JPH09198037A - 楽器用鍵盤装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 楽器用鍵盤装置において、鍵タッチ感及び作
動特性を良好にする。 【構成】 複数の鍵の下方位置にてフレーム１０の回動
支持部１５に揺動レバー４０を揺動可能に支持させ、揺
動レバー４０の前端部と鍵２０の前端に設けた駆動部２
３とを係合させて、揺動レバー４０の自重により鍵２０
の前端部２２を上方に付勢する。揺動レバー４０の後端
部の下方及び上方への変位をフレーム１０に固着したス
トッパ５６，５７により規制し、鍵２０の前端部の上方
及び下方への変位を規制する。鍵２０の駆動部２３の下
端に係合片２４を設けるとともに同係合片２４に弾性部
材２５を組み付け、揺動レバー４０の後端部に上下二股
に形成した脚部４１ｂ，４１ｃを設け、脚部４１ｂ，４
１ｃで弾性部材２５を挟み込んで弾性部材２５を揺動レ
バー４０の前後方向へ摺動可能として、係合片２４と脚
部４１ｂ，４１ｃとを上下方向に相互に力が伝達される
ように係合させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電子ピアノ、電子
オルガンなどの鍵盤楽器に用いるのに適した楽器用鍵盤
装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、例えば特開昭６３−１０３２
９８号公報に示されているように、鍵を後端にてフレー
ムに上下方向に揺動可能に支持させるとともに、鍵の後
端より若干手前側であって鍵の下方位置にて揺動レバー
の後端をフレームに上下方向に揺動可能に支持させてお
き、押鍵時に揺動レバーを連動させて同レバーに錘の機
能を発揮させることにより、ピアノに似た鍵タッチ感を
得ようとする楽器用鍵盤装置は知られている。

【０００３】そして、この楽器用鍵盤装置においては、
後端にてフレームの後端部に係合するとともに上方に反
り返るように板ばねを設けて、同板ばねの中間部上面を
鍵の後端より手前側位置の下面に当接させて鍵の前端側
を常時上方に付勢するとともに、同板ばねの前端を揺動
レバーの支点よりも後方位置に係止させて揺動レバーの
前端側を常時上方に付勢するようにしている。さらに、
鍵前端側の下方への揺動時には鍵の中間部下面が揺動レ
バーの支点より手間側位置の上面に当接するようにして
あるとともに、鍵及び揺動レバーの前端部下方位置には
フレームの前端部に固定した鍵ストッパ及びレバースト
ッパをそれぞれ設けてあり、押鍵に際しては、鍵及び揺
動レバーの両前端側が共に板ばねの付勢力に抗して下方
に移動し、鍵及び揺動レバーの各前端部下面と鍵ストッ
パ及びレバーストッパとの当接により押鍵が終了され
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の装
置にあっては、演奏に際して鍵を大きな力で衝撃的に押
鍵すると、鍵と揺動レバーは鍵の中間部下面と揺動レバ
ーの上面との当接によって係合しているだけであるの
で、揺動レバーが鍵とは遊離して揺動する。この場合、
揺動レバーはレバーストッパに衝突し、その後にバウン
ドして鍵の下面に再衝突する場合があり、鍵タッチ感が
常に良好に保たれないという問題がある。

【０００５】また、フレーム、鍵、鍵ストッパ、揺動レ
バー、レバーストッパなどの各部品の製造時の寸法のば
らつき、同各部品の経年変化により、押鍵終了時に鍵ス
トッパにより規制される鍵の変位量と、レバーストッパ
により規制される揺動レバーの変位量との間にずれが生
じる場合がある。この場合、揺動レバーの変位がレバー
ストッパにより規制される前に、鍵の変位が鍵ストッパ
により規制されると、揺動レバーは鍵の下方にて振動す
る場合があり、これにより、鍵タッチ感が良好でなくな
るという問題がある。また、鍵の変位が鍵ストッパによ
り規制される前に、揺動レバーの変位がレバーストッパ
により規制されると、鍵前端部はさらに下方に変位可能
であるので、鍵がさらに押鍵されると、鍵の前側部分が
撓み、この撓みにより鍵タッチ感が良好でなくなるとい
う問題もある。

【０００６】本発明は上記問題点に対処するためになさ
れたもので、その目的は、常に良好な鍵タッチ感が得ら
れるようにした楽器用鍵盤装置を提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段及びその効果】上記目的を
達成するために、本発明の構成上の特徴は、横方向に並
設された複数の鍵と、複数の鍵の下方に配設されて各鍵
をその後端部にて上下方向にそれぞれ揺動可能に支持さ
せてなるフレームと、複数の鍵の下方に長手方向を各鍵
の前後方向にして配置されるとともに中間部にてフレー
ムに揺動可能に支持されてなり前端部にて各鍵に係合し
て自重により各鍵の前端部を上方にそれぞれ付勢する複
数の揺動レバーと、フレームに上下方向に所定間隔を設
けて組み付けられ複数の揺動レバーの後端部の下方及び
上方への変位をそれぞれ規制する第１及び第２ストッパ
とを備えた楽器用鍵盤装置であって、複数の鍵にそれら
の前部分下面から下方に一体的に延設した駆動部をそれ
ぞれ設け、駆動部の下端部を揺動レバーの長手方向へ摺
動可能として同駆動部の下端部と同揺動レバーの前端部
とを上下方向に相互に力が伝達されるように係合させた
ことにある。

