JPH1082430A - 円錐摩擦クラッチと、その円錐面のレーザ焼き入れ方法と、この円錐摩擦クラッチを差動制限機構に用いたデファレンシャル装置 - Google Patents

円錐摩擦クラッチと、その円錐面のレーザ焼き入れ方法と、この円錐摩擦クラッチを差動制限機構に用いたデファレンシャル装置

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JPH1082430A
JPH1082430A JP23681696A JP23681696A JPH1082430A JP H1082430 A JPH1082430 A JP H1082430A JP 23681696 A JP23681696 A JP 23681696A JP 23681696 A JP23681696 A JP 23681696A JP H1082430 A JPH1082430 A JP H1082430A
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conical
laser
friction clutch
surface portion
differential
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JP23681696A
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Masao Teraoka
正夫 寺岡
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GKN Driveline Japan Ltd
Original Assignee
Tochigi Fuji Sangyo KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小型で容量が大きく、耐久性の高い円錐摩擦
クラッチを用いて充分な差動制限力を得る。 【解決手段】 エンジンによって回転駆動されるデフケ
ース3と、デフケース3と一体回転するピニオンシャフ
ト19と、シャフト19上に回転自在に支承されたピニ
オンギヤ25と、ギヤ25と噛み合った出力側サイドギ
ヤ27、29とを有するベベルギヤ式の差動ギヤ機構3
3と、デフケース3とギヤ27、29との間に形成さ
れ、ギヤ27、29の噛み合い反力を受けて締結される
円錐摩擦クラッチ35、37とを備え、レーザ焼き入れ
によってクラッチ35、37の円錐面41、45に突状
面部47、49を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、円錐摩擦クラッ
チと、その円錐面のレーザ焼き入れ方法と、この円錐摩
擦クラッチを差動制限機構に用いたデファレンシャル装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】特公昭47−10484号公報に図11
のようなデファレンシャル装置201が記載されてお
り、U.S.Patent 2821096号登録証に
図12のようなデファレンシャル装置203が記載され
ている。
【0003】図11のデファレンシャル装置201は、
デフケース205に固定されたピニオンシャフト207
と、ピニオンシャフト207上に回転自在に支承された
ピニオンギヤ209と、ピニオンギヤ209と噛み合っ
た出力側サイドギヤ211、213とからなるベベルギ
ヤ式の差動ギヤ機構215を備えており、サイドギヤ2
11、213はそれぞれの車軸217、219にスプラ
イン連結されている。
【0004】各車軸217、219にはクラッチ部材2
21、221(一側回転体)がスプライン連結され、各
クラッチ部材221とデフケース205(他側回転体)
との間には、それぞれ円錐摩擦クラッチ223、223
が形成されている。これらの円錐摩擦クラッチ223、
223は各サイドギヤ211、213のピニオンギヤ2
09に対する噛み合い反力(軸方向の押圧力)を受けて
締結され、差動ギヤ機構215の差動を制限する。
【0005】デフケース205には潤滑孔225、22
5が設けられており、これらの潤滑孔225から流入し
たオイルは、各クラッチ部材221に設けられたオイル
溝227を通って各円錐摩擦クラッチ223の摺動面を
潤滑する。
【0006】又、図12のデファレンシャル装置203
は、デフケース229に固定されたピニオンシャフト2
31と、ピニオンシャフト231上に回転自在に支承さ
れたピニオンギヤ233と、ピニオンギヤ233と噛み
合った出力側サイドギヤ235、237とからなるベベ
ルギヤ式の差動ギヤ機構239を備えており、サイドギ
ヤ235、237はそれぞれの車軸241、243にス
プライン連結されている。
【0007】各サイドギヤ235、237にはクラッチ
部材245、245(一側回転体)がピン247で固定
され、各クラッチ部材245とデフケース229(他側
回転体)との間には、それぞれ円錐摩擦クラッチ24
9、249が形成されている。これらの円錐摩擦クラッ
チ249、249は各サイドギヤ235、237のピニ
オンギヤ233に対する噛み合い反力(軸方向の押圧
力)を受けて締結され、差動ギヤ機構239の差動を制
限する。
【0008】デフケース229には潤滑孔251、25
1が設けられており、これらの潤滑孔251から流入し
たオイルは、各クラッチ部材245の円錐面にその傾斜
に沿って設けられたオイル溝253を通って各円錐摩擦
クラッチ249の摺動面を潤滑する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】デファレンシャル装置
201、203のように、円錐摩擦クラッチ223、2
49を差動制限機構に用いるデファレンシャル装置で
は、小型で充分な差動制限力を得るために、円錐摩擦ク
ラッチ223、249を小型にし容量を大きくしたい。
【0010】円錐摩擦クラッチの場合、小型で容量を大
きくするには、円錐面の傾斜角を小さくする(円筒に近
づける)必要があるが、傾斜角を小さくする程円錐面の
摩擦と磨耗とが大きくなり、円錐摩擦クラッチの耐久性
が低下する。
【0011】円錐摩擦クラッチの耐久性を改善するに
は、円錐面に浸炭や窒化などの熱処理を行う方法と、各
従来例のようにオイル溝227、253を設けて円錐面
を潤滑する方法などがある。
【0012】しかし、浸炭や窒化などの熱処理では、ク
ラッチ部材221、245全体が加熱される上に、加熱
温度が高く、加熱時間が長いから、クラッチ部材22
1、245の円錐面が変形を起こし易く、円錐面が熱変
形すると各円錐面の間に生じる微小な隙間によって円錐
摩擦クラッチ223、249が正常に作動しない。
【0013】従って、円錐面の修正研磨加工が必要であ
るが、硬度の高い熱処理面の機械加工は困難であり、大
きい加工工数が必要でコスト高である。
【0014】更に、浸炭処理や窒化処理は、上記のよう
に熱処理時のエネルギー量が大きいから、それだけコス
ト高である。
【0015】又、オイル溝で円錐面を潤滑する方法で
は、上記のように、熱処理後の円錐面にオイル溝を加工
するのは困難であり、又、オイル溝加工後の円錐面を熱
処理すると、オイル溝によって分断された円錐面に大き
な熱変形が生じる。
【0016】そこで、この発明は、小型で容量が大き
く、耐久性の高い円錐摩擦クラッチと、その円錐面のレ
ーザ焼き入れ方法と、この円錐摩擦クラッチを差動制限
機構に用いることにより小型で充分な差動制限力を得る
デファレンシャル装置などの提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
外周に円錐面が設けられた一側回転体と、内周に円錐面
が設けられた他側回転体とを有し、軸方向の押圧力を受
けて互いに押し付けられる各円錐面の摩擦力によって各
回転体の間で駆動力を伝達する円錐摩擦クラッチであっ
て、レーザ焼き入れによって前記円錐面に突状面部を所
定のパターンで設けたことを特徴とする。
【0018】例えば、鋳鉄やマルテンサイト系ステンレ
ス鋼のように、炭素系の鉄合金はレーザを照射した箇所
が、面心立方構造のオーステナイト組織から体心立方構
造のマルテンサイト組織に変態し、それに伴って体積が
膨張する。
【0019】そこで、回転体をこのような材料で作り、
円錐面を所定のパターンでレーザ焼き入れすると、非常
に硬度の高いマルテンサイト組織の突状面部が所定のパ
