JPH09208486A - 血清アルブミンの部分構造を有する細胞障害物質 - Google Patents
血清アルブミンの部分構造を有する細胞障害物質Info
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- JPH09208486A JPH09208486A JP8020988A JP2098896A JPH09208486A JP H09208486 A JPH09208486 A JP H09208486A JP 8020988 A JP8020988 A JP 8020988A JP 2098896 A JP2098896 A JP 2098896A JP H09208486 A JPH09208486 A JP H09208486A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 新規で安全な抗腫瘍性物質を開発する。
【解決手段】 アルブミンまたはその断片と、場合によ
り緩衝液からなる抗腫瘍剤。
り緩衝液からなる抗腫瘍剤。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は腫瘍細胞に対する細
胞障害活性を有するタンパク質断片に関する。
胞障害活性を有するタンパク質断片に関する。
【0002】
【従来の技術】癌細胞は正常細胞に比べて急速な増殖を
することを特徴とする。その特徴を利用して、増殖性の
細胞に対して毒性をもつ種々の薬剤を用いる化学療法が
行われている。これらの薬剤は癌細胞の核酸合成を抑制
したり、代謝を阻害することにより増殖を阻止する。
することを特徴とする。その特徴を利用して、増殖性の
細胞に対して毒性をもつ種々の薬剤を用いる化学療法が
行われている。これらの薬剤は癌細胞の核酸合成を抑制
したり、代謝を阻害することにより増殖を阻止する。
【0003】現在使用されている抗癌剤には、シクロホ
スファミド、ブスルファン、チオテパなどのアルキル化
剤、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、5−フ
ルオロウラシル、シトシンアラビノシドなどの核酸合成
の拮抗阻害剤、アクチノマイシンD、ダウノマイシン、
アドリアマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシ
ン、ネオカルチノスタチンなどの抗生物質、およびビン
ブラスチン、ビンクリスチンなどの植物アルカロイドな
どがある。
スファミド、ブスルファン、チオテパなどのアルキル化
剤、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、5−フ
ルオロウラシル、シトシンアラビノシドなどの核酸合成
の拮抗阻害剤、アクチノマイシンD、ダウノマイシン、
アドリアマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシ
ン、ネオカルチノスタチンなどの抗生物質、およびビン
ブラスチン、ビンクリスチンなどの植物アルカロイドな
どがある。
【0004】しかしながら、これらの抗癌剤は抗菌剤に
比べて選択毒性が低く、したがって正常細胞にも作用す
るために、副作用が強く、その使用は著しく制約を受け
ている。
比べて選択毒性が低く、したがって正常細胞にも作用す
るために、副作用が強く、その使用は著しく制約を受け
ている。
【0005】また、これらの抗癌剤の他に、特定の癌の
栄養要求性の特徴を利用したものとしてアスパラギナー
ゼなどの酵素や、ホルモン依存性の組織の癌に対する性
ホルモンや副腎皮質ホルモンなども抗癌剤として用いら
れている。しかし、これらの薬剤もアレルギーなどの副
作用が強かったり、あるいはホルモン剤の場合には効果
が一過性であるなどの欠点を有している。
栄養要求性の特徴を利用したものとしてアスパラギナー
ゼなどの酵素や、ホルモン依存性の組織の癌に対する性
ホルモンや副腎皮質ホルモンなども抗癌剤として用いら
れている。しかし、これらの薬剤もアレルギーなどの副
作用が強かったり、あるいはホルモン剤の場合には効果
が一過性であるなどの欠点を有している。
【0006】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、上述した従
来技術の欠点を克服する新規な抗腫瘍性物質を開発する
