JPWO2002089854A1 - 血管新生因子の皮膚疾患への遺伝子導入 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、血管新生因子遺伝子を皮膚疾患に対し用いることに関する。より詳細には、血管新生因子遺伝子を有効成分として含有する治療剤又は予防剤や、血管新生因子遺伝子を標的部位へ投与することを特徴とする方法に関する。血管新生因子には肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)及びhypoxia inducible factor(HIF)が含まれる。皮膚疾患には創傷、ハゲ、皮膚潰瘍、褥瘡(床ずれ)、瘢痕(ケロイド)、アトピー性皮膚炎、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の皮膚の損傷等が含まれる。
背景技術
「血管新生因子」とは、親血管の内皮細胞の活性化と共に開始される新しい血管の発生や血管新生をインビボで刺激するだけでなく、インビトロで内皮細胞に対してマイトジェニックであることが示されている増殖因子のことである。血管新生因子としてはHGF、VEGF、FGF及びHIF等が挙げられる。血管新生因子の治療的な適用は、Folkmanらによって最初に文献発表された(N.Engl.J.Med.285,1182−1186(1971))。またはその後の研究によって、組換え血管新生因子、例えばFGFファミリー(Science 257,1401−1403(1992),Nature 362,844−846(1993))及びVEGF等を使用して心筋、及び、下肢虚血症の動物モデルにおける側副血行路の発達を促進及び/又は増進させ得ることが確認されている(Circulation 90,II−228−II−234(1994))。さらに本発明者らは、HGFがVEGFと同様に内皮特異的増殖因子として作用することを見出している(J.Hypertens.14,1067−1072(1996))。
HGFは、成熟幹細胞に対する強力な増殖促進因子として発見されたサイトカインであり、その遺伝子クローニングもされている[Biochem.Biophys.Res.Commun.122:1450(1984);Proc.Natl.Acad,Sci.USA.83:6489(1986);FEBS Letters 22:231(1987);Nature 342:440−443(1989);Proc.Natl.Acad,Sci.USA.87:3200(1991)]。HGFはプラスミノーゲン関連及び間充織由来多面的成長因子であり、種々の型の細胞において細胞成長と細胞運動性を調節することが知られている[Nature 342:440−443(1989);Bio chem.Biophys.Res.Commun.239:639−644(1997);J.Biochem.Tokyo 119:591−600(1996)]。さらに、胚新生、及び、幾つかの器官の再生の間の形態形成工程を調節する重要な因子である。例えば、HGFは肝細胞、及び、角化細胞を含む他の表皮細胞の強力なマイトジェンである[Exp.Cell Res.196:114−120(1991)]。HGFは血管新生を刺激し、細胞の分離を誘導し、内皮細胞の運動を開始する[Proc.Natl.Acad,Sci.USA.90:1937−1941(1993);Gene Therapy 7:417−427(2000)]。その後の研究によりHGFはin vivoにおいて肝再生因子として障害肝の修復再生に働くだけでなく、血管新生作用を有し、虚血性疾患や動脈疾患の治療又は予防に大きな役割を果たしていることが明らかとなった[Symp.Soc.Exp.Biol.,47cell behavior 227−234(1993);Proc.Natl.Acad,Sci.USA.90:1937−1941(1993);Circulation 97:381−390(1998)]。ウサギの下肢虚血モデルにおいてHGFを投与すると、顕著な血管新生が見られ血流量の改善、血圧減少の抑制、虚血症状の改善が生じたとの報告がある。これらの報告により、今日では、血管新生因子の一つとしてHGFが発現、機能していると考えられるようになった。
その名が示すように、肝臓で発見された物質であるが、実際には体中に存在している。このHGFには細胞を増殖させる作用がある。怪我をすると、その周辺でさかんに細胞分裂が起きて傷口が修復されるが、これもHGFの働きによる。順天堂大学の皮膚科チームは、この物質が、毛髪増殖因子の一つであるということをつきとめた。HGFには毛母細胞の分裂を促して、毛髪を成長させる働きを有する。男性ホルモンによって軟毛化の進んだ頭皮の毛母細胞にこのHGFを投与すれば、太い毛が再生すると考えられる。
また、ラットの非梗塞性及び梗塞性心筋の心臓[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8474−8478(1993)]、並びに、ラット角膜[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1937−1941(1993)]においてHGFにより血管新生が誘導されるというin vivoの事実が発見されている。
このようにHGFは血管新生因子の機能を初めとして種々の機能を有し、それを医薬品として活用するための様々な試みがなされてきた。しかし、ここで問題となってきたのがHGFの血中での半減期である。HGFの半減期は約10分と短く、血中濃度を維持することが困難であり、また、HGF有効量の患部への移行性が問題となった。
VEGFは内皮細胞に対してマイトジェニックな2量体糖タンパク質であり、そして血管透過性を高める能力を有している。VEGFは内皮細胞に対して直接的で、特異的なマイトジェニックな効果を有している(Biochem.Biophys.Res.Commun.,161,851−858(1989))。
HIFは赤血球の産生を促進し、全身に酸素の供給量を増加させるエリスロポエチン、血管新生を促し、局所的な酸素供給を増加させるVEGFとその受容体、無酸素状態でATPを合成し細胞に耐性を与える、解糖系の諸酵素の遺伝子の転写活性化を中心となって行う転写因子である。HIF−1はHIF−1αとHIF−1βからなるヘテロダイマーであり、HIF−1β(Arntともよばれている)はダイオキシン等の外来異物の代謝に関与している、Ahリセプターともヘテロダイマーを形成し、薬物代謝酵素遺伝子群の転写調節に機能していることが、既に判明している。
一般に遺伝子治療は多様な離床疾患の処置において使用することができる[Science 256:808−813(1992);Anal.Biochem.162:156−159(1987)]。遺伝子治療を成功させる上で特に重要なのは、遺伝子導入のための適当なベクターの選択である。特にアデノウイルス等のウイルスが遺伝子導入において好ましいベクターである。しかしながら、ウイルスの有する感染毒性、免疫系の低下、及び、突然変異性または発ガン性効果を考慮するとウイルスベクターは潜在的に危険である。その代替方法としては、効果的なin vivo遺伝子導入方法として報告されているリポソームをウイルス外膜と共に利用し、毒性のほとんどないHVJ−リポソーム媒介遺伝子導入が挙げられる[Science 243:375−378(1989);Anal.NY Acad.Sci.772:126−139(1995)]。該方法は、肝臓、腎臓、血管壁、心臓及び脳を含む種々の組織へのin vivo遺伝子導入の方法として成功している[Gene Therapy 7:417−427(2000);Science 243:375−378(1989);Biochem.Biophys.Res.Commun.186:129−134(1992);Proc.Natl.Acad,Sci.USA.90:8474−8478(1993);Am.J.Physiol.271(Regulatory Integrative Comp.Physiol.40):R1212−R1220(1996)]。