ターンで得られると共に、その周囲には凹部が形成され
る。
【0020】こうして形成された突状面部が相手側の円
錐面と接触し摺動するから、円錐摩擦クラッチの耐磨耗
性が大きく向上する。又、突状面部の周囲に形成された
凹部がオイル溝になり、突状面部に充分なオイルを供給
するから、耐磨耗性は更に向上する。
【0021】このように大きな耐磨耗性によって、円錐
面の傾斜角を小さくしても充分な耐久性が得られるか
ら、円錐摩擦クラッチは傾斜角を小さくすることによっ
て小型で大容量にできる。
【0022】又、円錐摩擦クラッチに作用する荷重は多
数の突状面部に分散されて均一になるから、各突状面部
の負担がそれだけ軽減すると共に、荷重の均一分散によ
って異音の発生が防止される。
【0023】又、荷重を円錐面の全体で受ける構成と異
なって、突状面部で荷重を受けるこの構成では、摺動部
のなじみ(擦り合わせ)が迅速に進むから、円錐摩擦ク
ラッチは早期に安定した性能が得られる。
【0024】又、レーザ焼き入れは、浸炭や窒化処理に
較べると、加熱エネルギーが格段に小さく、処理時間も
極めて短い。その上、レーザを照射した箇所は、空中放
冷でマルテンサイトの焼き入れ組織が安定するから、冷
却手段が不要である。これらの理由で、コストが大きく
低減される。
【0025】又、このように加熱エネルギーが小さく、
処理時間が短いことに加えて、レーザ照射は円錐面だけ
に行われるから、従来例と異なって、円錐面の硬化処理
に伴う回転体の熱変形が生じない。従って、硬化処理後
の修正加工が不要になる。
【0026】更に、上記のように、所定のパターンでレ
ーザ焼き入れするだけでオイル溝になる凹部が円錐面に
形成されるから、従来例と異なって、円錐面にオイル溝
を加工する必要がない。
【0027】これらの機械加工が省けることによって、
コストが大幅に低減する。
【0028】なお、本発明において、レーザ焼き入れは
一側回転体と他側回転体のいずれか一方に施せばよい
が、あるいは、必要に応じてこれらの両方に施してもよ
い。
【0029】又、レーザの照射距離、照射範囲、照射時
間などは任意に設定してよく、これらの条件設定によっ
て、焼き入れ幅や、焼き入れ厚さ(突状面部の高さ)を
変えることができる。
【0030】請求項2記載の発明は、請求項1記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、円錐面の傾
斜に沿って回転体の回転軸と交わる方向に形成されたこ
とを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0031】これに加えて、円錐面の傾斜に沿って形成
した突状面部の接触と摺動とにより、回転体の倒れが防
止されるから、突状面部と円錐面の接触と摺動とが均一
になり、円錐摩擦クラッチの性能が安定する。
【0032】又、突状面部を円錐面の傾斜に沿って形成
したことにより、遠心力によってオイルが小径側から大
径側に移動し易くなり、円錐摩擦クラッチの潤滑効率が
向上する。
【0033】請求項3記載の発明は、請求項2記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、円錐面の一
端側から他端側まで連続して設けられた長い突状面部及
びそれより短い突状面部からなり、これらを回転方向に
交互配置したことを特徴とし、請求項2の構成と同等の
効果を得る。
【0034】これに加えて、円錐面の一端側から他端側
まで連続して設けられた長い突状面部の間に、それより
短い突状面部を配置したことによって、オイルが回転方
向にも移動し易くなり、潤滑効果を向上させる。
【0035】請求項4記載の発明は、請求項1記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、回転体の回
転方向に連続して形成されたことを特徴とし、請求項1
の構成と同等の効果を得る。
【0036】これに加えて、回転体の回転方向に連続し
て形成した突状面部の接触と摺動とによって、回転体の
回転が安定する。
【0037】又、遠心力によってオイルが小径側の凹部
から突状面部の摺動部を介して大径側の凹部に移動する
から、円錐摩擦クラッチが効率よく潤滑される。
【0038】請求項5記載の発明は、請求項1記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、回転体の回
転軸に対する食い違い軸の方向に螺旋状に形成されたこ
とを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0039】これに加えて、突状面部を食い違い軸(平
行でもなく、交差もしない2軸)方向に形成し螺旋状に
したことにより、請求項2の構成と同様に、回転体の倒
れが防止され、突状面部と円錐面との接触及び摺動が均
一になり、円錐摩擦クラッチの性能が安定する。
【0040】又、請求項4の構成と同様に、回転体の回
転が安定する。
【0041】更に、突状面部を食い違い軸方向に形成し
たから、これらの回転と摺動によってオイルが突状面部
の全面に拡がり易くなり、円錐摩擦クラッチの潤滑効率
が更に向上する。
【0042】請求項6記載の発明は、請求項1記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、周囲に形成
された凹部で互いに区画され、円錐面に分散配置された
ことを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0043】これに加えて、周囲の凹部で区画された突
状面部を円錐面に分散配置したことにより、円錐摩擦ク
ラッチに大きな押圧力が作用しても、上記のように、こ
の荷重は多数の突状面部に分散されて均一になるから、
各突状面部には大きな負担が掛からない上に、荷重が均
一に分散されるから、異音の発生が防止される。
【0044】請求項7記載の発明は、請求項6記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部の形状が、円形
又は多角形、あるいは、これらの両方であることを特徴
とし、請求項6の構成と同等の効果を得る。
【0045】なお、突状面部を円形にした場合は、レー
ザを円錐面に直角に当てるだけで円形の突状面部が形成
されるから、レーザ焼き入れが容易である。
【0046】請求項8記載の発明は、請求項1記載の円
錐摩擦クラッチであって、前記突状面部が、円錐面の大
径側に向かって、又は円錐面の小径側に向かって、幅広
になることを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を
得る。
【0047】これに加えて、突状面部を円錐面の大径側
に向かって幅広にすれば、小径側に幅広の凹部が形成さ
れ、この凹部に保持される多量のオイルが遠心力によっ
て突状面部に供給されるから、円錐摩擦クラッチの潤滑
効率が大きく向上する。
【0048】又、突状面部を円錐面の小径側に向かって
幅広にすれば、各円錐面の突状面部の面圧が大径側から
小径側まで均一になり、偏磨耗が防止され、耐久性が向
上する。
【0049】請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求
項8のいずれか一項に記載の円錐摩擦クラッチにおい
て、回転体の円錐面に突状面部を所定のパターンでレー
ザ焼き入れするレーザ焼き入れ方法であって、回転体を
回転させながらレーザを円錐面に直角に照射することを
特徴とするレーザ焼き入れ方法である。
【0050】このように、レーザを円錐面に直角に照射
すれば、照射面からのレーザ光の反射が少なくなり、そ
れだけエネルギーロスとレーザ焼き入れのコストとが低
減する。
【0051】又、回転体を回転させながら連続してレー
ザを照射すれば、請求項4の円錐摩擦クラッチのよう
に、回転方向に連続した突状面部を容易に形成すること
ができる。
【0052】又、回転体を回転させながら断続的にレー
ザを照射すれば、回転方向に不連続な突状面部の形成も
容易である。
【0053】請求項10記載の発明は、請求項1乃至請
求項8のいずれか一項に記載の円錐摩擦クラッチにおい
て、回転体の円錐面に突状面部を所定のパターンでレー
ザ焼き入れするレーザ焼き入れ方法であって、レーザの
反射鏡を用い、この反射鏡と回転体の一方又は両方を回
転させながら回転体の軸方向に移動させてレーザを円錐
面に導くことを特徴とするレーザ焼き入れ方法である。
