JPH09194501A - アルカリ処理澱粉の製造方法 - Google Patents

アルカリ処理澱粉の製造方法

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JPH09194501A
JPH09194501A JP882296A JP882296A JPH09194501A JP H09194501 A JPH09194501 A JP H09194501A JP 882296 A JP882296 A JP 882296A JP 882296 A JP882296 A JP 882296A JP H09194501 A JPH09194501 A JP H09194501A
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alkali
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Hitoshi Okada
比斗志 岡田
Motohide Wada
基秀 和田
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Oji Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複雑な工程を経ることなく、澱粉或いは変性
澱粉に優れたフィルム形成能を付与することができるア
ルカリ処理澱粉の製造方法の提供。 【構成】 澱粉或いは変性澱粉をアルカリ水溶液中に分
散してスラリーとし、このスラリーを大気圧下で加熱、
保持した後ろ過する。前記スラリーのpHは、加熱の間
10〜14の間に維持され、加熱温度は30〜80℃で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変性澱粉の製造方
法に関する。更に詳しく述べれば、本発明は、フィルム
形成能が優れ、引張り負荷に対する強度と伸びが良好
で、バインダー、サイズ剤、コーティング剤等として好
適なアルカリ処理澱粉の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】澱粉は、植物の貯蔵組織に大量に蓄積さ
れた多糖類炭水化物であり、植物の発芽や生長の際にエ
ネルギー源となるものであるが、今日、食品に或いは工
業用原料として大量に利用されている。又、澱粉は微生
物により容易に分解され、使用後は手を加えることなく
処理でき、価格が安く、しかも安定して供給できる体制
が整っているために、天然の資源として、近年再び注目
され、食品工業の分野以外にも工業用資材としての利用
価値が高まってきている。特に、水に溶解した澱粉は、
その優れた接着能や造膜性を利用してバインダー、サイ
ズ剤、コーティング剤として、製紙工業、繊維工業等の
分野で大量に用いられている。その場合、澱粉は、何ら
かの方法で変性、化工して、糊化温度を低下させて溶解
し易くし、溶液粘度を低下、安定化させ、更には、それ
ぞれの用途に適した特性が付与されるのが一般的であ
る。
【0003】前記の澱粉は、トウモロコシ、小麦、ジャ
ガイモ、タピオカ、更には種々の穀物を原料として製造
され、化学構造はグルコースが多数縮合重合して結合し
ているポリサッカライドであり、α−1、4−D−グル
コシド結合のみからなる直鎖状ポリマー(アミロース)
及びそのアミロースを主鎖にしてα−1、6−D−グル
コシド結合による多数の枝分かれを有する分岐状ポリマ
ー(アミロペクチン)との混合物である(澱粉化学ハン
ドブック、二国二郎編、朝倉書店)。このような澱粉の
粒子径は、種類によって大幅に変わるが、1〜100μ
m、一般的には3〜30μmの範囲にあり、その平均粒
子径は5〜30μm、一般的には10〜20μmの範囲
にある。
【0004】澱粉を構成するアミローロスとアミロペク
チンの含有比率も澱粉の種類により大幅に変化するが、
アミロース/アミロペクチンの比は0〜80/100〜
20、一般的には17〜30/83〜70であり、アミ
ロースの比率が高いものとしてはハイアミロース澱粉
(トウモロコシ)50〜80/50〜20が知られてい
る。このような澱粉の糊化温度範囲は、アミロースの含
有量により、又変性の種類や程度により変化し、ヒドロ
キシプロピル化澱粉のように低い温度で容易に糊化でき
るものから、例外としてハイアミロース澱粉の110〜
140℃範囲のものやリン酸架橋澱粉の100℃を超え
るものもあるので厳密に糊化温度を特定できないが、5
5〜80℃の範囲にあるといえる。前記の澱粉は、用途
別に直接利用されるもの(食品製造、工業用のり(たき
のり、段ボール、繊維)等)、変性、化工して利用され
るもの(食品製造のその他、繊維工業、医薬、製菓、製