創傷治癒は炎症、血管新生、マトリックス合成及びコラーゲン沈着を含む事象の系列から成り、再内皮形成、血管新生及び顆粒組織の形成へとつながる[Clark RAF編″Overview and general consideration of wound repair.The Moleular and Cellular Biology of Wound Repair.″Plenum Press.New York(1996)3−50;Annu.Rev.Med.46:467−481(1995);J.Pathol.178:5−10(1996)]。治癒工程は線維芽細胞(FGF)、形質転換成長因子−α(TGF−α)、形質転換成長因子−β(TGF−β)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)及び血管内皮細胞成長因子(VEGF)等の成長因子を含む多数のマイトジェン及び走化性因子により調節される。しかしながら、HGFの創傷治癒における効果に関する研究はあまり存在しない[Gastroenterology 113:1858−1872(1997)]。
IGF、PDGF及びEGF等の遺伝子の創傷への転移についての報告が幾つか存在する[Gene Therapy 6:1015−1020(1999);Lab.Invest.80:151−158(2000);J.Invest.Dermatol.112:297−302(1999);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:12188−12192(1994)]が、そのどれもがHGF遺伝子転移後の創傷治癒に関わる、または、組織病理学効果に含まれる因子の数の定量的、及び質的変化には着目していない。
創傷の再上皮化は角化細胞の創傷の端から中央への移動により起こる。In vitroでは、HGFは増殖、細胞成長、及び、生理的Ca2+条件下で培養される角化細胞でのDNA合成を増幅する[Exp.Cell Res.196:114−120(1991)]。さらに、HGFは細胞ターンオーバーの増幅によりT84腸内単層中の上皮による創傷密閉が促進されることが発見された[J.Clin.Invest.93:2056−2065(1994)]。組換えHGFのin vivo投与が抗腫瘍剤により損傷を受けたラット腎臓中の上皮細胞の再生を促進することが発見された[Gene Therapy 7:417−427(2000)]。しかしながら、ラットの凍傷により惹起された胃潰瘍への組換えHGFの皮下投与により、血清中のヒトHGF濃度は増加したが、胃潰瘍治癒速度には効果を示さず、凍傷惹起8〜15日後胃縁で上皮細胞増殖が増加した[Gastroenterology 113:1858−1872(1997)]。
TGF−β発現の一過性の上向き調節は、創傷治癒における重要な事象である。TGF−βは繊維芽細胞を刺激してマトリックスタンパク、マトリックスプロテアーゼ阻害剤、及び、インテグリン受容体を産生し、それにより創傷部位のマトリックス形成、及び、細胞間相互作用を調節する[Rokerts AB,Aporn MB:″Transforming growth factor−β.The Molecular and Cellular Biology of Wound Repair″第二版,Clark RAF編(Plenum Press.New York,1996年,第275〜308頁)]。TGF−β1の異常調節、及び、持続的過剰発現は皮膚繊維症(例えば、肥大瘢痕及びケロイド)の患者の組織中でTGF−β1 mRNAの発現が増大していることが報告されており[Am.J.Pathol.152:485−493(1998)]、組織繊維症の増加に寄与すると考えられる。さらに、TGF−β中和抗体は成人創傷において創傷肉芽組織中の細胞を減少するだけでなく、新真皮の構造を改善した[Lancet 339:213−214(1992)]。
一般的にタンパク性製剤の場合は静脈内への投与が常識となっており、虚血性疾患モデルに対するHGFの投与に関しては、静脈や動脈内への投与の例が示されている[Circulation 97:381−390(1998)]。このような動物モデルでの静脈または動脈内投与により、虚血性疾患又は動脈疾患に対するHGFの有効性が明らかにされているものの、具体的なHGFの有効な投与方法及び投与量等については未だ結論が出ていない。特にHGFタンパクの場合は、前記のような半減期の問題、患部への移行性の問題もあり、有効な投与法または投与量等については未だ結論が出ていない。
発明の開示
本発明の目的は、血管新生因子遺伝子を用いた皮膚疾患に対する治療剤若しくは予防剤、及び、該薬剤を用いることに関する。
本発明者らは、血管新生因子の一つであるHGFは創傷治癒の間、上皮修復及び血管新生を促進するかも知れないと考え、i)遺伝子転移後、ヒトHGFmRNA及びタンパク質が完全な厚さの創傷内に分布し、沈着するか、ii)遺伝的に転移されたタンパク質が生物学的に活性であるか、及び、iii)転移されたタンパク質が病理学状態(例えば、完全な厚さの創傷内のいくつかの細胞を含むマイトジェン活性、並びに、顆粒組織内の再上皮化、血管新生及び細胞外マトリックスの沈着等)に生物学的な影響を及ぼすかを調べた。
さらに、創傷組織におけるこれらの変化がTGF−β1の分泌と関連しているかを調べた。創傷領域、並びに、HGF遺伝子転移後の創傷組織中のヒト及びラットHGFタンパク質濃度、並びに、TGF−β1、及び、コラーゲン型I(Colα2(I)、コラーゲン型III(Colα1(III))、デスミン及び血管平滑筋α−アクチン(α−sm−アクチン)を含む創傷治癒に関わっていると考えられている他の構成因子のmRNAの発現を測定した。このために半定量逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用い、in situハイブリダイゼーション及び免疫組織化学的方法により創傷の形態形成変化を調べた。
その結果、本発明者らは、皮膚疾患に対して、直接患部に血管新生因子遺伝子を投与することにより、極めて有効な結果が得られることを明らかにした。具体的には皮膚創傷において、血管新生因子遺伝子を投与することにより、有効な効果が得られることを見出した。
このような血管新生因子遺伝子による治療は非侵襲的な治療法であるため、病状に応じて何回でも当該遺伝子を投与することが可能であるという特徴を有する。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)血管新生因子遺伝子を有効成分として含有する、皮膚疾患の治療剤又は予防剤。
(2)血管新生因子遺伝子がHGF遺伝子、VEGF遺伝子、FGF遺伝子またはHIF遺伝子である、上記(1)の治療剤又は予防剤。
(3)該皮膚疾患が創傷、ハゲ、皮膚潰瘍、褥瘡(床ずれ)、瘢痕(ケロイド)、または、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の皮膚の損傷である、上記(1)の治療剤又は予防剤。
(4)該治療剤又は予防剤が錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、軟膏、シロップ、スラリー、懸濁物の形態である、上記(1)若しくは(2)の治療剤又は予防剤。
