JPS6327329B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

形成外科、整形外科、口腔外科、人口臓器外科
などにおいて、歯、骨、軟組織、臓器などの欠損
部分をプラスチツクス、金属、セラミツクスなど
で得られた人口部材で修復置換するには欠損部分
の症状によく適合した修復部材（人口骨、人口関
節、人口歯根、人口臓器）の調製が要求される。
そのためには欠損局所の形状を正確に復元する必
要があり、欠損局所を手術中に正確に印象材採得
（型どり）できる材料（印象材）が必要で、この
印象材採得（型値どり）には従来寒天系、アルギ
ン酸系、シリコン系、ポリサルフアイド系、ビニ
ルシリコン系、ポリエーテル系などを印象材とし
て使用してきた。 しかしながら、いずれの印象材もＸ線透過性が
高く造影性は期待できない。したがつて、印象採
得時の圧流によつて手術野の骨表面の粗〓部や細
孔内部に混入した印象材を術後に確認することは
できない。また、手術野では複雑な組織構造に加
えて出血や滲出る体液なども介在し、正常組織と
残留印象材との識別は肉眼的には全く不可能で、
手術中に完全に除去することも至難の業である。 印象材が術後に組織内に残留すると、その組成
の一部が生体組織内で溶出し、周囲組織を刺激
し、急性または慢性炎症を誘発することになる。
また、不溶性部分は異物となり、慢性の機械的刺
激を誘発することになる。いずれにしても、印象
材を手術野から完全に除去することは医学上必須
条件である。そのためには、印象のための第一次
手術中で除去できなかつた印象材を修復部材押入
のための第二次手術において完全に除去する必要
がおきるが、これ迄印象材にＸ線造影性を与えた
ものがなかつただけに肉眼だけで、前述した第二
次手術中に印象材を払底除去することはかなりの
困難を伴い患者、術者にとつてもその改善が強く
望まれる所となつていた。 本発明は凡そ上記に鑑みなされたものであつ
て、手術の組織や骨表面に為害性のないことに念
頭に入れて印象材にＸ線造影性を与えるようにし
た手術野組織・骨表面専用の印象材組成物をここ
に提供するものである。本発明はまた、Ｘ線造影
性と組み合わせて肉眼で視認し得る着色性を前記
医学的考慮を入れながら印象材に与えるようにも
図つてある。生体への為害性、刺激性のないこと
もしくは極めて少ないことは印象材それ自体、造
影材及び着色材にも適用される条件であり、この
意から造影効果はあつても毒性のある鉛系硬化剤
などは発明範囲から除外される。この鉛系硬化剤
は患者に対してのみでなく、これを常用する術者
にも慢性中毒の懸念が出てくるからである。鉛系
化合物の他に硬化機構の中で組織刺激性のある例
えばアルコールなどを副産するような印象材もこ
の意で除外されるべきである。後記の説明から判
るように望ましい実施例に於て、ビニルシリコン
系印象材でスズ系の硬化剤を含む印象材（基材）
に対してAg−Cu−Sn（70％−５％−25％）系合
金、Sn金属単体、Cu金属単体もしくはCu−Sn系
合金の夫々の粉末を配合したものは毒性、刺激
性、Ｘ線造影性、配合（練合）の作業性及び造影
限界厚みに於て素晴らしい結果を示している。 本発明組成物は原則的に常温下での配合によつ
て構成されるもので、配合によつて有毒な副産物
を形成しない。また、この配合は硬化剤を除いて
現場配合、或は予備配合いづれでも可能で経時的
な特性変化を生じない。 以下に本発明を実施例を挙げて詳細に説明す
る。 実施例 (i) 印象材：− カプリル酸スズを硬化剤として含むビニルシ
リコン系印象材 (ii) 造影材：− 下記の（表１）に示すものを用いた。 (iii) サンプル：− 第３図に示す如く楔型で最大厚み５mmのもの
を調製した。 (iv) 造影材の種類、練和と硬化の状態及び造影限
界厚み（Ｘ線が透過出来ない最低厚み）との関
係：− 表１の如し

