JPH1199331A - 吸着剤及びその製造方法 - Google Patents

吸着剤及びその製造方法

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JPH1199331A
JPH1199331A JP10078876A JP7887698A JPH1199331A JP H1199331 A JPH1199331 A JP H1199331A JP 10078876 A JP10078876 A JP 10078876A JP 7887698 A JP7887698 A JP 7887698A JP H1199331 A JPH1199331 A JP H1199331A
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JP
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adsorbent
silica gel
temperature
voc
sample
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JP10078876A
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English (en)
Inventor
Takashi Suzuki
崇 鈴木
Yoshihisa Sakurai
敬久 櫻井
Takashi Yoshizawa
隆 吉澤
Tomohiro Yoshinari
知博 吉成
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COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
Original Assignee
COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
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Publication date
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    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/20Air quality improvement or preservation, e.g. vehicle emission control or emission reduction by using catalytic converters

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  • Separation Of Gases By Adsorption (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高いVOC可逆吸着能と高い疎水化能とを兼
ね備えた経済的なVOC−PSA用吸着剤を提供する。 【解決手段】 本VOC−PSA用吸着剤は、カルボン
酸類及びその誘導体、アルデヒド類及びその誘導体、並
びに熱分解性高分子有機化合物よりなる群から選ばれた
1種又は2種以上の有機化合物を原料シリカゲルに吸着
剤基準で1〜30重量%添加し、次いで400〜750
℃の範囲の温度で熱処理して得た、比表面積が450〜
700m2 /g及び平均細孔径が1.7〜5.5nmの
多孔質成形シリカゲルからなる、炭素数が1から12の
揮発性有機化合物を選択的に吸着する吸着剤である。本
吸着剤は、水蒸気に対するVOC選択性が高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素数が1から1
2の揮発性有機化合物を選択的に吸着する吸着剤、更に
詳細には、高いVOC可逆吸着能と高い疎水能とを合わ
せ持つ、特に圧力変動吸着分離法(Pressure Swing Ads
orption, 以下PSA法)により揮発性有機化合物(Vol
atile Organic Compounds、以下VOC)を回収する際
の吸着剤として最適な吸着剤及びその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ガソリン、塗装用有機溶剤、洗浄用塩素
系有機溶剤等には、蒸気圧が高い液状の有機化合物が多
量に含まれている。これらは、揮発し易い性質を有する
ので、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound
s、以下、簡単にVOCと言う)と呼ばれている。今日
では、VOCが、ガソリン等の輸送用燃料の他に、塗
装、印刷、洗浄等の種々の分野で大量に用いられ、これ
らからVOC蒸気が大気中に揮発、拡散している。空気
中のVOCは、紫外線に照射されると、たとえ低濃度で
あっても、酸素と反応して光化学スモッグの原因となる
オキシダント(オゾン、過酸化物を始めとする酸化性物
質の総称)を生ずる。更に、生じたオゾンが、窒素酸化
物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等と反応し、酸性
雨の原因となる硝酸、硫酸を生成する。このように、高
濃度のVOCは、勿論のこと、比較的低濃度のVOCで
あっても、大気環境に与える影響を無視できなくなり、
光化学スモッグによる健康問題や酸性雨による森林破壊
などが深刻な欧米を中心に、大気中へのVOCの放散が
厳しく規制されている。我が国でも、大気汚染の深刻な
工業地域を擁する地方自治体では、条例による規制が始
まっており、今後、規制強化や規制地域が拡大していく
ものと考えられる。
【0003】しかし、実際には、これまでVOCによる
大気環境への影響があまり注目されてはいなかった関係
から、VOCについての関心が低く、そのために、VO
Cの回収技術も殆ど開発されていなかった。強いて従来
のVOC回収技術を挙げるとすれば、工場内での作業環
境の改善や近隣への悪臭防止等の観点から、自動車製造
会社の塗装工場、大手の印刷会社の大規模印刷工場等で
蓄熱燃焼装置が設置されているが、それは、VOC発生
量が多く、しかも高濃度のVOCの回収に限られてい
る。従って、大気環境保全の観点から一般的な事業所
で、このような蓄熱燃焼装置を採用するのは現実的では
ない。一方、大気環境保全を推進するために、ガソリン
スタンド、燃料油出荷設備、油槽所、クリーニング業、
塗装業等の小規模な一般的VOC排出源から大気中に排
出されるVOCを回収する実用的な技術の開発が、強く
要望されている。
【0004】そこで、圧力変動吸着分離法(PSA)に
よる回収装置は、装置が小さくて済み、運転及び保守も
容易であることから、VOC回収に好適なプロセスと注
目されているが、PSA法の性能を最大限発揮させるた
めには、回収対象に適した吸着剤を充填することが重要
であるにもかかわらず、問題は、現在のところ、VOC
回収に好適な高性能PSA用吸着剤が見当たらないこと
である。また、ガソリンスタンド、油槽所、燃料油出荷
設備等の一般的なVOC排出源から排出されたVOC回
収対象ガスは、その量が時間によって変化したり、回収
対象ガス中に含まれるVOC濃度が変動したりするの
で、PSA法によりVOCを効率的に回収するには、そ
れらの変動要因を考慮することも重要である。
【0005】大気中に放出され易いVOC分子、換言す
ると蒸気圧の高いVOC分子ほど分子サイズが小さいと
いう傾向があり、このようなな分子は、吸着剤の小さい
細孔内で毛管凝縮して比較的吸着され易いと考えられ
る。吸着能の観点から、活性炭は比表面積1000m2
/g以上の高表面積と小さい細孔(micro pore)を有し、
耐湿度性も優れているものの、空気とVOC分子が可燃
性物質の活性炭に接触するということから、安全面での
懸念が指摘されており、国内でVOCの回収装置に使用
することは現実的でない。換言すれば、この安全性の問
題を解決するためには、高表面積で小さい細孔を有し、
飽和水蒸気の存在下であっても空気中のVOC分子を吸
着し、しかも無機系不燃性の吸着剤(不燃性吸着剤と略
記する)が必要である。
【0006】吸着能に関して活性炭を上回る無機系不燃
性吸着剤は、今のところ、殆ど見あたらないものの、現
在注目されているものに、ハイシリカゼオライト(HS-Ze