【０００８】このような構成により、押鍵前には、揺動
レバーはその自重により鍵の前端部を上方に付勢してい
るとともに、第１ストッパが揺動レバーの後端部の下方
への変位を禁止しているので、鍵の前端部上面は所定の
高さ位置に設定されている。そして、押鍵時に、鍵の前
端部上面が下方へ押されると、同前端部は揺動レバーの
慣性モーメントに抗して下方へ変位するとともに、揺動
レバーの後端部は上方へ変位して第２ストッパに当接し
て押鍵が終了する。この場合、押鍵に対する反力は揺動
レバーの慣性モーメントにより与えられるので、演奏者
は自然楽器であるピアノと同種の良好な鍵タッチ感を得
ることができる。

【０００９】また、鍵の駆動部の下端部は揺動レバーに
対して長手方向へ摺動可能かつ同揺動レバーの前端部と
の間で上下方向に相互に力が伝達されるように係合され
ているので、鍵と揺動レバーは常に一体的に揺動する。
そして、この押鍵による揺動レバーの変位は第２ストッ
パにより規制され、前記揺動レバーの変位規制に起因し
て鍵の変位が間接的に規制されて、押鍵による鍵の前端
部の下方への変位が終了する。したがって、押鍵時に
も、押鍵終了時にも、揺動レバーが鍵と遊離することが
ない。これにより、各部品の製造時の寸法のばらつきが
あっても、同各部品の経年変化があっても、揺動レバー
がバウンドしたり、振動したりすることがなくなり、常
に良好な鍵タッチ感を得ることができる。さらに、鍵は
その前部分下面に設けた駆動部により揺動レバーと係合
しており、押鍵終了時における鍵の変位は押鍵位置近傍
の鍵の前部分下面を介して規制されるので、鍵及び揺動
レバーの変位規制後に鍵をさらに押鍵しても、鍵の前側
部分は撓み難く、同撓みによる鍵タッチ感の悪化を避け
ることができる。

【００１０】また、本発明の他の構成上の特徴は、鍵の
駆動部の下端に後方へ突出した係合片を設けるととも
に、揺動レバーの前端部分に所定の隙間を隔てて上下方
向に二股に分けて形成した一対の脚部を設け、前記一対
の脚部間に前記係合片を係合させるようにしたことにあ
る。これによれば、簡単な構成で鍵駆動部と揺動レバー
前端部との間で上下方向の力の伝達が可能になる。

【００１１】また、本発明の他の構成上の特徴は、前記
係合片に前記一対の脚部に当接する弾性部材を組み付け
たことにある。これによれば、揺動レバーの第２ストッ
パ当接時における振動が鍵に伝わり難くなるとともに、
前記係合片と揺動レバーとの接触による異音の発生が防
止される。

【００１２】また、本発明の他の構成上の特徴は、前記
弾性部材に潤滑剤を塗布するようにしたことにある。こ
れによれば、係合片と揺動レバーの前端部の間の摺動が
円滑になり、前記異音の発生がより良好に防止されると
ともに揺動レバーの揺動も安定する。

【００１３】また、本発明の他の構成上の特徴は、前記
一対の脚部にそれぞれ当接する前記弾性部材の上面及び
下面を断面円弧状に形成したことにある。これによれ
ば、揺動レバーが揺動しても係合片と揺動レバーの前端
部との間に介装される弾性部材の厚さが一定に保たれる
ので、係合片と揺動レバーの前端部の間の摺動が円滑に
なるとともに、揺動レバーによる押鍵反力が常に適正に
保たれる。

【００１４】また、本発明の他の構成上の特徴は、揺動
レバーの前部分を合成樹脂製のレバー基部で構成すると
ともに、同揺動レバーの後部分を前記レバー基部に固着
した金属製の錘で構成し、レバー基部を前記フレームに
揺動可能に組み付けるとともに、前記錘の後端部の上下
方向の変位が前記第１及び第２ストッパの間に規制され
るようにしたことにある。これによれば、鍵の前端部を
上方へ付勢するための揺動レバーが簡単に構成され、か
つアウトサート成形などにより簡単に製造されるように
なる。また、錘を調整することにより、揺動レバーによ
る鍵前端部の上方への付勢力を簡単に調整できる。

