JPS6114124B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

抗生物質を動物飼育の際の飼料の添加物として
用いることは既に知られている。 従来の抗生物質、例えばパシトラシン、オレア
ンドマイシンおよびバージニアマイシンなどは主
として単胃動物に用いられており、そしてそれら
は反芻動物における瘤胃消化に対する特異的な作
用は全く有しない。本発明によれば、サリノマイ
シン（Salinomycin）を含有する剤がセルロース
消化性動物種において特別な効果を有し、その消
化に必要な微生物叢に対して特異的に有利な影響
を与えることが見出された。 すなわち、本発明の対象は、サリノマイシンお
よびその生理学的に許容し得る塩を反芻動物およ
び同様な消化生理を有する動物種の栄養効率およ
び成長を改善する有効物質として用いることにあ
る。更に本発明の対象は、かかる有効物質を含有
することを特徴とする剤特に飼料およびそのよう
な剤の製造方法にある。 本発明は特に、反芻動物の消化生理を有する動
物、すなわち粗線維またはセルロースを消化でき
る動物に対する改良された飼料に関する。本発明
の対象とする動物は、前記定義のとおり反芻動物
それ自体のみならず例えば馬類および兎類をも包
含するものである。 サリノマイシン、その塩およびエステルは例え
ば英国特許第1378413号明細書および西ドイツ特
許出願公開第2353998号明細書に記載されてい
る。そこにはまたそれらをコクシジウム症治療剤
として用いることも記載されている。 本発明においてサリノマイシンの代りに、また
はそれと共に用いることのできる生理学的に許容
し得る塩としては、例えばアルカリ塩（特にナト
リウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩）、
アルカリ土類金属塩（特にマグネシウムまたはカ
ルシウム塩）などが挙げられる。 本発明によれば、サリノマイシン含有剤特に飼
料が反芻動物に対して飼料効率の改善および成長
の促進をもたらすことが見出された。飼料効率の
改良とは、より少量の飼料給与によつてすでに一
定の体重増加が達成されるということである。更
に本発明によれば、反芻動物の瘤胃において、酢
酸：プロピオン酸：酪酸の比が本発明による剤特
に飼料の形態の剤により影響されてエネルギー代
謝にとつて有用なプロピオン酸の割合が酢酸およ
び酪酸よりもはるかに高められ、それによつて本
質的に改良された栄養効率が達成されることが確
認された。特に重要なのは、蛋白供給のための窒
素源としてNPN化合物（非蛋白窒素）例えば尿
素、ビウレツト、りん酸ジアンモニウムなどを給
飼することは反芻動物飼育において通常行われて
いることであるが、この場合にも前述の効果が明
らかに得られるということである。 純物質としてのサリノマイシンに代えてその有
効物質を乾燥ミセルまたは粗製品として同様に投
与することもできる。 多くの場合に好ましい有効物質適用形態の１例
は飼料に有効物質を濃厚飼料の形で添加する形式
である。このような濃厚飼料（プレミツクス）は
例えば、有効物質または有効物質含有ミセルまた
は粗製品を生理学的に許容し得る固体状または液
体状担体と混合することにより製造できる。固体
状担体としては例えば精穀副生物例えば小麦粉、
ふすままたは脱油米糠、およびとうもろこし粉、
大豆粉、白陶土または炭酸カルシウムなどが挙げ
られる。液体状担体としては例えば生理学的塩溶
液、蒸留水および生理学的に許容し得る有機溶媒
などが挙げられる。適当な添加物質例えば乳化
剤、分散剤、懸濁剤、湿潤剤またはゲル化剤など
を添加することも可能である。これら濃厚飼料は
一般に約0.5〜約５％の有効物質を含むことがで
き、またその際使用目的に応じて前記有効物質濃
度を相当程度上回るかまたは下回ることもでき
る。 飼料と共に投与する場合には、プレミツクスを
混合、撹拌混合、振盪、磨砕などにより飼料と混
合するのが好ましい。その混合には粉末状濃厚飼
料を用いるのが特に好ましい。 本発明により用いられる剤を添加飼料または完
全飼料に添加することも可能であり、あるいはま
た１日分配量の一部に添加することも可能であ
る。 本発明により有効物質の添加される飼料として
は、例えば通常反芻動物の飼育に用いられる飼料
例えば穀物例えば大麦、からす麦、とうもろこし
および紫うまごやし、乾草またはそれらから調製
した混合飼料などが挙げられる。同様にして、飼
料として通常用いられるクラフト飼料または無機