olite)がある。ハイシリカゼオライトは、500m2
g付近の表面積を有しており、無機系不燃性吸着剤の中
では表面積の大きな部類の吸着剤である。しかし、シリ
カ/アルミナ比(SiO2/Al2O3比)が低いために、アルミ
ナによる酸性質が発現して水との親和性が高く、空気中
の水分を選択吸着して自壊するという問題がある。そこ
で、酸抽出等の処理によって結晶破壊を起こさずに、ハ
イシリカゼオライトを脱アルミ処理し、比表面積等の物
性を極力損ねないように疎水化したものを、VOC−P
SA用吸着剤として使用する試みが提案されているが、
脱アルミ処理のコストが嵩み、経済的に引き合わない。
【0007】ハイシリカゼオライトの例からも分かるよ
うに、酸化ケイ素(SiO2)は疎水性物質であるが、実際に
は、シリカゲル(SiO2)表面には親水基(シラノール基:
SiOH)が存在するために、極めて吸水性が高く、つまり
VOC−PSA吸着剤としてシリカゲルをそのまま使用
することは出来ない。
【0008】シリカゲルの疎水能を高めるために、表面
シラノールをメチル化して疎水化する方法がある。これ
はメトキシトリメチルシラン(CH3OSi(CH3)3)、ヘキサメ
チルジシラザン((CH3)6Si2NH) 、ジフェニルジクロロシ
ラン((C6H5)2SiCl2)等のケイ素系有機化合物をシリカゲ
ルに接触させ、表面のシラノール基とカップリングさせ
て、シラノール基をSiO-Si-Rn(R:アルキル基、また
はフェニル基、nは自然数)として疎水化する方法であ
る。この方法によれば、シリカゲルをほぼ完全に疎水化
することができるが、比表面積等の吸着能に係わる物性
低下が著しく、結果として、VOC吸着量が小さく、吸
着剤の充填量が多くなって、却って吸着剤コストが嵩
む。これに加えて、疎水化剤のケイ素系有機化合物は、
高価な上に、有害な揮発性化合物でもあることから取扱
いに注意を要すために、吸着剤の製造面でも、経済性と
安全性の問題を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】VOC回収設備に限ら
ず、環境保全設備は、導入する企業に新たなコスト負担
を強いるために、設備コスト及び運転コストが低いこと
が重要であって、PSA法では、運転コストに占める吸
着剤コストのウェイトが高いことを考えると、安価な吸
着剤を開発することが極めて重要である。しかし、上述
のように、ハイシリカゼオライトや、シランカップリン
グ法による疎水化したシリカゲルのコストは高く、VO
C−PSA用吸着剤として使用するのは経済的に引き合
わない。そこで、PSA法によるVOC回収装置の経済
性を高めるために、VOCを効率良く、安全に回収し、
しかも安価で長期の使用に耐える吸着剤、換言すれば表
面積が大きく、飽和水蒸気の影響を受け難い不燃性吸着
剤の提供が強く求められている。
【0010】よって、本発明の目的は、高いVOC可逆
吸着能と高い疎水能とを兼ね備えた経済的なVOC−P
SA用吸着剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、吸着工程
及び脱着工程を繰り返すPSA用VOC吸着剤として必
要な条件は、(1)吸着剤原料が安価なシリカ、又はシ
リカゲル等の材料であること、(2)VOC可逆吸着量
が大きいこと、及び(3)吸着剤の強度を長期間にわた
り維持するために疎水性が高いことであると認識し、研
究の結果、次の知見を得た。即ち、ある特定の物性を有
するシリカ又はシリカゲルを厳密に温度管理しながら、
熱処理又は焼成処理を施すことによって疎水性に富んだ
VOC−PSA用吸着剤を経済的に生産できることが判
った。そして、熱処理又は焼成処理の間に、シリカやシ
リカゲル素材が持つ吸着能にとって重要な物性が低下す
ること、更に、特定の有機化合物をシリカ又はシリカゲ
ルに熱処理の前に添加することにより、物性低下を抑制
できることを見い出した。これにより、安価な吸着剤原
料であるシリカ又はシリカゲルを使用して、高いVOC
可逆吸着能と高い疎水能とを合わせ有する吸着剤を実現
することを本発明者は見い出した。
【0012】上記目的を達成するために、本発明に係る
吸着剤は、カルボン酸類及びその誘導体、アルデヒド類
及びその誘導体、並びに熱分解性高分子有機化合物より
なる群から選ばれた1種又は2種以上の有機化合物を原
料シリカゲルに吸着剤基準で1〜30重量%添加し、次
いで400〜750℃の範囲の温度で熱処理して得た、
比表面積が450〜700m2 /g及び平均細孔径が
1.7〜5.5nmの多孔質成形シリカゲルからなる、
炭素数が1から12の揮発性有機化合物を選択的に吸着
することを特徴としている。
【0013】本発明でVOCとは、炭素数が1から12
の揮発性有機化合物ガスを言い、VOC吸着能とはVO
Cを吸着する能力を言う。なお、揮発性有機化合物と
は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、含酸素有機化合物
を意味する。含酸素有機化合物とは、化学式中に、−O
−及び/又は=Oを含む有機化合物であって、例えばア
ルコール、エーテル、エステル、カルボン酸、ケトン、
アルデヒド等をその例として挙げることができる。
【0014】また、本発明に係る吸着剤の製造方法は、
シリカを主成分とし、炭素数が1から12の揮発性有機
化合物を選択的に吸着する吸着剤の製造方法であって、
カルボン酸類及びその誘導体、アルデヒド類及びその誘
導体、並びに熱分解性高分子有機化合物よりなる群から
選ばれた1種又は2種以上の有機化合物を原料シリカゲ
ルに吸着剤基準で1〜30重量%添加させる添加工程
と、化合物を添加したシリカゲルを400〜750℃の
範囲の温度で所定時間保持する熱処理工程とを有するこ
とを特徴としている。
【0015】好適には、添加工程を経たシリカゲルを成
形してシリカゲル成形体を得る成形工程を熱処理工程の
前に有する。更に、熱処理工程では、化合物を添加した
シリカゲルを0.5〜20℃/分の平均昇温速度で所定
の温度まで昇温する。
【0016】原料シリカゲル 本発明の吸着剤の原料として使用するシリカゲルは、シ
リカ(SiO2)のコロイド粒子からなる乾燥ゲルであれば良
く、例えば無定型二酸化ケイ素(=シリカ[SiO2] )の
粒子(一次粒子)が無数に接合し、多孔質構造を形成し
たエアロゲル(Aerogel)、このマトリックス中に水を一
部含有しているもの、結晶水を持つもの、及びオルトケ
イ酸(H4SiO4 等)の脱水縮合による固体状のコロイド粒
子(colloid particle)のゲル様集合体等を使用できる。
本発明において吸着剤原料として使用するシリカゲル
は、市販のシリカゲルやシリカをそのまま用いることが
出来る他、ケイ酸ソーダ(水硝子)と鉱酸(硫酸、塩酸
等)を混合してシリカハイドロゾルを調製し、ゲル化さ
せて得たシリカゲルでも良く、またケイ酸エチル(Si(O
C2H5)4)等のアルコキシドを加水分解、重縮合させてゲ
ル化させて得たシリカゲルでも良い。
【0017】原料シリカゲルとしては、窒素分子をプロ
ーブとしてBET法で測定した比表面積が500m2
g以上、平均細孔径が5nm以下のシリカゲルが好まし
く、比面積が680m2 /g以上、平均細孔径が2nm
以下のシリカゲルが更に好ましく、比面積が760m2
/g以上、平均細孔径が2nm以下のシリカゲルが一層
好ましい。比表面積の上限に関する制限は無いが、現在
実質的に入手可能な上限は、800〜1000m2 /g
と思われる。逆に比表面積が500m2 /g未満のシリ
カゲルを疎水化した場合には、VOC分子の可逆吸着量
(δq)が不充分となる虞がある。
【0018】シリカゲルは、成形体の場合、球状、円柱
状、中空状、錠剤状などの他にも、各種形状のものを好
ましく使用でき、形状に関する制限はない。粉末の場合
には、後述の成形工程で支障が生じないように、50〜
200メッシュの篩を通過する粒径が好ましく、100
〜200メッシュの篩を通過する粒径がより好ましい。
なお、成形に当たり、バインダー等を添加しても差し支
えない。
【0019】第2成分 シリカゲルに添加する成分は、カルボン酸類及びその誘
導体、アルデヒド類及びその誘導体、並びに熱分解性有
機高分子化合物よりなる群から選ばれた1種又は2種以
上の有機化合物であって、以下、シリカゲルに添加する
成分を第2成分と言う。
【0020】カルボン酸類としては、カプリル酸、カプ