【0054】このように、反射鏡を用いることによっ
て、任意の箇所にレーザを導くことが可能になり、例え
ば、内周側の円錐面にレーザを照射することが容易にな
る。
【0055】このことは、下記のように、デファレンシ
ャル装置のデフケースの内周側に形成された円錐面をレ
ーザ焼き入れする場合、特に有利である。
【0056】又、レーザの反射鏡を回転させながら回転
体の軸方向に移動させてレーザを円錐面に導くように構
成すれば、内周側の円錐面に螺旋状の突状面部を形成す
ることが容易である。
【0057】又、反射鏡を固定し、回転体を回転させな
がら軸方向に移動させてもよく、あるいは、反射鏡と回
転体の両方にこれらの運動をさせてもよい。
【0058】更に、レーザの反射鏡と回転体とは、同軸
配置してもよく、平行配置してもよい。あるいは、食い
違い軸上に配置してもよい。
【0059】請求項11記載の発明は、請求項1乃至請
求項8のいずれか一項に記載の円錐摩擦クラッチにおい
て、回転体の円錐面に突状面部を所定のパターンでレー
ザ焼き入れするレーザ焼き入れ方法であって、所定のパ
ターンの孔を有するマスク越しにレーザを円錐面に照射
することを特徴とするレーザ焼き入れ方法である。
【0060】このように、マスク越しにレーザを照射す
れば、マスクのパターンが円錐面上に転写されるから、
例えば、請求項6、7の円錐摩擦クラッチのように、多
数の突状面部を円錐面に分散配置したパターンを容易に
形成することができる。
【0061】又、マスクを用いることによって、配置パ
ターンが複雑な突状面部や、形状が複雑な突状面部を容
易に形成することができる。
【0062】請求項12記載の発明は、エンジンの駆動
力によって回転駆動されるデフケースと、デフケースの
回転を車輪側に分配する差動機構と、この差動機構の差
動回転部材とデフケースとの間に配置された請求項1乃
至請求項8のいずれか一項に記載の円錐摩擦クラッチ
と、この円錐摩擦クラッチに押圧力を与えて締結する締
結手段とを備えたことを特徴とするデファレンシャル装
置である。
【0063】円錐摩擦クラッチが締結されると、その摩
擦抵抗によって差動機構の差動回転が制限される。
【0064】上記のように、請求項1乃至請求項8の円
錐摩擦クラッチは、小型で大容量であるから、これらの
円錐摩擦クラッチの摺動摩擦力を差動制限機構に用いた
このデファレンシャル装置は、小型で充分な差動制限力
が得られ、車両の操縦性、走行性、安定性などが向上
し、これらの性能が長期にわたって保持される。
【0065】更に、上記のように、これらの円錐摩擦ク
ラッチでは荷重の均一分散によって異音発生が防止され
るから、走行中の静粛性が高く保たれる。
【0066】なお、円錐摩擦クラッチの締結手段は、ア
クチュエータを用いてもよいし、あるいは、下記のよう
に、ギヤの噛み合いによって生じる力を用いてもよい。
【0067】請求項13記載の発明は、請求項12記載
のデファレンシャル装置であって、前記差動機構が、デ
フケースと一体に回転するピニオンシャフトと、ピニオ
ンシャフト上に回転自在に支承されたピニオンギヤと、
このピニオンギヤと噛み合った一対の出力側サイドギヤ
とを有するベベルギヤ式の差動ギヤ機構であり、前記円
錐摩擦クラッチが、ピニオンギヤに対するサイドギヤの
噛み合い反力を受けて締結されることを特徴とし、請求
項12の構成と同等の効果を得る。
【0068】デフケースを回転させるエンジンの駆動力
は、ピニオンシャフトからピニオンギヤを介して各サイ
ドギヤに分配され、出力軸を介して各車輪側に伝達さ
れ、差動回転が生じると、各サイドギヤが受けるピニオ
ンギヤとの噛み合い反力によって円錐摩擦クラッチが締
結され、差動が制限される。
【0069】この円錐摩擦クラッチは、小さな押圧力で
大きな摩擦抵抗を発生するから、ギヤの噛み合い反力で
充分な差動制限力が得られる。
【0070】又、このようにサイドギヤの噛み合い反力
で円錐摩擦クラッチを締結するように構成したから、締
結用のアクチュエータが不要であり、それだけ構造簡
単、小型軽量で、低コストである。
【0071】
【発明の実施の形態】図1と図2によって本発明の第1
実施形態を説明する。図1はこの実施形態のデファレン
シャル装置1を示しており、このデファレンシャル装置
1は請求項1、2、3、9、12、13の特徴を備えて
いる。なお、左右の方向は図1での左右の方向であり、
符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0072】図1のように、デファレンシャル装置1の
デフケース3はケーシング本体5(他側の回転体)とカ
バー7(他側の回転体)との間にシム9を挟み、これら
をボルトで固定して形成されている。
【0073】デフケース3はデフキャリヤの内部に配置
されており、デフケース3の左右のボス部11、13は
ぞれぞれベアリングを介してデフキャリヤに支承されて
いる。このデフキャリヤにはオイル溜りが形成されてお
り、ボス部11、13にはデフケース3の回転に伴って
オイルを内部に導く螺旋状のオイル溝15、17が設け
られている。
【0074】デフケース3にはリングギヤがボルトで固
定されており、このリングギヤは駆動力伝達系の駆動ギ
ヤと噛み合っている。こうして、デフケース3はエンジ
ンの駆動力によりこの駆動力伝達系を介して回転駆動さ
れる。
【0075】デフケース3の内部には、ピニオンシャフ
ト19が、その両端に形成された2面部21、21をデ
フケース3の軸方向溝23に係合して移動自在に配置さ
れている。
【0076】ピニオンシャフト19上にはピニオンギヤ
25、25が回転自在に支承されている。各ピニオンギ
ヤ25には左右から出力側のサイドギヤ27、29(一
側の回転体)が噛み合っており、各サイドギヤ27、2
9はそれぞれの車軸にスプライン連結されている。
【0077】各サイドギヤ27、29には、ピニオンギ
ヤ25の遠心力及び各サイドギヤ27、29との噛み合
い反力を受ける突き当て部31が形成されている。
【0078】こうして、ベベルギヤ式の差動ギヤ機構3
3(差動機構)が構成されている。
【0079】各サイドギヤ27、29とデフケース3と
の間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチ35、37が形成さ
れている。サイドギヤ27側の円錐摩擦クラッチ35は
カバー7とサイドギヤ27にそれぞれ形成された円錐面
39、41から構成され、サイドギヤ29側の円錐摩擦
クラッチ37はケーシング本体5とサイドギヤ29にそ
れぞれ形成された円錐面43、45から構成されてい
る。
【0080】各円錐摩擦クラッチ35、37のサイドギ
ヤ27、29とデフケース3との当たりは、シム9の厚
さ調整によって最適な強さに調整される。又、ピニオン
シャフト19が軸方向溝23上を移動することにより、
両円錐摩擦クラッチ35、37の当たりが均等化され
る。
【0081】デフケース3を回転させるエンジンの駆動
力は、ピニオンシャフト19からピニオンギヤ25を介
して各サイドギヤ27、29に分配され、各車軸を介し
てそれぞれの車輪に伝達される。又、例えば悪路走行中
に、各車輪間に駆動抵抗差が生じると各ピニオンギヤ2
5の自転によってエンジンの駆動力は各車輪側に差動分
配される。
【0082】各サイドギヤ27、29にはピニオンギヤ
25との噛み合いによって噛み合い反力が生じ、この噛
み合い反力を受けて円錐摩擦クラッチ35、37が締結
され、これらの摩擦抵抗により差動ギヤ機構33の差動
が制限される。
【0083】図1のように、各サイドギヤ27、29の
円錐面41、45にはレーザ焼き入れが施されている。
【0084】各サイドギヤ27、29は、例えば、高炭
素合金鋼のような炭素系の鉄合金で作られており、レー
ザを照射した箇所は、面心立方構造のオーステナイト組
織から体心立方構造のマルテンサイト組織に変態し、そ
れに伴って体積が膨張し、突状面部が形成される。
【0085】円錐面41、45には、レーザを所定のパ
ターンで照射することによって、図1のような長短の突
状面部47、49が形成されている。これらの突状面部
47、49は円錐面41、45の傾斜に沿ってサイドギ
ヤ27、29の回転軸と交わる方向に形成されている。
【0086】マルテンサイトの焼き入れ組織に変態した
突状面部47、49の硬度は極めて高く、耐摩耗性が大
きく改善される。一方、レーザが照射されない箇所はオ
ーステナイト組織のままであり、図2のように、突状面
