JPH10251869A - 耐熱部材およびその製造方法 - Google Patents

耐熱部材およびその製造方法

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JPH10251869A
JPH10251869A JP6262597A JP6262597A JPH10251869A JP H10251869 A JPH10251869 A JP H10251869A JP 6262597 A JP6262597 A JP 6262597A JP 6262597 A JP6262597 A JP 6262597A JP H10251869 A JPH10251869 A JP H10251869A
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JP
Japan
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layer
metal
heat
coating layer
metal substrate
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JP6262597A
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English (en)
Inventor
Hirotaka Inagaki
浩貴 稲垣
Seiichi Suenaga
誠一 末永
Kunihiko Wada
国彦 和田
Kazuhiro Yasuda
一浩 安田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属被覆層を適用した耐熱部材において、金
属基材/金属被覆層界面での元素移動に伴う劣化を充分
に抑制することを可能にすると共に、元素拡散を抑制す
る層に基く界面剥離等を抑制する。 【解決手段】 Ni、Co、Feの 1種を主成分とする
金属基材1上に、中間層2を介して、Ni、Co、Fe
の 1種を主成分し、さらにCrおよびAlを含有する金
属被覆層3を被覆形成した耐熱部材4である。中間層2
として、Ni、Co、Feの 1種を主成分とすると共
に、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Nbの1種の元素
と、Al、Cr、Wの 1種の元素とを含有する合金を使
用する。あるいは、Ni、Co、Feの 1種を主成分と
すると共に、Al、Crの 1種の元素を含有し、かつ含
有されるCr量が金属被覆層中のCr含有量より 5重量
% 以上少ない合金層を中間層として用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばガスタービ
ンの動・静翼の構成材料のように、高温環境下で長時間
の高温強度、耐酸化性、耐食性が要求される材料に好適
な耐熱部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発電用やエンジン用のガスタービンに代
表される高温機器の高効率化を目指した機器使用温度の
高温化に伴って、機器構成部品に使用される材料には一
層高レベルの特性、例えば高温強度、高温耐食・耐酸化
性等が要求されている。このため、高強度のNi基やC
o基の超合金材料の表面に、M−Cr−Al−Y(Μは
Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元
素を示す)合金等からなる耐食・耐酸化金属被覆を施す
技術が開発され、ガスタービンの動・静翼等においては
必須の技術として、既に広く適用されている。また、さ
らなる高温化の流れの中で、耐食・耐酸化金属被覆層の
表面に熱伝導率の低いセラミックス層を被覆し、内側の
金属材料を保護する遮熱被覆技術も実用化されつつあ
る。
【0003】ところで、従来の金属被覆の材料開発は、
主として本来の目的である耐食性と耐酸化性の観点から
進められてきたため、Ni基やCo基の超合金からなる
金属基材とΜ−Cr−Al−Y合金からなる金属被覆層
との材料組成は著しく異なっている。その結果として、
長時間のガスタービンの運転下において、直接接する金
属基材/金属被覆層界面での元素移動が生じている。こ
の元素移動によって、金属被覆層からAlやCr等の保
護性酸化物層を形成する元素が枯渇し、金属被覆層の耐
食・耐酸化性が低下したり、あるいは金属基材内部での
異種相の生成により高温強度が低下する等の問題を招い
ている。
【0004】上記したような金属基材/金属被覆層界面
での元素移動に伴う問題を解決するために、金属基材と
金属被覆層との間に元素拡散を抑制する拡散抑制層を形
成することが検討されている。このような拡散抑制層と
しては、従来、内部での拡散係数の小さいAlやTi等
を主成分とする酸化物層や窒化物層、あるいは酸窒化物
層等が検討されており、これら化合物層をCVD法等の
成膜方法を用いて形成することが試みられている。
【0005】しかしながら、CVD法等で直接形成した
化合物層からなる拡散抑制層は、拡散抑制層/金属基材
界面や拡散抑制層/金属被覆層界面における密着性が悪
く、これらの界面で剥離が起こりやすいとい問題が生じ
ている。この界面での剥離は耐熱部材の寿命低下の大き
な要因となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、金属
被覆を適用した耐熱部材、またさらに遮熱被覆を施した
耐熱部材においては、金属基材/金属被覆層界面での元
素移動に伴う問題を解決するために、拡散抑制層を形成
することが試みられているが、従来の酸化物層、窒化物
層、酸窒化物層等の化合物層を直接被覆形成した拡散抑
制層は、金属基材や金属被覆層との密着性が悪く、これ
らの界面から剥離が生じて耐熱部材の寿命を低下させる
という問題を招いていた。
【0007】このようなことから、従来の耐熱部材にお
いては、金属基材/金属被覆層界面での元素移動に伴う
劣化を充分に抑制することを可能にすると共に、拡散抑
制層自体の密着性を高めることが課題とされている。
【0008】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、長時間にわたって金属基材/金属被
覆層間の元素移動を十分に抑制することを可能にすると
共に、各層間の密着性を高めて界面剥離を抑制し、長寿
命化を達成した耐熱部材およびその製造方法を提供する
ことを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明における第1の耐
熱部材は、請求項1に記載したように、Ni、Coおよ
びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
る金属基材と、前記金属基材上に中間層を介して被覆形
成され、Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも
1種の元素を主成分とすると共に、少なくともCrおよ
びAlを含有する合金からなる金属被覆層とを具備する
耐熱部材において、前記中間層はNi、CoおよびFe
から選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とすると共
に、Ti、Zr、Hf、V、TaおよびNbから選ばれ
る少なくとも 1種の元素と、 0.1〜15重量% のAl、
0.1〜30重量% のCrおよび 0.1〜10重量% のWから選
ばれる少なくとも 1種の元素とを含有することを特徴と
している。
【0010】また、本発明における第1の耐熱部材の製
造方法は、請求項2に記載したように、Ni、Coおよ
びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
る金属基材と、前記金属基材上に中間層を介して被覆形
成され、Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも
1種の元素を主成分とすると共に、少なくともCrおよ
びAlを含有する合金からなる金属被覆層とを具備する
耐熱部材の製造方法において、前記金属基材上に、N
i、CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元素
を主成分とすると共に、Ti、Zr、Hf、V、Taお
よびNbから選ばれる少なくとも 1種の元素と、 0.1〜
15重量% のAl、 0.1〜30重量% のCrおよび 0.1〜10
重量% のWから選ばれる少なくとも 1種の元素とを含有
する中間層を、酸素分圧または窒素分圧が 0.1〜 1×10
4 Paの雰囲気中で形成する工程と、前記中間層上に、前
記金属被覆層を 1×104 Pa以下の減圧雰囲気中で形成す
る工程とを有することを特徴としている。
【0011】本発明の第1の耐熱部材においては、T
i、Zr、Hf、V、TaおよびNbから選ばれる少な
くとも 1種の元素を含む合金からなる中間層を、金属基
材と金属被覆層との間に介在させている。これらの金属
元素を含む合金は酸素や窒素を多量に固溶することがで
き、この酸素や窒素を多量に固溶した中間層としての金
属層は、内部でのAl、Cr等の元素の拡散係数が小さ
いことから、金属基材/金属被覆層との拡散抑制層とし
て機能する。
【0012】また、上記中間層に熱処理を施したり、あ
るいは実使用時に中間層に熱が加えられることによっ
て、中間層に固溶する酸素や窒素とその表面に被覆され
た金属被覆層中および金属基材中のAl等とが反応し、
中間層と金属被覆層との界面および中間層と金属基材と
の界面に、Al等の酸化物、窒化物、あるいは酸窒化物
等の層が形成される。これらAl等の酸化物、窒化物、
あるいは酸窒化物はその内部での元素の拡散係数が極め
て小さいことから、拡散抑制層としての機能が格段に向
上する。
【0013】さらに、中間層はNi、CoおよびFeか
ら選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに
上記した元素に加えて 0.1〜15重量% のAl、 0.1〜30
重量% のCrおよび 0.1〜10重量% のWから選ばれる少
なくとも 1種の元素を含有している。このように、A
l、Cr、W等の元素の含有量を金属基材と同等にする
ことによって、拡散抑制層として機能する中間層を介在
させたことによる耐熱部材の特性劣化を抑制することが
できる。
【0014】そして、拡散抑制層として機能する中間層
は、本質的に金属物性を有する層であるため、金属基材
や中間層上に被覆形成される金属被覆層に対して優れた
密着性を示す。また、これらの界面にAl等の酸化物、
窒化物、酸窒化物等の層を形成しても、これらは界面で
の反応生成物であるため、中間層と金属基材や金属被覆
層との密着性を低下させることはない。従って、金属基
材/中間層界面や中間層/金属被覆層界面における剥離
を有効に防止することができる。
【0015】本発明における第2の耐熱部材は、請求項
3に記載したように、Ni、CoおよびFeから選ばれ
る少なくとも 1種の元素を主成分とする金属基材と、前
記金属基材上に中間層を介して被覆形成され、Ni、C
oおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成
分とすると共に、少なくともCrおよびAlを含有する
合金からなる金属被覆層とを具備する耐熱部材におい
て、前記中間層は、Ni、CoおよびFeから選ばれる
少なくとも 1種の元素を主成分とすると共に、Crおよ
びAlから選ばれる少なくとも 1種の元素を含有し、か
つ含有されるCr量が前記金属被覆層中のCr含有量よ