リン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸等に代表される脂肪族モノカルボン酸類、フ
ェニル酢酸、トルイル酸、安息香酸等に代表される芳香
族モノカルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸、シク
ロペンタンカルボン酸等に代表される脂環式モノカルボ
ン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シュ
ウ酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸等
に代表されるジカルボン酸類、ヒドロキシル基を有す
る、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、ト
ロバ酸等のオキシ酸類を好ましく使用することが出来
る。また、例えば、アルキル基を分枝させるような異性
化、アルキル化、フェニル化等のカルボン酸類の誘導体
化は、カルボン酸類の物性を変える必要に応じて行うこ
とを妨げない。
【0021】アルデヒド類としては、アセトアルデヒ
ド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレル
アルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド、ト
ルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキザール等を
好ましく使用できる。また、カルボン酸類と同様に、ア
ルデヒド類の物性を変える必要が生ずるのであれば、誘
導体化、異性化等を適宜実施することを妨げない。
【0022】熱分解性高分子有機化合物とは、400〜
750℃の範囲の温度で分解する高分子有機化合物を言
い、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸
ビニル(PVAc)、部分鹸化ポリ酢酸ビニル(p−P
VAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メラミン
ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドホルムアルデヒド樹
脂、シクロデキストリン(CD)、酢酸セルロース、メ
チルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CM
C)を好ましく用いることが出来る。熱分解性高分子有
機化合物の分子量(重合度)は、入手の難易、価格、性
状などを考慮して、適宜選択すれば良い。
【0023】第2成分の添加方法 第2成分のシリカゲルへの添加方法としては、乾式混
練、湿式混練及び含浸法を好ましく使用することが出来
る。乾式混練法による場合には、シリカゲル粉末と第2
成分粉末を自動乳鉢等の混合機を用いて充分混練すれば
良い、また、湿式混練法による場合には、シリカゲル粉
末、第2成分の他に溶媒又は分散媒を添加して混練し、
成形工程の前に乾燥する。尚、第2成分が液状の場合は
溶媒、分散媒の添加を省略しても良い。
【0024】含浸法による第2成分の添加は、シリカゲ
ル成形体及びシリカゲル粉末の両方に適用できる。以下
に、第2成分の溶媒として水を用いた例を挙げて説明す
る。水以外の溶媒を用いる場合も、これに準ずる。 1)第2成分の添加に先立って予めシリカゲルの飽和吸
水量を次のような手順で求める。 a) 先ず、シリカゲルを乾燥する。 シリカゲルを乾燥する際、シリカゲル粉末の場合は、8
0〜200℃で1〜3時間加熱乾燥を施せば良い。シリ
カゲル成形体の場合は、後述の含浸工程で使用する溶媒
に浸漬し、含浸時間内に割れが発生しないものについて
は、シリカゲル粉末と同様に乾燥処理だけで良い。一
方、含浸時間内に割れが発生するものについては、割れ
防止のために予備加熱を実施する。加熱温度及び加熱時
間は、シリカゲルの物性、用いる溶媒の種類によって異
なり一概に決まらないが、通常、300〜400℃で3
0〜60分間行う。尚、シリカゲル成形体が割れ難い場
合、又は割れ難い溶媒を選択した場合には、予備加熱は
省略できる。 b)次いで、シリカゲルの重量を精秤する。 c)シリカゲルに含水させ、飽和吸水量を求める。 乾燥又は予備加熱を終えたシリカゲルを室温まで冷却
し、次いでビュレットから水を滴下し、シリカゲルに充
分吸水させて、シリカゲル重量あたりの飽和吸水量を測
定する。飽和吸水量は、ピペットやスポイト等から水を
滴下して充分に吸水させたシリカゲルの重量を天秤で測
定し、それからシリカゲル自体の重量を差し引いて求め
る。
【0025】2)第2成分を含浸させる。 第2成分を含浸させる際には、飽和吸水量を求めたとき
と同様にして、シリカゲルを充分に乾燥する。即ち、シ
リカゲル粉末を用いる場合には乾燥処理を、シリカゲル
成形体を用いるときは乾燥処理及び必要に応じて加熱処
理を所定時間施す。含浸させるシリカゲルの飽和吸水量
と同じ量の第2成分の水溶液を調製し、この水溶液にシ
リカゲルを0.5時間〜1時間浸漬後、水分を除去し、
次いで乾燥する。吸着剤の製造量、溶媒の種類によって
乾燥条件は異なるが、第2成分の分解温度未満で1〜2
4時間程度で乾燥し終えるのが実用的である。
【0026】含浸法に用いる第2成分の溶媒として、水
以外にも、第2成分が溶解し易いものを選択することが
できる。例えば、アルコール、ケトン、飽和炭化水素、
脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、不飽和炭化水素など
から、第2成分の溶解度が充分であり、除去し易い溶媒
を適宜選択すれば良い。前述のように、シリカゲル成形
体を用いるときには、ひび割れを起こさない、又は起こ
し難い溶媒を選択することが望ましい。
【0027】第2成分の量は、吸着剤基準で1〜30重
量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましく、5〜
20重量%が最も好ましい。1重量%未満では、疎水化
効果、及び原料シリカゲルの物性値を維持する効果が共
に乏しく、逆に30重量%を超過すると、熱処理の段階
で未分解分が残留したり、逆に吸着剤の物性を損なう可
能性がある。
【0028】粉末状のシリカゲルを用いた場合には、第
2成分を添加した後で成形する。成形方法は、圧縮成
形、押出成形、造粒等の既知の方法を好ましく用いるこ
とが出来る。形状は、円柱状、球状、中空状など、吸着
プロセスに応じて選択すればよい。大きさは、特に限定
されないが、1.5mm〜10mm程度が実用的な寸法
と考えられる。
【0029】熱処理 熱処理工程では、第2成分を添加したシリカゲルを空気
中で加熱して所定の温度範囲に昇温し、引き続きその温
度範囲で保持する。熱処理の温度は、400〜750℃
が好ましく、450〜680℃がより好ましく、500
〜680℃が最も好ましい。400℃未満での加熱で
は、疎水効果が不充分であり、逆に、750℃を超過し
た場合には疎水化はされるものの、表面積収縮などの物
性低下が著しく、VOCの可逆吸着量が小さくなるので
好ましくない。熱処理の温度範囲まで昇温する際の平均
昇温速度は、0.5℃/分〜20℃/分が好ましく、
1.5℃/分〜15℃/分がより好ましく、3℃/分〜
10℃/分が最も好ましい。0.5℃/分未満では、時
間がかかり過ぎて生産性が低く、経済的ではない。逆
に、20℃/分より速く昇温すると、シリカゲル成形体
に割れが発生するおそれがある。また、実際の生産規模
では20℃/分は相当早い部類に入り、上限と考えて良
い。昇温過程では、水(水蒸気)や第2成分の分解ガス
が発生するので、途中で昇温速度を変えたり、途中のあ
る温度で暫時保持しても良い。
【0030】直径又は一辺の長さが3mm以上のシリカ
ゲル成形体に550〜570℃以上の温度で熱処理を施
すと、外側と内側の温度差によりシリカゲル成形体にひ
び割れを生ずる可能性が高くなる。シリカゲル成形体に
ひび割れが生ずる場合には、550〜570℃から更に
高い温度に昇温する際の昇温速度を0.5〜7℃/分以
下、好ましくは0.5〜5℃/分、さらに好ましくは
0.5〜3℃/分に設定することによって、ひび割れを
ほぼ完全に防止出来る。
【0031】所定温度領域に到達後にその温度でシリカ
ゲル成形体を保持する時間は、処理量にもよるが、2〜
