JPH11241182A - 鋼材の錆安定化表面処理方法 - Google Patents

鋼材の錆安定化表面処理方法

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JPH11241182A
JPH11241182A JP4811698A JP4811698A JPH11241182A JP H11241182 A JPH11241182 A JP H11241182A JP 4811698 A JP4811698 A JP 4811698A JP 4811698 A JP4811698 A JP 4811698A JP H11241182 A JPH11241182 A JP H11241182A
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JP4811698A
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Akihiko Furuta
彰彦 古田
Yoshiaki Shimizu
義明 清水
Shiro Miyata
志郎 宮田
Masahito Kaneko
雅仁 金子
Masatoshi Tanaka
賢逸 田中
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】腐食性の激しい環境においても耐候性鋼や普通
鋼等の表面あるいはその錆び層の表面に、赤錆等の浮き
錆や流れ錆を生じることなく安定錆を早期に形成し、か
つ安定錆形成過程および形成後において、その外観を損
なうことのない、鋼材の錆安定化表面処理方法を提供す
る。 【解決手段】鋼材の表面または鋼材の錆層の表面に、C
u,Ni,Cr,Al,Mo,Pの化合物から選択され
た少なくとも1種以上を金属換算で0.02−10重量
%と、有機樹脂と、光増感剤と、顔料と、塗料調製剤と
を含有する処理剤を1−100μmの乾燥膜厚で塗布す
ることを特徴とする鋼材の錆安定化表面処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁や鉄塔、建
築、海洋構造物等に使用される鋼材の防食表面処理にお
ける鋼材の安定錆の生成促進方法に係り、更に詳しく
は、P、Ni、Mo等の合金元素を添加してなる、いわ
ゆる耐候性鋼を中心として、鋼材を無塗装で使用する場
合に、鋼材表面に防食的保護作用を有する耐候性安定錆
層を早期に促進生成させ、かつ安定錆形成過程および形
成後の美観喪失を伴わない、鋼材の錆安定化処理方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】橋梁や鉄塔、建築、海洋構造物等に使用
される鋼材は、そのままでは腐食により赤錆や黄褐色の
浮き錆、流れ錆を生じ、景観を損なうばかりでなく、腐
食による肉厚減少により構造物としての強度低下を来す
ので、何らかの防食対策が必要である。これら構造物の
防食対策としては従来塗装工法が一般的であり、長期耐
久性を高めた重防食塗装も知られているが、塗装コスト
が高い上、耐用年数に限りがあり、定期的な塗り替えが
必要であることからメンテナンスコストも高いという問
題がある。
【0003】一方、鋼材にP、Cu、Cr、Ni等の元
素を少量添加することにより、大気中において、数年で
腐食に対して保護性のある錆(安定錆)を形成し、その
後の腐食速度が極めて少ない鋼材として耐候性鋼が知ら
れている。耐候性鋼は、安定錆形成後は無塗装で永続的
に防食効果が持続するいわゆるメンテナンスフリー鋼
で、近年、橋梁や鉄塔等の構造物に対する採用が増えて
きている。
【0004】しかし安定錆が形成されるまでには数年か
かるため、その期間中に赤錆や黄錆等の浮き錆や流れ錆
びを生じてしまい、外見的に好ましくないばかりではな
く、周囲環境の汚染原因になる場合もある。また、海岸
部の海塩粒子飛来環境や融雪塩散布地域では安定錆が形
成されにくく、そのため、利用可能な地域が制限される
と言う問題がある。
【0005】そこで、これらの問題を解決するため、た
とえば特公昭56−33991号公報では下層に安定錆
成分を含有する樹脂層、上層に耐候性、耐腐食性等に優
れた樹脂層を設けた、2層被覆による表面処理方法が開
示されている。
【0006】また、特公昭53−22530号公報で
は、安定錆形成成分を含有する樹脂皮膜を施すことによ
り流れ錆びを生じるこなく安定錆を形成する方法が開示
されている。さらに、特許2666673号では安定錆
形成促進作用を有する有機樹脂により被覆された鋼材に
ついて開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来技術