り 5重量% 以上少ないことを特徴としている。
【0016】また、本発明における第2の耐熱部材の製
造方法は、請求項4に記載したように、Ni、Coおよ
びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
る金属基材と、前記金属基材上に中間層を介して被覆形
成され、Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも
1種の元素を主成分とすると共に、少なくともCrおよ
びAlを含有する合金からなる金属被覆層とを具備する
耐熱部材の製造方法において、前記金属基材上に、N
i、CoおよびFeから選ばれる少なくとも1種の元素
を主成分とすると共に、CrおよびAlから選ばれる少
なくとも 1種の元素を含有し、かつ含有されるCr量が
前記金属被覆層中のCr含有量より 5重量% 以上少ない
中間層を形成する工程と、前記中間層上に前記金属被覆
層を形成する工程と、前記中間層および金属被覆層を順
に形成した前記金属基材を773K以上の環境に供し、前記
中間層と金属被覆層との界面に、Alを主成分とする酸
化物、窒化物および酸窒化物から選ばれる少なくとも 1
種を形成する工程とを有することを特徴としている。
【0017】本発明の第2の耐熱部材においては、中間
層に含有されるCr量を金属被覆層のCr含有量より 5
重量% 以上少ない量としている。このような中間層を有
する耐熱部材に773K以上の温度で熱処理を施したり、あ
るいは実使用時に773K以上の熱が加えられると、金属被
覆層から中間層へCr原子が拡散する。その結果、中間
層/金属被覆層界面近傍の金属被覆層のAl活量が一時
的に急激に増大する。それに伴って、中間層/金属被覆
層界面近傍に存在する固溶酸素(あるいは窒素)や吸着
酸素(あるいは窒素)とAl原子等とが反応して、中間
層/金属被覆層界面にAlを主成分とする酸化物、窒化
物、酸窒化物等の化合物が生成する。これらAlを主成
分とする化合物は、その内部での元素の拡散係数が極め
て小さいことから、拡散抑制層として優れた効果を発揮
する。
【0018】そして、上記中間層は本質的に金属物性を
有する層であるため、金属基材や金属被覆層に対して優
れた密着性を示す。また、これらの界面にAlを主成分
とする酸化物、窒化物、酸窒化物等の層を形成しても、
これらは界面での反応生成物であるため、中間層や金属
被覆層との密着性を低下させることはない。従って、金
属基材/中間層界面や中間層/金属被覆層界面における
剥離を有効に防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0020】まず、本発明の第1の耐熱部材の実施形態
について述べる。図1は、本発明の第1の耐熱部材の一
実施形態の構造を模式的に示す断面図である。同図にお
いて、1は金属基材であり、この金属基材1としてはN
i、CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元素
を主成分とする耐熱合金が用いられ、使用用途等に応じ
て各種公知の耐熱合金が適宜使用される。具体的には、
CMSX−2、CM247LC、IN738LC等のΝ
i基耐熱合金、またはFSX414、ΜM509等のC
o基耐熱合金等を使用することができる。
【0021】上記金属基材1上には、拡散抑制層として
機能する中間金属層2が形成されており、この中間金属
層2を介して耐食・耐酸化被覆層として機能するNi、
CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主
成分とし、さらに少なくともCrおよびAlを含む金属
被覆層3が被覆形成されている。これらによって耐熱部
材4が構成されている。
【0022】金属被覆層3は例えばM−Cr−Al−Y
合金(MはFe、NiおよびCoから選ばれる少なくと
も 1種の元素である)からなるものである。このような
金属被覆層3は、上記したように金属基材1の耐食・耐
酸化性を保証すると同時に、後述するようにセラミック
ス遮熱層を形成する場合には、金属基材1とセラミック
ス遮熱層との間の熱膨張係数の違いによる熱応力を緩和
するものである。M−Cr−Al−Y合金の具体的な組
成としては、上記した性能を総合的に考慮して、一般的
には 0.1〜20重量% のAl、10〜35重量% のCr、 0.1
〜 5重量% のYを含み、残部が実質的にNiおよびCo
から選ばれる少なくとも 1種の元素からなるものが好ま
しく用いられる。Yに代えてHfやZr等の活性金属を
使用することも可能である。さらに、用途によってはM
−Cr−Al−Y(Hf,Zr)合金に、Ti、Nb、
Ta、W等から選ばれる少なくとも 1種の元素を 5重量
%以下の範囲で添加してもよい。
【0023】拡散抑制層として機能する中間金属層2
は、Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種
の元素を主成分とし、Ti、Ζr、Ηf、V、Taおよ
びNbから選ばれる少なくとも 1種の元素と、 0.1〜15
重量% のAl、 0.1〜30重量%のCrおよび 0.1〜10重
量% のWから選ばれる少なくとも 1種の元素とを含有す
る合金からなり、このような合金中に酸素および窒素か
ら選ばれる少なくとも1種が固溶した金属層からなるも
のである。Ti、Ζr、Ηf、V、TaおよびNbから
選ばれる少なくとも 1種の元素を含む合金は、酸素や窒
素を多量に固溶できる。このような酸素や窒素を多量に
固溶する金属層はAl等の元素の拡散係数が小さいこと
から、中間金属層2自体が金属基材1と金属被覆層3と
の拡散抑制層として機能する。
【0024】このように、酸素や窒素を多量に固溶した
中間金属層2自体も拡散抑制層として機能するが、中間
金属層2を形成した後に熱処理を施したり、あるいは熱
処理を施さなくとも実使用時に中間金属層2に熱が加え
られることによって、中間金属層2中に固溶する酸素や
窒素と金属基材1や金属被覆層3中のAl等とが反応す
る。ここで、耐食・耐酸化性に優れた金属被覆層3は、
一般に合金中のAlの活量が高く、酸化雰囲気中ではA
2 3 を、また窒化雰囲気中ではAlNを形成しやす
い。従って、酸素や窒素を多量に固溶し、酸素や窒素の
活量が高い中間金属層2とAlの活量が高い金属被覆層
3とが接した状態で、熱処理あるいは実使用時の熱を受
けると、中間金属層2中の酸素や窒素と金属被覆層3中
のAl等とが容易に反応する。
【0025】上記した中間金属層2中の酸素や窒素と金
属被覆層3中のAl等との反応によって、例えば図2に
示すように、中間金属層2と金属被覆層3との界面に、
Al等の酸化物(Al2 3 等)、窒化物(AlN
等)、酸窒化物(AlON等)、あるいはこれらの混合
物(以下、Al等の酸素/窒素化合物と略記する)5が
生成し、このAl等の酸素/窒素化合物5は層状または
局所的に形成される。これらAl2 3 、AlN、Al
ON等は、その物質中の元素の拡散係数が極めて小さい
ことから、拡散抑制層として有効に利用することができ
る。また、中間金属層2中の酸素活量または窒素活量が
比較的高い場合には、金属基材1と中間金属層2の界面
においても同様の現象が起こることがある。
【0026】上述したように、中間金属層2自体、さら
には中間金属層2と金属被覆層3との界面等に生成した
Al等の酸素/窒素化合物5は拡散抑制層として有効に
機能することから、耐熱部材4を長時間高温環境に晒さ
れるような条件下で使用したとしても、金属基材1と金
属被覆層3との間の元素移動を安定して抑制することが
できる。その結果として、金属基材1の高温強度の低下
や金属被覆層3の耐食・耐酸化性の低下等が防止でき、
耐熱部材4を長時間安定に使用することが可能となる。
【0027】そして、上述した拡散抑制層として機能す
る中間金属層2(Al等の酸素/窒素化合物5を含む)
が従来の拡散抑制層、すなわちAl2 3 等からなるセ
ラミックス層を直接被覆形成したものと大きく異なる点
は、拡散抑制層として機能する中間金属層2は本質的に
金属物性を有する層(メタリックな層)であり、金属基
材1とは金属/金属結合を形成するために、極めて良好
な密着性を示すことにある。また、中間金属層2と金属
被覆層3との界面等に、Al等の酸素/窒素化合物5を
形成したとしても、これらは中間金属層2と金属被覆層
3との界面における反応生成物であるため、中間金属層
2と金属被覆層3との結合状態を高める方向に作用し、
密着性を低下させるようなことはない。従って、拡散抑
制層の存在が耐熱部材4の各層間の密着性を低下させる
ようなことはなく、金属基材1や金属被覆層3と窒拡散
抑制層との界面からの剥離を有効に防止することが可能
となる。これらによって、耐熱部材4の長寿命化が達成
される。
【0028】上述した中間金属層2における酸素含有量
または窒素含有量は、特に限定されるものではないが、
少なくとも中間金属層2自体が金属的な物性を維持し得
るような酸素含有量または窒素含有量でなければならな
い。中間金属層2の構成元素によっても異なるが、上記
したような点から中間金属層2の酸素含有量または窒素
含有量は40at.%以下であることが好ましい。中間金属層
2の酸素含有量または窒素含有量が40at.%を超えると、
中間金属層2中に酸化物や窒化物が生成し、中間金属層
2本来の金属的特性が低下するおそれがある。また、中
間金属層2と金属被覆層3との界面に過剰なAl等の酸
素/窒素化合物5が生成し、界面剥離等の問題が生じる
おそれがある。逆に、中間金属層2中の酸素含有量また
は窒素含有量があまり少なすぎると、中間金属層2自体
の拡散抑制層としての機能が低下すると共に、界面での
Al等の酸素/窒素化合物5の生成量が不十分となる。
このような点からは、中間金属層2中の酸素含有量また
は窒素含有量は 2at.%以上であることが好ましい。
【0029】また、中間金属層2中のTi、Ζr、Η
f、V、TaおよびNbから選ばれる少なくとも 1種の
元素の含有量があまり少ないと、中間金属層2中の酸素
や窒素の固溶限を低下させる。従って、上記した 2at.%
以上の酸素量または窒素量を確保する上で、Ti、Ζ
r、Ηf、V、TaおよびNbから選ばれる少なくとも
1種の元素の含有量は10重量% 以上とすることが好まし
い。ただし、これらの元素の含有量があまり多すぎる
と、長時間の使用により特に金属基材1側に拡散するお
それがあるため、50重量% 以下とすることが好ましい。
【0030】金属基材1と中間金属層2との間で生じる
拡散は、両層の間に形成されるAl等の酸化物、窒化
物、酸窒化物、あるいはこれらの混合物によって抑制さ
れるが、長時間の使用により多少の元素の拡散が生じる
おそれがある。このため、中間金属層2の構成元素は金
属基材1と同等とすることが好ましい。具体的には、N
i、CoおよびFeから選ばれる少なくとも 1種の元素
を主成分とし、上記した酸素や窒素の固溶を促進する元
素に加えて、Al、CrおよびWから選ばれる少なくと
も 1種の元素を含有する合金で中間金属層2を形成す
る。
【0031】中間金属層2中のAl、CrおよびWから
選ばれる少なくとも 1種の元素、特にAlおよびCrは
酸素や窒素の固溶にも関与し、あまり含有量が多い酸素
や窒素の固溶量が減少し、さらに上記したように金属基
材1への元素拡散が生じるおそれがある。これらの点を
考慮して、Alの含有量は 0.1〜15重量% 、Cr含有量
のは 0.1〜30重量% 、Wの含有量は 0.1〜10重量% とす
る。これら元素の選択は金属基材1の合金組成に応じて
行うことが好ましい。
【0032】酸素や窒素を固溶する中間金属層2の厚さ
は、特に限定されるものではないが、良好な拡散抑制層