【００１５】また、本発明の他の構成上の特徴は、前記
錘の重さを鍵の種類に応じて異ならせたことにある。こ
れによれば、揺動レバーによる鍵前端部の上方への付勢
力を鍵毎、鍵域毎などに簡単に異ならせることができ
る。例えば、高音鍵になるにしたがって錘を軽くするこ
とにより、低音鍵に対しては質量感のある鍵タッチで演
奏でき、また高音鍵になるにしたがって軽い鍵タッチの
軽やかな鍵演奏を楽しむことができるようになる。

【００１６】また、本発明の他の構成上の特徴は、揺動
レバーの下面にスイッチ駆動部を設け、前記フレームに
固定したプリント基盤上に設けたスイッチを駆動するよ
うにしたことにある。これによれば、本発明に係る楽器
用鍵盤装置を電子楽器に適用した場合に、楽音の発生な
どを指示するためのスイッチを備えたプリント基盤をフ
レームと一体的に構成することができ、同鍵盤装置の電
子楽器に対する組み込みが容易になる。

【００１７】さらに、本発明の他の構成上の特徴は、白
鍵の駆動部を鍵の前部分からほぼ垂直に下方に延設し、
黒鍵の駆動部を鍵の前部分からほぼ垂直に下方に延設す
るとともに前方に曲げて延設したことにある。これによ
れば、白鍵と黒鍵とで各揺動レバーの形状を大きく異な
らせることなく、また白鍵位置及び黒鍵位置におけるフ
レームの形状を大きく異ならせなくても、白鍵と黒鍵と
で揺動レバーによる鍵前端部の上方への付勢力をほぼ同
様に保つことができ、揺動レバー及びフレームの製造が
簡単になる。

【００１８】

【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態を図面
を用いて説明すると、図１は右端の黒鍵及び同鍵に関係
した各部品を取り外した状態を示す楽器用鍵盤装置の斜
視図である。この鍵盤装置は、合成樹脂により一体成形
したフレーム１０を備えている。フレーム１０上には複
数の白鍵２０及び黒鍵３０が横方向に並設されていると
ともに、各鍵２０，３０の下方にはフレーム１０に組み
付けた揺動レバー４０がそれぞれ設けられている。

【００１９】白鍵２０及び黒鍵３０は、図１〜３に示す
ように、下方を開放させて断面コ字状に合成樹脂により
一体成形され、各後端部２１，３１にてフレーム１０に
上下方向に揺動可能に支持されるとともに板ばね５１に
より後方に付勢されている。白鍵２０及び黒鍵３０の各
後端部２１，３１は図４，５に詳細に示すように方形状
に形成され、その一側面２１ａ，３１ａは上下方向を軸
とする円柱状に形成されて水平断面は上端面から下端面
にわたって一様な円弧状になっている。後端部２１，３
１の各他側面２１ｂ，３１ｂは後ろ半分を切り欠いて後
端に向かうにしたがって幅狭となる傾斜面を形成してお
り、各傾斜面の上下方向の中央付近には外周面を球面状
に形成した突起２１ｃ，３１ｃが形成されている。各後
端部２１，３１の近傍手前側の白鍵２０及び黒鍵３０の
下面からは台形状の突出片２１ｄ，３１ｄが突出してい
て、各突出片２１ｄ，３１ｄは、フレーム１０の一部を
構成し白鍵２０及び黒鍵３０の後部下方に水平に延設し
た水平板１１に設けた貫通窓１１ａを貫通している。

【００２０】白鍵２０及び黒鍵３０の各後端部２１，３
１の端面に対向したフレーム１０の後端部には、上方及
び前方を開放させ水平断面コ字状に形成された複数の枠
体１２がそれぞれ立設している。各枠体１２は前記各後
端部２１，３１を収容するもので、前記突起２１ｃに対
向する一側部には上端面を前方に向けて斜め下方向に切
り欠いた切欠き１２ａが設けられるとともに、同一側部
の内周面上には前端面中央部から後方に向けて前記突起
２１ｃ，３１ｃが勘合する勘合溝１２ｂが形成されてい
る。これにより、白鍵２０及び黒鍵３０が板ばね５１に
より付勢された状態で、白鍵２０及び黒鍵３０の各後端
部２１，３１を枠体１２内に上方から押し込もうとする
と、突起２１ｃ，３１ｃは切欠き１２ａの傾斜した上端
面上を滑りながら斜め下方向前方に向かって変位する。
そして、各後端部２１，３１をさらに下方に押すと、突
起２１ｃ，３１ｃの後端面（平面）が枠体１２の一側部
前端面上を下方に変位して勘合溝１２ｂの位置まで来る
と、突起２１ｃ，３１ｃが勘合溝１２ｂ内を後方に摺動
しながら、各後端部２１，３１は枠体１２内に組み付け
られる。