ことにある。
来技術の欠点を克服する新規な抗腫瘍性物質を開発する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】血清アルブミンは、血液
から血球などの有形成分を除いた残りである血漿中のタ
ンパク質の約50%を占める主要なタンパク質で、主に
肝臓で合成される。血清アルブミンは、血液の浸透圧の
維持、イオン、脂肪酸などの運搬、末梢組織へのアミノ
酸供給などの働きをするとされている。しかしながら、
血清アルブミンは、このように血漿の主要なタンパク質
であるにもかかわらず、他の血液成分に比較して疾病へ
の関わりという点からは研究者の興味がより希薄のよう
である。
から血球などの有形成分を除いた残りである血漿中のタ
ンパク質の約50%を占める主要なタンパク質で、主に
肝臓で合成される。血清アルブミンは、血液の浸透圧の
維持、イオン、脂肪酸などの運搬、末梢組織へのアミノ
酸供給などの働きをするとされている。しかしながら、
血清アルブミンは、このように血漿の主要なタンパク質
であるにもかかわらず、他の血液成分に比較して疾病へ
の関わりという点からは研究者の興味がより希薄のよう
である。
【0008】一方、近年、遺伝子配列の変化が生物の進
化のあとを物語るものとして注目されている。遺伝子配
列の変化は、ランダムな核酸の置換、付加あるいは欠損
が原因で、長い年月の間に一定の割合で観察されるが、
生体の機能に有用なタンパク質をコードする遺伝子配列
は保存される傾向にある。したがって、現存するタンパ
ク質の配列には、生体の生存に関わる何らかの意味ある
情報が刻まれていると推測される。
化のあとを物語るものとして注目されている。遺伝子配
列の変化は、ランダムな核酸の置換、付加あるいは欠損
が原因で、長い年月の間に一定の割合で観察されるが、
生体の機能に有用なタンパク質をコードする遺伝子配列
は保存される傾向にある。したがって、現存するタンパ
ク質の配列には、生体の生存に関わる何らかの意味ある
情報が刻まれていると推測される。
【0009】タンパク質は、20種のアミノ酸のランダ
ムな配列から成っているが、数種のタンパク質のアミノ
酸配列を分析すると、アミノ酸同士にも親和性があるも
のとないものが観察される。最近の研究によると、8種
類の相互に無関係なタンパク質のアミノ酸配列における
隣り合う2つのアミノ酸を調べた結果、15ジペプチド
ごとにホモジペプチドが1つ現れ、同種のアミノ酸のジ
ペプチドは出現頻度がタンパク質の由来に無関係に高い
ことが明らかとなった(大野 乾、実験医学、12(3):89
-99, 1994)。一方、親和性の低い組み合わせの1つと
して、アルギニン−アスパラギン酸の組み合わせが挙げ
られ、実際の出現頻度はアミノ酸組成から計算した出現
期待頻度の1/3以下であった。
ムな配列から成っているが、数種のタンパク質のアミノ
酸配列を分析すると、アミノ酸同士にも親和性があるも
のとないものが観察される。最近の研究によると、8種
類の相互に無関係なタンパク質のアミノ酸配列における
隣り合う2つのアミノ酸を調べた結果、15ジペプチド
ごとにホモジペプチドが1つ現れ、同種のアミノ酸のジ
ペプチドは出現頻度がタンパク質の由来に無関係に高い
ことが明らかとなった(大野 乾、実験医学、12(3):89
-99, 1994)。一方、親和性の低い組み合わせの1つと
して、アルギニン−アスパラギン酸の組み合わせが挙げ
られ、実際の出現頻度はアミノ酸組成から計算した出現
期待頻度の1/3以下であった。
【0010】血清アルブミンのアミノ酸配列を調べる
と、この極めて稀なアルギニン−アスパラギン酸配列
が、ヒトでは24−25位の位置に存在し、しかもこの
配列はヒト、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリな
どに共通に観察される。このことは、この親和性の低い
(すなわち結合が切断され易い)配列が切断されたあと
のアルブミン断片に、何らかの生理的に重要な意味があ
ると推測された。
と、この極めて稀なアルギニン−アスパラギン酸配列
が、ヒトでは24−25位の位置に存在し、しかもこの
配列はヒト、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリな
どに共通に観察される。このことは、この親和性の低い