物混合物、レツク塩（Salzlecke）または飼料ブ
ロツク、および液状飼料などを用いることもでき
る。牛用添加飼料は例えば、主成分として乾燥ビ
ートパルプ、とうもろこし粉、ひき割り大豆、糖
蜜およびからす麦殻ふすまおよび無機物混合物、
ふすまおよび尿素などを含むことができ、あるい
はまた羊用レツク塩は、例えば骨粉および食塩か
ら構成してもよい。 有効物質を例えばそのままかあるいは濃厚飼料
または懸濁可能な粉末として飲料水または他の飲
料例えば乳汁などに添加するなどして有効物質を
飼料に添加し且つ投与することも可能である。 飼料との混合はまた、飼料給与前、飼料給与中
または飼料給与後に本発明による剤を、例えば固
体状または液体状製剤例えば錠剤、カプセル剤、
顆粒剤、巨丸剤（Bolus）、液汁またはシロツプ
の形でか、あるいは前述の濃厚飼料の形で経口投
与することによつても実施できる。この方法で
は、本発明による重要な飼料との混合は適用直後
に胃内で行われ、それによつても同様にして栄養
効率の改善および成長増進という本発明効果を達
成することができる。 錠剤、カプセル剤、巨丸剤、ピル、顆粒剤など
の形で投与する場合には、製剤技術上通常知られ
ているのと同じ助剤および添加剤を添加すること
ができる。有効物質は、カプセル容量の充填のた
めに、例えば粉末状希釈剤例えば微結晶セルロー
ス、砂糖、またはでんぷんなどと混合することも
できる。錠剤の調製は同じく常法により諸物質例
えばセルロース、ラクトース、塩化ナトリウム、
でんぷんなど、表面活性剤例えばラウリル硫酸ナ
トリウムなど、結合剤、例えばゼラチン、でんぷ
ん、デキストリン、セルロース誘導体などを添加
して行うことができる。液状製剤の調製について
も、製剤技術上通常用いられる助剤例えば植物
油、コリドン（Kollidon）、セルロース誘導体、
特に懸濁化助剤または乳化剤、水などを用いるこ
とができる。サリノマイシンの水性懸濁液は、例
えばサリノマイシン粗製品または粉砕ミセルのほ
かに、カルボキシメチルセルロース、コリドン
25、エアロジル（Aerosil）、適当な緩衝物質およ
び水を含むことができる。 最も実際的な、従つて一般に好ましい有効物質
適用形式は飼料と共にそれを直接供与する形式で
ある。 本発明により用いられる剤の含有量は飼料種に
よつて異なる。該含有量は飼料種に応じて飼料１
Kgあたり0.5〜500mgであることができ、したがつ
て、体重１Kgおよび１日あたり0.02〜5.0mgのサ
リノマイシンという投薬量に相当することができ
る。好ましくは、飼料中のサリノマイシン含有量
は体重１Kgおよび１日あたり0.1〜1.0mgの投薬量
に相当するように選択することができる。しかし
ながら、適切な場合であれば前述の範囲を相当程
度に逸脱することももちろん可能である。有効物
質を経口用製剤の形で動物に直接適用する場合に
も同様にして投薬量を体重１Kgおよび１日あたり
前述の量に相当するように選択することができ
る。すなわち、例えば成牛に直接適用する製剤は
サリノマイシン約10〜500mgの有効物質量を含有
する。より小さな反芻動物例えば羊またはやぎな
どに投与すべき製剤は、それに応じて減量された
有効物質量を含有する。 次に実施例によつて本発明を例示するが、本発
明はこれら動物種および適用形式に限られるもの
ではない。 実施例 １ 個別飼養および自己飲水として家畜小屋で飼養
される肥育中の雄牛12頭を用いてサリノマイシン
による飼養実験を行つた。６頭はサリノマイシン
処理実験群とし、６頭は未処理対象群とした。実
験開始時の動物の平均体重は約350Kgであつた。
実験期間は８週間とし２週間おきに個別に体重測
定した。飼料はクラフト飼料を動物の栄養素要求
に従つて漸次増量させつつ（２〜４Kg／頭／日）
与えるほかに、とうもろこしサイレージ／（16〜
20Kg／頭／日）を与えた。クラフト飼料の組成は
次のとおりである。 大 麦 26％ からす麦 20％ とうもろこし 45％ 炭素飼料石灰 ２％ ホスタフオス（Hostaphos）（Na−Mg−Ca−ホ
スフエート） ４％ 尿 素 ２％ 重炭酸ナトリウム １％ 100％ でんぷん単位： 657でんぷん単位 消化性蛋白： 11.1％ サリノマイシン投与量については、前記クラフ
ト飼料（粉末状）と共に当該抗生物質100mg／
頭／日が、とうもろこし粉との２％濃厚飼料の形
で摂取されるようにした。結果は各表に示される
とおりであつた。 第１表は実験群および対照群での体重増加、な
らびにサリノマイシンにより達成された過剰増加
を比較対照したものである。