部47、49の間に凹部51が形成される。
【0087】各円錐面41、45の突状面部47、49
はデフケース3側の円錐面39、43と接触し、摺動す
る。
【0088】長い突状面部47は各円錐面41、45の
一端側から他端側まで連続して設けられており、短い突
状面部49の一端側と他端側にはそれぞれ凹部53が形
成されている。長短の突状面部47、49は回転方向に
交互配置されている。
【0089】このレーザ焼き入れは、請求項9の方法に
従って行われる。
【0090】サイドギヤ29を例にして説明すると、図
2の矢印55のように円錐面45にレーザを直角に当て
ながら、円錐面45に沿ってレーザ光源を移動させ、例
えば、長い突状面部47を形成した後、サイドギヤ29
を所定の角度だけ回転させ、レーザ光源を移動させて短
い突状面部47を形成する。
【0091】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0092】図1のように、ケーシング本体5には開口
57が設けられており、カバー7にも開口が設けられて
いる。
【0093】デフケース3の回転に伴って、これらの開
口及びボス部11、13のオイル溝15、17からオイ
ル溜りのオイルが流出入し、流入したオイルは差動ギヤ
機構33の各ギヤの噛み合い部、サイドギヤ27、29
の突き当て部31、円錐摩擦クラッチ35、37などを
潤滑する。
【0094】円錐摩擦クラッチ35、37に与えられた
オイルは、円錐面41、45の凹部51、53に保持さ
れ、遠心力により突状面部47、49の摺動面に供給さ
れて、円錐摩擦クラッチ35、37の潤滑効率を高め
る。
【0095】こうして、デファレンシャル装置1が構成
されている。
【0096】デファレンシャル装置1は、上記のよう
に、円錐摩擦クラッチ35、37の円錐面41、45に
硬度の高い突状面部47、49を形成したから、耐磨耗
性が大きく向上しており、長期にわたって正常な差動制
限機能が得られ、車両の操縦性、走行性、安定性などが
向上すると共に、これらの性能が長期にわたって保持さ
れる。
【0097】又、突状面部47、49の周囲に形成され
た凹部51、53がオイル溝になり、突状面部47、4
9の摺動面に充分なオイルを供給するから、耐磨耗性が
更に向上する。
【0098】このように、大きな耐磨耗性を得たことに
よって円錐面39、41,43、45は傾斜角を小さく
しても充分な耐久性が得られるから、傾斜角を小さくす
ることによって円錐摩擦クラッチ35、37を小型で大
容量にできる。
【0099】又、円錐摩擦クラッチ35、37に大きな
噛み合い反力が作用しても、この荷重は多数の突状面部
47、49に分散されて均一になるから、各突状面部4
7、49の負担はそれだけ小さくなる上に、荷重の均一
分散によって異音の発生が防止されるから、車両の静粛
性が高く保たれる。
【0100】又、突状面部47、49で荷重を受ける円
錐摩擦クラッチ35、37では、円錐面39、41,4
3、45のなじみ(擦り合わせ)が迅速に進むから、性
能が早期に安定する。
【0101】又、レーザ焼き入れは、浸炭や窒化処理に
較べて、加熱エネルギーが格段に小さく、処理時間も極
めて短い。その上、レーザの照射箇所は、空中放冷でマ
ルテンサイトの焼き入れ組織が安定するから冷却手段が
不要である。これらの理由で、コストが大きく低減され
る。
【0102】又、このように加熱エネルギーが小さく、
処理時間が短いことに加えて、レーザ照射は円錐面4
1、45にだけ行われるから、従来例と異なって、サイ
ドギヤ27、29には熱変形が生じない。従って、硬化
処理(レーザ焼き入れ)後の修正加工は不要である。
【0103】更に、所定のパターンでレーザ焼き入れす
るだけで凹部51、53が円錐面41、45に形成され
るから、従来例と異なって、円錐面41、45にオイル
溝を加工する必要がない。
【0104】これらの機械加工が省けることによって、
コストが大幅に低減する。
【0105】以上は、請求項1の構成による効果であ
る。
【0106】これに加えて、円錐面41、45の傾斜に
沿って形成した突状面部47、49の接触と摺動とによ
り、各サイドギヤ27、29の回転軸の倒れが防止され
るから、突状面部47、49と円錐面39、43の接触
と摺動とが均一になり、円錐摩擦クラッチ35、37の
性能が安定する。
【0107】又、突状面部47、49を円錐面41、4
5の傾斜に沿って形成したことにより、遠心力によって
オイルが小径側から大径側に移動し易くなり、円錐摩擦
クラッチ35、37の潤滑効率が向上する。
【0108】又、短い突状面部49の両端側に形成され
る凹部53によって、オイルが回転方向にも移動し易く
なり、潤滑効果を更に向上させる。
【0109】更に、焼き入れに当たって、レーザを円錐
面41、45に直角に当てることによりレーザの反射が
最小限に抑えられ、エネルギーロスとコストとが低減さ
れる。
【0110】以下、第2、3、4、5、6、7、8の各
実施形態の説明をするが、これらの実施形態の説明にお
いて、サイドギヤ29やケーシング本体5のように、そ
の実施形態での特徴点以外の機能が、第1実施形態の部
材と同一の部材には第1実施形態と同一の符号を与えて
引用している。
【0111】次に、図3によって第2実施形態の説明を
する。図3はこの実施形態のデファレンシャル装置に用
いられる右サイドギヤ29を示しており、このデファレ
ンシャル装置は請求項1、4、9、12、13の特徴を
備えている。なお、符号を与えていない部材等は図示さ
れていない。
【0112】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0113】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが施され、レーザを照射した箇所
はマルテンサイト組織に変態し、図3のような、突状面
部59、61が形成される。
【0114】これらの突状面部59、61はサイドギヤ
27、29の回転方向に連続して形成されており、デフ
ケース3側の円錐面39、43と接触し、摺動する。
【0115】マルテンサイト組織に変態した突状面部5
9、61の硬度は極めて高く、耐摩耗性が大きく改善さ
れる。又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト
組織のままであり、凹部63、65、67が形成され
る。
【0116】このレーザ焼き入れは、請求項9の方法に
従って行われる。
【0117】サイドギヤ29を例にして説明すると、図
3の矢印69のように円錐面45にレーザを直角に当て
ながら、矢印71のようにサイドギヤ29を回転させ
て、例えば、大径の突状面部59を形成した後、円錐面
45に沿ってレーザ光源を移動させ、サイドギヤ29を
回転させながら小径の突状面部61を形成する。
【0118】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0119】各円錐摩擦クラッチは、デフケース3の開
口及びオイル溝15、17から流入したオイルによっ
て、差動ギヤ機構33、突き当て部31などと共に潤滑
される。
【0120】各円錐摩擦クラッチに与えられたオイル
は、円錐面41、45の凹部63、65、67に保持さ
れ、遠心力により突状面部59、61の摺動面に供給さ
れて潤滑効率を高める。
【0121】こうして、第2実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0122】このデファレンシャル装置では、第1実施
形態と同様に、各円錐摩擦クラッチの円錐面41、45
にマルテンサイト組織の突状面部59、61を形成し、
更に、凹部63、65、67がオイル溝になることによ
って耐磨耗性が大きく向上する。従って、円錐面39、
41,43、45の傾斜角を小さくすることにより、各
円錐摩擦クラッチを小型で大容量にできる。
【0123】又、荷重の均一分散によって突状面部5
9、61の負担が軽減し、異音が防止されると共に、円
錐面39、41,43、45が迅速になじむから、各円
錐摩擦クラッチの性能は早期に安定する。
【0124】又、浸炭処理や窒化処理に較べて、コスト
が大きく低減される。
【0125】又、レーザで焼き入れすることにより、サ
イドギヤ27、29の修正加工が不要になり、円錐面4
1、45にオイル溝を加工する必要がなくなるから、コ
ストが大幅に低減する。
【0126】これに加えて、突状面部59、61をサイ