(5)遺伝子を内包型リポソーム法、静電気型リポソーム法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法、ウイルスエンベロープベクター法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガン(遺伝子銃)で担体と共にDNA分子を細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、超音波の照射と共にDNA分子を細胞に移入する方法、エレクトロポレーション法、または、正電荷ポリマーによる導入法により細胞に移入するための、上記(1)〜(3)いずれかの剤。
(6)血管新生因子遺伝子を哺乳動物に導入することを含む、皮膚疾患の治療法又は予防法。
(7)皮膚疾患の治療剤又は予防剤の製造のための血管新生因子遺伝子の使用。
本発明において使用する「血管新生因子遺伝子」とは、血管新生増殖因子を発現可能な遺伝子を指す。ここで「血管新生因子」とは、親血管の内皮細胞の活性化と共に開始される新しい血管の発生や血管新生をインビボで刺激するだけでなく、インビトロで内皮細胞に対してマイトジェニックであることが示されている増殖因子を指し、後述するHGF、VEGF、FGF及びHIF等が含まれる。
本発明において使用する「HGF遺伝子」とは、HGF(HGFタンパク)を発現可能な遺伝子を指す。具体的にはNature 342,440(1989)、特許第2777678号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.163:967(1989)、Biochem.Biophys.Res.Commun.172:321(1990)等に記載のHGFのcDNAを後述のような適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが挙げられる。ここでHGFをコードするcDNAの塩基配列は、前記文献に記載されている他、Genbank等のデータベースにも登録されている。従ってこれらの配列情報に基づき適当なDNA部分をPCRのプライマーとして用い、例えば肝臓や白血球由来のmRNAに対してRT−PCR反応を行うこと等により、HGFのcDNAをクローニングすることができる。これらのクローニングは、例えばMolecular Cloning第二版(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
本発明において使用される「VEGF遺伝子」とは、VEGF(VEGFタンパク)を発現可能な遺伝子を指す。すなわち、VEGFのcDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが例示される。VEGF遺伝子は、ヒトにおいては転写に際しての選択的スプライシングにより、4種類のサブタイプ(VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206)の存在が報告されている(Science 219,983(1983);J.Clin.Invest.84,1470(1989);Biochem.Biophys.Res.Commun.161,851(1989))。本発明においてはこれらいずれのVEGF遺伝子を使用することができるが、生物学的に最も活性が強いVEGF165遺伝子がより好ましい。該VEGF遺伝子は文献(Science,246,1306(1989))記載の配列及びデータベースに登録されている配列情報に基づき、当業者ならば容易にクローニングすることができ、またその改変等も容易に行うことができる。
本発明において使用される「FGF遺伝子」及び「HIF遺伝子」とは、各々、FGF及びHIFを発現可能な遺伝子を指す。HGFやVEGFと同様に、後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが例示される。該遺伝子は公知の文献記載の配列及びデータベースに登録されている配列情報に基づき、当業者ならば容易にクローニングすることができ、またその改変等も容易に行うことができる。
さらに、本発明の血管新生因子遺伝子は前述のものに限定されず、発現されるタンパク質が血管新生因子としての作用を有する遺伝子である限り、本発明の血管新生因子遺伝子として使用できる。即ち、1)前記cDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、2)前記cDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1若しくは複数(好ましくは数個)のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA等のうち、本発明の血管新生因子としての作用を有するタンパクをコードするものであれば、本発明の血管新生因子遺伝子の範疇に含まれる。ここで前記1)及び2)のDNAは例えば部位特異的突然変異誘発法、PCR法[Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley & Sons Section 6.1−6.4]又は通常のハイブリダイゼーション法[Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley & Sons Section 6.3−6.4]等により容易に得ることができる。
即ち、当業者であれば、上述の血管新生因子遺伝子をまたはその一部をプローブとして、あるいは、該血管新生因子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、該DNAとハイブリダイズするDNAを単離することができる。機能的に血管新生因子と同等なタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件は、通常「1×SSC、37℃」程度であり、より厳しい条件としては「0.5×SSC、0.1% SDS、42℃」程度であり、さらに厳しい条件としては「0.1×SSC、0.1% SDS、65℃」程度であり、ハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDS及び温度条件の組合せは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記、若しくは他の条件(プローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
このようなハイブリダイゼーション法あるいはPCR法により単離される遺伝子によりコードされるタンパク質は、従来公知の血管新生因子と比較して、通常、そのアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば95%以上)の配列相同性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTX等のプログラムが開発されている(Altschul et al.J.Mol.Biol.215:403−410,1990)。BLASTに基づきBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づきBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。
次に、本発明の遺伝子治療において用いられる遺伝子導入方法、導入形態及び導入量等について記述する。
HGF遺伝子を有効成分とする遺伝子治療剤を患者に投与する場合、その投与形態としては非ウイルスベクターを用いた場合と、ウイルスベクターを用いた場合の2つに大別され、実験手引書等にその調製法、投与法が詳しく解説されている[別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術、羊土社(1996);別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法、羊土社(1997);日本遺伝子治療学学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス(1999)]。以下、具体的に説明する。
