JPH11223221A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JPH11223221A
JPH11223221A JP10107102A JP10710298A JPH11223221A JP H11223221 A JPH11223221 A JP H11223221A JP 10107102 A JP10107102 A JP 10107102A JP 10710298 A JP10710298 A JP 10710298A JP H11223221 A JPH11223221 A JP H11223221A
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JP
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bearing
titanium alloy
phase
cold working
treatment
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JP10107102A
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English (en)
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Koji Ueda
光司 植田
Manabu Ohori
學 大堀
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Publication date
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    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
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    • Y10T29/49643Rotary bearing
    • Y10T29/49679Anti-friction bearing or component thereof
    • Y10T29/49689Race making

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性及び靱性に優れ、且つ高速回転性にも
優れた転がり軸受を提供する。 【解決手段】 軌道輪の内の少なくとも内輪がチタン合
金で形成されると共に、転動体がセラミックスで形成さ
れている。また、軌道輪を構成する内輪又は外輪の内の
少なくとも一方が、β型チタン合金で形成され、且つ該
β型チタン合金の冷間加工率が20%以上に設定され、
或いは前記冷間加工率が5〜20%に設定され且つ冷間
加工処理後にショットピーニング処理が施されている。
若しくは表面硬さHvが600以上とされ且つ前記β型
チタン合金中の残留β相が体積比で30〜80%に設定
されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、
特に、食品機械や半導体製造装置、化学繊維製造機等水
分や海水、化学薬品などの耐食性の要求される環境下
や、高速回転で使用される工作機械等、特殊環境下で使
用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、耐食性が要求される環境下で
使用される軸受としては、耐食性に優れた材料を使用し
たすべり軸受が使用されることが比較的多かったが、近
年では低トルク化による動力損失やメンテナンスフリー
化、更には製品の品質向上の観点から転がり軸受が使用
されるようになってきている。
【0003】ところで、転がり軸受の軸受材料として
は、一般的には高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)や
肌焼鋼(SCR420)等の低合金鋼が使用されること
が多いが、転がり軸受は使用環境が多種多様であり、こ
れら低合金鋼を水分や海水が混入し得る環境下で使用し
た場合は、微量の水分や海水が混入しただけで軸受部位
に錆が発生し、使用不能状態に陥る。このため、このよ
うな環境下においては、耐食性に優れたクロム含有率の
高いマルテンサイト系ステンレス鋼(例えば、SUS4
40C)が使用されている。
【0004】しかしながら、軌道輪及び転動体について
いずれもマルテンサイト系ステンレス鋼(以下、単に
「ステンレス鋼」という)を使用した場合は、使用環境
によっては耐食性が不十分な場合もあり、粗大な共晶炭
化物近傍のクロム欠乏層を起点として腐食が発生し、こ
のため表面粗さ等の精度が低下して所望の軸受寿命を確
保することができない場合があった。特に、半導体製造
装置等に使用される転がり軸受は、ステンレス鋼を腐食
させるような腐食性ガスや化学薬品が使用されるため、
ステンレス鋼よりも優れた耐食性を有する材料を使用す
ることが要求される。
【0005】このような観点から、従来より耐食性の要
求される箇所に転がり軸受を使用する場合は、軸受材料
として窒化珪素(Si34)等のセラミックス材料が使
用されている(以下「第1の従来技術」という)。
【0006】一方、工作機械の分野においては、近年益
々高速回転化する傾向にあり、このため工作機械の回転
部を支持する転がり軸受は、より高精度で且つ苛酷な使
用条件下でも使用に耐え得ることが要求されているが、
工作機械が高速回転化すると所謂軸受すきまが減少して
転がり摩擦による発熱量が増大し、その結果軸受温度が
上昇する。
【0007】かかる転がり摩擦による発熱量の増大は、
転動体に作用する遠心力の増大に原因があると考えられ
るため、従来より、遠心力を軽減して転動体の温度を下
げるべく、転動体材料として低合金鋼に代えて密度の小
さい(比重の軽い)セラミックスを使用した転がり軸受
が実用化されているが、近年における更なる工作機械の
高速化に伴い、転動体の軽量化を図るだけでは軸受温度
の温度上昇を抑制することができない事態となってき
た。
【0008】ところで、高速回転時に生じる軸受の発熱
は、通常、外輪の場合はハウジングを介して外部に放熱
されるが、内輪の場合は回転軸側からの放熱が困難であ
るため、内輪温度は外輪温度に比べて高くなる。したが
って、外輪と内輪とが同一材料で形成され、内輪温度が
発熱により高くなった場合は、内輪の熱膨張量が大きく
なって軸受すきまは前記発熱前に比べて減少し、その結
果予圧が過大なものとなり、該過大となった予圧に起因
して更に発熱を助長するという悪循環を招来し、軸受が
焼付いて軸受破損が生じる虞がある。
【0009】そこで、このような観点から、内輪材料を
外輪材料よりも線膨張係数の小さい材料で形成した転が
り軸受が提案されている(特公平7−30788号公
報;以下「第2の従来技術」という)。
【0010】該第2の従来技術によれば、例えば、外輪
を高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)、内輪をステンレス
鋼(SUS440C)で形成したり、或いは外輪を前記
高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)、内輪をセラミックス
で形成する等、内輪材料を外輪材料よりも線膨張係数の
小さい材料で形成しているので、たとえ内輪温度が外輪
温度よりも高くなった場合であっても内外輪の温度差に
よって生じる内輪の膨張を抑制することができ、その結
果軸受すきまの変化に伴う予圧の変動が小さくなり、軸
受の焼付き損傷を防止することができる。
【0011】また、チタン合金は、鉄鋼材料に比べると
軽量・高強度であり、しかも金属材料中でも非常に優れ
た耐食性を有しているため、水分や海水、化学薬品など
の耐食性が要求される特殊環境用の軸受材料として期待
されている。
【0012】しかしながら、転がり軸受においては、非
常に大きな面圧が軌道輪と転動体との接触部に負荷され
るため、高い表面硬さが要求される一方で、チタン合金
は通常の溶体化処理や時効処理等の熱処理を施すのみで
は所望の表面硬さを得ることができないという欠点があ
る。
【0013】そこで、斯かる観点から所定の表面処理を
施すことにより、表面硬さを増大する技術が提案されて
いる(特公昭61−2747号公報;以下「第3の従来
技術」という)。
【0014】該第3の従来技術では、チタン合金にガス
窒化処理や浸炭処理等を施してC、N、O等の侵入型元
素を該チタン合金中に拡散・固溶させることにより、軌
道輪として要求される表面硬さを確保せんとしている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第
1の従来技術は、軸受材料としてセラミックスを使用し
ているのでステンレス鋼に比べて耐食性については極め
て良好であるが、強度や靱性がステンレス鋼よりも劣る
ため大きな衝撃が負荷される環境下では安心して使用を
することができず、特に軌道輪にセラミックスを使用す
ることは軸受の信頼性という点からも好ましくないとい
う問題点がある。
【0016】また、セラミックスは成形性や切削性が金
属材料と比較して著しく劣るため、軸受の主要部材全て
をセラミックスで形成した場合は製造コストの増大を招
くという問題点もある。
【0017】また、上記第2の従来技術においては、セ
ラミックスの線膨張係数が金属材料の線膨張係数に比べ
て極端に小さいため、例えば、外輪を前記高炭素クロム
鋼(SUJ2)、内輪をセラミックスで形成した場合
は、金属製の回転軸とセラミックス製の内輪との間で温
度が上昇したときの熱膨張量の差異が大きくなり、その
結果回転軸の熱膨張量を緩和することができず、セラミ
ック製の内輪に割れが生じて軸受破損を招来する虞があ
るという問題点がある。
【0018】一方、外輪を高炭素クロム軸受鋼(SUJ
2)、内輪をステンレス鋼(SUS440C)で形成し
た場合は、ステンレス鋼の線膨張係数が高炭素クロム軸
受鋼の線膨張係数の80%と小さいため温度上昇に起因
する軸受すきまの変化を少なくすることができ、またス
テンレス鋼は金属材料であるため内輪にセラミックスを
使用した場合のように回転軸と内輪との間の熱膨張量の
差異による割れが発生する虞もないと考えられる。
【0019】しかしながら、内輪材料として使用される
ステンレス鋼はセラミックスよりも密度が大きいため
