JPH1182666A - ボールねじ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ケージにおいて各ボールを回転自在に保持す
る収容孔の加工精度を高精度に要求することなく、ボー
ルねじの円滑な作動を保証すること。 【解決手段】 ねじ軸１１の外周に形成した螺旋溝１１
ａと、ねじ軸１１の外周に組付けられるナット１２の内
周に形成した螺旋溝１２ａとの間に、ケージ１３によっ
て回転自在に保持された複数のボール１４が介装されて
なり、ねじ軸１１とナット１２の相対回転によってボー
ル１４が螺旋溝１２ａに沿って移動する非循環式のボー
ルねじＡにおいて、ケージ１３をスパイラルな帯状とし
てねじ軸１１の軸方向にて伸縮可能とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ボールねじに関
し、特に、ねじ軸の外周に形成した螺旋溝と、ねじ軸の
外周に組付けられるナットの内周に形成した螺旋溝との
間に、ケージによって回転自在に保持された複数のボー
ルが介装されてなり、前記ねじ軸と前記ナットの相対回
転によって前記ボールが前記螺旋溝に沿って移動する非
循環式のボールねじに関する。

【０００２】

【従来の技術】この種のボールねじは、例えば実開平５
−８１０４号公報に示されていて、同公報のボールねじ
においては、複数のボールを回転自在に保持するケージ
がねじ軸の外周面とナットの内周面間に介装される薄肉
円筒状とされている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このため、ボールねじ
の円滑な作動を保証するためには、ケージにおいて各ボ
ールを回転自在に保持する収容孔の加工精度をねじ軸及
びナットに形成した各螺旋溝の加工精度に合わせて高精
度とする必要がある。また、ケージが温度変化により大
きく伸縮して形状変化する素材で形成されている場合に
は、ケージに設けた収容孔間のピッチとねじ軸及びナッ
トに形成した螺旋溝のピッチ間に温度変化によって大き
なずれが生じて、各ボールと各螺旋溝間及び各ボールと
ケージ間にて生じる摩擦抵抗の増加要因となる。なお、
かかる問題を回避すべく収容孔の孔径を大きくすると、
収容孔内にてボールが大きく移動して当接し作動音が発
生することとなる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記した問題
に対処すべくなされたものであり、ねじ軸の外周に形成
した螺旋溝と、ねじ軸の外周に組付けられるナットの内
周に形成した螺旋溝との間に、ケージによって回転自在
に保持された複数のボールが介装されてなり、前記ねじ
軸と前記ナットの相対回転によって前記ボールが前記螺
旋溝に沿って移動する非循環式のボールねじにおいて、
前記ケージをスパイラルな帯状として前記ねじ軸の軸方
向にて伸縮可能としたことに特徴がある。この場合にお
いて、前記ケージの両端はばね特性を持つ状態で前記ね
じ軸または前記ナットに固定されるようにするのが望ま
しい。

【０００５】

【発明の作用・効果】本発明によるボールねじにおいて
は、ケージをスパイラルな帯状としてねじ軸の軸方向に
て伸縮可能としたため、ケージの伸縮作動によって各ボ
ールの両螺旋溝に対する位相ずれを吸収することができ
て、各ボールと各螺旋溝間及び各ボールとケージ間にて
生じる摩擦抵抗の増加を抑制することができる。したが
って、ケージにおいて各ボールを回転自在に保持する収
容孔の加工精度を高精度に要求することなく、ボールね
じの円滑な作動を保証することができて、ボールねじの
製作性を向上させることができる。

【０００６】また、ケージが温度変化により大きく伸縮
して形状変化する素材で形成されている場合にも、温度
変化に伴う形状変化（寸法変位）をケージの伸縮作動に
よって吸収できて、各ボールの両螺旋溝に対する位相ず
れを吸収することができるため、各ボールと各螺旋溝間
及び各ボールとケージ間にて生じる摩擦抵抗の増加を抑
制することができる。

【０００７】また、本発明の実施に際して、ケージの両
端がばね特性を持つ状態でねじ軸またはナットに固定さ
れるようにした場合には、ねじ軸とナットの相対回転時
（ボールねじの作動時）にケージがねじ軸方向にて位置
を自動修正されるため、各ボールはケージによって常に
的確に保持され、ボールねじにて常に円滑な作動を確保
することができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施形態を図
面に基づいて説明する。図１〜図４は本発明による非循
環式のボールねじＡを車両用の電動式パワーステアリン
グ装置Ｂに実施したものであり、ボールねじＡはねじ軸
１１とナット１２とケージ１３と複数のボール１４によ
って構成されている。

【０００９】ねじ軸１１は、周知のラック軸２１（ピニ
オンシャフト２２の回転によって回転不能で軸方向へ移
動される軸）に一体的に形成されていて、その外周には
螺旋溝１１ａが形成されている。ナット１２は、ハウジ
ング２３にボール軸受２４，２５を介して電動モータ３
０のロータ３１とともに回転可能かつ軸方向へ移動不能
に組付けられていて、ピニオンシャフト２２に加わる操
舵トルク（トルクセンサＳによって検出される）に応じ
て作動する電動モータ３０によって回転駆動されるよう
になっており、内周には螺旋溝１２ａが形成されてい
る。なお、電動モータ３０は、上述したロータ３１と、
ハウジング２３に組付けたステータ３２を備えていて、
その出力を制御装置（図示省略）によって制御されるよ
うになっている。

【００１０】ケージ１３は、ねじ軸１１を非接触で包囲
するスパイラルな帯状に形成されていて、ねじ軸１１の
軸方向にて伸縮可能であり、各ボール１４を回転自在に
保持する収容孔１３ａを所定のピッチで多数有してお
り、両端１３ｂ，１３ｃがねじ軸１１の軸方向にてばね
特性を持つ状態でねじ軸１１にスナップリング１５，１
６を用いて固定されている。