A.非ウイルスベクターを用いる場合
慣用の遺伝子発現ベクターに目的とする遺伝子が組み込まれた組換え発現ベクターを用いて、以下のような手法により目的遺伝子を細胞や組織に導入することができる。
細胞への遺伝子導入法としてはリポフェクション法、リン酸−カルシウム共沈法、DEAE−デキストラン法、微小ガラス管を用いたDNAの直接注入法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
また、組織への遺伝子導入法としては内包型リポソーム(internal type liposome)による遺伝子導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)による遺伝子導入法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ−AVEリポソーム法)、ウイルスエンベロープベクター法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガン(遺伝子銃)で担体(金属粒子)と共にDNA分子を細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、正電荷ポリマーによる導入法、超音波の照射と共にDNA分子を細胞に移入する方法等のいずれかの方法に供することにより、組換え発現ベクターを細胞内に取り込ませることが可能である。
このうちHVJ−リポソームは脂質二重膜で作られたリポソーム中にDNAを封入し、さらにこのリポソームと不活化したセンダイウイルス(Hemaggulutinating virus of Japan:HVJ)とを融合させたものである。当該HVJ−リポソーム法は従来のリポソーム法と比較して、細胞膜との融合活性が非常に高いことを特徴とするものであり、好ましい導入形態である。HVJ−リポソームの調製法については[別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術、羊土社(1996);別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法、羊土社(1997);J.Clin.Invest.93:1458−1464(1994);Am.J.Physiol.271:R1212−1220(1996)]等に詳しく述べられている。またHVJリポソーム法とは、例えばMolecular Medicine 30:1440−1448(1993);実験医学12:1822−1826(1994);蛋白質・核酸・酵素42,1806−1813(1997)等に記載の方法であり、好ましくはCirculation92(Suppl.II):479−482(1995)に記載の方法が挙げられる。
なお、HVJとしてはZ株(ATCCより入手可能)が好ましいが、基本的には他のHVJ株(例えばATCC VR−907やATCC VR−105等)も用いることができる。
本明細書中の「ウイルスエンベロープベクター」とは、ウイルスエンベロープ中に外来遺伝子を封入したベクターである。ウイルスエンベロープベクターは、ウイルスのゲノムが不活性化た遺伝子導入ベクターであり、ウイルスタンパク質の複製がないため安全で細胞毒性、及び、抗原性が低い。不活性化ウイルスを用いたウイルスエンベロープベクター中に遺伝子を封入することにより、培養細胞や生体組織に対して安全で、高効率の遺伝子導入ベクターを調製することができる。ウイルスエンベロープベクターは、例えばPCT/JP01/00782等に記載の方法に従って調製することができる。遺伝子導入ベクターの調製に使用するウイルスとしては野生型ウイルス及び組換え型ウイルスの両方が挙げられ、例えばレトロウイルス科、トガウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、ラブドウイルス科、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、バキュロウイルス科、及び、ヘパドナウイルス科等を挙げることができる。特にHVJを用いたウイルスエンベロープベクターが好ましい。また、Hasan,M.K.ら(Journal of General Virology,78,2813−2820(1997))、又は、Yonemitsu,Y.ら(Nature Biotechnology 18,970−973(2000))に記載される組換え型センダイウイルスを用いて遺伝子導入ベクターを調製することもできる。
さらに、naked−DNAの直接導入法は上記手法のうち最も簡便な手法であり、この観点からも好ましい導入法である。
ここで用いられる発現ベクターとしては、生体内で目的遺伝子を発現されることのできるベクターであれば如何なる発現ベクターであっても良いが、例えばpCAGGS[Gene 108:193−200(1991)]や、pBK−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(インビトロゲン社、ストラタジーン社)等の発現ベクターが挙げられる。
B.ウイルスベクターを用いる場合
ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターを用いた方法が代表的なものである。より具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルスまたはRNAウイルスに目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることによって細胞内に遺伝子を導入することが可能である。
前記ウイルスベクターのうち、アデノウイルスの感染効率が他のウイルスベクターを用いた場合よりもはるかに高いことが知られており、この観点からはアデノウイルスベクター系を用いることが好ましい。
本発明の遺伝子治療剤の患者への導入法としては、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vivo法及びヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある[日経サイエンス、1994年4月号:20−45頁;月刊薬事36(1):23−48(1994);実験医学増刊12(15):(1994);日本遺伝学治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス(1999)]。本発明では、in vivo法が好ましい。
製剤形態としては、上記の各投与形態に合った種々の製剤形態(例えば液剤等)をとり得る。例えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤とされた場合、当該注射剤は定法により調製することができ、例えば適切な溶剤(PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等)に溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。当該注射剤には必要に応じて慣用の担体等を加えても良い。また、HVJ−リポソーム等のリポソームにおいては懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
