JPH0949051A

JPH0949051A - 熱間圧延用ロ−ル

Info

Publication number: JPH0949051A
Application number: JP20210295A
Authority: JP
Inventors: Kunio Goto; 邦夫後藤; Taro Koide; 太郎小出
Original assignee: Sumitomo Metal Industries Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 1995-08-08
Filing date: 1995-08-08
Publication date: 1997-02-18

Abstract

(57)【要約】【課題】熱間圧延における高生産性及び圧延製品の高品
質化に必要な耐熱亀裂性、耐摩耗性及び耐肌荒れ性に優
れた熱間圧延用ロ−ルを提供する。【解決手段】少なくともロールの外殻層の成分組成が、
重量％で、Ｃ：１〜３％、Ｓｉ：０．１〜２．５％、Ｍ
ｎ：０．１〜２％、Ｃｒ：２〜１０％、Ｍｏ：０．５〜
８％、Ｖ：２〜８％、Ｗ：０．５〜８％、Ｎｂ：０．２
〜５％、Ｂ：０．００５〜０．５％、Ｃｅ：０．００１
〜０．３％、Ｃｏ：０〜５％を含有し、必要によりＴ
ｉ、Ｚｒの１種または２種を合計で０．１〜２．５％を
含み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物であることを特徴と
する耐摩耗性、耐亀裂性及び耐肌荒れ性に優れた熱間圧
延用ロ−ル。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材等の熱間圧延
に用いられる耐熱亀裂性、耐肌荒れ性及び耐摩耗性に優
れた圧延用ロ−ルに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、鋼材の熱間圧延に使用される圧延
ロ−ルは、下記に示す成分組成の高クロム鋳鉄や高合金
グレン鋳鉄などの耐摩耗性合金鋳鉄が使用されている。

【０００３】高クロム鋳鉄は、Ｃ：２．３〜２．９％、
Ｓｉ：０．４〜０．９％、Ｍｎ：０．８〜１．２％、Ｎ
ｉ：０．５〜１．５％、Ｃｒ：１５〜２０％、Ｍｏ：
０．７〜２．０％を含有し、残部は実質的にFeからな
り、M₇C₃型の複合炭化物を面積率で２０〜３５％含むも
のである。

【０００４】また、高合金グレン鋳鉄は、Ｃ：３．２〜
３．４％、Ｓｉ：０．７〜０．９％、Ｍｎ：０．８〜
１．２％、Ｎｉ：４．２〜４．６％、Ｃｒ：１．５〜
１．９％、Ｍｏ：０．３〜０．６％を含有し、残部は実
質的にFeからなり、M₃C 型炭化物を面積率で２５〜４０
％含むものである。更に優れた耐摩耗性を有する熱間圧
延用ロ−ル材として、特開平 2-240634 号公報、特開平
2-25205 号公報、特開平2-88745 号公報、特開平3-1268
38号公報、特開平3-219047号公報、特開平4-141553号公
報、特開平5-148584号公報および特開平 5-271875 号公
報等に開示されているような高炭素系高速度鋼（以下、
このような高炭素系高速度鋼を単にハイス、この鋼で製
作された熱間圧延用ロ−ルを熱延ハイスロ−ルという）
が用いられている。

【０００５】ハイスは、金属組織中に、Ｖ炭化物を主体
とするMC型高硬度の炭化物とM₂C 型、M₆C 型等の複合炭
化物と高温軟化抵抗の高い基地（Ｍｏ、Ｗ、Ｃｏ等が基
地中に固溶もしくは微細炭化物として析出することによ
る）とを有するため、これを熱間圧延用ロ−ル材として
用いた場合には特に優れた熱間耐摩耗性を発揮するとい
われている。