ドギヤ27、29の回転方向に連続して形成したから、
突状面部59、61とデフケース3側の円錐面39、4
3との接触により、サイドギヤ27、29の回転が安定
する。
【0127】又、遠心力によりオイルが小径側の凹部6
3から大径側の凹部65、67に移動して突状面部5
9、61の摺動部を潤滑するから、各円錐摩擦クラッチ
の潤滑効率が更に向上する。
【0128】次に、図4と図5によって第3実施形態の
説明をする。各図はこの実施形態のデファレンシャル装
置に用いられる右サイドギヤ29を示しており、このデ
ファレンシャル装置は請求項1、5、9、12、13の
特徴を備えている。なお、符号を与えていない部材等は
図示されていない。
【0129】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0130】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが施され、レーザを照射した箇所
はマルテンサイト組織に変態し、突状面部73が形成さ
れる。
【0131】図5のように、この突状面部73は、サイ
ドギヤ29の回転軸に対する食い違い軸の方向に螺旋状
に形成されており、デフケース3側の円錐面39、43
と接触し、摺動する。
【0132】マルテンサイト組織に変態した突状面部7
3は極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善される。
又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト組織の
ままであり、突状面部73の間には凹部75が形成され
る。
【0133】このレーザ焼き入れは、請求項9の方法に
従って行われる。
【0134】サイドギヤ29を例に説明すると、図4の
矢印77のように円錐面45にレーザを直角に当てた状
態でレーザ光源を固定し、サイドギヤ29を、矢印79
のように回転させながら、矢印81のように軸方向移動
させる。
【0135】一箇所の突状面部73を形成した後、サイ
ドギヤ29を所定の角度だけ回転させて、同様に次の突
状面部73を形成し、順次円錐面45の全周にレーザ焼
き入れを行う。
【0136】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0137】デフケース3の開口及びオイル溝15、1
7から流入し、各円錐摩擦クラッチに与えられたオイル
は、円錐面41、45の凹部75に保持され、潤滑効率
を高める。
【0138】こうして、第3実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0139】このデファレンシャル装置では、第1、2
の各実施形態と同様に、請求項1の構成による効果が得
られる。
【0140】これに加えて、突状面部73を螺旋状に形
成したことにより、サイドギヤ27、29の回転軸の倒
れが防止され、突状面部73とデフケース3の円錐面3
9、43との接触及び摺動が均一になり、各円錐摩擦ク
ラッチの性能が安定する。
【0141】又、突状面部73を螺旋状に形成したこと
により、サイドギヤ27、29の回転が安定する。
【0142】又、突状面部73を螺旋状に形成したか
ら、これらの回転と摺動とによって凹部75のオイルが
突状面部73の全面に拡がり易くなり、各円錐摩擦クラ
ッチの潤滑効率が更に向上する。
【0143】次に、図6によって第4実施形態の説明を
する。図6はこの実施形態のデファレンシャル装置に用
いられる右サイドギヤ29を示しており、このデファレ
ンシャル装置は請求項1、6、7、9、12、13の特
徴を備えている。なお、符号を与えていない部材等は図
示されていない。
【0144】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0145】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが施され、レーザを照射した箇所
はマルテンサイト組織に変態し、突状面部83が形成さ
れる。
【0146】図6のように、この突状面部83は円形で
あり、多数の突状面部83が周方向2列に配列されてい
る。各突状面部83はデフケース3側の円錐面39、4
3と接触し、摺動する。
【0147】マルテンサイト組織に変態した突状面部8
3は極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善される。
又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト組織の
ままであり、突状面部83の周囲には凹部85が形成さ
れる。
【0148】このレーザ焼き入れは、請求項9の方法に
従って行われる。
【0149】サイドギヤ29を例に説明すると、レーザ
焼き入れは、図6の矢印87のように円錐面45にレー
ザを直角に当てながら行われ、一箇所の突状面部83を
形成した後、サイドギヤ29を所定の角度だけ回転させ
て、次の突状面部83を形成し、順次円錐面45の全周
にレーザ焼き入れを行う。
【0150】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0151】このように、突状面部83が円形の場合
は、レーザを円錐面41、45に直角に当てるだけで円
形の突状面部が形成される。
【0152】デフケース3の開口及びオイル溝15、1
7から流入し、各円錐摩擦クラッチに与えられたオイル
は、円錐面41、45の凹部85に保持され、サイドギ
ヤ27、29の回転と遠心力とにより突状面部83の摺
動面に供給されて潤滑効率を高める。
【0153】こうして、第4実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0154】このデファレンシャル装置では、第1、
2、3の各実施形態と同様に、請求項1の構成による効
果が得られる。
【0155】これに加えて、多数の突状面部83を円錐
面41、45に配置したことにより、各突状面部83の
荷重は互いに分散されて均一になり、負担が軽減され
る。その上、荷重の均一分散によって異音の発生が防止
される。
【0156】又、上記のように、円形の突状面部83は
レーザを円錐面41、45に直角に当てるだけで形成さ
れるから、レーザ焼き入れが容易である。
【0157】次に、図7によって第5実施形態の説明を
する。図7はこの実施形態のデファレンシャル装置に用
いられる右サイドギヤ29と、そのレーザ焼き入れに用
いられるマスク91とを示しており、このデファレンシ
ャル装置は請求項1、6、7、11、12、13の特徴
を備えている。なお、符号を与えていない部材等は図示
されていない。
【0158】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0159】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが行われる。このレーザ焼き入れ
は、請求項11の方法により、マスク91が用いられ
る。
【0160】サイドギヤ29を例に説明すると、図7の
ように円錐面45にはマスク91が被せられ、矢印93
のようにレーザはこのマスク91越しに円錐面45に照
射される。マスク91には正方形(多角形)の孔95が
多数形成されている。これらの孔95は周方向2列に配
置されている。
【0161】円錐面45にはマスク91越しに照射され
たレーザによって孔95が転写され、転写箇所はマルテ
ンサイト組織に変態し、正方形の突状面部が形成され
る。一箇所の突状面部を形成すると、サイドギヤ29を
所定の角度だけ矢印97のように回転させて、次の突状
面部を形成し、順次円錐面45の全周にレーザ焼き入れ
を行う。
【0162】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0163】サイドギヤ27、29の突状面部はデフケ
ース3側の円錐面39、43と接触し、摺動する。
【0164】マルテンサイト組織に変態した突状面部は
極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善される。又、
レーザが照射されない箇所はオーステナイト組織のまま
であり、突状面部の周囲には凹部99が形成される。
【0165】デフケース3の開口及びオイル溝15、1
7から流入し、各円錐摩擦クラッチに与えられたオイル
