JPWO2004084944A1 - 新規血糖調節薬及びそのスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

新規耐糖能異常改善薬、および生活習慣病治療薬、特に抗糖尿病薬の提供、並びにそれらのスクリーニング法の提供。 SPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬、および生活習慣病治療薬、特に抗糖尿病薬。SPC活性化GPCRと既知SPC活性化GPCRリガンドとを用いた新規SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法。SPC活性化GPCRと共役Gタンパク質の共発現系を用いたSPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法。

Description

本発明はSPC活性化GPCRリガンドの新規医薬用途に関する。より詳細には、本発明はインスリン分泌調節のためのSPC活性化GPCRリガンドの使用、例えば、耐糖能異常改善及び糖尿病などの生活習慣病の治療のためのSPC活性化GPCR作動薬の使用に関する。本発明はまた、上記疾患の治療薬となり得る新規なSPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法に関する。
糖尿病はその病態から1型と2型に分類される。すなわち、1型は膵臓におけるインスリン分泌機能不全に基づく病態であり、2型はインスリン感受性組織におけるインスリン抵抗性と膵臓におけるインスリン分泌異常が主たる病態である。近年、食生活の西洋化や社会的ストレスの増加等により、肥満とそれに付随する生活習慣病、特に2型糖尿病患者の増加が著しい。
血糖調節において膵臓は中心的役割をはたすと考えられている。主要な血糖調節ホルモンであるインスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌される。β細胞は食後などに一過的に上昇する血糖に応答して迅速に必要量のインスリンを分泌する。筋肉、脂肪等の末梢組織では膵臓から分泌されたインスリンに応答して糖を取り込むことにより、上昇した血糖の調節を行っている。さらに、肝臓ではインスリンに応答して糖新生が抑制され、血糖の調節が行われている。このようなサイクルに破綻が生じることにより糖尿病が発症すると考えられている。事実、1型糖尿病の多くは、膵臓が自己免疫的に破壊されインスリン分泌不全になることにより血糖コントロールが不能になるものであり、2型糖尿病ではインスリン分泌における第一相の分泌不良が高血糖を招来することが知られている。
上述のような観点から、膵臓におけるインスリン分泌の促進は糖尿病病態の改善効果に大きく貢献すると考えられる。このような作用機序を持つ薬剤としては、現在のところスルホニルウレア剤などが上市されているが、血糖値に応じたインスリン分泌調節作用がないため、血糖が低下してもなおインスリン分泌促進効果が持続して低血糖に陥り、昏睡、さらには死亡を招く危険性がある。現在、血糖値に応じたインスリン分泌促進効果が得られるというような特徴をもつ安全な薬剤は上市されておらず、このような薬剤の開発が望まれている。
ところで、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)は、スフィンゴリン脂質の一種であり、細胞増殖、平滑筋収縮、創傷治癒等多彩な生理活性が知られている(米国特許第5374616号明細書;国際公開第97/11706号パンフレット;Yan,Xuら、Biochemica et Biophysica Acta 1582,81−88(2002))。最近になって、SPCがG蛋白質結合受容体(G protein coupled receptor;GPCR)のリガンド(アゴニスト)であることがわかった。該受容体としては、OGR1、GPR4、TDAG8、及びGPR12等が知られている(Yan,Xuら、Biochemica et Biophysica Acta 1582,81−88(2002);Degmar Meyer zu Heingdorfら、Biochemica et Biophysica Acta 1582,178−189(2002);The Journal of Neuroscience,23(3),907−914)。しかしながら、OGR1、GPR4、TDAG8もしくはGPR12等の受容体、又は該受容体のリガンドであるSPCと、糖代謝制御との関係はこれまで全く知られていなかった。
したがって、本発明の目的は、糖代謝調節作用を有する化合物およびそのスクリーニング方法を提供することであり、それらを用いた耐糖能異常の改善方法、糖尿病を初めとする生活習慣病の治療薬を提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を行い、正常人の膵臓ランゲルハンス氏島において発現局在する因子を同定した。すなわち、本発明者らは正常人の膵臓ランゲルハンス氏島に発現する遺伝子と正常状態のその他の諸組織に発現する遺伝子を比較することにより、正常人の膵臓ランゲルハンス氏島において発現局在する遺伝子を同定した。次に、該遺伝子がコードする蛋白質を調べたところ、スフィンゴシルホスホリルコリン(Sphingosylphosphorylcholine;以下SPCと称する。)のレセプター、すなわちSPC活性化GPCRである、OGR1及びGPR4であることがわかった。
本発明者らは、次に、OGR1及びGPR4等のSPC活性化GPCRを介したシグナル伝達が膵臓におけるインスリン分泌に関与しているか否か、SPC活性化GPCRのリガンド、すなわちSPCが膵臓を介した抗糖尿病作用を発揮するか否かを検討した。その結果、SPCを食餌性肥満糖尿病モデルマウスへ投与したところ、SPCは糖負荷による血糖値の上昇に応じて一過的にインスリン分泌を促進し、顕著な耐糖能異常改善作用を示すことを見出した。
これらの結果は、SPC活性化GPCRの生理的リガンドであるSPCのみならず、SPC活性化GPCRに対するアゴニスト活性を有するあらゆる化合物、すなわちSPC活性化GPCR作動薬が耐糖能異常改善作用及び糖尿病を含む生活習慣病の治療活性を有することを示している。
次に、本発明者らは、SPC活性化GPCR又はその発現細胞、および公知のSPC活性化GPCRリガンドを用いて新規SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング系を構築し、本発明を完成するに至った。
本発明は、SPC活性化GPCRリガンドを有効成分とする血糖調節薬、詳細には、SPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬に関する。すなわち、
〔1〕 SPC活性化GPCRリガンドを有効成分とする血糖調節薬、
〔2〕 SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、〔1〕に記載の血糖調節薬、
〔3〕 SPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬、
〔4〕 SPC活性化GPCR作動薬が、スフリンゴシルホスホリルコリン(SPC)、又はその改変体である、〔3〕に記載の耐糖能異常改善薬、
〔5〕 生活習慣病治療薬である〔3〕又は〔4〕に記載の耐糖能異常改善薬、
〔6〕 糖尿病治療薬である〔3〕又は〔4〕に記載の耐糖能異常改善薬、
〔7〕 SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、〔3〕〜〔6〕のいずれか記載の耐糖能異常改善薬、
別の本発明は、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法に関する。すなわち、
〔8〕 SPC活性化GPCR、又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに被験物質を接触させ、該GPCR又は該フラグメントに結合する化合物を選択することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法、
〔9〕 被験物質の存在下及び非存在下で、SPC活性化GPCR、又はリガンドが結合し得るそれらのフラグメントに既知リガンドを接触させ、該GPCR又は該フラグメントと既知リガンドとの結合活性を両条件下で比較することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法、
〔10〕 既知リガンドがSPCである〔9〕記載のスクリーニング方法、
〔11〕 SPC活性化GPCR、又はリガンドが結合し得るそのフラグメントが、それらが包埋された脂質二重層の形態で提供される、〔8〕〜〔10〕のいずれか記載のスクリーニング方法。
また、SPC活性化GPCRは三量体GTP結合タンパク質共役型レセプター(GPCR)であり、共役するGTPタンパク質αサブユニット(Gα)についても幾らかの知見が得られている。従って、本発明は、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層及び共役するGαを含んでなる反応系において、該GαのGDP・GTP交換反応又は共役Gタンパク質の細胞刺激活性を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法を提供する。すなわち、
〔12〕 SPC活性化GPCRを含む脂質二重層及びSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットを含んでなる反応系において、該サブユニットのGDP・GTP交換反応又は該G蛋白質の細胞刺激活性を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法、