【００１１】各ボール１４は、ケージ１３の収容孔１３
ａに図４に示したように組付けられた状態（抜け止めさ
れた状態）にてねじ軸１１の螺旋溝１１ａとナット１２
の螺旋溝１２ａとの間に介装されていて、ねじ軸１１に
対してナット１２が相対回転することによりナット１２
の螺旋溝１２ａに沿って移動（転動）するようになって
いる。また、各ボール１４は、ケージ１３によってねじ
軸１１の螺旋溝１１ａに小さな力で押し付けられるよう
になっていて、車両振動等でねじ軸１１の螺旋溝１１ａ
から離れないようになっている。

【００１２】上記のように構成したボールねじＡにおい
ては、ケージ１３をスパイラルな帯状としてねじ軸１１
の軸方向にて伸縮可能としたため、ケージ１３の伸縮作
動によって各ボール１４の両螺旋溝１１ａ，１２ａに対
する位相ずれを吸収することができて、各ボール１４と
各螺旋溝１１ａ，１２ａ間及び各ボール１４とケージ１
３間にて生じる摩擦抵抗の増加を抑制することができ
る。したがって、ケージ１３において各ボール１４を回
転自在に保持する収容孔１３ａの加工精度（各螺旋溝１
１ａ，１２ａに対する加工精度）を高精度に要求するこ
となく、ボールねじＡの円滑な作動を保証することがで
きて、ボールねじＡの製作性を向上させることができ
る。

【００１３】また、ケージ１３が温度変化により大きく
伸縮して形状変化する素材で形成される場合にも、温度
変化に伴う形状変化（寸法変位）をケージ１３の伸縮作
動によって吸収できて、各ボール１４の両螺旋溝１１
ａ，１２ａに対する位相ずれを吸収することができるた
め、各ボール１４と各螺旋溝１１ａ，１２ａ間及び各ボ
ール１４とケージ１３間にて生じる摩擦抵抗の増加を抑
制することができる。

【００１４】また、ケージ１３の両端１３ｂ，１３ｃが
ばね特性を持つ状態でねじ軸１１にスナップリング１
５，１６を用いて固定されていて、ねじ軸１１に対する
ナット１２の相対回転時（ボールねじＡの作動時）にケ
ージ１３がねじ軸方向にて位置を自動修正されるため、
各ボール１４はケージ１３によって常に的確に保持さ
れ、ボールねじＡにて常に円滑な作動を確保することが
できる。

【００１５】また、各ボール１４がケージ１３の収容孔
１３ａに図４に示したように組付けられるようになって
いるため、ケージ１３に各ボール１４を予め組付けてお
いてこれをねじ軸１１に巻き付けるように装着すること
が可能であり、ケージ１３及び各ボール１４のねじ軸１
１への組付性を良好として生産性を向上させることがで
きる。また、各ボール１４が、ケージ１３によってねじ
軸１１の螺旋溝１１ａに小さな力で押し付けられるよう
になっていて、車両振動等でねじ軸１１の螺旋溝１１ａ
から離れないようになっているため、車両振動等で各ボ
ール１４が振動して各螺旋溝１１ａ，１２ａに当たるこ
とがなく、異音の発生を防止することができる。

【００１６】上記実施形態においては、本発明によるボ
ールねじＡを車両用の電動式パワーステアリング装置Ｂ
に実施したが、本発明によるボールねじは他の装置にも
必要に応じて適宜変更して実施し得るものであり、本発
明の実施に際してねじ軸を回転可能としかつナットを回
転不能として実施することも可能である。この場合に
は、ケージの両端をナットに固定して実施するのが望ま
しい。

【００１７】また、上記実施形態においては、各ボール
１４が図４に示したようにケージ１３の収容孔１３ａに
抜け止めされた状態にて組付けられるようにしたが、ケ
ージを薄板とし収容孔を単なる貫通孔として実施するこ
と、或いはケージのねじ軸側に保持部（抜け止め部）が
無い構成として実施することも可能である。また、上記
実施形態においては、ケージ１３の両端１３ｂ，１３ｃ
をねじ軸１１に固定して実施したが、ケージの両端をフ
リーとして実施することも可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明による非循環式のボールねじを車両用
の電動式パワーステアリング装置に実施した例を示す図
である。

【図２】 図１に示したボールねじの拡大断面図であ
る。

【図３】 図２に示したボールねじのねじ軸、ケージ及
びボールの関係を示す外観図である。

【図４】 図１〜図３に示したケージとボールの関係を
詳細に示す拡大断面図である。

【符号の説明】

１１…ねじ軸、１１ａ…螺旋溝、１２…ナット、１２ａ
…螺旋溝、１３…ケージ、１３ａ…収容孔、１３ｂ，１
３ｃ…端部、１４…ボール、１５，１６…スナップリン
グ、Ａ…ボールねじ。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ねじ軸の外周に形成した螺旋溝と、ねじ
   軸の外周に組付けられるナットの内周に形成した螺旋溝
   との間に、ケージによって回転自在に保持された複数の
   ボールが介装されてなり、前記ねじ軸と前記ナットの相
   対回転によって前記ボールが前記螺旋溝に沿って移動す
   る非循環式のボールねじにおいて、前記ケージをスパイ
   ラルな帯状として前記ねじ軸の軸方向にて伸縮可能とし
   たことを特徴とするボールねじ。
2. 【請求項２】 前記ケージの両端はばね特性を持つ状態
   で前記ねじ軸または前記ナットに固定されるようにした
   ことを特徴とする請求項１記載のボールねじ。