【０００６】熱延ハイスロ−ルによる熱間圧延では、理
由は必ずしも定かでないが、被圧延材表面には酸化スケ
−ルを噛み込んだ疵（噛み込みスケ−ル疵）が発生しや
すい。熱延ハイスロールは、ロール表面の黒皮の剥離
（バンディング）によるロ−ル肌荒れが生じやすく、ロ
ール肌荒れが、噛み込みスケ−ル疵に代表される表面疵
を発生させ、圧延製品の品質を低下させる原因になって
いると考えられる。

【０００７】さらに、熱延ハイスロ−ルによる熱間圧延
においては、噛み止め（鋼板がロールに噛み込んだ瞬間
にロールの回転が停止するトラブル）や絞り込み（圧延
材の先端や後端が重なった状態での圧延）のような異常
圧延時の熱衝撃による熱亀裂が従来ロ−ルに比べて深い
ため、ロール補修時の研削量が増加し、ロ−ル原単位の
大幅な悪化を招いている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、熱延
ハイスロ−ルに発生する上記問題点を解決し、熱間圧延
における高生産性及び圧延製品の高品質化に必要な耐熱
亀裂性、耐肌荒れ性及び耐摩耗性に優れた熱間圧延用ロ
−ルを提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者は、従来の熱延
ハイスロ−ルに生ずる前記問題点を解決する方法につい
て鋭意検討した結果、ハイスに、ＢとＣｅとを複合で含
有させることにより耐摩耗性を損なうことなく、耐熱亀
裂性（熱亀裂深さに対する抵抗性）及び耐肌荒れ性が飛
躍的に向上することを知るに至り、本発明を完成させた
ものであり、その要旨は、「少なくともロールの外殻層
の成分組成が、重量％で、Ｃ：１〜３％、Ｓｉ：０．１
〜２．５％、Ｍｎ：０．１〜２％、Ｃｒ：２〜１０％、
Ｍｏ：０．５〜８％、Ｖ：２〜８％、Ｗ：０．５〜８
％、Ｎｂ：０．２〜５％、Ｂ：０．００５〜０．５％、
Ｃｅ：０．００１〜０．３％、Ｃｏ：０〜５％を含有
し、必要によりＴｉ、Ｚｒの１種または２種を合計で
０．１〜２．５％を含み、残部Ｆｅ及び不可避的不純物
であることを特徴とする耐摩耗性、耐熱亀裂性及び耐肌
荒れ性に優れた熱間圧延用ロ−ル」にある。

【００１０】ここで、上記に限定する「少なくとも外殻
層」における少なくともとは、ロールの外殻層は必ず上
記成分組成にすることで、それ以外の部分は外殻層と同
じ組成にしてもよく、またダクタイル鋳鉄のような他の
材料を用いてもよいことを意味する。また、外殻層と
は、圧延使用層たるロールの表面層のことで、特に厚さ
は限定するものではない。

【００１１】ハイスにＣｅとＢを複合添加すると、それ
らは結晶粒界に偏析して高温での強度、靭性を高めるこ
とにより塑性流動（摩耗や肌荒れ）しにくくなる。その
結果、耐摩耗性、耐熱亀裂性及び耐肌荒れ性の改善がで
きる。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明にかかる熱間圧延用ロ−ル
の外殻層の成分組成（重量％）の限定理由を述べる。

【００１３】Ｃ：１〜３％Ｃは、主としてＦｅ、Ｃｒと結合し、M₇C₃型の高硬度の
複合炭化物を形成すると共に、Ｃｒ、Ｍｏ、Ｗ、Ｖ、Ｎ
ｂ、Ｔｉ、Ｚｒと結合してMC型、M₆C 型、M₂C型等の高
硬度の複合炭化物を形成してロ−ルの耐摩耗性を高める
働きがある。Ｃの含有量が、１％未満では、上記高硬度
の炭化物の生成量が少なく、熱間耐摩耗性が不足する。
一方、３％を超えて含有すると高硬度の炭化物量の析出
量が多くなり過ぎ、靭性、耐熱亀裂性が低下する。従っ
て、Ｃ含有量は、１〜３％とした。

