JPH10140457A - 不織布、不織布複合体および感熱孔版印刷用原紙 - Google Patents

不織布、不織布複合体および感熱孔版印刷用原紙

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JPH10140457A
JPH10140457A JP29883296A JP29883296A JPH10140457A JP H10140457 A JPH10140457 A JP H10140457A JP 29883296 A JP29883296 A JP 29883296A JP 29883296 A JP29883296 A JP 29883296A JP H10140457 A JPH10140457 A JP H10140457A
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JP
Japan
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nonwoven fabric
polyester
liquid crystalline
crystalline polyester
less
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Application number
JP29883296A
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English (en)
Inventor
Kenji Tsunashima
研二 綱島
Hideyuki Yamauchi
英幸 山内
Tetsuya Tsunekawa
哲也 恒川
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】強靭でしかもしなやかな不織布、およびその強
靭でしなやかな不織布とフィルムとを積層した不織布複
合体を用いることにより、高感度でしかもその感度のバ
ラツキの小さい感熱孔版印刷用原紙を提供する。 【解決手段】熱可塑性ポリマーからなる繊維素材をウェ
ッブ状またはマット状にランダムに配列させて、繊維相
互を接合させて得られる不織布であって、前記繊維素材
の平均繊維径が10μm以下、固有粘度[η]が0.5
2以上であることを特徴とする不織布。 【効果】本発明の不織布は、繊維素材の繊維径と固有粘
度の範囲を限定したために、従来では得られなかった強
靭にしてしなやかな性能を発揮する。さらに、本発明の
不織布積層体は、上記不織布に特定の結晶融解エネルギ
ーを有したポリエステルフィルムを積層して構成したた
め、特に感熱孔版印刷用原紙にした場合に、高感度でし
かも感度のバラツキの小さい性能を発揮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強靭にしてしかも
しなやかな不織布に関するものである。また、この不織
布に特定のポリエステルフィルムを積層することにより
得られた不織布複合体、特に高感度な感熱孔版印刷用原
紙を提供するものである。
【0002】
【従来技術】従来、強靭な不織布を得るためには、この
不織布を形成する熱可塑性ポリマーからなる繊維素材の
分子量および延伸配向度を高くし、さらに平均繊維径を
太くする方法が取られきた。また、逆にしなやかな不織
布にするには、構造的に結合の弱いポリマーや分子量の
小さなポリマーを用いて繊維素材の延伸配向度を低く
し、さらに平均繊維径を細くする方法が取られてきた。
すなわち、従来の不織布では、強靭にすればしなやかさ
が失われ、逆にしなやかにすると強靭性が失われるた
め、強靭にしてしかもしなやかな不織布は存在しなかっ
たのである。
【0003】また、感熱孔版印刷用原紙としては、熱的
性質を特定化したポリエステルあるいは塩化ビニリデン
系などの熱可塑性樹脂フィルムに、天然繊維、化学繊維
または合成繊維あるいはこれらを混抄した薄葉紙、不織
布、紗などによって構成された多孔性支持体を接着剤で
貼り合わせた構造の不織布複合体が、従来から用いられ
ていた(例えば、特開昭51−2513号公報および特
開昭57−182495号公報など)。
【0004】しかしながら、従来の感熱孔版印刷用原紙
は、特に黒ベタ部に白抜けが発生したり、細字がかすれ
たりするという重大な欠点があるのみならず、この原紙
には、製版時間の短縮化やサーマルヘッドの小型化に対
応する将来の高感度化にも限界があり、さらには感度に
もバラツキがあるという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来技術における問題点の解決を課題として検討した結果
達成されたものである。
【0006】したがって、本発明の目的は、強靭でしか
もしなやかな不織布を提供すること、およびその強靭で
しなやかな不織布とフィルムとを積層した不織布複合体
を用いることにより、従来では実現できなかった高感度
で、しかもそのバラツキの小さい感熱孔版印刷用原紙を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために鋭意検討した結果、不織布を形成す
る繊維素材の分子量を高くし、しかもその平均繊維径を
特定の範囲以下に細くすることによって、目的とする不
織布が得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0008】すなわち、本発明は、熱可塑性ポリマーか
らなる繊維素材をウェッブ状またはマット状にランダム
に配列させて、繊維相互を接合させて得られる不織布で
あって、前記繊維素材の平均繊維径が10μm以下、固
有粘度[η]が0.52以上であることを特徴とする不
織布を提供するものである。。
【0009】そして、本発明の不織布は、繊維素材の複
屈折が0.20以下であること、メルトブロー法により
製造されたこと、繊維素材がポリエステルからなるこ
と、ポリエステルがメソゲン基を有する液晶性ポリエス
テルを含有したポリエステルであること、液晶性ポリエ
ステルがパラヒドロキシ安息香酸(HBA)成分をメソ
ゲンとして40〜90重量%含有した液晶性ポリエステ