紙工業等)、糖化して利用するもの(ぶどう糖、水あめ
等)、醗酵して利用するもの(くえん酸醗酵、グルタミ
ン酸醗酵、ビール、サイクロデキストリン等)等があ
り、澱粉の需要は糖化利用が一番多く、変性利用の中で
は製紙工業の使用量が非常に多い。
【0005】澱粉の変性や化工は、前記したように、”
澱粉が水に溶解せず高い温度で溶解させる必要があ
る”、”溶解溶液の粘度が高すぎる”、”溶液の粘度が
不安定であり老化によりゲル化する”等といった欠点
を、澱粉の有する特徴を生かしながら、又用途に適した
様々な特性を付与して前記欠点を解消するために行われ
る。例えば、次亜塩素酸ナトリウムで処理することによ
り得られる変性澱粉の一つである酸化澱粉は、未処理の
澱粉に比べ、温水に溶解させる時の糊化性、溶液粘度の
安定性、塗布する時の造膜性、塗布乾燥した時のフィル
ム形成能等が優れるため、製紙工業において表面サイジ
ング剤やコーティングバインダーとして、又繊維工業分
野でもたて糸サイジング剤として大量に消費されてい
る。
【0006】澱粉を変性や化工する方法として前記の酸
化処理の他にも、酸処理、エーテル化、エステル化等が
古くから研究され、これらの方法により数多くの化工澱
粉が製造され、利用されている。例えば、アルカリ水溶
液中で澱粉をプロピレンオキシドと反応させることによ
り得られるヒドロキシプロピル化澱粉は、血漿増量剤と
して主として医療用に用いられているが、近年、米国を
中心に製紙工業分野でも用いられるようになってきた。
グラフト化澱粉の研究の歴史も古いが、アクリロニトリ
ルやアクリル酸をグラフト重合した澱粉がかつて吸水性
高分子として紙おむつに使用された程度で、消費量は多
くない。その他、澱粉を熱で溶融して合成高分子と混合
することにより生分解性ポリマーを得ようとする研究は
現在でも活発に行われ、非常に有望な分野である。以上
述べたように、澱粉の変性、化工法として、酸処理、そ
の他の化学的処理、熱溶融等があり、それにより未処理
澱粉の様々の特性が改善されているが、なお一層効率の
良い、安価な変性、加工法の出現が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】澱粉の利用価値を更に
高めるためには、前記したように澱粉を、或いは既に変
性又は化工された澱粉を、更に何らかの方法で再度、変
性、化工して優れた特性を引き出す必要があるが、製紙
工業において澱粉を有効利用する場合に一層向上させる
必要のある特性の一つに、澱粉や変性澱粉を糊化して溶
解液として基材に塗布する際の優れたフィルム形成能が
挙げられる。そして、その目的を達成できる方法は、澱
粉の魅力の一つである価格が安価であることを生かすた
めに、製造コストを高くするものであってはいけない
し、更には、従来技術による澱粉の変性法や化工法と組
み合わせて使用できる方法でなければならない。
【0008】本発明者等は、かかる状況に鑑み、澱粉に
優れたフィルム性能を付与できる方法にについて鋭意研
究を重ねた結果、澱粉或いは変性澱粉をアルカリ水溶液
中に分散させ、スラリーとし、そのスラリーを大気圧下
で特定の温度と時間保持するという簡単な処理を施すこ
とにより澱粉に優れたフィルム形成能を付与できること
を見出し本発明を完成するに至った。本発明の目的は、
複雑な工程を経ることなく、澱粉或いは変性澱粉に優れ
たフィルム形成能を付与することができるアルカリ処理
澱粉の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、澱粉或
いは変性澱粉をアルカリ水溶液中に分散してスラリーと
し、該スラリーを大気圧下で加熱、保持した後、ろ過す
ることを特徴とするアルカリ処理澱粉の製造方法であ
る。本発明の第二は、前記スラリーのpHを加熱の間1
0〜14の範囲に維持することを特徴とする本発明第一
に記載のアルカリ処理澱粉の製造方法である。本発明の
第三は、前記スラリーを温度30〜80℃に加熱、保持
することを特徴とする本発明第一又は第二に記載のアル
カリ処理澱粉の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明においては、澱粉という用
語は、グルコースが多数結合したポリサッカライドで、
α−1、4−D−グルコシド結合のみからなるアミロー
ス及びそのアミロースを主鎖にしてα−1、6−D−グ
ルコシド結合による多数の枝分かれを有するアミロペク
チンとからなるものを意味し、変性澱粉という用語は、
前記澱粉の組成を変えたり、その一部、又は全部のグル
コース単位を変性したものや、例えば、トウモロコシ澱
粉から分離して得られる、純粋なアミロース或いは純粋