皮膚疾患に対して、本発明の治療剤又は予防剤は好ましくは軟膏の形態で皮膚の患部に局所投与され得る。この軟膏は皮膚に容易に塗布できる適当な稠度の全質均等な半固形の外用剤であり、通常、脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、プラスチック、グルコール類、高級アルコール、グリセリン、水若しくは乳化剤、懸濁剤を含み、これらを基剤としてデコイ化合物が均等に混和されたものである。基剤に依存して、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏の形態であり得る。油脂性軟膏は動植物性油脂及び蝋、またはワセリン、流動パラフィン等を基剤とし、乳剤性軟膏は、油脂性物質と水とを乳化剤で乳化するもので、水中油型(O/W)または油中水型(W/O)のいずれかであり得る。水中油型(O/W)は、親水軟膏であり得、油中水型(W/O)は、はじめから水相を欠き、親水ワセリン、精製ラノリンを含み得るか、または水相を含む吸水軟膏、加水ラノリンを含み得る。水溶性軟膏は完全に水に溶けるマクロゴール基剤を主成分として含み得る。
好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアは5%ステアリルアルコールを含むワセリンあるいはワセリンのみあるいは流動パラフィンを含むワセリンである。このようなキャリアは薬学的組成物が患者による摂取に適した錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、軟膏、シロップ、スラリー、懸濁物等に処方されることを可能とする。
また、患部の細胞または目的とする組織の細胞内に局所投与する場合、本発明の治療剤または予防剤には、キャリアとして合成または天然の親水性ポリマーを含有させ得る。このような親水性ポリマーの例として、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールが挙げられ、本発明の化合物を、適切な溶媒中でこのような親水性ポリマーと混合する。その後、溶媒を風乾等の方法により除去して、所望の形態、例えば、シート状に成型した後、標的部位に付与することができる。このような親水性ポリマーを含む製剤は、水分含量が少ないので、保存性に優れ、使用の際には水分を吸収してゲル状となり貯留性にも優れる。このようなシートは、類似の物としてセルロース、デンプン及びその誘導体あるいは合成高分子化合物等に多価アルコールを混合して硬度を調整して形成した親水性シートも利用することができる。
本発明で用いられるHGF、VEGF、FGF及びHIF等の血管新生因子遺伝子から選択される遺伝子を複数併用して、若しくは、単独で、またはこれらの血管新生因子以外の血管新生作用を有する公知の因子を併用して、又は単独で用いることが可能である。例えば、EGF等の因子は血管新生作用を有することが報告されており、これらの遺伝子を使用することができる。またEGF等の増殖因子は組織の種々の細胞障害を修復することが報告されており、これらの遺伝子を用いることも可能である。
本発明でいう皮膚疾患には創傷、ハゲ、皮膚潰瘍、褥瘡(床ずれ)、瘢痕(ケロイド)、アトピー性皮膚炎、並びに、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の皮膚の損傷等が含まれる。なお、本発明において予防剤とは、上記疾患を発症(罹患)するのを予め防ぐ効果を有する薬剤、もしくは、上記疾患を発症した際に症状を軽減する効果を有する薬剤、あるいは、症状の回復を早める効果を有する薬剤等を言い、これらの予防剤も本発明に含まれる。
ここで、ハゲとは毛周期が極端に短くなり、成長期の最中の太い毛まで抜けてしまい、その結果として細く短い軟毛ばかりが生えてくる、軟毛化現象を指す。皮膚潰瘍とは真皮ないし皮下組織に達する深い組織欠損であり、虚血性潰瘍、鬱血性潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡、放射線潰瘍及び点滴漏れ等に分類される。褥瘡とは、体の接触面から受ける持続的圧迫により組織の末梢血管が閉塞し壊死を起こす病態を指し、長期臥症中に人の後頭部・背中・腰等のように、長期間圧迫されている部位に生じる境界明瞭な、乾燥性壊死塊の付着した難治性潰瘍である。瘢痕(ケロイド)とは、皮膚損傷後に見られる結合組織の肥大増殖症であり、創面が扁平に隆起し、時に蟹足状突起を生じるものであり、増殖性を有し、元の創傷部位を越えて周辺に拡大を続けるものもある。外傷がケロイドを形成する因子としては遺伝的、年齢的、ホルモン等の全身因子、及び、局所因子として体の部位による瘢痕のなりやすさが挙げられる。肥厚性瘢痕、瘢痕ケロイド及び真性ケロイド等に分類される。
本発明の遺伝子治療剤は治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与方法/投与部位が選択される。投与方法としては非経口的に投与することが好ましい。また投与部位としては皮膚疾患部位内に投与することが好ましい。ここで「皮膚疾患部位」とは、皮膚疾患患部及びその周辺を含む部位を指す。
皮膚疾患部位には具体的には血管内及び筋肉内等への投与、並びに、軟膏等によるその表層への投与が可能である。即ち創傷、ハゲ、褥瘡(床ずれ)、ケロイド、アトピー性皮膚炎、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の患部においては、注射器やカテーテルにより血管内及び筋内に投与することにより、または、軟膏等の形態でその表面に塗布することにより患部の血管新生を促進させ血流量の改善を図り、患部の機能の回復正常化を行うことができる。
本発明のHGF遺伝子を適用することにより、創傷、ハゲ、皮膚潰瘍、褥瘡(床ずれ)、瘢痕(ケロイド)、アトピー性皮膚炎、並びに、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の皮膚の損傷に対して積極的な遺伝子導入による治療を行うことができ、従来、適切な治療法の道のなかった患者において機能の回復が可能となる。
本発明の治療剤または予防剤には、該薬剤により意図される目的を達成するのに十分な量、即ち「治療的有効量」または「薬理学的に有効な量」の血管新生因子遺伝子が含まれる。「治療的有効量」または「薬理学的に有効な量」とは、意図される薬理学的結果を生じるために有効な薬剤の量であり、処置されるべき患者の徴候を軽減するのに十分な量である。所定の適用における有効量を確認する有用なアッセイ法としては、標的疾患の回復の程度を測定する方法が挙げられる。実際に投与されるべき量は、処置される個体に依存し、好ましくは、所望の効果が顕著な副作用を伴うことなく達成されるよう最適化された量である。
治療的有効量、薬理学的に有効な量、及び、毒性は、細胞培養アッセイまたは任意の適切な動物モデルにより決定することができる。また、そのような動物モデルは所望の濃度範囲および投与経路を達成するのに用い、当業者であれば、それに基づきヒトにおける有効量を決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量比は治療係数であり、それは比率ED50/LD50として表すことができる。大きな治療係数の薬学的組成物が好ましい。決定された用量は、使用される投与形態、患者の感受性、年齢やその他の患者の条件、疾患の種類、重篤さ等により適宜選択され、本発明の治療剤の投与量としては、患者の症状等によって異なるが、成人患者1人当たりHGF遺伝子として約1μg〜約50mgの範囲、好ましくは約10μg〜約5mg、より好ましくは約50μg〜約5mgの範囲から投与量が選択される。
本発明の治療剤は数日ないし数週間に一回投与するのが好適であり、投与回数は適宜患者の症状に応じて選択される。本発明の治療剤は非侵襲的な投与に供されるものであるため、病状に応じて何回でも投与できるという特徴を有する。
