸は、燃料電池の出力電圧(V)を示している。更に、図3(a)において、横軸は経過時間(h)を示している。ここで、便宜上、図3(a)の横軸について、経過時間5h〜40h及び46h〜81hの範囲では5h/目盛とし、その他の範囲では1h/目盛としている。そして、図3(a)において、曲線aは一酸化炭素濃度の経時的な変化を示しており、曲線bは燃料電池の出力電圧の経時的な変化を示しており、曲線cはアンモニア濃度の経時的な変化を示している。
又、図4は、本発明の実施の形態1に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図3(a)に示すように、燃料電池システム100の発電運転が開始されると、その発電運転の開始から約1時間(経過時間0h〜1h)は、浄化器7の酸化触媒の被毒が実質的に進行しないため、水素生成装置4はアンモニアや一酸化炭素の濃度が所定の濃度以下にまで低減された良質の水素含有ガスを燃料電池9に供給する。そのため、燃料電池9は所定の出力電圧で電力を出力する。
しかし、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後以降は、浄化器7において酸化触媒のアンモニアによる被毒が経時的に進行する。そのため、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が約5ppmにまで上昇する。又、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、数十時間に渡り5ppm程度で推移した後、経時的に上昇する。その結果、図3(a)に示すように、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後以降は、燃料電池9の出力電圧は数十時間に渡り1%程度低下した電圧で推移した後に経時的に低下する。
本実施の形態では、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が10ppmを大幅に超える濃度にまで上昇する前に、上述した再生動作を行うために、制御装置10が流路切替弁8を制御して水素含有ガスの供給を停止させることにより、燃料電池9の発電運転を停止させる。ここで、本実施の形態では、燃料電池システム100における浄化器7の酸化触媒の再生動作が必要と判断される運転の開始から停止までの連続運転時間の閾値を、40時間としている。尚、上記では、連続運転時間に対して所定の閾値が設定され、その閾値に基づき再生動作の要否を判断しているが、一日に一回起動及び停止を行うDSS(Daily−Start−and−Stop)運転タイプの燃料電池システムにおいては、各日の運転時間を累積した累積運転時間を計測し、この累積運転時間に対して所定の閾値が設定され、少なくとも水素生成装置4の累積運転時間が所定の閾値(本実施の形態の場合、40時間)になると再生動作が実施される。尚、上記連続運転時間は、累積運転時間の一形態であるため、連続運転時間も本発明の累積運転時間に含まれるものとする。
一方、制御装置10は、その設定された所定の閾値以上になったか否かを、制御装置10の計時部10aにより判定する。そして、制御装置10は、計時部10aにより連続運転時間が所定の閾値以上になったと判定した場合には、燃料電池9の発電運転を停止させた後、浄化器7の酸化触媒を再生するために、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が図3(a)に示す期間Ta(即ち、経過時間40h〜41h)において実施されるよう制御する。
ここで、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理について、図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、制御装置10は、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上に到達したと判定すると(ステップS1でYES)、流路切替弁8を制御することにより燃料電池9の発電運転を停止させる(ステップS2)。尚、制御装置10は、燃料電池システム100の連続運転時間が未だ所定の閾値以上に到達してはいないと判定すると(ステップS1でNO)、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上に到達したか否かの判定を繰り返し実行する。
次いで、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、これと同時に、制御装置10は、ブロア3aの動作を制御することにより、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる(ステップS3)。
次いで、制御装置10は、温度制御器(冷却器7b又は加熱器7c)を制御して、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度になったと判定すると(ステップS4でYES)、その酸化触媒の温度Tpを維持するよう制御する(ステップS5)。尚、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度にはなっていないと判定すると(ステップS4でNO)、温度制御器を制御して酸化触媒の温度Tpが上記温度範囲に入るよう調整し、それらの温度が所定の温度又は所定の温度範囲内の温度に制御されたか否かの判定を繰り返し実行する。
この図4のステップS3以降は、ステップS3直前に改質器5に供給された水の蒸発による体積膨張で、浄化器7の上流側の水素含有ガスが浄化器7に供給されると共に、浄化器7への空気の供給は停止されているため、通常よりも酸素濃度の低い水素含有ガスで満たされ、浄化器7の内部は、通常よりも酸素濃度の低減された還元性の高い雰囲気に維持されるため、酸化触媒の再生に貢献する所定の化学反応が進行する。
図3(b)は、浄化器の酸化触媒からニトロシルがアンモニアとして脱離される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図3(b)に示すように、触媒担体11の上部に設けられたRu触媒12に対して窒素原子が結合しているニトロシルは、空気の供給が遮断されて酸素の供給が遮断されると共に浄化器7の内部が還元性の雰囲気で維持されるよう制御されると、その浄化器7の内部に残留する水素含有ガスに含まれる水素との反応式(2)に示す化学反応が進行することによって、アンモニアに還元される。
5H2+2NO→2NH3+2H2O ・・・(2)
反応式(2)が進行して還元により生成されたアンモニアは、その後、酸化触媒体13を構成する触媒担体11上のRu触媒12から容易に脱離する。これにより、Ru触媒12の被毒状態が解消され、Ru触媒12はその触媒活性を取り戻す。そして、浄化器7の酸化触媒は、変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することができる状態にまで再生される。
さて、制御装置10は、図4に示すステップS3以降、上述のように上記温度範囲で浄化器7の内部が通常よりも還元性の高い雰囲気で維持され、その後、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定し(ステップS6でYES)、更に、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したと判定すると(ステップS7でYES)、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを改質器5の加熱器5aに供給する。そして、制御装置10は、このアンモニアを含む水素含有ガスを改質器5の加熱器5aで燃焼させるよう、後処理を実行させる(ステップS8)。尚、制御装置10は、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過してはいないと判定すると(ステップS6でNO)、所定の待機時間が経過したか否かの判定を繰り返し実行する。又、制御装置10は、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下してはいないと判定すると(ステップS7でNO)、その改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したか否かの判定を繰り返し実行する。
尚、酸化触媒を再生させる場合には、その酸化触媒又は浄化器7内等の温度が100℃〜300℃の範囲の温度であるときに再生処理を行うことが望ましい。つまり、本実施の形態では、浄化器7の温度とは酸化触媒の温度及び浄化器7内の雰囲気温度の少なくとも何れかの温度を含み、浄化器7の温度が100℃〜300℃の範囲の温度であるときに再生処理を行うことが望ましい。その理由は、酸化触媒の温度等が100℃未満では、還元反応の速度が著しく遅いためである。一方、酸化触媒の温度等が300℃を超える場合には、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素又は二酸化炭素と水素とによるメタン化反応が暴走して、酸化触媒の温度等の制御が困難となるからである。ここで、図4のステップS4において、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲の温度になったか否かを、浄化器7の温度検出器7aを用いて判定する。
又、図4のステップS7に示すように、水素生成装置4の内部の天然ガスによるパージ操作は、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下してから行うことが望ましい。その理由は、改質触媒の温度Trが300℃を超えている際にパージ操作を行うと、改質触媒上に天然ガス由来の炭素が析出して、その改質触媒の触媒活性が著しく低下するからである。
このように、図3(a)に示す期間Taにおいて、図4に示すステップS1〜ステップS8が実行されることにより、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が適切に行われる。そして、この再生処理が行われることにより、水素生成装置4の改質器5から供給されたアンモニアによって触媒活性が低下した浄化器7の酸化触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を再び10ppm以下にまで低減することができる状態にまで確実に再生される。
そして、図3(a)に示す期間Taにおいて浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が行われた後、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われるよう制御する。そして、その後、制御装置10は、図3(a)の経過時間41h〜81hに示すように、燃料電池システム100の発電運転が再び行われるよう制御する。燃料電池システム100の発電運転が再び開始されると、燃料電池9は電力の出力を再び開始する。
燃料電池システム100の発電運転が再び開始された場合、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される天然ガスには窒素が含まれているため、図3(a)の経過時間0h〜40hに示す燃料電池システム100の前回の発電運転時と同様、燃料電池システム100の発電運転時間の経過に伴って、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度や一酸化炭素濃度が徐々に上昇する。しかし、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される天然ガス中の窒素濃度が変化しない場合には、水素含有ガス中のアンモニア濃度及び一酸化炭素濃度の変化や、燃料電池9の出力電圧の変化は、燃料電池システム100の上記前回の発電運転時と同様となる。そこで、本実施の形態では、燃料電池システム100の上記前回の発電運転時と同様、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上(本実施の形態では40時間)に到達した時点で燃料電池9の発電運転を定期的に停止させ、その後、浄化器7における酸化触媒の再生処理を定期的に行う。
尚、上記再生処理において、ステップ3において改質器5への原料ガス及び水の供給を停止し、かつ浄化器7への空気の供給を停止したが、空気供給装置3からの空気の供給のみを停止し、改質器5内には原料ガス及び水の供給を継続し、水素含有ガスの生成を継続させた状態で上記再生動作を実施しても構わない。かかる実施形態は、図4のステップS8に示す水素生成装置4の内部の原料ガスによるパージ操作を行う必要がなく、つまり、上記図4に示す再生処理の間に冷却した改質器5及び変成器6の暖機運転を行う必要がなく、従って、スムーズに燃料電池9の発電運転に移行することが可能となるので、より一層好ましい実施形態である。
又、上記再生処理において、ステップS3で浄化器7への空気の供給を停止したが、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給量を少なくとも通常の発電運転時の供給量未満に制御して、これにより通常運転時よりもより還元性の雰囲気としても、酸化触媒の再生を進行させることが可能となる。これは、上述のステップS3において改質器5への原料ガス及び水の供給を継続させるタイプの再生処理においても同様に実施可能である。
又、図4に示す再生処理は、連続運転するタイプの燃料電池システムにおける酸化触媒の再生処理であったが、例えば、DSS運転が行われるようなタイプの燃料電池システムにおいては、その燃料電池システムの停止動作若しくは起動動作の度に、上記再生処理を実施しても構わない。又、燃料電池システムの累積運転時間が再生処理を要すると判断される所定の閾値以上になった後の停止動作若しくは起動動作において、上記再生処理を実施しても構わない。又、上記再生処理を起動動作時に実行する場合、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給開始時期を、通常の起動動作における供給開始時期よりも所定期間(例えば、Ta)遅くなるようにして、この所定期間中に通常の起動動作よりもより還元性の雰囲気とする。かかる構成としても、アンモニアにより被毒された酸化触媒を確実に再生することが可能である。
尚、以上で述べた再生処理においては、空気供給装置3からの空気供給量を低減させ、通常よりも浄化器7の内部の雰囲気の還元性をより一層向上させることで、酸化触媒を再生したが、空気供給装置3からの空気供給量を低減させず、酸化触媒(浄化器7)の温度を再生処理実行以前の制御温度よりも高い温度になるよう制御しても構わない。特に、酸化触媒の温度Tpを通常運転時の酸化触媒の制御温度(例えば、140℃)よりも高い温度(例えば、180℃)になるよう浄化器7bの温度制御器(例えば、加熱器7c)を制御すれば、酸化触媒の還元反応が反応速度論的に促進され、これにより酸化触媒が再生されるため、このような再生処理を行っても構わない。
又、このように、再生動作として通常の発電運転時よりも酸化触媒の温度をより高温に維持する方法を採用する場合には、酸化触媒の加熱手段の1つとして、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給量を増加させ、酸化触媒における反応熱を増加させる手段を採用することも考えられる。しかし、10ppmの濃度のアンモニアを含む水素含有ガスを供給して、酸素/一酸化炭素=2の条件の下で酸化反応を行い、酸化触媒の下流における一酸化炭素濃度が30ppmになった時点で空気量を酸素/一酸化炭素=2.5となるように増加させる試験を行ったところ、酸化ガス(空気)の供給量が増加されるとRuの酸化が促進され、逆にRuの劣化が加速されることが分かった。このため、酸化触媒の温度を通常の発電運転時よりも高温に維持してその再生を行う場合には、酸化ガスの供給量を増加させずに、図1に示す冷却器7b又は加熱器7cを用いて酸化触媒の温度を上昇させることが好ましい。かかる構成とすれば、アンモニアにより被毒された酸化触媒を劣化させることなく適切に再生することが可能になる。
尚、浄化器7の酸化触媒の再生動作は、燃料電池システム100の停止動作時及び起動動作時の何れのタイミングで行っても構わない。
又、本明細書では、浄化器7が有する酸化触媒の再生動作が必要と判断される連続運転時間の閾値は、上述した実施の形態のように、アンモニアによる被毒によって酸化触媒の劣化が進行し、浄化器7の下流における水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、再生動作が必要となる所定の一酸化炭素濃度(例えば、30ppm)に到達するまでの累積アンモニア供給量(本発明に係る累積アンモニア供給量の上限界)に基づき定められる。例えば、水素生成装置4の運転を開始してから浄化器7の酸化触媒に供給される累積アンモニア供給量が、上記上限界に到達すると想定される連続運転時間として定義される。又、より安全には、累積アンモニア供給量が、上記上限界未満の所定値に到達すると想定される連続運転時間として定義されても構わない。尚、ここで、上記酸化触媒の再生動作が必要となる所定の一酸化炭素濃度は、例えば、燃料電池9に供給すると燃料電池の触媒が劣化し、燃料電池9の発電が継続できなくなる濃度として定義される。