なアミロペクチンを、アミラーゼ、プルラナーゼ等の酵
素により低分子化したり、枝切りを行ったもの、次亜塩
素酸ソーダや酸で処理したもの、或いはエステル化、エ
ーテル化等の化学変性を行った澱粉誘導体をも含めて用
いられ、これらの市販されている公知の澱粉と変性澱粉
が本発明のための原料として用いられる。更に、アルカ
リ処理澱粉という用語は、前記の澱粉或いは変性澱粉を
原料として本発明によってアルカリ処理が施された変性
澱粉のことを意味する。
【0011】本発明では、澱粉或いは変性澱粉をアルカ
リ水溶液に分散させ、スラリーとした後、緩い攪伴を伴
いながら、このスラリーを大気圧下で特定のpHのアル
カリ性と温度のもとに特定の時間保持し、この間に澱粉
或いは変性澱粉にアルカリによる膨潤作用を施し、次い
でアルカリ処理された澱粉をろ過し、得られたケーキを
十分水洗して、乾燥し、所望のアルカリ処理澱粉とす
る。本発明に用いられる公知の澱粉或いは変性澱粉は、
前記したように水或いはアルカリ性水溶液に対しては加
熱することにより溶解して糊化するが、その糊化温度
は、澱粉の種類、変性の種類や程度によりそれぞれで大
きく異なる。本発明では、用いられる澱粉或いは変性澱
粉は水に溶解させないで、アルカリ水溶液に分散させて
スラリーとし加熱しアルカリ処理を行うが、そのような
澱粉或いは変性澱粉には一部に親水化されたものを含む
ので、溶解するものが澱粉或いは変性澱粉の絶乾全重量
の10重量%未満、好ましくは7重量%以下のものを原
料として選択するか或いはそのような溶解量が確保でき
る加熱温度を選択する必要がある。本発明では、そのよ
うな加熱温度は30〜80℃の範囲である。加熱温度が
30℃未満ではアルカリ処理による効果が得られず、加
熱温度が80℃を超えると澱粉或いは変性澱粉の溶解量
が全体の10重量%以上となり、溶解したものの析出回
収が困難となるので共に適さない。
【0012】本発明のアルカリ水溶液のために用いられ
るアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等の水に溶
解して水酸基を有するものが挙げられるが、工業的にも
っとも容易に、安価に入手できる水酸化ナトリウムが好
ましい。アルカリの濃度は低すぎると処理の効果がな
く、又高すぎると20〜25℃の室温程度でも澱粉或い
は変性澱粉の溶解量が前記の範囲を超え、溶解したもの
の析出、回収に手間がかかるため、アルカリ水溶液のp
Hは、用いられる温度において10〜14、好ましくは
11〜13の範囲になるように調製される。本発明で用
いられるアルカリ濃度、加熱処理前の初期pH及び加熱
処理後の最終pHの関係は、処理に供する澱粉や変性澱
粉の種類と量によっても変わるが、例えば水酸化ナトリ
ウムを用いる場合、温度60℃では40g/リットル
(NaOHとして)でpHは初期13.5で終期が13
であるのに対し、温度が40℃では4g/リットル(N
aOHとして)でpHは初期が13でも終期が12.5
のようにアルカリ濃度の違いによって或いは加熱温度を
保持する間に0.3〜0.7ポイント程低下する。
【0013】以上説明したように、アルカリ濃度と加熱
温度については、用いる澱粉或いは変性澱粉特有の糊化
温度と所望する品質とを考慮した上で決定されねばなら
ない。例えば、pHが13のアルカリ水溶液において、
アミロペクチンを絶乾全重量の70重量%以上含むトウ
モロコシ澱粉は温度60℃で溶解し始めるので55℃以
下、好ましくは50℃以下で処理する必要がある。又、
この場合、アルカリ水溶液のpHを12程度に低くして
もよいが、そうするとフィルム形成能の特性が若干低く
なるという傾向が見られる。これに対して純粋なアミロ
ースは、60℃でも前記pHのアルカリ水溶液にはほと
んど溶解しないので、アミロースを多く含有する、例え
ばハイアミローストウモロコシ澱粉のような澱粉或いは
その変性澱粉は、より高い温度、例えば60〜80℃で
アルカリ処理を行うことができる。
【0014】このように、糊化温度範囲が高い水準にあ
る澱粉或いは変性澱粉は、使用可能な条件の幅が広くな
り、例えばpH及び/又は温度をより高くした条件でア
ルカリ処理を行うことができるが、一方でそのような澱
粉或いは変性澱粉は架橋されたものであったり、アミロ
ースを多く含有し、しかも未処理もしくは変性の程度が
極めて小さいというものであったりする場合が多く、通
常これらは実際の使用頻度が少ないため種類が限定され
ている。これに対して糊化温度範囲が低く、最も汎用さ
れている澱粉或いは変性澱粉を原料として用いる場合で
も、本発明においては、低いpHと低い加熱温度のよう
に使用可能な条件の範囲がかなり制限されるものの、温
度とアルカリ性を前記の範囲内で適切に組み合わせるこ