ルであること、液晶性ポリエステルの溶融粘度ηm が1
00Pa・s以下であること、液晶性ポリエステルが、
溶融粘度ηm 20Pa・sを越える原料を一旦製造した
後、この原料を温水中で加水分解させながら酢酸を抽出
させるとともに、溶融粘度ηm を20Pa・s以下に調
整した液晶性ポリエステルであること、280℃に加熱
したときの酢酸発生量が10ppm以下である液晶性ポ
リエステルを用いること、液晶性ポリエステルがポリエ
ステル中に0.01〜5重量%含有していること、液晶
性ポリエステルが不織布中に0.5μm以下の層状・針
状に分散していることが、好ましい条件であり、これら
の条件を適用することによって、さらにすぐれた効果を
得ることができる。
【0010】また、本発明の不織布複合体は、上記の不
織布に、同一または異種のポリエステルフィルムが積層
されていることを特徴とし、前記ポリエステルフィルム
の結晶融解エネルギーは32J/G以下であること、お
よび前記ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(P
BT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PH
T)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート
(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポ
リエチレンイソフタレート(PEI)、およびそれらの
共重合体より選ばれた少なくとも1種からなることが好
ましい。
【0011】さらに、本発明の感熱孔版印刷用原紙は、
上記不織布複合体からなり、高感度の特性を有すること
を特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてさらに詳し
く説明する。
【0013】本発明における不織布とは、熱可塑性ポリ
マーからなる繊維素材を、適当な方法によってウエッブ
状またはマット状にランダム配列させ、接着剤あるいは
繊維自身の融着力によって、繊維相互を接合させて得ら
れるシート状のもであり、従来公知のメルトブロー法や
スパンボンド法などの溶融紡糸法によって製造されたも
のである。
【0014】すなわち、メルトブロー法では、溶融した
ポリエステルポリマーを口金から吐出するに際して、口
金周辺部から熱風を吹き付け、この熱風によって吐出し
たポリマーを細繊度化せしめ、次いでしかるべき位置に
配置したネットコンベア上に吹き付けて捕集し、ウエブ
を形成することにより不織布が製造される。
【0015】したがって、メルトブロー法では、溶融し
たポリマーを熱風で細繊化するために、使用されるポリ
マーの粘度は低いことが必須であり、ポリエステルの場
合には、固有粘度にして0.6未満のポリマーでないと
不織布は得られない。もちろん、ポリマーの固有粘度が
高くなると繊維径は太くなり、さらに繊維は分子配向す
るようになるため、しなやかな不織布は得ることができ
ない。
【0016】メルトブロー法により不織布を構成する繊
維素材は、実質的に連続したウェブ状のものである。こ
のウエブは、ネットコンベアに設けた吸引装置によって
熱風と一緒に吸引されるので、個々の繊維が完全に固化
する前に捕集される。つまり、ウエブの繊維同士は互い
に融着した状態で捕集されることになる。したがって、
口金とネットコンベア間の捕集距離を適宜設定すること
によって、繊維の融着度合を調整することができる。ま
た、ポリマー粘度、吐出量、熱風温度、熱風流量、およ
びコンベア移動速度などを適宜調整することにより、不
織布繊維の配向度、ウエブの目付や単糸繊維径などを任
意に設定することができる。例えば、ポリエステル不織
布の繊維目付量は、1〜30g/m2 程度であり、好ま
しくは2〜20g/m2 、特に好ましくは3〜16g/
2 である。また、口金から吐出されたポリマーを、溶
融状態から室温雰囲気下に急冷することにより、非晶質
に近い、低結晶の状態で固化させることもできる。
【0017】このメルトブロー法で紡糸された繊維素材
は、熱風の圧力で細繊度化されるため、比較的平均繊維
径の細い、すなわち20μm以下、好ましくは1〜10
μm、さらに好ましくは3〜8μm程度の細径の繊維素
材からなる不織布が得られる。
【0018】本発明においては、使用するポリマーの粘
度、分子配向度などにもよるが、メルトブロー法では比
較的分子配向しにくいため、十分なしなやかさを有する
不織布を得るには、平均繊維径で10μm以下、好まし
くは8μm以下の繊維素材を用いることが好ましい。
【0019】一方、スパンボンド法では、融点以上に加
熱された口金から吐出したポリマーを、エアエジェクタ
ーによって牽引後、衝突板に衝突させて繊維を開繊し、
コンベア状に捕集してウエブを形成することにより不織
布が製造される。
【0020】そして、このスパンボンド法では、ポリマ
ー吐出量、およびコンベア速度を適宜設定することによ
り、ウエブの目付を任意に設定できる。また、エジェク
ターの圧力と流量を適宜調整することにより、フィラメ
ントの分子配向状態を任意に調整できる。すなわち、圧
力と流量を絞って紡糸速度を遅くすることにより、分子
配向度の低いウエブを得ることができる。
【0021】また、スパンボンド法では、吐出したポリ
マーの冷却速度を調整することにより、結晶性の低いウ
エブを得ることができる。しかしながら、スパンボンド
法では、平均繊維径が10μm以下の細い繊維素材から
なる不織布を得ることは難しい。なお、紡糸後工程でさ
らに加工して細い繊維径の不織布を得ることもできる
が、延伸が難しいばかりか、分子配向が非常に上がり、
その結果、繊維が硬くなり、しなやかさを失うことにな
るためあまり好ましくない。
【0022】したがって、本発明においては、スパンボ
ンド法よりも、メルトブロー法を適用することが望まし
い。
【0023】本発明でいうしなやかさとは、色々な方法
で評価することができるが、よく利用される評価方法
は、KES方式による曲げ剛性B値であり、本発明の不
織布は、この曲げ剛性B値が60N・m2 /m未満、好