(すなわち結合が切断され易い)配列が切断されたあと
のアルブミン断片に、何らかの生理的に重要な意味があ
ると推測された。
【0011】本発明者は、以上のような事実および植物
レクチン(リシンのようなアルブミン・ファミリーに属
するタンパク質を含む)に抗腫瘍活性があるとの報告
(Dietrich, JB et al., Anti-Cancer Drugs, 3:507-51
1, 1992)に基づいて、アルブミン関連タンパク質の抗
腫瘍活性を検討したところ、アルブミンまたはその断片
が腫瘍細胞に対して顕著な細胞障害性を有することを見
いだして本発明を完成した。
レクチン(リシンのようなアルブミン・ファミリーに属
するタンパク質を含む)に抗腫瘍活性があるとの報告
(Dietrich, JB et al., Anti-Cancer Drugs, 3:507-51
1, 1992)に基づいて、アルブミン関連タンパク質の抗
腫瘍活性を検討したところ、アルブミンまたはその断片
が腫瘍細胞に対して顕著な細胞障害性を有することを見
いだして本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明は、アルブミンまたはそ
の断片と、場合により緩衝液からなる抗腫瘍剤を提供す
る。
の断片と、場合により緩衝液からなる抗腫瘍剤を提供す
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明で使用するアルブミンは、
動物の細胞あるいは体液中に含まれる可溶性タンパク質
であり、ヒトまたはウシの血漿から得られるヒトアルブ
ミンまたはウシアルブミンが好ましく、このようなアル
ブミンは市販品(例えばSIGMA社製)として入手し
うる。
動物の細胞あるいは体液中に含まれる可溶性タンパク質
であり、ヒトまたはウシの血漿から得られるヒトアルブ
ミンまたはウシアルブミンが好ましく、このようなアル
ブミンは市販品(例えばSIGMA社製)として入手し
うる。
【0014】また、アルブミン断片としては、アルブミ
ンの分子量30,000以下の分画が好ましく、アルブ
ミンの分子量10,000以下の分画がより好ましい。
ンの分子量30,000以下の分画が好ましく、アルブ
ミンの分子量10,000以下の分画がより好ましい。
【0015】さらにウシ血清アルブミンの公知のアミノ
酸配列を基にして合成したペプチドも顕著な細胞障害性
を有することが明らかとなり、これらも本発明のアルブ
ミン断片に含まれる。ペプチドは1〜607アミノ酸か
らなるものが好ましく、1〜435アミノ酸からなるも
のがより好ましく、1〜20アミノ酸からなるものが最
も好ましい。このようなペプチドの例としては、例えば
配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列をもつペプチド
が挙げられる。なお、配列番号1に示すアミノ酸配列を
有するペプチドは天然ウシアルブミンの部分ペプチド
(アミノ酸残基25〜44)であり、このペプチドは上
述したように、ウシアルブミンの24−25位にあるア
ルギニン−アスパラギン酸の間で切断されたアスパラギ
ン酸を含む20アミノ酸からなるペプチドである。これ
らの天然アルブミン断片のアミノ酸配列の一部を欠失、
付加あるいは置換したペプチドも本発明の示す細胞障害
活性を有する限り本発明のアルブミン断片に含まれる。
酸配列を基にして合成したペプチドも顕著な細胞障害性
を有することが明らかとなり、これらも本発明のアルブ
ミン断片に含まれる。ペプチドは1〜607アミノ酸か
らなるものが好ましく、1〜435アミノ酸からなるも
のがより好ましく、1〜20アミノ酸からなるものが最
も好ましい。このようなペプチドの例としては、例えば
配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列をもつペプチド
が挙げられる。なお、配列番号1に示すアミノ酸配列を
有するペプチドは天然ウシアルブミンの部分ペプチド
(アミノ酸残基25〜44)であり、このペプチドは上
述したように、ウシアルブミンの24−25位にあるア
ルギニン−アスパラギン酸の間で切断されたアスパラギ
ン酸を含む20アミノ酸からなるペプチドである。これ
らの天然アルブミン断片のアミノ酸配列の一部を欠失、
付加あるいは置換したペプチドも本発明の示す細胞障害