〔13〕 上記反応系が、(i)SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターと、SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットをコードするDNAを含む発現ベクターとでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、(ii)SPC活性化GPCRのC末端側にSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットが融合したポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、(iii)SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした、SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質を内因的に発現する宿主動物細胞、(iv)SPC活性化GPCR及びSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質を内因的に発現する動物細胞、それらの細胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分である、〔12〕記載のスクリーニング方法、
〔14〕 上記反応系に、被験物質の存在下及び非存在下でGTPアナログを添加し、SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットとGTPアナログとの結合を両条件下で比較することを含む、〔13〕記載のスクリーニング方法、
〔15〕 SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットが、アデニル酸シクラーゼと相互作用する領域を含むものである、〔13〕記載のスクリーニング方法、
〔16〕 上記反応系に、被験物質の存在下及び非存在下でATPを添加し、アデニル酸シクラーゼ活性を両条件下で比較することを含む、〔15〕記載の方法、
〔17〕 上記(i)〜(iv)の細胞におけるcAMP量を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、〔15〕記載の方法、
〔18〕 SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットが、ホスホリパーゼCβと相互作用する領域を含むものである、〔13〕記載のスクリーニング方法、
〔19〕 上記反応系に、被験物質の存在下及び非存在下でホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸を添加し、ホスホリパーゼCβ活性を両条件下で比較することを含む、〔18〕記載のスクリーニング方法、
〔20〕 上記(i)〜(iv)の細胞における細胞内カルシウムイオンの量を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、〔18〕記載のスクリーニング方法、
〔21〕 cAMP応答エレメントを含むプロモーター領域の制御下にあるリポーター遺伝子を含む発現ベクターをさらに含む上記(i)〜(iv)の細胞における該リポーター遺伝子の発現量を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、〔15〕記載のスクリーニング方法、
〔22〕 TPA応答エレメントを含むプロモーター領域の制御下にあるリポーター遺伝子を含む発現ベクターをさらに含む上記(i)〜(iv)の細胞における該リポーター遺伝子の発現量を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、〔18〕記載のスクリーニング方法、
〔23〕 上記(i)〜(iv)の細胞における、リン酸化されたERK MAPキナーゼの量を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、〔13〕記載のスクリーニング方法、
〔24〕 上記反応系に、被験物質の存在下及び非存在下で[3H]チミジンを添加し、細胞内への[3H]チミジン取り込み量を両条件下で比較することを含む、〔13〕記載のスクリーニング方法、
〔25〕 既知リガンドの共存下で実施される、〔12〕〜〔24〕のいずれかに記載のスクリーニング方法、
〔26〕 既知リガンドがSPCである、〔25〕記載のスクリーニング方法、
〔27〕 SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、〔8〕〜〔26〕のいずれか記載のスクリーニング方法、
さらに別の本発明は、上記のいずれかのスクリーニング方法により選択されるSPC活性化GPCRリガンドを有効成分とする医薬品を提供する。すなわち、
〔28〕 〔8〕〜〔27〕のいずれかに記載の方法により選択されるSPC活性化GPCRリガンドを有効成分とするインスリン分泌調節薬、
〔29〕 〔8〕〜〔27〕のいずれかに記載の方法により選択されるSPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬、
〔30〕 生活習慣病治療薬である〔29〕記載の耐糖能異常改善薬、
〔31〕 糖尿病治療薬である〔30〕記載の耐糖能異常改善薬、
本発明のさらなる特徴及び本発明の利点について、以下の「発明の実施の形態」においてより詳細に説明する。
図1は、マウスの糖負荷後135分の血糖値を示す図である。すなわち、DIO群に生理食塩水を投与した群(左カラム);DIO群にSPCを投与した群(中央カラム);正常群に生理食塩水群を投与した群(右カラム)について、それぞれ血糖値(mg/dl)を示した。
本明細書において、「SPC活性化GPCR」とは、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)がリガンド(アゴニスト)となって活性化され、かつ膵臓ランゲルハンス氏島において有意に発現しているGPCRを表し、具体的にはOGR1、GPR4及びGPR12が挙げられる。OGR1、GPR4及びGPR12のアミノ酸配列及び遺伝子の塩基配列はそれぞれ公知であり、例えばヒトOGR1の配列はGeneBankに受託番号:U48405として登録されている(配列番号:1および2)。またヒトGPR4の配列はGenBankに受託番号:NM_005282として登録されている(配列番号:3および4)。また、ヒトGPR12の配列はGenbankに受託番号:NM_005288として登録されている(配列番号:7および8)。
ここで前記「有意に発現している」とは、他の組織における発現量と比較して、膵臓ランゲルハンス氏島における発現量が、約1.5倍以上であることを表す。
本発明において「OGR1」とは、ヒト及び他の哺乳動物由来のOGR1の他、それらの自然もしくは人工の突然変異体、それらをコードするDNAを含む組換え細胞から製造される組換えOGR1、それらの機能的フラグメントの全てを包含する意味で使用される。
また、本発明において「GPR4」とは、ヒト及び他の哺乳動物由来のGPR4の他、それらの自然もしくは人工の突然変異体、それらをコードするDNAを含む組換え細胞から製造される組換えGPR4、それらの機能的フラグメントの全てを包含する意味で使用される。
また、本発明において「GPR12」とは、ヒト及び他の哺乳動物由来のGPR12の他、それらの自然もしくは人工の突然変異体、それらをコードするDNAを含む組換え細胞から製造される組換えGPR12、それらの機能的フラグメントの全てを包含する意味で使用される。
「SPC活性化GPCRリガンド」とは、特にことわらない限り、生理的リガンドであるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)だけでなく、アゴニスト(即ち、レセプターの生理的リガンド結合部位に結合して、リガンド様の活性を示す物質)やアンタゴニスト(レセプターの生理的リガンド結合部位に結合するが、リガンド様の活性を示さない物質)及びインバースアゴニスト(レセプターのいずれかの部位に結合してそのコンフォメーションを変化させ、レセプターを不活性化する物質)をも包含するものとする。例えば、Lysophosphatidylcholine(LPC)は、GPR4と結合することが知られているアゴニストである[Yan,Xuら、Biochemica et Biophysica Acta,1582,81−88(2002)]。
「SPC活性化GPCR作動薬」とは、SPC活性化GPCRに結合して該レセプターの活性を促進する物質の総称として用いられ、SPC活性化GPCRの生理的リガンドであるSPCやそれらの改変体の他、SPC活性化GPCRに対するアゴニスト活性を有する公知及び新規のあらゆる化合物を包含する。好ましくは、該作動薬はSPC、又はSPCの改変体を表す。
SPC活性化GPCRの生理的リガンドであるSPCは、以下の式(1):
Figure 2004084944
で表されるリン酸エステル化合物である。
SPCの改変体とは、式(1)で表される化合物の水酸基、アミノ基および/またはトリメチルアミノ基が、水酸基、メルカプト基、カルボニル基、チオカルボニル基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のジアルキルアミノ基および炭素数1〜4のトリアルキルアミノ基から選択されるいずれかの基で置換され、かつSPC活性化GPCR作動薬としての活性を維持している化合物を表す。また、式(1)で表される化合物の1−テトラデセニル基が任意の位置に1もしくは2個の二重結合を有する炭素数12〜18の直鎖アルケニル基に置換され、かつSPC活性化GPCR作動薬としての活性を維持している化合物もまた、SPC改変体の範疇に含まれる。これらの改変箇所は1箇所であっても複数箇所であってもよい。
また、LPCは、以下の式(2):
Figure 2004084944
で表されるリン酸エステル化合物である。
SPC活性化GPCR作動薬は、投与された動物において、血糖値の上昇に応答して一過的にインスリン分泌を促進して血糖値を低下させるが、血糖値の低下後にはインスリン分泌作用が低下するので、低血糖を引き起こすことがなく、安全な耐糖能異常改善薬、糖尿病治療薬として有効である。
SPC活性化GPCRリガンド又はSPC活性化GPCR作動薬は、医薬上許容される担体とともに経口的もしくは非経口的投与に適した剤形に製剤化される。医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量のSPC活性化GPCRリガンドもしくはSPC活性化GPCR作動薬を溶解させた液剤、有効量のSPC活性化GPCRリガンドもしくはSPC活性化GPCR作動薬を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量のSPC活性化GPCRリガンドを懸濁させた懸濁液剤、有効量のSPC活性化GPCRリガンドを溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。ここで「有効量」とは、SPC活性化GPCR作動薬を耐糖能異常患者、糖尿病患者または他の生活習慣病患者の治療のために使用する場合にそれぞれの疾患を改善させるのに十分な量をいう。