(比重が重いため)、内輪に生じる遠心力の増大を無視
できなくなる。すなわち、遠心力の大きさは質量と速度
に比例して増大するため、高速回転になると回転によっ
て生じる遠心力によって内輪が膨張し、その結果軸受す
きまが減少して発熱量が増大するという問題点がある。
【0020】さらに、上記第3の従来技術においては、
表面処理により固溶される侵入型元素の元素種によって
は表面硬さや硬化層深さについてのバラツキが大きく、
しかも使用するチタン合金によっては芯部の強度が低い
ために軸受として十分な機能を果たし得ない場合がある
という問題点がある。
【0021】また、該第3の従来技術においては、侵入
型元素をチタン合金中に拡散・固溶させることにより表
面硬さの増大を図ることができるものの、一方でチタン
合金の著しい脆化を引き起し、その結果所望の軸受寿命
を得ることができなくなる場合があるという問題点があ
る。
【0022】本発明はこのような問題点に鑑みなされた
ものであって、耐食性及び靱性に富み、且つ高速回転性
にも優れた転がり軸受を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本願出願人は、優れた耐
食性を有する転がり軸受を得るべく、鋭意研究をした結
果、セラミックスに比べて靱性に富んだチタン合金を軌
道輪材料として使用した場合は、ステンレス鋼を軌道輪
材料に使用した場合に比べ、大幅に耐食性を向上させる
ことができるという知見を得た。
【0024】一方、チタン合金は、ステンレス鋼よりも
軽量且つ線膨張係数が小さいことから内輪をチタン合金
で形成した場合は、内輪をステンレス鋼で形成した場合
に比べ、高速回転時における内輪の温度上昇が小さくな
って軸受すきまの減少を回避することができ、発熱量の
増大を抑制することができるという知見をも得た。
【0025】本発明は斯かる知見に基づきなされたもの
であって、本発明に係る転がり軸受は、外輪と内輪とか
らなる軌道輪と、前記外輪と前記内輪との間に転動自在
に配設された転動体とを備えた転がり軸受において、前
記軌道輪の内の少なくとも内輪がチタン合金で形成され
ると共に、転動体がセラミックスで形成されていること
を第1の特徴としている。
【0026】また、本願出願人は、耐食性に優れたチタ
ン合金の中でもβ型チタン合金は高強度を有し、しかも
溶体化状態での冷間加工性に優れているという知見を
得、更に鋭意研究を重ねた結果、軸受材料としてβ型チ
タン合金を使用し、且つその冷間加工率を20%以上と
することにより、短時間の時効処理によりロックウェル
表面硬さHRC(以下、「表面硬さHRC」という)が
57以上の軌道輪を得ることができることが判った。
【0027】そこで、本発明に係る転がり軸受は、軌道
輪を構成する内輪又は外輪の内の少なくとも一方がβ型
チタン合金で形成され、且つ冷間加工率が20%以上に
設定されていることを第2の特徴としている。
【0028】また、冷間加工率を20%以上に設定して
冷間加工を施した後に時効処理を施すことにより、上述
の如く所望の表面硬さを有する転がり軸受を得ることが
できるが、その反面、冷間加工を施した後に時効処理を
施した場合はβ型チタン合金の組織全体が硬化する傾向
にあり、特に冷間加工率を高く設定した場合はβ型チタ
ン合金の芯部までもが必要以上に硬化して靱性の低下を
招く虞がある。したがって、良好な靱性を確保する観点
からは冷間加工処理を施さないか或いは冷間加工処理を
施すとしても低加工率でもって施すのが望ましいと考え
られる。
【0029】ところで、軌道輪材料としてステンレス鋼
等の鋼製材料を使用する場合は、表面硬さを増大させる
ために焼入・焼戻等の熱処理を施した後にショットピー
ニング処理が施される。すなわち、鋼製材料の場合はシ
ョットピーニング処理を施すことによって残留オーステ
ナイトがマルテンサイト変態して更に硬化し、該マルテ
ンサイト変態による応力が発生して非常に大きな歪みエ
ネルギが軌道輪表面層に付与され、加工硬化による表面
硬さの増大を図ることができる。
【0030】しかしながら、本願出願人の研究により、
チタン合金に対しては熱処理後にショットピーニング処
理を施したのみでは、付与される加工歪み量とその深さ
に限界があるため、転がり軸受に必要とされる所望の表
面硬さを得ることが困難であるということが判った。
【0031】そこで、本願出願人は、ショットピーニン
グ処理による表面硬さの増大作用に着目しつつ更に鋭意
研究を重ねた結果、冷間加工率が5〜20%に設定した
場合は冷間加工後にショットピーニング処理を施すこと
により、良好な靱性を有すると共に高い表面硬さを有す
る転がり軸受を得ることことができるということが判明
した。
【0032】すなわち、本発明に係る転がり軸受は、軌
道輪を構成する内輪又は外輪の内の少なくとも一方がβ
型チタン合金で形成され、且つ冷間加工率が5%〜20
%に設定され、さらに冷間加工後にショットピーニング
処理がなされていることを第3の特徴としている。
【0033】また、上記第3の特徴に係る転がり軸受に
おいて、冷間加工後にショトピーニングを施し、更にそ
の後に時効処理を施すことによりビッカース表面硬さH
v(以下、「表面硬さHv」という)が600(表面硬
さHRCで約57に相当)以上の転がり軸受を得ること
ができるが、疲労強度を向上させる観点からは、時効処
理後に再度ショットピーニング処理を施すのが好まし
い。
【0034】ところで、本願出願人は、軌道輪材料とし
てチタン合金を使用した場合の寿命特性を研究している
過程において、ステンレス鋼等の鋼製材料を使用した場
合と同様、異物混入の潤滑条件下では、異物が混入しな
い潤滑条件下に比べ軸受寿命が低下するということが確
認された。
【0035】一方、従来の鋼製材料を使用した転がり軸
受においては、本願出願人は既に、軸受の表面層の炭素
含有量や残留オーステナイト量、更には炭窒化物の含有
量を最適化することにより、軸受寿命の向上を図る技術
を提案している(特公平7−88851号公報)。該公
知技術においては、材料中の炭素、残留オーステナイト
及び炭窒化物の含有量を特定範囲に最適化して限定する
ことにより、混入する異物によって生じ得る圧痕のエッ
ジ部に発生する応力集中を緩和することができ、これに
よりクラックの発生が抑制される結果、軸受寿命の向上
を図ることができる。
【0036】また、本願出願人は、炭化物や炭窒化物の
平均粒径を調整して適正化することにより、残留オース
テナイト量と表面硬さの最適な関係を見出し、これによ
り軸受の長寿命化を図ることができる技術も既に提案し
ている(特公平8−26446号公報)。
【0037】すなわち、これら上述の公知技術(特公平
7−88851号公報、特公平8−26446号公報)
は、いずれも軟質なオーステナイト量を最適化すること
によって、異物混入の潤滑条件下における軸受寿命の向
上を図ったものである。したがって、β型チタン合金に
おいても軟質相の体積比を最適することにより異物混入
の潤滑条件下でも軸受寿命の向上を図ることができると
考えられる。
【0038】本願出願人は、斯かる観点から鋭意研究を
重ねた結果、β型チタン合金の組織中における軟質相で
ある残留β相の体積比を最適化することにより、異物混
入の潤滑条件下でも所望の軸受寿命を確保することがで
きるということが判明した。
【0039】そこで、本発明に係る転がり軸受は、軌道
輪を構成する内輪又は外輪の内の少なくとも一方がβ型
チタン合金で形成され、且つ冷間加工率が20%以上に
設定され、さらに前記β型チタン合金中の残留β相が体
積比で30〜80%に設定されていることを第4の特徴
としている。
【0040】また、該第4の特徴においても、上記第3
の特徴と同様、冷間加工後にショットビーニング処理を
施すことを条件に冷間加工率を5〜20%とすることに
より靱性と表面硬さを両立させることができる転がり軸
受を得ることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0042】〔第1の実施の形態〕本発明の第1の実施
の形態に係る転がり軸受は、軌道輪の内、少なくとも内
輪がチタン合金で形成され、転動体はセラミックスで形
成されている。
【0043】以下、軌道輪及び転動体にこれらの材料を
使用した理由について述べる。
【0044】(1)軌道輪 軌道輪にチタン合金を使用した場合は、軌道輪にステン
レス鋼を使用した場合に比べ耐食性が大幅に改善され
る。
【0045】チタンの耐食性は、ステンレス鋼と同様、
表面に安定な不動態皮膜が形成されるためであるが、該
チタンの不動態皮膜はTiO2(又はTi23)である
とされており(例えば、伊藤伍郎著;改訂 腐食科学と
防食技術、282頁(コロナ社、1979年)参照)、
チタンの優れた耐食性は該チタンの不動態皮膜特有の性
質によるものである。
【0046】すなわち、チタンの不動態皮膜であるTi
2は、酸素過電圧が高く、電位を上げていくとアノー
ド酸化が進行し、高温、高濃度の硝酸中のように高温、
高濃度の酸化性雰囲気中であっても優れた耐食性を有
し、ステンレス鋼のように過不動態による腐食現象が生
じない。
【0047】一方、TiO2は、塩酸や硫酸のような非
酸化性環境下においては腐食されやすいが、ステンレス
鋼に比べると腐食されにくい。しかも、TiO2は不動
態皮膜を形成するための不動態化電位が低いため、極微
量の酸化剤を腐食性溶液中に添加し、該酸化剤が添加さ
れた腐食性溶液にチタン合金を浸漬するだけでチタン合
金は容易に不動態化する。したがって、チタン合金は塩
酸や硫酸等の非酸化性環境下においても耐食性を発揮す
ることができる材料である。
【0048】また、塩化物イオンに対しては不動態皮膜
は強固となり、該不動態皮膜が破られることもなく、こ
のためステンレス鋼で問題となる孔食や隙間腐食、応力
腐食割れ等が発生しにくく、したがって、海水に対して
は極めて優れた耐食性を有し、海水が軸受中に混入して
も使用が不可能となることもない。
【0049】さらに、チタン合金は、多くの有機酸に対
しても優れた耐食性を有し、冷間加工性の低下や不純物
元素による劣化を生じることもない。
【0050】このようにチタン合金は、ステンレス鋼に
比べて極めて優れた耐食性を有している。
【0051】また、耐食性に関し、チタン合金とSi3
4等のセラミックス材料とを比較した場合、チタン合
金はNaOHやKOH等のアルカリ性溶液の一部に対し
ては所謂全面腐食が生じるため、斯かるアルカリ環境下
での使用は不適当であるが、該アルカリ環境以外の特殊
