JPS6323584Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はエンジンの点火装置に関するものであ
り、エンジンが点火進角を行なつたときの衝撃
が、車体に伝わらないようにしたものである。

エンジン、特に４サイクルエンジンにおいて
は、低速から高速まで一定の点火時期でスパーク
プラグを点火させるよりは、ある回転数以上のと
きは電気位置を若干進める、いわゆる点火進角を
行なう方が、燃焼効率の点、および出力増大、あ
るいは燃費向上の点で望ましいとされる。このた
め、現在においてもエンジンの回転数が一定値に
達した後は、若干進ませた点火時期で点火をさせ
ている。

第１図に示すものは、従来、４サイクルエンジ
ンにおいて行なわれている点火時期特性である。
すなわち、エンジンの回転数が上昇するとき、回
転数がａに達したときから徐々に点火時期を進ま
せて行き、回転数がｂに達したときに最も進んだ
点火時期になるようにしてある。

このように点火時期を制御すれば、進角経過中
および最終位置において、エンジン本体に衝撃が
生ずることはないが、このような特性を得るため
には、次のように複雑な構造となるので、コスト
的にも問題がある。

すなわち、点火方式が接点式の場合には、ク
ランク軸またはクランク軸と同期して回転する軸
（たとえばカム軸）に遠心式ガバナーを取り付け
て実現する。無接点点火方式では、遠心式ガバ
ナーに磁石や誘導子を載せて実現する場合と、
ガバナーを用いず、電気的にピツクアツプコイル
からの出力波形を工夫して実現する場合、とがあ
る。

上記ないしのいずれの方法であつても、構
造または回路が複雑となりがちであり、したがつ
てコスト高となる問題がある。そこで第２図に示
すように、エンジン回転数が一定値ｃに達したと
きに瞬間的に点火時期を進める、いわゆるステツ
プ状の点火進角はどうかという検討がなされるこ
とになる。

このようにステツプ進角にすれば、その実現は
技術的にも容易に行なわれることになるので、コ
スト面でも有利なものとなるが、進角がステツプ
状であるがために、進角した瞬間に衝撃が発生
し、乗心地にも影響を与えるので、実用化されな
かつた。しかしながら、たとえ進角した瞬間に衝
撃が発生したとしても、それが車体に伝わらなけ
れば、なんら問題は生じないことになる。

本考案はこの点に鑑みてなされたものであり、
そのための手段として、自動遠心クラツチを用い
たコンデンサー充電方式のエンジンにおいて、こ
のエンジンの出力軸に連動して回転する磁石を設
けると共に、この磁石の回転位置近傍に、コンデ
ンサー充電コイルとは別に、この磁石が近接する
度に電圧が誘起されるピツクアツプコイルを設
け、このピツクアツプコイルの両端を整流回路を
介してサイリスターのゲートに接続し、このサイ
リスターのアノードとカソードを前記コンデンサ
ー充電コイルに並列に接続し、前記ピツクアツプ
コイルの巻数または取付位置を、前記サイリスタ
ーのトリガーレベルが別途設けた前記自動遠心ク
ラツチが接合する時点のエンジン回転数に対応す
る出力電圧よりは低く、かつ、アイドリング回転
数に対応する出力電圧よりは高い電圧となるよう
に数値設定した構成としたものである。本考案の
一実施例を第３図について説明すると、図示する
のはフライホイールマグネトを用いたコンデンサ
ー放電方式のエンジンの点火回路であつて、１は
フライホイールマグネトであり、２はその一部を
成し、自動遠心クラツチを用いたエンジンのクラ
ンク軸（図示せず）と一体に回転するローターで
ある。このローター２には磁石３が取り付けられ
ており、ローター２が回転したとき、このロータ
ー２の近傍に設けられたコンデンサー充電コイル
４の両端に起電力を発生するようになつている。

コンデンサー充電コイル４の一端は接地（車体
接地。以下同じ）されており、他端はダイオード
５を介して、コンデンサー６の一極とサイリスタ
ー７のアノードに接続されている。コンデンサー
６の他極と接地間にはイグニツシヨンコイル８の
一次側コイル９が接続されており、サイリスター
７のカソードは接地されている。イグニツシヨン
コイル８の二次側コイル１０にはスパークプラグ
１１が接続されている。