非経口的な投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。
当該SPC活性化GPCRリガンド又はSPC活性化GPCR作動薬の製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、SPC活性化GPCRリガンド又はSPC活性化GPCR作動薬、および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
SPC活性化GPCRリガンド又はSPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする本発明の製剤の投与量は、有効成分の種類、投与経路、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なるが、SPC活性化GPCRリガンドを、例えば、成人1日あたり約0.01〜約1000mg/kg、好ましくは約0.1〜約500mg/kg投与することができる。
本発明はまた、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング系及びそれを用いた当該リガンドのスクリーニング方法を提供する。
本発明において、被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。被験物質は好ましくは分子量200〜2000の化合物であり、更に好ましくは分子量300〜800の化合物である。
本発明の、スクリーニング方法の第一の態様は、SPC活性化GPCR又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに被験物質を接触させる工程、及び該レセプター又はそのフラグメントに結合する化合物を選択する工程を含む。被験物質との結合活性は、例えば、SPC活性化GPCR又はそのフラグメントを発現する細胞膜画分をチップ上に固定し、該チップ上に被験物質溶液をロードして、表面プラズモン共鳴法により被験物質の膜への結合及び解離を測定し、結合及び解離の速度あるいは結合量から、被験物質とSPC活性化GPCRとの親和性を算出することにより導かれる。
本発明のスクリーニング方法の第二の態様は、被験物質の存在下及び非存在下で、SPC活性化GPCR又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに既知リガンドを接触させ、該レセプター又はそのフラグメントと既知リガンドとの結合活性を両条件下で比較することを含む。既知リガンドとしては、SPC活性化GPCRの生理的リガンドであるSPC等を用いることができる。SPCを既知リガンドとして用いた場合、例えばSPC活性化GPCRに対する結合活性が、SPCよりも強い被験物質をSPC活性化GPCR作動薬候補物質として選択することができる。該候補物質がSPC活性化GPCR作動薬であることは、以下に述べるG蛋白質を用いるスクリーニング方法等により確認することができる。
上記のいずれの態様においても、SPC活性化GPCR又はそのフラグメントは、それらの発現細胞、該細胞の細胞膜画分、あるいはアフィニティーカラムに結合した形態で提供され得る。SPC活性化GPCRの発現細胞としては、SPC活性化GPCR又はそのフラグメントをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞等が挙げられる。また、アフィニティーカラムとしては、抗SPC活性化GPCR抗体カラム、既知リガンドを用いたカラム、また、SPC活性化GPCRが組換えタンパク質として提供される場合、HisタグやGSTタグと特異的親和性を有する金属キレートもしくはグルタチオンカラムを用いることができる。
SPC活性化GPCRまたはそのフラグメントと既知リガンドとの結合活性の検出する方法としては、例えば、既知リガンド量を検出する方法、または既知リガンドを標識して、SPC活性化GPCRまたはそのフラグメントに結合した標識量を測定する方法が挙げられる(Nature Cell Biology,2,261−267(2000))。
既知リガンドの標識方法としては、3H、14C、32Pおよび33P等の放射性同位元素で標識する方法等が挙げられる。具体的には、コリン部分のN−メチル基の水素原子が3Hで、N−メチル基の炭素原子が14Cで、またはリン原子が32PでそれぞれラベルされたSPC又はLPCを用いることができ、例えば、[Methyl−3H]choline−labelled SPC、[Methyl−14C]choline−labelled SPC、又は32P−labelled SPCが挙げられる(Journal of Neurochemistry,1973,vol.20,1659−1667;)。
SPC活性化GPCRは、ある種の三量体G蛋白質と共役して細胞内にシグナルを伝達する。従って、本発明はまた、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層と、SPC活性化GPCRと共役するG蛋白質(特にGαサブユニット)とを用いたSPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、GαにおけるGTP・GDP交換反応または共役するG蛋白質の細胞刺激活性を指標として行われる。G蛋白質の細胞刺激活性を指標とする場合、共役させるGαの態様に応じて、エフェクターの選択や活性測定方法等の具体的な手順が決定されるが、通常、アデニル酸シクラーゼと相互作用する領域を含むGα(具体的にはGiファミリーに属するGαのエフェクター相互作用領域を含む)を用いる場合には例えばcAMP量を測定することにより、ホスホリパーゼCβと相互作用する領域を含むGα(具体的にはGqファミリーに属するGαのエフェクター相互作用領域を含む)を用いる場合には例えば細胞内カルシウムイオンの量を測定することにより、SPC活性化GPCRリガンドをスクリーニングすることができる。 また、Gαの供給源として該Gαを含む三量体G蛋白質(Gαβγ)を内因的に発現する動物細胞(例えば、HEK293細胞、L1.2細胞等)を用いる場合、SPC活性化GPCRによって活性化されたGαβγはGαとGβγに解離するが、遊離のGβγはホスホリパーゼCβに相互作用して細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ得るので、共役するGαのファミリーに関係なく細胞内カルシウムイオンを指標にしてリガンドスクリーニングを行うことも可能である。
ここで、「SPC活性化GPCR」とは、ヒト及び他の哺乳動物由来のSPC活性化GPCR、及びそれらのアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加または修飾されたアミノ酸配列からなり、天然SPC活性化GPCRと同じリガンド−レセプター相互作用を示し、且つ共役するGαを活性化して該GαのGDP・GTP交換反応を促進する活性を有するタンパク質をいう。
具体的には、ヒト及び他の哺乳動物由来の「OGR1」、「GPR4」、「GPR12」及びそれらのアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加または修飾されたアミノ酸配列からなり、天然SPC活性化GPCRと同じリガンド−レセプター相互作用を示し、且つ共役するGαを活性化して該GαのGDP・GTP交換反応を促進する活性を有するタンパク質を挙げることができる。
前記「OGR1」は、OGR1、又はそのフラグメントをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞の膜含有画分から、抗OGR1抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離することができる。あるいは、当該細胞由来のcDNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーから、OGR1のcDNAクローンをプローブとして単離されるDNAクローンを適当な発現ベクター中にクローニングし、宿主細胞に導入して発現させ、細胞培養物の膜含有画分から抗OGR1抗体や、His−tag、GST−tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる。また、GFP等の蛍光物質とSPC活性化GPCRの融合蛋白質を発現させることにより、GFP陽性細胞、すなわちSPC活性化GPCRがトランスフェクトされた細胞のみを選択してスクリーニングに用いることも可能である(Xu et al.,Nat.Cell Biol.,2,261−267(2000))。また、OGR1のcDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。しかしながら、リガンド結合ドメインは高度に保存されている必要があるので、このような領域には変異を導入しないことが望ましい。保存的アミノ酸置換は周知であり、当業者はOGR1の特性を変化させない範囲で、OGR1に適宜変異を導入することができる。
また、前記「GPR4」は、GPR4、又はそのフラグメントをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞の膜含有画分から、抗GPR4抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離することができる。あるいは、当該細胞由来のcDNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーから、GPR4のcDNAクローンをプローブとして単離されるDNAクローンを適当な発現ベクター中にクローニングし、宿主細胞に導入して発現させ、細胞培養物の膜含有画分から抗GPR4抗体や、His−tag、GST−tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる。また、GFP等の蛍光物質とSPC活性化GPCRの融合蛋白質を発現させることにより、GFP陽性細胞、すなわちSPC活性化GPCRがトランスフェクトされた細胞のみを選択してスクリーニングに用いることも可能である(Xu et al.,Nat.Cell Biol.,2,261−267(2000))。また、GPR4のcDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。しかしながら、リガンド結合ドメインは高度に保存されている必要があるので、このような領域には変異を導入しないことが望ましい。保存的アミノ酸置換は周知であり、当業者はGPR4の特性を変化させない範囲で、GPR4に適宜変異を導入することができる。