のうち、特公昭56−33991号公報による方法で
は、流れ錆びの防止は可能であるが、防食性が高いため
発錆速度が遅く、安定錆形成に時間がかかるという問題
がある。特公昭53−22530号公報による方法で
は、腐食性の激しい環境、特に塩分飛来環境では、流れ
錆びの防止が不十分であるという問題がある。特許26
66673号でも同様に腐食性の激しい環境、特に塩分
飛来環境では、安定錆形成能力に劣るという欠点があ
る。またこれらの公報に共通して、安定錆形成過程にお
いて、樹脂被覆の劣化に伴い、被覆の割れや剥離等の外
観不良の問題が解決されていない。
【0008】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、特に、腐食性の激しい環境におい
ても耐候性鋼や普通鋼等の表面あるいはその錆び層の表
面に、赤錆等の浮き錆や流れ錆を生じることなく安定錆
を早期に形成し、かつ安定錆形成過程および形成後にお
いて、その外観を損なうことのない、鋼材の錆安定化表
面処理方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】(1) 本発明は、鋼材
の表面または鋼材の錆層の表面に、Cu,Ni,Cr,
Al,Mo,Pの化合物から選択された少なくとも1種
以上を金属換算で0.02−10重量%と、有機樹脂
と、光増感剤と、顔料と、塗料調製剤とを含有する処理
剤を1−100μmの乾燥膜厚で塗布することを特徴と
する鋼材の錆安定化表面処理方法。
【0010】(2) 鋼材の表面または鋼材の錆層の表
面に、モリブデン酸又はモリブデン酸塩の1種以上をM
o換算で0.01−5重量%と、りん酸又はりん酸塩、
ポリリン酸塩の1種以上をP換算で0.01−5重量%
と、有機樹脂と、光増感剤と、顔料と、塗料調製剤とを
含有する処理剤を1−100μmの乾燥膜厚で塗布する
ことを特徴とする鋼材の錆安定化表面処理方法。
【0011】(3) 前記処理剤に更にCu,Ni,C
r,Alの化合物から選択された少なくとも1種以上を
金属換算で0.05−5重量%を含有する事を特徴とす
る(2)に記載の鋼材の錆安定化表面処理方法。
【0012】(4) 前記処理剤のpHが1−6である
(1)〜(3)のいずれか記載の鋼材の錆安定化表面処
理方法。 (5) 前記鋼材が、重量%で、P:0.03〜0.1
5%,Ni:0.4〜4%,Mo:0.1〜1.5%を
含有し、かつS:0.02%以下、Cr:0.1%以下
に限定されることを特徴とする(1)ないし(4)のい
ずれか記載の鋼材の錆安定化表面処理方法。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。 (適用可能鋼材)本発明においては、適用可能な鋼材は
特に限定するものではない。普通鋼に対しても効果が認
められるが、耐候性鋼のような、P、Ni、Mo等の元
素を少量含有する低合金鋼に対して特に有効である。ま
た、処理面はブラスト処理等で表面のスケールや錆を落
とした状態が好ましいが、必ずしもこの必要はなく、錆
層の表面に処理を行っても効果が見られる。
【0014】本発明の鋼材として好適な耐候性鋼につい
て、その成分の添加理由及び添加範囲限定理由を以下に
説明する。 P:Pはこの発明において重要な元素であり、安定錆の
生成を促進し、かつ安定錆が形成された後の鋼の耐食性
を更に向上させる効果を有している。そのため、必要量
添加する。0.03%未満の添加では耐食性の向上に効
果がなく、0.15%を越える添加では溶接性が劣化す
るので、0.03〜0.15%とする。
【0015】S:Sは耐食性に有害な元素であるので、
0.02%以下とする。 Cr:Crは、塩分の多い環境において、安定錆の生成
を阻害し、かつ孔あき腐食を助長する効果がある。その
ため、0.1%以下添加する。
【0016】Ni:Niはこの発明において必須の元素
であり、Moとの共存により塩分の多い環境においても
安定錆の生成を促進し、かつ安定錆が生成した後の鋼の
耐食性を更に向上させる効果がある。0.4%未満の添
加では効果がないが、4%を超える添加では、経済性の
点で不利であり、また、ベイナイト組織が生じ易くな
り、機械的特性、特に、靭性が劣化するので、0.4〜
4%とする。
【0017】Mo:Moは、この発明において必須の元
素であり、Niとの共存により塩分の多い環境において
も安定錆の生成を促進し、かつ安定錆が生成した後の鋼
の耐食性を更に向上させる効果がある。0.1%未満の
添加では効果がないが、1.5%を超える添加では、経
済性の点で不利であり、また、ベイナイト組織が生じ易
くなり、機械的特性、特に、靭性が劣化するので、0.