【００１４】Ｓｉ：０．１〜２．５％Ｓｉは、溶湯の脱酸と湯流れ性をよくする効果がある。
０．１％未満では、上記効果が不足し、一方２．５％を
超えると靭性や機械的性質が劣化する。従って、Ｓｉ含
有量は、０．１〜２．５％とした。

【００１５】Ｍｎ：０．１〜２％Ｍｎは、脱酸作用と共に不純物であるＳをＭｎＳとして
固定して加工性を改善するために必要な元素である。
０．１％未満では充分な効果が得られず、一方２％を超
えると靭性が低下する。従って、Ｍｎ含有量は、０．１
〜２％とした。

【００１６】Ｃｒ：２〜１０％Ｃｒは、基地中に固溶して基地を強化するほか、Ｃと結
合して M₇C₃系の高硬度の複合炭化物を析出して耐摩耗
性と靭性を高める作用がある。しかし、２％未満ではそ
れらの効果が充分得られず、一方、１０％を超えると炭
化物が粗大化すると共にその量も過剰となり耐熱亀裂
性、耐肌荒れ性及び靭性が低下する。従って、Ｃｒ含有
量は、２〜１０％とする。

【００１７】Ｍｏ：０．５〜８％Ｍｏは、基地に固溶して高温軟化抵抗を改善させる他、
Ｃと結合してM₆C 型、M₂C 型等の複合炭化物を形成し
て、耐摩耗性を高める作用がある。しかし、０．５％未
満では、上記効果が充分得られない。一方、８％を超え
ると靭性の低下を招く。従って、Ｍｏ含有量は、０．５
〜８％とする。

【００１８】Ｖ：２〜８％Ｖは、Ｃと結合してMC型の高硬度の複合炭化物を形成し
て耐摩耗性を高めると共に、結晶粒を微細化して靭性を
向上させる。しかし、２％未満ではその効果が少さく、
一方、８％を超えて添加すると靭性の低下が起こる他、
ロ−ル自身が酸化し易くなり、耐肌荒れ性の劣化を招
く。従って、Ｖ含有量は、１〜８％とする。

【００１９】Ｗ：０．５〜８％Ｗは、Ｆｅ、Ｃｒ、Ｍｏ、Ｖ、Ｎｂ等とともにＣと結合
して高硬度の複合炭化物を形成して耐摩耗性を高める。
また基地に固溶して焼き戻し軟化抵抗を高める。しか
し、０．５％未満では、それらの効果を得ることができ
ず、一方８％を超えると靭性や耐熱亀裂性を低下させる
他、偏析を起こし易くなる。従って、Ｗ量は、０．５〜
８％とする。

【００２０】Ｎｂ：０．２〜５．０％Ｎｂは、Ｖと同様にＣと結合して高硬度の炭化物を形成
して、耐摩耗性を高める働きがある。また、組織を微細
化し靭性や耐熱亀裂性を高める。Ｎｂの含有量が、０．
２％未満では、上記効果を充分得ることができず、一方
５％を超えると靭性や耐熱亀裂性が低下する。従って、
Ｎｂ含有量は、０．２〜５％とする。

【００２１】Ｂ：０．００５〜０．５％Ｂは、本発明において重要な元素である。Ｂは、溶湯中
の酸素と結合して、脱酸効果を示す。また、Ｃｅととも
に微量複合添加することにより結晶粒界に微細に析出偏
析して高温での強度、靭性を高めて塑性流動を抑制す
る。その結果、耐摩耗性、耐熱亀裂性及び耐肌荒れ性が
向上するほか、ハイスの耐酸化性を向上させ、ロ−ル表
面での黒皮の生成そのものを抑制するので、ロール表面
の肌荒れ（黒皮剥離）を防止することができる。

【００２２】Ｂ量が、０．００５％以下では、上記効果
が不足し、一方０．５％を超えると材質が脆くなる。従
って、Ｂ含有量は、０．００５〜０．５％とした。

【００２３】Ｃｅ：０．００１〜０．３％ＣｅもＢと同様に本発明において重要な元素である。Ｃ
ｅは、Ｂと共に微量複合添加することにより、結晶粒界
に偏析して高温での強度や塑性流動性を高める。

