JPH11141470A - スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高圧容器形スクロール圧縮機において、厚肉
高重量の固定スクロールと、水平面を当接して締め付け
るフレームとの間で、横衝撃力によってずれが発生しや
すい。簡単な治具と容易な作業により、この横衝撃力に
よるずれが防止できるスクロール圧縮機を提供する。 【解決手段】 横衝撃によるずれは、固定スクロール３
を螺挿締結するボルト８の張力のみでは、フレーム５と
の当接面１１の摩擦係数が小さいことなどから完全に防
止することが難しい。そこで、軟鋼線材のリベット１３
の押し圧成形をボルト締結と併用することで、高信頼性
のあるずれ防止構造が得られ、輸送時や運転時などの衝
撃に対し、高強度で信頼性の高いスクロール圧縮機が得
られた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はスクロール圧縮機に
係り、特に、圧縮機構部を形成するフレームと固定スク
ロールとの間に強固な締結構造を実現できるスクロール
圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】家庭用空気調和機等に使用される、低振
動、低騒音特性を備えたスクロール圧縮機は、特開昭６
４−３２０９２号公報の第１図に見るように、円板状の
鏡板と、該鏡板に一体に直立して形成された渦巻状のラ
ップとからなる旋回スクロール、および該旋回スクロー
ルと同様の構成を有し、且つ鏡板の中心に吐出口を有す
る固定スクロールを、互いにラップの側壁が接触するよ
うに噛み合わせ、これらを吸入口を有する円筒形の密閉
容器内に収納し、固定スクロールをフレームにボルトで
緊結して圧縮室を形成し、フレームを密閉容器に固定し
ている。旋回スクロールは自転防止機構により自転を防
止しつつ、旋回スクロールに嵌合した偏心部を有するク
ランクシャフトをモータを回転させることによって、両
スクロールのラップの接触状態を保ちながら、固定スク
ロールのラップの渦巻の中心の回りに、旋回スクロール
のラップの渦巻の中心が旋回するように、旋回スクロー
ルを駆動するものである。

【０００３】図６および図７に、この従来公知のスクロ
ール圧縮機の圧縮機構部を模擬的に示し、詳細にその構
造を説明する。これらの図において、符号の２０は圧縮
機構部、２１は旋回スクロール、２１ａはラップ、２１
ｂはボス部、２１ｃはベアリング、２１ｄはキー溝、２
２は固定スクロール、２２ａはラップ、２２ｂフランジ
部、２２ｃはボルト通し孔、２２ｄは鏡板、２３はフレ
ーム、２３ａはフランジ部、２３ｂはねじ孔、２３ｃは
主ベアリング、２３ｄはキー溝、２４はボルト、２５は
クランクシャフト、２５ａは偏心部、２６はオルダムリ
ング、２６ａはオルダムキー、２７は電動機、２７ａは
回転子、２７ｂは固定子、２７ｃはエアギャップ、２８
は密閉容器、２９は固定スクロールとフレームの当接部
である。

【０００４】すなわち、図６は、従来公知のスクロール
圧縮機の側断面図で、圧縮機構部２０は、前述のよう
に、フレーム２３の主ベアリング２３ｃに挿入したクラ
ンクシャフト２５の下端側に、電動機２７の回転子２７
ａを圧入等で取り付けた後、クランクシャフト２５の偏
心部２５ａに、旋回スクロール２１のボス部２１ｂに設
けたベアリング２１ｃを嵌合し、旋回スクロール２１の
ラップ２１ａと、そのラップ２２ａを接触させ噛み合わ
せた固定スクロール２２を図のように配置し、さらに、
旋回スクロール２１の自転防止機構であるオルダムリン
グ２６のキー２６ａを、各々旋回スクロールのキー溝２
１ｄとフレーム２３のキー溝２３ｄに噛み合わせ、旋回
スクロール２１の自転防止を図った後、該固定スクロー
ル２２のフランジ部２２ｂに設けた通し孔２２ｃに、複
数のボルト２４を通し、フレーム２３のフランジ部２３
ａに設けたねじ孔２３ｂに螺挿し、相互のラップ２１ａ
および２２ａを心出し調整しながら締め付けて圧縮機構
部２０の組立が終了する。