【００２１】したがって、白鍵２０及び黒鍵３０の各後
端部２１，３１がフレーム１０の枠体１２内に容易に組
み付けられる。この組み付け状態では、白鍵２０及び黒
鍵３０の各後端部２１，３１の円弧状の一側外周面２１
ａ，３１ａは枠体１２の平坦な内側面に当接していると
ともに、外周面を球面状に形成した突起２１ｃ，３１ｃ
は勘合溝１２ｂ，１２ｂに勘合され、また各後端部２
１，３１の他側面２１ｂ，３１ｂは枠体１２の勘合溝１
２ｂを設けた内側面とは離間されるとともに、各後端部
２１，３１の後端面も枠体１２の後内側面とは離間して
いるので、白鍵２０及び黒鍵３０は後端部２１，３１を
支点として円滑に上下方向に揺動する。

【００２２】白鍵２０の前端部２２は、図２に示すよう
に、フレーム１０の前端水平部１３に立設された鍵ガイ
ド５２により、同鍵２０の押鍵時に垂直に案内されるよ
うになっている。また、前端水平部１３上にはフェルト
等を重ねた長尺の鍵ストッパ５３も鍵盤横方向に延設さ
れて固着され、同ストッパ５３は白鍵２０の下方への変
位を規制する。黒鍵３０の中央部３２は、図３に示すよ
うに、フレーム１０の水平板１１に立設された鍵ガイド
５４により、同鍵３０の押鍵時に垂直に案内されるよう
になっている。また、水平板１１上にはフェルト等を重
ねた長尺の鍵ストッパ５５も鍵盤横方向に延設されて固
着され、同ストッパ５５は黒鍵３０の下方への変位を規
制する。ただし、これらの鍵ストッパ５３，５５は演奏
による通常の押鍵時に白鍵２０及び黒鍵３０の下方への
変位を規制するものではなく、同通常の押鍵時には白鍵
２０及び黒鍵３０の下端面は鍵ストッパ５３，５４の上
面から離間した状態にある。一方、白鍵２０及び黒鍵３
０の上に子供が乗ったり、重い物を置いたりした場合な
どのように、非常に大きな下方への力が白鍵２０及び黒
鍵３０に加わった場合には、鍵ストッパ５３，５４が白
鍵２０及び黒鍵３０の下方への変位を規制して白鍵２０
及び黒鍵３０の異常な変形による破壊を防止する。

【００２３】白鍵２０の前端部２２近傍の前部分下面に
は、同下面からほぼ垂直下方に延設した駆動部２３が一
体的に形成されている。駆動部２３は、図２，６，７に
示すように、後方を開放させて水平断面コ字状に形成さ
れ、下端には後方に突出した薄肉の係合片２４が一体的
に形成されている。係合片２４の中央部には方形状の貫
通穴２４ａが形成されており、同穴２４ａには弾性部材
２５が固定されている。弾性部材２５は、半円柱状に形
成されて半円弧状側面を上方及び下方にそれぞれ向けて
係合片２４の厚さにほぼ等しい距離を隔てて対向させて
なる第１及び第２摺動部２５ａ，２５ｂと、両摺動部２
５ａ，２５ｂを連結する方形状の連結部２５ｃとにより
一体的に形成され、第１及び第２摺動部２５ａ，２５ｂ
の両軸線方向を横方向に向けて係合片２４に貫通穴２４
ａを介して勘合されている。弾性部材２５、少なくとも
第１及び第２摺動部２５ａ，２５ｂの円弧状外周面は滑
り易い合成樹脂等の材料を用いるとともに滑り易く表面
加工されており、必要に応じてグリスなどの潤滑剤が塗
布されている。また、弾性部材２５の連結部２５ｃは、
必要に応じて接着剤により係合片２４に接着固定され
る。

【００２４】黒鍵３０の前端部３３の下面には、同下面
からほぼ垂直下方に延設するとともに前方に曲げて延設
したＬ字状の駆動部３４が一体的に形成されている。駆
動部３４は、図３に示すように、後方及び下方を開放さ
せて断面コ字状に形成され、その前端面の下端には後方
に突出した薄肉の係合片３５が一体的に形成されてい
る。係合片３５は白鍵２０の場合と同様に形成されてお
り、中央部には前記弾性部材２５と同一構成の弾性部材
３６が同一方法で係合片３５に固定されている。

【００２５】揺動レバー４０は、図１〜３及び図８に示
すように、合成樹脂製のレバー基部４１と金属製の錘４
２とにより構成されている。レバー基部４１は長尺状か
つ平板状に成形されて、長手方向を前後方向にかつ板面
を垂直に白鍵２０及び及び黒鍵３０の前部分下方に配置
されている。レバー基部４１は下面中央部にて切り欠い
た鍵盤横方向を軸線とする円筒部４１ａを有し、同円筒
部４１ａは軸線方向に厚肉に成形されている。この円筒
部４１ａは前方斜め下方にて開放されていて、フレーム
１０の前方下端位置から後方斜め上方に延設された傾斜
板１４の上端部に設けた回動支持部１５に組み付けられ
ている。回動支持部１５は鍵盤横方向を軸線として円柱
状に形成され、円筒部４１ａは回動支持部１５の外周上
に回動可能に勘合されている。また、回動支持部１５の
外周上には環状溝１５ａが形成されているとともに、円
筒部４１ａの内周面上には小突起４１ａ１が形成されて
おり、回動支持部１５に対する円筒部４１ａの組み付け
状態にて、小突起４１ａ１が環状溝１５ａに回動可能に
勘合してレバー基部４１の鍵盤横方向への変位が規制さ
れる。