ましくは10〜50N・m2 /mの範囲内にあることが
好ましい。
【0024】本発明のポリエステル不織布を形成する繊
維素材の分子配向度は、特に限定はしないが、一般に低
い方がしなやかさなどの点で好ましく、通常、分子配向
度を表す複屈折(△n)の値として、0.20以下、好
ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.10以下
であることが望ましい。また、フィルム部分および不織
布部分のレーザーラマン分光法で求めた配向パラメータ
ーとしては、3〜10が好ましく、より好ましくは両者
とも3.5〜8であり、特に好ましくは両者とも4〜7
であることが望ましい。
【0025】本発明の不織布を形成する繊維素材は、ポ
リエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリオ
レフィン、およびポリビニルアルコールなどで代表され
る熱可塑性ポリマーからなる繊維である。
【0026】本発明の不織布においては、特に耐熱性、
汎用性、価格、腰の強さ、取扱い性などがすぐれ、他の
フィルムと積層して不織布複合体とした場合の感熱印刷
の感度が高いことなどの理由から、ポリエステル樹脂か
らなる繊維を素材とする不織布であることが好ましい。
【0027】本発明の不織布に用いられるポリエステル
とは脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸と、
ジオールを主たる構成成分とする熱可塑性ポリマーであ
る。ここで、芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフ
タレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン
酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフ
ェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジ
カルボン酸、および4,4′−ジフェニルスルホンジカ
ルボン酸などを挙げることができ、中でもテレフタル
酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸が好ましく使用される。
【0028】脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば
コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデ
カンジオン酸、エイコサンジオン酸、およびダイマー酸
などを挙げることができ、中でもアジピン酸、セバシン
酸が好ましく使用される。
【0029】また、脂環族ジカルボン酸成分としては、
例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などを挙げ
ることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよ
く、2種以上併用してもよい。
【0030】一方、ジオール成分としては、例えばエチ
レングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−
プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−
ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペ
ンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−
シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサン
ジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ
アルキレングリコール、および2,2−ビス(4−ヒド
ロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることが
でき、中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオ
ール、1,6−ヘキサンジオール、および1,4−シク
ロヘキサンジメタノールが好ましく用いられる。これら
のジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用
してもよい。
【0031】本発明の不織布に特に好ましく用いられる
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、
ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−
シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、およびエチ
レンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重
合体などを挙げることができる。
【0032】本発明におけるポリエステルは従来公知の
方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオー
ル成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成
物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ
重縮合させることによって製造する方法や、酸成分とし
てジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とで
エステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させる
ことによって製造する方法などが挙げられる。この際、
必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金