5時間が好ましく、より好ましくは3〜4時間である。
保持時間が2時間より短いと、吸着剤の強度(strength)
が不足すること、添加物の未分解物が残存すること、疎
水化が不充分になること等の恐れがある。また逆に、保
持時間が5時間より長くしても、時間延長による更なる
性能改善は期待できず、技術的意義が無いばかりでな
く、生産性が低下する。
【0032】上述のようにして、第2成分を添加し、熱
処理を施して得たVOC−PSA用吸着剤の比表面積
は、450〜700m2 /gが好ましく、500〜70
0m2/gがより好ましく、550〜700m2 /gが
最も好ましく、平均細孔径は1.7〜5.5nmが好ま
しく、2.0〜4.5nmがより好適である。細孔容積
は0.2〜0.7ml/gが好適である。比表面積が、
450m2 /gを下回るときには、VOCの可逆吸着量
が小さくなり、実使用面で吸着剤の充填量が増加し、コ
ストが嵩むという問題が生じる。逆に、比表面積の上限
は高いほど好ましいものの、入手可能な原料シリカゲル
の比表面積が800m2 /g程度であることから、70
0m2 /gが実質的な上限と見なせる。平均細孔径が
1.7nmを下回るときには、分子サイズが大きい、従
って分子量の大きいVOC分子を吸着することが難しく
なる。逆に、平均細孔径が5.5nmを超えるときに
は、毛管現象が起こり難くなる等の理由から、可逆吸着
量が減少する傾向にあるからである。細孔容積が0.2
ml/gを下回るときには、可逆吸着量が少なくなり過
ぎる傾向にある。一般的に細孔容積が大きくなると比表
面積が小さくなる傾向があるので、逆に、細孔容積が
0.7ml/gを超えるときには、必要とする比表面積
を確保することが難しくなる。また、細孔容積が大きく
なると、毛管現象が起こり難くなるという欠点もある。
【0033】第2成分を加えたことによる疎水効果の発
現機構の詳細は、不明であるものの、熱処理の間に第2
成分が分解し、例えばメチルラジカル(アルキルラジカ
ル)のような反応性の分解活性種が生成し、シリカゲル
表面のシラノール基のような親水基(SiOH)と何らかの
反応を起こし、表面に疎水性のメチル基(アルキル基)
が生じるような機構が推定できる。また、カルボン酸
類、アルデヒド類、熱分解性高分子の官能基(functiona
l group)がシリカゲル表面の親水基(SiOH基)と相互作
用して、親水基近傍で分解活性種が生成し、表面が疎水
化されるとも推定できる。これに加えて、加熱によりシ
リカゲル表面の親水基が脱水縮合し、一種のエーテル結
合を形成することも考えられ、これらが相俟って疎水効
果が発現するものと考えられる。
【0034】また、400〜500℃程度の低温域での
熱処理では、第2成分とシリカゲル表面の親水基の反応
により疎水効果が発現し、この温度域を超えた場合は、
第2成分と親水基の反応による疎水化と、熱による親水
基の縮合の両方によって疎水効果が発現するものと考え
られる。500℃以上の高温域での熱処理の場合、第2
成分の熱分解により生じた気体成分がシリカゲル成形体
内部から放散して多孔性を保ち易くする結果、加熱によ
る焼結(sintering)作用が抑制され、原料シリカゲルの
原物性を比較的良好に保つことできる。本発明では、高
温域での熱処理下でもシリカの物性を保つことができる
ので、シリカゲル成形体表面のシラノール基の分解、縮
合及び表面に一部残存した疎水性のアルキル基等によ
り、疎水化が効果的に発現する。このように、第2成分
をシリカゲル成形体又はシリカゲル粉末に添加したあと
成形し、かつ熱処理を施すことにより、疎水効果と物性
維持効果が共に発現し、極めて優れた性能を示すVOC
−PSA用吸着剤が得られる。
【0035】吸着剤のVOC選択率 本発明で言う吸着剤のVOC選択率とは、吸着剤に吸着
された水蒸気及び揮発性有機化合物の吸着量のうち、揮
発性有機化合物の吸着量の割合を示す比率であって、次
式で定義される値である。 VOC選択率={(A)/(A+B)}×100 ここで、Aは、温度20℃での揮発性有機化合物の飽和
蒸気圧の1/10の圧力下、温度20℃における吸着剤
への揮発性有機化合物の平衡吸着量(ml/g(stp))
である。Bは、圧力2mmHg、温度20℃で吸着剤への
水蒸気の平衡吸着量(ml/g(stp))である。本発明
で、吸着剤の揮発性有機化合物(VOC)の平衡吸着量
を規定するに当たり、VOCの飽和蒸気圧下でなく、V
OCの飽和蒸気圧の1/10の圧力下としているのは、
飽和蒸気圧の1/10の圧力になるまでに大部分のVO
Cが吸着剤に吸着されてしまうからである。即ち、実際
的には、飽和蒸気圧下での吸着量≒飽和蒸気圧の1/1
0の圧力下での吸着量であるからである。また、実際の
圧力変動法によるPSAの運転では、通常、吸着工程
は、VOCの飽和蒸気圧まで加圧することなく、圧力が
VOCの飽和蒸気圧の1/10の圧力に達するまで吸着
工程を実施し、次いで脱着工程に移行する。
【0036】以上のことから、VOC選択率は、PSA
の運転時のVOC吸着効率を示す因子であると定義でき
る。物理的には、吸着剤のVOC選択率の値が大きいほ
ど、水蒸気存在下で、揮発性有機化合物の吸着が起こり
易く、優れたVOC−PSA向け吸着剤であると評価で
きる。従って、吸着剤のVOC選択率は、80%以上、
好適には85%以上である。VOC選択率が80%以上
の吸着剤は、VOC選択率が低い吸着剤と比較して、吸
着剤の使用量が少なくて済み、PSA法の経済性の面及
び運転効率の点で格段に有利である。
【0037】先に述べたVOC選択率の他に、吸着剤の
VOC吸着量も重要なファクターとなる。例えば、吸着
剤のVOC選択率が高くても、VOC吸着量が少ない
と、所定量のVOCを分離・回収するのに必要な吸着剤
量が多くなり過ぎる等の問題が生ずる。したがって、V
OC選択率が高く、かつ所定レベル以上のVOC吸着量
を示すことが必要となる。VOC吸着量は、温度20℃
での揮発性有機化合物の飽和蒸気圧の1/10の圧力
下、温度20℃における吸着剤への揮発性有機化合物の
平衡吸着量(ml/g(stp))により評価する。測定方
法は、VOC選択率の測定方法で示した方法と同様に行
う。温度20℃での揮発性有機化合物の飽和蒸気圧の1
/10の圧力下、温度20℃における吸着剤への揮発性
有機化合物の平衡吸着量は、30ml/g(stp)以上が
好ましく、35ml/g(stp)以上の吸着剤が更に好ま
しい。VOC吸着量の値がこれより小さいと、装置が同
じ効果を得るために必要となる吸着剤の使用量が多くな
るため、吸着塔が大型化したり、装置に付属する機器の
規格も大きくなるため、装置全体のサイズが大きくなっ
たり、電力消費量等も増加するなど運転経費が嵩む可能
性が高い。逆に、上限は特に限定されないが、150m
l/g(stp)程度が現状の上限と考えられる。
【0038】
【発明の実施の形態】以下に、実施例を挙げ、本発明の
実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。実施例は、本
発明を説明するための例示であり、本発明を限定するも
のではない。従って、本発明に係る吸着剤を使用した工
業的VOC−PSA装置の運転も以下の実施例の条件に
より制限されるものではない。以下の実施例及び比較例
の試料吸着剤の多孔質物性、疎水化能及びVOC吸着能
は、以下の測定法及び評価法により評価した。
【0039】比表面積、細孔容積及び平均細孔径等の多
孔質物性の測定法 吸着剤原料の多孔質物性(以下、原料物性と言う)及び
疎水化処理により得た吸着剤の多孔質物性(以下、吸着
剤物性と言う)は、高純度N2 (高千穂化学、Research
Grade)をプローブ分子(prove molecule)に用いて、
自動表面積・細孔径測定装置(Belsorp28 、ペルジャパ
ン社製)により測定した。原料物性及び吸着剤物性の測
定では、比表面積及び細孔径の測定に先立ち、先ず、前
処理として試料吸着剤及び吸着剤原料の減圧加熱処理を
行い、次いで所望の物性を測定した。試料の減圧加熱処
理では、約200mgの試料を硝子製試料管に入れて、
10 -1〜10-2mmHgの減圧状態を維持しながら、昇温速
度6℃/分で室温から350℃まで昇温し、同温度で3
時間保持した。その後、高純度ヘリウムガスによって常
圧+5mmHgに保持しつつ降温速度5℃/分で室温ま
で冷却し、測定用の試料を得た。得た試料重量を正確に