【００２６】この揺動レバー４０は板ばね５１により前
方に付勢されている。板ばね５１は、図９に示すよう
に、前部分にて二股に成形された一対の脚部５１ａ，５
１ａを有し、同脚部５１ａ，５１ａはレバー基部４１の
薄肉部を挟んで前方に延設されて、前端にて揺動レバー
４１の円筒部４１ａの外周上に当接するとともにレバー
基部４１に適宜設けた厚肉部に係止されている。板ばね
５１の中間位置には両側に突出した一対の突起片５１
ｂ，５１ｂが形成されていて、同板ばね５１の突起片５
１ｂ，５１ｂより後方部分を水平板１１に設けた貫通窓
１１ｂを下方から上方に貫通させるようにしている。貫
通窓１１ｂの後部分は板ばね５１の幅より若干広く設定
されており、同後部分を下面にて横切るように係合バー
１１ｃが設けられているとともに、同バー１１ｃの若干
前方位置には水平板１１から下方へ突起した突起部１１
ｄが設けられている。この板ばね５１の組み付けにあた
っては、前記のように後端をレバー基部４１に係止させ
た後、板ばね１１の後方部分を突起部１１ｄと係合バー
１１ｃの間の位置にて貫通窓１１ｂを貫通させて、突起
片５１ｂ，５１ｂの後端を係合バー１１ｃに当接させる
とともに、同突起片５１ｂ，５１ｂの上面を突起部１１
ｄに当接させる。これにより、板ばね５１の突起片５１
ｂ，５１ｂより前方部分は下方に湾曲する。なお、この
状態で板ばね５１の後端を白鍵２０の後端部２１（及び
黒鍵３０の後端部３１）の内端面に当接させて、同ばね
５１をＳ字状に変形させる。その結果、上述したように
白鍵２０及び黒鍵３０は後方へ板ばね５１により付勢さ
れる。

【００２７】レバー基部４１の前端部には、所定の隙間
を隔てて上下方向に二股に分けた一対の脚部４１ｂ，４
１ｃが形成され、上方に位置する脚部４１ｂは下方に位
置する脚部４１ｃより短く設定されている。両脚部４１
ｂ，４１ｃの間には白鍵２０及び黒鍵３０の駆動部２
３，３４の各下端に設けた係合片２４，３５が進入し、
各係合片２４，３５に組み付けた弾性部材２４，３６が
両脚部４１ｂ，４１ｃに当接している。これにより、駆
動部２３，３４の各下端部は、両脚部４１ｂ，４１ｃに
揺動レバー４０の長手方向へ摺動可能かつ上下方向に相
互に力が伝達可能にそれぞれ係合される。

【００２８】レバー基部４１の下面には、円筒部４１ａ
と脚部４１ｃとの間にて、下方に突出したスイッチ駆動
部４１ｄが形成されている。スイッチ駆動部４１ｄは、
傾斜板１４に設けた貫通窓１４ａを介してプリント基盤
６０上に組み付けた一対のゴム接点スイッチ６１，６１
に対向している。プリント基盤６０は傾斜板１４の下面
に同板１４とほぼ平行に組み付けられており、一対のゴ
ム接点スイッチ６１，６１は各鍵２０，３０毎に設けら
れて鍵盤横方向に２列に配列されている。スイッチ駆動
部４１ｄは前後に一対の脚を備えており、同一対の脚
は、各鍵２０，３０の押鍵時に一対のゴム接点スイッチ
６１，６１をプリント基盤６０に対してほぼ直角に押圧
するように設定されている。

【００２９】錘４２は棒状に成形され、その前部外周上
にレバー基部４１をアウトサート成形することによりレ
バー基部４１に一体的に組み付けられている。錘４２の
後部は織り曲げて重ね合わされており、この折り曲げ部
分４２ｂの長さをそれぞれ異ならせることにより錘４２
の重さを調節できるようになっている。この場合、隣接
する白鍵２０と黒鍵３０との間で、各鍵２０，３０の押
圧位置上方への回転モーメントがほぼ等しくなるように
設定される。また、白鍵２０においても、黒鍵３０にお
いても、低音鍵に対して重い錘４２を用いて高音側に向
かうにしたがって錘４２の重さを軽く設定し、前記回転
モーメントが低音側で大きく高音側に向かうにしたがっ
て小さくなるようになっている。