とにより所望の特性を得ることができる。又、前記の温
度とアルカリ性において澱粉或いは変性澱粉をアルカリ
水溶液に分散させてスラリーとする時の固形分濃度は、
大気圧下で緩い撹拌を行うことによって均一に混合でき
る程度の濃度であればよく、5〜50重量%、好ましく
は7〜40重量%の範囲である。澱粉或いは変性澱粉の
濃度が低すぎると、生産効率が低下し、逆に濃度が高す
ぎると均一な分散或いは混合ができず、アルカリ処理澱
粉の品質にばらつきが生じるので好ましくない。
【0015】本発明における具体的な手法を更に説明す
ると次のようになる。まず、原料として用いる澱粉或い
は変性澱粉により、又どの程度のフィルム形成能を付与
するかを定め、アルカリ濃度、具体的には特定の温度の
下に一定時間保持するスラリーのpHを前記範囲内の何
れかに設定する。次に、原料としての澱粉或いは変性澱
粉を前記アルカリ水溶液の入った撹拌装置付きのタンク
に投入して、撹拌しながらスラリーとし、次いでアルカ
リ水溶液を所定の温度に加熱する。この時、澱粉或いは
変性澱粉の粒子が沈殿を起こさず、均一に分散できる程
度に緩く撹拌を行い、所定の時間そのままで保持する。
本発明では、澱粉或いは変性澱粉は、アルカリ処理を行
うための容器内へ水と共に入れ、スラリーとした後にア
ルカリを添加してもよいし、予め分散機や混合機で高い
濃度の水スラリーを製造しておいて、次いでアルカリ水
溶液で所望のスラリー濃度に希釈してもよい。
【0016】所定の温度で特定の時間維持する間のスラ
リーのpHは、前記したように加熱の間に若干低下する
が、加熱の間10〜14の範囲内に維持されておればよ
い。しかしながら、澱粉のスラリーにアルカリを添加し
て加熱していくと、温度、アルカリ濃度、澱粉スラリー
の濃度、澱粉の種類等により異なり、前記したようにp
Hは加熱の間に変動するが、得られるアルカリ処理澱粉
の品質のばらつきを防ぐ目的で、設定時のpH水準を維
持するためにアルカリを追加添加し調整してもよく或い
は初期pHを設定した後は、前記のpH範囲内に維持で
きれば、特にアルカリを添加せずにアルカリ処理を行っ
てもよい。本発明のための保持時間は、所望される品質
により適宜変更することができるが、10〜180分
間、好ましくは30〜90分間である。時間が10分未
満では所望の効果が得られず、90分を超えても得られ
る効果は頭打ちとなり、経済的に不利となる。本発明で
は、澱粉或いは変性澱粉のスラリーは、大気解放型の撹
拌装置付きタンク、槽等の密閉式或いは解放式加熱容器
に入れられ、アルカリ処理が施されるが、前記したよう
に、予めスラリーを製造し、前記容器に移送してもよい
し、容器内に原料を投入し、加熱しながらスラリーを製
造してもよい。又、本発明は、バッチ式で行ってもよ
く、必要に応じて連続式で行ってもよい。
【0017】次いで、得られたアルカリ処理済みの澱粉
或いは変性澱分のスラリーをフィルタープレス、回転式
フィルター等の通常粉体の分別処理に用いられる公知の
フィルターでろ過し、ろ液がpH6〜8の範囲になるま
でケーキを水で十分に洗浄する。この分別操作の前に、
アルカリ処理済み澱粉或いは変性澱粉のスラリーに塩
酸、硫酸等の酸による中和を行ったり、一部アルカリ水
溶液に溶解した澱粉或いは変性澱粉を析出させ、それに
よって溶液粘度を低下させ、かつ回収するために、メタ
ノールやアセトンのような有機溶媒を添加してもよい。
その後、ろ過したケーキは、直ちに再度水中に投入し、
加熱して溶解、糊化して使用に供してもよいし、ケーキ
を直接そのまま公知の乾燥機で乾燥した後、一度貯蔵
し、必要に応じて前記のように溶解して使用に供しても
よい。又、乾燥に際し、乾燥負荷を少なくするために、
必要に応じてケーキ中の水をメタノールやアセトンのよ
うな水可溶性の有機溶媒で置換した後に乾燥を行っても
よい。
【0018】本発明により得られるアルカリ処理澱粉
は、フィルム形成能に優れ、引張り強度と破断伸びが高
いという特性を有する。そして、そのような特性が付与
される機構は、詳細には不明であるが、澱粉を構成する
アミロースやアミロペクチンの結晶構造が熱アルカリに
より膨潤し、加えてアルカリ水溶液に含まれる酸素によ
る酸化作用によって前記アミロースやアミロペクチンの
水酸基同士による水素結合の形成が部分的に妨害され、
一部には低分子化も生じ、糊化性が向上するからである
と推定される。
【0019】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、勿論本発明は、これによって制限されるも
のではない。なお、以下において%とあるのは断らない
限りすべて重量%を示す。
【0020】実施例1 容量200ミリリットルのガラス製ビーカーの中に0.