また、前記「GPR12」は、GPR12、又はそのフラグメントをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞の膜含有画分から、抗GPR12抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離することができる。あるいは、当該細胞由来のcDNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーから、GPR12のcDNAクローンをプローブとして単離されるDNAクローンを適当な発現ベクター中にクローニングし、宿主細胞に導入して発現させ、細胞培養物の膜含有画分から抗GPR12抗体や、His−tag、GST−tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる。また、GFP等の蛍光物質とSPC活性化GPCRの融合蛋白質を発現させることにより、GFP陽性細胞、すなわちSPC活性化GPCRがトランスフェクトされた細胞のみを選択してスクリーニングに用いることも可能である(Xu et al.,Nat.Cell Biol.,2,261−267(2000))。また、GPR12のcDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。しかしながら、リガンド結合ドメインは高度に保存されている必要があるので、このような領域には変異を導入しないことが望ましい。保存的アミノ酸置換は周知であり、当業者はGPR12の特性を変化させない範囲で、GPR12に適宜変異を導入することができる。
SPC活性化GPCRを保持する脂質二重層膜の由来は、当該レセプターが本来の立体構造をとることができる限り特に制限されないが、好ましくはヒト、ウシ、ブタ、サル、マウス、ラット等の哺乳動物細胞の細胞膜を含有する画分、例えば、無傷細胞、細胞ホモジネート、あるいは該ホモジネートから遠心分離等により分画される細胞膜画分が挙げられる。また、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、コレステロール等の各種脂質を適当な比率、好ましくは哺乳動物細胞の細胞膜におけるそれに近い比率で混合した溶液から常法により調製される人工脂質二重膜もまた、本発明の一実施態様において好ましく使用され得る。
SPC活性化GPCRと共役するGαは、少なくとも該GαのGPCRとの結合に関与する領域及び任意のGαのグアニンヌクレオチドとの結合に関与する領域を有することが必要である。例えば、SPC活性化GPCRと共役するGαがGiファミリーに属する場合(Giα)には、用いるGαはGiαのGPCR結合領域を少なくとも有し、Giαのグアニンヌクレオチド結合領域もしくは他のファミリーに属するGα由来のグアニンヌクレオチド結合領域を有するものである。GαのX線結晶構造解析の結果等から、GPCRとの結合にはC末端の約5アミノ酸程度の配列が重要であり、一方、グアニンヌクレオチド結合領域は、ras蛋白質のヌクレオチド結合部位と相同な領域(N末端側から、Pボックス、G’ボックス、Gボックス、G″ボックスと呼ばれるアミノ酸モチーフ、並びに高度にヘリックス化したドメイン内のαEヘリックスの先頭及びαFヘリックスなど)であることが明らかになっている。
SPC活性化GPCRに対する生理的リガンド又はアゴニストが該レセプターに結合すると、該レセプターのGα活性化ドメインとGαのGPCR結合領域とが相互作用してGαのコンフォメーション変化を生じ、グアニンヌクレオチド結合領域からGDPが解離して速やかにGTPを結合する。一方、インバースアゴニストが結合すると、レセプターのコンフォメーション変化によりGα活性化ドメインが不活性化されるので、活性化型のGα−GTPレベルが減少する。ここで、GTPの代わりに35S標識したGTPγSなどのGαのGTPase活性によって加水分解を受けないGTPアナログを系に添加しておけば、被験物質の存在下と非存在下での膜に結合した放射活性を測定・比較することにより、SPC活性化GPCRのアゴニスト又はインバースアゴニストをスクリーニングすることができる。即ち、被験物質の存在下で放射活性が増加すれば、該被験物質はアゴニストであり、放射活性が減少すればインバースアゴニストである。
あるいは、GαへのGTPアナログの結合を表面プラズモン共鳴法等を用いてモニタリングすることによってもスクリーニングが可能である。
SPC活性化GPCRのリガンドの活性は、共役するGαのエフェクターへの作用を指標として測定することもできる。この場合、本発明のスクリーニング系は、SPC活性化GPCRに加えて、さらにエフェクターを含む脂質二重層膜を構成要素として含む必要がある。また、共役するGαは該エフェクターと相互作用するための領域をさらに含む必要がある。当該領域はそのGα本来のエフェクター相互作用領域であってもよいし、異なるファミリーに属するGαのエフェクター相互作用領域であってもよい。例えばGiαに対しては異なるファミリーに属するGαとしてGqα、Gsα、G12α等が挙げられ、Gqαに対しては異なるファミリーに属するGαとしてGiα、Gsα、G12α等が挙げられる。異なるファミリーに属するGα(例えばGqα)のエフェクター相互作用領域を含むGα(例えばGiα)キメラの最も簡便な例としては、GqαのC末端の約5アミノ酸程度を、GiαのC末端配列で置換したもの(Gqiα)が挙げられる。
SPC活性化GPCRと共役するGαがGiαのエフェクター相互作用領域を含む場合、エフェクターとしてアデニル酸シクラーゼを含む脂質二重層膜が用いられる。一方、共役GαがGqαのエフェクター相互作用領域を含む場合は、エフェクターとしてホスホリパーゼCβを含む脂質二重層膜を用いる必要がある。尚、共役GαがGsαのエフェクター相互作用領域を含む場合は、エフェクターとしてアデニル酸シクラーゼを含む脂質二重層膜が用いられ、Giαの場合とは逆に、アデニル酸シクラーゼ活性の促進作用を指標としてリガンド活性が評価される。
エフェクターとしてアデニル酸シクラーゼ(以下、ACともいう)を含むスクリーニング系においては、Gαのエフェクターへの作用は、AC活性を直接測定することにより評価することができる。AC活性の測定には公知のいかなる手法を用いてもよく、例えば、ACを含む膜画分にATPを添加し、生成するcAMP量を、抗cAMP抗体を用いてRI(125I)、酵素(アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等)、蛍光物質(FITC、ローダミン等)等で標識したcAMPとの競合イムノアッセイにより測定する方法や、ACを含む膜画分に[α−32P]ATPを添加し、生成する[32P]cAMPをアルミナカラム等で分離後、その放射活性を測定する方法が挙げられるが、これに限定されない。GαがGiαの場合、被験物質の存在下及び非存在下でAC活性を測定・比較し、被験物質存在下でAC活性が増加すれば被験物質はSPC活性化GPCRのインバースアゴニストであり、活性が減少すればアゴニストである。一方、GαがGsαの場合、被験物質の存在下及び非存在下でAC活性を測定・比較し、被験物質存在下でAC活性が減少すれば被験物質はSPC活性化GPCRのインバースアゴニストであり、活性が増加すればアゴニストである。
スクリーニング系として無傷真核生物細胞を用いる場合は、GαのACへの作用は、細胞内のcAMP量を測定するか、あるいは細胞を[3H]アデニンで標識し、生成した[3H]cAMPの放射活性を測定することによっても評価することができる。細胞内cAMP量は、被験物質の存在下及び非存在下で細胞を適当な時間インキュベートした後、細胞を破砕して得られる抽出液について、上記の競合イムノアッセイを実施することにより測定することができるが、公知の他のいかなる方法も使用することができる。
別の態様として、cAMP量をcAMP応答エレメント(CRE)の制御下にあるリポーター遺伝子の発現量を測定することにより、評価する方法もある。ここで使用される発現ベクターについては後に詳述するが、概説すると、CREを含むプロモーターの下流にリポーター蛋白質をコードするDNAを連結した発現カセットを含むベクターを導入された動物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で適当な時間培養し、細胞を破砕して得られた抽出液におけるリポーター遺伝子の発現を公知の手法を用いて測定・比較することにより、細胞内cAMP量を評価するというものである。
従って、GαがGiαの場合、被験物質の存在下で細胞内cAMP量(もしくはCRE制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)が増加すれば、該被験物質はSPC活性化GPCRのインバースアゴニストであり、減少すればアゴニストである。一方、GαがGsαの場合、被験物質の存在下で細胞内cAMP(もしくはCRE制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)が減少すれば、該被験物質はSPC活性化GPCRのインバースアゴニストであり、増加すればアゴニストである。
一方、エフェクターとしてホスホリパーゼCβ(以下、PLCβともいう)を含むスクリーニング系(即ち、GαがGqαであるか又はGqαのエフェクター相互作用領域を含むキメラ蛋白質(キメラGqα)の場合)においては、該Gqα又はキメラGqαのエフェクターへの作用は、PLCβ活性を直接測定することにより評価することができる。PLCβ活性は、例えば、3H標識したホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸をPLCβ含有膜画分に添加し、生成するイノシトールリン酸量を、公知の手法を用いて測定することにより評価することができる。被験物質の存在下及び非存在下でPLCβ活性を測定・比較し、被験物質存在下でPLCβ活性が増加すれば該被験物質はSPC活性化GPCRのアゴニストであり、活性が減少すればインバースアゴニストである。
