JPS632290Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、超仕上盤、特に回転送り運動するワ
ークに対して砥石を振動させながら押し当てるよ
うにしたタイプの超仕上盤において該砥石を振動
させる砥石振動装置に関するものである。

一般に、超仕上盤は、振動する砥石を比較的小
さな力でもつてワークに押し当てながら両者を相
対的に運動させることにより、砥石の研削作用に
よつてワーク表面を精密仕上げ（超仕上げ）加工
するようにしたものである。

そして、従来、砥石を例えば回転送り運動する
円筒状ワークに対して振動させるようにした砥石
振動装置の１つとして、各々数個の砥石が取り付
けられたワーク送り方向の前後に配列した一対の
振動体を、両者の中間に配置されてモータで駆動
される偏心カムによつて互いに相反する方向に、
かつ同じストロークでもつて往復運動させること
により砥石を振動させる構造のものがよく知られ
ている。

しかしながら、上記従来のものにおいては、ワ
ーク送り方向の前後に配列した各振動体の運動ス
トロークが同じであるので、加工能率を上げるに
は、ワーク送り方向前側に位置する砥石の砥粒を
荒加工用として比較的粗く、またワーク送り方向
後側に位置する砥石の砥粒を仕上加工用として比
較的細かく設定して、砥石の砥粒の大きさをワー
ク送り方向前後位置で段階的に変える必要があ
り、そのため、使用砥石の種類数が増加するとと
もにその選択余地も自ずと限定され、砥石の選定
が難しく加工作業も複雑化するという問題があつ
た。

本考案はかかる点に鑑みてなされたものであ
り、上記のような砥石振動装置において、荒加工
用砥石が取り付けられた振動体を駆動するカムの
偏心量と、仕上加工用砥石が取り付けられた振動
体を駆動するカムの偏心量とを各々変えて、ワー
ク進行方向の前後位置において砥石をそれぞれ異
なつたストロークで振動させるようにすることに
より、上記ストロークが大きい砥石の砥粒の自生
作用を促進することにより砥石の切削能力を高め
てワークの荒加工を行う一方、ストロークの小さ
い砥石を目詰り状態に近い状態としてその磨き作
用により仕上加工を行うようにし、よつて振動バ
ランスを損うことなくワークに対する良好な加工
能率を確保しつつ、使用砥石の種類数を減少させ
ることができるようにした超仕上盤の砥石振動装
置を提供せんとするものである。

以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて詳
細に説明する。

第１図ないし第３図は本考案に係る超仕上盤の
砥石振動装置Ａを示し、上記超仕上盤はキヤリア
ロール（図示せず）等によつて円筒状ワークＷを
回転させながら第１図および第２図で右側から左
側へ向う方向に送り運動させて超仕上加工するよ
うに構成されている。図において、１は超仕上盤
の固定台、２は該固定台１の上面に固定されたブ
ラケツト、３は該ブラケツト２に背面部が固定さ
れた矩形箱状の基台であつて、該基台３の内部の
奥側壁左右位置にはそれぞれ左右方向に並行して
延びる上下一対の支持板４，４，…が一体に突設
され、該各支持板４の先端部には左右方向に延び
る直線状のガイド５が形成されている。

上記右側（ワークＷ送り方向前側）の上下のガ
イド５，５には荒加工用振動体６が、上側のガイ
ド５に対しては１個の支持部６ａにて、また下側
のガイド５に対しては２個の支持部６ｂ，６ｃに
てそれぞれガイド５との間にボール７，７，…を
介在せしめてなるリニアボールガイド結合により
左右方向に移動可能に支持されている。この荒加
工用振動体６の手前側端部は基台３に形成した開
口部３ａより基台３前方に突出して、その突出部
分には支持部材８が取り付けられ、該支持部材８
には各々下方に突出するピストンロツド９ａを備
えたエアシリンダよりなる３つの押圧シリンダ
９，９，…が蟻結合により固定され、該各押圧シ
リンダ９のピストンロツド９ａにはホルダ１０を
介して荒加工用砥石１１が装着され、該荒加工用
砥石１１を押圧シリンダ９の伸張動作に基づいて
ワークＷの表面に押圧接触させるように構成され
ている。

また、上記荒加工用振動体６の基台３内部分の
左側端部には、後述の荒加工用偏心カム２９の外
周部に接する１つの接触面１２ａを有する部材１
２が取りつけられている一方、右側端部にはブラ
ケツト１３が取り付けられ、該ブラケツト１３と
基台３に螺合固定した円筒状スプリング受け部材
１４との間にはスプリング１５が縮装されてお
り、該スプリング１５のばね力によつて上記荒加
工用振動体６を常時荒加工用偏心カム２９側（左
側）に付勢して、部材１２の接触面１２ａを該荒
加工用偏心カム２９のカム面に対して押圧接触さ
せるように構成されている。