本発明において血管新生因子遺伝子を導入する生物としては特に制限はないが、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物としては、例えばヒトやサル、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジなどの非ヒト哺乳動物を例示することができるが、これらに制限されない。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
(1)創傷組織及び血漿中のHGFタンパク濃度
1.実験動物 およそ11週齢で310〜370gの重さの65匹の雄のWistarラットを、2つの実験のうちの1つに割り当て、2匹ずつ温度管理された、12時間の明暗サイクルの部屋に収容した。全てのラットに市販の餌及び水道水を任意に与えた。この実験はCare and Use of Laboratory Animals of the National Institute of Healthに従って行った。該プロトコルはNational Defense Medical Collegeの動物実験の倫理について委員会により承認されたものである。
2.HGF発現ベクター ヒトHGF cDNA(2.2kb)をpUC−SRα発現ベクタープラスミドのEcoRI/NotI部位に挿入した。該プラスミド中、HGF cDNAの転写はSRαプロモーターのコントロールを受ける(Nature 342:440−443(1989))。
3.HVJ−リポソーム 子牛胸腺から精製した(HMG)−1(50μl)とプラスミドDNA(200μg)を20℃で、総量200μlとなるよう等張液(137mM NaCl,5.4mM KCl,10mM Tris−HCl,pH7.6)で1時間混合した後、10mgの乾燥脂質(ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、コレステロールの1:4.8:2の混合物)に添加した。リポソーム−DNA−HMG−1複合体懸濁液を攪拌し、3秒間超音波処理し、30分間振盪しリポソームを形成した。精製センダイウイルス(HVJ)(Z株)を使用直前、3分間のUV照射(110erg/mm2/秒)により不活化した。リポソーム懸濁液(0.5ml,10mgの脂質を含む)とHVJ(30000血球凝集単位)を総量3mlの等張液中で混合した。混合後4℃で10分間インキュベートした後、軽く振盪しながら37℃で30分間加温した。遊離のHVJをショ糖密度遠心分離により除去した。HVJリポソーム−DNA複合体を最上層から回収し、すぐに使用した。
4.創傷組織及び血液試料 41匹のラットを、創傷の生化学、及び、組織学研究のために2つのグループ(HGF遺伝子転移グループ及びコントロールベクターグループ)に分けた。ペントバルビタールナトリウム(0.5ml/kg)を腹膜注射してラットを麻酔し、背中の毛を剃り、皮膚を洗浄し、各動物の背中に14mm厚の創傷をつくった。3日後、同じラット(ペントバルビタール麻酔下)に100μgのHGF cDNAを含むHVJ−リポソーム(500μl)、または、コントロールベクターを皮下注射した。27G針を用いて創傷の端に導入した。注射3、7及び14日後に麻酔下で動物を断頭し、HGF測定のため血液試料を採取した。血液試料をEDTA(2mg/ml)を含む凍結チューブに入れた後、遠心した。直に血漿を凍結し、分析するまで−80℃で貯蔵した。また、解剖時、皮膚を除き、各グループから5匹のラットの組織について定量した後二分した。一方を液体窒素中で凍結し、使用するまで−80℃で貯蔵した。
5.ELISA試験 各グループ毎5匹の組織試料を4倍量の0.1% 2M NaCl、0.1% Tween−80、1mM PMSF及び1mM EDTAを含む20mM Tris−HClバッファー(pH7.5)中、ポリトロン式ホモジェナイザー(24000rpm;Kinematica AG,Lucerne,Switzerland)を用いて1分間ホモジェナイズした。ホモゲネートを4℃、15000×gで30分間遠心し、上清及びペレットをHGFタンパクについての酵素免疫分析(ELISA)まで−80℃で貯蔵した。ヒトHGFタンパク濃度を抗ヒト−HGFモノクローナル抗体を用いてELISAで測定し、ラットHGFについても抗ラット−HGFモノクローナル抗体を用いてELISAで測定した(Institute of Immunology,Tokyo,Japan)。ヒトHGF ELISA系ではラットHGFではなくヒトHGFを特異的に検出した。50μlラット血漿中のHGFタンパクの血漿濃度を上述のELISAを用いて測定した。
6.結果 創傷組織へのHGF遺伝子転移3、7及び14日後、HGF遺伝子転移ラット中のヒトHGFタンパク量は大いに増幅され、コントロールラットではHGFが全く検出されないことがELISAにより明らかになった(図1A)。しかしながら、HGF遺伝子転移ラット由来の血漿試料からはヒトHGFタンパクは検出されなかった。それに対し、HGF遺伝子転移ラットの創傷組織中のラットHGF量は、遺伝子転移3日後初めて有意に増加した(図1B、p<0.05)。
(2)創傷組織中のヒトHGFmRNA及びタンパク質の発現
(1)に記載の方法と同様の方法により、ラットにおいて創傷を作成しHVJ−リポソームまたはコントロールベクターを投与し、注射3、7及び14日後に麻酔下で動物を断頭して得た創傷組織を過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒド(PLP)溶液中に固定した。
1.In situハイブリダイゼーション HGFのin situハイブリダイゼーションのため、脱パラフィン化した4%パラホルムアルデヒド固定セクションを0.2N HClで20分間処置した後、2×SSC中、10分間37℃でインキュベートし、最終的に5μg/mlプロテイナーゼK中、37℃で10分間インキュベートした。続いて各セクションを5分間4%パラホルムアルデヒド中に固定化し、組織の酸化による非特異的結合を防ぐために0.25%(容量/容量)無水酢酸を含む0.1mol/lトリエタノールアミンバッファー(pH8.0)中で10分間インキュベートした。pUC−SRα発現ベクタープラスミドのEcoRI及びNotI部位中に挿入した完全長ヒトHGF cDNAを、EcoRIを切断する制限酵素で消化し、得られたHGF cDNA(848bp)の断片をpGEM−7Zf(+)(Promega,Madison,WI)のEcoRIクローニング部位の間に連結した。アンチセンスプローブ及び対応するセンスプローブを、RNA標識キット(Boehringer Mannheim,Postfach,Germany)により、各々SP6及びT7ポリメラーゼを用いてジゴキシゲニンで標識した。50%(容量/容量)脱イオン化ホルムアミド、5×デンハート溶液、5%(重量/容量)硫酸デキストラン、2×SSC、0.3mg/mlサケ精子DNA、5mM EDTA及び0.01μg/mlジゴキシゲニン標識プローブ中、42℃で一晩ハイブリダイズさせた。55℃で20分間、最終ストリンジェンシーの洗浄を行った後、ハイブリダイゼーションを免疫学的に検出した。
2.免疫組織化学 脱パラフィン化したセクションに対して直接免疫ペルオキシダーゼ法を適用した。該方法ではHGFに対するマウスモノクローナル抗体(1:20,Institute of Immunology,Tokyo,Japan)、及び、ウサギ免疫グロブリンに対する西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体(Chemicon International Inc.,希釈1:250)を用いた。ヒトHGFに対するマウスモノクローナル抗体によりラットHGFではなくヒトHGFを特異的に検出した。