は、円錐面41、45の凹部99に保持され、サイドギ
ヤ27、29の回転と遠心力とにより突状面部の摺動面
に供給されて潤滑効率を高める。
【0166】こうして、第5実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0167】このデファレンシャル装置では、第1、
2、3、4の各実施形態と同様に、請求項1の構成によ
る効果が得られる。
【0168】これに加えて、第4実施形態と同様に、円
錐面41、45に配置された多数の突状面部に荷重が均
一に分散されて各突状面部の負担が軽減すると共に、荷
重の均一分散によって異音の発生が防止される。
【0169】又、マスク91を用いれば、上記のよう
に、多数の突状面部を円錐面41、45に分散配置した
パターンを容易に形成することができる。
【0170】又、マスクを用いることによって、配置パ
ターンが複雑な突状面部や、形状が複雑な突状面部を容
易に形成することができる。
【0171】次に、図8によって第6実施形態の説明を
する。図8はこれらの実施形態のデファレンシャル装置
に用いられる右サイドギヤ29を示しており、このデフ
ァレンシャル装置は請求項1、8、9、12、13の特
徴を備えている。なお、符号を与えていない部材等は図
示されていない。
【0172】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0173】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが施され、レーザを照射した箇所
はマルテンサイト組織に変態し、突状面部101が形成
される。
【0174】図8のように、この突状面部101は円錐
面41、45の大径側に向かって幅が広くなる3角形で
あり、多数の突状面部101が周方向に配列されてい
る。各突状面部101はデフケース3側の円錐面39、
43と接触し、摺動する。
【0175】マルテンサイト組織に変態した突状面部1
01は極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善され
る。又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト組
織のままであり、突状面部101の間には、円錐面4
1、45の小径側に向かって幅が広くなる3角形の凹部
103が形成される。
【0176】このレーザ焼き入れは、次のように行われ
る。
【0177】サイドギヤ29を例に説明すると、図8の
矢印105のようにレーザを円錐面45に直角に当てた
状態で、レーザ光源を円錐面45の傾斜に沿って移動さ
せる。このとき、レーザ光源の照射距離(照射面積)を
変えることにより、突状面部101を円錐面45の大径
側に向かって幅広にする。
【0178】一箇所の突状面部101を形成した後、サ
イドギヤ29を所定の角度だけ矢印107のように回転
させて、上記のように照射距離を変えながら次の突状面
部101を形成し、同様にして、順次円錐面45の全周
にレーザ焼き入れを行う。
【0179】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0180】デフケース3に流入したオイルは、円錐面
41、45の凹部103に保持され、サイドギヤ27、
29の回転と遠心力とにより突状面部101の摺動面に
供給されて潤滑効率を高める。
【0181】こうして、第6実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0182】このデファレンシャル装置では、第1、
2、3、4、5の各実施形態と同様に、請求項1の構成
による効果が得られる。
【0183】これに加えて、突状面部101を円錐面4
1、45の大径側に向かって幅広にしたことにより、小
径側に幅広になった凹部103が形成され、この凹部1
03に保持される多量のオイルが、遠心力によって突状
面部101に供給されるから、各円錐摩擦クラッチの潤
滑効率が大きく向上する。
【0184】又、多数の突状面部101を円錐面41、
45に配置したことにより、荷重が均一に分散されて各
突状面部101の負担が軽減する。その上、荷重の均一
分散によって異音の発生が防止される。
【0185】次に、図9によって第7実施形態の説明を
する。図9はこれらの実施形態のデファレンシャル装置
に用いられる右サイドギヤ29を示しており、このデフ
ァレンシャル装置は請求項1、8、9、12、13の特
徴を備えている。なお、符号を与えていない部材等は図
示されていない。
【0186】左右のサイドギヤ27、29とデフケース
3との間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されてい
る。
【0187】各サイドギヤ27、29の円錐面41、4
5にはレーザ焼き入れが施され、レーザを照射した箇所
はマルテンサイト組織に変態し、突状面部109が形成
される。
【0188】図9のように、この突状面部109は円錐
面41、45の小径側に向かって幅が広くなる3角形で
あり、多数の突状面部101が周方向に配列されてい
る。各突状面部109はデフケース3側の円錐面39、
43と接触し、摺動する。
【0189】マルテンサイト組織に変態した突状面部1
09は極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善され
る。又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト組
織のままであり、突状面部109の間には、円錐面4
1、45の大径側に向かって幅が広くなる3角形の凹部
111が形成される。
【0190】このレーザ焼き入れは、次のように行われ
る。
【0191】サイドギヤ29を例に説明すると、図9の
矢印113のようにレーザを円錐面45に直角に当てた
状態で、レーザ光源を円錐面45の傾斜に沿って移動さ
せる。このとき、レーザ光源の照射距離(照射面積)を
変えることにより、突状面部109を円錐面45の小径
側に向かって幅広にする。
【0192】一箇所の突状面部109を形成した後、サ
イドギヤ29を所定の角度だけ矢印115のように回転
させて、照射距離を変えながら次の突状面部109を形
成し、同様にして、順次円錐面45の全周にレーザ焼き
入れを行う。
【0193】サイドギヤ27のレーザ焼き入れも同様に
行われる。
【0194】デフケース3に流入したオイルは、円錐面
41、45の凹部111に保持され、サイドギヤ27、
29の回転により突状面部109の摺動面に供給されて
潤滑効率を高める。
【0195】こうして、第7実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0196】このデファレンシャル装置では、第1、
2、3、4、5、6の各実施形態と同様に、請求項1の
構成による効果が得られる。
【0197】これに加えて、突状面部109を円錐面4
1、45の小径側で幅を広くし、大径側で幅を狭くした
ことにより、円錐面41、45の大径側から小径側にわ
たって突状面部109の面圧(接触面積)が均等化さ
れ、部分的な磨耗が防止されて耐久性が向上する。
【0198】又、多数の突状面部101を円錐面41、
45に配置したことにより、荷重が均一に分散されて各
突状面部101の負担が軽減する。その上、荷重の均一
分散によって異音の発生が防止される。
【0199】次に、図10によって第8実施形態の説明
をする。図10はこの実施形態のデファレンシャル装置
に用いられるケーシング本体5と、そのレーザ焼き入れ
に用いられる反射鏡117とを示しており、このデファ
レンシャル装置は請求項1、5、10、12、13の特
徴を備えている。なお、符号を与えていない部材等は図
示されていない。
【0200】デフケース3のカバー7と左のサイドギヤ
27との間及びケーシング本体5とサイドギヤ29との
間にはそれぞれ円錐摩擦クラッチが形成されている。
【0201】カバー7とケーシング本体5の各円錐面3
9、43にはレーザ焼き入れが行われる。このレーザ焼
き入れは、請求項10の方法により、反射鏡117を用
いて行われる。
【0202】ケーシング本体5を例に説明すると、図1
0のように、反射鏡117は軸119の先端に固定され
ており、ケーシング本体5の内部に同軸配置されてい
る。レーザビーム121はケーシング本体5の開口12
3側から反射鏡117に入射し、ケーシング本体5の円