又、本明細書では、浄化器7が有する酸化触媒の再生動作が必要と判断される連続運転時間の閾値は、アンモニアによる被毒によって酸化触媒の劣化が進行し、浄化器7の下流における水素含有ガス中の未反応の酸素濃度が、再生動作が必要となる所定の酸素濃度に到達するまでの累積アンモニア供給量(本発明に係る累積アンモニア供給量の上限界)に基づき定められる。尚、これは、浄化器7におけるアンモニア被毒が進行し、酸化触媒での酸化反応が十分進行せず、浄化器7の下流における水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇すると、未反応の水素含有ガス中の未反応の酸素濃度も上昇するという性質を利用したもので、上記酸化触媒の再生動作が必要となる所定の酸素濃度は、例えば、再生動作が必要と判断される上記所定の一酸化炭素濃度(例えば、30ppm)となる時の水素含有ガス中の酸素濃度として定義される。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る燃料電池システムのハードウェア上の構成は、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と同様である。従って、本実施の形態では、燃料電池システムの構成に関する詳細な説明は省略する。
水素生成装置4の浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、改質器5から変成器6を経て浄化器7に供給されるアンモニアを含む水素含有ガスの累積供給量に比例して進行する。つまり、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される原料である天然ガスの累積供給量(原料ガス、つまり、含窒素化合物を含むガスの累積供給量)に比例して進行する。そこで、本実施の形態では、実施の形態1で示した連続運転時間に代えて、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達した場合に、燃料電池9の発電運転を停止させて、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の再生処理を行う。
本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達したか否かは、原料供給装置1における流量検出部1bの出力信号に基づき、制御装置10において判定される。
図5は、本発明の実施の形態2に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図5に示すように、燃料電池システム100の制御装置10は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達したと判定すると(ステップS1でYES)、流路切替弁8を制御することにより燃料電池9の発電運転を停止させる(ステップS2)。
次いで、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、これと同時に、制御装置10は、ブロア3aの動作を制御することにより、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる(ステップS3)。
次いで、制御装置10は、温度制御器(冷却器7b又は加熱器7c)を制御して、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度になったと判定すると(ステップS4でYES)、その酸化触媒の温度Tpを維持するよう制御する(ステップS5)。これにより、実施の形態1の場合と同様にして、水素生成装置4の浄化器7が備える酸化触媒の再生に貢献する所定の化学反応が進行する。
そして、制御装置10は、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定し(ステップS6でYES)、更に、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したと判定すると(ステップS7でYES)、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、実施の形態1の場合と同様、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aに供給して、このアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aで燃焼させるよう後処理を実行させる(ステップS8)。
尚、上記再生動作に代わる再生動作及び累積原料供給量に対して設定された上記所定の閾値の定義等、その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。
このように、図3(a)に示す期間Taにおいて、図5に示すステップS1〜ステップS8が実行されることによっても、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が行われる。そして、この再生処理が行われることにより、改質器5から供給されたアンモニアによって触媒活性が低下した浄化器7の酸化触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を再び10ppm以下にまで低減することができる状態にまで再生される。
かかる構成としても、天然ガスが窒素を含有し、改質反応中に生成したアンモニアが酸化触媒に供給され、酸化触媒が被毒しても、長期間に渡り安定して電力を供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る燃料電池システムのハードウェア上の構成も、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と同様である。従って、本実施の形態では、燃料電池システムの構成に関する詳細な説明は省略する。
水素生成装置4の浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、燃料電池9の累積発電量に比例して進行する。そこで、本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2で示した連続運転時間及び原料ガス累積供給量に代えて、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達した場合、燃料電池9の発電運転を停止させて、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の再生処理を行う。
本実施の形態では、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達したか否かは、例えば、図1では特に図示されないインバータ等の出力信号に基づき、制御装置10において判定される。
本実施の形態では、燃料電池システム100の制御装置10が、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達したと判定すると、流路切替弁8を制御することにより、燃料電池9の発電運転を停止させる。そして、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、制御装置10は、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる。
次いで、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲の温度になったと判定すると、この状態を維持するよう制御しながら、酸化触媒の再生処理を行う。そして、制御装置10は、所定の待機時間が経過した後、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが約300℃以下の温度にまで低下したと判定すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5へ天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様にして、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する水素含有ガスを押し出してこれを改質器5の加熱器5aに供給する。
このように、本実施の形態では、制御装置10が、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達した場合に酸化触媒の再生処理が行われるよう制御し、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。そして、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aに供給してこれを燃焼させる。
尚、上記再生動作に代わる再生動作及び累積原料供給量に対して設定された上記所定の閾値の定義等、その他の点については、実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様である。
かかる構成としても、天然ガスが窒素を含有していても長期間に渡り安定して電力を供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
尚、以上の実施の形態1乃至3に係る説明では、水素を得るための改質反応が水蒸気改質反応であり、かつ含窒素化合物を含むガスとして窒素を含む天然ガスが用いられる形態について述べたが、改質反応がオートサーマル方式又は部分酸化方式である場合には、原料ガスが窒素を含まない場合でも、改質器5に供給される空気中に高濃度の窒素が含まれるため、この窒素により改質反応中にアンモニアが生成される。そこで、この場合には、窒素を含むガスは空気であると読み替えて、改質器5への累積空気供給量が、実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。又、燃料電池システム100の起動停止回数を累積アンモニア供給量に相関するパラメータとして、この起動停止回数が実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。
又、燃料電池9の発電量は負荷電力に比例する。そこで、上記の累積発電量に代えて、累積負荷電力量を用い、これが実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。尚、累積負荷電力量は、例えば、図1では特に図示されない負荷電力検知器の出力信号に基づき、制御装置10において算出される。
又、水蒸気改質反応若しくはオートサーマル反応において、改質器5に供給される水の供給量、浄化器7に供給される酸化ガスの供給量は、通常、改質器5に供給される窒素を含む原料ガスの供給量に比例する。そこで、実施の形態2に記載の累積原料供給量に代えて、改質器5に供給される水の累積供給量、或いは、浄化器7に供給される酸化ガスの累積供給量が、実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づきそれぞれ定められる所定の閾値以上になった場合に、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。尚、この場合、累積水供給量又は累積酸化ガス供給量は、制御装置10から水供給装置2又は空気供給装置3への出力指令値の累積データに基づき、制御装置10において算出される。
尚、本発明に係る累積アンモニア供給量に相関するパラメータとして、燃料電池システム100の累積運転時間、改質器5への累積原料供給量、燃料電池9の累積発電量等について例示したが、上記に例示されたパラメータに限定されるものではなく、累積アンモニア供給量に相関するパラメータであれば、何れのパラメータであっても構わない。
(実施の形態4)
実施の形態1〜3では、原料供給装置から水素生成装置の改質器に向けて、約3%の濃度で窒素を含有する天然ガスが供給される形態を例示した。
ところで、実施の形態1の冒頭で述べたように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域や、その天然ガスを供給する供給会社により異なる。即ち、燃料電池システムの発電運転の際、改質器から浄化器への単位時間当たりのアンモニアの供給量は、その燃料電池システムを設置する地域や、その燃料電池システムに天然ガスを供給する供給会社により異なる。従って、燃料電池システムの浄化器が備える酸化触媒の劣化の進行具合は、その燃料電池システムを設置する地域等により異なる。そのため、燃料電池システムを用いて長期間に渡り安定して電力を得るためには、その燃料電池システムを設置する地域等の情報に応じて、浄化器が備える酸化触媒の再生動作を適切な時期に行う必要がある。
そこで、本実施の形態では、燃料電池システムを設置する地域等の情報に応じて浄化器が備える酸化触媒の再生動作を適切な時期に行うための実施形態について説明する。
先ず、本実施の形態に係る燃料電池システムの特徴的な構成について説明する。
図6は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。尚、図6においては、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを示しており、その他の構成要素については図示を省略している。
図6に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム200のハードウェア上の構成は、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と基本的に同様である。しかしながら、図6に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム200は、実施の形態1に示す燃料電池システム100の構成要素に加えて、閾値設定器14を更に備えている。そして、含窒素化合物を含むガス中の窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する情報取得器15が更に設けられている。この情報取得器15は、例えば、ダイヤル、スイッチ、リモコン等のオペレーターの操作により含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得可能な機器であり、閾値設定器14は、この情報取得器15により取得された情報に基づき浄化器7が備える酸化触媒の再生動作を行う時期を決定付ける連続運転時間等に対する閾値を必要に応じて適宜設定する。尚、閾値設定器14と制御装置10とは、所定の配線材料によって相互に接続されている。又、情報取得器15と閾値設定器14とは、所定の配線材料によって相互に接続されている。又、燃料電池システム200のその他の構成は、実施の形態1に示す燃料電池システム100の構成と同様である。
次に、本実施の形態に係る燃料電池システムの特徴的な操作の基本となる技術的な概念について説明する。
図7は、天然ガスに含まれる窒素の濃度(%)と、その窒素を含む天然ガスを用いた場合の水素含有ガス中のアンモニア濃度(ppm)との関係を、天然ガスを供給する地域毎に示した対応図である。
実施の形態1で説明したように、原料ガスとして用いる天然ガスが窒素を含む場合、水素生成装置の改質器では、その天然ガスに含まれる窒素と水蒸気改質反応により生成される水素との化学反応により、アンモニアが生成する。そのアンモニアの生成濃度は、天然ガスに含まれる窒素の濃度が低い場合には低くなり、それとは反対に、天然ガスに含まれる窒素の濃度が高い場合には高くなる。
例えば、図7に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度が約0.1%である場合には(地域A)、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの生成濃度は約1ppmである。一方、天然ガスに含まれる窒素の濃度が約3%である場合には(地域D)、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの生成濃度は約5ppmである。尚、天然ガスが窒素を全く含まない場合には、水素生成装置の改質器でアンモニアが生成されることはない。
そして、図7に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域(原料ガスの供給地域)により異なっている場合がある。例えば、地域Bで供給される天然ガスは、約1%の濃度で窒素を含有している。この場合、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの濃度は、約0.3ppmとなる。その一方で、地域Cで供給される天然ガスは、約2%の濃度で窒素を含有している。この場合、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの濃度は、約2ppmとなる。又、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、同一の地域であっても、天然ガスを供給する供給会社(原料ガスの供給主体)によって異なっている場合がある。
ここで、約0.1%の濃度で窒素を含む天然ガスを利用する場合は、約2%の濃度で窒素を含む天然ガスを利用する場合と比べて、改質器で生成されるアンモニアの生成量は約半分になる。そのため、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上限値(例えば、10ppm)を超えるまでの時間は約2倍となる。
そこで、本実施の形態では、オペレーターのダイヤル、スイッチ、リモコン等の操作により情報取得器15が、本発明の含窒素化合物の濃度に関連する情報の一例として、天然ガスを供給する地域や、天然ガスを供給する供給会社の種類等の窒素濃度関連情報を取得し、この情報に基づいて、閾値設定器14が連続運転時間等の閾値を設定する。具体的には、本実施の形態では、窒素濃度が約3%の天然ガスを用いる地域Dに燃料電池システム200が設置される場合、オペレーターの操作により情報取得器15を介して地域Dに関する信号が入力され、閾値設定器14は、この信号に基づき、例えば連続運転時間の閾値を40時間と設定する。一方、窒素濃度が約0.1%の天然ガスを用いる地域Aに燃料電池システム200が設置される場合には、窒素濃度が約3%から約0.1%に減少することによりアンモニアの生成量が約1/5になるため、閾値設定器14は、例えば連続運転時間の閾値を200時間に設定する。