3.結果 HGF遺伝子転移ラットの創傷組織中、HGF mRNAは遺伝子転移3日後の創傷の端の上皮中扁平上皮細胞、血管の内皮細胞及び平滑筋細胞、並びに、肉芽組織中の線維芽細胞で検出された(図2a,2b,2e及び2f)。それに対し、全てのコントロールラットでは検出されなかった。同様に、ヒトHGFタンパクがHGF遺伝子転移ラットの同じ細胞型(上皮中の扁平上皮細胞、血管の内皮細胞及び平滑筋細胞、並びに、肉芽組織中の線維芽細胞)で検出され、コントロールラットではされなかった(図2c及び2g)。その後、遺伝子転移14日後(試験最終日)までこの発現は維持された(図2d及び2h)。
(3)創傷病変サイズ
(1)に記載の方法と同様の方法により、ラットにおいて創傷を作成しHVJ−リポソームまたはコントロールベクターを投与した20匹のラットを遺伝子(又はベクター)転移後の創傷範囲の測定に用いた。
1.創傷範囲の測定 遺伝子転移0、3、7、10及び14日後にイメージ分析器(TOSPIX−U,AS3260C,及びイメージ分析パッケージソフトウェア;Toshiba,Tokyo,Japan)を用いて取ったトレーシングで創傷範囲を測定した。創傷範囲は初期範囲(遺伝子転移0日後のもの)に対するパーセンテージで表現した。完全な厚さの創傷が完全に上皮で覆われた時点を、完治した日とした。
2.結果 創傷病変範囲(遺伝子転移0日後の元の創傷病変範囲に対するパーセンテージとして表現)は、遺伝子転移3日後、HGF遺伝子転移ラットで有意に減少した(コントロールラットと比べて)(図3,p<0.05)。しかしながら、HGF遺伝子転移ラット及びコントロールラットの間で完全に治癒するまでに必要とされる日数に差異はなかった。
(4)創傷中の細胞増殖及び血管新生
(1)に記載の方法と同様の方法により、ラットにおいて創傷を作成しHVJ−リポソームまたはコントロールベクターを投与し、注射3、7及び14日後に麻酔下で動物を断頭して得た創傷組織をPLP中に固定した。
1.増殖細胞核抗原(PCNA)の測定 細胞増殖の指標として各組識中でのPCNAの発現を検出した。脱パラフィン化した上皮、及び、肉芽組織に対して直接免疫ペルオキシダーゼ法を適用した。PCNAに対するマウスモノクローナル抗体(PC−10,1:100,Dako Inc.,Glostrup,Denmark)、及び、ウサギ免疫グロブリンに対する西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体(Chemicon International Inc.,希釈1:250)を用いた。PC−10に対する免疫組織化学の前に、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中、120℃で15分のオートクレーブ前処理を行った。ネガティブコントロールとして、一次抗体とのインキュベーション工程を省いた。PC−10の分析のため、少なくとも1000個の腫瘍細胞での免疫反応に基づいて、免疫反応が陽性であった核の割合を測定した(PCNA指数)。
2.血管新生の測定 創傷中の微細血管数を、最も多数の血管を含む領域について光学顕微鏡で評価した。血管数を連続的な200×の場(20×対物レンズ及び10×接眼レンズ;場当たり0.0925mm2)で測定した。また、血管新生は上述の1.における方法と同様にして、第VIII因子に対するポリクローナル抗体(1:100,Dako Inc.,Glostrup,Denmark)を用いて肉芽組織の上皮細胞中の第VIII因子を調べることにより測定した。
3.結果 遺伝子転移3及び7日後のHGF遺伝子転移ラット中で創傷の端の上皮、及び、肉芽組織の両方でPCNA指数はどちらも有意に増加した(コントロールラットと比べて)(図4及び5,p<0.05)。肉芽組織中の微小血管数(第VIII因子の免疫組織化学により検出)は、遺伝子転移3日後のHGF遺伝子転移ラットで有意に増加していた(図6,p<0.05)。
(5)創傷中の皮膚成分の発現
(1)に記載の方法と同様の方法により、ラットにおいて創傷を作成しHVJ−リポソームまたはコントロールベクターを投与し、注射3、7及び14日後に麻酔下で動物を断頭して得た創傷組織からRNA抽出を行った。
1.総RNA抽出、及び、半定量的RT−PCR 各グループから5匹のラットの皮膚組織中の種々のmRNAの発現を、半定量的RT−PCRにより調べた(Lab.Invest 79:679−688(1999))。皮膚組織中の総RNAをイソチオシアネート酸グアニジウム−フェノールクロロホルム抽出及びエタノール沈殿を用いて単離した(Anal.Biochem.162:156−159(1987))。増幅試薬キッド(TaqMan EZRT−PCRキット;Applied Biosystems,Alameda,CA)及び複数のプライマーを用いてRT−PCRを行った。以下のプライマーを自動DNA合成装置で作成した:TGF−β1,Colα2(I),Colα1(III),デスミン,α−sm−アクチン及びグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)。用いた全てのPCRプライマー及びTaqManプローブの配列情報、並びに、温度条件を表1に示す(Hepatology 24:636−642(1996))。TaqManプローブの5’末端をリポーター色素分子FAM(6−カルボキシフルオレジン)、及び、3’末端をクエンチャー色素TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン)で標識した。1×反応バッファー、300μM dATP、300μM dCTP、300μM dGTP、600μM dUTP、3mM Mg(OAc)2、0.1U/μl rTth DNAポリメラーゼ、0.01U/μl AmpErase UNG、900nM プライマー及び200nM TaqManプローブの最終濃度を、製造者のプロトコルに従って反応のための原混合物を調製した。RT反応液を60℃で30分間、続いてAmpErase UNGを不活化するため95℃で5分間インキュベートした。ABI PRISM 7700 Sequence detector(Applied Biosystems)を用いてPCRを行った。PCRの各サイクルで、rTth DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によりTaqManプローブを切断し、適当な波長におけるリポーター色素の蛍光を増幅させた。蛍光の増加は、PCR中のテンプレートの濃度に比例した(図7A)。閾値蛍光レベルは、テンプレート無しのコントロールで得られた平均値の標準偏差に6.965かけた(TaqMan RT−PCRキットのプロトコルに従った)。各RNA量毎に4個のウェルについて確立した閾値サイクルを用いて標準曲線を得た(図7B)。PCR産物を3%アガロースゲルでの電気泳動により分離し、エチジウムブロミドで染色した(図8A)。
2.結果 半定量的RT−PCRにより、HGF遺伝子転移ラットの創傷組織中のデスミンmRNAの発現は、遺伝子転移3日後コントロールラットと比べて有意に上昇しており、TGF−β1及びColα2(I)mRNAの発現は、遺伝子転移7及び14日後に各々、有意に減少していた(図8B,p<0.05)。
(6)創傷中のヒドロキシプロリン濃度
(1)に記載の方法と同様の方法により、ラットにおいて創傷を作成しHVJ−リポソームまたはコントロールベクターを投与し、注射3、7及び14日後に麻酔下で動物を断頭して得た創傷組織から組織試料を調製した。
1.ELISA試験 4倍量の0.1% 2M NaCl、0.1% Tween−80、1mM PMSF及び1mM EDTAを含む20mM Tris−HClバッファー(pH7.5)中、ポリトロン式ホモジェナイザー(24000rpm;Kinematica AG,Lucerne,Switzerland)を用いて1分間ホモジェナイズした。ホモゲネートを4℃、15000×gで30分間遠心し、ペレットを6N HCl中に110℃で16時間加水分解した。ヒドロキシプロリン含量をアミノ酸分析器(モデル835;Hitachi Ltd.Tokyo,Japan)を用いて測定した。