これに対して、上記左側（ワークＷ送り方向後
側）の上下のガイド５，５には仕上加工用振動体
１６が、上記荒加工用振動体６と同様に、上側の
ガイド５に対しては１個の支持部１６ａにて、ま
た下側のガイド５に対しては２個の支持部１６
ｂ，１６ｃにてそれぞれリニアボールガイド結合
を介して左右方向に移動可能に支持されている。
この仕上加工用振動体１６の手前側端部は基台３
に形成した開口部３ｂより基台３前方に突出し
て、その突出部分には支持部材１７が取り付けら
れ、該支持部材１７には各々下方に突出するピス
トンロツド１８ａを備えたエアシリンダよりなる
３つの押圧シリンダ１８，１８，…が蟻結合によ
り固定され、該各押圧シリンダ１８のピストンロ
ツド１８ａにはホルダ１９を介して仕上加工用砥
石２０が装着され、該仕上加工用砥石２０を押圧
シリンダ１８の伸張動作に基づいてワークＷの表
面に押圧接触させるように構成されている。

また、上記仕上加工用振動体１６の基台３内部
分の右側端部には後述の仕上加工用偏心カム３
０，３０の各外周に接する２つの接触面２１ａ，
２１ａを有する部材２１が取り付けられている一
方、左側端部にはブラケツト２２が取り付けら
れ、該ブラケツト２２と基台３に螺合固定した円
筒状スプリング受け部材２３との間にはスプリン
グ２４が縮装されており、該スプリング２４のば
ね力によつて上記仕上加工用振動体１６を常時仕
上加工用偏心カム３０，３０側（右側）に付勢し
て、部材２１の接触面２１ａ，２１ａを該仕上加
工用偏心カム３０，３０のカム面に対して押圧接
触させるように構成されている。

上記基台３の奥側壁の中央位置にはベアリング
２５，２５，…を介してカム軸２６が、その軸心
を上記ガイド５，５，…と直角な面（垂直面）内
において前後水平方向に配置せしめて、かつ先端
部を基台３内の上記荒加工用振動体６と仕上加工
用振動体１６との間に位置せしめて支承され、該
カム軸２６の後端部はカツプリング２７を介して
モータ２８に連結され、該モータ２８でカム軸２
６を回転駆動するようにしている。

一方、上記カム軸２６の先端部には、その前後
略中央位置に上記荒加工用振動体６の部材１２の
接触面１２ａと接する荒加工用偏心カム２９が取
り付けられ、また該荒加工用振動偏心カム２９の
前後両側位置に各々上記仕上加工用振動体１６の
部材２１の各接触面２１ａに接する一対の対向す
る仕上加工用偏心カム３０，３０が上記荒加工用
偏心カム２９に対してそれぞれ回転角度で180゜の
位相差をもつて取り付けられ、該両偏心カム２９
および３０，３０は共に、偏心する円板体３１の
外周に、インナレース３２ａとアウタレース３２
ｂとの間にボール３２ｃ，３２ｃ，…を嵌挿して
なるベアリング状体３２を外嵌固定した構造に形
成されている。そして、上記荒加工用偏心カム２
９の偏心量e₁と各仕上加工用偏心カム３０の偏心
量e₂との関係はe₁＞e₂（例えばe₁＝１mm，e₂＝0.5
mm）の関係に設定されており、カム軸２６の回転
に伴つて、荒加工用偏心カム２９により荒加工用
振動体６を荒加工ストローク量（偏心量e₁の２倍
に等しい）でもつて振動させる一方、仕上加工用
偏心カム３０，３０により仕上加工用振動体１６
を上記荒加工用振動体６の荒加工ストローク量
2e₁より小さい仕上加工ストローク量（偏心量e₂
の２倍に等しい）でもつて振動させるように構成
されている。

また、上記仕上加工用振動体１６の支持部材１
７にはバランスウエイト３３が蟻結合により取り
付けられ、該バランスウエイト３３により、バラ
ンスウエイト３３自体をも含んだ仕上加工振動を
行う仕上加工振動系全体の運動質量M₂とそのス
トローク量2e₂との積2M₂e₂が、荒加工振動を行
う荒加工振動系全体の運動質量M₁とそのストロ
ーク量2e₁との積2M₁e₁に等しく（2M₁e₁＝
2M₂e₂）なるように設定されている。尚、３４お
よび３５はスプリング受け部材１４，２３に外嵌
螺合されてスプリング受け部材１４，２３の緩み
回動を防止する固定ナツトである。