スクリーニング系として無傷真核生物細胞を用いる場合は、Gqα又はキメラGqαのPLCβへの作用は、細胞に[3H]イノシトールを添加し、生成した[3H]イノシトールリン酸の放射活性を測定したり、細胞内のCa2+量を測定したりすることによっても評価することができる。細胞内Ca2+量は、被験物質の存在下及び非存在下で細胞を適当な時間インキュベートした後、蛍光プローブ(fura−2、indo−1、fluor−3、Calcium−Green I等)を用いて分光学的に測定するか、カルシウム感受性発光蛋白質であるエクオリン等を用いて測定することができるが、公知の他のいかなる方法を使用してもよい。蛍光プローブを用いた分光学的測定に適した装置として、FLIPR(Molecular Devices社)システムが挙げられる。
別の態様として、Ca2+によりアップレギュレートされるTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)応答エレメント(TRE)の制御下にあるリポーター遺伝子の発現量を測定することにより、Ca2+量を評価する方法もある。ここで使用される発現ベクターについては後に詳述するが、概説すると、TREを含むプロモーターの下流にリポーター蛋白質をコードするDNAを連結した発現カセットを含むベクターを導入された真核生物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で適当な時間培養し、細胞を破砕して得られた抽出液におけるリポーター遺伝子の発現を公知の手法を用いて測定・比較することにより、細胞内Ca2+量を評価するというものである。
従って、被験物質の存在下で細胞内Ca2+量(もしくはTRE制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)が増加すれば、該被験物質はSPC活性化GPCRのアゴニストであり、減少すればインバースアゴニストである。
上記のSPC活性化GPCRと共役Gαとを用いたSPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法を、SPC活性化GPCRに対する既知リガンド、例えば、SPC等の共存下で行えば、さらにSPC活性化GPCRに対するニュートラルアンタゴニストを容易に選抜することができる。
また、別の態様として、SPC活性化GPCR依存的な種々の生理作用を指標として、SPC活性化GPCRリガンドをスクリーニングすることも可能である。該生理作用としては、MAPキナーゼの一種であるERKの活性化が挙げられる。具体的には、SPC活性化GPCRの存在下に、被験物質がERKのリン酸化を促進するか否かを、リン酸化ERK量をウェスタンブロッティング等で検出することによって測定する方法(Kabarowski et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97,12109−12114(2000))が挙げられる。
また、SPC活性化GPCRがGPR4である場合、GPR4依存的なDNA合成促進活性(細胞増殖促進活性)を測定することによって、SPC活性化GPCRリガンドをスクリーニングする方法が挙げられる。また、SPC活性化GPCRがOGR1である場合、OGR1依存的なDNA合成抑制活性(細胞増殖抑制活性)を測定することによって、SPC活性化GPCRリガンドをスクリーニングする方法が挙げられる。また、SPC活性化GPCRがGPR12である場合、GPR12依存的な細胞増殖促進活性(DNA合成促進活性)を測定することによって、SPC活性化GPCRリガンドをスクリーニングする方法が挙げられる。
具体的には、SPC活性化GPCRの存在下に、[3H]チミジン取り込み量、もしくはMTT((3−4、5−dimethylthazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide)の還元反応を測定することができる(J.Biol.Chem.,276(44),p41325−p41335(2001))。
また、SPC活性化GPCRがGPR4の場合、血清応答エレメント(Serum−response element;SRE)の制御下にあるリポーター遺伝子の発現量を測定することにより、G蛋白質の細胞刺激活性を評価する方法もある(An et al.,J.Biol.,Chem.,273,7906−7910,(1999);An et al.,Mol.Pharmacol.,55,787−794(1999))。ここで使用される発現ベクターについては後に詳述するが、概説すると、SREを含むプロモーターの下流にリポーター蛋白質をコードするDNAを連結した発現カセットを含むベクターを導入された真核生物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で適当な時間培養し、細胞を破砕して得られる抽出液におけるリポーター遺伝子の発現を公知の方法を用いて測定・比較することにより、細胞内Ca2+量を評価するというものである。従って、SRE制御下にあるリポーター遺伝子の量が増加すれば、該被験物質はSPC活性化GPCRのアゴニストであり、減少すればインバースアゴニストである。
本発明のスクリーニング法のために提供される、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層膜、及びSPC活性化GPCRと共役するGαを構成要素として含有するスクリーニング系の好ましい一実施態様は、SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターと、共役GαのGPCRとの結合に関与する領域及び任意のGαのグアニンヌクレオチドとの結合に関与する領域を少なくとも含むポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターとでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。
「SPC活性化GPCRをコードするDNA」は、ヒト及び他の哺乳動物由来のSPC活性化GPCR、あるいは該レセプターのアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加または修飾されたアミノ酸配列からなり、天然SPC活性化GPCRと同じリガンド−レセプター相互作用を示し、且つ共役するGαを活性化して該サブユニットのGDP・GTP交換反応を促進する活性を有するポリペプチドをコードするDNAであれば特に制限はない。ヒトSPC活性化GPCR cDNAのコーディング領域の他、ウシ、ブタ、サル、マウス、ラット等のヒト以外の哺乳動物由来のSPC活性化GPCRをコードするDNA等が例示され、これらは、哺乳動物の膵臓、もしくは腎臓、肺の細胞由来のcDNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーから、ヒトSPC活性化GPCRのcDNAクローンをプローブとして単離され得る。また、SPC活性化GPCRは、ヒトSPC活性化GPCRのcDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。
具体的には、ヒト及び他の哺乳動物由来の「OGR1をコードするDNA」、ヒト及び他の哺乳動物由来の「GPR4をコードするDNA」、ヒト及び他の哺乳動物由来の「GPR12をコードするDNA」、又はこれらのアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加または修飾されたアミノ酸配列からなり、天然SPC活性化GPCRと同じリガンド−レセプター相互作用を示し、且つ共役するGαを活性化して該サブユニットのGDP・GTP交換反応を促進する活性を有するポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。
Gαとしては、SPC活性化GPCRと共役するものであれば特に制限はない。Gαの各遺伝子は公知であり、容易に入手可能である。SPC活性化GPCRと共役するGαを含むポリペプチドをコードするDNAは、少なくとも共役GαのGPCRとの結合に関与する領域をコードする配列と、任意のGαのグアニンヌクレオチドとの結合に関与する領域をコードする配列を有することが必要である。上述の通り、GαのX線結晶構造解析の結果から、GPCR結合領域及びグアニンヌクレオチド結合領域はよく知られており、当業者は、所望によりGαのコーディング配列の一部を欠失したフラグメントを容易に構築することができる。
Gαのエフェクターへの作用を指標とするスクリーニング系においては、SPC活性化GPCRと共役するGαをコードするDNAは、所望のエフェクターと相互作用するための領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む必要がある。エフェクターとしてアデニル酸シクラーゼを用いる場合は、該DNAはGiα(例えば、Gαi2)もしくはGsα(例えば、Gαs2)のエフェクター相互作用領域をコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、OGR1、GPR4及びGPR12はGiαのエフェクター相互作用領域を用いることができる。
一方、エフェクターとしてホスホリパーゼCβを用いる場合には、該DNAはGqα(例えば、Gα16)のエフェクター相互作用領域をコードするヌクレオチド配列を含む。各Gα遺伝子は公知であり、それらのエフェクター相互作用領域もよく知られている。従って、当業者は、公知の遺伝子工学的手法を適宜組み合わせることにより、容易にキメラGα蛋白質をコードするDNAを構築することもできる。当該キメラ蛋白質(例えば、Gqiα)をコードするDNAの最も簡便な例としては、GqαのcDNAのC末端の約5アミノ酸をコードする配列を、PCR等の公知の手法を用いてGiαのC末端配列をコードするDNA配列に置換したものが挙げられる。