錐面43に導かれる。
【0203】このとき、軸119を矢印125のように
回転させながら、矢印127のように軸方向移動させる
と、円錐面43に螺旋状の突状面部129が形成され
る。この間、ケーシング本体5は固定しておく。
【0204】一箇所の突状面部129を形成した後、サ
イドギヤ29を所定の角度だけ回転させて、次の突状面
部129を形成し、同様にして、順次円錐面43の全周
にレーザ焼き入れを行う。
【0205】カバー7のレーザ焼き入れも同様に行われ
る。
【0206】カバー7とケーシング本体5の突状面部1
29はサイドギヤ27、29の円錐面41、45と接触
し、摺動する。
【0207】マルテンサイト組織に変態した突状面部1
29は極めて硬度が高く、耐摩耗性が大きく改善され
る。又、レーザが照射されない箇所はオーステナイト組
織のままであり、突状面部129の間には凹部131が
形成される。
【0208】デフケース3の開口及びオイル溝15、1
7から流入し、各円錐摩擦クラッチに与えられたオイル
は、円錐面39、43の凹部131に保持され、潤滑効
率を高める。
【0209】こうして、第8実施形態のデファレンシャ
ル装置が構成されている。
【0210】このデファレンシャル装置では、第1、
2、3、4、5、6、7の各実施形態と同様に、請求項
1の構成による効果が得られる。
【0211】これに加えて、第3実施形態と同様に、突
状面部129を螺旋状に形成したことにより、サイドギ
ヤ27、29の回転軸の倒れが防止され、突状面部12
9とサイドギヤ27、29の円錐面41、45との接触
及び摺動が均一になり、各円錐摩擦クラッチの性能が安
定する。
【0212】又、突状面部129を螺旋状に形成したこ
とにより、サイドギヤ27、29の回転が安定する。
【0213】又、突状面部129を螺旋状に形成したか
ら、遠心力とサイドギヤ27、29の回転によって凹部
131のオイルが突状面部129の全面に拡がり易くな
り、各円錐摩擦クラッチの潤滑効率が向上する。
【0214】又、このようにレーザの反射鏡117を用
いることによって、任意の箇所にレーザを導くことが容
易になり、上記のように、デフケース3の内周側に形成
された円錐面39、43をレーザ焼き入れする場合な
ど、特に有利である。
【0215】又、本実施形態の様に反射鏡117を用い
た場合の突状面部129の形成方法において、デフケー
ス3(焼き入れ部材)と反射鏡117との回転及び軸方
向移動は上記のものに限らずそれらの組み合わせは任意
に取ることができる。
【0216】なお、上記の各実施形態は円錐摩擦クラッ
チの回転体とサイドギヤ27、29とを一体にした例で
あるが、これらは別体に成形し、その後一体に連結して
もよい。
【0217】
【発明の効果】請求項1記載の円錐摩擦クラッチは、レ
ーザ焼き入れによって円錐面にマルテンサイト組織の突
状面部を形成し、その周囲に凹部を形成して突状面部に
オイルを供給するように構成したことによって、充分な
耐磨耗性が得られる。
【0218】従って、円錐面は傾斜角を小さくしても充
分な耐久性が得られるから、傾斜角を小さくすることに
より円錐摩擦クラッチを小型で大容量にできる。
【0219】又、荷重が多数の突状面部に均一に分散さ
れるから、各突状面部の負担が軽減すると共に、荷重の
均一分散によって異音の発生が防止される。
【0220】又、突状面部で荷重を受けるから、摺動部
のなじみが迅速に進み、円錐摩擦クラッチの性能が早期
に安定する。
【0221】又、レーザ焼き入れは、加熱エネルギーが
格段に小さく、処理時間も極めて短い上に、冷却手段が
不要であるから、コストが大きく低減される。
【0222】又、レーザ照射は円錐面だけに行われ、浸
炭処理や窒化処理をする従来例と異なって、回転部材の
熱変形が生じないから、硬化処理後の修正加工が不要に
なる。
【0223】又、所定のパターンでレーザ焼き入れする
だけでオイル溝になる凹部が形成されるから、従来例と
異なって、円錐面にオイル溝を加工する必要がない。
【0224】これらの機械加工が省けることによって、
コストが大幅に低減する。
【0225】請求項2記載の発明は、請求項1の構成と
同等の効果を得ると共に、円錐面の傾斜方向に形成した
突状面部の接触と摺動とにより、回転体の倒れが防止さ
れ、円錐面の接触と摺動とが均一になり、円錐摩擦クラ
ッチの性能が安定する。
【0226】又、突状面部を円錐面の傾斜に沿って形成
したことにより、遠心力によってオイルが小径側から大
径側に移動し易くなり、円錐摩擦クラッチの潤滑効率が
向上する。
【0227】請求項3記載の発明は、請求項2の構成と
同等の効果を得ると共に、円錐面の一端側から他端側ま
で連続して設けられた長い突状面部の間に、それより短
い突状面部を配置したことによって、オイルが回転方向
にも移動し易くなり、潤滑効果を向上させる。
【0228】請求項4記載の発明は、請求項1の構成と
同等の効果を得ると共に、突状面部を回転体の回転方向
に連続して形成したことにより、回転体の回転が安定す
る。
【0229】又、遠心力によってオイルが小径側の凹部
から突状面部の摺動部を介して大径側の凹部に移動し、
円錐摩擦クラッチが効率よく潤滑される。
【0230】請求項5記載の発明は、請求項1の構成と
同等の効果を得ると共に、突状面部を螺旋状に形成した
ことにより、請求項2の構成と同様に、回転軸の倒れが
防止され、突状面部と円錐面との接触及び摺動が均一に
なり、円錐摩擦クラッチの性能が安定する。
【0231】又、請求項4の構成と同様に、回転体の回
転が安定する。
【0232】更に、突状面部を食い違い軸方向に形成し
たから、これらの回転と摺動とによってオイルが突状面
部の全面に拡がり易くなり、円錐摩擦クラッチの潤滑効
率が向上する。
【0233】請求項6記載の発明は、請求項1の構成と
同等の効果を得ると共に、凹部で区画された突状面部を
円錐面に分散配置したことにより、荷重が多数の突状面
部に分散されて均一になるから、各突状面部の負担が軽
減されると共に、荷重の均一分散によって異音の発生が
防止される。
【0234】請求項7記載の発明は、請求項6の構成と
同等の効果を得ると共に、突状面部を円形にした場合
は、レーザを円錐面に直角に当てるだけで円形の突状面
部が形成されるから、レーザ焼き入れが容易である。
【0235】請求項8記載の発明は、請求項1の構成と
同等の効果を得ると共に、突状面部を円錐面の大径側に
向かって幅広にすれば、小径側に形成された幅広の凹部
に保持される多量のオイルが遠心力によって突状面部に
供給されるから、円錐摩擦クラッチの潤滑効率が大きく
向上する。
【0236】又、突状面部を円錐面の小径側に向かって
幅広にすれば、各円錐面の突状面部の面圧が大径側から
小径側まで均一になり、偏磨耗が防止され、耐久性が向
上する。
【0237】請求項9記載のレーザ焼き入れ方法では、
円錐面にレーザを直角に照射するか、照射面からのレー
ザ光の反射が少なく、それだけエネルギーロスとレーザ
焼き入れのコストとが低減する。
【0238】又、回転体を回転させながら連続してレー
ザを照射すれば、請求項4の円錐摩擦クラッチのよう
な、回転方向の突状面部を容易に形成できる。
【0239】又、回転体を回転させながら断続的にレー
ザを照射すれば、回転方向に不連続な突状面部の形成が
容易である。
【0240】請求項10記載のレーザ焼き入れ方法で
は、レーザの反射鏡を用いることによって、任意の箇所
にレーザを導くことが可能であり、例えば、デフケース
の内周側に形成された円錐面にレーザを照射することが
容易である。
【0241】又、このとき、レーザの反射鏡を回転させ
ながら回転体の軸方向に移動させれば、内周側の円錐面
に螺旋状の突状面部を容易に形成することができる。
【0242】請求項11記載のレーザ焼き入れ方法で
は、マスク越しにレーザを照射することによってマスク
のパターンが円錐面上に転写されるから、請求項6、7
の円錐摩擦クラッチのように、多数の突状面部を円錐面
に分散配置したパターンの形成が容易である。
【0243】又、マスクを用いることによって、複雑な
パターンで配置された突状面部や、複雑な形状の突状面
部を容易に形成することができる。
【0244】請求項12記載のデファレンシャル装置
は、上記のように、円錐面の傾斜角を小さくし小型で大
容量にできる請求項1乃至請求項8の円錐摩擦クラッチ
の摺動摩擦力を差動制限機構に用いたから、小型で充分
な差動制限力が得られ、車両の操縦性、走行性、安定性