活性を有する限り本発明のアルブミン断片に含まれる。
【0016】本発明において、アルブミンまたはその断
片とともに用いられる緩衝液としては、リン酸緩衝液ま
たはトリス−塩酸緩衝液が好ましいが、これに限定され
ない。緩衝液のpHは6.7〜9.0が好ましい。
片とともに用いられる緩衝液としては、リン酸緩衝液ま
たはトリス−塩酸緩衝液が好ましいが、これに限定され
ない。緩衝液のpHは6.7〜9.0が好ましい。
【0017】本発明の抗腫瘍剤は、上記アルブミンまた
はその断片を緩衝液に溶解して使用する。緩衝液1ml
に対してアルブミンまたはその断片を3〜10mgで溶
解するのが好ましい。
はその断片を緩衝液に溶解して使用する。緩衝液1ml
に対してアルブミンまたはその断片を3〜10mgで溶
解するのが好ましい。
【0018】本発明の抗腫瘍剤は腫瘍細胞FM3Aに対
してインビトロで顕著な細胞障害性を示した。緩衝液を
用いずに生理食塩水で処理したウシアルブミンではこの
ような細胞障害性は観察されなかった。しかしながら、
後述する実施例5および6に示すように、短いペプチド
を用いた場合には、緩衝液を加えなくても細胞障害活性
を示した。この結果は、緩衝液がアルギニン−アスパラ
ギン酸間の切断に必要であることを示唆するものである
が、本発明の範囲はこのような作用機構には限定されな
い。
してインビトロで顕著な細胞障害性を示した。緩衝液を
用いずに生理食塩水で処理したウシアルブミンではこの
ような細胞障害性は観察されなかった。しかしながら、
後述する実施例5および6に示すように、短いペプチド
を用いた場合には、緩衝液を加えなくても細胞障害活性
を示した。この結果は、緩衝液がアルギニン−アスパラ
ギン酸間の切断に必要であることを示唆するものである
が、本発明の範囲はこのような作用機構には限定されな
い。
【0019】なお、細胞障害性および生存率を測定する
には、試料を各種濃度で腫瘍細胞に添加し、17時間ま
たは24時間後に測定した。生細胞と死細胞の判別には
トリパンブルー染色液(0.4%)を用いて、非染色細
胞は生細胞と、染色細胞は死細胞と判別した。また、細
胞障害性(阻害率)の算出には以下の計算式を用いた。
には、試料を各種濃度で腫瘍細胞に添加し、17時間ま
たは24時間後に測定した。生細胞と死細胞の判別には
トリパンブルー染色液(0.4%)を用いて、非染色細
胞は生細胞と、染色細胞は死細胞と判別した。また、細
胞障害性(阻害率)の算出には以下の計算式を用いた。
【0020】
【化1】
【0021】本発明の抗腫瘍剤は上述した濃度で緩衝液
中にアルブミンまたはその断片を溶解して調製すること
ができる。あるいは、緩衝液とアルブミンまたはその断
片とを別々の容器に封入し、投与時に溶解してもよい。
本発明の抗腫瘍剤は注射剤として、静脈内、筋肉内、皮
下投与することができる。本発明の抗腫瘍剤の投与量
は、治療すべき腫瘍の種類、重症度、患者の年齢、体重
などにより変更でき、具体的には臨床医の判断により決
定する。
中にアルブミンまたはその断片を溶解して調製すること
ができる。あるいは、緩衝液とアルブミンまたはその断
片とを別々の容器に封入し、投与時に溶解してもよい。
本発明の抗腫瘍剤は注射剤として、静脈内、筋肉内、皮
下投与することができる。本発明の抗腫瘍剤の投与量
は、治療すべき腫瘍の種類、重症度、患者の年齢、体重
などにより変更でき、具体的には臨床医の判断により決
定する。
【0022】以下に本発明を実施例によりさらに詳しく
説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。
説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0023】
【実施例】実施例において使用したウシアルブミンおよ
びヒトアルブミンは以下のものである。
びヒトアルブミンは以下のものである。
【0024】ウシアルブミンはSIGMA社製のA−9
306、Lot53H0236を用いた。これはニュー
ジーランド製ウシ血漿を塩析にて分画して得られる画分
Vであり、最低99%の純度を有し、エンドトキシンの
含量は少なく(0.1ng/mg以下)、実質的にグロ
ブリンを含まない。また、窒素含量は15.3%であ
り、水含量は4.9%である。
306、Lot53H0236を用いた。これはニュー
ジーランド製ウシ血漿を塩析にて分画して得られる画分