属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、ア
ンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いるこ
ともできる。また、熱安定剤としてリン化合物を用いる
ことができる。本発明におけるポリエステルには必要に
応じて、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、
減粘剤、増粘剤、滑剤、顔料、染料、および消泡剤など
を配合することができる。
【0033】不織布の繊維素材であるポリエステルの固
有粘度[η]は、強靭性、感度などの点から0.52以
上、好ましくは0.58以上、さらに好ましくは0.6
0以上、最も好ましくは0.63以上であることが必須
である。固有粘度[η]が0.52未満であると、得ら
れる不織布が脆く、弱いものとなるため好ましくない。
【0034】さらに、本発明で使用するポリエステル
は、メソゲン基を有する液晶性ポリエステルを0.01
〜5重量%含有しているポリエステルであることが望ま
しい。この液晶性ポリエステルとは、溶融時に光学異方
性を示すポリエステルのことであり、代表的な液晶性ポ
リエステルとしては、特開平7ー233310号公報な
どに記載のものが挙げられる。
【0035】本発明においては、特に液晶性ポリエステ
ルとして、パラヒドロキシ安息香酸(HBA)成分を主
メソゲンとして40〜90重量%含有した液晶性ポリエ
ステルが特に好ましく使用される。メソゲンの含有形式
は、ランダム共重合、ブロック共重合、ブランチ共重
合、およびそれらの組合わせ複合共重合など任意の形式
でよいが、本発明の場合はとくにランダム共重合とブロ
ック共重合との複合体が好ましい。
【0036】使用する液晶性ポリエステルの溶融粘度η
m は、100Pa・s以下、好ましくは10Pa・s以
下、さらに好ましくは1Pa・sであることが、少量添
加で本発明の効果が助長される点で望ましい。このよう
な粘度の低い原料は、安定に重合させることが困難であ
るばかりか、一定の形状を保った押出原料にすること
(ペレタイズ)も困難であり、さらに液晶性ポリエステ
ルの末端が多いために溶融押出時に多くの脱酢酸が起こ
り、押出系の金属を腐食させてしまうという重大な欠点
を有している。このために、本発明においては、溶融粘
度ηm 20Pa・sを越える液晶性ポリエステル原料を
一旦試作した後、この原料を温水中で加水分解させなが
ら酢酸を抽出させるとともに、溶融粘度ηm を20Pa
・s以下に調整して得た液晶性ポリエステルを使用する
ことが、生産性・効果上の点から望ましい。
【0037】したがって、使用する液晶性ポリエステル
は、280℃に加熱したときの酢酸発生量が10ppm
以下、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは全く
酢酸の発生しないものであることが大切である。
【0038】液晶性ポリエステルは、ポリエステルフィ
ルム中に0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1重
量%含有されることが望ましい。液晶性ポリエステルの
含有量が5%重量を越えると、得られる不織布の物理的
特性、例えば透明性、引裂き伝搬抵抗、衝撃性、および
摩耗性などの特性が低下するため好ましくない。逆に、
0.01重量%未満では、本発明の効果である不織布の
しなやかさを助長することができない。
【0039】また、液晶性ポリエステルは、ポリエステ
ル不織布中に、0.5μm以下、好ましくは0.3μm
以下、さらに好ましくは0.1μm以下で、層状・針状
に分散していることが、本発明の効果をさらに大きくす
る上で望ましい。分散形状は、液晶性ポリエステルとマ
トリックスポリエステルとの組成、相溶性、粘度比率、
および相溶化材などのみならず、溶融時の剪断速度、剪
断力、溶融温度、混練時間、押出時の引取り速度比率
(ドラフト比)、さらには延伸倍率・速度・温度などの
延伸条件にも依存する。
【0040】かくして形成される本発明の不織布は、こ
の不織布を形成する繊維素材の分子量を高くし、しかも
その平均繊維径を特定の範囲以下に細くすることによっ
て、強靭でしかもしなやかであるという従来にないすぐ
れた性能を発揮する。
【0041】次に、本発明の不織布積層体とは、上記の
不織布に、同一または異種のポリエステルフィルムを積
層したものである。
【0042】この不織布複合体を形成するために使用さ
れるポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタ
レート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PB
T)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、
ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PC
T)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチ
レンイソフタレート(PEI)、ポリエチレンテレフタ
レート/イソフタレートとの共重合体(PET/I)、
ポリブチレン/エチレンテレフタレート共重合体(PB
/ET)、ポリブチレン/ヘキサメチレンテレフタレー
ト共重合体(PB/HT)、ポリヘキサメチレン/1,
4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体
(PH/CT)、およびポリエチレンテレフタレート/
2,6−ナフタレート共重合体(PET/N)などの少
なくとも1種から製造したィルムである。
【0043】これらポリエステルフィルムは、従来公知
の方法により製造することができ、易滑性の付与方法も
従来公知の任意の方法を採用することができる。例え
ば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カ
オリン、タルク、湿式あるいは乾式シリカ、アルミナ、
ジルコニアなどの無機粒子、アクリル酸類、スチレンな