本実施の形態では、燃料電池システム200の制御装置10の記憶部に、天然ガスを供給する地域に応じて連続運転時間等に関する最適な閾値が予め記憶されている。又、制御装置10の記憶部には、天然ガスを供給する供給会社に応じて連続運転時間等に関する最適な閾値が予め記憶されている。従って、オペレーターの操作等により、窒素濃度関連情報が情報取得器15により取得されることで、予め制御装置10の記憶部に記憶された窒素濃度関連情報と、それに対応する連続運転時間等の閾値との対応関係に基づき閾値設定器14により燃料電池システム200が設置された地域や天然ガスの供給会社等の窒素濃度関連情報に基づいて、連続運転時間等の最適な閾値が設定される。これにより、燃料電池システム200を出荷若しくは設置する際に、連続運転時間等の累積アンモニア供給量に相関するパラメータに関する閾値をオペレーターの操作により容易に設置地域に応じた最適な値に設定することができる。更には、天然ガス中の窒素濃度が異なる他の地域へ燃料電池システム200の設置場所を移動させる場合にも、連続運転時間等に関する閾値の設定を容易に変更することができる。
このように、本実施の形態によれば、連続運転時間等に代表される累積アンモニア供給量に相関する所定のパラメータが、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報に基づき予め設定される所定の閾値以上になったとき、燃料電池9の発電運転を停止させ、その後、水素生成装置4の浄化器7における酸化触媒の再生処理を実施することにより、その酸化触媒の被毒が著しく進行することを長期間に渡り好適に抑制することができる。これにより、原料ガスとして窒素を含む天然ガスを使用する燃料電池システム200においては、アンモニアによる酸化触媒の被毒が長期間に渡り好適に抑制され、浄化器7における酸化触媒の被毒進行に伴う水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の増加に起因する燃料電池9の出力電圧の規格値以下への低下を効果的に防止することが可能になる。
以下、本実施の形態に係る燃料電池システム200のより具体的な操作概念について例示する。
図8は、制御装置の記憶部に予め記憶されている、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報と、天然ガス中の窒素濃度と、所定の閾値と、情報取得器を介して入力される番号との関係を模式的に示す対応図である。
図8に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域や供給主体により異なっている。例えば、関東エリアの東京における市外局番が03である地域の供給主体A〜Dが供給する天然ガスはa〜d%の濃度で窒素を含んでいるが、市外局番が042である地域の供給主体A,Bが供給する天然ガスはe,f%の濃度で窒素を含んでいる。又、関西エリアの大阪における市外局番が06である地域の供給主体E,Fが供給する天然ガスはg,h%の濃度で窒素を含んでいるが、市外局番が072である地域の供給主体Eが供給する天然ガスはi%の濃度で窒素を含んでいる。そこで、オペレーターは、図6に示す情報取得器15が備えるダイヤルを操作して、燃料電池システム200が設置(出荷)される場所に対応したダイヤルナンバーを選択すると、予め制御装置10の記憶部に記憶された複数の閾値群(ここでは、連続運転時間に関する閾値群)の中から適切な閾値が閾値設定器14により設定される。例えば、燃料電池システム200の設置場所が関東エリアの東京における市外局番が03である地域であり、かつ天然ガスの供給主体がDである場合、オペレーターは、情報取得器15が備えるダイヤルを操作して、ダイヤル番号4を選択する。これにより、所定の閾値としての所定の連続運転時間S4が閾値設定器14により設定される。
尚、本実施の形態では、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報として、ダイヤルにより選択されるダイヤル番号を挙げたが、窒素濃度関連情報として、供給地域に係る情報として、エリア、都市、市外局番等の情報を用い、これらの情報をリモコン等の入力機器を介して取得することで、記憶部に記憶された図8に示すようなテーブルを参照して、閾値設定器14が最適な閾値を設定するような構成としても構わない。又、窒素濃度関連情報としてこれらに限定されることはなく、例えば、燃料電池システム200を駆動するための商用電源の電圧や周波数に基づく構成としてもよい。この場合、商用電源の周波数は、例えば制御装置10に商用電源の周波数を自動的に検出可能な情報取得器を設けることにより、容易に検出することができる。そして、この場合には、情報取得器が取得する商用電源の周波数に基づき閾値設定器14が所定の閾値を自動的に設定するよう構成すれば、浄化器7が備える酸化触媒の再生動作をより一層簡便に実施することが可能になる。
又、本実施の形態では、窒素濃度関連情報としてその供給主体に係る情報を挙げたが、これらに限定されることはない。例えば、天然ガスの種類やその組成に基づく構成としてもよい。
又、本実施の形態では、情報取得器15として、何れもオペレーターが操作可能な、ダイヤル、スイッチ、リモコン等を挙げたが、インターネット回線、又はGPS等を介して含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する機器であってもよく、上記情報を取得可能な機器であれば、上記構成に限定されるものではない。
以上、本発明の実施の形態1〜4によれば、従来の燃料電池システムのハードウェア上の構成と基本的に同様の構成を保ちながら長期間に渡り燃料電池の出力電圧の規格値以下への低下を効果的に防止することができる。
尚、以上の実施形態においては、天然ガス中に窒素が含有される場合における、累積アンモニア供給量に相関するパラメータに関する閾値の設定について説明したが、原料としてLPGを用いる場合、脱硫処理としてのアミン洗浄に起因して、LPGにアミンが残留している場合がある。この場合には、水素生成装置の改質器でアンモニアが発生する可能性があるので、必要に応じて、所定の連続運転時間等の閾値を予め設定すればよい。
又、近年では、LPG等の液化ガスに付臭剤としての含窒素化合物を混合する構成が検討されている。この含窒素化合物としては、例えば、イソニトリル化合物等の含窒素化合物が挙げられる。この場合、イソニトリル化合物は窒素元素を有しているので、水素生成装置の改質器ではアンモニアが生成される。従って、含窒素化合物を含むLPG等の液化ガスを用いる場合には、本発明を適宜適用すればよい。これにより、燃料電池システムから長期間に渡り安定して電力を得ることが可能になる。
又、水素生成装置の改質器に供給する天然ガスの供給量、その改質器における改質触媒の種類及び触媒量、変成器及び浄化器における変成触媒及び酸化触媒の種類及び触媒量、燃料電池システムの構成等が異なる場合には、燃料電池の出力電圧の低下量や低下時間が異なる。そのため、このような場合には、連続運転時間等に関する閾値を相応に設定すればよい。
本発明に係る水素生成装置、燃料電池システム、及びそれらの運転方法は、経時的に進行する酸化触媒の被毒を解消させることが可能である、原料が窒素を含有していても長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能な水素生成装置、長期間に渡り所望の電力を安定して供給することが可能な燃料電池システム、及びそれらの運転方法として、産業上の利用可能性を十分に備えている。
本発明は、窒素を含む原料ガスを用いて水素含有ガスを生成する水素生成装置と、この水素生成装置から水素含有ガスが燃料電池に供給されて発電する燃料電池システムと、それらの運転方法と、に関する。
従来から、エネルギーを有効に利用することが可能である分散型の発電装置として、発電効率及び総合効率が共に高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に「燃料電池システム」という)が注目されている。
この燃料電池システムは、発電部の本体として、燃料電池を備えている。この燃料電池としては、例えば、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、アルカリ水溶液形燃料電池、固体高分子形燃料電池、或いは、固体電解質形燃料電池等が用いられる。これらの燃料電池の内、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池(略称、「PEFC」)は、発電運転の際の動作温度が比較的低いため、燃料電池システムを構成する燃料電池として好適に用いられる。特に、固体高分子形燃料電池は、リン酸形燃料電池と比べて、電極触媒の劣化が少なく、かつ電解質の逸散が発生しないため、携帯用電子機器や電気自動車等の用途において特に好適に用いられる。
さて、燃料電池の多く、例えば、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池は、発電運転の際に水素を燃料として用いる。しかし、それらの燃料電池において発電運転の際に必要となる水素の供給手段は、通常、インフラストラクチャーとして整備されてはいない。従って、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムにより電力を得るためには、その燃料電池システムの設置場所において、燃料としての水素を生成する必要がある。そのため、従来の燃料電池システムでは、燃料電池と共に、水素生成装置が併設されることが多い。この水素生成装置では、例えば、水素生成方法の1つである水蒸気改質法が用いられて、水素が生成される。この水蒸気改質法では、天然ガス、プロパンガス、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料(原料ガス)、又は、メタノール等のアルコール系の原料と水とが混合される。そして、その混合物が、改質触媒を備える改質器に供給される。すると、改質器では、水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスが生成される。
一方、水蒸気改質法により水素生成装置の改質器で生成された水素含有ガスは、副生成物として生成される一酸化炭素(CO)を含有している。例えば、水素生成装置の改質器で生成された水素含有ガスは、約10〜15%の濃度で一酸化炭素を含有している。ここで、水素含有ガスが含有する一酸化炭素は、固体高分子形燃料電池の電極触媒を著しく被毒する。そして、この電極触媒の被毒は、固体高分子形燃料電池の発電性能を著しく低下させる。そのため、従来の水素生成装置では、水素含有ガスを生成する改質器に加え、その水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減するために、CO低減器が併設されることが多い。このCO低減器により、改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、100ppm以下、好ましくは、10ppm以下にまで低減される。この一酸化炭素が十分に除去された水素含有ガスが、発電運転の際、燃料電池システムの燃料電池に供給される。これにより、固体高分子形燃料電池において、電極触媒の被毒が防止される。
尚、水素生成装置を構成するCO低減器は、通常、その内部に配設される変成触媒において水性ガスシフト反応を進行させて一酸化炭素と水蒸気とから水素と二酸化炭素とを生成する変成器を備えている。又、このCO低減器は、変成器の下流側に、空気中の酸素と一酸化炭素との酸化反応を進行させる酸化触媒、又は、一酸化炭素のメタン化反応を進行させるメタン化触媒の少なくとも何れか一方を有する浄化器を更に備えている。これらの変成器及び浄化器により、CO低減器は、改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を100ppm以下にまで低減する。
ところで、水素生成装置の改質器に原料として供給される天然ガスは、通常、微量の窒素を含有している。この窒素の含有率は、例えば、天然ガスを供給する地域により異なっている。そして、燃料電池システムの発電運転の際、この窒素を含有する天然ガスが水素生成装置の改質器に供給されると、その改質器が備える改質触媒上において、水蒸気改質反応により生成される水素と窒素との化学反応が進行することにより、アンモニアが生成されることがある。ここで、アンモニアは、固体高分子形燃料電池の発電性能を大幅に低下させる化学物質であることが知られている。従って、燃料電池システムの発電運転の際には、天然ガスを原料として利用し、高濃度でアンモニアが生成する場合、水素生成装置で生成された水素含有ガスが固体高分子形燃料電池に供給される前に、その水素含有ガスが含有するアンモニアを除去する必要がある。
そこで、固体高分子形燃料電池の上流側にアンモニア除去器を設け、このアンモニア除去器により水素含有ガスが含有するアンモニアを除去し、このアンモニアが除去された水素含有ガスを固体高分子形燃料電池に供給する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−31247号公報
しかしながら、アンモニア除去器を備える従来の燃料電池システムの構成では、アンモニアによる固体高分子形燃料電池の発電性能の低下を防止することはできるが、改質器で生成されたアンモニアは浄化器を通過した後に除去されるので、浄化器に設けられた酸化触媒が、触媒種によっては、アンモニアにより被毒される場合がある。このアンモニアによる酸化触媒の被毒は、浄化器の一酸化炭素除去能力を著しく低下させる。これは、固体高分子形燃料電池における電極触媒の一酸化炭素による被毒の原因となる。ここで、この一酸化炭素による電極触媒の被毒は、アンモニアによる発電性能の低下に比べて、固体高分子形燃料電池の発電性能を著しく低下させる。
つまり、上述のように、改質器の改質触媒上でアンモニアが生成されると共に、浄化器の酸化触媒がアンモニアに対して被毒する金属を含有する場合、水素生成装置の運転時間が長くなるに伴い、酸化触媒の被毒が進行し、固体高分子形燃料電池に供給前にアンモニア除去器により水素含有ガスからアンモニアを除去するだけでは、燃料電池システムから安定した電力を得ることはできない。
又、アンモニアによる発電性能の低下を防止しかつ浄化器の酸化触媒がアンモニアにより被毒されることを防止する構成としては、水素生成装置における改質器と浄化器との間にアンモニア除去器を配設する構成が考えられる。しかし、かかる構成では、水素生成装置の構成が非常に複雑化するので、燃料電池システムを安価に提供することが難しい。
そのため、アンモニア除去器を設けることなく、水素生成装置の改質器で生成されたアンモニアによる酸化触媒の被毒に起因する発電性能の著しい低下を抑制し、長期間に渡り安定して電力を供給することができる燃料電池システムが切望されている。
本発明は、上記従来の燃料電池システムが有する課題を解決するためになされたものであって、改質反応中に窒素等の含窒素化合物が供給され、生成したアンモニアにより浄化器の酸化触媒が被毒されるような水素生成装置であっても長期間に渡り一酸化炭素濃度が十分に低減された高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能である水素生成装置と、この水素生成装置から水素含有ガスが燃料電池に供給されて電力を安定して供給することが可能である燃料電池システムと、それらの運転方法とを提供することを目的としている。
上記従来の課題を解決するため、本発明に係る水素生成装置は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給する第1ガス供給器と、アンモニア被毒する金属を含有する酸化触媒を有し該酸化触媒と酸化ガスとを用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、前記CO除去器に前記酸化ガスを供給する第2ガス供給器と、制御器とを備え、前記改質反応中に前記第1ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置であって、前記制御器は、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、制御器が、CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが所定の閾値以上になると酸化触媒の再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒の性能が長期間に渡り好適に維持される。これにより、一酸化炭素が十分に低減された高品質の水素含有ガスを長期間に渡り安定して供給することが可能な水素生成装置を提供することが可能になる。
この場合、前記含窒素化合物を含むガスは、該含窒素化合物を含む前記原料、及び、前記改質反応の方式がオートサーマル方式又は部分酸化方式である場合に前記改質器に供給される空気の何れかであることを特徴とする。
この場合、前記含窒素化合物は、窒素分子、アミン、及び、イソニトリルの何れかであることを特徴とする。