【００２４】その結果、耐摩耗性、耐熱亀裂性が向上す
るほか、ハイスの耐酸化性を向上させ、ロ−ル表面での
黒皮の生成そのものを抑制するので、ロール表面の肌荒
れ（黒皮剥離）を防止することができる。

【００２５】Ｃｅ量が、０．００１％以下では、上記効
果を充分に得ることができず、一方０．３％を超えると
材質が脆くなる。したがって、Ｃｅ含有量は、０．００
１〜０．３％とした。

【００２６】Ｃｏ：０〜５％Ｃｏは、その大部分が基地に固溶して基地の硬度を高め
るほか高温軟化抵抗を高め、耐摩耗性を改善する作用を
有するため、必要に応じて添加することが好ましい。充
分な効果を得るには、０．２％以上含有させるのが望ま
しい。５％を超えると炭化物の偏析を助長し、基地の靭
性を低下させる。従って、Ｃｏの上限は５％以下とし
た。

【００２７】Ｔｉ、Ｚｒ：１種または２種の合計が０．
１〜２．５％Ｔｉ、Ｚｒは、組織の微細化による耐摩耗性改善と強靭
化に役立ち、必要により含有させる。これらの含有量
が、合計で０．１％未満では、上記効果を充分得ること
ができず、一方２．５％を超えると靭性や機械的性質が
著しく低下する。

【００２８】従って、Ｔｉ、Ｚｒの１種または２種の合
計は、０．１〜２．５％とした。

【００２９】不純物としてのＰ及びＳは、不可避的に含
有されるものであるが機械的性質の劣化を招くので少な
い方がよく、０．０８％以下にするのが好ましい。

【００３０】本発明の熱間圧延用ロ−ルは、ロ−ル全体
が上述の成分組成であってもよく、ロールの表層部すな
わち外殻層だけが上記の成分組成で、内層は他の鋼であ
る複合ロールであってもよい。この外殻層の厚さは特に
限定するものでない。

【００３１】後者の場合には、内層材としてダクタイル
鋳鉄、普通鋳鉄、黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、鍛鋼、鋳鋼
等の強靭材が使用できる。

【００３２】また、本発明の熱間圧延用ロ−ルは、遠心
力鋳造法、特公昭44-4903 号公報ほかに開示されている
高周波加熱を利用した連続肉盛り方法、特開昭47-2851
号公報ほかに開示されている粉末冶金法を利用して、熱
間静水圧により外殻層を成形する方法、特開昭57-2862
号公報に開示されているエレクトロスラグ溶解を利用し
た肉盛方法などの複合ロ−ル製造方法や静置鋳造、鍛造
などの一体ロ−ル製造方法等によって製造することがで
きる。

【００３３】本発明の熱間圧延用ロ−ルは、熱間仕上げ
圧延機のワ−クロ−ルのほかに、ホットスキンパスミル
用ロ−ル、条鋼圧延用ロ−ル、各種製管用ロ−ルなど、
熱間で使用されるあらゆるロ−ルに使用することができ
る。

【００３４】以下、本発明の効果を実施例に基づいて説
明する。

【００３５】

【実施例】内層材には、ダクタイル鋳鉄を用い、外殻層
として表１に示す成分組成の高炭素系高速度鋼を用い
て、１７種類の複合ロールを一体鍛造法により製作し
た。ロール寸法は下記の通りであった。

【００３６】胴部直径：150 mm、胴長：300 mm、全長：
５１０ｍｍ

【００３７】

【表１】

【００３８】Ｎｏ．１〜11は、本発明のロール、No.12
〜17は、従来のロールである。各ロ−ルは、1050〜1150
℃での焼入れと、500 〜580 ℃での焼戻しの熱処理を施
すことにより、表面硬度をHs83〜85に調整した。