どを構成成分とする有機粒子などを配合する外部粒子に
よる方法、ポリエステル重合反応時に添加する触媒など
を析出させる、いわゆる内部粒子による方法、および界
面活性剤を塗布するコーティング方法などがある。
【0044】本発明の不織布複合体は、上記ポリエステ
ルフィルムと上記不織布を重ね合わせることにより得ら
れるが、これをさらに1軸または2軸に延伸することに
よって、さらにすぐれた不織布複合体を得ることができ
る。
【0045】本発明におけるポリエステルフィルムと不
織布との積層は、接着剤を使用してもよいが、接着剤を
介在させない方が、感度、均一性などの点から好まし
い。具体的には、上記不織布と、押出キャストして得ら
れたポリエステルフィルムとを、縦延伸工程の前段階に
おいて、ポリエステルフィルムおよび不織布のガラス転
移温度Tg以上の温度に加熱して相互に仮接着し、共延
伸することにより、接着剤を介在させることなく、不織
布複合体を製造することができる。
【0046】共延伸の方法は特に限定されるものではな
いが、2軸延伸が好ましく、逐次2軸延伸法、同時2軸
延伸法のいずれの方法であってもよい。逐次2軸延伸法
の場合には、縦方向、横方向の順に延伸するのが一般的
であるが、逆に延伸してもよい。延伸温度はポリエステ
ルフィルムのガラス転移温度Tgと昇温結晶化温度Tc
cとの間であることが好ましい。延伸倍率は特に限定さ
れるものではなく、用いるポリエステルフィルム用ポリ
マの種類や、感熱孔版印刷用原紙に要求される感度など
によって適宜決定されるが、通常好ましくは縦、横にそ
れぞれ2〜8倍、より好ましくは3〜8倍が適当であ
る。
【0047】また、2軸延伸後、縦または横、あるいは
縦横に再延伸してもかまわない。さらに2軸延伸後に熱
処理してもよい。熱処理温度は特に限定されるものでは
なく、用いるフィルム用ポリマー、不織布用ポリマの種
類、要求特性などによって適宜決定されるが、通常は8
0〜220℃、好ましくは80〜170℃、さらに好ま
しくは90〜150℃で、処理時間は0.5〜60秒程
度が適当である。
【0048】熱処理して得られた不織布複合体を、一旦
室温程度まで冷却した後、さらに40〜90℃の比較的
低温で、5分から1週間程度長時間エージングすること
もできる。このようなエージングを採用すると、感熱孔
版印刷用原紙とした場合の保管時あるいは印刷機の中で
のカール、シワの発生が少なくなめるため特に好まし
い。
【0049】上記不織布複合体は、そのすぐれた特性を
生かして種々の用途に適用することができるが、特に感
熱孔版印刷用原紙に適用した場合にすぐれた効果を発揮
することができる。
【0050】すなわち、本発明の不織布複合体からなる
感熱孔版印刷用原紙は、その支持体面を直接、光学顕微
鏡の明視野透過法で観察して求めた開孔部の面積分率
が、好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜50
%、特に好ましくは10〜30%である。また、開孔部
を円とみなした場合、その等価円直径の平均値は好まし
くは5〜100μm、より好ましくは10〜60μm、
特に好ましくは10〜30μmである。
【0051】本発明の感熱孔版印刷用原紙においては、
使用するポリエステルフィルムが2軸延伸フィルムであ
るのが好ましく、厚さは、感熱孔版印刷用原紙に要求さ
れる感度ナドによって適宜決定されるが、通常は0.1
〜5μmであり、好ましくは0.1〜4μm、より好ま
しくは0.1〜3μmである。
【0052】本発明の感熱孔版印刷用原紙を構成するポ
リエステルフィルムと不織布(多孔性支持体)間の剥離
強度は、好ましくは3g/cm以上、より好ましくは5
g/cm以上、特に好ましくは10g/cm以上であ
る。
【0053】本発明の感熱孔版印刷用原紙は、フィルム
のサーマルヘッドに接触すべき片面に、穿孔時の融着を
防止するため、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、
フッ素系樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、耐熱剤、酸化
防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料、分散助剤、防腐
剤、および消泡剤などからなる薄層を設けることが好ま
しい。この融着防止の薄層の厚みは、好ましくは0.0
05μm以上0.4μm以下、より好ましくは0.01
μm以上0.4μm以下である。
【0054】融着防止の薄層を設ける場合には、塗液は
水に溶解、乳化または懸濁した塗液の状態で塗布し、そ
の後水を乾燥などによって除去する方法が好ましい。塗
布は、フィルムの延伸前あるいは延伸後、いずれの段階
で行ってもよい。本発明の効果をより顕著に発現させる
ためには、延伸前に塗布するのが特に好ましい。塗布方
法は特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコ
ーター、リバースコーター、およびバーコーターなどを
用いて塗布するのが好ましい。また、変性シリコーンを
主体とする薄層を設ける前に必要に応じて、塗布面に空
気中その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理を施しても
よい。
【0055】上記の構成からなる本発明の感熱孔版印刷
用原紙は、従来にない高感度の特性を発揮する。
【0056】
【実施例】以下に、実施例および比較例を挙げて、本発
明の構成および効果についてさらに説明する。
【0057】なお、以下の実施例および比較例における
各物性値は、下記の方法にしたがって測定した値であ
る。
【0058】(1)配向パラメーター 配向パラメーターは、レーザーラマン分光法により求め
た。フィルム部分は、原紙をPMMA樹脂中に包埋し、
湿式研磨してフィルムの長手または幅方向に垂直な断面
を形成し、例えば、Jobin Yvon/愛宕物産製
“Ramanor”U−1000I(光源:NEC製G
LG3300 Ar+ レーザー514.5nm、顕微
鏡:オリンパス製 BH−2型 対物レンズ×100)