又、上記の場合、前記制御器は、前記第1ガス供給器から前記改質器に供給される前記含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、制御器が、第1ガス供給器から改質器に供給される含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると再生動作を行うよう制御するので、水素生成装置の改質器への含窒素化合物を含むガスの累積供給量に応じて酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記含窒素化合物を含むガス中の該含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する情報取得器と、前記所定の閾値を設定する閾値設定器と、を更に備え、前記閾値設定器は、前記情報取得器が取得する情報に基づき前記所定の閾値を設定するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、情報取得器と閾値設定器とを更に備え、閾値設定器が、情報取得器が取得する情報に基づき所定の閾値を設定するように構成されているので、含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度に応じて酸化触媒の再生動作を容易に実行させることが可能になる。
この場合、前記情報は、前記含窒素化合物の濃度に係る情報、前記含窒素化合物を含むガスの種類に係る情報、位置情報、及び、前記含窒素化合物を含むガスの供給主体に係る情報の何れかであることを特徴とする。
かかる構成とすると、情報取得器が取得する情報の何れもが含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度と密接に関連する情報であるので、燃料電池システムを納入する地域が如何なる地域であっても、又、燃料電池システムに供給する含窒素化合物を含むガスの供給主体が如何なる供給主体であっても、含窒素化合物を含むガス中の含窒素化合物の濃度に応じて酸化触媒の再生動作を適切に実行させることが可能になる。
又、上記の場合、前記CO除去器の温度を検出する温度検出器と、前記CO除去器の温度を制御する温度制御器と、を更に備え、前記制御器は、前記再生動作として、前記温度検出器により検出される前記CO除去器の温度が、該再生動作開始以前の制御温度、或いは、通常の制御温度よりも高くなるよう前記温度制御器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、温度検出器と温度制御器とを更に備え、制御器が、再生動作時に温度検出器により検出されるCO除去器の温度が、再生動作開始以前の制御温度、或いは通常の制御温度よりも高くなるよう温度制御器を制御するので、還元反応により酸化触媒上から被毒物質を確実に脱離させることが可能になる。これにより、酸化触媒の被毒を確実に解消することが可能になる。
この場合、前記水素生成装置がその内部に備えるガス流路をパージガスで置換するためのパージガス供給器を更に備え、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の停止動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給が停止されると共に前記パージガス供給器から前記パージガスの供給が開始される前に、前記温度検出器により検出される前記CO除去器の温度が、該再生動作開始以前の制御温度、或いは、通常の制御温度よりも高くなるよう前記温度制御器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、CO除去器の内部のガス流路内を還元性の雰囲気とした後、制御器が、再生動作時に温度検出器により検出されるCO除去器の温度が、再生動作開始以前の制御温度、或いは通常の制御温度よりも高くなるよう温度制御器を制御するので、酸化触媒上での還元反応を促進させることが可能になると共に、その還元反応により酸化触媒上から被毒物質を確実に脱離させることが可能になる。
一方、上記の場合、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の起動動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給開始時期が通常の起動動作時における該供給開始時期よりも遅くなるよう該第2ガス供給器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、水素生成装置の起動動作時にCO除去器の内部を過渡的に還元性の雰囲気とするので、酸化触媒の被毒を容易に解消することが可能になる。
更に、上記の場合、前記制御器は、前記再生動作として、前記水素生成装置の起動動作時、前記第2ガス供給器から前記CO除去器への前記酸化ガスの供給量が通常運転時における該供給量よりも少なくなるよう該第2ガス供給器を制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、水素生成装置の起動動作時にCO除去器の内部を過渡的に概ね還元性の雰囲気とするので、酸化触媒の被毒を容易に解消することが可能になる。
又、上記の場合、前記制御器は、前記水素生成装置の累積運転時間が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、水素生成装置の累積運転時間が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記改質器に水を供給する水供給器を更に備え、前記制御器は、前記水供給器から前記改質器に供給される前記水の累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、水供給器から改質器に供給される水の累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記の場合、前記制御器は、前記第2ガス供給器から前記CO除去器に供給される前記酸化ガスの累積供給量が、前記累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成としても、制御器が、第2ガス供給器からCO除去器に供給される酸化ガスの累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
ここで、上記何れかの場合、前記累積アンモニア供給量の上限界は、前記CO除去器を通過した前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度が、前記再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、前記CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量であることを特徴とする。
又、前記累積アンモニア供給量の上限界は、前記CO除去器を通過した前記水素含有ガス中の酸素の濃度が、前記再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、前記CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量であることを特徴とする。
かかる構成とすると、累積アンモニア供給量の上限界が、CO除去器を通過した水素含有ガス中の一酸化炭素又は酸素の濃度が、再生動作が必要となる所定の濃度に到達するまでに、CO除去器に供給されるアンモニアの累積供給量とされるので、酸化触媒の再生動作をより一層適切な時期に実施することが可能になる。
一方、上記従来の課題を解決するため、本発明に係る燃料電池システムは、上記何れかに記載の水素生成装置と、前記水素生成装置により生成される前記水素含有ガスと酸素含有ガスとが供給されて発電する燃料電池と、を備える。
かかる構成とすると、燃料電池システムが本発明に係る特徴的な水素生成装置を備えているので、長期間に渡り電力を安定して供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る水素生成装置の運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器と、Ruを含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、を備え、前記改質反応中に前記ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置の運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。
かかる構成とすると、CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、酸化触媒の再生動作が行われるので、水素生成装置により長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して得ることが可能になる。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器、該改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器、並びに、Ruを含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器を備える水素生成装置と、前記水素生成装置により生成される前記水素含有ガスと酸素含有ガスとが供給されて発電する燃料電池と、を備え、前記改質反応中に前記水素生成装置のガス供給器から改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される燃料電池システムの運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。
かかる構成とすると、水素生成装置が備えるCO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、酸化触媒の再生動作が行われるので、燃料電池システムにより長期間に渡り所望の電力を安定して得ることが可能になる。
本発明に係る水素生成装置及びその運転方法によれば、経時的に進行する酸化触媒のアンモニア被毒を確実に解消させることができるので、改質反応中に含窒素化合物を含むガスが供給され、生成したアンモニアが酸化触媒に供給されても、長期間に渡り水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が十分に低減された高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能になる。
又、本発明に係る燃料電池システム及びその運転方法によれば、長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して供給可能な水素生成装置を備えているので、長期間に渡り電力を安定して供給することが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
先ず、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。尚、図1においては、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを示しており、その他の構成要素については図示を省略している。
本実施の形態では、水素含有ガスを生成するための原料ガスとして窒素を含む天然ガスが用いられる形態について例示する。ここで、本明細書では、この窒素を含む天然ガスに代表される原料ガスを総称して、「含窒素化合物を含むガス」と記載する。尚、天然ガスは、その天然ガスを供給する地域(原料ガスの供給地域)や、天然ガスを供給する供給会社(原料ガスの供給主体)によっても異なるが、数%程度の窒素を含有していることがある。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100は、天然ガスのインフラストラクチャーから原料ガスとしての天然ガスを導入してこれを後述する水素生成装置4の改質器5に供給する原料供給装置1を備えている。この原料供給装置1は、流量調整弁1aを備えており、この流量調整弁1aの動作により天然ガスのインフラストラクチャーから改質器5への天然ガスの供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の改質器5に向けて原料ガスとしての天然ガスを供給する。又、この原料供給装置1は、流量検出部1bを備えている。この流量検出部1bは、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される天然ガスの流量を検出する。そして、流量検出部1bは、天然ガスの流量に応じた電気信号を出力する。この流量検出部1bの出力信号に基づいて、流量調整弁1aが制御される。これにより、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5への天然ガスの供給量が調整される。
又、図1に示すように、この燃料電池システム100は、水道等の水のインフラストラクチャーから水蒸気を発生させるための水を導入してこれを上述した水素生成装置4における改質器5に供給する水供給装置2を備えている。この水供給装置2は、流量調整弁2aを備えており、この流量調整弁2aの動作により水道等の水のインフラストラクチャーから改質器5への水の供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の改質器5に向けて水蒸気を発生させるための水を供給する。又、この水供給装置2は、流量検出部2bを備えている。この流量検出部2bは、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される水の流量を検出する。そして、流量検出部2bは、水の流量に応じた電気信号を出力する。この流量検出部2bの出力信号に基づいて、流量調整弁2aが制御される。これにより、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への水の供給量が調整される。
又、図1に示すように、この燃料電池システム100は、大気中から酸素の供給源としての空気を導入してこれを後述する本発明に係るCO除去器である浄化器7に供給する空気供給装置3を備えている。この空気供給装置3は、ブロア3aを備えている。ブロア3aは、その動作が後述する制御装置10により制御されることにより、大気中から浄化器7への空気の供給量を適宜調整しながら、水素生成装置4の浄化器7に向けて酸素の供給源としての空気を供給する。
一方、この燃料電池システム100は、上述した改質器5及び浄化器7と、変成器6とを備える水素生成装置4を備えている。
具体的には、図1に示すように、水素生成装置4は改質器5を備えている。この改質器5は、原料供給装置1から原料ガスとしての天然ガスが供給されると共に、水供給装置2から水蒸気を発生させるための水が供給されて、図1では特に図示しない改質触媒によって水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスを生成する。この水素含有ガスが改質器5において生成される際、改質器5が有する改質触媒は、水蒸気改質反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この改質触媒の加熱及び保温は、例えば、燃焼用燃料の燃焼により発生する熱エネルギーが用いられて行われる。そこで、図1に示すように、水素生成装置4の改質器5は、加熱器5aを備えている。この加熱器5aは、原料ガスとして供給される天然ガスの一部、水素生成装置4から排出される一酸化炭素が十分に除去されていない水素含有ガス、又は、後述する燃料電池9から排出される発電に用いられなかった余剰の水素含有ガス等を燃焼させることにより、熱エネルギーを発生させる。この加熱器5aが発生させる熱エネルギーにより、改質器5の改質触媒が水蒸気改質反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、改質器5は、水素含有ガスを生成する。
本実施の形態では、改質器5の改質触媒として、Ruからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガスを生成する際には、改質器5の改質触媒は、加熱器5aによって600℃〜700℃の温度にまで加熱される。そして、改質器5の改質触媒は、水素含有ガスの生成時、加熱器5aによって600℃〜700℃の温度で保温される。これにより、改質器5は、水素を主成分として含有する水素含有ガスを生成する。尚、本実施の形態では、改質器5の改質触媒としてRuからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、この形態に限定されることはなく、例えばNiからなる遷移金属触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、Niの触媒作用とRuの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。又、本実施の形態では、加熱器5aは燃焼バーナーを備えている。この燃焼バーナーに燃焼用燃料が供給されることにより、加熱器5aはその供給される燃焼用燃料を燃焼して熱エネルギーを発生させる。
又、図1に示すように、水素生成装置4は、改質器5で生成された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、変成器6を備えている。この変成器6は、改質器5から水素含有ガスが供給されて、図1では特に図示しない変成触媒によって水性ガスシフト反応が進行することにより、その水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する。この水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が低減される際、変成器6が有する変成触媒は、水性ガスシフト反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この変成触媒の加熱及び保温は、例えば、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスにより変成触媒が加熱及び保温されることにより行われる。そのため、本実施の形態では、図1に示すように、水素生成装置4の変成器6は、改質器5が有する加熱器5aに相当する加熱器を有してはいない。本実施の形態では、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスにより、変成器6の変成触媒が水性ガスシフト反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、変成器6は、改質器5で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する。