Vであり、最低99%の純度を有し、エンドトキシンの
含量は少なく(0.1ng/mg以下)、実質的にグロ
ブリンを含まない。また、窒素含量は15.3%であ
り、水含量は4.9%である。
【0025】ヒトアルブミンはSIGMA社製のA−3
782、Lot32H9300を用いた。これは実質的
に脂肪酸を含まず(脂肪酸含量:約0.005%)、ま
た実質的にグロブリンを含まない純度約99%の凍結乾
燥粉末である。
782、Lot32H9300を用いた。これは実質的
に脂肪酸を含まず(脂肪酸含量:約0.005%)、ま
た実質的にグロブリンを含まない純度約99%の凍結乾
燥粉末である。
【0026】特記しない限り、アルブミンは各pHの各
緩衝液に10mg/mlで溶解して使用した。
緩衝液に10mg/mlで溶解して使用した。
【0027】また、腫瘍細胞としてはFM3AまたはK
562細胞を用いた。これらの細胞は東北大学歯学部微
生物学教室から恵与されたものを使用した。
562細胞を用いた。これらの細胞は東北大学歯学部微
生物学教室から恵与されたものを使用した。
【0028】なお、実験はすべて3回実施し、その平均
で表示した。
で表示した。
【0029】実施例1:リン酸緩衝液処理ウシアルブミ
ンの細胞障害性 pH8.0のリン酸緩衝液で処理したウシアルブミン1
0mg/mlを50%、25%濃度で腫瘍細胞に加え、
細胞障害性を検討した。陰性対照として培地(RPMI
1640)のみを、陽性対照として生理食塩水を用いて
同じ試験を行った。得られた結果を表1および図1に示
す。
ンの細胞障害性 pH8.0のリン酸緩衝液で処理したウシアルブミン1
0mg/mlを50%、25%濃度で腫瘍細胞に加え、
細胞障害性を検討した。陰性対照として培地(RPMI
1640)のみを、陽性対照として生理食塩水を用いて
同じ試験を行った。得られた結果を表1および図1に示
す。
【0030】
【表1】 生細胞数(2×104) 阻害率(%) 培地のみ 9.5 − 生理食塩水+ 50%アルブミン 12 0 25%アルブミン 8.5 0 リン酸緩衝液+ 50%アルブミン 5 58 25%アルブミン 7 18
【0031】これらの結果から明らかなように、リン酸
緩衝液で処理したウシアルブミンは50%および25%
濃度でそれぞれ58%および18%の細胞障害性を示し
た。生理食塩水で処理したウシアルブミンは細胞障害性
を全く示さなかった。
緩衝液で処理したウシアルブミンは50%および25%
濃度でそれぞれ58%および18%の細胞障害性を示し
た。生理食塩水で処理したウシアルブミンは細胞障害性
を全く示さなかった。
【0032】実施例2:アルブミン各分画の細胞障害性 ウシアルブミンをウルトラフリーメンブレンフィルトレ
ーションシステムによって分子量30,000以上の分
画(S1)と、分子量30,000以下で10,000
以上の分画(S2)に分けてその細胞障害性を検討し
た。各分画(濃度50%)をpH8.2のリン酸緩衝液
で処理し、蒸留水で洗浄した。対照として、FM3A/
R細胞3×104を5%FCS(ウシ胎児血清)を含む
RPMI1640で培養したものを用いた。得られた結
果を表2および図2に示す。
ーションシステムによって分子量30,000以上の分
画(S1)と、分子量30,000以下で10,000
以上の分画(S2)に分けてその細胞障害性を検討し
た。各分画(濃度50%)をpH8.2のリン酸緩衝液
で処理し、蒸留水で洗浄した。対照として、FM3A/
R細胞3×104を5%FCS(ウシ胎児血清)を含む
RPMI1640で培養したものを用いた。得られた結
果を表2および図2に示す。
【0033】
【表2】 生細胞数(1×104) 阻害率(%) 対照 29 − S1 19 34 S2 15 48
【0034】いずれの分画にも細胞障害性が認められた
が、30,000以下の分画の方がより強い細胞障害性
を示した。
が、30,000以下の分画の方がより強い細胞障害性
を示した。
【0035】実施例3:トリス−塩酸緩衝液処理ウシア
ルブミンおよびヒトアルブミンの細胞障害性 腫瘍細胞としてK562細胞を用いた。対照として腫瘍
細胞を5−10%FCSを含むRPMI1640培地で
培養したものを用いた。これに、ウシアルブミンまたは
ヒトアルブミン(10mg/ml)を50%濃度で加え
たもの、さらに0.2M Tris−HCl(pH8.