2.結果 創傷中のヒドロキシプロリン濃度は、遺伝子転移3、7及び14日後のHGF遺伝子転移ラット中、コントロールラットに比べて明らかに低かった(図9,p<0.05)。
上記実施例で得られた結果は各々、平均±平均の標準偏差として表した(SEM)。分散分析(ANOVA)により有意のF値が得られた場合、フィッシャーの保護最小−有意−相違検定(Fisher’s protected least−significant−difference test)を適用した。p<0.05で有意な相違とした。
産業上の利用の可能性
今回、コントロールラットと比べてHGF遺伝子転移ラットの創傷組織中のヒト及びラットHGFタンパクの量の増加が、ELISA及び免疫組織化学を用いて観察され、同様により早い再上皮化、強力な複数の型の細胞の増殖、及び、強力な血管新生が創傷内で免疫組織化学により観察された。それに対し、創傷治癒の間、創傷中のTGF−β1mRNA及びColα2(I)mRNAの下向き調節、並びに、ヒドロキシプロリン量の減少を観察した。これらの結果より、皮膚創傷へのHGF遺伝子転移は、創傷治癒工程の一部である再上皮化、及び、血管新生を助ける。また、瘢痕の形成も抑制されるかも知れない。
遺伝子転移14日後(試験終了日)、創傷中のヒトHGF産生が維持されることを確認した。さらに、創傷中のラットHGF濃度は、遺伝子転移3日後、コントロールラットよりも有意に高かった。従って、ヒトHGF遺伝子はラットHGFの産生の正の調節因子として働くのかも知れない。さらに、この結果はHGF自身が局所HGFの産生を自己完結的な陽性フィードバックで調節し、自己分泌−傍分泌方式で調節するという仮説[Kid.Int.53:50−58(1998);Biochem.Biophys.Res.Commun.220:539−545(1996)]が裏付けられ、HGF遺伝子を投与することにより、投与を受けた個体における本来のHGFの産生が促進されると考えられる。
本発明により得られた巨視的、及び、組織学的事実は、HGF遺伝子導入ラットではコントロールラットと比べ、創傷病変範囲のより迅速な減少が見られ、創傷の端の上皮中の基底細胞の超増殖が観察された。そのため、このモデルでHGF mRNA及びタンパク発現の増加が、創傷内及び創傷を横断しての上皮細胞の分裂、及び、増殖を傍分泌及び/または自己分泌活性により増幅し得ることが示された。本発明では、HGF遺伝子転移ラットで血管数の増加、及び、肉芽組織中の内皮細胞のPCNA−陽性染色も観察され、HGFが強力な血管新生活性を有することを裏付ける。
本発明では、半定量的RT−PCRを用いてTGF−β1 mRNA発現がHGF遺伝子転移ラットでは遺伝子転移7日後に、コントロールラットと比べて減少していることが観察された。さらに、Colα2(I)mRNA発現は遺伝子転移14日後に、ヒドロキシプロリンは遺伝子転移3、7及び14日後に減少した。この結果、HGF遺伝子転移ラットでの瘢痕形成がTGF−β1合成の下向き調節により抑制されるかもしれないことが示唆された。従って、皮膚へのHGF遺伝子転移は、皮膚繊維症の患者の処置に有用であるかもしれない。
以上の結果により血管新生因子遺伝子転移が創傷治癒の初期段階で有利な効果を有し、血管新生因子が皮膚疾患を調節する役割を果たすかもしれないことが示され、遺伝子転移で誘導した血管新生因子の過剰発現により再上皮化、及び、血管新生の操作は、創傷治癒の分野において新しい治療法の選択を提供する。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、遺伝子転移後の創傷中のヒトHGF濃度(A)及びラットHGF濃度(B)を検出した結果を示す図である。*コントロールラットにおける値に対してp<0.05。各グループ共n=5。ND;検出せず。
図2は、HGF遺伝子転移ラット中のヒトHGFのmRNA(a〜d)及びタンパク質(e〜h)の分布を示す写真である。図中の棒のスケールは、a及びeで100μmであり、b〜d、g及びhで200μmである。
図3は、元の創傷領域に対する遺伝子転移後の創傷領域の大きさを割合で示す図である。
図4は、遺伝子転移後のラットの創傷の端の表皮中でのPCNAの発現を示す図(A)および写真(B)である。Aは遺伝子転移後の表皮中のPCNA陽性細胞の割合を、BはPCNAの発現を示す写真である。図中a〜cは各々、HGF遺伝子転移ラットの3、7及び14日目の写真、d〜fはコントロールラットの3、7及び14日目の写真である。a〜f中の棒のスケールは200μmである。
図5は、遺伝子転移後のラットの肉芽組織中でのPCNAの発現を検出した結果を示す図(A)および写真(B)である。Aは遺伝子転移後の肉芽組織中のPCNA陽性細胞の割合を、BはPCNAの発現を示す。図中a〜cは各々、HGF遺伝子転移ラットの3、7及び14日目の写真、d〜fは各々コントロールラットの3、7及び14日目の写真である。a〜f中の棒のスケールは200μmである。
図6は、遺伝子転移後のラットの肉芽組織における第VIII因子に対する免疫組織化学を用いた微細血管数のカウントの結果を示す図(A)および写真(B)である。Aは肉芽組織における微細血管数、Bは第VIII因子についての免疫組織化学の結果を示す。図中a〜cは各々、HGF遺伝子転移ラットの3、7及び14日目の写真、d〜fは各々コントロールラットの3、7及び14日目の写真である。a〜f中の棒のスケールは200μmである。
図7は、Colα2(I)のmRNAについてのRT−PCRの結果を示す図である。Aは半定量的RT−PCR法を用いて選られたColα2(I)の即時増幅プロットであり、BはRT−PCRの閾値サイクルの標準曲線である。
図8は、TGF−β1、Colα2(I)、α−アクチン、デスミン及びColα1(III)のmRNAについてのRT−PCRの結果を示す図および写真である。AではPCR産物の検出を行っており、Bは半定量的RT−PCRの結果である。
図9は、遺伝子転移後のラットの創傷中のヒドロキシプロリン濃度を検出した結果を示す図である。
Claims (7)
- 血管新生因子遺伝子を有効成分として含有する皮膚疾患の治療剤又は予防剤。
- 血管新生因子遺伝子がHGF遺伝子、VEGF遺伝子、FGF遺伝子またはHIF遺伝子である、請求項1記載の治療剤又は予防剤。
- 皮膚疾患が創傷、ハゲ、皮膚潰瘍、褥瘡(床ずれ)、瘢痕(ケロイド)、アトピー性皮膚炎、または、自家移植及び他家移植を含む皮膚移植後の皮膚の損傷である、請求項1記載の治療剤又は予防剤。
- 該治療剤又は予防剤が錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、軟膏、シロップ、スラリー、懸濁物の形態である、請求項1又は2記載の治療剤又は予防剤。
- 遺伝子を内包型リポソーム法、静電気型リポソーム法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法、ウイルスエンベロープベクター法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガン(遺伝子銃)で担体と共にDNA分子を細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、超音波の照射と共にDNA分子を細胞に移入する方法、エレクトロポレーション法、または、正電荷ポリマーによる導入法のいずれかにより細胞に移入するための、請求項1〜3いずれかに記載の薬剤。
- 血管新生因子遺伝子を哺乳動物に導入することを含む、皮膚疾患の治療又は予防法。
- 皮膚疾患の治療剤又は予防剤の製造のための血管新生因子遺伝子の使用。
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