【００３０】また、フレーム１０の後端部に位置する下
面板１６の上面には、フェルト等を重ね合わせて構成し
た長尺のストッパ５６が上方を向けて鍵盤横方向に延設
して固着されている。また、フレーム１０の後端部に位
置する上面板１７の下面には、フェルト等を重ね合わせ
て構成した長尺のストッパ５７が前記ストッパ５６と上
下方向に所定距離だけ隔てて下方を向けて鍵盤横方向に
延設して固着されている。これにより、揺動レバー４０
の錘４２の後端部の下方及び上方への各変位がストッパ
５６，５７によりそれぞれ規制されるとともに、各鍵２
０，３０の前端部の上方及び下方への各変位も間接的に
規制される。

【００３１】次に、上記のように構成した鍵盤装置の動
作を説明する。白鍵２０及び黒鍵３０のいずれをも押鍵
操作しない状態では、揺動レバー４０の錘４２の後端部
はその自重によりストッパ５６に当接しており、揺動レ
バー４０、白鍵２０及び黒鍵３０は図２，３の実線に示
した状態にある。この状態で、白鍵２０又は黒鍵３０を
各後端部２２，３３近傍位置にて押圧すると、白鍵２０
又は黒鍵３０は揺動レバー４０の錘４２の自重に対抗し
て後端部２１，３１を支点に図２，３にて反時計回りに
揺動し始める。そして、白鍵２０又は黒鍵３０が所定の
深さまで押鍵されると、錘４２の後端部が図２，３にて
２点鎖線で示すようにストッパ５７に当接して白鍵２０
又は黒鍵３０の前端部２２，３３の下方への変位が規制
される。そして、白鍵２０又は黒鍵３０を離鍵すれば、
錘４２の後端がストッパ５６に当接するまで、錘４２の
自重により揺動レバー４０は回動支持部１５を支点に図
２，３にて時計方向に揺動して原点位置に復帰する。

【００３２】この押鍵動作においては、押鍵開始前に白
鍵２０及び黒鍵３０の各前端部２２，３３は揺動レバー
４０の自重により常時上方に付勢されており、押鍵時に
は、押鍵に対する反力が揺動レバー４０の慣性モーメン
トにより与えられるので、演奏者は自然楽器であるピア
ノと同種の良好な鍵タッチ感を得ることができる。

【００３３】また、白鍵２０又は黒鍵３０の各駆動部２
３，３４に設けた係合片２４，３５は、弾性部材２５，
３６を介して揺動レバー４０の脚部４１ｂ，４１ｃに対
して長手方向へ摺動可能かつ上下方向に相互に力が伝達
されるように係合されているので、押鍵時には、白鍵２
０、黒鍵３０及び揺動レバー４０は常に一体的に揺動す
る。そして、押鍵終了時には、揺動レバー４０の錘４２
の後端部の上方への変位がストッパ５７により規制さ
れ、この規制に起因して白鍵２０及び黒鍵３０の揺動が
規制される。したがって、押鍵時にも、押鍵終了時に
も、揺動レバー４０が白鍵２０及び黒鍵３０と遊離する
ことはなく、フレーム１０、白鍵２０、黒鍵３０、揺動
レバー４０、ストッパ５６，５７などの各部品の製造時
の寸法のばらつきがあっても、同各部品の経年変化があ
っても、錘４２のストッパ５７への当接後に揺動レバー
４２が白鍵２０及び黒鍵３０とは独立してバウンドした
り、揺動レバー４２が振動したりすることがなくなり、
常に良好な鍵タッチ感を得ることができる。

【００３４】また、白鍵２０及び黒鍵３０は、各駆動部
２３，３４の係合片２４，３５にて、揺動レバー４０の
脚部４１ｂ，４１ｃに係合していて、押鍵終了時におけ
る白鍵２０及び黒鍵３０の変位は前記揺動レバー４０の
変位規制と同時に各駆動部２３，３４を介して規制され
る。この各駆動部２３，３４は各鍵２０，３０の前端部
２２，３３近傍の前部分の下面に設けられており、通常
押鍵される位置又はその近傍に対向した位置であるの
で、白鍵２０、黒鍵３０及び揺動レバー４０の変位規制
後に白鍵２０及び黒鍵３０をさらに押鍵しても、白鍵２
０及び黒鍵３０の各前部分が撓み難く、同撓みによる鍵
タッチ感の悪化を避けることができる。

【００３５】また、前記揺動レバー４０の揺動規制によ
り、白鍵２０及び黒鍵３０の変位は弾性部材２５，３６
を介して間接的に規制される。これにより、揺動レバー
４０の揺動停止時に同レバー４０の錘４２が多少振動し
ても、同振動は白鍵２０及び黒鍵３０にほとんど伝達さ
れることがなく、演奏時における鍵タッチ感が良好にな
る。