を安定に形成するためには 5μm 以上とすることが好ま
しく、また中間金属層2自体の剥離等を防止する上で、
その厚さは50μm 以下とすることが好ましい。
【0033】中間金属層2は、Ni、CoおよびFeか
ら選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、Ti、
Zr、Ηf、V、TaおよびNbから選ばれる少なくと
も1種の元素と、Al、CrおよびWから選ばれる少な
くとも 1種の元素とを含有する合金に、酸素および窒素
から選ばれる少なくとも 1種を固溶させることによっ
て、上述したように基本的な拡散抑制層としての機能を
得ることができるが、金属基材1側からの元素移動を抑
制すると共に、金属基材1との密着性等を高めるため
に、さらに金属基材1と同等のMo、ReおよびYから
選ばれる少なくとも 1種を含有させることが好ましい。
これら元素の含有量は、金属基材1の合金組成を考慮し
て、Moは 0.1〜 5重量% 、Reは 0.1〜10重量% 、Y
は 0.1〜 5重量% とすることが好ましい。
【0034】さらに、図3に示すように、金属基材1の
表面にAl拡散処理法等でアルミナイド層(アルミリッ
チ層)6を形成し、金属基材1表面のAl活量を高める
ことによって、中間金属層2中の酸素活量または窒素活
量が低い場合においても、図4に示すように、熱を加え
ることで金属基材1と中間金属層2との間にAl等の酸
化物、窒化物、酸窒化物、あるいはこれらの混合物(A
l等の酸素/窒素化合物)5を容易に形成することがで
きる。その結果、中間金属層2と金属基材1との組成の
違いにより生じる拡散、特にTi、Zr、Ηf、V、T
a、Nb等の元素の拡散を、Al等の酸素/窒素化合物
5により抑制することができる。このとき、形成するア
ルミナイド層6の厚さは特に限定されるものではない
が、アルミナイド層6自体が金属基材1に悪影響を及ぼ
さずに、金属基材1表面のAl活量を高めることができ
る厚さ、すなわち 0.1〜10μm 程度の厚さとすることが
好ましい。
【0035】上述したような酸素や窒素を固溶する中間
金属層2は、例えば以下のようにして形成することがで
きる。
【0036】すなわち、金属基材1の表面に、Ti、Z
r、Hf、V、TaおよびNbから選ばれる少なくとも
1種の元素を含有する中間金属層2を、酸素分圧または
窒素分圧が 0.1〜 1×104 Paの雰囲気中で成膜する。こ
こで、成膜方法としては、減圧プラズマ溶射等のプラズ
マ溶射法、EΒ−PVD法、マグネトロンスパッタリン
グ法、CVD法等を適用することができる。
【0037】ここで、プラズマ溶射法は成膜速度が速
く、厚膜を形成する方法として優れている。特に、減圧
プラズマ溶射法は緻密な層を形成することができ、さら
に溶射雰囲気中の酸素分圧または窒素分圧を 0.1〜 1.0
×104 Paの範囲として中間金属層2を成膜すると、溶射
プロセス中に雰囲気内に微量に存在する酸素や窒素が合
金層中に固溶して、酸素や窒素を固溶する中間金属層2
を得ることができる。なお、プラズマ溶射法以外の成膜
方法を適用する場合においても同様である。
【0038】中間金属層2を形成する際の酸素分圧また
は窒素分圧が 0.1Pa未満であると、中間金属層2中に十
分に酸素や窒素を固溶させることができず、上述した拡
散抑制効果が低下するおそれがある。一方、酸素分圧ま
たは窒素分圧が 1.0×104 Paを超えると、中間金属層2
自体の酸化や窒化が起こり、中間金属層2の金属的な物
性が劣化して、中間金属層2の密着性が低下する。
【0039】酸素や窒素を固溶する中間金属層2の形成
方法は、上述した酸素や窒素を微量含む雰囲気中での成
膜に限らず、成膜原料に酸素や窒素を適量含有する物質
を使うことによっても、上述したような酸素や窒素を固
溶する中間金属層2を形成することができる。
【0040】上述したような方法で酸素や窒素を固溶す
る中間金属層2を形成した後、金属被覆層3を 1.0×10
4 Pa以下の減圧雰囲気中で成膜する。この金属被覆層3
の形成にも、減圧プラズマ溶射法、EB−PVD法、マ
グネトロンスパッタリング法、CVD法等を適用するこ
とができる。金属被覆層3を成膜する際の雰囲気が 1.0
×104 Paを超えると、成膜時に中間金属層2表面で酸化
が起こり、金属被覆層3の密着性が低下する。また、金
属被覆層3を成膜した後に、この金属被覆層3と中間金
属層2との界面に予めAl等の酸素/窒素化合物5を形
成しておく場合には、例えばアルゴン等の不活性雰囲気
中や減圧雰囲気中にて、1000〜1500K 程度の温度で熱処
理を施す。
【0041】また、拡散抑制層として機能するAl等の
酸素/窒素化合物5を形成する際には、金属被覆層3中
のAlとNi、CoまたはFeの主成分との間の化学的
結合を切り離すことによって、金属被覆層3中のAlと
中間金属層2中の酸素や窒素とを反応させることができ
る。従って、Al等の酸素/窒素化合物5は、金属被覆
層3中のAlとNi、CoまたはFeとの間の化学的結
合を切り離すためのエネルギーが小さい方が容易に形成
され、使用初期から拡散抑制層として優れた効果を示
す。このAlとの結合エネルギーはCo、Νi、Feの
順に小さくなる。このような点からは、金属被覆層3の
中間金属層2に接する領域はFeを主成分とすることが
好ましい。
【0042】一方、耐酸化性の点からは、金属被覆層3
の主成分はNiであることが好ましいため、金属被覆層
3は中間金属層2近傍ではFeが主成分となり、最表面
側ではNiが主成分となるように、主成分を徐々に変化
させた傾斜構造とすることが好ましい。このような金属
被覆層3によれば、拡散抑制層として機能するAl等の
酸素/窒素化合物5の速やかな形成と優れた耐酸化性を
同時に満足させることができる。
【0043】上述した金属基材1表面に中間金属層2を
介して金属被覆層3を被覆形成した耐熱部材4は、その
まま高温機器部品の構成部材等として用いてもよく、ま
た使用用途によっては図5に示すように、さらに金属被
覆層3上にセラミックス層7を遮熱被覆層として被覆形
成し、このような構成の耐熱部材8を高温機器部品の構
成部材等として用いることもできる。
【0044】上記したセラミックス層7には、Si3
4 、SiC、Al2 3 、ΖrO2、TiΝ、AlΝ、
サイアロン等の各種セラミックス材料を使用することが
できるが、熱伝導率の低さや熱膨張係数の大きさ等から
ZrO2 が好適である。また、ΖrO2 の相変態を抑制
する安定化剤としてはY2 3 が最も好ましく、特にY
2 3 を 8重量% 程度含む部分安定化ZrO2 が総合的
に最も優れた特性を示す。 なお、セラミックス層7は
金属被覆層3にAlパック法等のAl拡散処理を施した
後に被覆形成してもよい。この場合にも、上記した耐熱
部材4と同様に、熱を加えるで図6に示すように、中間
金属層2と金属被覆層3との間に拡散抑制層として機能
するAl等の酸素/窒素化合物5が形成される。また、
中間金属層2中の酸素活量や窒素活量が大きい場合に
は、金属基材1と中間金属層2との間にもAl等の酸化
物、窒化物、酸窒化物等が形成される。
【0045】次に、本発明の第2の耐熱部材の実施形態
について説明する。図7は、本発明の第2の耐熱部材の
一実施形態の構造を模式的に示す断面図である。同図に
おいて、1は前述した実施形態と同様な金属基材であ
り、この金属基材1上には、拡散抑制層として機能する
Alを主成分とする酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を
形成させるための中間金属層11が被覆形成され、この
中間金属層11を介して耐食・耐酸化被覆層として機能
する金属被覆層3が被覆形成されている。金属被覆層3
の合金組成等は前述した実施形態と同様である。これら
によって耐熱部材12が構成されている。
【0046】中間金属層11は、Ni、CoおよびFe
から選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とすると共
に、CrおよびAlから選ばれる少なくとも 1種を含有
する金属層からなるものである。そして、この中間金属
層11は含有されるCr量を、金属被覆層3中のCr含
有量に比べて 5重量% 以上少ない量としている。なお、
ここで言うCr量は、中間金属層11および金属被覆層
3全体での平均濃度であり、言わば被膜を形成する際の
原料組成に相当するものである。
【0047】このような中間金属層11を有する耐熱部
材12を、773K以上の温度で熱処理したり、あるいは熱
処理を施さなくとも実使用時に耐熱部材12に773K以上
の熱が加えられることによって、上記金属被覆層3から
中間金属層11にCr原子が拡散し、金属被覆層3の中
間金属層11/金属被覆層3界面近傍部分では一時的に
急激にAl活量が増大する。
【0048】なお、金属被覆層3における一時的なAl
活量の増大は、さらにCo原子を拡散させることによっ
て一層効果的に得られるため、中間金属層11に含有さ
れるCo量を金属被覆層3中のCo含有量より少ない量
とすることも有効である。この場合には、中間金属層1
1に含有されるCrとCoの合計量が金属被覆層3中の
CrとCoの合計含有量より10重量% 以上少なくなるよ
うに設定することが好ましい。
【0049】上記したように金属被覆層3から中間金属
層11へCr原子を拡散させて、金属被覆層3の中間金
属層11との界面近傍部分におけるAl活量を増大させ
ることによって、中間金属層11/金属被覆層3界面近
傍の固溶酸素(または窒素)や吸着酸素(あるいは窒
素)とAlとが反応し、図8に示すように中間金属層1
1と金属被覆層3との界面に、Alを主成分とする酸化
物(Al2 3 等)、窒化物(AlN等)、酸窒化物
(AlON等)、あるいはこれらの混合物(以下、Al
を主成分とする酸素/窒素化合物と略記する)13が生
成し、これらは層状または局所的に形成される。これら
Al2 3 、AlN、AlON等は、前述したようにそ
の物質中の元素の拡散係数が極めて小さいことから、拡
散抑制層として有効に利用することができる。またAl
活量の増加により、金属被覆層3の中間金属層11との
界面近傍部分で、(Ni,Co,Fe)Alや(Ni,
Co,Fe)3 Al等の金属間化合物相の体積率が増加
し、これらもAl原子の拡散抑制物質として機能する。
【0050】上述したAlを主成分とする酸素/窒素化
合物13は、その内部での元素の拡散係数が小さく、拡
散抑制層として有効に機能することから、耐熱部材12
を長時間高温環境に晒されるような条件下で使用したと
しても、金属基材1と金属被覆層3との間の元素移動を
効果的に抑制することができる。その結果、金属基材1
の高温強度の低下や金属被覆層3の耐食・耐酸化性の低
下等が防止でき、耐熱部材12を長時間安定に使用する
ことが可能となる。
【0051】そして、この実施形態における拡散抑制層
(Alを主成分とする酸素/窒素化合物13)が、従来
の拡散抑制層、すなわちAl2 3 等からなるセラミッ
クス層を直接被覆形成したものと大きく異なる点は、中
間金属層11は本質的に金属物性を有する層(メタリッ
クな層)であり、金属基材1とは金属/金属結合を形成
するために、極めて良好な密着性を示すことにある。ま
た、中間金属層11と金属被覆層3との界面に、拡散抑
制層としてAlを主成分とする酸素/窒素化合物13を
形成しても、これらは中間金属層11と金属被覆層3と
の界面における反応生成物であるため、中間金属層11
と金属被覆層3との結合状態を高める方向に作用し、密
着性を低下させるようなことはない。従って、拡散抑制
層の存在が耐熱部材12の各層間の密着性を低下させる
ようなことはなく、拡散抑制層との界面からの剥離等を