1%〜1.5%とする。
【0018】具体的な鋼材を例示すると、P,Ni,M
o,S,Crを上記の添加範囲に限定するとともに、更
に重量%にて、C:0.15%以下、Si:0.7%以
下、Mn:0.2%〜1.5%、Al:0.01〜0.
1%、Cu:0.2〜0.4%を含有し、かつ必要によ
り、Ca:20〜100ppm、Ti:0.005%〜
0.1%、V:0.005〜0.1%、Nb:0.00
5〜0.1%、B:0.0003〜0.001%から選
択された1種または2種以上を含有し、残部がFe及び
不可避的不純物よりなる鋼材である。この鋼材におい
て、各添加元素の添加理由、添加範囲限定理由は以下の
通りである。
【0019】C:Cは所定の強度を確保するために添加
するが、0.15%を越えると溶接性および靱性が劣化
するので、上限を0.15%とする。
【0020】Si:Siは製鋼時の脱酸剤および強度向
上元素として添加するが、過剰に添加すると靱性が著し
く低下するので、0.7%以下とする。
【0021】Mn:Mnは所定の強度を確保するために
0.2%以上添加する。しかし、過剰に添加するとベイ
ナイト組織が生じやすくなり、機械的特性、特に靱性が
劣化するので、1.5%以下とする。
【0022】Al:Alは製鋼時の脱酸剤として0.0
1%以上添加するが、過剰に添加すると腐食の起点とな
る介在物が生じやすくなるので、0.1%以下とする。
【0023】Cu:Cuは、安定錆が形成された後、錆
を安定な状態に維持する効果を有しているため、0.2
%以上添加する。0.4%を越える添加では効果が飽和
し、かつ経済性の点で不利であるので、0.4%以下と
する。 (処理剤1) (1)この鋼材表面もしくは鋼材錆層の表面に塗布する処
理剤は、Cu、Ni、Cr、Al、Mo、Pの化合物
と、有機樹脂と、光増感剤と、顔料と、塗料調整剤とを
含有している。
【0024】(有機樹脂)本発明に係る有機樹脂は、特
に限定されるものではないが、好適な有機樹脂を例示す
れば、以下の通りである。
【0025】すなわち、本発明に係る有機樹脂は、界面
に鋼溶出イオンを固定、濃化して均一な安定錆層を形成
するためにキレート形成基を有する樹脂が好ましい。こ
のキレート形成基を含有する有機樹脂としては、樹脂の
基本骨格にキレート形成基を有する樹脂成分あるいは、
単独でキレート化剤を添加混合した樹脂成分のいずれで
もよい。好適なキレート形成基としては、アミノ酸基、
カルボキシル基、ジチオカルバミン酸基、ポリアミノ
基、チオール基、チオウレイド基、ジチオ酸基、β―ジ
ケトン基、ヒドロキサムオキシム基、及びこれらの塩の
中から選ばれた少なくとも一種または二種以上である。
そして、樹脂の基本骨格にキレート形成基を有する樹脂
成分としては、イミノジ酢酸基、アミノ酸基、オキシム
基、アミドキシム基、オキシン基、グルカミン基、アミ
ノリン酸基、ジチオカルバミン酸基、チオ尿素基、β−
ジケトン、ポリアミン、クリプタンド、クラウンエーテ
ル等、単独でキレート形成可能な官能基及び骨格、及び
シッフ塩基と水酸基、アゾ結合と水酸基、アゾ結合とカ
ルボン酸、アミンとリン酸、アミンとチオカルボン酸、
アミンとチオカルボニル基、カルボニル基と水酸基等、
複数の官能基によりキレート形成可能な部位を、スチレ
ン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリルニトリル−ジ
ビニルベンゼン共重合体、エチレンイミン重縮合体、フ
ェノール樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ビニル
樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹
脂、アルキド樹脂等の基体樹脂中に導入した樹脂成分で
ある。また、上記のキレート形成基を有する低分子化合