【００３６】また、前記白鍵２０及び黒鍵３０の各後端
部２１，３１の一側面２１ａ，３１ａは円筒状に形成さ
れて枠体１２の平面に形成した一内側面に当接し、また
他側面２１ｂ，３１ｂには外周面を球面とする突起２１
ｃ，３１ｃが設けられていて、同突起２１ｃ，３１ｃの
外周面が勘合溝１２ｂの内周面に当接しているので、前
記押離鍵時における白鍵２０又は黒鍵３０の揺動が抵抗
なく円滑に行われる。

【００３７】また、前記白鍵２０又は黒鍵３０の押離鍵
時には、揺動レバー４０は、脚部４１ｂ，４１ｃの内側
面を弾性部材２５，３６の第１及び第２摺動部２５ａ，
２５ｂ上を前後方向に摺動させながら、回動支持部１５
を支点に揺動する。この場合、弾性部材２５，３６の各
第１及び第２摺動部２５ａ，２５ｂの表面は滑り易く構
成されているので、揺動レバー４０の脚部４１ｂ，４１
ｃと鍵２０，３０の駆動部２３，３４との間の弾性部材
２５を介した上下方向の力の伝達が円滑に行われる。ま
た、駆動部２３，３４の係合片２４，３５と揺動レバー
４０の脚部４１ｂ，４１ｃの直接的接触が回避され、同
接触による異音の発生をなくすことができる。また、揺
動レバー４０の円筒部４１ａは回動支持部１５の外周上
に回動可能に勘合され、小突起４１ａ１と環状溝１５ａ
との係合により円筒部４１ａの軸線方向の変位が禁止さ
れ、また板ばね５１により揺動レバー４０は前方に付勢
されているので、揺動レバー４０の揺動支点位置が精度
よく固定されて同レバー４０の揺動が安定する。これら
により、白鍵２０及び黒鍵３０の押鍵動作が円滑に行わ
れて、鍵タッチ感が良好になる。

【００３８】また、弾性部材２５，３６の各第１及び第
２摺動部２５ａ，２５ｂは断面半円形に構成されている
ので、揺動レバー４０が揺動しても係合片２４，３５と
脚部４１ｂ，４１ｃとの間に介装される第１及び第２摺
動部２５ａ，２５ｂの厚さが一定に保たれる。したがっ
て、係合片２４，３５と揺動レバー４０の脚部４１ｂ，
４１ｃの摺動が円滑に行われるとともに、揺動レバー４
０の錘４２による押鍵反力が常に適正に保たれるので、
鍵タッチ感が良好になる。

【００３９】また、揺動レバー４０を錘４２と同錘４２
にアウトサート成形した合成樹脂で構成するようにした
ので、揺動レバー４０が簡単に構成されるとともに製造
されるようになる。また、錘４２の重さを調整すること
により、揺動レバー４０による鍵２０，３０の前端部２
２，３３の上方への付勢力を簡単に調整でき、同付勢力
を鍵毎、鍵域毎などに異ならせることができる。例え
ば、高音鍵になるにしたがって錘を軽くすることによ
り、低音鍵に対しては質量感のある鍵タッチで演奏で
き、また高音鍵になるにしたがって軽い鍵タッチの軽や
かな鍵演奏を楽しむことができるようになる。この場
合、錘４２を棒状に構成するとともに同錘４２の折り曲
げ長さを変更して、前記錘４２の重さを調整できるよう
にしたので、錘４２の重さの調整も異なる長さの金属棒
を用意することにより簡単に行える。

【００４０】また、黒鍵３０の駆動部３４を下方に延設
するとともに前方に曲げて延設するようにして、同駆動
部３４の係合片３５と揺動レバー４０の脚部４１ｂ，４
１ｃとの係合位置が、白鍵２０の駆動部２３の係合片２
４と揺動レバー４０の脚部４１ｂ，４１ｃとの係合位置
に前後方向においてほぼ等しくなるようにしたので、白
鍵２０と黒鍵３０とで揺動レバー４０の形状を大きく異
ならせることなく、また白鍵２０及び黒鍵３０の各位置
におけるフレーム１０の形状を大きく異ならせなくて
も、白鍵２０と黒鍵３０とで揺動レバー４０による各鍵
２０，３０の前端部２２，３３の上方への付勢力をほぼ
同様に保つことができ、揺動レバー４０及びフレーム１
０の製造が簡単になる。

【００４１】さらに、ゴム接点スイッチ６１，６１を備
えたプリント基盤６０をフレーム１０の傾斜板１４の下
面に沿って平行に組み付けるようにしたので、本鍵盤装
置をフレーム１０と一体的に構成でき、同鍵盤装置の電
子楽器に対する組み込みが容易になる。また、白鍵２０
及び黒鍵３０の押鍵時に、スイッチ駆動部４１ｄの一対
の脚がプリント基盤６０に対して直角にゴム接点スイッ
チ６１，６１を押圧するように同一対の脚を形成したの
で、ゴム接点スイッチ６１，６１が前記一対の脚により
擦られることがなくなり、ゴム接点スイッチ６１，６１
の耐久性が向上するとともに作動特性が良好になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 一部の鍵及び同鍵に関する部品を外した状態
にある鍵盤装置の斜視図である。