SPC活性化GPCRをコードするDNA、及びSPC活性化GPCRと共役するGαをコードするDNAは、宿主真核生物細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されていなければならない。使用されるプロモーターは、宿主真核生物細胞内で機能し得るものであれば特に制限はないが、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR、ラウス肉腫ウイルスLTR、MoMuLV由来LTR、アデノウイルス由来初期プロモーター、バキュロウイルス由来ポリヘドリンプロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ−アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の真核生物由来細胞の構成蛋白質遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。使用される発現ベクターは、上記プロモーターに加えて、その下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有することが好ましく、プロモーター領域とターミネーター領域の間にコーディングDNAを挿入し得るように、適当な制限酵素認識部位、好ましくは該ベクターを1箇所のみで切断するユニークな制限酵素認識部位を有することが望ましい。さらに、該発現ベクターは、選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性変異相補遺伝子等)をさらに含有していてもよい。
本発明のスクリーニング系に使用されるベクターとしてはプラスミドベクターの他、ヒト等の哺乳動物での使用に好適なレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス等、あるいは昆虫細胞での使用に好適なバキュロウイルスベクター等も挙げられる。
SPC活性化GPCRをコードするDNAと、SPC活性化GPCRと共役するGαをコードするDNAは、2つの別個の発現ベクター上に担持されて宿主細胞に共トランスフェクトされてもよいし、あるいは、1つのベクター上に、ジシストロニックもしくはモノシストロニックに挿入されて、宿主細胞内に導入されてもよい。
宿主細胞は、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物細胞、あるいは昆虫細胞であれば特に制限はない。具体的には、COP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、HeLa、HEK293、MCF10A等のヒト由来細胞、およびSf9、Sf21、High Five等の昆虫由来細胞などが例示される。
宿主細胞への遺伝子導入は、真核生物細胞の遺伝子導入に使用できる公知のいかなる方法を用いて行ってもよく、例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。
遺伝子を導入された宿主細胞は、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Ham’s F−12培地、RPMI1640培地、199培地、Grace’s昆虫細胞培養用培地等を用いて培養することができる。培地のpHは約6〜約8であるのが好ましく、培養温度は、通常約27〜約40℃である。
上記のようにして得られる、SPC活性化GPCRをコードするDNA及びSPC活性化GPCRと共役するGαをコードするDNAを導入された真核生物細胞は、使用するスクリーニング法に応じてそのまま無傷細胞として使用してもよいし、あるいは適当な緩衝液中で該細胞を破砕して得られる細胞ホモジネートや、該ホモジネートを適当な条件で遠心分離するなどして(例えば、約1,000×g程度で遠心して上清を回収した後、約100,000×g程度で遠心して沈渣を回収する)単離される膜画分の形態であってもよい。
例えば、GTPγS結合アッセイや、エフェクターの活性を直接測定することにより、被験物質のリガンド特性を評価する場合には、使用するスクリーニング系は、好ましくは、上記のようにして細胞から調製される膜画分である。一方、細胞内cAMP量(もしくはcAMP応答性リポーターの発現量)や細胞内Ca2+量(もしくはCa2+応答性リポーターの発現量)を測定することにより、被験物質のリガンド特性を評価する場合には、使用するスクリーニング系は無傷真核生物細胞である。
尚、リガンド活性の評価を、cAMP応答性リポーター(エフェクターがアデニル酸シクラーゼの場合)もしくはCa2+応答性リポーター(エフェクターがホスホリパーゼCβの場合)の発現量を指標として行う場合には、宿主真核生物細胞は、cAMP応答エレメント(CRE)またはTPA応答エレメント(TRE)を含むプロモーター領域の下流にリポーター蛋白質をコードするDNAが機能的に連結した発現カセットを含むベクターを導入されたものである必要がある。CREはcAMPの存在下に遺伝子の転写を活性化するシスエレメントであり、コンセンサス配列としてTGACGTCAを含む配列が挙げられるが、cAMP応答性を保持する限り当該配列の一部に欠失、置換、挿入または付加を含む配列であってもよい。一方、TREはCa2+の存在下に遺伝子の転写を活性化するシスエレメントであり、コンセンサス配列としてTGACTCAを含む配列が挙げられるが、Ca2+応答性を保持する限り当該配列の一部に欠失、置換、挿入または付加を含む配列であってもよい。CRE又はTREを含むプロモーター配列としては、上記のようなウイルスプロモーターや哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーターが同様に使用可能であり、制限酵素及びDNAリガーゼを用いて、あるいはPCR等を利用して、該プロモーター配列の下流にCREまたはTRE配列を挿入することができる。CRE又はTREの制御下におかれるリポーター遺伝子としては、迅速且つ簡便に遺伝子発現を検出・定量できる公知のいかなる遺伝子を使用してもよく、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等のリポーター蛋白質をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。リポーター遺伝子の下流にはターミネーター配列が配置されることがより好ましい。このようなCRE(又はTRE)−リポーター発現カセットを担持するベクターとしては、公知のプラスミドベクター又はウイルスベクターを使用することができる。血清応答エレメント(SRE)の制御下にあるリポーター遺伝子含む発現ベクターについても、上記と同様に調製することができる。
本発明のスクリーニング法のために提供される、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層膜、及びSPC活性化GPCRと共役するGαを構成要素として含有するスクリーニング系の別の好ましい実施態様は、SPC活性化GPCRのC末端側に、共役GαのGPCR結合領域及び任意のGαのグアニンヌクレオチド結合領域を少なくとも含むポリペプチドが連結した融合蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。前記融合蛋白質を用いるスクリーニングについては、公開特許公報:特開2003−210192を参照して行えばよい。
SPC活性化GPCRをコードするDNA、及びSPC活性化GPCRと共役するGαのGPCR結合領域及び任意のGαのグアニンヌクレオチド結合領域を含むポリペプチドをコードするDNAは、上述のようにして取得することができる。当業者は、これらのDNA配列をもとにして、公知の遺伝子工学的手法を適宜組み合わせることにより、SPC活性化GPCRとGαとの融合蛋白質をコードするDNAを構築することができる。簡潔にいえば、PCR等を用いてSPC活性化GPCRをコードするDNAの終始コドンを除去したものに、GαをコードするDNAを読み枠が合うように、即ちインフレームに、DNAリガーゼを用いてライゲーションする。この際、SPC活性化GPCRのC末の一部を欠失させたり、SPC活性化GPCRとGαとの間にHisタグ等のリンカー配列を挿入したりしてもよい。
得られた融合蛋白質をコードするDNAは、上述のような発現ベクター中に挿入され、宿主真核生物細胞に上記の遺伝子導入技術を用いて導入される。得られた真核生物細胞の膜上に当該融合蛋白質が発現すると、レセプターの細胞内第3ループ上のGα活性化ドメインと共役Gαのレセプター結合領域とは、SPC活性化GPCRに対する生理的リガンドの非存在下に相互作用して、GαにおけるGDP・GTP交換反応を促進し得る。従って、Gαは恒常的に活性化された状態となる。
レセプター−Gα融合蛋白質発現細胞を、Gαのエフェクターへの作用を指標にしたスクリーニングに使用する場合において、Gαがレセプターと連結していることがエフェクターとの相互作用の妨げとなる場合には、レセプターとGαとのジャンクション部位に、特異的なプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列(例えば、トロンビン感受性配列等)を導入し、融合蛋白質を膜上に発現させた後に当該プロテアーゼを作用させてレセプターとGαとを切り離すことができる。
レセプター−Gα融合蛋白質発現細胞についても、使用するスクリーニング法に応じて、無傷細胞、細胞ホモジネート、膜画分のいずれかの形態を適宜選択して用いることができる。
本発明のスクリーニング法のために提供される、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層膜、及びSPC活性化GPCRと共役するGαを構成要素として含有するスクリーニング系のさらに別の実施態様は、共役G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細胞を、SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトすることにより調製される細胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。
SPC活性化GPCRをコードするDNA、該DNAを挿入する発現ベクター、該発現ベクターの宿主細胞への導入法は、上述の通りのものを使用することができる。