環境下ではセラミックスと同等の耐食性を有する。
【0052】また、セラミックス材料は靱性が低く、大
きな衝撃荷重が加えられる使用条件下で使用するのは好
ましくないのに対し、チタン合金は例えばSi34に比
べて約3倍の靱性を有している。すなわち、チタン合金
は靱性に関してはステンレス鋼と同等程度の靱性を有し
ており、チタン合金を軌道輪材料に使用した場合は、セ
ラミックスを軌道輪材料に使用した場合に比べ、軸受破
損等の事故が起こる可能性は極めて低い。
【0053】さらに、セラミックスは、金属材料のよう
な塑性加工を行うことができないため、粉末原料をリン
グ状に圧粉成形し、その後焼結処理を施し、HIP(Ho
t Isostatic Pressing)による緻密化を行った後に研削
加工を行うという一連の複雑な製造工程を経て軌道輪製
造を行わなければならず、金属材料に比べて生産性に劣
り、また大型軌道輪の製造が困難であり、しかも研削加
工性も金属材料に比べて著しく劣るため、製造コストも
高くなる。
【0054】一方、チタン合金はステンレス鋼のような
鉄鋼材料に比べると加工性は劣るが、十分な塑性変形能
を有しており、またセラミックスに比べると研削加工性
に優れており、しかも鉄鋼材料の加工設備を流用するこ
とが可能であるため既存の設備を使用することもでき、
新たな設備投資をする必要もなく、製造コストも安価で
済む。
【0055】また、チタン合金は非磁性材料であるた
め、半導体製造装置や超伝導関係機器等の磁場環境下で
使用される場合においても、磁場に乱れが生じるのを回
避することができ、また磁場に起因した軸受の回転トル
クの増大や変動を抑制することができる。
【0056】尚、斯かる回転トルクの増大や変動の抑制
等は、転動体に非磁性のセラミックスを使用することに
より、一層顕著な効果を奏するものとなる。
【0057】一方、高速回転する工作機械においても軸
受温度の上昇を回避するためには軌道輪、特に内輪にチ
タン合金を使うのが効果的である。
【0058】すなわち、〔発明が解決しようとする課
題〕の項でも述べたように、軸受が高速回転する場合に
生じる軸受温度の上昇は、高速回転に伴って軸受すきま
が減少することが原因であるが、該軸受すきまの減少
は、内輪と外輪との温度差による内輪の熱膨張量によっ
て生じるのみならず、回転軸の回転によって生じる遠心
力に起因した内輪の膨張も大きな影響を及ぼす。
【0059】したがって、高速回転に伴う軸受温度の上
昇を抑制するためには、熱膨張量を抑えるべく線膨張係
数が小さい材料を選定し、また遠心力を小さくするため
には密度の小さい材料を選定する必要がある。
【0060】しかるに、チタン合金としてのTi−6A
l−4V合金とステンレス鋼としてのSUS440Cと
を比較した場合、Ti−6Al−4V合金の線膨張係数
は、SUS440Cの80%と小さく、したがって、ス
テンレス鋼を内輪材料に使用した場合に比べ、内外輪の
温度差に伴う軸受すきまの減少量を大幅に小さくするこ
とが可能である。
【0061】さらに、Ti−6Al−4V合金の密度は
SUS440Cの密度の約60%程度と小さく、その結
果、ステンレス鋼を使用した場合に比べて遠心力が低下
し、これにより内輪の膨張量も減少する。
【0062】このようにチタン合金を内輪に使用するこ
とにより、高速回転時における軸受すきまが小さくなる
のを回避することができ、摩擦の増大を抑制することが
でき、結果として軸受温度の上昇を抑制することができ
る。
【0063】また、所定荷重下、軌道輪と転動体とが接
触すると接触部が弾性変形して接触楕円が形成され、ま
た該接触楕円の大きさは、軌道輪と転動体のヤング率に
依存する。
【0064】しかるに、セラミックスは金属材料に比べ
てヤング率が大きいため殆ど弾性変形が生じず、したが
って転動体にセラミックスを使用した場合は転動体に金
属材料を使用した場合に比べて軌道輪は高い面圧を受け
る。一方、チタン合金はステンレス鋼に比べてヤング率
が約1/2と小さい。したがって、軌道輪にチタン合金
を使用した場合は、軌道輪にステンレス鋼を使用した場
合に比べて上述した接触楕円が大きくなり、このため接
触面圧が小さくなる。よって、軌道輪にチタン合金を使
用することにより、セラミックス製の転動体を使用した
場合に生じ得る接触面圧の増大を緩和することができ、
軸受の転がり疲れ寿命も向上させることができる。
【0065】軌道輪に使用するチタン合金としては、熱
処理により高強度、高靱性が得られるTi−6Al−4
V、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−2Sn−
4Zr−6Mo等の(α+β)型チタン合金、或いはT
i−15Mo−5Zr、Ti−15Mo−5Zr−3A
l、Ti−15V−3Sn−3Al−3Cr、Ti−1
0V−2Fe−3Al、Ti−3Al−8V−6Cr−
4Zr、Ti−22V−3Al等のβ型チタン合金を使
用することができる。
【0066】上記列挙したチタン合金のうち、加工性を
考慮すると冷間加工性に優れたβ型チタン合金を使用す
るのが望ましく、さらに、β型チタン合金の中でも特に
優れた耐食性を有するTi−15Mo−5Zr、Ti−
15Mo−5Zr−3Al等のTi−15Mo系チタン
合金を使用するのが好ましい。
【0067】また、(α+β)型チタン合金は、Tiよ
りも密度の小さい合金元素の添加量が多く、遠心力の抑
制という点からは質量の小さい(α+β)型チタン合金
を使用するのが好ましい。
【0068】尚、軸受としての強度を確保するために
は、熱処理により(α+β)の二相組織として強化され
ていることが必要である。
【0069】また、純チタンやTi−0.3Mo−0.
8Ni等のα型チタン合金はミクロ組織がα単相である
ため、上述した(α+β)型チタン合金やβ型チタン合
金に比べて強度が低く、前記軌道輪材料には適さない。
【0070】また、軸受として耐え得るためには軌道輪
の表面硬さHRCが一般に57以上必要とされている
が、上記チタン合金を軌道輪として使用した場合は、溶
体化処理を施した後に時効処理を施して材料を硬化した
場合であっても、表面硬さHRCが40〜45程度の硬
さしか得られず、したがって軸受として必要な表面硬さ
を得ることができず、また耐焼付け性に劣り、凝着摩耗
が生じる虞がある。
【0071】そこで、所望の表面硬さHRCを得るため
に大気酸化処理、ガス窒化処理、ホウ化処理、湿式メッ
キ、CVD法又はPVD法によるTiC或いはTiNの
コーティング処理、及びイオン注入等の表面処理を上記
チタン合金に施すのが望ましく、処理の簡便性を考慮す
ると大気酸化処理又はガス窒化処理を施すのが好まし
い。
【0072】尚、本実施の形態では、軌道輪のうち、少
なくとも内輪をチタン合金で形成しているが、食品機械
や半導体製造装置、化学繊維製造機等の水分や海水、化
学薬品などの耐食性の要求される環境下では、より優れ
た耐食性を得るためには内外輪共にチタン合金で形成す
るのが好ましい実施の形態であり、高速回転で使用され
る工作機械等においては、内輪の温度上昇を抑制するの
が重要であることから、内輪についてはチタン合金を使
用する必要があるが、外輪については内輪のチタン合金
よりも線膨脹係数が大きいSUJ2またはステンレス鋼
等の鋼種を使用するのが好ましい実施の形態である。
【0073】(2)転動体 本実施の形態では、転動体材料としてセラミックスを使
用しているが、その理由は以下の通りである。
【0074】セラミックスは絶縁体であるので、転動体
にセラミックスを使用した場合はチタン合金で形成され
た軌道輪と前記転動体とが接触しても所謂ガルバニック
腐食が生じることがなく金属材料に比べて極めて優れた
耐食性を得ることができる。
【0075】また、セラミックスは非磁性材料であるの
で、磁場環境下で使用した場合であっても軸受の回転ト
ルク変動等が生じることもなく、半導体製造装置や超伝
導関係機器等の非磁性が要求される特殊環境下で使用す
るのに適している。
【0076】また、セラミックスはステンレス鋼に比べ
て密度が小さく、例えは、セラミックスとしてのSi3
4とステンレス鋼としてのSUS440Cとを比較し
た場合、Si34の密度はSUS440Cの約40%で
ある。したがって、転動体に密度の小さいセラミックス
を使用することにより、転動体の軽量化が可能となり、
転がり軸受を高速回転させる場合の転動体の遠心力によ
る外輪への負荷荷重を軽減することができ、耐久性の低
下を防止することができる。
【0077】すなわち、転がり軸受を高速回転させる場
合、高速回転に伴う遠心力の増加により転動体が外輪に
付与する負荷荷重は無視できなくなって転動体と外輪と
の接触荷重が増加し、軸受寿命の低下や摩擦による発熱
量の増大を招く。しかも、転動体の遠心力は、周知の如
く転動体の質量に比例するため転動体の重量が大きくな
ればなる程上記接触荷重が増大する。
【0078】そこで、本実施の形態では、転動体材料と
してセラミックを使用することにより、転動体の重量を
軽減し、これにより摩擦による発熱量を抑制し、軸受寿
命が低下するのを回避している。
【0079】また、アンギュラ玉軸受のように接触角を
有する転がり軸受においては、転動体にジャイロモーメ
ントが作用し、該ジャイロモーメントが転動体と軌道輪
との接触部における摩擦力よりも大きくなるとスキッデ
ィングと呼称される激しい公転滑りが生じて摩耗が激し
くなるが、転動体を軽量化することにより、前記ジャイ
ロモーメントを減少させることもできる。
【0080】さらに、転動体が、軌道輪と同様に耐食性
に優れたチタン合金で形成されている場合は、転動体と
軌道輪とが同一材料で形成されることとなって凝着作用
が強くなり、その結果焼付きやかじりが生じやすくな
る。これに対して転動体材料がセラミックスで形成され
ている場合は、軌道輪と転動体とは異種材料からなるこ
ととなり、耐焼付き性、耐かじり性が向上する。特にチ
タン合金は活性な金属であるため耐焼付き性には劣り、
したがって転動体材料としてセラミックスを使用するこ
とにより軌道輪に使用されるチタン合金の耐焼付き性を
改善することもできる。
【0081】転動体材料として使用されるセラミックス
としては、Si34の他、サイアロン(SiAlO
N)、ジルコニア(ZrO2)、炭化珪素(SiC)、
アルミナ(Al23)等を使用することができるが、S
34は密度が小さく、線膨張係数も小さく、更には熱
衝撃に対しても強く、曲げ強さや破壊靱性に優れてお