2)で処理したウシアルブミンおよびヒトアルブミン
(それぞれ10mg/ml)を50%濃度で加えたもの
を調製し、その細胞障害性を検討した。陽性対照として
50% Tris−HCl(pH8.2)のみ、および
25% Tris−HCl(pH8.2)のみを用いて
同じ試験を行った。得られた結果を表3および図3に示
す。なお、B.alb.はウシアルブミンを、H.al
b.はヒトアルブミンを意味する。
ルブミンおよびヒトアルブミンの細胞障害性 腫瘍細胞としてK562細胞を用いた。対照として腫瘍
細胞を5−10%FCSを含むRPMI1640培地で
培養したものを用いた。これに、ウシアルブミンまたは
ヒトアルブミン(10mg/ml)を50%濃度で加え
たもの、さらに0.2M Tris−HCl(pH8.
2)で処理したウシアルブミンおよびヒトアルブミン
(それぞれ10mg/ml)を50%濃度で加えたもの
を調製し、その細胞障害性を検討した。陽性対照として
50% Tris−HCl(pH8.2)のみ、および
25% Tris−HCl(pH8.2)のみを用いて
同じ試験を行った。得られた結果を表3および図3に示
す。なお、B.alb.はウシアルブミンを、H.al
b.はヒトアルブミンを意味する。
【0036】
【表3】 生細胞数(2×104) 阻害率(%) FCS添加RPMI1640(1) 9 − (1)+B.alb. 14 0 (1)+B.alb.+Tris-HCl 5 44 (1)+H.alb. 11 0 (1)+H.alb.+Tris-HCl 6 33 50% Tris-HClのみ 9 0 25% Tris-HClのみ 10 0
【0037】これらの結果から、ウシアルブミンおよび
ヒトアルブミンはいずれもTris−HClで処理した
場合にのみ細胞障害性を示すことが明らかとなった。
ヒトアルブミンはいずれもTris−HClで処理した
場合にのみ細胞障害性を示すことが明らかとなった。
【0038】実施例4:各分画および各pHにおけるト
リス−塩酸緩衝液処理ウシアルブミンの細胞障害性 ウシアルブミンの分子量による分画と緩衝液のpHとが
細胞障害性に及ぼす影響を腫瘍細胞FM3Aを用いて同
時に検討した。
リス−塩酸緩衝液処理ウシアルブミンの細胞障害性 ウシアルブミンの分子量による分画と緩衝液のpHとが
細胞障害性に及ぼす影響を腫瘍細胞FM3Aを用いて同
時に検討した。
【0039】ウシアルブミンをウルトラフリーメンブレ
ンフィルトレーションシステムによって分子量10,0
00以上の分画と、分子量10,000以下の分画に分
け、各分画(濃度50%)をpH7.0〜9.0の各種
pHのTris−HCl緩衝液で処理し、細胞障害性を
検討した。対照として培地(RPMI1640)のみを
用いた。得られた結果を表4および図4に示す。
ンフィルトレーションシステムによって分子量10,0
00以上の分画と、分子量10,000以下の分画に分
け、各分画(濃度50%)をpH7.0〜9.0の各種
pHのTris−HCl緩衝液で処理し、細胞障害性を
検討した。対照として培地(RPMI1640)のみを
用いた。得られた結果を表4および図4に示す。
【0040】
【表4】pH(分子量) 生細胞数(1×104) 阻害率(%) 培養17時間後のpH 対照 (10,000以上) 33 − 6.6 (10,000以下) 33 − 6.6 pH7.0(10,000以上) 19 42 6.5 (10,000以下) 3.5 89 7 pH7.4(10,000以上) 26 21 6.5 (10,000以下) 8 76 7.1 pH7.8(10,000以上) 22 33 6.5 (10,000以下) 9.5 71 7.3 pH8.2(10,000以上) 22 33 6.5 (10,000以下) 5 85 7.4 pH8.6(10,000以上) 21 36 6.5 (10,000以下) 5.5 83 7.6 pH9.0(10,000以上) 23 30 7.2 (10,000以下) 6 82 7.7
【0041】いずれのpHにおいても細胞障害性が観察
されたが、いずれのpHにおいても分子量10,000
以下の分画では71〜89%と極めて高い細胞障害性