秤量し、多孔質物性の測定に供した。多孔質物性の測定
では、液化窒素自動供給装置(auto feeder )を有する
自動デュワー瓶を使用し、液化窒素温度(−196℃)
に保持し、液化窒素の液面レベルを一定に保ちながら死
容積(dead volume )を高純度ヘリウムにて3回以上測
定し、次いで減圧排気した後、プローブ分子(窒素)を
導入してBET法に従って比表面積を測定した。次いで
脱着測定を実施し、これにより平均細孔径を求めた。
【0040】吸着剤の疎水化能の評価方法 試料吸着剤の疎水化能を評価するために、温度20℃、
圧力2mmHg下で水蒸気の平衡吸着量を測定した。疎
水化能の測定前に、前処理として以下の減圧加熱処理を
試料吸着剤に施した。即ち、約100mgの試料を硝子
製試料管に入れて、10-1〜10-2mmHgの圧力に減圧し
ながら昇温速度6℃/分で室温から350℃まで昇温
し、同温度で1時間保持した。次いで、降温速度5℃/
分で室温まで冷却して、試料吸着剤を得た。得た試料吸
着剤の重量を正確に計り、測定の試料に供した。水蒸気
源として用いる水は、硝子製液溜にイオン交換水を50
ml入れ、これを減圧ラインでバブリング(bubbling)
した後、ドライアイス−メタノール冷媒で、液溜底部を
注意深く冷却して凍結させつつ、10-2mmHg程度で真空
排気を行いながら溶存気体を放出させた。続いて、加温
して解氷した。溶存気体の放出が無くなるまで、この処
理を繰り返して、精製水を得た。
【0041】平衡吸着量の測定では、高精度蒸気吸着量
測定装置(Belsorp18 、ペルジャパン社製)を用いた。
空気恒温槽内で精製水の液溜を50℃±1℃に保持しな
がら、液溜から発生する飽和水蒸気を50℃±1℃に維
持した硝子製リザーバー(reservoir 、容積150m
l)に導入し、更に、試料吸着剤を収容した試料部のみ
を20℃±0.5℃に保った硝子製吸着管にリザーバー
から自動流量調節バルブを介して徐々に水蒸気を導入
し、2mmHgの平衡圧になるまで導入し続けた。2m
mHgの平衡圧に到達した時点、即ち10分間の圧力変
動が0.1mmHg以内になった時点で、キャパシタン
スマノメータで測定した圧力と、系内容積から水導入量
を求め、それを平衡吸着量とし、更に、前処理後の試料
重量を基に吸着剤重量当たりの平衡吸着量を計算した。
平衡吸着量の少ない吸着剤ほど疎水化能が高いと評価で
きる。また、疎水化能の一つとして吸着剤の水に対する
割れ耐性を評価するために、試料吸着剤を20℃の水に
浸漬し、2週間経過後に割れ(crack )の有無を調べ
た。
【0042】吸着剤のVOC吸着能の評価方法 試料吸着剤のVOC吸着能を評価するために、以下に述
べるようにして、i-C5 の分圧が300mmHg、水蒸気
の分圧が10mmHg、残部が乾燥空気からなる全圧760
mmHgのイソペンタン−水蒸気−空気の混合ガスを20
℃で試料吸着剤に吸着させ、次いで5分後のイソペンタ
ン可逆吸着量(δq)を測定し、VOC可逆吸着量とし
た。測定前に、前処理として次の減圧加熱処理を試料吸
着剤に施した。減圧加熱処理では、先ず、約100mg
の試料を試料管に入れ、10-1〜10-2mmHgの圧力に減
圧しながら昇温速度6℃/分で室温から350℃まで昇
温し、引き続き温度350℃で3時間保持した。次い
で、降温速度5℃/分で室温まで冷却して、試料吸着剤
を得た。VOC吸着能の測定では、得た試料吸着剤から
所要の試料重量を正確に秤量し、測定に供した。また、
測定に供するイソペンタンを次のようにして精製した。
先ず、イソペンタン(東京化成工業、試薬特級)を液溜
に入れ、減圧ラインでバブリングした後、デュワー瓶に
入れた液化窒素液面を注意深く液溜底部に接触させて冷
却してイソペンタンを固化させながら溶存気体を放出さ
せ、10-2mmHg台で真空排気を行った。次いで、加温
し、イソペンタンを溶融した。溶存気体の放出が無くな
るまでこの操作を繰り返して、イソペンタンを精製し
た。水蒸気源として用いる水は、疎水化能の評価時と同
様に精製した。
【0043】このように精製した水及びイソペンタンを
それぞれ収容した液溜を恒温槽で50℃(±1℃)の定
温に保った。測定に際して、先ず、水蒸気を液溜から硝
子製リザーバー(150ml)に10mmHg導入し、
これに続き、イソペンタンベーパーを液溜から硝子製リ
ザーバーに300mmHg導入し、全圧310mmHg
の水−イソペンタン混合気体を調製した。この後、乾燥
空気を硝子製リザーバーに導入し、全圧を825mmH
gとした。圧力はキャパシタンスマノメータで計測し、
吸着後の残存イソペンタンは水素炎イオン化検出器付き
ガスクロマトグラフ(FID−GC)による絶対検量法
で測定した。試料吸着剤を収容した試料部のみ20℃
(±0.5℃)に保った硝子製吸着管にイソペンタン−
水−空気混合気体を自動流量調節バルブを介して徐々に
導入し、平衡圧760mmHgと平衡圧20mmHgで
の吸着量を測定した。760mmHgと20mmHgの
圧力スイングを3回繰り返し、それぞれの差からイソペ
ンタン可逆吸着量(δq)(標準状態換算(stp) )を求
め、平均して計測値とした。イソペンタン可逆吸着量が
多いほど、VOC吸着能が高いと評価できる。水蒸気吸
着量及び、VOC吸着量の測定は高精度蒸気量測定装置
(Belsorp18、ペルジャパン社製)を用い、流量調節バ
ルブ等の開閉、調節は、パソコン(PC9821、日本電気
製)を使用し、オンライン(on-line)制御した。尚、
イソペンタンはVOCの代表ガスとして選択したもので
あり、他のVOCを用いる場合と比べ、絶対吸着量は異
なるが、吸着剤同士の相対評価をする上では問題ない。
このイソペンタンの可逆吸着量(δq)を求める手法
は、PSAプロセスの実際の操作を想定して行われたも
のであり、VOC可逆吸着量(δq)を求めることによ
り、実プロセスでの吸着剤性能の相対評価が行えるもの
と考えられる。
【0044】吸着剤のVOC選択率の測定方法 圧力2mmHg、温度20℃で吸着剤への水蒸気の平衡吸
着量(ml/g(stp))の測定は、吸着剤の疏水可能の
評価方法で説明した水蒸気の平衡吸着量を測定する方法
に従って行う。温度20℃での揮発性有機化合物の飽和
蒸気圧の1/10の圧力下、温度20℃における吸着剤
への揮発性有機化合物の平衡吸着量(ml/g(stp))
の測定は、次に説明するようにして行う。測定に使う有
機化合物を前もって精製する。例えば、イソペンタンを
例にすると、先ず、試薬特級のイソペンタンを液溜めに
入れ、減圧ラインでバブリングした後、デュワー瓶に入
れた液化窒素面を注意深く液溜め底部に接触させて、イ
ソペンタンを冷却し、固化させつつ、10-2mmHgの
オーダの真空で真空排気しつつ溶存気体を放出させる。
次いで、固化したイソペンタンを加温して溶融した。溶
存気体の放出が無くなるまで、この操作を繰り返して、
イソペンタンを脱気、精製した。なお、液化窒素温度で
固化し難い揮発性有機化合物の場合には、予め液体窒素
温度付近まで冷却したモレキュラーシーブス(分子篩)
等に揮発性有機化合物を吸着させ、加温し、モレキュラ
ーシーブスから最初に脱離して来るガスをガス溜めに集
積する。
【0045】このように脱気、精製したイソペンタン蒸
気を50℃±1℃に維持した硝子製リザーバ(容積15
0ml)に約540mmHg程度まで導入し、更に、試
料吸着剤を収容したリザーバ部分を20℃±0.5℃に
保った硝子製吸着管にリザーバからイソペンタン蒸気を
導入し、温度20℃でのイソペンタンの飽和蒸気圧の1
/10圧力下、温度20℃のおける10分間の圧力変動
が、0.02mmHg以下になった時点の吸着量(平衡
吸着量)を、20℃でのイソペンタンの飽和蒸気圧の1
/10の圧力下の20℃でのイソペンタンの平衡吸着量
(ml/g(stp))とした。以上の説明では、揮発性有
機化合物の例としてイソペンタンを挙げて説明したが、
揮発性有機化合物はイソペンタンに限るものではない。
【0046】以下に、具体的な実施例及び比較例の試料
吸着剤の製造方法、製造条件、原料物性、及び得た試料
吸着剤の物性、性能を示す。実施例1 比表面積が520m2/g 、細孔容積が0.70ml/g
及び平均細孔径が5.0nmの原料物性を有するシリカ
ゲル粉末を35g秤量し、コハク酸を15g加えて自動
乳鉢で充分に乾式混練した後、打錠成形器により3mm
(直径)×3mm(高さ)の円柱状のペレットに打錠成
形した。次いで、ペレットをマッフル炉で昇温速度0.