り、特に高速回転下で使用される転動体材料として好適
する。
【0082】尚、本発明は上記実施の形態に限定される
ものではなく、例えば、耐食性が要求される環境下にお
いては、転動体材料としてステンレス鋼を使用するのも
用途によっては好ましい実施の形態である。
【0083】すなわち、転動体にステンレス鋼を使用し
た場合は、転動体にセラミックス材料を使用した場合と
同様、軌道輪であるチタン合金とは異種材料であり、軸
受が回転すると異種の金属同士が接触することとなる。
【0084】そして、一般的には、異種金属が溶液中で
接触した場合は、ガルバニック腐食により電気化学的に
卑な金属の腐食速度が加速される。したがって、海水中
において、チタン合金からなる軌道輪とチタン合金より
も電気化学的に卑なステンレス鋼からなる転動体とが接
触した場合、転動体の腐食が顕著になり、軸受寿命の大
幅な低下を招来する虞があるとも考えられる。
【0085】しかしながら、海水中での腐食電位列は上
述したようにチタン合金は貴であり、ステンレス鋼は卑
であるが、その電位差は極めて小さいため(例えば、
(社)日本チタン協会編;チタン加工技術 208頁
(日刊工業新聞社、1992年))、海水中でチタン合
金とステンレス鋼とを接触させてもガルバニック腐食は
殆ど生じない。
【0086】したがって、使用箇所によっては転動体材
料として汎用のステンレス鋼を使用することも可能であ
る。すなわち、使用箇所によっては高価なセラミックを
転動体材料として使用しなくとも転動体材料としてステ
ンレス鋼を使用することにより耐食性を維持することが
可能であり、コストの低廉化を図ることができる。しか
も、ステンレス鋼を転動体材料として使用することによ
り、弾性変形が殆どないセラミックス材料に比べて接触
面圧を低くすることも可能である。
【0087】〔第2の実施の形態〕本発明の第2の実施
の形態に係る転がり軸受は、軌道輪を構成する内輪又は
外輪のうちの少なくとも一方がβ型チタン合金で形成さ
れ、該軌道輪の冷間加工率が20%以上に設定されてい
る。
【0088】耐食性に優れたチタン合金の中でもβ型チ
タン合金は高強度を有し、且つ溶体化状態での冷間加工
性に優れている。すなわち、β型チタン合金を所定の溶
体化温度で溶体化処理を施した後、急冷することにより
体心立方格子(bcc)構造を有する柔らかいβ相の単
相状態が室温で得られる。そして、β型チタン合金に属
する材料の中には数式(1)で示される冷間加工率ηが
90%以上となるような強化加工が可能なものがあり、
これにより施削工程を省略することが可能となる。
【0089】 η={(l0−l)/l0}×100 …(1) ここで、l0は冷間加工前の高さ寸法、lは冷間加工後
の高さ寸法である。
【0090】すなわち、チタン合金は耐食性に優れるも
のの熱伝導率が小さいため、切削加工時に工具接触部が
発熱し、刃先に大きな応力が負荷されるため切削性に劣
るという欠点がある。そこで、本第2の実施の形態で
は、冷間加工性に優れたβ型チタン合金を使用し、該β
型チタン合金を溶体化処理して柔らかいβ相単相とした
後冷間加工を施す。そして、該冷間加工により多量の格
子欠陥が発生して転位が生じ、硬いα相がβ結晶粒内に
均一且つ微細に析出する。これにより、表面硬さHRC
及び材料強度が共に増大し、転がり軸受自体の耐久性向
上を図ることができる。
【0091】つまり、通常は溶体化処理後に時効処理を
施すことにより軸受材料を硬化することが行われるが、
溶体化処理後に冷間加工を施すことなく時効処理を施し
た場合は、時効処理によって析出するα相がβ結晶粒界
に層状に優先的に析出するため、β結晶粒内におけるα
相の析出量が少なく、したがって時効組織が極めて不均
一なものとなる。
【0092】これに対して、溶体化処理後に冷間加工を
施し、しかる後に時効処理を施した場合は、冷間加工
(塑性加工)によって転位が多量にβ結晶粒内に導入さ
れ、時効処理時には前記転位がα相析出のための核生成
素地となり、硬いα相が均一且つ微細に柔らかいβ結晶
粒内に析出し、材料の表面硬さが増大する。
【0093】すなわち、溶体化処理後に冷間加工を施す
ことなく時効処理を施したβ型チタン合金は表面硬さH
RCが40〜48程度の硬さしか有さないのに対し、溶
体化処理後に冷間加工を施し、その後に時効処理を施し
たチタン合金は表面硬さHRCが57以上の硬さを確保
することができ、因って材料強度が増大し転がり軸受の
耐久性向上を図ることができる。
【0094】次に、溶体化処理温度、冷間加工率η及び
時効処理時間Tについて説明する。
【0095】(1)溶体化処理温度 βトランザス、すなわちβ相が(α+β)相に変態する
変態点以下の温度で溶体化処理を施した場合は初析α相
が析出して加工性が著しく低下する。したがって、溶体
化処理温度としては少なくともβトランザス以上の温度
を確保する必要がある。一方、溶体化処理温度を過度に
高く設定して溶体化処理を施すとβ結晶粒が著しく粗大
化して強度の低下を招来する。このため、本実施の形態
では溶体化処理温度をβトランザス〜(βトランザス+
150℃)に設定した。
【0096】(2)冷間加工率η 溶体化処理後に冷間加工を施すことにより、該冷間加工
後の時効処理により得られる材料は表面硬さHRCや強
度が向上したものとなり、後述するように時効時間の短
縮も可能であるが、冷間加工により導入される転位の密
度が変化するため、表面硬さHRCや強度にも影響を及
ぼす。すなわち、冷間加工率ηを20%以下に設定した
場合は、転位が不均一であって時効処理時に粒界に析出
するα相が多くなり、しかもα相が粒界に層状に析出す
るとβ結晶粒とα相との界面で破壊が生じ易くなって却
って強度が低下する。
【0097】一方、冷間加工率ηが20%以上になると
結晶粒内に均一に転位が導入され、時効処理時には前記
転位を核生成素地として、α相がβ結晶粒内に均一且つ
微細に析出し、表面硬さHRC及び強度が向上する。
【0098】そして、冷間加工による加工強化の程度
は、数式(2)に示すn次硬化則に従うと考えられる。
【0099】σ=AEn …(2) ここで、σは真応力、Eは真歪み、Aは強化係数、nは
加工硬化指数である。β型チタン合金の場合は加工硬化
指数は鉄鋼材料に比べて小さく、完全塑性体に近いた
め、冷間加工率ηを上昇させていっても問題はなく、特
に冷間加工率ηが30%以上の領域では安定した硬度を
有する軸受材料を得ることができる。したがって、所定
の高さ寸法lが得られるように20%以上の冷間加工率
ηで冷間加工を施せば良いこととなる。
【0100】これらの観点から、本実施の形態では冷間
加工率ηを20%以上、好ましくは30%以上に設定し
た。
【0101】(3)時効処理時間T 上述したように冷間加工時に導入される転位が核生成素
地となってβ結晶粒内へのα相の析出が促進され、その
結果過時効状態になるまでの時間も短縮されるため、時
効処理時間Tの大幅な短縮が可能となる。ところが、過
度に長時間に亙って時効処理を施すと過時効状態となっ
て硬いα相が粗大化するため、却って材料が軟化し、表
面硬さHRCが低下して軸受寿命の低下を招く。また、
時効処理時間Tを過度に長時間に設定すると最終安定相
としての金属間化合物が析出して軸受材料が著しく脆化
し、その結果、表面硬さや水中寿命の低下を招来する虞
がある。そこで、かかる観点から、時効処理時間Tの好
ましい範囲として、本実施の形態では5〜10時間に設
定した。
【0102】図1は本実施の形態により製造される軸受
材料の製造方法を示した製造工程図である。
【0103】すなわち、まず、β型チタン合金をAr雰
囲気中あるいは真空中、溶体化処理温度(但し、βトラ
ンザス〜(βトランザス+150℃)、例えば800℃
〜1000℃)で液体化処理を施した後、急冷してbc
c構造の柔らかいβ相単相とし、次いで冷間加工率ηを
20%以上に設定して冷間加工を施し、材料を軌道輪形
状に成形する。ここで、軌道輪の成形方法としては、施
削加工に要する工数を極力削減すべくニアネットシェイ
プ(準仕上がり形状)成形するのが望ましく、したがっ
て冷間ローリング鍛造により冷間加工するのが好まし
い。このようにして冷間加工を施した後、温度400〜
550℃で5〜10時間程度の時効処理を施す。これに
より、α相がβ結晶粒内に均一且つ微細に析出した軌道
輪材料を作製することができ、研摩工程等所定の仕上げ
工程を経て最終的にβ型チタン合金からなる軌道輪を得
ることができる。
【0104】尚、β型チタン合金は、上述したように冷
間加工性に優れているため、その種類については特に限
定されるものではないが、β型チタン合金に属する合金
であっても合金組成によっては残留β相が不安定とな
り、冷間加工が施された場合に加工誘起マルテンサイト
が形成されることがある。しかしながら、前記加工誘起
マルテンサイトは冷間加工率ηが大きくなると割れが発
生する虞があるため、β型チタン合金の中でも前記加工
誘起マルテンサイトが形成されにくいβ型チタン合金を
使用するのが望ましく、特に耐食性が要求される部位に
はTi−15Mo−5Zr、Ti−15Mo−5Zr−
3Al等のTi−Mo系β型チタン合金を使用するのが
好ましい。
【0105】〔第3の実施の形態〕本発明の第3の実施
の形態に係る転がり軸受は、軌道輪を構成する内輪又は
外輪の内の少なくとも一方がβ型チタン合金で形成さ
れ、且つ冷間加工率が5%〜20%にに設定され、さら
に冷間加工後にショットピーニング処理がなされてい
る。
【0106】すなわち、本第3の実施の形態は、図2に
示すように、第2の実施の形態と同様の条件で溶体化処
理を行ない、急冷した後冷間ローリング鍛造等の冷間加
工を施し、その後ショットピーニング処理を施し、最後
に時効処理を施すことにより、表面硬さHvが600以
上の表面硬さを有する転がり軸受を製造している。
【0107】このようにショットピーニング処理を施す
ことによりβ型チタン合金の表面層が硬化するのは以下
の理由による。
【0108】すなわち、溶体化処理後に急冷して組織を
β相単相とした後にショットピーニング処理を施すこと
により、表面層には塑性変形が生じて多量の転位が導入
され、その後時効処理を施すことにより、前記塑性変形
した表面層には高密度の転位を核発生部として硬いα相
が析出する。そして、前記表面層は、ショットピーニン
グ処理により塑性変形しない芯部に比べてα相の析出す
る核発生箇所が多くなり、その結果、冷間加工を施した
場合と同様、表面層にはα相が微細且つ均一に析出して