(阻害率)が観察され、一方分子量10,000以上の
分画の細胞障害性は21〜42%であった。
されたが、いずれのpHにおいても分子量10,000
以下の分画では71〜89%と極めて高い細胞障害性
(阻害率)が観察され、一方分子量10,000以上の
分画の細胞障害性は21〜42%であった。
【0042】実施例5:合成ペプチドの細胞障害性(F
CS不含RPMI1640培地) 腫瘍細胞FM3Aを用いて合成ペプチドの細胞障害性を
検討した。
CS不含RPMI1640培地) 腫瘍細胞FM3Aを用いて合成ペプチドの細胞障害性を
検討した。
【0043】配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有す
るペプチドを合成した。このペプチドは天然ウシアルブ
ミンのアミノ酸配列の一部である。
るペプチドを合成した。このペプチドは天然ウシアルブ
ミンのアミノ酸配列の一部である。
【0044】腫瘍細胞4×104/ウエルに培地(FC
S不含RPMI1640)のみ、ペプチド(0.25m
g/ウエル)添加培地、およびペプチド(0.12mg
/ウエル)添加培地(※この実験では緩衝液は使用して
いないのでしょうか?)を加えて細胞障害性を検討し
た。得られた結果を表5および図5に示す。
S不含RPMI1640)のみ、ペプチド(0.25m
g/ウエル)添加培地、およびペプチド(0.12mg
/ウエル)添加培地(※この実験では緩衝液は使用して
いないのでしょうか?)を加えて細胞障害性を検討し
た。得られた結果を表5および図5に示す。
【0045】
【表5】 生細胞数(1×104) 阻害率(%) 培養17時間後のpH 培地のみ 3.2 − 7.7 0.25mgペプチド 0.5 84 7.40.12mgペプチド 1 69 7.3
【0046】FCS不含RPMI1640で培養した場
合には、いずれの用量においても極めて強い細胞障害性
(0.25mgで84%、0.12mgで69%)が観
察された。
合には、いずれの用量においても極めて強い細胞障害性
(0.25mgで84%、0.12mgで69%)が観
察された。
【0047】実施例6:合成ペプチドの細胞障害性(F
CS含有RPMI1640培地) 細胞障害性に対する培地の影響を検討するために、実施
例5と同じ実験を10%FCS含有RPMI1640培
地を用いて行った。得られた結果を表6および図6に示
す。
CS含有RPMI1640培地) 細胞障害性に対する培地の影響を検討するために、実施
例5と同じ実験を10%FCS含有RPMI1640培
地を用いて行った。得られた結果を表6および図6に示
す。
【0048】
【表6】 生細胞数(1×104) 阻害率(%) 培地のみ 10.4 − 0.25mgペプチド 5.6 46 0.12mgペプチド 7.6 27
【0049】10%FCS含有RPMI1640を培地
に用いた場合には、FCS不含培地に比べて細胞障害性
は低下したが、なお0.25mgで46%、0.12m
gで27%の細胞障害性を示した。
に用いた場合には、FCS不含培地に比べて細胞障害性
は低下したが、なお0.25mgで46%、0.12m
gで27%の細胞障害性を示した。
【0050】
【発明の効果】本発明のアルブミンまたはその断片と緩
衝液からなる抗腫瘍剤は、腫瘍細胞に対して顕著な細胞
障害性を示した。
衝液からなる抗腫瘍剤は、腫瘍細胞に対して顕著な細胞
障害性を示した。
【0051】アルブミンは動物体内に多量に存在するタ
ンパク質であるところから、本発明の抗腫瘍剤が正常細
胞に対して細胞障害性を示さず、腫瘍細胞に対してのみ
特異的に細胞障害性を示す安全な抗腫瘍剤たりうること
が期待される。
ンパク質であるところから、本発明の抗腫瘍剤が正常細
胞に対して細胞障害性を示さず、腫瘍細胞に対してのみ
特異的に細胞障害性を示す安全な抗腫瘍剤たりうること
が期待される。
【0052】また、アルブミンは比較的大量かつ安価に
入手しうるので、経済的にもおおいに期待できる抗腫瘍
剤である。
入手しうるので、経済的にもおおいに期待できる抗腫瘍
剤である。
【0053】