5規定濃度の水酸化ナトリウム水溶液(NaOHとして
20g/リットル)を100g入れ、これに絶乾10g
のトウモロコシ澱粉(コーンスターチ、試薬特級和光純
薬工業社製)を、撹拌機で200rpmで撹拌しながら
投入し、9.1%濃度の澱粉スラリーとした。このスラ
リーの加熱前の初期pHは13.4であった。次いでこ
のビーカーを温度が50℃に加熱された恒温槽に入れ、
撹拌を継続しながら60分間維持した。アルカリ処理が
完了した時のスラリーの終期pHは、12.9であっ
た。その後ビーカーを恒温槽から取り出し、25℃まで
冷却した後、ガラスフィルター(G2)でろ過し、ケー
キを水で洗浄した。水による洗浄は、ろ過液のpHが
7.5になるまで繰り返した。このようにして得られた
ケーキを温度60℃、真空度10mmHgで真空乾燥機
(型式:DP32、ヤマト社製)で水分10%まで乾燥
し、アルカリ処理澱粉の粉末を得た。
【0021】得られたアルカリ処理澱粉の品質を調べる
ため、次のようにしてフィルムを作製し、以下に示す試
験法及び評価法により試験と評価を行った。 フィルムの作製 得られたアルカリ処理澱粉3gを水97ミリリットルを
入れた200ミリリットル容量のガラス製ビーカーに入
れ、固形分濃度3%とし、撹拌しながら95℃まで昇温
し、撹拌を継続しながら30分間保持し、その後冷却し
てアルカリ処理澱粉を溶解した溶液を準備した。次に、
大きさが100mm×100mmの塩化ビニル樹脂製の
縁付きボードの上に、前記澱粉を溶解した3%濃度の溶
液30gを注ぎ入れ、放置して乾燥し、フィルム化し
た。フィルムの厚みは75μmであった。
【0022】フィルム成形性 フィルムを成形後、フィルム表面を目視により観察し、
ひび割れの程度を次の基準により判断し、フィルム形成
の良否を評価した。 ○:表面にひび割れが全くなく、フィルム形成能が極め
て優れている。 △:ひび割れが部分的に発生し、フィルム片が2〜5個
に分割されており、フィルム形成能は劣るが、実用は可
能である。 ×:ひび割れが全面に発生し、5mm幅、100mm長
さの試験片の採取ができず、フィルム形成能がひどく悪
い。
【0023】フィルムの透明性 光透過率測定機(型式:MCPD−1000、大塚電子
社製)を用いて前記フィルムの400〜800nmの範
囲の波長における光透過率を50nmおきに9点測定
し、その平均値(小数点以下四捨五入)を求め、次の基
準によりフィルムの透明性を評価した。 ○:光透過率の値が80%を超えて高く、透明性に極め
て優れる。 △:光透過率の値が40〜80%で、透明性は劣るが、
実用はできる。 ×:光透過率の値が40%未満で、透明性が極めて劣
る。
【0024】引張り試験 前記フィルムを温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿
室に24時間放置した後、5mm幅、100mm長さの
試験片に断裁し、クランプ間隔50mm、引張り速度2
0mm/分において引張り試験機(テンシロン、型式:
UTM―III―100、東洋ボールドウィン社製)で破
断するまで引張り、破断強度(N/mm 2)と伸び
(%)を測定した。試験は4回行い、その平均値(小数
点以下四捨五入)を求めた。
【0025】実施例2 容量200ミリリットルのガラス製ビーカーの中に1.