次に、上記装置Ａの作動について説明すれば、
モータ２８の回転駆動によりカム軸２６が回転す
ると、該カム軸２６に取り付けられた荒加工用偏
心カム２９および仕上加工用偏心カム３０，３０
が回転し、上記荒加工用偏心カム２９の回転に伴
つて、その外周面に部材１２の接触面１２ａを介
して押圧接触する荒加工用振動体６、支持部材
８、押圧シリンダ９，９，…、荒加工用砥石１
１，１１，…等荒加工振動系の全体が左右方向に
荒加工ストローク量2e₁でもつて振動する。一方、
上記仕上加工用偏心カム３０，３０の回転に伴つ
て、その外周面に部材２１の接触面２１ａ，２１
ａを介して押圧接触する仕上加工用振動体１６、
支持部材１７、押圧シリンダ１８，１８，…、仕
上加工用砥石２０，２０，…等仕上加工用振動系
の全体が左右方向に仕上加工ストローク量2e₂で
もつて振動する。

この状態において、キヤリアロールによりワー
クＷを回転させながら右側から左側に送り運動さ
せ、同時に押圧シリンダ９，９，…および１８，
１８，…を伸張作動せしめて荒加工用砥石１１，
１１，…および仕上加工用砥石２０，２０，…を
各々ワークＷの表面に小さい押圧力で押圧接触さ
せると、各砥石１１，２０の研削作用によつてワ
ークＷの表面が超仕上加工される。

すなわち、その際、上記荒加工用砥石１１，１
１，…においては、その振動ストローク量が荒加
工ストローク量2e₁となつて比較的大きいので、
振動に伴つて砥石の自生作用が促進され、砥粒が
多量に劈開してその最大傾斜角が常に大に保持さ
れ、切削能力が増大する一方、仕上加工用砥石２
０，２０，…においては、その振動ストローク量
が仕上加工ストローク量2e₂となつて比較的小さ
いので、振動に伴つて砥粒が目詰り状態に近く変
化してその最大傾斜角が小となり、磨き効果が増
大する。したがつて、このように振動ストローク
量2e₁，2e₂の差によつて砥石１１，２０に切削作
用と磨き作用との異なる機能を発揮させることが
できるので、必要とする砥石１１，２０の種類数
は全体で１〜２種類で済み、従来に較べて大幅に
減少し、よつて砥石選定の容易化および加工作業
の簡略化を図ることができる。

また、上記荒加工用偏心カム２９と仕上加工用
偏心カム３０，３０とが回転角度にして180゜の位
相差をもつてカム軸２６に取り付けられているた
め、荒加工振動系と仕上加工振動系とは、一方が
左側に移動すると他方は右側に移動し、また一方
が右側に移動すると他方は左側に移動して相反す
る方向に同期しながら振動する。そのため、上記
荒加工振動系全体の運動質量M₁とストローク量
2e₁との積2M₁e₁および仕上加工振動系全体の運
動質量M₂とストローク量2e₂との積2M₂e₂が相等
しいことと相俟つて、慣性運動上の不釣合はなく
なり、振動バランスを保つことができ、異常振動
による加工精度の低下や騒音の発生等を防止する
ことができる。

さらにまた、カム軸２６に、荒加工振動系を駆
動する１つの荒加工用偏心カム２９と仕上加工振
動系を駆動する２つの荒加工用偏心カム３０，３
０とが、荒加工用偏心カム２９の前後両側位置に
仕上加工用偏心カム３０，３０が位置するように
交互に取り付けられているため、各カムを１つず
つ取り付けた場合のように荒加工振動系および仕
上加工振動系からカム軸２６に作用する反力によ
つてカム軸２６に曲げモーメントが生じることは
なく、カム軸２６の振動バランスを完全に保つこ
とができ、機械振動の発生を防止することができ
る。

加えて、荒加工用振動体６および仕上加工用振
動体１６は各々ガイド５，５，…に対してリニア
ボールガイド結合により支持されているため、両
者の結合支持が強固になつてその剛性が増し、両
振動体６，１６の高速振動が可能となり、加工を
能率良く短時間で行うことができる。

尚、上記実施例では、カム軸２６をガイド５，
５，…と直角な面（垂直面）内において前後水平
方向に配置したが、ガイドと直角な面内であれば
鉛直方向や斜め方向等いかなる方向に配置しても
よく、上記実施例と同様の作用効果を奏すること
ができ、設置スペースに応じて適宜選択すればよ
い。