5℃/分で室温から450℃にまで加熱し、続いて45
0℃の温度で3時間保持した。その後、室温まで冷却し
て、実施例1の試料吸着剤を得た。
【0047】実施例1の試料吸着剤の物性を測定したと
ころ、比表面積が507m2/g 、細孔容積が0.6ml
/g、及び平均細孔径が5.2nmであった。従って、
原料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面積の
減少率は2.5%になった。また、上述した疎水化能の
評価方法に従って測定した温度20℃、水蒸気圧2mm
Hgでの水蒸気平衡吸着量は、5.9ml/g(stp) で
あった。stp とは、標準状態(Standard Temperature a
nd Pressure )のことであり、0℃、常圧に換算した吸
着量を示している。また、水に浸漬し、2週間経過した
後でも、試料吸着剤には割れが発生していなかった。上
述したVOC吸着能の評価方法に従ってVOC吸着能を
測定したところ、20℃でイソペンタン可逆吸着量(δ
q)は、8.0ml/g(stp) であった。実施例1の原
料の物性、疎水化処理条件、吸着剤の物性、疎水化能及
びVOC吸着量は、それぞれ、表1の実施例1の欄に記
載されている。以下、実施例2から6及び比較例1〜4
についても同様である。
【表1】
【0048】実施例2 比表面積が550m2/g 、細孔容積が0.60ml/g
及び平均細孔径が4.3nmの原料物性を有する平均粒
径2.5mmの球状シリカゲルを40g秤量し、空気中で
温度400℃で60分間加熱し、次いで室温まで放置、
冷却した。酒石酸10gを水に溶解して50mlの酒石
酸水溶液を調製し、調製した酒石酸水溶液の全量に40
gの球状シリカゲルを浸漬し、室温で1時間放置して、
含浸させた。これを約100℃に保持した定温乾燥器に
入れて水分を除去した後、1.5℃/分の平均昇温速度
で400℃にまで加熱し、引き続き400℃の温度で3
時間保持した。その後、室温まで冷却して、実施例2の
試料吸着剤を得た。実施例2の試料吸着剤の物性を測定
したところ、比表面積が540m2/g 、細孔容積が0.
6ml/g、及び平均細孔径が4.5nmであった。従
って、原料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表
面積の減少率は1.8%になった。水蒸気平衡吸着量
は、7.5ml/g(stp) であり、また、水に浸漬し、
2週間経過した後でも、試料吸着剤には割れが発生して
いなかった。イソペンタン可逆吸着量(δq)は、8.
5ml/g(stp) であった。
【0049】実施例3 比表面積が690m2/g 、細孔容積が0.30ml/g
及び平均細孔径が2.0nmの原料物性を有する平均粒
径2.5mmの球状シリカゲルを40g秤量し、空気中で
温度500℃で60分間加熱し、次いで室温まで放置、
冷却した。プロピオンアルデヒド(PA)13.3gを
水に溶解して50mlのプロピオンアルデヒド水溶液を
調製し、調製したプロピオンアルデヒド水溶液の全量に
40gの球状シリカゲルを浸漬し、室温で1時間放置し
て、含浸させた。これを約100℃に保持した定温乾燥
器に入れて水分を除去した後、3℃/分の平均昇温速度
で500℃にまで加熱し、引き続き500℃の温度で3
時間保持した。その後、室温まで冷却して、実施例3の
試料吸着剤を得た。実施例3の試料吸着剤の物性を測定
したところ、比表面積が670m2/g 、細孔容積が0.
4ml/g、及び平均細孔径が2.1nmであった。従
って、原料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表
面積の減少率は2.9%になった。水蒸気平衡吸着量
は、9.7ml/g(stp) であり、また、水に浸漬し、
2週間経過した後でも、試料吸着剤には割れが発生して
いなかった。イソペンタン可逆吸着量(δq)は、1
0.5ml/g(stp) であった。
【0050】実施例4 比表面積が690m2/g 、細孔容積が0.3ml/g及
び平均細孔径が2.0nmの原料物性を有するシリカゲ
ル粉末を47.5g秤量し、カルボキシメチルセルロー
ス(CMC)を2.5g加えて自動乳鉢で充分に乾式混
練した後、打錠成形器により3mm(直径)×3mm
(高さ)の円柱状のペレットに打錠成形した。次いで、
ペレットをマッフル炉で昇温速度7℃/分で室温から6
80℃にまで加熱し、引き続き680℃の温度で3時間
保持した。その後、室温まで冷却して、実施例4の試料
吸着剤を得た。実施例4の試料吸着剤の物性を測定した
ところ、比表面積が517m2/g 、細孔容積が0.3m
l/g、及び平均細孔径が2.3nmであった。従っ
て、原料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面
積の減少率は25.1%になった。水蒸気平衡吸着量
は、7.3ml/g(stp) であり、また、水に浸漬し、
2週間経過した後でも、試料吸着剤には割れが発生して
いなかった。イソペンタン可逆吸着量(δq)は、8.
2ml/g(stp) であった。
【0051】実施例5 比表面積が780m2/g 、細孔容積が0.3ml/g及
び平均細孔径が1.7nmの原料物性を有するシリカゲ
ル粉末を49g秤量し、ポリビニルアルコール(PV
A)を1.0g加え、更に約50mlの水を添加して自
動乳鉢で充分に湿式混練した後、空気浴中で乾燥し、次
いで打錠成形器により3mm(直径)×3mm(高さ)
の円柱状のペレットに打錠成形した。次いで、ペレット
をマッフル炉で昇温速度10℃/分で室温から750℃
にまで加熱し、引き続き750℃の温度で3時間保持し
た。その後、室温まで冷却して、実施例5の試料吸着剤
を得た。実施例5の試料吸着剤の物性を測定したとこ
ろ、比表面積が450m2/g 、細孔容積が0.3ml/
g、及び平均細孔径が2.3nmであった。従って、原
料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面積の減
少率は42.3%になった。水蒸気平衡吸着量は、8.