などが向上し、これらの性能が長期にわたって保持され
る。
【0245】又、これらの円錐摩擦クラッチは、上記の
ように、荷重の均一分散によって異音が防止されるか
ら、車両の静粛性が高く保たれる。
【0246】請求項13記載の発明は、請求項12の構
成と同等の効果を得ると共に、上記の円錐摩擦クラッチ
は傾斜角を小さくすることにより僅かな押圧力で大きな
摩擦抵抗が発生するから、ギヤの噛み合い反力で充分な
差動制限力が得られる。
【0247】又、噛み合い反力で円錐摩擦クラッチを締
結するように構成したから、締結用のアクチュエータが
不要であり、それだけ構造簡単、小型軽量で、低コスト
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に用いられるサイドギヤ
の側面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に用いられるサイドギヤ
の側面図である。
【図5】図4のB矢視図である。
【図6】本発明の第4実施形態に用いられるサイドギヤ
の側面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に用いられるサイドギヤ
とレーザ焼き入れ用のマスクとを示す側面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に用いられるサイドギヤ
の側面図である。
【図9】本発明の第7実施形態に用いられるサイドギヤ
の側面図である。
【図10】本発明の第8実施形態に用いられるケーシン
グ本体の断面と反射鏡とを示す図面である。
【図11】第1従来例の断面図である。
【図12】第2従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 デファレンシャル装置 3 デフケース 5 ケーシング本体(他側の回転体) 7 カバー(他側の回転体) 19 ピニオンシャフト 25 ピニオンギヤ 27、29 出力側サイドギヤ(一側の回転体) 33 ベベルギヤ式差動ギヤ機構(差動機構) 35、37 円錐摩擦クラッチ 39、43 内周側の円錐面 41、45 外周側の円錐面 47、49、59、61、73、83、101、10
9、129 突状面部 51、63、65、67、75、85、99、103、
111、131 凹部 91 レーザ焼き入れ用のマスク 117 レーザの反射鏡
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16H 48/20 F16H 1/44

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外周に円錐面が設けられた一側回転体
    と、内周に円錐面が設けられた他側回転体とを有し、軸
    方向の押圧力を受けて互いに押し付けられる各円錐面の
    摩擦力によって各回転体の間で駆動力を伝達する円錐摩
    擦クラッチであって、レーザ焼き入れによって前記円錐
    面に突状面部を所定のパターンで設けたことを特徴とす
    る円錐摩擦クラッチ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の発明であって、前記突状
    面部が、円錐面の傾斜に沿って回転体の回転軸と交差す
    る方向に形成されたことを特徴とする円錐摩擦クラッ
    チ。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の発明であって、前記突状
    面部が、円錐面の一端側から他端側まで連続して設けら
    れた長い突状面部及びそれより短い突状面部からなり、
    これらを回転方向に交互配置したことを特徴とする円錐
    摩擦クラッチ。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の発明であって、前記突状
    面部が、回転体の回転方向に連続して形成されたことを
    特徴とする円錐摩擦クラッチ。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の発明であって、前記突状
    面部が、回転体の回転軸に対する食い違い軸の方向に螺
    旋状に形成されたことを特徴とする円錐摩擦クラッチ。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の発明であって、前記突状
    面部が、周囲に形成された凹部で互いに区画され、円錐
    面に分散配置されたことを特徴とする円錐摩擦クラッ
    チ。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の発明であって、前記突状
    面部の形状が、円形又は多角形、あるいは、これらの両
    方であることを特徴とする円錐摩擦クラッチ。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の発明であって、前記突状
    面部が、円錐面の大径側に向かって、又は円錐面の小径
    側に向かって、幅広になることを特徴とする円錐摩擦ク
    ラッチ。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に
    記載の円錐摩擦クラッチにおいて、回転体の円錐面に突
    状面部を所定のパターンでレーザ焼き入れするレーザ焼
    き入れ方法であって、回転体を回転させながらレーザを
    円錐面に直角に照射することを特徴とするレーザ焼き入
    れ方法。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至請求項8のいずれか一項
    に記載の円錐摩擦クラッチにおいて、回転体の円錐面に
    突状面部を所定のパターンでレーザ焼き入れするレーザ
    焼き入れ方法であって、レーザの反射鏡を用い、この反
    射鏡と回転体の一方又は両方を回転させながら回転体の
    軸方向に移動させてレーザを円錐面に導くことを特徴と
    するレーザ焼き入れ方法。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至請求項8のいずれか一項
    に記載の円錐摩擦クラッチにおいて、回転体の円錐面に
    突状面部を所定のパターンでレーザ焼き入れするレーザ
    焼き入れ方法であって、所定のパターンの孔を有するマ
    スク越しにレーザを円錐面に照射することを特徴とする
    レーザ焼き入れ方法。
  12. 【請求項12】 エンジンの駆動力によって回転駆動さ
    れるデフケースと、デフケースの回転を車輪側に分配す
    る差動機構と、この差動機構の差動回転部材とデフケー
    スとの間に配置された請求項1乃至請求項8のいずれか
    一項に記載の円錐摩擦クラッチと、この円錐摩擦クラッ
    チに押圧力を与えて締結する締結手段とを備えたことを
    特徴とするデファレンシャル装置。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の発明であって、前記
    差動機構が、デフケースと一体に回転するピニオンシャ
    フトと、ピニオンシャフト上に回転自在に支承されたピ
    ニオンギヤと、このピニオンギヤと噛み合った一対の出
    力側サイドギヤとを有するベベルギヤ式の差動ギヤ機構
    であり、前記円錐摩擦クラッチが、ピニオンギヤに対す
    るサイドギヤの噛み合い反力を受けて締結されることを
    特徴とするデファレンシャル装置。
JP23681696A 1996-09-06 1996-09-06 円錐摩擦クラッチと、その円錐面のレーザ焼き入れ方法と、この円錐摩擦クラッチを差動制限機構に用いたデファレンシャル装置 Pending JPH1082430A (ja)

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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001220623A (ja) * 1999-12-31 2001-08-14 Dana Corp かさ歯車を製造する方法
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