【表】 第２表は実験群および対照群での栄養効率、な
らびにサリノマイシンにより達成された改善率を
比較対照したものである。

【表】 ＊ 利用価＝でんぷん単位／Kg体重増加
第３表および第４表は、サリノマイシン群にお
ける瘤胃汁中低分子脂肪酸含有量の実験期間８週
経過後の変化を対照群と比較して示したものであ
る。含有量の測定には、試料をゾンデで採取しそ
してガスクロマストグラフイーにかけた。

【表】

【表】 第３表および第４表は、エネルギー代謝に有用
なプロピオン酸（C₃）の割合が酢酸（C₂）や酪酸
（C₄）よりも本質的に高められ、それによつて栄
養効率が著しく改善されることを示している。 実施例 ２ 肥育中の雄牛22頭を用いてサリノマイシンによ
る飼養実験を行つた。その際11頭は対照群としそ
して11頭は実験群とした。これら動物は家畜小屋
に入れて個別飼養および自己飲水とした。実験開
始時の平均体重は400Kgであり、実験期間は８週
とし２週間おきに個別に体重測定した。飼料はク
ラフト飼料を動物の栄養素要求に従つて漸次増量
させつつ（２〜４Kg／頭／日）支給するほか、と
うもろこしサイレージ（16〜20Kg／頭／日）を与
えた。クラフト飼料の組成は次のとおりである。

【表】 実験群のサリノマイシン投与量は各々100mg／
頭／日とし、その際抗生物質はとうもろこし粉と
の２％濃厚飼料の形で前記クラフト飼料と共に投
与されるようにした。結果は次表に示される。 第５表は実験群および対照群での体重増加なら
びにサリノマイシンにより達成された過剰増加を
比較対照したものである。

【表】 第６表は実験群および対照群での栄養効率、な
らびにサリノマイシンにより達成された改善率を
比較対照したものである。

【表】 第７表および第８表は、サリノマイシン群にお
ける瘤胃汁中低分子脂肪酸含有量の実験期間６週
経過後の変化を対照群と比較して示したものであ
る。測定は実施例１と同様にして行つた。

【表】

【表】 このプロピオン酸増加により、実施例１にすで
に記載したのと同じ結論が導かれる。 実施例 ３ 個別飼養および自己飲水として家畜小屋で飼養
される肥育中の雄牛（黒まだらの平地牛）25頭を
用いてサリノマイシンによる飼養実験を行つた。
実験開始時の平均体重は約260Kgであつた。実験
期間は20週とし、４週間ごとに個別に体重測定し
た。 飼料はクラフト飼料を動物の栄養素要求に従つ
て漸次増量させつつ（２〜４Kg／頭／日）を支給
するほか、とうもろこしサイレージ（16〜20Kg／
頭／日）を給与した。クラフト飼料の組成は次の
とおりである。

【表】

【表】 動物は次の群に分けた。 第Ｉ群：未処理の５頭（対照） 第群：各々100mgモネンシン（Monensin）／
頭／日で処理された６頭 第群：各々50mgサリノマイシン／頭／日で処理
された７頭 第群：各々100mgサリノマイシン／頭／日で処
理された７頭 実験群〜における抗生物質投与は毎日前記
クラフト飼料（粉末状）と共に行つた。結果は以
下のとおりである。 次の表は、４〜20週間の実験期間後にそれぞれ
体重測定した際の対照群および３つの実験群にお
ける平均体重増加および栄養効率を示す。実験群
には、絶対値のほかに、未処理対照群と比較した
相対値（％）を記載してある。この体重増加にお
いて、実験期間20週後には50mgまたは100mg／
頭／日のサリノマイシン投与によつて＋10％およ
び＋17.8％という投与量依存性の過剰増加が得ら
れたのに対して、モネンシン100mg／頭／日では
わずか＋0.2％の過剰増加をみるに過ぎなかつ
た。栄養効率は、前述の両サリノマイシン投与量
によつて（やはり投与量依存性の）＋9.0％および
＋15.5％の改善をみたのに対して、モネンシン
100mg／頭／日では＋5.4％の改善率が得られるに
過ぎなかつた。

【表】 実施例 ４ 個別飼養および自己飲水として家畜小屋で飼養
される肥育中の雄牛（赤まだらの平地牛）26頭を
用いてサリノマイシンによる飼養実験を行つた。
実験開始時の平均体重は約225Kgであつた。実験
期間は20週とし、４週間ごとに個別に体重測定し
た。 飼料はクラフト飼料を動物の栄養要求に従つて
漸次増量させつつ（２〜４Kg／頭／日）を与える
ほか、とうもろこしサイレージ（16〜20Kg／頭／
日）を支給した。クラフト飼料の組成は次のとお
りとした。