物、すなわちキレート化剤を有機樹脂に混合した形で使
用してもよい。
【0026】また、キレート形成基を有する有機樹脂成
分の処理剤に対する添加割合は2〜50重量%であるこ
とが好ましい。これ未満の範囲であると流れ錆防止効果
に劣り、またこれを超える範囲であっても効果は変わら
ない。
【0027】( Cu、Ni、Cr、Al、Mo,Pの化
合物)また、本発明においては、前記処理剤にCu、N
i、Cr、Al、Mo,Pの化合物の一種以上を、金属
換算で0.02〜10重量%含有する。このことで、一
層安定錆生成促進効果が向上する。これは、これらが、
鉄イオンの安定錆への変態効果、および安定錆粒子の微
細効果を有することによるものと考えられる。それらの
含有率が0.02重量%未満であると、安定錆層の形成
促進効果が不十分となり、10重量%を越えて添加して
も、効果は変わらなくなる。これらの金属イオンまたは
化合物の供給形態は、不溶性塩を形成せず、また安定錆
生成を阻害する塩素イオンを含有しないものであれば、
いかなる形態であっても構わない。 (光増感剤)また、本発明では、前記有機樹脂中に光増
感剤を含有する。このことにより、塗膜中樹脂の光分解
が促進され、塗膜が均一に退化し、その結果、安定錆の
均一形成を阻害する塗膜割れなどを防止することができ
る。光増感剤の例としては、ベンゾフェノン、アセトフ
ェノン、アントラキノン、ジオカルバメート錯体、サリ
チルアルデヒド金属錯体、ジルコニウム錯体、アナター
ス型等の酸化チタン、ベンゾキノン、デュロキノン、ク
ロラニル、等が挙げられる。好適な光増感剤の添加量
は、塗膜劣化過程で割れや剥離等の外観不良、安定錆形
成以前の塗膜の劣化を考慮して、有機樹脂固形分の0.
01〜4重量%である。又、本発明では、光増感剤に代
えて、もしくは光増感剤とともに、感光性官能基導入樹
脂を含むことが可能である。感光性官能基導入樹脂の例
としては、エチレン−一酸化炭素共重合体、ビニルケト
ン−ビニルモノマー共重合体、熱可塑性1,2−ポリブ
タジエン、ポリイソブチレンオキシド等が好ましく用い
られる。感光性官能基導入樹脂は、光増感剤に代えて用
いる場合、その添加割合は、光増感剤の場合と同じ理由
により、有機樹脂固形分の0.1〜30重量%とするの
が好ましい。
【0028】(顔料、塗料調整剤)また、本発明の処理
剤中には、上記の成分以外に、他の有機樹脂成分、各種
顔料、塗料調整剤等を加えるのがよい。有機樹脂成分と
しては、特に限定するものではないが、常温にて塗膜形
成可能な樹脂が好ましく、具体的にはブチラール樹脂、
エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステ
ル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂等を適用できる。
加熱により効果や成形、融着等が必要な樹脂は施工上好
ましくない。
【0029】各種顔料、塗料調整剤としては、固形分の
沈降・分離を抑制する分散剤、塗布面のタレ防止用増粘
剤、ベンガラ、タルク、シリカ等の無機顔料、縮合多環
系、フタロシアニン系などの有機顔料を適宜添加するこ
とが出来る。
【0030】また上記樹脂を塗料化する場合には溶媒と
して有機溶剤ばかりでなく、水溶性塗料やエマルジョン
塗料のような水系塗料としてもよい。 (処理剤のpH)本発明においては、処理剤は、pHを1
〜6にするのが好ましい。pHが6を越えると安定錆促
進効果が十分ではなく、pHが1未満であると鋼材表面
あるいは鋼材の錆層の表面を過剰溶解して安定錆を層と
して形成しがたい。pHの調整に使用するものは、塩素
イオンを生成する可能性のあるもの以外で有れば特に限
定することなく用いることが出来るが、例えば、硫酸、
硝酸、リン酸等の無機酸が好ましく用いられる。水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモ
ニア等のアルカリをpH調整のため共存させても全く問
題はない。
【0031】(処理皮膜の膜厚)また、処理皮膜の乾燥
膜厚は1〜100μmとするのがよい。この範囲未満で
あると塩素イオンや流れ錆防止効果が劣り、この範囲を
超えると、下地鋼材に対する保護効果が過剰になりす
ぎ、安定錆形成に時間がかかる。
【0032】本発明の処理皮膜を、乾燥膜厚で1〜10
0μm塗布形成することにより、キレート形成基を有す
る樹脂が界面に鋼溶出イオンを固定、濃化して、均一な
安定錆層を形成し、Cu,Ni,Cr,Al,Mo,P
化合物及びpH1−6により安定錆の生成速度を増進
し、更に塗膜中樹脂の光分解が促進され、塗膜が均一に
退化することによって、安定錆の均一形成を阻害する塗
膜の割れなどを防止するので、海塩粒子飛来環境等の激
しい腐食環境でも、流れ錆や浮き錆が殆ど発生せず、外
観上極めて優れた効果を発揮する。
【0033】(処理方法)本発明の処理方法において
は、公知の塗装方法、即ちエアスプレー、エアレススプ
レー、刷毛塗り等により処理することが可能で、処理方
法に特に制限はない。また、特に加熱・焼き付け等の処
理も不要であるため、工場施工、現地施工いずれも対応
可能である。 (処理剤2) (2)この鋼材表面もしくは鋼材錆層の表面に塗布する処
理剤は、モリブデン酸、モリブデン酸塩と、りん酸、り
ん酸塩、ポリりん酸塩と、有機樹脂と、光増感剤と、必
要により添加される、Cu、Ni、Cr、Alの化合物
と、顔料と、塗料調整剤とを含有している。
【0034】(モリブデン酸またはモリブデン酸塩の一
種以上と、燐酸または燐酸塩、ポリ燐酸塩の一種以上)
モリブデン酸またはモリブデン酸塩の一種以上と、燐酸
または燐酸塩、ポリ燐酸塩の一種以上との添加は、均一
な安定錆形成に寄与する。これらを添加することによ
り、欠陥数が著しく少ない安定錆が、早期に形成される
ことは全く予期せぬ効果であるが、このような効果が得
られる理由は、まず所定の酸性溶液とすることで鋼材の
腐食が促進され、鉄イオンが溶出するが、モリブデン酸
イオンとリン酸イオンの存在により、鉄イオンが固定化
され微細で均一な安定錆の形成が促進されるものと推測
される。
【0035】モリブデン酸またはモリブデン酸塩の一種
以上は、Mo換算で0.01〜5重量%、燐酸または燐
酸塩、ポリ燐酸塩の一種以上は、P換算で0.01〜5
重量%含有する。Mo含有量が0.01重量%未満であ
ると安定錆の形成が促進されず、5重量%を越えて添加
すると、もろく剥離しやすい錆層が形成される。モリブ
デンの供給形態としては、pH1〜6の範囲の溶液にお
いて可溶性で有れば特に限定されず、例えばモリブデン
酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブドリン酸
塩等が挙げられる。P含有量が0.01重量%未満であ
ると、安定錆の形成が不十分で、5重量%を越えて添加
すると安定錆形成が阻害される。Pの供給形態として
は、オルト燐酸、メタ燐酸、またはピロ燐酸をはじめと
するポリ燐酸、およびそれらの塩や燐酸エステル類が使
用される。
【0036】さらに、この処理剤は、有機樹脂と、光増
感剤と、顔料と塗料調整剤とを含有し、好適なpHが1
〜6である。これらの点については、前述した「有機樹
脂と、光増感剤と、Cu、Ni、Cr、Al、Mo、P
の化合物と、残部顔料、塗料調整剤からなる処理剤」と
同様なので、同じものについてはここでの説明は省略す
る。
【0037】(Cu、Ni、Cr、Alの化合物)本発
明においては、前記処理剤にCu、Ni、Cr、Alの
化合物の一種以上を、金属換算で0.05〜5重量%含
有することで、一層安定錆生成促進効果が向上する。こ
れは、これらイオンが、鉄イオンの安定錆への変態効
果、および安定錆粒子の微細効果を有することによるも