有効に防止することができる。これらによって、耐熱部
材12の長寿命化が達成される。
【0052】中間金属層11の合金組成は、Ni、Co
およびFeから選ばれる少なくとも1種の元素を主成分
し、CrおよびAlから選ばれる少なくとも 1種を含有
すると共に、含有されるCr量が金属被覆層3中のCr
含有量より 5重量% 以上少ないものである。ここで、中
間金属層11中のCr量と金属被覆層3中のCr含有量
との差が 5重量% に達しないと、上記したAl活量の急
激な増大効果を得ることができない。
【0053】また、中間金属層11自体にある程度の耐
食・耐酸化性を付与すると共に、金属基材1との組成差
を小さくする上で、CrおよびAlから選ばれる少なく
とも1種を含有させるものとする。これらCrおよびA
lの含有量は、金属基材1や金属被覆層3の合金組成を
考慮して、Crは 5〜30重量% の範囲、Alは 1〜15重
量% の範囲とすることが好ましい。また、これら以外の
元素についても、金属基材1と同等とすることが好まし
い。このように、金属基材1と中間金属層11との組成
差を小さくすることによって、金属基材1と中間金属層
11との間の元素拡散を抑制でき、その結果金属基材1
は強度を損うことなく、健全な状態を維持することがで
きる。
【0054】中間金属層11の厚さは特に限定されるも
のではないが、良好な拡散抑制層を安定に形成させるた
めには 5μm 以上とすることが好ましく、また密着性を
向上させると共に、金属被覆層3の耐食・耐酸化性を劣
化させないために、その厚さは50μm 以下とすることが
好ましい。
【0055】上述したような中間金属層11および金属
被覆層3の成膜方法としては、減圧プラズマ溶射等のプ
ラズマ溶射法、EB−PVD法、マグネトロンスパッタ
リング法、CVD法等を適用することができる。これら
成膜方法のうち、前述した実施形態と同様な理由から、
プラズマ溶射法、特に減圧プラズマ溶射法が好ましく用
いられ、この際の雰囲気は 1.0×104 Pa以下とすること
が好ましい。すなわち、 1.0×104 Pa以下の溶射雰囲気
中で中間金属層11や金属被覆層3を成膜すると、溶射
プロセス中に雰囲気内に微量に存在する酸素や窒素が合
金層中に固溶して、酸素や窒素を固溶する合金層を得る
ことができる。中間金属層11や金属被覆層3を成膜す
る際の雰囲気が10×104 Paを超えると、成膜時に表面で
酸化が起こり、各々の層間の密着性が低下する。なお、
他の成膜方法を適用する場合にも同様である。
【0056】金属被覆層3と中間金属層11との界面
に、予めAlを主成分とする酸素/窒素化合物13を形
成する場合には、中間金属層11および金属被覆層3を
順に形成した金属基材1に対して、例えばアルゴン等の
不活性雰囲気中や減圧雰囲気中にて773K以上の温度で熱
処理を施す。このような熱処理によって、金属被覆層3
と中間金属層11との界面にAlを主成分とする酸化
物、窒化物および酸窒化物から選ばれる少なくとも 1種
がほぼ層状に形成される。熱処理温度が773K未満である
と、Alを主成分とする酸素/窒素化合物13を十分に
形成することができない。熱処理温度は1000〜 1500Kの
範囲とすることがより好ましい。
【0057】また、拡散抑制層として機能するAlを主
成分とする酸素/窒素化合物13を形成する際には、金
属被覆層3中のAlとNi、CoまたはFeの主成分と
の間の化学的結合を切り離すことによって、金属被覆層
3中のAlと中間金属層2中の酸素や窒素とを反応させ
ることができる。従って、Alを主成分とする酸素/窒
素化合物13は、金属被覆層3中のAlとNi、Coま
たはFeとの間の化学的結合を切り離すためのエネルギ
ーが小さい方が容易に形成され、使用初期から拡散抑制
層として優れた効果を示す。このような点からは、前述
したように、金属被覆層3の中間金属層11に接する領
域はFeを主成分とすることが好ましい。一方、耐酸化
性の点からは、金属被覆層3の主成分はNiであること
が好ましいため、金属被覆層3は中間金属層11近傍で
はFeが主成分となり、最表面側ではNiが主成分とな
るように、主成分を徐々に変化させた傾斜構造とするこ
とが好ましい。このような金属被覆層3によれば、拡散
抑制層として機能するAlを主成分とする酸素/窒素化
合物13の速やかな形成と優れた耐酸化性を同時に満足
させることができる。
【0058】上述した金属基材1表面に中間金属層11
を介して金属被覆層3を被覆形成した耐熱部材12は、
そのまま高温機器部品の構成部材等として用いてもよ
く、また使用用途によっては図9に示すように、さらに
金属被覆層3上に前述した実施形態と同様なセラミック
ス層7を遮熱被覆層として被覆形成し、このような構成
の耐熱部材14を高温機器部品の構成部材等として用い
ることもできる。なお、セラミックス層7は、金属被覆
層3にAlパック法等のAl拡散処理を施した後に被覆
形成してもよい。この場合にも、上記した耐熱部材12
と同様に熱を加えることによって、図8に示すように中
間金属層11と金属被覆層3の間に拡散抑制層として機
能するAlを主成分とする酸素/窒素化合物13が形成
される。
【0059】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。
【0060】まず、本発明の第1の耐熱部材の具体的な
実施例およびその評価結果について述べる。
【0061】実施例1 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi− 40%Ta−2%Al(重量%)合金層を約20
μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧
は、約20Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧
プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni− 2
3%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約 1
80μm 被覆形成した。上記Ni− 40%Ta−2%Al(重
量%)合金層中の酸素濃度を測定したところ、5.28at.%で
あった。
【0062】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に 1173Kで 250MP
a の応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からA
2 3 層、Ni−Ta−Al合金層、Al2 3 層、
NiCoCrAlY層の順に存在しており、NiCoC
rAlY層での急激な相変化および金属基材側での脆化
相の形成は確認されなかった。このとき、Ni−Ta−
Al合金層とNiCoCrAlY層の間および金属基材
とNi−Ta−Al合金層の間に存在するAl2 3
ほぼ均一な厚さの完全な層を形成しており、各々厚さは
2μm、 1μm であった。
【0063】また本発明との比較例として、単結晶Ni
基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりΝiCoCrAlY層
(Ni−23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に上記
実施例1と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試
験を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この
試料を切断して、断面を微視的に観察したところ、Ni
CoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ
相からγ′相への相変態が生じていた。また、金属基材
界面近傍ではCr-rich相およびW-rich 相等の脆化相
の生成が確認され、これらの相が破断の起点として働い
たものと推察される。
【0064】実施例2 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射法
によりNi− 40%Ta−2%Al(重量%)合金層を約20μ
m 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約
2Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズ
マ溶射法によりNiCoCrAlY層(Νi− 23%Co
− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm
被覆形成した。上記Ni− 40%Ta−2%Al(重量%)合
金層中の酸素濃度を測定したところ、2.83at.%であっ
た。
【0065】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に 1173Kで 250MP
a の応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Ta−Al合金層、Al2 3 層(厚さ 1.5μm)、
NiCoCrAlY層の順に存在しており、NiCoC
rAlY層での急激な相変化および金属基材側での脆化
相の形成は確認されなかった。また、実施例1では金属
基材とNi−Ta−Al合金層の間にほぼ均一な厚さの
Al2 3 層が形成されていたが、この実施例2では金
属基材とNi−Ta−Al合金層の間に形成されたAl
2 3は局所的に存在し、完全な層を形成していなかっ
た。
【0066】また本発明との比較例として、単結晶Ni
基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例2と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を
行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試料
を切断して断面を微視的に観察したところ、ΝiCoC
rAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相から
γ′相への相変態が生じていた。また、金属基材界面近
傍ではCr-rich 相およびW-rich 相等の脆化相の生成
が確認され、これらの相が破断の起点として働いたもの
と推察される。
【0067】実施例3 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、Al拡散処理法により約10μm のアルミナ
イド層を形成した後、約10Paの減圧大気中で減圧プラズ
マ溶射法によりNi− 40%Ta−2%Al(重量%)合金層
を約20μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素
分圧は約 2Paであった。次いで、同一チャンバー内で減
圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni−
23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約
180μm 被覆形成した。上記Ni−40% Ta− 2% Al
(重量%)合金層中の酸素濃度を測定したところ、2.82a
t.%であった。
【0068】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に 1173Kで 250MP
a の応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からA