また、上記実施例では、カム軸２６に取り付け
る荒加工用偏心カム２９の数を１つに、また仕上
加工用偏心カム３０の数を２つにしたが、逆に、
荒加工用偏心カムの数を２つに、また仕上加工用
偏心カムの数を１つに変更してもよく、その場合
には仕上加工用偏心カムの前後両側位置に荒加工
用偏心カムが位置するようカム軸に取り付ける必
要があるのは言うまでもない。

さらにまた、上記実施例では、荒加工用偏心カ
ム２９および仕上加工用偏心カム３０，３０とし
て、偏心する円板体３１の外周にベアリング状体
３２を外嵌固定した構造のものを用いたが、偏心
円板よりなる通常のカムを用いてもよいが、耐摩
耗性の点で上記実施例の如き構造が好ましい。

以上説明したように、本考案の超仕上盤の砥石
振動装置によれば、直線状のガイドが設けられた
基台と、上記ガイドに各々移動可能に支持された
荒加工用振動体および仕上加工用振動体と、該荒
加工用振動体に取り付けられた荒加工用砥石と、
上記仕上加工用振動体に取り付けられた仕上加工
用砥石と、上記荒加工用振動体と仕上加工用振動
体との間に先端部が位置するように上記ガイドと
直角な面内において基台に支持されたカム軸と、
該カム軸を回転駆動するモータと、上記カム軸に
設けられ、上記荒加工用振動体に接して荒加工用
振動体を荒加工ストロークで振動させる荒加工用
カムと、上記カム軸に上記荒加工用カムに対して
180゜の位相差をもつて設けられ、上記仕上加工用
振動体に接して該仕上加工用振動体を上記荒加工
ストロークより小さい仕上加工ストロークで振動
させる仕上加工用カムと、仕上加工振動系の質量
と仕上加工ストロークとの積が荒加工振動系の質
量と荒加工ストロークとの積に等しくなるように
仕上加工用振動体に取り付けられたバランスウエ
イトとを備え、上記荒加工用カムと仕上加工用カ
ムは、一方が他方の前後両側になるようにカム軸
に２個配設されたものであるので、慣性運動上の
不釣合や曲げモーメントの発生などなく振動バラ
ンスを良好に保ちながら、かつ超仕上加工におけ
る加工能率を良好に維持しながら、使用砥石の種
類数を大幅に減少させることができ、よつて砥石
選定の容易化および加工作業の簡略化を図ること
ができる等、実用上優れた効果を有するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施態様を例示するもので、第
１図は正面図、第２図は第１図の−線断面
図、第３図は第１図の−線断面図である。 Ａ……砥石振動装置、３……基台、５……ガイ
ド、６……荒加工用振動体、９，１８……押圧シ
リンダ、１１……荒加工用砥石、１５，２４……
スプリング、１６……仕上加工用振動体、２０…
…仕上加工用砥石、２６……カム軸、２８……モ
ータ、２９……荒加工用偏心カム、３０……仕上
加工用偏心カム、３３……バランスウエイト、Ｗ
……ワーク。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 超仕上盤の砥石を振動させる超仕上盤の砥石振
   動装置において、直線状のガイドが設けられた基
   台と、上記ガイドに各々移動可能に支持された荒
   加工用振動体および仕上加工用振動体と、該荒加
   工用振動体に取り付けられた荒加工用砥石と、上
   記仕上加工用振動体に取り付けられた仕上加工用
   砥石と、上記荒加工用振動体と仕上加工用振動体
   との間に先端部が位置するように上記ガイドと直
   角な面内において基台に支持されたカム軸と、該
   カム軸を回転駆動するモータと、上記カム軸に設
   けられ、上記荒加工用振動体に接して荒加工用振
   動体を荒加工ストロークで振動させる荒加工用カ
   ムと、上記カム軸に上記荒加工用カムに対して
   180゜の位相差をもつて設けられ、上記仕上加工用
   振動体に接して仕上加工用振動体を上記荒加工ス
   トロークより小さい仕上加工ストロークで振動さ
   せる仕上加工用カムと、仕上加工振動系の質量と
   仕上加工ストロークとの積が荒加工振動系の質量
   と荒加工ストロークとの積に等しくなるように仕
   上加工用振動体に取り付けられたバランスウエイ
   トとを備え、上記荒加工用カムと仕上加工用カム
   は、一方が他方の前後両側になるようにカム軸に
   ２個配設されていることを特徴とする超仕上盤の
   砥石振動装置。