のと考えられる。それらの含有率が0.05重量%未満
であると、安定錆層の形成促進効果が不十分となり、5
重量%を越えて添加しても、効果は変わらなくなる。こ
れらの金属イオンまたは化合物の供給形態は、不溶性塩
を形成せず、また安定錆生成を阻害する塩素イオンを含
有しないものであれば、いかなる形態であっても構わな
い。
【0038】(処理皮膜の膜厚)処理皮膜の乾燥膜厚は
1〜100μmとするのがよい。この範囲未満であると
塩素イオンや流れ錆防止効果が劣り、この範囲を超える
と、下地鋼材に対する保護効果が過剰になりすぎ、安定
錆形成に時間がかかる。
【0039】本発明の処理皮膜を、乾燥膜厚で1〜10
0μm塗布することにより、海塩粒子飛来環境等の激し
い腐食環境でも、流れ錆や浮き錆が殆ど発生せず、外観
上極めて優れた効果を発揮する。これは、本発明に係る
キレート形成基を有する樹脂は、界面に鋼溶出イオンを
固定、濃化して均一な安定錆層を形成すると推定され
る。特に、モリブデン酸(塩)と(ポリ)りん酸(塩)
との組合せで飛躍的効果を発揮する。さらに、塗膜中樹
脂の光分解が促進され、塗膜が均一に退化することによ
って、安定錆の均一形成を阻害する塗膜の割れなどを防
止することができる。そして、Cu、Ni、Cr、Al
の添加、pH1〜6とすることにより、安定錆層の生成
速度を増進する。
【0040】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づき説明する。本
発明の実施例に用いた試験鋼の化学成分を表1に示す。
表1のAは普通鋼、Bは耐候性鋼を示す。また有機樹脂
塗料の主な構成成分であるベース樹脂として選定したも
の、及び光増感剤を表2に示す。
【0041】供試鋼材は、試験鋼を150mm×70m
m×6mmとし表面をブラスト処理したものである。表
3−1〜表3−4に各試験片の作成条件および試験結果
について示す。
【0042】処理剤についてはハケ塗り、有機樹脂塗料
についてはエアレススプレーにて塗装した。この試験片
を三重県津市の暴露試験場にて1年間暴露した。暴露場
は、海岸から約200mの所である。
【0043】1年間暴露した後、外観観察により流れ錆
の有無および被膜の状況を確認した。さらに、フェロキ
シルテストにより錆層の欠陥数を測定、テープ剥離テス
トにより浮き錆量を測定した。テープ剥離テストは、5
0mm×50mmのテープを使用し、試験片の同一箇所
で3回繰り返して、剥離した浮き錆の合計量とした。ま
た、苛性ソーダにより、残存している処理被膜と錆とを
除去し、腐食重量減少を測定した。なお、フェロキシル
テスト結果は、発色点数100個/dm2 未満を
「○」、100個/dm2 以上200個/dm2 未満を
「△」、200個/dm2 以上を「×」とし、テープ剥
離テスト結果は0.01g未満を「○」、0.01g以
上0.05g未満を「△」、0.05g以上を「×」と
した。
【0044】本発明の実施例では、海岸付近の厳しい腐
食環境の暴露にも関わらず、いずれもフェロキシルテス
トによれば、錆層の欠陥が少なく、腐食減量も少なく、
またテープ剥離試験の結果から浮き錆が殆ど見られない
ことから、被膜下に安定錆が形成されつつあることが確
認でき、また流れ錆の発生や塗膜の割れ、剥離等も無
く、極めて良好な外観を保持していた。特に、Mo,P
の両方を添加したものは(請求項2の発明に相当す
る)、これらの効果が特に優れていることが確認され
た。
【0045】また、本発明の処理方法は耐候性鋼上に施
したもの(No. 19)が効果が高いが、普通鋼(No.1-18) で
も十分な効果が見られることが確認できた。一方、比較
例に示したように、乾燥膜厚が薄すぎて本発明の範囲か
ら外れるもの(No. 20)は、流れ錆があり、腐食減量が
多く、フェロキシルテスト、テープテストの結果も良好
とは言えない。厚すぎて本発明の範囲から外れるの(N