2 3 層(厚さ約 2μm )、Ni−Τa−Al合金
層、Al2 3 (厚さ約2μm )、NiCoCrAlY
層の順に存在しており、NiCoCrAlY層での急激
な相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認され
なかった。また、この実施例3では実施例1と同様に、
金属基材とNi−Ta−Al合金層の間に約 2μm のほ
ぼ均一な厚さのAl2 3 層が完全に形成されていた。
【0069】また本発明との比較例として、単結晶Ni
基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例3と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を
行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試料
を切断して断面を微視的に観察したところ、NiCoC
rAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相から
γ′相への相変態が生じていた。また、金属基材界面近
傍ではCr-rich 相およびW-rich 相等の脆化相の生成
が確認され、これらの相が破断の起点として働いたもの
と推察される。
【0070】実施例4 多結晶Co基超合金FSX−414からなる丸棒状金属
基材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりCo− 30%Nb一2%Al(重量%)合金層を約20
μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は
約 2Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラ
ズマ溶射法によりCoNiCrAlY層(Co−32% N
i− 21%Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm
被覆形成した。上記Co− 30%Nb一2%Al(重量%)合
金層中の酸素濃度を測定したところ3.20at.%であった。
【0071】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に 1123Kで300MPa
の応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保持
しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断し
て断面を微視的に観察したところ、金属基材側からCo
−Nb−Al合金層、Al2 3 層(厚さ約 2μm )、
CoΝiCrAlY層の順に存在しており、CoNiC
rAlY層での急激な相変化および金属基材側での脆化
相の形成は確認されなかった。また、金属基材とCo−
Nb−Al合金層の間にはAl2 3 が局所的に形成さ
れていた。
【0072】また、本発明との比較例として、多結晶C
o基超合金FSX−414からなる丸棒状金属基材の表
面に、減圧プラズマ溶射法によりCoNiCrAlY層
(Co− 32%Ni− 21%Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例4と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を
行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試料
を切断して断面を微視的に観察したところ、CoNiC
rAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相の消
失が確認された。また、金属基材界面近傍ではW- rich
相等の脆化相の生成が確認され、これらの相が破断の起
点として働いたものと推察される。
【0073】実施例5 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi− 30%Ta−2%Al−6%Cr(重量%)合金
層を約15μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸
素分圧は約20Paであった。次いで、同一チャンバー内で
減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni
− 23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を
約85μm被覆形成した。上記Ni− 30%Ta−2%Al−6
%Cr(重量%)合金層中の酸素濃度を測定したところ、
3.85at.%であった。この金属被覆層上に大気中プラズマ
溶射法でΖrO2 − 8重量% Y2 3 組成のジルコニア
層を約 300μm 被覆形成した。
【0074】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に 1223Kで250MPa
の応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保持
しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断し
て断面を微視的に観察したところ、金属基材側からNi
−Ta−Al−Cr合金層、Al2 3 層(厚さ約 1.5
μm )、NiCoCrAlY層の順に存在しており、Ν
iCoCrAlY層での急激な相変化および金属基材側
での脆化相の形成は確認されなかった。
【0075】また、本発明との比較例として、単結晶Ν
i基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23% Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量
% ))を約 100μm 被覆形成した。この金属被覆層上に
大気中プラズマ溶射法でΖrO2 − 8重量% Y2 3
成のジルコニア層を約 300μm 被覆形成した。この耐熱
被覆材に実施例5と同様の熱処理を施し、同一条件でク
リープ試験を行ったところ、 100時間経過以前に破断し
た。この試料を切断して断面を微視的に観察したとこ
ろ、NiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散
に伴うβ相からγ′相への相変態が生じていた。また、
金属基材界面近傍ではCr-rich 相およびW-rich 相等
の脆化相の生成が確認され、これらの相が破断の起点と
して働いたものと推察される。
【0076】実施例6 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi− 25%Nb−3%Al−8%Cr(重量%)合金
層を約20μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸
素分圧は約20Paであった。次いで、同一チャンバー内で
減圧プラズマ溶射法によりFeCr AlY層(Fe−
17%Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約20μm 被覆形
成し、さらにNiCoCrAlY層(Ni− 23%Co−
17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約60μm 被覆
形成した。上記Ni− 25%Nb一3%Al−8%Cr(重量
%)合金層中の酸素濃度を測定したところ4.02at.%であっ
た。この金属被覆層上に、大気中プラズマ溶射法でΖr
2 − 8重量% Y2 3 組成のジルコニア層を約300μm
被覆形成した。
【0077】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、 1223Kで250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Νb−Al−Cr合金層、Al2 3 層(厚さ約 2
μm )、FeCrAlY層、NiCoCrAlY層の順
に存在しており、FeCrAlY層およびNiCoCr
AlY層での急激な相変化および金属基材側での脆化相
の形成は確認されなかった。
【0078】また、本発明との比較例として、単結晶N
i基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりFeCrAlY層(Fe
−17%Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約20μm 被覆
形成し、さらにNiCoCrAlY層(Ni− 23%Co
− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約80μm 被
覆形成した。この金属被覆層上に大気中プラズマ溶射法
でZrO2 − 8重量% Y2 3 組成のジルコニア層を約
300μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施例6と同
様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行ったと
ころ、 100時間経過以前に破断した。この試料を切断し
て断面を微視的に観察したところ、FeCrAlY層お
よびNiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散
に伴う相変態が生じていた。また、金属基材界面近傍で
はCr- rich相、W-rich 相およびFe-rich 相等の脆
化相の生成が確認され、これらの相が破断の起点として
働いたものと推察される。
【0079】実施例7 一方向凝固Ni基超合金CM247LCからなる丸捧状
金属基材の表面に、約100Paの減圧大気中で減圧プラズ
マ溶射法によりΝi− 10%Ti−5%Al(重量%)合金層
を約20μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素
分圧は約20Paであった。次いで、同一チャンバー内で減
圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni−
23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約
180μm 被覆形成した。上記Ni− 10%Ti−5%Al
(重量%)合金層中の酸素濃度を測定したところ、8.97a
t.%であった。
【0080】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1143Kで20時間の熱処理を施した。この熱
処理後の試料に、1173K で250MPaの応力下でクリープ試
験を行ったところ、 100時間保持しても破断は起こらな
かった。また、この試料を切断して断面を微視的に観察
したところ、金属基材側からAl2 3 層、Ni−Ti
−Al合金層、Al2 3 層、NiCoCrAlY層の
順に存在しており、NiCoCrAlY層での急激な相
変化および金属基材側での脆化相の形成は確認されなか
った。このとき、Ni−Ti−Al合金層とNiCoC
rAlY層の間および金属基材とΝi−Ti−Al合金
層の間に存在するAl2 3 はほぼ均一な厚さの完全な
層を形成しており、各々の厚さは 2μm 、 1μm であっ
た。
【0081】また、本発明との比較例として、一方向凝
固Ni基超合金CM247LCからなる丸捧状金属基材