【０００５】また、図７は図６のＡ矢視図で、ボルト２
４の締め付け状態の一例を示すもので、従来公知のスク
ロール圧縮機では、単純に複数のボルト２４によって、
固定スクロールをフレームに締結している。一方、密閉
容器２８の下部の任意位置に、電動機２７の固定子２７
ｂが接合されており、この固定子２７ｂの内径と、前述
の圧縮機構部２０のクランクシャフト２５に予め接合し
た回転子２７ａの外径との間に、適宜エアギャップ２７
ｃを保持した状態で、密閉容器２８とフレーム２３を複
数の点溶接（図示せず）により係止する。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来例のように、密閉容器２８内に高圧の吐出ガスを貯留
する高圧容器タイプのスクロール圧縮機では、外部から
圧縮室（ラップの噛み合わせ部）側に変形荷重が付加さ
れることから、いきおい固定スクロール２２の鏡板２２
ｄの板厚を厚くする必要があり、そのため、固定スクロ
ールの重量が大きくなり、ボルト締め付け方向と直角方
向からの衝撃（以下、横衝撃という）で慣性力が発生
し、フレーム２３に対し固定スクロール２２が水平方向
にずれを生じる欠点がある。

【０００７】そのため、可能な限りボルト２４の本数を
増加したり、ボルト径の大径化による締め付け力の上昇
などを図っているが、固定スクロール２２とフレーム２
３の当接部２９からのガスの流入を防止する目的で、当
接する両端面に研削加工等を施す結果、摩擦係数が小さ
くなり、ずれの防止をすることが難しく、結果的に部品
点数の増加（原価の高騰）や、ボルトの大径化（フラン
ジ部の拡大）による大形化が必要となり、低原価、小形
化が要求される空気調和機等に使用されるスクロール圧
縮機のニーズに反する欠点があった。

【０００８】本発明の目的は、上記課題を解決するため
になされたもので、大がかりな設備を要することなく、
簡単な治具と容易な作業によって、横衝撃に対して固定
スクロールとフレームとの間のずれを防止でき、輸送時
や運転時などに加わる衝撃に対し、高強度で信頼性の高
いスクロール圧縮機を提供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題は、以下のよう
に解決される。請求項１記載発明は、鏡板に形成された
渦巻状のラップどうしを、互いに噛み合わせた固定スク
ロールおよび旋回スクロールと、前記固定スクロールと
ボルトによって締結され、前記旋回スクロールを摺動自
在に内部に係止するフレームと、これらを収容する密閉
容器とからなるスクロール圧縮機において、前記固定ス
クロールと前記フレームとを連通する孔内で、且つ、前
記固定スクロールと前記フレームとの当接部に、拡張し
て充填されているリベットを有することを特徴とするも
のである。このような構成によれば、連通孔内の当接部
に充填したリベットによって、固定スクロールとフレー
ムとが互いにずれることを防止できる。また、請求項２
記載発明は、前記リベットは、前記固定スクロールおよ
び前記フレームのそれぞれのフランジ部に形成された同
心の連通孔内に設置されるものである。そのため、リベ
ットを連通孔の心方向に挿入して拡径すればよく、作業
が簡単である。また、請求項３記載発明は、前記固定ス
クロールおよび前記フレームのそれぞれのフランジ部
は、互いにボルトによって締結されるものである。その
ため、ボルトの軸と垂直な横方向からの衝撃に対しては
リベットが有効に作用し、固定スクロールとフレームと
の間にずれが生じない。したがって、ボルトとリベット
の両者で緊結することにより、縦方向ばかりでなく、横
方向からの衝撃に対する強度も向上できる。また、請求
項４記載発明は、前記固定スクロールおよび前記フレー
ムのうち、少なくとも前記フレームが密閉容器に固定さ
れるものである。そのため、固定スクロールとフレーム
とがリベットで係止され、且つ、少なくともフレームが
密閉容器に固定されるので、輸送時や運転時などに加わ
る衝撃に対しても信頼性が高い。また、請求項５記載発
明は、鏡板とこれに直立した渦巻状のラップとから各々
なる固定スクロールおよび旋回スクロールを、互いにラ
ップを内側にして噛み合わせ、前記旋回スクロールをフ
レームの内部に摺動自在に係止した状態で、前記フレー
ムと前記固定スクロールの端面どうしを当接し、前記フ
レームと前記固定スクロールのそれぞれのフランジ部が
複数のボルトによって締結され、前記旋回スクロールを
前記固定スクロールに対して旋回運動させてガスを圧縮
するスクロール圧縮機において、前記固定スクロールと
前記旋回スクロールの心出しおよび前記ボルトによる締
結がされたフランジ部に、前記固定スクロールと前記フ
レームとを連通する同心孔が開口され、前記同心孔内に
挿入された直線状のリベットの軸心方向に荷重を負荷
し、前記固定スクロールと前記フレームの当接部を略中
央部として、前記リベットを圧縮して拡径することによ
り、前記同心孔と前記リベットとが係止されることを特
徴とするものである。請求項５記載の上記構成によれ
ば、ボルト締め付け構造の弱点、すなわち、ボルトの締
め付け方向に対して直角な方向からの横衝撃力への弱点
を、固定スクロールとフレームとの両者を連通する同心
孔内で、拡張したリベットを両者の当接部に充填するこ
とにより解消できる。つまり、機械的にずれ止め手段を
設けることで、フレームと固定スクロールの相対位置が
安定的に保持される。しかも、大がかりな設備を要する
ことなく、簡単な治具と容易な作業によって、リベット
を装着できる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照して説明する。図１〜図５において、符号の１
は密閉容器、２は圧縮機構部、３は固定スクロール、３
ａは鏡板、３ｂはラップ、３ｃは吐出口、３ｄは吸入
口、３ｅはフランジ部、３ｆはボルト通し孔、４は旋回
スクロール、４ａは鏡板、４ｂはラップ、４ｃはボス、
４ｄは軸受、４ｅはキー溝、５はフレーム、５ａは主軸
受、５ｂはフランジ部、５ｃはねじ孔、５ｄはキー溝、
６はクランクシャフト、６ａは偏心部、７はオルダムリ
ング、７ａはオルダムキー、８はボルト、９は電動機、
９ａは固定子、９ｂは回転子、９ｃはエアギャップ、１
０は吸入管、１１は固定スクロールとフレームの当接
面、１２は同心孔、１３はリベット、１４はリベット押
し圧型、１４ａは上パンチ、１４ｂは下パンチ、１４ｃ
は上クッション、１４ｄは下クッションである。