【表】

【表】 (v) サンプルＡ〜Ｄ（但し、サンプル中造影材の
配合量は全て20％とした）の造影効果：− 最大出力60KVp×４ｍＡのＸ線装置を使用
し30KVp×２ｍＡ×14secの撮影条件でサンプ
ルＡ〜Ｄを撮影し、一定条件で現像した結果を
第１図に示す。なお、サンプルＡ〜Ｄの他に造
影材を全く含まないビニルシリコン系印象材の
みの比較例（サンプルＥ）を対照させた。 図１よりＸ線造影効果はサンプルＡ〜ともど
も遜色のないもので対照サンプルＥに対して良
き対照をなしていることが明らかである。 (vi) Ag（70）−Cu（50）−Sn（25）系合金の造影材
のみの配合量と造影効果との関係：− 最優秀とみられる上記合金造影材を10〜60％
の範囲の配合量の造影効果に及ぼす結果を第２
図に示す。同図より最低10％の場合でも効果が
明らかである。配合最大量は60％であるが、30
〜40％が適量のようである。 (vii) 毒性テスト：− 以上のサンプルとは別に印象材（基材）の毒
性をオーチヤン（Autian）法に従つて調べる
にサンプルＡ、Ｂ、Ｃ及びＤ（表１参照）はビ
ニルシリコン印象材にカプリル酸スズを硬化剤
として含むもの、別個に調製した印象材サンプ
ルＦは過酸化鉛を硬化剤として含む場合であつ
て、いずれも練和直後と硬化後との夫々につき
第４図、第５図に結果を示した。両図よりサン
プルＡ、Ｂ、Ｃは同Ｆに較べてほゞ1/2以下、
サンプルＣは約2/3と稍々高いがサンプルＤは
約1/2の毒性と夫々なつており、サンプルＡ、
Ｂ、Ｃの毒害性は同数値からきわめて僅少なも
のと云える。一方、サンプルＦは毒性が強いの
で本発明から除去されるが、二次手術で除去さ
れる印象材と云う理由でかつては使用が許可さ
れたことがある。従つて、本発明のサンプルＤ
の毒性は心配に価しないと云つて良い。硬化后
の毒性は硬化前のそれに較べていづれも相応に
低減している。なお（表１）のビニルシリコン
系印象材に代つて通常のシリコン系、ポリサル
フアイド系、ポリエーテル系、寒天系、アルギ
ン酸系を用いても同様な結果が得られている。
またビニルシリコン系（もしくはシリコン系）
印象材中の硬化剤としてはカプリル酸スズの他
ジラウリル酸スズを用いることもある。 着色材についても毒性や刺激性のないカーボ
ン粉末、酸化鉄などを適用することが、本発明
の目的達成の上で必要なことである。この目的
から上記着色材は１〜20％使用するのがよい。 叙述より理解されたように、本発明によれば印
象材中に毒性や刺激性のない或は極めて少ないＸ
線造影材を配合したことによつて手術野組織・骨
表面に存在する印象材をＸ線撮影によつて容易且
つ適確に検視出来るので、第二手術の際に之を手
術野から除去出来ることを保証し得ると共に人体
への為害性をなくして患者及び術者に朗報をもた
らすものである。また、着色材を配合する場合は
Ｘ線検診に代つて肉眼で視認するために組織や骨
表面の色調と別色の着色剤を配合することにより
Ｘ線なしで同様の利益を得ることも出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明印象材中の各種Ｘ線造影材を加
えた場合のサンプルＡ〜ＥのＸ線造影性を示す図
面代用写真、第２図はAg−Sn−Cu系合金をＸ線
造影材とした場合の配合量と造影効果との関係を
示す図画代用写真、第３図は第１、第２図のサン
プルの形状・寸法を示す斜視図であり、第４図は
別の上記サンプルのうちＡ〜Ｄ及び別のサンプル
Ｆの練和直後の細胞毒性を調べるオーチアン法に
よるテスト結果を、第５図は同硬化後の毒性を調
べる第４図同様図を夫々示すものである。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ シリコン系、ビニルシリコン系、ポリサルフ
   アイド系、ポリエーテル系、寒天系及びアルギン
   酸系のいづれかより選出された印象材と、Ag、
   Cu及びSnのうちのいづれかの金属単体粉粒又は
   それらの合金粉粒より選出されたＸ線造影材とよ
   り成る手術野組織・骨表面専用の印象材組成物。 ２ 印象材がビニルシリコン系であり、Ｘ線造影
   材がAg−Cu−Sn系合金、Sn金属単体、Cu金属
   単体及びCu−Sn系合金のいづれかの粉粒より選
   出された特許請求の範囲第１項記載の印象材組成
   物。 ３ シリコン系もしくはビニルシリコン系印象材
   中の硬化剤がカプリル酸スズもしくはジラウリル
   酸ジブチルスズで、造影材のAg−Cu−Sn系合金
   がAg70％−Cu5％−Sn25％（但し重量％）であ
   る特許請求の範囲第２項記載の印象材組成物。 ４ Cu−Sn系合金がCu80％−Sn20％（重量％）
   である特許請求の範囲第２項記載の印象材組成
   物。 ５ Ag−Cu−Sn系合金Ｘ線造影材がシリコン系
   もしくはビニルシリコン系印象材に対し最高60％
   （重量％）、望ましくは30〜40％（重量％）である
   特許請求の範囲第２項又は第３項記載の印象材組
   成物。 ６ カーボンブラツク、酸化鉄その他の金属酸化
   物より選ばれた着色材を更に含む特許請求の範囲
   第１項記載の印象材組成物。 ７ 着色材が１〜20％（重量％）である特許請求
   の範囲第６項記載の印象材組成物。