表面層のみを大幅に硬化する。
【0109】しかしながら、上述の如く、β型チタン合
金材料に溶体化処理を施した後にショットピーニング処
理を施したのみでは付与される加工歪みとその深さに限
界があるため、表面硬さの増加にも限界がある。
【0110】そこで、本第3の実施の形態では、冷間加
工率を5〜20%に設定して冷間加工を施し、その後シ
ョットピーニング処理を施すことにより、良好な靱性を
有すると共に表面硬さHvが600以上の転がり軸受を
得たものである。
【0111】このように冷間加工の冷間加工率を5〜2
0%に設定したのは以下の理由による。
【0112】すなわち、冷間加工を施した場合は金属組
織が芯部まで硬化して靱性が損なわれる虞があるため、
良好な靱性を得る観点からは冷間加工を施さないか、或
いは冷間加工を施すとしても低加工率でもって施すのが
望ましい。しかしながら、冷間加工率が5%未満の場合
はショットピーニング処理を施しても表面硬さHvが6
00以下となって転がり軸受に要求される表面硬さを得
ることができない。一方、冷間加工率が20%を超える
場合は靱性の低下が顕著になる。したがって、本実施の
形態では冷間加工率を5〜20%に設定した。
【0113】このように冷間加工率を5〜20%の低加
工率に設定し、且つショットピーニング処理を施すこと
により高冷間加工率を施したのと同等の大きな加工歪み
が表面層に付与されることとなり、その後の時効処理に
よりチタン合金の芯部は靱性が損なわれない程度に時効
硬化が進行し、表面層に硬いα相の微細析出が進行して
硬化する。
【0114】このようにして本第3の実施の形態は、靱
性が必要とされる箇所で使用する場合に好適した転がり
軸受を得ることができる。
【0115】図3は本第3の実施の形態の変形例を示す
製造工程図であって、本変形例では時効処理後に再度シ
ョットピーニング処理を施している。
【0116】ショットピーニング処理には元来表面層の
残留圧縮応力を付与して疲労強度を向上させるという作
用がある。
【0117】しかしながら、冷間加工後のショットピー
ニング処理においては、表面硬さを増大させることはで
きるものの、ショットピーニング処理により付与された
加工歪みは時効処理工程における長時間の加熱・保持に
よって解放されるため、時効処理完了後においては残留
圧縮応力が低下し、その結果疲労強度の向上を図ること
ができなくなる虞がある。
【0118】そこで、本変形例では、図3に示すよう
に、時効処理後に再度ショットピーニング処理を施すこ
とによって高い残留圧縮応力を表面層に付与し、疲労強
度の向上を図っている。
【0119】すなわち、軌道輪材料としてβ型チタン合
金を使用した場合、残留β相に塑性変形を加えても時効
処理後の残留β相にはβ相安定化元素が濃縮してβ相の
安定度が高まっているため、ステンレス鋼等の鋼製材料
と異なり加工誘起マルテンサイト変態が生じない。しか
しながら、残留β相は塑性変形能が非常に大きいため、
ショットピーニング処理を施した場合、鋼製材料に比べ
て多量の加工歪みを蓄積することができ、その結果β型
チタン合金には高い残留圧縮応力を付与することが可能
となり、疲労強度を向上の向上を図ることができる。
【0120】本変形例では、疲労寿命、疲労強度が特に
要求される箇所に好適した転がり軸受を得ることができ
る。
【0121】〔第4の実施の形態〕本発明の第4の実施
の形態に係る転がり軸受は、軌道輪を構成する内輪又は
外輪の内の少なくとも一方がβ型チタン合金で形成さ
れ、且つ冷間加工率が20%以上に設定され、さらに前
記β型チタン合金中の残留β相が体積比で30〜80vo
l%に設定されている。
【0122】異物混入の潤滑条件下では、該異物により
軌道輪の表面層には圧痕が形成され、軸受寿命の低下す
る虞がある。このため、ステンレス鋼等の鋼製材料にお
いては、〔課題を解決するための手段〕の項で述べたよ
うに、圧痕が生じてから該圧痕のエッジ部にクラックが
発生するまでの間における、転動体が通過する毎に繰り
返される接触により、前記圧痕のエッジ部を塑性変形さ
せて該圧痕のエッジ部での応力集中を緩和させ、これに
より、異物混入の潤滑条件下における軸受寿命の向上を
図っている。
【0123】すなわち、鋼製材料に含有される残留オー
ステナイトは塑性変形が生じやすい軟質の組織であり、
潤滑剤中に混入した異物によって軌道輪の表面層に圧痕
が生じた際に該圧痕のエッジ部で高い応力集中を受けた
場合は、容易に塑性変形が生じると同時に応力誘起変態
が生じて硬いマルテンサイト組織に変態する。そして、
その結果前記圧痕のエッジ部の硬さが上昇し、応力集中
の低下と硬さの上昇とが均衡するところで塑性変形が生
じなくなる。すなわち、鋼製材料の場合は、異物が混入
した潤滑条件下で残留オーステナイト組織が応力緩和と
マルテンサイトへの変態による疲労強度の向上という作
用を発揮して軸受寿命の向上を惹起する。
【0124】そして、β型チタン合金の場合は残留β相
が鋼製材料における残留オーステナイトと類似の作用を
奏する。すなわち、β型チタン合金においては、βトラ
ンザス以上のβ相領域の温度で溶体化処理を施した後、
急冷して室温状態で軟質の残留β相単相とし、次いで時
効処理を施すことにより、硬質のα相が表面層に均一且
つ微細に析出し、これにより、(α+β)組織が形成さ
れ表面硬さが増大する。
【0125】すなわち、β型チタン合金は、軟質なβ相
の組織中に硬質なα相が析出した二相組織となる。そし
て、異物が混入する潤滑条件下では、残留β相が軟質で
あるため、圧痕が生じてから該圧痕のエッジ部にクラッ
クが発生する迄の間において、転動体が通過する毎に繰
り返される接触によって前記圧痕のエッジ部が塑性変形
し、該圧痕のエッジ部での応力集中が緩和される。
【0126】しかも、β型チタン合金の場合は、鋼製材
料と異なり、時効処理を施すことにより(α+β)の二
相組織が形成されるため、β相中にβ安定化元素が濃縮
されてβ相の安定性が上昇し、加工によるマルテンサイ
ト変態が生じず、圧痕周辺部の硬さは強化されない。
【0127】すなわち、β型チタン合金の残留β相は変
形能が極めて大きいために繰り返し圧痕が形成され、そ
の結果その後の転動体の通過による接触でも圧痕が容易
に塑性変形して応力集中を緩和でき、さらに、加工硬化
指数n(第2の実施の形態の数式(2)参照)が鋼製材
料に較べて小さい点が有効に作用し、繰り返し塑性変形
を受けて多量の歪みが導入されても極端な硬化は生じな
いためクラックが発生しにくく、異物が混入した潤滑条
件下での軸受寿命の向上を図ることができる。
【0128】尚、本第4の実施の形態でも、溶体化処理
及び時効処理を施したのみでは軸受に要求される表面硬
さHvを得ることができないため、第2及び第3の実施
の形態と同様、溶体化処理を施し、急冷した後に冷間加
工を施すことが必要となる。
【0129】以下、残留β相、冷間加工率η及び時効処
理温度について説明する。
【0130】(1)残留β相 上述したように残留β相の存在は異物混入した潤滑条件
下においても軸受寿命の低下を回避するのに効果的であ
るが、残留β相が30 vol%未満の場合は軸受材料中の
残留β相の比率が小さすぎ、異物混入した潤滑条件下で
は安定した高い軸受寿命を得ることができない。一方、
残留β相は軟質であるため、残留β相が多すぎる場合は
転がり軸受として必要な硬さが不足して所望の軸受寿命
を得ることができない。具体的には、残留β相が80 v
ol%を超える場合は、β型チタン合金中のα相の表面層
への析出が少ないため時効処理の初期段階での表面硬さ
が十分でなく、その結果時効処理後においても所望の表
面硬さを得ることができず、所望の軸受寿命を得ること
ができない。したがって、残留β相の体積比で30〜8
0 vol%とする必要がある。
【0131】(2)冷間加工率η 上記第2の実施の形態でも述べたように、溶体化処理後
に冷間ローリング鍛造等の冷間加工を施すことにより、
その後の時効処理によって表面硬さHRCや強度の向上
を図ることができる。すなわち、冷間加工を施すことに
より、結晶粒内に均一に転位が導入され、時効処理時に
は前記転位を核生成素地として、α相がβ結晶粒内に均
一且つ微細に析出し、表面硬さHRC及び強度を向上さ
せることができるが、そのためには、通常は第2の実施
の形態と同様、冷間加工率ηが20%以上、好ましくは
30%以上が必要である。
【0132】但し、靱性の確保を重視したい場合は、第
3の実施の形態で述べたように、冷間加工後にショット
ピーニング処理を施すことを条件に冷間加工率ηを5〜
20%とするのが好ましい。
【0133】(3)時効処理温度 冷間加工後には所定の時効処理を施して時効硬化を行な
う必要があるが、時効処理温度が400℃未満ではω相
が優先的に析出する。そして、このω相は表面層を著し
く硬化させるものの、脆性的作用を有するため、該ω相
の析出は極力避ける必要がある。一方、時効処理温度が
550℃を超える場合は硬質のα相が表面層に短時間で
析出するが、粒界反応型の析出が支配的となるため、残
留β相粒界にα相が優先的に層状に析出し、β粒内では
粗大な針状のα相が析出して表面硬化に支障を来す。硬
さを向上させるには時効処理温度を低くするのが好まし
いが、処理時間が長くなる。したがって、時効処理温度
としては、450〜500℃に設定するのが望ましい。
【0134】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0135】〔第1の実施例〕本願出願人は、各種チタ
ン合金及び各種鋼材について軌道輪としての円盤状試験
片を作製した。
【0136】表1は各種試験片の材料名と、表面硬化処
理方法、溶体化処理条件(又は焼入条件)、及び時効処
理条件(又は焼戻条件)を示している。
【0137】
【表1】 軌道輪A及びBは(α+β)型チタン合金で作製し、軌
道輪C〜Fはβ型チタン合金で作製し、また、軌道輪G
〜Hはα型チタン合金、軌道輪Iは純チタン(JIS3
種)で夫々作製し、軌道輪J〜Mは所定の鋼材で作製し
ている。
【0138】また、チタン合金を使用した軌道輪A〜H
及び純チタンを使用した軌道輪Iについては、表面処理
として加熱温度850℃の下、ガス窒化処理を施した
後、窒素冷却を行った。そして、軌道輪A〜Fは730
〜950℃下、水冷又は油冷にて溶体化処理を施した
後、450〜590℃下、時効処理時間(4〜10時
間)時効処理を施して時効硬化を施した。一方、軌道輪
G〜Iについてはガス窒化処理を施した後、加熱温度7