の表面に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAl
Y層(Ni− 23%Co− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y
(重量%))を約 200μm 被覆形成形成した。この耐熱被
覆材に実施例7と同様の熱処理を施し、同一条件でクリ
ープ試験を行ったところ、 100時間経過以前に破断し
た。この試料を切断して断面を微視的に観察したとこ
ろ、NiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散
に伴うβ相からγ′相への相変態が生じていた。また、
金属基材界面近傍ではCr- rich相およびW-rich 相等
の脆化相の生成が確認され、これらの相が破断の起点と
して働いたものと推察される。
【0082】実施例8 多結晶Co基超合金FSX414からなる丸捧状金属基
材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射法
によりCo− 10%Ti−2.5%Al−8%Cr−5%W(重量
%)合金層を約20μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気
中の酸素分圧は約 2Paであった。次いで、同−チャンバ
ー内で減圧プラズマ溶射法によりCoNiCrAlY層
(Co− 32%Ni− 21%Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約180μm 被覆形成した。上記Co− 10%Ti−
2.5%Al−8%Cr−5%W(重量%)合金層中の酸素濃度を
測定したところ、2.95at.%であった。
【0083】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1123K で300M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からC
o−Ti−Al−Cr−W合金層、Al2 3 層(厚さ
約 2μm )、CoNiCrAlY層の順に存在してお
り、CoNiCrAlY層での急激な相変化および金属
基材側での脆化相の形成は確認されなかった。また、金
属基材とCo−Ti−Al−Cr−W合金層の間にはA
2 3 が局所的に形成されていた。
【0084】また、本発明との比較例として、多結晶C
o基超合金FSX−414からなる丸棒状金属基材の表
面に、減圧プラズマ溶射法によりCoNiCrAlY層
(Co− 32%Ni− 21%Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例8と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を
行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試料
を切断して断面を微視的に観察したところ、CoNiC
rAlY金属被覆層中で金属基材へのAlの拡散に伴う
β相の消失が確認された。また、金属基材界面近傍では
W- rich相等の脆化相の生成が確認され、これらの相が
破断の起点として働いたものと推察される。
【0085】実施例9 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi− 15%Ti−5%Al−9%Cr−5%W−1%M
o−1%Re(重量%)合金層を約20μm 被覆形成した。こ
の際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約20Paであった。次い
で、同一チャンバー内で減圧プラズマ溶射法によりFe
CrAlY層(Fe− 17%Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約20μm 被覆形成し、さらにNiCoCrAlY
層(Ni− 23%Co− 17%Cr−12%Al−0.5%Y(重
量%))を約60μm 被覆形成した。上記Ni−15% Ti−
5%Al−9%Cr−5%W−1%Mo−1%Re(重量%)合金層
中の酸素濃度を測定したところ、2.54at.%であった。こ
の金属被覆層上に大気中プラズマ溶射法でZrO2− 8
重量% Y2 3 組成のジルコニア層を約 300μm 被覆形
成した。
【0086】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1223K で250M
Paの応力下でクリーブ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Ti−Al−Cr−W−Mo−Re合金層、Al2
3 層(厚さ約 2μm)、FeCrAlY層、NiCoC
rAlY層の順に存在しており、FeCrAlY層およ
びNiCoCrAlY層での急激な相変化および金属基
材側での脆化相の形成は確認されなかった。
【0087】また、本発明との比較例として、単結晶N
i基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりFeCrAlY層(Fe
−17% Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約20μm 被覆
形成し、さらにNiCoCrAlY層(Ni− 23%Co
− 17%Cr− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約80μm被
覆形成した。この金属被覆層上に大気中プラズマ溶射法
でΖrO2 − 8重量%Y2 3 組成のジルコニア層に約
300μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施例9と同
様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行ったと
ころ、 100時間経過以前に破断した。この試料を切断し
て断面を微視的に観察したところ、FeCrAlY層お
よびNiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散
に伴う相変態が生じていた。また、金属基材界面近傍で
はCr-rich 相、W-rich 相およびFe-rich 相等の脆
化相の生成が確認され、これらの相が破断の起点として
働いたものと推察される。
【0088】次に、本発明の第2の耐熱部材の具体的な
実施例およびその評価結果について述べる。
【0089】実施例10 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi−5%Al(重量%)合金層を約20μm 被覆形
成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約20Paであ
った。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズマ溶射法
によりNiCoCrAlY層(Ni−23% Co−17% C
r−12% Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm 被覆形成
した。上記したNi−5%Al(重量%)合金層中の酸素濃
度を測定したところ、5.28at.%であった。
【0090】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1173K で250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Al合金層、Al2 3 層、ΝiCoCrAlY層
の順に存在しており、NiCoCrAlY層での急激な
相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認されな
かった。このとき、Ni−Al合金層とNiCoCrA
lY層との間に存在するAl2 3 はほぼ均一な厚さの
完全な層を形成しており、その厚さは約1μm であっ
た。
【0091】また本発明との比較例として、単結品Ni
基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりΝiCoCrAlY層
(Νi−23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例10と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験
を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試
料を切断して断面を微視的に観察したところ、NiCo
CrAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相か
らγ′相への相変態が生じていた。また、金属基材界面
近傍ではCr-rich相およびW-rich 相等の脆化相の生
成が確認され、これらの相が破断の起点として働いたも
のと推察される。
【0092】実施例11 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射法
によりΝi−5%Al−5%Co(重量% )合金層を約20μ
m 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約
2Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズ
マ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni−23% Co
−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm
被覆形成した。上記Νi−5%Al−5%Co(重量% )合
金層中の酸素濃度を測定したところ、2.83at.%であっ
た。
【0093】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1173K で250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Al−Co合金層、Al2 3 層、NiCoCrA
lY層の順に存在しており、NiCoCrAlY層での
急激な相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認
されなかった。このとき、Ni−Al−Co合金層とN
iCoCrΑlY層との間に存在するAl2 3 はほぼ
均一な厚さの完全な層を形成しており、その厚さは約 1
μm であった。
【0094】また、本発明との比較例として、単結晶N
i基超合金CMSΧ−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量
% ))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実
施例11と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試
験を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この
試料を切断して断面を微視的に観察したところ、NiC
oCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相
からγ′相への相変態が生じていた。また、金属基材界
面近傍ではCr-rich相およびW-rich 相等の脆化相の
生成が確認され、これらの相が破断の起点として働いた
ものと推察される。