o. 21)は、フェロキシルテスト、テープテストの結果
が良好とは言えない。また、Cu,Ni,Cr,Alなどを添加
していないもの(No. 22)、添加しているもののその添加
量が少なく、本発明の範囲から外れるもの(No.23 、N
o.24 )は、流れ錆があり、腐食減量が多く、フェロキ
シルテスト、テープテストの結果も不良であった。有機
樹脂皮膜中に光増感剤を含まないもの(No.25,26)は、
流れ錆が見られ、腐食減量が多く、フェロキシルテス
ト、テープテストの結果も良好とはいえない。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【発明の効果】本発明の処理皮膜を、乾燥膜厚で1〜1
00μm塗布することにより、海塩粒子飛来環境等の激
しい腐食環境でも、流れ錆や浮き錆が殆ど発生せず、外
観上極めて優れた効果を発揮する。
フロントページの続き (72)発明者 金子 雅仁 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 田中 賢逸 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材の表面または鋼材の錆層の表面に、
    Cu,Ni,Cr,Al,Mo,Pの化合物から選択さ
    れた少なくとも1種以上を金属換算で0.02−10重
    量%と、有機樹脂と、光増感剤と、顔料と、塗料調製剤
    とを含有する処理剤を1−100μmの乾燥膜厚で塗布
    することを特徴とする鋼材の錆安定化表面処理方法。
  2. 【請求項2】 鋼材の表面または鋼材の錆層の表面に、
    モリブデン酸又はモリブデン酸塩の1種以上をMo換算
    で0.01−5重量%と、りん酸又はりん酸塩、ポリリ
    ン酸塩の1種以上をP換算で0.01−5重量%と、有
    機樹脂と、光増感剤と、顔料と、塗料調製剤とを含有す
    る処理剤を1−100μmの乾燥膜厚で塗布することを
    特徴とする鋼材の錆安定化表面処理方法。
  3. 【請求項3】 前記処理剤に更にCu,Ni,Cr,A
    lの化合物から選択された少なくとも1種以上を金属換
    算で0.05−5重量%を含有する事を特徴とする請求
    項2に記載の鋼材の錆安定化表面処理方法。
  4. 【請求項4】 前記処理剤のpHが1−6である請求項
    1〜3のいずれか記載の鋼材の錆安定化表面処理方法。
  5. 【請求項5】 前記鋼材が、重量%で、P:0.03〜
    0.15%,Ni:0.4〜4%,Mo:0.1〜1.
    5%を含有し、かつS:0.02%以下、Cr:0.1
    %以下に限定されることを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか記載の鋼材の耐候安定錆の生成促進処理方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002006562A1 (fr) * 2000-07-17 2002-01-24 Hitachi Metals, Ltd. Aimant r-t-b revetu et son procede de preparation
CN103088328A (zh) * 2012-12-18 2013-05-08 芜湖恒坤汽车部件有限公司 一种镀锌钢板表面硅烷处理剂及其制备方法
CN103088325A (zh) * 2012-12-18 2013-05-08 芜湖恒坤汽车部件有限公司 一种金属材料表面硅烷处理剂及其制备方法
CN111593337A (zh) * 2020-05-19 2020-08-28 北京科技大学 一种环保型耐候钢表面锈层稳定化处理剂及制备方法

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