00℃で焼鈍処理を施した。
【0139】また、軌道輪J、K、及びMについては焼
入温度850〜1050℃下、浸漬焼入処理を施し、加
熱温度180〜500℃の下、加熱温度1〜2時間で焼
戻処理を行った。
【0140】また、軌道輪Lは、加熱温度930℃、加
熱時間4時間の条件で浸炭処理を施した後、焼入温度8
50℃で焼入処理を行った後、加熱温度180℃、加熱
時間2時間の下、焼戻処理を施した。
【0141】表2は、軌道輪の表面硬さHRC及び、塩
水噴霧試験の試験結果、並びに転動体をSi34で作製
した場合の転がり軸受の水中寿命試験の試験結果を示
す。
【0142】
【表2】 比較例101、102に使用しているα型チタン合金、
及び比較例103に使用した純チタンは、熱処理によっ
て硬化せず、表面硬さHRCがいずれも47以下と低
く、軸受材料として十分な表面硬さを得ることができな
い。
【0143】これに対して実施例1及び実施例2に使用
している(α+β)型チタン合金、及び実施例3〜実施
例6に使用しているβ型チタン合金は熱処理によりいず
れも表面硬さHRCが57以上となり、軸受としての十
分な表面硬さを得ることができ、耐焼付き性に優れ、凝
着摩耗等が生じることのない軌道輪を得ることができる
ことが判る。
【0144】また、塩水噴霧試験は、5%NaCl水溶
液を使用し、35℃の温度条件下、前記5%NaCl水
溶液を各軌道輪A〜Mに150時間噴霧して行った。そ
して、噴霧後における各軌道輪A〜Mの腐食生成物を除
去した後、各軌道輪A〜Mの重量変化を測定し、1年当
たりの腐食速度を算出して耐塩水性を評価した。評価基
準は、腐食速度が0.13mm/年以下の場合を合格
(○)とし、0.13〜1.3mm/年以下の場合をや
や不良(△)とし、1.3mm/年以上の場合を不合格
(×)と判定した。
【0145】この表2から明らかなように、軌道輪に鋼
材を使用した比較例104〜107は、いずれも発錆が
著しく塩水に対して耐食性が不十分であるのに対し、軌
道輪にチタン合金を使用した実施例1〜6及び比較例1
01〜103は良好な試験結果が得られることが判っ
た。すなわち、耐塩水性に関し、軌道輪に鋼材を使用し
た場合は満足する結果を得ることができなかったがチタ
ン合金を使用した場合はβ型チタン合金及び(α+β)
型チタン合金のみならず、α型チタン合金及び純チタン
においても良好な結果を得た。
【0146】次に、水中寿命試験について説明する。
【0147】図4は水中寿命試験に供された水中スラス
ト寿命試験機の概略を示す構造図であって、各種軌道輪
(A〜M)とSi34製の転動体とを使用してスラスト
玉軸受1を組立て、試験槽2に該スラスト玉軸受1を浸
漬させ、回転軸7を回転させて下方から所定の試験荷重
を軸受に負荷し、水中寿命試験を行った。図中、3は内
輪、4は外輪、5は玉、6は保持器である。尚、試験槽
2に充満される水としては水道水を使用し、該水道水を
下方から供給して上方からオーバーフローさせた。
【0148】水中寿命試験の試験条件は以下の通りであ
る。
【0149】〔試験条件〕 試験軸受 :スラスト玉軸受(呼び番号5130
5) 回転軸の回転数:1000rpm 試験荷重 :150kgf 転動体材質 :Si34 保持器材質 :フッ素樹脂 水中寿命L10は、加速度ピックアップセンサにより検出
した各試験片の振動レベルについて、その10%が初期
値の5倍に到達した時点を水中における寿命と判定し、
この時点に達するまでの累積回転数をもって寿命を定量
的に評価した。
【0150】この表2から明らかなように、比較例10
1〜107は水中寿命L10が極めて短い。これは、比較
例101、102はα型チタン合金を使用しており、ま
た比較例103は純チタンを使用しているため、上述し
たように強度が低く、表面硬さHRCも低いため表面疲
労による剥離が早期に生じるのが原因と考えられる。ま
た、比較例104〜比較例107は、いずれも軌道輪と
して合金鋼を使用しているため、水中での腐食による摩
耗が激しくなり、軸受寿命は極めて短いものとなってい
る。
【0151】これに対して、実施例1〜実施例6は、軌
道輪にβ型チタン合金又は(α+β)型チタン合金を使
用した場合であり、Si34からなる転動体との組み合
わせにより水中寿命L10は飛躍的に向上していることが
判る。
【0152】〔第2の実施例〕次に、本願出願人は、転
動体にSUS440C、SUJ2を使用し、上記表1の
軌道輪(A〜M)とを組み合わせて上述と同様の塩水噴
霧試験及び水中寿命試験を行った。
【0153】表3は、軌道輪と転動体との組合せ、及び
その測定結果を示す。
【0154】
【表3】 比較例111〜比較例116から明らかなように、転動
体材料としてSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)を使用し
た場合は、軌道輪材料としてたとえβ型チタン合金や
(α+β)型チタン合金を使用した場合であっても水中
寿命L10が低い。これは、チタン合金とSUJ2との組
合せでは電気化学的に貴卑の差が大きいため、ガルバニ
ック腐食が生じて電気化学的に卑なSUJ2からなる転
動体の腐食が進行し、摩耗が激しくなるためである。
【0155】また、比較例117〜比較例119は軌道
輪にα型チタン合金又は純チタンを使用し、転動体にS
US440Cを使用した組合せであるが、軌道輪に使用
したα型チタン合金又は純チタンは強度に劣り、表面硬
さにも劣り、その結果、表面疲労による剥離が早期に生
じるため水中寿命L10も低い。また、比較例120は軌
道輪及び転動体共にSUS440Cを使用した場合であ
り、腐食速度が速くなり、水中での軸受寿命が低下する
のみならず、耐塩水性にも劣ることが判る。
【0156】これに対して、実施例11〜実施例16
は、軌道輪にβ型チタン合金又は(α+β)型チタン合
金を使用し、転動体にSUS440Cを使用した場合で
あり、軌道輪にSi34を使用した場合に比べれば水中
での軸受寿命は低下しているものの(表2参照)、チタ
ン合金はSUS440Cとの間には電気化学的な貴卑の
差異が少ないため、ガルバニック腐食の進行が抑制さ
れ、水中でも或る程度の軸受寿命を確保することができ
ることが判る。
【0157】上記第1及び第2の実施例から、軌道輪材
料として(α+β)型又はβ型のチタン合金を使用し、
転動体材料としてSi34を使用した組合せが耐食性に
対して最良の組合せであり、また転動体にSUS440
Cを使用した場合も用途によっては水中、又は海水下で
も十分に耐え得る軸受寿命を得ることができることが判
る。
【0158】〔第3の実施例〕次に、本願出願人は、各
種チタン合金及び鋼材を使用して組合せアンギュラ玉軸
受を作製し、高速回転時における軸受すきまの変化量及
び内輪の膨脹量を算出し、外輪の温度上昇量を測定し
た。
【0159】表4は実施例21、22及び比較例131
〜比較例136に使用した各種軸受材料と、溶体化処理
条件(焼入条件)及び時効処理条件(又は焼戻条件)を
示している。
【0160】
【表4】 実施例22、比較例134、136の内輪はβ型チタン
合金を使用し、実施例21、比較例133、135の内
輪は(α+β)型チタン合金を使用し、表4に示すよう
な条件で夫々溶体化処理及び時効処理を施した。
【0161】また、比較例131及132は合金鋼を使
用し、所定焼入温度で焼入処理を行い、また所定焼戻温
度で焼戻処理を行って内輪を作製した。
【0162】尚、チタン合金製の内輪については、耐摩
耗性及び耐焼付き性を確保するために軌道面にTiNを
コーティングした。
【0163】次に、実施例21、22及び比較例131
〜比較例136について図5に示す高速回転試験機を使
用し、高速回転時における軸受すきまの変化量及び内輪
の膨張量を算出し、外輪の温度上昇量を測定した。図
中、12は外輪、13は内輪、14は転動体である。
【0164】すなわち、外輪12をハウジング15に組
み込むと共に、内輪13を回転軸16に嵌合させて背面
組合せ型の組合せアンギュラ玉軸受11を高速回転試験
機に装着し、回転軸16を回転させ、ハウジング15に
挿着された熱電対17を使用して外輪12の温度を測定
した。
【0165】試験条件は以下の通りである。
【0166】〔高速試験〕 試験軸受 :背面組合せアンギュラ玉軸受(呼び番
7013C) 組込時予圧荷重:10kgf 潤滑方法 :グリース潤滑 使用グリース :イソフレックスNBU15(NOKク
リューバ(株)製) 回転軸の回転数:12000rpm 表5は高速回転試験の試験結果を示す。
【0167】
【表5】 尚、軸受すきまは内輪と外輪の温度差が7℃に達したと
きの変化量で評価した。
【0168】比較例131は、外輪にSUJ2、内輪に
SUS440C、転動体にSi34を使用した場合であ
るが、SUS440Cの線膨張係数はチタン合金の線膨
張係数に比べて大きいため、内外輪に7℃の温度差が生
じた状態で軸受すきまは減少し、またSUS440Cは
密度が大きいため遠心力による膨張量も大きく外輪の温
度上昇も大きくなっている。比較例132は、内輪及び
外輪をいずれもSUJ2で作製し、転動体をSi34
使用した場合であるが、内輪及び外輪をいずれもSUJ
2で作製しているため、軸受すきまの減少が著しく、ま
た内輪の膨張量及び外輪の温度上昇も高くなっている。
【0169】比較例133及び134は、外輪にSUJ
2、内輪にチタン合金、転動体にSi34 を使用した
場合であり、内輪にチタン合金を使用しているため軸受
すきまは減少せず増加傾向にあり、また内輪の膨張量も
小さいが、外輪の温度上昇が大きい。これは、転動体材
料としてセラミックスよりも密度の大きいSUJ2を使
用しているため転動体に付与される遠心力が大きくな
り、その結果軌道輪の軌道面と転動体の転動面との間の
摩擦が大きくなるためと考えられる。
【0170】比較例135及び136は、内輪及び外輪
をいずれもチタン合金で作製し、転動体をSi34を使
用した場合であるが、内輪及び外輪を同一材料で形成し
ているため、内外輪の温度差が7℃の状態で評価した場
合は、軸受すきまが減少して内輪の膨張量が大きくな
り、その結果外輪の温度上昇も大きくなる。したがっ
て、高速回転性を考慮すると、内外輪を同一材料で形成
するのは適さないことが判る。但し、チタン合金の線膨
張係数は、SUJ2の線膨張係数よりも小さいため、内
輪及び外輪をいずれもSUJ2で作製した比較例132
に比べると、軸受すきまの減少量が少なくて済み、した
がって、比較例132よりは外輪の温度上昇を若干抑制