0規定濃度の水酸化ナトリウム水溶液(NaOHとして
40g/リットル)を100g入れ、これに絶乾10g
のハイアミロース種トウモロコシ澱粉(Amylose From C
orn PracticalGrade 、SIGMA社製)を、200r
pmで撹拌しながら投入し、9.1%濃度の澱粉スラリ
ーとした。このスラリーの初期pHは13.6であっ
た。次いでこのビーカーを温度が60℃に加熱された恒
温槽に入れ、撹拌を継続しながら60分間維持した。ア
ルカリ処理が完了した時のスラリーの最終pHは、1
2.8であった。その後ビーカーを恒温槽から取り出
し、25℃まで冷却した後、メタノール50gを撹拌し
ながら添加し、次いでガラスフィルター(G2)でろ過
し、ケーキを水で洗浄した。水による洗浄は、ろ過液の
pHが7.5になるまで繰り返し行い、最後にメタノー
ルで洗浄した。このようにして得られたケーキを実施例
1と同様にして乾燥し、アルカリ処理澱粉の粉末を得
た。得られたアルカリ処理澱粉の品質を調べるため、実
施例1と同様にして試験し、評価した。
【0026】実施例3 容量200ミリリットルのガラス製ビーカーの中に0.
1規定濃度の水酸化ナトリウム水溶液(NaOHとして
4g/リットル)を100g入れ、これに絶乾10gの
トウモロコシ酸化澱粉(王子エースA、王子コンスター
チ社製)を、200rpmで撹拌しながら投入し、9.
1%濃度の澱粉スラリーとした。このスラリーの初期p
Hは12.9であった。次いでこのビーカーを温度が4
0℃に加熱された恒温槽に入れ、撹拌を継続しながら6
0分間維持した。アルカリ処理が完了した時のスラリー
の終期pHは、12.5であった。その後ビーカーを恒
温槽から取り出し、25℃まで冷却した後、ガラスフィ
ルター(G2)でろ過し、ケーキを水で洗浄した。水に
よる洗浄は、ろ過液のpHが7.5になるまで繰り返し
行った。このようにして得られたケーキを実施例1と同
様にして乾燥し、アルカリ処理澱粉の粉末を得た。得ら
れたアルカリ処理澱粉の品質を調べるため、実施例1と
同様にして試験し、評価した。
【0027】比較例1 実施例1で用いたトウモロコシ澱粉をアルカリ処理せず
に、実施例1と同様にしてフィルム化し、それを用いて
試験し、品質を評価した。 比較例2 実施例2で用いたハイアミロース種トウモロコシ澱粉を
アルカリ処理せずに、実施例1と同様にしてフィルム化
し、それを用いて試験し、品質を評価した。 比較例3 実施例3で用いたトウモロコシ酸化澱粉をアルカリ処理
せずに、実施例1と同様にしてフィルム化し、それを用
いて試験し、品質を評価した。
【0028】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた
結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】表1から分かるように、本発明のアルカリ
処理澱粉は、フィルム成形性が顕著に優れ、しかもその
ようなフィルムの破断時の引張り強度と伸びにも優れて
いる(実施例1〜3)が、アルカリ処理を施さない澱粉
(比較例1と2)及び変性澱粉(比較例3)ともフィル
ム形成性が劣っている。
【0031】
【発明の効果】本発明は、澱粉或いは変性澱粉をアルカ
リ性のスラリー状態で特定の温度に維持するという簡便
な処理により顕著に優れたフィルム特性が付与されたア
ルカリ処理澱粉の製造方法を提供するという効果を奏す
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 澱粉或いは変性澱粉をアルカリ水溶液中
    に分散してスラリーとし、該スラリーを大気圧下で加
    熱、保持した後、ろ過することを特徴とするアルカリ処
    理澱粉の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記スラリーのpHを加熱の間10〜1
    4の範囲に維持することを特徴とする請求項1記載のア
    ルカリ処理澱粉の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記スラリーを温度30〜80℃に加
    熱、保持することを特徴とする請求項1又は2記載のア
    ルカリ処理澱粉の製造方法。
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