【0054】配列番号:1 配列の長さ:20 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド
【図1】リン酸緩衝液で処理したウシアルブミンの細胞
障害性を示す。
障害性を示す。
【図2】ウシアルブミン各分画の細胞障害性を示す。
【図3】トリス−塩酸緩衝液で処理したウシアルブミン
およびヒトアルブミンの細胞障害性を示す。
およびヒトアルブミンの細胞障害性を示す。
【図4】各分画および各pHにおけるトリス−塩酸緩衝
液処理ウシアルブミンの細胞障害性を示す。
液処理ウシアルブミンの細胞障害性を示す。
【図5】合成ペプチドの細胞障害性(FCS不含RPM
I1640培地)を示す。
I1640培地)を示す。
【図6】合成ペプチドの細胞障害性(FCS含有RPM
I1640培地)を示す。
I1640培地)を示す。
Claims (6)
- 【請求項1】 アルブミンまたはその断片と、場合によ
り緩衝液からなる抗腫瘍剤。 - 【請求項2】 アルブミンがヒトアルブミンまたはウシ
アルブミンである請求項1記載の抗腫瘍剤。 - 【請求項3】 緩衝液がリン酸緩衝液またはトリス−塩
酸緩衝液である請求項1記載の抗腫瘍剤。 - 【請求項4】 アルブミン断片がアルブミンの分子量3
0,000以下の分画である請求項1記載の抗腫瘍剤。 - 【請求項5】 アルブミン断片がアルブミンの分子量1
0,000以下の分画である請求項4記載の抗腫瘍剤。 - 【請求項6】 アルブミン断片が配列表の配列番号1に
示すアミノ酸配列を有するペプチドである請求項5記載
の抗腫瘍剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8020988A JPH09208486A (ja) | 1996-02-07 | 1996-02-07 | 血清アルブミンの部分構造を有する細胞障害物質 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8020988A JPH09208486A (ja) | 1996-02-07 | 1996-02-07 | 血清アルブミンの部分構造を有する細胞障害物質 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09208486A true JPH09208486A (ja) | 1997-08-12 |
Family
ID=12042526
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8020988A Pending JPH09208486A (ja) | 1996-02-07 | 1996-02-07 | 血清アルブミンの部分構造を有する細胞障害物質 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09208486A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020502203A (ja) * | 2016-12-21 | 2020-01-23 | プロメティック・ファーマ・エスエムティ・リミテッドPrometic Pharma Smt Limited | 上皮間葉転換を予防または最小限にする方法及び組成物 |
-
1996
- 1996-02-07 JP JP8020988A patent/JPH09208486A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020502203A (ja) * | 2016-12-21 | 2020-01-23 | プロメティック・ファーマ・エスエムティ・リミテッドPrometic Pharma Smt Limited | 上皮間葉転換を予防または最小限にする方法及び組成物 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060413 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20060801 |