本実施の形態では、変成器6の変成触媒として、Ptからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する際には、変成器6の変成触媒は、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスによって200℃〜300℃程度の温度にまで加熱される。そして、変成器6の変成触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減するとき、改質器5から供給される高温状態の水素含有ガスによって200℃〜300℃程度の温度で保温される。これにより、変成器6は、改質器5で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を、一酸化炭素と水蒸気とを反応させる水性ガスシフト反応によって、約10%〜15%から約0.3%程度にまで低減する。尚、本実施の形態では、変成器6の変成触媒としてPtからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、この形態に限定されることはなく、例えばCu−Znを含む触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、Cu−Znの触媒作用とPtの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。
更に、図1に示すように、水素生成装置4は、変成器6において一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、浄化器7を備えている。この浄化器7は、変成器6から水性ガスシフト反応により一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガスが供給されると共に、空気供給装置3から酸素(酸化ガス)の供給源としての空気が供給されて、図1では特に図示しない浄化触媒(本実施の形態では、酸化触媒)によって酸化反応が進行することにより、変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する。この水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が更に低減される際、浄化器7が有する酸化触媒は、酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温される。この酸化触媒の加熱及び保温は、例えば、変成器6から供給される高温状態の水素含有ガスや、酸化反応が進行する際に発生する反応熱により酸化触媒が加熱及び保温されることによって行われる。その一方で、図1に示すように、この浄化器7は、酸化触媒の温度、又は、浄化器7内の温度の少なくとも一方の温度を検出するための温度検出器7aを備えている。この温度検出器7aは、例えばサーミスター等の検温素子を備え、そのサーミスター等の検温素子が、酸化触媒の内部又は表面、又は、浄化器7の内部等の所定位置に設けられている。この温度検出器7aでは、酸化触媒の温度や浄化器7の内部を通流する水素含有ガスの温度等に応じて、例えばサーミスターの電気抵抗が変化する。この温度検出器7aが有するサーミスターの電気抵抗の変化に基づき、浄化器7が有する酸化触媒が、酸化反応の進行に適した温度にまで加熱及び保温される。これにより、浄化器7は、変成器6で生成された一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する。
浄化器7の酸化触媒を酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温する際、空気供給装置3から浄化器7に空気を供給すると、後述するが、浄化器7の酸化触媒が劣化する場合がある。そこで、図1に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム100では、酸化触媒の温度を適切に制御するために、浄化器7が冷却器7b及び加熱器7cを備えている。これらの冷却器7b及び加熱器7cを適切に駆動させることにより、酸化触媒を劣化させることなく、酸化触媒の温度を酸化反応の進行に適した温度に加熱及び保温することができる。尚、これらの冷却器7b及び加熱器7cを合わせて温度制御器を構成してもよい。
本実施の形態では、浄化器7における酸化触媒量を200mlとしている。又、浄化器7の酸化触媒として、Ruからなる遷移金属触媒を使用している。この場合、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を更に低減する際には、浄化器7の酸化触媒は、変成器6から供給される高温状態の水素含有ガス等によって100℃〜200℃程度の温度にまで加熱される。これにより、浄化器7は、変成器6で一酸化炭素濃度が低減された水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を、酸化ガスとしての酸素により一酸化炭素を酸化させる酸化反応によって、約0.3%程度から10ppm以下にまで低減する。
尚、本実施の形態では、浄化器7の酸化触媒としてRuからなる遷移金属触媒を使用する形態について例示しているが、このような形態に限定されることはなく、例えばPtやRh等からなる遷移金属触媒を使用する形態としてもよい。かかる形態としても、PtやRh等の触媒作用とRuの触媒作用とは類似しているため、同様の効果を得ることが可能である。但し、Ptの触媒作用は、RuやRhを使用する構成に対して、比較的劣化し難い。従って、浄化器7の酸化触媒としてPtからなる遷移金属触媒を使用する場合には、本発明を実施する必要がない場合がある。
又、本実施の形態では、浄化器7が酸化触媒を有し、その酸化触媒により酸化反応を進行させる形態について例示しているが、この形態に限定されることはない。例えば、浄化器7が浄化触媒としてのメタン化触媒を有し、このメタン化触媒によりメタン化反応を進行させて水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する形態としてもよい。又は、浄化器7が酸化触媒とメタン化触媒とを共に備え、その2つの触媒により酸化反応とメタン化反応とを同時に進行させて水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減する形態としてもよい。但し、浄化器7がメタン化触媒を有し、メタン化反応により水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する構成では、浄化器7に酸素を供給する必要がないため、浄化触媒は比較的劣化し難い。従って、浄化器7がメタン化触媒を有する場合には、本発明を実施する必要がない場合がある。
一方、図1に示すように、この燃料電池システム100は、浄化器7で一酸化炭素濃度が更に低減された水素含有ガスの供給方向を基準としてその下流側に、流路切替弁8を備えている。この流路切替弁8は、例えば三方弁により構成され、水素生成装置4で生成された一酸化炭素濃度が十分に低減された水素含有ガスの供給先を、後述する燃料電池9と水素生成装置4の改質器5における加熱器5aとの間で適宜切り替える。
そして、この燃料電池システム100は、その発電部の本体としての燃料電池9を備えている。この燃料電池9としては、本実施の形態では、例えば、固体高分子型燃料電池が用いられている。この固体高分子型燃料電池は、水素生成装置4で生成された一酸化炭素濃度が十分に低減された水素含有ガスがそのアノード側に供給されると共に、酸化ガスとしての酸素を含む空気(酸素含有ガス)が大気中からそのカソード側に供給され、各々の電極触媒上で所定の電気化学反応が進行することにより、所定の電力を出力する。尚、この燃料電池9としては、固体高分子型燃料電池の他に、例えば、リン酸型燃料電池を用いることも可能である。このリン酸型燃料電池は、発電運転の際の動作温度がその他の燃料電池の場合と比較して低温であるため、固体高分子型燃料電池と共に、燃料電池システム100を構成する燃料電池9として好適に用いられる。
更に、この燃料電池システム100は、燃料電池システム100を構成する各構成要素の動作を適宜制御する制御装置10を備えている。この制御装置10は、例えば、図1では特に図示しないが、中央演算処理装置(CPU)、記憶部等を備えている。
ここで、この制御装置10は、原料供給装置1及び水供給装置2が備える流量検出部1b及び流量検出部2bの出力信号や、空気供給装置3が備えるブロア3aの駆動信号等に基づき、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される原料ガスの累積供給量や、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に供給される水の累積供給量や、空気供給装置3から浄化器7への空気の累積供給量等を適宜検出することが可能に構成されている。又、燃料電池システム100が備える図1では図示されないインバータ等の出力信号に基づき、燃料電池9の累積発電量を検出することが可能に構成されている。
又、図1に示すように、この制御装置10は、計時部10aを備えている。この計時部10aは、燃料電池システム100や水素生成装置4等の構成要素の連続運転時間及び累積運転時間や、予め記憶部に記憶されている処理命令が実行された場合の経過時間等を必要に応じて計測する。
更には、図1では特に図示しないが、この制御装置10は、各種所定の閾値(例えば、燃料電池システム100や水素生成装置4の連続運転時間や累積運転時間、原料供給装置1から水素生成装置4への原料ガスの累積供給量、燃料電池9の累積発電量、或いは、燃料電池システム100の起動若しくは停止回数等に代表される所定のパラメータに係る所定の閾値)を設定するための設定部を備えている。ここで、燃料電池システム100の各構成要素の動作に係るプログラムは、予め制御装置10の記憶部に記憶されている。そして、この記憶部に記憶されているプログラムに基づいて、制御装置10が燃料電池システム100の動作を適宜制御する。
尚、図1に示すように、燃料電池システム100を構成する各構成要素は、所定の接続配管や配線材料等によって相互に接続されている。
次に、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100の動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを4NL/分の割合で供給する形態を例示する。
燃料電池システム100のオペレーターや制御装置10によってその燃料電池システム100が起動されると、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われるよう、燃料電池システム100の動作を制御する。
そして、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われた後、改質器5における改質触媒の温度が所定の温度にまで到達したことを検出すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて原料ガスとしての天然ガスが所定の供給量で供給されるよう制御する。又、制御装置10は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5への天然ガスの供給開始と共に、水供給装置2から水素生成装置4の改質器5に向けて水が所定の供給量で供給されるよう制御する。すると、水素生成装置4の改質器5では、その改質器5が備える改質触媒上に天然ガスと水とが各々供給され、改質器5の改質触媒上で天然ガスと水蒸気とを用いる水蒸気改質反応が進行することにより、水素を含有する水素含有ガスが生成される。この改質器5で生成される高温状態の水素含有ガスは、原料供給装置1から改質器5に連続して供給される天然ガスにより押し出されて、改質器5の下流側に配設された変成器6及び浄化器7にその順で導入される。そして、改質器5で生成された水素含有ガスは、その変成器6や浄化器7に配設されている変成触媒や酸化触媒を加熱しながら、かつそれらの変成触媒や酸化触媒の温度上昇に応じて進行する水性ガスシフト反応や酸化反応により一酸化炭素濃度が徐々に低減され、水素生成装置4から排出される。この際、制御装置10は、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7に向けて酸化ガスとしての酸素が所定の供給量で供給されるよう、ブロア3aの動作を制御する。これにより、水素生成装置4の浄化器7では、酸化触媒による酸化反応が進行する。
水素生成装置4における変成器6及び浄化器7の変成触媒及び酸化触媒の温度が所定の温度に到達するまでは、水素生成装置4から排出される水素含有ガスには、高濃度の一酸化炭素が含まれている。そこで、燃料電池システム100では、制御装置10が流路切替弁8を制御することにより、水素生成装置4で生成された水素含有ガスが、燃料電池9に供給されることなく、水素生成装置4における改質器5の加熱器5aに供給される。すると、改質器5の加熱器5aは、その一酸化炭素濃度が十分に低減されていない水素含有ガスを燃焼用燃料として用いて、改質器5の改質触媒を加熱及び保温する。
その後、水素生成装置4における改質器5、変成器6、及び、浄化器7の運転温度が各々所定の運転温度に到達すると、制御装置10は、流路切替弁8を制御することにより、水素生成装置4から加熱器5aへの水素含有ガスの供給を停止させる。そして、制御装置10は、水素生成装置4から燃料電池9への水素含有ガスの供給を開始させる。又、それと同時に、制御装置10は、酸化ガスとしての酸素を含む空気が大気中から燃料電池9に供給されるよう制御する。これにより、燃料電池9は発電運転を開始する。
ところで、水素含有ガスを生成するための原料ガスとして用いる天然ガスは、含窒素化合物として微量の窒素(窒素ガス)を含有している場合がある。そして、燃料電池システム100の発電運転の際、この窒素を含有する天然ガスが水素生成装置4の改質器5に供給されると、その改質器5が備える改質触媒上において、水蒸気改質反応により生成される水素と窒素との化学反応が進行することにより、アンモニアが生成される場合がある。尚、アンモニアは、固体高分子型燃料電池の発電性能を低下させる化学物質であることが知られている。
本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて、約3%の濃度で窒素を含有する天然ガスが供給される実施形態を例示する。この場合、後に詳しく説明する図7に示すように、水素生成装置4の改質器5では、燃料電池9の発電運転の開始後、その約3%の濃度で含有する窒素と水蒸気改質反応により生成される水素とが用いられて、約5ppmのアンモニアが生成される。つまり、燃料電池システム100の発電運転が開始された場合、水素生成装置4では、改質器5から浄化器7に向けて約5ppmの濃度でアンモニアが常時供給されることになる。そして、アンモニアを含む水素含有ガスが改質器5から浄化器7に供給される場合、浄化器7における酸化触媒の被毒が経時的に進行する。又、アンモニアを含む水素含有ガスが燃料電池9に供給される場合、アンモニアを含まない水素含有ガスを用いて発電する場合と比べて、燃料電池9の出力電圧が経時的に低下することが知られている。
以下、燃料電池9の発電運転が開始された後の、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池9の出力電圧の経時的な変化について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。
尚、図2(a)において、左側の縦軸は、一酸化炭素濃度(ppm)、又は、アンモニア濃度(ppm)を示している。又、図2(a)において、右側の縦軸は、燃料電池の出力電圧(V)を示している。更に、図2(a)において、横軸は経過時間(h)を示している。ここで、便宜上、図2(a)の横軸について、経過時間5h〜55hの範囲では5h/目盛とし、その他の範囲では1h/目盛としている。そして、図2(a)において、曲線aは一酸化炭素濃度の経時的な変化を示しており、曲線bは燃料電池の出力電圧の経時的な変化を示しており、曲線cはアンモニア濃度の経時的な変化を示している。
図2(a)に示すように、経過時間0hに燃料電池9の発電運転が開始されると、その発電運転の開始から約1時間(経過時間0h〜1h)は、水素生成装置4からはアンモニアの濃度が1ppm未満にまで低減された良質の水素含有ガスが排出される。又、水素生成装置4からは、一酸化炭素の濃度が3ppm程度にまで低減された良質の水素含有ガスが排出される。このため、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間は、燃料電池9の出力電圧に電圧降下が発生することはない。
しかしながら、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が徐々に上昇する。又、浄化器7において酸化触媒のアンモニアによる被毒が徐々に進行するため、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が緩やかに上昇する。その結果、図2(a)に示すように、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後からは、燃料電池9の出力電圧に電圧降下が発生する。