本発明のさらに別の態様においては、本発明のスクリーニング系は、SPC活性化GPCR及びSPC活性化GPCRと共役するG蛋白質を内因的に発現する動物細胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。このような細胞としては、哺乳動物の膵臓もしくは腎臓、肺由来細胞が好ましく例示される。
本発明のさらに別の態様においては、SPC活性化GPCRを含む脂質二重層膜、及びSPC活性化GPCRと共役するGαを構成要素として含有するスクリーニング系として、精製したSPC活性化GPCRと共役Gα、あるいは精製した該レセプターと共役Gαとの融合蛋白質を、人工脂質二重層膜中に再構成させたものを使用することができる。SPC活性化GPCRは、ヒト又は他の哺乳動物の膵臓もしくは腎臓、肺由来細胞から得られる膜画分から、抗SPC活性化GPCR抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィー等により精製することができる。あるいは、該レセプターは、SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターを導入された組換え細胞から、抗SPC活性化GPCR抗体や、His−tag、GST−tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィー等により精製することもできる。同様に、該レセプターと共役Gαとの融合蛋白質も、該融合蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入された組換え細胞から、抗SPC活性化GPCR抗体や、His−tag、GST−tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィー等により精製することができる。
人工脂質二重層膜を構成する脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、コレステロール(Ch)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)等が挙げられ、これら1種または2種以上を適当な比率で混合したものが好ましく使用される。
例えば、レセプターとGα、又はレセプター−Gα融合蛋白質を組み込んだ人工脂質二重層膜(プロテオリポソーム)は、PC:PI:Ch=12:12:1の混合脂質クロロホルム溶液を適当量ガラスチューブに分取し、窒素ガス蒸気でクロロホルムを蒸発させて脂質をフィルム状に乾燥させた後、適当な緩衝液を加えて懸濁、次いで超音波処理により均一に分散させ、コール酸ナトリウム等の界面活性剤を含む緩衝液をさらに加えて脂質を完全に懸濁する。ここに、精製したレセプターとGα、又はレセプター−Gα融合蛋白質を、適量添加し、氷中で時々攪拌しながら20〜30分間程度インキュベートした後、適当な緩衝液に対して透析する。約100,000×gで30〜60分間遠心して沈渣を回収することにより、プロテオリポソームを調製することができる。
上記の本発明のスクリーニング法により選択されるSPC活性化GPCR作動薬は、SPC活性化GPCRの生理的リガンドと同様に、耐糖能異常改善作用を示すことは明白であり、従って、これらを適当な添加剤と組み合わせることにより、耐糖能異常改善薬とすることができる。従って、本発明はまた、本発明のスクリーニング法により選抜されたSPC活性化GPCR作動薬と、医薬上許容される担体とを配合させることによる、耐糖能異常改善薬、又は生活習慣病治療薬、特に糖尿病治療薬を提供する。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量のSPC活性化GPCRリガンドを溶解させた液剤、有効量のSPC活性化GPCRリガンドを固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量のSPC活性化GPCRリガンドを懸濁させた懸濁液剤、有効量のSPC活性化GPCRリガンドを溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
非経口的な投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、肥厚剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。あるいは、コラーゲン等の生体親和性の材料を用いて、徐放性製剤とすることもできる。当該SPC活性化GPCRリガンド製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、SPC活性化GPCRリガンドおよび医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:正常人の膵臓ランゲルハンス氏島におけるOGR1及びGPR4の発現局在
(1)ウサギ由来ポリクローナル抗体の作成
OGR1抗原ペプチドとして、アミノ酸配列:LMHEEVIEDENQHRVC(配列番号:5)の部分ペプチドを公知の方法で合成し、マススペクトル及びHPLCにより配列を確認した。
公知の方法に従い、以下のスケジュールで動物を免疫し、抗血清からポリクローナル抗体の作成を行った。すなわち、ウサギ(KBL JW 11週齢)2匹を用い、飼育1日目にFCA(Completeウサギ(KBL JW 11週令)2匹を用い、飼育1日目にFCA(Complete Freund`s Adjuvant)に溶解させた抗原ペプチド200μg/匹を腹腔内に注入した。更に、飼育14、28、42、57、70、84日目にFCA(Complete Freund`s Adjuvant)に溶解させた抗原ペプチド100μg/匹を腹腔内に注入した。飼育1、49、63日に抗体力価確認のための採血を行った。抗体力価の上昇を確認後、飼育77日目に20〜30ml/匹、飼育91日目に50〜70ml/匹の採血を行い、抗血清を得て抗原ペプチドを固定したカラムでアフィニティー精製を行い、1次抗体を得た。精製された抗体は0.01%アジ化ナトリウムを含むPBSに置換し使用まで冷凍保存した。
(2)ウサギ抗体を用いた免疫組織染色
生検組織サンプル(27歳女性他数名)のパラフィンブロックから4〜5μmの厚さで組織切片を作成した。スライドサンプルはキシレンで除パラフィンを行い、アルコール処理を経て再度水和させた。その後Target Retrieval Solution(DAKO社)中でオートクレーブ処理による抗原賦活化を行った。以降の操作はVectastain ABC−AP kit(Vector社)を用いた。添付試薬でブロッキング後、上記(1)で作成した1次抗体で45分インキュベートした。洗浄後、5μl/mlに希釈した抗ウサギ2次抗体(BA−1000)で30分インキュベートした。洗浄後Vector ABC−AP(AK−5000)reagentを添加し、Vector Red(SK−5100)にて発色させた。
結果を表1に示した。表1のとおり、OGR1は他組織と比較して膵臓に強く発現していることがわかった。更に、膵臓組織中での発現分布を詳細に検討したところ、腺房などではほとんど発現しておらず、ランゲルハンス島に発現が局在していることが明らかとなった。
またGPR4抗原ペプチドとしてRSDVAKALHNLLRFLASDK(配列番号:6)を用い、同様の手法で発現局在を検討した結果、GPR4も又、ランゲルハンス氏島に発現局在していることが明らかとなった。
Figure 2004084944
更に、新規に報告されたSPC活性化GPCRであるGPR12抗原ペプチドとしてGCIPSSLAQRARSPSD(配列番号:9)を用い、同様の手法で発現局在を検討した結果、GPR12も又、ランゲルハンス氏島に発現局在していることが明らかとなった。
Figure 2004084944
実施例2:経口糖負荷試験
雄性C57BL/6Jマウス(3週齢、SPF規格、日本クレア)を予備飼育の後、4週齢より高脂肪、高蔗糖含有飼料(Research Diet社)を負荷した(DIO群)。正常食コントロールとして同規格のマウスに対して通常飼料(Research Diet社)を与えた(正常群)。高脂肪含有飼料負荷後20週目に8時間絶食を施し、SPC乾燥品(カルビオケム社)を生理食塩水(大塚製薬)に溶解し0.5μg/匹で静脈内投与を行った。溶媒対照としては生理食塩水(大塚製薬)を用いた。静脈内投与後速やかに3g/kgのD−グルコースを経口投与した。糖負荷前(0分)、糖負荷後15、45、90および135分後に尾部静脈より採血し、以下の方法により血糖値を測定した。
すなわち10μlの血液を採取し、0.4N過塩素酸水溶液100μlと混和する。更に0.37M炭酸カリウム水溶液50μlを添加し、遠心後の上清についてグルコースCII・テストワコー(グルコース定量キット、ムタロターゼ・GOD法、和光純薬)を用いて血糖値を測定した。
その結果、SPC投与DIO群の糖負荷後135分後の血糖値は、生理食塩水投与DIO群と比較して低値を示し、正常群と同等レベルまで低下することがわかった(図1)。この結果から、SPCの投与により高脂肪食負荷による耐糖能異常は、正常レベルまで改善されたことがわかる。
実施例3:OGR1、GPR4及びGPR12安定発現株の樹立
(1)導入遺伝子ベクターの構築
配列番号:2で表されるOGR1のコード領域、配列番号:4で表されるGPR4のコード領域、又は配列番号:8で表されるGPR12のコード領域を、AmpliTaq(パーキンエルマー社)にてPCR法で増幅する。増幅した遺伝子断片を動物細胞で機能するプロモーター(pcDAN4/HisMax(invitrogen社))の下流に導入する。
(2)細胞株の樹立
Nature Cell Biology、vol.2,p261〜p267,(2000)又はJ.Biol.Chem.,Vol.276,No.44,p41325〜p41335に記載された方法で、OGR1、GPR4、又はGPR12安定発現株を調製することができる。
すなわち、MCF10A(またはCHO)細胞を10cm培養皿に播種し60〜70%コンフルエントになるまで培養する。その後無血清培地に転換し、上記のとおり構築したOGR1、GPR4、又はGPR12導入遺伝子を、Lipoofectamine−Plus(Gibco社製)と複合体を形成させたのちに培地に添加する。5時間インキュベート後10%FBSを含む培地に転換後さらに8時間培養する。その後トリプシンEDTAで細胞を培養皿から剥離させ、G418と10%FBSを含む培地にけん濁し、10cm培養皿に播種した。数日後形成されたコロニーを単離し、OGR1、GPR4、又はGPR12リガンドスクリーニング用安定発現株とする。