【００１１】図１に示すように、本実施形態のスクロー
ル圧縮機は、密閉容器１内の上方に、固定スクロール３
および旋回スクロール４を有する圧縮機構部２が収納さ
れている。固定スクロール３と旋回スクロール４とを互
いに噛み合わせて圧縮室（密閉空間）を形成している。
固定スクロール３は円板状の鏡板３ａと、これに直立し
た渦巻状のラップ３ｂとからなり、その中心部に吐出口
３ｃ、外周部に吸入口３ｄを備えている。旋回スクロー
ル４は円板状の鏡板４ａと、これに直立して固定スクロ
ール３のラップ３ｂと同一形状に形成されたラップ４ｂ
と、鏡板４ａの反ラップ面に形成されたボス４ｃからな
っている。

【００１２】フレーム５は中央部に主軸受５ａを形成
し、この主軸受５ａにクランクシャフト６が支承され、
クランクシャフト６先端の偏心部６ａは、上記ボス４ｃ
内の軸受４ｄに旋回可能なように挿入されている。固定
スクロール３はフランジ３ｅに設けた通し孔３ｆにボル
ト８を通し、フレーム５のフランジ５ｂに設けたねじ孔
５ｃに螺挿締結されている。旋回スクロール４は、オル
ダムリング７のキー７ａを、各々旋回スクロール４のキ
ー溝４ｅおよびフレーム５のキー溝５ｄに噛み合わせ、
固定スクロール３に対して自転しないで旋回運動するよ
うに規制されている。固定スクロール３の吸入口３ｄに
は吸入管１０が接続され、また、クランクシャフト６の
下端側には電動機９の回転子９ｂが、圧入等によって取
り付けられて圧縮機構部２の組立が完了する。一方、密
閉容器１の下部には、電動機９の固定子９ａが焼き嵌め
等によって収納され、適宜エアギャップをもって圧縮機
構部２と、図１に示すように、組み立てられる。

【００１３】図２は、図１のＢ矢視図である。すなわ
ち、従来公知のスクロール圧縮機と同様に、固定スクロ
ール３とフレーム５（図示せず）は、複数のボルト８に
よって締結されている。本発明の実施形態では、図２お
よび図３（図２のＣ−Ｃ断面図）に示すように、ボルト
８が締結されている固定スクロール３およびフレーム５
のフランジ部３ｅ、５ｂに、両者を貫通する複数の孔１
２を開口し、しかも、該孔１２にはリベット１３が係止
されている。

【００１４】図４および図５は、本実施形態におけるリ
ベット１３の係止方法の一例を示すものである。すなわ
ち、図４のように、孔１２は固定スクロール３およびフ
レーム５のそれぞれのフランジ部３ｅ、５ｂを貫通し、
且つ同心に開口する。リベット１３は直線状で、その外
径寸法が同心孔１２の内径寸法より若干細い寸法とし、
図のように、リベット押し圧型１４にセットされた固定
スクロール３とフレーム５の同心孔１２の中に挿入され
ている。