【図２】 白鍵部分の縦断側面図である。

【図３】 黒鍵部分の縦断側面図である。

【図４】 鍵後端部のフレームへの組付け前の状態を示
す拡大斜視図である。

【図５】 鍵後端部のフレームへの組付状態を示す拡大
平面図である。

【図６】 弾性部材を組み付ける前の状態を示す鍵駆動
部の拡大分解斜視図である。

【図７】 弾性部材を組み付けた状態を示す鍵駆動部の
拡大縦断側面図である。

【図８】 (Ａ)は揺動レバーの平面図であり、(Ｂ)は揺
動レバーの側面図である。

【図９】 板ばねの平面図である。

【符号の説明】

１０…フレーム、１１…水平板、１２…枠体、１３…前
端水平部、１４…傾斜板、１５…回動支持部、１６…下
面板、１７…上面板、２０…白鍵、２１…後端部、２１
ｃ…突起、２３…駆動部、２４…係合片、２５…弾性部
材、３０…黒鍵、３１…後端部、３１ｃ…突起、３４…
駆動部、３５…係合片、３６…弾性部材、４０…揺動レ
バー、４１…レバー基部、４１ａ…円筒部、４１ｂ，４
１ｃ…脚部、４１ｄ…スイッチ駆動部、４２…錘、５１
…板ばね、５２，５４…鍵ガイド、５６，５７…ストッ
パ、６０…プリント基盤、６１…ゴム接点スイッチ。

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 横方向に並設された複数の鍵と、前記複
   数の鍵の下方に配設されて各鍵をその後端部にて上下方
   向にそれぞれ揺動可能に支持させてなるフレームと、前
   記複数の鍵の下方に長手方向を各鍵の前後方向にして配
   置されるとともに中間部にて前記フレームに揺動可能に
   支持されてなり前端部にて各鍵に係合して自重により各
   鍵の前端部を上方にそれぞれ付勢する複数の揺動レバー
   と、前記フレームに上下方向に所定間隔を設けて組み付
   けられ前記複数の揺動レバーの後端部の下方及び上方へ
   の変位をそれぞれ規制する第１及び第２ストッパとを備
   えた楽器用鍵盤装置であって、前記複数の鍵にそれらの
   前部分下面から下方に一体的に延設した駆動部をそれぞ
   れ設け、前記駆動部の下端部を前記揺動レバーの長手方
   向へ摺動可能として同駆動部の下端部と同揺動レバーの
   前端部とを上下方向に相互に力が伝達されるように係合
   させたことを特徴とする楽器用鍵盤装置。
2. 【請求項２】 前記請求項１に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記鍵の駆動部の下端に後方へ突出した係合片
   を設けるとともに、前記揺動レバーの前端部分に所定の
   隙間を隔てて上下方向に二股に分けて形成した一対の脚
   部を設け、前記一対の脚部間に前記係合片を係合させて
   なることを特徴とする楽器用鍵盤装置。
3. 【請求項３】 前記請求項２に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記係合片に前記一対の脚部に当接する弾性部
   材を組み付けたことを特徴とする楽器用鍵盤装置。
4. 【請求項４】 前記請求項３に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記弾性部材に潤滑剤を塗布するようにしたこ
   とを特徴とする楽器用鍵盤装置。
5. 【請求項５】 前記請求項３に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記一対の脚部にそれぞれ当接する前記弾性部
   材の上面及び下面を断面円弧状に形成したことを特徴と
   する楽器用鍵盤装置。
6. 【請求項６】 前記請求項１に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記揺動レバーの前部分を合成樹脂製のレバー
   基部で構成するとともに、同揺動レバーの後部分を前記
   レバー基部に固着した金属製の錘で構成し、前記レバー
   基部を前記フレームに揺動可能に組み付けるとともに、
   前記錘の後端部の上下方向の変位が前記第１及び第２ス
   トッパの間に規制されるようにしたことを特徴とする楽
   器用鍵盤装置。
7. 【請求項７】 前記請求項６に記載の錘の重さを鍵の種
   類に応じて異ならせたことを特徴とする楽器用鍵盤装
   置。
8. 【請求項８】 前記請求項１に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記揺動レバーの下面にスイッチ駆動部を設
   け、前記フレームに固定したプリント基盤上に設けたス
   イッチを駆動するようにしたことを特徴とする楽器用鍵
   盤装置。
9. 【請求項９】 前記請求項１に記載の楽器用鍵盤装置に
   おいて、前記複数の鍵は白鍵及び黒鍵からなり、前記白
   鍵の駆動部を鍵の前部分からほぼ垂直に下方に延設し、
   前記黒鍵の駆動部を鍵の前部分からほぼ垂直に下方に延
   設するとともに前方に曲げて延設したことを特徴とする
   楽器用鍵盤装置。