【0095】実施例12 多結晶Co基超合金FSX−414からなる丸棒状金属
基材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりCo−5%Al(重量% )合金層を約20μm 被覆
形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約 2Paで
あった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズマ溶射
法によりCoNiCrAlY層(Co−32% Νi−21%
Cr−8%Al−0.5%Y(重量% ))を約 180μm 被覆形
成した。上記Co−5%Al(重量% )合金層中の酸素濃
度を測定したところ、3.20at.%であった。
【0096】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1123K で300M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からC
o−Al合金層、Al2 3 層、CoNiCrAlY層
の順に存在しており、CoNiCrAlY層での急激な
相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認されな
かった。このとき、Co−Al合金層とCoNiCrA
lY層の間に存在するAl2 3 はほぼ均一な厚さの完
全な層を形成しており、その厚さは約1μm であった。
【0097】また、本発明との比較例として、多結晶C
o基超合金FSX−414からなる丸棒状金属基材の表
面に、減圧プラズマ溶射法によりCoΝiCrAlY層
(Co−32% Ni−21% Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例12と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験
を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試
料を切断して断面を微視的に観察したところ、CoNi
CrAlY金属被覆層中で金属基材へのAlの拡散に伴
うβ相の消失が確認された。また、金属基材界面近傍で
はW-rich 相等の脆化相の生成が確認され、これらの相
が破断の起点として働いたものと推察される。
【0098】実施例13 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi−5%Al−8%Cr−5%Co(重量%)合金層
を約15μm 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素
分圧は約20Paであった。次いで、同一チャンバー内で減
圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層(Ni−
23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量%))を約
85μm被覆形成した。上記Ni−5%Al−8%Cr−5%C
o(重量% )合金層中の酸素濃度を測定したところ、3.
85at.%であった。この金属被覆層上に大気中プラズマ溶
射法でZrO2 − 8重量% Y2 3 組成のジルコニア層
を約 300μm 被覆形成した。
【0099】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1223K で250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Al−Cr−Co合金層、Al2 3 層、NiCo
CrAlY層の順に存在しており、NiCoCrAlY
層での急激な相変化および金属基材側での脆化相の形成
は確認されなかった。このとき、Ni−Al−Cr−C
o合金層とNiCoCrAlY層の間に存在するAl2
3 はほぼ均一な厚さの完全な層を形成しており、その
厚さは約 1μm であった。
【0100】また本発明との比較例として、単結晶Ni
基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量
%))を約 100μm 被覆形成した。この金属被覆層上に大
気中プラズマ溶射法でΖrO2 − 8重量% Y2 3 組成
のジルコニア層を約 300μm 被覆形成した。この耐熱被
覆材に実施例13と同様の熱処理を施し、同一条件でク
リープ試験を行ったところ、 100時間経過以前に破断し
た。この試料を切断して断面を微視的に観察したとこ
ろ、NiCoCrAlY金属被覆層中で金属基材へのA
lの拡散に伴うβ相からγ′相への相変態が生じてい
た。また、金属基材界面近傍ではCr-rich 相およびW
-rich 相等の脆化相の生成が確認され、これらの相が破
断の起点として働いたものと推察される。 実施例14 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi−5%Al−5%Cr(重量%)合金層を約20μ
m 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約
20Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズ
マ溶射法によりFeCrAlY層(Fe−17% Cr−8%
Al−0.5%Y(重量%))を約20μm 被覆形成し、さらに
NiCoCrAlY層(Νi−23% Co−17% Cr−12
% Al−0.5%Y(重量%))を約60μm 被覆形成した。上
記Νi−5%Al−5%Cr(重量%)合金層中の酸素濃度を
測定したところ、4.02at.%であった。この金属被覆層上
に大気中プラズマ溶射法でZrO2 − 8重量% Y2 3
組成のジルコニア層を約 300μm 被覆形成した。
【0101】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1223K で250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Al−Cr合金層、Al2 Ο3 層、FeCrAlY
層、NiCoCrAlY層の順に存在しており、FeC
rAlY層およびNiCoCrAlY層での急激な相変
化および金属基材側での脆化相の形成は確認されなかっ
た。このとき、Ni−Al−Cr合金層とNiCoCr
AlY層の間に存在するAl2 3 はほぼ均一な厚さの
完全な層を形成しており、その厚さは約 1.5μm であっ
た。
【0102】また、本発明との比較例として、単結晶N
i基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりFeCrAlY層(Fe
−17% Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約20μm 被覆
形成し、さらにNiCoCrAlY層(Ni−23% Co
−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量%))を約80μm被
覆形成した。この金属被覆層上に大気中プラズマ溶射法
でΖrO2 − 8重量%Y2 3 組成のジルコニア層を約
300μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施例14と
同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行った
ところ、 100時間経過以前に破断した。この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、FeCrAlY層
およびNiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡
散に伴う相変態が生じていた。また、金属基材界面近傍
ではCr- rich相、W-rich 相およびFe-rich 相等の
脆化相の生成が確認され、これらの相が破断の起点とし
て働いたものと推察される。
【0103】実施例15 多結晶Co基超合金FSX−414からなる丸棒状金属
基材の表面に、約10Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりCo−5%Al−5%Cr(重量%)合金層を約20μ
m 被覆形成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約
2Paであった。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズ
マ溶射法によりCoNiCrAlY層(Co−32% Ni
−21% Cr−8%Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm 被
覆形成した。上記Co−5%Al−5%Cr(重量%)合金層
中の酸素濃度を測定したところ2.95at.%であった。
【0104】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、1123K で300M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からC
o−Al−Cr合金層、Al2 3 層、CoNiCrA
lY層の順に存在しており、CoNiCrAlY層での
急激な相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認
されなかった。このとき、Co−Al−Cr合金層とC
oNiCrAlY層の間に存在するAl2 3 はほぼ均
一な厚さの完全な層を形成しており、その厚さは約 1μ
m であった。
【0105】また、本発明との比較例として、多結晶C
o基超合金FSX−414からなる丸棒状金属基材の表
面に、減圧プラズマ溶射法によりCoNiCrAlY層
(Co−32% Ni−21% Cr−8%Al−0.5%Y(重量
%))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実施
例15と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験
を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この試
料を切断して断面を微視的に観察したところ、CoNi
CrAlY金属被覆層中で金属基材へのAlの拡散に伴
うβ相の消失が確認された。また、金属基材界面近傍で
はW-rich 相等の脆化相の生成が確認され、これらの相
が破断の起点として働いたものと推察される。
【0106】実施例16 単結晶Ni基超合金CMSΧ−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりNi−6%Al−8%Cr−6%Ta−1%Ti−5%C
o−8%W−1%Mo(重量%)合金層を約20μm 被覆形成し
た。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約20Paであっ
た。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズマ溶射法に
よりΝiCoCrAlY層(Ni−23% Co−17% Cr
−12% Al−0.5%Y(重量%))を約80μm 被覆形成し
た。上記Ni−6%Al−8%Cr−6%Ta−1%Ti−5%C
o−8%W−1%Mo(重量%)合金層中の酸素濃度を測定し
たところ、2.54at.%であった。この金属被覆層上に大気
中プラズマ溶射法でZrO2 − 8重量% Y2 3 組成の