【表】 動物は次の群に分けた。 第群：未処理の６頭（対照） 第群：各々100mgモネンシン／頭／日で処理さ
れた６頭 第群：各々50mgサリノマイシン／頭／日で処理
された７頭 第群：各々100mgサリノマイシン／頭／日で処
理された７頭 実験群〜における抗生物質投与は毎日前記
クラフト飼料（粉末状）と共に行つた。結果は以
下のとおりである。 次の表は４〜20週間の実験期間後にそれぞれ体
重測定した際の対照群および３つの実験群におけ
る平均体重増加および栄養効率を示す。実験群に
は絶対値のほかに、未処理対照群と比較した相対
値（％）を記載してある。この体重増加におい
て、実験期間20週間後には、50mgまたは100mg／
頭／日のサリノマイシン投与によつて＋17.5％お
よび＋21.7％という投与量依存性の過剰増加が得
られたのに対して、モネンシン100mg／頭／日で
はわずか＋2.4％の過剰増加をみるに過ぎなかつ
た。栄養効率は、前述の両サリノマイシン投与量
によつて（やはり投与量依存性の）＋12.5％およ
び＋15.4％の改善をみたのに対して、モネンシン
100mg／頭／日では全く改善がみられなかつた。

【表】 実施例 ５

【表】 従つて添加飼料１Kgは25mgのサリノマイシンを
含有する。放牧牛は１日あたり２〜４Kgの添加飼
料、すなわち50〜100mgのサリノマイシンを摂取
する。 実施例 ６ 羊用レツク塩 骨 粉 ６Kg 食 塩 ３Kg サリノマイシン−ミセル（１％プレミツクスとし
て） １Kg 10Kg 10Kgのレツク塩は10mgのサリノマイシン、すな
わち羊用１日投与量を含有する。 実施例 ７ 牛用巨丸剤 微結晶セルロース 8000mg とうもろこしでんぷん 1200mg メチルヒドロキシエチルセルロース 900mg ステアリン酸マグネシウム 300mg けい酸コロイド（エアロジル） 400mg Na−アミロペクチン−グリコレート 1000mg 50％サリノマイシン粗製品 200mg 12000mg 12ｇの１巨丸剤は100mgのサリノマイシン、す
なわち牛１頭あたりの１日投与量を含有する。 実施例 ８ 羊用錠剤 微結晶セルロース 900mg とうもろこしでんぷん 200mg カルボキシメチルセルロース 150mg ステアリン酸マグネシウム 50mg タルク 50mg エアロジル 350mg Na−アミロペクチン−グリコレート 180mg NaCl 100mg 50％サリノマイシン粗製品 20mg 2000mg 2.0ｇの１巨丸剤は10mgのサリノマイシン、す
なわち羊１頭の１日投与量を含有する。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ サリノマイシンまたは生理学的に許容し得る
   塩の形態でのサリノマイシンを含有することを特
   徴とする反芻動物の栄養効率および成長の改善
   剤。 ２ 該剤が固体状または液体状の経口適用組成物
   である前記特許請求の範囲第１項記載の剤。 ３ 塩としてアルカリ塩またはアルカリ土類金属
   塩を含有する前記特許請求の範囲第１項記載の
   剤。 ４ アルカリ塩としてナトリウム塩、カリウム塩
   またはアンモニウム塩、アルカリ土類金属塩とし
   てマグネシウム塩またはカルシウム塩を含有する
   前記特許請求の範囲第３項記載の剤。 ５ サリノマイシンをミセルまたは粗製品として
   含有する前記特許請求の範囲第１項記載の剤。 ６ 該剤中のサリノマイシン濃度を0.02〜5.0
   mg／Kg体重／日に相当するように選択する前記特
   許請求の範囲第１〜５項のいずれかの１項に記載
   の剤。 ７ サリノマイシンまたはその生理学的に許容し
   得る塩を液体状または固体状の飼料またはガレヌ
   ス助剤および添加剤と混合し、かくして得られた
   混合物を経口投与に適した適用剤型とすることを
   特徴とする反芻動物の栄養効率および成長の改善
   剤の製造方法。 ８ 有効物質を濃厚飼料（プレミツクス）の形で
   飼料に添加する前記特許請求の範囲第７項記載の
   方法。 ９ サリノマイシンをミセルの形でまたは粗製品
   として用いる前記特許請求の範囲第７または８項
   記載の方法。