することができる。
【0171】これに対して、実施例21及び22は、内
輪のチタン合金、転動体にSi34を使用しており、内
輪と外輪との間に7℃の温度差が生じた場合であって
も、軸受すきまの減少を回避して増加しており、また遠
心力による内輪の膨張量も比較例131〜136に比べ
ると遙に少なく、高速回転時の外輪温度上昇も10℃以
下に抑制することができ、高速回転に適したものとな
る。
【0172】このように本第3の実施例から明らかなよ
うに、内輪にチタン合金を使用し、外輪にSUJ2等の
鋼材を使用し、転動体にSi34を使用した組合せが工
作機械等の高速回転下で使用される軸受としては最適な
ものとなる。
【0173】〔第4の実施例〕次に、本願出願人は、β
型チタン合金としてのTi−15V−3Cr−3Sn−
3Alを使用して円盤状試験片を作製し、Ar雰囲気
中、850℃で溶体化処理を施した後、水冷し、種々の
冷間加工率ηでもって冷間圧延(冷間加工)を施した。
そしてその後450℃で5〜8時間の時効処理を施し、
時効処理後の表面硬さHvをビッカース試験機で測定し
た。
【0174】図6は冷間加工率ηと時効処理後のビッカ
ース硬さHvとの関係を示す特性図である。
【0175】尚、表面硬さHv(ビッカース硬さ)と表
面硬さHRC(ロックウェルC硬さ)との間には数式
(3)示すような関係がある。
【0176】Hv=10HRC+30 …(3) したがって、表面硬さHRCで57以上の硬さを確保す
るためには数式(3)より表面硬さHvで600以上を
有していることが必要となる。
【0177】しかしながら、この図6から明らかなよう
に冷間加工率ηが20%以下の場合は時効処理後の表面
硬さHvが600以下となって十分な硬さを得ることが
できない。これに対して冷間加工率ηが20%以上の場
合は時効処理後の表面硬さHvが600以上となって十
分な硬さを有する軸受材料を得ることができ、さらに冷
間加工率ηが30%以上の場合は硬さHvが600以上
の安定した硬さを有する軸受材料を得ることができるこ
とが判る。
【0178】次に、本願出願人は、上記Ti−15V−
3Cr−3Sn−3Alのβ型チタン合金を使用し、上
述と同様の条件で溶体化処理、水冷、冷間加工等を施し
た後、450℃の等温下、5〜50時間の時効処理を施
し、表面硬さHvを測定すると共に第1の実施例と同様
の条件で水中寿命試験を行った。
【0179】表6は種々の冷間加工率ηに対する硬さH
vと水中寿命L10の測定結果を示している。
【0180】
【表6】 この表6から明らかなように、比較例141〜144は
冷間加工率ηを25〜80%に設定して冷間加工を施し
ており、したがって20%以上の冷間加工率ηで冷間加
工を行っているが、時効処理時間Tが50時間と長時間
であるため軸受材料が軟化し、却って硬さHvや水中寿
命L10の低下を招来している。すなわち、比較例141
〜比較例144では時効処理時間Tが長すぎるため過時
効状態となって硬いα相が粗大化したり、粒界にα相が
析出し、却って硬さの低下を招来するものと思われる。
【0181】また、比較例145〜比較例151は冷間
加工率ηが20%以下であるため、硬さHv及び水中寿
命L10に関し、耐食性が要求される特殊環境下での使用
に耐え得る満足な結果を得ることができなかった。これ
は冷間加工率ηが低い場合には導入される転位が不均一
となるため、時効処理時においてα相がβ結晶粒内に均
一且つ微細に析出しにくくなり、このため強化の程度が
小さく、また、粒界にα相が優先的に析出して粒界強度
も低下して早期剥離が生じやすくなるためと考えられ
る。
【0182】これに対して、実施例41〜実施例48
は、冷間加工率ηが20%以上であり、しかも時効処理
時間Tが5〜7時間と短いため硬さHvが600以上を
確保することができ、十分なる水中寿命L10を得ること
ができることが判る。
【0183】次に、本願出願人は冷間加工率ηと最高硬
さに到達するまでの時効処理時間T(hr)との関係を
測定した。表7はその測定結果を示す。
【0184】
【表7】 この表7から明らかなように、比較例161では冷間加
工を施していないためめ最高硬さに到達するまでの時効
処理時間Tが7時間を要し、比較例162では冷間加工
率ηが15%と低いため前記時効処理時間Tが6時間を
要するの対し、冷間加工率ηが20%以上の実施例51
〜実施例54は前記時効処理時間Tが4〜5時間と短
く、α相のβ結晶粒内への析出を促進させる効果が大き
いことが判る。
【0185】〔第5の実施例〕次に、本願出願人は、冷
間加工を施し、次いでショットピーニング処理を施した
場合と、ショットピーニング処理を施さずに冷間加工の
みを施した場合とについて、冷間加工率ηと時効処理後
の表面硬さとの関係について調べた。
【0186】すなわち、β型チタン合金としてTi−1
5Mo−5Zrを使用し、Ar雰囲気中750℃で溶体
化処理を施した後水冷して残留β相単相組織とし、所定
の冷間加工率ηでもって冷間圧延(冷間加工)を施した
後、直圧式エアブラストマシンを使用してショットピー
ニング処理を施し、475℃の温度で5時間、時効処理
を施し、試験片を作製した。また、同様の条件でショッ
トピーニング処理を施さずに冷間加工のみを施した試験
片を作製した。尚、冷間加工率ηは各0、5、10、1
5、20、30、50%に設定して夫々試験片を作製し
た。
【0187】ショットピーニング条件は以下の通りであ
る。
【0188】〔ショットピーニング条件〕 そして、このようにして作製された各々の試験片に対
し、ビッカース硬さ測定機を使用して表面硬さHvを測
定した。
【0189】図7は、斯かる場合の冷間加工率ηと時効
処理後の表面硬さHvとの関係を示す特性図であって、
●は冷間加工後にショットピーニング処理を施した場合
を示し、○は冷間加工のみを施した場合を示す。
【0190】この図7から明らかなように、冷間加工の
みを施した場合は冷間加工率ηを20%以上に設定して
冷間加工を施さなければ表面硬さHvが600以上の軸
受材料を得ることができないのに対し、冷間加工後にシ
ョットピーニング処理を施す場合は冷間加工率ηを5%
にまで低下させた場合であっても表面硬さHvが600
以上の軸受材料を得ることができることが判る。そして
これにより、冷間加工率ηが低い場合は軸受材料の芯部
まで組織が硬化するのを回避することができ、良好な靱
性を確保することができる。
【0191】次に、本願出願人は、上述したTi−15
Mo−5Zrをβ型チタン合金を使用して上述と同様の
条件で、溶体化処理→水冷→冷間圧延→ショットピーニ
ング処理→時効処理を施し、表面硬さHv、残留圧縮応
力を測定し、さらに水中寿命試験を行なった。また、比
較例としてショットピーニングや冷間加工を施していな
い試験片を作製し、同様の実験を行なった。
【0192】ここで、残留圧縮応力の測定は、X線残留
応力測定装置を使用し、測定条件は以下の通りである。
【0193】〔残留圧縮応力測定条件〕 ターゲット:Cu−Kα フィルタ :Ni 管電圧 :40kV 管電流 :300mA 尚、水中寿命試験は第1の実施例と同様の試験機(図
4)を使用して同様の条件で行なったが、ショットピー
ニング処理を試験片に施した結果、軌道輪の表面粗さが
大きくなったため、この表面粗さの影響を除去するため
試験片の表面を研磨した後、水中寿命試験を行なった。
【0194】表8は冷間加工率ηの異なる種々の試験片
に対する各々測定結果を示している。
【0195】
【表8】 この表8から明らかなように、比較例171は冷間加工
処理及びショットピーニング処理のいずれも施さずに溶
体化処理を施した後に時効処理を施したのみであるため
表面硬さHvが低く、水中寿命L10も短い。
【0196】比較例172は、ショットピーニング処理
を施しており、α相が表面層に均一微細に析出するた
め、比較例171に比べて表面硬さHvの増加は認めら
れるが、溶体化処理後は冷間加工が全く施されずにショ
ットピーニング処理が施されたのみであるため表面硬さ
Hvは600以下となって軸受に要求される表面硬さH
vを得ることができない。また、比較例173は、比較
例172の条件に加えて時効処理後にもショットピーニ
ング処理を施しているため、残留圧縮応力が付与されて
いるものの、比較例172と同様、冷間加工が全く施さ
れていないため、軸受に要求される表面硬さHvを得る
ことができない。
【0197】また、比較例174は、冷間加工率ηが5
%という低加工率でもって冷間加工が施されているが、
ショットピーニング処理が全く施されていないため、軸
受に要求される表面硬さHvを得ることができない。ま
た、比較例175は、ショットピーニング処理が時効処
理後にも施されているため、残留圧縮応力が付与されて
いるものの、比較例174と同様、溶体化処理後に低加
工率でもっての冷間加工を施した後ショットピーニング
処理を施すこともなく時効処理を施しているため、軸受
に要求される表面硬さHvを得ることができない。
【0198】これに対して、実施例61〜実施例70
は、冷間加工率ηを5〜30%に設定して冷間加工を施
した後、ショットピーニング処理を施しているため、表
面硬さHvが600以上となり、しかも水中寿命L10
比較例171〜比較例175に比べ飛躍的に向上するこ
とが判る。
【0199】特に、実施例66〜実施例70は、時効処
理後にも再度ショットピーニング処理を施しているた
め、冷間加工率ηが同一の場合と比較すると更なる表面
硬さHvの増加をもたらすと共に、軸受材料には残留圧
縮応力が付与され、その結果水中寿命L10の向上を図る
ことができることが判る。
【0200】尚、実施例64、65、69及び70は、
冷間加工率ηが20%以上に設定されているため、軸受
材料の芯部まで硬化して靱性が低下する虞もあるが、表
面硬さHvは600以上を確保することができ、水中寿
命L10が低下することもない。したがって、靱性が要求
される部位に転がり軸受を使用する場合は冷間加工率η
を5〜20%に設定してショットピーニング処理を施し
た軸受材料を使用するのが望ましく、靱性が余り重要視
されず表面硬さが重要視される部位に転がり軸受を使用
する場合は、上記第4の実施例と同様、冷間加工率ηを
20%以上に設定してショットピーニングを施さずに時
効処理を施すのが望ましい。また、特に疲労強度の向上
を図りたい場合は、時効処理後にショットピーニング処
理を施して軸受材料に残留圧縮応力を付与するのが望ま
しい。
【0201】〔第6の実施例〕本願出願人は、時効処理