【００１５】この状態から、図５に示すように、矢印の
方向、すなわち、リベット１３の軸心方向から、押し圧
型１４の上パンチ１４ａと下パンチ１４ｂを介して荷重
を負荷し、リベット１３を塑性変形させ、その外径を同
心孔１２の内径に密着するまで拡大する。その際、上ク
ッション１４ｃおよび下クッション１４ｄの厚みの調整
等によって、拡大したリベット１３の係止位置が、固定
スクロール３とフレーム５の当接面１１を、ほぼ中央と
するように調整する。

【００１６】以上のように、本発明の実施形態によれ
ば、リベット１３には、比較的成形し易い極軟鋼線等の
採用が可能であり、簡単な押し圧型で、且つ低荷重によ
ってリベットの成形が可能であり、大がかりな設備を要
することなく、従来公知のスクロール圧縮機において、
問題となっていたボルト締め付け方向と直角方向からの
衝撃を、同心孔１２の内径と、該孔内で密接に拡径した
複数のリベット１３の外径間で受け、両者のずれを防止
することができ、輸送時などに加わる横衝撃に対し、高
強度で信頼性の高いスクロール圧縮機となる。

【００１７】

【発明の効果】上述のとおり、本発明によれば、簡単な
治具と容易な作業により、横衝撃に対して固定スクロー
ルとフレームとの間のずれを防止でき、輸送時や運転時
などに加わる衝撃に対し、高強度で信頼性の高いスクロ
ール圧縮機を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わるスクロール圧縮機の一実施形態
を示す側断面図。

【図２】図１のＢ矢視図。

【図３】図２のＣ−Ｃ断面図。

【図４】本発明に係るリベット押し圧成形方法の一例の
手順の一部を示す側断面図。

【図５】本発明に係るリベット押し圧成形方法の一例の
手順の一部を示す側断面図。

【図６】従来公知のスクロール圧縮機の一例を示す側断
面図。

【図７】図６のＡ矢視図。

【符号の説明】

１ 密閉容器 ２ 圧縮機構部 ３ 固定スクロール ４ 旋回スクロール ５ フレーム ６ クランクシャフト ７ オルダムリング ８ ボルト ９ 電動機 １０ 吸入管 １１ 固定スクロールとフレームの当接面 １２ 同心孔 １３ リベット １４ リベット押し圧型

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関口 浩一 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鏡板に形成された渦巻状のラップどうし
   を、互いに噛み合わせた固定スクロールおよび旋回スク
   ロールと、前記固定スクロールとボルトによって締結さ
   れ、前記旋回スクロールを摺動自在に内部に係止するフ
   レームと、これらを収容する密閉容器とからなるスクロ
   ール圧縮機において、前記固定スクロールと前記フレー
   ムとを連通する孔内で、且つ、前記固定スクロールと前
   記フレームとの当接部に、拡張して充填されているリベ
   ットを有することを特徴とするスクロール圧縮機。
2. 【請求項２】 前記リベットは、前記固定スクロールお
   よび前記フレームのそれぞれのフランジ部に形成された
   同心の連通孔内に設置される請求項１に記載のスクロー
   ル圧縮機。
3. 【請求項３】 前記固定スクロールおよび前記フレーム
   のそれぞれのフランジ部は、互いにボルトによって締結
   される請求項１または２に記載のスクロール圧縮機。
4. 【請求項４】 前記固定スクロールおよび前記フレーム
   のうち、少なくとも前記フレームが密閉容器に固定され
   る請求項１、２または３に記載のスクロール圧縮機。
5. 【請求項５】 鏡板とこれに直立した渦巻状のラップと
   から各々なる固定スクロールおよび旋回スクロールを、
   互いにラップを内側にして噛み合わせ、前記旋回スクロ
   ールをフレームの内部に摺動自在に係止した状態で、前
   記フレームと前記固定スクロールの端面どうしを当接
   し、前記フレームと前記固定スクロールのそれぞれのフ
   ランジ部が複数のボルトによって締結され、前記旋回ス
   クロールを前記固定スクロールに対して旋回運動させて
   ガスを圧縮するスクロール圧縮機において、前記固定ス
   クロールと前記旋回スクロールの心出しおよび前記ボル
   トによる締結がされたフランジ部に、前記固定スクロー
   ルと前記フレームとを連通する同心孔が開口され、前記
   同心孔内に挿入された直線状のリベットの軸心方向に荷
   重を負荷し、前記固定スクロールと前記フレームの当接
   部を略中央部として、前記リベットを圧縮して拡径する
   ことにより、前記同心孔と前記リベットとが係止される
   ことを特徴とするスクロール圧縮機。