１２はピツクアツプコイルである。このピツク
アツプコイル１２もローター２が回転するときの
磁石３の回転軌跡に近接して設けられているもの
であり、磁石３の通過時にその両端間に起電力を
発生するものである。このピツクアツプコイル１
２の両端は、ダイオード１３，１４，１５，１６
から成る整流回路１７の入力側に接続されてい
る。この整流回路１７の正側の出力端はサイリス
ター７のゲートに接続されており、負側の出力端
子は接地されている。

このように構成されたこの装置において、ピツ
クアツプコイル１２の巻数または取付位置は適宜
選択し、サイリスター７のゲート電圧が次に述べ
る条件に適合するようにする。すなわち、自動遠
心クラツチが接合する時点のエンジン回転数より
は低く、かつ、アイドリング回転数よりは高い回
転数において、ステツプ状の点火進角が行なわれ
るように、タイミングと出力電圧（サイリスター
７のトリガーレベル）を適合させるのである。

第４図は本考案を適用した第３図の回路の作動
特性を示すものである。これを説明すると、横軸
上のｄはアイドリング回転数であつて、約1500r.
p.mであり、ｅはステツプ進角回転数であつて約
2000r.p.mであり、ｆはクラツチイン回転数であ
つて約2500r.p.mであり、さらにｇはクラツチタ
イト回転数であつて約3500r.p.mである。また縦
軸に示すように、点火時期は10゜と30゜の進角度を
変えるようになつている。

第５図ａ，ｂ，ｃは、ステツプ進角の時期を設
定するための第３図におけるサイリスター７のゲ
ートに与えられる電圧波形を示すものである。こ
れらの図において１８はトリガーレベルを示し、
ｈは点火時期を表わしている。そして第５図のａ
はステツプ進角前の状態を、またｂはステツプ進
角が行なわれた瞬時の状態を、さらにｃはステッ
プ進角後の状態を示している。

このようにして、ステツプ状の点火進角を、自
動遠心クラツチが接合する時点（クラツチタイト
時）のエンジン回転数よりは低く、かつ、アイド
リング回転数よりは高い回転数で行なうようにし
てある。この範囲に設定することにより、エンジ
ンには不調を来たすことがなく、かつ自動遠心ク
ラツチの接合前の点火進角のため、車体に衝撃が
伝達されないことになる。

本考案は上述のように構成したものであるか
ら、点火進角時にエンジンに衝撃が生じても、車
体へはその衝撃が伝達されないことになる。これ
によつて乗心地が損なわれない特長が生ずる。ま
たステツプ状の点火進角が採用できるので、安価
に実施できる特長もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の４サイクルエンジンの点火時期
特性を示すグラフ、第２図は本考案で実施する点
火時期特性を示すグラフ、第３図は本考案の一実
施例の回路図、第４図は第３図の回路の作動特性
を示すグラフ、第５図ａ，ｂ，ｃはサイリスター
のゲート電圧を示すグラフである。 １……フライホイールマグネト、２……ロータ
ー、３……磁石、４……コンデンサー充電コイ
ル、５，１３，１４，１５，１６……ダイオー
ド、６……コンデンサー、７……サイリスター、
８……イグニツシヨンコイル、１１……スパーク
プラグ、１２……ピツクアツプコイル、１７……
整流回路、１８……トリガーレベル。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 自動遠心クラツチを用いたコンデンサー放電方
   式のエンジンにおいて、該エンジンの出力軸に連
   動して回転する磁石を設けると共に、該磁石の回
   転位置近傍に、コンデンサー充電コイルとは別
   に、該磁石が近接する度に電圧が誘起されるピツ
   クアツプコイルを設け、該ピツクアツプコイルの
   両端を整流回路を介してサイリスターのゲートに
   接続し、該サイリスターのアノードとカソードを
   前記コンデンサー充電コイルに並列に接続し、前
   記ピツクアツプコイルの巻数または取付位置を、
   前記サイリスターのトリガーレベルが別途設けた
   前記自動遠心クラツチが接合する時点のエンジン
   回転数に対応する出力電圧よりは低く、かつ、ア
   イドリング回転数に対応する出力電圧よりは高い
   電圧となるように数値設定したことを特徴とする
   エンジンの点火装置。