【００３９】これらのロ−ルを、薄鋼板の熱間圧延をシ
ミュレ−トした熱間コイル圧延実験装置の４段式圧延機
（補強ロ−ル胴径300 mm）の作業ロ−ルとして組み込
み、板厚：１mm、板幅：４０mm、コイル長さ：２０００
m （ＳＰＣＣコイル）の炭素鋼板を下記の条件で熱間圧
延した。

【００４０】圧下率：４０％圧延温度：１０００℃、圧延速度：２００m/分、潤滑：市販の熱間圧延油をウォ−タ−インジェ
クション方式により入り側から作業ロ−ルに直接供給圧延後、ロールプロフィールから最大の摩耗深さを測定
し、耐摩耗性を評価した。また、圧延後のロール軸方向
の中央部表層部から１０mm×１０mm×１０mmの大きさの
試験片を採取し、光学顕微鏡により亀裂の最大深さを測
定して耐熱亀裂性を評価した。更に圧延後のロール表面
の黒皮の剥離発生の程度を目視で観察して耐肌荒れ性の
評価を行った。その結果を表２に示す。

【００４１】

【表２】

【００４２】同表より明かなように、ＢとＣｅと複合含
有する本発明例 No.1 〜5 は、Ｂ、Ｃｅを共に含有しな
い比較例No.12 やＢまたはＣｅの片方のみを含有する比
較例No.13 、14に比べて耐摩耗性、耐熱亀裂性、耐肌荒
れ性が共に飛躍的に向上していることが分かる。

【００４３】また、Ｂが０．５％を超える比較例No.15
、Ｃｅが０．３％を超える比較例No.16 およびＢとＣ
ｅの含有量がともに本発明の範囲を超える比較例No.17
は、本発明例 No.2 と比べると、耐摩耗性や耐肌荒れ性
は多少向上するものの耐熱亀裂性が不十分であることが
分かる。また、本発明例 No.2 とNo.6、7 との比較か
ら、Ｃｏを含有させることによって耐摩耗性や耐熱亀裂
性が一層改善されている。

【００４４】本発明例 No.5 とNo.8、9 との比較から、
Ｔｉ及びＺｒを含有することにより耐摩耗性が一層向上
している。

【００４５】さらに、本発明例 No.11のようにＣｏ、Ｔ
ｉ、Ｚｒが含有されることにより耐摩耗性、耐熱亀裂
性、耐肌荒れ性がバランス良く向上している。

【００４６】

【発明の効果】本発明の熱間圧延用ロ−ルによれば、優
れた耐熱亀裂性、耐肌荒れ性および耐摩耗性を有し、ロ
−ル寿命の延長、ロ−ル交換頻度の低減、ロ−ル原単位
の向上等を達成でき、その結果、圧延製品の品質向上や
高生産性を実現することができる。しかも、本ロ−ル
は、圧延鋼種に関係なく過酷な圧延条件においても優れ
た耐久性を発揮する。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】少なくともロールの外殻層の成分組成が、
重量％で、Ｃ：１〜３％、Ｓｉ：０．１〜２．５％、Ｍ
ｎ：０．１〜２％、Ｃｒ：２〜１０％、Ｍｏ：０．５〜
８％、Ｖ：２〜８％、Ｗ：０．５〜８％、Ｎｂ：０．２
〜５％、Ｂ：０．００５〜０．５％、Ｃｅ：０．００１
〜０．３％、Ｃｏ：０〜５％、残部Ｆｅ及び不可避的不
純物であることを特徴とする耐熱亀裂性、耐肌荒れ性及
び耐摩耗性に優れた熱間圧延用ロ−ル。
【請求項２】請求項１記載の成分組成に加えて、重量％
で、Ｔｉ、Ｚｒの１種または２種を合計で０．１〜２．
５％含有することを特徴とする耐熱亀裂性、耐肌荒れ性
及び耐摩耗性に優れた熱間圧延用ロール。