実施例4:FLIPRを用いたOGR1、GPR4、GPR12リガンドのスクリーニング
(1)細胞の調製
実施例3で調製したOGR1、GPR4、及びGPR12リガンドスクリーニング用安定発現株を96穴培養皿に播種し、10%FBS(Gibco社製)を培地中で60〜70%コンフルエントになるまで培養する。
(2)蛍光測定による細胞内カルシウムの定量
上記の処理を施した細胞の培地を除去し、希釈した被験物質(DMSO溶液)と4uMのFluo3AM(Teflab.)および2.5mMのprobenecidを添加し37℃で60分培養する。上記の処理を施した細胞を氷冷したPBSで洗浄し、Tyrode’s medium(2.5mMのprobenecid、1%ゼラチンを含む)に懸濁する。培養皿をFRIPR(Molecular Device)にて488nM、540nMの吸収を定量する。被験物質における蛍光吸収が、被験物質としてDMSOのみを用いた対照における蛍光吸収よりも大きければ、当該被験物質は、OGR1、GPR4又はGPR12リガンドであると決定できる。
実施例5:バインディングアッセイによるスクリーニング
(1)細胞膜画分の調製
実施例3で調製したOGR1、GPR4及びGPR12リガンドスクリーニング用安定発現株をフラスコに播種し、10%FBS(Gibco社製)を培地中で60〜70%コンフルエントになるまで培養する。細胞を回収しbuffer A(50mM HEPES(pH7.0),10mM 2−ME,1mM PMSF,0.25M sucrose)に懸濁する。Potter型ホモジェナイザーでホモジナイズ(400rpm、20ストローク)したのち、100000gで60分遠心分離を行い、得られた沈殿を再度buffer Aに懸濁する。この懸濁液を35%(mass/vol)sucrose in buffer Aの上に重層し45000gで45分遠心分離を行う。界面の画分を回収しbuffer Aに懸濁し、100000gで60分遠心分離を行う。得られた沈殿を20μg/ml aprotininを含むbuffer Aに懸濁し以下のアッセイに用いる。
(2)レセプターバインディングアッセイ
MultiscreenGVPlate(Miripore)に反応バッファー(50mM Hepes pH7.4、12.5mM酢酸マグネシウム、3.125mM塩化マグネシウム、0.125mg/ml BSA)に懸濁した[3H]SPCと希釈した被験物質(DMSO溶液)とを添加しする。30℃でインキュベートしたのち上記の手順で調整した膜画分を添加する。30℃でインキュベートしたのち等量の20%TCAを添加し、上清を吸引除去しタンパク質を沈殿させる。10%TCAで数回洗浄した後、37℃で乾燥させた膜をパンチアウトしγカウンターで測定する。被験物質における放射活性が、被験物質としてDMSOのみを用いた対照における放射活性よりも大きければ、当該被験物質は、OGR1、GPR4もしくはGPR12リガンドであると決定できる。
実施例6:ビアコアを用いたスクリーニング
(1)細胞膜画分の調製
OGR1、GPR4又はGPR12スクリーニング用安定発現株をフラスコに播種し、10%FBS(Gibco)を培地中で60〜70%コンフルエントになるまで培養する。細胞を回収しbuffer A(50mM HEPES(pH7.0),10mM 2−ME,1mM PMSF,0.25M sucrose)に懸濁する。Potter型ホモジェナイザーでホモジナイズ(400rpm、20ストローク)したのち、100000gで60分遠心分離を行い、得られた沈殿を再度buffer Aに懸濁する。この懸濁液を35%(mass/vol)sucrose in buffer Aの上に重層し45000gで45分遠心分離を行う。界面の画分を回収しbuffer Aに懸濁し、100000gで60分遠心分離を行う。得られた沈殿を20μg/ml aprotininを含むbuffer Aに懸濁し以下のアッセイに用いる。
(2)ビアコアでの結合測定
文献[Anal Biochem.1998 Dec 15;265(2):340−50.Markgren PO et al.]に記載されている一般的な方法を用いる。上記手順で調整したOGR1、GPR4又はGPR12発現細胞膜画分(例えば1〜10μg)を10mMの酢酸バッファー(pH4)に溶解し、ビアコアのセンサーチップCM5の表面のマトリックスにカルボキシル基を介して固定化する。
HBSバッファー(アマシャム ファルマシア バオテク株式会社製)をセンサーチップに20μl/分の流速で流し、バックグラウンドの値を記録する。途中からHBSバッファーに10nM〜10μMの濃度で溶解した被験物質に切り替えて1分間流し、薬剤の結合に伴う値の変化を記録する。再び、薬剤を含まないHBSバッファーに切り替え、結合した薬剤の解離に伴う値の変化を記録する。結合と解離の速度、あるいは最大結合量から被検化合物とOGR1、GPR4又はGPR12との親和性を計算する。
本発明のSPC活性化GPCR作動薬は、一過的な血糖値の上昇に対してインスリン分泌を促進し、血糖値の低下後は、インスリン分泌作用が低下するように働くので、低血糖を引き起こすことなく安全な耐糖能異常改善薬、糖尿病治療薬となり得る。
配列番号5
抗原ペプチド
配列番号6
抗原ペプチド
配列番号9
抗原ペプチド
【配列表】
Figure 2004084944
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Claims (19)

  1. SPC活性化GPCRリガンドを有効成分とする血糖調節薬。
  2. SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、請求項1に記載の血糖調節薬。
  3. SPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬。
  4. SPC活性化GPCR作動薬が、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)、又はその改変体である、請求項3に記載の耐糖能異常改善薬。
  5. 生活習慣病治療薬である請求項3又は4に記載の耐糖能異常改善薬。
  6. 糖尿病治療薬である請求項3又は4に記載の耐糖能異常改善薬。
  7. SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、請求項3〜6のいずれか記載の耐糖能異常改善薬。
  8. SPC活性化GPCR、又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに被験物質を接触させ、該GPCR又は該フラグメントに結合する化合物を選択することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法。
  9. 被験物質の存在下及び非存在下で、SPC活性化GPCR、又はリガンドが結合し得るそれらのフラグメントに既知リガンドを接触させ、該GPCR又は該フラグメントと既知リガンドとの結合活性を両条件下で比較することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法。
  10. 既知リガンドがSPCである請求項9記載のスクリーニング方法。
  11. SPC活性化GPCRを含む脂質二重層及びSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットを含んでなる反応系において、該サブユニットのGDP・GTP交換反応又は該G蛋白質の細胞刺激活性を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを含む、SPC活性化GPCRリガンドのスクリーニング方法。
  12. 反応系が、
    (i)SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターと、SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットをコードするDNAを含む発現ベクターとでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、(ii)SPC活性化GPCRのC末端側にSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質のαサブユニットが融合したポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主真核生物細胞、(iii)SPC活性化GPCRをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした、SPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質を内因的に発現する宿主動物細胞、(iv)SPC活性化GPCR及びSPC活性化GPCRに共役し得るG蛋白質を内因的に発現する動物細胞、それらの細胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分である、請求項11記載のスクリーニング方法。
  13. 既知リガンドの共存下で実施される、請求項11又は12に記載のスクリーニング方法。
  14. 既知リガンドがSPCであることを特徴とする請求項13記載のスクリーニング方法。
  15. SPC活性化GPCRがOGR1、GPR4又はGPR12である、請求項8〜14のいずれか記載のスクリーニング方法。
  16. 請求項8〜15のいずれかに記載の方法により選択されるSPC活性化GPCRリガンドを有効成分とするインスリン分泌調節薬。
  17. 請求項8〜15のいずれかに記載の方法により選択されるSPC活性化GPCR作動薬を有効成分とする耐糖能異常改善薬。
  18. 生活習慣病治療薬である請求項17記載の耐糖能異常改善薬。
  19. 糖尿病治療薬である請求項17記載の耐糖能異常改善薬。
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