ジルコニア層を約 300μm 被覆形成した。
【0107】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で1323K で16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に1223で250MPaの
応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保持し
ても破断は起こらなかった。また、この試料を切断して
断面を微視的に観察したところ、金属基材側からNi−
Al−Cr−Ta−Ti−Co−W−Mo合金層、Al
2 3 層、NiCoCrAlY層の順に存在しており、
NiCoCrAlY層での急激な相変化および金属基材
側での脆化相の形成は確認されなかった。このとき、N
i−Al−Cr−Ta−Ti−Co−W−Μo合金層と
CoNiCrΑlY層との間に存在するAl2 3 はほ
ぼ均一な厚さの完全な層を形成しており、その厚さは約
1μm であった。
【0108】また本発明との比較例として、単結晶Ni
基超合金CMSX−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりΝiCoCrAlY層
(Ni−23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量
%))を約 100μm 被覆形成した。この金属被覆層上に大
気中プラズマ溶射法でΖrO2 − 8重量% Y2 3 組成
のジルコニア層を約 300μm 被覆形成した。この耐熱被
覆材に実施例16と同様の熱処理を施し、同一条件でク
リープ試験を行ったところ、 100時間経過以前に破断し
た。この試料を切断して断面を微視的に観察したとこ
ろ、NiCoCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散
に伴うβ相からγ′相への相変態が生じていた。また、
金属基材界面近傍ではCr-rich 相、W-rich 相および
Fe-rich 相等の脆化相の生成が確認され、これらの相
が破断の起点として働いたものと推察される。
【0109】実施例17 単結晶Ni基超合金CMSX−2からなる丸棒状金属基
材の表面に、約 100Paの減圧大気中で減圧プラズマ溶射
法によりΝi−8%Cr(重量%)合金層を約20μm 被覆形
成した。この際の溶射雰囲気中の酸素分圧は約20Paであ
った。次いで、同一チャンバー内で減圧プラズマ溶射法
によりNiCoCrAlY層(Ni−23%Co− 17%C
r− 12%Al−0.5%Y(重量%))を約 180μm 被覆形成
した。上記したΝi−8%Cr(重量%)合金層中の酸素濃
度を測定したところ、4.22at.%であった。
【0110】このようにして形成した耐熱被覆材にAr
雰囲気炉中で 1323Kで16時間、さらに1123K で48時間の
熱処理を施した。この熱処理後の試料に、 1173Kで250M
Paの応力下でクリープ試験を行ったところ、 100時間保
持しても破断は起こらなかった。また、この試料を切断
して断面を微視的に観察したところ、金属基材側からN
i−Cr合金層、Al2 3 層、NiCoCrAlY層
の順に存在しており、NiCoCrAlY層での急激な
相変化および金属基材側での脆化相の形成は確認されな
かった。このとき、Ni−Cr合金層とNiCoCrA
lY層との間に存在するAl2 3 はほぼ均一な厚さの
完全な層を形成しており、その厚さは約1μm であっ
た。
【0111】また、本発明との比較例として、単結晶N
i基超合金CMSΧ−2からなる丸捧状金属基材の表面
に、減圧プラズマ溶射法によりNiCoCrAlY層
(Ni−23% Co−17% Cr−12% Al−0.5%Y(重量
% ))を約 200μm 被覆形成した。この耐熱被覆材に実
施例17と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試
験を行ったところ、 100時間経過以前に破断した。この
試料を切断して断面を微視的に観察したところ、NiC
oCrAlY層中で金属基材へのAlの拡散に伴うβ相
からγ′相への相変態が生じていた。また、金属基材界
面近傍ではCr-rich相およびW-rich 相等の脆化相の
生成が確認され、これらの相が破断の起点として働いた
ものと推察される。
【0112】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の第1の耐
熱部材によれば、拡散抑制層として機能する中間層、さ
らには中間層に基いて金属基材/中間層界面や中間層/
金属被覆層界面に形成されるAl等の化合物により、金
属基材と金属被覆層との間の元素拡散を格段に抑制でき
ると共に、拡散抑制層の形成に伴う界面剥離等を防ぐこ
とができる。また、第2の耐熱部材によれば、中間層に
基いて中間層/金属被覆層界面に形成され、拡散抑制層
として機能するAlを主成分とする酸化物、窒化物、酸
窒化物等の化合物により、金属基材と金属被覆層との間
の元素拡散を格段に抑制できると共に、拡散抑制層の形
成に伴う界面剥離等を防ぐことができる。これらによっ
て、高温強度や耐食・耐酸化性を維持して耐熱部材の寿
命を著しく延ばすことが可能となる。従って、例えばガ
スタービン翼の使用環境のように、腐食、酸化、さらに
は応力が重畳して材料に作用する環境下においても、優
れた耐食・耐酸化性ならびに高温強度を長時間にわたっ
て維持できる耐熱部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の耐熱部材の一実施形態の構造
を模式的に示す断面図である。
【図2】 図1に示す耐熱部材の熱処理後または実使用
時の形態を示す断面図である。
【図3】 図1に示す耐熱部材の変形例を示す断面図で
ある。
【図4】 図3に示す耐熱部材の熱処理後または実使用
時の形態を示す断面図である。
【図5】 本発明の第1の耐熱部材の他の実施形態の構
造を模式的に示す断面図である。
【図6】 図5に示す耐熱部材の熱処理後または実使用
時の形態を示す断面図である。
【図7】 本発明の第2の耐熱部材の一実施形態の構造
を模式的に示す断面図である。
【図8】 図7に示す耐熱部材の熱処理後または実使用
時の形態を示す断面図である。
【図9】 本発明の第2の耐熱部材の他の実施形態の構
造を模式的に示す断面図である。
【図10】 図9に示す耐熱部材の熱処理後または実使
用時の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1………金属基材 2、11……中間金属層 3………金属被覆層 4、8、12、14……耐熱部材 5………Al等の酸化物、窒化物、あるいは酸窒化物 13……Alを主成分とする酸化物、窒化物、あるいは
酸窒化物
フロントページの続き (72)発明者 安田 一浩 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とする金属基材と、前記金属
    基材上に中間層を介して被覆形成され、Ni、Coおよ
    びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
    ると共に、少なくともCrおよびAlを含有する合金か
    らなる金属被覆層とを具備する耐熱部材において、 前記中間層は、Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とすると共に、Ti、Zr、
    Hf、V、TaおよびNbから選ばれる少なくとも 1種
    の元素と、 0.1〜15重量% のAl、 0.1〜30重量% のC
    rおよび 0.1〜10重量% のWから選ばれる少なくとも 1
    種の元素とを含有することを特徴とする耐熱部材。
  2. 【請求項2】 Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とする金属基材と、前記金属
    基材上に中間層を介して被覆形成され、Ni、Coおよ
    びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
    ると共に、少なくともCrおよびAlを含有する合金か
    らなる金属被覆層とを具備する耐熱部材の製造方法にお
    いて、 前記金属基材上に、Ni、CoおよびFeから選ばれる
    少なくとも 1種の元素を主成分とすると共に、Ti、Z
    r、Hf、V、TaおよびNbから選ばれる少なくとも
    1種の元素と、 0.1〜15重量% のAl、 0.1〜30重量%
    のCrおよび0.1〜10重量% のWから選ばれる少なくと
    も 1種の元素とを含有する中間層を、酸素分圧または窒
    素分圧が 0.1〜 1×104 Paの雰囲気中で形成する工程
    と、 前記中間層上に、前記金属被覆層を 1×104 Pa以下の減
    圧雰囲気中で形成する工程とを有することを特徴とする
    耐熱部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とする金属基材と、前記金属
    基材上に中間層を介して被覆形成され、Ni、Coおよ
    びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
    ると共に、少なくともCrおよびAlを含有する合金か
    らなる金属被覆層とを具備する耐熱部材において、 前記中間層は、Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とすると共に、CrおよびA
    lから選ばれる少なくとも 1種の元素を含有し、かつ含
    有されるCr量が前記金属被覆層中のCr含有量より 5
    重量% 以上少ないことを特徴とする耐熱部材。
  4. 【請求項4】 Ni、CoおよびFeから選ばれる少な
    くとも 1種の元素を主成分とする金属基材と、前記金属
    基材上に中間層を介して被覆形成され、Ni、Coおよ
    びFeから選ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とす
    ると共に、少なくともCrおよびAlを含有する合金か
    らなる金属被覆層とを具備する耐熱部材の製造方法にお
    いて、 前記金属基材上に、Ni、CoおよびFeから選ばれる
    少なくとも 1種の元素を主成分とすると共に、Crおよ
    びAlから選ばれる少なくとも 1種の元素を含有し、か
    つ含有されるCr量が前記金属被覆層中のCr含有量よ
    り 5重量% 以上少ない中間層を形成する工程と、 前記中間層上に前記金属被覆層を形成する工程と、 前記中間層および金属被覆層を順に形成した前記金属基
    材を773K以上の環境に供し、前記中間層と金属被覆層と
    の界面に、Alを主成分とする酸化物、窒化物および酸
    窒化物から選ばれる少なくとも 1種を形成する工程とを
    有することを特徴とする耐熱部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008050699A (ja) * 2006-08-23 2008-03-06 Siemens Ag 皮膜系を有する構成部材
JP2022526873A (ja) * 2019-03-20 2022-05-26 アルセロールミタル 被覆鋼基材、被覆鋼基材板の製造方法、鋼製品の製造方法及び鋼製品

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