を用いて、断面に対して垂直にレーザー光を照射し、フ
ィルムの面方向に偏光したレーザー光およびフィルムの
厚さ方向に偏光したレーザー光によるラマンスペクトル
の1615cm-1バンドのピーク強度をそれぞれIおよ
びINDとした時、その比I/INDをフィルムの配向パラ
メーターとした。不織布の場合は、断面を形成する必要
はなく、上記装置を用いて、繊維軸に対して垂直にレー
ザー光を照射し、繊維の長さ方向に偏光したレーザー光
および繊維の直径方向に偏光したレーザー光によるのラ
マンスペクトルの1615cm-1バンドのピーク強度を
それぞれIおよびINDとした時、その比I/INDを不織
布の配向パラメーターとした。
【0059】(2)融点(℃) セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計RDC220
型を用い、試料5mgを採取し、室温より昇温速度20
℃/分で昇温した時の吸熱曲線のピークの温度より求め
た。フィルムと不織布が接着剤を介することなく接着さ
れている複合体の場合には、複合体からセロハンテープ
で不織布の大部分を剥がし不織布の試料として用い、フ
ィルムを顕微鏡などで観察し、不織布繊維を完全に取り
除いて試料とした。 (3)結晶融解エネルギー(△Hu) セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計RDC220
型を用いて、融解時の面積から求めた。この面積は、昇
温することによりベースラインから吸収側にずれ、さら
に昇温を続けるとベースラインの位置まで戻るまでの面
積であり、融解開始温度位置から終了位置までを直線で
結び、この面積(a)を求める。同じDSCの条件でI
n(インジウム)を測定し、この面積(b)を28.5
6J/gとして次式により求める。 28.56×a/b=△Hu(J/g) フィルムと不織布の分離は上記融点の測定と同様であ
る。
【0060】(4)平均繊維径(μm) 原紙の任意な10箇所について、電子顕微鏡で倍率20
00倍で10枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき任
意の15本の繊維の直径を測定し、これを10枚の写真
について行い、合計150本の繊維径を測定し、数平均
値を平均繊維径とした。
【0061】(5)繊維目付(g/m2 ) 原紙片20cm×20cmを取り、その重量を測定して
2 当たりの重量に換算した。
【0062】(6)固有粘度〔η〕 試料を105℃×20分乾燥した後、0.1±0.00
5gを秤量し、o−クロロフェノール10×10-63
中で100℃×15分間撹拌して溶解した。冷却後、ヤ
マトラボティックAVM−10S型自動粘度測定器によ
り25℃における粘度を測定し、比粘度ηsp求め、次
式のハギンスの式より算出した。 ηsp/c=[η]+k’[η]2c (ただし、k’=0.343、cは溶液1×10-43
中に溶解したg数で表した濃度である)。
【0063】(7)結晶化度(%) n−ヘプタンと四塩化炭素の混合液からなる密度勾配管
に試料を投入し、10時間以上経過後の値を読んで密度
を求めた。結晶化度0%の密度を1.335g/c
3 、結晶化度100%の密度を1.455g/cm3
として、サンプルの結晶化度を算出した。
【0064】(8)複屈折(△n) 偏光顕微鏡により、光源にナトリウムランプを用い、試
料をα−プロムナフタリン浸漬下で、Berekコンベ
ンセーター法からレターデーションを求めて算出した。
【0065】(9)支持体の開孔部の面積分率(%) 原紙の支持体面を、光学顕微鏡の明視野透過法で直接観
察し、(株)ピアス製ハイビジョン対応画像解析装置を
用いて、モニター倍率240倍で、開孔部の面積分率を
求めた。任意の測定点10箇所について面積分率を求
め、その平均値で表した。
【0066】(10)支持体の開孔部の等価円直径の平
均値(μm) 原紙の支持体面を直接、光学顕微鏡の明視野透過法で観
察し、(株)ピアス製ハイビジョン対応画像解析装置を
用いて、モニター倍率240倍で、白黒反転処理して、
開孔部の等価円直径を測定し、その平均値を求めた。任
意の測定点10箇所について測定し、その平均値で表し
た。
【0067】(11)剥離強度(g/cm) フィルム面にセロハンテープを貼って補強し、フィルム
と多孔性支持体間との剥離強度をJIS−K−6854
に準拠した180度剥離試験法により測定した。
【0068】(12)印刷性評価 作製した原紙を理想科学工業(株)製印刷機“リソグラ
フ”(GR275)に供給して、サーマルヘッド式製版
方式により、A4サイズに一辺10mmの黒ベタ(■)
を全面に格子状に製版してマスタを作成した。サーマル
ヘッドへの供給エネルギーは、ドット当たり30μJと
した。このマスタにより製版を行い、穿孔部を走査型電
子顕微鏡で100倍にして観察し、穿孔部分の面積を測
定した。測定は1視野当たり150個で10視野につい
て行い、平均値と次式で示したS/N比を求め以下の基
準で評価した。 S/N比=10×log(穿孔面積の平均値/穿孔面積
の標準偏差)2 感度については、平均値が1400×10−122 以上
であるものを[◎]、平均値が1000×10-12 2
以上1400×10-12 2 未満であるものを[○]、
平均値が500×10-12 2 以上1000×10-12
2 未満であるものを[△]、平均値が500×10
-12 2 未満であるものを[×]と判定した。
【0069】また、感度のバラツキについては、S/N
比が15以上のものを[◎]、12以上15未満のもの
を[○]、8以上12未満のものを[△]、8未満のも
のを[×]と判定した。感度、バラツキともに、[◎]
および[○]のものが実用に値するものである。
【0070】(13)KES方式による曲げ剛性B値
(N・m2 /m) Kawabata´s Evaluation Sys
tem forFabricsの略称であり、織物の風
合の物理的評価法である。(株)加藤鉄工所製純曲げ試
験機(KES−F2)を使用して、サンプル測定サイズ
200×10mmになるようにチャックに固定し、曲率
K=−2.5〜2.5(cm-1)の範囲で変形速度0.