4ml/g(stp) であり、また、水に浸漬し、2週間経
過した後でも、試料吸着剤には割れが発生していなかっ
た。イソペンタン可逆吸着量(δq)は、7.1ml/
g(stp) であった。
【0052】実施例6 実施例5と同じ原料物性を有するシリカゲル粉末を45
g秤量し、カルボキシメチルセルロース(CMC)を5
g加え、自動乳鉢で充分に乾式混練した後、次いで打錠
成形器により3mm(直径)×3mm(高さ)の円柱状
のペレットに打錠成形した。次いで、ペレットをマッフ
ル炉で昇温速度20℃/分で室温から630℃にまで加
熱し、引き続き630℃の温度で3時間保持した。その
後、室温まで冷却して、実施例6の試料吸着剤を得た。
実施例6の試料吸着剤の物性を測定したところ、比表面
積が597m2/g 、細孔容積が0.3ml/g、及び平
均細孔径が2.0nmであった。従って、原料のシリカ
ゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面積の減少率は2
3.5%になった。水蒸気平衡吸着量は、9.4ml/
g(stp) であり、また、水に浸漬し、2週間経過した後
でも、試料吸着剤には割れが発生していなかった。イソ
ペンタン可逆吸着量(δq)は、9.4ml/g(stp)
であった。
【0053】比較例1 実施例1と同じ原料物性を有する平均粒径2.5mmの球
状シリカゲルを空気中で25℃/分の平均昇温速度で4
00℃に加熱し、引き続き400℃の温度で1時間保持
した。その後、室温まで冷却して、比較例1の試料吸着
剤を得た。比較例1の試料吸着剤の物性を測定したとこ
ろ、比表面積が500m2/g 、細孔容積が0.7ml/
g、及び平均細孔径が5.2nmであった。従って、原
料のシリカゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面積の減
少率は3.8%になった。水蒸気平衡吸着量は、25.
1ml/g(stp) であり、また、水に浸漬し、2週間経
過した時点で、試料吸着剤には割れが発生していた。イ
ソペンタン可逆吸着量(δq)は、8.0ml/g(st
p) であった。
【0054】比較例2 実施例5及び実施例6と同じ原料物性を有する平均粒径
2.5mmの球状シリカゲルを空気中で10℃/分の平均
昇温速度で750℃にまで加熱し、引き続き750℃の
温度で1時間保持した。その後、室温まで冷却して、比
較例2の試料吸着剤を得た。比較例2の試料吸着剤の物
性を測定したところ、比表面積が242m2/g 、細孔容
積が0.5ml/g、及び平均細孔径が8.2nmであ
った。従って、原料のシリカゲル粉末に対する試料吸着
剤の比表面積の減少率は68.9%になった。水蒸気平
衡吸着量は、4.6ml/g(stp) であり、また、水に
浸漬し、2週間経過した後でも、試料吸着剤には割れが
発生していなかった。イソペンタン可逆吸着量(δq)
は、3.1ml/g(stp) であった。
【0055】比較例3 実施例4と同様にして得たペレットをマッフル炉で昇温
速度3℃/分で室温から300℃にまで加熱し、引き続
き300℃の温度で保持したことを除いて、実施例4と
同様にして、比較例3の試料吸着剤を得た。比較例3の
試料吸着剤の物性を測定したところ、比表面積が680
2/g 、細孔容積が0.3ml/g、及び平均細孔径が
2.0nmであった。従って、原料のシリカゲル粉末に
対する試料吸着剤の比表面積の減少率は1.4%になっ
た。水蒸気平衡吸着量は、18.0ml/g(stp) であ
り、また、水に浸漬し、2週間経過した時点で、試料吸
着剤には割れが発生していた。イソペンタン可逆吸着量
(δq)は、11.0ml/g(stp) であった。
【0056】比較例4 実施例2と同じ原料物性を有する球状シリカゲルを49
g秤量し、ポリビニルアルコール(PVA)を1.0g
加え、自動乳鉢で充分に乾式混練した後、次いで打錠成
形器により3mm(直径)×3mm(高さ)の円柱状の
ペレットに打錠成形した。次いで、ペレットをマッフル
炉で昇温速度20℃/分で室温から800℃にまで加熱
し、引き続き800℃の温度で3時間保持した。その
後、室温まで冷却して、比較例4の試料吸着剤を得た。
比較例4の試料吸着剤の物性を測定したところ、比表面
積が229m2/g 、細孔容積が0.4ml/g、及び平
均細孔径が7.1nmであった。従って、原料のシリカ
ゲル粉末に対する試料吸着剤の比表面積の減少率は5
8.4%になった。水蒸気平衡吸着量は、4.5ml/
g(stp) であり、また、水に浸漬し、2週間経過した後
でも、試料吸着剤には割れが発生していなかった。イソ
ペンタン可逆吸着量(δq)は、3.5ml/g(stp)
であった。
【0057】実施例と比較例の評価 全般的に言えば、実施例1から6は、水蒸気吸着量が
9.7ml/g(stp) 以下であって水浸漬時の割れ発生
は無く、かつイソペンタン可逆吸着量が5.9ml/g
(stp) 以上である。よって、実施例1〜6の試料吸着剤
は、VOC−PSA用吸着剤として好適な吸着剤と評価
できる。実施例1〜3及び比較例1、3の比表面積減少
率が4%以下であることから、500℃以下の熱処理で
は原料物性は殆ど損なわれないと結論できる。つまり、
熱履歴は殆ど無視できることが窺える。第2成分を原料
シリカゲルに添加し、500℃以下の低温域の熱処理を
施すことにより、第2成分又は第2成分の分解成分(ラ
ジカル等を含む)によって疎水効果が発現するものと考
えられる。実施例1〜3から、第2成分を添加すること
により、低温域の熱処理によって原料物性をほぼ維持し
つつ疎水効果を発現させることができることが判る。
【0058】実施例1の比表面積減少率2.5%が実施
例2の1.8%より大きいのは、実施例1の熱処理温度
が実施例2より高いことによると思われる。実施例2
は、比較例1のシリカゲルの原料物性とほぼ同じ物性の
シリカゲルを用い、比較例1と同じ400℃の低温域で
熱処理を施したときの第2成分の添加効果を示すもので
ある。第2成分を添加した実施例2では、水蒸気吸着量
が比較例1の約1/3(7.5ml/g(stp) )と低
く、水浸漬時の割れ発生も無かった。これは、第2成分
の添加により疎水化能が付与され、吸着剤としての強度
が向上することを示している。実施例2及び比較例1の
比表面積減少率は、それぞれ、1.8%及び3.8%で
あって、差は大きくはないものの、第2成分添加による
比表面積減少率の有意の減少効果が認められる。実施例
4は、680℃と言う温度範囲の上限近くで熱処理を施
した例であって、比表面積減少率が25.1%になって
いるように、加熱による収縮が起こったものと考えられ
る。しかし、同じく熱処理温度の高い比較例2では、第
2成分を添加せずに高温処理を行っているために、比表
面積減少率が69%近くになっていて、しかも平均細孔
径が拡大し、従ってミクロ孔が減少している。実施例4
と比較例2との対照により、500℃を超える高温域で
熱処理を施す場合、第2成分は原料物性を維持する効果
が高いことが判る。また、実施例6は、実施例5と同じ
原料物性を有するシリカゲル原料に第2成分を添加し、
好ましい温度で熱処理を施した例である。実施例5に比
べて、比表面積減少率が小さく、かつVOC吸着能及び
疎水化能も優れている。
【0059】イソペンタン可逆吸着量が大きい比較例1
及び比較例4では、水蒸気吸着量が実施例の2倍以上あ
り、一方、水蒸気吸着量が小さい比較例2及び比較例4
では、水蒸気吸着量が実施例より著しく小さい。比較例
4は、第2成分を含有しているので、疎水化能は付与さ
れているものの、熱処理の温度が高過ぎ、シリカゲルの
収縮が著しくて、比表面積減少率が58.4%に達し、
VOC可逆吸着量が小さい。しかし、第2成分を添加し
ていない比較例2は比表面積減少率が68.9%であっ
て、それに比べると、比較例4には第2成分の添加効果
があることが判る。
【0060】更に、実施例と比較例とを比較しつつ詳細
に検討する。比較例1と実施例1とは、シリカゲルの形
状及び熱処理条件に相違があるものの、シリカゲルの原