本実施の形態では、図2(a)に示すように、燃料電池9の発電運転が開始されてから約3時間経過後、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が約5ppmにまで上昇する。又、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が約3.5ppmにまで上昇する。その結果、燃料電池システム100において、燃料電池9の出力電圧が約1%低下する。但し、燃料電池9の発電運転が開始されてから約3時間経過以降は、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度がその後更に上昇することはない。一方、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇し始めてから数十時間は、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度は5ppm程度の濃度で推移する。そのため、図2(a)に示すように、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度やアンモニア濃度が上昇し始めてから数十時間は、燃料電池9の出力電圧は約1%低下した状態で推移する。
そして、図2(a)に示すように、燃料電池9の発電運転が開始されてから約40時間経過後、酸化触媒のアンモニアによる被毒が更に進行すると、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度は約5ppmの濃度で推移するが、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が10ppmを超える濃度にまで上昇する。そのため、燃料電池9の発電運転が開始されてから約40時間経過後においては、燃料電池9の出力電圧が約5%低下する。そして、その後は、浄化器7においてアンモニアによる酸化触媒の被毒が更に進行するため、その酸化触媒の被毒の進行度合いに応じて、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が更に上昇する。その結果、燃料電池システム100において、燃料電池9の出力電圧が更に低下する。
ここで、浄化器7の酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムについて、図面を参照しながら説明する。
図2(b)は、浄化器の酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図2(b)に示すように、浄化器7では、触媒担体11の上部にRu触媒12が設けられており、これにより、酸化触媒体13が構成されている。そして、酸化反応が進行する際、空気供給装置3から浄化器7に向けて酸化ガスとしての酸素を含む空気が供給されると、Ru上でその酸素と上流側の変成器6から供給される水素含有ガスに含まれるアンモニアとの反応式(1)に示す化学反応が進行する。この化学反応により、ニトロシル(NO)が生成される。
4NH3+5O2→4NO+6H2O ・・・(1)
反応式(1)が進行して生成されたニトロシルは、Ru上に吸着して、酸化触媒体13が被毒された状態となる。これにより、浄化器7の酸化触媒は触媒活性を失う。そして、浄化器7の酸化触媒は、酸化反応を促進することが不能となり、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低減することができない状態となる。
このような、浄化器7の酸化触媒の被毒が進行して、水素生成装置4の変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することができない状態(即ち、燃料電池9の出力電圧が低下し続ける状態)のまま燃料電池システム100の発電運転を継続することは、燃料電池9の発電効率が著しく悪化するため好ましくはない。又、その後、長期間に渡り燃料電池システム100の出力電圧が所定の電圧値以下で推移することは、燃料電池システム100を使用する上で大きな問題となる。
そこで、本実施の形態では、燃料電池システム100において、浄化器7の酸化触媒の被毒が進行して、水素生成装置4の変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減できない状態に陥る前に、制御装置10が燃料電池9の発電運転を停止させる。そして、制御装置10は、浄化器7の酸化触媒を再生させるために、浄化器7の酸化触媒の再生処理(再生動作)が実施されるよう制御する。
以下、浄化器7の酸化触媒を再生させるための再生処理の詳細と、その再生処理が実施される場合の水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池9の出力電圧の経時的な変化とについて説明する。
図3(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。
尚、図2(a)の場合と同様にして、図3(a)において、左側の縦軸は、一酸化炭素濃度(ppm)又はアンモニア濃度(ppm)を示している。又、右側の縦軸は、燃料電池の出力電圧(V)を示している。更に、図3(a)において、横軸は経過時間(h)を示している。ここで、便宜上、図3(a)の横軸について、経過時間5h〜40h及び46h〜81hの範囲では5h/目盛とし、その他の範囲では1h/目盛としている。そして、図3(a)において、曲線aは一酸化炭素濃度の経時的な変化を示しており、曲線bは燃料電池の出力電圧の経時的な変化を示しており、曲線cはアンモニア濃度の経時的な変化を示している。
又、図4は、本発明の実施の形態1に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図3(a)に示すように、燃料電池システム100の発電運転が開始されると、その発電運転の開始から約1時間(経過時間0h〜1h)は、浄化器7の酸化触媒の被毒が実質的に進行しないため、水素生成装置4はアンモニアや一酸化炭素の濃度が所定の濃度以下にまで低減された良質の水素含有ガスを燃料電池9に供給する。そのため、燃料電池9は所定の出力電圧で電力を出力する。
しかし、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後以降は、浄化器7において酸化触媒のアンモニアによる被毒が経時的に進行する。そのため、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度が約5ppmにまで上昇する。又、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、数十時間に渡り5ppm程度で推移した後、経時的に上昇する。その結果、図3(a)に示すように、燃料電池システム100において、燃料電池9の発電運転が開始されてから約1時間経過後以降は、燃料電池9の出力電圧は数十時間に渡り1%程度低下した電圧で推移した後に経時的に低下する。
本実施の形態では、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が10ppmを大幅に超える濃度にまで上昇する前に、上述した再生動作を行うために、制御装置10が流路切替弁8を制御して水素含有ガスの供給を停止させることにより、燃料電池9の発電運転を停止させる。ここで、本実施の形態では、燃料電池システム100における浄化器7の酸化触媒の再生動作が必要と判断される運転の開始から停止までの連続運転時間の閾値を、40時間としている。尚、上記では、連続運転時間に対して所定の閾値が設定され、その閾値に基づき再生動作の要否を判断しているが、一日に一回起動及び停止を行うDSS(Daily−Start−and−Stop)運転タイプの燃料電池システムにおいては、各日の運転時間を累積した累積運転時間を計測し、この累積運転時間に対して所定の閾値が設定され、少なくとも水素生成装置4の累積運転時間が所定の閾値(本実施の形態の場合、40時間)になると再生動作が実施される。尚、上記連続運転時間は、累積運転時間の一形態であるため、連続運転時間も本発明の累積運転時間に含まれるものとする。
一方、制御装置10は、その設定された所定の閾値以上になったか否かを、制御装置10の計時部10aにより判定する。そして、制御装置10は、計時部10aにより連続運転時間が所定の閾値以上になったと判定した場合には、燃料電池9の発電運転を停止させた後、浄化器7の酸化触媒を再生するために、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が図3(a)に示す期間Ta(即ち、経過時間40h〜41h)において実施されるよう制御する。
ここで、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理について、図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、制御装置10は、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上に到達したと判定すると(ステップS1でYES)、流路切替弁8を制御することにより燃料電池9の発電運転を停止させる(ステップS2)。尚、制御装置10は、燃料電池システム100の連続運転時間が未だ所定の閾値以上に到達してはいないと判定すると(ステップS1でNO)、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上に到達したか否かの判定を繰り返し実行する。
次いで、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、これと同時に、制御装置10は、ブロア3aの動作を制御することにより、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる(ステップS3)。
次いで、制御装置10は、温度制御器(冷却器7b又は加熱器7c)を制御して、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度になったと判定すると(ステップS4でYES)、その酸化触媒の温度Tpを維持するよう制御する(ステップS5)。尚、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度にはなっていないと判定すると(ステップS4でNO)、温度制御器を制御して酸化触媒の温度Tpが上記温度範囲に入るよう調整し、それらの温度が所定の温度又は所定の温度範囲内の温度に制御されたか否かの判定を繰り返し実行する。
この図4のステップS3以降は、ステップS3直前に改質器5に供給された水の蒸発による体積膨張で、浄化器7の上流側の水素含有ガスが浄化器7に供給されると共に、浄化器7への空気の供給は停止されているため、通常よりも酸素濃度の低い水素含有ガスで満たされ、浄化器7の内部は、通常よりも酸素濃度の低減された還元性の高い雰囲気に維持されるため、酸化触媒の再生に貢献する所定の化学反応が進行する。
図3(b)は、浄化器の酸化触媒からニトロシルがアンモニアとして脱離される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図3(b)に示すように、触媒担体11の上部に設けられたRu触媒12に対して窒素原子が結合しているニトロシルは、空気の供給が遮断されて酸素の供給が遮断されると共に浄化器7の内部が還元性の雰囲気で維持されるよう制御されると、その浄化器7の内部に残留する水素含有ガスに含まれる水素との反応式(2)に示す化学反応が進行することによって、アンモニアに還元される。
5H2+2NO→2NH3+2H2O ・・・(2)
反応式(2)が進行して還元により生成されたアンモニアは、その後、酸化触媒体13を構成する触媒担体11上のRu触媒12から容易に脱離する。これにより、Ru触媒12の被毒状態が解消され、Ru触媒12はその触媒活性を取り戻す。そして、浄化器7の酸化触媒は、変成器6から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することができる状態にまで再生される。
さて、制御装置10は、図4に示すステップS3以降、上述のように上記温度範囲で浄化器7の内部が通常よりも還元性の高い雰囲気で維持され、その後、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定し(ステップS6でYES)、更に、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したと判定すると(ステップS7でYES)、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを改質器5の加熱器5aに供給する。そして、制御装置10は、このアンモニアを含む水素含有ガスを改質器5の加熱器5aで燃焼させるよう、後処理を実行させる(ステップS8)。尚、制御装置10は、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過してはいないと判定すると(ステップS6でNO)、所定の待機時間が経過したか否かの判定を繰り返し実行する。又、制御装置10は、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下してはいないと判定すると(ステップS7でNO)、その改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したか否かの判定を繰り返し実行する。
尚、酸化触媒を再生させる場合には、その酸化触媒又は浄化器7内等の温度が100℃〜300℃の範囲の温度であるときに再生処理を行うことが望ましい。つまり、本実施の形態では、浄化器7の温度とは酸化触媒の温度及び浄化器7内の雰囲気温度の少なくとも何れかの温度を含み、浄化器7の温度が100℃〜300℃の範囲の温度であるときに再生処理を行うことが望ましい。その理由は、酸化触媒の温度等が100℃未満では、還元反応の速度が著しく遅いためである。一方、酸化触媒の温度等が300℃を超える場合には、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素又は二酸化炭素と水素とによるメタン化反応が暴走して、酸化触媒の温度等の制御が困難となるからである。ここで、図4のステップS4において、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲の温度になったか否かを、浄化器7の温度検出器7aを用いて判定する。
又、図4のステップS7に示すように、水素生成装置4の内部の天然ガスによるパージ操作は、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下してから行うことが望ましい。その理由は、改質触媒の温度Trが300℃を超えている際にパージ操作を行うと、改質触媒上に天然ガス由来の炭素が析出して、その改質触媒の触媒活性が著しく低下するからである。
このように、図3(a)に示す期間Taにおいて、図4に示すステップS1〜ステップS8が実行されることにより、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が適切に行われる。そして、この再生処理が行われることにより、水素生成装置4の改質器5から供給されたアンモニアによって触媒活性が低下した浄化器7の酸化触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を再び10ppm以下にまで低減することができる状態にまで確実に再生される。
そして、図3(a)に示す期間Taにおいて浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が行われた後、制御装置10は、燃料電池9の発電運転を開始するための所定の準備動作が行われるよう制御する。そして、その後、制御装置10は、図3(a)の経過時間41h〜81hに示すように、燃料電池システム100の発電運転が再び行われるよう制御する。燃料電池システム100の発電運転が再び開始されると、燃料電池9は電力の出力を再び開始する。
燃料電池システム100の発電運転が再び開始された場合、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される天然ガスには窒素が含まれているため、図3(a)の経過時間0h〜40hに示す燃料電池システム100の前回の発電運転時と同様、燃料電池システム100の発電運転時間の経過に伴って、水素生成装置4から排出される水素含有ガス中のアンモニア濃度や一酸化炭素濃度が徐々に上昇する。しかし、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に供給される天然ガス中の窒素濃度が変化しない場合には、水素含有ガス中のアンモニア濃度及び一酸化炭素濃度の変化や、燃料電池9の出力電圧の変化は、燃料電池システム100の上記前回の発電運転時と同様となる。そこで、本実施の形態では、燃料電池システム100の上記前回の発電運転時と同様、燃料電池システム100の連続運転時間が所定の閾値以上(本実施の形態では40時間)に到達した時点で燃料電池9の発電運転を定期的に停止させ、その後、浄化器7における酸化触媒の再生処理を定期的に行う。
尚、上記再生処理において、ステップ3において改質器5への原料ガス及び水の供給を停止し、かつ浄化器7への空気の供給を停止したが、空気供給装置3からの空気の供給のみを停止し、改質器5内には原料ガス及び水の供給を継続し、水素含有ガスの生成を継続させた状態で上記再生動作を実施しても構わない。かかる実施形態は、図4のステップS8に示す水素生成装置4の内部の原料ガスによるパージ操作を行う必要がなく、つまり、上記図4に示す再生処理の間に冷却した改質器5及び変成器6の暖機運転を行う必要がなく、従って、スムーズに燃料電池9の発電運転に移行することが可能となるので、より一層好ましい実施形態である。