50(cm-1/sec)の等速度曲率の純曲げを行う。
試料の単位長さ当りの曲げモーメント(M,単位N・m
/m)を曲率(K,単位m−1 )にたいして測定し、M
−K曲線をプロットする。K=0.5〜1.5の間の傾
斜(Bf)と、−0.5〜−1.5の間の傾斜の絶対値
(Bb)を測定し、単位長さ当りの曲げ剛性B値(単
位:N・m2 /m)を次式から算出した。 B=(Bf+Bb)/2 より詳細には、川端季雄著「風合評価の標準化と解析」
(第2報)日本繊維機械学会、風合計量と規格化研究委
員会発行(昭和55年)を参照されたい。
【0071】(14)しなやかさ KES方式による曲げ剛性B値(単位:N・m2 /m)
の値によって、60N・m2 /m以下のものを[○]、
60〜80N・m2 /mのものを[△]、80N・m2
/mを越えるものを[×]と判定した。
【0072】(15)強靭性 ASTMーDー256にしたがい、25℃で測定したシ
ャルピー衝撃強さの値によって、シャルピー衝撃強さ2
000J/m2 以上のものを[○]、2000〜500
J/m2 のものを[△]、500J/m2 以下のものを
[×]と判定した。
【0073】[実施例1〜4、比較例1〜2]使用する
原料の固有粘度を種々変更して、メルトブロー法により
不織布を得た。すなわち、使用した原料は、固有粘度
[η]が表1のように異なったポリエチレンテレフタレ
ート(PET)に、液晶性ポリエステルを混合したもの
を用いた。
【0074】液晶性ポリエステルとしては、PETにヒ
ドロキシ安息香酸HBA成分が50重量%ランダム共重
合するように公知の脱酢酸反応で重合を行ない、末端基
をフェノール化合物で封鎖し、溶融粘度ηm =30Pa
・sの液晶性ポリエステルペレットを得、続いてこのペ
レットを95℃の温水中で8時間加水分解・脱酢酸処理
し、溶融粘度ηm =0.5Pa・sの酢酸発生量を0p
pmにした液晶性ポリエステルペレットを用いた。
【0075】上記種々の固有粘度を有するPETに対
し、上記液晶性ポリエステルをそれぞれ0.5重量%添
加し、含水率が20ppm以下になるように乾燥した
後、公知65mmの溶融押出機に供給し、285℃で剪
断速度150sec-1以上で充分混練りした後、孔径
0.35mm、孔数100個の矩形紡糸口金を用いて、
吐出量80g/分で、上記混合原料をメルトブロー法に
て紡出し、捕集距離15cmでネットコンベア上に繊維
を捕集して巻取った。
【0076】この際、口金周辺から吹き付ける熱風量を
2.8Nm3 /分とし、ネットコンベアに設けた吸引装
置により口金直下のウエブの温度を87℃とした。得ら
れた未延伸不織布の繊維目付は120g/m2 、平均繊
維径は7.5μm、結晶化度は2%程度であった。
【0077】得られた各不織布の特性評価結果を表1に
併せて示す。
【0078】
【表1】 表1の結果から明らかなように、不織布の固有粘度を高
くし、しかも不織布の平均繊維径を細くすることによっ
て、強靭でしかもしなやかな不織布が得られる。
【0079】[比較例3〜5]実施例1〜4、比較例1
〜2で混合用に使用した液晶性ポリエステルを添加する
ことなく、PET原料だけを用いて、実施例1〜4と同
様に不織布を得た。
【0080】得られた各不織布の特性評価結果を、比較
例1〜2の結果と併せて表2に示す。
【0081】
【表2】 表2の結果で明らかなように、液晶ポリエステルを添加
しない場合には、平均繊維径が太くなり、強靭性としな
やかさとは両立し難いことが判る。
【0082】[実施例5] (ポリエステル不織布の製布)ポリエチレンテレフタレ
ート原料(融点257℃、固有粘度0.65)に、PE
T/ヒドロキシ安息香酸HBA(40/60重量比)共
重合体からなる液晶性ポリエステル(溶融粘度ηm =
0.3Pa・s)を1重量%添加した混合原料を用い
て、50mmの押出機で溶融させ、口金温度290℃に
加熱された孔径0.35mm、孔数100個の矩形紡糸
口金を用いて、吐出量50g/分で、公知のメルトブロ
ー法にて紡出し、捕集距離15cmでネットコンベア上
に繊維を捕集して巻取った。
【0083】この際、口金周辺から吹き付ける熱風量を
2.6Nm3 /分とし、ネットコンベアに設けた吸引装
置により口金直下のウエブの温度を87℃とした。
【0084】得られた不織布の繊維目付は142g/m
2 、平均繊維径は6.5μm、結晶化度は0%、複屈折
(△n)は0.001以下、固有粘度は0.63であっ
た。 (製膜)次いで、平均粒子径1.2μmのシリカを0.
4重量%含有するエチレンテレフタレート/エチレンイ
ソフタレート共重合体(イソフタル酸25モル%共重
合、融点192℃、固有粘度0.75、結晶融解エネル
ギー20J/g)を120℃で予備結晶化した後、熱風
乾燥機で150℃で3時間乾燥し、これをスクリュ径6
5mmの押出機に供給し、溶融後、濾過し、270℃に
加熱されたTダイ口金からシート状に押出し、直径60
0mmの冷却ドラム上に密着急冷して厚さ13μmのフ
ィルムを作成した。
【0085】次に、上記で得られたフィルム上に、上記
の不織布を重ね、ロール式縦延伸機で相互密着させなが
ら85℃で3.5倍に延伸した。
【0086】次いで、得られた該積層シートのフィルム
側に、メタリングバーを用いて、シリーンオイルの水分
散液(濃度2%)を塗布厚み9μとなるように塗布し
た。続いて、テンター式横延伸機に送り込み、熱風によ
り95℃に加熱し、幅方向に4.0倍延伸した後、12
0℃×10秒間熱処理して感熱孔版印刷用原紙を作製し
た。
【0087】かくして得られた感熱孔版印刷用原紙の固
有粘度は、フィルム部分が0.72、不織布部分が0.