料物性が同じである。第2成分を添加しない比較例1
は、水蒸気吸着量が実施例1の約4倍である。また、比
較例1及び実施例1の比表面積減少率がそれぞれ3.8
%及び2.5%である。また、第2成分を添加していな
い比較例1では、水浸漬時に割れが生じている。比較例
1では、平均昇温速度が25℃/分と高すぎるために、
吸着剤に歪みが生じたことと吸水量が多いことが相俟っ
て著しい粉化を引き起こしたと考えられる。以上のこと
から、比較例1と実施例1との対照は、第2成分添加の
有効性を実証している。
【0061】比較例2と実施例5とは、双方とも熱処理
温度を750℃という上限に設定した例であって、シリ
カゲルの形状に相違があるもののシリカゲルの原料物性
が同じであり、熱処理工程の温度保持時間も異なってい
るが、比較例2が第2成分を添加しない点で実施例5と
大きく異なる。実施例5及び比較例2の比表面積減少率
はそれぞれ42.3%及び69%近くになり、実施例5
の平均細孔径は、原料シリカゲルの1.7nmより僅か
に大きな2.3nmであるが、比較例2の平均細孔径は
8.2nmと著しく大きくなっている。また、比較例2
の水蒸気吸着量が実施例5の約1/2であるが、イソペ
ンタン可逆吸着量が実施例5の約1/3になっている。
このように、高温域の焼成では、第2成分添加による物
性維持効果が高いことが判る。
【0062】比較例3と実施例4とは、シリカゲルの原
料物性及び第2成分の種類、添加量は同じであるが、熱
処理工程の温度は比較例3が300℃、実施例4が75
0℃と著しく異なり、そのために、比較例3は水蒸気吸
着量が実施例4の約2.5倍である。これは、熱処理工
程の温度が重要であることを実証している。熱処理工程
の温度については、比較例3と実施例3との対照からも
判る。比較例3と実施例3とは、シリカゲルの原料物性
が同じで、同じく第2成分が添加されている。これは、
第2成分を添加したもの同士について、平均昇温速度が
同じで熱処理温度が異なる場合の影響を示した例であっ
て、両者ともイソペンタン可逆吸着量は満足できる値で
あるが、所定の熱処理温度より低い300℃で熱処理を
施した比較例3は、水蒸気吸着量が18.0ml/g(s
tp) と高く、水浸漬時に割れが発生し、吸着剤として不
適格である。これに対して、実施例3は、疎水化能及び
VOC吸着能も共に高く優れた吸着剤である。
【0063】比較例4と実施例2とは、シリカゲルの原
料物性が同じで種類は異なるものの第2成分を添加して
いる点で同じで、かつ熱処理工程の昇温速度は本発明の
特定した範囲内になる。しかし、熱処理工程の温度が比
較例4の800℃、実施例2の400℃と著しく異な
り、そのために、比較例4はイソペンタン可逆吸着量が
実施例2の1/2以下である。これは、熱処理工程の温
度が重要であることを実証している。熱処理工程の温度
については、比較例3と実施例3との対照からも判る。
【0064】以上の説明から明らかなとおり、シリカゲ
ルに第2成分を添加することにより、低温域の熱処理に
よっても疎水化能を付与することができ、高温域では熱
処理による原料物性低下を抑制することができる。これ
により、原料シリカゲルに必要とされる原料物性の要求
条件が緩やかになり、原料シリカゲルの選択幅が拡がる
ので、より安価なシリカゲルを使用することができる。
また、実施例の吸着剤は、優れた疎水化能を有するの
で、長期間にわたり吸着剤としての機械的強度を保持で
き、従って実施例の吸着剤を使用することにより、PS
A法装置を長期間にわたり高い回収性能を保持しつつ安
定して運転することができる。
【0065】VOC選択率による評価 VOC吸着能を示す因子の一つとして、試料吸着剤のV
OC選択率を測定した。実施例1から実施例6及び比較
例1から比較例4の試料吸着剤について、表2に示すよ
うにVOCを特定して、前述した方法に従って、VOC
選択率を測定し、表2に示す結果を得た。表2から判る
通り、実施例1から実施例6の試料吸着剤は、そのVO
C選択率が、85%以上であって、74%以下の比較例
1から比較例4のVOC選択率に比べて、格段に大きな
VOC選択率を示している。また、同じVOCを吸着す
る実施例1と比較例4の試料吸着剤の比較、実施例3と
比較例1の試料吸着剤の比較、実施例4と比較例2の試
料吸着剤の比較、及び実施例6と比較例3の試料吸着剤
の比較から、いずれのVOCの場合も、実施例の試料吸
着剤が、比較例の試料吸着剤に比べて、15%〜20%
位高いVOC選択率を示している。
【表2】 以上のことから、実施例の試料吸着剤は、極めて優れた
VOC吸着能を有すことが判る。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、特定の化合物を特定の
添加率でシリカゲルに添加し、所定の熱処理を施すこと
により、高いVOC可逆吸着量を維持しつつ高い疎水化
能を有するVOC−PSA用吸着剤を実現することがで
きる。また、本発明方法によれば、特定の化合物を特定
の添加率でシリカゲルに添加し、次いで所定の温度で熱
処理を施すことにより、高いVOC可逆吸着量を維持し
つつ高い疎水化能を有するVOC−PSA用吸着剤を経
済的に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉澤 隆 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内 (72)発明者 吉成 知博 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボン酸類及びその誘導体、アルデヒ
    ド類及びその誘導体、並びに熱分解性高分子有機化合物
    よりなる群から選ばれた1種又は2種以上の有機化合物
    を原料シリカゲルに吸着剤基準で1〜30重量%添加
    し、次いで400〜750℃の範囲の温度で熱処理して
    得た、比表面積が450〜700m2 /g及び平均細孔
    径が1.7〜5.5nmの多孔質成形シリカゲルからな
    る、炭素数が1から12の揮発性有機化合物を選択的に
    吸着することを特徴とする吸着剤。
  2. 【請求項2】 シリカを主成分とし、炭素数が1から1
    2の揮発性有機化合物を選択的に吸着する吸着剤の製造
    方法であって、 カルボン酸類及びその誘導体、アルデヒド類及びその誘
    導体、並びに熱分解性高分子有機化合物よりなる群から
    選ばれた1種又は2種以上の有機化合物を原料シリカゲ
    ルに吸着剤基準で1〜30重量%添加させる添加工程
    と、 化合物を添加したシリカゲルを400〜750℃の範囲
    の温度で所定時間保持する熱処理工程とを有することを
    特徴とする吸着剤の製造方法。
  3. 【請求項3】 添加工程を経たシリカゲルを成形してシ
    リカゲル成形体を得る成形工程を熱処理工程の前に有す
    ることを特徴とする請求項2記載の吸着剤の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱処理工程では、化合物を添加したシリ
    カゲルを0.5〜20℃/分の平均昇温速度で所定の温
    度まで昇温することを特徴とする請求項2又は請求項3
    に記載の吸着剤の製造方法。
  5. 【請求項5】 次式で定義されるVOC選択率が、80
    %以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸着
    剤。 VOC選択率={(A)/(A+B)}×100 ここで、Aは、温度20℃での揮発性有機化合物の飽和
    蒸気圧の1/10の圧力下、温度20℃における吸着剤
    への揮発性有機化合物の平衡吸着量(ml/g(stp))
    である。Bは、圧力2mmHg、温度20℃における吸着
    剤への水蒸気の平衡吸着量(ml/g(stp))である。
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