又、上記再生処理において、ステップS3で浄化器7への空気の供給を停止したが、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給量を少なくとも通常の発電運転時の供給量未満に制御して、これにより通常運転時よりもより還元性の雰囲気としても、酸化触媒の再生を進行させることが可能となる。これは、上述のステップS3において改質器5への原料ガス及び水の供給を継続させるタイプの再生処理においても同様に実施可能である。
又、図4に示す再生処理は、連続運転するタイプの燃料電池システムにおける酸化触媒の再生処理であったが、例えば、DSS運転が行われるようなタイプの燃料電池システムにおいては、その燃料電池システムの停止動作若しくは起動動作の度に、上記再生処理を実施しても構わない。又、燃料電池システムの累積運転時間が再生処理を要すると判断される所定の閾値以上になった後の停止動作若しくは起動動作において、上記再生処理を実施しても構わない。又、上記再生処理を起動動作時に実行する場合、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給開始時期を、通常の起動動作における供給開始時期よりも所定期間(例えば、Ta)遅くなるようにして、この所定期間中に通常の起動動作よりもより還元性の雰囲気とする。かかる構成としても、アンモニアにより被毒された酸化触媒を確実に再生することが可能である。
尚、以上で述べた再生処理においては、空気供給装置3からの空気供給量を低減させ、通常よりも浄化器7の内部の雰囲気の還元性をより一層向上させることで、酸化触媒を再生したが、空気供給装置3からの空気供給量を低減させず、酸化触媒(浄化器7)の温度を再生処理実行以前の制御温度よりも高い温度になるよう制御しても構わない。特に、酸化触媒の温度Tpを通常運転時の酸化触媒の制御温度(例えば、140℃)よりも高い温度(例えば、180℃)になるよう浄化器7bの温度制御器(例えば、加熱器7c)を制御すれば、酸化触媒の還元反応が反応速度論的に促進され、これにより酸化触媒が再生されるため、このような再生処理を行っても構わない。
又、このように、再生動作として通常の発電運転時よりも酸化触媒の温度をより高温に維持する方法を採用する場合には、酸化触媒の加熱手段の1つとして、浄化器7への酸化ガス(空気)の供給量を増加させ、酸化触媒における反応熱を増加させる手段を採用することも考えられる。しかし、10ppmの濃度のアンモニアを含む水素含有ガスを供給して、酸素/一酸化炭素=2の条件の下で酸化反応を行い、酸化触媒の下流における一酸化炭素濃度が30ppmになった時点で空気量を酸素/一酸化炭素=2.5となるように増加させる試験を行ったところ、酸化ガス(空気)の供給量が増加されるとRuの酸化が促進され、逆にRuの劣化が加速されることが分かった。このため、酸化触媒の温度を通常の発電運転時よりも高温に維持してその再生を行う場合には、酸化ガスの供給量を増加させずに、図1に示す冷却器7b又は加熱器7cを用いて酸化触媒の温度を上昇させることが好ましい。かかる構成とすれば、アンモニアにより被毒された酸化触媒を劣化させることなく適切に再生することが可能になる。
尚、浄化器7の酸化触媒の再生動作は、燃料電池システム100の停止動作時及び起動動作時の何れのタイミングで行っても構わない。
又、本明細書では、浄化器7が有する酸化触媒の再生動作が必要と判断される連続運転時間の閾値は、上述した実施の形態のように、アンモニアによる被毒によって酸化触媒の劣化が進行し、浄化器7の下流における水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が、再生動作が必要となる所定の一酸化炭素濃度(例えば、30ppm)に到達するまでの累積アンモニア供給量(本発明に係る累積アンモニア供給量の上限界)に基づき定められる。例えば、水素生成装置4の運転を開始してから浄化器7の酸化触媒に供給される累積アンモニア供給量が、上記上限界に到達すると想定される連続運転時間として定義される。又、より安全には、累積アンモニア供給量が、上記上限界未満の所定値に到達すると想定される連続運転時間として定義されても構わない。尚、ここで、上記酸化触媒の再生動作が必要となる所定の一酸化炭素濃度は、例えば、燃料電池9に供給すると燃料電池の触媒が劣化し、燃料電池9の発電が継続できなくなる濃度として定義される。
又、本明細書では、浄化器7が有する酸化触媒の再生動作が必要と判断される連続運転時間の閾値は、アンモニアによる被毒によって酸化触媒の劣化が進行し、浄化器7の下流における水素含有ガス中の未反応の酸素濃度が、再生動作が必要となる所定の酸素濃度に到達するまでの累積アンモニア供給量(本発明に係る累積アンモニア供給量の上限界)に基づき定められる。尚、これは、浄化器7におけるアンモニア被毒が進行し、酸化触媒での酸化反応が十分進行せず、浄化器7の下流における水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇すると、未反応の水素含有ガス中の未反応の酸素濃度も上昇するという性質を利用したもので、上記酸化触媒の再生動作が必要となる所定の酸素濃度は、例えば、再生動作が必要と判断される上記所定の一酸化炭素濃度(例えば、30ppm)となる時の水素含有ガス中の酸素濃度として定義される。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る燃料電池システムのハードウェア上の構成は、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と同様である。従って、本実施の形態では、燃料電池システムの構成に関する詳細な説明は省略する。
水素生成装置4の浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、改質器5から変成器6を経て浄化器7に供給されるアンモニアを含む水素含有ガスの累積供給量に比例して進行する。つまり、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて供給される原料である天然ガスの累積供給量(原料ガス、つまり、含窒素化合物を含むガスの累積供給量)に比例して進行する。そこで、本実施の形態では、実施の形態1で示した連続運転時間に代えて、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達した場合に、燃料電池9の発電運転を停止させて、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の再生処理を行う。
本実施の形態では、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達したか否かは、原料供給装置1における流量検出部1bの出力信号に基づき、制御装置10において判定される。
図5は、本発明の実施の形態2に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図5に示すように、燃料電池システム100の制御装置10は、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けての天然ガスの累積供給量が所定の閾値以上に到達したと判定すると(ステップS1でYES)、流路切替弁8を制御することにより燃料電池9の発電運転を停止させる(ステップS2)。
次いで、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、これと同時に、制御装置10は、ブロア3aの動作を制御することにより、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる(ステップS3)。
次いで、制御装置10は、温度制御器(冷却器7b又は加熱器7c)を制御して、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲内の温度になったと判定すると(ステップS4でYES)、その酸化触媒の温度Tpを維持するよう制御する(ステップS5)。これにより、実施の形態1の場合と同様にして、水素生成装置4の浄化器7が備える酸化触媒の再生に貢献する所定の化学反応が進行する。
そして、制御装置10は、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定し(ステップS6でYES)、更に、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが概ね300℃以下の温度にまで低下したと判定すると(ステップS7でYES)、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、実施の形態1の場合と同様、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aに供給して、このアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aで燃焼させるよう後処理を実行させる(ステップS8)。
尚、上記再生動作に代わる再生動作及び累積原料供給量に対して設定された上記所定の閾値の定義等、その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。
このように、図3(a)に示す期間Taにおいて、図5に示すステップS1〜ステップS8が実行されることによっても、浄化器7の酸化触媒を再生するための再生処理が行われる。そして、この再生処理が行われることにより、改質器5から供給されたアンモニアによって触媒活性が低下した浄化器7の酸化触媒は、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を再び10ppm以下にまで低減することができる状態にまで再生される。
かかる構成としても、天然ガスが窒素を含有し、改質反応中に生成したアンモニアが酸化触媒に供給され、酸化触媒が被毒しても、長期間に渡り安定して電力を供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る燃料電池システムのハードウェア上の構成も、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と同様である。従って、本実施の形態では、燃料電池システムの構成に関する詳細な説明は省略する。
水素生成装置4の浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の被毒は、燃料電池9の累積発電量に比例して進行する。そこで、本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2で示した連続運転時間及び原料ガス累積供給量に代えて、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達した場合、燃料電池9の発電運転を停止させて、浄化器7における浄化触媒(酸化触媒)の再生処理を行う。
本実施の形態では、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達したか否かは、例えば、図1では特に図示されないインバータ等の出力信号に基づき、制御装置10において判定される。
本実施の形態では、燃料電池システム100の制御装置10が、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達したと判定すると、流路切替弁8を制御することにより、燃料電池9の発電運転を停止させる。そして、制御装置10は、流量調整弁1a及び流量調整弁2aを制御することにより、原料供給装置1及び水供給装置2から水素生成装置4の改質器5への天然ガス及び水の供給を停止させる。又、制御装置10は、空気供給装置3から水素生成装置4の浄化器7への空気の供給を停止させる。
次いで、制御装置10は、浄化器7の内部の温度又は酸化触媒の温度Tpが100℃〜300℃の範囲の温度になったと判定すると、この状態を維持するよう制御しながら、酸化触媒の再生処理を行う。そして、制御装置10は、所定の待機時間が経過した後、改質器5の内部の温度又は改質触媒の温度Trが約300℃以下の温度にまで低下したと判定すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5へ天然ガスを所定の供給量で供給する。これにより、実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様にして、水素生成装置4の内部を天然ガスで充填すると共に、浄化器7の内部に存在する水素含有ガスを押し出してこれを改質器5の加熱器5aに供給する。
このように、本実施の形態では、制御装置10が、燃料電池9の累積発電量が所定の閾値以上に到達した場合に酸化触媒の再生処理が行われるよう制御し、酸化触媒の再生処理を完了させるために必要となる所定の待機時間が経過したと判定すると、原料供給装置1から水素生成装置4の改質器5に向けて天然ガスを所定の供給量で供給する。そして、浄化器7の内部に存在する脱離したアンモニアを含む水素含有ガスを加熱器5aに供給してこれを燃焼させる。
尚、上記再生動作に代わる再生動作及び累積原料供給量に対して設定された上記所定の閾値の定義等、その他の点については、実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様である。
かかる構成としても、天然ガスが窒素を含有していても長期間に渡り安定して電力を供給することが可能な燃料電池システムを提供することが可能になる。
尚、以上の実施の形態1乃至3に係る説明では、水素を得るための改質反応が水蒸気改質反応であり、かつ含窒素化合物を含むガスとして窒素を含む天然ガスが用いられる形態について述べたが、改質反応がオートサーマル方式又は部分酸化方式である場合には、原料ガスが窒素を含まない場合でも、改質器5に供給される空気中に高濃度の窒素が含まれるため、この窒素により改質反応中にアンモニアが生成される。そこで、この場合には、窒素を含むガスは空気であると読み替えて、改質器5への累積空気供給量が、実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。又、燃料電池システム100の起動停止回数を累積アンモニア供給量に相関するパラメータとして、この起動停止回数が実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。
又、燃料電池9の発電量は負荷電力に比例する。そこで、上記の累積発電量に代えて、累積負荷電力量を用い、これが実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。尚、累積負荷電力量は、例えば、図1では特に図示されない負荷電力検知器の出力信号に基づき、制御装置10において算出される。
又、水蒸気改質反応若しくはオートサーマル反応において、改質器5に供給される水の供給量、浄化器7に供給される酸化ガスの供給量は、通常、改質器5に供給される窒素を含む原料ガスの供給量に比例する。そこで、実施の形態2に記載の累積原料供給量に代えて、改質器5に供給される水の累積供給量、或いは、浄化器7に供給される酸化ガスの累積供給量が、実施の形態1に記載の累積アンモニア供給量の上限界に基づきそれぞれ定められる所定の閾値以上になった場合に、制御装置10が酸化触媒の再生動作を開始する構成としても構わない。尚、この場合、累積水供給量又は累積酸化ガス供給量は、制御装置10から水供給装置2又は空気供給装置3への出力指令値の累積データに基づき、制御装置10において算出される。
尚、本発明に係る累積アンモニア供給量に相関するパラメータとして、燃料電池システム100の累積運転時間、改質器5への累積原料供給量、燃料電池9の累積発電量等について例示したが、上記に例示されたパラメータに限定されるものではなく、累積アンモニア供給量に相関するパラメータであれば、何れのパラメータであっても構わない。
(実施の形態4)
実施の形態1〜3では、原料供給装置から水素生成装置の改質器に向けて、約3%の濃度で窒素を含有する天然ガスが供給される形態を例示した。
ところで、実施の形態1の冒頭で述べたように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域や、その天然ガスを供給する供給会社により異なる。即ち、燃料電池システムの発電運転の際、改質器から浄化器への単位時間当たりのアンモニアの供給量は、その燃料電池システムを設置する地域や、その燃料電池システムに天然ガスを供給する供給会社により異なる。従って、燃料電池システムの浄化器が備える酸化触媒の劣化の進行具合は、その燃料電池システムを設置する地域等により異なる。そのため、燃料電池システムを用いて長期間に渡り安定して電力を得るためには、その燃料電池システムを設置する地域等の情報に応じて、浄化器が備える酸化触媒の再生動作を適切な時期に行う必要がある。
そこで、本実施の形態では、燃料電池システムを設置する地域等の情報に応じて浄化器が備える酸化触媒の再生動作を適切な時期に行うための実施形態について説明する。
先ず、本実施の形態に係る燃料電池システムの特徴的な構成について説明する。
図6は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。尚、図6においては、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを示しており、その他の構成要素については図示を省略している。