時間Tと残留β相及び表面硬さHvの関係、及び異物混
入条件下における残留β相と軸受寿命との関係について
調べた。
【0202】すなわち、β型チタン合金としてTi−1
5V−3Cr−3Sn−3Alを使用し、Ar雰囲気
下、800℃で溶体化処理を施し水冷して残留β相単相
とした後、冷間加工率ηを50%に設定して冷間圧延処
理を施し、その後時効処理温度を450℃に設定し、異
なる時効処理時間Tでもって時効処理を行い、(α+
β)組織からなる種々の試験片を作製し、残留β相の定
量及び表面硬さHvの測定を行なった。
【0203】すなわち、まず、60%過酸化水素−10
%フッ化水素酸水溶液を使用して化学研磨を施し、試験
片表面に形成された加工層を約50μm程度除去し、次
いでX線回析装置を使用し、Co−Kα線をターゲット
として残留β相の体積比(vol%)を算出した。尚、X線
回析装置はX線回析装置ガイガーフレックスRAD−II
I(理学製))を使用した。
【0204】また、表面硬さHvは第4及び第5の実施
例と同様、ビッカース試験機を使用して測定した。
【0205】図8は時効処理時間Tと残留β相及び表面
硬さHvの関係を示す特性図である。
【0206】この図8から明らかなように、時効処理時
間Tと表面硬さHvとの関係においては、時効処理時間
Tが増加するとα相の析出により残留β相が減少してい
く傾向にあり、特に時効処理時間Tが1時間を超えると
残留β相の体積比が急激に減少していくのが判る。
【0207】一方、時効処理時間Tと表面硬さHvとの
関係においては、時効処理時間Tが1時間を超過し、α
相の析出が顕著になると表面硬さHvの増加も顕著にな
る。しかしながら、時効処理時間Tが10時間を超える
とα相は継続的に増加するため残留β相の体積比は低下
する一方で、表面硬さHvは連続的に低下しており、し
たがって、10時間以上の時間を要して時効処理を施し
ても過時効状態になることが判る。
【0208】次に、本願出願人は、図8の各時効段階に
おける残留β相を含有した転がり軸受について、上述し
た図4の水中スラスト寿命試験機を使用して水中寿命試
験を行った。
【0209】尚、水中寿命試験の試験条件は以下の通り
である。
【0210】 〔試験条件〕 試験軸受 :スラスト玉軸受(呼び番号51305) 回転軸の回転数 :1000rpm 試験荷重 :150kgf 転動体材質 :Si34 保持器材質 :フッ素樹脂 異物 :Fe3C系粉体を水中に300ppm混入 異物の粒径 :74〜147μm 異物の表面硬さHRC:52 尚、水中寿命L10は、各試験片についてその10%が、
顕微鏡又は肉眼で視認できるクラック又は剥離が発生し
た時点を水中における寿命と判定し、この時点に達する
までの累積回転数をもって寿命を定量的に評価した。
【0211】図9は図8における各時効段階における残
留β相と水中寿命L10との関係を示す特性図である。
【0212】この図9から明らかなように、残留β相が
体積比で30 vol%未満の場合は硬質であるα相が残留
β相に比べて多いにも拘わらず水中寿命L10が極端に低
い。これは上述したように試験片が過時効状態となって
α相が粗大化したりβ相粒界にα相が析出したため急速
な軟化が生じ、軸受としての硬さが不足し、また残留β
相が少ないため異物により生じ得る圧痕部の応力緩和効
果が小さい。一方、溶体化処理後の急冷した状態では組
織は残留β相単相であるため、残留β相が体積比で80
vol%を超える場合は時効処理としては初期段階に相当
し、試験片が十分に硬化しておらず、したがって十分な
表面硬さHvを得ることもできず水中寿命L10も極端に
低くなる。
【0213】これに対して残留β相が体積比で30vol
%〜80vol %の範囲にある場合は、異物が混入した潤
滑条件下であっても残留β相が異物によって生じた圧痕
部の応力を緩和し、また、α相の析出程度が理想的な状
態となって600以上の表面硬さHvと安定した高い水
中寿命L10を得ることができることが判る。
【0214】次に、本願出願人はβ型チタン合金として
Ti−15Mo−5Zr、(α+β)型チタン合金とし
てTi−6Al−4Vを使用し、熱処理条件(溶体化処
理及び時効処理)や冷間加工率ηの異なる種々の試験片
を作製し、残留β相の体積比(vol%)、表面硬さHv及
び上述と同様の異物混入の潤滑条件下で水中寿命L10
測定した。
【0215】表9はこれらβ型チタン合金の製造条件及
び各々測定結果を示したものである。
【0216】
【表9】 この表9から明らかなように、比較例181及び比較例
182は600以上の表面硬さHvが得られるものの、
水中寿命L10が極めて低い結果となった。これは、比較
例181及び比較例182においては、表面硬さ自体は
高硬度となるものの、時効処理温度が400℃と低すぎ
るため晩化相であるω相が形成され、その結果塑性変形
能が小さく、異物により生じた圧痕のエッジ部への応力
集中が大きくなり、早期剥離が生じるためと考えられ
る。
【0217】尚、本比較例181及び比較例182では
残留β相が算出されていないが、これはω相が析出して
いるため残留β相の正確な定量ができないためである。
しかしながら、ω相は極めて脆性的な性質を有するため
残留β相が体積比で30〜80 vol%の範囲であっても
ω相が組織に悪影響を及ぼす。このため、ω相が微量で
も析出するような条件での時効処理は回避すべきであ
る。
【0218】また、比較例183及び比較例184は、
時効処理温度が550℃と高く設定され過ぎているた
め、α相が残留β相粒界に層状に析出したりβ相粒界内
に析出するα相が粗大化して十分に時効硬化していない
ことが判る。
【0219】比較例185及び比較例186は、チタン
合金として(α+β)型チタン合金を使用している場合
である。(α+β)型チタン合金においては、溶体化処
理後の急冷で形成される組織がマルテンサイト組織又は
(α+β)の二相組織となって冷間加工が不可能な組織
となる。したがって、冷間加工を施すことができずその
後時効処理を施しても表面硬さHvが低く水中寿命L10
も極端に低いものとなった。
【0220】これに対して実施例71〜実施例78は、
時効処理温度を本合金の最適時効温度である475℃に
設定し、時効処理時間を3〜10時間に設定して残留β
相を種々変えたものであり、いずれも600以上の表面
硬さHvを有すると共に水中寿命L10も比較例に比べて
飛躍的に向上しており、耐食性が要求され且つ異物が混
入する潤滑条件下で好適した転がり軸受を得ることがで
きる。
【0221】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る転がり
軸受は、外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外輪と前
記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを備えた
転がり軸受において、前記軌道輪の内の少なくとも内輪
がチタン合金で形成されると共に、転動体がセラミック
スで形成されているので、ステンレス鋼等の鋼製材料を
軌道輪に使用した場合に比べ、耐食性が大幅に向上し、
海水、化学薬品などの耐食性の要求される食品機械や半
導体製造装置、化学繊維製造機等に好適した転がり軸受
を得ることができる。
【0222】また、線膨張係数が小さく且つ密度の小さ
いチタン合金を内輪材料に使用することにより、高速回
転時における外輪の温度上昇を防ぐことができ、高速回
転が要求される工作機械に好適した転がり軸受を得るこ
とができる。
【0223】さらに加えて、本発明は全軸受材料をセラ
ミックスで形成した場合に比べ、コストが高騰するのを
回避することもできる。
【0224】また、軌道輪を構成する内輪又は外輪の内
の少なくとも一方をβチタン合金で形成し且つ冷間加工
率ηを20%以上に設定することにより、β結晶粒内に
α相が析出して硬さが上昇し、軸受強度が増大して軸受
の耐久性向上を図ることができる。
【0225】また、β型チタン合金の冷間加工率ηが5
%〜20%に設定され、且つ冷間加工後にショットピー
ニング処理が施されることにより、析出するα相が微細
析出して靱性を損なうことなく表面層のみの大幅な硬さ
増大を図ることができる。さらに、時効処理後にもショ
ットピーニング処理を施すことにより、残留圧縮応力が
付与され特殊環境下での軸受寿命向上を図ることができ
る。
【0226】さらに、前記β型チタン合金中の残留β相
が体積比で30〜80%に設定されることにより、異物
混入下での潤滑条件でも軌道輪の表面に形成される圧痕
のエッジ部の応力集中を緩和することができ、異物混入
下の潤滑条件においても耐食性に優れ且つ長寿命を有す
る転がり軸受を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転がり軸受の第2の実施の形態に
おける製造方法を示す製造工程図である。
【図2】本発明に係る転がり軸受の第3の実施の形態に
おける製造方法を示す製造工程図である。
【図3】第3の実施の形態の変形例における製造方法の
製造工程図である。
【図4】水中寿命試験に供される水中寿命試験装置の内
部構造図である。
【図5】高速回転試験に供される高速回転試験装置の断
面図である。
【図6】第4の実施例における冷間加工率ηと時効処理
後の硬さ(Hv)との関係を示す特性図である。
【図7】第5の実施例における冷間加工率ηと時効処理
後の硬さ(Hv)との関係を示す特性図である。
【図8】第6の実施例における時効処理時間と残留β相
及び表面硬さHvの関係を示す特性図である。
【図9】第6の実施例における残留β相と水中寿命L10
との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
3 内輪 4 外輪 5 転動体 12 外輪 13 内輪 14 転動体

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外
    輪と前記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを
    備えた転がり軸受において、 前記軌道輪の内の少なくとも内輪がチタン合金で形成さ
    れると共に、転動体がセラミックスで形成されているこ
    とを特徴とする転がり軸受。
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