61であった。また、不織布目付は10g/m2 、平均
繊維径は5μm、フィルム単独の厚さは0.9μm、融
点は192℃であった。さらにアミノ変性シリコーンオ
イルの塗布量は0.04g/m2 であった。
【0088】(評価結果)最終的に得られた感熱孔版印
刷用原紙を用いて評価を行ったところ、表3に示したよ
うに、感度が高く、しかも感度のバラツキが少なく、良
好な特性を有していた。
【0089】[実施例6〜8および比較例6]不織布の
固有粘度を表3に示したように変更した以外は、実施例
5と同様にして平均繊維径は6.5μmの不織布とフィ
ルムからなる感熱孔版印刷用原紙を得た。
【0090】得られた感熱孔版印刷用原紙の特性を併せ
て表3に示したが、本発明の感熱孔版印刷用原紙は感度
および感度のバラツキが良好であるのに対し、不織布の
繊維素材の固有粘度が本発明の範囲をはずれると、感熱
孔版印刷用として大切な感度が大幅に低下し、さらに感
度のバラツキが大きくなり、使用できないことがわか
る。
【0091】
【表3】 [実施例9〜12、比較例7〜11]実施例1〜4およ
び比較例3〜5で得た不織布を、実施例5と同様にポリ
エステルフィルムに積層・共延伸して感熱孔版印刷用原
紙を得て、その評価結果を表4に示した。。
【0092】なお、比較例3〜5で得た不織布は分子配
向が進んでいるためか、共延伸可能な下限温度は実施例
5よりも高くせざるを得なかった。このためか、感度お
よびそのバラツキも大きく、感熱孔版印刷用原紙として
は使用できなかった。
【0093】
【表4】
【0094】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の不織布
は、繊維素材の繊維径と固有粘度の範囲を限定したため
に、従来では得られなかった強靭にしてしなやかな性能
を発揮する。
【0095】さらに、本発明の不織布積層体は、上記不
織布に特定の結晶融解エネルギーを有したポリエステル
フィルムを積層して構成したため、特に感熱孔版印刷用
原紙にした場合に、高感度でしかも感度のバラツキの小
さい性能を発揮する。
【0096】したがって、本発明の感熱孔版印刷用原紙
は、印刷機のサーマルヘッドに供給するエネルギーを小
さくでき、高精細化、製版時間の短縮にもつながる。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性ポリマーからなる繊維素材をウェ
    ッブ状またはマット状にランダムに配列させて、繊維相
    互を接合させて得られる不織布であって、前記繊維素材
    の平均繊維径が10μm以下、固有粘度[η]が0.5
    2以上であることを特徴とする不織布。
  2. 【請求項2】繊維素材の複屈折が0.20以下であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の不織布。
  3. 【請求項3】メルトブロー法により製造されたことを特
    徴とする請求項1または2に記載の不織布。
  4. 【請求項4】繊維素材がポリエステルからなることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 【請求項5】ポリエステルが、メソゲン基を有する液晶
    性ポリエステルを含有したポリエステルであることを特
    徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 【請求項6】液晶性ポリエステルが、パラヒドロキシ安
    息香酸(HBA)成分をメソゲンとして40〜90重量
    %含有した液晶性ポリエステルであることを特徴とする
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の不織布。
  7. 【請求項7】液晶性ポリエステルの溶融粘度ηm が、1
    00Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜6
    のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 【請求項8】液晶性ポリエステルが、溶融粘度ηm 20
    Pa・sを越える原料を一旦製造した後、この原料を温
    水中で加水分解させながら酢酸を抽出させるとともに、
    溶融粘度ηm を20Pa・s以下に調整した液晶性ポリ
    エステルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれ
    か1項に記載の不織布。
  9. 【請求項9】280℃に加熱したときの酢酸発生量が1
    0ppm以下である液晶性ポリエステルを用いることを
    特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の不織
    布。
  10. 【請求項10】液晶性ポリエステルがポリエステル中に
    0.01〜5重量%含有していることを特徴とする請求
    項1〜9のいずれか1項に記載の不織布。
  11. 【請求項11】液晶性ポリエステルが不織布中に0.5
    μm以下の層状・針状に分散していることを特徴とする
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の不織布。
  12. 【請求項12】請求項1〜10のいずれか1項に記載の
    不織布に、同一または異種のポリエステルフィルムが積
    層されていることを特徴とする不織布複合体。
  13. 【請求項13】ポリエステルフィルムの結晶融解エネル
    ギーが32J/G以下であることを特徴とする請求項1
    2に記載の不織布複合体。
  14. 【請求項14】ポリエステルフィルムが、ポリエチレン
    テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレー
    ト(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(P
    HT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート
    (PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポ
    リエチレンイソフタレート(PEI)、およびそれらの
    共重合体より選ばれた少なくとも1種からなることを特
    徴とする請求項12または13に記載の不織布複合体。
  15. 【請求項15】請求項11〜14のいずれか1項に記載
    の不織布複合体からなることを特徴とする感熱孔版印刷
    用原紙。
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