図6に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム200のハードウェア上の構成は、実施の形態1で示した燃料電池システム100のハードウェア上の構成と基本的に同様である。しかしながら、図6に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム200は、実施の形態1に示す燃料電池システム100の構成要素に加えて、閾値設定器14を更に備えている。そして、含窒素化合物を含むガス中の窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する情報取得器15が更に設けられている。この情報取得器15は、例えば、ダイヤル、スイッチ、リモコン等のオペレーターの操作により含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得可能な機器であり、閾値設定器14は、この情報取得器15により取得された情報に基づき浄化器7が備える酸化触媒の再生動作を行う時期を決定付ける連続運転時間等に対する閾値を必要に応じて適宜設定する。尚、閾値設定器14と制御装置10とは、所定の配線材料によって相互に接続されている。又、情報取得器15と閾値設定器14とは、所定の配線材料によって相互に接続されている。又、燃料電池システム200のその他の構成は、実施の形態1に示す燃料電池システム100の構成と同様である。
次に、本実施の形態に係る燃料電池システムの特徴的な操作の基本となる技術的な概念について説明する。
図7は、天然ガスに含まれる窒素の濃度(%)と、その窒素を含む天然ガスを用いた場合の水素含有ガス中のアンモニア濃度(ppm)との関係を、天然ガスを供給する地域毎に示した対応図である。
実施の形態1で説明したように、原料ガスとして用いる天然ガスが窒素を含む場合、水素生成装置の改質器では、その天然ガスに含まれる窒素と水蒸気改質反応により生成される水素との化学反応により、アンモニアが生成する。そのアンモニアの生成濃度は、天然ガスに含まれる窒素の濃度が低い場合には低くなり、それとは反対に、天然ガスに含まれる窒素の濃度が高い場合には高くなる。
例えば、図7に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度が約0.1%である場合には(地域A)、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの生成濃度は約1ppmである。一方、天然ガスに含まれる窒素の濃度が約3%である場合には(地域D)、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの生成濃度は約5ppmである。尚、天然ガスが窒素を全く含まない場合には、水素生成装置の改質器でアンモニアが生成されることはない。
そして、図7に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域(原料ガスの供給地域)により異なっている場合がある。例えば、地域Bで供給される天然ガスは、約1%の濃度で窒素を含有している。この場合、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの濃度は、約0.3ppmとなる。その一方で、地域Cで供給される天然ガスは、約2%の濃度で窒素を含有している。この場合、水素生成装置の改質器で生成されるアンモニアの濃度は、約2ppmとなる。又、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、同一の地域であっても、天然ガスを供給する供給会社(原料ガスの供給主体)によって異なっている場合がある。
ここで、約0.1%の濃度で窒素を含む天然ガスを利用する場合は、約2%の濃度で窒素を含む天然ガスを利用する場合と比べて、改質器で生成されるアンモニアの生成量は約半分になる。そのため、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上限値(例えば、10ppm)を超えるまでの時間は約2倍となる。
そこで、本実施の形態では、オペレーターのダイヤル、スイッチ、リモコン等の操作により情報取得器15が、本発明の含窒素化合物の濃度に関連する情報の一例として、天然ガスを供給する地域や、天然ガスを供給する供給会社の種類等の窒素濃度関連情報を取得し、この情報に基づいて、閾値設定器14が連続運転時間等の閾値を設定する。具体的には、本実施の形態では、窒素濃度が約3%の天然ガスを用いる地域Dに燃料電池システム200が設置される場合、オペレーターの操作により情報取得器15を介して地域Dに関する信号が入力され、閾値設定器14は、この信号に基づき、例えば連続運転時間の閾値を40時間と設定する。一方、窒素濃度が約0.1%の天然ガスを用いる地域Aに燃料電池システム200が設置される場合には、窒素濃度が約3%から約0.1%に減少することによりアンモニアの生成量が約1/5になるため、閾値設定器14は、例えば連続運転時間の閾値を200時間に設定する。
本実施の形態では、燃料電池システム200の制御装置10の記憶部に、天然ガスを供給する地域に応じて連続運転時間等に関する最適な閾値が予め記憶されている。又、制御装置10の記憶部には、天然ガスを供給する供給会社に応じて連続運転時間等に関する最適な閾値が予め記憶されている。従って、オペレーターの操作等により、窒素濃度関連情報が情報取得器15により取得されることで、予め制御装置10の記憶部に記憶された窒素濃度関連情報と、それに対応する連続運転時間等の閾値との対応関係に基づき閾値設定器14により燃料電池システム200が設置された地域や天然ガスの供給会社等の窒素濃度関連情報に基づいて、連続運転時間等の最適な閾値が設定される。これにより、燃料電池システム200を出荷若しくは設置する際に、連続運転時間等の累積アンモニア供給量に相関するパラメータに関する閾値をオペレーターの操作により容易に設置地域に応じた最適な値に設定することができる。更には、天然ガス中の窒素濃度が異なる他の地域へ燃料電池システム200の設置場所を移動させる場合にも、連続運転時間等に関する閾値の設定を容易に変更することができる。
このように、本実施の形態によれば、連続運転時間等に代表される累積アンモニア供給量に相関する所定のパラメータが、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報に基づき予め設定される所定の閾値以上になったとき、燃料電池9の発電運転を停止させ、その後、水素生成装置4の浄化器7における酸化触媒の再生処理を実施することにより、その酸化触媒の被毒が著しく進行することを長期間に渡り好適に抑制することができる。これにより、原料ガスとして窒素を含む天然ガスを使用する燃料電池システム200においては、アンモニアによる酸化触媒の被毒が長期間に渡り好適に抑制され、浄化器7における酸化触媒の被毒進行に伴う水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の増加に起因する燃料電池9の出力電圧の規格値以下への低下を効果的に防止することが可能になる。
以下、本実施の形態に係る燃料電池システム200のより具体的な操作概念について例示する。
図8は、制御装置の記憶部に予め記憶されている、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報と、天然ガス中の窒素濃度と、所定の閾値と、情報取得器を介して入力される番号との関係を模式的に示す対応図である。
図8に示すように、天然ガスに含まれる窒素の濃度は、その天然ガスを供給する地域や供給主体により異なっている。例えば、関東エリアの東京における市外局番が03である地域の供給主体A〜Dが供給する天然ガスはa〜d%の濃度で窒素を含んでいるが、市外局番が042である地域の供給主体A,Bが供給する天然ガスはe,f%の濃度で窒素を含んでいる。又、関西エリアの大阪における市外局番が06である地域の供給主体E,Fが供給する天然ガスはg,h%の濃度で窒素を含んでいるが、市外局番が072である地域の供給主体Eが供給する天然ガスはi%の濃度で窒素を含んでいる。そこで、オペレーターは、図6に示す情報取得器15が備えるダイヤルを操作して、燃料電池システム200が設置(出荷)される場所に対応したダイヤルナンバーを選択すると、予め制御装置10の記憶部に記憶された複数の閾値群(ここでは、連続運転時間に関する閾値群)の中から適切な閾値が閾値設定器14により設定される。例えば、燃料電池システム200の設置場所が関東エリアの東京における市外局番が03である地域であり、かつ天然ガスの供給主体がDである場合、オペレーターは、情報取得器15が備えるダイヤルを操作して、ダイヤル番号4を選択する。これにより、所定の閾値としての所定の連続運転時間S4が閾値設定器14により設定される。
尚、本実施の形態では、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報として、ダイヤルにより選択されるダイヤル番号を挙げたが、窒素濃度関連情報として、供給地域に係る情報として、エリア、都市、市外局番等の情報を用い、これらの情報をリモコン等の入力機器を介して取得することで、記憶部に記憶された図8に示すようなテーブルを参照して、閾値設定器14が最適な閾値を設定するような構成としても構わない。又、窒素濃度関連情報としてこれらに限定されることはなく、例えば、燃料電池システム200を駆動するための商用電源の電圧や周波数に基づく構成としてもよい。この場合、商用電源の周波数は、例えば制御装置10に商用電源の周波数を自動的に検出可能な情報取得器を設けることにより、容易に検出することができる。そして、この場合には、情報取得器が取得する商用電源の周波数に基づき閾値設定器14が所定の閾値を自動的に設定するよう構成すれば、浄化器7が備える酸化触媒の再生動作をより一層簡便に実施することが可能になる。
又、本実施の形態では、窒素濃度関連情報としてその供給主体に係る情報を挙げたが、これらに限定されることはない。例えば、天然ガスの種類やその組成に基づく構成としてもよい。
又、本実施の形態では、情報取得器15として、何れもオペレーターが操作可能な、ダイヤル、スイッチ、リモコン等を挙げたが、インターネット回線、又はGPS等を介して含窒素化合物の濃度に関連する情報を取得する機器であってもよく、上記情報を取得可能な機器であれば、上記構成に限定されるものではない。
以上、本発明の実施の形態1〜4によれば、従来の燃料電池システムのハードウェア上の構成と基本的に同様の構成を保ちながら長期間に渡り燃料電池の出力電圧の規格値以下への低下を効果的に防止することができる。
尚、以上の実施形態においては、天然ガス中に窒素が含有される場合における、累積アンモニア供給量に相関するパラメータに関する閾値の設定について説明したが、原料としてLPGを用いる場合、脱硫処理としてのアミン洗浄に起因して、LPGにアミンが残留している場合がある。この場合には、水素生成装置の改質器でアンモニアが発生する可能性があるので、必要に応じて、所定の連続運転時間等の閾値を予め設定すればよい。
又、近年では、LPG等の液化ガスに付臭剤としての含窒素化合物を混合する構成が検討されている。この含窒素化合物としては、例えば、イソニトリル化合物等の含窒素化合物が挙げられる。この場合、イソニトリル化合物は窒素元素を有しているので、水素生成装置の改質器ではアンモニアが生成される。従って、含窒素化合物を含むLPG等の液化ガスを用いる場合には、本発明を適宜適用すればよい。これにより、燃料電池システムから長期間に渡り安定して電力を得ることが可能になる。
又、水素生成装置の改質器に供給する天然ガスの供給量、その改質器における改質触媒の種類及び触媒量、変成器及び浄化器における変成触媒及び酸化触媒の種類及び触媒量、燃料電池システムの構成等が異なる場合には、燃料電池の出力電圧の低下量や低下時間が異なる。そのため、このような場合には、連続運転時間等に関する閾値を相応に設定すればよい。
本発明に係る水素生成装置、燃料電池システム、及びそれらの運転方法は、経時的に進行する酸化触媒の被毒を解消させることが可能である、原料が窒素を含有していても長期間に渡り高品質の水素含有ガスを安定して供給することが可能な水素生成装置、長期間に渡り所望の電力を安定して供給することが可能な燃料電池システム、及びそれらの運転方法として、産業上の利用可能性を十分に備えている。
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。一方、図2(b)は、浄化器が備える酸化触媒がアンモニアにより被毒される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図3(a)は、燃料電池の発電運転の開始後、水素生成装置から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度及びアンモニア濃度の経時的な変化、及び、燃料電池の出力電圧の経時的な変化を模式的に示すタイムチャートである。一方、図3(b)は、浄化器が備える酸化触媒からニトロシルがアンモニアとして脱離される推定メカニズムを模式的に示す概念図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態2に係る酸化触媒の再生処理を模式的に示すフローチャートである。
図6は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図7は、天然ガスに含まれる窒素の濃度と、その窒素を含む天然ガスを用いた場合の水素含有ガス中のアンモニア濃度との関係を、天然ガスを供給する地域毎に示した対応図である。
図8は、制御装置の記憶部に予め記憶されている、天然ガス中の窒素濃度と関連する窒素濃度関連情報と、天然ガス中の窒素濃度と、所定の閾値と、情報取得器を介して入力される番号との関係を模式的に示す対応図である。
符号の説明
1 原料供給装置(第1ガス供給器)
1a 流量調整弁
1b 流量検出部
2 水供給装置(水供給器)
2a 流量調整弁
2b 流量検出部
3 空気供給装置(第2ガス供給器)
3a ブロア
4 水素生成装置
5 改質器
5a 加熱器
6 変成器
7 浄化器(CO除去器)
7a 温度検出器
7b 冷却器
7c 加熱器
8 流路切替弁
9 燃料電池
10 制御装置(制御器)
10a 計時部
11 触媒担体
12 Ru触媒
13 酸化触媒体
14 閾値設定器
15 情報取得器
100,200 燃料電池システム
上記従来の課題を解決するため、本発明に係る水素生成装置は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給する第1ガス供給器と、アンモニア被毒する金属を含有する酸化触媒を有し該酸化触媒と酸化ガスとを用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、前記CO除去器に前記酸化ガスを供給する第2ガス供給器と、制御器とを備え、前記改質反応中に前記第1ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置であって、前記制御器は、前記第1ガス供給器から前記改質器に供給される前記含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、前記CO除去器への累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うよう制御するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成とすると、制御器が、CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが所定の閾値以上になると酸化触媒の再生動作を行うよう制御するので、酸化触媒の性能が長期間に渡り好適に維持される。これにより、一酸化炭素が十分に低減された高品質の水素含有ガスを長期間に渡り安定して供給することが可能な水素生成装置を提供することが可能になる。
又、かかる構成とすると、制御器が、第1ガス供給器から改質器に供給される含窒素化合物を含むガスの累積供給量が、累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると再生動作を行うよう制御するので、水素生成装置の改質器への含窒素化合物を含むガスの累積供給量に応じて酸化触媒を確実に再生させることが可能になる。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る水素生成装置の運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器と、アンモニア被毒する金属を含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器と、を備え、前記改質反応中に前記ガス供給器から前記改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される水素生成装置の運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。
又、上記従来の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、原料が供給されて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器、該改質器に含窒素化合物を含むガスを供給するガス供給器、並びに、アンモニア被毒する金属を含む酸化触媒を有し該酸化触媒を用いて前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により除去するCO除去器を備える水素生成装置と、前記水素生成装置により生成される前記水素含有ガスと酸素含有ガスとが供給されて発電する燃料電池と、を備え、前記改質反応中に前記水素生成装置のガス供給器から改質器に前記含窒素化合物を含むガスが供給される燃料電池システムの運転方法であって、前記CO除去器への累積アンモニア供給量に相関するパラメータが、該累積アンモニア供給量の上限界に基づき定められる所定の閾値以上になると、前記酸化触媒の再生動作を行うことを特徴とする。